(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094091
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】セメント組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 7/02 20060101AFI20230628BHJP
C04B 24/12 20060101ALI20230628BHJP
C04B 28/04 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
C04B7/02
C04B24/12 Z
C04B28/04
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209351
(22)【出願日】2021-12-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翔平
(72)【発明者】
【氏名】金井 謙介
(72)【発明者】
【氏名】狩野 和弘
(72)【発明者】
【氏名】広門 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】上河内 貴
(72)【発明者】
【氏名】今津 大貴
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112PB20
4G112PC12
(57)【要約】
【課題】ポルトランドセメント中のMgO含有量が高くても、モルタル長期強度に優れるセメント組成物及びポルトランドセメント中のMgO含有量が高くても、モルタル長期強度を向上することができるセメント組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】下記(1)及び(2)を満たすポルトランドセメントと、前記ポルトランドセメント100質量部に対し、0.001~0.025質量部のアルカノールアミンと、を含むセメント組成物。
(1)0.55≦MgO/Fe2O3+CL’SO3/SO3≦0.95
(2)0≦△C4AF
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)及び(2)を満たすポルトランドセメントと、
前記ポルトランドセメント100質量部に対し、0.001~0.025質量部のアルカノールアミンと、
を含むセメント組成物。
(1)0.55≦MgO/Fe2O3+CL’SO3/SO3≦0.95
(2)0≦△C4AF
前記(1)中、MgOは前記ポルトランドセメント中のMgOの質量(質量%)を表し、Fe2O3は前記ポルトランドセメント中のFe2O3の質量(質量%)を表し、SO3は前記ポルトランドセメントのSO3換算量(質量%)を表し、CL’SO3は前記ポルトランドセメントのクリンカのSO3換算量(質量%)を表す。
前記(2)中、△C4AFは、R.C4AFの質量(質量%)とB.C4AFの質量(質量%)との差分(R.C4AF-B.C4AF)を表す。ここで、前記R.C4AFは、粉末X線回析装置で測定した前記ポルトランドセメントのC4AF値を表し、前記B.C4AFは、3.04×Fe2O3を表す。前記B.C4AFにおけるFe2O3は前記ポルトランドセメント中のFe2O3の質量(質量%)を表す。
【請求項2】
前記(1)中、前記MgO/Fe2O3は、0.35を超える請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
前記ポルトランドセメントは、ボーグ式で算出されるC3Sが45~75質量%、C2Sが5~25質量%、C3Aが7~11質量%、C4AFが7~11質量%である普通ポルトランドセメントである請求項1又は2に記載のセメント組成物。
【請求項4】
前記アルカノールアミンの含有量が、前記ポルトランドセメント100質量部に対し、0.005~0.02質量部である請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント組成物。
【請求項5】
前記アルカノールアミンが、ジエタノールイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、及びN-n-ブチルジエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つである請求項1~4のいずれか1項に記載のセメント組成物。
【請求項6】
下記(1)及び(2)を満たすポルトランドセメントと、
前記ポルトランドセメント100質量部に対し、0.001~0.025質量部のアルカノールアミンと、
を混合するセメント組成物の製造方法。
(1)0.55≦MgO/Fe2O3+CL’SO3/SO3≦0.95
(2)0≦△C4AF
前記(1)中、MgOは前記ポルトランドセメント中のMgOの質量(質量%)を表し、Fe2O3は前記ポルトランドセメント中のFe2O3の質量(質量%)を表し、SO3は前記ポルトランドセメントのSO3換算量(質量%)を表し、CL’SO3は前記ポルトランドセメントのクリンカのSO3換算量(質量%)を表す。
前記(2)中、△C4AFは、R.C4AFの質量(質量%)とB.C4AFの質量(質量%)との差分(R.C4AF-B.C4AF)を表す。ここで、前記R.C4AFは、粉末X線回析装置で測定した前記ポルトランドセメントのC4AF値を表し、前記B.C4AFは、3.04×Fe2O3を表す。前記B.C4AFにおけるFe2O3は前記ポルトランドセメント中のFe2O3の質量(質量%)を表す。
【請求項7】
前記(1)中、前記MgO/Fe2O3は、0.35を超える請求項6に記載のセメント組成物の製造方法。
【請求項8】
前記ポルトランドセメントは、ボーグ式で算出されるC3Sが45~75質量%、C2Sが5~25質量%、C3Aが7~11質量%、C4AFが7~11質量%である普通ポルトランドセメントである請求項6又は7に記載のセメント組成物の製造方法。
【請求項9】
前記アルカノールアミンの添加量が、前記ポルトランドセメント100質量部に対し、0.005~0.02質量部である請求項6~8のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
【請求項10】
前記アルカノールアミンが、ジエタノールイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、及びN-n-ブチルジエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つである請求項6~9のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリンカ中には原料事情によりMg、Na、Kといった少量成分が含有されており含有量も変化している。
例えば、非特許文献1には、高MgO条件のセメントは同じアルカリ土類金属であるCaと置換されることが知られており、それにより、非特許文献2に示す通り相対的にビーライト量が減少することから28日材齢等の長期強度が低下することが知られている。非特許文献3にてSO3を増加させることで高MgOでも強さを改善させる可能性があるという知見が得られている。
【0003】
また、特許文献1では、焼成後のセメントクリンカ中のMgO含有量が1.0質量%を超えるとセメントの長期材齢における強度発現性が低下してしまうため、焼成後のポルトランドセメントクリンカ中のMgO含有量が1.0質量%以下となるように調整して原料を調合することが開示されている。
更に、特許文献2では、ボーグ式で算出される2CaO・SiO2の含有率が30~60質量%のセメントクリンカであって、該セメントクリンカ中、MgOの含有率が1.2質量%以上、1.9質量%未満であり、SO3の含有率が0.4~1.2質量%であることを特徴とするセメントクリンカを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-013023号公報
【特許文献2】特開2018-65750号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Crystal Chemistry of Tricalcium Silicate Solid Solution、in 5th I.S.C.C、Vol.1、61-66(1969)
【非特許文献2】セメント技術年報、Vol.22、62-66(1968)
【非特許文献3】Cement Science and Concrete Technology,Vol.70
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、高MgO条件のセメント成分を調整することから制御が難しく、非特許文献1~3に記載の手法では、安定して長期強さを維持することができていない。この問題点は原料である石灰石を産出する鉱山にて時折、大量のドロマイトを含むことがあり、製造したセメントが高MgOとなることでコンクリート等の品質性能にばらつきを生じさせていた。そのため、特許文献1のように、MgO含有量を低くする必要があった。特許文献2においては、セメント中のMgOの含有率が大きくても、セメントの長期強度発現性の低下を防ぐことができると説明されているが、それでもMgO含有率の上限を1.9質量%未満とする必要があった。
【0007】
本発明は、ポルトランドセメント中のMgO含有量が高くても、モルタル長期強度に優れるセメント組成物及びポルトランドセメント中のMgO含有量が高くても、モルタル長期強度を向上することができるセメント組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の<1>~<10>を提供する。
<1> 下記(1)及び(2)を満たすポルトランドセメントと、
前記ポルトランドセメント100質量部に対し、0.001~0.025質量部のアルカノールアミンと、
を含むセメント組成物。
(1)0.55≦MgO/Fe2O3+CL’SO3/SO3≦0.95
(2)0≦△C4AF
前記(1)中、MgOは前記ポルトランドセメント中のMgOの質量(質量%)を表し、Fe2O3は前記ポルトランドセメント中のFe2O3の質量(質量%)を表し、SO3は前記ポルトランドセメントのSO3換算量(質量%)を表し、CL’SO3は前記ポルトランドセメントのクリンカのSO3換算量(質量%)を表す。
前記(2)中、△C4AFは、R.C4AFの質量(質量%)とB.C4AFの質量(質量%)との差分(R.C4AF-B.C4AF)を表す。ここで、前記R.C4AFは、粉末X線回析装置で測定した前記ポルトランドセメントのC4AF値を表し、前記B.C4AFは、3.04×Fe2O3を表す。前記B.C4AFにおけるFe2O3は前記ポルトランドセメント中のFe2O3の質量(質量%)を表す。
【0009】
<2> 前記(1)中、前記MgO/Fe2O3は、0.35を超える<1>に記載のセメント組成物。
<3> 前記ポルトランドセメントは、ボーグ式で算出されるC3Sが45~75質量%、C2Sが5~25質量%、C3Aが7~11質量%、C4AFが7~11質量%である普通ポルトランドセメントである<1>または<2>に記載のセメント組成物。
<4> 前記アルカノールアミンの含有量が、前記ポルトランドセメント100質量部に対し、0.005~0.02質量部である<1>~<3>のいずれか1つに記載のセメント組成物。
<5> 前記アルカノールアミンが、ジエタノールイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、及びN-n-ブチルジエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つである<1>~<4>のいずれか1つに記載のセメント組成物。
【0010】
<6> 下記(1)及び(2)を満たすポルトランドセメントと、
前記ポルトランドセメント100質量部に対し、0.001~0.025質量部のアルカノールアミンと、
を混合するセメント組成物の製造方法。
(1)0.55≦MgO/Fe2O3+CL’SO3/SO3≦0.95
(2)0≦△C4AF
前記(1)中、MgOは前記ポルトランドセメント中のMgOの質量(質量%)を表し、Fe2O3は前記ポルトランドセメント中のFe2O3の質量(質量%)を表し、SO3は前記ポルトランドセメントのSO3換算量(質量%)を表し、CL’SO3は前記ポルトランドセメントのクリンカのSO3換算量(質量%)を表す。
前記(2)中、△C4AFは、R.C4AFの質量(質量%)とB.C4AFの質量(質量%)との差分(R.C4AF-B.C4AF)を表す。ここで、前記R.C4AFは、粉末X線回析装置で測定した前記ポルトランドセメントのC4AF値を表し、前記B.C4AFは、3.04×Fe2O3を表す。前記B.C4AFにおけるFe2O3は前記ポルトランドセメント中のFe2O3の質量(質量%)を表す。
【0011】
<7> 前記(1)中、前記MgO/Fe2O3は、0.35を超える<6>に記載のセメント組成物の製造方法。
<8> 前記ポルトランドセメントは、ボーグ式で算出されるC3Sが45~75質量%、C2Sが5~25質量%、C3Aが7~11質量%、C4AFが7~11質量%である普通ポルトランドセメントである<6>または<7>に記載のセメント組成物の製造方法。
<9> 前記アルカノールアミンの添加量が、前記ポルトランドセメント100質量部に対し、0.005~0.02質量部である<6>~<8>のいずれか1つに記載のセメント組成物の製造方法。
<10> 前記アルカノールアミンが、ジエタノールイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、及びN-n-ブチルジエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つである<6>~<9>のいずれか1つに記載のセメント組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポルトランドセメント中のMgO含有量が高くても、モルタル長期強度に優れるセメント組成物及びポルトランドセメント中のMgO含有量が高くても、モルタル長期強度を向上することができるセメント組成物の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例及び比較例の条件
**に対する△C
4AFの値をプロットしたグラフである。
【
図2】実施例及び比較例の7日材齢と28材齢における条件
**に対するモルタル増進強度差の値をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中の「AA~BB」との数値範囲の表記は、「AA以上BB以下」であることを意味する。
【0015】
<セメント組成物>
本発明のセメント組成物は、下記(1)及び(2)を満たすポルトランドセメントと、前記ポルトランドセメント100質量部に対し、0.001~0.025質量部のアルカノールアミンと、を含む。
(1)0.55≦MgO/Fe2O3+CL’SO3/SO3≦0.95
(2)0≦△C4AF
(1)中、MgOはポルトランドセメント中のMgOの質量(質量%)を表し、Fe2O3はポルトランドセメント中のFe2O3の質量(質量%)を表し、SO3はポルトランドセメントのSO3換算量(質量%)を表し、CL’SO3はポルトランドセメントのクリンカのSO3換算量(質量%)を表す。
(2)中、△C4AFは、R.C4AFの質量(質量%)とB.C4AFの質量(質量%)との差分(R.C4AF-B.C4AF)を表す。ここで、R.C4AFは、粉末X線回析装置で測定したポルトランドセメントのC4AF値を表し、B.C4AFは、3.04×Fe2O3を表す。B.C4AFにおけるFe2O3はポルトランドセメント中のFe2O3の質量(質量%)を表す。
以下、上記(1)及び(2)を満たすポルトランドセメントを「本発明におけるポルトランドセメント」又は単に「本発明におけるセメント」と称する。
本発明のセメント組成物は、換言すると、クリンカと、石膏と、アルカノールアミンとを含み、クリンカ及び石膏を含むポルトランドセメントが上記の(1)及び(2)を満たし、アルカノールアミンの含有量が上記範囲である。
【0016】
セメント中のMgO含有率が高いと、例えば、1.30質量%以上であると、カルシウムの水和が少なくなるため、相対的にモルタル等の強度を低下させてしまう。
強度を向上するために、アルカノールアミン等の助剤を用いることが知られているが、アルカノールアミンによる強度増が期待されるのは、7日材齢未満の短期強度であり、長期強度は、むしろ低下させる傾向にあった。
しかし、セメント組成物の内容を上記構成とすることで、モルタル長期強度を向上することができる。かかる理由は定かではないが、次の理由によるものと推察される。
【0017】
[条件(1)]
条件(1)は「MgO/Fe2O3+CL’SO3/SO3」が0.55~0.95であることである。
詳細は定かではないが、Fe2O3の質量に対するMgOの質量が大きくなったり、セメント中のSO3換算量(質量基準)に対するクリンカ中のSO3換算量(質量基準)が大きくなることは、フェライト相の固溶に関連していると考えられる。「MgO/Fe2O3+CL’SO3/SO3」は、いわば、フェライト相の固溶量の指標と考えることができる。
本発明におけるポルトランドセメントと共に含まれるアルカノールアミンはフェライト相中の鉄等を溶かしてゲル中に溶解させ、均一に浸透することで水密性を促進、モルタル強度を増進する機能を有することから、マグネシウムとSO3がフェライト相に固溶することにより、アルカノールアミンによるモルタル強度増強効果を更に向上することとなり、モルタル長期強度を向上することができると考えられる。
【0018】
「MgO/Fe2O3+CL’SO3/SO3」が0.55未満では、フェライト相の固溶量が少なく、アルカノールアミンによるモルタル強度増強効果を十分に得ることができず、モルタル長期強度に優れない。
「MgO/Fe2O3+CL’SO3/SO3」が0.95を超えると、アルカノールアミンによる強度増進効果が得られにくくなり、アルカノールアミン、未反応のMgO及びMgSO4それぞれが過剰となって膨張ひび割れを起こし、モルタル強度を維持することができない。
モルタル長期強度をより向上する観点から、「MgO/Fe2O3+CL’SO3/SO3」は、0.60~0.90であることが好ましく、0.70~0.80であることがより好ましい。
【0019】
更に、条件(1)中、MgO/Fe2O3は、0.35を超えることが好ましい。
セメント中のFe2O3の質量に対するMgOの質量は、C4AFの固溶量を表すものと考えられ、MgO/Fe2O3が0.35を超えることで、C4AFの固溶を促進することができる。
フェライト相の固溶量増加の観点から、MgO/Fe2O3は、0.36~0.60であることが好ましく、0.40~0.50であることがより好ましい。
【0020】
アルカノールアミンの固溶量増加の観点から、条件(1)中、MgO、すなわち、セメント中のMgOの質量は、3.5質量%以下であることが好ましく、0.5~3.0質量%であることがより好ましく、1.0~2.5質量%であることが更に好ましい。
【0021】
フェライト相の固溶安定化の観点から、条件(1)中、Fe2O3、すなわち、セメント中のFe2O3の質量は、2.0~4.0質量%であることが好ましく、2.5~3.5質量%であることがより好ましく、2.7~3.4質量%であることが更に好ましい。
【0022】
C4AFの固溶助長及びセメント流動性確保の観点から、条件(1)中、CL’SO3、すなわち、クリンカのSO3換算量は、2.5量%以下であることが好ましく、0.2~2.0質量%であることがより好ましく、0.5~1.5質量%であることが更に好ましい。
【0023】
セメント流動性確保の観点から、条件(1)中、CL’SO3/SO3の分母であるSO3の範囲、すなわち、セメントのSO3換算量は、3.5量%以下であることが好ましく、0.5~3.0質量%であることがより好ましく、1.5~2.5質量%であることが更に好ましい。
【0024】
[条件(2)]
条件(2)は、△C4AFが0ポイント以上であることである。
なお、0ポイントとは、例えば、リートベルト解析により得られるC4AF(R.C4AF)が10.1質量%のとき、ボーグ式により算出されるC4AF(B.C4AF)も10.1質量%であるような場合を意味する。
△C4AFは、R.C4AFの質量とB.C4AFの質量との差分(R.C4AF-B.C4AF)を表し、リートベルト解析により得られるC4AF(R.C4AF)と、ボーグ式により算出されるC4AF(B.C4AF)との差分である。ボーグ式ではマグネシウムを考慮しないため、△C4AFからMgOの固溶量を見積もることができ、セメント中のMgO含有量が多くなると、△C4AFも増える。本発明では、高MgO条件でのモルタル長期強度を向上するという観点から、△C4AFが0以上であることを条件とする。
アルカノールアミンによりMgOが固溶したフェライト相の溶解量増加が強度増進に影響するため、△C4AFは0.3~1.5ポイントであることが好ましく、0.5~1.5ポイントであることがより好ましい。
【0025】
R.C4AFは、以下のステップにより求められる。
まず、セメントのX線回折測定を行い、プロファイルを得る。得られたプロファイルを、リートベルト法により解析し、セメント鉱物の定量を行う。解析対象の鉱物はC3S-M1(M1相)、C3S-M3(M3相)、C2S-α’H(α’H相)、C2S-β(β相)、C3A-cubic(立方晶)、C3A-ortho(斜方晶)、C4AFとする。リートベルト解析では、各鉱物の基本結晶構造データに基づき、格子定数、スケールファクター等をパラメータとして、実測プロファイルと理論プロファイルとがフィッティングするように精密化操作を行う。最終的に精密化されたスケールファクターから、上記各鉱物の質量割合を算出し、更にR.C4AFの含有率(質量%)を得る。
X線回析装置の具体的な測定条件は、実施例にて示す。
【0026】
本発明におけるポルトランドセメントは、既述の条件(1)及び(2)を満たすものであれば特に制限されず、普通、早強、超早強、白色、耐硫酸塩、中庸熱、低熱等のポルトランドセメント、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材(ポゾラン)等を混合してなる混合セメント、アルミナセメント等の特殊セメントも使用できるが、特にボーグ式におけるフェライト相が6質量%以上のセメントが好適である。
【0027】
より具体的には、本発明のセメント組成物に使用されるポルトランドセメントは、ボーグ式で算出されるC3S(3CaO・SiO2)が45~75質量%、C2S(2CaO・SiO2)が5~25質量%、C3A(3CaO・Al2O3)が7~11質量%、C4AF(4CaO・Al2O3・FeO3)が7~11質量%である普通ポルトランドセメントであることが好ましい。
また、本発明のセメント組成物に使用されるポルトランドセメントは、リートベルト解析により得られるC4AF(R.C4AF)が、7.5~12質量%であることが好ましい。
【0028】
(C3S、C2S)
セメント中のC3Sの含有量が45質量%以上であることで、アルカノールアミンの添加による強度増進効果が大きく、モルタル強さに優れ、また、流動性に優れる。セメント中のC3Sの含有量が45質量%以上であることで、相対的に被粉砕性が劣るC2Sの含有量が少なくなる。その結果、セメント組成物を一定のブレーン比表面積にするまでに要する粉砕時間が短くなり、主に被粉砕性がよいC2S以外の鉱物(C3S、C3A、及びC4AF)の過粉砕が抑制され、ブレーン比表面積の増大が抑えられる。また、アルカノールアミンの添加による強度増進メカニズムは、クリンカ中のC4AFを選択的に溶解させることでC4AFに近隣するC4AFの水との接触機会が増大し水和が促進され強度増進することになる。クリンカの過粉砕が抑制されることで、もともと各鉱物が複合して存在しているクリンカ粒子が単独の鉱物として存在しにくくなり、C4AFの溶解がC4AFの水和促進に繋がり易く、したがって、アルカノールアミンの添加による強度増進効果が得られやすい。
セメント中のC3Sの含有量が75質量%以下であることで、コンクリートの長期圧縮強度を十分維持することができる。
セメント中のC2Sの含有量が5質量%以上であることで、コンクリートの長期圧縮強度を十分維持することができる。
セメント中のC2Sの含有量が25質量%以下であることで、コンクリートの初期圧縮強度を十分維持することができる。
【0029】
強度と流動性を増進する観点から、セメント中のC3Sの含有量は、50~70質量%であることがより好ましい。
【0030】
(C4AF、C3A)
セメント中のC4AFの含有量が7質量%以上であることで、アルカノールアミンの添加によるC4AFの溶解が促進され、C3Sの反応が促進されることにより、顕著な強度増進効果を発揮することができる。
セメント中のC4AFの含有量が11質量%以下であることで、C4AF中のFeイオンの溶解によって生じた水酸化鉄ゲル量を抑制することができ、クリンカ粒子表面の被覆を抑制することができるため、水和の遅延を防止することができる。
C4AFとC3Aの合計は約18質量%で一定であり、セメント中のC4AFの含有量が増えればC3Aの含有量は減り、C4AFの含有量が減ればC3Aの含有量は増加する。
強度と流動性を増進する観点から、セメント中のC4AFの含有量は、7~9質量%であることが好ましく、8~9質量%であることがより好ましい。
【0031】
〔アルカノールアミン〕
本発明のセメント組成物は、本発明におけるポルトランドセメントクリンカ100質量部に対し、0.001~0.025質量部のアルカノールアミンを含む。
アルカノールアミンは、また、強度増進剤として作用する。
本発明のセメント組成物中のアルカノールアミンの含有量が、ポルトランドセメントクリンカ100質量部に対し、0.001質量部未満であると、強度増進効果が得られない。本発明のセメント組成物中のアルカノールアミンの含有量がポルトランドセメントクリンカ100質量部に対し、0.025質量部を超えると、初期強度の増進効果は顕著であるが、28日材齢では、初期の水和活性が活発であったことに起因して水和組織が粗となり強度増進効果が得られなくなる。
上記観点から、本発明のセメント組成物中のアルカノールアミンの含有量は、本発明におけるポルトランドセメントクリンカ100質量部に対し、0.005~0.02質量部であることが好ましい。
【0032】
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、N-n-ブチルエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-n-ブチルジエタノールアミン、N-メチルジイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールエタノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、トリス(2-ヒドロキシブチル)アミン等が例示できる。
アルカノールアミンは1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0033】
中でも、アルカノールアミンは、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、エタノールジイソプロパノールアミン(EDIPA)、トリエタノールアミン(TEA)、N-メチルジエタノールアミン(MDEA)、及びN-n-ブチルジエタノールアミン(BDEA)からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましく、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)、トリイソプロパノールアミン(TIPA)、エタノールジイソプロパノールアミン(EDIPA)及びトリエタノールアミン(TEA)からなる群より選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ジエタノールイソプロパノールアミン(DEIPA)が更に好ましい。
【0034】
アルカノールアミンは、一般的に高粘度なため混合が難しく、モルタル生成時に添加するのは不向きである。従って、セメント製造の仕上げ工程にて粉砕助剤として添加することが好ましい。また、アルカノールアミンを水に希釈及び溶解して使用するとセメントとの混合が容易になり、効率よく本発明のセメント組成物を製造することができる。
【0035】
〔石膏〕
本発明のセメント組成物は、石膏を含む。
石膏としては、無水石膏、半水石膏、二水石膏のいずれも使用することができる。
セメント組成物中の石膏の含有量は、SO3換算で0.5~2.5質量%であることが好ましい。
セメント組成物中の石膏の含有量が上記範囲であることにより、セメント組成物の乾燥収縮を適切にすることができるとともに、セメント組成物が発現する強度を高くすることができる。
セメント組成物中の石膏の含有量は、上記の観点から、SO3換算で、1.0~1.8質量%であることがより好ましい。
石膏中のSO3の割合は、JIS R 5202:2010「ポルトランドセメントの化学分析方法」に準じて測定することができる。セメント組成物中の石膏のSO3に換算した質量の割合は、石膏の配合量と石膏に含まれるSO3の割合から求めることができる。
【0036】
〔石灰石〕
本発明のセメント組成物は、微粉末化による短期強度の向上とCO2排出量削減を目的として、石灰石を含んでいてもよい。
セメント組成物中の石灰石の含有量は、JIS R 5210:2009「ポルトランドセメント」で規定されているが、本発明においては該JIS規格に規定されている範囲を超えて石灰石が添加されていてもよい。
セメント組成物中の石灰石の含有量は、0~20質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましく、2~5質量%であることが更に好ましい。なお、石灰石の含有量が0質量%とは、セメント組成物の製造に石灰石を添加しないことを意味する。
【0037】
〔その他の成分〕
本発明のセメント組成物には、流動性、水和速度、強度発現性等の調節用として、フライアッシュ、高炉スラグあるいはシリカフュームなどをさらに添加することができる。
【0038】
(ブレーン比表面積)
本発明のセメント組成物は、ブレーン比表面積が3000~3400cm2/gであることが好ましい。
ブレーン比表面積が3000cm2/g以上であることでモルタル強さが低下しにくく、3400cm2/g以下であることで、流動性が低下を抑制し、また、アルカノールアミンによるC4AFの溶解低下を抑えて、強度増進効果を維持することができる。
強度をより増進する観点から、セメント組成物のブレーン比表面積は、3100~3300cm2/gであることがより好ましい。
セメント組成物のブレーン比表面積は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準じて測定すればよい。
【0039】
<セメント組成物の製造方法>
本発明のセメント組成物の製造方法は、下記(1)及び(2)を満たすポルトランドセメントと、ポルトランドセメント100質量部に対し、0.001~0.025質量部のアルカノールアミンと、を混合し、本発明のセメント組成物を製造する方法である。
(1)0.55≦MgO/Fe2O3+CL’SO3/SO3≦0.95
(2)0≦△C4AF
(1)中、MgOはポルトランドセメント中のMgOの質量(質量%)を表し、Fe2O3はポルトランドセメント中のFe2O3の質量(質量%)を表し、SO3はポルトランドセメントのSO3換算量(質量%)を表し、CL’SO3はポルトランドセメントのクリンカのSO3換算量(質量%)を表す。
(2)中、△C4AFは、R.C4AFの質量(質量%)とB.C4AFの質量(質量%)との差分(R.C4AF-B.C4AF)を表す。ここで、R.C4AFは、粉末X線回析装置で測定したポルトランドセメントのC4AF値を表し、B.C4AFは、3.04×Fe2O3を表す。B.C4AFにおけるFe2O3はポルトランドセメント中のFe2O3の質量(質量%)を表す。
【0040】
本発明のセメント組成物の製造方法で用いるポルトランドセメントは、本発明のセメント組成物が含むポルトランドセメントと同じであり、好ましい態様も同様である。すなわち、MgO/Fe2O3は、0.35を超えることが好ましく、本発明におけるポルトランドセメントは、ボーグ式で算出されるC3Sが45~75質量%、C2Sが5~25質量%、C3Aが7~11質量%、C4AFが7~11質量%である普通ポルトランドセメントであることが好ましい。
【0041】
アルカノールアミンの配合量は、本発明のセメント組成物におけるアルカノールアミンの含有量と同様であり、好ましい範囲も同様である。すなわち、アルカノールアミンの添加量は、本発明におけるポルトランドセメント100質量部に対し、0.005~0.02質量部であることが好ましい。
また、石灰石の配合量は、既述の石灰石含有量と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0042】
本発明のセメント組成物の製造方法で用いるアルカノールアミンは、本発明のセメント組成物が含むアルカノールアミンと同じであり、好ましい態様も同様である。
すなわち、本発明のセメント組成物の製造方法で用いるアルカノールアミンは、ジエタノールイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、及びN-n-ブチルジエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
アルカノールアミンは、一般的に高粘度なため混合が難しく、モルタル生成時に添加するのは不向きである。従って、セメント製造の仕上げ工程にて粉砕助剤として添加することが好ましい。また、アルカノールアミンを水に希釈及び溶解して使用するとセメントとの混合が容易になり、効率よく本発明のセメント組成物を製造することができる。
【0043】
本発明のセメント組成物の製造方法における各成分の混合の手段としては特に限定されない。例えば、ミキサー、ボールミル、ロッシェミル、エアーブレンディングサイロ等が挙げられる。混合時間は、通常のセメント組成物の製造において十分に混合が行われたと判断される範囲で設定することができる。
【0044】
本製造方法において、セメント組成物のブレーン比表面積が3000~3400cm2/gとなるように粉砕が行われることが好ましい。
【0045】
本発明のセメント組成物の製造方法では、本発明におけるポルトランドセメントクリンカと、石膏と、石灰石と、アルカノールアミンとの添加に加え、高炉スラグ、シリカ質混合材及びフライアッシュをさらに添加することができる。
本発明では、JIS R 5210:2009「ポルトランドセメント」に規定される高炉スラグ及びシリカ質混合材を使用することができる。フライアッシュに関しては、JIS R 5210:2009「ポルトランドセメント」に規定されるフライアッシュI種及びフライアッシュII種の他、フライアッシュIII種及びフライアッシュIV種も使用することができる。
【実施例0046】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0047】
<セメント組成物の成分>
セメント組成物の製造に下記の材料を使用した。
1.クリンカ
表1~2に示す化学組成及び鉱物組成の普通ポルトランドセメントクリンカ〔住友大阪セメント(株)製〕を用いた。表1~2中、HMは水硬率、SMは珪酸率、IMは鉄率を意味する。なお、表1~2中の「%」は質量基準(質量%)である。
クリンカの化学組成は、JIS R 5204:2019「セメントの蛍光X線分析方法」に準じて蛍光X線測定装置(PRIMUS IV、株式会社リガク製)を用いて、ガラスビード法にて成分分析を行った。鉱物組成は、得られたCaO、SiO2、Al2O3及びFe2O3の質量割合から、下記のボーグ式を用いて算出した。
C3S=(4.07×CaO)-(7.60×SiO2)-(6.72×Al2O3)-(1.43×Fe2O3)
C2S=(2.87×SiO2)-(0.754×C3S)
C3A=(2.65×Al2O3)-(1.69×Fe2O3)
C4AF=3.04×Fe2O3
【0048】
(クリンカの化学組成と鉱物組成)
クリンカの化学組成と鉱物組成を表1~2に示す。
【0049】
【0050】
【0051】
2.アルカノールアミン
・DEIPA:ジエタノールイソプロパノールアミン〔東京化成工業(株)製〕
・TEA:トリエタノールアミン〔東京化成工業(株)製〕
・TIPA:トリイソプロパノールアミン〔東京化成工業(株)製〕
・EDIPA:エタノールジイソプロパノールアミン
〔シグマ アルドリッチ ジャパン合同会社製〕
【0052】
3.石灰石
関東化学(株)製、炭酸カルシウム 特級、CaCO3:99.5%
【0053】
4.石膏
半水石膏を用いた。具体的には、化学石膏(CaSO4(97.8モル%))を乾燥機内で120℃、12時間保持したものを使用した。石膏中のSO3換算量は、JIS R 5202:2015「セメントの化学分析法」に従って測定した。化学石膏の組成は表3に示すとおりである。
【0054】
【0055】
<セメントの製造>
表1~2に示すクリンカに対し、石灰石を、得られるセメント中3.2質量%となるように、また、石膏(上記半水石膏)を表4の配合となるように、それぞれ添加して、ミキサーで混合し、セメントを得た。なお、表4中、CLはクリンカを表す。また「%」は質量基準である。
【0056】
【0057】
(セメントの化学組成と鉱物組成)
クリンカの化学組成と同様の方法でセメントの化学組成を測定し、クリンカの鉱物組成と同様の方法でセメントの鉱物組成を算出した。結果を表5~9に示す。なお、表5~9中の「%」は質量基準(質量%)である。
なお、表6中の「C4AF」の値は、本発明におけるB.C4AFであり、表7~9中の「C4AF(%)」欄の「Bogue」欄に示す値を参照する。表7~9中の「C4AF(%)」欄の「Rietveld」欄の値は、本発明におけるR.C4AFであり、粉末X線回析装置で測定したセメントのC4AF値である。具体的には、粉末X線回折を利用したリートベルト解析方法を用いて次の測定条件で測定した。
【0058】
(測定条件)
・粉末X線回折装置:パナリティカル社製、X’PartPowder
・リートベルト解析ソフト:パナリティカル社製、X’Part High Score Plusversion 2.1b
・X線管球:Cu(管電圧;45kV、管電流;40mA)
・スリット:divergence slit-可変(照射幅- 12mm、Antiscatter slit- 2°)
・測定範囲:2θ=10~70°(ステップ幅:0.017°)
・スキャン速度:0.1012°/s
【0059】
上記ソフトウエアに搭載されたリートベルト法による解析機能を用い、文献「セメント
化学専門委員会報告C-12測定法の違いによるクリンカ鉱物量の差異の検討第二部第4章粉末X線回折/Rietveld解析による定量に関する検討」の共同実験手順書2に準拠して、セメントの各鉱物の割合(質量%)を得た。また、各鉱物の割合の合計を100質量%とし、各実施例及び比較例のC4AFの含有率R.C4AF(質量%)を得た。
【0060】
表7~9中の「C
4AF(%)」欄の「△
*」欄の値は、表7~9中の「C
4AF(%)」欄の「Bogue」欄に示す値(B.C
4AF)と、表7~9中の「C
4AF(%)」欄の「Rietveld」欄に示す値(R.C
4AF)との差分(R.C
4AF-B.C
4AF)を表す。
また、
図1に、実施例及び比較例の条件
**に対する△C
4AFの値をプロットしたグラフを示す。
【0061】
【0062】
【0063】
<セメント組成物の製造>
〔実施例1〕
アミン無添加のセメント組成物として、表5~7に示すセメントを用いた。
アミン添加のセメント組成物として、表7に示すアルカノールアミン(DEIPA)と、表5及び7に示すセメントからなる組成物を調製した。具体的には、セメントとアルカノールアミンとの合計中、アルカノールアミンの濃度が10ppm(セメント100質量部に対し、0.001質量部)となる量のアルカノールアミンを、セメントと共に混合した。
次いで、アミン無添加のセメント組成物及びアミン添加のセメント組成物のそれぞれを、ブレーン比表面積値が3300cm2/gとなるようにテスト用ボールミルで混合粉砕し、実施例1の各セメント組成物を得た。
【0064】
〔実施例2~19、比較例1~7〕
アミン無添加のセメント組成物として、表5~8に示すセメントを用いた。
表5~8に示すセメントを用い、DEIPAを、セメントとDEIPAとの合計中、表7又は8に示す濃度となる量で用いた他は、実施例1と同様にしてアミン添加のセメント組成物を得た。
次いで、アミン無添加のセメント組成物及びアミン添加のセメント組成物のそれぞれを、ブレーン比表面積値が3300cm2/gとなるようにテスト用ボールミルで混合粉砕し、実施例2~19及び比較例1~7の各セメント組成物を得た。
【0065】
〔実施例20~22〕
アミン無添加のセメント組成物として、表5、6及び9に示すセメントを用いた。
アルカノールアミンとして、DEIPAに代えて、表9の「アミン種」に示すアルカノールアミンを用いた他は、実施例7と同様にして、アミン添加のセメント組成物を得た。
次いで、アミン無添加のセメント組成物及びアミン添加のセメント組成物のそれぞれを、ブレーン比表面積値が3300cm2/gとなるようにテスト用ボールミルで混合粉砕し、実施例20~22の各セメント組成物を得た。
【0066】
<セメント組成物の評価>
各実施例及び各比較例のアミン無添加のセメント組成物及びアミン添加のセメント組成物を用い、JIS R 5201:2015の「セメントの物理試験方法」に準拠して供試材を形成し、モルタル圧縮強さ試験を測定した。
なお、供試材の配合比率は、水11.1質量%、骨材66.7質量%、セメント22.2質量%であり、寸法は40mm×40mm×160mmの直方体、供試材の作成後は、供試材を塩化ビニル製の樹脂で包み養生した。
【0067】
アミン無添加のセメント組成物を用いて得られたモルタルの圧縮強さを表7~9の「材齢(無添加)(a)」欄に示し、アミン添加のセメント組成物を用いて得られたモルタルの圧縮強さを表7~9の「材齢(アミン添加)(b)」欄に示した。数値が大きいほど、モルタル圧縮強さが高いことを意味する。
【0068】
表7~9の「△(b-a)」欄には、アミン添加のセメント組成物を用いて得られたモルタルの圧縮強さから、アミン無添加のセメント組成物を用いて得られたモルタルの圧縮強さを差し引いた差分(強度差分)を示した。強度差分の数値が大きいほど、強度増進効果が高いことを意味する。
また、
図2に、7日材齢と28材齢における条件
**に対するモルタル増進強度差の値をプロットしたグラフを示す。ここで、「条件
**」は表7~9の「条件
**」欄に示す数値であり、本発明におけるポルトランドセメントの条件(1)の「MgO/Fe
2O
3+CL’SO
3/SO
3」である。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
表7~9の「△(b-a)」欄に示されるモルタルの強度差分は、アミン添加のセメント組成物を用いて得られたモルタルが、アミン無添加のセメント組成物を用いて得られたモルタルに比べ、どれほど強度が増しているかを示したものであり、数値がプラスで、大きいほど、強度増強効果が大きいことを示す。3日材齢の結果と、7日材齢及び28日材齢の結果とを比べると、7日材齢以上の方が△(b-a)の数値が大きく、強度増強効果が大きいことがわかる。また、7日材齢と28日材齢との比較は、
図2にて示されており、28日材齢の方が、強度増強効果が大きいことがわかる。
前記アルカノールアミンが、ジエタノールイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、及びN-n-ブチルジエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つである請求項1~3のいずれか1項に記載のセメント組成物。
前記アルカノールアミンが、ジエタノールイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、及びN-n-ブチルジエタノールアミンからなる群より選択される少なくとも1つである請求項5~7のいずれか1項に記載のセメント組成物の製造方法。