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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094331
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】消臭用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20230628BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
A61L9/01 H
A61L9/01 Q
C11B9/00 D
C11B9/00 M
C11B9/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209748
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下秋 智寛
(72)【発明者】
【氏名】北宅 伸一郎
【テーマコード(参考)】
4C180
4H059
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA03
4C180AA10
4C180BB08
4C180CA04
4C180CB01
4C180CB10
4C180EB06X
4C180EB07X
4C180EB08X
4C180EB15X
4C180FF05
4C180GG06
4C180GG12
4C180GG17
4C180GG19
4C180HH10
4C180MM01
4C180MM06
4C180MM07
4H059BA12
4H059BA15
4H059BA52
4H059BC10
4H059DA09
4H059EA32
(57)【要約】
【課題】酢酸臭を低減するための新たな手段を提供することを目的とする。比較的小さいサイズの消臭製品にも利用可能な消臭手段を提供すること目的とする。
【解決手段】下記の群より選択される少なくとも1種の成分を消臭成分として含有する、消臭用組成物:トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、プロパノール及びN-メチル-2-ピロリドン。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の群より選択される少なくとも1種の成分を消臭成分として含有する、消臭用組成物:
トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、プロパノール及びN-メチル-2-ピロリドン。
【請求項2】
下記の群より選択される少なくとも1種の成分を消臭成分として含有し、且つ、香料を含有する、消臭芳香用組成物:
トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、プロパノール及びN-メチル-2-ピロリドン。
【請求項3】
前記消臭成分が、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール及び2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項2に記載の消臭芳香用組成物。
【請求項4】
前記群より選択される少なくとも1種の成分のみを消臭成分として含有する、請求項1に記載の消臭用組成物または請求項2もしくは3に記載の消臭芳香用組成物。
【請求項5】
下記の群より選択される少なくとも1種の成分を組成物に配合することにより、該組成物に対して消臭作用を付与することを特徴とする、該成分の消臭成分としての使用方法:
トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、プロパノール及びN-メチル-2-ピロリドン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
消臭用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
より快適な生活環境を得る点から、近年、生活空間等の消臭を目的とした様々な消臭製品が知られている。このような消臭製品では水溶性の消臭成分が使用されることが多い。この場合、溶剤として主に水が用いられており、消臭成分を水に溶解させたうえで消臭に利用されている。
【0003】
しかし、消臭成分を水等の溶剤に溶解する場合、消臭製品においては、少なくとも消臭成分と該消臭成分の溶解を可能にする程度の量の溶剤が必要になる。そうすると、溶剤の液量が多くなるので、消臭製品を必ずしも小型化できる訳ではなかった。
【0004】
また、消臭製品として置き型、スプレー型、エアゾール型などが知られているところ、芳香を目的とした製品(芳香製品)においても置き型、スプレー型、エアゾール型などが知られている。芳香製品においては、近年、比較的省スペースであり、見た目のデザイン性が良いといった点から、リード(細いスティック等)を容器に挿した状態で使用されるリードディフューザータイプの製品が増加しつつある。しかし、リードディフューザータイプにおいて水溶性の消臭成分を用いようとしても、溶剤の液量が多くなり、省スペースの消臭製品とすることは不向きであった。
【0005】
一方、今日、油溶性の消臭成分としてダイマー酸類やトリマー酸類が報告されており、これらはアンモニアやアミン類の消臭に有用であることが知られている(特許文献1)。また、酢酸は、主な悪臭成分の一つとして知られており、その発生源として体臭、生ゴミ、排便、ペット等が知られている。このため、生活空間等において酢酸臭を低減することは重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-183189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、酢酸臭を低減するための新たな手段を提供することを目的とする。また、比較的小さいサイズの消臭製品にも利用可能な消臭手段を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが前記課題を鑑み鋭意検討を重ねた結果、次の成分、すなわち、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、プロパノール、N-メチル-2-ピロリドンによれば、酢酸臭を効果的に低減できることを見出した。本発明は該知見に基づき更に検討を重ねて完成されたものであり、本開示は例えば下記に代表される発明を包含する。
項1.下記の群より選択される少なくとも1種の成分を消臭成分として含有する、消臭用組成物:
トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、プロパノール及びN-メチル-2-ピロリドン。
項2.下記の群より選択される少なくとも1種の成分を消臭成分として含有し、且つ、香料を含有する、消臭芳香用組成物:
トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、プロパノール及びN-メチル-2-ピロリドン。
項3.前記消臭成分が、トリプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール及び2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールからなる群より選択される少なくとも1種である、項2に記載の消臭芳香用組成物。
項4.前記群より選択される少なくとも1種の成分のみを消臭成分として含有する、項1に記載の消臭用組成物または項2もしくは3に記載の消臭芳香用組成物。
項5.下記の群より選択される少なくとも1種の成分を組成物に配合することにより、該組成物に対して消臭作用を付与することを特徴とする、該成分の消臭成分としての使用方法:
トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール、プロパノール及びN-メチル-2-ピロリドン。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、消臭成分として、前記群より選択される少なくとも1種の成分を使用する新たな技術を提供することができる。本開示の消臭用組成物によれば、前記群より選択される少なくとも1種の成分を消臭有効成分として用いることにより、酢酸臭を緩和することができる。該成分は、水等の溶剤に溶解することを必須としないため、比較的小型サイズの消臭製品を提供する点でも有用であり、リードディフューザータイプをはじめとする様々な消臭製品に利用可能である。また、本開示によれば、該成分と香料とを組み合わせて用いることにより、消臭芳香用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に包含される各実施形態について、更に詳細に説明する。
【0011】
本開示は、下記の群より選択される少なくとも1種の成分を消臭成分として含有する、消臭用組成物を包含する。
(1)トリプロピレングリコールメチルエーテル
(2)トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル
(3)ジプロピレングリコールメチルエーテル
(4)プロピレングリコールメチルエーテルアセテート
(5)プロピレングリコールn-ブチルエーテル
(6)プロピレングリコールフェニルエーテル
(7)3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール
(8)3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート
(9)2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール
(10)プロパノール、及び
(11)N-メチル-2-ピロリドン。
【0012】
各成分は次の通り説明される。
(1)トリプロピレングリコールメチルエーテルは、分子式C1022、CAS番号25498-49-1で表される成分である。トリプロピレングリコールメチルエーテルとして、市販品を用いてもよく、例えばダワノール(商標)TPM(ダウ・ケミカル日本株式会社社製)等が挙げられる。
【0013】
(2)トリプロピレングリコールn-ブチルエーテルは、分子式C1328、CAS番号55934-93-5で表される成分である。トリプロピレングリコールn-ブチルエーテルとして、市販品を用いてもよく、例えばダワノール(商標)TPnB(ダウ・ケミカル日本株式会社製)等が挙げられる。
【0014】
(3)ジプロピレングリコールメチルエーテルは、分子式C16、CAS番号34590-94-8で表される成分である。ジプロピレングリコールメチルエーテルとして、市販品を用いてもよく、例えばダワノール(商標)DPM(ダウ・ケミカル日本株式会社製)等が挙げられる。
【0015】
(4)プロピレングリコールメチルエーテルアセテートは、分子式C12、CAS番号108-65-6で表される成分である。プロピレングリコールメチルエーテルアセテートとして、市販品を用いてもよく、例えばダワノール(商標)PMA(ダウ・ケミカル日本株式会社製)等が挙げられる。
【0016】
(5)プロピレングリコールn-ブチルエーテルは、分子式C16、CAS番号5131-66-8で表される成分である。プロピレングリコールn-ブチルエーテルとして、市販品を用いてもよく、例えばダワノール(商標)PnB(ダウ・ケミカル日本株式会社製)等が挙げられる。
【0017】
(6)プロピレングリコールフェニルエーテルは、分子式C12、CAS番号770-35-4で表される成分である。プロピレングリコールフェニルエーテルとして、市販品を用いてもよく、例えばダワノール(商標)PPH(ダウ・ケミカル日本株式会社製)等が挙げられる。
【0018】
(7)3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールは、分子式C14、CAS番号56539-66-3で表される成分である。3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールとして、市販品を用いてもよく、例えばソルフィット(登録商標)(株式会社クラレ製)等が挙げられる。
【0019】
(8)3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートは、分子式C16、CAS番号103429-90-9で表される成分である。3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテートとして、市販品を用いてもよく、例えばソルフィット(登録商標)AC(株式会社クラレ製)等が挙げられる。
【0020】
(9)2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールは、分子式C12、CAS番号100-79-8で表される成分である。2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールとして、市販品を用いてもよく、例えばAUGEO CLEAN MULTI(登録商標)(ソルベイジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0021】
(10)プロパノールとして、1-プロパノール、2-プロパノール等が例示され、好ましくは1-プロパノールが例示される。
【0022】
(11)N-メチル-2-ピロリドンは、分子式CNO、CAS番号872-50-4で表される成分である。N-メチル-2-ピロリドンとして、市販品を用いてもよく、例えばNMP(ライオンデル社製)等が挙げられる。
【0023】
本開示を制限するものではないが、これらの成分としてより好ましくは、前記成分(1)~(10)が例示される。また、該成分として、更に好ましくは(1)トリプロピレングリコールメチルエーテル、(6)プロピレングリコールフェニルエーテル、(7)3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、(9)2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールが例示される。なお、例えば前記成分(1)~(6)はグリコールエーテル類、前記成分(7)~(10)はアルコール類といえる。
【0024】
本開示の消臭用組成物において、前記成分(1)~(11)は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本開示の消臭用組成物中、前記成分(1)~(11)からなる群より選択される少なくとも1種の含有量は制限されず、消臭対象となる酢酸臭の強さ(濃度)、該組成物の形態、使用態様、設置場所、期待される効果の程度等により適宜決定すればよい。本開示を制限するものではないが、消臭用組成物中、前記成分(1)~(11)からなる群より選択される少なくとも1種(合計量)の含有量は1質量%以上100質量%未満、好ましくは5質量%以上95質量%以下、更に好ましくは5質量%以上10質量%以下が例示される。含有量は、これらの数値範囲内の任意の値(範囲)であれば制限されない。
【0026】
本開示の消臭用組成物は、本開示の効果を妨げないことを限度として、必要に応じて、消臭用組成物に配合可能な任意の他の成分を更に含有してもよい。該他の成分として、本開示を制限するものではないが、溶剤(エーテル類、エステル類、グリコール類、油脂類、炭化水素類、ケトン類、脂肪酸類、アルコール類、水等)、界面活性剤、香料、着色料、ゲル化剤、忌避成分、防腐剤、防虫成分、殺虫成分、酸化防止剤、光安定化剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、防カビ剤、前記成分(1)~(11)以外の消臭成分等が例示される。該他の成分は、目的等に応じて適宜選択すればよく、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、その配合量も適宜決定すればよい。なお、前記成分(1)~(11)は溶剤として公知であるが、本開示においては消臭成分として使用されるものであり、該任意の他の成分に包含されない。
【0027】
本開示を制限するものではないが、該他の成分の一例として溶剤を挙げると、イソパラフィン系溶剤、水等が例示される。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
本開示を制限するものではないが、例えばイソパラフィン系溶剤について説明すると、イソパラフィン系溶剤としてイソパラフィン系炭化水素系溶剤等が例示され、商業的に入手可能な該溶剤の例としてISOPAR(登録商標)G、ISOPAR(登録商標)H、ISOPAR(登録商標)L、ISOPAR(登録商標)M(いずれもエクソンモービル社製)等が挙げられる。
【0029】
本開示を制限するものではないが、溶剤として水について説明すると、水は特に制限されず、精製水、蒸留水、イオン交換水、超純水、滅菌水等が例示される。
【0030】
本開示を制限するものではないが、該他の成分の一例として界面活性剤を挙げると、界面活性剤の種類は特に制限されず適宜設定すればよく、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が例示される。界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0031】
本開示を制限するものではないが、該他の成分の一例として消臭成分(前記成分(1)~(11)以外)が例示され、消臭成分としてダイマー酸類、トリマー酸類等が例示される。消臭成分(前記成分(1)~(11)以外)の含有量は、消臭成分の種類、悪臭の原因となる物質の種類、該組成物の形態、期待される効果の程度等に応じて適宜設定すればよく、本開示の消臭用組成物中、0.5質量%以上15質量%以下、好ましくは1質量%以上10質量%以下等が例示される。本開示の該組成物は、このように前記成分(1)~(11)以外の消臭成分を配合して調製してもよく、配合することなく調製してもよい。
【0032】
本開示を制限するものではないが、該他の成分の一例として香料を挙げると、香料は、本開示の効果を妨げないことを限度として制限されず、天然香料、天然香料から分離した単品香料、合成香料(合成された単品香料を含む)、これらの任意の調合香料等の従来公知の香料が例示される。また、香料を含有する場合、香料の含有量は、本開示の消臭用組成物の形態、香料の種類、使用態様、期待される効果の程度等に応じて適宜設定すればよいが、該組成物中、例えば0.05質量%以上、好ましくは1質量%以上20質量%以下が例示され、より好ましくは10質量%以上20質量%以下が例示される。
【0033】
本開示の消臭用組成物が香料を含有する場合、本開示の消臭用組成物は消臭芳香用組成物と称することもできる。また、香料は快適な芳香を生じさせる以外に、害虫等の忌避作用等を有する場合もある。このような香料を含有する場合、本開示の消臭用組成物、また、消臭芳香用組成物は、忌避作用等の香料に起因する有用作用を有するともいえる。このため、このような場合、本開示の消臭用組成物は、消臭作用と共にこのような有用作用を目的として使用されるものであってもよい。
【0034】
本開示の消臭用組成物の形態は、特に制限されず、液状、ゲル状、固形状等のいずれであってもよく、好ましくは液状である。
【0035】
本開示の消臭用組成物は、従来公知の手順に従い、前記成分(1)~(11)からなる群より選択される少なくとも1種を、該組成物の形態等に応じ、必要に応じて前記任意の他の成分を適宜選択して混合等することにより製造することができる。
【0036】
本開示の消臭用組成物は、揮散、噴霧、塗布等のいずれの手段で用いてもよく、この点から、置き型(据え置き型(リードディフューザー等を含む))、スプレー型、エアゾール型、拭き取り型(消臭シート等)等のいずれの製品として使用されるものであってもよい。このように使用態様を制限するものではないが、例えば置き型製品の場合、本開示の消臭用組成物を、開口部を備えた容器に収容したり、吸液部材に含浸(吸液)させるなどして使用すればよく、置き型製品を消臭対象(空間内等)やその近傍に配置すればよい。消臭対象やその近傍において消臭成分が揮散することにより、消臭効果が発揮される。揮散は、放置することにより行ってもよく(自然揮散)、加熱等により消臭成分を揮散させてもよく、その揮散手段は制限されない。簡便である点から、好ましくは放置することにより消臭成分を揮散することが例示される。また、本開示の消臭用組成物は、本開示の効果が得られる限り、マイクロカプセルをはじめとするカプセル等に内包されているものであってもよい。
【0037】
本開示において開口部を備えた容器としては、本分野において従来使用されている公知の容器を用いればよく、その素材、形状、大きさ(例えば70mL以上140mL以下の容量)等は制限されず、本開示の消臭用組成物に配合される成分、デザイン、使いやすさ等に応じて適宜設定すればよい。本開示の消臭用組成物は、前記(1)~(11)から選択される成分を少なくとも含有するものであって、該成分は水等の溶剤に溶解することなく使用できる。また、本開示の消臭用組成物を収容する量は、容器容量の半分以下、3分の1以下、4分の1以下等の少量であってもよい。
【0038】
また、本開示の消臭用組成物を含浸させる吸液部材も本分野において従来使用されている公知の吸液部材を用いれば良く、その素材、形状、大きさ等は制限されず、本開示の消臭用組成物に配合される成分、デザイン、使いやすさ等に応じて適宜設定すればよい。本開示を制限するものではないが、吸液部材としてパルプ等の天然繊維、ポリエステル等の合成繊維、これらの混合繊維等の繊維質材料、籐等の木質材料、発泡ウレタン樹脂製のスポンジ材料等が例示され、これらの任意の組み合わせであってもよい。また、吸液部材は織物、不織布、ろ紙等のいずれであってもよく、また、シート状、棒状等のいずれであってもよく、これらの任意の組み合わせであってもよい。
【0039】
本開示の消臭用組成物は、例えば、該消臭用組成物を収容可能な容器と吸液部材とを組み合わせて好ましく使用される。本開示を制限するものではないが、該容器と吸液部材とを備えた揮散器の一例は、開口部を有する容器、吸液部材、該容器に収容して使用される本開示の消臭用組成物を少なくとも含む。該吸液部材の少なくとも一部が本開示の消臭用組成物に直接接触(浸漬等)可能なように設置される。該揮散器は、該吸液部材の少なくとも一部が該開口部から容器外へ露出できるように設置可能なものであってもよい。このような揮散器を使用することにより、吸液部材によって本開示の消臭用組成物の吸液と揮散が行われ、効率良く容器外へ消臭成分を揮散させることができる。吸液部材の少なくとも一部が該開口部から容器外へ露出できるように設置されている揮散器の一例として、リード(細いスティック等)を容器に挿した状態で使用されるリードディフューザータイプの揮散器が例示される。
【0040】
本開示の消臭用組成物がスプレー型またはエアゾール型の製品として使用される場合、従来公知の手順に従い、本開示の消臭用組成物をスプレー用容器またはエアゾール用容器に収容して、消臭させたい空間内、消臭対象、その近傍等に噴霧すればよい。本開示の消臭用組成物が拭き取り型(消臭シート等)の製品として使用される場合、従来公知の不織布をはじめとする任意の布等に、本開示の消臭用組成物を含浸させた状態で消臭対象の表面等を拭き取ればよい。
【0041】
本開示の消臭用組成物の適用対象も制限されず、例えば空間(室内空間、車内空間等)、カーテン、ソファー、寝具、衣類等の布製品、革製品、靴、壁、床、天井、ドア、家具、ペットの飼育場所等の適用対象が例示される。本開示を制限するものではないが、本開示の消臭用組成物の適用対象として好ましくは、居室、トイレ、玄関、靴箱、車内等の室内空間、車内空間が例示される。前記(1)~(11)から選択される成分は少なくとも酢酸臭を低減できることから、本開示の消臭用組成物によれば、これらの適用対象またはその近傍の酢酸臭を低減または除去することができる。
【0042】
前述の通り、酢酸は、主な悪臭成分の一つとして知られており、その発生源は体臭、生ゴミ、排便、ペット等であることが知られている。前記成分(1)~(11)からなる群より選択される少なくとも1種を消臭成分(消臭有効成分)として含有する本開示の消臭用組成物は、少なくとも酢酸臭の低減または除去に有用である。また、後述の実施例に示す通り、少なくとも前記成分(1)~(10)は更に、主な悪臭成分の一つとして知られているイソ吉草酸(3-メチルブタン酸)に対しても効果的な消臭作用を有しているといえることから、該成分を含有する本開示の消臭用組成物は、酢酸臭だけでなくイソ吉草酸臭の低減または除去にも有用であるといえる。
【0043】
また、前述の通り、従来の消臭用組成物において広く用いられている水溶性の消臭成分とは異なって、前記(1)~(11)からなる群より選択される1種の成分は溶剤に溶解することを必須としないため、消臭に必要な液量等を少なくすることができ、比較的小型化された(省スペース)消臭製品(揮散器)にも好ましく適用することができる。また、従来の消臭成分は水溶性であることから、油溶性である香料と混ざりにくく併用し難いという問題があったが、後述の実施例に示す通り、本開示の消臭用組成物においては、香料を配合した場合であっても容易に均一な混合液を得ることができる。また、本開示の消臭用組成物は、香料に由来する香気(芳香)に対する影響も非常に少なく、香料と併用することができた。このことから、本開示の消臭用組成物において香料を配合することにより、該組成物は消臭芳香用組成物としても有用であるといえる。
【0044】
また、前述の通り、前記成分(1)~(11)からなる群より選択される少なくとも1種は消臭成分(消臭有効成分)として有用であることから、本開示はまた、前記(1)~(11)からなる群より選択される少なくとも1種の成分の、消臭用組成物おける消臭成分(消臭有効成分)としての使用を提供するともいえる。また、本開示は、前記成分(1)~(11)からなる群より選択される少なくとも1種を組成物に配合することにより、該組成物に対して消臭作用を付与することを特徴とする、該成分の消臭成分としての使用方法を提供するともいえる。また、本開示は、消臭用組成物の製造において、消臭作用を付与するために前記(1)~(11)からなる群より選択される少なくとも1種の成分を配合する、該成分の消臭成分としての使用方法を提供するともいえる。
【0045】
該使用や使用方法において、成分(1)~(11)からなる群より選択される少なくとも1種、消臭用組成物等は前述の説明が適用され、すなわち、該消臭用組成物に配合可能な他の成分、各種成分の配合量、組成物の形態等のいずれについても前述の説明が適用される。
【実施例0046】
以下、例を示して本開示の実施形態をより具体的に説明するが、本開示の実施形態は下記の例に限定されるものではない。
【0047】
試験例1(酢酸に対する消臭評価)
試験手順
次の手順に従い、悪臭成分である酢酸に対する消臭効果を評価した。本試験例では、後述の実施例1~11及び比較例1に示す計12種の各成分を試料とした。本発明者らは様々な成分に関し検討を行い、その中でこれらの成分に着目した。
【0048】
試料50gをガラス瓶に入れ、該ガラス瓶にポリエステル製スティック(長さ18cmの棒)8本を挿し入れ、スティックの先が該ガラス瓶内の試料と接触した状態で(試料を吸わせた状態で)一晩放置した。
【0049】
ドラフトチャンバー内で、金属キャップ上に乗せたろ紙に、酢酸を数滴垂らし、金属キャップ上に乗せた状態でろ紙をエアバック内に入れた。次いで、エアバック内に無臭空気を入れ、30分放置し、これを酢酸マスターバッチとした。
【0050】
一晩放置後の前記ガラス瓶をスティックを挿した状態で、新たに用意したエアバック(10L)内に置き、無臭空気を5L注入した。次いで、前記酢酸マスターバッチから酢酸を100ppmとなるように該エアバックに注入して(約40mL注入)密封した。酢酸を注入してから60分後に、エアバック内の酢酸の濃度をガス検知管(商品名酢酸検知管No.81、株式会社GASTEC社製)を用いて測定した。次の式に従い、酢酸の消臭率を算出した。
消臭率(%)=(初期値-測定値)×100/初期値
初期値:100(ppm)
測定値:酢酸を注入してから60分後の値(ppm)
【0051】
[試料]
実施例1:(1)トリプロピレングリコールメチルエーテル(商品名ダワノールTPM、ダウ・ケミカル日本株式会社製)
実施例2:(2)トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル(商品名ダワノールTPnB、ダウ・ケミカル日本株式会社製)
実施例3:(3)ジプロピレングリコールメチルエーテル(商品名ダワノールDPM、ダウ・ケミカル日本株式会社製)
実施例4:(4)プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(商品名ダワノールPMA、ダウ・ケミカル日本株式会社製)
実施例5:(5)プロピレングリコールn-ブチルエーテル(商品名ダワノールPnB、ダウ・ケミカル日本株式会社製)
実施例6:(6)プロピレングリコールフェニルエーテル(商品名ダワノールPPH、ダウ・ケミカル日本株式会社製)
実施例7:(7)3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(商品名ソルフィット、株式会社クラレ製)
実施例8:(8)3-メトキシ-3-メチル-1-ブチルアセテート(商品名ソルフィットAC、株式会社クラレ製)
実施例9:(9)2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール(商品名AUGEO CLEAN MULTI、ソルベイジャパン株式会社製)
実施例10:(10)1-プロパノール(商品名1-プロパノール、富士フイルム和光純薬株式会社製)
実施例11:(11)N-メチル-2-ピロリドン(商品名NMP、ライオンデル社製)
比較例1:(12)イソパラフィン系炭化水素(商品名アイソパーG、エクソンモービル社製)
【0052】
結果
結果を表1に示す。
【表1】
【0053】
表1に示す通り、比較例1のイソパラフィン系炭化水素を用いた場合、酢酸臭の消臭率は40%であった。これに対して、実施例1~11に示す各成分を用いた場合、酢酸臭の消臭率は88%以上であり、消臭率が非常に高かった。比較例1及び実施例1~11の各成分は、従来、溶剤として使用可能であることが知られている点で共通するが(例えば、比較例1はイソパラフィン系溶剤、実施例1~6はグリコールエーテル系溶剤、実施例7~10はアルコール系溶剤)、驚くべきことに、実施例1~11の各成分では顕著な消臭効果が得られることが分かった。このことから、実施例1~11の各成分は、酢酸臭の消臭において消臭有効成分として有用であることが分かった。
【0054】
試験例2(イソ吉草酸に対する消臭評価)
試験手順
次の手順に従い、悪臭成分であるイソ吉草酸(3-メチルブタン酸)に対する消臭効果を評価した。
【0055】
試料50gをガラス瓶に入れ、該ガラス瓶にポリエステル製スティック(長さ18cmの棒)8本を挿し入れ、スティックの先が該ガラス瓶内の試料と接触した状態で(試料を吸わせた状態で)一晩放置した。本試験例では、前記実施例1、3~10及び比較例1に示す各成分を試料とした。
【0056】
ドラフトチャンバー内で、金属キャップ上に乗せたろ紙に、イソ吉草酸を数滴垂らし、金属キャップ上に乗せた状態でろ紙をエアバック内に入れた。次いで、エアバック内に無臭空気を入れ、30分放置し、これをイソ吉草酸マスターバッチとした。
【0057】
一晩放置後の前記ガラス瓶をスティックを挿した状態でエアバック(10L)内に置き、無臭空気を5L注入した。次いで、前記イソ吉草酸マスターバッチからイソ吉草酸を20ppmとなるように前記エアバックに注入して(約850mL注入)密封した。イソ吉草酸を注入してから60分後に、エアバック内のイソ吉草酸の濃度をガス検知管(商品名酢酸検知管No.81L、株式会社GASTEC社製)を用いて測定した。次の式に従い、イソ吉草酸の消臭率を算出した。
消臭率(%)=(初期値-測定値)×100/初期値
初期値:20(ppm)
測定値:イソ吉草酸を注入してから60分後の値(ppm)
【0058】
結果
実施例1及び3~10の各成分及び比較例1のイソパラフィン系炭化水素を用いた結果を表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
表2に示す通り、比較例1のイソパラフィン系炭化水素を用いた場合、イソ吉草酸の消臭率は46%であった。これに対して、実施例1及び3~10に示す各成分を用いた場合、イソ吉草酸の消臭率は83%以上であり、消臭率が非常に高かった。比較例1及び実施例1及び3~10の各成分は、従来、溶剤として使用可能であることが知られている点で共通するが、驚くべきことに、実施例1及び3~10の各成分では顕著な消臭効果が得られることが分かった。このことから、実施例1及び3~10の各成分は、イソ吉草酸の消臭において消臭有効成分として有用であることが分かった。また、実施例2に示す成分は実施例1に示す成分と構造が非常に類似していることから、該結果から、実施例2の成分も実施例1の成分と同様に、イソ吉草酸臭に対する高い消臭効果が得られることが理解できた。
【0061】
これらのことから、実施例1~10の成分は、イソ吉草酸臭いに対しても高い消臭効果を発揮できることが確認された。また、このことから、実施例1~10の成分は、イソ吉草酸の消臭においても消臭有効成分として有用であることが分かった。
【0062】
試験例3(臭気強度評価)
試験手順
プラスチックシャーレにろ紙を置き、ろ紙の中心に、表3に示す各試料0.5gを滴下し、シャーレの蓋をした。蓋をしてから5分後に蓋を開け、ろ紙の臭いを9名の専門パネラーに直接嗅がせて(ろ紙と鼻との距離は5cm)、6段階臭気強度表示法に従い、次の基準に基づいて試料の臭いの強度を評価した。6段階臭気強度表示法は、臭いの評価に用いられている従来公知の評価方法であり、0~5の6段階の基準に基づき評価する方法である。表3中、ブランクは、ろ紙のみ(試料の滴下なし)の臭いを同様にして嗅かせた結果である。
【0063】
0:無臭
1:やっと感知できるにおい(検知閾値)
2:何のにおいであるかわかる弱いにおい(認知閾値)
3:楽に感知できるにおい
4:強いにおい
5:強烈なにおい
【0064】
結果
結果を表3に示す。表中の値は、全パネラーの平均値を示す。
【表3】
【0065】
表3に示す通り、ブランク(ろ紙のみ(参考例1))の臭気強度は0であった。また、試料として水のみを滴下した参考例2では臭気強度が0.07であった。参考例1及び2はいずれも無臭といえる値であった。また、比較例1のイソパラフィン系炭化水素は、従来、ほぼ無臭と言われている成分であり、その臭気強度は1.93であった。
【0066】
表3に示す通り、実施例9の成分を用いた場合の臭気強度は0.36であり、比較例1よりも臭気強度が低かった。また、実施例6、7の成分を用いた場合の臭気強度はそれぞれ2.43、2.00であった。これらの値から、実施例6、7、9の成分に対してヒトが感じる臭いはいずれも比較例1と同程度であるといえた。また、実施例1の成分を用いた場合の臭気強度は2.79であり、このように臭気強度2を超えていることから感知できる臭いであったが不快な臭いではなかった。実施例3、8の成分を用いた場合の臭気強度はそれぞれ3.86、3.71であり、臭気強度3を超える値であったことから容易に臭いを感じられる評価であったが、その臭いは室内空間等に揮散、噴霧等させた場合に不快を感じるような臭いではなかった。また、実施例4、5、10の成分を用いた場合の臭気強度は4.36、4.00、4.21であり、その臭気強度は更に高かったが、これらについても不快を感じるような臭いではなかった。
【0067】
このことから、これらの成分は室内空間等に揮散、噴霧等させた場合であってもヒトが不快を感じるような臭いではないといえることわかった。また、これらの成分の中でも、特に臭気強度が3以下の成分は、それ自身の臭気が非常に低いことから、例えば香料と組み合わせて使用した場合であっても、香料由来の芳香を邪魔しにくい点で特に有用であることが分かった。
【0068】
試験例4
前記試験例3において臭気強度が3以下であり、それ自身の臭気が非常に低かった実施例6、7及び9を用いて、実際に香料と組み合わせた場合であっても香料の芳香を邪魔しにくい成分として有用かどうかを確認するために、次の試験を行った。また、 前記試験例3において臭気強度が3.86であった実施例3の成分を用いて、同様に、香料の芳香を邪魔しにくいかどうかについて試験を行った。
【0069】
具体的には、プラスチックシャーレにろ紙を置き、ろ紙の中心に、表4に示す各試料0.5gを滴下し、シャーレの蓋をした。蓋をしてから5分後に蓋を開けて、ろ紙の臭いを9名の専門パネラーに直接嗅がせて(ろ紙と鼻との距離は5cm)、9段階快不快度表示法に従い、次の基準に基づいて臭いの快・不快を評価した。9段階快不快度表示法は、臭いの質を評価するために使用される従来公知の評価方法であり、臭いの快・不快を数値化する方法として知られている方法である。本試験例では、不快を-2、やや不快を-1、快でも不快でもない場合を0、やや快を1、快を2とした範囲内(-2~2)で0.5刻みの9段階で臭いの快・不快を評価した。
【0070】
試料は、香料のみ、または、表4に示す成分(実施例3、6、7、9)と香料との混合液(混合物中の香料含有量は0.05質量%)とした。なお、該成分と香料とは容易に均一に混合できた。また、本試験で用いた香料はウッディ調香料、オリエンタル調香料及びフルーティ調香料である。
【0071】
結果
結果を表4に示す。表中の値は、全パネラーの平均値を示す。
【表4】
【0072】
表4に示す通り、香料のみを用いた場合の値はそれぞれ1.07(ウッディ調)、0.93(オリエンタル調)、1.14(フルーティ調)であった。これらにおいては各香料由来する望ましい芳香が得られた。前記試験例3において、水に次いで臭気強度が低かった実施例9の成分を香料と組み合わせた場合、その値はいずれの香料でも0.86であった。この値は香料のみの場合と比較すると若干が低かったが、香料のみの場合と比較して不快な臭いを感じることなく、良好な芳香であった。このことから、実施例9の成分は、香料と組み合わせた場合であっても、香料の香りを損なうものではないことが確認された。
【0073】
また、実施例7の成分と香料とを組み合わせた場合の値は0.93、0.29、0.43であり、実施例9の成分を用いた場合より値が低くなる傾向が認められたものの、この場合も、香料のみの場合と比較して不快を感じることなく、各香料の良好な香りが得られた。また、実施例6の成分と香料とを組み合わせた場合の値は0.14、0.21、0.00であり、実施例7や9の成分を用いた場合よりも値が低くなったが、不快を感じることはなく、実施例6の成分も香料と組み合わせて使用可能であることが分かった。前記試験例3において臭気強度3.86であった実施例3の成分を香料と組み合わせた場合、その値は-0.18、-0.86、-0.71であり、若干の不快臭が認められた。このことから、実施例3の成分も香料と組み合わせて使用可能であるものの、その快・不快臭評価は実施例6、7及び9のほうが優れていた。
【0074】
これらの成分はいずれも酢酸臭の消臭、更にはイソ吉草酸等の消臭において有用であり、従来の水溶性の消臭成分とは異なって溶剤に溶解することを必須としない使い勝手のよい消臭有効成分であるといえるところ、更に、香料と組み合わせて使用することも可能であることが分かった。また、目的とする香りなどに応じて前記成分(1)~(11)の中から適宜選択して使用すればよいことが分かった。また、実施例6等の有臭気強度が3以下の成分は快・不快に対するに対する影響も非常に少ないことから、香料との組み合わせにおいて特に望ましく使用できることが分かった。