(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094445
(43)【公開日】2023-07-05
(54)【発明の名称】半導体ウェーハの洗浄方法および半導体ウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230628BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 647Z
H01L21/304 643A
H01L21/304 651B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021209928
(22)【出願日】2021-12-23
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】芦馬 渓
(72)【発明者】
【氏名】大久保 知洋
(72)【発明者】
【氏名】久保田 真美
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA82
5F157AB02
5F157AB33
5F157AB90
5F157AC01
5F157AC26
5F157BD33
5F157BE12
5F157BE23
5F157BE33
5F157BE46
5F157CE07
5F157DB02
5F157DB03
5F157DB37
(57)【要約】
【課題】半導体ウェーハの表面を従来よりも均一に洗浄することができる半導体ウェーハの洗浄方法を提案する。
【解決手段】半導体ウェーハWを回転させつつ、半導体ウェーハWの表面に薬液を供給して上記表面を洗浄する半導体ウェーハWの洗浄方法において、薬液の供給(
図1(b)および(c))の前に、半導体ウェーハWを回転させつつ、半導体ウェーハWの表面の中心部に純水を供給し(
図1(a))、上記表面の上に純水の膜を形成した状態で、純水の供給から薬液の供給に切り替えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウェーハを回転させつつ、前記半導体ウェーハの表面に薬液を供給して前記表面を洗浄する半導体ウェーハの洗浄方法において、
前記薬液の供給の前に、前記半導体ウェーハを回転させつつ、前記半導体ウェーハの前記表面の中心部に純水を供給し、前記表面の上に前記純水の膜を形成した状態で、前記純水の供給から前記薬液の供給に切り替えることを特徴とする半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項2】
前記純水の供給は、前記半導体ウェーハを100rpm以下の回転数で回転させた状態で行う、請求項1に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項3】
前記純水の供給は、1.0L/分以下の流量で行う、請求項1または2に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項4】
前記純水の供給は、前記半導体ウェーハの前記表面に垂直な方向に対して5°以内の角度で行う、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項5】
前記半導体ウェーハはシリコンウェーハである、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【請求項6】
半導体インゴットに対してウェーハ加工処理を施して得られた半導体ウェーハに対して、請求項1~5のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法によって前記半導体ウェーハの表面を洗浄することを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハの洗浄方法および半導体ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイスの基板として、シリコンウェーハなどの半導体ウェーハが使用されている。半導体ウェーハは、チョクラルスキー(Czochralski、CZ)法などによって育成した単結晶インゴットに対して、ウェーハ加工処理を施すことによって得られる。上記加工処理の際、半導体ウェーハの表面には、研磨粉などのパーティクルが付着するため、加工処理後に半導体ウェーハに対して洗浄処理を行ってパーティクルを除去している。
【0003】
半導体ウェーハの洗浄方法には、複数枚のウェーハを同時に洗浄するバッチ式のものと、ウェーハを一枚ずつ洗浄する枚葉式のものとに分けることができる。これらのうち、必要とする洗浄に必要な薬液の量が比較的少ないこと、ウェーハ間の相互汚染を回避することができること、大口径化により複数枚の半導体ウェーハを同時に処理するのが困難になってきていることなどから、近年では、枚葉式の洗浄方法が使用されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、枚葉式の方法により半導体ウェーハを洗浄する際に、半導体ウェーハを回転させつつ半導体ウェーハの表面に薬液を供給すると、供給された薬液の干渉によって、薬液の液膜が厚い領域と薄い領域が生じる、いわゆる跳水現象が生じる場合がある。跳水現象が生じると、半導体ウェーハの中心からウェーハの半径Rの1/2付近の領域において薬液の乱流が生じ、半導体ウェーハの表面を均一に洗浄できない問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、半導体ウェーハの表面を従来よりも均一に洗浄することができる半導体ウェーハの洗浄方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、以下の通りである。
[1]半導体ウェーハを回転させつつ、前記半導体ウェーハの表面に薬液を供給して前記表面を洗浄する半導体ウェーハの洗浄方法において、
前記薬液の供給の前に、前記半導体ウェーハを回転させつつ、前記半導体ウェーハの前記表面の中心部に純水を供給し、前記表面の上に前記純水の膜を形成した状態で、前記純水の供給から前記薬液の供給に切り替えることを特徴とする半導体ウェーハの洗浄方法。
【0008】
[2]前記純水の供給は、前記半導体ウェーハを100rpm以下の回転数で回転させた状態で行う、前記[1]に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0009】
[3]前記純水の供給は、1.0L/分以下の流量で行う、前記[1]または[2]に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0010】
[4]前記純水の供給は、前記半導体ウェーハの前記表面に垂直な方向に対して5°以内の角度で行う、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0011】
[5]前記半導体ウェーハはシリコンウェーハである、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法。
【0012】
[6]半導体インゴットに対してウェーハ加工処理を施して得られた半導体ウェーハに対して、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載の半導体ウェーハの洗浄方法によって前記半導体ウェーハの表面を洗浄することを特徴とする半導体ウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体ウェーハの表面を従来よりも均一に洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による半導体ウェーハの洗浄方法のフローの要部を示す図である。
【
図2】従来例および発明例1に対するLPDの個数を示す図である。
【
図3】ウェーハの垂直方向に対する純水の供給角度とLPDの個数との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(半導体ウェーハの洗浄方法)
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。本発明による半導体ウェーハの洗浄方法は、半導体ウェーハを回転させつつ、半導体ウェーハの表面に薬液を供給して上記表面を洗浄する半導体ウェーハの洗浄方法である。ここで、上記薬液の供給の前に、半導体ウェーハを回転させつつ、半導体ウェーハの上記表面の中心部に純水を供給し、上記表面の上に純水の膜を形成した状態で、純水の供給から薬液の供給に切り替えることを特徴とする。
【0016】
上述のように、枚葉式の洗浄方法によって半導体ウェーハを洗浄すると、跳水現象によって薬液の乱流が生じ、半導体ウェーハの表面を均一に洗浄できない場合がある。表面検査装置(例えば、KLA-Tencor社製、Surfscan SP5以降の装置)によって薬液の乱流が生じた半導体ウェーハの表面を検査すると、上記乱流を反映した渦巻状の輝点欠陥(Light Point Defect、LPD)のパターンが検出される。また、半導体ウェーハの表面を均一に洗浄できないことから、検出されるLPDの個数が増加する。
【0017】
本発明者らは、上記課題を解決するために、様々な条件下で半導体ウェーハの洗浄を行い、ウェーハ表面に供給された薬液の挙動と、洗浄後の半導体ウェーハの表面に検出されるLPDパターンとの関係を詳細に調査した。その結果、半導体ウェーハの表面を均一に洗浄するためには、洗浄初期の段階、すなわち、乾いた(ドライ)状態の半導体ウェーハの表面に薬液の供給を開始した直後の段階で、薬液の乱流を抑制することが極めて重要であるとの知見を得た。
【0018】
上記薬液の乱流の原因である跳水現象は、半導体ウェーハの回転数が高いほど生じやすい。そこで、本発明者らは、半導体ウェーハを従来よりも低い回転数で回転させつつ、半導体ウェーハの洗浄を行ってみた。その結果、洗浄に用いる薬液(オゾン水、フッ酸水溶液、SC-1洗浄液、アンモニア過水など)は半導体ウェーハとの高い反応性を有しているため、薬液が着液した領域にて欠陥が形成され、また薬液がウェーハ表面上で均一に拡散せず、形成された酸化膜の厚みムラやエッチングムラが生じ、半導体ウェーハを均一に洗浄できなかった。
【0019】
そこで、本発明者らは、薬液の供給前に、薬液よりも反応性の低い純水を半導体ウェーハの表面に供給することに想到した。そして、本発明者らは、半導体ウェーハの表面上に純水の膜を形成した状態で、純水の供給から薬液の供給に切り替えることによって、ウェーハ表面に存在する純水により薬液を薄めてその反応性を低下させ、これにより薬液の供給開始直後の段階での高濃度の薬液の乱流を抑制し、半導体ウェーハの表面全体に均一な濃度の薬液を供給して、半導体ウェーハの表面を従来よりも均一に洗浄できることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0020】
以上の説明から明らかなように、本発明は、半導体ウェーハの表面に純水を供給して純水の膜を形成した状態で、純水の供給から薬液の供給に切り替えることに特徴を有するものであり、その他の工程については、従来公知の方法を適切に用いることができ、限定されない。以下、各工程について説明する。
【0021】
<純水供給工程>
まず、洗浄対象の半導体ウェーハを回転させつつ、半導体ウェーハの表面の中心部に純水を供給し、半導体ウェーハの表面の上に純水の膜を形成する(純水供給工程)。
【0022】
洗浄対象の半導体ウェーハとしては、シリコンウェーハ、ゲルマニウムウェーハ、ヒ化ガリウムウェーハなど、任意の半導体ウェーハとすることができるが、本発明により、特にシリコンウェーハを好適に洗浄することができる。また、半導体ウェーハは単結晶ウェーハ、多結晶ウェーハとすることができる。さらに、半導体ウェーハは、エピタキシャルウェーハやアニールウェーハとすることができる。半導体ウェーハの直径、導電型、抵抗率なども限定されない。
【0023】
半導体ウェーハの回転は、一般的な枚葉式の半導体ウェーハの洗浄装置の回転テーブルに半導体ウェーハを載置し、回転テーブルを回転させることによって行うことができる。半導体ウェーハの回転数は、回転テーブルの回転数を制御することによって調整することができる。
【0024】
純水の供給は、洗浄対象の半導体ウェーハの中心部に向かって行う。回転する半導体ウェーハの中心部に純水を供給することによって、遠心力により、純水が半導体ウェーハの中心部から外周部に向かってウェーハ全体に均一に拡散し、半導体ウェーハの表面の上に純水の膜を形成することができる。
【0025】
上記純水の供給は、
図1(a)に模式的に示すように、半導体ウェーハWの中心部の上方に配置された純水供給ノズル1から、半導体ウェーハWの表面に純水を吐出することによって行うことができる。
【0026】
純水の供給は、少なくとも半導体ウェーハWの表面全体に純水の膜が形成されるまで行う。純水の膜が形成される時間は、半導体ウェーハWの直径や純水の流量、半導体ウェーハWの回転数に依存するが、例えば半導体ウェーハWがシリコンウェーハであり、その直径が300mm、純水の流量が約0.5L/分、シリコンウェーハの回転数が25rpmの場合、5秒程度である。なお、本発明では、後段の薬液供給工程において薬液の供給に切り替えるまで、半導体ウェーハWの表面に純水を供給し続ける。
【0027】
半導体ウェーハWの表面に供給する純水の純度は、製品品質を達成できる純度を有していれば特に限定されない。純水の純度は、いわゆる純水レベル(例えば、抵抗率:0.1~15MΩ・cm)とすることができ、超純水レベル(例えば、抵抗率:15MΩ・cm超え)とすることもできる。
【0028】
上記純水の供給は、半導体ウェーハWを100rpm以下の回転数で回転させた状態で行うことが好ましい。これにより、跳水現象による純水の乱流が生じるのを防止することができ、後段の薬液供給工程において薬液を供給しても、薬液の乱流が生じるのを防止して、半導体ウェーハWの表面をより均一に洗浄することができる。また、純水の供給は、半導体ウェーハWを10rpm以上の回転数で回転させた状態で行うことが好ましく、25rpm以上の回転数で回転させた状態で行うことがより好ましい。これにより、半導体ウェーハWの表面に純水の膜を均一かつ効率的に形成することができる。
【0029】
また、純水の供給は、1.0L/分以下の流量で行うことが好ましい。これにより、純水がウェーハ表面上に着液した際に純水が液跳ねして滑るのを抑制し、純水の膜を半導体ウェーハWの中心部から外周部に向かって徐々に形成して純水の乱流が生じるのを防止することができる。その結果、後段の薬液供給工程において薬液を供給しても、薬液の乱流が生じるのを防止して、半導体ウェーハWの表面をより均一に洗浄することができる。また、純水の供給は、0.3L/分以上の流量で行うことが好ましい。これにより、半導体ウェーハWの表面に純水の膜を効率的に形成することができる。
【0030】
さらに、純水の供給は、半導体ウェーハWの表面に垂直な方向に対して5°以内の角度(以下、「純水の供給角度」とも言う。)で行うことが好ましい。これにより、半導体ウェーハWの表面に着液した純水がウェーハ表面においてスリップを起こして液滴となって分断するのを防止して、半導体ウェーハWの表面をより均一に洗浄することができる。この効果は、純水の供給を半導体ウェーハWの表面に垂直な方向に対して0°の角度で行う場合、すなわち、純水を半導体ウェーハWの表面に垂直な方向から行う場合にも得ることができる。
【0031】
<薬液供給工程>
次に、純水供給工程において純水の膜が形成された状態で、純水の供給を薬液の供給に切り替えて、半導体ウェーハの表面に薬液を供給する(薬液供給工程)。本薬液供給工程は、従来の洗浄方法において行っている薬液を用いた洗浄工程と同様に行うことができる。
【0032】
上記薬液としては、オゾン水、フッ酸水溶液、SC-1洗浄液、アンモニア過水など、目的に応じた適切なものを用いることができる。
【0033】
薬液供給工程は、例えば、薬液としてオゾン水を供給するオゾン水供給工程(
図1(b))と、薬液としてHF水溶液を供給するフッ酸水溶液供給工程(
図1(c)とで構成することができる。
図1(b)に模式的に示すように、オゾン水供給工程では、オゾン水供給ノズル2から半導体ウェーハWの表面にオゾン水を供給し、ウェーハ表面に付着した金属や有機物を酸化して除去するとともに、ウェーハ表面に付着したパーティクルの下方に酸化膜を形成する。
【0034】
また、
図1(c)に模式的に示すように、フッ酸水溶液供給工程では、フッ酸水溶液供給ノズル3から半導体ウェーハWの表面にフッ酸水溶液を供給し、オゾン水供給工程において形成された酸化膜を除去して、ウェーハ表面に付着したパーティクルを除去することができる。
【0035】
薬液供給工程は、上記オゾン水供給工程およびフッ酸水溶液供給工程を所定の回数繰り返し、最後に再度オゾン水供給工程を行うように構成することができる。
【0036】
薬液の供給は、0.5L/分以上1.5L/分以下の流量で行うことが好ましく、0.8L/分以上1.3L/分以下の流量で行うことがより好ましい。これにより、半導体ウェーハWの表面を良好に洗浄することができる。
【0037】
また、薬液の供給は、半導体ウェーハWを100rpm以上500rpm以下の回転数で回転させた状態で行うことが好ましく、100rpm以上300rpm以下の回転数で回転させた状態で行うことがより好ましい。半導体ウェーハWの回転数を上記範囲内の回転数とすることにより、半導体ウェーハW上に薬液をより均一に供給して、半導体ウェーハWの表面をより均一に洗浄することができる。
【0038】
なお、薬液供給工程における半導体ウェーハWの回転数が純水供給工程における半導体ウェーハWの回転数よりも高い場合には、純水の供給から薬液の供給に切り替えた後、半導体ウェーハW上の純水が薬液に全て入れ替わった段階以降で、半導体ウェーハWの回転数を上昇させることが好ましい。
【0039】
<リンス工程>
続いて、上記薬液供給を経た半導体ウェーハWの表面に純水を供給して、半導体ウェーハWの表面をリンスする。これは、純水供給工程において使用した純水供給ノズル1から半導体ウェーハWの表面に純水を供給することによって行うことができる。リンス工程での純水の流量は、例えば0.3L/分以上1.5L/分以下とすることができる。また、半導体ウェーハWの回転数は、例えば100rpm以上500rpm以下とすることができる。
【0040】
<乾燥工程>
最後に、リンス工程を経た半導体ウェーハWを高速で回転させて、半導体ウェーハWを乾燥させる。乾燥工程での半導体ウェーハWの回転数は、例えば1000rpm以上2000rpm以下とすることができる。
【0041】
こうして、半導体ウェーハWの表面を従来よりも均一に洗浄することができる。
【0042】
(半導体ウェーハの製造方法)
本発明による半導体ウェーハの製造方法は、半導体インゴットに対してウェーハ加工処理を施して得られた半導体ウェーハに対して、上述した本発明による半導体ウェーハの洗浄方法によって上記半導体ウェーハの表面を洗浄することを特徴とする。
【0043】
上述のように、本発明による半導体ウェーハWの洗浄方法では、薬液の供給の前に、半導体ウェーハWの表面に純水を供給して純水の膜を形成し、その後純水の供給から薬液の供給に切り替えるように構成されている。これにより、半導体ウェーハWの表面を従来よりも均一に洗浄できる。こうした本発明による半導体ウェーハWの洗浄方法をウェーハ製造プロセスに適用することによって、付着型パーティクルや欠陥の少ない半導体ウェーハWを製造することができる。
【0044】
半導体インゴットとしては、シリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウムなど、任意の半導体インゴットとすることができるが、本発明により、特にシリコンインゴットを好適に洗浄することができる。半導体インゴットは、単結晶インゴット、多結晶インゴットとすることができる。半導体インゴットの直径、導電型、抵抗率なども限定されない。
【0045】
ウェーハ加工処理は、スライス処理、面取り処理、ラップ処理、平面研削処理、両頭研削処理などの従来公知の処理の1つまたは複数の処理で適宜構成することができる。
【0046】
上記ウェーハ加工処理によって得られた半導体ウェーハWの表面にエピタキシャル層を形成してエピタキシャルウェーハとしてもよく、また半導体ウェーハWに対してアニール処理を施してアニールウェーハとしてもよい。
【0047】
こうして得られた半導体ウェーハWに対して、上述した本発明による半導体ウェーハWの洗浄方法によって半導体ウェーハWの表面を洗浄することにより、付着型パーティクルや欠陥の少なく半導体ウェーハWを製造することができる。
【実施例0048】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例に限定されない。
【0049】
<純水の供給の有無とLPDの個数との関係>
(従来例)
洗浄対象の半導体ウェーハとして、シリコンウェーハ(直径:300mm)を10枚用意し、各シリコンウェーハを以下のように洗浄した。まず、シリコンウェーハを回転数500rpmで回転させつつ、シリコンウェーハの表面に20mg/Lのオゾン水を流量1.5L/分、シリコンウェーハの表面に垂直な方向に対して70°の角度で10秒間供給した。
次いで、シリコンウェーハの回転数を500rpmに維持した状態で、シリコンウェーハの表面に、1wt%のフッ酸水溶液を流量1.0L/分、シリコンウェーハの表面に垂直な方向に対して0~5°の角度で5秒間供給した。続いて、20mg/Lのオゾン水を前回と同じ条件で供給した。上記フッ酸水溶液の供給およびオゾン水の供給を複数回繰り返した。
その後、シリコンウェーハの回転数を500rpmに維持した状態で、シリコンウェーハの表面に、純水を流量1.0L/分、シリコンウェーハの表面の垂直な方向に対して0~5°の角度で30秒間供給して、シリコンウェーハの表面をリンスした。
最後に、シリコンウェーハの回転数を1000rpmに上昇させ、60秒間維持してシリコンウェーハ乾燥させた。こうして、シリコンウェーハを洗浄した。
【0050】
(発明例1)
従来例と同様に、シリコンウェーハを洗浄した。ただし、オゾン水を用いた1回目の洗浄の前に、シリコンウェーハを回転数100rpmで回転させつつ、純水を流量1.0L/分、シリコンウェーハの表面に垂直な方向から5秒供給した。その他の条件は、従来例と全て同じである。
【0051】
従来例および発明例1について、洗浄した10枚のシリコンウェーハのそれぞれについて、表面検査装置(KLA-Tencor社製、Surfscan SP7)を用いて、シリコンウェーハの表面を検査した。その際、シリコンウェーハの表面に入射する入射光としては、斜め入射光(ウェーハ表面垂直方向に対して70度の方向から入射)を用い、検出チャネルとしてはDCOチャネルを用い、15nm以上のサイズのLPDを検出した。
【0052】
図2は、従来例および発明例1について、検出されたLPDの個数を示している。従来例については、検出されたLPDの個数は、シリコンウェーハ1枚当たり39.4個であった。これに対して、発明例1については、検出されたLPDの個数は、シリコンウェーハ1枚当たり4.9個であり、従来例に比べて少なかった。また、従来例については、LPDの数のシリコンウェーハ間のばらつきが大きかったのに対して、発明例1については、シリコンウェーハ間のばらつきが小さかった。
【0053】
<シリコンウェーハの回転数とLPDの個数との関係>
(発明例2)
発明例1と同様に、シリコンウェーハを洗浄した。ただし、純水を供給する際のシリコンウェーハの回転数を50rpmとした。その他の条件は、発明例1と全て同じである。
【0054】
(比較例)
発明例1と同様に、シリコンウェーハを洗浄した。ただし、純水を供給する際のシリコンウェーハの回転数を300rpmとした。その他の条件は、発明例1と全て同じである。
【0055】
従来例および発明例1と同様に、発明例2および比較例について、洗浄したシリコンウェーハ10枚のそれぞれについて、シリコンウェーハの表面を検査した。その結果、発明例2については、シリコンウェーハ1枚当たり4.2個であったのに対して、比較例については85.7個であった。上述のように、発明例1については、シリコンウェーハ1枚当たり4.9個であったことから、シリコンウェーハの回転数を100rpm以下とすることにより、LPDの個数を大きく低減できることが分かる。なお、比較例については、薬液の乱流に起因すると考えられる渦巻状のLPDパターンが観察された。
【0056】
<純水の流量とLPDの個数との関係>
(発明例3)
発明例1と同様に、シリコンウェーハを洗浄した。ただし、純水を供給する際の純水の流量を0.5L/分とした。その他の条件は、発明例1と全て同じである。
【0057】
(発明例4)
発明例1と同様に、シリコンウェーハを洗浄した。ただし、純水を供給する際の純水の流量を1.5L/分とした。その他の条件は、発明例1と全て同じである。
【0058】
従来例および発明例1と同様に、発明例3および発明例4について、洗浄したシリコンウェーハ10枚のそれぞれについて、シリコンウェーハの表面を検査した。その結果、発明例3については、シリコンウェーハ1枚当たり5.2個であったのに対して、発明例4については19.2個であった。上述のように、発明例1については、シリコンウェーハ1枚当たり4.9個であったことから、純水の流量を1.0L/分以下とすることにより、LPDの個数を大きく低減できることが分かる。
【0059】
<純水の供給角度とLPDの個数との関係>
(発明例5)
発明例1と同様に、シリコンウェーハを洗浄した。ただし、純水の供給は、シリコンウェーハの表面に垂直な方向に対して3°の角度で行った。また、洗浄したシリコンウェーハの枚数を3枚とした。その他の条件は、発明例1と全て同じである。
【0060】
(発明例6)
発明例5と同様に、シリコンウェーハを洗浄した。ただし、純水の供給は、シリコンウェーハの表面に垂直な方向に対して5°の角度で行った。その他の条件は、発明例5と全て同じである。
【0061】
(発明例7)
発明例5と同様に、シリコンウェーハを洗浄した。ただし、純水の供給は、シリコンウェーハの表面に垂直な方向に対して8°の角度で行った。その他の条件は、発明例5と全て同じである。
【0062】
(発明例8)
発明例5と同様に、シリコンウェーハを洗浄した。ただし、純水の供給は、シリコンウェーハの表面に垂直な方向に対して10°の角度で行った。その他の条件は、発明例5と全て同じである。
【0063】
(発明例9)
発明例5と同様に、シリコンウェーハを洗浄した。ただし、純水の供給は、シリコンウェーハの表面に垂直な方向に対して20°の角度で行った。その他の条件は、発明例5と全て同じである。
【0064】
従来例および発明例1と同様に、発明例5~9について、洗浄したシリコンウェーハ3枚のそれぞれについて、表面検査装置(KLA-Tencor社製、SP-7)を用いて、シリコンウェーハの表面を検査した。
【0065】
図3は、ウェーハの垂直方向に対する純水の供給角度とLPDの個数との関係を示している。なお、角度が0°の結果については、発明例1において洗浄した10枚のシリコンウェーハから選択した3枚について示している。
図3から明らかなように、シリコンウェーハに垂直な方向に対する純水の供給角度が大きくなるほど、LPDの個数が多くなることが分かる。しかし、純水の供給角度が5°以下であれば、シリコンウェーハ1枚当たりのLPDの個数は5個以下であり、高い水準でシリコンウェーハの表面を洗浄できていることが分かる。