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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009448
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】光音響物性計測装置および計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/24 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
G01N29/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112746
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高武 直弘
(72)【発明者】
【氏名】小野 豪一
(72)【発明者】
【氏名】片岸 誠
(72)【発明者】
【氏名】土井 秀明
(72)【発明者】
【氏名】白水 信弘
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AC10
2G047BA04
2G047BC04
2G047BC15
2G047BC18
2G047CA04
2G047EA05
2G047EA09
2G047GA21
2G047GD02
2G047GG12
2G047GG28
2G047GG32
2G047GG33
(57)【要約】
【課題】光音響物性計測装置において、測定対象物の配置状態や、光音響セルと測定対象物の隙間の状態などによる共鳴周波数の変化に対して比較的手軽に対応できて、検出感度を低下させること無く、比較的短い時間で対象物の物性を計測することを可能にする
【解決手段】光音響物性計測装置を、対象物に変調した光を照射する光照射部と、光照射部から変調した光を照射することにより対象物で発生する光音響波を増幅させる光音響セルと、光音響セルの内部に音波を発生させる音波発生部と、光音響セルで増幅させた光音響波と音波発生部から光音響セルの内部に発生させた音波を検出するマイクと、マイクで検出した光音響波に基づいて対象物の物性を解析する物性解析部とを備えて構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に光を照射することにより発生した光音響信号を検出して前記対象物の物性を測定する光音響物性計測装置であって、
前記対象物に変調した光を照射する光照射部と、
前記光照射部から変調した光を照射することにより前記対象物で発生する光音響波を増幅させる光音響セルと、
前記光音響セルの内部に音波を発生させる音波発生部と、
前記光音響セルで増幅させた光音響波と前記音波発生部から前記光音響セルの内部に発生させた音波を検出するマイクと、
前記マイクで検出した前記光音響波に基づいて前記対象物の物性を解析する物性解析部と
を備えたことを特徴とする光音響物性計測装置。
【請求項2】
請求項1記載の光音響物性計測装置であって、
前記光照射部は、光源と、光チョッパと、前記マイクで検出した前記音波発生部から前記光音響セルの内部に発生させた音波のピーク周波数を検出するピーク周波数探索部と、前記ピーク周波数探索部で探索した前記音波発生部から前記光音響セルの内部に発生させた音波のピーク周波数に基づいて前記光チョッパを駆動する駆動回路部とを更に備えることを特徴とする光音響物性計測装置。
【請求項3】
請求項1記載の光音響物性計測装置であって、
前記音波発生部は、前記光音響セルの内部に音波を発生させるスピーカーと、前記スピーカーから発する音波の周波数帯域を制御する信号発生回路部とを備えることを特徴とする光音響物性計測装置。
【請求項4】
請求項2記載の光音響物性計測装置であって、
前記音波発生部は、前記光音響セルの内部に音波を発生させるスピーカーと、前記スピーカーから発する音波の周波数帯域を制御する信号発生回路部と、前記ピーク周波数探索部で検出した前記スピーカーから前記光音響セルの内部に発生させた音波のピーク周波数に基づいて前記信号発生回路部を制御して前記スピーカーから発生する音波の周波数帯域を切替える周波数帯域切替部とを備えることを特徴とする光音響物性計測装置。
【請求項5】
請求項1記載の光音響物性計測装置であって、
前記光照射部は、光源と、光チョッパと、前記マイクで検出した前記音波発生部から前記光音響セルの内部に発生させた音波のピーク周波数を検出するピーク周波数探索部と、前記ピーク周波数探索部で検出したピーク周波数を予め設定した閾値と比較する閾値判定部と、前記閾値判定部で判定した結果を表示する表示部と、前記光チョッパを駆動する周波数を入力する周波数入力部と、 前記周波数入力部から入力した前記光チョッパを駆動する周波数に基づいて前記光チョッパを駆動する駆動回路部とを更に備えることを特徴とする光音響物性計測装置。
【請求項6】
請求項1記載の光音響物性計測装置であって、
前記光照射部は、光源と、前記マイクで検出した前記音波発生部から前記光音響セルの内部に発生させた音波のピーク周波数を検出するピーク周波数探索部と、前記ピーク周波数探索部で探索した前記音波発生部から前記光音響セルの内部に発生させた音波のピーク周波数に基づいて前記光源を変調して駆動する駆動回路部とを更に備えることを特徴とする光音響物性計測装置。
【請求項7】
請求項2記載の光音響物性計測装置であって、
前記マイクで検出した前記光音響波を前記ピーク周波数探索部で検出した前記音波発生部から前記光音響セルの内部に発生させた音波のピーク周波数と同期して検出し、前記同期して検出した信号を前記物性解析部に送る同期検出部を更に備えたことを特徴とする光音響物性計測装置。
【請求項8】
請求項3記載の光音響物性計測装置であって、
前記対象物と前記光音響セルとの位置関係を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像した前記対象物と前記光音響セルとの位置関係と前記光音響セルの共鳴周波数との関係を記憶したデータベースとを更に備え、前記信号発生回路部は、前記データベースに記憶された前記対象物と前記光音響セルとの位置関係と前記光音響セルの共鳴周波数との関係に基づいて前記スピーカーから発生する音波の周波数帯域を制御することを特徴とする光音響物性計測装置。
【請求項9】
請求項2記載の光音響物性計測装置であって、
前記光照射部から前記変調させた光を前記対象物に照射することにより前記光音響セルで発生させた前記光音響波を前記マイクで検出した信号から周波数特性を求める周波数測定部と、前記周波数測定部で求めた周波数特性を記憶する記憶部とを更に備え、前記ピーク周波数探索部は、前記音波発生部から前記光音響セルの内部に発生させた音波を前記マイクで検出した信号と前記記憶部に記憶した周波数特性とを用いて前記光音響セルの内部に発生させた音波のピーク周波数を求め、前記求めたピーク周波数に基づいて前記駆動回路部を制御することを特徴とする光音響物性計測装置。
【請求項10】
請求項1記載の光音響物性計測装置であって、
前記光照射部と前記光音響セルとの間に可動ミラーを備え、前記可動ミラーで前記光照射部から発射された前記変調された光の光路を切り替えて、前記変調された光を前記対象物に照射する位置を変化させることを特徴とする光音響物性計測装置。
【請求項11】
光照射部から発射した所定の周波数で変調した光を対象物に照射し、
前記所定の周波数で変調した光が照射された前記対象物から発生して光音響セルの内部で共鳴した光音響信号をマイクで検出し、
前記マイクで検出した前記光音響信号を用いて前記対象物の物性を分析する
光音響物性計測方法であって、
前記光照射部から前記対象物に照射する前記光の前記所定の周波数を、
スピーカーから前記光音響セルの内部に音波を発生し、
前記発生した音波により前記光音響セルの内部で発生した音を前記マイクで受信し、
前記マイクで受信した前記音のピーク周波数をピーク周波数探索部で探索し、
前記ピーク周波数探索部で探索した前記ピーク周波数に基づいて設定する
ことを特徴とする光音響物性計測方法。
【請求項12】
請求項11記載の光音響物性計測方法であって、
前記光照射部から前記所定の周波数で変調された光を発射することを、前記光照射部の光源から発射された光を前記光照射部の光チョッパで前記所定の周波数で変調させ、前記光チョッパで前記所定の周波数で変調された光を発射することを特徴とする光音響物性計測方法。
【請求項13】
請求項12記載の光音響物性計測方法であって、
前記光源から発射された光を前記光チョッパで前記所定の周波数で変調することを、前記マイクで検出した前記スピーカーから前記光音響セルの内部に発生させた音波のピーク周波数を前記ピーク周波数探索部で検出し、前記ピーク周波数探索部で探索した前記スピーカーから前記光音響セルの内部に発生させた音波のピーク周波数に基づいて駆動回路部で前記光チョッパを駆動することにより行うことを特徴とする光音響物性計測方法。
【請求項14】
請求項11記載の光音響物性計測方法であって、
前記スピーカーから前記光音響セルの内部に発生させる音波の周波数帯域を周波数帯域切替部で切替えることにより前記スピーカーから前記周波数帯域が異なる音波を前記光音響セルの内部に順次発生させ、前記順次発生させた前記周波数帯域の異なる音波を前記マイクで検出して得た信号に基づいて前記ピーク周波数探索部で前記ピーク周波数を検出することを特徴とする光音響物性計測方法。
【請求項15】
光照射部から発射した所定の周波数で変調した光を対象物に照射し、
前記所定の周波数で変調した光が照射された前記対象物から発生して光音響セルの内部で共鳴した光音響信号をマイクで検出し、
前記マイクで検出した前記光音響信号を用いて前記対象物の物性を分析する
光音響物性計測方法であって、
前記光照射部から前記対象物に照射する前記光の前記所定の周波数を、
前記光照射部から変調する周波数を変えた光を順次前記対象物に照射して前記光音響セルの内部で共鳴した光音響信号を前記マイクで検出した信号から前記光音響信号の周波数特性を求めて記憶し、
スピーカーから前記光音響セルの内部に音波を発生し、
前記音波により前記光音響セルの内部で発生した光音響信号を前記マイクで受信し、
ピーク周波数探索部で前記マイクで受信した前記光音響信号から前記求めて記憶しておいた前記周波数特性の成分を差し引いた信号からピーク周波数を探索し、
前記ピーク周波数探索部で探索した前記ピーク周波数に基づいて設定する
ことを特徴とする光音響物性計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響物性計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品検査において対象物を破壊せずに検査が可能な”非破壊検査”のニーズが高まっている。特に有機物の非破壊検査は,電気・電子機器などの原料受け入れ時や製造工程間、出荷直前などで複数回実施される。有機物の非破壊検査は、測定対象物の状態(固体、液体、気体、粉体)に依らず測定が可能な光音響分光が有効である。
【0003】
光音響分光を用いた物性計測装置の原理は次のとおりである。測定対象物に光源から断続光を照射すると、測定対象物が光を吸収して熱が発生し表面が局所的に膨張と収縮とを繰り返す運動エネルギーに変換される。その結果、空間中の圧力にゆらぎ(=光音響波)が生じ、これをマイクで検出する。この検出結果を信号処理(物性解析)することで、物質や夾雑物の評価が可能になる。
【0004】
しかし、光音響効果で発生する光音響波は微弱であるため、高感度な非破壊検査装置の実現には,発生した音響波を光音響セルに閉じ込め共鳴増幅する必要がある。
【0005】
光音響セルを共鳴構造にすると、微弱な音波を増幅させることができる一方、光音響セルで光音響波が共鳴する共鳴周波数と測定周波数を一致させないと測定感度が変化、または低下する。さらに、光音響セルと測定対象物に隙間が発生すると、光音響セルの実効的なサイズが変化してしまい、光音響波の共鳴周波数が変化する。
【0006】
そのため、測定対象物の配置状態や、光音響セルと測定対象物の隙間の状態などによる共鳴周波数の変化を補正せずに測定を行うと、共鳴増幅の効果が得られず検出感度が低下する。そこで、本測定前に光音響セルの共鳴周波数を探索し、探索した結果を用いて本測定を行う計測手法が重要である。
【0007】
光音響セルの共鳴周波数の設定に関して、例えば特許文献1の技術が報告されている。特許文献1に記載されている成分濃度測定装置では、波長の異なる複数のレーザ光源を用意し、それらの光強度の変化量から音響モードを推定して光音響セルの長さを調整した後に、本測定を実施することで、測定対象の成分に対する濃度の感度の音響モードの依存性を補償している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-171178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されている方式では、音響セルの物理長を変更しているため、上述の課題において共鳴周波数が大きく変化する場合に補償できない可能性がある。また、光音響セルの長さを調整するので、共鳴周波数を特定するまでに時間を要して、多数の個所を順次測定する場合に、スループットが悪くなってしまう可能性がある。
【0010】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決して、測定対象物の配置状態や、光音響セルと測定対象物の隙間の状態などによる共鳴周波数の変化に対して比較的手軽に対応できて、検出感度を低下させること無く、比較的短い時間で対象物の物性を計測することを可能にする光音響物性計測装置及び計測方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明では、対象物に光を照射することにより発生した光音響信号を検出して対象物の物性を測定する光音響物性測定装置を、対象物に変調した光を照射する光照射部と、光照射部から変調した光を照射することにより対象物で発生する光音響波を増幅させる光音響セルと、光音響セルの内部に音波を発生させる音波発生部と、光音響セルで増幅させた光音響波と音波発生部から光音響セルの内部に発生させた音波を検出するマイクと、マイクで検出した光音響波に基づいて対象物の物性を解析する物性解析部とを備えて構成した。
【0012】
また、上記した課題を解決するために、本発明では、光照射部から発射した所定の周波数で変調した光を照対象物に射し、所定の周波数で変調した光が照射された試料から発生して光音響セルの内部で共鳴した光音響信号をマイクで検出し、マイクで検出した光音響信号を用いて試料の物性を分析する光音響物性測定方法において、光照射部から対象物に照射する光の所定の周波数を、スピーカーから光音響セルの内部に音波を発生させ、この音波により光音響セルの内部で発生した音をマイクで受信し、このマイクで受信した音のピーク周波数をピーク周波数探索部で探索し、このピーク周波数探索部で探索したピーク周波数に基づいて設定するようにした。
【0013】
更に、上記した課題を解決するために、本発明では、光照射部から発射した所定の周波数で変調した光を照対象物に射し、所定の周波数で変調した光が照射された試料から発生して光音響セルの内部で共鳴した光音響信号をマイクで検出し、このマイクで検出した光音響信号を用いて試料の物性を分析する光音響物性測定方法において、光照射部から対象物に照射する光の所定の周波数を、光照射部から変調する周波数を変えた光を順次試料に照射して光音響セルの内部で共鳴した光音響信号をマイクで検出した信号から光音響信号の周波数特性を求めて記憶し、スピーカーから光音響セルの内部に音波を発生し、この音波により光音響セルの内部で発生した光音響信号をマイクで受信し、ピーク周波数探索部でマイクで受信した光音響信号から先に求めて記憶しておいた周波数特性成分を差し引いた信号からピーク周波数を探索し、ピーク周波数探索部で探索したピーク周波数に基づいて設定するようにした。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測定対象物の配置状態や、光音響セルと測定対象物の隙間の状態などによる共鳴周波数の変化に対して比較的手軽に対応できるので、検出感度を低下させること無く、比較的短い時間で測定対象物の物性を計測することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施例に係る光音響物性測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1の実施例に係る光音響物性測定方法の手順を示すフローチャートである。
図3】本発明の第1の実施例に係る光音響物性測定方法の原理を説明する周波数と音波強度との関係を示すグラフである。
図4】本発明の第1の実施例に係るスピーカーから発生する音波の周波数特性を示すグラフである。
図5】本発明の第2の実施例に係る光音響物性測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
図6】本発明の第2の実施例に係る光音響物性測定方法の手順を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施例に係るスピーカーから発生する音波の周波数特性を示すグラフである。
図8】本発明の第3の実施例に係る光音響物性測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
図9】周波数探索部で検出する光音響信号の周波数特性の一例を示すグラフである。
図10】周波数探索部で検出する光音響信号の周波数特性の他の例を示すグラフである。
図11】本発明の第4の実施例に係る光音響物性測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
図12】本発明の第5の実施例に係る光音響物性測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
図13】本発明の第6の実施例に係る光音響物性測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
図14】本発明の第7の実施例に係る光音響物性測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
図15】本発明の第7の実施例に係る光音響物性測定方法の手順を示すフローチャートである。
図16】本発明の第8の実施例に係る光音響物性測定装置の概略の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、測定前に、光音響セルに配置したスピーカーから広帯域な音波を発生させ、その音波をマイクで検出・信号処理することで共鳴周波数を探索し、周波数校正の高速化を行うとともに、計測の高感度化を実現したものである。
【0017】
また、本発明は、光音響セルにスピーカーなどの音源を装着して、この音源から発振された音波の周波数特性を検出することで光音響セルと測定対象物との共鳴周波数を求めるようにしたので、共鳴周波数を求める時間を従来技術と比較して短くすることができ、光音響を用いた物性計測のスループットを向上させたものである。
【0018】
さらに、光音響セルに装着した音源から発振された広帯域の音波の周波数特性を検出することで共鳴周波数を求めるようにしたので、共鳴周波数の変動が大きな場合においても、ピーク周波数の検出が可能になり、高感度な非破壊計測を実現できるようにしたものである。
【0019】
また本発明は、光音響物性測定装置を、光源と、駆動回路と、光音響セルと、マイクと、高感度増幅回路と、物性解析部と、サンプルを格納する測定エリアを有し、さらに信号発生回路と、スピーカーと、ピーク周波数探索部とを備えて構成し、本測定前に信号発生回路およびスピーカーから広帯域な音波を発生させ、マイクで検出した信号のピーク周波数をピーク周波数探索部で算出し、ピーク周波数探索部で算出した周波数を用いて光源を駆動してサンプルに光を照射し、マイク、高感度増幅回路、物性解析部で本測定を実施するようにしたものである。
【0020】
また本発明は、光源と、駆動回路と、光音響セルと、マイクと、高感度増幅回路と、物性解析部と、信号発生回路と、スピーカーと、ピーク周波数探索部を有する光音響物性測定装置において、本測定前に信号発生回路およびスピーカーから広帯域な音波を発生させ、マイクで検出した信号のピーク周波数をピーク周波数探索部で算出し、その周波数を用いて光源を駆動してサンプルに光を照射し、マイク、高感度増幅回路、物性解析部で本測定を実施して共鳴周波数の変動を補正することで、サンプルの配置の仕方や形状によって光音響セルの共鳴周波数が変動して測定感度が低下してしまうのを防止し、高感度な光音響計測を実現できるようにしたものである。
【0021】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。
【0022】
ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【実施例0023】
本発明の第1の実施例を、図1乃至4を用いて説明する。
図1に、本実施例に係る光音響物性計測装置100-1の構成を示す。本実施例に係る光音響物性計測装置100-1は、光源1、駆動回路2、光チョッパ3、光音響セル4、マイク5、増幅回路6、物性解析部7、スピーカー10、信号発生回路11、ピーク周波数探索部12を備えている。図1に示した例では、測定エリア9に格納されたサンプル8に光音響セル4を近接させて、サンプル8の物性を計測している状態を示している。
【0024】
光源1としては、レーザまたは白色光源を用いる。また、スピーカー10としては、MEMSスピーカー又はエレクトレットスピーカなどを用いる。
【0025】
図1に示した例のように、光音響セル4とサンプル8とが密着せずに傾いて、点線で示すような隙間13が形成されてしまう場合がある。光音響セル4とサンプル8とが図1に示したような状態にあると、図3に示すように、光音響セル4とサンプル8との間の共鳴周波数f2:32が、光音響セル4とサンプル8とが密着した理想的な状態における共鳴周波数f1:31に対してずれてしまう。
【0026】
そこで、本実施例では、図3に示すような共鳴周波数のずれを考慮して、図4に示すような比較的広い周波数帯域の周波数特性を有する音波41を用いて共鳴周波数を求めるための校正用測定を行い、次に、この校正した周波数で本測定を行うようにした。
【0027】
図1に示した構成の光音響物性計測装置100-1を用いて、サンプル8の物性を計測する手順を、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0028】
まず、光音響セル4をサンプル8に当接させた状態で、信号発生回路11から広帯域な信号を発生させてスピーカー10に入力する(S1)。この広帯域な信号が入力されたスピーカー10は、例えば図4に示すような帯域幅が広い広帯域な音波を、光音響セル4の内部に向けて発生する(S2)。このスピーカー10から光音響セル4に向けて発生させた広帯域な音波をマイク5で受信し、このマイク5で受信した信号をピーク周波数探索部12で処理してピーク周波数f2を探索する(S3)。S1からS3までが校正用測定である。
【0029】
次に、本測定として、駆動回路2で光チョッパ3をピーク周波数f2で動作させ(S4)、光源1を発光させて光チョッパ3で変調させた光を光音響セル4を通してサンプル8に照射する(S5)。
【0030】
この変調された光が照射されたサンプルから発生した光音響波をマイク5で検出し、増幅回路6で増幅する(S6)。
【0031】
この増幅された信号を物性解析部7に入力する。物性解析部7フーリエ変換などの信号処理を用いて信号強度が最大となる周波数を探索し、ピーク周波数f1を算出する。この求めたピーク周波数f1における信号情報をデータベースに格納されているデータと比較し解析することにより、サンプル8の種類、濃度、膜厚などの計測の目的に応じた物性を分析して(S7)、出力する。
【0032】
本実施例によれば、スピーカー10から発生された音波をマイク5で検出してピーク周波数探索部12でピーク周波数を求め、光チョッパ3の駆動周波数を修正することにより、光音響セル4に対するサンプル8の位置関係のずれによって生じる光音響セル4の共鳴周波数の変動を校正することができるので、高感度な光音響分光を用いた非破壊計測を行うことができる。
【実施例0033】
本発明の第2の実施例を、図5乃至図7を用いて説明する。
図5は、本実施例に係る光音響物性計測装置100-2の構成を示す。本実施例に係る光音響物性計測装置100-2の構成は、実施例1で図1に説明した光音響物性計測装置100-1の構成に対して、メモリ14と周波数帯域切替部15とを追加した点が異なる。
【0034】
本実施例においては、図7に示すような、実施例1における図4の場合と比べると帯域幅が比較的小さい周波数特性を有する音波をスピーカー10から発生させる構成とした。本実施例では、周波数帯域切替部15で周波数帯域を分割して信号発生回路11を駆動し、スピーカー10から周波数帯域71,72,73,74・・・の音を順次切り替えて発生させる構成とした。
【0035】
図5に示した構成の光音響物性計測装置100-2を用いて、サンプル8の物性を計測する手順を、図6のフローチャートを用いて説明する。
【0036】
まず、周波数帯域切替部15で分割する周波数帯域を決定する(S101)。図6の例では、分割数をNとした場合を示している。次にiを1に設定して(S102)、周波数帯域切替部15からの指令により信号発生回路11から第1の周波数帯域の信号をスピーカー10に発信する(S103)。信号発生回路11からの信号を受けたスピーカー10は、第1の周波数帯域の音波を光音響セル4の内部に向けて発生する(S104)。
【0037】
次に、スピーカー10で発生した音波をマイク5で受信し、マイク5からの受信信号をピーク周波数探索部12-1で受けてピーク周波数を探索し(S105)、メモリ14に記憶する(S106)。
【0038】
次にiに1を加えて(S107)、iがS101で設定した分割数Nに達するまでS103からS105の処理を繰り返して実行する(S108)。
【0039】
iがNになったら(S108でNo)、ピーク周波数探索部12-1において、メモリ14に記憶した各周波数帯域におけるピーク周波数の信号から信号レベルが最も大きい周波数ピークを探索する(S109)。次に、探索したピーク周波数に基づいて駆動回路2で光チョッパ3を制御して、光源1から発射された光を変調し(S110)、この変調した光をサンプル8に照射する(S111)。
【0040】
この変調された光が照射されたサンプルから発生した光音響波をマイク5で検出し、増幅回路6で増幅する(S112)。
【0041】
この増幅された信号を物性解析部7に入力する。物性解析部7フーリエ変換などの信号処理を用いて信号強度が最大となる周波数を探索し、ピーク周波数f1を算出する。この求めたピーク周波数f1における信号情報をデータベースに格納されているデータと比較し解析することにより、サンプル8の種類、濃度、膜厚などの計測の目的に応じた物性を分析して(S113)、出力する。
【0042】
本実施例によれば、実施例1の場合と同様な効果が得られるのに加えて、スピーカー10から発生させる音波の周波数帯域を分割することで、各周波数帯域ごとにマイク5や増幅回路6に入力される信号の総量を減少させ、マイク5及び増幅回路6のダイナミックレンジ不足によるピーク探索の精度劣化を抑制することができる。
【実施例0043】
次に、第3の実施例について、図8及び図9を用いて説明する。
【0044】
図8は、本実施例に係る光音響物性計測装置100-3の構成を示す。本実施例に係る光音響物性計測装置100-3の構成は、実施例1で図1に説明した光音響物性計測装置100-1の構成に対して、閾値判定部16と結果表示部17,周波数入力部19を追加した点が異なる。
【0045】
実施例1及び2においては、ピーク周波数探索部12で検出されるピーク信号が各周波数帯域に対して一つだけ存在する場合について説明したが、図9に示すように、予め設定した閾値93より高いレベルの複数のピーク91,92を有する信号波形90が検出される場合や、図10に示すように、ピーク111,112のレベルが予め設定した閾値113よりも低い信号波形110が検出される場合がある。
【0046】
本実施例では、このように複数のピークが検出される場合に対応して、ピーク周波数探索部12で求めたピーク周波数を閾値判定部16で予め設定した閾値と比較して判定し、その結果を結果表示部17に標示して利用者18に知らせる。利用者18は、この表示された結果に基づいて光チョッパ3を駆動する周波数を周波数入力部19に入力するか、又は、光音響セル4とサンプル8との位置関係を修正する。
【0047】
すなわち、結果表示部17に標示されたピーク周波数をと閾値との関係が図9に示すように、ピーク91,92のレベルが閾値93よりも高い場合には、この表示された結果に基づいて光チョッパ3を駆動する周波数を周波数入力部19に入力する。この場合、駆動回路2は、周波数入力部19から入力された周波数に基づいて光チョッパ3を駆動して、実施例1又は2で説明したような手順でサンプル8の物性を解析する。
【0048】
一方、結果表示部17に標示されたピーク周波数をと閾値との関係が図10に示すように、ピーク111,112の何れもが閾値113よりも低い場合には、利用者18は計測を一旦中断して、光音響セル4とサンプル8との位置関係を修正したうえで計測を再開させる。
【0049】
本実施例によれば、ピーク周波数探索結果を利用者に通知することで、検出波形に複数のピークが存在しても、ピーク値が閾値よりも高い場合には光チョッパ3を制御する周波数を選択することで、感度の高い計測を安定して行うことができる。一方、ピーク値が閾値よりも低い場合には光音響セル4とサンプル8との位置関係を修正することで、感度の高い計測を確実に行うことができる。
【実施例0050】
本発明の第4の実施例を、図11を用いて説明する。
図11に示した本実施例に係る光音響物性計測装置100-4の構成において、実施例1で説明した図1に示した光音響物性計測装置100-1の構成との違いは、図11に示した本実施例に係る構成では光チョッパ3を備えていない点である。
【0051】
即ち、本実施例に係る光音響物性計測装置100-4では、マイク5で検出した音波信号からピーク周波数探索部12で求めたピーク周波数に基づいて駆動回路2で光源1Aを直接制御する構成となっている。
【0052】
そのために、本実施例では、光源1Aとして変調周波数を制御可能な光源、例えば半導体レーザなどを用いる。
【0053】
本実施例に係る光音響物性計測装置100-4を用いたサンプル8の物性を計測する手順は、実施例1において図2のフローチャートを用いて説明したものと基本的には同じであるが、S4とS5とが統合されて、ピーク周波数f1で光源1A発行させてサンプル8に照射することになる。
【0054】
なお、本実施例を実施例1で説明した光音響物性計測装置100-1の構成との違いで説明したが、実施例2で説明した光音響物性計測装置100-2、又は実施例3で説明した光音響物性計測装置100-3の構成における光チョッパ3を取り外して光源1を光源1Aに置き換えることで、実施例2または実施例3の構成にも適用することができる。
【0055】
本実施例によれば、実施例1乃至実施例3で説明した効果に加えて、光チョッパ3を用いないのでその分装置を小型化することができる。
【実施例0056】
本発明の第5の実施例を、図12を用いて説明する。
図12に示した本実施例に係る光音響物性計測装置100-5の構成において、実施例1で説明した図1に示した光音響物性計測装置100-1の構成との違いは、図12に示した本実施例に係る構成では増幅回路6とピーク周波数探索部12とに繋がる同期検出部20を備えた点である。
【0057】
即ち、本実施例に係る光音響物性計測装置100-5では、マイク5で検出した音波信号を増幅回路6で増幅した後に、同期検出部20において、ピーク周波数探索部12で検出したピーク信号の周波数と同期する信号を検出し、この同期して検出した信号を物性解析部7に送る。
【0058】
本実施例に係る光音響物性計測装置100-5を用いた物性計測の手順は、実施例1において図2に示したフローチャートに対して、S6とS7の工程の間に、増幅回路6で増幅させた信号からピーク周波数f2と同期する信号を検出する工程が追加されることになる。
【0059】
なお、本実施例で説明した構成は、実施例2で説明した光音響物性計測装置100-2、又は実施例3で説明した光音響物性計測装置100-3、または実施例4で説明した光音響物性計測装置100-4の構成に同期検出部20を追加することで、実施例2、実施例3、又は実施例4の構成にも適用することができる。
【0060】
本実施例によれば、実施例1乃至実施例4で説明した効果に加えて、検出の高感度化を実現することができる。
【実施例0061】
本発明の第6の実施例を、図13を用いて説明する。
図13に示した本実施例に係る光音響物性計測装置100-6の構成において、実施例1で説明した図1に示した光音響物性計測装置100-1の構成との違いは、図13に示した本実施例に係る構成ではカメラ21とデータベース22とを備えた点である。データベース22には、サンプル8の置き方(光音響セル4とサンプル8との位置関係)とサンプル8の材料に応じた共鳴周波数のデータが記録されている。
【0062】
本実施例に係る光音響物性計測装置100-6では、カメラ21でサンプル8の形状や配置を測定し、この測定した結果をデータベース22と比較して信号発生回路11から発生させる信号周波数の帯域を決定する。これにより、実施例1乃至5で説明したようなカメラ21とデータベース22を用いないときと比べて、信号発生回路11から発生させる信号周波数の帯域を狭くすることができ、マイク5及び増幅回路6のダイナミックレンジが不足してピーク探索の精度が劣化するのを抑制することができる。
【0063】
本実施例に係る光音響物性計測装置100-6を用いた物性計測の手順は、実施例1において図2に示したフローチャートと基本的に同じであるが、S1の前に、カメラ21でサンプル8の形状や配置を測定し、この測定した結果をデータベース22と比較して信号発生回路11から発生させる信号周波数の帯域を決定するステップが追加され、S1のステップでは、データベース22を参照して決定された周波数帯域の信号を信号発生回路11からスピーカー10に入力させる点が異なる。
【0064】
本実施例によれば、実施例1乃至実施例5で説明した効果に加えて、マイク5及び増幅回路6のダイナミックレンジが不足してピーク探索の精度が劣化するのを抑制して、検出の高感度化を実現することができる。
【実施例0065】
本発明の第7の実施例を、図14及び図15を用いて説明する。
光音響セル4で音響波を検出するときに、周囲の振動や雑音の影響を受けて、それらがノイズ成分として光音響セル4の出力信号に加算されて、検出精度を低下させてしまう原因になる。
【0066】
本実施例では、光音響セル4の出力信号に加わるノイズ成分を予め測定して記憶しておき、サンプルからの光音響波を検出して得られた検出信号から予め測定しておいたノイズ成分を差し引くようにした。これにより、ピーク周波数探索部12で探索する周波数領域の範囲が拡大することにより、マイク5と増幅回路6のダイナミックレンジが不足してしまうのを防止するようにした。
【0067】
図14に本実施例に係る光音響物性計測装置100-7の構成を示す。本実施例に係る光音響物性計測装置100-7は、実施例1で説明した図1に示した光音響物性計測装置100-1の構成に対して、マイク5とピーク周波数探索部12との間に、周波数特性測定部23とメモリ14とを配置した点が異なる。
【0068】
光音響物性計測装置100-7の構成において、スピーカー10から広帯域音波が発射されていない状態で、光源1の側から周波数f0の断続光をサンプル8に照射することにより光音響セル4で発生した音響波は、スピーカー10から広帯域音波を発射した状態で検出した音響波に対してノイズ成分となる。
【0069】
そこで、本実施例に係る光音響物性計測装置100-7においては、まず、光源1から光を発射させた状態で駆動回路2で駆動周波数を変えながら光チョッパ3を駆動してサンプル8に周波数変調した光を照射して光音響セル4の内部に光音響波を発生させてマイク5で検出し、周波数特性測定部23でマイク5からの出力信号の周波数特性を測定してそれをメモリ14に記憶しておく。次に、スピーカー10から広帯域音波を発射した状態において光音響セル4で発生した音響波を検出したマイク5からの出力信号波形からメモリ14に記憶に記憶しておいた周波数特性信号成分を差し引いた信号波形を作成して、それをピーク周波数探索部12に入力してピーク周波数を探索するようにした。
【0070】
図14に示した構成の光音響物性計測装置100-7を用いて、サンプル8の物性を計測する手順を、図15のフローチャートを用いて説明する。
【0071】
まず、光音響セル4をサンプル8に当接させた状態で、駆動回路2で駆動周波数を変えながら光チョッパ3を動作させて光源1から発射されて光チョッパ3を透過した光を、光音響セル4を介してサンプル8に照射する。この状態で光音響セル4で発生する音響波をマイク5で検出し、マイク5からの出力信号を周波数特性測定部23に入力して、マイク5で検出した音響波の周波数特性を測定し、メモリ14に入力する(S201)。
【0072】
次に、光音響セル4をサンプル8に当接させた状態で、信号発生回路11から広帯域な信号を発生させてスピーカー10に入力する(S202)。この広帯域な信号が入力されたスピーカー10は、例えば実施例1で図4を用いて説明したような帯域幅が広い広帯域な音波を、光音響セル4の内部に向けて発生する(S203)。このスピーカー10から光音響セル4に向けて発生させた広帯域な音波をマイク5で受信し、このマイク5で受信した信号を周波数特性測定部23に入力する(S204)。
【0073】
周波数特性測定部23においては、S204で測定したスピーカーから広帯域の音波を発生させたときにマイク5で受信した結果からS201のステップで測定してメモリ14に記憶したスピーカーからの音波を発生させずにマイク5で受信した結果を減算する処理を行って、S204で計測した結果からノイズ成分を除去する(S205)。
【0074】
次に、ピーク周波数探索部12において、S205でノイズ成分を除去した信号から、実施例1で図3を用いて説明したようなピーク周波数f2を探索し、この探索して求めたピーク周波数f2で光チョッパ3を動作させることにより光源1から発射された光を周波数f2で変調させて(S206)、光音響セル4を介して測定エリア9の内部にあるサンプル8に照射する(S207)。
【0075】
次に、周波数f2で変調された光が照射されたサンプル8から発生した光音響波をマイク5で検出し、増幅回路6で増幅する(S208)。
【0076】
この増幅された信号を物性解析部7に入力し、物性解析部7においてフーリエ変換などの信号処理を用いて信号強度が最大となる周波数を探索し、ピーク周波数f1を算出する。この求めたピーク周波数f1における信号情報をデータベースに格納されているデータと比較し解析することにより、サンプル8の種類、濃度、膜厚などの計測の目的に応じた物性を分析して(S209)、出力する。
【0077】
本実施例によれば、スピーカー10から発生された音波をマイク5で検出してピーク周波数探索部12でピーク周波数を求め、光チョッパ3の駆動周波数を修正することにより、光音響セル4に対するサンプル8の位置関係のずれによって生じる光音響セル4の共鳴周波数の変動をバックグランド信号を除去した信号を用いて校正することができるので、サンプル8の物性測定する時にマイク5と増幅回路6のダイナミックレンジが不足してしまうのを抑制することができるとともに、高感度な光音響分光を用いた非破壊計測を行うことができる。
【実施例0078】
本発明の第8の実施例を、図16を用いて説明する。
本実施例では、実施例1で図1を用いて説明した構成に対して、光チョッパ3と光音響セル4との間に可動ミラー25を設けた点が、実施例1の構成と異なる。本実施例では、このような構成とすることにより、光音響セル4を介してサンプル8に光を照射する位置を光音響セル4とサンプル8との位置を相対的に移動させることなく、変位させることができるようにした。これにより、光音響セル4の位置をサンプル8を格納した測定エリア9に対して固定した状態で、サンプル8の複数の個所に順次光を照射して、サンプル8を面で測定できるようにした。
【0079】
本実施例におけるサンプル8の物性を分析する手順は、実施例1において図2を用いて説明した手順と基本的に同じである。本実施例では、図2におけるフローのS6を実行した後に可動ミラー25を駆動して、1ピッチ分移動させてサンプル8への光の照射位置を1ピッチ分移動させてS1のステップから順次行うことを繰り返す点が異なる。
本実施例によれば、可動ミラー25でサンプル8に光を照射する位置を順次変える構成にしたことにより、光音響セル4とサンプル8との位置を相対的に移動させるための駆動機構を用いることなく、比較的簡素な構成でサンプル8を面で測定できるようになった。
【0080】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0081】
1、1A・・・光源 2・・・駆動回路 3・・・光チョッパ 4・・・光音響セル 5・・・マイク 6・・・増幅回路 7・・・物性解析部 8・・・サンプル 9・・・測定エリア 10・・・スピーカー 11・・・信号発生回路 12、12-1・・・ピーク周波数探索部 14,24・・・メモリ 15・・・周波数帯域切替部 16・・・閾値判定部 17・・・結果表示部 19・・・周波数入力部 20・・・同期検出部 21・・・カメラ 22・・・データベース 23・・・周波数特性測定部 25・・・可動ミラー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16