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特開2023-93444電磁放射線に対する透過性が良好なポリウレタン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093444
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】電磁放射線に対する透過性が良好なポリウレタン
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/44 20060101AFI20230627BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20230627BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20230627BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
C08G18/44
C08G18/65 005
C08G18/22
H05K9/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023044590
(22)【出願日】2023-03-20
(62)【分割の表示】P 2019572662の分割
【原出願日】2018-06-27
(31)【優先権主張番号】17178008.3
(32)【優先日】2017-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ヘンツェ,オリファー シュテッフェン
(72)【発明者】
【氏名】ウールホルン,フランク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】非常に異なる要件プロファイル、低温での衝撃強度、高弾性、特定の触感、および/または高断裂伝播耐性などを満たすとともに、高い機械的復元力を有し、電磁放射線を減衰しない、物品を提供する。
【解決手段】デバイスの構成要素またはデバイス用のカバーであるか、デバイスに近接させて使用される、熱可塑性ポリウレタン製の物品であって、前記デバイスは電磁放射線を受信または発信し、前記熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも1種のジイソシアナートと、数平均分子量が0.500×10g/molを超える少なくとも1種のイソシアナート反応性物質から製造され、前記イソシアナート反応性物質は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のポリカルボナートを含み、前記電磁放射線の周波数が、104Hzと1013Hzの間である、物品とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスの構成要素またはデバイス用のカバーであるか、デバイスに近接させて使用される、ポリウレタン製の物品であって、前記デバイスは電磁放射線を受信または発信し、前記ポリウレタンは、少なくとも1種のジイソシアナートと、数平均分子量が0.500×10g/molを超える少なくとも1種のイソシアナート反応性物質から製造され、前記イソシアナート反応性物質は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のポリカルボナートを含む、物品。
【請求項2】
前記電磁放射線の周波数が、10Hzと1013Hzの間、好ましくは、10Hzと1011Hzの間、特に好ましくは0.5×10Hzと3.0×10Hzの間である、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記ポリカルボナートが脂肪族ポリカルボナートである、請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
前記ポリカルボナートが、ブタンジオール、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールからなる群から選択されるジオールをベースとするものである、請求項1から3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記ジイソシアナートが、4,4’-、2,4’-および2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアナート、1-メチル-2,4-および/または-2,6-シクロヘキサンジイソシアナート、2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアナート(TDI)からなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記ジイソシアナートが、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)ならびに2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の物品。
【請求項7】
前記ポリウレタンが熱可塑性ポリウレタンである、請求項1から6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリウレタンの製造が、イソシアナート反応性基を有し、分子量が0.05g/molと0.499g/molの間である脂肪族、芳香脂肪族、芳香族または脂環式化合物を鎖延長剤として更に使用し、前記鎖延長剤は、好ましくは第1級ヒロドキシル基のみを有する、請求項7に記載の物品。
【請求項9】
前記熱可塑性ポリウレタンの製造が、有機金属化合物を触媒として使用する、請求項7または8に記載の物品。
【請求項10】
前記デバイス用のフレームまたは保護カバーである、請求項1から9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記ポリウレタンが、無機繊維状フィラーを含有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
前記無機繊維が、より好ましくはEガラス製の被覆ガラス繊維であり、より好ましくは太さが3μm~30μm、特に8μm~15μmであり、より好ましくは最大繊維長分布が0.03mm~約15mm、特に1mm~10mmの範囲である、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の物品へポリウレタン、好ましくは熱可塑性ポリウレタンを使用する方法。
【請求項14】
デバイスの構成要素またはデバイス用のカバーであるか、デバイスに近接させて使用される物品の製造のためにポリウレタンを使用する方法であって、前記デバイスは電磁放射線を受信または発信し、前記ポリウレタンは、少なくとも1種のジイソシアナートと、数平均分子量が0.500×10g/molを超える少なくとも1種のイソシアナート反応性物質から製造され、前記イソシアナート反応性物質は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のポリカルボナートを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁放射線を発信または受信するデバイスに近接させて、またはそうしたデバイスの中で使用するのに特に好適なポリウレタンを提供する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは通例、電磁放射線を発信または受信する電子デバイスの中や上に使用される。場合によっては、デバイス自体の本質的な部品がプラスチックから製造されたり、デバイスが例えば保護プラスチックで覆われていたりする。デバイスはまた、多くの場合、周辺機器、例えばホルダを備えていたり、プラスチック製の物品、例えばスタンド、棚、カバーなどが、デバイスに直接近接させて使用されたりする。これらの物品は全て電磁放射線を吸収し、デバイスの性能低下をもたらす。
【0003】
これらの材料はまた、非常に異なる要件プロファイルを満たさなければならないが、主に非常に異なるタイプの高い機械的要求を満足するものでなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、その目的のために、特に、要件プロファイル、例えば低温での衝撃強度、高弾性、特定の触感、および/または高断裂伝播耐性などが非常に異なると共に高い機械的復元力を有し、同時に公知の材料よりも電磁放射線を減衰しない物品用のプラスチックを提供する。
【0005】
驚くべきことに、ポリカルボナートをベースとするポリウレタン、好ましくは熱可塑性ポリウレタンは、記載した物品に対する非常に異なる機械的要件プロファイルを満足するだけでなく、同時にこれらのデバイスに通常使用されるプラスチックと比較して著しく低い程度に電磁放射線を吸収することが見いだされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明は、デバイスの構成要素またはデバイス用のカバーであるか、デバイスに近接させて使用されるポリウレタン製、好ましくは熱可塑性ポリウレタン製の物品であって、デバイスは電磁放射線を受信または発信し、ポリウレタンは、少なくとも1種のイソシアナートと、数平均分子量が0.500×10g/molを超える少なくとも1種のイソシアナート反応性物質から製造され、イソシアナート反応性物質は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のポリカルボナートを含む物品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
発明の文脈における「ポリウレタン」は、公知のポリイソシアナート重付加生成物全てを含む。これは、イソシアナートとアルコールとの付加生成物、ならびにイソシアヌラート、アロファナート、ウレア、カルボジイミド、ウレトンイミンおよびビウレット構造と、更なるイソシアナート付加生成物とを含んでもよい改質ポリウレタンを含む。本発明によるこれらのポリウレタンには特に、固体ポリイソシアナート重付加生成物、例えばデュロマー(duromers)、およびポリイソシアナート重付加生成物をベースとする発泡体、例えば軟質発泡体、半硬質発泡体、硬質発泡体または一体発泡体、ならびにポリウレタンコーティングおよびバインダー、とりわけ熱可塑性ポリウレタン、そのペレットおよび膨張ペレットも含まれる。膨張ペレットは、発泡体の小球である。
【0008】
本発明によるポリウレタンは、好ましくは、以下に説明するポリウレタン単位の他に更なるポリマーを含有しないポリウレタン発泡体または固体ポリウレタンである。
【0009】
ポリウレタンは、(a)イソシアナートと、(b)ポリオールとも呼ばれるイソシアナート反応性化合物、ならびに好ましい実施形態における(c)鎖延長剤と、任意に(e)触媒と、任意に(d)補助および/または添加物質という成分をベースとするものである。
【0010】
(a)イソシアナートと、(b)ポリオールとも呼ばれるイソシアナート反応性化合物と、(c)鎖延長剤という成分は、個別に、または集合的に合成成分とも呼ばれる。合成成分と触媒および/または通常の補助および/または添加物質は、合わせて投入材料とも呼ばれる。
【0011】
本発明の文脈において、「ポリウレタン発泡体」という用語は、DIN7726による発泡体を意味するものと理解すべきである。本発明による軟質ポリウレタン発泡体は、DIN53421/DIN EN ISO604による10%圧縮での圧縮応力/圧縮強度が、15kPa以下、好ましくは、1~14kPa、特に4~14kPaである。本発明による半硬質ポリウレタン発泡体は、DIN53421/DIN EN ISO604による10%圧縮での圧縮応力が15kPaを超え、80kPa未満である。DIN ISO4590によると、本発明による半硬質ポリウレタン発泡体および軟質ポリウレタン発泡体は、開放気孔含有率が好ましくは85%を超え、特に好ましくは90%を超えている。本発明による軟質ポリウレタン発泡体および半硬質ポリウレタン発泡体に関する更なる詳細は、「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版、1993、第5章に見いだすことができる。
【0012】
本発明による硬質ポリウレタン発泡体は、80kPa以上、好ましくは120kPa以上、特に好ましくは150kPa以上の10%圧縮での圧縮応力を呈する。更に、硬質ポリウレタン発泡体は、DIN ISO4590による独立気泡含有率が80%を超え、好ましくは90%を超えている。本発明による硬質ポリウレタン発泡体に関する更なる詳細は、「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版、1993、第6章に見いだすことができる。
【0013】
本発明の文脈において、「弾性ポリウレタン発泡体」は、DIN7726によるポリウレタン発泡体を意味するものと理解すべきであり、DIN53577による厚さの50%分の短時間の変形後、10分後に初期厚さの2%を超える永続的変形を示さないものである。硬質ポリウレタン発泡体、半硬質ポリウレタン発泡体または軟質ポリウレタン発泡体が該当してもよい。
【0014】
「一体ポリウレタン発泡体」は、DIN7726による、成形プロセスの結果として中心部より密度が高い周辺領域を有するポリウレタン発泡体を意味するものと理解すべきである。中心部と周辺領域とにわたり平均した全体的な見掛け密度は、好ましくは100g/Lを超える。本発明の文脈において、一体ポリウレタン発泡体は、硬質ポリウレタン発泡体、半硬質ポリウレタン発泡体または軟質ポリウレタン発泡体とすることもできる。本発明による一体ポリウレタン発泡体に関する更なる詳細は、cに見いだすことができる。
【0015】
本発明によるポリウレタンは、ポリイソシアナート(a)と、イソシアナート反応性化合物(b)とを、任意に鎖延長剤(c)と、任意に触媒(d)と、任意に発泡剤(e)と、更なる補助および添加物質(f)と一緒に混合して反応混合物を形成し、前記混合物を反応させることによって得られる。
【0016】
好ましい実施形態において、本発明によるポリウレタンは、平均密度が20g/L~0.85×10g/Lであるポリウレタン発泡体であり、好ましくは、半硬質ポリウレタン発泡体または軟質ポリウレタン発泡体または硬質ポリウレタン発泡体、特に好ましくは弾性軟質ポリウレタン発泡体、半硬質ポリウレタン発泡体または弾性一体ポリウレタン発泡体である。弾性一体ポリウレタン発泡体は、好ましくは中心部と周辺領域とにわたり平均した密度が0.15×10g/L~0.5×10g/Lである。軟質ポリウレタン発泡体は、好ましくは平均密度が0.01×10g/L~0.1×10g/Lである。半硬質ポリウレタン発泡体は、好ましくは平均密度が0.07×10g/L~0.15×10g/Lである。
【0017】
更なる好ましい実施形態において、ポリウレタンは、密度が好ましくは0.85×10g/Lを超え、好ましくは0.9×10g/L~1.4×10g/L、特に好ましくは1.0×10g/L~1.3×10g/Lである固体ポリウレタンである。固体ポリウレタンは、本質的に発泡剤を添加することなく得られる。製造の結果としてポリオール中に存在する少量の発泡剤、例えば水は、ここでは発泡剤とはみなさない。コンパクトポリウレタンを製造するための反応混合物は、好ましくは0.2質量%未満、特に好ましくは0.1質量%未満、特に0.05質量%未満の水を含有する。
【0018】
本発明によるポリウレタンを製造するために使用されるイソシアナート成分(a)は、ポリウレタンの製造用に公知のイソシアナート全てを含む。これらには、先行技術から公知の脂肪族、脂環式および芳香族の二価または多価イソシアナート、ならびにそれらの任意所望の混合物が含まれる。例としては、2,2’-、2,4’-および4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、単量体ジフェニルメタンジイソシアナートとジフェニルメタンジイソシアナートの高級核同族体の混合物(高分子MDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)もしくはそのオリゴマー、2,4-もしくは2,6-トリレンジイソシアナート(TDI)もしくはそれらの混合物、テトラメチレンジイソシアナートもしくはそのオリゴマー、ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)もしくはそのオリゴマー、ナフチレンジイソシアナート(NDI)、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0019】
好ましい実施形態において、イソシアナートは、4,4’-、2,4’-および2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアナート、1-メチル-2,4-および/または-2,6-シクロヘキサンジイソシアナート、2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアナート(TDI)からなる群から選択される。4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)および1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)が特に好ましい。HDIは、優れた機械的性質と共にその良好なUV安定性のために好ましい。
【0020】
遮光部品を使用する場合など、光安定性が必要ない用途、例えばデバイスのフレームでは、より良好な機械的性質を有することから、2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を使用することが好ましい。
【0021】
H12MDIは、好ましくは透明なポリウレタン、特に透明なTPUに使用されるイソシアナートである。
【0022】
別の好ましい実施形態は、2,4-および/もしくは2,6-トリレンジイソシアナート(TDI)、またはこれらの混合物、単量体ジフェニルメタンジイソシアナートおよび/もしくはジフェニルメタンジイソシアナートの高級核同族体(高分子MDI)、ならびにこれらの混合物を使用する。
【0023】
更なる可能なイソシアナートは、例えば「Polyurethane Handbook、Hanser、Munich、第2版、1993、第3.2章および更なる章」に記載されている。
【0024】
イソシアナート成分(a)は、イソシアナートプレポリマーの形態で使用してもよい。これらのイソシアナートプレポリマーは、例えば30℃~100℃の温度で、好ましくは約80℃で、過剰量の上記イソシアナート(構成要素(a))を、イソシアナート反応性基を有する高分子化合物(b)と、好ましい実施形態においては、鎖延長剤(c)と反応させてイソシアナートプレポリマーを得ることによって入手可能である。
【0025】
数平均分子量が500g/molを超えるイソシアナート反応性化合物(b)と数平均分子量が50g/molと499g/molの間の鎖延長剤(c)が当業者には公知であり、例えば「Kunststoffhandbuch、7、Polyurethane」、Carl Hanser-Verlag、第3版、1993、第3.1章に記載されている。
【0026】
イソシアナート反応性化合物(b)として使用されるのは、数平均分子量が0.500×10g/molを超える少なくとも1種のポリカルボナートジオール、好ましくは脂肪族ポリカルボナートジオールである。好適なポリカルボナートジオールは、アルカンジオールをベースとするポリカルボナートジオールである。特に好適なポリカルボナートジオールは、厳密に二官能性のOH官能性ポリカルボナートジオール、好ましくは厳密に二官能性のOH官能性脂肪族ポリカルボナートジオールである。好適なポリカルボナートジオールは、例えばブタンジオール、ペンタンジオールまたはヘキサンジオール、とりわけ1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチルペンタン-(1,5)-ジオールまたはこれらの混合物、特に好ましくは1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールまたはこれらの混合物をベースとするものである。本発明の文脈において好ましく使用されるのは、ブタンジオールとヘキサンジオールをベースとするポリカルボナートジオール、ペンタンジオールとヘキサンジオールをベースとするポリカルボナートジオール、ヘキサンジオールをベースとするポリカルボナートジオール、およびこれらのポリカルボナートジオールの2種以上の混合物である。
【0027】
使用されるポリカルボナートジオールは、好ましくはGPCによって判定される数平均分子量Mnが500g/mol~4.0×10g/molの範囲である。ポリカルボナートジオールのGPCによって判定される数平均分子量Mnが0.65×10g/mol~3.5×10g/molの範囲であることがより好ましく、特に好ましくは0.8×10g/mol~3.0×10g/molの範囲である。
【0028】
ポリカルボナートジオールは、脂肪族ポリカルボナートジオールであることが好ましい。別の好ましい実施形態において、ポリカルボナートジオールは、ブタンジオール、ペンタンジオールまたはヘキサンジオールの群から選択されるジオールをベースとするものである。
【0029】
使用されるポリカルボナートジオールは、GPCによって判定される数平均分子量Mnが500g/mol~4.0×10g/molの範囲、好ましくは0.65×10g/mol~3.5×10g/molの範囲、特に好ましくは0.8×10g/mol~3.0×10g/molの範囲であることが好ましい。
【0030】
イソシアナート反応性化合物(b)に同様に使用できるのは、少なくとも2個のイソシアナート反応性水素原子を有する更なる公知の化合物、例えば官能価が2~8であり、数平均分子量が500g/mol~15×10g/molのものである。
【0031】
好ましい実施形態において、イソシアナート反応性物質は、50質量%を超え、より好ましくは75質量%を超え、より好ましくは90質量%を超え、更により好ましくは95質量%を超え、特に好ましくは99質量%を超える、少なくとも2個のヒドロキシル基を有するポリカルボナートを含む。質量%の値は、数平均分子量が0.500×10g/molを超えるイソシアナート反応性物質の総量に対するものである。
【0032】
更なるイソシアナート反応性物質(c)が使用される場合、これらは好ましくはポリエーテルであり、それは、物品の被汚染性の低減をもたらすからである。
【0033】
鎖延長剤(c)
ポリウレタンの製造は、鎖延長剤(c)とも呼ばれる、イソシアナート反応性基を有し、分子量が50g/molと499g/molの間の更なる脂肪族、芳香脂肪族、芳香族または脂環式化合物を使用し、鎖延長剤は、好ましくは第1級ヒロドキシル基のみを有する。
【0034】
好ましい実施形態において鎖延長剤または架橋剤(c)として使用されるのは、少なくとも2個のイソシアナート反応性基を有し、分子量が500g/mol未満の化合物であり、ここで、2個のイソシアナート反応性水素原子を有する分子は鎖延長剤とも呼ばれ、2個を超えるイソシアナート反応性基を有する分子は架橋剤とも呼ばれる。鎖延長剤および/または架橋剤は、機械的性質、例えば硬度を改変するために使用される。
【0035】
特定の好ましい実施形態において、鎖延長剤および/または架橋剤は用いられない。
【0036】
鎖延長剤および/または架橋剤(c)が使用される場合、ポリウレタンの製造から公知の鎖延長剤および/または架橋剤を使用してもよい。これらは、好ましくは低分子量化合物であり、好ましくは、分子量が50g/molと499g/molの間であり、イソシアナート反応性基を含み、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、グリコールおよびジアミンである。更なる可能な低分子量鎖延長剤および/または架橋剤は、例えばPolyurethane Handbook、Hanser、Munich、第2版、1993、第3.4.3章に記載されている。
【0037】
鎖延長剤1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオールが特に好ましく、1,4-ブタンジオールが非常に特に好ましい。
【0038】
補助および/または添加物質(f)も使用することができる。ポリウレタンの製造用に公知の任意の補助および添加物質を使用してもよい。これらには、例えば表面活性物質、発泡安定剤、成核剤、酸化安定剤、気泡調整剤、離型剤、潤滑および脱型剤、フィラー、染料、顔料、難燃剤、任意に安定剤であって、好ましくは加水分解、光、熱もしくは変色に対するもの、無機および/または有機フィラー、補強材および/または可塑剤、静真菌および静菌物質が含まれる。補助および/または添加物質は、記載した好ましい範囲の電磁波を容易に通すように、即ち、好ましくは、持つとしても非常に小さな双極子モーメントしか持たないように選ばれる。
【0039】
こうした物質は公知であり、例えば「Polyurethane Handbook、Hanser、Munich、第2版、1993、第3.4章」に記載されている。本発明の文脈における安定剤は、プラスチックまたはプラスチック混合物を有害な環境の影響から保護する添加剤である。例としては、一次および二次酸化防止剤、立体障害フェノール、ヒンダードアミン光安定剤、UV吸収剤、加水分解安定剤、消光剤、ならびに難燃剤が挙げられる。市販の安定剤の例は、Plastics Additives Handbook、第5版、H.Zweifel編、Hanser、Munich、2001([1])、98~136ページに見いだすことができる。
【0040】
好ましい実施形態において、UV吸収剤は、数平均分子量が0.3×10g/molを超え、特に0.39×10g/molを超えている。更に、好ましく使用されるUV吸収剤は、分子量が5×10g/mol以下、特に好ましくは2×10g/mol以下のものとすべきである。
【0041】
特に好適なUV吸収剤は、シンナマート、オキサニリドおよびベンゾトリアゾールを含む群であり、特にベンゾトリアゾールが好ましい。特に好適なベンゾトリアゾールの例は、Tinuvin(登録商標)213、Tinuvin(登録商標)234、Tinuvin(登録商標)571、更にTinuvin(登録商標)384およびEversorb(登録商標)82である。
【0042】
UV吸収剤は、典型的にはTPUの総質量に対して0.01質量%~5質量%、好ましくは、0.1質量%~2.0質量%、特に0.2質量%~0.5質量%の量で添加される。
【0043】
上記のような抗酸化剤とUV吸収剤に基づくUV安定化は多くの場合、UV放射の損傷効果に対する本発明によるTPUの良好な安定性を確保するにはまだ十分ではない。この場合、抗酸化剤とUV吸収剤に加えてヒンダードアミン光安定剤(HALS)を本発明によるTPUに更に添加してもよい。HALS化合物の活性は、これらが持つ、ポリマーの酸化のための機序を妨げるニトロキシルラジカルを形成する能力に基づくものである。HALSは、ほとんどのポリマーにとって高度に効率的なUV安定剤である。
【0044】
HALS化合物は、周知であり、市販されている。市販のHALS安定剤の例は、Plastics Additives Handbook、第5版、H.Zweifel、Hanser、Munich、2001、123~136ページに見いだすことができる。
【0045】
好ましく使用されるヒンダードアミン光安定剤は、数平均分子量が500g/molを超えるヒンダードアミン光安定剤である。更に、好ましいHALS化合物は、分子量が10×10g/mol以下、特に好ましくは5×10g/mol以下のものとすべきである。
【0046】
特に好ましいヒンダードアミン光安定剤は、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)セバカート(Tinuvin(登録商標)765、Ciba Spezialitaetenchemie AG)および1-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物(Tinuvin(登録商標)622)である。完成品のチタン含有量が使用された合成成分に対して150ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に10ppm未満の場合、1-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物(Tinuvin(登録商標)622)がとりわけ好ましい。
【0047】
HALS化合物は、使用された合成成分に対する熱可塑性ポリウレタンの総質量に対して好ましくは0.01質量%~5質量%、特に好ましくは0.1質量%~1質量%、特に0.15質量%~0.3質量%の濃度で使用される。
【0048】
特に好ましいUV安定化は、上記の好ましい量のフェノール系安定剤、ベンゾトリアゾールおよびHALS化合物の混合物を含む。
【0049】
好ましい実施形態において、本発明によるポリウレタンは、フィラーを含有する。フィラーの化学的性質および形態は、ポリウレタンとの相溶性が十分あり、同時に電磁放射線に対する透過性が確保される限り、大きく変化し得る。
【0050】
好適なフィラーは、例えばガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維、アラミド繊維、チタン酸カリウム繊維、液晶ポリマーの繊維、有機繊維状フィラーまたは無機補強材料である。有機繊維状フィラーは、例えばセルロース繊維、麻繊維、サイザルアサまたはケナフである。無機補強材料は、例えばセラミックフィラー、例えばアルミニウムおよび窒化ホウ素、または鉱物フィラー、例えばアスベスト、タルク、珪灰石、ミクロビット(microvit)、ケイ酸塩、胡粉、焼成カオリン、雲母および石英粉である。
【0051】
本発明の文脈においては、繊維状フィラーが好ましい。繊維は、好ましくは直径が3μm~30μm、好ましくは6μm~20μm、特に好ましくは8μm~15μmである。ポリウレタン中での繊維長さは一般に、20μm~1000μm、好ましくは180μm~500μm、特に好ましくは200μm~400μmである。
【0052】
繊維状フィラーは、熱可塑性物質との相溶性を向上させるためにシラン化合物で表面を前処理してもよい。
【0053】
無機繊維状フィラーを使用することが好ましい。無機繊維状フィラーを使用する場合、ポリマーに対するより大きな補強効果と、より高い耐熱性が観察される。
【0054】
本発明に特に好ましい無機繊維は、被覆ガラス繊維であり、より好ましくはEガラス製である。Eガラスは、要求の厳しい電気的用途のためのホウケイ酸ガラスであり、この点に関しては「Glass Fibers、Frederick T.Wallenberger、James C.WatsonおよびHong Li、PPG Industries,Inc.;ASM Handbook、第21巻:Composites」も参照されたい。ガラス繊維は、好ましくはEガラス製であり、更に好ましくは、太さが3μm~30μm、特に8μm~15μmであり、更に好ましくは最大繊維長分布が0.03mm~約15mm、特に1mm~10mmの範囲であり、先行技術に従い製造される。
【0055】
本発明によると、ポリウレタンは、2種以上のフィラーを含むこともできる。
【0056】
ポリウレタンにおけるフィラーの割合は、使用されたポリウレタンに対して好ましくは10質量%~50質量%の範囲、より好ましくは20質量%~45質量%の範囲、特に好ましくは25質量%~40質量%の範囲である。
【0057】
上記の補助および添加物質に関する更なる詳細は、技術文献、例えばPlastics Additives Handbook、第5版、H.Zweifel編、Hanser、Munich、2001に見いだすことができる。
【0058】
製造
本発明によるポリウレタンの製造において、ポリイソシアナート(a)、ポリオール(b)、鎖延長剤および/または架橋剤(c)、任意に触媒(d)、ならびに、使用する場合は発泡剤(e)と任意に補助および/または添加物質(f)を、成分(b)、(c)、(d)、(e)および(f)の反応性水素原子の合計に対するポリイソシアナート(a)のNCO基の当量比が0.75~1.5:1、好ましくは0.80~1.25:1となるような量で一般に反応させる。発泡プラスチックが少なくとも部分的にイソシアヌラート基を含む場合、成分(b)、(c)、(d)、(e)および(f)の反応性水素原子の合計に対するポリイソシアナート(a)のNCO基の比1.5~20:1、好ましくは1.5~8:1が典型的には使用される。1:1の比は、ここではイソシアナート指数100に対応する。
【0059】
鎖延長剤(c)
触媒(d)は、ポリオール(b)と、任意に鎖延長剤および架橋剤および化学的発泡剤と、有機の任意に改質されたポリイソシアナート(a)との反応を加速させる。
【0060】
触媒(d)も、好ましくはポリウレタンの製造のために使用される。アミジン、例えば2,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、第3級アミン、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N-メチル-、N-エチル-およびN-シクロヘキシルモルホリン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)ウレア、ジメチルピペラジン、1,2-ジメチルイミダゾール、1-アザビシクロ-(3,3,0)-オクタン、1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-ウンデカ-7-エンが好ましく、好ましくは1,4-ジアザビシクロ-(2,2,2)-オクタンである。触媒(d)の別の同様に好ましい群は、有機金属化合物、好ましくは有機スズ化合物、例えば有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)(tin II octoate)、エチルヘキサン酸スズ(II)(tin(II) ethylhexoate)およびラウリン酸スズ(II)、ならびに有機カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、例えば二酢酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、マレイン酸ジブチルスズおよび二酢酸ジオクチルスズ、チタン酸エステル、更にカルボン酸ビスマス、例えばネオデカン酸ビスマス(III)、2-エチルヘキサン酸ビスマスおよびオクタン酸ビスマス、またはこれらの混合物である。有機金属化合物は、単独で、または好ましくは強塩基性アミンと組み合わせて使用される。
【0061】
イソシアナート反応性成分(b)がエステルである場合、アミン触媒のみを使用することが好ましい。
【0062】
ポリウレタンが熱可塑性ポリウレタンである場合、上記の有機金属化合物を使用することが好ましく、優先傾向はそこに記載の通りである。熱可塑性ポリウレタンの場合、有機金属化合物を触媒として使用することがより好ましい。
【0063】
更なる好ましい例は、ジオクタン酸スズ(tin dioctoate)、デカン酸ビスマスおよびチタン酸エステルの群から選択される熱可塑性ポリウレタン用の触媒である。これらの触媒は、ポリウレタンを、特に水中造粒後であっても、依然として熟成させることができるという利点を有する。ジオクタン酸スズが特に好ましい。
【0064】
触媒(d)が使用される場合、成分(b)の質量に対して触媒/触媒の組合せとして好ましくは0.001質量%~5質量%、特に0.05質量%~2質量%の濃度で使用される。
【0065】
発泡剤(e)
本発明によるポリウレタンをポリウレタン発泡体の形態とすべき場合、本発明による反応混合物は、発泡剤(e)を更に含有する。ポリウレタンの製造用に公知の任意の発泡剤を使用してもよい。これらは、化学的および/または物理的な発泡剤を含んでもよい。こうした発泡剤は、例えば「Polyurethane Handbook、Hanser、Munich、第2版、1993、第3.4.5章」に記載されている。「化学的発泡剤」は、イソシアナートとの反応によってガス状生成物を形成する化合物を意味するものと理解される。こうした発泡剤の例は、水またはカルボン酸である。「物理的発泡剤」は、ポリウレタン製造の投入材料中で溶解または乳化し、ポリウレタン形成の条件下で蒸発する化合物を意味するものと理解される。その例としては、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ならびに他の化合物、例えばペルフルオロアルカン、例えばペルフルオロヘキサン、クロロフルオロ炭化水素、およびエーテル、エステル、ケトン、アセタールおよび/または液体二酸化炭素が挙げられる。発泡剤は、任意所望の量で使用することができる。発泡剤は、好ましくは、結果として得られるポリウレタン発泡体の密度が10~850g/L、特に好ましくは20~800g/L、特に25~500g/Lとなるような量で使用される。水を含む発泡剤を使用することが特に好ましい。
【0066】
製造すべき本発明のポリウレタンが熱可塑性ポリウレタン、軟質発泡体、半硬質発泡体、硬質発泡体または一体発泡体である場合、本発明によるポリウレタンを製造するための特定の出発物質(a)~(f)は、各場合において量的および質的にわずかに異なるに過ぎない。したがって、例えば、固体ポリウレタンの製造は、発泡剤を使用せず、熱可塑性ポリウレタンの製造は、主に厳密に二官能性の出発物質を使用する。更に、本発明によるポリウレタンの弾性と硬度は、例えば少なくとも2個の反応性水素原子を有するより分子量の大きい化合物の官能価と鎖長によって変えることができる。そのような変更は、当業者に公知である。
【0067】
固体ポリウレタンを製造するための反応物質は、例えばEP0989146またはEP1460094に記載されており、軟質発泡体を製造するための反応物質は、例えばPCT/EP2005/010124およびEP1529792に記載されており、半硬質発泡体を製造するための反応物質は、例えば「Polyurethane Handbook、Hanser、Munich、第2版、1993、第6.1章」に記載されており、硬質発泡体を製造するための反応物質は、例えばPCT/EP2005/010955に記載されており、一体発泡体を製造するための反応物質は、例えばEP364854、US5506275またはEP897402に記載されている。そしていずれの場合も、これらの文献に記載の反応物質に有機硫黄化合物(d)が添加される。
【0068】
TPU
好ましい実施形態において、ポリウレタンは、熱可塑性ポリウレタンである。製造は、(a)イソシアナートと、(b)ポリオールとも呼ばれる数平均分子量が0.5×10g/mol~100×10g/molのイソシアナート反応性化合物との反応によって行われ、より好ましい実施形態においては、(c)分子量が0.05×10g/mol~0.499×10g/molの鎖延長剤とも反応させ、より好ましい実施形態においては、(d)触媒および/または(e)通常の補助および/または添加物質の存在下で行われる。
【0069】
TPUの硬度とメルトインデックスを調節するため、合成成分(b)と(c)の使用される量をモル比について変化させてもよく、ここで、硬度と溶融粘度は、鎖延長剤(c)の含有量の増加に伴って上昇し、一方、メルトインデックスは低下する。
【0070】
本発明による好ましい熱可塑性ポリウレタンを製造するには、本発明によると上記ポリカルボナートであるポリヒドロキシル化合物(b)とも呼ばれる実質的に二官能性のポリオール(b)と鎖延長剤(c)とを、有利には1:1~1:5、好ましくは1:1.5~1:4.5のモル比で使用して、結果として得られる合成成分(b)と(c)の混合物のヒドロキシル当量が200を超え、特に230~450となるようにすることが好ましく、一方、例えばショアA硬度が98を超え、好ましくはショアDが55~75の比較的硬質のTPUを製造するには、(b):(c)のモル比1:5.5~1:15、好ましくは1:6~1:12の範囲として、得られる(b)と(c)の混合物のヒドロキシル当量が110~200、好ましくは120~180となるようにする。
【0071】
本発明によるTPUを製造するには、合成成分(a)、(b)、および好ましい実施形態では更に(c)を、触媒(d)と任意に補助および/または添加物質(e)の存在下で、成分(b)および(c)中のヒドロキシル基の合計に対するジイソシアナート(a)のNCO基の当量比が0.95:1~1.10:1、好ましくは0.98:1~1.02:1、特に0.99~1.00:1となるような量で反応させる。
【0072】
本発明により好ましく製造されるのはTPUであり、ここで、TPUは、質量平均分子量が0.08×10g/mol~0.8×10g/mol、好ましくは0.1×10g/mol~0.18×10g/molである。TPUの質量平均分子量の上限は一般に、加工性、更に所望の特性の範囲によって決定される。TPUならびに合成成分(a)および(b)に関して上記に報告する平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって判定された質量平均値である。
【0073】
上記イソシアナートは、熱可塑性ポリウレタン用の有機イソシアナート(a)としても使用される。
【0074】
イソシアナート反応性化合物(b)は、統計的平均で少なくとも1.8個かつ最大3.0個の熱可塑性ポリウレタンに関するツェレビチノフ活性水素原子を有する。この数は、イソシアナート反応性化合物(b)の官能価とも呼ばれ、物質の量から1分子について論理的に計算された分子中のイソシアナート反応性基の量を示すものである。官能価は、好ましくは1.8と2.6の間、より好ましくは1.9と2.2の間、特に2である。
【0075】
本発明によるポリカルボナートであるイソシアナート反応性化合物は、関連する優先傾向と共に先に記載している。
【0076】
これらの長鎖化合物は、ポリイソシアナートのイソシアナート基含有量に対して1当量モル%~80当量モル%の物質比の量で使用される。
【0077】
TPU用の鎖延長剤(c)として好ましく使用されるのは、分子量が50g/mol~499g/molであり、好ましくは官能基とも呼ばれるイソシアナート反応性化合物を2個有する、脂肪族、芳香脂肪族、芳香族および/または脂環式化合物である。好ましい鎖延長剤は、ジアミンおよび/またはアルカンジオールであり、より好ましくはアルキレンラジカル中に2~10個の炭素原子を有し、好ましくは3~8個の炭素原子を有するアルカンジオールであり、これは、より好ましくは第1級ヒロドキシル基のみを有する。
【0078】
TPU用の鎖延長剤(c)が、1,2-エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ブタン-1,4-ジオール、ブタン-2,3-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-ジメタノールシクロヘキサン、ネオペンチルグリコールおよびヒドロキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル(HQEE)からなる群から選択される少なくとも1種の鎖延長剤であることが好ましい。特に好適な鎖延長剤は、1,2-エチレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオールおよびヘキサン-1,6-ジオールからなる群から選択されるものである。
【0079】
より好ましい鎖延長剤は、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオールおよびエタンジオールであり、特にブタン-1,4-ジオールである。
【0080】
熱可塑性ポリウレタンの場合も、好ましい実施形態においては、上記の触媒、補助剤およびフィラーが、上記の優先傾向および量で使用される。
【0081】
TPU製造
TPUは、公知の方法によって、例えば反応押出機を使用する方法、または「ワンショット」法もしくはプレポリマー法、好ましくは「ワンショット」法によるベルト法を使用して不連続的または連続的に製造することができる。「ワンショット」法においては、反応させるべき成分(a)、(b)を、好適な実施形態においては更に成分(c)、(d)および/または(e)を、互いに連続してまたは同時に混合し、重合反応の即時開始をもたらす。押出機法においては、合成成分(a)、(b)を、好適な実施形態においては更に(c)、(d)および/または(e)を個別にまたは混合物として押出機に導入し、好ましくは100℃~280℃、好ましくは140℃~250℃の温度で反応させる。得られるポリウレタンを押し出し、冷却し、ペレット化する。
【0082】
製造
ポリウレタンの製造は、典型的にはプレポリマー法によって行われ、イソシアナート(a)は、イソシアナート反応性化合物(b)と等モル比で製造される。このプレポリマーを、第2の工程において更なるポリオール(b)と、任意に鎖延長剤(c)と、任意に更なる投入材料(d)および/または(e)とも反応させてポリウレタンを得る:
【0083】
好ましい方法において、熱可塑性ポリウレタンは、合成成分であるイソシアナート(a)と、イソシアナート反応性化合物(b)と、鎖延長剤(c)を用い、好ましい実施形態では更なる投入材料(d)および/または(e)を用いて一工程で製造される。
【0084】
2軸押出機を使用することが好ましく、それは、2軸押出機は、力伝達モードで作動し、そのため、押出機における温度および量的出力のより精度の高い調節が可能なためである。
【0085】
別の好ましい方法において、熱可塑性ポリウレタンは、上記プレポリマー法でも製造される。
【0086】
上記熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは射出成形物品、カレンダー処理物品、粉末焼結物品または押出物品を製造するために使用されるペレットまたは粉末に加工される。
【0087】
熱可塑性ポリウレタンは特に、30ショアA~80ショアDの硬度範囲で使用される。本発明の文脈において、ガラス繊維強化熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは硬度が30ショアA~80ショアDの範囲である。
【0088】
好ましい熱可塑性ポリウレタンは、EN ISO527-1に従い測定される弾性係数が50MPa~20000MPa、好ましくは500MPa~18000MPa、特に好ましくは10000MPa~15000MPaである。
【0089】
例えば射出成形による単純な加工を可能にする材料を使用することが好ましい。重要なのは、これらの材料が、関連する射出成形型の表面性状の正確な再現が可能であることである。
【0090】
特定の実施形態において、ポリウレタンは他のプラスチック、好ましくはポリアミドおよびABSに対して良好な接着性を有することが有利である。
【0091】
薄肉オーバーモールドが可能であれば、更に有利である。
【0092】
したがって、物品、特にカバーに熱可塑性ポリウレタンを使用することが好ましい。非常に異なるTPUのタイプが幾つか存在し、とりわけ耐光性の高い脂肪族TPU、および透明TPUも存在する。
【0093】
いわゆる「ソフトな手触り」を有するが粘着性に感じない表面が、特に需要が高い。この「ソフトな手触り」は多くの場合、好ましい実施形態を構成する表面性状によって生み出される。
【0094】
使用の方法:
ポリウレタン、好ましくは熱可塑性ポリウレタンは、電磁放射線を受信もしくは発信するデバイスの構成要素であるか、このデバイスを少なくとも部分的にカバーする物品に使用される、またはデバイスに近接させて使用されるものであり、ここで、電磁放射線の周波数は、10Hzと1013Hzの間、好ましくは10Hzと1011Hzの間、特に好ましくは0.5×10Hzと3.0×10Hzの間、非常に特に好ましくは約2GHzである。
【0095】
ラジオ、無線装置、テレビ、リモコン装置、ラッチスイッチ、コードレス電話、コンピュータおよびタブレットの群から選択されるデバイスが好ましい。好ましい物品は、上記のデバイスのうちの1種のフレーム、またはこれらのデバイスのうちの1種のカバーである。より好ましくは、コードレス電話、タブレット用コンピュータのためのフレームまたはカバーが該当する。
【0096】
本発明の更なる実施形態は、特許請求の範囲および実施例に見いだすことができる。当然ながら、先に記載し以下に説明する本発明による主題/方法または本発明による使用の方法の特徴は、各場合において明記された組合せだけでなく、他の組合せにおいても本発明の範囲から逸脱することなく使用することができる。したがって、例えば、好ましい特徴と特に好ましい特徴との組合せや、特に特徴化されていない特徴と特に好ましい特徴との組合せなども、この組合せが明示的に記載されていない場合でも、非明示的に包含される。
【0097】
本発明の例示的実施形態を以下に列挙するが、これらは本発明を制限するものではない。特に、本発明は、従属する参考文献から生じる実施形態、およびそれにより以下で特定される組合せから生じる実施形態を更に包含する。
【0098】
1.デバイスの構成要素またはデバイス用のカバーであるか、デバイスに近接させて使用されるポリウレタン製、好ましくは、熱可塑性ポリウレタン製の物品であって、デバイスは電磁放射線を受信または発信し、ポリウレタンは、少なくとも1種のジイソシアナートと、数平均分子量が0.500×10g/molを超える少なくとも1種のイソシアナート反応性物質から製造され、イソシアナート反応性物質は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のポリカルボナートを含む、物品。
【0099】
2.電磁放射線の周波数が10Hzと1013Hzの間、好ましくは10Hzと1011Hzの間、特に好ましくは0.5×10Hzと3.0×10Hzの間である、実施形態1に記載の物品。
【0100】
3.ポリカルボナートが脂肪族ポリカルボナートである、実施形態1または2に記載の物品。
【0101】
4.ポリカルボナートが、ブタンジオール、ペンタンジオールまたはヘキサンジオールの群から選択されるジオールをベースとするものである、実施形態1から3のいずれか一項に記載の物品。
【0102】
5.ジイソシアナートが、4,4’-、2,4’-および2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアナート、1-メチル-2,4-および/または-2,6-シクロヘキサンジイソシアナート、2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアナート(TDI)の群から選択され、特に好ましくは1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)または2,2’-、2,4’-および/もしくは4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)である、実施形態1から4のいずれか一項に記載の物品。
【0103】
6.ポリウレタンが熱可塑性ポリウレタンである、実施形態1から5のいずれか一項に記載の物品。
【0104】
7.熱可塑性ポリウレタンの製造が、イソシアナート反応性基を有し、分子量が0.05g/molと0.499g/molの間である脂肪族、芳香脂肪族、芳香族または脂環式化合物を鎖延長剤として更に使用し、鎖延長剤は、好ましくは第1級ヒロドキシル基のみを有する、実施形態6に記載の物品。
【0105】
8.熱可塑性ポリウレタンの製造が、有機金属化合物を触媒として使用する、実施形態6および7に記載の物品。
【0106】
9.デバイス用のフレームまたは保護カバーである、実施形態1から8のいずれか一項に記載の物品。
【0107】
10.ポリウレタンが、無機繊維状フィラーを含有する、実施形態1から9のいずれか一項に記載の物品。
【0108】
11.無機繊維が、より好ましくはEガラス製の被覆ガラス繊維であり、より好ましくは太さが3μm~30μm、特に8μm~15μmであり、より好ましくは最大繊維長分布が0.03mm~約15mm、特に1mm~10mmの範囲である、実施形態10に記載の物品。
【0109】
12.実施形態1から11のいずれか一項に記載の物品へポリウレタン、好ましくは熱可塑性ポリウレタンを使用する方法。
【0110】
13.デバイスの構成要素またはデバイス用のカバーであるか、デバイスに近接させて使用される、ポリウレタン製、好ましくは、熱可塑性ポリウレタン製の物品であって、デバイスは電磁放射線を受信または発信し、ポリウレタンは、少なくとも1種のジイソシアナートと、数平均分子量が0.500×10g/molを超える少なくとも1種のイソシアナート反応性物質から製造され、イソシアナート反応性物質は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のポリカルボナートを含む、物品。
【0111】
14.電磁放射線の周波数が10Hzと1013Hzの間、好ましくは10Hzと1011Hzの間、特に好ましくは0.5×10Hzと3.0×10Hzの間である、実施形態13に記載の物品。
【0112】
15.ポリカルボナートが脂肪族ポリカルボナートである、実施形態13および14に記載の物品。
【0113】
16.ポリカルボナートが、ブタンジオール、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールからなる群から選択されるジオールをベースとするものである、実施形態13から15のいずれか一項に記載の物品。
【0114】
17.ジイソシアナートが、4,4’-、2,4’-および2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアナート、1-メチル-2,4-および/または-2,6-シクロヘキサンジイソシアナート、2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアナート(TDI)からなる群から選択される、実施形態13から16のいずれか一項に記載の物品。
【0115】
18.ジイソシアナートが、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)ならびに2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)からなる群から選択される、実施形態13から17のいずれか一項に記載の物品。
【0116】
19.ポリウレタンが熱可塑性ポリウレタンである、実施形態13から18のいずれか一項に記載の物品。
【0117】
20.熱可塑性ポリウレタンの製造が、イソシアナート反応性基を有し、分子量が0.05g/molと0.499g/molの間である脂肪族、芳香脂肪族、芳香族または脂環式化合物を鎖延長剤として更に使用し、鎖延長剤は、好ましくは第1級ヒロドキシル基のみを有する、実施形態19に記載の物品。
【0118】
21.熱可塑性ポリウレタンの製造が、有機金属化合物を触媒として使用する、実施形態19および20に記載の物品。
【0119】
22.デバイス用のフレームまたは保護カバーである、実施形態13から21のいずれか一項に記載の物品。
【0120】
23.ポリウレタンが、無機繊維状フィラーを含有する、実施形態13から22のいずれか一項に記載の物品。
【0121】
24.無機繊維が、より好ましくはEガラス製の被覆ガラス繊維であり、より好ましくは太さが3μm~30μm、特に8μm~15μmであり、より好ましくは最大繊維長分布が0.03mm~約15mm、特に1mm~10mmの範囲である、実施形態23に記載の物品。
【0122】
25.実施形態13から24のいずれか一項に記載の物品へポリウレタン、好ましくは熱可塑性ポリウレタンを使用する方法。
【0123】
26.デバイス用のフレームまたは保護カバーであるか、デバイスに近接させて使用されるものであって、デバイスは、電磁放射線を受信または発信し、少なくとも1種のジイソシアナートと、数平均分子量が0.500×10g/molを超える少なくとも1種のイソシアナート反応性物質から製造されるポリウレタンからなり、イソシアナート反応性物質は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のポリカルボナートを含む、フレームまたは保護カバー。
【0124】
27.電磁放射線の周波数が10Hzと1013Hzの間、好ましくは10Hzと1011Hzの間、特に好ましくは0.5×10Hzと3.0×10Hzの間である、実施形態26に記載のデバイス用のフレームまたは保護カバー。
【0125】
28.ポリカルボナートが脂肪族ポリカルボナートである、実施形態26および27に記載のデバイス用のフレームまたは保護カバー。
【0126】
29.ポリカルボナートが、ブタンジオール、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールからなる群から選択されるジオールをベースとするものである、実施形態26から28のいずれか一項に記載のデバイス用のフレームまたは保護カバー。
【0127】
30.ジイソシアナートが、4,4’-、2,4’-および2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアナート、1-メチル-2,4-および/または-2,6-シクロヘキサンジイソシアナート、2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアナート(TDI)からなる群から選択される、実施形態26から29のいずれか一項に記載のデバイス用のフレームまたは保護カバー。
【0128】
31.ジイソシアナートが、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)ならびに2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)からなる群から選択される、実施形態26から30のいずれか一項に記載のデバイス用のフレームまたは保護カバー。
【0129】
32.ポリウレタンが熱可塑性ポリウレタンである、実施形態26から31のいずれか一項に記載のデバイス用のフレームまたは保護カバー。
【0130】
33.熱可塑性ポリウレタンの製造が、イソシアナート反応性基を有し、分子量が0.05g/molと0.499g/molの間である脂肪族、芳香脂肪族、芳香族または脂環式化合物を鎖延長剤として更に使用し、鎖延長剤は好ましくは第1級ヒロドキシル基のみを有する、実施形態32に記載のデバイス用のフレームまたは保護カバー。
【0131】
34.熱可塑性ポリウレタンの製造が、有機金属化合物を触媒として使用する、実施形態32および33のいずれかに記載のデバイス用のフレームまたは保護カバー。
【0132】
35.ポリウレタンが、無機繊維状フィラーを含有する、実施形態26から34のいずれか一項に記載のデバイス用のフレームまたは保護カバー。
【0133】
36.無機繊維がより好ましくはEガラス製の被覆ガラス繊維であり、より好ましくは太さが3μm~30μm、特に8μm~15μmであり、より好ましくは最大繊維長分布が0.03mm~約15mm、特に1mm~10mmの範囲である、実施形態35に記載のデバイス用のフレームまたは保護カバー。
【0134】
37.デバイスの構成要素またはデバイス用のカバーであるか、デバイスに近接させて使用される物品の製造のためにポリウレタンを使用する方法であって、デバイスは電磁放射線を受信または発信し、ポリウレタンは、少なくとも1種のジイソシアナートと、数平均分子量が0.500×10g/molを超える少なくとも1種のイソシアナート反応性物質から製造され、イソシアナート反応性物質は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のポリカルボナートを含む、方法。
【0135】
38.電磁放射線の周波数が10Hzと1013Hzの間、好ましくは10Hzと1011Hzの間、特に好ましくは0.5×10Hzと3.0×10Hzの間である、実施形態37に記載の方法。
【0136】
39.ポリカルボナートが脂肪族ポリカルボナートである、実施形態37および38に記載の方法。
【0137】
40.ポリカルボナートが、ブタンジオール、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールからなる群から選択されるジオールをベースとするものである、実施形態37から39のいずれか一項に記載の方法。
【0138】
41.ジイソシアナートが、4,4’-、2,4’-および2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアナート、1-メチル-2,4-および/または-2,6-シクロヘキサンジイソシアナート、2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアナート(TDI)からなる群から選択される、実施形態37から40のいずれか一項に記載の方法。
【0139】
42.ジイソシアナートが、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)ならびに2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)からなる群から選択される、実施形態37から41のいずれか一項に記載の方法。
【0140】
43.ポリウレタンが熱可塑性ポリウレタンである、実施形態37から42のいずれか一項に記載の方法。
【0141】
44.熱可塑性ポリウレタンの製造が、イソシアナート反応性基を有し、分子量が0.05g/molと0.499g/molの間である脂肪族、芳香脂肪族、芳香族または脂環式化合物を鎖延長剤として更に使用し、鎖延長剤は好ましくは第1級ヒロドキシル基のみを有する、実施形態43に記載の方法。
【0142】
45.熱可塑性ポリウレタンの製造が、有機金属化合物を触媒として使用する、実施形態43および44に記載の方法。
【0143】
46.ポリウレタンが、無機繊維状フィラーを含有する、実施形態37から45のいずれか一項に記載の方法。
【0144】
47.無機繊維がより好ましくはEガラス製の被覆ガラス繊維であり、より好ましくは太さが3μm~30μm、特に8μm~15μmであり、より好ましくは最大繊維長分布が0.03mm~約15mm、特に1mm~10mmの範囲である、実施形態46に記載の方法。
【0145】
48.物品が、デバイス用のフレームまたは保護カバーである、実施形態37から47のいずれか一項に記載の方法。
【0146】
以下に続く実施例は、本発明を例示する役割を果たすが、本発明の主題を限定する意図は全くない。
【実施例0147】
1.実施例1-手作業での流延法でのポリマーの製造
ポリオールを最初に80℃で容器に投入し、2kgのバッチサイズで下記のTPU調合物による成分と激しい撹拌によって混合した。反応混合物を110℃超に加熱し、次いで、加熱したテフロン(登録商標)被覆テーブル上に注いだ。得られた流延物を80℃で15時間熱処理し、続いて粉砕および射出成形して、厚さ2mmの射出成形シートを得た。射出成形温度は、それぞれの溶融粘度に応じて180℃~220℃の範囲で変化させた。
【0148】
2.実施例2-比較例に使用した材料
TPU1:分子量(Mn)1000ダルトンのポリテトラヒドロフラン(PTHF)、ブタン-1,4-ジオール、MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度85AのTPU。
【0149】
TPU2:分子量(Mn)1000ダルトンのポリテトラヒドロフラン(PTHF)、ブタン-1,4-ジオール、MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度90AのTPU。
【0150】
TPU3:分子量(Mn)1000ダルトンのポリテトラヒドロフラン(PTHF)、1,2-エチレングリコール、HDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度85AのTPU。
【0151】
TPU4:分子量(Mn)800ダルトンのアジピン酸エステル、ブタン-1,4-ジオール、MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度90AのTPU。
【0152】
TPU5:分子量(Mn)1000ダルトンのアジピン酸エステル、ブタン-1,4-ジオール、MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度85AのTPU。
【0153】
TPU6:分子量(Mn)2400ダルトンのアジピン酸エステル、ブタン-1,4-ジオール、MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度85AのTPU。
【0154】
TPU7:分子量(Mn)2400ダルトンのアジピン酸エステル、ブタン-1,4-ジオール、MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度95AのTPU。
【0155】
TPU8:分子量(Mn)2000ダルトンのアジピン酸エステル、ブタン-1,4-ジオール、HDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度85AのTPU。
【0156】
TPU9:Ultradur B4500、分子量(Mn)2000ダルトンのアジピン酸エステル、ブタン-1,4-ジオール、HDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度85AのTPU。EP01419188B1に記載の方法により製造。
【0157】
TPU10:分子量(Mn)2000ダルトンのCapromer PD1-20(ポリカプロラクトン)、ブタン-1,4-ジオール、MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度85AのTPU。
【0158】
TPU11:分子量(Mn)2000ダルトンのCapromer PD1-20(ポリカプロラクトン)、ブタン-1,4-ジオール、H12MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度85AのTPU。
【0159】
3.実施例3-本発明の実施例
TPU12:Ultradur B4500、Ube製造のポリカルボナートジオール(Eternacoll PH-200D)、ブタン-1,4-ジオール、HDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度95AのTPU。EP01419188B1に記載の方法により製造。
【0160】
TPU13:Ube製造のポリカルボナートジオール(Eternacoll PH-200D)、ブタン-1,4-ジオール、HDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度80AのTPU。
【0161】
TPU14:Bayer製造のポリカルボナートジオール(Desmophen 2200)、ブタン-1,4-ジオール、MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度80AのTPU。
【0162】
TPU15:Ube製造のポリカルボナートジオール(Eternacoll PH-200D)、ブタン-1,4-ジオール、MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度80AのTPU。
【0163】
TPU16:Ube製造のポリカルボナートジオール(Eternacoll PH-200D)、ブタン-1,4-ジオール、MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度90AのTPU。
【0164】
TPU17:Ube製造のポリカルボナートジオール(Eternacoll PH-200D)、ブタン-1,4-ジオール、MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度55DのTPU。
【0165】
TPU18:Ube製造のポリカルボナートジオール(Eternacoll PH-200D)、ブタン-1,4-ジオール、MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度62DのTPU。
【0166】
TPU19:Ube製造のポリカルボナートジオール(Eternacoll PH-200D)、ブタン-1,4-ジオール、H12MDIをベースとするBASF Polyurethanes GmbH、Elastogranstrasse60、49448Lemfoerde製造のショア硬度90AのTPU。
【0167】
4.実施例4
上記材料のペレットを溶融し、厚さ約2mmのフィルムを製造して、誘電損率を判定した。低誘電損率は、入射信号強度の減衰が小さいことを示す。
【0168】
標準的な気候条件(23℃、50%大気湿度)下に14日間保管した後、2個のサンプルをいずれの場合もIEC60250に従い標準的な気候条件(23℃、50%大気湿度)下で測定した。サンプルの厚さは2.0mmであった。
【0169】
測定値の平均値を以下に続く表に示す。
【0170】
【表1】
【0171】
【表2】
【0172】
ポリカルボナートをベースとするポリウレタンの場合、ポリカルボナートジオールを欠くタイプの場合より誘電損率が著しく低いことが明らかである。
【0173】
引用文献
「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版、1993、第5章
「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版、1993、第6章
Polyurethane Handbook、Hanser、Munich、1993、第3.2章および第3.4章および第6.1章
「Kunststoffhandbuch」、第7巻、「Polyurethane」、Carl Hanser Verlag、第3版、1993、第3.1章
Glass Fibers、Frederick T.Wallenberger、James C.WatsonおよびHong Li、PPG Industries、Inc.;ASM Handbook、第21巻:Composites
Plastics Additives Handbook、第5版、H.Zweifel編集、Hanser、Munich、2001、98~136ページ
EP0989146A1
EP1460094A1
PCT/EP2005/010124
EP1529792A1
【手続補正書】
【提出日】2023-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスの構成要素またはデバイス用のカバーであるか、デバイスに近接させて使用される、熱可塑性ポリウレタン製の物品であって、前記デバイスは電磁放射線を受信または発信し、前記熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも1種のジイソシアナートと、数平均分子量が0.500×10g/molを超える少なくとも1種のイソシアナート反応性物質から製造され、前記イソシアナート反応性物質は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のポリカルボナートを含み、
前記電磁放射線の周波数が、10 Hzと10 13 Hzの間である、物品。
【請求項2】
前記ポリカルボナートが脂肪族ポリカルボナートである、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記ポリカルボナートが、ブタンジオール、ペンタンジオールおよびヘキサンジオールからなる群から選択されるジオールをベースとするものである、請求項1または2に記載の物品。
【請求項4】
前記ジイソシアナートが、4,4’-、2,4’-および2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)、1,4-シクロヘキサンジイソシアナート、1-メチル-2,4-および/または-2,6-シクロヘキサンジイソシアナート、2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアナート(TDI)からなる群から選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記ジイソシアナートが、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)ならびに2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)からなる群から選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の物品。
【請求項6】
前記熱可塑性ポリウレタンの製造が、イソシアナート反応性基を有し、分子量が50g/molと499g/molの間である脂肪族、芳香脂肪族、芳香族または脂環式化合物を鎖延長剤として更に使用する、請求項に記載の物品。
【請求項7】
前記熱可塑性ポリウレタンの製造が、有機金属化合物を触媒として使用する、請求項に記載の物品。
【請求項8】
前記デバイス用のフレームまたは保護カバーである、請求項1からのいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記ポリウレタンが、無機繊維状フィラーを含有する、請求項1からのいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
前記無機繊維が、Eガラス製の被覆ガラス繊維である、請求項に記載の物品。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の物品へ熱可塑性ポリウレタンを使用する方法。
【請求項12】
デバイスの構成要素またはデバイス用のカバーであるか、デバイスに近接させて使用される物品の製造のために熱可塑性ポリウレタンを使用する方法であって、前記デバイスは電磁放射線を受信または発信し、前記熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも1種のジイソシアナートと、数平均分子量が0.500×10g/molを超える少なくとも1種のイソシアナート反応性物質から製造され、前記イソシアナート反応性物質は、少なくとも2個のヒドロキシル基を有する少なくとも1種のポリカルボナートを含み、
前記電磁放射線の周波数が、10 Hzと10 13 Hzの間である、方法。
【外国語明細書】