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特開2023-94002湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、及び、合成皮革
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094002
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、及び、合成皮革
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/30 20060101AFI20230628BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20230628BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20230628BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20230628BHJP
   D06N 3/14 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
C08G18/30 070
C08G18/10
C08G18/48
C08G18/08 038
D06N3/14 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209189
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】千々和 宏之
(72)【発明者】
【氏名】小松崎 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】藤原 豊邦
(72)【発明者】
【氏名】南田 至彦
(72)【発明者】
【氏名】金川 善典
【テーマコード(参考)】
4F055
4J034
【Fターム(参考)】
4F055AA01
4F055AA03
4F055BA12
4F055BA13
4F055DA08
4F055EA01
4F055EA04
4F055EA21
4F055EA30
4F055FA08
4F055FA18
4F055GA32
4J034CE01
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034DG03
4J034DG04
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA06
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC06
4J034HC09
4J034HC12
4J034HC13
4J034HC22
4J034HC46
4J034HC52
4J034HC61
4J034HC63
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034JA42
4J034MA16
4J034QB10
4J034QB14
4J034QC04
4J034RA03
4J034RA08
(57)【要約】
【課題】本発明が解決しようとする課題は、熱可塑性樹脂層への接着性、及び、低温屈曲性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、イソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(A)、及び、リン酸エステル(B)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記ホットメルトプレポリマー(A)が、ポリエーテルポリオール(a1)を50質量%以上含むポリオール(a)を原料とするものであり、前記リン酸エステル(B)の含有量が、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0.2質量部を超えるものであることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(A)、及び、リン酸エステル(B)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、
前記ホットメルトプレポリマー(A)が、ポリエーテルポリオール(a1)を50質量%以上含むポリオール(a)を原料とするものであり、
前記リン酸エステル(B)の含有量が、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0.2質量部を超えるものであることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項3】
少なくとも、熱可塑性樹脂層、及び、請求項2記載の接着剤層とを有することを特徴とする合成皮革。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物、接着剤、及び、合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
合成皮革には、表皮材としてポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等が使用されており、これらの表皮材を布地や不織布などの基布と接着剤で貼り合せた物が一般的に使用されている(例えば、特許文献1を参照。)。中でも接着剤はこれまで溶剤系のものが広く普及し一般的に使用されてきたが、環境に向けた取り組みとして地域・国・企業からVOCの低減が求められており、溶剤系から水系や無溶剤の接着剤への置き換えが必要となっている。
【0003】
無溶剤接着剤としてはポリウレタン系の湿気硬化型ホットメルト接着剤(RHM)での検討が盛んに行われている。従来の溶剤系や水系は低粘度の配合液を表皮層へのコーティングした後に乾燥させ溶剤を除去し、必要な場合は熟成をさせることで強固な皮膜が得られた。低粘度のため表皮材への濡れ性も良く、密着性が得られやすいことが特徴である。
一方、RHMは熱による溶解させたものを使用するがその粘度は溶剤系や水系よりも高く、表皮層への濡れ性は得られにくい。中でもPVC表皮材などの被着体に対しては、一般的にRHMとの濡れ性が低く、従来のRHMを使用しても、接着性の点で充分な性能を発揮することが困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008-514403号公報2021-73135
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、熱可塑性樹脂層への接着性、及び、低温屈曲性に優れる湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、イソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(A)、及び、リン酸エステル(B)を含有する湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物であって、前記ホットメルトプレポリマー(A)が、ポリエーテルポリオール(a1)を50質量%以上含むポリオール(a)を原料とするものであり、前記リン酸エステル(B)の含有量が、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0.2質量部を超えるものであることを特徴とする湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤を提供するものである。また、本発明は、少なくとも、熱可塑性樹脂層、及び、前記接着剤層とを有することを特徴とする合成皮革を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、熱可塑性樹脂層への接着性、及び、低温屈曲性に優れるものである。よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を表皮材とする合成皮革の製造に特に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、特定のポリオール(a)を原料とするイソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(A)、及び、特定量のリン酸エステル(B)を含有するものである。
【0010】
前記イソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(A)は、優れた低温屈曲性を得るうえで、ポリエーテルポリオール(a1)を50質量%以上含むポリオール(a)を原料とすることが必須である。このように設計することで、接着剤をガラス転移温度を低下させることができるため、優れた低温屈曲性を得ることができる。前記ポリエーテルポリオール(a1)の使用量としては、より一層優れた低温屈曲性が得られる点から、ポリオール(a)中50~90質量%が好ましく、55~70質量%がより好ましい。
【0011】
前記ポリエーテルポリオール(a1)としては、例えば、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシテトラメチレングリコール等を用いることができる。これらのポリオールは単独でも2種以上を併用してもよい。これらの中でも、より一層優れた低温屈曲性が得られる点から、ポリプロピレングリコール及び/又はポリテトラメチレングリコールが好ましく、更により一層優れた耐湿熱性が得られる点から、ポリテトラメチレングリコールがより好ましい。
【0012】
前記ポリオール(a)としては、前記ポリエーテルポリオール(a)以外にもその他のポリオールを併用することができる。前記その他のポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、シリコンジオール、アクリルジオールなど市販のポリオールを用いることができる。これらのポリオールは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記ポリオール(a)の数平均分子量としては、より一層優れた接着性、低温屈曲性、及び、機械的強度が得られる点から、それぞれ500~10,000が好ましく、1,000~5,000がより好ましい。なお、前記ポリオール(a)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0014】
前記イソシアネート基を有するホットメルトウレタンプレポリマー(A)は、例えば、前記ポリオール(a)及びポリイソシアネート(b)との反応物を用いることができる。
【0015】
前記ポリイソシアネート(b)としては、例えば、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネートイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらの中でも、より一層優れた反応性および接着性が得られる点から、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、ジフェニルメタンジイソシアネートがより好ましい。
【0016】
前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A)は、空気中やウレタンプレポリマーが塗布される基材や被着体中に存在する水分と反応して架橋構造を形成しうるイソシアネート基をポリマー末端や分子内に有するものである。
【0017】
前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A)の製造方法としては、例えば、前記ポリイソシアネート(b)の入った反応容器に、前記ポリオール(a)を滴下した後に加熱し、前記ポリイソシアネート(b)の有するイソシアネート基が、前記ポリオール(a)の有する水酸基に対して過剰となる条件で反応させることによって製造することができる。
【0018】
前記ポリオール(a)及び前記ポリイソシアネート(b)を反応させる際の、前記ポリオール(a)が有する水酸基と、前記ポリイソシアネート(b)含有するイソシアネート基とのモル比[NCO/OH]としては、より一層優れたホットメルト性、接着性、及び、低温屈曲性が得られる点から、1.3~2.5が好ましく、1.5~2.0がより好ましい。
【0019】
前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基含有率(以下、「NCO%」と略記する。)としては、より一層優れたホットメルト性、接着性、及び、低温屈曲性が得られる点から、2.0~5.0質量%が好ましく、2.5~3.5質量%がより好ましい。なお、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A)のNCO%は、JISK1603-1:2007に準拠し、電位差滴定法により測定した値を示す。
【0020】
前記リン酸エステル(B)は優れた熱可塑性樹脂層への接着性を得るうえで必須の成分である。前記リン酸エステル(B)を添加することで、熱可塑性樹脂とRHMとの界面の相溶性を向上させ、優れた接着性が得られる。
【0021】
前記リン酸エステル(B)としては、例えば、下記式(1)で示される化合物を用いることができ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0022】
【化1】
(式(1)中、nは1又は2を示し、Rはアルキル基を示す。)
【0023】
前記リン酸エステル(B)としては、より一層優れた熱可塑性樹脂層への接着性が得られる点から、前記式(1)で示される化合物のうち、Rが炭素原子数1~10のものが好ましく、Rが炭素原子数1~8のものがより好ましい。
【0024】
また、前記リン酸エステル(B)の含有量は、前記効果が得られる点から、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0.2質量部を超えることが必須である。前記リン酸エステル(B)の含有量としては、より一層優れた熱可塑性樹脂層への接着性が得られる点から、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A)100質量部に対して、0.2~1.0質量部が好ましく、0.25~0.60質量部がより好ましい。
【0025】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、前記ホットメルトウレタンプレポリマー(A)及び前記リン酸エステル(B)を必須成分として含有するが、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0026】
前記その他の添加剤としては、例えば、ウレタン化触媒、中和剤、架橋剤、シランカップリング剤、増粘剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、発泡剤を添加して発泡体とした場合でも、優れた接着性、及び、低温屈曲性を有する。
【0027】
以上、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、熱可塑性樹脂層への接着性、及び、低温屈曲性に優れるものである。よって、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を表皮材とする合成皮革の製造に特に好適に用いることができる。
【0028】
次に、本発明の合成皮革について説明する。
【0029】
前記合成皮革は、少なくとも熱可塑性樹脂層、及び、前記の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を含有する接着剤層を有するものであり、例えば、基材、前記接着剤層、及び、熱可塑性樹脂層を順次積層したものが挙げられる。
【0030】
前記基材としては、例えば、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維、綿、麻、絹、羊毛、グラスファイバー、炭素繊維、それらの混紡繊維等による不織布、織布、編み物などを用いることができる。
【0031】
前記熱可塑性樹脂層としては、例えば、公知のポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、TPO(Thermoplastic Olefinic Elastomer)、熱可塑性エステル系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン等により形成されたものを用いることができる。本発明においては、前記熱可塑性樹脂として、ポリ塩化ビニル、TPO、熱可塑性エステル系エラストマー、熱可塑性ポリウレタンを用いた場合であっても優れた接着性、及び、低温屈曲性を有し、特に、難密着であるポリ塩化ビニルについては、発泡体でも未発泡体であっても優れた接着性、及び、低温屈曲性を有する。
【0032】
前記接着剤層は、本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物により形成されるが、その形成方法としては、例えば、前記湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を100~140℃で溶融した後、ロールコーター、スプレーコーター、T-ダイコーター、ナイフコーター、コンマコーター等のコーター方式;ディスペンサー、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷等の精密方式;ノズル塗布などを使用して前記熱可塑性樹脂層又は前記基材に塗布し、その後貼り合わせる方法が挙げられる。
【0033】
また、前記接着剤により2つの叢を貼り合わせた後は、必要に応じて接着剤を乾燥、養生を公知の方法で行うことができる。
【0034】
前記合成皮革としては、前記熱可塑性樹脂層のうえに、更に表面処理層を設けてもよい。前記表面処理層としては、例えば、公知の溶剤系ウレタン樹脂、水系ウレタン樹脂、溶剤系アクリル樹脂、水系アクリル樹脂等により形成されたものを用いることができる。
【実施例0035】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0036】
[実施例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、ポリテトラメチレングリコール(数平均分子量;2、000、以下「PEt-1」と略記する。)を50質量部、芳香族ポリエステルポリオール(1,6-ヘキサンジオール、及びオルトフタル酸を反応させたもの、数平均分子量;2、000、以下「PEs-1」と略記する。)を30質量部、脂肪族ポリエステルポリオール(1,6-ヘキサンジオール、及びセバシン酸を反応させたもの、数平均分子量;3,500、以下「PEs-2」と略記する。)を20質量部入れ、混合し、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。次いで、フラスコ内を90℃に冷却し、70℃で溶融した4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下「MDI」と略記する。)を23質量部加え、窒素雰囲気下でイソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させ、ホットメルトウレタンプレポリマーを得た。このホットメルトウレタンプレポリマー100質量部に対し、リン酸エステル(リン酸モノブチル及びリン酸ジブチルの混合物、平均分子量;182、以下「リン酸エステル(1)」と略記する。)0.37質量部を配合し、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(1)を得た。
【0037】
[実施例2]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、PEt-1を55質量部、PEs-1を30質量部、脂肪族ポリエステルポリオール(エチレングリコール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、及びアジピン酸を反応させたもの、数平均分子量;5,500、以下「PEs-3」と略記する。)を15質量部入れ、混合し、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。次いで、フラスコ内を90℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを20質量部加え、窒素雰囲気下でイソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させ、ホットメルトウレタンプレポリマーを得た。このホットメルトウレタンプレポリマー100質量部に対し、リン酸エステル(1)0.48質量部を配合し、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(2)を得た。
【0038】
[実施例3]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、ポリプロピレングリコール(数平均分子量;2,000,以下「PEt-2」と略記する。)を55質量部、PEs-1を20質量部、PEs-2を25質量部入れ、混合し、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。次いで、フラスコ内を90℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを21質量部加え、窒素雰囲気下でイソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させ、ホットメルトウレタンプレポリマーを得た。このホットメルトウレタンプレポリマー100質量部に対し、リン酸エステル(1)0.30質量部を配合し、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(3)を得た。
【0039】
[実施例4]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、PEt-1を60質量部、PEs-1を25質量部、PEs-2を15質量部入れ、混合し、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。次いで、フラスコ内を90℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを22質量部加え、窒素雰囲気下でイソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させ、ホットメルトウレタンプレポリマーを得た。このホットメルトウレタンプレポリマー100質量部に対し、リン酸エステル(1)0.37質量部を配合し、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(4)を得た。
【0040】
[実施例5]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、PEt-2を65質量部、PEs-1を25質量部、PEs-2を15質量部入れ、混合し、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。次いで、フラスコ内を90℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを24質量部加え、窒素雰囲気下でイソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させ、ホットメルトウレタンプレポリマーを得た。このホットメルトウレタンプレポリマー100質量部に対し、リン酸エステル(1)0.52質量部を配合し、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(5)を得た。
【0041】
[実施例6]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、PEt-1を65質量部、PEs-1を15質量部、PEs-3を20質量部入れ、混合し、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。次いで、フラスコ内を90℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを21質量部加え、窒素雰囲気下でイソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させ、ホットメルトウレタンプレポリマーを得た。このホットメルトウレタンプレポリマー100質量部に対し、リン酸エステル(1)0.30質量部を配合し、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(6)を得た。
【0042】
[実施例7]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、PEt-1を30質量部、PEt-2を30質量部、PEs-1を20質量部、PEs-2を20質量部入れ、混合し、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。次いで、フラスコ内を90℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを22質量部加え、窒素雰囲気下でイソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させ、ホットメルトウレタンプレポリマーを得た。このホットメルトウレタンプレポリマー100質量部に対し、リン酸エステル(1)0.36質量部を配合し、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(7)を得た。
【0043】
[比較例1]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、PEt-1を55質量部、PEs-1を20質量部、PEs-2を15質量部入れ、混合し、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。次いで、フラスコ内を90℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを20質量部加え、窒素雰囲気下でイソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させ、ホットメルトウレタンプレポリマーを得た。このホットメルトウレタンプレポリマー100質量部に対し、リン酸エステル(1)0.11質量部を配合し、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(R1)を得た。
【0044】
[比較例2]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、PEt-1を60質量部、PEs-1を25質量部、PEs-2を15質量部入れ、混合し、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。次いで、フラスコ内を90℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを22質量部加え、窒素雰囲気下でイソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させ、ホットメルトウレタンプレポリマーを得た。このホットメルトウレタンプレポリマー100質量部に対し、リン酸エステル(1)0.06質量部を配合し、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(R2)を得た。
【0045】
[比較例3]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、PEt-1を35質量部、PEs-1を35質量部、PEs-3を30質量部入れ、混合し、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。次いで、フラスコ内を90℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを19質量部加え、窒素雰囲気下でイソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させ、ホットメルトウレタンプレポリマーを得、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(R3)を得た。
【0046】
[比較例4]
温度計、撹拌機、不活性ガス導入口および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、PEt-1を30質量部、PEs-1を45質量部、PEs-3を25質量部入れ、混合し、100℃で減圧加熱することにより、フラスコ内の水分が0.05質量%以下となるまで脱水した。次いで、フラスコ内を90℃に冷却し、70℃で溶融したMDIを20質量部加え、窒素雰囲気下でイソシアネート基含有量が一定となるまで110℃で約3時間反応させ、ホットメルトウレタンプレポリマーを得た。このホットメルトウレタンプレポリマー100質量部に対し、リン酸エステル(1)0.36質量部を配合し、湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物(R4)を得た。
【0047】
[数平均分子量、重量平均分子量の測定方法]
実施例および比較例で用いたポリオールの数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・カラムクロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定し得られた値を示す。
【0048】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0049】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0050】
[合成皮革の作製方法]
温度23℃、湿度50±5%に調整された恒温恒湿室にて、ポリ塩化ビニルシートにグラビアコーターを用いて、実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物を40±5g/mとなるように間欠塗布し、ポリエステル系生地と貼り合わせしたものを温度23℃、湿度50±5%の条件で24時間熟成させることで合成皮革を得た。
【0051】
[接着性の評価方法]
得られたそれぞれの合成皮革に対して、テンシロン(オリエンテック株式会社製テンシロン万能試験機「RTC-1210A」)を使用して、クロスヘッド測度;200mm/分の条件で剥離強度を測定し、接着強度を測定し、6N/cm以上を「○」、6N/cm未満を「×」と評価した。
【0052】
[低温屈曲性の評価方法]
得られたそれぞれの合成皮革をフレキソメーターでの屈曲性試験(-10℃、100回/毎分)を行い、合成皮革の表面に割れが生じるまでの回数を測定し、20,000回以上を「○」、20,000回未満を「×」と評価した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
表1~3中の数字は、質量部を示す。また、リン酸エステル(B)の配合量は、ホットメルトウレタンプレポリマー(A)100質量部に対する質量部を示す。
【0057】
本発明の湿気硬化型ポリウレタンホットメルト樹脂組成物である実施例1~7は、ポリ塩化ビニルへの接着性、及び、低温屈曲性に優れることが分かった。
【0058】
一方、比較例1及び2は、リン酸エステル(B)の含有量が、本発明で規定する範囲を下回る態様であるが、接着性が不良であった。
【0059】
比較例3は、ポリエーテルポリオール(a1)の使用量が、本発明で規定する範囲を下回り、かつリン酸エステル(B)を使用しない態様であるが、接着性及び低温屈曲性が不良であった。
【0060】
比較例4は、ポリエーテルポリオール(a1)の使用量が、本発明で規定する範囲を下回る態様であるが、低温屈曲性が不良であった。