(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093481
(43)【公開日】2023-07-04
(54)【発明の名称】基板処理装置及び載置台
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230627BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230627BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230627BHJP
C23C 16/509 20060101ALI20230627BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20230627BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20230627BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/31 B
H01L21/31 C
C23C16/509
C23C16/458
H05H1/46 A
H05H1/46 M
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052621
(22)【出願日】2023-03-29
(62)【分割の表示】P 2019017387の分割
【原出願日】2019-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 道茂
(72)【発明者】
【氏名】金子 彰太
(57)【要約】
【課題】シール部材のシール性能の低下を抑制する。
【解決手段】基台を有し、基板が載置される載置台であって、前記基台は、第1の温度の熱媒体を流す第1の流路と、前記第1の流路の下部に配置される第1の断熱層と、前記第1の断熱層の下部に配置されるシール部材と、を有する載置台が提供される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器と、
前記処理容器内に配置され、基台を有し、基板が載置される載置台を備える基板処理装置であって、
前記基台は、
第1の温度の熱媒体を流す第1の流路と、
前記第1の流路の下部に配置される第1の断熱層と、
前記第1の断熱層の下部に配置され、第2の温度の熱媒体を流す第2の流路と、
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
前記第1の断熱層は、第1の中空空間を有し、
前記第1の中空空間は、大気圧よりも低い圧力に制御される、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記第1の断熱層は、前記第1の流路の下部及び側部にて前記第1の流路を囲むように形成されている、
請求項1又は2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第2の流路の下部に配置される第2の断熱層を備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第2の断熱層は、第2の中空空間を有し、
前記第2の中空空間は、大気圧よりも低い圧力に制御される、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第2の断熱層は、前記第2の流路の下部及び側部にて前記第2の流路を囲むように形成されている、
請求項4又は5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1の流路、前記第1の断熱層、前記第2の流路及び前記第2の断熱層は、一体形成された前記基台の内部に形成されている、
請求項4~6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第1の流路、前記第1の断熱層、前記第2の流路及び前記第2の断熱層の少なくともいずれか1つは、フィン構造又はラティス構造を有する、
請求項4~7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第2の温度は、前記第1の温度よりも高い、
請求項1~8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基台の底面と前記基台を支持する保持部材の上面との間には、第1のシール部材が配置される、
請求項1~9のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記基台の底面と伝熱ガスのガス供給ラインのジョイント部との間には、第2のシール部材が配置される、
請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
基台を有し、基板が載置される載置台であって、
前記基台は、
第1の温度の熱媒体を流す第1の流路と、
前記第1の流路の下部に配置される第1の断熱層と、
前記第1の断熱層の下部に配置され、第2の温度の熱媒体を流す第2の流路と、
を備える、載置台。
【請求項13】
前記第1の断熱層は、第1の中空空間を有し、
前記第1の中空空間は、大気圧よりも低い圧力に制御される、
請求項12に記載の載置台。
【請求項14】
前記第1の断熱層は、前記第1の流路の下部及び側部にて前記第1の流路を囲むように形成されている、
請求項12又は13に記載の載置台。
【請求項15】
前記第2の流路の下部に配置される第2の断熱層を備える、
請求項12~14のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項16】
前記第2の断熱層は、第2の中空空間を有し、
前記第2の中空空間は、大気圧よりも低い圧力に制御される、
請求項15に記載の載置台。
【請求項17】
前記第2の断熱層は、前記第2の流路の下部及び側部にて前記第2の流路を囲むように形成されている、
請求項15又は16に記載の載置台。
【請求項18】
前記第1の流路、前記第1の断熱層、前記第2の流路及び前記第2の断熱層は、一体形成された前記基台の内部に形成されている、
請求項15~17のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項19】
前記第1の流路、前記第1の断熱層、前記第2の流路及び前記第2の断熱層の少なくともいずれか1つは、フィン構造又はラティス構造を有する、
請求項15~18のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項20】
前記第2の温度は、前記第1の温度よりも高い、
請求項12~19のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項21】
前記基台の底面と前記基台を支持する保持部材の上面との間には、第1のシール部材が配置される、
請求項12~20のいずれか一項に記載の載置台。
【請求項22】
前記基台の底面と伝熱ガスのガス供給ラインのジョイント部との間には、第2のシール部材が配置される、
請求項21に記載の載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置及び載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置は、処理容器内に基板を載置する載置台を有する。載置台の底面であって載置台の下部に配置された部材との間にはOリングが設けられ、処理容器内の真空空間を載置台下の大気空間からシールし、処理容器内の真空状態を維持する。
【0003】
例えば、特許文献1は、処理容器内の載置台に、基板を静電吸着する静電チャックを設け、静電チャックの底面であって静電チャックの下部に配置された基材との間にOリングを設けることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、シール部材のシール性能の低下を抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、処理容器と、前記処理容器内に配置され、基台を有し、基板が載置される載置台を備える基板処理装置であって、前記基台は、第1の温度の熱媒体を流す第1の流路と、前記第1の流路の下部に配置される第1の断熱層と、前記第1の断熱層の下部に配置され、第2の温度の熱媒体を流す第2の流路と、を備える、基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
一の側面によれば、シール部材のシール性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る基板処理装置の一例を示す断面模式図。
【
図2】一実施形態に係る載置台を拡大した断面模式図。
【
図3】一実施形態の変形例に係る載置台を拡大した断面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
[基板処理装置]
図1は、一実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す断面図である。基板処理装置1は、RIE(Reactive Ion Etching)型の基板処理装置である。ただし、基板処理装置1は、プラズマエッチング装置、プラズマCVD装置等に適用され得る。
【0011】
基板処理装置1は、金属製、例えば、アルミニウム又はステンレス鋼製の円筒型の処理容器10を有し、処理容器10の内部は、プラズマエッチングやプラズマCVD等のプラズマ処理が行われる処理室となっている。処理容器10は接地されている。
【0012】
処理容器10の内部には、ウエハWを載置する円板状の載置台100が設けられている。載置台100は、静電チャック25及び基台26を有する。静電チャック25は、基台26の上に配置される。基台26は、例えば、アルミニウム又はチタン合金からなり、絶縁性の筒状保持部材12を介して処理容器10の底から垂直上方に延びる筒状支持部13に支持されている。
【0013】
静電チャック25の中央部は、導電膜からなる吸着電極25cを誘電膜25aの間に挟み込むことによって構成される。吸着電極25cには直流電源29がスイッチ28を介して電気的に接続されている。静電チャック25は、直流電源29から吸着電極25cに印加された電圧により発生した静電吸着力により静電チャック25にウエハWを保持する。
【0014】
静電チャック25は、ウエハWが載置される円板状の中央部と、環状の周縁部とからなり、中央部の高さは周縁部の高さよりも高くなっている。周縁部の上面には、基板の周縁を環状に囲むエッジリング27が載置されている。なお、エッジリング27はフォーカスリングともいう。
【0015】
処理容器10の側壁と筒状支持部13との間には排気路14が形成されている。排気路14の入口又は途中には環状のバッフル板15が設けられている。排気路14の底部には排気口16が設けられている。排気口16には、排気管17を介して排気装置18が接続されている。排気装置18は、真空ポンプを有し、処理容器10内の処理空間を所定の真空度まで減圧する。また、排気管17には可変式バタフライバルブである自動圧力制御弁(automatic pressure control valve)(図示せず)が設けられ、自動圧力制御弁により処理容器10内の圧力制御が行われる。処理容器10の側壁には、ウエハWの搬入出口19を開閉するゲートバルブ20が取り付けられている。
【0016】
基板処理装置1は、第1の高周波電源21及び第2の高周波電源22を有する。第1の高周波電源21は、第1の高周波電力を発生する電源である。第1の高周波電力は、プラズマの生成に適した周波数を有する。第1の高周波電力の周波数は、例えば27MHz~100MHzの範囲内の周波数である。第1の高周波電源21は、整合器21aを介して載置台100に接続されている。整合器21aは、第1の高周波電源21の出力インピーダンスと負荷側(載置台100側)のインピーダンスとを整合させるための回路を有する。
【0017】
第2の高周波電源22は、第2の高周波電力を発生する電源である。第2の高周波電力は、第1の高周波電力の周波数よりも低い周波数を有する。第1の高周波電力と共に第2の高周波電力が用いられる場合には、第2の高周波電力はウエハWにイオンを引き込むためのバイアス用の高周波電力として用いられる。第2の高周波電力の周波数は、例えば400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数である。第2の高周波電源22は、整合器22aを介して載置台100に接続されている。整合器22aは、第2の高周波電源22の出力インピーダンスと負荷側(載置台100側)のインピーダンスを整合させるための回路を有する。
【0018】
なお、第1の高周波電力を用いずに、第2の高周波電力を用いて、即ち、単一の高周波電力のみを用いてプラズマを生成してもよい。この場合には、第2の高周波電力の周波数は、13.56MHzよりも大きな周波数、例えば40MHzであってもよい。基板処理装置1は、第1の高周波電源21及び整合器21aを有しなくてもよい。この場合、第2の高周波電源22は一例のプラズマ生成部を構成する。
【0019】
載置台100に対向する、処理容器10の天井部にはシャワーヘッド40が配設されている。これにより、第1の高周波電源21からの高周波電力が載置台100とシャワーヘッド40との間に印加される。
【0020】
かかる構成により載置台100は下部電極としても機能し、シャワーヘッド40は接地電位の上部電極としても機能する。なお、第1の高周波電源21は、整合器21aを介してシャワーヘッド40に接続されていてもよい。
【0021】
基台26には、第1の流路101及び第2の流路102が上段及び下段に設けられている。第1の流路101には、チラーユニット200から配管202、212、213、203を介して第1の温度の熱媒体が流れ、循環する。第2の流路102には、チラーユニット200から配管201、211、214、204を介して第2の温度の熱媒体が流れ、循環する。第2の流路102を流れる熱媒体の第2の温度は、第1の流路101を流れる熱媒体の第1の温度よりも高い。
【0022】
第1の流路101は、ウエハ載置面に対して円周方向に延在する渦巻状又は同心円状の流路である。第1の流路101は、静電チャック25のウエハ載置面に対して全体的に設けられ、その最外周の流路は、ウエハWの最外周よりも外側に形成されている。これにより、ウエハWの温度の制御性を高め、ウエハWの温度分布の面内均一性を図ることができる。
【0023】
第1の流路101の下部には、第1の断熱層111が配置される。第1の断熱層111の下部には、第2の流路102が配置される。第2の流路102の下部には、第2の断熱層112が配置される。第2の流路102は、ウエハ載置面に対して円周方向に延在する渦巻状又は同心円状の流路である。第2の流路102は、第1の流路101と同じ形状を有してもよいし、異なる形状を有してもよい。第2の流路102は、静電チャック25のウエハ載置面に対して全体的に設けられ、その最外周の流路は、ウエハWの最外周よりも外側に形成されている。これにより、基台26の第1の断熱層111よりも下部の基台26の温度の制御性を高めることができる。
【0024】
伝熱ガス供給部30は、ガス供給ライン31を介してウエハWの裏面の、静電チャック25との間に伝熱ガスを供給する。伝熱ガスとしては、熱伝導性を有するガス、例えば、Heガス等が好適に用いられる。
【0025】
Oリング301は、基台26の底面と筒状保持部材12の上面との間に配置される。Oリング302は、基台26の底面とガス供給ライン31のジョイント部32との間に配置される。
【0026】
天井部のシャワーヘッド40は、下面の電極板45と、電極板45を着脱可能に支持する電極支持体41とを有する。電極板45は、多数のガス通気孔46を有する。電極支持体41の内部にはバッファ室44が設けられ、バッファ室44に繋がるガス導入口42はガス供給配管43と接続され、ガス供給配管43は処理ガス供給部47と接続される。
【0027】
基板処理装置1の各構成要素は、制御部50に接続されている。制御部50は、基板処理装置1の各構成要素を制御する。各構成要素としては、例えば、排気装置18、第1の高周波電源21、第2の高周波電源22、スイッチ28、直流電源29、伝熱ガス供給部30、処理ガス供給部47及びチラーユニット200等が挙げられる。
【0028】
制御部50は、CPU51及びメモリ52(記憶装置)を備え、メモリ52に記憶されたプログラム及び処理レシピを読み出して実行することで、基板処理装置1において所望の基板処理を制御する。また、制御部50は、チラーユニット200から供給される熱媒体の温度制御、排気装置18の制御等を行う。
【0029】
処理容器10の周囲には、環状又は同心円状に延びる磁石48が配置され、基板処理装置1の処理容器10内では、磁石48によって一方向に向かう水平磁界が形成される。また、載置台100とシャワーヘッド40との間に印加された高周波電力によって鉛直方向のRF電界が形成される。これにより、処理容器10内において処理ガスを介したマグネトロン放電が行われ、載置台100の表面近傍において処理ガスから高密度のプラズマが生成される。
【0030】
基板処理装置1では、基板処理の際、先ずゲートバルブ20を開状態にして加工対象のウエハWを処理容器10内に搬入し、静電チャック25の上に載置する。チラーユニット200から供給される第1の温度及び第2の温度の熱媒体を第1の流路101及び第2の流路102にそれぞれ供給する。そして、処理ガス供給部47より処理ガスを所定の流量および流量比で処理容器10内に導入し、排気装置18等により処理容器10内の圧力を所定値にする。さらに、第1の高周波電源21及び第2の高周波電源22により高周波電力を載置台100に供給し、直流電源29より電圧を吸着電極25cに印加し、ウエハWを静電チャック25上に吸着する。また、伝熱ガスをウエハWの裏面に供給する。そして、シャワーヘッド40により吐出された処理ガスがプラズマ化し、プラズマ中のラジカルやイオンによってウエハWの表面に所定のプラズマ処理が行われる。
【0031】
[載置台]
次に、一実施形態に係る載置台100の構成の詳細について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、
図1の載置台100の主に基台26を拡大して示した断面模式図である。本図では、載置台100の構成のうち主に基台26の内部及び基台26の底面に配置されたOリング301、302を示し、静電チャック25、エッジリング27及びウエハWは省略している。なお、載置台100は、静電チャック25を有しなくてもよい。静電チャック25を有しない場合、基台26の上部がウエハWの載置面となる。
【0032】
基台26は、第1の温度の熱媒体を流す第1の流路101と、第1の流路101の下部に配置される第1の断熱層111とを有する。さらに、基台26は、第1の断熱層111の下部に配置され、第2の温度の熱媒体を流す第2の流路102と、第2の流路102の下部に配置される第2の断熱層112とを有する。基台26の底面であって第2の断熱層112の下部には、基台26の底面に接触する部材(筒状保持部材12、ガス供給ライン31のジョイント部32)との間にOリング301、302が配置される。
【0033】
第1の流路101は、第1の温度の熱媒体を循環させ、ウエハを冷却する。第1の流路101に流す熱媒体はフロリナート等の液体、液体窒素又は所定の気体であり得る。第1の温度は、-100°以下の温度(以下、「極低温」ともいう。)に制御される。これにより、載置台100のウエハ載置面を局所的に極低温領域の温度で冷却する。
【0034】
第1の流路101には、熱交換率を良くするために、熱媒体と接触する表面積が大きくなるフィン構造を有することが好ましい。
図2の例では、第1の流路101に数本の柱を有するフィン構造101aが設けられている。フィン構造101aの複数本の柱は、第1の流路101の上から下向きに、柱の高さを段違いにして形成されている。これにより、熱交換率を良くして、第1の流路101の上部に載置されたウエハWを極低温に冷却することができる。
【0035】
第1の流路101に設ける構造は、フィン構造に替えてラティス構造、凹部及び/又は凸部を有する凹凸構造を有してもよい。ただし、第1の流路101の機械強度が確保できれば、第1の流路101は、フィン構造又はラティス構造を有しなくてもよい。
【0036】
第1の断熱層111は、第1の流路101の下部及び側部にて第1の流路101を囲むように形成された第1の中空空間111a、111bを有する。
図1に示すように、第1の中空空間111a、111bは、金属配管130により排気装置18に接続され、排気装置18によって真空引きされ、真空状態に制御される。これにより、真空断熱効果によって第1の流路101を流れる熱媒体の熱を断熱し、第1の断熱層111の下部に伝えないようにすることができる。
【0037】
ただし、これに限られず、第1の中空空間111a、111bは、大気圧よりも低い圧力に制御してもよい。これによっても断熱効果を得ることができる。所定の断熱効果を得られる場合には、第1の断熱層111は、第1の中空空間111aを第1の流路101の下部に有し、第1の中空空間111bを側部に設けなくてもよい。
【0038】
かかる構成により、第1の断熱層111によって、基台26内の第1の流路101が設けられた領域を第1の断熱層111の下部の領域から隔離し、断熱する。これにより、ウエハWを極低温に冷却でき、かつ、第1の断熱層111による真空断熱効果により第1の断熱層111の下部領域が極低温に冷却されることを抑制できる。
【0039】
なお、
図2には図示していないが、第1の断熱層111の第1の中空空間111a、111bは、機械強度を高めるためにフィン構造又はラティス構造を有してもよい。ただし、第1の中空空間111a、111bは可能な限り広い空間を確保することで、熱伝導を小さくして真空断熱効果を高めることが重要である。このため、第1の断熱層111のフィン構造又はラティス構造は、機械強度と内部空間の確保と両方の点からその構造を有しなくても機械強度が確保される場合には設けなくてもよい。
【0040】
第1の断熱層111を挟んだ第1の流路101の反対側には第2の流路102が設けられている。第2の流路102は、例えば0℃又はそれ以上の温度である第2の温度の熱媒体を循環させる。これにより、第1の流路101を流れる例えば-100℃の熱媒体による冷却に対して、第1の断熱層111を挟んだ第1の流路101の反対側の領域が極低温に冷却されることを抑制できる。
【0041】
第2の流路102に流す熱媒体はフロリナート等の液体、又は所定の気体であり得る。第2の流路102に流す熱媒体の種類は、第1の流路101に流す熱媒体と同一であってもよいし、異なってもよい。
【0042】
第2の流路102には、熱交換率を良くするために、熱媒体と接触する表面積が大きくなるフィン構造を有してもよい。例えば、第1の流路101と同様に、第2の流路102に数本の柱を有するフィン構造が設けられてもよい。これにより、熱交換率を良くして、常温に近い第2の温度の熱媒体を流す第2の流路102によって基台26の熱を吸熱し、第2の流路102が配置された基台26の領域の温度を上げることができる。これにより、第1の流路101に極低温の熱媒体を循環させたことによる基台26全体の温度低下を効率的に抑制することができる。
【0043】
第2の流路102に設ける構造は、フィン構造に替えてラティス構造、凹部及び/又は凸部を有する凹凸構造を有してもよい。ただし、第2の流路102の機械強度が確保できれば、第2の流路102は、フィン構造又はラティス構造を有しなくてもよい。
【0044】
第2の断熱層112は、第2の流路102の下部及び側部にて第2の流路102を囲むように形成された第2の中空空間112a、112bを有する。
図1に示すように、第2の中空空間112a、112bは、金属配管131により排気装置18に接続され、排気装置18によって真空引きされ、真空状態に制御される。これにより、真空断熱効果によって第1の流路101を流れる熱媒体の熱を更に断熱し、第2の断熱層112の下部に伝えないようにすることができる。
【0045】
ただし、これに限られず、第2の中空空間112a、112bは、大気圧よりも低い圧力に制御してもよい。これによっても断熱効果を得ることができる。所定の断熱効果を得られる場合には、第2の断熱層112は、第2の中空空間112aを第2の流路102の下部に有し、第2の中空空間112bを側部に設けなくてもよい。
【0046】
かかる構成により、第2の流路102に常温近くの温度の熱媒体を供給して基台26の熱を吸熱し、第2の断熱層112によって基台26内の第1の流路101が設けられた領域を第2の断熱層112の下部の領域から更に隔離し、断熱する。これにより、ウエハWが極低温に冷却される環境においても、第2の断熱層112の下部領域の温度をガラス転移点よりも高くし、Oリング301,302のシール性能の劣化を防止できる。
【0047】
具体的に説明すると、Oリング301、302は、フッ素ゴム、シリコーンゴム等から形成される。Oリング301、302を極低温で使用するとシール性能が悪くなる。一般的に、物質は冷却されることで流動性が減少し、ある温度(凝固点)を境に液体から固体へと変化する。固体として安定している状態は、ゴム弾性を持つゴム状態と、更に低温で完全に凍結しているガラス状態に分けられる。ガラス転移点の温度が-60℃程度のシリコーンゴムでOリングを形成した場合においても、-60℃以下の温度でOリングを使用すると、Oリングがガラス状態になり、シール性能が低下する。その結果、真空空間Uを大気空間Aから機密に保持できず、真空リークが生じる。よって、ガラス転移点の温度以下においてOリングのシール機能を発揮できる状態でOリングを使用することは難しい。
【0048】
近年、デバイス構造の微細化及び高集積化が進むにつれて、コンタクトホール等は高アスペクト化が進んでいる。高アスペクトのエッチング等でウエハWの温度を極低温に下げてエッチングを行うことも検討され、この場合、Oリングのシール性能の劣化が課題となる。
【0049】
これに対して、かかる構成の載置台100では、第1の流路101に例えば-100℃以下の極低温である第1の温度の熱媒体を循環させることでウエハWの冷却効率を上げることができる。一方、第1の温度がOリング301、302のガラス転移温度よりも低くても、載置台100は、第1の流路101の下部に設けられた第1の断熱層111及び第2の流路102の下部に設けられた第2の断熱層112により真空断熱を行うことができる。加えて、載置台100は、第1の断熱層111の下部に設けられた第2の流路102に例えば常温等、ガラス転移点よりも高い第2の温度の熱媒体を流すことによって基台26の熱を吸熱することができる。
【0050】
これにより、Oリング301、302のシール面の温度低下を抑制し、シール面の温度をガラス転移点よりも高い温度にすることができる。これにより、極低温でウエハWを冷却する構造においても、Oリング301、302のシール性能を劣化させずに、Oリング301、302を使用して処理容器10内の真空空間Uを基台26の下の大気空間Aからシールすることができる。この結果、真空空間Uの気密を保持することができる。
【0051】
さらに、真空空間Uと大気空間Aとの差圧による基台26の底面側からの大気圧による荷重を、第1の断熱層111の及び第2の断熱層112のそれぞれの中空空間が吸収することで、ウエハ載置面のたわみ変形を抑制できる。
【0052】
Oリング301、302以外に、基台26の底面とプッシャ―ピンを通す管とのジョイント部にOリングが配置されてもよいし、基台26の底面とその下部に配置された他部材との間にOリングが配置されてもよい。この場合にも、Oリングのシール性能を低下させず、Oリングにより真空空間Uの気密を保持することができる。
【0053】
なお、
図2には図示していないが、第2の断熱層112の第2の中空空間112a、112bは、機械強度を高めるためにフィン構造又はラティス構造を有してもよい。ただし、第2の中空空間112a、112bは可能な限り広い空間を確保することで、熱伝導を小さくして真空断熱効果を高めることが重要である。このため、第2の断熱層112のフィン構造又はラティス構造は、機械強度と内部空間の確保と両方の点からその構造を有しなくても機械強度が確保される場合には設けなくてもよい。
【0054】
また、第2の中空空間112a、112bは、第1の中空空間111a、111bと同一形状でもよいし、異なる形状でもよい。また、第2の中空空間112a、112bは、第1の中空空間111a、111bと繋がり、同一空間となっていてもよいし、第1の中空空間111a、111bとは別の空間であってもよい。
【0055】
ただし、断熱効果を高めるために、第1の中空空間111a、111b及び第2の中空空間112a、112bのいずれも減圧制御するため、真空空間に制御し易い構造にすることが好ましい。
【0056】
[変形例]
基台26の機械強度を確保できる形状や寸法に第1の流路101、第1の断熱層111、第2の流路102及び第2の断熱層112を形成した場合、
図3の変形例に係る載置台100のように、各構造のいずれにもフィン構造及びラティス構造を設けなくてもよい。
【0057】
また、断熱層の層数は2つに限られず、1又は複数であってもよいし、なくてもよい。また、第1の流路101の下部に配置される流路は1つに限られず、複数であってもよいし、なくてもよい。
【0058】
また、第1の流路101の下部に配置される第2の流路102等の流路は、低温ラインと常温ライン等の複数の流路に分けてもよいし、1つのラインの流路であってもよい。
【0059】
第1の流路101に極低温の熱媒体を循環させても、第1の断熱層111によりOリング301、302のシール面をガラス転移点よりも高い温度に制御できる場合、第2の流路102及び第2の断熱層112を設けなくてもよい。この場合、Oリング301、302は、第1の断熱層111の下部に、第2の流路102及び第2の断熱層112を介さずに配置される。
【0060】
[製造方法]
次に、一実施形態及び変形例に係る載置台100の製造方法について説明する。基台26は、その内部に第1の流路101、第1の断熱層111、第2の流路102及び第2の断熱層112が形成されており、中空構造となっている。
【0061】
更に、一実施形態に係る載置台100の基台26では、第1の流路101内にフィン構造101aが形成される。かかる構成の基台26は、3Dプリンタ技術、アディティブマニュファクチャリング(Additive Manufacturing)技術で製造することが好ましい。具体的には、金属材料を用いた積層造形技術を用いることができる。例えば、粉末金属にレーザや電子ビームを照射して焼結させることにより造形する造形技術、粉末金属やワイヤを供給しつつ、レーザや電子ビームで材料を溶融・堆積させることにより造形する造形技術、等を用いることができる。なお、これらの造形方法は一例でありこれに限られるものではない。また、基台26を含む載置台100を3Dプリンタ技術、アディティブマニュファクチャリング技術で製造してもよい。
【0062】
今回開示された一実施形態及びその変形例に係る載置台及び基板処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0063】
本開示の載置台は、Capacitively Coupled Plasma(CCP),Inductively Coupled Plasma(ICP),Radial Line Slot Antenna, Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR),Helicon Wave Plasma(HWP)、ALD(Atomic Layer Deposition )装置のどのタイプの基板処理装置にも適用可能である。また、基板処理装置の一例としてプラズマ処理装置を挙げて説明したが、基板処理装置は、基板に所定の処理(例えば、成膜処理、エッチング処理等)を施す装置であればよく、プラズマ処理装置に限定されるものではない。例えば、CVD装置であってもよい。
【0064】
以上に開示された実施形態は、例えば、以下の態様を含む。
(付記1)
基台を有し、基板が載置される載置台であって、
前記基台は、
第1の温度の熱媒体を流す第1の流路と、
前記第1の流路の下部に配置される第1の断熱層と、
前記第1の断熱層の下部に配置されるシール部材と、
を有する、載置台。
(付記2)
前記第1の断熱層は、第1の中空空間を有し、
前記第1の中空空間は、大気圧よりも低い圧力に制御される、
付記1に記載の載置台。
(付記3)
前記第1の中空空間は、フィン構造又はラティス構造を有する、
付記2に記載の載置台。
(付記4)
前記第1の流路は、フィン構造又はラティス構造を有する、
付記1~3のいずれか一項に記載の載置台。
(付記5)
前記第1の断熱層の下部に配置される第2の温度の熱媒体を流す第2の流路と、
前記第2の流路の下部に配置される第2の断熱層と、を更に有し、
前記シール部材は、前記第2の断熱層の下部に配置される、
付記1~4のいずれか一項に記載の載置台。
(付記6)
前記第2の断熱層は、第2の中空空間を有し、
前記第2の中空空間は、大気圧よりも低い圧力に制御される、
付記5に記載の載置台。
(付記7)
前記第2の中空空間は、フィン構造又はラティス構造を有する、
付記6に記載の載置台。
(付記8)
前記第2の流路は、フィン構造又はラティス構造を有する、
付記5~7のいずれか一項に記載の載置台。
(付記9)
前記第2の温度は、前記第1の温度よりも高い、
付記5~8のいずれか一項に記載の載置台。
(付記10)
前記第2の温度は、前記シール部材のガラス転移温度よりも高い、
付記5~9のいずれか一項に記載の載置台。
(付記11)
前記第1の温度は、前記シール部材のガラス転移温度よりも低い、
付記1~9のいずれか一項に記載の載置台。
(付記12)
前記基台は、3Dプリンタ技術またはアディティブマニュファクチャリング技術で成形される、付記1~11のいずれか一項に記載の載置台。
(付記13)
処理容器と、
前記処理容器内に配置され、基台を有し、基板が載置される載置台を備える基板処理装置であって、
前記基台は、
第1の温度の熱媒体を流す第1の流路と、
前記第1の流路の下部に配置される第1の断熱層と、
前記第1の断熱層の下部に配置されるシール部材と、
を有する、基板処理装置。
【符号の説明】
【0065】
1:基板処理装置
10:処理容器
15:バッフル板
18:排気装置
21:第1の高周波電源
22:第2の高周波電源
25:静電チャック
26:基台
27:エッジリング
31:ガス供給ライン
32:ジョイント部
40:シャワーヘッド
47:処理ガス供給部
50:制御部
100:載置台
101:第1の流路
101a:フィン構造
111:第1の断熱層
102:第2の流路
112:第2の断熱層
200:チラーユニット
301、302:Oリング
U:真空空間
A:大気空間