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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023094696
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】排ガスの除害装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230629BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230629BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20230629BHJP
   F23G 7/06 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/302 101H
C23C16/44 E
F23G7/06 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210146
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】中村 諭
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 一知
(72)【発明者】
【氏名】江田 健
【テーマコード(参考)】
3K078
4K030
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
3K078BA20
3K078BA25
3K078BA26
3K078BA29
3K078CA07
4K030EA12
5F004AA15
5F004BC02
5F004BD04
5F045AB31
5F045AC05
5F045AC12
5F045BB08
5F045BB20
5F045EB06
5F045EC07
5F045EG07
(57)【要約】
【課題】従来よりも少ない湿式処理装置で排ガスを処理することができる除害装置を提供する。
【解決手段】除害装置は、前段湿式処理装置5と、燃焼式処理装置6と、成膜装置1のプロセスチャンバ2A~2Dに接続されるガス導入ライン7A~7Dと、ガス導入ライン7A~7Dにそれぞれ接続された第1流路切替装置8A~8Dと、第1流路切替装置8A~8Dから前段湿式処理装置5まで延びる第1ガス移送ライン9A~9Dと、第1流路切替装置8A~8Dから燃焼式処理装置6まで延びる第2ガス移送ライン10A~10Dと、第1流路切替装置8A~8Dの動作を制御して、プロセスガスを前段湿式処理装置5に送り、クリーニングガスを燃焼式処理装置6に送るように構成された動作制御部15を備える。前段湿式処理装置5の数は、複数のプロセスチャンバ2A~2Dよりも少ない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスガスおよびクリーニングガスを含む排ガスの除害装置であって、
少なくとも1つの前段湿式処理装置と、
燃焼式処理装置と、
成膜装置の複数のプロセスチャンバに接続される複数のガス導入ラインと、
前記複数のガス導入ラインにそれぞれ接続された複数の第1流路切替装置と、
前記複数の第1流路切替装置から前記前段湿式処理装置まで延びる第1ガス移送ラインと、
前記複数の第1流路切替装置から前記燃焼式処理装置まで延びる第2ガス移送ラインと、
前記複数の第1流路切替装置の動作を制御して、前記プロセスガスを前記前段湿式処理装置に送り、前記クリーニングガスを前記燃焼式処理装置に送るように構成された動作制御部を備え、
前記少なくとも1つの前段湿式処理装置の数は、前記複数のプロセスチャンバよりも少ない、除害装置。
【請求項2】
前記動作制御部は、
前記複数のプロセスチャンバのいずれか1つからプロセスガスが排出されることを示すプロセスガス排出信号を前記成膜装置から受け取ったときは、対応する第1流路切替装置を操作して前記複数のガス導入ラインのうちの対応する1つと前記第1ガス移送ラインとを連通させ、かつ前記対応するガス導入ラインと前記第2ガス移送ラインの連通を遮断し、
前記複数のプロセスチャンバのいずれか1つからクリーニングガスが排出されることを示すクリーニングガス排出信号を前記成膜装置から受け取ったときは、対応する第1流路切替装置を操作して前記複数のガス導入ラインのうちの対応する1つと前記第2ガス移送ラインとを連通させ、かつ前記対応するガス導入ラインと前記第1ガス移送ラインの連通を遮断するように構成されている、請求項1に記載の除害装置。
【請求項3】
前記複数の第1流路切替装置は、複数の三方弁である、請求項1または2に記載の除害装置。
【請求項4】
前記動作制御部は、前記湿式処理装置の閉塞を検出したときは、前記複数の第1流路切替装置を操作して、前記複数のガス導入ラインと前記第2ガス移送ラインとを連通させ、かつ前記複数のガス導入ラインと前記第1ガス移送ラインの連通を遮断するように構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の除害装置。
【請求項5】
前記除害装置は、
前記第2ガス移送ラインに取り付けられた少なくとも1つの第2流路切替装置と、
前記第2流路切替装置に接続されたバイパスラインをさらに備え、
前記動作制御部は、前記第2流路切替装置を操作するように構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の除害装置。
【請求項6】
前記動作制御部は、前記燃焼式処理装置の閉塞を検出したときは、前記複数の第1流路切替装置を操作して、前記複数のガス導入ラインと前記第2ガス移送ラインとを連通させ、かつ前記複数のガス導入ラインと前記第1ガス移送ラインの連通を遮断し、前記複数の第2流路切替装置を操作して、前記第2ガス移送ラインと前記バイパスラインとを連通させ、かつ前記複数の第1流路切替装置と前記燃焼式処理装置の連通を遮断するように構成されている、請求項5に記載の除害装置。
【請求項7】
前記除害装置は、
前記燃焼式処理装置の下流に設けられた後段湿式処理装置と、
前記後段湿式処理装置に接続された排気ラインをさらに備えており、
前記バイパスラインは前記排気ラインに接続されている、請求項5または6に記載の除害装置。
【請求項8】
前記前段湿式処理装置は、単一の前段湿式処理装置である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の除害装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスの製造に使用されるCVD装置などの成膜装置から排出されるプロセスガスおよびクリーニングガスを処理するための除害装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造には、ウェーハ上に膜を生成するためにCVD装置が使用される。CVD装置は、ジクロロシラン(DCS)、アンモニア(NH)などのプロセスガスをプロセスチャンバ内に導入し、ウェーハ上に膜を形成する(成膜工程)。成膜工程の後、窒素ガスなどのパージガスをプロセスチャンバに供給して、プロセスガスをプロセスチャンバから排除する(パージ工程)。さらに、フッ素ガス(F)、フッ化水素ガス(HF)などのクリーニングガスをプロセスチャンバ内に供給して、プロセスチャンバの内部をクリーニングする(クリーニング工程)。
【0003】
このように、CVD装置では、成膜工程、パージ工程、クリーニング工程が繰り返し行われる。プロセスガスおよびクリーニングガスは有害ガスであるため、両ガスとも除害装置で処理する必要がある。通常、CVD装置は、生産性を上げるために、複数のプロセスチャンバを備えている。除害装置は、これら複数のプロセスチャンバに接続され、それぞれのプロセスチャンバから排出されたプロセスガスおよびクリーニングガスを処理している。
【0004】
図9は、従来の除害装置を示す模式図である。図9に示すように、除害装置は、複数の湿式処理装置501と、燃焼式処理装置502を備えている。複数の湿式処理装置501は複数のプロセスチャンバ500にそれぞれ接続され、燃焼式処理装置502は湿式処理装置501に接続されている。湿式処理装置501は、プロセスガスおよびクリーニングガスに含まれる水溶性成分を水で除去し、副生成物の生成を防止する機能を有する。燃焼式処理装置502は、プロセスガスおよびクリーニングガスを燃焼処理してこれらのガスを無害化する機能を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5977419号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
成膜工程で使用されるジクロロシラン(DCS)、アンモニア(NH)などのプロセスガスは可燃性ガスであり、クリーニング工程で使用されるフッ素ガス(F)、フッ化水素ガス(HF)などのクリーニングガスは支燃性ガスである。プロセスガスおよびクリーニングガスを混合すると、混合されたガスが爆発する虞がある。このため、図9に示すように、複数のプロセスチャンバ500は複数の湿式処理装置501に別々に接続される。このような構成によれば、各プロセスチャンバ500から排出されたプロセスガス、パージガス、およびクリーニングガスは、対応する湿式処理装置501に順番に送られるので、プロセスガスとクリーニングガスが湿式処理装置501内で混合されることはない。
【0007】
しかしながら、図9に示す従来の除害装置は、複数のプロセスチャンバ500にそれぞれ対応した複数の湿式処理装置501を設ける必要があるため、除害装置の全体のコストが上昇し、さらに除害装置のフットプリントが増大するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、従来よりも少ない湿式処理装置で排ガスを処理することができる除害装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、プロセスガスおよびクリーニングガスを含む排ガスの除害装置であって、少なくとも1つの前段湿式処理装置と、燃焼式処理装置と、成膜装置の複数のプロセスチャンバに接続される複数のガス導入ラインと、前記複数のガス導入ラインにそれぞれ接続された複数の第1流路切替装置と、前記複数の第1流路切替装置から前記前段湿式処理装置まで延びる第1ガス移送ラインと、前記複数の第1流路切替装置から前記燃焼式処理装置まで延びる第2ガス移送ラインと、前記複数の第1流路切替装置の動作を制御して、前記プロセスガスを前記前段湿式処理装置に送り、前記クリーニングガスを前記燃焼式処理装置に送るように構成された動作制御部を備え、前記少なくとも1つの前段湿式処理装置の数は、前記複数のプロセスチャンバよりも少ない、除害装置が提供される。
【0010】
一態様では、前記動作制御部は、前記複数のプロセスチャンバのいずれか1つからプロセスガスが排出されることを示すプロセスガス排出信号を前記成膜装置から受け取ったときは、対応する第1流路切替装置を操作して前記複数のガス導入ラインのうちの対応する1つと前記第1ガス移送ラインとを連通させ、かつ前記対応するガス導入ラインと前記第2ガス移送ラインの連通を遮断し、前記複数のプロセスチャンバのいずれか1つからクリーニングガスが排出されることを示すクリーニングガス排出信号を前記成膜装置から受け取ったときは、対応する第1流路切替装置を操作して前記複数のガス導入ラインのうちの対応する1つと前記第2ガス移送ラインとを連通させ、かつ前記対応するガス導入ラインと前記第1ガス移送ラインの連通を遮断するように構成されている。
一態様では、前記複数の第1流路切替装置は、複数の三方弁である。
一態様では、前記動作制御部は、前記湿式処理装置の閉塞を検出したときは、前記複数の第1流路切替装置を操作して、前記複数のガス導入ラインと前記第2ガス移送ラインとを連通させ、かつ前記複数のガス導入ラインと前記第1ガス移送ラインの連通を遮断するように構成されている。
【0011】
一態様では、前記除害装置は、前記第2ガス移送ラインに取り付けられた少なくとも1つの第2流路切替装置と、前記第2流路切替装置に接続されたバイパスラインをさらに備え、前記動作制御部は、前記第2流路切替装置を操作するように構成されている。
一態様では、前記動作制御部は、前記燃焼式処理装置の閉塞を検出したときは、前記複数の第1流路切替装置を操作して、前記複数のガス導入ラインと前記第2ガス移送ラインとを連通させ、かつ前記複数のガス導入ラインと前記第1ガス移送ラインの連通を遮断し、前記複数の第2流路切替装置を操作して、前記第2ガス移送ラインと前記バイパスラインとを連通させ、かつ前記複数の第1流路切替装置と前記燃焼式処理装置の連通を遮断するように構成されている。
一態様では、前記除害装置は、前記燃焼式処理装置の下流に設けられた後段湿式処理装置と、前記後段湿式処理装置に接続された排気ラインをさらに備えており、前記バイパスラインは前記排気ラインに接続されている。
一態様では、前記前段湿式処理装置は、単一の前段湿式処理装置である。
【発明の効果】
【0012】
動作制御部は、複数の第1流路切替装置を別々に操作することで、プロセスガスを前段湿式処理装置に送り、その一方で、クリーニングガスを燃焼式処理装置に送ることができる。クリーニングガスは前段湿式処理装置には送られないので、前段湿式処理装置内でクリーニングガスとプロセスガスとが混合されることがない。よって、プロセスチャンバの数だけ、湿式処理装置を設ける必要がない。結果として、除害装置のコストおよびフットプリントを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】プロセスガスおよびクリーニングガスを含む排ガスを処理するための除害装置の一実施形態を示す模式図である。
図2】プロセスガスが前段湿式処理装置をバイパスして燃焼式処理装置に送られる運転状態を説明する模式図である。
図3】前段湿式処理装置、燃焼式処理装置、後段湿式処理装置の詳細構造の一実施形態を示す断面図である。
図4】除害装置の他の実施形態を示す模式図である。
図5】燃焼式処理装置の重故障が発生したときのプロセスガスおよびクリーニングガスの流れを説明する図である。
図6】除害装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
図7】除害装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
図8】除害装置のさらに他の実施形態を示す模式図である。
図9】従来の除害装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、プロセスガスおよびクリーニングガスを含む排ガスを処理するための除害装置の一実施形態を示す模式図である。除害装置は、半導体デバイスの製造に使用される成膜装置1から排出されるプロセスガスおよびクリーニングガスを含む排ガスを無害化するための装置である。以下に説明する実施形態では、成膜装置1は、複数のプロセスチャンバ2A,2B,2C,2Dを備えたCVD(Chemical Vapor Deposition)装置である。
【0015】
CVD装置である成膜装置1では、ウェーハ上に膜を形成するためのプロセスガス(膜の材料を含むガス)と、プロセスガスをプロセスチャンバ2A~2Dから排除するためのパージガスと、プロセスチャンバ2A~2Dの内部をクリーニングするためのクリーニングガスが、順番にプロセスチャンバ2A~2Dに供給される。プロセスガスの例としては、ジクロロシラン(DCS)、アンモニア(NH)などが挙げられる。クリーニングガスの例としては、フッ素ガス(F)、フッ化水素ガス(HF)、三フッ化窒素ガス(NF)、三フッ化塩素ガス(ClF)などが挙げられる。
【0016】
成膜装置1では、成膜工程、パージ工程、クリーニング工程が、プロセスチャンバ2A~2D内で異なる周期で繰り返し行われている。成膜工程は、膜の材料を含むプロセスガスをプロセスチャンバ2A~2D内に導入し、ウェーハ上に膜を形成する工程である。成膜工程の後、窒素ガスなどのパージガスをプロセスチャンバ2A~2Dに供給して、プロセスガスをプロセスチャンバ2A~2Dから排除するパージ工程が行われる。さらにフッ素ガス(F)、フッ化水素ガス(HF)などのクリーニングガスをプロセスチャンバ2A~2D内に供給して、プロセスチャンバ2A~2Dをクリーニングするクリーニング工程が行われる。
【0017】
図1に示すように、除害装置は、単一の前段湿式処理装置5と、単一の燃焼式処理装置6と、成膜装置1の複数のプロセスチャンバ2A,2B,2C,2Dにそれぞれ接続される複数のガス導入ライン7A,7B,7C,7Dと、複数のガス導入ライン7A,7B,7C,7Dにそれぞれ接続された複数の第1流路切替装置8A,8B,8C,8Dと、複数の第1流路切替装置8A,8B,8C,8Dから前段湿式処理装置5まで延びる複数の第1ガス移送ライン9A,9B,9C,9Dと、複数の第1流路切替装置8A,8B,8C,8Dから燃焼式処理装置6まで延びる複数の第2ガス移送ライン10A,10B,10C,10Dと、第1流路切替装置8A,8B,8C,8Dの動作を制御する動作制御部15を備えている。
【0018】
動作制御部15は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。動作制御部15は、記憶装置15aと、演算装置15bを備えている。演算装置15bは、記憶装置15aに格納されているプログラムに含まれている命令に従って演算を行うCPU(中央処理装置)またはGPU(グラフィックプロセッシングモジュール)などを含む。記憶装置15aは、演算装置15bがアクセス可能な主記憶装置(例えばランダムアクセスメモリ)と、データおよびプログラムを格納する補助記憶装置(例えば、ハードディスクドライブまたはソリッドステートドライブ)を備えている。ただし、動作制御部15の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0019】
前段湿式処理装置5は、第1接続ライン21によって燃焼式処理装置6に連結されている。ガス導入ライン7A~7Dの一端は、プロセスチャンバ2A~2Dにそれぞれ接続され、ガス導入ライン7A~7Dの他端は、第1流路切替装置8A~8Dにそれぞれ接続されている。ガス導入ライン7A~7Dの数と、第1流路切替装置8A~8Dの数は同じである。本実施形態では、4つのプロセスチャンバ2A~2D、4つのガス導入ライン7A~7D、4つの第1流路切替装置8A~8Dが設けられているが、これらの数は本実施形態には限定されない。
【0020】
第1ガス移送ライン9A~9Dの一端は、第1流路切替装置8A~8Dにそれぞれ接続され、第1ガス移送ライン9A~9Dの他端は、前段湿式処理装置5に接続されている。図1に示す実施形態では、複数の第1ガス移送ライン9A~9Dは、合流することなく前段湿式処理装置5まで延びているが、一実施形態では、複数の第1ガス移送ライン9A~9Dは、合流して少なくとも1つの合流ラインを形成し、この合流ラインが前段湿式処理装置5に接続されてもよい。
【0021】
第2ガス移送ライン10A~10Dの一端は、第1流路切替装置8A~8Dにそれぞれ接続され、第2ガス移送ライン10A~10Dの他端は、燃焼式処理装置6に接続されている。図1に示す実施形態では、複数の第2ガス移送ライン10A~10Dは、合流することなく燃焼式処理装置6まで延びているが、一実施形態では、複数の第2ガス移送ライン10A~10Dは、合流して少なくとも1つの合流ラインを形成し、この合流ラインが燃焼式処理装置6に接続されてもよい。
【0022】
第1流路切替装置8A~8Dは、ガス導入ライン7A~7Dを、第1ガス移送ライン9A~9Dまたは第2ガス移送ライン10A~10Dのいずれか一方に選択的に接続するように構成されている。これら第1流路切替装置8A~8Dは、互いに独立して動作することが可能に構成されている。図1に示す実施形態では、第1流路切替装置8A~8Dのそれぞれは、三方弁から構成されている。各三方弁は、電動弁、電磁弁などのアクチュエータ駆動型弁である。一実施形態では、第1流路切替装置8A~8Dのそれぞれは、複数の弁の組み合わせから構成されてもよい。
【0023】
動作制御部15は、第1流路切替装置8A~8Dに電気的に接続されており、第1流路切替装置8A~8Dを別々に操作することが可能に構成されている。したがって、例えば、図1に示すように、動作制御部15は、第1流路切替装置8Aを操作して、ガス導入ライン7Aと第1ガス移送ライン9Aとを連通させ、かつガス導入ライン7Aと第2ガス移送ライン10Aとの連通を遮断し、その一方で、動作制御部15は、第1流路切替装置8Bを操作して、ガス導入ライン7Bと第1ガス移送ライン9Bとの連通を遮断し、かつガス導入ライン7Bと第2ガス移送ライン10Bとを連通させることができる。同様に、動作制御部15は、第1流路切替装置8C,8Dも、互いに独立に、かつ第1流路切替装置8A,8Bとは独立に操作できる。
【0024】
成膜装置1は、複数のプロセスチャンバ2A~2Dにおいて、異なる周期で成膜工程、パージ工程、およびクリーニング工程を実行する。したがって、プロセスチャンバ2A~2Dからは、プロセスガス、パージガス、およびクリーニングガスがこの順番で異なるタイミングで排出される。パージガスは窒素ガスなどの不活性ガスであるが、プロセスガスは可燃性ガスであり、クリーニングガスは支燃性ガスである。したがって、プロセスガスとクリーニングガスの両方が単一の前段湿式処理装置5に送られると、両ガスが前段湿式処理装置5内で混合され、爆発するおそれがある。
【0025】
そこで、動作制御部15は、第1流路切替装置8A~8Dの動作を制御して、プロセスガスを前段湿式処理装置5に送り、その一方で、クリーニングガスを燃焼式処理装置6に送るように構成されている。すなわち、クリーニングガスは前段湿式処理装置5には送られない。例えば、図1に示すように、プロセスチャンバ2Aからプロセスガスが排出されるときは、動作制御部15は、第1流路切替装置8Aを操作して、ガス導入ライン7Aと第1ガス移送ライン9Aとを連通させ、かつガス導入ライン7Aと第2ガス移送ライン10Aとの連通を遮断する。その結果、プロセスガスは、第1ガス移送ライン9Aを通って前段湿式処理装置5に送られる。図1において、第1流路切替装置8Aの白色の三角は開状態を表し、黒色の三角は閉状態を表している。
【0026】
同時に、プロセスチャンバ2Bからクリーニングガスが排出されるときは、動作制御部15は、第1流路切替装置8Bを操作して、ガス導入ライン7Bと第1ガス移送ライン9Bとの連通を遮断し、かつガス導入ライン7Bと第2ガス移送ライン10Bとを連通させる。その結果、クリーニングガスは、前段湿式処理装置5には送られず、第2ガス移送ライン10Bを通って燃焼式処理装置6に送られる。図1において、第1流路切替装置8Bの白色の三角は開状態を表し、黒色の三角は閉状態している。
【0027】
このように、動作制御部15は、第1流路切替装置8A~8Dを別々に操作することで、プロセスガスを前段湿式処理装置5に送り、その一方で、クリーニングガスを燃焼式処理装置6に送ることができる。クリーニングガスは前段湿式処理装置5には送られないので、前段湿式処理装置5内でクリーニングガスとプロセスガスとが混合されることがない。よって、図9に示す従来の除害装置のように、プロセスチャンバの数だけ、湿式処理装置を設ける必要がない。特に、図1に示す実施形態では、単一の前段湿式処理装置5のみが設けられているので、除害装置のコストおよびフットプリントを低減させることができる。
【0028】
プロセスガスを前段湿式処理装置5に送ることを確実としつつ、クリーニングガスが前段湿式処理装置5に送られることを防止するために、動作制御部15が第1流路切替装置8A~8Dを操作するタイミングは、パージガスが第1流路切替装置8A~8Dを通過しているタイミングであることが好ましい。
【0029】
動作制御部15は、成膜装置1に電気的に接続されており、成膜装置1から発せられたプロセスガス排出信号、パージガス排出信号、およびクリーニングガス排出信号を受け取るように構成されている。成膜装置1は、プロセスチャンバ2A~2Dのいずれか1つからプロセスガスが排出されるときに、プロセスガス排出信号を生成し、動作制御部15に送るように構成される。プロセスガス排出信号は、プロセスガスが排出されるプロセスチャンバ2A~2Dのいずれかを特定する情報を含む。
【0030】
例えば、動作制御部15は、プロセスチャンバ2Aからプロセスガスが排出されることを示すプロセスガス排出信号を成膜装置1から受け取ったときは、プロセスチャンバ2Aに対応する第1流路切替装置8Aを操作して、対応するガス導入ライン7Aと第1ガス移送ライン9Aとを連通させ、かつ対応するガス導入ライン7Aと第2ガス移送ライン10Aの連通を遮断する。このような第1流路切替装置8Aの操作により、プロセスチャンバ2Aから排出されたプロセスガスは、ガス導入ライン7A、第1流路切替装置8A、および第1ガス移送ライン9Aを通って前段湿式処理装置5に送られる。
【0031】
成膜装置1は、複数のプロセスチャンバ2A~2Dのいずれか1つからクリーニングガスが排出されるときに、クリーニングガス排出信号を生成し、動作制御部15に送るように構成される。クリーニングガス排出信号は、クリーニングガスが排出されるプロセスチャンバ2A~2Dのいずれかを特定する情報を含む。
【0032】
例えば、動作制御部15は、プロセスチャンバ2Bからクリーニングガスが排出されることを示すクリーニングガス排出信号を成膜装置1から受け取ったときは、プロセスチャンバ2Bに対応する第1流路切替装置8Bを操作して、対応するガス導入ライン7Bと第1ガス移送ライン9Bの連通を遮断し、かつ対応するガス導入ライン7Bと第2ガス移送ライン10Bとを連通させる。このような第1流路切替装置8Bの操作により、プロセスチャンバ2Bから排出されたクリーニングガスは、ガス導入ライン7B、第1流路切替装置8B、および第2ガス移送ライン10Bを通って燃焼式処理装置6に送られる。
【0033】
除害装置は、燃焼式処理装置6の下流に設けられた後段湿式処理装置22と、後段湿式処理装置22に接続された排気ライン23をさらに備えている。後段湿式処理装置22は、第2接続ライン24によって燃焼式処理装置6に連結されている。このような構成を持つ除害装置によれば、プロセスガスは、前段湿式処理装置5、燃焼式処理装置6、および後段湿式処理装置22によって順に処理され、クリーニングガスは、燃焼式処理装置6および後段湿式処理装置22によって順に処理される。
【0034】
フッ素ガス(F)、フッ化水素ガス(HF)、または三フッ化窒素ガス(NF)などを含むクリーニングガスは、湿式処理されると、金属に対して腐食性を有する酸性の水が生成される。図1に示す実施形態によれば、クリーニングガスは前段湿式処理装置5をバイパスするので、前段湿式処理装置5と燃焼式処理装置6とを連結する第1接続ライン21の腐食が防止できる。
【0035】
また、クリーニングガスは前段湿式処理装置5をバイパスするので、クリーニングガスをドライな状態に維持したまま、かつクリーニングガスの温度低下を回避しながら、クリーニングガスを燃焼式処理装置6に導くことができる。結果として、燃焼式処理装置6は、クリーニングガスを高い効率で燃焼処理することができる。特に、三フッ化塩素ガス(ClF)のような難分解性ガスを含むクリーニングガスを、燃焼式処理装置6は高い効率で処理することができる。
【0036】
プロセスガスとクリーニングガスとの混合物は、その温度低下に伴って固形化した副生成物を形成することがある。副生成物の例としては、フッ化アンモニウムやケイフッ化アンモニウムなどが挙げられる。このような副生成物は、最も温度が低い燃焼式処理装置6の上流側で形成されやすい。副生成物は、ガス流路を閉塞させるおそれがあり、副生成物の形成はできる限り防止するべきである。上記実施形態によれば、プロセスガスに含まれるアンモニア(NH)は前段湿式処理装置5で除去され、クリーニングガスは前段湿式処理装置5をバイパスするので、上述の副生成物が形成されることがない。また、アンモニアが前段湿式処理装置5で除去されるので、次の燃焼式処理装置6でのNOの発生が抑制される。
【0037】
図1に示すように、除害装置は、複数のガス導入ライン7A~7Dのうちの少なくとも1つに接続された圧力センサ30を備えている。図1に示す実施形態では、圧力センサ30はガス導入ライン7Aに接続されている。圧力センサ30は、動作制御部15に電気的に接続されており、ガス導入ライン7A内の圧力の測定値は、圧力センサ30から動作制御部15に送られるようになっている。複数の圧力センサ30が複数のガス導入ライン7A~7Dにそれぞれ接続されてもよい。
【0038】
プロセスガスの成分からなる副生成物は、前段湿式処理装置5内に堆積することがある。このような副生成物の堆積が進行すると、前段湿式処理装置5の内部流路を閉塞させることがある。そこで、動作制御部15は、圧力センサ30から送られた圧力の測定値に基づいて、前段湿式処理装置5の閉塞を検出するように構成されている。具体的には、第1流路切替装置8Aがガス導入ライン7Aと第1ガス移送ライン9Aとを連通させている状態で、ガス導入ライン7A内の圧力の測定値がしきい値を上回り、かつ、第1流路切替装置8Aがガス導入ライン7Aと第2ガス移送ライン10Aとを連通させている状態で、ガス導入ライン7A内の圧力の測定値がしきい値を下回っているときは、動作制御部15は、前段湿式処理装置5が閉塞していると判定する。
【0039】
一方、第1流路切替装置8Aがガス導入ライン7Aと第1ガス移送ライン9Aとを連通させている状態で、ガス導入ライン7A内の圧力の測定値がしきい値を下回っているときは、動作制御部15は、前段湿式処理装置5および燃焼式処理装置6の両方は、閉塞していないと判定する。
【0040】
前段湿式処理装置5が閉塞していると判定すると、図2に示すように、動作制御部15は、すべての第1流路切替装置8A~8Dを操作して、すべてのガス導入ライン7A~7Dとすべての第1ガス移送ライン9A~9Dとの連通を遮断し、かつすべてのガス導入ライン7A~7Dとすべての第2ガス移送ライン10A~10Dとを連通させる。このような操作により、プロセスガスは前段湿式処理装置5には送られず(前段湿式処理装置5をバイパスし)、燃焼式処理装置6に送られる。プロセスガスとクリーニングガスが同時に燃焼式処理装置6に送られることはありうるが、可燃性ガスであるプロセスガスと、支燃性ガスであるクリーニングガスは燃焼式処理装置6内で混合されて混合ガスを形成し、この混合ガスは速やかに燃焼されるので、予期せぬ爆発が起こることはない。
【0041】
図3は、前段湿式処理装置5、燃焼式処理装置6、後段湿式処理装置22の詳細構造の一実施形態を示す断面図である。前段湿式処理装置5は、水貯留室41と、水貯留室41に水を供給する水供給ノズル42と、水貯留室41から水が垂下して濡れ壁を形成する濡れ壁部44と、濡れ壁部44を通過したプロセスガスに水を噴霧する水エジェクタ46と、水と気体とを分離する気液分離タンク48を備えている。前段湿式処理装置5は、第1接続ライン21によって燃焼式処理装置6に連結され、燃焼式処理装置6は、気液分離タンク48および第2接続ライン24によって後段湿式処理装置22に連結されている。
【0042】
燃焼式処理装置6は、第1接続ライン21が接続された燃焼室50と、燃焼室50内に火炎を形成するバーナー51と、水と気体とを分離する上記気液分離タンク48を備えている。気液分離タンク48は、前段湿式処理装置5と共有されており、気液分離タンク48内の水は、矢印で示すように循環している。気液分離タンク48の一部からなる縮小流路48aは水で満たされており、前段湿式処理装置5と燃焼式処理装置6との間に位置する縮小流路48aは水で封止されている。
【0043】
後段湿式処理装置22は、第2接続ライン24に接続された水処理室60と、水処理室60内に配置された水噴霧ノズル61,62を備えている。第2接続ライン24は、燃焼式処理装置6の気液分離タンク48に接続されている。
【0044】
プロセスガスおよびクリーニングガスは、次のように処理される。プロセスガスは、最初に、前段湿式処理装置5により処理される。プロセスガスは、水貯留室41内に流入し、その後、濡れ壁部44内を下方に流れる。水エジェクタ46は、流路47内を流れるプロセスガスに水を噴霧し、これによりプロセスガスに含まれる水溶性成分を除去する。例えば、ジクロロシラン(DCS)に含まれるSi成分は、水に溶解し、除去されるので、次の燃焼式処理装置6の処理負荷が低減される。プロセスガス中のアンモニア(NH)も水によって除去される。
【0045】
水エジェクタ46から噴霧された水と、プロセスガスは、気液分離タンク48内で分離され、水は気液分離タンク48内に溜められ、プロセスガスは第1接続ライン21を通って燃焼式処理装置6の燃焼室50内に流入する。気液分離タンク48内の水は、プロセスガス中のアンモニア(NH)を含み、アルカリ性の水となる。アルカリ性の水は、金属からなる気液分離タンク48を腐食させるおそれがなく、腐食防止のためのコーティングなどが不要である。
【0046】
前段湿式処理装置5によって処理されたプロセスガスは、次に、燃焼式処理装置6によって処理される。クリーニングガスは、前段湿式処理装置5では処理されず、燃焼式処理装置6によって処理される。バーナー51は、燃焼室50内に火炎を形成し、可燃性ガスであるプロセスガスと、支燃性ガスであるクリーニングガスは火炎により燃焼処理される。燃焼室50の内面には水膜からなる濡れ壁が形成されており、燃焼室50を保護している。
【0047】
燃焼処理されたプロセスガスおよび/またはクリーニングガス(以下、処理済みガスという)は、燃焼室50内を流下し、気液分離タンク48を通過して、第2接続ライン24を通って後段湿式処理装置22に送られる。後段湿式処理装置22は、水噴霧ノズル61,62から水を処理済みガスに噴霧することで、処理済みガスをさらに湿式処理する。後段湿式処理装置22によって湿式処理された処理済みガスは、排気ライン23を通って除害装置から排出される。このようにして、プロセスガスは、前段湿式処理装置5、燃焼式処理装置6、および後段湿式処理装置22によって処理され、クリーニングガスは、燃焼式処理装置6および後段湿式処理装置22によって処理される。
【0048】
図3に示す実施形態では、共通の気液分離タンク48が、前段湿式処理装置5と燃焼式処理装置6で使用されている。前段湿式処理装置5と燃焼式処理装置6との間に位置する縮小流路48aは、常に水で満たされているので、プロセスガスは、気液分離タンク48を通って前段湿式処理装置5から燃焼式処理装置6に流れない。しかしながら、水エジェクタ46から噴霧された水とともに、プロセスガスが気液分離タンク48内の水に落下し、水中に気泡を発生させることがある。プロセスガスからなる気泡は、気液分離タンク48内を循環する水に運ばれて、縮小流路48aを通過して燃焼式処理装置6の下流側に到達することがある。このようなプロセスガスのショートカットは起こりうるが、ショートカットしたプロセスガスは後段湿式処理装置22によって処理されるので、プロセスガスが未処理のまま排出されることはない。
【0049】
一方、クリーニングガスは前段湿式処理装置5には流れないので、上記のような気液分離タンク48内を通るショートカットは原理的に起こらない。すなわち、クリーニングガスは必ず燃焼式処理装置6を通過し、燃焼式処理装置6によって処理される。さらに、クリーニングガスは後段湿式処理装置22によって処理される。
【0050】
次に、除害装置の他の実施形態について、図4を参照して説明する。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図1乃至図3を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0051】
図4に示すように、除害装置は、複数の第2ガス移送ライン10A,10B,10C,10Dにそれぞれ取り付けられた複数の第2流路切替装置71A,71B,71C,71Dと、これら第2流路切替装置に71A,71B,71C,71Dにそれぞれ接続された複数のバイパスライン73A,73B,73C,73Dをさらに備えている。バイパスライン73A~73Dは排気ライン23に接続されている。第2流路切替装置71A~71Dは動作制御部15に電気的に接続されており、動作制御部15は、第2流路切替装置71A~71Dを独立に操作することが可能に構成されている。図4に示す実施形態では、第2流路切替装置71A~71Dのそれぞれは、三方弁から構成されている。各三方弁は、電動弁、電磁弁などのアクチュエータ駆動型弁である。一実施形態では、第2流路切替装置71A~71Dのそれぞれは、複数の弁の組み合わせから構成されてもよい。
【0052】
第2流路切替装置71A~71Dは、第2ガス移送ライン10A~10Dを流れるクリーニングガスを、燃焼式処理装置6またはバイパスライン73A~73Dのいずれか一方に選択的に流すように構成されている。すなわち、第2流路切替装置71A~71Dは、通常経路と緊急経路との間で切り替えることができるように構成されている。通常経路とは、第1流路切替装置8A~8Dと燃焼式処理装置6とを連通させ、かつ第2ガス移送ライン10A~10Dとバイパスライン73A~73Dとの連通を遮断する経路である。緊急経路とは、第2ガス移送ライン10A~10Dとバイパスライン73A~73Dとを連通させ、かつ第1流路切替装置8A~8Dと燃焼式処理装置6の連通を遮断する経路である。
【0053】
図4において、第2流路切替装置71A~71Dの白色の三角は開状態を表し、黒色の三角は閉状態している。通常の運転中は、図4に示すように、第2流路切替装置71A~71Dは、上記通常経路の状態にある。すなわち、第1流路切替装置8A~8Dと燃焼式処理装置6とが第2流路切替装置71A~71Dを通じて連通し、かつ第2ガス移送ライン10A~10Dとバイパスライン73A~73Dとの連通は第2流路切替装置71A~71Dによって遮断される。したがって、クリーニングガスは、複数のガス導入ライン7A~7D、第1流路切替装置8A~8D、第2ガス移送ライン10A~10D、および第2流路切替装置71A~71Dを通って燃焼式処理装置6に送ることができる。
【0054】
一方、除害装置を停止すべき重故障が発生した時には、図5に示すように、動作制御部15は、複数の第1流路切替装置8A~8Dを操作して、ガス導入ライン7A~7Dと第2ガス移送ライン10A~10Dとを連通させ、かつガス導入ライン7A~7Dと第1ガス移送ライン9A~9Dの連通を遮断する。さらに、動作制御部15は、第2流路切替装置71A~71Dを操作して、通常経路から緊急経路に切り替える。第2ガス移送ライン10A~10Dとバイパスライン73A~73Dは第2流路切替装置71A~71Dを通じて連通し、かつ第1流路切替装置8A~8D(およびガス導入ライン7A~7D)と燃焼式処理装置6の連通は第2流路切替装置71A~71Dによって遮断される。したがって、プロセスガスおよびクリーニングガスは、前段湿式処理装置5および燃焼式処理装置6の両方をバイパスして、排気ライン23に送られる。より具体的には、プロセスガスおよびクリーニングガスは、ガス導入ライン7A~7D、第1流路切替装置8A~8D、第2ガス移送ライン10A~10D、第2流路切替装置71A~71D、およびバイパスライン73A~73Dを通って排気ライン23に送られる。
【0055】
除害装置を停止すべき重故障の例としては、燃焼式処理装置6の閉塞が挙げられる。動作制御部15は、圧力センサ30から送られてくるガス導入ライン7A内の圧力の測定値に基づいて、燃焼式処理装置6の閉塞を検出することができる。より具体的には、第1流路切替装置8Aがガス導入ライン7Aと第2ガス移送ライン10Aとを連通させている状態で、ガス導入ライン7A内の圧力の測定値がしきい値を上回っているときは、動作制御部15は、燃焼式処理装置6が閉塞していると判定する。
【0056】
燃焼式処理装置6が閉塞していると判定すると、図5に示すように、動作制御部15は、すべての第1流路切替装置8A~8Dを操作して、すべてのガス導入ライン7A~7Dとすべての第1ガス移送ライン9A~9Dとの連通を遮断し、かつすべてのガス導入ライン7A~7Dとすべての第2ガス移送ライン10A~10Dとを連通させる。さらに、動作制御部15は、すべての第2流路切替装置71A~71Dを操作して、すべての第1流路切替装置8A~8Dと燃焼式処理装置6との連通を遮断し、かつすべての第2ガス移送ライン10A~10Dとすべてのバイパスライン73A~73Dとを連通させる。
【0057】
このような操作により、プロセスガスとクリーニングガスは前段湿式処理装置5および燃焼式処理装置6の両方には送られず(前段湿式処理装置5および燃焼式処理装置6をバイパスし)、排気ライン23に送られる。結果として、除害装置内での圧力の上昇に起因する破損を防止することができる。
【0058】
バーナー51の故障などに起因して燃焼式処理装置6内の火炎に不具合が発生した場合は、図示しない燃焼検出器から燃焼不具合信号が動作制御部15に送られるようになっている。動作制御部15が燃焼不具合信号を受け取った場合は(すなわち、燃焼式処理装置6内の火炎に不具合が起こった場合は)、動作制御部15は、第2流路切替装置71A~71Dの通常経路を維持する。火炎の不具合は軽度の故障に分類され、消火された燃焼式処理装置6は単に流路として機能する。したがって、前段湿式処理装置5で処理されたプロセスガス、および第2ガス移送ライン10A~10Dを通って移送されたクリーニングガスは、燃焼式処理装置6を単に通過する。
【0059】
一実施形態では、図6に示すように、第2ガス移送ライン10は、その一端が第1流路切替装置8A~8Dに接続され、他端が燃焼式処理装置6に接続された集合ラインから構成されてもよい。この場合は、1つの第2流路切替装置71が第2ガス移送ライン10に取り付けられ、1つのバイパスライン73が第2流路切替装置71に接続されてもよい。さらに、図7に示すように、第1流路切替装置8A~8Dの数よりも少ない数の複数の第2流路切替装置71A,71Bが第2ガス移送ライン10A,10Bに取り付けられてもよい。
【0060】
図1乃至図7に示す実施形態では、単一の前段湿式処理装置5のみが設けられているが、一実施形態では、複数のプロセスチャンバ2A~2Dよりも少ない数の複数の前段湿式処理装置5が設けられてもよい。例えば、図8に示す例では、ガス導入ライン7Aは、同じ周期で成膜工程とクリーニング工程を実行する複数のプロセスチャンバ2A,2Bに接続された集合ラインから構成され、ガス導入ライン7Bは、同じ周期で成膜工程とクリーニング工程を実行する複数のプロセスチャンバ2C,2Dに接続された集合ラインから構成されている。この場合には、これらガス導入ライン7A,7Bに対応した複数の前段湿式処理装置5を設けてもよい。この実施形態でも、複数の前段湿式処理装置5の数は、複数のプロセスチャンバ2A~2Dの数よりも少ないので、低コストおよび低フットプリントの除害装置が達成される。
【0061】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0062】
1 成膜装置
2A,2B,2C,2D プロセスチャンバ
5 前段湿式処理装置
6 燃焼式処理装置
7A,7B,7C,7D ガス導入ライン
8A,8B,8C,8D 第1流路切替装置
9A,9B,9C,9D 第1ガス移送ライン
10A,10B,10C,10D 第2ガス移送ライン
15 動作制御部
21 第1接続ライン
22 後段湿式処理装置
23 排気ライン
24 第2接続ライン
30 圧力センサ
41 水貯留室
42 水供給ノズル
44 濡れ壁部
46 水エジェクタ
48 気液分離タンク
48a 縮小流路
50 燃焼室
51 バーナー
60 水処理室
61,62 水噴霧ノズル
71A,71B,71C,71D 第2流路切替装置
73A,73B,73C,73D バイパスライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9