(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095085
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】シート剥離装置、ラミネート処理装置、画像形成装置、及び、画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 41/00 20060101AFI20230629BHJP
B65H 29/54 20060101ALI20230629BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B65H41/00 B
B65H29/54
G03G15/00 460
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210760
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100117215
【弁理士】
【氏名又は名称】北島 有二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 航
(72)【発明者】
【氏名】古橋 朋裕
(72)【発明者】
【氏名】杉山 恵介
(72)【発明者】
【氏名】緑川 瑠樹
(72)【発明者】
【氏名】門馬 真也
(72)【発明者】
【氏名】浅野 翔
【テーマコード(参考)】
2H072
3F053
3F108
【Fターム(参考)】
2H072GA00
2H072JB03
3F053AA10
3F053AA12
3F053AA28
3F053AA33
3F053LA16
3F108JA02
(57)【要約】
【課題】重合シートを構成する2枚のシートを良好に剥離する。
【解決手段】シート剥離装置1には、2枚のシートP1、P2が重ね合されて接合部Aで接合された重合シートPJの非接合部を剥離するシート剥離部19が設けられている。また、シート剥離装置1には、重合シートPJを搬送方向に対して交差する方向に屈曲させながらシート剥離部19に向けて搬送する屈曲搬送部36(搬送手段)が設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚のシートが重ね合されて接合部で接合された重合シートの非接合部を剥離するシート剥離部と、
前記重合シートを搬送方向に対して交差する方向に屈曲させながら前記シート剥離部に向けて搬送する搬送手段と、
を備えたことを特徴とするシート剥離装置。
【請求項2】
前記搬送手段は、ベルト部材と、前記ベルト部材のベルト面に圧接して前記重合シートが搬送されるニップを形成するローラ部材と、を具備したことを特徴とする請求項1に記載のシート剥離装置。
【請求項3】
前記搬送手段は、前記搬送方向の離れた位置で前記重合シートの一方の面にそれぞれ対向する2つのローラ部材と、前記2つのローラ部材にそれぞれ圧接して前記重合シートが搬送されるニップを形成する圧接ローラ部材と、を具備したことを特徴とする請求項1に記載のシート剥離装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、ローラ部材と、前記ローラ部材よりも表面弾性が低くなるように形成されるとともに前記ローラ部材に圧接して前記重合シートが搬送されるニップを形成する低弾性ローラ部材と、を具備したことを特徴とする請求項1に記載のシート剥離装置。
【請求項5】
前記搬送手段は、前記搬送方向に直交する幅方向の範囲が、搬送可能な最大サイズの前記重合シートの幅方向の範囲に対して1/2以上を占めることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載のシート剥離装置。
【請求項6】
前記搬送手段は、前記搬送方向に直交する幅方向に複数分割されたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載のシート剥離装置。
【請求項7】
前記シート剥離部に対して前記搬送方向の上流側であって、前記搬送手段に対して前記搬送方向の上流側又は下流側に設置されて、前記重合シートを前記シート剥離部に向けて搬送する第2搬送手段を備え、
前記搬送手段による第1搬送速度と、前記第2搬送手段による第2搬送速度と、に速度差を生じさせることを特徴とする請求項1~請求項6のいずれかに記載のシート剥離装置。
【請求項8】
前記搬送手段と前記第2搬送手段とのうち前記搬送方向の下流側に設置されたものの搬送速度を、前記搬送方向の上流側に設置されたものの搬送速度に比べて、速くしたことを特徴とする請求項7に記載のシート剥離装置。
【請求項9】
前記第1搬送速度と前記第2搬送速度との大小関係が交互に逆転することを特徴とする請求項7に記載のシート剥離装置。
【請求項10】
前記搬送手段は、湾曲した搬送経路に設置されたことを特徴とする請求項1~請求項9のいずれかに記載のシート剥離装置。
【請求項11】
前記シート剥離部に向けて前記重合シートを搬送する搬送ローラ対を備え、
前記シート剥離部は、
所定の回転方向に回転して前記重合シートを巻き付ける巻付けローラと、
前記巻付けローラと前記搬送ローラ対との間で前記2枚のシートの間に形成される隙間に挿入される剥離爪と、
を具備するとともに、
前記重合シートの前記非接合部を剥離する剥離処理をおこなって、剥離した状態の前記2枚のシートの間に中シートを挿入する挿入処理をおこなうことを特徴とする請求項1~請求項10のいずれかに記載のシート剥離装置。
【請求項12】
請求項1~請求項11のいずれかに記載のシート剥離装置と、
前記シート剥離装置によって剥離された前記2枚のシートの間に中シートが挿入された状態の前記重合シートにラミネート処理を施すラミネート処理部と、
を備えたことを特徴とするラミネート処理装置。
【請求項13】
請求項1~請求項11のいずれかに記載のシート剥離装置、又は、請求項12に記載のラミネート処理装置と、
シートに画像を形成する画像形成装置本体と、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項1~請求項11のいずれかに記載のシート剥離装置、又は、請求項12に記載のラミネート処理装置が、シートに画像を形成する画像形成装置に対して着脱可能に設置されたことを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2枚のシートが重ね合されて接合部で接合された重合シートを剥離するシート剥離装置と、それを備えたラミネート処理装置と、複写機、プリンタ、ファクシミリ、又は、それらの複合機や印刷機等の画像形成装置と、画像形成システムと、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、2枚のシートが重ね合されて接合部で接合された重合シートを剥離するシート剥離装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
詳しくは、特許文献1におけるシート剥離装置は、1辺が接合されたラミネートシート(重合シート)における2枚のシートを、巻付けローラなどからなるシート剥離部で剥離して、その間に中紙(中シート)を挿入している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のシート剥離装置は、重合シートを構成する2枚のシートが互いに強い力で静電的に貼付いてしまっているときなどに、2枚のシートを充分に剥離することができなかった。
【0004】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、重合シートを構成する2枚のシートを良好に剥離することができる、シート剥離装置、ラミネート処理装置、画像形成装置、及び、画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明におけるシート剥離装置は、2枚のシートが重ね合されて接合部で接合された重合シートの非接合部を剥離するシート剥離部と、前記重合シートを搬送方向に対して交差する方向に屈曲させながら前記シート剥離部に向けて搬送する搬送手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、重合シートを構成する2枚のシートを良好に剥離することができる、シート剥離装置、ラミネート処理装置、画像形成装置、及び、画像形成システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】この発明の実施の形態におけるシート剥離装置を示す全体構成図である。
【
図2】(A)把持部材が把持位置に移動した状態を示す側面図と、(B)把持部材が退避位置に移動した状態を示す側面図と、である。
【
図3】(A)把持部材が把持位置に移動した状態を示す斜視図と、(B)把持部材が退避位置に移動した状態を示す斜視図と、である。
【
図5】
図4に続くシート剥離装置の動作を示す図である。
【
図6】
図5に続くシート剥離装置の動作を示す図である。
【
図7】
図6に続くシート剥離装置の動作を示す図である。
【
図8】
図7に続くシート剥離装置の動作を示す図である。
【
図9】剥離爪が重合シートに挿入された状態を幅方向に示す図である。
【
図10】剥離爪の動作を幅方向に示す斜視図である。
【
図12】シート剥離装置でおこなわれる制御を示すフローチャートである。
【
図14】屈曲搬送部と重合シートとを幅方向に示す図である。
【
図15】変形例1としての、屈曲搬送部を示す図である。
【
図16】変形例2としての、屈曲搬送部を示す図である。
【
図17】変形例3としての、第1搬送手段(屈曲搬送部)と第2搬送手段とを示す図である。
【
図18】変形例4としての、ラミネート処理装置を示す図である。
【
図19】変形例5としての、画像形成装置を示す図である。
【
図20】変形例6としての、画像形成システムを示す図である。
【
図21】別形態の画像形成システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0009】
まず、
図1にて、シート剥離装置1における全体の構成・動作について説明する。
シート剥離装置1は、2枚のシートP1、P2が重ね合されて接合部A(
図4(A)参照)で接合された重合シートPJの非接合部を剥離するシート剥離部19を備えた装置である。
シート剥離部19は、重合シートPJの非接合部を剥離する剥離処理をおこなって、剥離した状態の2枚のシートP1、P2の間に中シートPMを挿入する挿入処理をおこなうものである。
【0010】
特に、本実施の形態において、重合シートPJとして、2枚のシートP1、P2を重ね合わせて、4辺のうち1辺を接合部Aとして接合したものを用いている。すなわち、重合シートPJ(2枚のシートP1、P2)は、1辺(接合部A)のみが熱溶着などによって繋がっていて、その他の部分(非接合部)は接合されず重合されている。また、重合シートPJを構成する2枚のシートP1、P2としては、透明なフィルムシート(ラミネートシート)を用いることができる。
【0011】
なお、重合シートPJは、1枚のシートを折り返して形成したものであっても良い。そして、そのように形成された重合シートPJであっても、本願明細書等においては、2枚のシートが重ね合されたものであるものと定義するとともに、その折り返した部分を「接合部」と定義し、それ以外の部分を「非接合部」と定義する。
【0012】
そして、巻付けローラ20と第3搬送ローラ対6との間で、重合シートPJを構成する2枚のシートP1、P2の非接合部を剥離して(接合部Aの接合を維持した状態で接合部Aを中心に2枚のシートP1、P2を分離して)、剥離した2枚のシートP1、P2の間に中シートPM(1枚の普通紙などのシートである。)を挿入する動作が、シート剥離装置1(シート剥離部19)でおこなわれることになる。
【0013】
図1に示すように、シート剥離装置1には、シート剥離部19、第1、第2給送トレイ11、12、第1、第2給送ローラ2、3、第1~第3搬送ローラ対4~6、搬送手段としての屈曲搬送部36、排出トレイ13、第1~第5センサ41~45、内側制限部材としての第1ガイド部材25、外側制限部材としての第2ガイド部材26、第3ガイド部材27、などが設けられている。
また、シート剥離部19には、巻付けローラ20、移動機構30、切替爪15、剥離爪16、などが設けられている。
また、シート剥離装置1には、第1搬送経路K1(湾曲搬送経路)、第2搬送経路K2、第3搬送経路K3、第1分岐搬送経路K4、第2分岐搬送経路K5などの複数の搬送経路が形成されている。これらの搬送経路K1~K5は、それぞれ、シート(重合シートPJ又は中シートPMである。)を搬送するためのものであって、対向する2つの搬送ガイド部材(ガイド板)によって案内される。
【0014】
詳しくは、第1給送トレイ11には、重合シートPJが積載されている。そして、第1給送トレイ11上の最上方の重合シートPJが第1給送ローラ2によって給送されて、第1搬送ローラ対4によって第1搬送経路K1に沿って搬送されることになる。
また、第2給送トレイ12には、中シートPMが積載されている。そして、第2給送トレイ12上の最上方の中シートPMが第2給送ローラ3によって給送されることになる。
第1~第3搬送ローラ対4~6は、いずれも、芯金上にゴムなどからなる弾性層が形成された駆動ローラと従動ローラとからなり、そのニップに挟持されたシートを搬送するものである。第2搬送ローラ対5から第3搬送ローラ対6までの第3搬送経路K3には、上流側から、第2搬送ローラ対5、巻付けローラ20、第3搬送ローラ対6が設置されている。特に、第3搬送ローラ対6は、正転・逆転可能であって、シートを正転時の順方向にも逆転時の逆方向にも搬送可能に構成されている。また、第3搬送ローラ対6は、シートを排出トレイ13に向けて排出する排出ローラ対としても機能する。
第1~第5センサ41~45は、いずれも、その位置にシートが存在するか否かを光学的に検知する反射型フォトセンサである。第1センサ41は第1搬送ローラ対4の下流側近傍に配置され、第2センサ42は第2給送ローラ3の下流側近傍に配置され、第3センサ43は第2搬送ローラ対5と巻付けローラ20との間であって第2搬送ローラ対5の下流側近傍に配置され、シート検知センサとしての第4センサ44は巻付けローラ20の下流側近傍であって第3搬送ローラ対6の上流側に配置され、第5センサ45は第3搬送ローラ対6の下流側に配置されている。
なお、本実施の形態において、第1搬送経路K1は、湾曲した搬送経路であって、搬送手段としての屈曲搬送部36が設置されているが、この屈曲搬送部36については後で
図13、
図14等を用いて詳しく説明する。
【0015】
図2、
図3(及び、
図5(B)~(D)、
図6(A))等を参照して、巻付けローラ20について説明する。
巻付けローラ20は、巻付け開始位置Wで、重合シートPJの一端側(接合部Aが形成された側の反対側である。)を被把持部Bとして、把持部材32(把持部)によって被把持部Bを把持した状態で所定の回転方向に回転して重合シートPJを巻き付けるローラ部材である。巻付けローラ20は、制御部によって制御される駆動モータの駆動によって、回転軸20aを中心に正逆方向に回転可能に構成されている。
具体的に、
図1に示すように、重合シートPJは、第1給送トレイ11から第1搬送経路K1を経由して、第2搬送ローラ対5によって第3搬送経路K3を順方向に搬送されて、一旦、巻付けローラ20の位置を通過して第3搬送ローラ対6の位置まで搬送される。その後、重合シートPJは、逆転された搬送ローラ対としての第3搬送ローラ対6によって巻き付けローラ20の位置まで逆方向に搬送されて、把持部材32に把持された状態で反時計方向に回転する巻付けローラ20によって巻き付けられることになる。
【0016】
そして、
図5(C´)を参照して、巻き付けローラ20に重合シートPJが巻き付けられていくとき、ローラ表面線速がローラ半径に比例するように、シートP1の線速とシートP2の線速とは、巻き付けローラ20の中心からそれぞれのシートP1、P2までの距離に比例する。したがって、シートP2よりシートP1が巻き付けローラ20の中心から近いので(内側に位置するので)、シートP1の線速はシートP2より遅くなる。
そのため、第2のシートP2に比べて第1のシートP1が弛みやすくなり、
図5(D)、
図6(A)等に示すように、重合シートPJの接合部Aの側(他端側)で2枚のシートP1、P2の間に隙間C(上方の第1のシートP1が上方に撓んでできる隙間Cである。)が形成されることになる。このようにして、2枚のシートP1、P2が、隙間なく密着した状態から、剥離(分離)した状態になる。
【0017】
以下、巻付けローラ20に重合シートPJを巻き付けることで、巻付けローラ20と第3搬送ローラ対6との間で重合シートPJに隙間Cが生じるメカニズムについて、さらに重ねて補足説明する。
巻付けローラ20に巻き付けられる重合シートPJは、把持部材32に把持されてシートずれが規制された状態になるため、巻付けローラ20で周長差分のスリップが生じて、内側のシートP1の搬送量が外側のシートP2の搬送量に比べて少なくなる。その結果、第3搬送ローラ対6と巻付けローラ20のニップ間で、内側シートP1に弛みが生じることになる。
このとき、巻付けローラ20に重合シートPJを1周以上巻き付けることで、それ以降はシートの厚み分で内周と外周で周長差が生じて、同じように弛みが発生することになる。
そして、最終的に、第3搬送ローラ対6と巻付けローラ20との間に弛みが集まって、2枚のシートP1、P2の間に隙間Cが形成されることになる。
詳しくは、内側のシートP1の厚さをΔRとして、巻付けローラ20の回転軸20a(軸中心)から内側のシートP1までの距離をRとすると、巻付けローラ20の回転軸20a(軸中心)から外側のシートP2までの距離はR+ΔRとなる。内側のシートP1の厚みΔRだけ半径が異なるため、重合シートPJを巻付けローラ20に1周巻き付けると、内側シートP1と外側シートP2とに2×ΔR×πの周長差が生じる。したがって、巻付けローラ20に重合シートPJを巻き付ける回数をM回とすると、2×ΔR×π×Mだけ内側シートP1に弛みが生じることになる。
そして、最終的に、第3搬送ローラ対6と巻付けローラ20との間に弛みが集まって、2枚のシートP1、P2の間に、2×ΔR×π×Mに相当する隙間Cが形成されることになる。
【0018】
特に、本実施の形態では、上述したような隙間Cを顕著に形成するために、重合シートPJを巻付けローラ20に少なくとも1周以上巻き付けている。
このように、本実施の形態では、重合シートPJを巻き付ける巻付けローラ20を設置することで、シート剥離装置1がそれほど大型化・高コスト化することなく、重合シートPJの剥離を可能にしている。
【0019】
ここで、本実施の形態において、
図2(A)の把持部材32は、
図5(B´)に示すように、重合シートPJの一端側(被把持部Bの側である。)の先端の端面に突き当て接触することなく、被把持部Bを把持するように構成されている。
なお、重合シートの「端面」とは、重合シートのオモテ面とウラ面とに繋がる厚さ方向の面(側面)であるものと定義する。したがって、矩形の重合シートの端面は、前後左右4つあることになる。
【0020】
詳しくは、把持部材32は、重合シートPJの一端側の端面をいかなる部材にも突き当て規制させることなく、すなわち接触させることなく、巻付けローラ20の受部20bとの間で、重合シートPJの被把持部Bのシート面に対して垂直方向から被把持部Bを挟み込んで把持するように構成されている。受部20bは、巻付けローラ20の外面にあり、把持部材32に対向可能に形成されている。さらに詳しくは、受部20bは、巻付けローラ20の仮想外周面(重合シートPJが巻付けられる円状の外周面である。)から内側に凹んだ部分に形成されている。
【0021】
具体的に、重合シートPJは、その一端側端面(先端面)が特定の部材(例えば、把持部材32自体である。)に突き当たった状態で規制されて把持部材32と受部20bとに挟まれ把持されるのではなくて、その一端側端面(先端面)がいかなる部材にも突き当たることなく、外側の把持部材32と内側の受部20bとによって挟まれて把持されることになる。
したがって、
図5(B´)の把持部材32の鈍角部分(くさび部分)に重合シートPJの一端側端面(先端面)が突き当たることなく、重合シートPJの一端側の被把持部Bが把持部材32と受部20bとによって把持される。
そして、重合シートPJの一端側端面(先端)は、突き当たることなく、把持部材32と受部20bとの接触面の端部(
図5(B´)の右側端部である。)と一致している。
なお、重合シートPJの一端側端面(先端)は、被把持部Bが一端側の先端よりシート内側(一端側の先端より他端側)になるように、重合シートの一端側の先端が、把持部材32と受部20bとの接触面を避けて超えるようにしても良い。また、一端側端面(先端)は、この接触面内にあっても良い。
そのため、先端面を突き当てる場合に比べて、重合シートPJ(特に、先端の部分である。)が傷ついてしまう不具合を軽減することができる。
なお、本実施の形態において、巻付けローラ20に巻き付けられる重合シートPJは、被把持部Bとなる一端側の反対側の他端側に接合部Aが形成されたものである。
【0022】
ここで、本実施の形態では、把持部材32(把持部)と受部20bとのうち少なくとも一方が、ゴム、スプリング、板バネなどの弾性材料で形成されている。
これにより、把持部材32と受部20bとの双方を金属材料や樹脂材料などの剛体で形成する場合に比べて、重合シートPJに対する把持力を高めることができるとともに、重合シートPJの表面に傷をつけにくくなる。特に、把持部材32と受部20bとの双方を弾性材料で形成した場合には、そのような効果が発揮されやすくなる。
【0023】
図2、
図3に示すように、移動機構30は、巻付けローラ20の巻付け開始位置Wで、把持部材32を、重合シートPJを把持可能な把持位置(
図2(A)、
図3(A)に示す位置である。)と、把持位置から退避した退避位置(
図2(B)、
図3(B)に示す位置である。)と、の間を移動させるものである。
詳しくは、移動機構30は、アーム部材31、付勢部材としての圧縮スプリング33、カム34、カム34を正逆方向に回転駆動するモータ(不図示)、などで構成されている。
アーム部材31は、把持部材32を保持するとともに、支軸31aを中心に回動可能に巻付けローラ20に保持されている。本実施の形態では、把持部材32がアーム部材31の基端側である先端部に一体的に形成(保持)されている。これに対して、把持部材32をアーム部材31とは別部材にして、アーム部材31に把持部材32を設置(保持)するように構成することもできる。いずれにしても、把持部材32を保持したアーム部材31は、把持部材32とともに巻付けローラ20とともに回転軸20aを中心に回転することになる。
圧縮スプリング33は、把持部材32が
図2(B)に示す退避位置から
図2(A)に示す把持位置に移動するようにアーム部材31を付勢する付勢部材として機能している。具体的に、圧縮スプリング33は、その一端側が回転軸20aの近傍の固定位置に接続され、その他端側がアーム部材31の一端側(支軸31aを挟んで把持部材32が設けられた側の反対側の自由端側である。)に接続されている。
カム34は、把持部材32が
図2(A)に示す把持位置から
図2(B)に示す退避位置に移動するように、圧縮スプリング33(付勢部材)の付勢に抗してアーム部材31を押動するものである。カム34は、制御部に制御されるモータによって所望の回転角度で正逆方向に回転駆動されることになる。カム34は、巻付けローラ20とは独立して、カム軸34aを中心に回転可能に装置筐体に保持されている。
【0024】
このように構成された移動機構30は、
図2(A)、
図3(A)に示すように、カム34がアーム部材31に接触していない状態では、アーム部材31が圧縮スプリング33に付勢されて、把持部材32が受部20bに圧接する状態(閉状態)になる。
これに対して、
図2(B)、
図3(B)に示すように、カム34がアーム部材31を押圧した状態では、アーム部材31が圧縮スプリング33の付勢に抗するように、支軸31aを中心に
図2(B)の反時計方向に回転して、把持部材32が受部20bから離間した状態(開状態)になる。この開状態は、重合シートPJを把持できない状態(把持解除状態)である。
そして、把持部材32が開状態(退避位置に位置した状態)のとき、その把持部材32と受部20bとの間に重合シートPJが介在されて、把持部材32が閉状態(把持位置に位置した状態)に移動することで、重合シートPJが把持部材32と受部20bとによって把持されることになる。
【0025】
なお、本実施の形態では、
図3に示すように、巻付けローラ20の円柱状のローラ部が軸方向に複数(7つである。)に分割されている。そして、それぞれのローラ部の分割位置(隣接するローラ部とローラ部との間の凹部である。)に合わせるように、把持部材32やアーム部材31が複数設置されており、それらの複数のアーム部材に当接可能にカム34が複数設置されている。
このように重合シートPJを把持する位置を、軸方向の全域とするのではなくて、軸方向に分割することで、重合シートPJを把持するために必要な負荷を分散することができるとともに、重合シートPJの先端の傷つきを低減することができる。また、このような構成は、大サイズの重合シートPJや重量のある重合シートPJを把持するときのように、必要な把持力が大きくなってしまう場合に有用である。
【0026】
なお、本実施の形態において、第3搬送経路K3は、
図1に示すように、直線状の搬送ガイド板により形成されている。これに対して、搬送ガイド板として、湾曲した曲線状のものを用いて、第3搬送経路を形成することもできる。また、そのような場合に、巻付けローラ20における重合シートPJの把持位置を、本実施の形態のものよりも、回転軸20a寄りに変更することもできる。さらに、そのような場合に、本実施の形態における把持部材32と受部20bとの位置を入れ替えて、巻付けローラ20において把持部材32を受部20bより回転軸20a側に配置することもできる。
【0027】
ここで、
図1、
図4(D)、
図5(A)等を参照して、本実施の形態におけるシート剥離装置1には、巻付けローラ20に向けて搬送される重合シートPJを検知するシート検知センサとしての第4センサ44が設置されている。そして、第4センサ44(シート検知センサ)の検知結果に基づいて移動機構30が制御されている。
詳しくは、第4センサ44は、巻付けローラ20と第3搬送ローラ対6との間の搬送経路の搬送ガイド部材に配置されている。そして、
図4(D)、
図5(A)等に示すように、重合シートPJが、被把持部Bの側を先頭にして、第3搬送ローラ対6によって巻付けローラ20の位置に向けて逆方向に搬送されるときに、その先端(逆方向搬送時の先端である。)を第4センサ44によって検知する。そして、その検知タイミングをトリガにして、重合シートPJを把持位置に停止させるタイミングと、把持部材32によって被把持部Bを把持するタイミングと、を調整制御している。具体的に、重合シートPJの先端を第4センサ44によって検知してから、所定時間が経過した後に、第3搬送ローラ対6による重合シートPJの逆方向の搬送を停止して、把持部材32が
図2(B)に示す退避位置から
図2(A)に示す把持位置に移動するように、カム34を回動してアーム部材31(移動機構30)を回転させる。
このような制御をおこなうことで、重合シートPJの端面をいかなる部材に突き当てることなく把持部材32と受部20bとによって挟み込む動作が、精度良くおこなわれることになる。
【0028】
ここで、第3搬送ローラ対6は、先に説明したように、巻付けローラ20との間に形成された第3搬送経路K3(搬送経路)において巻付けローラ20の巻付け開始位置Wに向けて一端側(被把持部Bの側である。)を先頭にして前記重合シートを搬送する搬送ローラ対である。
【0029】
また、
図6(A)~(C)、
図9、
図10(A)~(C)等を参照して、剥離爪16について説明する。
剥離爪16は、巻付けローラ20によって一端側(被把持部Bの側)から巻き付けられて、第3搬送ローラ対6(搬送ローラ対)によって他端側(接合部Aの側)が挟持された状態の重合シートPJに対して、巻付けローラ20と第3搬送ローラ対6との間で2枚のシートP1、P2の間に形成される隙間Cに幅方向端部から挿入される爪状の部材である。
詳しくは、本実施の形態において、剥離爪16は、幅方向(
図6の紙面垂直方向であって、
図9の左右方向である。)の両端部にそれぞれ設けられている。また、剥離爪16は、板と上下方向に延びるフィンとを有しており、剥離爪16が重合シートPJに挿入される方向において、前記の板は、後端と、その幅方向中央に先端を有している。前記板の板厚と板幅は、それぞれ前記先端から前記後端にむかって徐々に増加するように形成されている。また、前記フィンの上下長は、重合シートPJに挿入される方向においてフィン先端から徐々に増加するように形成されている。また、剥離爪16は、板とフィンとが後端で十字形状をなしている(
図10(A)参照)。さらに、一対の剥離爪16は、制御部により制御される不図示の移動手段によって、互いに接触しないように、それぞれ幅方向に移動可能に構成されている。
このように構成された剥離爪16は、
図6(A)に示すように、重合シートPJに隙間Cが形成されるまで、第3搬送経路K3において重合シートPJなどのシートの搬送を妨げない待機位置(
図10(A)に示す位置である。)に待機している。そして、剥離爪16は、重合シートPJ(2枚のシートP1、P2)を分離するときに、
図9、
図10(B)等に示すように、重合シートPJの隙間Cに入り込んで、その隙間Cを大きく確保することになる。
なお、剥離爪16を幅方向に移動させる移動手段としては、例えば、ピニオン・ラック機構を用いることができる。
【0030】
さらに具体的に、一対の剥離爪16を幅方向に移動させる移動手段としての駆動機構76としては、
図11(A)に示すものや、
図11(B)に示すものを用いることができる。
図11に示すように、本実施の形態では、2つの剥離爪16を互いに対向させて配置している。
図11(A)に示す駆動機構76は、2つの剥離爪16をそれぞれベルト駆動によって移動するものであり、
図11(B)に示す駆動機構76は、2つの剥離爪16をそれぞれラック・ピニオン駆動によって移動するものである。
詳しくは、
図11(A)に示す駆動機構76は、駆動プーリ78と従動プーリ79との間にベルト80が張架され、そのベルト80に2つの剥離爪16が互いに対向して取り付けられている。ここで、一方の剥離爪16は下側のベルト80に、他方の剥離爪16は上側のベルト80にそれぞれ接続されている。また、駆動プーリ78には、駆動モータ77のモータ軸に設置されたモータギアに噛合する駆動ギアが設置されている。そして、駆動モータ77の回転出力が、ベルト80に伝達される。具体的に、駆動モータ77のモータギアが
図11(A)の時計方向に回転すると2つの剥離爪16が互いに接近して、駆動モータ77のモータギアが
図11(A)の反時計方向に回転すると2つの剥離爪16が互いに離間することになる。
また、
図11(B)に示す駆動機構76は、1つのピニオン84に噛み合う2つのラック83A、83Bが互いに反対方向に伸びて設けられ、それぞれのラック83A、83Bに2つの剥離爪16が互いに対向して取り付けられている。ピニオン84には、駆動モータ82のモータ軸に設置されたモータギアに噛合する駆動ギアが設置されている。そして、駆動モータ82の回転出力が、ラック83A、83Bに伝達される。具体的に、駆動モータ82のモータギアが
図11(B)の時計方向に回転すると2つの剥離爪16が互いに接近して、駆動モータ77のモータギアが
図11(B)の反時計方向に回転すると2つの剥離爪16が互いに離間することになる。
本実施の形態における剥離爪16は、上述したように板と上下方向に延びるフィンを有した形状になっていて、駆動機構76による駆動によって重合シートPJの幅方向に移動可能に構成されているため、
図10(B)に示すように重合シートPJに生じた隙間Cにスムーズに挿入されることになる。
【0031】
また、
図7(A)~(C)等を参照して、切替爪15は、剥離爪16と巻付けローラ20との間に設置されている。そして、第3搬送経路K3(搬送経路)を挟んで第3搬送経路K3から別々の方向に分岐する2つの分岐搬送経路K4、K5に、剥離爪16によって剥離された重合シートPJの腰付き状態の2枚のシートP1、P2が、それぞれ別々に異なる方向に導かれる。このとき、爪状の移動部材である切替爪15が、所定角度の範囲内で正逆回転するように回転移動して重合シートPJを導く。
詳しくは、本実施の形態において、切替爪15は、幅方向(
図7の紙面垂直方向である。)に隙間をあけて複数に分割されて設けられている。また、切替爪15は、制御部により制御される不図示の駆動手段によって、支軸を中心に回動可能に構成されている。
このように構成された切替爪15は、剥離爪16によって剥離された重合シートPJの腰付きシートP1、P2を分岐搬送経路K4、K5に導くときまで、第3搬送経路K3において重合シートPJなどのシートの搬送を妨げない待機位置(
図7(A)に示す位置である。)に待機している。そして、切替爪15は、重合シートPJの2枚のシートP1、P2(剥離爪16によって分離されたものである。)をそれぞれ分岐搬送経路K4、K5に導くときに(異なる方向に導くときに)、
図7(B)に示すように、重合シートPJの側からみて、第3搬送経路K3への進入を妨げる位置に回動することになる。
これにより、第1のシートP1は第1分岐搬送経路K4に導かれ、第2のシートP2は第2分岐搬送経路K5に導かれることになる。
【0032】
詳しくは、
図7(A)に示すように、隙間Cに剥離爪16が挿入された後の重合シートPJの一端側の巻付けローラ20への巻付けが解除されるように第3搬送ローラ対6によって重合シートPJを他端側(左側である。)に搬送する。そして、
図7(B)に示すように重合シートPJを搬送した後に、
図7(C)に示すように第3搬送ローラ対6によって重合シートPJを再び一端側(右側である。)に搬送して、剥離爪16によって剥離された一方のシートP1を第1分岐搬送経路K4に導いて、他方のシートP2を第2分岐搬送経路K5に導く。その後に、
図8(A)~(C)に示すように、剥離された状態の2枚のシートP1、P2の間に中シートPMが挿入されるように中シートPMを第3搬送経路K3の他端側に向けて搬送している。
【0033】
また、
図6(A)等を参照して、第1ガイド部材25は、第3搬送経路K3において剥離爪16(
図6(B)参照)と巻付けローラ20との間で、重合シートPJの2つのシートP1、P2のうち巻付けローラ20において内側に巻きつけられる第1のシートP1の弛み量を制限する内側制限部材として機能している。
また、
図6(A)等を参照して、第2ガイド部材26は、第3搬送経路K3において剥離爪16(
図6(B)参照)と巻付けローラ20との間で、重合シートPJの2つのシートP1、P2のうち巻付けローラ20において外側に巻きつけられる第2のシートP2が、巻付けローラ20や第3搬送ローラ対6の回転ムラにより弛んでしまったときの弛み量を制限する外側制限部材として機能している。
【0034】
以下、
図4~
図8を参照して、シート剥離装置1(シート剥離部19)において重合シートPJを剥離する動作について説明する。
また、その動作説明において、適宜に、
図9、
図10を用いて剥離爪16の動作を説明するとともに、
図12のフローチャートを用いて制御フローを説明する。
まず、重合シートPJが第1給送トレイ11から給送されると(
図12:ステップS1)、
図4(A)に示すように、第3搬送経路K3において、接合部Aを先頭にして第2搬送ローラ対5によって順方向(
図4の右方から左方に向かう方向である。)に搬送される。
このとき、把持部材32が、巻付けローラ20の外周内側になる把持位置に位置するように、移動機構30が制御されている。すなわち、カム34は、アーム部材31を押圧しない位置に回転移動している。このように把持部材32が把持位置に位置しているとき、把持部材32によって第3搬送経路K3におけるシートの搬送が妨げられることはない。また、切替爪15は、その自由端が下方に回転移動して、第3搬送経路K3におけるシートの搬送を妨げない待機位置に待機している。
そして、
図4(B)に示すように、重合シートPJの被把持部B(順方向後端、一端側)が巻付けローラ20の位置を通過するまで第3搬送ローラ対6で重合シートPJを搬送させて、さらに重合シートPJを順方向に搬送した後に、
図4(C)に示すように重合シートPJの搬送を停止させる。このとき搬送停止するタイミングは、重合シートPJの接合部A(順方向先端、他端側)が第3センサ43によって検知されるタイミングをトリガにしたものであって、その第3センサ43の検知から第3搬送ローラ対6で重合シートPJを所定量X1搬送させたタイミングである(
図12:ステップS2、S3)。
そして、
図4(C)に示すように、一時的に第3搬送ローラ対6による重合シートPJの搬送を停止させたときに、把持部材32を把持位置から退避位置へ移動する(
図12:ステップS4)。すなわち、カム34を、アーム部材31を押圧する位置に回転移動させる。この状態は、把持部材32と受部20bとの間に重合シートPJの被把持部Bを受入可能な状態である。
そして、
図4(D)に示すように、第3搬送ローラ対6を逆回転して、重合シートPJの逆方向の搬送を開始する(
図12:ステップS5)。このとき、重合シートPJの被把持部Bを巻付けローラ20の把持位置まで搬送するために、第4センサ44によって、重合シートPJの被把持部B(逆方向先端、一端側)が検知される。
【0035】
そして、
図5(A)に示すように、重合シートPJの被把持部Bが第4センサ44によって検知されるタイミングをトリガにして、重合シートPJの被把持部Bが巻付けローラ20の所定回転位置で巻付け開始位置W(
図2等参照)に達するまで第3搬送ローラ対6で重合シートPJを所定量X2搬送して停止する(
図12:ステップS6、S7)。
そして、
図5(B)に示すように、巻付けローラ20の所定回転位置で把持部材32を退避位置から把持位置へ移動させる(
図12:ステップS8)。すなわち、カム34を、アーム部材31を押圧しない位置に回転移動する。この状態は、
図5(B´)に示すように、重合シートPJの一端側端面がいかなる部材にも突き当たることなく、把持部材32と受部20bとの間で被把持部Bが把持された状態である。なお、
図2の巻付け開始位置Wは、所定回転位置での巻付けローラ20の外周面の位置である。しかし、
図5(A)の退避位置や
図5(B)の把持位置では、巻付けローラ20の外周面自体は存在しない。このため、巻付け開始位置Wは、仮想外周面の巻付け開始位置Wとなる。
そして、
図5(C)に示すように、把持部材32によって重合シートPJを把持した状態で巻付けローラ20を逆方向(反時計方向)に回転するとともに、第3搬送ローラ対6を再び逆転する。このとき、巻付けローラ20の回転が進められると、
図5(D)に示すように、巻付けローラ20と第3搬送ローラ対6との間で、重合シートPJの2枚のシートP1、P2の間に隙間Cが形成されていく。このとき、重合シートPJは、巻付けローラ20の近傍で第1、第2搬送ガイド部材25、26によって、撓みが制限された状態になる。そのため、重合シートPJの隙間Cは、第3搬送ローラ対6に近い位置に集中的に形成されることになる。
【0036】
このように、第3搬送ローラ対6と巻付けローラ20との間であって、第3搬送ローラ対6に対して逆方向下流側に配置された、第4センサ44によって、重合シートPJの逆方向先端を検知する。そして、そのタイミングをトリガにして把持部材32と受部20bとによって重合シートPJの被把持部Bを把持するタイミングを定めているため、必要なシート搬送量X2に対するシート長のばらつき(同じサイズのシートであっても存在する誤差である。)に関わらず、重合シートPJの被把持部Bを所望の把持位置に精度良く搬送することができる。
また、第3搬送ローラ対6と巻付けローラ20との間であって巻付けローラ20の側に第4センサ44を設置することによって、重合シートPJの逆方向先端を検知から必要なシート搬送量X2をシート長によらず短くすることができる。これにより、搬送量X2のばらつきを抑えて、重合シートPJの被把持部Bを所望の把持位置に精度良く搬送することができる。
このようなことから、第4センサ44は、巻付けローラ20に近い位置に配置されることが好ましい。
【0037】
その後、
図5(D)の第3搬送ローラ対6の逆転が継続されるとともに巻付けローラ20による重合シートPJの巻付けが開始されてから、第3搬送ローラ対6による搬送量が所定量X3に達した時点で、
図6(A)に示すように、第3搬送ローラ対6による搬送が停止されるとともに、巻付けローラ20による重合シートPJの巻付けが停止される(
図12:ステップS9)。この状態は、重合シートPJが巻付けローラ20に1周以上巻き付けられた状態であるとともに、重合シートPJの隙間Cが充分に広がった状態である。また、重合シートPJの接合部Aは、第3搬送ローラ対6に挟まれている状態である。
そして、
図6(B)に示すように、充分に広げられた重合シートPJの隙間Cに剥離爪16が挿入される(
図12:ステップS10)。すなわち、
図9、
図10(A)に示すように、一対の剥離爪16が、それぞれ、
図10(A)の待機位置から
図10(B)の剥離位置に移動される。
そして、
図6(C)に示すように、剥離爪16が隙間Cに挿入された状態で、第3搬送ローラ対6の正転が開始されるとともに、巻付けローラ20の正方向(時計方向)の回転が開始される(
図12:ステップS11)。
なお、このとき、巻付けローラ20の正方向(時計方向)の回転で重合シートPJを搬送できる場合、接合部Aが第3搬送ローラ対6に挟まれていなくてもよい。すなわち、巻付けローラ20の正方向の回転で重合シートPJの接合部Aを第3搬送ローラ対6側に搬送して、その後に接合部Aを第3搬送ローラ対6に挟ませて、第3搬送ローラ対6で重合シートPJを搬送してもよい。
【0038】
そして、
図7(A)に示すように、第3搬送ローラ対6に正転による重合シートPjの搬送が所定量X4おこなわれた後に、第3搬送ローラ対6の正転と巻付けローラ20の正転とがそれぞれ停止される(
図12:ステップS12)。このとき、把持部材32には重合シートPJが巻き付いておらず、把持部材32は、巻付け開始位置Wに位置した重合シートPJの被把持部Bを把持解除可能な状態である。すなわち、把持部材32は、巻付け開始位置Wで、被把持部Bを把持する把持位置から退避位置へ移動することできる。
そして、その状態で把持部材32を把持位置から退避位置へ移動させて、把持部材32を第3搬送経路K3上に位置した状態にする(
図12:ステップS13)。すなわち、
図2(B)に示すようにカム34を回転させて、アーム部材31を押圧する位置に回転移動させる。この状態は、把持部材32による重合シートPJの把持が解除された状態である。なお、本実施の形態では、カム34(移動機構30)を移動させて把持部材32による把持を解除したが、把持部材32による把持力よりも第3搬送ローラ対6の搬送による引抜き力が大きい場合には、カム34(移動機構30)の移動をせずに、第3搬送ローラ対6の搬送による引抜きによって、把持部材32による把持を解除することもできる。
その後、
図7(B)に示すように、第3搬送ローラ対6を再び正転させて、重合シートPJの順方向の搬送を開始する(
図12:ステップS14)。そうすると、第4センサ44によって、重合シートPJの被把持部B(順方向後端、一端側)が検知される。そして、重合シートPJの被把持部B(順方向後端、一端側)が切替爪15上を通過した後に、把持部材32を退避位置から把持位置へ移動させるとともに、切替爪15を待機位置から切替位置に時計方向に回動させる。そして、
図7(B)に示すように、重合シートPJの順方向後端の被把持部Bが剥離爪16の近傍に達したときには、2枚のシートP1、P2の後端が大きく分離して開かれた状態になる。
そして、重合シートPJの順方向後端が第4センサ44によって検知されるタイミングをトリガにして、第3搬送ローラ対6で重合シートPJを所定量X5搬送して停止した後に、
図7(C)に示すように、第3搬送ローラ対6を逆転して重合シートPJの逆方向の搬送を開始する(
図12:ステップS15、S16)。このとき、切替爪15の自由端は、第3搬送経路K3への重合シートPJの進入を遮断する切替位置に位置しているため、剥離された状態の2枚のシートP1、P2は、
図7(C)に示すように、2つの分岐搬送経路K4、K5にそれぞれ導かれていくことになる。このとき、重合シートPJにおける接合部Aの近傍を第3搬送ローラ対6で挟持した状態で搬送停止するために、第5センサ45(
図1参照)によって、重合シートPJの接合部A(逆方向後端、他端側)が検知される。
【0039】
そして、
図8(A)に示すように、重合シートPJの逆方向後端が第5センサ45(
図1参照)によって検知されるタイミングをトリガにして、第3搬送ローラ対6で重合シートPJを所定量X6搬送して停止する(
図12:ステップS17、S18)。このとき、重合シートPJの接合部Aは、第3搬送ローラ対6のニップの位置か、ニップよりも僅かに左方の下流側の位置にある。すなわち、重合シートPJの他端側が第3搬送ローラ対6に挟持された状態である。
そして、
図8(A)に示すように、第2給送トレイ12(
図1参照)からの中シートPMの搬送を開始する(
図12:ステップS19)。このとき、第3センサ43によって、中シートPMの先端(順方向先端、他端側)が検知される。さらに、
図8(B)に示すように、剥離爪16を待機位置に移動させる。
その後、
図8(C)に示すように、中シートPMの順方向先端が第3センサ43によって検知されるタイミングをトリガにして、第2搬送ローラ対5で中シートPMを所定量X7搬送した後に、第3搬送ローラ対6による重合シートPJの順方向の搬送を再開する(
図12:ステップS20、S21)。このとき、中シートPMは、2枚のシートP1、P2の間の所望位置に、精度よく挟まれた状態になる。
こうして、重合シートPJにおける2枚のシートP1、P2の間に中シートPMを挿入する工程が終了する。そして、第3搬送ローラ対6による順方向の搬送によって、中シートPMが挿入された状態の重合シートPJが、排出トレイ13(
図1参照)上に載置されることになる。
【0040】
なお、本実施の形態において、重合シートPJは、
図6(A)の状態において、接合部Aの側の非接合部で2枚のシートP1、P2の間に隙間Cが形成されて、2枚のシートP1、P2が剥離(分離)される。
これに対して、
図6(A)の状態において、重合シートPJが第3搬送ローラ対6によって充分な力で挟まれるようであれば、接合部Aを被把持部Bとしてもよい。すなわち、
図5(A)~(D)において、重合シートPJの接合部Aが把持部材32と受部20bとによって把持された状態で、重合シートPJが巻付けローラ20に巻き付けられ、非接合部側が第3搬送ローラ対6に挟まれて搬送されることになる。このとき、第3搬送ローラ対6の回転により重合シートPJのシートP1、P2がお互いにスリップせず同期して搬送されるようにする。例えば、第3搬送ローラ対6のニップ圧を大きくしたり、ローラ材質を摩擦係数の大きいものにしたり、第3搬送ローラ対6の各々のローラの駆動方法を制御したりすることにより、2枚のシートP1、P2のスリップが生じにくくなり、重合シートPJに所望の隙間Cを形成して2枚のシートP1、P2を剥離(分離)することができる。この場合、重合シートPJ中に中シートPMを挿入するまでの重合シートPJの搬送回数を少なくすることもできる。
【0041】
ここで、
図1、
図13、
図14を参照して、本実施の形態におけるシート剥離装置1には、重合シートPJを搬送方向(
図13の白矢印方向)に対して交差する方向(
図1の左方向であって、
図13の黒矢印方向であって、シート面に対して略直交する方向である。)に屈曲させながらシート剥離部19(巻付けローラ20)に向けて搬送する搬送手段としての屈曲搬送部36が設けられている。
詳しくは、搬送手段としての屈曲搬送部36は、
図13に示すように、ベルト部材としての搬送ベルト36aや、ローラ部材としての対向ローラ36b、などで構成されている。
ベルト部材としての搬送ベルト36aは、2つのローラによって張架・支持されていて、重合シートPJの第1のシートP1に対向する側に設置されている。
ローラ部材としての対向ローラ36bは、搬送ベルト36a(ベルト部材)のベルト面(2つのローラの間に位置するベルト面である。)に圧接して重合シートPJが搬送されるニップを形成するローラ部材である。
これらの屈曲搬送部36を構成する部材は、不図示の駆動機構による駆動によって、それぞれ
図13の矢印方向に回転する。
【0042】
図13に示すように、屈曲搬送部36では、搬送ベルト36aが対向ローラ36bに押圧されて黒矢印方向に撓み、対向ローラ36bの曲率に沿うようなニップが形成されることになる。
そして、このような屈曲搬送部36のニップを、重合シートPJが通過することで、重合シートPJを構成する2枚のシートP1、P2が接合部A以外の部分(非接合部)で互いに強い力で静電的に貼付いてしまっているときなどであっても、シート剥離部19(
図1等参照)によって重合シートPJ(2枚のシートP1、P2)を良好に剥離することができる。
【0043】
詳しくは、重合シートPJは、2枚のシートP1、P2が接合部A以外の部分(非接合部)で互いに強い力で静電的に吸着してしまった状態で、第1給送トレイ11にセットされることがある(又は、第1給送トレイ11にセットされた後に、そのような状態になることがある。)。
このような吸着状態の重合シートPJがそのままシート剥離部19の巻付けローラ20に巻き付けられても、先に
図5(C´)等を用いて説明したような2枚のシートP1、P2の弛み差がほとんど形成されず、2枚のシートP1、P2の間に剥離爪16を挿入可能な充分な隙間Cが形成されなくなってしまう。そのため、重合シートPJ(2枚のシートP1、P2)を充分に剥離することができない不具合(剥離不良)が生じて、中シートPMの挿入処理もできなくなってしまうことになる。
これに対して、本実施の形態では、第1給送トレイ11からシート剥離部19に至る搬送経路中に、屈曲搬送部36で重合シートPJを搬送方向とは異なる方向に屈曲させているため、2枚のシートP1、P2の静電的な吸着力が弱められることになる。そのため、シート剥離部19における重合シートPJの剥離不良が軽減されることになる。
【0044】
ここで、本実施の形態において、屈曲搬送部36(搬送手段)は、
図1(及び、
図16(B))に示すように、湾曲した搬送経路(第1搬送経路K1である。)に設置されている。
このように湾曲した搬送経路K1を通過することで、その湾曲形状に沿うように重合シートPJが湾曲して2枚のシートP1、P2の静電的な吸着力が弱められる。そして、そのような状態の重合シートPJを屈曲搬送部36でさらに屈曲させることで、2枚のシートP1、P2の吸着力がさらに弱められることになる。
特に、本実施の形態において、屈曲搬送部36は、第1搬送経路K1の湾曲方向に対して逆方向に重合シートPJを屈曲させるように配置されている。そのため、重合シートPJは、一方のシート面の側と他方のシート面の側とに交互に曲げられ、吸着力が段階的に減ぜられることになる。
【0045】
ここで、
図14(A)に示すように、本実施の形態において、屈曲搬送部36(搬送手段)は、幅方向(白矢印で示す搬送方向に直交する方向である。)の範囲N(ニップの幅方向範囲である。)が、搬送可能な最大サイズ(例えば、A4横サイズである。)の重合シートPJの幅方向の範囲Mに対して1/2以上を占めるように構成されている。
詳しくは、シート剥離装置1は、すべての搬送経路K1~K5において、シート(重合シートPJや中シートPMである。)のサイズに関わらず、シートの幅方向中央位置Zが一致するようにシートが搬送される(センター基準でシートが搬送される。)。そして、屈曲搬送部36は、そのニップの幅方向中央位置が幅方向中央位置Zに略一致するように設置され、その幅方向範囲Nが最大サイズの重合シートPJの幅方向範囲Mに対して1/2以上を占めるように構成されている。
これは、幅方向範囲Nが幅方向範囲Mに対して1/2未満になると、屈曲搬送部36によって重合シートPJを屈曲させて2枚のシートP1、P2の吸着力を減ずる機能が発揮されにくくなるためである。
本実施の形態では、幅方向範囲Nが幅方向範囲Mに対して1/2以上になるように設定しているため、屈曲搬送部36によって重合シートPJを屈曲させて2枚のシートP1、P2の吸着力を減ずる機能が充分に発揮されて、重合シートPJの剥離不良を減ずる効果も発揮されやすくなる。
【0046】
なお、本実施の形態において、
図14(B)に示すように、屈曲搬送部36(搬送手段)を、幅方向に複数分割することもできる。この場合の「分割」とは、搬送手段において重合シートPJを屈曲させる機能を有する部分の分割である。
具体例として、
図14(B)に示す屈曲搬送部36は、3つの搬送ベルト36aが幅方向に分割して設置されていて、それぞれが対向ローラ36bとの間にニップを形成している。そして、このように屈曲搬送部36を幅方向に分割した場合であっても、屈曲搬送部36の幅方向範囲(この場合、3つの搬送ベルト36aの幅方向範囲N1~N3の総和になる。)が重合シートPJの幅方向範囲Mに対して1/2以上になるように設定することで、屈曲搬送部36によって重合シートPJを屈曲させる機能が充分に発揮されて、重合シートPJの剥離不良を減ずる効果も発揮されやすくなる。
【0047】
<変形例1>
図15(A)に示すように、変形例1における屈曲搬送部36(搬送手段)は、主として、白矢印(及び、破線矢印)で示す搬送方向の離れた位置で重合シートPJの一方の面にそれぞれ対向する2つのローラ部材36c、36dと、2つのローラ部材36c、36dにそれぞれ圧接して重合シートPJが搬送されるニップを形成する圧接ローラ部材36eと、で構成されている。このように構成された屈曲搬送部36によって搬送される重合シートPJは、圧接ローラ部材36eの曲率にならうように屈曲することになる。
また、
図15(B)に示す屈曲搬送部36(搬送手段)は、主として、ローラ部材36gと、ローラ部材36gよりも表面弾性(表面層の弾性である。)が低くなるように形成されるとともにローラ部材36gに圧接して重合シートPJが搬送されるニップを形成する低弾性ローラ部材36fと、で構成されている。このように構成された屈曲搬送部36によって搬送される重合シートPJは、ローラ部材36gの曲率にならうように屈曲することになる。
これらのように構成された屈曲搬送部36を用いた場合にも、第1給送トレイ11からシート剥離部19に至る搬送経路中に、屈曲搬送部36で重合シートPJを屈曲させているため、2枚のシートP1、P2の吸着力が弱められて、シート剥離部19における重合シートPJの剥離不良が軽減される。
【0048】
<変形例2>
図16(A)に示すように、変形例2における屈曲搬送部36(搬送手段)は、
図16(B)に示す本実施の形態のものとは異なり、第1搬送経路K1(湾曲した搬送経路)の湾曲方向に対して同方向に重合シートPJを屈曲させるように配置されている。
そのため、重合シートPJは、一方のシート面の側に集中的に曲げられ、吸着力が一気に減ぜられることになる。
そして、このような屈曲搬送部36を用いた場合にも、シート剥離部19における重合シートPJの剥離不良を軽減することができる。
【0049】
<変形例3>
図17(A)を参照して、変形例3におけるシート剥離装置1は、シート剥離部19(巻付けローラ20)に対して白矢印で示す搬送方向の上流側であって、屈曲搬送部36(搬送手段)に対して搬送方向の上流側に設置された第1搬送ローラ対4が、重合シートPJをシート剥離部19に向けて搬送する第2搬送手段として機能している。
そして、変形例3では、屈曲搬送部36(搬送手段)による第1搬送速度V1(ニップにおける線速度である。)と、第1搬送ローラ対4(第2搬送手段)による第2搬送速度V2(ニップにおける線速度である。)と、に速度差を生じさせている。
そのため、重合シートPJが双方のニップ(屈曲搬送部36のニップと第1搬送ローラ対4のニップとである。)に挟持された状態で、上述した速度差によって重合シートPJが搬送方向に力が加えられて屈曲しやすい状態になる。そのため、屈曲搬送部36によって重合シートPJを屈曲させて2枚のシートP1、P2の吸着力を減ずる機能がさらに発揮されやすくなる。
特に、変形例3では、屈曲搬送部36(搬送手段)と第1搬送ローラ対4(第2搬送手段)とのうち搬送方向の下流側に設置されたものの搬送速度(屈曲搬送部36の第1搬送速度V1である。)を、搬送方向の上流側に設置されたものの搬送速度(第1搬送ローラ対4の第2搬送速度V2である。)に比べて、速くしている(V1>V2)。このようにすることで、重合シートPJが双方4、36のニップに挟持された状態で、上述した速度差によって重合シートPJを搬送方向に引っ張る力が加えられて屈曲しやすい状態になる。そのため、屈曲搬送部36によって重合シートPJを屈曲させて2枚のシートP1、P2の吸着力を減ずる機能がさらに発揮されやすくなる。
これに対して、第1搬送速度V1と第2搬送速度V2との大小関係が交互に逆転するように制御することもできる。具体的に、屈曲搬送部36を駆動する駆動機構は、他の搬送ローラ対を駆動する駆動機構とは別に独立して設けられていて、重合シートPJが双方4、36のニップに挟持された状態で第1搬送速度V1を第2搬送速度V2(固定値)よりも大きくしたり小さくしたり可変できるように構成されている。このようにすることで、重合シートPJが双方4、36のニップに挟持された状態で、上述した大小関係が交互に入れ替わる速度差によって重合シートPJを搬送方向に引っ張る力と縮める力とが交互に加えられて屈曲しやすい状態になる。そのため、屈曲搬送部36によって重合シートPJを屈曲させて2枚のシートP1、P2の吸着力を減ずる機能がさらに発揮されやすくなる。
なお、
図17(B)に示すシート剥離装置1のように、シート剥離部19(巻付けローラ20)に対して搬送方向上流側であって、屈曲搬送部36(搬送手段)に対して搬送方向下流側に設置された第2搬送ローラ対5を第2搬送手段として機能させる場合にも、屈曲搬送部36(搬送手段)による第1搬送速度V1と、第2搬送ローラ対5(第2搬送手段)による第2搬送速度V2と、に速度差を生じさせることで、同じような効果を得ることができる。
【0050】
<変形例4>
図18に示すように変形例4としてのラミネート処理装置50は、
図1に示すシート剥離装置1が内蔵されている。
そして、ラミネート処理装置50には、シート剥離装置1の第3搬送ローラ対6の下流側(順方向下流側)に、シート剥離装置1によって剥離された2枚のシートP1、P2の間に中シートPMが挿入された状態の重合シートPJにラミネート処理を施すラミネート処理部51が設けられている。
ラミネート処理部51には、中シートPMが挿入された状態の重合シートPJを順方向に搬送しながら、その重合シートPJに熱と圧力とを与える熱加圧ローラ対が複数設置されている。ラミネート処理部51を通過した重合シートPJは、中シートPMが内部に挿入された状態で全域が接合されることになる。そして、そのようにラミネート処理が施された重合シートPJは、排出ローラ対7によって装置外に排出されて、排出トレイ13上に載置されることになる。
このように、変形例4におけるラミネート処理装置50は、シートPJ、PMを給送する工程と、重合シートPJの2枚のシートP1、P2を剥離する工程と、剥離した2枚のシートP1、P2の間に中シートPMを挿入する工程と、中シートPMが挿入された状態の重合シートPJにラミネート処理を施す工程と、が一連の動作としておこなわれるため、ユーザーの利便性を高めることができる。
特に、重合シートPの先端面が傷ついてしまうと、その部分をラミネート処理しようとしても、しにくくなってしまうため、本発明の構成が有用になる。
そして、変形例4におけるラミネート処理装置50にも、搬送手段としての屈曲搬送部36が設置されているため、重合シートPJを構成する2枚のシートP1、P2を良好に剥離することができる。
【0051】
<変形例5>
図19に示すように変形例5としての画像形成装置100は、シートPに画像を形成する画像形成装置本体に、
図18に示すラミネート処理装置50が設置されている。
図19を参照して、画像形成装置100において、まず、原稿Dが、原稿搬送装置110の搬送ローラによって、原稿台から図中の矢印方向に搬送(給送)されて、原稿読込装置102上を通過する。このとき、原稿読込装置102では、上方を通過する原稿Dの画像情報が光学的に読み取られる。
そして、原稿読込装置102で読み取られた光学的な画像情報は、電気信号に変換された後に、書込み装置103に送信される。そして、書込み装置103から、その電気信号の画像情報に基づいたレーザ光が、色ごとに、それぞれの感光体ドラム105Y、105M、105C、105K上に向けて発せられ、露光工程がおこなわれる。
そして、それぞれの作像部104Y、104M、104C、104Kの感光体ドラム105Y、105M、105C、105K上で帯電工程、露光工程、現像工程がおこなわれて、感光体ドラム105Y、105M、105C、105K上に所望の画像がそれぞれ形成される。
その後、感光体ドラム105Y、105M、105C、105K上にそれぞれ形成された画像は、カラー画像として中間転写ベルト178上に重ねて転写される。さらに、中間転写ベルト178上に形成されたカラー画像は、2次転写ローラ189との対向位置で、給送装置112から給送ローラ197によって給送され搬送されたシートP(中シートPMとなるシートである。)に転写される。
その後、カラー画像が転写されたシートP(中シートPM)は、定着装置120の位置に搬送される。そして、表面に転写されたカラー画像がシートP上に定着される。
その後、シートPは排出ローラ対131によって画像形成装置本体100から排出されて、中シートPMとしてラミネート処理装置50に送入される。このとき、ラミネート処理装置50(シート剥離装置1)では、先に
図4~
図7を用いて説明した工程(重合シートPJを剥離する工程である。)が終了していて、ラミネート処理装置50(シート剥離装置1)に中シートPMが挿入された後に
図8を用いて説明した工程(重合シートPJに中シートPMを挿入する工程である。)がおこなわれることになる。さらに、中シートPMが挿入された重合シートPMに対するラミネート処理がラミネート処理部51でおこなわれた後に、その重合シートPJが排出ローラ対7によって装置外に排出されて排出トレイ13上に載置されることになる。
こうして、画像形成装置1における一連の画像形成プロセス(印刷動作)と、画像形成された中シートPMを用いた一連のシート剥離処理及びラミネート処理と、が完了することになる。
なお、変形例5では、画像形成装置100にラミネート処理装置50を設置したが、画像形成装置100に
図1に示すシート剥離装置1を設置することもできる。
また、変形例5では、カラーの画像形成装置100に対して本発明を適用したが、モノクロの画像形成装置に対しても当然に本発明を適用することができる。また、変形例5では、電子写真方式の画像形成装置100に対して本発明を適用したが、本発明の適用はこれに限定されることなく、その他の方式の画像形成装置(例えば、インクジェット方式の画像形成装置や、孔版印刷機などである。)に対しても本発明を適用することができる。
そして、変形例5における画像形成装置100のラミネート処理装置50にも、搬送手段としての屈曲搬送部36が設置されているため、重合シートPJを構成する2枚のシートP1、P2を良好に剥離することができる。
【0052】
<変形例6>
図20に示すように変形例6としての画像形成システム200は、
図19に示すシートPに画像を形成する画像形成装置100に対して、
図18に示すラミネート処理装置50が着脱可能に設置されている。
図20を参照して、画像形成システム200において、先に
図18を用いて説明した画像形成プロセスを経て、画像形成装置100の排出ローラ対131から排出されたシートP(所望の画像が形成された中シートPMである。)は、ラミネート処理装置50に送入された後に、同じように重合シートPJに挿入されて、その後にラミネート処理が施され、排出ローラ対7によって排出されて排出トレイ13上に載置されることになる。
また、そのようなラミネート処理を施さないモードが選択された場合には、画像形成システム200において、画像形成プロセスを経て画像が形成されたシートPは、画像形成装置100の第2の排出ローラ対132から装置外に排出されて、第2の排出トレイ150上に載置されることになる。
ここで、ラミネート処理装置50は、画像形成装置100に対して着脱可能に設置されていて、ラミネート処理装置50が不要であるときには、画像形成装置100から取り外すことができる。そして、そのようにラミネート処理装置50を取り外した場合には、ラミネート処理装置50が載置されていた載置面149が排出トレイとして機能して、排出ローラ対131から装置外に排出されたシートP(所望の画像が形成されたシートPである。)が載置されることになる。
なお、変形例6においては、画像形成システム200にラミネート処理装置50を着脱可能に設置したが、画像形成システム200に
図1に示すシート剥離装置1を着脱可能に設置することもできる。
そして、変形例5における画像形成システム200のラミネート処理装置50にも、搬送手段としての屈曲搬送部36が設置されているため、重合シートPJを構成する2枚のシートP1、P2を良好に剥離することができる。
【0053】
なお、変形例6における画像形成システム200は、画像形成装置100における原稿搬送装置110の下方に形成された空間に、ラミネート処理装置50を着脱可能に設置した。
これに対して、
図21(A)に示す画像形成システム200のように、画像形成装置100の側方(画像形成後のシートPが排出される側の側方である。)に、ラミネート処理装置50を着脱可能に設置することもできる。その場合、ラミネート処理装置50において、重合シートPJが積載される第1給送トレイ11を最上部に配置して、上方から下方に向けてシート剥離部19(巻付けローラ20)、ラミネート処理部51、排出トレイ13などを順次配置することもできる。また、ラミネート処理装置50に、画像形成装置100から排出された中シートPMをシート剥離部19(巻付けローラ20)に導くための搬送経路とは別に、画像形成装置100から排出されたシートPをラミネート処理を施すことなく排出するための搬送経路(搬送ローラ対58、59)を設けることもできる。
また、画像形成装置100から排出されたシートP(中シートPMとなるものも含む。)をラミネート処理装置50に導くための中継装置300を設置することもできる。その場合、その中継装置300から中シートPMを給送できるように構成することもできる。
また、
図21(B)に示す画像形成システム200のように、画像形成装置100からラミネート処理装置50を通過して排出されたシートP(ラミネート処理が施されていないものである。)に対して、パンチ処理やステイプル処理などの後処理を施すための後処理装置400を設置することもできる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態におけるシート剥離装置1は、2枚のシートP1、P2が重ね合されて接合部Aで接合された重合シートPJの非接合部を剥離するシート剥離部19が設けられている。また、重合シートPJを搬送方向に対して交差する方向に屈曲させながらシート剥離部19に向けて搬送する屈曲搬送部36(搬送手段)が設けられている。
これにより、重合シートPJを構成する2枚のシートP1、P2を良好に剥離することができる。
【0055】
なお、本発明が本実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、本実施の形態の中で示唆した以外にも、本実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は本実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 シート剥離装置、
6 第3搬送ローラ対(搬送ローラ対)、
15 切替爪(切替部材)、
16 剥離爪(剥離部材)、
19 シート剥離部、
20 巻付けローラ、
36 屈曲搬送部(搬送手段)、
36a 搬送ベルト(ベルト部材)、 36b 対向ローラ(ローラ部材)、
36c、36d ローラ部材、 36e 圧接ローラ部材、
36f 低弾性ローラ部材、 36g ローラ部材、
50 ラミネート処理装置、
100 画像形成装置(画像形成装置本体)、
200 画像形成システム、
P、P1、P2 シート、
PM 中シート、
PJ 重合シート、 A 接合部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0057】