(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095161
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】バイオマス固形燃料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C10L 5/44 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
C10L5/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210890
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521565280
【氏名又は名称】マースハッパイ ウィルヘルミナ エヌ ヴィー
【氏名又は名称原語表記】Maatschappij Wilhelmina N.V.
【住所又は居所原語表記】Keizersgracht 555 1017 DR Amsterdam The Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】古園 拓也
(72)【発明者】
【氏名】武田 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】河本 直毅
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ジェームズ スカルゾ
(72)【発明者】
【氏名】バートホールド アシューエールス ヴァン ドーン
(72)【発明者】
【氏名】デービッド ヒール
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA03
4H015AA12
4H015AA13
4H015AB01
4H015BA09
4H015BA13
4H015BB03
4H015BB04
4H015BB05
4H015BB06
4H015BB10
4H015BB13
4H015CA03
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】CODの溶出が低減され、さらに塩素及びアルカリ成分が低減されたバイオマス固形燃料を製造できるバイオマス固形燃料の製造方法を提供すること。
【解決手段】バイオマスを水蒸気爆砕して爆砕済バイオマスを得る工程と、水蒸気爆砕の後に前記爆砕済バイオマスを洗浄する後洗浄工程と、洗浄された前記爆砕済バイオマスを乾燥する乾燥工程と、乾燥された前記爆砕済バイオマスを成型してバイオマスペレットを得る工程と、前記バイオマスペレットを180℃以上で5分以上加熱するペレット加熱工程と、を有する、バイオマス固形燃料の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスを水蒸気爆砕して爆砕済バイオマスを得る工程と、
水蒸気爆砕の後に前記爆砕済バイオマスを洗浄する後洗浄工程と、
洗浄された前記爆砕済バイオマスを乾燥する乾燥工程と、
乾燥された前記爆砕済バイオマスを成型してバイオマスペレットを得る工程と、
前記バイオマスペレットを180℃以上で5分以上加熱するペレット加熱工程と、を有する、
バイオマス固形燃料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオマス固形燃料の製造方法において、
前記爆砕済バイオマスを得る工程の前に、前記バイオマスを洗浄する前洗浄工程を有する、
バイオマス固形燃料の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバイオマス固形燃料の製造方法において、
前記バイオマスペレットを得る工程の前に、前記後洗浄工程で生じた前記爆砕済バイオマスの微粉を、前記爆砕済バイオマスに添加する添加工程を有し、
前記バイオマスペレットを得る工程は、前記微粉が添加された前記爆砕済バイオマスを成型する、
バイオマス固形燃料の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のバイオマス固形燃料の製造方法において、
前記水蒸気爆砕は、密閉容器中で、100℃以上300℃以下、0.1MPa以上9.0MPa以下の飽和水蒸気下で行う、
バイオマス固形燃料の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のバイオマス固形燃料の製造方法において、
前記ペレット加熱工程は、酸素濃度5質量%以下の雰囲気において、前記バイオマスペレットを180℃以上で5分以上60分以下加熱する、
バイオマス固形燃料の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のバイオマス固形燃料の製造方法において、
前記ペレット加熱工程を実施する前の前記バイオマスペレットのCODに対し、前記ペレット加熱工程を実施した後の前記バイオマスペレットのCODが1/3以下になるように、前記ペレット加熱工程を実施する、
バイオマス固形燃料の製造方法。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のバイオマス固形燃料の製造方法において、
前記バイオマスは、木質系バイオマス、草本系バイオマス、農作物残渣バイオマス、及びパーム椰子バイオマスからなる群から選択される少なくとも1種である、
バイオマス固形燃料の製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のバイオマス固形燃料の製造方法において、
製造された前記バイオマス固形燃料のCODが500mg/L以下であり、
製造された前記バイオマス固形燃料中に含まれる塩素が500mg/kg以下であり、カリウムが1000mg/kg以下である、
バイオマス固形燃料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス固形燃料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭火力は排出原単位あたりのCO2排出量が多く、環境負荷が高い。石炭火力からのCO2排出削減のため、石炭にバイオマスを混合して燃焼するバイオマス混焼が注目されている。木質チップ及び木質ペレットの混焼は、すでに行われているが、バイオマスは石炭に比べて粉砕性が悪いため、バイオマスの最大混焼率が数%程度にとどまっている。
【0003】
バイオマス混焼率を上げるための手段として、バイオマスを半炭化するもしくは水蒸気爆砕処理する方法が検討されている。これらの処理により、粉砕性が向上したバイオマス固形燃料が得られ、石炭への混焼率を上げることができる。
一方で近年、バイオマス原料については、コスト低減、及び資源の有効利用などを目的とし、木質以外の未利用材(例えば、農業残渣等)の活用も注目されている。
例えば、特許文献1には、サイズが5~60mmである木質系バイオマス粉砕物を、嵩密度(JIS K 2151の6「かさ密度試験方法」に従って測定)0.5g/cm3以上に高密度化処理し、続いて酸素濃度10%以下で、かつ温度170~350℃の条件下で焙焼することを特徴とする固体燃料の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、燃料比(固定炭素/揮発分)が0.2~0.8、無水ベース高位発熱量が4800~7000(kcal/kg)、酸素Oと炭素Cのモル比O/Cが0.1~0.7、水素Hと炭素Cのモル比H/Cが0.8~1.3であることを特徴とするバイオマス粉を成型したバイオマス固体燃料が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献3には、リグニン含有材料からペレット又はブリケットを製造する方法であって、30重量%未満の含水率を有する前記リグニン含有材料を反応炉内に移すステップと、蒸気を前記反応炉内に噴射することによって、前記リグニン含有材料を180~235℃まで加熱し加圧するステップと、リグニンを解放するために、前記材料を1~12分に亘って前記反応炉内で維持するステップと、前記反応炉から、前記材料を大気圧環境に取り出すステップと、前記処理された材料の実質的に全てを加圧して、プレス内でペレット又はブリケットを形成するステップと、を含む方法が開示されている。
また、特許文献4には、原料バイオマスを密閉して間接的に加熱し、前記原料バイオマスの含有水分で前記原料バイオマスを水蒸気爆砕して微粉化バイオマスを生成する前処理工程と、前記微粉化バイオマスを水洗してスラリーバイオマスを生成するスラリー化工程と、前記スラリーバイオマスを濾過して固体バイオマスを生成する濾過工程とを含む、燃料バイオマスの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-189958号公報
【特許文献2】国際公開第2016/056608号
【特許文献3】特開2014-237859号公報
【特許文献4】特開2018-48280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~4に記載の方法は、バイオマスを半炭化するもしくは水蒸気爆砕処理することで、粉砕性及び石炭への混焼率が改善された固体燃料が得られる。さらに特許文献1~4に記載の方法は、バイオマスを半炭化するもしくは水蒸気爆砕処理することで、疎水性の固体燃料(以下、「ブラックペレット」と称することがある。)が得られるため、当該固体燃料を屋外に貯蔵し得る。
しかしながら、ブラックペレットを屋外貯蔵したとき、有機成分(化学的酸素要求量(COD))の溶出が懸念される。石炭は有機成分の溶出はほぼないが、ブラックペレットは有機成分が溶出するため、屋外貯蔵した場合の環境への影響が懸念される。
よって、ブラックペレットを屋外貯蔵するにあたっては、有機成分の溶出を可能な限り抑えることが必要とされる。そのためには、製造プロセスから検討を行い、有機成分が溶出しにくい構造を持つブラックペレットの製造方法が求められる。
また、バイオマスの中でも、例えば、ソルガム、ネピアグラスなどの草本系バイオマスや、パーム椰子空果房等の農業残渣は、塩素及びアルカリ成分(特にカリウム)を多く含む。例えば、バイオマス固形燃料中の塩素はボイラ腐食に影響する。バイオマス固形燃料中のカリウムが多いと、ボイラで燃焼した際にファウリングと呼ばれる灰付着トラブルが起こる懸念がある。そのため、農業残渣に由来するバイオマス固形燃料は、塩素及びアルカリ成分の含有量が可能な限り低いことが望ましい。
なお、特許文献1は、有機成分溶出に関して検討がなされておらず、屋外貯蔵のリスクを想定していない。
特許文献2に記載のバイオマス固体燃料は、製造プロセスの検討が十分行われていないため、CODが比較的高い値を示している。
特許文献3に記載の方法は、塩素及びアルカリ成分を低減するための検討が十分行われていない。
特許文献4に記載の燃料バイオマスの製造方法の場合、原料バイオマスの含有水分を利用して水蒸気爆砕を行うため、多くの塩素及びアルカリ成分が燃料バイオマス中に残存すると考えられる。
【0007】
本発明の目的は、CODの溶出が低減され、さらに塩素及びアルカリ成分の溶出が低減されたバイオマス固形燃料を製造できるバイオマス固形燃料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、バイオマスを水蒸気爆砕して爆砕済バイオマスを得る工程と、水蒸気爆砕の後に前記爆砕済バイオマスを洗浄する後洗浄工程と、洗浄された前記爆砕済バイオマスを乾燥する乾燥工程と、乾燥された前記爆砕済バイオマスを成型してバイオマスペレットを得る工程と、前記バイオマスペレットを180℃以上で5分以上加熱するペレット加熱工程と、を有する、バイオマス固形燃料の製造方法が提供される。
【0009】
本発明の一態様に係るバイオマス固形燃料の製造方法において、前記爆砕済バイオマスを得る工程の前に、前記バイオマスを洗浄する前洗浄工程を有することが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係るバイオマス固形燃料の製造方法において、前記バイオマスペレットを得る工程の前に、前記後洗浄工程で生じた前記爆砕済バイオマスの微粉を、前記爆砕済バイオマスに添加する添加工程を有し、前記バイオマスペレットを得る工程は、前記微粉が添加された前記爆砕済バイオマスを成型することが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係るバイオマス固形燃料の製造方法において、前記水蒸気爆砕は、密閉容器中で、100℃以上300℃以下、0.1MPa以上9.0MPa以下の飽和水蒸気下で行うことが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係るバイオマス固形燃料の製造方法において、前記ペレット加熱工程は、酸素濃度5質量%以下の雰囲気において、前記バイオマスペレットを180℃以上で5分以上60分以下加熱することが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係るバイオマス固形燃料の製造方法において、前記ペレット加熱工程を実施する前の前記バイオマスペレットのCODに対し、前記ペレット加熱工程を実施した後の前記バイオマスペレットのCODが1/3以下になるように、前記ペレット加熱工程を実施することが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係るバイオマス固形燃料の製造方法において、前記バイオマスは、木質系バイオマス、草本系バイオマス、農作物残渣バイオマス、及びパーム椰子バイオマスからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係るバイオマス固形燃料の製造方法において、製造された前記バイオマス固形燃料のCODが500mg/L以下であり、製造された前記バイオマス固形燃料中に含まれる塩素が500mg/kg以下であり、カリウムが1000mg/kg以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、CODの溶出が低減され、さらに塩素及びアルカリ成分が低減されたバイオマス固形燃料を製造できるバイオマス固形燃料の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前に記載される数値を下限値とし、「~」の後に記載される数値を上限値として含む範囲を意味する。
【0018】
〔第1実施形態〕
〔バイオマス固形燃料の製造方法〕
本実施形態に係るバイオマス固形燃料の製造方法(以下、「本実施形態の製造方法」とも称する)は、バイオマスを水蒸気爆砕して爆砕済バイオマスを得る工程と、水蒸気爆砕の後に前記爆砕済バイオマスを洗浄する後洗浄工程と、洗浄された前記爆砕済バイオマスを乾燥する乾燥工程と、乾燥された前記爆砕済バイオマスを成型してバイオマスペレットを得る工程と、前記バイオマスペレットを180℃以上で5分以上加熱するペレット加熱工程と、を有する。
本実施形態の製造方法は、水蒸気爆砕した後のバイオマス(爆砕済バイオマス)を洗浄する後洗浄工程を有する。
通常、水蒸気爆砕を行った後のバイオマス(爆砕済バイオマス)は、洗浄(後洗浄)を行わないところ、本実施形態の製造方法では、爆砕済バイオマスに対し後洗浄工程を実施する。後洗浄工程を行う意義について説明する。
水蒸気爆砕処理で植物の細胞膜が破壊されることにより、細胞膜中に含まれる塩素及びアルカリ成分等の不純物が除去されやすくなると考えられる。水蒸気での処理のため、処理に伴い一部のアルカリ成分等は水蒸気側に移行するが、これらのアルカリ成分等をさらに除去するためには、水蒸気爆砕処理後に水等による洗浄(すなわち後洗浄)を行うことが効果的である。中でも、草本系バイオマスや農業残渣は、塩素及びアルカリ成分(特にカリウム)を多く含むため、後洗浄工程の実施は、これらのバイオマス(草本系バイオマス及び農業残渣)を用いる場合にさらに効果を発現する。
よって、本実施形態の製造方法によれば、後洗浄工程の実施により、バイオマスに含まれる塩素及びアルカリ成分を十分に除去できると考えられる。
さらに、本実施形態の製造方法では、洗浄された爆砕済バイオマスを用いてバイオマスペレットを成型した後、当該バイオマスペレットを所定条件で加熱するペレット加熱工程を実施する。このペレット加熱工程の実施により、CODの溶出が顕著に低減されたバイオマス固形燃料が得られる。
以上より、本実施形態の製造方法で得られたバイオマス固形燃料は、CODの溶出が低減され、さらに塩素及びアルカリ成分が低減された燃料となる。
本実施形態の製造方法でバイオマス固形燃料を製造することで、バイオマス固形燃料の利用を拡大することができる。
【0019】
本実施形態の製造方法の各工程について説明する。
【0020】
(爆砕済バイオマスを得る工程)
爆砕済バイオマスを得る工程は、バイオマスを水蒸気爆砕することにより、爆砕済バイオマスを得る工程である。
水蒸気爆砕とは、バイオマスを耐圧容器等の密閉容器中で高温高圧の飽和水蒸気によって短時間蒸煮し、その後、急激に大気圧に放出して、急速に冷却し、断熱膨張により、バイオマスの構造(木材の場合は木材構造)を破壊する処理をいう。
水蒸気爆砕に用いるバイオマスの形状は特に限定されない。バイオマスの形状としては、例えば、バイオマス自体の形状(例えば、パーム椰子の空果房等)、チップ状、長尺状、粉状、及び不定形状等が挙げられる。
水蒸気爆砕に用いるバイオマスは、入手した状態のバイオマスでもよいし、入手したバイオマスを任意の形状及び大きさに粉砕した後のバイオマスでもよい。
例えば、パーム椰子の空果房等は、入手した状態のまま用いることができる。
バイオマスは、水蒸気爆砕により粉砕されると共に半炭化される。例えば、バイオマスがチップ状のバイオマス(バイオマスチップ)である場合、バイオマスチップは、水蒸気爆砕により粉砕されてバイオマス粉になる。得られるバイオマス粉(爆砕済バイオマス)は半炭化された状態にある。
【0021】
水蒸気爆砕の温度は、好ましくは100℃以上300℃以下、より好ましくは100℃以上280℃以下である。
水蒸気爆砕の圧力は、好ましくは0.1MPa以上9.0MPa以下、より好ましくは1.0MPa以上6.5MPa以下である。
水蒸気爆砕の時間は、好ましくは10分以上60分以下、より好ましくは15分以上30分以下である。
【0022】
爆砕済バイオマスを得る工程において、前記水蒸気爆砕は、密閉容器中で、100℃以上300℃以下、0.1MPa以上9.0MPa以下の飽和水蒸気下で行うことが好ましく、100℃以上280℃以下、1.0MPa以上6.5MPa以下の飽和水蒸気下で行うことがより好ましい。
【0023】
爆砕済バイオマスを得る工程で得られるバイオマスの大きさは、水蒸気爆砕に用いるバイオマスの大きさ及び形状により異なる。
例えば、バイオマスの形状がチップ状(バイオマスチップ)である場合、爆砕済バイオマスを得る工程で得られるバイオマス粉の長軸径は、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。
本明細書において、長軸径とは、最大径のことである。例えば、バイオマス粉の長軸径とは、バイオマス粉の外側輪郭線上の任意の2点を直線で結んだ時の直線の最大長さを意味する。
【0024】
(後洗浄工程)
後洗浄工程は、水蒸気爆砕の後に前記爆砕済バイオマスを洗浄する工程である。
後洗浄工程の実施により、塩素及びアルカリ成分が十分低減されたバイオマス固形燃料が得られる。
アルカリ成分が十分低減されたバイオマス固形燃料を用いることで、ボイラで燃焼した際に懸念される灰付着が起こりづらくなる。また、塩素が十分低減されたバイオマス固形燃料を用いることで、ボイラで燃焼した際に懸念される腐食が起こりづらくなる。
後洗浄工程において、爆砕済バイオマスの洗浄時間は、好ましくは5分以上60分以下、より好ましくは10分以上30分以下である。洗浄回数は特に限定されない。
洗浄は、公知の洗浄装置を用いて実施できる。洗浄水は、水やお湯等、公知の洗浄液を用いることができる。
【0025】
後洗浄工程は、後洗浄工程実施前のバイオマス中に含まれるアルカリ成分に対する、後洗浄工程実施後の爆砕済バイオマス中に含まれるアルカリ成分の比(質量比)が、下記数式(数1)を満たすように実施することが好ましく、下記数式(数2)を満たすように実施することがより好ましい。
下記数式(数1)又は数式(数2)を満たす要件としては、例えば、洗浄水の流量、洗浄時間、洗浄回数、及びバイオマスの洗浄量等が挙げられる。
(後洗浄工程実施後の爆砕済バイオマス中に含まれるアルカリ成分)/(後洗浄工程実施前の爆砕済バイオマス中に含まれるアルカリ成分)≦0.5…(数1)
(後洗浄工程実施後の爆砕済バイオマス中に含まれるアルカリ成分)/(後洗浄工程実施前の爆砕済バイオマス中に含まれるアルカリ成分)≦0.3…(数2)
【0026】
(乾燥工程)
乾燥工程は、洗浄された前記爆砕済バイオマスを乾燥する工程である。
乾燥工程は、後洗浄工程でバイオマスに付着した水分を乾燥させることにより、爆砕済バイオマスの含水率を調整する工程である。乾燥工程は、自然乾燥であってもよいし、加熱乾燥であってもよい。
乾燥工程における乾燥温度及び乾燥時間は、爆砕済バイオマスのバイオマス種及び大きさにより適宜選択される。例えば、爆砕済バイオマスの乾燥時間は、30分以上であることが好ましい。
乾燥工程で得られる爆砕済バイオマスの含水率は、好ましくは10質量%以上20質量%以下、より好ましくは10質量%以上15質量%以下である。
乾燥工程で、含水率が10質量%以上20質量%以下になるように爆砕済バイオマスを乾燥させることにより、バイオマスペレットを得る工程で、ペレットの成型性が向上する。
【0027】
(バイオマスペレットを得る工程)
バイオマスペレットを得る工程は、乾燥された前記爆砕済バイオマスを成型することにより、バイオマスペレットを得る工程である。
本明細書において、ペレットは、ブリケットを包含する。ペレットの大きさ及び形状は特に限定されないが、ペレットは、通常、円筒状であり、好ましくは直径5mm以上10mm以下、長さ5mm以上50mm以下である。
本実施形態において、バイオマスペレットは、前記爆砕済バイオマスを、金属穴(例えば、直径5mm以上10mm以下、長さ5mm以上50mm以下)から押し出すことで作製できる。また、バイオマスペレットは、例えば、リングダイ方式またはフラットダイ方式等のペレタイザーを用いて作製できる。
また、バイオマスペレットは、例えば、ブリケットマシーンを用いて豆炭状または円筒状に成型することでも作製できる。
【0028】
(ペレット加熱工程)
ペレット加熱工程は、バイオマスペレットを180℃以上で5分以上加熱する工程である。
ペレット加熱工程は、CODの溶出を低減させる観点から、バイオマスペレットを、190℃以上で5分以上加熱することが好ましく、200℃以上で5分以上加熱することがより好ましく、205℃以上で5分以上加熱することがさらに好ましく、210℃以上で5分以上加熱することがさらに好ましい。
ペレット加熱工程における上限の温度は、CODの溶出を低減しつつ、燃料に求められる特性(例えば、HGI、高位発熱量、嵩密度、及び機械的耐久性)をバランスよく確保する観点、またより少ないエネルギーでCODの溶出を低減するという観点から、高すぎないことが好ましく、具体的には、270℃以下であることが好ましく、265℃以下であることがより好ましく、260℃以下であることがさらに好ましい。
ペレット加熱工程において、バイオマスペレットを180℃以上で加熱する時間(加熱時間)は、短時間でCODの溶出を低減させる観点から、好ましくは240分以下、より好ましくは120分以下、さらに好ましくは60分以下、さらに好ましくは50分以下、さらに好ましくは40分以下である。
バイオマスペレットの前記加熱時間とは、180℃から目的の温度に到達するまでの時間と、目的の温度での保持時間とを合算した時間をいう。目的の温度とは、バイオマスペレットが導入される加熱装置の温度である。
例えば、バイオマスペレットを室温(25℃)から昇温速度5℃/分で230℃(目的の温度)まで加熱し、230℃で0分保持した場合、バイオマスペレットの前記加熱時間は、180℃から230℃に到達するまでの時間(10分)と、230℃での保持時間(0分)とを合算し、10分と算出される。以下の説明では、目的の温度を到達温度と称することがある。
ペレット加熱工程は、昇温速度3℃/分以上60℃/分以下(好ましくは3℃/分以上30℃/分以下)で目的の温度まで加熱することが好ましい。目的の温度(到達温度)は、270℃以下であることが好ましく、265℃以下であることがより好ましく、260℃以下であることがさらに好ましい。
目的の温度が270℃以下であると、CODの溶出を低減でき効果がより発現され、かつバイオマスペレットの加熱時間を大幅に短縮できる。
【0029】
ペレット加熱工程における雰囲気は、低酸素濃度であることが好ましく、具体的には、酸素濃度5質量%以下であることが好ましく、酸素濃度3質量%以下であることがより好ましい。
ペレット加熱工程における低酸素濃度雰囲気としては、例えば、不活性ガス雰囲気が挙げられる。不活性ガス雰囲気としては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、炭酸ガス、及び燃焼排ガスから選択される少なくとも1種の不活性ガス雰囲気が挙げられる。
【0030】
ペレット加熱工程は、酸素濃度5質量%以下の雰囲気において、バイオマスペレットを180℃以上で5分以上60分以下加熱することが好ましく、酸素濃度5質量%以下の雰囲気において、バイオマスペレットを180℃以上で5分以上50分以下加熱することがより好ましく、酸素濃度3質量%以下の雰囲気において、バイオマスペレットを180℃以上で5分以上50分以下加熱することがさらに好ましい。
【0031】
ペレット加熱工程を実施する前のバイオマスペレットのCODに対し、ペレット加熱工程を実施した後のバイオマスペレットのCODが1/3以下になるように、ペレット加熱工程を実施することがより好ましい。
具体的には、ペレット加熱工程を実施する前のバイオマスペレットのCOD(単位:mg/L)に対する、ペレット加熱工程を実施した後のバイオマスペレットのCOD(単位:mg/L)の比(ペレット加熱工程を実施した後のバイオマスペレットのCOD/ペレット加熱工程を実施する前のバイオマスペレットのCOD)は、より好ましくは1/5以下、さらに好ましくは1/7以下、さらに好ましくは1/10以下である。
【0032】
(前洗浄工程)
本実施形態の製造方法において、前記爆砕済バイオマスを得る工程の前に、前記バイオマスを洗浄する前洗浄工程を有することが好ましい。
前洗浄工程は、主に、バイオマスに付着している汚れを除去するために行う。なお、前洗浄工程により、ある程度の塩素及びアルカリ成分も除去できる。
前洗浄工程において、バイオマスの洗浄時間は、好ましくは5分以上60分以下、より好ましくは10分以上30分以下である。
前洗浄工程の洗浄条件は特に限定されない。前洗浄工程の洗浄条件は、後洗浄工程と同じ条件であっても異なる条件であってもよい。
【0033】
〔第2実施形態〕
第2実施形態の製造方法について、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項の説明については同一の符号を付す等により、その説明を省略または簡略化する。
第2実施形態の製造方法は、前記バイオマスペレットを得る工程の前に、前記後洗浄工程で生じた前記爆砕済バイオマスの微粉を、前記爆砕済バイオマスに添加する添加工程を有する点が第1実施形態の製造方法と異なる。これ以外は、第1実施形態の製造方法と同様である。すなわち、第2実施形態の製造方法におけるバイオマスペレットを得る工程では、前記微粉が添加された前記爆砕済バイオマスを成型する。
【0034】
第2実施形態の製造方法によれば、第1実施形態と同様に、CODの溶出が低減され、さらに塩素及びアルカリ成分が低減されたバイオマス固形燃料が得られる。
また、第2実施形態において、後洗浄工程で生じた微粉(爆砕済バイオマスの微粉)は、バインダーとして機能すると考えられる。
よって、第2実施形態の製造方法によれば、当該微粉を爆砕済バイオマスに添加して、バイオマスペレットを成型することにより、成型性が向上し、崩壊しにくいバイオマスペレットが得られる。また、廃棄され得る微粉を有効利用することができる。
【0035】
(添加工程)
第2実施形態の製造方法において、添加工程は、バイオマスペレットを得る工程の前に、後洗浄工程で生じた爆砕済バイオマスの微粉(以下、バイオマス微粉とも称する)を、前記爆砕済バイオマスに添加する工程である。
バイオマス微粉は、例えば、後洗浄工程で生じた洗浄廃棄物を、スクリーンを通過させた後にプレスすることで得られる。バイオマス微粉の大きさは、成型されるペレットの大きさにより調整されるが、通常、ミリオーダーである。
バイオマス微粉は、含水率が調整されていることが好ましい。バイオマス微粉の含水率を調整する方法としては、例えば、バイオマス微粉を加熱して乾燥させる、又は自然乾燥する方法が挙げられる。
【0036】
添加工程において、爆砕済バイオマスとバイオマス微粉との比(爆砕済バイオマス:バイオマス微粉)が、質量比で99.5:0.5~90.0:10.0になるように、バイオマス微粉を、爆砕済バイオマスに添加することが好ましい。
前記比(爆砕済バイオマス:バイオマス微粉)は、質量比で、99.0:1.0~93.0:7.0であることがより好ましく、98.0:2.0~95.0:5.0であることがさらに好ましい。
前記比(爆砕済バイオマス:バイオマス微粉)が、質量比で99.5:0.5~90.0:10.0であると、より崩壊しにくいバイオマスペレットが得られる。
【0037】
(バイオマスペレットを得る工程)
第2実施形態の製造方法において、バイオマスペレットを得る工程は、バイオマス微粉が添加された前記爆砕済バイオマスを成型する工程である。バイオマスペレットは、第1実施形態と同様の方法で作製できる。
【0038】
〔その他の工程〕
(第1の粉砕工程)
前記実施形態の製造方法は、前記爆砕済バイオマスを得る工程の前に、前記バイオマスを粉砕する第1の粉砕工程を有することが好ましい。
第1の粉砕工程における粉砕の一態様としては、入手したバイオマスを水蒸気爆砕装置に導入し易い形状(例えば、チップ状及び長尺状等)に粉砕する態様が挙げられる。
粉砕方法は特に限定されず、公知の粉砕機を用いて、バイオマスをチップ状及び長尺状等に粉砕することができる。
チップの大きさは特に限定されないが、例えば、木質系バイオマスをチップ状に粉砕する場合、長軸径は5.0cm以下が好ましく、1.0cm以下がより好ましい。
【0039】
(第2の粉砕工程)
前記実施形態の製造方法は、前記爆砕済バイオマスを得る工程の後に、前記爆砕済バイオマスを粉砕する第2の粉砕工程を有することも好ましい。
第2の粉砕工程における粉砕の一態様としては、比較的大きいサイズのバイオマス(例えば、長軸径が数十センチオーダー)を水蒸気爆砕した場合に、爆砕済バイオマスをさらに粉砕する態様が挙げられる。
【0040】
(前乾燥工程)
前記実施形態の製造方法において、前記爆砕済バイオマスを得る工程の前に、前記バイオマスを乾燥する前乾燥工程を有することが好ましい。
前乾燥工程は、バイオマスを乾燥させ、バイオマスの含水率を調整する工程である。
前乾燥工程の洗浄条件は、後乾燥工程と同じ条件であっても異なる条件であってもよい。
前乾燥工程で得られるバイオマスの含水率は、好ましくは10質量%以上20質量%以下、より好ましくは10質量%以上15質量%以下である。
乾燥工程で、含水率が10質量%以上20質量%以下になるように爆砕済バイオマスを乾燥させることにより、バイオマスペレットを得る工程で、ペレットの成型性が向上する。
前乾燥工程において、バイオマスの含水率が10質量%以上20質量%以下になるようにバイオマスを乾燥させることにより、水蒸気爆砕時に、個々のバイオマスに飽和水蒸気が均等に含まれ易くなるため、均一な水蒸気爆砕が期待される。よって、前乾燥工程の実施により、続く爆砕済バイオマスを得る工程で、より均一な性状を有する爆砕済バイオマスを得ることができる。
【0041】
前記実施形態の製造方法は、前記爆砕済バイオマスを得る工程の前に、バイオマスを洗浄する前洗浄工程を有してもよい。前洗浄工程は、第1の乾燥工程の前に実施することが好ましい。
前洗浄工程の実施により、バイオマスの表面に付着している塩素及びアルカリ成分を除去できる。
【0042】
前記実施形態の製造方法は、必要に応じて、第1の粉砕工程、第2の粉砕工程、前乾燥工程、及び前洗浄工程の少なくともいずれかを有してもよい。
第1実施形態又は第2実施形態の製造方法は、以下の順で実施することが好ましい。
・爆砕済バイオマスを得る工程、後洗浄工程、乾燥工程、バイオマスペレットを得る工程、及びペレット加熱工程。
・前乾燥工程、爆砕済バイオマスを得る工程、第2の粉砕工程、後洗浄工程、乾燥工程、バイオマスペレットを得る工程、及びペレット加熱工程。
・前洗浄工程、第1の粉砕工程、爆砕済バイオマスを得る工程、後洗浄工程、乾燥工程、バイオマスペレットを得る工程、及びペレット加熱工程。
・前洗浄工程、前乾燥工程、第1の粉砕工程、爆砕済バイオマスを得る工程、後洗浄工程、乾燥工程、バイオマスペレットを得る工程、及びペレット加熱工程。
・爆砕済バイオマスを得る工程、後洗浄工程、乾燥工程、添加工程、バイオマスペレットを得る工程、及びペレット加熱工程。
・前乾燥工程、爆砕済バイオマスを得る工程、第2の粉砕工程、後洗浄工程、乾燥工程、添加工程、バイオマスペレットを得る工程、及びペレット加熱工程。
・前洗浄工程、第1の粉砕工程、爆砕済バイオマスを得る工程、後洗浄工程、乾燥工程、添加工程、バイオマスペレットを得る工程、及びペレット加熱工程。
・前洗浄工程、前乾燥工程、第1の粉砕工程、爆砕済バイオマスを得る工程、後洗浄工程、乾燥工程、添加工程、バイオマスペレットを得る工程、及びペレット加熱工程。
【0043】
前記実施形態の製造方法で用いるバイオマスについて説明する。
【0044】
(バイオマス)
バイオマスとしては特に限定されないが、例えば、木質系バイオマス、草本系バイオマス、農作物残渣バイオマス、パーム椰子バイオマス、セルロース製品、及びパルプ製品等が挙げられる。
本明細書において、農作物残渣バイオマスとは、食用部分以外のものを意味する。
本明細書において、パーム椰子バイオマスとは、バイオマス燃料となり得るパーム椰子の農業廃棄物を意味する。
バイオマスは、木質系バイオマス、草本系バイオマス、農作物残渣バイオマス、及びパーム椰子バイオマスからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0045】
木質系バイオマスとしては、例えば、針葉樹(例えば、スギ、マツ、ユーカリ、ヒノキ、及びモミ等)、及び広葉樹(例えば、白樺(シラカバ)、ブナ、ケヤキ、カツラ、キリ、ゴムノキ及びクスノキ等)等が挙げられる。木質系バイオマスは、建築廃材(例えば、切断した端材、加工場で発生した切りくず、及びおがくず等)、林地残材、切捨間伐材、及び竹等であってもよい。
草本系バイオマスとしては、例えば、草、自然に生育した植物、及び人工的に植栽した植物等が挙げられる。草本系バイオマスは、麻、綿、稲わら、籾殻、麦わら、ササ、ネピアグラス、ソルガム及びススキ等であってもよい。
【0046】
農作物残渣バイオマスとしては、例えば、農作物の葉、果房、茎、根、及びその他食用以外の部分が挙げられる。前記農作物としては、例えば、小麦、とうもろこし、じゃがいも、サトウキビ(バガスを含む)、及びバナナ等が挙げられる。
【0047】
パーム椰子バイオマスとしては、例えば、パーム椰子殻(PKS:Palm Kernel Shell)、及びパーム椰子空果房(EFB:Empty Fruit Bunch)、パームトランク(Palm Trunk)等が挙げられる。
以上に記載したバイオマスは、1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0048】
(その他成分)
前記実施形態の製造方法で得られるバイオマス固形燃料は、本実施形態の効果を損なわない限り、バイオマス以外のその他成分を含んでもよい。
その他成分としては特に限定されないが、バインダー及び各種添加剤等が挙げられる。
バインダーとしては、例えば、リグニン、及びアクリル酸アミド等が挙げられる。
バイオマス固形燃料中におけるバインダーの含有量は、好ましくは0質量%以上50質量%以下、より好ましくは0質量%以上10質量%以下である。
バイオマス固形燃料がバインダーを含む場合、前記バイオマスペレットを得る工程において、爆砕済バイオマスとバインダーとの混合物を成型することが好ましい。
【0049】
〔バイオマス固形燃料の使用態様〕
前記実施形態の製造方法で得られたバイオマス固形燃料は、発電所、製鉄所、及び工場等で広く用いることができる。前記実施形態のバイオマス固形燃料は、単独で燃焼させて用いてもよいし、石炭等の他の燃料と混合して燃焼(混焼)させてもよい。
例えば、バイオマス固形燃料を火力発電設備で用いる場合、バイオマス固形燃料を粉砕機で粉砕してボイラに導入してもよいし、大きさによってはそのままボイラに導入してもよい。
また、バイオマス固形燃料を石炭と混合して用いることも好ましく、その場合、既存の火力発電設備を用いて、例えば、石炭粉砕機を利用して、バイオマス固形燃料を石炭と共に粉砕し、これらをボイラに導入してもよい。
また、バイオマス固形燃料を石炭粉砕機とは別の粉砕機(例えば、バイオマス固形燃料用粉砕機)で粉砕した後、別途粉砕された石炭と混合して、これらをボイラに導入してもよい。バイオマス固形燃料の使用態様は上記に限定されない。
【0050】
〔第3実施形態〕
〔バイオマス固形燃料〕
第3実施形態のバイオマス固形燃料は、第1実施形態又は第2実施形態に係るバイオマス固形燃料の製造方法で得られる。
第3実施形態のバイオマス固形燃料は、前記バイオマス固形燃料のCODは、500mg/L以下であり、前記バイオマス固形燃料中に含まれる塩素は、500mg/kg以下であり、カリウムが1000mg/kg以下である。
第3実施形態のバイオマス固形燃料によれば、CODの溶出を低減でき、さらに塩素及びアルカリ成分を低減できる。
【0051】
(COD)
第3実施形態のバイオマス固形燃料のCODは、好ましくは300mg/L以下、より好ましくは100mg/L以下である。
CODの測定方法は、実施例に記載した通りである。
【0052】
(塩素及びカリウム)
第3実施形態のバイオマス固形燃料中に含まれる塩素は、好ましくは300mg/kg以下、より好ましくは200mg/kg以下である。
第3実施形態のバイオマス固形燃料中に含まれるカリウムは、好ましくは800mg/kg以下、より好ましくは600mg/kg以下である。
【0053】
〔他の実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変更、改良等は、本発明に含まれる。
【実施例0054】
以下、本発明に係る実施例を説明する。本発明はこれらの実施例によって何ら限定されない。
【0055】
実施例及び参考例の原料であるEFBチップの性状を表1及び表2に示す。
【0056】
【0057】
【0058】
・表1及び表2の説明
工業分析値は、JIS M8812(2004)に準拠して測定した値である。
元素分析値のうち炭素、水素、窒素及び硫黄は、JIS M8819(1997)に準拠して測定した値であり、酸素はJIS M8813(2004)に準拠して、他の分析値から算出した値である。
表2中の化学分析値のうち、Na及びKは、ISO 16967に準拠して測定した値であり、その他元素は、ISO 16968に準拠して測定した値である。
塩素の含有量(mg/kg,db)は、JIS Z7302-6(1999)に準拠して測定した値である。
フッ素の含有量(mg/kg,db)は、ISO 11724に準拠して測定した値である。
高位発熱量は、JIS M8814(2003)に準拠して測定した値である。
低位発熱量は、JIS M8814(2003)に準拠して測定した値である。
燃料比は、「固定炭素/揮発分」である。
ドライベース(DB)の発熱量は、乾燥状態での発熱量を表す。
「AD」及び「ad」は、Air Dry Basisの略で、気乾ベースを表し、大気中で乾燥させた状態を表す。
「AR」は、到着ベースを示す。
「db」は、無水ベースを示す。
「daf」は、無水無灰ベースを示す。
「ash」は、灰ベースを示す。
「-」は、検出されなかったことを表す。
「<0.005」は、「0.005未満」であることを表す。
【0059】
〔実施例1〕
パーム椰子空果房を搾油することにより得られた搾油済パーム椰子空果房(搾油済EFB)をバイオマスとして用いた。
第1実施形態に記載した製造方法の手順に従いバイオマス固形燃料を製造した。
【0060】
(前洗浄工程)
搾油済EFB(500kg)を、洗浄装置を用いて前洗浄を実施した。洗浄装置内での搾油済EFBの滞留時間は15分とした。
【0061】
(爆砕済バイオマスを得る工程)
前洗浄した搾油済EFBを、蒸気ボイラーが接続された水蒸気爆砕装置(耐圧容器)に導入した。蒸気ボイラーで発生した飽和蒸気を水蒸気爆砕装置に導入し、実施形態に記載の好ましい温度、圧力及び時間の条件で、搾油済EFBを飽和水蒸気によって水蒸気爆砕した。その後、急激に大気圧に放出して冷却し、粉状の爆砕済EFBを得た。
【0062】
(後洗浄工程)
次に、爆砕済EFBを、洗浄装置を用いて洗浄した。洗浄装置内での搾油済EFBの滞留時間は15分とした。
【0063】
(乾燥工程)
次に、爆砕済EFBを、加熱炉内で加熱することにより、爆砕済EFBを乾燥させた。
【0064】
(バイオマスペレットを得る工程)
ペレタイザーを用いて、爆砕済EFBを圧縮成型し、円筒状のバイオマスペレット(直径6mm、高さ最大40mm)を得た。
【0065】
(ペレット加熱工程)
バイオマスペレットを加熱炉に導入し、加熱炉の温度が表3に示す到達温度(190℃)に到達するまで、昇温速度5℃/分で昇温後、190℃のまま30分間保持(加熱)した。
以上の工程により、実施例1のバイオマス固形燃料を得た。
【0066】
〔実施例2~3〕
ペレット加熱工程における到達温度を、表3に示す到達温度に到達するまで、昇温速度5℃/分で昇温後、到達温度のまま30分間保持(加熱)したこと以外、実施例1と同様の方法で、実施例2~3のバイオマス固形燃料を得た。
【0067】
〔比較例1〕
ペレット加熱工程を実施しなかったこと以外、実施例1と同様の方法で、比較例1のバイオマス固形燃料を得た。
【0068】
〔参考例1〕
表1及び表2に示す性状を有するEFBチップを参考例1とした。なお、EFBチップは入手したチップである。
表3中、物理物性、HGI及びCODの欄の「-」は、測定しなかったことを示す。
【0069】
〔評価〕
各例で得られたバイオマス固形燃料を用いて以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0070】
(塩素、ナトリウム及びカリウムの含有量)
既述の方法で測定した。
【0071】
(COD)
CODの測定に用いる浸漬水は、「産業廃棄物に含まれる金属等の検定方法(昭和48年環境庁告示第13号)」に準拠し、6時間の振とう試験を行い、排水を作製する方法により調製した。
調製した浸漬水中のCOD濃度を、東亜DKK社製簡易式COD計(COD-60A)で測定した。あらかじめ、ブラックペレット浸漬水中のCOD濃度を公定法(JIS K0102(2016))で測定し、本装置での測定結果との相関から回帰式を求めた。その回帰式から、指定測定方法に換算した測定値を求めた。
【0072】
(ハードグローブ粉砕性指数(HGI))
JIS M8801(2008)に準拠する方法でハードグローブ粉砕性指数(HGI)を測定した。
【0073】
(高位発熱量)
既述の方法で測定した。
【0074】
(機械的耐久性)
ISO 17831-1に準拠する方法で機械的耐久性(単位:%)を測定した。
【0075】
(嵩密度)
嵩密度は、ISO 17828に準拠する方法で測定した。
【0076】
【0077】
(COD)
後洗浄工程及びペレット加熱工程を共に実施した実施例1~3と、後洗浄工程を実施したがペレット加熱工程を実施しなかった比較例1とを対比すると、実施例1~3は、比較例1に比べ、COD(mg/L)の溶出が顕著に低減した。
中でも、到達温度210℃及び230℃で加熱工程を実施した実施例2~3は、比較例1に比べ、CODの溶出が1/10以下に低減した。
【0078】
(塩素及びカリウムの含有量)
後洗浄工程及びペレット加熱工程を共に実施した実施例1~3と、EFBチップを用いた参考例1とを対比すると、実施例1~3は、参考例1に比べ、塩素及びカリウムの含有量が顕著に低減した。
【0079】
(HGI、高位発熱量、機械的耐久性及び嵩密度)
実施例1~3は、燃料として使用可能なHGI、高位発熱量、機械的耐久性及び嵩密度が確保されていた。