(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023093994
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/175 111
B41J2/175 153
B41J2/175 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209171
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】加藤 知己
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB11
2C056KB15
2C056KD10
(57)【要約】
【課題】簡単な構成でヘッドに対する液体供給経路の液体を液体タンクに戻せる液体を吐出する装置を提供する。
【解決手段】液体を吐出するヘッド2と、液体を収容する液体タンク330と、液体タンク330からヘッド2に対する液体供給経路321と、液体タンク330内を加圧する圧力源331と、圧力源331と液体タンク330とを通じる圧空経路320を開閉する開閉弁350と、流入ポート341、吸引ポート342及び排出ポート343を有するエジェクター340とを備え、エジェクター340の吸引ポート342は液体タンク330に連通し、流入ポート341は圧力源331に連通し、エジェクター340の吸引ポート342と液体タンク330とを通じる吸引経路323を開閉する開閉弁352と、エジェクター340の流入ポート341と圧力源331とを通じる分岐経路322を開閉する開閉弁351とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するヘッドと、
前記液体を収容する液体タンクと、
前記液体タンクから前記ヘッドに対する液体供給経路と、
前記液体タンク内を加圧する圧力源と、
前記圧力源と前記液体タンクとを通じる経路を開閉する第1の弁と、
流入ポート、吸引ポート及び排出ポートを有するエジェクターと、を備え、
前記エジェクターの前記吸引ポートは前記液体タンクに連通し、
前記エジェクターの前記流入ポートは前記圧力源に連通し、
前記エジェクターの前記吸引ポートと前記液体タンクとを通じる経路を開閉する第2の弁と、
前記エジェクターの前記流入ポートと前記圧力源とを通じる経路を開閉する第3の弁と、を備えている
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
前記液体供給経路の連通先を前記ヘッドと大気とに切り替える第4の弁を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記液体タンクの底部に前記液体を外部に取出す液体取出し部を備えている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する装置として、液体収容手段として液体タンクからヘッドに至る液体供給経路(配管)内に残る液体を回収するようにしたものがある。
【0003】
従来、例えば、メインタンクと、吐出ユニットに搭載されたサブタンク及び記録ヘッドとを備え、サブタンク内を加圧することによってサブタンクに収容されているインクを大気開放されたメインタンクに逆流させるものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の構成にあっては、ヘッドとともに吐出ユニットに搭載されるサブタンクを加圧する経路が長くなり、ヘッド走査負荷が増大するという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、簡単な構成でヘッドに対する液体供給経路の液体を液体タンクに戻せるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体を吐出する装置は、
液体を吐出するヘッドと、
前記液体を収容する液体タンクと、
前記液体タンクから前記ヘッドに対する液体供給経路と、
前記液体タンク内を加圧する圧力源と、
前記圧力源と前記液体タンクとを通じる経路を開閉する第1の弁と、
流入ポート、吸引ポート及び排出ポートを有するエジェクターと、を備え、
前記エジェクターの前記吸引ポートは前記液体タンクに連通し、
前記エジェクターの前記流入ポートは前記圧力源に連通し、
前記エジェクターの前記吸引ポートと前記液体タンクとを通じる経路を開閉する第2の弁と、
前記エジェクターの前記流入ポートと前記圧力源とを通じる経路を開閉する第3の弁と、を備えている
構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡単な構成でヘッドに対する液体供給経路の液体を液体タンクに戻せる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置の説明図である。
【
図2】同本実施形態の液体回収動作モードの説明に供する説明図である。
【
図3】同実施形態の各動作モードにおける各弁の開閉状態の説明に供する説明図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る液体を吐出する装置の説明図である。
【
図5】同実施形態の各動作モードにおける各弁の開閉状態の説明に供する説明図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る液体を吐出する装置の側面説明図である。
【
図8】同実施形態の描画動作の一例の説明に供する説明図である。
【
図12】ヘッドの一例の説明に供する1つのノズル部分の断面説明図である。
【
図13】ヘッドの動作説明に供する駆動電圧の一例の説明図である。
【
図14】本発明の第4実施形態に係る液体を吐出する装置で被描画物を航空機として印刷するときの説明に供する説明図である。
【
図15】同液体を吐出する装置の斜視説明図である。
【
図16】本発明の第5実施形態に係る液体を吐出する装置の斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態について
図1を参照して説明する。
図1は同実施形態の説明に供する説明図である。
【0011】
液体を吐出する装置1000は、液体を吐出するヘッド2を備える吐出ユニット1と、ヘッド2に供給する液体311を収容する液体タンク330とを備えている。
【0012】
液体タンク330からヘッド2には液体供給経路321を介して液体311が加圧供給される。ヘッド2は、内部にバルブ機構を備え、画像信号に応じて適宜にバルブを開くことによって加圧供給された液体(インク)を吐出する。
【0013】
そして、液体タンク330を加圧する圧力源331を備えている。圧力源331は、コンプレッサ230で生成された圧力を所要の圧力に調整するレギュレータで構成している。圧力源331と液体タンク330の空気層とは空気経路としての圧空経路320を介して接続されている。圧空経路320には、圧空経路320を開閉する第1の弁である開閉弁350が備えられている。
【0014】
また、流入ポート341、吸引ポート342及び排出ポート343を有するエジェクター340を備えている。エジェクター340は、流入ポート341から排出ポート343に空気が高速に流れることで、吸引ポート342に負圧が形成されものである。
【0015】
そこで、圧空経路320を圧力源331と開閉弁350の間で分岐させて、分岐経路322をエジェクター340の流入ポート341に接続している。また、エジェクター340の吸引ポート342は吸引経路323を介して液体タンク330の空気層に接続している。
【0016】
そして、エジェクター340の流入ポート341と圧力源331を通じる分岐経路322には、分岐経路322を開閉する第2の弁である開閉弁351を備えている。また、エジェクター340の吸引ポート342と液体タンク330とを通じる吸引経路323には、吸引経路323を開閉する第3の弁である開閉弁352を備えている。
【0017】
液体供給経路321のヘッド2の近傍には、液体供給経路321の連通先をヘッド2と大気とに切り替える第4の弁である三方弁353を備えている。なお、三方弁353に代えて複数の開閉弁を組み合わせることもできる。また、三方弁353は吐出ユニット1に搭載している。
【0018】
次に、本実施形態の作用について
図2及び
図3も参照して説明する。
図2は同実施形態の液体回収動作モードの説明に供する説明図、
図3は同実施形態の各動作モードにおける各弁の開閉状態の説明に供する説明図である。なお、
図1及び
図3における破線矢印は矢印の向きにエアーの流れが有ることを、実線矢印は矢印の向きに液体(インク)の流れが有ることを示している。
【0019】
本実施形態では、動作モードとしてモードAとモードBがある。モードAは、ヘッド2から液体を吐出させる印字動作モードである。モードBは液体タンク330からヘッド2までの液体供給経路321の液体を回収する回収動作モードである。
【0020】
モードAでは、
図3にも示すように、三方弁353を液体タンク330とヘッド2が連通する状態にして、開閉弁351、352を閉じて、開閉弁350を開く。これにより、
図1に示すように、圧力源331からのエアーが矢印Bで示すように圧空経路320を通じて液体タンク330に供給されて、液体タンク330内の液体311が加圧される。
【0021】
したがって、液体タンク330から液体供給経路321を介してヘッド2に液体311が供給されて、画像信号などに応じてヘッド2から吐出される。
【0022】
ヘッド2による印字が終了した後、モードBに移行する。
【0023】
モードBでは、まず、開閉弁350を閉じる。次に、開閉弁352を開く。これにより、液体タンク330内の空気層がエジェクター340の吸引ポート342から排出ポート343を経由して外部に放出される。
【0024】
その後、開閉弁351を開くと、空気がエジェクター340の流入ポート341から排出ポート343に高速に流れ(矢印D、E)、吸引ポート342に負圧が形成される。
【0025】
そこで、三方弁353を切り替えて、液体タンク330が液体供給経路321を介して大気開放される状態にすると、
図2に示すように、矢印Cの向きに空気が流入し、液体供給経路321内の液体311が逆流して、液体タンク330に回収される。
【0026】
このように、液体タンク330を加圧する空気経路(圧空経路320)を利用して、液体タンク330内を負圧にし、液体供給経路321内の液体311を逆流させて、液体311を回収する。
【0027】
したがって、装置本体に固定される液体タンク330と吐出ユニット1の間の配管を増加させることなく、簡単な構成でヘッドに対する液体供給経路の液体を液体タンクに戻して回収することができる。
【0028】
特に、液体を吐出する対象(被描画物、画像形成対象物)が、トラックボディーや航空機の機体などの場合には、液体供給経路321が長くなるので、液体の供給と回収を同一の配管で行えることによる配管コスト低減効果、チューブ負荷低減効果がより大きくなる。
【0029】
なお、本実施形態では、三方弁353を備えて、液体回収時には液体供給経路321を大気開放状態にしたが、液体タンク330を脱圧後に、ヘッド2のノズルをオープン状態にしても液体を逆流させることができる。ただし、ヘッド2のノズルは小径で空気を取り込む抵抗が大きいため、液体供給経路321を大気開放した方が、高速で液体を回収できる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態について
図4を参照して説明する。
図4は同実施形態に係る液体を吐出する装置の説明図である。
【0031】
本実施形態では、前記第1実施形態の構成において、液体タンク330の底部に、液体311を外部に取出す液体取出し部となる排出経路371が接続されている。排出経路371は、排出口が排出容器370に臨んでおり、また、排出経路371を開閉する開閉弁354が設けられている。
【0032】
次に、本実施形態の作用について
図5も参照して説明する。
図5は同実施形態の各動作モードにおける各弁の開閉状態の説明に供する説明図である。
【0033】
モードA、モードBにおける開閉弁350~352、三方弁353の状態は、前記第1実施形態と同じである。これらのモードA、モードBにおいては、排出経路371の開閉弁354は閉じている。
【0034】
本実施形態では、モードAで印字、モードBで液体タンク330への液体311の回収を行った後、モードCに移行する。
【0035】
モードCでは、開閉弁350を開き、開閉弁351、352は閉じ、三方353は液体タンク330とヘッド2が連通する状態にする。開閉弁350~352、354をモードCの状態にセットすると、圧力源331のコンプレッサ230で加圧された空気が液体タンク330に供給され、液体タンク330内の液体311が矢印Hのように流れて、排出経路371から排出容器370に液体を取り出すことができる。
【0036】
このとき、液体タンク330内を空にすれば、液体タンク330に洗浄液を入れて液体タンク330及びヘッド2までの液体供給経路321を洗浄することができる。つまり、液体を無駄にすることなく、装置の配管を洗浄することが可能となる。
【0037】
次に、本発明の第3実施形態について
図6及び
図7を参照して説明する。
図6は同実施形態に係る液体を吐出する装置の側面説明図、
図7は同じく平面説明図である。
【0038】
液体を吐出する装置1000は、対象物の一例である被描画物100に対向して設けられ、被描画物100に向けて液体の一例であるインクを吐出する吐出ユニット1を備える。
【0039】
液体を吐出する装置1000は、吐出ユニット1をZ軸方向に移動可能に保持するZ軸レール103と、Z軸レール103をX軸方向に移動可能に保持するX軸レール101と、X軸レール101をY軸方向に移動可能に保持するY軸レール102を備える。X軸レール101、Y軸レール102、及びZ軸レール103は、吐出ユニット1を移動可能に保持するガイド部および保持部の一例である。
【0040】
また、液体を吐出する装置1000は、吐出ユニット1をZ軸レール103に沿ってZ軸方向に移動させるZ方向駆動部111と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX軸方向に移動させるX方向駆動部112と、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY軸方向に移動させるY方向駆動部113とを備える。
【0041】
次に、本実施形態の描画動作の一例について
図8を参照して説明する。
図8は同描画動作の説明に供する説明図であり、(a)は描画時の吐出ユニットの移動経路を示す描画面を正面から見た説明図、(b)は平面説明図である。
【0042】
描画命令を受けると、吐出ユニット1は
図8(a)に示す印字開始待機位置120に移動し、その後、+X方向に移動しながら画像情報に基づいた印字動作を行う。吐出ユニット1が描画領域を外れると、反転位置121で停止する。ここで、描画終了かどうかを判定し、描画データがあれば、-Y方向に吐出ユニット1が移動後、-X方向に吐出ユニット1が移動しながら印字を行う。この動作を描画データがなくなるまで継続する。
【0043】
なお、被描画物100は、平面板の形態として図示しているが、車やトラック、航空機などの車両のボディなどのように鉛直に近い面もしくは曲率半径の大きい面であれば曲面でもよい。
【0044】
次に、吐出ユニットの一例について
図9ないし
図11を参照して説明する。
図9は同吐出ユニットの斜視説明図、
図10は同じく側面説明図、
図11は同じくヘッド部の正面説明図である。
【0045】
吐出ユニット1は、液体を吐出するヘッド部(液体吐出部)20を有し、ヘッド部20には、吐出面であるノズル面202aを払拭する払拭部材501を含むクリーニング機構部500を一体に備えている。また、前記実施形態で説明した三方弁353も吐出ユニット1に含まれる。
【0046】
ヘッド部20は、異なる色の液体(インク)を吐出する複数(ここでは、5つ)のヘッド2(カラーヘッド2C1~2C4、白ヘッド2W)がホルダ部材21に保持されている。カラーヘッド2C1~2C4は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M),ブラック(K)の各色のインクをそれぞれ吐出する。
【0047】
ヘッド2は、液体を吐出する複数のノズル202が配列され、ノズル202の配列方向を、Y方向に対して傾斜させて筐体となるホルダ部材21に保持している。
【0048】
クリーニング機構部500は、ヘッド2のノズル面202aを払拭する払拭部材501と、ヘッド2のノズル面202aに洗浄液を吐出又は滴下して付与する洗浄液付与手段である洗浄液吐出部502とを備えている。
【0049】
これらの払拭部材501及び洗浄液吐出部502は、移動部材505に取付けられて保持されている。
【0050】
一方、ヘッド部20のホルダ部材21の両側には、ガイド溝506aを有するガイド部材506、506が取付けられている。ガイド部材506のガイド溝506aには移動部材505の支軸505aが移動可能に嵌合している。つまり、ホルダ部材21は、ヘッド2を保持し、移動部材505を移動可能に支持する筐体となっている。
【0051】
これにより、移動部材505は、ガイド溝506aに倣って、払拭部材501がヘッド2のノズル面202aに対向する位置とノズル面202aから退避する位置との間で移動可能である。
【0052】
そして、移動部材505を移動させる駆動手段としてのロータリエアーシリンダ510を備えている。ロータリエアーシリンダ510に一端部を取り付けたアーム511の他端部に設けた長穴511aと移動部材505の側面に設けたピン部材505bとを移動可能に嵌合している。
【0053】
これにより、ロータリエアーシリンダ510を駆動してアーム511を矢印A方向に回動することで、移動部材505がガイド部材506のガイド溝506aに案内され、
図20に仮想線で示す退避位置から実線で示す対向する位置でもある払拭終了位置まで矢印Bで示すように移動する。この移動部材505の移動によって、払拭部材501でヘッド2のノズル面202aを払拭することができる。
【0054】
このように、吐出ユニット1は、液体を吐出する液体吐出部であるヘッド部20とヘッド部20のヘッド2のノズル面202aを払拭清掃するクリーニング機構部500を一体に備えている。
【0055】
これにより、吐出ユニット1がいずれの位置にあっても、液体を吐出していないときであれば、ヘッド2のノズル面202aを払拭して清浄化することができ、必要なときに吐出面(ノズル面)を随時クリーニングできる。
【0056】
次に、ヘッドの一例について
図12を参照して説明する。
図12は同ヘッドの1つのノズル部分の断面説明図である。なお、
図22(a)はノズルが閉じている状態、(b)はノズルが開いている状態をそれぞれ示している。
【0057】
ヘッド2は、先端部に液体を吐出するノズル202が設けられ、ノズル202の近傍に加圧された液体(インク)が注入される注入口203が設けられた中空状のハウジング204を備えている。
【0058】
ハウジング204内には、外部からの電圧の印加に応じて伸縮する圧電素子205と、ノズル202を開閉する弁体207と、弁体207と圧電素子205との間に配置され、弁体207をノズル202に対して進退させる弁体移動手段208とが配置されている。
【0059】
圧電素子205はケース215内に収容され、電圧印加用の一対の配線部材210a,210bが接続されて外部に引き出されている。
【0060】
弁体207とハウジング204との間には、注入口203から注入される加圧液体の圧電素子205側への侵入を阻止する封止部材206が配置されている。これにより、注入口203から加圧液体が注入される液室209が形成される。
【0061】
ハウジング204は、円筒状、角筒状などの筒状体であり、ノズル202及び注入口203以外は閉じられている。ノズル202は、ハウジング204の先端部に開けられた開口であり、液体311を吐出する。注入口203は、ノズル202の近傍のハウジング204の側面に設けられ、加圧された液体が連続的に供給される。
【0062】
圧電素子205は、ジルコニアセラミックス等を用いて形成されている。圧電素子205には、配線部材210a、210bを介して駆動波形(駆動電圧)が与えられる。
【0063】
封止部材206は、例えばパッキン、Oリング等であり、封止部材206を弁体207に外嵌することで、注入口203側から圧電素子205側へ液体が流入することを防止している。
【0064】
弁体移動手段208は、ゴム、軟質樹脂、薄い金属板等で形成された復元可能に変形可能な弾性部材で形成された断面略台形状の変形部208aを有する。変形部208aの断面略台形状の上辺に相当する連結部208eは弁体207の基端側の面に固定されている。変形部208aの断面略台形状の底辺に相当する長辺側は屈曲辺部208dと連結されている。屈曲辺部208dは、径方向中央部がガイド部208cと連結され、径方向中央部と端部との間が、一端がケース215に連結された固定部212と連結されている。
【0065】
この弁体移動手段208は、圧電素子205に所定の電圧が印加されて圧電素子205が伸張することにより、
図12(b)に示すように、ガイド部208cがノズル202側へ例えば距離eだけ移動し、屈曲辺部208dの中央部付近が押し込まれる。
【0066】
このとき、屈曲辺部208dは、ガイド部208cの外周側が固定部212に連結されているので、固定部212との連結部と起点として矢印方向に変位する。屈曲辺部208dが矢印方向に変位することで、変形部208aは拡開するので、弁体207との連結部208eが矢印方向に引き込まれる。
【0067】
この弁体移動手段208の変形部208aの変形により、変形部208aの連結部208eに固定された弁体207が距離dだけ引き込まれて、ノズル202が開かれる。
【0068】
つまり、圧電素子205の伸張によってガイド部208cがノズル202側へ距離eだけ移動することで、弁体207はガイド部208の移動方向(圧電素子205の伸長方向)と逆方向に距離でだけ移動する。
【0069】
ここで、弁体移動手段208の変形部208aにおける弁体207との連結部208eと屈曲辺部208dとの距離や屈曲辺部208dの長さを調整することにより、弁体207の移動量を圧電素子205の変位量よりも長くすることができる。
【0070】
つまり、弁体移動手段208は圧電素子205の変位量を増幅することができ、圧電素子205の変位量を少なくすることができるため、圧電素子205を小型化することができる。
【0071】
次に、ヘッド2の動作について
図13も参照して説明する。
図13は同動作説明に供する駆動電圧の一例の説明図である。
【0072】
ヘッド2は、圧電素子205に電圧が印加されていない状態においては、圧電素子205は収縮状態にあるので、弁体移動手段208には圧電素子205による力が加わらない状態にある。このとき、弁体移動手段208の変形部208aは、
図12(a)に示すように、膨らんだ状態(通常状態)になっており、弁体207は変形部208aの弾性力によってノズル202方向に付勢されている。したがって、ノズル202は弁体207の端面によって閉じられており、ノズル202から液体311が吐出されることはない。
【0073】
ここで、圧電素子205に対し、
図13(a)に示すように、波形P1の電圧(+EV)を印加することで、圧電素子205が伸長し、前述したように、弁体移動手段208の変形部208aが変形して、弁体207を
図12(b)に示す矢印方向に引き込む。これにより、弁体207がノズル202を開くので、注入口203から注入されている加圧液体311がノズル202から吐出される。
【0074】
一方、
図13(b)に示すように、圧電素子205に対する波形P2の電圧(+EV)が途中で消失した波形P2が印加されたり、また、
図13(c)に示すように印加されるべき波形の電圧が停電等によって圧電素子205に印加されなかったりすることがある。
【0075】
このとき、圧電素子205は収縮した状態を保持するので、弁体移動手段208の変形部208aは
図12(a)に示す通常状態に戻っている。したがって、弁体207はノズル202を閉じた状態を維持するので、液体311がノズル202から吐出されることはない。
【0076】
これにより、停電等の場合であっても、液体311がノズル202から不用意に漏れ出したり、ノズル詰まりを生じたりすることを低減できる。
【0077】
次に、本発明の第4実施形態について
図14及び
図15を参照して説明する。
図14は同実施形態に係る液体を吐出する装置で被描画物を航空機として印刷するときの説明に供する説明図、
図15は同液体を吐出する装置の斜視説明図である。
【0078】
液体を吐出する装置1000は、前記吐出ユニット1を搭載した移動体である吐出ユニットを往復直線移動させるリニアレール404と、リニアレール404を適宜所定の位置へ移動させ、その位置で保持する多関節ロボット405とを備えている。
【0079】
多関節ロボット405は、複数の関節によって人間の腕のように自由な動きを可能としたロボットアーム405aを備えており、ロボットアーム405aの先端を自由に移動させ、且つ、正確な位置に配置することができる。
【0080】
多関節ロボット405としては、例えば、6つの軸、すなわち6つの関節を備えた6軸制御型の産業用ロボットを用いることができる。6軸型の多関節ロボットによれば予め動作に関する情報をティーチングしておくことできわめて正確、且つ、迅速にリニアレール404を被描画物100(航空機)の所定位置に対峙させることができる。ロボット405は、6軸に限定されるものではなく、5軸、7軸など適宜の軸数を備えた多関節ロボットを用いることができる。
【0081】
このロボット405のロボットアーム405aに二股に枝分かれしたフォーク状の支持部材424を設け、この支持部材424の左側の枝部424aの先端に垂直リニアレール423aを、右側の枝部424bの先端に垂直リニアレール423bを平行になるようにして取り付けている。
【0082】
そして、吐出ユニット1を移動可能に保持したリニアレール404の両端を、2つの垂直リニアレール423a,423bにそれぞれ架け渡すようにして支持させている。
【0083】
吐出ユニット1は、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ホワイトの各色の液体を吐出する複数のヘッド2、又は、複数のノズル列を有するヘッド2を備えている。この吐出ユニット1の各ヘッド2又はヘッド2の各ノズル列に対しては、タンク330から各色の液体が加圧供給される。
【0084】
この液体を吐出する装置1においては、ロボット405によってリニアレール404を被描画物100の所要の描画領域に対向する位置に移動させ、印刷データに応じて吐出ユニット1をリニアレール404に沿って移動しながら、ヘッド2を駆動して、印刷を行う。
【0085】
そして、1ライン分の印刷が終了したときに、垂直リニアレール423a,423bを駆動することにより、吐出ユニット1のヘッド2をあるラインから次のラインに移動させる。
【0086】
この動作を繰り返して、被描画物100の所要の印刷領域に印刷することができる。
【0087】
このとき、吐出ユニット1(ヘッド2)の移動距離が長くなるが、吐出ユニット1は払拭部材501を備えてヘッド2のノズル面202aを随時クリーニングすることができる。
【0088】
これにより、少ないダウンタイムで、高品質印刷を継続して行うことができる。
【0089】
次に、本発明の第5実施形態について
図16及び
図17を参照して説明する。
図16は同実施形態に係る液体を吐出する装置の斜視説明図、
図17は同装置の駆動部の斜視説明図である。
【0090】
液体を吐出する装置1000は、車両のボンネットなどの曲面を有する被描画物100に対向させて据付けられる移動可能な枠ユニット802を備えている。枠ユニット802を構成する左右の枠部材810,811には、枠部材810,811に架け渡されるようにして、可動ユニット813が垂直方向(Y方向)へ昇降可能に取り付けられている。
【0091】
可動ユニット813には、可動ユニット813上を水平方向(X方向)に往復移動可能に配置されたモータを内蔵する駆動部803と、この駆動部803に取り付けられて被描画物100へ向けて液体を吐出する吐出ユニット1とが搭載されている。
【0092】
また、吐出ユニット1からの液体の吐出、駆動部803の往復移動及び可動ユニット813の昇降を制御するコントローラ805と、このコントローラ805に対して指示を行うPC(パーソナルコンピュータ)などの情報処理装置806とを備えている。情報処理装置806には、形状や大きさなどの被描画物100に関する情報を記録保存するデータベース部(DB部)807が接続されている。
【0093】
枠ユニット802は、金属柱状体等によって形成された上下左右の枠部材808,809,810,811と、枠ユニット802を自立させるために下側の枠部材809の両側に直角且つ水平に取り付けられた左右の脚部材812a,812bを備えている。
【0094】
そして、左右の枠部材810,811の間に架け渡された可動ユニット813は、駆動部803を支持した状態で昇降可能に構成されている。
【0095】
被描画物100は、液体の吐出方向(Z方向)に直角に、すなわち、枠ユニット802の上下左右の枠部材808,809,810,811によって形成される平面に対向するようにして配置される。
【0096】
この場合、印刷を行うべき所定の位置に被描画物100を配置させるためには、例えば、多関節型アームロボットのアームの先端に取り付けたチャックによって被描画物100の描画領域の裏側を吸着保持させることによって行うことができる。多関節型アームロボットを用いることで被描画物100をプリント位置に正確に配置することが可能となり、被描画物100の姿勢を適宜に変更することもできる。
【0097】
駆動部803は、
図17に示すように、可動ユニット813上を水平方向(X方向)に往復移動可能に配置されている。そして、可動ユニット813は、枠ユニット802の左右の枠部材810,811に架け渡されるようにして水平に配設されたレール830と、このレール830と平行となるように配設されたラックギヤ831と、レール830の一部に外嵌されてスライドしながら移動するリニアガイド832と、このリニアガイド832と連結されてラックギヤ831と噛合うピニオンギヤユニット833と、このピニオンギヤユニット833を回転駆動する減速機836付きのモータ834と、印刷点位置検出用のロータリエンコーダ835を備えて構成されている。
【0098】
モータ834を駆動(正転又は逆転)することによって吐出ユニット1を可動ユニット813に沿って右方向または左方向に移動させる。そして、駆動部803は吐出ユニット1のX方向の駆動機構として機能する。なお、減速機836の筐体の両側にはリミットスイッチ837a、837bが取付けられている。
【0099】
吐出ユニット1は、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、ホワイトの各色の液体を吐出する複数のヘッド2、又は、複数のノズル列を有するヘッド2を備えている。この吐出ユニット1の各ヘッド2又はヘッド2の各ノズル列に対しては、前述した液体供給系と同様にして、タンク330から各色の液体が加圧供給される。
【0100】
この液体を吐出する装置1においては、可動ユニット813をY方向に移動させ、吐出ユニット1をX方向に移動させて、被描画物100に所要の画像を描画(印刷)する。
【0101】
このとき、吐出ユニット1(ヘッド2)の移動距離が長くなるが、吐出ユニット1は払拭部材501を備えてヘッド2のノズル面202aを随時クリーニングすることができる。
【0102】
これにより、少ないダウンタイムで、高品質印刷を継続して行うことができる。
【0103】
また、本発明における「液体を吐出する装置」には、ヘッド、ヘッドモジュール又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0104】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0105】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0106】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0107】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0108】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0109】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0110】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0111】
吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0112】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【符号の説明】
【0113】
1 吐出ユニット
2 ヘッド
321 液体供給経路
330 液体タンク
331 圧力源
340 エジェクター
350 開閉弁(第1の弁)
351 開閉弁(第2の弁)
352 開閉弁(第3の弁)
353 三方弁(第4の弁)
1000 液体を吐出する装置