(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094402
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】レーザ加工方法およびプリフォーム
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20230628BHJP
【FI】
B23K26/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209856
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】市川 陽一
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA32
4E168DA38
4E168JA17
(57)【要約】
【課題】
プリフォームで形成されたマークの形状を成形品でも維持することを目的とする。
【解決手段】
プリフォームにマークを形成するレーザ加工方法であって、マークは凹部を含むことを特徴とする。さらに、前記プリフォームから拡大する際の拡大率が高い方向における隣り合う2つの凹部の中心間距離が、前記拡大率が低い方向における前記隣り合う2つの凹部の中心間距離が狭くなるように前記複数の凹部の形成することを特徴とするレーザ加工方法である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームにマークを形成するレーザ加工方法であって、
前記マークは凹部を含むことを特徴とするレーザ加工方法。
【請求項2】
前記凹部に隣接して凸部を形成することを特徴とする
請求項1に記載のレーザ加工方法。
【請求項3】
前記マークは複数の凹部を含むことを特徴とする
請求項1または2に記載のレーザ加工方法。
【請求項4】
前記複数の凹部における
2つの凹部は隣接して形成されることを特徴とする
請求項1~3に記載のレーザ加工方法。
【請求項5】
前記プリフォームから拡大する際の拡大率が高い方向における
隣り合う2つの凹部の中心間距離が、
前記拡大率が低い方向における前記隣り合う2つの凹部の中心間距離が
狭くなるように前記複数の凹部の形成することを特徴とする
請求項1~4に記載のレーザ加工方法。
【請求項6】
前記複数の凹部における一の凹部は、複数の方向において、複数の他の凹部と隣接して形成されたことを特徴とする
請求項1~5に記載のレーザ加工方法。
【請求項7】
前記複数の凹部における一の凹部は、
周囲に配置された全ての複数の他の凹部と隣接して形成されたことを特徴とする
請求項1~6に記載のレーザ加工方法。
【請求項8】
前記複数の凹部における
前記隣り合う凹部の間の加工していない領域が、
成形品上で0.2mm以下であることを特徴とする
請求項1~7に記載のレーザ加工方法。
【請求項9】
前記凹部の断面が矩形状であることを特徴とする
請求項1~8に記載の製造方法
【請求項10】
前記プリフォームをブロー成形した後に、
レーザ加工する工程を含むことを特徴とする
請求項1~8に記載のレーザ加工方法。
【請求項11】
レーザ加工によりマークが形成されたプリフォームであって、
前記マークは凹部を含むことを特徴とするプリフォーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工方法およびプリフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、結晶性樹脂を主材とし、かつ、光学的特性の異なる部分が、結晶性樹脂の結晶構造が異なる部分であるプラスチック包装体であり、リサイクル性が非常によく、また、化学的発色と異なる、深色と光沢を有する鮮やかな色調を有するプラスチック包装体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、プリフォームで形成されたマークの形状を維持することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、プリフォームにマークを形成するレーザ加工方法であって、マークは凹部を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、プリフォームで形成されたマークの形状を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態のレーザ加工方法の工程図である。
【
図4】本実施形態におけるマークを説明する図である。
【
図6】本実施形態の第1の変形例であるマークの断面が矩形状であることを説明する図である。
【
図7】本実施形態の第1の変形例の凹部の深さを示す図である。
【
図8】本実施形態の第2の変形例であるマークを説明する図である。
【
図9】本実施形態における凹部間の距離を説明する図である。
【
図10】複数の凹部を形成する際の課題を説明する図である。
【
図11】本実施形態の第3の変形例であるマークを説明する図である。
【
図12】本実施形態の第3の変形例であるマークの非加工部の大きさを説明する図である。
【
図13】本実施形態の第4の変形例を説明する図である。
【
図14】本実施形態の第4の変形例の顕微鏡写真である。
【
図15】本実施形態の第5の変形例を説明する図である。
【
図16】本実施形態の第6の変形例を説明する図である。
【
図17】本実施形態の第7の変形例を説明する図である。
【
図18】第7の変形例であるマークの電子顕微鏡写真である。
【
図20】本実施形態の第8の変形例であるレーザ加工方法の工程図である。
【
図21】本実施形態の第9の変形例であるレーザ加工方法の工程図である。
【
図22】本実施形態の第10の変形例であるレーザ加工方法の工程図である。
【
図23】本実施形態におけるマークの一例を説明する図である。
【
図24】本実施形態における一例であるレーザ加工方法を説明する図である。
【
図25】本実施形態における一例であるレーザ加工方法を説明する図である。
【
図26】本実施形態における一例であるレーザ加工方法を説明する図である。
【
図27】本実施形態における一例であるレーザ加工方法を説明する図である。
【
図28】本実施形態における一例であるレーザ加工方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
(実施の形態)
図1は、本実施形態のレーザ加工方法の工程図である。
【0010】
まず、成形品のプリフォームを形成(ステップS1)し、そのプリフォームにレーザ加工によってマーキングを形成(ステップS2)し、その後、ブロー成形(ステップS3)によって樹脂容器の成形品を得る。
【0011】
図2は、本発明の実施形態における基本構成を説明する図である。
図2(a)は、プリフォーム100の一例を示し、
図2(b)は、成形品101の一例を示す図である。
【0012】
本実施形態では、ブロー成形する前のプリフォーム100に、マーク103が形成され、ブロー成形後の成形品101も、マーク103を備える。
【0013】
マーク102の領域は、レーザ光による溶融、蒸散、起泡などの反応によって、プリフォーム材料を変形させている。これにより、マークの表面は、微細な凹凸、もしくは表面近傍に気泡が形成されている。この形態になると、光散乱係数が高くなり、白色化される。これは、コンピューターグラフィックで用いられるマイクロファセット理論に準ずる。プリフォーム表面は平坦で透明なため、白色化したマーク102とのコントラストが発生し、マーク102は視認性を有する。
【0014】
成形品101におけるマーク103に比べて、プリフォーム100のマーク103は小さいため、成形品101にレーザ加工してマーク103を形成するのに比べて、プリフォーム100にレーザ加工してマーク103を形成する方が、レーザ加工する領域を小さくすることができるため、生産性が向上する。
【0015】
マーク103は、プリフォーム100に形成された段階では、必ずしも視認可能でなくてもよく、プリフォームが加熱、延伸された成形品101の段階で、視認可能なように形成されればよい。
【0016】
図3(a)~(e)に比較例にかかるレーザ加工方法の概念図を示す。
図3(a)は、プリフォーム100にレーザ光130を照射する工程を示している。
図3(b)には、レーザ光によって熱反応もしくは化学反応を起こし、プリフォーム100表面にマーク102を形成したことが示されている。
図3(c)に示すように、プリフォーム100が加熱される工程では、ブロー成形のための金型131が配置される。
図3(d)は、気体がプリフォーム100に注入されプリフォーム100が膨張し、金型131へプリフォーム表面が押し付けられる工程を示している。この際、プリフォーム表面に形成されたマーク102は金型131に押し付けられ、マークの形状は変形する。
図3(e)はブロー成形後の成形品101を示す。マーク102が意図しない変形を起こし、マーク103となって形成されたことを示している。
【0017】
図4は本発明の実施形態の一例であるプリフォーム100を示す。
【0018】
図4(a)に示すようにプリフォーム100には、マーク102が形成されている。
図4(b)は、マーク102の拡大
図121および切断線120によるプリフォーム断面122を示す。プリフォーム断面122に示すように、プリフォームの表面123に対して凹形状のマーク表面124が形成されている。
【0019】
図5は、本発明の実施形態の一例であるレーザ加工方法の概念図を示す。
図5(a)は、プリフォーム100にレーザ光130を照射する工程を示している。
図5(b)には、レーザ加工によって凹形状に形成されたマーク102が示されている。
図5(c)に示すように、プリフォーム100が加熱される工程では、ブロー成形のための金型131が配置される。
図5(d)は、気体がプリフォーム100に注入されプリフォーム100が膨張し、金型131へ押し付けられる工程を示している。この際、プリフォーム表面123は金型に押し付けられるが、マーク102は凹形状に形成されているため、金型へは接触しない。
図3(e)はブロー成形後の成形品101を示す。成形品101に形成されたマーク103は、金型へは接触していないため、形状を維持したまま視認可能となっている。
【0020】
マーク102の形成方法として、レーザ加工による熱反応や光化学反応による着色、顔料添加による化学反応による形成方法もあり、
図5に示したレーザ加工方法と併用しても良い。この場合は、レーザ加工に用いるレーザ光の波長は、0.7μm~1.1μmであると、顔料を選択的に反応させることが可能となり、望ましい。
【0021】
図6には、本実施形態の第一の変形例を示す。本変形例の特徴は、マークの断面形状が矩形状になっており、マーク側面125が
図4の実施例に比べ、急斜面となっている。
【0022】
ここで、矩形状とはプリフォームの表面123とマーク側面125がなす角度が90度から45度となる角度がよく、好適には90度から60度である。矩形状の凹部の形状は、一般的なレーザ光のプロファイルであるガウシアンよりも、トップハットに近い形状であり、先述のなす角度が大きくなるようにレーザ光のビーム形状や走査条件を調整している。
【0023】
矩形状であることで、隣接するプリフォーム表面123とマーク表面124の境界が明確となると同時に、マーク表面124が金型131と接触しなくなる。
【0024】
図7は、
図6に示した第1の変形例の具体例を示す図である。
【0025】
マークのより好適である条件を、
図7により説明する。本実施形態においてマークは、ブロー成形後の成形品である成形品の機械強度や機能にも影響の無いように施される必要がある。
図7(a)には、プリフォームの大きさを示している。お互いに垂直となる方向Aと方向Bに対して、L_a1とL_b1とする。
図7(b)には成形品の大きさを示す。プリフォームと同様に、方向Aおよび方向Bに対して、L_a2とL_b2とする。ここで、L_a1をL_a2で割った値およびL_b1をL_b2で割った値を拡大率とする。この拡大率は、方向Aと方向Bとは異なり、異方性を有している。この2つの拡大率の大きい値を最大拡大率とする。
図7(c)には、プリフォームの拡大図およびプリフォームの断面図を示している。プリフォームの断面図には、マークの深さ180とプリフォームの厚さ181を図示している。
【0026】
マークの深さ180は、プリフォームの厚さ181を最大拡大率で割った値を超えないことを条件とした。これにより、プロフォームが拡張され壁面が引き延ばされても、マークによって成形品に穴の開くことない。
【0027】
図8は、本実施形態の第2の変形例を示す。マーク102は、微小な複数の凹部150により形成される。これにより、ブロー成形時にマーク全体として変形しにくい。
【0028】
図9は、微小な複数の凹部150により形成されたマーク102の説明図である。
マーク102は、互いに垂直である方向Aおよび方向Bに対する凹部間の距離を、スペース170とスペース171とし、ほぼ均等に配置している。
【0029】
図10は、
図9で説明したマーク102のブロー成形前後における説明図である。
図10(a)は、プリフォームにおけるマーク102を示し、
図10(b)は、成形品のマーク103を示す。
【0030】
ブロー成形前後で、プリフォームでは視認されなかった凹部以外の部分142が、成形品ではマークの崩れとして視認されることがあった。
【0031】
図11は、第3の変形例を示す。複数の凹部150に形成された2つの凹部は、隣接して形成されている。これにより、凹部と凹部の間に平坦な未加工部分が存在しないため、未加工部分がブロー成形時に、拡張され、マークが崩れる可能性がない。以下に詳細に説明する。
【0032】
ブロー成形時に起きる拡大率が大きい場合でも、凹部が隣接している場合、凹部が拡張するだけで、平坦化した部分は発生しない。それに対し、凹部と凹部の間に平坦な非加工部分が存在していると、その非加工部分が拡張し、その平坦化した透明もしくは暗い領域が拡張してしまう。この平坦化した領域が白色化したマーク内に存在し、視認されると、平坦化部分が際立って目立ち、『マークの崩れ』という視覚的印象の原因となる。凹部が隣接することで、平坦部が存在しない均質に白色化したマークを形成することができる。
【0033】
図11では、さらに、凹部は複数の方向で他の凹部に隣接している。少なくとも2方向に凹部が隣接していることで、2方向の拡張には、マークの崩れが発生しない。ブロー成形時に拡張する方向は、一般的に、異方性を有している。そのため、一方向のみに隣接させている場合、その方向に対して垂直方向に、スリット状に平坦部が発生してしまう。この不具合を解決するために、少なくとも略垂直関係にある2方向に対して、隣接することが好ましい。これによって、ブロー成形時に異方性のある拡張が起きても、マークの崩れが発生しない。
【0034】
図11では、さらに、凹部は周囲に配置された全ての複数の他の凹部と隣接している。これによって、いかなる方向にプリフォームが拡張されても、マークの崩れは発生しない。
【0035】
非加工部である平坦部が、0.2mm以上あると、視認可能となりマークの崩れと認識される。ブロー成形によって拡張されるプリフォームにおいて、その拡大率を逆算して、凹部間の距離を決めることが望ましい。
【0036】
図12にはプリフォーム上での加工部であるマーク102、非加工部220が示されている。ブロー成形時の方向Aおよび方向Bでの拡大率、AmおよびBmに対して非加工部の概形の幅Lcw221及びLch222が、
Lcw(mm) ≦ 0.2(mm) /Am
Lch(mm) ≦ 0.2(mm) /Bm
であることが好ましい。これによって、良好な視認性を得る。
【0037】
図13は第4の変形例を示す。
図13に示す第4の変形例は、
図9に示したマーク102に比べてさらに視認性が向上している。
【0038】
具体的には、
図9では、凹部と凹部の間に未加工部分を配置している。これにより、凹部を形成するレーザ加工の工数を減らし加工コストを低減することができる。しかし、不用意に未加工部分を配置すると、マークの視認性を低下させる。特に、マークの白色化の不均一性は、官能評価に影響する。
【0039】
図13(a)は、プリフォーム100の大きさを示している。お互いに垂直となる方向Aと方向Bに対して、開口部を方向Aに合わせ、その大きさをL_a1とL_b1とする。ブロー成形によって、プリフォームの大きさは拡大される。
図13(b)には成形品101の大きさを示す。プリフォームと同様に、方向Aおよび方向Bに対して、L_a2とL_b2とする。ここで、L_a1をL_a2で割った値および、L_b1をL_b2で割った値を拡大率とする。この拡大率は、方向Aと方向Bとでは異なり、異方性を有している。
図13(c)には、プリフォーム100の凹部150の配列方法を示している。方向Aの凹部間のスペースは、方向Bの凹部間のスペースより小さい。また、
図13(d)には、プリフォーム100の配列方法を示している。方向Bの凹部間のスペースが、方向Aの凹部間のスペースより小さくした例を示している。
【0040】
本変形例のプリフォーム100では、プリフォームから拡大する際の拡大率が高い方向における隣り合う2つの凹部150の中心間距離は、前記拡大率が低い方向における隣り合う2つの凹部150の中心間距離よりも狭い。これによって、ブロー成形後の成形品101において、プリフォームから拡大された拡大率が高い方向における隣り合う2つの凹部の中心間距離は、前記拡大率が低い方向における隣り合う2つの凹部150の中心間距離と同じにできるため、均質に白色化したマークを形成することが可能となる。官能評価が良好なマークを提供できる。
【0041】
凹部のプリフォーム面内での密度を高くすることは、より多くレーザ光の照射を必要とすることと同義となるため、凹部の配列が密度を高くする方向を、成形条件に合わせて選択することで、より装置負荷の小さい状況で、成形品に情報を付加することができる。
【0042】
【0043】
本発明のマークはレーザ光の照射によって形成されるため、レーザ光をプリフォーム表面上で適切に走査させることで形成することになる。このときレーザ光がパルス光もしくは連続光での制限はない。また、単一もしくは複数のレーザ光で形成されてもよい。
【0044】
凹部の形状は円形に制限するものではない。例えば、楕円形、線形、矩形等の形状の凹部を、レーザ光の走査方法を変えることで形成できる。
【0045】
図15は第5の変形例を示す。
図15(a)は、プリフォーム100の大きさを示している。お互いに垂直となる方向Aと方向Bに対して、開口部を方向Aに合わせ、その大きさをL_a1とL_b1とする。ブロー成形によって、プリフォームの大きさは拡大される。
図15(b)には成形品101の大きさを示す。プリフォームと同様に、方向Aおよび方向Bに対して、L_a2とL_b2とする。ここで、L_a1をL_a2で割った値および、L_b1をL_b2で割った値を拡大率とする。この拡大率は、方向Aと方向Bとでは異なり、異方性を有している。
図15(c)には、プリフォーム100の凹部150の配列方法を示している。方向Aに長辺をもつ形状である。また、
図15(d)には、プリフォーム100の配列方法を示している。方向Bに長辺をもつ形状である。
【0046】
本変形例のプリフォームでは、プリフォームから成形品への拡張の際に、倍率が大きい方向における凹部の長さが、倍率が小さい方向における凹部の長さより長くなるように、凹部は楕円形状に形成される。第4の変形例と同様の効果が得られる。
【0047】
図16は第6の変形例を示す。
図16(a)はプリフォーム100を示す。
図16(b)はプリフォームの拡大
図121およびプリフォームの断面
図122を示す。マークの凹部191、および凸部190が示されている。断面図には、凹部の表面193および凸部の表面192が示されている。
【0048】
本実施形態は、凹部191に隣接するプリフォーム表面に凸部190を備える。凸部を備えることで、ブロー成型時において、さらに凹部190が金型と接触しづらくなっている。また、凸部190はレーザ照射により溶融したプリフォーム材料がマランゴニ対流等の流動により、凹部191と隣接するプリフォーム壁面に堆積することで形成される。これにより、流体が冷却されて形成された凸部190の表面は平滑であるため、凹部191と比較して拡散反射率が低く、ブロー成形時の金型に接触してプリフォームの面内方向に伸びても、マークのエラーとは混同されない。
【0049】
図17には第7の変形例が示されている。
図17(a)はプリフォーム100を示し、
図17(b)はプリフォームの拡大
図121およびプリフォームの断面
図122を示す。マーク102の中には、円形状の凹部200および凸部201がそれぞれ複数配列されており、複数の凸部201のそれぞれは、複数の凹部200のそれぞれの周囲に形成されている。断面図には、凹部の表面202および凸部の表面203が示されている。
【0050】
図18は、第7の変形例の電子顕微鏡写真を示す。
図18(a)には、プリフォーム表面の斜視図および、
図18(b)には断面図が示されている。凹部200の周囲に凸部201が形成されている。断面図には、凹部の底205からプリフォーム表面123までの距離を、凹部の深さ204として示している。
【0051】
図19は、第7の変形例であるレーザ加工方法の概念図を示す。
図19(a)は、プリフォーム100にレーザ光130を照射する工程を示している。
図19(b)には、レーザ加工によって凹形状および凸形状に形成されたマーク102が示されている。
図19(c)に示すように、プリフォーム100が加熱される工程では、ブロー成形のための金型131が配置される。
図19(d)は、気体がプリフォーム100に注入されプリフォーム100が膨張し、金型131へ押し付けられる工程を示している。この際、プリフォーム表面123は金型に押し付けられるが、マーク102は凹形状に形成されているため、金型へは接触しない。さらに、凸部があることにより、凹部は金型への接触しにくくなる。
図19(e)はブロー成形後の成形品101を示す。成形品101に形成されたマーク102は、金型へは接触していないため、形状を維持したまま視認可能となっている。
【0052】
図20は、第8の変形例のレーザ加工方法の工程図を示す。レーザ照射では少なからず照射領域が加熱されるため、ブロー成形中のプリフォームの温度分布が不均一になり、拡大率も不均一になり、意図しない成形が起きる。
図20に示すように、ブロー成形中の容器の温度分布をより均一化させるために、レーザ照射した後に、プリフォームは放熱され、プリフォーム材料の最もガラス転移点が低い温度まで冷却された状態が好ましい。これは、本実施形態に最も相性が良いと思われるコールドパリソンによる工程とほぼ同等である。
【0053】
図21は第9の変形例の工程図を示す。プリフォームを成形した際の温度をキープして、冷却および固体化せずに成形品形状まで拡張する。熱的なエネルギーの無駄が少ない製造が可能となる。この場合はレーザによる温度変化の影響を低減するために、レーザの条件を工夫することが有効である。特にレーザ加工において熱影響が抑えられるピコ秒オーダーのパルスレーザを利用して、100ピコ秒より短いパルス条件とすると、熱影響が抑えられて良い。
【0054】
図22は第10の変形例の工程図を示す。ブロー成形によってプリフォームは成形品にその大きさが拡張される。その拡張される拡大率分、プリフォームで形成されたマークは、成形品では面積が大きくなる。したがって、成形品上で面積の大きなブランドロゴ等は、プリフォームの状態で付与し(ステップS42)、例えば成分表示等の成形品上で微細なマークは成形品を形成した後で付与する(ステップS44)。
【0055】
以上のように、面積の大きなマークは、プリフォームで形成されるため、ブロー成形後に形成される場合に比べて、高速に形成される。一方、微細なマークは、ブロー成形後に形成されるため、プリフォームで形成される場合に比べて、精細に形成される。すなわち、レーザ加工をプリフォームと成形品とで2回に分けて実施することで、精細と高速を両立できる。また、ブロー成形後にレーザ加工をしても、微細情報は少量なので、工数の負荷にはならない。
【0056】
プリフォームではより微細なマーキングを必要とされる。レーザ光の波長が短い方が回折限界により、小さい焦点を形成できるメリットがある。レーザ光にUVレーザを用いるのが良い。さらに、波長が0.2μm~0.4μmであると、微細情報の書き込みに好ましいと同時に、多くの樹脂材料で吸収があるため、基材を変質させやすい。
【0057】
図23は本実施形態のプリフォームにバーコードを付与したものである。ラベルレスである製品をイーコマース以外に広げていくにあたり、本体に付与する情報でもっとも重要なもののひとつにバーコードがある。例えばJANコードであればバーコードを構成する最小単位であるモジュールのサイズは、標準サイズにおいて、およそ0.33mm/1モジュールである。プリフォームは縮小させてマーキングするため、サイズは大きい方が好ましく、JANコードの許容最大倍率2.0倍を考慮すると、0.66mm/モジュールである。
【0058】
また、ラベルレス化の最も進んでいる飲料業界において、なおかつ販売数の多い500ml樹脂容器において、プリフォーム径にほぼ等しいと考えられるキャップの取り付け部の径がおよそ24mm、成形品の径を60~70mmと想定すると、拡大率は2.5倍である。
【0059】
倍率分、マークはプリフォームでは縮小する必要があり、つまりプリフォーム上には1モジュール0.264mm、つまり264μmで描画する必要があり、照射するレーザ光の照射領域も264μm以下である必要がある。さらに好ましくは、印字する量は少ない方がよく、JANコード許容最小倍率80%を考慮すると105μmで、照射するビームの照射領域も105μm以下であるのが好ましい。
【0060】
また、パルスレーザを用いて複数の円形の凹部を配列してマーキング部を形成する場合、コードの読み取りのエラーの無いように可能な限り照射するレーザ光の照射領域は小さい方が好ましく、例えば1モジュールの幅は、複数列の円形凹部を並べて形成するのが良く、2列であれば52.5μm、3列であれば35μm、4列であれば26.25μm、5列であれば21μmのビーム径が好ましい。
【0061】
本実施形態では、レーザ光のビーム径が1μm~132μmであることを特徴とした。これにより、プリフォーム径を24mm(キャップは共通の28mm)、500mlボトルの直径を60~70mmとして2.5倍の拡大率であるので、 JANコードを100%で書くときモジュール幅0.33mmとなる。単線1モジュールでも線幅は0.33/2.5の132μmである。
【0062】
レーザ光のビーム幅を132μm以下とすることで、バーコードの加工が汎用的に可能となる。また、ビーム径は1μm以上であれば、回折限界を超えず簡易なレンズ構成で絞り込むことができ、長いワーキングティスタンスがとれるため、製造コストが低減できる。
【0063】
図24は本実施形態における一例であるレーザ加工方法を説明する図である。プリフォームにレーザ照射を実施するにあたり、リフォーム自体の保持機構等のレイアウト性の都合で、レーザ光源とプリフォームとの距離を大きくする必要が出ると考えられる。
【0064】
特にレーザ走査によるマークを形成する場合、レンズからの距離を取ることで、マーキングを施す平面方向において、マーキング可能な領域を広くすることができる。そのため、
図24に示すように、レーザ光の1回の走査で複数のプリフォームの印字を行うことで、レンズ側の性能を最大限活用し生産性も高めることができる。光源装置台数を少なくすることができる。
【0065】
図25は本実施形態における一例であるレーザ加工方法を説明する図である。プリフォームから容器を製造する複数のラインにまたがって、複数のプリフォームへのマーキングを行うことで、製造ラインに対するマーキング装置の台数を少なくすることができ、製造ラインあたりのレーザ光源の台数を少なくすることができる。
【0066】
図26は本実施形態における一例であるレーザ加工方法を説明する図である。複数のラインにまたがる場合、安全性のために、レーザ光は通常のカメラ等で認識可能な可視光である方が良い。ナノ秒領域のパルス光とすることで樹脂材料の加工を可能とした可視光光源を用いる方が良い。具体的には、レーザ光の波長は0.4μm~0.7μm、パルス幅1マイクロ秒以下のパルスレーザ光であると、
図26にあるように、レーザ加工が可能であり、かつ通常のカメラで認識が可能である。
【0067】
図27は本実施形態における一例であるレーザ加工方法を説明する図である。プリフォームから距離を大きくすることで、走査範囲の走査系の実力がマーキング領域より大きくなると、プリフォームではキャップの取り付け部をマーキング部の距離が近いため、キャップ部が装置としてレーザ照射可能な領域に入ることが考えられる。キャップ部へのレーザ照射は容器成型後の機能不全にかかわるため、
図27に示すように保護部材を用いて保護された状態でマーキング部を形成することが好ましい。これによりキャップ部の機能不全が起きることを防ぐことができる。
【0068】
図28は本実施形態における一例であるレーザ加工方法を説明する図である。レーザ照射によるマーキング部では材料の気化等発生する副産物がプリフォーム内部に入ることが懸念される。
図28に示すように重力方向に開口部を傾けてマーキングすることで、レーザ照射による副産物のプリフォームの混入を避けることができる。
図28は開口部の位置を制限するものではなく、水平に対して重力方向へ傾いていればよい。
【0069】
本実施形態および変形例では、プリフォームの透明性に関して限定するものではない。マークのコントラストが発現すればよく、プロフォームが不透明でも構わない。本実施形態および変形例では、マーク部が凹部であるため、不透明でもコントラストを作ることができる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態にかかるレーザ加工方法は、プリフォームにマークを形成するレーザ加工方法であって、マークは凹部を含むことを特徴とする。これにより、プリフォームで形成されたマークの形状を成形品でも維持することができる。
【0071】
本実施形態にかかるレーザ加工方法は、凹部に隣接して凸部を形成することを特徴とする。これにより、プリフォームで形成されたマークの形状を確実に成形品で維持することができる。
【0072】
本実施形態にかかるレーザ加工方法は、マークは複数の凹部を含むことを特徴とする。これにより、ブロー成形時にマーク全体として変形しにくい。
【0073】
本実施形態にかかるレーザ加工方法は、複数の凹部における2つの凹部は隣接して形成されることを特徴とする。これにより、均質に白色化したマークを形成することができる。
【0074】
本実施形態にかかるレーザ加工方法は、プリフォームから拡大する際の拡大率が高い方向における隣り合う2つの凹部の中心間距離が、拡大率が低い方向における前記隣り合う2つの凹部の中心間距離が狭くなるように複数の凹部の形成することを特徴とする。これにより、拡大率が異なる方向において均質に白色化したマークが形成された成形品を得ることができる。
【0075】
本実施形態にかかるレーザ加工方法は、複数の凹部における一の凹部は、複数の方向において、複数の他の凹部と隣接して形成されたことを特徴とする。これにより、複数の方向において均質に白色化したマークが形成された成形品を得ることができる。
【0076】
本実施形態にかかるレーザ加工方法は、複数の凹部における一の凹部は、周囲に配置された全ての複数の他の凹部と隣接して形成されたことを特徴とする。これにより、あらゆる方向において均質に白色化したマークが形成された成形品を得ることができる。
【0077】
本実施形態にかかるレーザ加工方法は、前記複数の凹部における前記隣り合う凹部の間の加工していない領域が、成形品において0.2mm以下であることを特徴とする。これにより、均質に白色化したマークが形成された成形品を得ることができる。
【0078】
本実施形態にかかるレーザ加工方法は、前記凹部の断面が矩形状であることを特徴とする。これにより、隣接するプリフォーム表面とマーク表面の境界が明確となると同時に、マーク表面と金型と接触しなくなり、プリフォームで形成されたマークを成形品で維持することができる。
【0079】
本実施形態にかかるレーザ加工方法は、前記プリフォームをブロー成形した後に、レーザ加工する工程を含むことを特徴とする。これにより、精細なマーク形成と生産コストを低減できる高速な生産とを両立できる。
【符号の説明】
【0080】
100 プリフォーム
101 成形品
102 マーク(プリフォーム)
103 マーク(成形品)
120 切断線
121 プリフォーム拡大図
122 プリフォーム断面
123 プリフォーム表面
124 マーク表面
125 マーク側面
130 レーザ光
131 金型
132 レンズ
141 成形品表面
142 マークの崩れ
150 凹部
170 スペースa
171 スペースb
180 マークの深さ
181 プリフォームの厚さ
190 凸部
191 凹部(凸部に隣接する)
192 凸部表面
193 凹部表面
200 凹部(円形)
201 凸部(円形)
202 凹部表面(円形)
203 凸部表面(円形)
204 凹部の深さ
205 凹部の底部
210 バーコード
220 非加工部
221 非加工部の幅Lcw
222 非加工部の幅Lch
230 レーザ光の走査範囲
231 搬送経路A
232 搬送経路B
240 カメラ
241 可視光
250 保護機構
251 キャップ部
252 レーザ光線照射方向
260 開口部