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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093969
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】液化流体の製造装置
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20230628BHJP
   F25J 3/06 20060101ALI20230628BHJP
   C01B 13/02 20060101ALI20230628BHJP
   C01B 21/04 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
F25J1/00 D
F25J3/06
C01B13/02 Z
C01B21/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209131
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 稔治
【テーマコード(参考)】
4D047
4G042
【Fターム(参考)】
4D047AA08
4D047AB01
4D047AB02
4D047BA03
4D047BA08
4D047CA03
4D047CA04
4D047CA06
4D047CA09
4D047CA11
4D047DA01
4G042BA38
4G042BB02
4G042BC05
(57)【要約】
【課題】精留塔等の大型の設備を必要とせず、小型且つ簡便な構成で、工業ガスを使用する工場等においてオンサイトで稼働させることができるとともに、液化水素の熱交換時に発生する冷熱を有効利用することで液化窒素や液化酸素を製造することが可能な液化流体の製造装置を提供する。
【解決手段】液化水素貯槽2と、液化水素導出ラインF1と、第1の液化窒素貯槽3と、液化窒素導出ラインF2と、第1の熱交換器4と、空気圧縮機5と、第2の熱交換器6と、気液分離槽7と、凝縮器8と、液化酸素貯槽9と、冷却器10と、液化器11と、第3の熱交換器12と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化水素貯槽と、
前記液化水素貯槽から液化水素を導出する液化水素導出ラインと、
第1の液化窒素貯槽と、
前記第1の液化窒素貯槽から液化窒素を導出する液化窒素導出ラインと、
前記液化水素導出ラインにおいて導出される前記液化水素と、前記液化窒素導出ラインにおいて導出される前記液化窒素と、の間で熱交換を行う第1の熱交換手段と、
空気圧縮機と、
前記液化窒素導出ラインにおける前記第1の液化窒素貯槽と前記第1の熱交換手段との間において、前記第1の液化窒素貯槽から導出された前記液化窒素と、前記空気圧縮機から導出された圧縮空気と、の間で熱交換を行う第2の熱交換手段と、
前記第2の熱交換手段で前記圧縮空気が冷却されて液化した液化空気を貯留する気液分離槽と、
前記気液分離槽の下部から導出された低純度液化酸素と、前記気液分離槽から導出された低純度酸素ガスと、が導入される凝縮器と、
前記凝縮器の下部から導出された液化酸素を貯留する液化酸素貯槽と、
前記液化酸素貯槽から導出されて冷却手段で冷却された前記液化酸素が供給されることにより、前記液化酸素と、前記凝縮器の上部から導出した低純度窒素ガス及び前記気液分離槽の上部から導出した低純度窒素ガスと、の間で気液平衡させることで酸素を凝縮する液化器と、
前記液化器から導出された前記窒素ガスと、前記第1の熱交換手段により冷却された過冷却液化窒素と、の間で熱交換を行う第3の熱交換手段と、を有することを特徴とする液化流体の製造装置。
【請求項2】
前記第3の熱交換手段によって冷却された前記液化窒素を貯留する第2の液化窒素貯槽をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の液化流体の製造装置。
【請求項3】
前記気液分離槽の下部から導出された前記低純度液化酸素と、前記気液分離槽から導出された前記低純度酸素ガスと、を混合する気液混合手段をさらに有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液化流体の製造装置。
【請求項4】
前記気液分離槽内において、前記第2の熱交換手段で前記圧縮空気が冷却されて液化した前記液化空気を気液分離する気液分離手段を有することを特徴とする請求項1~請求項3の何れか一項に記載の液化流体の製造装置。
【請求項5】
液化水素貯槽と、
前記液化水素貯槽から液化水素を導出する液化水素導出ラインと、
空気圧縮機と、
前記空気圧縮機から導出された圧縮空気と、前記液化水素導出ラインにおいて導出される前記液化水素と、の間で熱交換を行う第5の熱交換手段と、
前記第5の熱交換手段によって前記圧縮空気が冷却されて液化した液化空気を貯留する気液分離槽と、
前記気液分離槽の下部から導出された低純度液化酸素と、前記気液分離槽から導出された低純度酸素ガスと、が導入される凝縮器と、
前記凝縮器の下部から導出された液化酸素を貯留する液化酸素貯槽と、
前記液化酸素貯槽から導出されて冷却手段で冷却された前記液化酸素が供給されることにより、前記液化酸素と、前記凝縮器の上部から導出した低純度窒素ガス及び前記気液分離槽の上部から導出した低純度窒素ガスと、の間で気液平衡させることで酸素を凝縮する液化器と、
前記液化器から導出された前記窒素ガスと、前記第5の熱交換手段により冷却された過冷却液化空気と、の間で熱交換する第6の熱交換手段と、を有することを特徴とする液化流体の製造装置。
【請求項6】
前記第6の熱交換手段によって冷却された前記液化窒素を貯留する第2の液化窒素貯槽をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の液化流体の製造装置。
【請求項7】
前記気液分離槽の下部から導出された前記低純度液化酸素と、前記気液分離槽から導出された前記低純度酸素ガスと、を混合する気液混合手段をさらに有することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の液化流体の製造装置。
【請求項8】
前記気液分離槽内において、前記第6の熱交換手段によって圧縮空気が冷却されて液化した前記液化空気を気液分離する気液分離手段を有することを特徴とする請求項5~請求項7の何れか一項に記載の液化流体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化流体の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、各種工場の内部に設置される発電設備等においては、エネルギーとして水素ガスが使用される場合がある。このような発電用途に限らず、各種の用途で大量に水素ガスが使用される場合には、一般に、断熱貯槽や断熱容器に収容された液化水素の状態で、液体ガスを製造するガス工場から水素ガスの使用工場等に向けて輸送された後、適宜貯蔵され、蒸発器で大気や水との間で熱交換した後、常温の水素ガスとして使用されるケースが多い。
【0003】
上記のように、液化水素と大気又は水とを熱交換させた場合、一般に、熱交換で生じる冷熱は利用されることなく消失するか、あるいは、発電用ガスタービンの冷却や、室内空調等の用途で利用されることがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
上記のような液化水素の大量輸送は、各種工場における用途に応じて、今後さらに増える見込みとなっている。
【0005】
また、例えば、工場等で大量に使用される窒素ガスや酸素ガスも、水素ガスの場合と同様、一般に、工業ガスの製造工場等から、断熱貯槽や断熱容器に収容された液化窒素又は液化酸素の状態で、ガスを使用する工場等に輸送され、適宜貯蔵された後、使用されるケースが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-021433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、工業ガスの製造工場から、当該ガスを使用する工場等まで液化窒素や液化酸素を大量に輸送するには、水素ガスの場合と同様、輸送コストが必要になるとともに、製造コストも増大するという問題がある。
【0008】
そこで、例えば、液化水素の使用場所(オンサイト)である工場等において、水素ガスを得るために液化水素を熱交換して気化させ、常温に戻したときに生じる冷熱を有効利用し、空気を原料として液化窒素や液化酸素を製造することが考えられる。
このように、ガスの使用場所において、液化水素の熱交換で生じる冷熱を利用して液化窒素や液化酸素を製造することにより、液化窒素や液化酸素の輸送コストが生じることなく、且つ、製造コストを大幅に低減することが可能になる。
【0009】
しかしながら、工業ガスの製造工場に備えられているような、精留塔を有する大型の深冷空気分離装置等からなる液化窒素・液化酸素製造設備は、設備コストが莫大であり、また、広大な設置場所も必要になるという問題があった。
【0010】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、精留塔等の大型の設備を必要とせず、小型且つ簡便な構成で、工業ガスを使用する工場等においてオンサイトで稼働させることができるとともに、液化水素の熱交換時に発生する冷熱を有効利用することで液化窒素や液化酸素を製造することが可能な液化流体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の態様を包含する。
即ち、請求項1に係る発明は、液化水素貯槽と、前記液化水素貯槽から液化水素を導出する液化水素導出ラインと、第1の液化窒素貯槽と、前記第1の液化窒素貯槽から液化窒素を導出する液化窒素導出ラインと、前記液化水素導出ラインにおいて導出される前記液化水素と、前記液化窒素導出ラインにおいて導出される前記液化窒素と、の間で熱交換を行う第1の熱交換手段と、空気圧縮機と、前記液化窒素導出ラインにおける前記第1の液化窒素貯槽と前記第1の熱交換手段との間において、前記第1の液化窒素貯槽から導出された前記液化窒素と、前記空気圧縮機から導出された圧縮空気と、の間で熱交換を行う第2の熱交換手段と、前記第2の熱交換手段で前記圧縮空気が冷却されて液化した液化空気を貯留する気液分離槽と、前記気液分離槽の下部から導出された低純度液化酸素と、前記気液分離槽から導出された低純度酸素ガスと、が導入される凝縮器と、前記凝縮器の下部から導出された液化酸素を貯留する液化酸素貯槽と、前記液化酸素貯槽から導出されて冷却手段で冷却された前記液化酸素が供給されることにより、前記液化酸素と、前記凝縮器の上部から導出した低純度窒素ガス及び前記気液分離槽の上部から導出した低純度窒素ガスと、の間で気液平衡させることで酸素を凝縮する液化器と、前記液化器から導出された前記窒素ガスと、前記第1の熱交換手段により冷却された過冷却液化窒素と、の間で熱交換を行う第3の熱交換手段と、を有することを特徴とする液化流体の製造装置である。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の液化流体の製造装置であって、前記第3の熱交換手段によって冷却された前記液化窒素を貯留する第2の液化窒素貯槽をさらに有することを特徴とする製造装置である。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の液化流体の製造装置であって、前記気液分離槽の下部から導出された前記低純度液化酸素と、前記気液分離槽から導出された前記低純度酸素ガスと、を混合する気液混合手段をさらに有することを特徴とする液化流体の製造装置である。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1~請求項3の何れかに記載の液化流体の製造装置であって、前記気液分離槽内において、前記第2の熱交換手段で前記圧縮空気が冷却されて液化した前記液化空気を気液分離する気液分離手段を有することを特徴とする液化流体の製造装置である。
【0015】
請求項5に係る発明は、液化水素貯槽と、前記液化水素貯槽から液化水素を導出する液化水素導出ラインと、空気圧縮機と、前記空気圧縮機から導出された圧縮空気と、前記液化水素導出ラインにおいて導出される前記液化水素と、の間で熱交換を行う第5の熱交換手段と、前記第5の熱交換手段によって前記圧縮空気が冷却されて液化した液化空気を貯留する気液分離槽と、前記気液分離槽の下部から導出された低純度液化酸素と、前記気液分離槽から導出された低純度酸素ガスと、が導入される凝縮器と、前記凝縮器の下部から導出された液化酸素を貯留する液化酸素貯槽と、前記液化酸素貯槽から導出されて冷却手段で冷却された前記液化酸素が供給されることにより、前記液化酸素と、前記凝縮器の上部から導出した低純度窒素ガス及び前記気液分離槽の上部から導出した低純度窒素ガスと、の間で気液平衡させることで酸素を凝縮する液化器と、前記液化器から導出された前記窒素ガスと、前記第5の熱交換手段により冷却された過冷却液化空気と、の間で熱交換する第6の熱交換手段と、を有することを特徴とする液化流体の製造装置である。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の液化流体の製造装置であって、前記第6の熱交換手段によって冷却された前記液化窒素を貯留する第2の液化窒素貯槽をさらに有することを特徴とする液化流体の製造装置である。
【0017】
請求項7に係る発明は、請求項5又は請求項6に記載の液化流体の製造装置であって、前記気液分離槽の下部から導出された前記低純度液化酸素と、前記気液分離槽から導出された前記低純度酸素ガスと、を混合する気液混合手段をさらに有することを特徴とする液化流体の製造装置である。
【0018】
請求項8に係る発明は、請求項5~請求項7の何れかに記載の液化流体の製造装置であって、前記気液分離槽内において、前記第5の熱交換手段によって圧縮空気が冷却されて液化した前記液化空気を気液分離する気液分離手段を有することを特徴とする液化流体の製造装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る液化流体の製造装置によれば、上記構成を採用することにより、精留塔等の大型の設備を必要とせず、小型且つ簡便な構成で、工業ガスを使用する工場等においてオンサイトで稼働させることができる。また、液化水素の熱交換時に発生する冷熱を有効利用して液化窒素や液化酸素を製造することで、輸送コストを生じさせることなく、且つ、大幅な省電力が実現できるので、液化窒素や液化酸素の製造コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態である液化流体の製造装置について模式的に説明する図であり、製造装置の全体構成を示す概略図である。
図2】本発明の第1の実施形態である液化流体の製造装置について模式的に説明する図であり、当該製造装置に備えられる液化器による液化作用を説明する概略破断図である。
図3】本発明の第2の実施形態である液化流体の製造装置について模式的に説明する図であり、製造装置の全体構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用した一実施形態である液化流体の製造装置について、図1図3を適宜参照しながら説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、その特徴をわかり易くするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0022】
<第1の実施形態>
以下に、第1の実施形態の液化流体の製造装置について、その全体構成並びに運転方法の一例を挙げて具体的に説明する。
【0023】
[液化流体の製造装置の全体構成]
図1は、本実施形態の液化流体の製造装置(以下、単に製造装置と略称する場合がある。)1の全体構成を示す概略図であり、図2は、本実施形態の製造装置1に備えられる液化器11を示す概略断面図で、液化器11の液化作用を簡便に説明する図である。
【0024】
本実施形態の製造装置1は、例えば、各種工場の内部に設置される発電設備等において、エネルギーとして用いられる水素ガスを、液化水素を熱交換することで、オンサイトで製造するものである。
また、本実施形態の製造装置1は、液化水素を熱交換して気化させ、得られた水素ガスを常温に戻したときに生じる冷熱を用い、液化窒素や液化酸素を製造するものである。
【0025】
図1に示すように、本実施形態の製造装置1は、液化水素貯槽2と、液化水素導出ラインF1と、第1の液化窒素貯槽3と、液化窒素導出ラインF2と、第1の熱交換器(第1の熱交換手段)4と、空気圧縮機5と、第2の熱交換器(第2の熱交換手段)6と、気液分離槽7と、凝縮器8と、液化酸素貯槽9と、冷却器(冷却手段)10と、液化器11と、第3の熱交換器(第3の熱交換手段)12と、を有し、概略構成される。
【0026】
液化水素貯槽2は、ガス製造工場等で製造された液化水素LHを貯蔵するものであり、例えば、図示略の注入口から、図示略の断熱貯槽や断熱容器等に収容された液化水素LHを注入可能な真空二重構造の断熱貯槽等から構成される。液化水素貯槽2には、この液化水素貯槽2から液化水素LHを導出する液化水素導出ラインF1が接続されており、図示例においては、液化水素導出ラインF1の他端が、詳細を後述する第1の熱交換器4に接続されている。
【0027】
液化水素貯槽2としては、侵入熱による液化水素の蒸発を極力抑えるため真空二重構造とする。また、液化水素貯槽2の材質等は特に限定されないが、耐水素脆性を備えたステンレス材料等を適宜選択して使用することができる。また、液化水素貯槽2のサイズとしても、液化水素LHの収容量を勘案しながら適宜設定することができる。
【0028】
第1の液化窒素貯槽3は、内部に液化窒素LNを貯蔵するものであり、図示例においては、詳細を後述する第2の液化窒素貯槽13から液化窒素ラインF3を介して液化窒素LNが導入される。また、第1の液化窒素貯槽3は、液化窒素導出ラインF2を介して、詳細を後述する第2の熱交換器6に向けて液化窒素LNを導出する。
【0029】
第1の液化窒素貯槽3も、液化水素貯槽2の場合と同様、その材質等は特に限定されず、例えば、ステンレス材料からなる真空二重構造の断熱貯槽等を適宜採用することができる。また、第1の液化窒素貯槽3のサイズとしても、液化窒素LNの収容量を勘案しながら適宜設定することができる。
【0030】
第1の液化窒素貯槽3に貯留される液化窒素LNは、例えば、N:約99%、Ar:約1%の割合(濃度)のものである。
【0031】
なお、液化窒素ラインF3の経路中には、第2の液化窒素貯槽13から第1の液化窒素貯槽3に導入される液化窒素LNの流れを制御するためのバルブV4が設けられている。
【0032】
第1の熱交換器4は、液化水素導出ラインF1において導出される液化水素LHと、液化窒素導出ラインF2において導出される液化窒素LNとの間で熱交換を行う。
第1の熱交換器4には、詳細を後述する窒素ガスラインF6に連通した一方の出口側に、冷却された液化窒素LN2を後述の第3の熱交換器12に導入するための過冷却液化窒素導入ラインF7が接続されている。この過冷却液化窒素導入ラインF7の経路中には、第1の熱交換器4で過冷却された液化窒素LNの温度を測定するための温度検出器TD3が設けられている。
【0033】
また、第1の熱交換器4には、液化水素導出ラインF1と連通する他方の出口側に、工場内における使用場所に向けて水素ガスGHを導出するための水素ガス導出ラインF9が接続されている。この水素ガス導出ラインF9の経路中には、第1の熱交換器4で熱交換されて気化した水素ガスGHの温度を測定するための温度検出器TD1、水素ガスGHの流れを制御するバルブV1、及び、水素ガスGHの流量を調整する水素ガスタンク17が、第1の熱交換器4側からこの順で設けられている。これらのうち、水素ガスタンク17は、水素ガスGHの供給圧力を一定に保つバッファとして機能するものであり、圧力計PD1を備えたタンクによって構成される。
【0034】
第1の熱交換器4としては、特に限定されず、この分野において一般的に用いられる熱交換器を何ら制限無く採用することができる。
【0035】
空気圧縮機5は、外部から取り入れた大気(空気)を圧縮して圧縮空気Airを生成するものであり、例えば、一般的なコンプレッサが用いられる。
空気圧縮機5は、例えば、図示略の空気導入口から大気を取り入れ、インペラ等から構成される回転圧縮機構によって大気を圧縮して圧縮空気Airを生成し、圧縮空気導入ラインF4を介して後述の第2の熱交換器6に向けて導出する。
【0036】
なお、図1に示す例では、圧縮空気導入ラインF4の経路中における空気圧縮機5と第2の熱交換器6との間に、吸着器14、エアタンク15、コントロールバルブCV5、及び第4の熱交換器16が、空気圧縮機5側から順に設けられている。
【0037】
吸着器14は、空気圧縮機5で生成された圧縮空気Air中に含まれる水分や二酸化炭素を吸着するものであり、例えば、一般的に工業用として用いられる従来公知の吸着剤やフィルター等から構成される。
【0038】
エアタンク15は、空気圧縮機5で生成された圧縮空気Airの供給圧力を一定に保つバッファとして機能するものであり、圧力計PD4を備えたタンクによって構成されるものである。
【0039】
コントロールバルブCV5は、後述の第4の熱交換器16、及び、第2の熱交換器6に導入される圧縮空気Airの流量を制御するものであり、従来公知の電磁バルブ等が用いられる。
【0040】
第4の熱交換器16は、第2の熱交換器6に導入される前の圧縮空気Airを予備的に熱交換して冷却するものである。
図示例の第4の熱交換器16では、圧縮空気導入ラインF4によって導入される圧縮空気Airが熱交換で冷却され、この圧縮空気Airが圧縮空気導入ラインF4を介して第2の熱交換器6に導入される。
【0041】
また、図示例の第4の熱交換器16は、詳細を後述する気液分離槽7から導出された純度液化酸素が導入され、上記の空気圧縮機5側から導入された圧縮空気Airとの間で熱交換が行われるように構成されている。具体的には、第4の熱交換器16には、詳細を後述する気液分離槽7から低純度液化酸素HLOを導入する低純度液化酸素導出ラインF10が接続されている。さらに、低純度液化酸素導出ラインF10は、気液分離槽7から導出されて第4の熱交換器16で熱交換された後の低純度酸素ガスHGOを、詳細を後述する凝縮器8に導入するように構成される。第4の熱交換器16と凝縮器8との間には、低純度酸素ガスHGOの流量を制御するコントロールバルブCV7と、気液混合器85とが、第4の熱交換器16側からこの順で設けられている。
【0042】
第4の熱交換器16としても、第1の熱交換器4と同様、特に限定されず、この分野において一般的に用いられる熱交換器を何ら制限無く採用することができる。
【0043】
第2の熱交換器6は、液化窒素導出ラインF2における第1の液化窒素貯槽3と第1の熱交換器4との間において、第1の液化窒素貯槽3から導出された液化窒素LNと、空気圧縮機5から導出された圧縮空気Airとの間で熱交換を行う。
【0044】
第2の熱交換器6には、液化窒素導出ラインF2と連通する一方の出口側に、熱交換によって昇温された窒素ガスGNを第1の熱交換器4に導入するための窒素ガスラインF6が接続されている。この窒素ガスラインF6の経路中には、第2の熱交換器6で昇温された窒素ガスGNの温度を測定するための温度検出器TD2と、窒素ガスGNの流量を制御するためのコントロールバルブCV2が、第2の熱交換器6側からこの順で設けられている。
【0045】
また、第2の熱交換器6には、圧縮空気導入ラインF4と連通する他方の出口側に、圧縮空気Airが熱交換で冷却されることで液化した液化空気LAirを、詳細を後述する気液分離槽7に導入するための液化空気導入ラインF5が接続されている。この液化空気導入ラインF5の経路中には、第2の熱交換器6で液化された液化空気LAirの温度を測定するための温度検出器TD4が設けられている。
【0046】
第2の熱交換器6としても、第1の熱交換器4と同様、特に限定されず、この分野において一般的に用いられる熱交換器を何ら制限無く採用することができる。
【0047】
気液分離槽7は、第2の熱交換器6で圧縮空気Airが冷却されて液化した液化空気LAirを貯留する。
具体的には、気液分離槽7の上部には、内部に液化空気LAirを導入するための液化空気導入ラインF5が接続されている。また、気液分離槽7の下部側には、気液分離後の低純度液化酸素HLOを導出するための低純度液化酸素導出ラインF10が接続されている。さらに、図示例においては、気液分離槽7の下部に、気液分離後の低純度液化酸素HLOを後述の凝縮器8に導入するための低純度液化酸素導入ラインF11が接続されている。低純度液化酸素導入ラインF11の経路中には、低純度液化酸素HLOの流量を制御するためのコントロールバルブCV8が設けられている。
【0048】
また、図示例の気液分離槽7には、内部における低純度液化酸素HLOの液面を検出するための液面センサLD2と、槽内の圧力を検出するための圧力計PD5が設けられている。
さらに、気液分離槽7の上部には、気液分離後の低純度窒素ガスHGNを外部に排出するための低純度窒素ガス排出ラインF12が接続されている。低純度窒素ガス排出ラインF12の経路中には、気液分離槽7からの低純度窒素ガスHGNの排出量を制御するためのバルブV6が設けられている。
【0049】
図示例の気液分離槽7の内部には、さらに、気液分離器(気液分離手段)75が設けられている。この気液分離器75は、気液分離槽7内において、第2の熱交換器6で圧縮空気Airが冷却されて液化した液化空気LAirを気液分離し、この状態で気液分離槽7内に導入するものである。
【0050】
気液分離槽7の上部には、詳細を後述する液化器11に気液分離後の低純度窒素ガスHGNを導入するための低純度窒素ガス導入ラインF15が接続されている。この低純度窒素ガス導入ラインF15の経路中には、低純度窒素ガスHGNの流量を制御するためのコントロールバルブCV12と、下流側に設けられる液化器11の内部圧力を測定するための圧力計PD3が設けられている。
【0051】
凝縮器8は、気液分離槽7の下部から導出された低純度液化酸素HLOと、気液分離槽7から導出され、第4の熱交換器16で熱交換されて気化した低純度酸素ガスHGOとが導入される。図示例においては、低純度酸素ガス導入ラインF26及び低純度液化酸素導入ラインF11が気液混合器85に接続され、この気液混合器85で上記の低純度酸素ガスHGOと低純度液化酸素HLOとが混合された後、気液混合器85に接続された混合流体導入ラインF22により、凝縮器8の下部に低純度酸素が気液二相流状態で導入される。
【0052】
また、凝縮器8の上部には、上述した低純度窒素ガス導入ラインF15に窒素ガスGNを合流させるための窒素ガス合流ラインF17が接続されている。
また、凝縮器8の下部である底板には、後述の液化酸素貯槽9に液化酸素LOを導入するための液化酸素導入ラインF13が接続されている。この液化酸素導入ラインF13の経路中には、液化酸素LOの流量を制御するためのバルブV11が設けられている。
また、凝縮器8には、内部における液化酸素LOの液面を検出するための液面センサLD4が備えられている。
さらに、凝縮器8には、後述の液化器11で液化された液化酸素LOを内部に導入するための液化酸素滴下ラインF18が接続されている。
【0053】
液化酸素貯槽9は、上述した液化酸素導入ラインF13が接続されていることで、凝縮器8の下部から導出された液化酸素LOを貯留する。
また、液化酸素貯槽9には、後述の冷却器10に液化酸素LOを導入するための液化酸素導入ラインF14が接続されている。
【0054】
液化器11は、液化酸素貯槽9から導出されて冷却器10に貯留された液化酸素LOが供給されることにより、液化酸素LOと、凝縮器8の上部から導出した低純度窒素ガスHGN及び気液分離槽7の上部から導出した低純度窒素ガスHGNとの間で気液平衡させることで、酸素Oを凝縮する。
【0055】
具体的には、液化器11は、図1に示す例のように、上述した低純度窒素ガス導入ラインF15が接続されているとともに、冷却器10との間で液化酸素LOが流通する冷却ラインF19が接続されている。また、液化器11における窒素ガスGNの出口側には、この窒素ガスGNを第3の熱交換器12に導入するための窒素ガスラインF16が接続されている。そして、液化器11には、上述したように、内部で液化した液化酸素LOを凝縮器8に向けて落下させ、凝縮器8に導入するための液化酸素滴下ラインF18が接続されている。
【0056】
液化器11は、図2に示す例のように、断面凹凸状とされ、各々離間して概略平行に配置された、3枚のプレートフィン11A,11B,11Cの積層構造からなる。
即ち、プレートフィン11Aとプレートフィン11Bとの隙間には、冷却器10に貯留された液化酸素LOが、下側から上側へ上昇するように導入され、プレートフィン11Bとプレートフィン11Cとの隙間には、低純度窒素ガスHGNが、下側から上側へ上昇するように導入される。
これにより、プレートフィン11Bを境界として熱交換が行われ、プレートフィン11Bとプレートフィン11Cとの隙間において酸素Oが凝縮されるとともに、液化された液化酸素LOが下方に落下し、液化酸素滴下ラインF18を介して凝縮器8に導入される。
【0057】
液化器11は、上記のような断面凹凸状とされたプレートフィン11A,11B,11Cからなる構成を採用することにより、部材のサイズに対して大きな熱交換面積を確保できる。これにより、簡便且つ小型の構成で優れた熱交換効率を発揮できるので、酸素を効果的に液化することが可能になる。
【0058】
また、プレートフィン11Aとプレートフィン11Bとの隙間に導入された液化酸素LOは、熱交換によって気化することで酸素ガスGOとなり、再び冷却器10に導入される。
ここで、冷却器10としては、特に限定されないが、例えば、ドラム式の冷却器を採用することができる。
また、図1に示す例の冷却器10は、内部における液化酸素LOの液面を検出する液面センサLD3と、内部圧力を検出する圧力計PD6とを備える。さらに、冷却器10の上部には、酸素ガスGOを外部に排出するための酸素ガス排出ラインF20が接続されている。この酸素ガス排出ラインF20の経路中には、酸素ガスGOの排出量を制御するためのバルブV10が設けられている。
【0059】
第3の熱交換器12は、液化器11から導出された窒素ガスGNと、第1の熱交換器4により冷却された過冷却液化窒素OLNとの間で熱交換を行う。
具体的には、第3の熱交換器12は、液化器11から窒素ガスラインF16を介して窒素ガスGNが導入され、上述した過冷却液化窒素導入ラインF7によって導入される過冷却液化窒素OLNとの間で熱交換を行う。これにより、液化器11から導入された窒素ガスGNが冷却されて液化窒素LNが生成され、液化窒素ラインF27を介して第2の液化窒素貯槽13に導入される。また、過冷却液化窒素導入ラインF7によって導入され、窒素ガスGNとの間で熱交換を行った液化窒素LNは、液化窒素ラインF8を介して第2の液化窒素貯槽13に導入される。
【0060】
第3の熱交換器12としても、第1の熱交換器4及び第2の熱交換器6と同様、特に限定されず、この分野において一般的に用いられる熱交換器を何ら制限無く採用することができる。
【0061】
第2の液化窒素貯槽13は、第3の熱交換器12によって冷却され、また、液化された液化窒素LNを貯留するものである。
上記のように、第2の液化窒素貯槽13は、液化窒素ラインF8及び液化窒素ラインF27を介して第3の熱交換器12と接続されている。また、第2の液化窒素貯槽13には、上述したように、内部に貯留された液化窒素LNを第1の液化窒素貯槽3に導入するための液化窒素ラインF3が接続されている。
【0062】
第2の液化窒素貯槽13に貯留される液化窒素LNは、第1の液化窒素貯槽3の場合と同様、例えば、N:約99%、Ar:約1%の割合(濃度)のものである。
【0063】
図1に示す例では、第2の液化窒素貯槽13には、内部に貯留された液化窒素LNの液面を検出する液面センサLD1が設けられている。また、第2の液化窒素貯槽13には、内部の圧力を測定する圧力計PD2が設けられている。
さらに、第2の液化窒素貯槽13には、内部に滞留する窒素ガスGNを排出するための窒素ガス排出ラインF21が接続されている。この窒素ガス排出ラインF21の経路中には、窒素ガスGNの排出量を制御するためのバルブV3が設けられている。
【0064】
なお、図1中では図示を省略しているが、本実施形態の製造装置1には、上記の各温度検出器、液面センサ及び圧力計から入力される検出信号に基づき、各コントロールバルブの調整、並びに、各バルブの開閉を行う制御部が備えられている。
【0065】
[液化流体の製造装置の運転方法]
次に、上述した製造装置1の運転方法について、以下のような運転条件とした場合の一例を挙げて説明する。
本実施形態の製造装置1は、例えば、以下の(1)~(19)に示した手順及び条件で運転することができる。
【0066】
(1)まず、例えば、工場内における発電設備等の用途で水素ガスGHが使用されると、圧力計PD1で計測される水素ガスタンク17の圧力P1が低下する。
【0067】
(2)水素ガスタンク17の圧力P1が、予め設定した圧力(例えば、0.13MPa)まで低下すると、図示略の制御部によってバルブV1が開状態とされ、液化水素LHが第1の熱交換器4に導入される。
【0068】
(3)温度検出器TD1で検出される第1の熱交換器4の出口温度T1が、予め設定した温度(例えば、0℃)以下になると、制御部により、窒素ガスラインF6の経路中に設けられたコントロールバルブCV2が開状態とされる。
【0069】
(4)窒素ガスラインF6の経路中に設けられたコントロールバルブCV2は、制御部により、温度検出器TD3で検出される第1の熱交換器4の出口温度T3が、予め設定した温度(例えば、-200℃)になるように、窒素ガスGNの流量を制御する。
【0070】
(5)第1の液化窒素貯槽3から液化窒素導出ラインF2を介して第2の熱交換器6に液化窒素LNが導入され、制御部は、温度検出器TD2で検出される第2の熱交換器6の出口温度T2が予め設定した温度(例えば、0℃)以下となったとき、圧縮空気導入ラインF4の経路中に設けられたコントロールバルブCV5を開状態とする。
【0071】
(6)コントロールバルブCV5は、制御部により、温度検出器TD4で検出される第2の熱交換器6の出口温度T4が予め設定した温度(例えば、-172℃)になるように、その開度が制御される。
【0072】
(7)空気圧縮機5から圧縮空気導入ラインF4を介して第2の熱交換器6に導入された圧縮空気Airは、第2の熱交換器6で一部液化されて液化空気LAirとなり、液化空気導入ラインF5及び気液分離器75を介して、真空二重構造とされた気液分離槽7に導入される。
【0073】
(8)圧力計PD5で計測される気液分離槽7内の圧力P5は、制御部によってバルブV6が開閉制御されることで、予め設定した圧力(例えば、0.22MPa)に保持される。
【0074】
(9)液面センサLD2で検出される気液分離槽7内の流体の液面L2が、予め設定された高さになるように、制御部は、低純度酸素ガス導入ラインF26の経路中に設けられたコントロールバルブCV7、及び、低純度液化酸素導入ラインF11の経路中に設けられたコントロールバルブCV8の開度を制御する。
【0075】
(10)低純度酸素ガス導入ラインF26の経路中に設けられたコントロールバルブCV7が開状態となると、第4の熱交換器16により、気液分離槽7内の低純度液化酸素HLOと原料空気である圧縮空気Airとが熱交換され、低純度液化酸素HLOが、液体から常温(例えば、10℃)に近い気体(低純度酸素ガス)に変化する。
【0076】
(11)上記のコントロールバルブCV7及びコントロールバルブCV8の開度は、最適な気液混合比になるように、計算によって予め設定された開度比(例えば、CV7:CV8=1:3)で、制御部においてプログラムされ、低純度酸素ガスHGOと低純度液化酸素HLOとが気液混合器85で混合されて凝縮器8に導入される。
【0077】
(12)低純度窒素ガス導入ラインF15の経路中に設けられたコントロールバルブCV12は、圧力計PD3で計測される液化器11内の圧力P3が、予め設定された圧力(例えば、0.2MPa)になるように、制御部によって開度が制御される。
【0078】
(13)冷却器10と液化器11とは、同じ高さに位置するように設計・設置される。また、冷却器10内における液化酸素LOの液面L3の高さは、液面センサLD3によって管理され(例えば、冷却器10の内部高さの2/3)、液面L3が設定値以下の場合はバルブV9が開状態となり、液面L3が設定値以上の場合はバルブV9が閉状態となる。
【0079】
(14)圧力計PD6で計測される冷却器10内の圧力P6は、圧力計PD3で計測される液化器11内の圧力に連動して一定値で低く設定される(例えば、P6(MPa)=P3(MPa)―0.04MPa)。
【0080】
(15)冷却器10内の圧力P6は、制御部によるバルブV10の開閉制御により、予め設定した圧力(例えば、0.16MPa)に保持される。
【0081】
(16)液面センサLD4で検出される、凝縮器8内における液化酸素LOの液面L4の高さは、制御部によるバルブV11の開閉制御で一定高さに保持される。
【0082】
(17)液化器11から導出された窒素ガスGNは、第3の熱交換器12において、第1の熱交換器4から導出された過冷却液化窒素OLNとの熱交換で冷却され、液化窒素LNとなる。
【0083】
(18)第3の熱交換器12から液化窒素ラインF8を介して導出された液化窒素LN、及び、液化窒素ラインF27を介して導出された液化窒素LNは、何れも、第2の液化窒素貯槽13に導入される。
【0084】
(19)圧力計PD2で計測される第2の液化窒素貯槽13内の圧力P2は、製造装置1のサイクル稼働時は、予め設定された圧力(例えば、0.15MPa)で管理される。一方、製造装置1のサイクル停止時は、第2の液化窒素貯槽13内の圧力P2は図示略の自己加圧ラインによって昇圧され、液化窒素ラインF3の経路中に設けられたバルブV4が制御部によって開状態とされることで、第2の液化窒素貯槽13から第1の液化窒素貯槽3に向けて液化窒素LNが移送される。
【0085】
[作用効果]
本実施形態の液化流体の製造装置1によれば、上記のような液化器11を備え、精留塔等の大型の設備を必要としない構成を採用することで、従来に比べて小型で省スペースであり、簡便で安価な装置が実現できる。即ち、本実施形態の製造装置1は、従来の液化流体の製造装置が備える精留塔のような、精密な空気分離を行うものではなく、プレートフィン熱交換器の構成を有する、簡易的な構成の液化器11で空気分離を行うものなので、従来に比べて大幅な小型化が可能になる。従って、製造装置1を、例えば、工業ガスを使用する工場等に設置してオンサイトで稼働させることが可能となる。
【0086】
また、液化水素LHを熱交換して水素ガスGHを得る際の冷熱を有効利用して液化窒素LNや液化酸素LOを製造できるので、ガス工場で液化流体を製造してからガスの使用工場に輸送する場合に比べ、輸送コストが生じることがなく、且つ、大幅な省電力が実現でき、液化流体の製造コストを低減することが可能になる。
また、複雑な機器を使用しない構成とすることで、メンテナンスが容易で故障頻度が低い装置が実現できる。
また、工場内における液化水素LHの使用量に応じた冷熱量に合わせて液化窒素LNや液化酸素LOを製造できるので、液化水素LHの消費量の変動が生じた場合であっても、優れた生産効率で液化窒素LNや液化酸素LOを製造することが可能となる。
【0087】
また、液化窒素LNや液化酸素LOの各々の貯槽を有する構成なので、液化水素LHを製造する際の冷熱を変換して各液化流体を生成させ、これらを貯留・保存することが可能となる。
また、凝縮器8における液化酸素LO及び圧縮空気Airの導入口に気液混合器85が設けられた構成なので、凝縮器8の処理性能の大幅な向上が見込める。
【0088】
また、図示は省略するが、例えば、液化酸素LOの流路に低圧塔を設けた場合には、高純度の液化酸素LOを製造することが可能になる。
【0089】
また、本実施形態の製造装置1において、第1の液化窒素貯槽3に加え、さらに第2の液化窒素貯槽13を有した構成を採用した場合には、例えば、工場内における液化窒素LNの使用量に応じて、優れた生産効率で液化窒素LNを製造することが可能になる。
【0090】
本実施形態においては、気液分離槽7の内部に気液混合器85を備えることで、低純度液化酸素HLOと低純度酸素ガスHGOとを効果的に混合して気液二相流状態で凝縮器8に導入することができるので、優れた生産効率で液化酸素LOを製造することが可能になる。
【0091】
さらに、本実施形態においては、気液分離槽7の内部に気液分離器75を有することで、第2の熱交換器6から導入される液化空気LAirが効果的に気液分離された状態となる。これにより、気液分離槽7内における液化空気LAirの気液分離効率が高められるので、液化窒素LN及び液化酸素LOの両方の生産効率上昇に寄与する。
【0092】
<第2の実施形態>
以下に、第2の実施形態の液化流体の製造装置について、その全体構成並びに運転方法の一例を挙げて具体的に説明する。
なお、以下の説明においては、図1(及び図2)に示した第1の実施形態の製造装置1と共通する構成については、同じ符号を付与して説明するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0093】
[液化流体の製造装置の全体構成]
図3は、本実施形態の液化流体の製造装置1Aの全体構成を示す概略図である。
また、本実施形態においては、図1に示した第1の実施形態の製造装置1と同様、液化器として、図2に示した液化器11を用いた例について説明する。
【0094】
図3に示すように、本実施形態の製造装置1Aは、液化水素貯槽2と、液化水素導出ラインF1と、空気圧縮機5と、第5の熱交換器(第5の熱交換手段)4Aと、気液分離槽7と、液化酸素貯槽9と、冷却器(冷却手段)10と、液化器11と、第6の熱交換器(第6の熱交換手段)12Aと、を有し、概略構成される。
【0095】
本実施形態の製造装置1Aは、第1の実施形態の製造装置1に対し、図1中に示した第2の熱交換器6に相当する構成を有していない点で異なる。また、本実施形態の製造装置1Aは、図1中に示した第1の液化窒素貯槽3を備えていない点でも、第1の実施形態の製造装置1とは異なる。
これらに伴い、本実施形態の製造装置1Aは、第5の熱交換器4A及び第6の熱交換器12Aによって圧縮空気Airが冷却され、液化した液化空気LAirが気液分離槽7に導入される点で、第1の実施形態の製造装置1とは異なる。
【0096】
本実施形態の製造装置1Aに備えられる第5の熱交換器4Aは、空気圧縮機5から導出された圧縮空気Airと、液化水素導出ラインF1において導出される液化水素LHとの間で熱交換を行うように構成される。
【0097】
また、本実施形態の製造装置1Aに備えられる第6の熱交換器12Aは、液化器11から導出された窒素ガスGNと、上記の第5の熱交換器4Aにより冷却された過冷却液化空気OLAirとの間で熱交換を行うように構成される。
【0098】
即ち、図2に示すように、本実施形態の製造装置1Aにおいては、空気圧縮機5で生成され、第4の熱交換器16で気液分離槽7から導出された低純度液化酸素HLOとの熱交換で冷却された圧縮空気Airが、圧縮空気ラインF23を介して第5の熱交換器4Aに導入される。
【0099】
第5の熱交換器4Aにおいて液化水素LHと熱交換することで冷却された過冷却液化空気OLAirは、過冷却液化空気ラインF24を介して第6の熱交換器12Aに導入され、液化器11から窒素ガスラインF16を介して第6の熱交換器12Aに導入される窒素ガスGNとの間で熱交換される。第6の熱交換器12Aで熱交換された液化空気LAirは、液化空気ラインF25及び気液分離器75を介して気液分離槽7内に導入される。
【0100】
本実施形態の製造装置1Aの他の構成については、上述した第1の実施形態で説明した製造装置1と同様である。
【0101】
[液化流体の製造装置の運転方法]
次に、上述した製造装置1Aの運転方法について、以下のような運転条件とした場合の一例を挙げて説明する。
本実施形態の製造装置1は、例えば、以下の(1)~(18)に示した手順及び条件で運転することができる。
【0102】
(1)まず、第1の実施形態の場合と同様、例えば、工場内における発電設備等の用途で水素ガスGHが使用されると、圧力計PD1で計測される水素ガスタンク17の圧力P1が低下する。
【0103】
(2)水素ガスタンク17の圧力P1が、予め設定した圧力(例えば、0.13MPa)まで低下すると、図示略の制御部によってバルブV1が開状態とされ、液化水素LHが第5の熱交換器4Aに導入される。
【0104】
(3)温度検出器TD1で検出される第5の熱交換器4Aの出口温度T1が、予め設定した温度(例えば、0℃)以下になると、制御部により、圧縮空気ラインF23の経路中に設けられたコントロールバルブCV2が開状態とされ、第5の熱交換器4Aに圧縮空気Airが導入される。
【0105】
(4)第5の熱交換器4Aに導入された圧縮空気Airは、熱交換で冷却されて液化した過冷却液化空気OLAirとなり、その後、第6の熱交換器12Aで若干加温され、気液混合状態となる。
【0106】
(5)圧縮空気ラインF23の経路中に設けられたコントロールバルブCV2は、制御部により、温度検出器TD4で検出される第6の熱交換器12Aの出口温度T4が、予め設定した温度(例えば、-172℃)になるように、圧縮空気Airの流量を制御する。
【0107】
(6)第6の熱交換器12Aから導出された気液混合状態の液化空気LAirは、液化空気ラインF25及び気液分離器75を介して真空二重構造とされた気液分離槽7に導入される。
【0108】
(7)圧力計PD5で計測される気液分離槽7内の圧力P5は、制御部によってバルブV6が開閉制御されることで、予め設定した圧力(例えば、0.22MPa)に保持される。
【0109】
(8)液面センサLD2で検出される気液分離槽7内の流体の液面L2が、予め設定された高さになるように、制御部は、低純度酸素ガス導入ラインF26の経路中に設けられたコントロールバルブCV7、及び、低純度液化酸素導入ラインF11の経路中に設けられたコントロールバルブCV8の開度を制御する。
【0110】
(9)低純度酸素ガス導入ラインF26の経路中に設けられたコントロールバルブCV7が開状態となると、第4の熱交換器16により、気液分離槽7内の低純度液化酸素HLOと原料空気である圧縮空気Airとが熱交換され、低純度液化酸素HLOが、液体から常温(例えば、10℃)に近い気体(低純度酸素ガス)に変化する。
【0111】
(10)上記のコントロールバルブCV7及びコントロールバルブCV8の開度は、最適な気液混合比になるように、計算によって予め設定された開度比(例えば、CV7:CV8=1:3)で、制御部においてプログラムされ、低純度酸素ガスHGOと低純度液化酸素HLOとが気液混合器85で混合されて凝縮器8に気液二相流状態で導入される。
【0112】
(11)低純度窒素ガス導入ラインF15の経路中に設けられたコントロールバルブCV12は、圧力計PD3で計測される液化器11内の圧力P3が、予め設定された圧力(例えば、0.2MPa)になるように、制御部によって開度が制御される。
【0113】
(12)冷却器10と液化器11とは、第1の実施形態の製造装置1の場合と同様、同じ高さに位置するように設計・設置される。また、冷却器10内における液化酸素LOの液面L3の高さは、液面センサLD3によって管理され(例えば、冷却器10の内部高さの2/3)、液面L3が設定値以下の場合はバルブV9が開状態となり、液面L3が設定値以上の場合はバルブV9が閉状態となる。
【0114】
(13)圧力計PD6で計測される冷却器10内の圧力P6は、圧力計PD3で計測される液化器11内の圧力に連動して一定値で低く設定される(例えば、P6(MPa)=P3(MPa)―0.04MPa)。
【0115】
(14)冷却器10内の圧力P6は、制御部によるバルブV10の開閉制御により、予め設定した圧力(例えば、0.16MPa)に保持される。
【0116】
(15)液面センサLD4で検出される、凝縮器8内における液化酸素LOの液面L4の高さは、制御部によるバルブV11の開閉制御で一定高さに保持される。
【0117】
(16)液化器11から導出された窒素ガスGNは、第6の熱交換器12Aにおいて、第5の熱交換器4Aから導出された過冷却液化空気OLAirとの熱交換で冷却され、液化窒素LNとなる。
【0118】
(17)第6の熱交換器12Aから液化窒素ラインF27を介して導出された液化窒素LNは、第2の液化窒素貯槽13に導入される。
【0119】
(18)圧力計PD2で計測される第2の液化窒素貯槽13内の圧力P2は、予め設定された圧力(例えば、0.15MPa)で管理される。
【0120】
[作用効果]
本実施形態の液化流体の製造装置1Aによれば、上記構成を備えることにより、第1の実施形態の製造装置1と同様の作用・効果が得られる。
さらに、本実施形態の製造装置1Aによれば、第5の熱交換器4Aにおいて、液化水素LHと圧縮空気Airとの間で熱交換を行い、液化水素LHを気化させて水素ガスGHを生成させる構成なので、装置全体が簡便な構成となり、さらなる小型化及び低コスト化が可能になる。
【0121】
<本発明の他の形態>
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は上記のような特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の液化流体の製造装置は、精留塔等の大型の設備を必要とせず、小型且つ簡便な構成で、工業ガスを使用する工場等においてオンサイトで稼働させることができるとともに、液化水素の熱交換時に発生する冷熱を有効利用することで液化窒素や液化酸素を製造することが可能なものである。従って、本発明の液化流体の製造装置は、例えば、各種工場の内部に設置される発電設備等において、エネルギーとして用いられる水素ガスを、液化水素を熱交換することで、オンサイトで製造する用途、並びに、各種工場の内部において液化窒素や液化酸素を製造する用途において、非常に有用である。
【符号の説明】
【0123】
1,1A…液化流体の製造装置(製造装置)
2…液化水素貯槽
3…第1の液化窒素貯槽
4…第1の熱交換器(第1の熱交換手段)
4A…第5の熱交換器(第5の熱交換手段)
5…空気圧縮機
6…第2の熱交換器(第2の熱交換手段)
7…気液分離槽
75…気液分離器(気液分離手段)
8…凝縮器
85…気液混合器
9…液化酸素貯槽
10…冷却器
11…液化器
11A,11B,11C…プレートフィン
12…第3の熱交換器(第3の熱交換手段)
12A…第6の熱交換器(第6の熱交換手段)
13…第2の液化窒素貯槽
14…吸着器
15…エアタンク
16…第4の熱交換器
17…水素ガスタンク
F1…液化水素導出ライン
F2…液化窒素導出ライン
F3…液化窒素ライン
F4…圧縮空気導入ライン
F5…液化空気導入ライン
F6…窒素ガスライン
F7…過冷却液化窒素導入ライン
F8…液化窒素ライン
F9…水素ガス導出ライン
F10…低純度液化酸素導出ライン
F11…低純度液化酸素導入ライン
F12…低純度窒素ガス排出ライン
F13…液化酸素導入ライン
F14…液化酸素導入ライン
F15…低純度窒素ガス導入ライン
F16…窒素ガスライン
F17…窒素ガス合流ライン
F18…液化酸素滴下ライン
F19…冷却ライン
F20…酸素ガス排出ライン
F21…窒素ガス排出ライン
F22…混合流体導入ライン
F23…圧縮空気ライン
F24…過冷却液化空気ライン
F25…液化空気ライン
F26…低純度酸素ガス導入ライン
F27…液化窒素ライン
TD1,TD2,TD3,TD4…温度検出器
PD1,PD2,PD3,PD4,PD5,PD6…圧力計
LD1,LD2,LD3,LD4…液面センサ
CV2,CV5,CV7,CV8…コントロールバルブ
V1,V3,V4,V6,V9,V10,V11…バルブ
LH…液化水素
GH…水素ガス
LN…液化窒素
OLN…過冷却液化窒素
GN…窒素ガス
HGN…低純度窒素ガス
LO…液化酸素
HLO…低純度液化酸素
GO…酸素ガス
HGO…低純度酸素ガス
Air…圧縮空気
LAir…液化空気
OLAir…過冷却液化空気
図1
図2
図3