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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094255
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230628BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230628BHJP
   H05H 1/46 20060101ALN20230628BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/205
H05H1/46 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209633
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】溝井 公亮
(72)【発明者】
【氏名】石田 寿文
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
2G084BB07
2G084CC04
2G084CC05
2G084CC09
2G084CC12
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD23
2G084DD24
2G084DD37
2G084DD38
2G084DD55
2G084FF15
2G084FF39
5F004AA16
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB26
5F004BB28
5F004BB29
5F004BD04
5F004CA03
5F004CA06
5F045AA08
5F045BB14
5F045EF05
5F045EF11
5F045EH13
5F045EH20
5F045EK07
(57)【要約】
【課題】シャワーヘッドにおける異常放電の発生を抑制するプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】基板を支持するように構成される基板支持部を有するプラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバ内にガスを導入するように構成されるシャワーヘッドと、前記ガスのプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部と、を備え、前記シャワーヘッドは、前記ガスを導入するように構成されるガス導入口と、前記プラズマを生成するプラズマ処理空間の側の面に設けられ前記ガス導入口と連通する収容部と、を有する電極板と、前記収容部に配置され、内部に螺旋形状のガス流路を有する埋込部材と、を有する、プラズマ処理装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持するように構成される基板支持部を有するプラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内にガスを導入するように構成されるシャワーヘッドと、
前記ガスのプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部と、を備え、
前記シャワーヘッドは、
前記ガスを導入するように構成されるガス導入口と、前記プラズマを生成するプラズマ処理空間の側の面に設けられ前記ガス導入口と連通する収容部と、を有する電極板と、
前記収容部に配置され、内部に螺旋形状のガス流路を有する埋込部材と、を有する、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記埋込部材は、
前記螺旋形状のガス流路を複数有する、
請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記埋込部材は、
Al、Y、樹脂うちいずれかの材料で形成される、
請求項1または請求項2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記埋込部材は、
前記収容部に接着され固定される、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記シャワーヘッドは、
前記プラズマ処理空間の側の面に溶射膜が形成される、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記埋込部材の前記プラズマ処理空間の側の端面は、前記電極板に埋め込まれて配置される、
請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記埋込部材は、
3Dプリンタで形成される、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガス導入部のガス導入孔に、処理室内で発生したプラズマ中の荷電粒子がガス導入部内へ侵入することを防止する埋込部材が交換可能に装着され、埋込部材は、ガス導入孔の中心軸方向を常に規制しながら、ガス導入孔の入口側と出口側とを連通する螺旋形状のガス通路が形成されるプラズマ処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4280555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一の側面では、本開示は、シャワーヘッドにおける異常放電の発生を抑制するプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、基板を支持するように構成される基板支持部を有するプラズマ処理チャンバと、前記プラズマ処理チャンバ内にガスを導入するように構成されるシャワーヘッドと、前記ガスのプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部と、を備え、前記シャワーヘッドは、前記ガスを導入するように構成されるガス導入口と、前記プラズマを生成するプラズマ処理空間の側の面に設けられ前記ガス導入口と連通する収容部と、を有する電極板と、前記収容部に配置され、内部に螺旋形状のガス流路を有する埋込部材と、を有する、プラズマ処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、シャワーヘッドにおける異常放電の発生を抑制するプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図の一例。
図2】第1実施形態に係るシャワーヘッドのガス導入口付近の構造を説明する拡大断面図の一例。
図3】埋込部材の斜視図の一例。
図4】参考例に係るシャワーヘッドのガス導入口付近の構造を説明する拡大断面図の一例。
図5】パッシェン則による放電を説明するグラフの一例。
図6】第2実施形態に係るシャワーヘッドのガス導入口付近の構造を説明する拡大断面図の一例。
図7】埋込部材をプラズマ処理空間の側から見た図の一例。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して種々の例示的実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0009】
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図の一例である。
【0010】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0011】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0012】
一実施形態において、本体部111は、基台1110及び静電チャック1111を含む。基台1110は、導電性部材を含む。基台1110の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック1111は、基台1110の上に配置される。静電チャック1111は、セラミック部材1111aとセラミック部材1111a内に配置される静電電極1111bとを含む。セラミック部材1111aは、中央領域111aを有する。一実施形態において、セラミック部材1111aは、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック1111を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック1111と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF(Radio Frequency)電源31及び/又はDC(Direct Current)電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材1111a内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台1110の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極1111bが下部電極として機能してもよい。従って、基板支持部11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0013】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0014】
また、基板支持部11は、静電チャック1111、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路1110a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路1110aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路1110aが基台1110内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック1111のセラミック部材1111a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0015】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0016】
また、シャワーヘッド13には、ガス導入口13cと連通する流路を有する埋込部材14が設けられている。埋込部材14は、シャワーヘッド13のプラズマ処理空間10sの側に設けられている。
【0017】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0018】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0019】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0020】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0021】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0022】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0023】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0024】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0025】
<第1実施形態に係るシャワーヘッド13の構造>
次に、シャワーヘッド13のガス導入口13c付近の構造について、図2及び図3を用いて説明する。図2は、第1実施形態に係るシャワーヘッド13のガス導入口13c付近の構造を説明する拡大断面図の一例である。なお、図2では、埋込部材14Aに設けられた1つのガス流路141について図示している。図3は、埋込部材14の斜視図の一例である。
【0026】
シャワーヘッド(上部電極)13は、ガス導入口13cが形成された電極板131と、電極板131を着脱可能に支持する電極支持体(図示せず)と、を有する。電極板131は、例えばAlで形成される。また、電極板131の表面はアルマイト処理が施されていてもよい。上部電極として機能するシャワーヘッド13には、電源30から信号(電圧)が印加される。これにより、プラズマ処理空間10sにプラズマが生成される。図2において、プラズマ処理空間10sに形成されたプラズマのシース300を破線で示す。また、プラズマ処理空間10sで電離した電子301及びイオン302を示す。
【0027】
図2に示すように、電極板131には、電極板131を板厚方向に貫通するガス導入口13cが形成されている。また、電極板131のプラズマ処理空間10sの側の面(電極板131の下面。基板支持部11と対向する面。)には、ガス導入口13cと連通し、かつ、ガス導入口13cよりも拡径した収容部13dが形成されている。収容部13dは、例えば円柱状の空間として形成されている。換言すれば、電極板131のプラズマ処理空間10sの側の面には、天面を有する凹部である収容部13dが形成されている。収容部13dの天面にガス導入口13cが接続される。
【0028】
収容部13dには、埋込部材14Aが配置される。収容部13dの内周面と埋込部材14Aの外周面とは、接着剤16で固定されている。埋込部材14Aの内部には、ガス流路141が設けられている。これにより、ガス拡散室13b(図1参照)からガス導入口13cに導入された処理ガスは、ガス導入口13cから埋込部材14Aのガス流路141を流れ、プラズマ処理空間10s内に導入される。
【0029】
図3に示すように、埋込部材14Aの内部に形成されるガス流路141は、一方の開口部141aから他方の開口部141bまでの間でガス流路が屈曲及び/又は湾曲するラビリンス構造を有している。具体的には、埋込部材14Aには、螺旋形状のガス流路141が形成されている。
【0030】
ここで、シャワーヘッド13に電源30から信号(電圧)が印加されることにより、ガス導入口13c及び収容部13dの内部において、上下方向(ガス導入口13c及び収容部13dの軸方向)に電位勾配が生じている。第1実施形態に係るシャワーヘッド13では、ガス流路141を螺旋形状とすることにより、電位勾配方向におけるガス流路141内の距離d1を短くすることができる。
【0031】
なお、埋込部材14Aの高さが同じ場合、螺旋形状のガス流路141の巻き数が多いほど、ガス流路141の傾斜も緩やかになり、電位勾配方向のガス流路141内の距離d1も短くすることができる。
【0032】
また、埋込部材14Aには、螺旋形状のガス流路141が2本形成されている。なお、螺旋形状のガス流路141は、2本に限られず、複数形成されていてもよい。埋込部材14Aに複数のガス流路141を形成することにより、ガス流路141内の処理ガスの圧力を低減することができる。
【0033】
埋込部材14Aは、例えば、Al、Y、樹脂等の絶縁体のうちいずれかの材料で形成される。また、埋込部材14Aは、例えば3Dプリンタで形成することができる。3Dプリンタで作成することにより、内部に複雑なラビリンス構造(螺旋形状)のガス流路141を有する埋込部材14Aを作成することができる。また、埋込部材14Aは一体部品で形成することができるため、埋込部材14Aを収容部13dへ埋め込む際の作業性が向上する。
【0034】
図2に戻り、埋込部材14Aが埋め込まれた電極板131のプラズマ処理空間10sの側の面には、Y等の溶射膜15が形成されている。溶射膜15は、電極板131の耐プラズマ性を向上する。溶射膜15は、電極板131から埋込部材14Aに跨って形成される。
【0035】
ここで、収容部13dに収容された埋込部材14のプラズマ処理空間10sの側の端面(下面)は、電極板131のプラズマ処理空間10sの側の端面(下面)よりも電極板131の内側に埋め込まれて配置され、埋込部材14の下面と電極板131の下面との間に段差を有している。具体的には、埋込部材14の下面と電極板131の下面との段差は、0mm以上0.2mm以下で、電極板131の内側に埋込部材14が配置される。このような構造とすることにより、電極板131と埋込部材14との境界で溶射膜15にひび割れ等が発生することを抑制することができ、溶射膜15の剥離を抑制することができる。
【0036】
また、収容部13dに収容された埋込部材14Aは、接着剤16で固定されていることにより、埋込部材14Aが収容部13d内で動くことを防止する。これにより、埋込部材14Aが動くことに起因して溶射膜15が剥離することを防止することができる。
【0037】
ここで、参考例に係るシャワーヘッド13のガス導入口13c付近の構造について、図4を用いて説明する。図4は、参考例に係るシャワーヘッド13のガス導入口13c付近の構造を説明する拡大断面図の一例である。参考例に係るシャワーヘッド13では、電極板131を貫通するガス導入口13cが設けられている。
【0038】
参考例に係るシャワーヘッド13において、プラズマ処理空間10sの電子301やイオン302は、電位勾配によってガス導入口13cの出口付近310に引き込まれ加速する。なお、電子301やイオン302の移動の一例を矢印で示す。電子301やイオン302が処理ガスや壁面と衝突することにより二次電子が放出される。また、処理ガスを導入するガス導入口13cのガス圧は高くなっている。ここで、電子の平均自由行程に基づきガス導入口13c内の電位勾配方向の電子の加速距離dが延びるとガス導入口13c内にて放電が発生するおそれがある。
【0039】
このように、参考例に係るシャワーヘッド13では、ガス導入口13cの出口付近310において、放電が発生するおそれがある。
【0040】
図5は、パッシェン則による放電を説明するグラフの一例である。図5に示すグラフにおいて、横軸は、ガス圧pと電極間の距離dとの積であるpd値を示す。縦軸は、電極間に放電が生じる電圧Vを示す。網掛けした領域が放電が発生する領域を示す。また、破線は、ガス流路141またはガス導入口13cにおける電位差の一例を示す。
【0041】
第1実施形態に係るシャワーヘッド13によれば、埋込部材14Aに螺旋形状のガス流路141が設けられていることにより、参考例のシャワーヘッド13における電位勾配方向の加速距離d(図4参照)と比較して、電位勾配方向の加速距離d1(図3参照)を短くすることができる。これにより、電子301やイオン302の加速距離d1を抑制することができる。即ち、pd値を放電が発生する領域よりも小さい領域400まで下げることで、放電の発生を抑制することができる。
【0042】
また、第1実施形態に係るシャワーヘッド13によれば、埋込部材14Aに複数のガス流路141が設けられていることにより、ガス流路141内のガス圧pを抑制することができる。これにより、pd値を放電が発生する領域よりも小さい領域400まで下げることで、放電の発生を抑制することができる。
【0043】
また、埋込部材14Aは、電極板131のプラズマ処理空間10sの側に設けられる。これにより、ガス導入口13cの出口付近における放電の発生を抑制することができる。
【0044】
<第2実施形態に係るシャワーヘッド13の構造>
次に、シャワーヘッド13のガス導入口13c付近の他の構造について、図6及び図7を用いて説明する。図6は、第2実施形態に係るシャワーヘッド13のガス導入口13c付近の構造を説明する拡大断面図の一例である。図7は、埋込部材14Bをプラズマ処理空間10sの側から見た図の一例である。
【0045】
ここで、第2実施形態に係るシャワーヘッド13(図6,7参照)は、第1実施形態に係るシャワーヘッド13(図2,3参照)と比較して、埋込部材14の形状が異なっている。具体的には、第2実施形態に係るシャワーヘッド13において、電極板131の収容部13dには、埋込部材14Bが挿入され、接着剤16で固定される。
【0046】
埋込部材14Bは、上下方向に延びる薄板で区画され、上下方向に貫通するガス流路142を有するグリッド構造(ハニカム構造)を有している。例えば、図7に示すように、埋込部材14Bは、上下方向に延びる薄板が格子状に配置され、四角形状のガス流路142が形成される構成であってもよい。また、埋込部材14Bのガス流路142の形状は、四角形に限られるものではなく、三角形、六角形等であってもよい。また、埋込部材14Bは、ガス流路142の水平方向の距離d2がガス導入口13cの径d3よりも短くなるように形成されている。
【0047】
埋込部材14Bは、例えば、Al、Y、樹脂等の絶縁体のうちいずれかの材料で形成される。埋込部材14Bは、例えば押出成形や3Dプリンタで形成することができる。
【0048】
ここで、ガス導入口13c内における電位320の一例を一点鎖線で示す。ガス導入口13c内において、ガス導入口13c及び収容部13dの中心ほど電位が高く、ガス導入口13c及び収容部13dの外周側ほど電位が低くなっている。即ち、ガス導入口13c及び収容部13dの内部において、径方向に電位勾配が生じている。
【0049】
第2実施形態に係るシャワーヘッド13によれば、ガス導入口13cの出口付近に埋込部材14Bが設けられていることにより、ガス導入口13cの出口付近における径方向(電位勾配方向)の距離d2を短くすることができる。これにより、電子301やイオン302の水平方向の加速距離d2を抑制することができる。これにより、pd値を小さくして、放電の発生を抑制することができる。
【0050】
また、第2実施形態に係るシャワーヘッド13によれば、埋込部材14Bに複数のガス流路142が設けられていることにより、ガス流路142内のガス圧pを抑制することができる。これにより、pd値を小さくして、放電の発生を抑制することができる。
【0051】
また、埋込部材14Bは、電極板131のプラズマ処理空間10sの側に設けられる。これにより、ガス導入口13cの出口付近310における放電の発生を抑制することができる。
【0052】
以上、プラズマ処理装置1の実施形態等について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
10 プラズマ処理チャンバ
10s プラズマ処理空間
11 基板支持部
13 シャワーヘッド
131 電極板
13a ガス供給口
13b ガス拡散室
13c ガス導入口
13d 収容部
14,14A,14B 埋込部材
141 ガス流路
142 ガス流路
15 溶射膜
16 接着剤
20 ガス供給部
30 電源(プラズマ生成部)
40 排気システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7