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特開2023-94345基板処理装置、ガス供給システム及び基板処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094345
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】基板処理装置、ガス供給システム及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230628BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230628BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20230628BHJP
   C23C 16/509 20060101ALI20230628BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20230628BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/205
C23C16/44 B
C23C16/509
C23C16/511
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209768
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126480
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100135677
【弁理士】
【氏名又は名称】澤井 光一
(74)【代理人】
【識別番号】100131598
【弁理士】
【氏名又は名称】高村 和宗
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】谷川 雄洋
(72)【発明者】
【氏名】水野 雄介
【テーマコード(参考)】
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
4K030FA02
4K030FA03
4K030FA04
5F004AA16
5F004BB13
5F004BB22
5F004BB23
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004CA02
5F004CA03
5F004CA06
5F045AA08
5F045DP03
5F045EE17
5F045EF05
5F045EF09
5F045EH05
5F045EJ03
5F045EK07
(57)【要約】
【課題】基板処理チャンバ内におけるガス濃度の均一性を向上する技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、基板処理チャンバと、基板処理チャンバ内に配置される基板支持部と、基板支持部の上方に配置され、基板処理チャンバ内にガスを導入するように構成されるシャワーヘッドと、シャワーヘッドに接続されるガス供給システムと、制御部と、を備える。ガス供給システムは、ガス入口と複数のガス出口とを有するガス分配装置と、ガス分配装置の複数のガス出口とシャワーヘッドとを接続する複数のガス供給ラインと、を有する。複数のガス供給ラインのうちの少なくとも一つのガス供給ラインは、シャワーヘッドの近傍に配置される圧力調節バルブと、圧力調節バルブとガス分配装置との間の区間に配置される圧力計と、を有する。制御部は、圧力計の出力に基づいて、前記区間の圧力が目標圧力になるように圧力調節バルブを制御するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理チャンバと、
前記基板処理チャンバ内に配置される基板支持部と、
前記基板支持部の上方に配置され、前記基板処理チャンバ内にガスを導入するように構成されるシャワーヘッドと、
前記シャワーヘッドに接続されるガス供給システムと、
制御部と、を備え、
前記ガス供給システムは、
ガス入口と複数のガス出口とを有するガス分配装置と、
前記ガス分配装置の前記複数のガス出口と前記シャワーヘッドとを接続する複数のガス供給ラインと、を有し、
前記複数のガス供給ラインのうちの少なくとも一つのガス供給ラインは、
前記シャワーヘッドの近傍に配置される圧力調節バルブと、
前記圧力調節バルブと前記ガス分配装置との間の区間に配置される圧力計と、を有し、
前記制御部は、前記圧力計の出力に基づいて、前記区間の圧力が目標圧力になるように前記圧力調節バルブを制御するように構成される、
基板処理装置。
【請求項2】
前記複数のガス供給ラインの各々は、
前記シャワーヘッドの近傍に配置される圧力調節バルブと、
前記圧力調節バルブと前記ガス分配装置との間の区間に配置される圧力計と、を有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記目標圧力は、前記ガス分配装置で分配されたガスが各ガス供給ラインを通じて前記シャワーヘッドに到達するまでの到達時間が互いに同じになるように、または前記到達時間の差が減るように設定される、
請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記到達時間が目標到達時間と一致するように前記目標圧力を算出するように構成される、
請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記目標圧力Pbの算出を次式に基づいて行う、
Tb=(Pb/kT)・((π×d2×L1)/4)/(e×F)+Tc
Tbは目標到達時間、kはポルツマン定数、Tは温度、dはガス供給ラインの管内直径、L1は圧力調節バルブとガス分配装置との間の区間の長さ、Fはガスの流量、eは定数、Tcは定数である、
請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記ガス分配装置で分配されるガスの設定流量比に基づいて、各ガス供給ラインを流れるガスの流量と圧力との相関から、各ガス供給ラインの予測圧力を算出し、当該予想圧力とガスの流量に基づいて各ガス供給ラインにおける予測到達時間を算出し、前記ガス供給ラインの中で最も遅い予測到達時間の値を前記目標到達時間に設定するように構成される、
請求項4または5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記複数のガス供給ラインは、
第1のガス供給ラインと、
第2のガス供給ラインと、を有し、
前記第1のガス供給ラインは、前記シャワーヘッドの中央領域に接続され、
前記第2のガス供給ラインは、前記シャワーヘッドの外周領域に接続され、
前記第1のガス供給ライン及び前記第2のガス供給ラインの各々は、
前記シャワーヘッドの近傍に配置される圧力調節バルブと、
前記圧力調節バルブと前記ガス分配装置との間の区間に配置される圧力計と、を有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記複数のガス供給ラインは、
第1のガス供給ラインと、
第2のガス供給ラインと、
第3のガス供給ラインと、を有し、
前記第1のガス供給ラインは、前記シャワーヘッドの中央領域に接続され、
前記第3のガス供給ラインは、前記シャワーヘッドの外周領域に接続され、
前記第2のガス供給ラインは、前記シャワーヘッドの前記中央領域と前記外周領域の間の中間領域に接続され、
前記第1のガス供給ライン、前記第2のガス供給ライン及び前記第3のガス供給ラインの各々は、
前記シャワーヘッドの近傍に配置される圧力調節バルブと、
前記圧力調節バルブと前記ガス分配装置との間の区間に配置される圧力計と、を有する、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
基板処理チャンバ内にガスを供給するガス供給システムであって、
ガス入口と複数のガス出口とを有するガス分配装置と、
前記ガス分配装置の前記複数のガス出口と前記基板処理チャンバとを接続する複数のガス供給ラインと、
制御部と、を備え、
前記複数のガス供給ラインの各々は、
前記基板処理チャンバの近傍に配置される圧力調節バルブと、
前記圧力調節バルブと前記ガス分配装置との間の区間に配置される圧力計と、を有し、
前記制御部は、前記圧力計の出力に基づいて、前記区間の圧力が目標圧力になるように前記圧力調節バルブを制御するように構成される、
ガス供給システム。
【請求項10】
基板処理装置において行われる基板処理方法であって、
前記基板処理装置は、
基板処理チャンバと、
前記基板処理チャンバ内に配置される基板支持部と、
前記基板支持部の上方に配置され、前記基板処理チャンバ内にガスを導入するように構成されるシャワーヘッドと、
前記シャワーヘッドに接続されるガス供給システムと、を備え、
前記ガス供給システムは、
ガス入口と複数のガス出口とを有するガス分配装置と、
前記ガス分配装置の前記複数のガス出口と前記シャワーヘッドとを接続する複数のガス供給ラインと、を有するものであり、
前記複数のガス供給ラインのうちの少なくとも一つのガス供給ラインにおいて、前記シャワーヘッドの近傍に配置された圧力調節バルブと前記ガス分配装置との間の区間の圧力を測定し、当該圧力の値に基づいて、前記区間の圧力が目標圧力になるように前記圧力調節バルブを調節する工程を有する、
基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、基板処理装置、ガス供給システム及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処理ガスが複数の分岐配管を通じてシャワーヘッドに供給され、当該処理ガスがシャワーヘッドからチャンバ内に供給される技術として、特許文献1に記載された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-165399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板処理チャンバ内におけるガス濃度の均一性を向上する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一つの例示的実施形態において、基板処理チャンバと、基板処理チャンバ内に配置される基板支持部と、基板支持部の上方に配置され、基板処理チャンバ内にガスを導入するように構成されるシャワーヘッドと、シャワーヘッドに接続されるガス供給システムと、制御部と、を備え、ガス供給システムは、ガス入口と複数のガス出口とを有するガス分配装置と、ガス分配装置の複数のガス出口とシャワーヘッドとを接続する複数のガス供給ラインと、を有し、複数のガス供給ラインのうちの少なくとも一つのガス供給ラインは、シャワーヘッドの近傍に配置される圧力調節バルブと、圧力調節バルブとガス分配装置との間の区間に配置される圧力計と、を有し、制御部は、圧力計の出力に基づいて、前記区間の圧力が目標圧力になるように圧力調節バルブを制御するように構成される、基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一つの例示的実施形態によれば、基板処理チャンバ内におけるガス濃度の均一性を向上する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】プラズマ処理装置の一例を概略的に示す図である。
図2】シャワーヘッドの内部構造の一例を示す横断面の図である。
図3】処理条件を変更する際の制御プロセスの一例を示すフローチャートである。
図4】ガス供給ラインにおける処理ガスの流量と圧力との相関の一例を示す図である。
図5】ガス供給ラインが2つの場合のプラズマ処理装置の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の各実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態において、基板処理チャンバと、基板処理チャンバ内に配置される基板支持部と、基板支持部の上方に配置され、基板処理チャンバ内にガスを導入するように構成されるシャワーヘッドと、シャワーヘッドに接続されるガス供給システムと、制御部と、を備え、ガス供給システムは、ガス入口と複数のガス出口とを有するガス分配装置と、ガス分配装置の複数のガス出口とシャワーヘッドとを接続する複数のガス供給ラインと、を有し、複数のガス供給ラインのうちの少なくとも一つのガス供給ラインは、シャワーヘッドの近傍に配置される圧力調節バルブと、圧力調節バルブとガス分配装置との間の区間に配置される圧力計と、を有し、制御部は、圧力計の出力に基づいて、前記区間の圧力が目標圧力になるように圧力調節バルブを制御するように構成される、基板処理装置が提供される。
【0010】
一つの例示的実施形態において、複数のガス供給ラインの各々は、シャワーヘッドの近傍に配置される圧力調節バルブと、圧力調節バルブとガス分配装置との間の区間に配置される圧力計と、を有する。
【0011】
一つの例示的実施形態において、目標圧力は、ガス分配装置で分配されたガスが各ガス供給ラインを通じて前記シャワーヘッドに到達するまでの到達時間が互いに同じになるように、または到達時間の差が減るように設定される。
【0012】
一つの例示的実施形態において、制御部は、到達時間が目標到達時間と一致するように目標圧力を算出するように構成される。
【0013】
一つの例示的実施形態において、制御部は、目標圧力Pbの算出を次式に基づいて行う、
Tb=(Pb/kT)・((π×d2×L1)/4)/(e×F)+Tc
Tbは目標到達時間、kはポルツマン定数、Tは温度、dはガス供給ラインの管内直径、L1は圧力調節バルブとガス分配装置との間の区間の長さ、Fはガスの流量、eは定数、Tcは定数である。
【0014】
一つの例示的実施形態において、制御部は、ガス分配装置で分配されるガスの設定流量比に基づいて、各ガス供給ラインを流れるガスの流量と圧力との相関から、各ガス供給ラインの予測圧力を算出し、当該予想圧力とガスの流量に基づいて各ガス供給ラインにおける予測到達時間を算出し、ガス供給ラインの中で最も遅い予測到達時間の値を目標到達時間に設定するように構成される。
【0015】
一つの例示的実施形態において、複数のガス供給ラインは、第1のガス供給ラインと、第2のガス供給ラインと、を有し、第1のガス供給ラインは、シャワーヘッドの中央領域に接続され、第2のガス供給ラインは、シャワーヘッドの外周領域に接続され、第1のガス供給ライン及び第2のガス供給ラインの各々は、シャワーヘッドの近傍に配置される圧力調節バルブと、圧力調節バルブとガス分配装置との間の区間に配置される圧力計と、を有する。
【0016】
一つの例示的実施形態において、複数のガス供給ラインは、第1のガス供給ラインと、第2のガス供給ラインと、第3のガス供給ラインと、を有し、第1のガス供給ラインは、シャワーヘッドの中央領域に接続され、第3のガス供給ラインは、シャワーヘッドの外周領域に接続され、第2のガス供給ラインは、シャワーヘッドの中央領域と外周領域の間の中間領域に接続され、第1のガス供給ライン、第2のガス供給ライン及び第3のガス供給ラインの各々は、シャワーヘッドの近傍に配置される圧力調節バルブと、圧力調節バルブとガス分配装置との間の区間に配置される圧力計と、を有する。
【0017】
一つの例示的実施形態において、基板処理チャンバ内にガスを供給するガス供給システムであって、ガス入口と複数のガス出口とを有するガス分配装置と、ガス分配装置の複数のガス出口と基板処理チャンバとを接続する複数のガス供給ラインと、制御部と、を備え、複数のガス供給ラインの各々は、基板処理チャンバの近傍に配置される圧力調節バルブと、圧力調節バルブとガス分配装置との間の区間に配置される圧力計と、を有し、制御部は、圧力計の出力に基づいて、区間の圧力が目標圧力になるように圧力調節バルブを制御するように構成される、ガス供給システムが提供される。
【0018】
一つの例示的実施形態において、基板処理装置において行われる基板処理方法であって、基板処理装置は、基板処理チャンバと、基板処理チャンバ内に配置される基板支持部と、基板支持部の上方に配置され、基板処理チャンバ内にガスを導入するように構成されるシャワーヘッドと、シャワーヘッドに接続されるガス供給システムと、を備え、ガス供給システムは、ガス入口と複数のガス出口とを有するガス分配装置と、ガス分配装置の複数のガス出口とシャワーヘッドとを接続する複数のガス供給ラインと、を有するものであり、複数のガス供給ラインのうちの少なくとも一つのガス供給ラインにおいて、シャワーヘッドの近傍に配置された圧力調節バルブとガス分配装置との間の区間の圧力を測定し、当該圧力の値に基づいて、前記区間の圧力が目標圧力になるように圧力調節バルブを調節する工程を有する基板処理方法が提供される。
【0019】
以下、図面を参照して、本開示の各実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一または同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づいて上下左右等の位置関係を説明する。図面の寸法比率は実際の比率を示すものではなく、また、実際の比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
<プラズマ処理装置1の構成の一例>
以下に、プラズマ処理システムの構成例について説明する。図1は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。一つの例示的実施形態に係る基板処理装置としてのプラズマ処理装置1は、基板をプラズマ処理するプラズマ処理方法を実行する。
【0021】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。容量結合型のプラズマ処理装置1は、基板処理チャンバとしてのプラズマ処理チャンバ(単に「チャンバ」ともいう)10、ガス供給システム20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間(基板処理空間)10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10とは電気的に絶縁される。
【0022】
基板支持部11は、本体部50及びリングアセンブリ51を含む。本体部50は、基板Wを支持するための中央領域50aと、リングアセンブリ51を支持するための環状領域50bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部50の環状領域50bは、平面視で本体部50の中央領域50aを囲んでいる。基板Wは、本体部50の中央領域50a上に配置され、リングアセンブリ51は、本体部50の中央領域50a上の基板Wを囲むように本体部50の環状領域50b上に配置される。従って、中央領域50aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域50bは、リングアセンブリ51を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0023】
一実施形態において、本体部50は、基台60及び静電チャック61を含む。基台60は、導電性部材を含む。基台60の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック61は、基台60の上に配置される。静電チャック61は、セラミック部材61aとセラミック部材61a内に配置される静電電極61bとを含む。セラミック部材61aは、中央領域50aを有する。一実施形態において、セラミック部材61aは、環状領域50bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材のような、静電チャック61を囲む他の部材が環状領域50bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ51は、環状静電チャック又は環状絶縁部材の上に配置されてもよく、静電チャック61と環状絶縁部材の両方の上に配置されてもよい。また、RF又はDC電極がセラミック部材61a内に配置されてもよく、この場合、RF又はDC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号又はDC信号がRF又はDC電極に接続される場合、RF又はDC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台60の導電性部材とRF又はDC電極との両方が2つの下部電極として機能してもよい。
【0024】
リングアセンブリ51は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0025】
また、基板支持部11は、静電チャック61、リングアセンブリ51及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路60a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路60aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路60aが基台60内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック61のセラミック部材61a内に配置される。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と中央領域50aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0026】
基板支持部11には、図示しないリフター(リフトピン)が設けられている。一実施形態において、リフターは、基板支持部11を上下方向に貫通する複数の貫通孔に配置され、図示しない駆動装置により貫通孔内を上下方向に移動する。一実施形態において、基板Wは、図示しない搬送アームによってチャンバ10内に搬入出される。リフターは、基板支持部11上で基板Wを支持し昇降させ、搬送アームとの間で基板Wをやり取りし、基板Wを基板支持部11上に載置することができる。
【0027】
シャワーヘッド13は、ガス供給システム20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、3つのガス供給口100a、100b、100cと、3つの連通孔101a、101b、101cと、3つのガス拡散室102a、102b、102c及び複数のガス導入口103を有する。第1のガス供給口100a、第1の連通孔101a及び第1のガス拡散室102aは、互いに連通し、シャワーヘッド13の中央領域E1に形成されている。第3のガス供給口100c、第3の連通孔101c及び第3のガス拡散室102cは、互いに連通し、シャワーヘッド13の外周領域E3に形成されている。第2のガス供給口100b、第2の連通孔101b及び第2のガス拡散室102bは、互いに連通し、シャワーヘッド13の中央領域E1と外周領域E3の間の中間領域E2に形成されている。
【0028】
図1及び図2に示すように第1のガス拡散室102a(シャワーヘッド13の中央領域E1)は円状に形成されている。第2のガス拡散室102b(シャワーヘッド13の中間領域E2)は、第1のガス拡散室102aの周りを囲むように環状に形成されている。第3のガス拡散室102c(シャワーヘッド13の外周領域E3)は、第2のガス拡散室102bの周りを囲むように環状に形成されている。
【0029】
第1のガス拡散室102a、第2のガス拡散室102b及び第3のガス拡散室102cは、互いに仕切板104により仕切られている。複数のガス導入口103は、各ガス拡散室102a、102b、102cと連通し、プラズマ処理空間10sに開口している。各ガス供給口100a、100b、100cに供給された処理ガスは、各連通孔101a、101b、101cを通過し各ガス拡散室102a、102b、102cに供給され、各ガス拡散室102a、102b、102cから複数のガス導入口103を通じてプラズマ処理空間10s内に導入される。処理ガスは、基板支持部11の基板面内の全体に向けて導入される。シャワーヘッド13は、上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0030】
一実施形態において、図1に示すガス供給システム20は、ガス供給源120と、上流ガス供給ライン121と、ガス分配装置(フロースプリッター)122と、3つのガス供給ライン123、124、125とを有している。
【0031】
ガス供給源120は、一つ又は複数のガスの供給源を含む。上流ガス供給ライン121は、ガス供給源120とガス分配装置122を接続する。上流ガス供給ライン121は、開閉バルブ126を含む。一実施形態において、ガス分配装置122は、処理ガスを任意の流量比に分配することができる装置である。一実施形態において、ガス分配装置122は、処理ガスを所定の流量比の3つの流れに分配する。一実施形態において、ガス分配装置122は、一つの入口130と、3つの出口131a、131b、131cと、入口130と各出口131a、131b、131cを接続する分岐流路132a、132b、132cを有する。分岐流路132a、132b、132cは、それぞれマスフローコントローラ133a、133b、133c及び開閉バルブ134a、134b、134cを含む。マスフローコントローラ133a、133b、133cは、フローメータ135、調節バルブ136を含む。
【0032】
ガス供給ライン123、124、125は、ガス分配装置122とシャワーヘッド13を接続している。第1のガス供給ライン123は、ガス分配装置122の出口131aと、シャワーヘッド13の第1のガス供給口100aとを接続している。第2のガス供給ライン124は、ガス分配装置122の出口131aと、シャワーヘッド13の第2のガス供給口100bとを接続している。第3のガス供給ライン125は、ガス分配装置122の出口131cと、シャワーヘッド13の第3のガス供給口100cとを接続している。一実施形態において、ガス供給ライン123、124、125は、長さや内径が互いに異なるものを含む。
【0033】
ガス供給ライン123、124、125は、それぞれ、圧力調節バルブ140a、140b、140cと圧力計141a、141b、141cとを有している。
【0034】
圧力調節バルブ140a、140b、140cは、ガス供給ライン123、124、125の圧力を調整することができる。一実施形態において、圧力調節バルブ140a、140b、140cは、ガス分配装置122よりもシャワーヘッド13に近い位置であってシャワーヘッド13の近傍に配置される。ガス供給ライン123、124、125の圧力調節バルブ140a、140b、140cとシャワーヘッド13の間の区間、すなわちガス供給ライン123、124、125の圧力調節バルブ140a、140b、140cよりも下流の区間G2は任意に設定可能である。一実施形態において、上流の区間G1は、区間G2の10倍よりも大きい。一実施形態において、圧力調節バルブ140a、140b、140cは、シャワーヘッド13までの距離が互いに同じになるように配置される。
【0035】
圧力計141a、141b、141cは、ガス供給ライン123、124、125の圧力調節バルブ140a、140b、140cよりも上流側に設けられている。圧力計141a、141b、141cは、ガス供給ライン123、124、125の圧力調節バルブ140a、140b、140cよりも上流の区間G1の圧力を測定する。
【0036】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合される第1の電源としてのRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0037】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0038】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0039】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0040】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。この場合、DCに基づく電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0041】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0042】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程(プラズマ処理)を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0043】
<プラズマ処理方法の一例>
本プラズマ処理方法は、プラズマを用いて基板W上の膜をエッチングするエッチング処理を含む。一実施形態において、エッチング処理は、途中で、シャワーヘッド13に供給されるガスの設定流量比や、下部電極に供給される高周波電力などの処理条件が変更される処理を含む。
【0044】
先ず、基板Wが、搬送アームによりチャンバ10内に搬入され、リフターにより基板支持部11に載置され、図1に示すように基板支持部11上に吸着保持される。
【0045】
次に、処理ガスが、ガス供給システム20によりシャワーヘッド13に供給され、シャワーヘッド13からプラズマ処理空間10sに供給される。このとき供給される処理ガスは、基板Wのエッチング処理のために必要な活性種を生成するガスを含む。一実施形態において、ガス供給源120の処理ガスは、ガス分配装置122に供給され、ガス分配装置122において所定の設定流量比の3つの流れに分配される。設定流量比の情報は、制御部20からガス分配装置122に送られる。ガス分配装置122は、当該設定流量比に基づいて、マスフローコントローラ133a、133b、133cを制御し、処理ガスを分配する。
【0046】
ガス分配装置122により分配された処理ガスは、3つのガス供給ライン123、124、125を通じてシャワーヘッド13のガス供給口100a、100b、100cに供給される。処理ガスは、ガス供給口100a、100b、100cから連通孔101a、101b、101cを通じてガス拡散室102a、102b、102cに供給される。そして、処理ガスは、各ガス拡散室102a、102b、102cからガス導入口103を通じてチャンバ10内に導入される。ガス拡散室102aから導入された処理ガスは、主に基板支持部11の基板Wの中央部上方に導入され、ガス拡散室102cから導入された処理ガスは、主に基板支持部11の基板Wの外周部上方に導入され、ガス拡散室102cから導入された処理ガスは、主に基板支持部11の基板Wの中央部と外周部の間の中間部の上方に導入される。
【0047】
下部電極には、RF電源31により高周波電力が供給される。プラズマ処理空間10s内の雰囲気はガス排出口10eから排気され、プラズマ処理空間10s内は所定の圧力に減圧されてもよい。これにより、プラズマ処理空間10sにプラズマが生成され、基板Wがエッチング処理される。
【0048】
一実施形態において、処理条件が変更され、各ガス供給ライン123、124、125における処理ガスの設定流量比や、下部電極に供給される高周波電力が変更される。一実施形態において、処理ガスの供給や高周波電力の供給が一旦止められることなく、処理条件が連続的に切り替えられる。この際、ガス分配装置122において設定流量比が切り替えられ、新しい設定流量比の処理ガスがガス供給ライン123、124、125を流れると、各ガス供給ライン123~125の処理ガスが、シャワーヘッド13に到達するタイミングがガス供給ライン123~125間で大きくずれる可能性がある。これは、ガス供給ライン123~125の容積(長さや内径)が互いに異なったり、設定流量が大きく異なる場合等に起こり得る。処理ガスがシャワーヘッド13に到達するタイミングがガス供給ライン123~125間でずれると、シャワーヘッド13の各ガス拡散室102a、102b、102cからチャンバ10内に処理ガスが導入されるタイミングがずれて、基板上の処理ガス濃度が不均一になるおそれがある。そこで、一実施形態において、新しい設定流量比の処理ガスがシャワーヘッド13に到達する時間を制御する。図3は、かかる制御プロセスの一例のフローチャートを示す。
【0049】
一実施形態において、制御部2により、新しい設定流量比に基づいて、各ガス供給ライン123~125における流量と圧力との相関から、処理ガスを流した際の各ガス供給ライン123~125の予想圧力Pdが算出される(図3の工程S1)。図4は、流量Fと圧力Pの相関Rの一例を示す。この相関Rは、予め行った実験やシミュレーション等で得たものを含む。
【0050】
次に、予想圧力Pdから各ガス供給ライン123~125における予測到達時間Tdが計算される(図3の工程S2)。ここで、「到達時間」は、処理ガスがガス分配装置122の出口131a、131b、131cからシャワーヘッド13のガス供給口100a、100b、100cに到達するまでの時間である。なお、「到達時間」は、ガス分配装置122から分配された処理ガスが各ガス供給ライン123、124、125を通じてシャワーヘッド13からプラズマ処理空間10sに到達するまでの時間であってもよい。
【0051】
一実施形態において、予測到達時間Tdは、次式(1)により算出される。
Td=(Pd/kT)・((π×d2×L)/4)/(e×F)・・・(1)
式(1)中のTdは予測到達時間(sec)、Pdは予想圧力(Pa)、kはポルツマン定数、Tは温度(K)、dはガス供給ラインの管内直径(m)、Lはガス供給ラインの長さ(m)、Fは処理ガスの流量(sccm)、eは定数(4.4804×1017)である。
【0052】
次に、一実施形態において、各ガス供給ライン123~125の予測到達時間Tdのうちで、最も遅い予測到達時間Tdの値が、目標の到達時間Tbに設定される(図3の工程S3)。例えば第3のガス供給ライン125の予測到達時間Tdの値が最も大きい場合には、第3のガス供給ライン125の予測到達時間Tdの値が目標の到達時間Tbに設定される。
【0053】
次に、第1のガス供給ライン123及び第2のガス供給ライン124における処理ガスの到達時間が目標到達時間Tbとなるための目標圧力Pbが算出される(図3の工程S4)。
【0054】
一実施形態において、目標圧力Pbは、次式(2)により算出される。
Tb=(Pb/kT)・((π×d2×L1)/4)/(e×F)+Tc・・(2)
式中のTbは目標到達時間(sec)、Pbは目標圧力(Pa)、kはポルツマン定数、Tは温度(K)、dはガス供給ラインの管内直径(m)、L1はガス供給ラインの上流区間G1の長さ(m)、Fは処理ガスの流量(sccm)、eは定数(4.4804×1017)、Tcは定数(sec)である。
ここで、一実施形態において、定数Tcは、処理ガスが、ガス供給ラインの圧力調節バルブより下流の区間G2を流れる時間、すなわち、一実施形態において、処理ガスが、ガス供給ラインにおいて、圧力調節バルブからシャワーヘッドのガス供給口に到達するまでの時間である。定数Tcは、実験やシミュレーション等によって、あるいは、式(1)によって予め得られる。
【0055】
ガス分配装置122において設定流量比が切り替えられ、新しい設定流量比の処理ガスがガス供給ライン123、124、125に同時に供給され始める。このとき、第1のガス供給ライン123と第2のガス供給ライン124において、制御部2により、圧力計141a、141bにより測定された圧力値に基づいて、ガス供給ライン123、124の圧力調節バルブ140a、140bより上流の区間G1の圧力が所定の目標圧力Pbになるように圧力調節バルブ140a、140bが制御される(図3の工程S5)。すなわち、ガス供給ライン123、124の圧力調節バルブ140a、140bを絞り、ガス供給ライン123、124の圧力調節バルブ140a、140bより上流の区間G1の圧力を上げることで、ガス供給ライン123、124の処理ガスが、シャワーヘッド13に到達する時間が遅延される。こうすることにより、ガス供給ライン123、124における処理ガスの到達時間が、ガス供給ライン125における処理ガスの到達時間に揃えられる、或いは近づけられる。かかる処理条件の変更は、複数回行われてよい。
【0056】
その後、所定時間エッチング処理が行われ、その後プラズマ処理空間10sへの処理ガスの供給と下部電極への高周波電力の供給が停止される。その後、基板Wがリフトピンにより持ち上げられ、図示しない搬送アームによりチャンバ10から搬出される。
【0057】
本例示的実施形態によれば、プラズマ処理装置1のガス供給ライン123~125は、圧力調節バルブ140a~140cと圧力計141a~141cとを有している。制御部2は、圧力計141a~141cにより測定された圧力値に基づいて、ガス供給ライン123~125の圧力調節バルブ140a~140cの上流の区間G1の圧力が所定の目標圧力Pbになるように圧力調節バルブ140a~140cを制御することができる。これにより、各ガス供給ライン123~125において、処理ガスがシャワーヘッド13に到達する到達時間を制御することができ、ガス供給ライン123~125における処理ガスの到達時間を揃える、または到達時間の差を減らすことができる。この結果、シャワーヘッド13の各ガス拡散室102a、102b、102cからチャンバ10内に処理ガスが導入されるタイミングをより揃えることができ、チャンバ10内の基板W上のガス濃度がより均一になる。その結果、基板面内におけるエッチング処理の均一性が向上する。
【0058】
本例示的実施形態において、3つのガス供給ライン123~125の各々は、圧力調節バルブ140a~140cと圧力計141a~141cを有している。これにより、すべてのガス供給ライン123~125において処理ガスの到達時間を調整することができるので、ガス供給ライン123~125における処理ガスの到達時間を揃える、または到達時間の差を減らすための制御の自由度が増加する。
【0059】
本例示的実施形態において、圧力調節バルブ140a~140cは、ガス供給ライン123~125においてガス分配装置122よりもシャワーヘッド13に近い位置に設けられている。処理ガスの到達時間を調整できる幅は、ガス供給ライン123~125の圧力調節バルブ140a~140cより上流側の区間G1の体積に依存する。よって、圧力調節バルブ140a~140cが、ガス供給ライン123~125においてガス分配装置122よりもシャワーヘッド13に近いことによって、処理ガスの到達時間を調整できる幅が増加し、ガス供給ライン123~125における処理ガスの到達時間をより十分に揃えることができる。
【0060】
本例示的実施形態において、目標圧力Pbは、処理ガスの到達時間が同じになるように、または到達時間の差が減るように設定される。これにより、ガス供給ライン123~125における処理ガスの到達時間が適切に揃えられ、または到達時間の差が適切に減らされる。
【0061】
本例示的実施形態において、制御部2は、到達時間が目標の到達時間Tbになるための目標圧力Pbを算出する。これにより、制御部2が目標圧力Pbを適切に算出することができる。
【0062】
本例示的実施形態において、制御部2は、目標圧力Pbの算出を式(2)に基づいて行う。これにより、目標圧力Pbを正確かつ適切に算出することができる。
【0063】
本例示的実施形態において、制御部2は、ガス分配装置122で分配される処理ガスの設定流量比に基づいて、各ガス供給ライン123~125を流れる処理ガスの流量と圧力との相関Rから、各ガス供給ライン123~125の予測圧力Pdを算出し、当該予想圧力Pdと流量Fから各ガス供給ライン123~125における予測到達時間Tdを算出し、ガス供給ライン123~125のなかで最も遅い予測到達時間Tdの値を目標の到達時間Tbに設定する。これにより、目標の到達時間Tbの設定を好適に行うことができる。
【0064】
<プラズマ処理装置1の他の例示的実施形態>
一実施形態において、シャワーヘッド13にガスを供給するガス供給ラインの数は、3つに限られず、2つまたは4つ以上であってもよい。
【0065】
図5は、ガス供給ラインが2つの場合のプラズマ処理装置1の例を示す。一実施形態において、ガス供給ラインが2つの場合、シャワーヘッド13は、2つのガス供給口100a、100bと、2つの連通孔101a、101bと、2つのガス拡散室102a、102b及び複数のガス導入口103を有する。第1のガス供給口100a、第1の連通孔101a及び第1のガス拡散室102aは、互いに連通し、シャワーヘッド13の中央領域E1に形成されている。第2のガス供給口100b、第2の連通孔101b及び第2のガス拡散室102bは、互いに連通し、シャワーヘッド13の外周領域E2に形成されている。第1のガス拡散室102aは、円形状に形成され、第2のガス拡散室102bは、第1のガス拡散室102aの周りを囲むような環状に形成されている。第1のガス拡散室102aと第2のガス拡散室102bは、仕切板104によって仕切られている。
【0066】
一実施形態において、ガス供給システム20のガス分配装置122は、処理ガスを所定の流量比の2つの流れに分配する。一実施形態において、ガス分配装置122は、一つの入口130と、2つの出口131a、131bと、入口130と各出口131a、131bを接続する分岐流路132a、132bを有する。分岐流路132a、132bは、それぞれマスフローコントローラ133a、133b及び開閉バルブ134a、134bを含む。
【0067】
第1のガス供給ライン123は、ガス分配装置122の出口131aとシャワーヘッド13の第1のガス供給口100aとを接続している。第2のガス供給ライン124は、ガス分配装置122の出口131bとシャワーヘッド13の第2のガス供給口100bとを接続している。
【0068】
ガス供給ライン123、124は、それぞれ、圧力調節バルブ140a、140bと圧力計141a、141bとを有している。
【0069】
そして、一実施形態において、プラズマ処理中に処理条件が変更され、各ガス供給ライン123、124における処理ガスの設定流量比が変更される。このとき、制御部2により、新しい設定流量比に基づいて、各ガス供給ライン123、124における処理ガスの流量と圧力との相関R(図4に示す)から、処理ガスを流した際の各ガス供給ライン123、124の予想圧力Pdが算出される(図3の工程S1)。
【0070】
次に、予想圧力Pdから式(1)により各ガス供給ライン123、124における予測到達時間Tdが算出される(図3の工程S2)。次に、各ガス供給ライン123、124の予測到達時間Tdのうちで、最も遅い予測到達時間Tdの値が、目標の到達時間Tbに設定される(図3の工程S3)。例えば第2のガス供給ライン124の予測到達時間Tdの値が最も大きい場合には、第2のガス供給ライン124の予測到達時間Tdの値が目標の到達時間Tbに設定される。
【0071】
次に、第1のガス供給ライン123における処理ガスの到達時間が目標到達時間Tbとなるための目標圧力Pbが式(2)により算出される(図3の工程S4)。
【0072】
ガス分配装置122において設定流量比が切り替えられ、新しい設定流量比の処理ガスがガス供給ライン123、124に同時に供給され始める。このとき、第1のガス供給ライン123において、制御部2により、圧力計141aにより測定された圧力値に基づいて、ガス供給ライン123の圧力調節バルブ140aより上流の区間G1の圧力が所定の目標圧力Pbになるように圧力調節バルブ140aが制御される(図3の工程S5)。すなわち、第1のガス供給ライン123の圧力調節バルブ140aを絞り、第1のガス供給ライン123の圧力調節バルブ140aより上流の区間G1の圧力を上げることで、第1のガス供給ライン123の処理ガスが、シャワーヘッド13に到達する時間が遅延される。こうすることにより、第1のガス供給ライン123における処理ガスの到達時間が、第2のガス供給ライン124における処理ガスの到達時間に揃えられる、或いは近づけられる。
【0073】
以上の例示的実施形態において、処理ガスの到達時間が短いガス供給ラインの圧力を調整して、複数のガス供給ラインの処理ガスの到達時間を揃えるようにしていたが、処理ガスの到達時間が長いガス供給ラインの圧力を調整してもよい。この場合、処理ガスの到達時間が長いガス供給ラインの圧力を調整し、当該ガス供給ラインの処理ガスの到達時間を短縮することで、他のガス供給ラインの処理ガスの到達時間に揃えるようにしてよい。また、処理ガスの到達時間が短いガス供給ラインの圧力と、処理ガスの到達時間が長いガス供給ラインの圧力の両方を調整して、互いに到達時間を揃えるようにようにしてよい。
【0074】
以上の例示的実施形態において、全てのガス供給ラインが圧力調節バルブと圧力計を備えていなくてもよく、一部のガス供給ラインが圧力調節バルブと圧力計を備えていてよい。一実施形態において、第1のガス供給ライン123と第2のガス供給ライン124が圧力調節バルブ140a、140bと圧力計141a、141bを備え、第3のガス供給ライン125が圧力調節バルブと圧力計を備えなくてよい。この場合、ガス供給ライン123、124の圧力調節バルブ140a、140bと圧力計141a、141bを制御して、ガス供給ライン123、124の処理ガスの到達時間を第3のガス供給ライン125の到達時間に合わせるようにしてもよい。ガス供給ラインの数がN(Nは整数)個の場合に、N-1個のガス供給ラインに圧力計と圧力調節バルブを設けてよい。圧力計と圧力調節バルブは、別装置でもよいし、一体化した装置であってもよい。
【0075】
以上の例示的実施において、ガス供給ライン123~125における処理ガスの到達時間を揃えるようにしていたが、さらにシャワーヘッド13内において、処理ガスがガス拡散室に供給されるまでの時間や、処理ガスが導入口からチャンバ10内に導入されるまでの時間を揃えるようにしてもよい。
【0076】
本プラズマ処理装置は、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく種々の変形をなし得る。例えば、当業者の通常の創作能力の範囲内で、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態に追加することができる。また、ある実施形態における一部の構成要素を、他の実施形態の対応する構成要素と置換することができる。
【0077】
本プラズマ処理装置は、容量結合型のプラズマ処理装置以外にも、誘導結合型プラズマやマイクロ波プラズマ等、任意のプラズマ源を用いたプラズマ処理装置であってもよい。基板処理装置は、プラズマを用いない基板処理を行うものであってよい。
【符号の説明】
【0078】
1……プラズマ処理装置、2……制御部、10……チャンバ、11……基板支持部、20……ガス供給システム、122……ガス分配装置、123……第1のガス供給ライン、124……第2のガス供給ライン、125……第3のガス供給ライン、140a、140b、140c……圧力調節バルブ、141a、141b、141c……圧力計、W…基板
図1
図2
図3
図4
図5