(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093917
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】液体吐出ユニット、液体吐出装置および線状媒体処理システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230628BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/01 125
B41J2/01 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209057
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】山下 宏之
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA24
2C056FA10
2C056FB01
2C056HA46
2C056JA21
2C056JA25
2C056KC30
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でキャップ部材内の液量を管理することが可能な液体吐出ユニットを提供する。
【解決手段】保湿液を溜める液溜部を有するキャップ部材と、前記液溜部に供給する保湿液を収容する保湿液収容部と、廃液を回収する廃液回収部と、前記キャップ部材と前記廃液回収部とを接続する第1流路と、前記保湿液収容部と前記第1流路とを接続する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との接続部に設けた流路切替装置と、前記第2流路に設け、前記保湿液収容部からの保湿液の供給、および前記保湿液収容部への保湿液の回収を行う送液装置と、一端部を前記第2流路に接続し、他端部に開口を有した第3流路と、を備え、前記開口を、前記キャップ部材の鉛直方向上端よりも低い位置に設ける。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保湿液を溜める液溜部を有するキャップ部材と、
前記液溜部に供給する保湿液を収容する保湿液収容部と、
廃液を回収する廃液回収部と、
前記キャップ部材と前記廃液回収部とを接続する第1流路と、
前記保湿液収容部と前記第1流路とを接続する第2流路と、
前記第1流路と前記第2流路との接続部に設けた流路切替装置と、
前記第2流路に設け、前記保湿液収容部からの保湿液の供給、および前記保湿液収容部への保湿液の回収を行う送液装置と、
一端部を前記第2流路に接続し、他端部に開口を有した第3流路と、
を備え、
前記開口を、前記キャップ部材の鉛直方向上端よりも低い位置に設けることを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項2】
前記キャップ部材は液体吐出部に対して接離可能であり、前記キャップ部材と前記液体吐出部とが離間している場合、前記液溜部は開放状態となることを特徴とする請求項1記載の液体吐出ユニット。
【請求項3】
請求項1または2記載の液体吐出ユニットと、
前記液体吐出ユニットに記録媒体を供給する記録媒体供給ユニットと、
前記液体吐出ユニットを通過した前記記録媒体を加熱する乾燥ユニットと、
前記乾燥ユニットを通過した前記記録媒体の状態を整える後処理ユニットと、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
線状の記録媒体に対して処理を施す線状媒体処理システムであって、請求項1または2記載の液体吐出ユニットを備えることを特徴とする線状媒体処理システム。
【請求項5】
線状の記録媒体に対して処理を施す線状媒体処理システムであって、請求項3記載の液体吐出装置を備えることを特徴とする線状媒体処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ユニット、液体吐出装置および線状媒体処理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ヘッドユニット(1)のインク吐出性能を維持・回復するための維持ユニット(80)に、各ヘッド(11)を塞ぐキャップ部材(81)と、各キャップ部材の経路を開閉するキャップ開閉弁(86)と、廃液タンク(84)と、洗浄液タンク(85)と、経路を切り換える切換え弁(83a)と、ポンプ(82)等を備え、印字開始時には、ノズル吐出検出手段によって特定した不吐出ヘッドに対してノズルインクの吸引とキャップ部材への洗浄液供給を行うようにした液体吐出方式の画像形成装置を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来技術は、キャップの内部に液面センサを設け、このセンサでキャップ内に供給した洗浄液の量を検出し、センサの検出結果に基づいてポンプの駆動を制御し、キャップ内の液量を管理する構成となっていた。このためキャップは液面センサを備えるなど専用の構成を必要とし、装置の大型化、複雑化、コスト増などの要因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、保湿液を溜める液溜部を有するキャップ部材と、前記液溜部に供給する保湿液を収容する保湿液収容部と、廃液を回収する廃液回収部と、前記キャップ部材と前記廃液回収部とを接続する第1流路と、前記保湿液収容部と前記第1流路とを接続する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との接続部に設けた流路切替装置と、前記第2流路に設け、前記保湿液収容部からの保湿液の供給、および前記保湿液収容部への保湿液の回収を行う送液装置と、一端部を前記第2流路に接続し、他端部に開口を有した第3流路と、を備え、前記開口を、前記キャップ部材の鉛直方向上端よりも低い位置に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、簡易な構成でキャップ部材内の液量を管理することが可能な液体吐出ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本発明の実施形態に係る線状媒体処理システムの全体概略図。
【
図2】本発明の実施形態に係る液体吐出ユニットの概略構成図。
【
図3】本発明の実施形態に係るヘッドのノズル面の説明図。
【
図4】ヘッド移動方向におけるヘッド位置と維持ユニットとの関係を示した説明図。
【
図5】本発明の実施形態に係る保湿液量管理機構の説明図。
【
図6】本発明の実施形態に係る保湿液量管理機構の変形例。
【
図7】本発明の実施形態に係る保湿液量管理機構の変形例。
【
図8】本発明の実施形態に係る液体吐出ユニットの適用例の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
<線状媒体処理システムの概略>
はじめに
図1を用いて線状媒体処理システムの概略を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る線状媒体処理システムの全体概略図である。ここに例示した線状媒体処理システムは、糸を染色し、染色後の糸を用いて刺繍を行う刺繍システムである。
【0009】
図1において刺繍システム1000は、液体吐出装置100と刺繍ユニット106とからなり、さらに液体吐出装置100は、供給リール102、液体吐出ユニット103、乾燥ユニット104および後処理ユニット105を備える。
【0010】
供給リール102は、刺繍糸101(以下、糸と称する)を保持しており、液体吐出ユニット103に糸101を供給する。供給リール102と液体吐出ユニット103との間には、ローラ108、109を備える。ローラ109は、このローラ109と同軸上に設けたエンコーダホイール405bと、エンコーダホイール405bに設けたエンコーダスリットを読み取るエンコーダセンサ405aとを含むロータリエンコーダ405を備える。このロータリエンコーダ405により糸101の搬送状態を検知する。
【0011】
液体吐出ユニット103は、液体吐出ヘッド1(以下ヘッドと称する)および維持ユニット2を備え、ヘッド1は、ヘッド1の下方を通過する糸101に液体を付与する。本実施形態において、ヘッド1はインクジェット記録方式を採用したヘッドであり、糸101に付与する液体は主に着色インクである。維持ユニット2は、空吐出受け部、ワイピング部およびキャッピング部などを備え、これら各部は、ヘッド1が各部に位置した場合にヘッド1に対して各処理を実施し、ヘッド1の液体吐出性能を維持する。
【0012】
乾燥ユニット104は、ヒータ等の加熱部材を備え、インク付与後の糸101を加熱して乾かす。これにより、糸101は所望の色に染色した糸となる。後処理ユニット105は、糸101に定着せずに残留した色材を落として糸101を洗浄する洗浄装置、糸101の表面にワックスなどの潤滑剤を付与する潤滑剤付与装置等を備え、糸101の状態を整える。刺繍ユニット106は、刺繍ヘッドを備え、染色した糸101を布に縫い込み、布上に柄や模様などのパターンを刺繍する。
【0013】
上記の構成において、ロータリエンコーダ405は刺繍ユニット106が取り込む糸101の搬送速度を検知し、この糸101の搬送速度に応じて液体吐出ユニット103は、ヘッド1からのインク吐出を制御する。即ち、刺繍ユニット106が取り込む糸101の搬送速度が遅い場合は、糸101にインクを吐出する周波数を低くする。また、刺繍ユニット106が取り込む糸101の搬送速度が速い場合は、糸101にインクを吐出する周波数を高くする。これにより、液体吐出ユニット103は、刺繍ユニット106が取り込む糸101の搬送速度に同期して糸101の染色を行うことが可能になる。糸101の染色に際しては、例えば黒、シアン、マゼンタ、イエローの各色を組み合せて幅広い色表現が可能である。
【0014】
ここで、糸101は「線状の記録媒体」もしくは「線状媒体」の一例である。「糸」とは、ガラス繊維糸、ウール糸、綿糸、合成糸、金属糸、ウール、綿、ポリマー、または金属の混合糸、ヤーン、フィラメント、あるいは液体を付与可能な線状物体であり、組紐、平紐なども含む。また、線状物体の他に、液滴によって染色可能な被吐出媒体として、上記の線状物体に加えて、ロープ、ケーブル、コード等の液体を付与可能な帯状部材(連続基材)も含む。いずれの被吐出媒体も、幅が狭く、搬送方向に連続している、線状または帯状の媒体である。
【0015】
なお、線状媒体処理システムは、刺繍システム1000に限るものではない。例えば、刺繍ユニット106に代えて織り機やミシン等、他の加工装置を後処理ユニット105の後段に設けてもよい。また、刺繍ユニットを別の場所に設置している場合(インライン型でない場合)は、刺繍ユニット106に代えて染色後の糸を巻き取る巻取ユニットを後処理ユニット105の後段に設けてもよい。この場合は一旦巻き取った糸を加工装置の設置場所まで運び、加工装置に糸を装填して所望の加工を行う。
【0016】
<液体吐出ユニットの構成>
図2は、本発明の実施形態に係る液体吐出ユニットの概略構成図であり、
図1に示した液体吐出ユニット103の説明を補足するものである。
【0017】
図2において液体吐出ユニット103は、糸搬送方向に沿って縦列に複数配置したヘッド1a、1b、1c、1dを備える。ヘッド1a~1dは異なる色のインクを吐出するヘッドとしており、例えばヘッド1aは黒(K)、ヘッド1bはシアン(C)、ヘッド1cはマゼンタ(M)、ヘッド1dはイエロー(Y)のインク滴を吐出するヘッドである。なお、色の順番は一例であり、異なる順番に配置してもよい。また、ヘッドの数は4つに限らず、搭載する色の数に応じてヘッドの数は増減してよい。
【0018】
また、液体吐出ユニット103は、糸101の搬送経路を挟んでヘッド1a~1dの下方に、複数の維持ユニット2a、2b、2c、2dを備える。維持ユニット2a~2dは、それぞれが空吐出受け部、ワイピング部およびキャッピング部などを備え、各部に位置したヘッド1a~1dに対して各処理を実施する。
【0019】
<ヘッドのノズル面構成>
次に
図3を用いてヘッドのノズル面の構成を説明する。
図3は、本発明の実施形態に係るヘッドのノズル面の説明図であり、液体吐出ユニット103のヘッド1を下方から見た図である。
【0020】
図3において、液体吐出ユニット103に設けたヘッド1a~1dは、糸101と対向するノズル面12を備える。ヘッド1a~1dの各ノズル面12は、2つのノズル列10a、10bを備え、各ノズル列10a、10bは、ノズル11を糸搬送方向に複数個並べたノズル群からなる。ここで、ヘッド1a~1dは「液体吐出部」の一例である。
【0021】
ノズル列10aとノズル列10bとは、糸搬送方向と直交する方向(ヘッド移動方向)において所定間隔離して、それぞれ糸搬送方向と平行に配置している。糸101の染色を行う場合は、糸101の真上にヘッド1a~1dのノズル列10aまたはノズル列10bが位置するようにヘッド1a~1dが移動する。これにより、ヘッド1a~1dは糸搬送方向に移動する糸101に対してインクを吐出し、糸101にインクを付与する(
図3はノズル列10aを用いて糸101を染色する場合を示している)。
【0022】
なお、ノズル列10aとノズル列10bは、使用時間、インク吐出量等から求めた所定のタイミングに達した場合に、ヘッド1a~1dをヘッド移動方向に動かし、糸101に対してノズル列10aとノズル列10bとを入れ替える。
【0023】
<維持ユニットの概略>
次に
図4を用いて維持ユニットの概略を説明する。
図4は、ヘッド移動方向におけるヘッド位置と維持ユニットとの関係を示した説明図である。
【0024】
液体吐出ユニット103は、ヘッド1の下方に糸101の搬送経路を挟んで維持ユニット2を備える。維持ユニット2は、その上部にキャップ21を備えており、キャップ21は、維持ユニット2に対して進退移動(
図4(a)矢印A方向の移動)が可能である。これにより、キャップ21は、ヘッド1のノズル面に対して接離可能となる。
【0025】
維持ユニット2の上方に位置するヘッド1は、維持ユニット2に対してヘッド移動方向に移動が可能である。
図4(a)は、糸101の真上にヘッド1のノズル列10aが位置した状態を示しており、ノズル列10aは、糸101に向けてインクを吐出し、糸101の染色を行う。
図4(b)は、糸101の真上にヘッド1のノズル列10bが位置した状態を示しており、ノズル列10bは、糸101に向けてインクを吐出し、糸101の染色を行う。
【0026】
図4(c)は、キャップ21と対向する位置にヘッド1が位置した状態を示している。ヘッド1がキャップ21と対向する位置に移動した場合、キャップ21はヘッド1に向かって移動(本実施形態では上昇)してヘッド1のノズル面を覆い(キャッピングし)、ノズル面の乾燥を防ぐ。また、キャップ21は、ノズル面をキャッピングした状態でノズルに対して吸引を行い、ノズルのインク詰まりによる吐出不良を防止する。ここで、キャップ21は「キャップ部材」の一例である。
【0027】
なお、維持ユニット2は、キャップ21の他に、図示しないワイピングユニットおよび空吐出受け部などを備えている。ワイピングユニットは、ヘッド1のノズル面に対してヘッド移動方向に相対移動しながらノズル面を拭き取るワイパ部材を備える。また、空吐出受け部は、糸101へのインク付与に供していないノズルに対して空吐出(空打ち)を実施した際に、ノズルから吐出したインクを受けるための回収容器を備える。
【0028】
上記の構成において、キャップ21がヘッド1のノズル面から離間した状態となった場合、キャップ21は開放状態となる。この開放状態が続くとキャップ21の内部が乾燥し、キャップ21に接続した流路にインク詰まりなどが生じ、上述のノズル吸引等の動作に支障をまねくおそれがある。そのため本発明においては、キャップ21が開放状態の場合に、キャップ21内に保湿液を供給するとともに、キャップ21内の保湿液量を簡易な構成で管理できるようにしている。以下にキャップ21内の保湿液量の管理機構の構成を説明する。
【0029】
<保湿液の液量の管理>
図5は、本発明の実施形態に係る保湿液量管理機構の説明図である。
【0030】
図5において、キャップ21は、断面形状がおおよそU字形状をした液溜部21aを有し、液溜部21aは保湿液Lmを溜めることが可能である。また、キャップ21は、その開放側をヘッド1のノズル面12と対向するように設置しており、その底部には第1流路211の一端を接続している。第1流路211の他端は廃液タンク215に接続しており、第1流路211の途中には開閉可能なポンプ機構216、および切替弁217を備える。
【0031】
切替弁217には、第1流路211とは別の第2流路212の一端が接続しており、第2流路212の他端は、保湿液Lmを収容した保湿液タンク214に接続している。また、第2流路212の途中には、保湿液ポンプ218を備える。ここで、保湿液タンク214は「保湿液収容部」の一例であり、廃液タンク215は「廃液回収部」の一例である。また、切替弁217は「流路切替装置」の一例であり、保湿液ポンプ218は「送液装置」の一例である。
【0032】
第2流路212の途中(本実施形態では切替弁217と保湿液ポンプ218との間)には、第2流路212から分岐した第3流路213を備える。第3流路213は、その一端を第2流路212に接続し、他端は開口213aとなっている。
【0033】
上記構成において、糸への染色を開始する場合は、キャップ21がヘッド1から離間し、ヘッド1は上述のように糸上へ移動する。ヘッド1から離間したキャップ21に対しては、ポンプ機構216が開放状態となり、第1流路211においてキャップ21から切替弁217までが連通した状態となる。また、切替弁217も作動し、第2流路212が第1流路211と連通した状態を形成する。
【0034】
この状態で保湿液ポンプ218を作動(例えば正転駆動)し、保湿液タンク214内の保湿液Lmを、第2流路212を経由して第1流路211に供給し、保湿液Lmはキャップ21に達する。同時に、保湿液タンク214からの保湿液Lmは、液面の管理に用いる第3流路213にも流れ込み、第3流路213の開口213aから保湿液Lmが溢れ出ることで保湿液Lmの液面の高さを管理する。
【0035】
つまり、第1流路211と第3流路213に供給した保湿液Lmの水頭は同じ位置になるので、例えば液溜部21aにおいて液面が超えてはいけない位置をH1とした場合、開口213aは位置H1以下の位置に設ける。なお、本実施形態では、開口213aをキャップ21の鉛直方向上端よりも低い位置H2に設定している。これにより、キャップ21内と第3流路213内の保湿液Lmの水頭が同じ高さで上がっていき、水頭が位置H2を超えると開口213aから保湿液Lmが溢れ出る。一方、液溜部21a内の保湿液Lmは位置H1の高さを超えない範囲で液面を管理することができる。なお、開口213aから溢れた保湿液Lmは、保湿液タンク214に戻り、再び使用する。上記のように構成することにより、キャップ21に液面を検知する部材または機構を追加する必要なく、液溜部21a内の液面高さをキャップ21から離れたところで把握することが可能になる。
【0036】
糸への染色が終了した場合は、保湿液ポンプ218が逆転駆動し、液溜部21aに溜めた保湿液Lm、および各流路211、212、213中の保湿液Lmを保湿液タンク214に回収する。保湿液Lmの回収後は切替弁217を作動し、第1流路211と廃液タンク215を再度接続する。
【0037】
上述のように本実施形態は、保湿液Lmを溜める液溜部21aを有するキャップ21と、液溜部21aに供給する保湿液Lmを収容する保湿液タンク214と、廃液を回収する廃液タンク215と、キャップ21と廃液タンク215とを接続する第1流路211と、保湿液タンク214と第1流路211とを接続する第2流路212と、第1流路211と第2流路212との接続部に設けた切替弁217と、第2流路212に設け、保湿液タンク214からの保湿液Lmの供給、および保湿液タンク214への保湿液Lmの回収を行う保湿液ポンプ218と、一端部を第2流路212に接続し、他端部に開口213aを有した第3流路213と、を備え、開口213aを、キャップ21の鉛直方向上端よりも低い位置H2に設けている。これにより、キャップ21に液面を検知する部材または機構を追加する必要がなく、簡易な構成でキャップ21内の液量を管理することが可能になる。
【0038】
また、上述のように、キャップ21はヘッド1に対して接離可能であり、キャップ21とヘッド1とが離間している場合、キャップ21の液溜部21aは開放状態となる。このように開放状態となってしまうキャップ21に対して保湿液Lmを供給するので、キャップ21内の乾燥を防ぎ、キャップ21に接続した流路でのインク詰まり等を防ぐことができる。
【0039】
<変形例>
以下、
図6および
図7には本発明の実施形態に係る保湿液量管理機構の変形例を示している。
【0040】
第3流路213の開口の形状は、
図5に示したような噴水型(開口213aから上に向けて保湿液Lmを排出する構成)に限るものではない。例えば
図6に示すように保湿液Lmを横向きに案内して排出する形状の開口213bとしてもよいし、
図7に示すように第3流路213の他端部側面に設けた開口213cから保湿液Lmを排出する形状としてもよい。
【0041】
<適用例>
図8は、本発明の実施形態に係る液体吐出ユニットの適用例の説明図である。
【0042】
本発明の液体吐出ユニット103は、線状の媒体を染色する装置ないしはシステムに限らず、紙や布などの平面状の媒体に画像を形成する装置等に適用することも可能である。
【0043】
本適用例では、平面状の媒体801に画像を形成する印刷装置800を例示している。印刷装置800において、液体吐出ユニット103は、フルライン型インクジェット記録装置であり、媒体801に対して所望の色の液滴を吐出して画像を形成するヘッド1a~1dを備えている。液体吐出ユニット103は、媒体801の搬送経路を挟んでヘッド1a~1dの下方に、複数の維持ユニット2a~2dを備える。維持ユニット2a~2dは、それぞれが空吐出受け部、ワイピング部およびキャッピング部などを備え、各部に位置したヘッド1a~1dに対して各処理を実施する。また、液体吐出ユニット103は、例えば媒体801の搬送方向上流側から4色分のフルライン型記録ヘッド1a、1b、1c、1dを配置している。各ヘッド1a~1dは、移動する媒体810に対してブラック、シアン、マゼンタ、イエローの液滴を吐出する。なお、色の種類、数および順番はこれに限るものではない。
【0044】
繰出ローラ802は矢印で示したように反時計方向に回転し、媒体801を液体吐出ユニット103に向けて繰り出す。次に搬送ローラ803が、繰出ローラ802からの媒体801を液体吐出ユニット103に向けて搬送する。液体吐出ユニット103に達した媒体801に対してヘッド1a~1dは液滴(インク滴)を吐出し、媒体801上に画像を形成する。画像を載せた媒体801は、次に乾燥装置804に入る。
【0045】
乾燥装置804は、内部に加熱装置や温風装置などを備え、媒体801上の画像を熱で乾かす。乾燥装置804を出た媒体801は、排出ローラ805によって巻取ローラ806に向けて移動し、巻取ローラ806は媒体801を巻き取っていく。
【0046】
以上のような印刷装置においても本発明の液体吐出ユニットの適用が可能であり、その場合にも上述の作用効果を奏することができる。
【0047】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0048】
[第1態様]
第1態様は、保湿液を溜める液溜部を有するキャップ部材(例えばキャップ21)と、前記液溜部に供給する保湿液を収容する保湿液収容部(例えば保湿液タンク214)と、廃液を回収する廃液回収部(例えば廃液タンク215)と、前記キャップ部材と前記廃液回収部とを接続する第1流路と、前記保湿液収容部と前記第1流路とを接続する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路との接続部に設けた流路切替装置(例えば切替弁217)と、前記第2流路に設け、前記保湿液収容部からの保湿液の供給、および前記保湿液収容部への保湿液の回収を行う送液装置(例えば保湿液ポンプ218)と、一端部を前記第2流路に接続し、他端部に開口(例えば開口213a、213b、213c)を有した第3流路と、を備え、前記開口を、前記キャップ部材の鉛直方向上端よりも低い位置(例えば位置H2)に設けることを特徴とするものである。
【0049】
第1態様によれば、簡易な構成でキャップ部材内の液量を管理することが可能な液体吐出ユニットを提供することができる。
【0050】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記キャップ部材(例えばキャップ21)は液体吐出部(例えばヘッド1)に対して接離可能であり、前記キャップ部材と前記液体吐出部とが離間している場合、前記液溜部は開放状態となることを特徴とするものである。
【0051】
第2態様によれば、開放状態におけるキャップ部材内の乾燥を防ぎ、キャップ部材に接続した流路の詰まり等を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 ヘッド
21 キャップ
21a 液溜部
211 第1流路
212 第2流路
213 第3流路
213a、213b、213c 開口
214 保湿液タンク
215 廃液タンク
216 ポンプ機構
217 切替弁
218 保湿液ポンプ
Lm 保湿液
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】