(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009512
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】2次冷媒の冷却循環装置及び冷却循環方法
(51)【国際特許分類】
F25B 27/00 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
F25B27/00 Z
F25B27/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021112868
(22)【出願日】2021-07-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】米倉 正浩
(57)【要約】 (修正有)
【課題】装置コストが安価であり、安定的な循環を行うことができる2次冷媒の冷却循環方法及び冷却循環装置を提供する。
【解決手段】冷却循環装置1は、液化ガス供給ライン2と、2次冷媒を液体として貯留する2次冷媒リザーブタンク5と、2次冷媒リザーブタンク5から供給される2次冷媒を循環させる2次冷媒循環ライン8と、液化ガス供給ライン2の液化ガスと2次冷媒循環ライン8の2次冷媒とを熱交換する2次冷媒熱交換器9とを備え、液化ガス供給ライン2は2次冷媒熱交換器9に導出された後に、2次冷媒リザーブタンク5内に挿通されて、2次冷媒リザーブタンク5に供給された2次冷媒を凝縮して液化させる2次冷媒凝縮部17を形成し、液化ガス供給ライン2に2次冷媒リザーブタンク5内に貯留する2次冷媒の液面の高さに応じて制御状態が切り替わる温度制御弁14を設けている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化ガスと熱交換することにより冷却された2次冷媒を負荷部に循環供給する2次冷媒の冷却循環装置において、
液化ガスを供給する液化ガス供給ラインと、
2次冷媒を液体として貯留する2次冷媒リザーブタンクと、
前記2次冷媒リザーブタンクから供給される2次冷媒を循環させる2次冷媒循環ラインと、
前記液化ガス供給ラインの液化ガスと前記2次冷媒循環ラインの2次冷媒とを熱交換させて2次冷媒を冷却する2次冷媒熱交換器と、を備え、
前記液化ガス供給ラインは、前記2次冷媒熱交換器に導出された後に、前記2次冷媒リザーブタンク内に挿通されて、前記2次冷媒リザーブタンクに供給された2次冷媒を凝縮して液化させる2次冷媒凝縮部を形成し、
前記液化ガス供給ラインに、前記2次冷媒リザーブタンク内に貯留する2次冷媒の液面のあらかじめ設定された高さに応じて制御状態が切り替わる温度制御弁を設けたことを特徴とする2次冷媒の冷却循環装置。
【請求項2】
前記2次冷媒循環ラインの2次冷媒と前記負荷部の熱流体とを熱交換させて熱流体を冷却する負荷部熱交換器をさらに備え、
前記負荷部熱交換器における前記2次冷媒循環ラインの流通位置を、前記制御状態を切り替えるためのあらかじめ設定された前記2次冷媒リザーブタンク内の2次冷媒の液面の高さのうちの最低位置よりも低い位置とすることを特徴とする請求項1記載の冷却循環装置。
【請求項3】
前記2次冷媒循環ラインから分岐して前記2次冷媒リザーブタンクに液体の2次冷媒を戻す2次冷媒バイパスラインと気体の2次冷媒を戻す2次冷媒ガス抜きラインを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の冷却循環装置。
【請求項4】
請求項2又は3記載の冷却循環装置を用いて、2次冷媒を負荷部に循環供給する2次冷媒の冷却循環方法において、
前記2次冷媒リザーブタンク内の2次冷媒の液面の高さが、前記最低位置よりも下の位置にあるときは、前記2次冷媒リザーブタンク内に貯留された2次冷媒の温度に基づいて前記温度制御弁の開閉を制御し、
前記2次冷媒リザーブタンク内の2次冷媒の液面の高さが、前記最低位置よりも上の位置にあるときは、2次冷媒循環ラインを流通する2次冷媒の温度に基づいて前記温度制御弁の開閉を制御することを特徴とする2次冷媒の冷却循環方法。
【請求項5】
前記2次冷媒リザーブタンク内の2次冷媒の液面の高さが、前記制御状態を切り替えるためのあらかじめ設定された高さのうちの最高位置よりも上の位置にあるときは、当該2次冷媒リザーブタンクへの2次冷媒の供給を停止することを特徴とする請求項4記載の2次冷媒の冷却循環方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次冷媒の冷却循環装置及び冷却循環方法に関し、詳しくは、2次冷媒を冷却しながら循環して負荷部との熱交換を行う装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体窒素等の低温液化ガスの持つ寒冷を利用して、液体状態の2次冷媒を循環制御し、負荷部を低温に維持する方法及び当該方法に用いられる装置が知られている(特許文献1、2を参照。)。当該装置の一例を
図2に示す。上記方法においては、2次冷媒が液体であるために、制御温度の下限値が当該液体の凍結温度よりも高い必要があり、この点において限界があった。また、負荷部51においてより低い温度が求められる場合、2次冷媒として常温常圧下では気体で、比較的液化しやすい冷媒を用いると、その冷却下限温度は、常温常圧下で液体の冷媒よりも低い温度で制御及び循環できる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4068108号公報
【特許文献2】特許第5306708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、低温液化ガスの寒冷を利用して、比較的液化しやすい気体である2次冷媒を冷却循環する場合、当該2次冷媒を液化する部分(気液分離部52)と、さらに冷却して循環させる部分(熱交換器53)とが必要となり、その上で各々に精密な制御が可能な連続制御盤が必要となり、コスト的に高価なものとなっていた。また、2次冷媒が液体(液化ガス)の循環であるため、循環ポンプの吐出側や負荷部の負荷供与側等で気化しやすい条件においては、経路中でベーパーロックを生じる可能性があるので、安定的な循環を行うには、更なる工夫が必要であった。
【0005】
以上の点に鑑みて、本発明は、全体的に見て装置コストが安価であり、安定的な循環を行うことができる2次冷媒の冷却循環方法及び冷却循環装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の発明は、液化ガスと熱交換することにより冷却された2次冷媒を負荷部に循環供給する2次冷媒の冷却循環装置において、液化ガスを供給する液化ガス供給ラインと、2次冷媒を液体として貯留する2次冷媒リザーブタンクと、前記2次冷媒リザーブタンクから供給される2次冷媒を循環させる2次冷媒循環ラインと、前記液化ガス供給ラインの液化ガスと前記2次冷媒循環ラインの2次冷媒とを熱交換させて2次冷媒を冷却する2次冷媒熱交換器とを備え、前記液化ガス供給ラインは、前記2次冷媒熱交換器に導出された後に、前記2次冷媒リザーブタンク内に挿通されて、前記2次冷媒リザーブタンクに供給された2次冷媒を凝縮して液化させる2次冷媒凝縮部を形成し、前記液化ガス供給ラインに、前記2次冷媒リザーブタンク内に貯留する2次冷媒の液面のあらかじめ設定された高さに応じて制御状態が切り替わる温度制御弁を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明の第2の発明は、前記第1の発明において、前記2次冷媒循環ラインの2次冷媒と前記負荷部の熱流体とを熱交換させて熱流体を冷却する負荷部熱交換器をさらに備え、前記負荷部熱交換器における前記2次冷媒循環ラインの流通位置を、前記制御状態を切り替えるためのあらかじめ設定された前記2次冷媒リザーブタンク内の2次冷媒の液面の高さのうちの最低位置よりも低い位置とすることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の第3の発明は、前記第1又は第2の発明において、前記2次冷媒循環ラインから分岐して前記2次冷媒リザーブタンクに液体の2次冷媒を戻す2次冷媒バイパスラインと気体の2次冷媒を戻す2次冷媒ガス抜きラインを設けたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明の第4の発明は、上記第2又は第3の発明である冷却循環装置を用いて、2次冷媒を負荷部に循環供給する2次冷媒の冷却循環方法において、前記2次冷媒リザーブタンク内の2次冷媒の液面の高さが、前記最低位置よりも下の位置にあるときは、前記2次冷媒リザーブタンク内に貯留された2次冷媒の温度に基づいて前記温度制御弁の開閉を制御し、前記2次冷媒リザーブタンク内の2次冷媒の液面の高さが、前記最低位置よりも上の位置にあるときは、2次冷媒循環ラインを流通する2次冷媒の温度に基づいて前記温度制御弁の開閉を制御することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の第5の発明は、前記第4の発明において、前記2次冷媒リザーブタンク内の2次冷媒の液面の高さが、前記制御状態を切り替えるためのあらかじめ設定された高さのうちの最高位置よりも上の位置にあるときは、当該2次冷媒リザーブタンクへの2次冷媒の供給を停止することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の2次冷媒の冷却循環方法及び冷却循環装置によれば、従来と比べて、液化ガス供給ラインが2次冷媒凝縮部を形成していることで、その構成を簡略化されていることにより、全体的な装置構成を簡素なものにできるので、装置コストを全体的に安価に抑えることができる。また、循環経路中において2次冷媒ガス抜きラインを設けることによって、気化によるベーパーロック等を生じずに、2次冷媒の安定的な循環を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一形態例である2次冷媒の冷却循環装置を示す図である。
【
図2】従来の冷媒循環型冷却装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の形態例である2次冷媒の冷却循環装置1を示すものである。当該冷却循環装置1は、液化ガス供給ライン2、2次冷媒供給ライン3、窒素ガス供給ライン4、2次冷媒リザーブタンク5、窒素及び2次冷媒排気ライン6、2次冷媒流下ライン7、2次冷媒循環ライン8、2次冷媒熱交換器9、負荷部10、負荷部熱交換器11、2次冷媒バイパスライン12、2次冷媒ガス抜きライン13から概略構成されている。
【0014】
液化ガス供給ライン2は、2次冷媒を熱交換によって凝縮、液化するための液化ガス(液体窒素など)を供給する経路であり、温度制御弁(TCV)14、温度指示調節器(TIC)15、16が設けられている。当該液化ガス供給ライン2は、後述する2次冷媒リザーブタンク5に挿通しており、当該2次冷媒リザーブタンク5内において、熱交換を行う2次冷媒凝縮部17を形成している。また、上記液化ガス供給ライン2は、2次冷媒リザーブタンク5から抜き出された後は、熱交換後の液化ガスを排気する液化ガス排気ライン18を形成している。前記TCV14は、TIC15、16及び後述するTIC21、26、流量計(FIT)27と接続されており、これらによって開閉が制御されている。この様に、液化ガスの供給ライン2が、後述する2次冷媒熱交換器9への供給ラインと2次冷媒凝縮部17を兼ねていることで、装置構成を簡略化でき、全体の装置コストを安価なものとすることができる。なお、2次冷媒リザーブタンク5内において、2次冷媒凝縮部17が2次冷媒の液面と接触しないように配置する。
【0015】
2次冷媒供給ライン3は、供給元(図の左側)から2次冷媒を後述する2次冷媒リザーブタンク5に供給する経路であり、途中に圧力制御弁(PCV)19が設けられている。
【0016】
窒素ガス供給ライン4は、2次冷媒とともに2次冷媒リザーブタンク5の気相部に封入される窒素ガスを供給する経路であり、途中に圧力制御弁(PCV)20が設けられている。
【0017】
2次冷媒リザーブタンク5は、2次冷媒供給ライン3によって供給された2次冷媒を、2次冷媒凝縮部17によって液化し、液相となった2次冷媒を貯留するタンクである。当該2次冷媒リザーブタンク5の壁面には、温度指示調節器(TIC)21、液面指示警報計(LIA)22が設けられている。TIC21は、液化ガス供給ライン2のTCV14に接続されている。また、LIA22には、タンク5内の2次冷媒の液面を検知するために、あらかじめ設定された最低位置(L)と最高位置(H)に対応するセンサが設けられており、液面がLより上になると、後述する2次冷媒流下ライン7への2次冷媒の流下を開始し、液面がHより上になると、警報を発令してPCV19を閉じて2次冷媒のタンク5への供給を停止するようになっている。
【0018】
窒素及び2次冷媒排気ライン6は、2次冷媒リザーブタンク5の上部において、気相の2次冷媒及び窒素ガスが当該タンク5内部で一定圧以上となった場合に排出されるための経路であり、途中に圧力制御弁(PCV)23、逆止弁(CV)24が設けられている。
【0019】
2次冷媒流下ライン7は、2次冷媒リザーブタンク5の底部に貯留した2次冷媒を、後述する2次冷媒循環ライン8に供給する経路であり、一端が2次冷媒リザーブタンク5に接続されており、他端が2次冷媒循環ライン8に接続されている。
【0020】
2次冷媒循環ライン8は、上記2次冷媒リザーブタンク5において液化した2次冷媒を後述する負荷部熱交換器11において用いるために循環させる経路であり、途中に循環ポンプ(RP)25、温度指示調節器(TIC)26、流量計(FIT)27が設けられている。RP25は前記2次冷媒リザーブタンク5のLIA22と接続されており、タンク内の液面位置がLより上である場合においてのみ起動するようになっている。また、TIC26とFIT27は前記TCV14に接続されている。
【0021】
2次冷媒熱交換器9は、液化ガス供給ライン2に供給される液化ガスと、2次冷媒循環ライン8に供給される2次冷媒とを熱交換し、2次冷媒循環ライン8中の2次冷媒をより低温とするための熱交換器である。
【0022】
負荷部熱交換器11は、2次冷媒循環ライン8に供給される2次冷媒と負荷部10において生じた熱流体を熱交換することにより、該熱流体をより低温とすることで、前記負荷部10における負荷を低減するための熱交換器である。負荷部熱交換器11における2次冷媒循環ライン8の液面位置は、2次冷媒リザーブタンク5の液面の最低位置(L)よりも高さhだけ低くなっている(
図1を参照。)。
【0023】
2次冷媒バイパスライン12は、2次冷媒循環ライン8におけるRP25の直後の分岐点28において、2次冷媒を2次冷媒リザーブタンク5の液相部分に戻すための経路である。当該2次冷媒バイパスライン12を用いて2次冷媒を2次冷媒リザーブタンク5に戻して循環することで、RP25の空運転を防止し、RP25の起動を適切に保つことで、RP25を保護する働きがある。
【0024】
2次冷媒ガス抜きライン13は、2次冷媒バイパスライン12からさらに分岐されて、2次冷媒を2次冷媒リザーブタンク5の気相部分に戻すことで、2次冷媒中に生じた気体を放出するための経路である。当該2次冷媒ガス抜きライン13を用いて循環中の2次冷媒中の気体を放出することによって、2次冷媒循環ライン8の経路内でのキャビテーションやベーパーロックの発生を防止する働きがある。
【0025】
以上のように構成された冷却循環装置1を用いて、本発明の冷却循環方法は、以下のように行われる。
【0026】
まず、2次冷媒供給ライン3において、ガス化した2次冷媒が、PCV19を経て、2次冷媒リザーブタンク5に供給される。
【0027】
その一方で、液化ガス供給ライン2において、液化ガス(液体窒素など)が、TCV14を経て供給される。当該液化ガス供給ライン2は前記2次冷媒リザーブタンク5に挿通しており、当該2次冷媒リザーブタンク5中では、2次冷媒凝縮部17として機能する。
【0028】
ガス化した2次冷媒は、2次冷媒リザーブタンク5内で、上記2次冷媒凝縮部17と接触して熱交換が行われ、液化し、タンク底部に流下する。この際、2次冷媒リザーブタンク5内の気相部分には、窒素ガス供給ライン4からPCV20を経て供給される窒素ガスが封入されており、不活性状態が保持されている。その上で、液化した2次冷媒(液相部分)は2次冷媒リザーブタンク5の底部に貯留される。また、液化しなかった2次冷媒(気相部分)は、2次冷媒リザーブタンク5内が一定圧以上になると、PCV23が開き、封入された窒素ガスと共に、窒素及び2次冷媒排気ライン6から排出される。一方、2次冷媒凝縮部17を流れる液化ガスは熱交換によって気化し、液化ガス排気ライン18から排気される。
【0029】
2次冷媒リザーブタンク5の底部に貯留された2次冷媒については、該タンク5の壁面に設けられたLIA22によって、液面位置が検知されている。液面位置がLより下の位置の場合は、同じ壁面に設けられたTIC21によってTCV14が制御されている。この際、TIC15の示す温度が設定値(例えば-100℃)以上であれば問題ないが、設定値以下である場合において、TCV14は強制的に遮断され、2次冷媒熱交換器9内で2次冷媒が凍結してしまうのを防止するようになっている。
【0030】
タンク5内での2次冷媒の貯留が進み、液面位置がLより上の位置になった場合は、2次冷媒リザーブタンク5内に十分量の2次冷媒が存在しているものと解して、RP25が起動し、2次冷媒流下ライン7を経由して、2次冷媒循環ライン8に2次冷媒が流通するようになる。当該2次冷媒循環ライン8を流通する2次冷媒の温度及び流量は、TIC26及びFIT27によって確認することができる。
【0031】
2次冷媒の流通がある程度進み、FIT27の示す値が一定値に到達すると、それまでTIC21によって制御されていたTCV14が、TIC26による制御に切り替わる。つまり、2次冷媒循環ライン8を流通する2次冷媒の状態に応じて、TCV14の制御元が切り替えられる。
【0032】
その後、液化ガス供給ライン2での液化ガスの流通が進み、液化ガスの温度が、TIC16における設定値(例えば-160℃)以下になると、TCV14は再度強制的に遮断され、2次冷媒熱交換器9内で2次冷媒が凍結してしまうのを防止するようになっている。
【0033】
その後、2次冷媒リザーブタンク5内に十分量の2次冷媒が貯留され、液面位置がHよりも上の位置になると、LIA22によって警報が発令されると同時に、PCV19が制御され、2次冷媒リザーブタンク5への2次冷媒の供給が停止される。
【0034】
一方、2次冷媒循環ライン8では、2次冷媒がRP25によって循環している。RP25を通過した直後の2次冷媒は、分岐点28において一部が分岐する。当該分岐点28から、2次冷媒バイパスライン12と2次冷媒ガス抜きライン13とが、2次冷媒リザーブタンク5に接続されており、両者はそれぞれ、2次冷媒リザーブタンク5の液相部分と気相部分に接続されている。
【0035】
2次冷媒バイパスライン12を通過した2次冷媒は、2次冷媒リザーブタンク5の液相部分に戻され、2次冷媒流下ライン7を経て再度2次冷媒循環ライン8に供給され、RP25を通過する。この様に2次冷媒を循環することで、RP25の空運転を防止し、RP25を適切に起動して、保護する働きがある。
【0036】
2次冷媒ガス抜きライン13を通過した2次冷媒は、2次冷媒リザーブタンク5の気相部分に戻され、2次冷媒中の気体が2次冷媒リザーブタンク5の気相部分で分離されるようになっている。この様にして循環中の2次冷媒中の気体を放出することによって、2次冷媒循環ライン8の経路内におけるキャビテーションやベーパーロックの発生を防止する働きがある。
【0037】
2次冷媒循環ライン8を循環する2次冷媒は、TIC26及びFIT27によって温度及び流量が制御されており、負荷部熱交換器11において、負荷部10との熱交換を効率的に行うことができる。すなわち、負荷部10の冷却を効率的に行うことができるようになっている。なお、前記TIC26による2次冷媒の温度制御は、当該TIC26と接続されているTCV14の開閉を制御することによって行われる。
【0038】
また、負荷部熱交換器11における2次冷媒の流通位置を、2次冷媒リザーブタンク5の液面位置Lよりも低い位置に配置すると(
図1を参照。)、負荷部熱交換器11での熱交換により気化した2次冷媒が、その高低差hから2次冷媒流下ライン7を介して2次冷媒リザーブタンク5内において放出されやすくなる。また、併設されている2次冷媒ガス抜きライン13を介しても、2次冷媒が2次冷媒リザーブタンク5内において放出されやすくなる。そのため、2次冷媒循環ライン8の経路中におけるベーパーロックの発生を避けることができるので、2次冷媒の安定的な循環を行うことができるようになる。
【実施例0039】
2次冷媒として四フッ化メタンを、液化ガスとして液体窒素を用いた場合について説明する。四フッ化メタンは大気圧での沸点-128℃、大気圧での凝固点-184℃、臨界点の温度-45.6℃、臨界点の圧力3.7MPaであり、-80℃雰囲気で容易に液化する液化ガスである。
【0040】
図1の冷却循環装置1に四フッ化メタンを適用する際、2次冷媒リザーブタンク5内を予め窒素ガスで十分パージしておき、水分が混入しないように注意する。
【0041】
次に、TIC21の設定値を-80℃として、液体窒素をTCV14を通じて液化ガス供給ライン2に供給する。この時、TIC15の設定値は、四フッ化メタンの凝固点より十分高い温度である-100℃とした。次に、PCV19で1.0MPa程度に減圧した四フッ化メタン(沸点約-75℃)を、2次冷媒リザーブタンク5に供給し、2次冷媒凝縮部17で液体窒素との熱交換により徐々に液化させる。液化した四フッ化メタンは、2次冷媒リザーブタンク5底部から、2次冷媒流下ライン7を経て、2次冷媒循環ライン8に供給され始める。液化量がさらに増えると、2次冷媒リザーブタンク5底部に貯留し始め、当該タンク5内で液面が徐々に上昇する。
【0042】
液面が上昇して、LIA22のLより上の位置になったことが検知されると、RP25が起動して、四フッ化メタンが2次冷媒循環ライン8内で循環し、まず2次冷媒熱交換器9により液体窒素と熱交換を行った後、負荷部熱交換器11に供給され、負荷部10との熱交換が行われる。
【0043】
2次冷媒リザーブタンク5内の液面がさらに上昇し、LIA22のHまで到達すると、警報が発令され、2次冷媒の供給元(図の左側)やPCV19が閉じられて、タンク5への2次冷媒の供給が停止される。
【0044】
その一方、2次冷媒循環ライン8では、四フッ化メタンの流量はFIT27で検出されるが、当該流量が設定値に到達すると、それまでTIC21によって制御されていたTCV14が、TIC26による制御に切り替わり、四フッ化メタンは設定値(例えば-150℃)まで冷却される。この時、液体窒素が液体のまま排出されないように、TIC16の設定値は、先の設定値よりもさらに低い温度(例えば-160℃)に設定される。そのため、四フッ化メタンは液体の状態を保ちつつ十分に冷却される。十分に冷却された四フッ化メタンは、負荷部熱交換器11において負荷部10との熱交換により液温がある程度上昇した後、2次冷媒熱交換器9に循環されて再度冷却されるというサイクルを繰り返す。この様にして循環供給が行われるため、四フッ化メタンを液体状態で安定的に冷却循環することができる。
【0045】
なお、循環する四フッ化メタンについては、分岐点28において、2次冷媒バイパスライン及び2次冷媒ガス抜きライン13が設けられているため、一部の液相部分及び気相部分を2次冷媒リザーブタンク5に戻すことができ、より安定的な循環供給を行うことが可能である。
【0046】
また、負荷部10の負荷供与が大きい場合、負荷部熱交換器11において四フッ化メタンが一部気化して経路内に留まり、ベーパーロックを生じる可能性がある。しかし、本発明の冷却循環装置1においては、負荷部熱交換器11における2次冷媒循環ライン8の流通位置を2次冷媒リザーブタンク5のLの位置よりも低い位置に設定しているため(
図1のhを参照。)、その高低差hから気化した四フッ化メタンが2次冷媒流下ライン7を通じて2次冷媒リザーブタンク5に戻りやすくなっている。また、併設されている2次冷媒ガス抜きライン13を通じても2次冷媒リザーブタンク5に戻りやすくなっている。そのため、四フッ化メタンの循環がより安定化している。
【0047】
なお、上記実施例において、2次冷媒として四フッ化メタンを用いているが、その他の液化ガスや揮発性の高い液体(フッ素系溶剤等)を用いることも可能である。また、液化ガスとして液体窒素を用いているが、その他の液化ガスを用いることも可能である。また、2次冷媒循環ライン8において、温度指示調節器26や流量計27の設けられる位置は必ずしも決まっておらず、2次冷媒が支障なく循環されるように設置されていればよい。
1・・・冷却循環装置、2・・・液化ガス供給ライン、3・・・2次冷媒供給ライン、4・・・窒素ガス供給ライン、5・・・2次冷媒リザーブタンク、6・・・窒素及び2次冷媒排気ライン、7・・・2次冷媒流下ライン、8・・・2次冷媒循環ライン、9・・・2次冷媒熱交換器、10・・・負荷部、11・・・負荷部熱交換器、12・・・2次冷媒バイパスライン、13・・・2次冷媒ガス抜きライン、14・・・温度制御弁(TCV)、15・・・温度指示調節器(TIC)、16・・・温度指示調節器(TIC)、17・・・2次冷媒凝縮部、18・・・液化ガス排気ライン、19・・・圧力制御弁(PCV)、20・・・圧力制御弁(PCV)、21・・・温度指示調節器(TIC)、22・・・液面指示警報計(LIA)、23・・・圧力制御弁(PCV)、24・・・逆止弁(CV)、25・・・循環ポンプ(RP)、26・・・温度指示調節器(TIC)、27・・・流量計(FIT)、28・・・分岐点、51・・・負荷部、52・・・気液分離部、53・・・熱交換器、h・・・高低差