(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095174
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】搬送機構および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 29/52 20060101AFI20230629BHJP
B65H 5/36 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B65H29/52
B65H5/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021210908
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】飛永 秀樹
【テーマコード(参考)】
3F101
【Fターム(参考)】
3F101FB11
3F101FD05
3F101FE03
3F101FE06
3F101FE08
3F101LA02
3F101LA05
3F101LA06
3F101LA07
3F101LB03
(57)【要約】
【課題】搬送機構の搬送ガイドが開閉作動により変形するのを防止する。
【解決手段】シート状体を上り傾斜又は下り傾斜で搬送する傾斜搬送路の下側にあってシート状体の下面をガイドする下側搬送ガイド110と、傾斜搬送路の上側にあってシート状体の上面をガイドする上側搬送ガイド120とを有する傾斜搬送機構において、上側搬送ガイド120は、傾斜搬送路の幅方向片側で傾斜搬送路に沿って配設された回動軸Sを中心として開閉可能に構成されると共に、上側搬送ガイド120の傾斜方向の上端部であって回動軸Sから傾斜搬送路の幅方向で離間した部分が第1付勢部材としての引張スプリング160によって回動軸Sの方向に付勢されていることを特徴とする。
【選択図】
図7B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状体を上り傾斜又は下り傾斜で搬送する傾斜搬送路の下側にあって前記シート状体の下面をガイドする下側搬送ガイドと、前記傾斜搬送路の上側にあって前記シート状体の上面をガイドする上側搬送ガイドとを有する傾斜搬送機構において、
前記上側搬送ガイドは、前記傾斜搬送路の幅方向片側で前記傾斜搬送路に沿って配設された回動軸を中心として開閉可能に構成されると共に、前記上側搬送ガイドの傾斜方向の上端部であって前記回動軸から前記傾斜搬送路の幅方向で離間した部分が第1付勢部材によって前記回動軸の方向に付勢されていることを特徴とする傾斜搬送機構。
【請求項2】
前記第1付勢部材が引張スプリングであることを特徴とする請求項1の傾斜搬送機構。
【請求項3】
前記上側搬送ガイドの前記回動軸から離間した部分が、第2付勢部材によって、前記上側搬送ガイドの開方向に付勢されていることを特徴とする請求項1又は2の傾斜搬送機構。
【請求項4】
前記第2付勢部材が、前記上側搬送ガイドの傾斜方向の上端部であって、前記傾斜搬送路の幅方向で前記回動軸とは反対側の端部に取付けられていることを特徴とする請求項3の傾斜搬送機構。
【請求項5】
前記第2付勢部材がガススプリングであることを特徴とする請求項3又は4の傾斜搬送機構。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項の傾斜搬送機構を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
シート状体を上下方向に搬送する搬送路の片側にあって前記シート状体の片面をガイドする片側搬送ガイドと、前記搬送路の反対側にあって前記シート状体の反対面をガイドする反対側搬送ガイドとを有する搬送機構において、
前記片側搬送ガイドは、前記搬送路の幅方向片側で前記搬送路に沿って配設された回動軸を中心として開閉可能に構成されると共に、前記片側搬送ガイドの上端部であって前記回動軸から前記搬送路の幅方向で離間した部分が第1付勢部材によって前記回動軸の方向に付勢されていることを特徴とする搬送機構。
【請求項8】
前記第1付勢部材が引張スプリングであることを特徴とする請求項7の搬送機構。
【請求項9】
前記片側搬送ガイドの前記回動軸から離間した部分が、第2付勢部材によって、前記片側搬送ガイドの開方向に付勢されていることを特徴とする請求項7又は8の搬送機構。
【請求項10】
前記第2付勢部材が、前記片側搬送ガイドの上端部であって、前記搬送路の幅方向で前記回動軸とは反対側の端部に取付けられていることを特徴とする請求項9の搬送機構。
【請求項11】
前記第2付勢部材がガススプリングであることを特徴とする請求項9又は10の搬送機構。
【請求項12】
請求項7から11のいずれか1項の搬送機構を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状体を搬送する搬送機構と当該搬送機構を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、及びインクジェット記録装置のいずれか一つ、またはこれらの少なくとも2つ以上を組み合わせた複合機で構成される画像形成装置では、マシン本体内の複数個所に、記録媒体であるシート状体を水平方向の他、上下方向、上り又は下り傾斜方向に搬送する搬送機構が設けられている。これら搬送機構のうち、シート状体のジャムが発生しやすい部分では、ジャム処理を容易化するため搬送機構が開閉可能に構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2010-195551号公報)の画像形成装置では、上下方向の搬送機構でジャムが発生した場合、開閉ドアを開くことでジャム処理を行うようにしている。また、水平方向や傾斜方向でシート状体を搬送する搬送機構では、上側搬送ガイドを開くことでジャム処理を行うようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
傾斜方向でシート状体を搬送する傾斜搬送機構では、傾斜搬送路の片側に配設された回動軸のまわりに上側搬送ガイドを上方に回動して上側搬送ガイドを開くようにしている。しかしながら、回動軸が傾斜しているために、上側搬送ガイドに作用する重力mgによって、上側搬送ガイドの筐体を傾斜搬送路に沿って下向きに変形させようとする力が作用する。
【0005】
上側搬送ガイドの筐体に十分な剛性があればそのような変形は発生しないが、筐体を高剛性にするほど質量mの増加により重力mgも大きくなる。このため、上側搬送ガイドの変形は程度差はあっても不可避であるのが実状である。このような上側搬送ガイド120の変形が発生すると、上側搬送ガイドの搬送ローラの軸線が傾いて用紙スキューや用紙ジャムの要因となる。
【0006】
また、シート状体を上下方向に搬送する搬送路でも、同様にスキューやジャムが発生する可能性がある。すなわち、特許文献1の開閉ドアのように、シート状体の片面をガイドする片側搬送ガイドを水平方向に開くと、片側搬送ガイドがその自重で変形する可能性があるからである。
【0007】
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、搬送機構の搬送ガイドが開閉作動により変形するのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の傾斜搬送機構は、シート状体を上り傾斜又は下り傾斜で搬送する傾斜搬送路の下側にあって前記シート状体の下面をガイドする下側搬送ガイドと、前記傾斜搬送路の上側にあって前記シート状体の上面をガイドする上側搬送ガイドとを有する傾斜搬送機構において、前記上側搬送ガイドは、前記傾斜搬送路の幅方向片側で前記傾斜搬送路に沿って配設された回動軸を中心として開閉可能に構成されると共に、前記上側搬送ガイドの傾斜方向の上端部であって前記回動軸から前記傾斜搬送路の幅方向で離間した部分が第1付勢部材によって前記回動軸の方向に付勢されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、搬送機構の搬送ガイドが開閉作動により変形するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略図である。
【
図3A】上側搬送ガイドを閉じた状態の傾斜搬送機構の側面図である。
【
図3B】上側搬送ガイドを開いた状態の傾斜搬送機構の側面図である。
【
図3C】
図3Bにおけるジャム処理可能エリアを示す図である。
【
図4】ガススプリングの取付状態を示す斜視図である。
【
図5】上側搬送ガイドに作用する力関係を示す(a)側面図と(b)そのA矢視図である。
【
図6A】上側搬送ガイドに作用する力関係を示す側面図である。
【
図6B】上側搬送ガイドの位置ズレ状態を示す側面図である。
【
図7A】本実施形態に係る傾斜搬送機構の第1開放状態における引張スプリングの作用を示す図である。
【
図7B】本実施形態に係る傾斜搬送機構の第2開放状態における引張スプリングの作用を示す図である。
【
図8】上側搬送ガイドの閉状態における引張スプリングの作用を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(●インクジェットプリンタ)
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は画像形成装置としてのインクジェットプリンタ1の概略図である。インクジェットプリンタ1はラインヘッド方式で液体を吐出する装置であって、液体を付与する付与対象(記録媒体又はシート状体)としての用紙Pを搬入する搬入部と、前処理部20と、画像形成部30と、乾燥部40と、反転機構部60と、排紙トレイ114とを備えている。前記画像形成部30は
図2で拡大図示される。反転機構部60の最後の搬送ローラ62と排紙トレイ114との間に、後述する本実施形態に係る傾斜搬送機構が配設されている。
【0012】
インクジェットプリンタ1は、搬入部10から搬入(供給)される用紙Pに対し、前処理手段である前処理部20で必要に応じて前処理液を付与(塗布)する。その後、画像形成部30で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部40で用紙Pに付着した液体を乾燥させた後、用紙Pを搬出部50に排出する。
【0013】
搬入部10は、複数の用紙Pを収容する搬入トレイ11(下段搬入トレイ11A、上段搬入トレイ11B)と、搬入トレイ11から用紙Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12(12A、12B)とを備える。搬入部10から用紙Pを前処理部20に供給する。前処理部20は、例えばインクの色材を凝集させ、裏写りを防止する作用効果を有する処理液を用紙Pの印刷面に付与する処理液付与手段である塗布部21などを備えている。
【0014】
画像形成部30は、
図2に示すように、用紙Pを周面に担持して回転する担持部材(回転体)である搬送ドラム31と、搬送ドラム31に担持された用紙Pに向けて液体を吐出する液滴吐出部32を備えている。また、画像形成部30は、前処理部20から送り込まれた用紙Pを受け取って搬送ドラム31との間で用紙Pを渡す渡し胴34と、搬送ドラム31によって搬送された用紙Pを受け取って乾燥部40に渡す受け渡し胴35を備えている。
【0015】
搬送ドラム31と渡し胴34、および搬送ドラム31と受け渡し胴35は、相互にギヤで連結されている。そして搬送ドラム31、渡し胴34および受け渡し胴35に取り付けられたグリッパで、用紙Pの咥え替えを行いながら用紙Pを搬送するようにしている。
【0016】
前処理部20から画像形成部30へ搬送されてきた用紙Pは、渡し胴34に設けられた把持手段(用紙グリッパ)によって先端が把持され、渡し胴34の回転に伴って搬送される。渡し胴34により搬送された用紙Pは、搬送ドラム31との対向位置で搬送ドラム31へ受け渡される。
【0017】
搬送ドラム31の表面にも把持手段(用紙グリッパ)が設けられており、用紙Pの先端が把持手段(用紙グリッパ)によって把持される。搬送ドラム31の表面には、複数の吸引穴が分散して形成され、吸引手段によって搬送ドラム31の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。そして、渡し胴34から搬送ドラム31へ受け渡された用紙Pは、用紙グリッパによって先端が把持されるとともに、吸引手段による吸い込み気流によって搬送ドラム31上に吸着担持され、搬送ドラム31の回転に伴って搬送される。
【0018】
液滴吐出部32は、液滴を吐出する4つの液滴吐出ユニット33(33A~33D)を備えている。これら液滴吐出ユニット33(33A~33D)は、搬送ドラム31の上側外周に沿って放射状、等間隔かつ
図1で左右対称に配設されている。
【0019】
液滴吐出ユニット33は、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。
【0020】
液滴吐出ユニット33Aはシアン(C)の液体を、液滴吐出ユニット33Bはマゼンタ(M)の液体を、液滴吐出ユニット33Cはイエロー(Y)の液体を、液滴吐出ユニット33Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出することができる。また、その他、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出を行う液滴吐出ユニットを使用することもできる。
【0021】
液滴吐出部32の各液滴吐出ユニット33は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。搬送ドラム31に担持された用紙Pが液滴吐出部32との対向領域を通過するときに、吐出ユニット33から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0022】
液滴吐出部32で液体が付与された用紙Pは搬送ドラム31から受け渡し胴35に渡され、受け渡し胴35が受け取った用紙Pは搬送機構部41に渡されて、乾燥部(加熱部)40に移送される。乾燥部40は、画像形成部30で用紙P上に付着した液体を乾燥させる。これにより、液体中の水分等の液分が蒸発し、用紙P上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、用紙Pのカールが抑制される。
【0023】
反転機構部60は、乾燥部40を通過した用紙Pに対して両面印刷を行うときに、スイッチバック方式で、用紙Pを反転する機構である。反転された用紙Pは画像形成部30の搬送経路61を通じて渡し胴34よりも上流側に逆送される。反転機構部60を通じて搬送されてくる用紙Pは、排紙トレイ114上に順次積み重ねられて保持される。
【0024】
(●傾斜搬送機構)
反転機構部60の最後の搬送ローラ62の下流側に、
図3Aと
図3Bに示すように傾斜搬送機構が接続されている。この傾斜搬送機構によって上り傾斜θの傾斜搬送路が形成されている。
【0025】
傾斜搬送機構は、傾斜搬送路の下側にあって用紙Pの下面をガイドする下側搬送ガイド110と、傾斜搬送路の上側にあって用紙Pの上面をガイドする上側搬送ガイド120を有する。上側搬送ガイド120の下面には、用紙Pを搬送するための駆動側搬送ローラ111が配設されている。
【0026】
また下側搬送ガイド110の上面には、搬送ローラ111と対をなすアイドラ側搬送ローラが配設されている。また、傾斜搬送機構の右側(入口側)には入口側搬送ローラ113が配設され、左側(出口側)には排紙ローラ112が配設されている。
【0027】
上側搬送ガイド120は、
図3Cと
図4に示すように、傾斜搬送路の幅方向片側で傾斜搬送路に沿って配設された回動軸Sを中心として開閉可能に構成されている。回動軸Sの上下一対のヒンジ部P1、P2は、
図4のように傾斜搬送機構の側板に固定されている。上側搬送ガイド120を回動軸Sを中心として
図3Cの鎖線位置から実線位置に回動(開放)することで、上側搬送ガイド120を
図3Bの高さhで開いてジャム処理可能エリアJを形成することができる。
【0028】
図3Cと
図4に示すように、上側搬送ガイド120の回動軸Sから離間した部分が、第2付勢部材としてのガススプリング140によって、上側搬送ガイド120の開方向に付勢されている。このガススプリング140によって、ジャム処理のために上側搬送ガイド120を持ち上げて開放する力を軽減することができ、また上側搬送ガイド120を開放状態で保持(フリーストップ)することができる。
【0029】
ガススプリング140は、
図4のように上側搬送ガイド120の傾斜方向の上端部であって、傾斜搬送路の幅方向で回動軸Sとは反対側の端部に取付けることができる。このようにガススプリング140を取付けることで、
図3Cに示すジャム処理可能エリアJを左右方向で広く確保することができる。また、ガススプリング140を回動軸Sからできるだけ離間することで、上側搬送ガイド120の持上げ力を軽減でき、これによってガススプリング140の小径化・低廉化と、持上げに伴う上側搬送ガイド120の変形防止を図ることができる。
【0030】
ガススプリング140の本体基端部は、上側搬送ガイド120の上面に左右一対で配設された補強リブ121の一方の上端ブラケット122に枢着されている。またガススプリング140のロッド部の先端は、図示しない反対側の側板の下部に固定的に配設された支持部150に枢着されている。
【0031】
(●上側搬送ガイドに作用する力)
次に、
図5を参照して開状態の上側搬送ガイド120に作用する力関係を説明する。
図5(a)(b)の鎖線は上側搬送ガイド120の閉じた位置を示している。この状態で用紙Pが傾斜搬送路に沿って搬送される。
【0032】
用紙ジャムが発生すると、ジャム処理のために上側搬送ガイド120を
図5(a)(b)の実線位置まで持上げる。すなわち、上側搬送ガイド120を回動軸Sを中心として上方に回動する。
【0033】
図5の実線で示す回動位置では、
図5(b)に示すように、回動軸Sに対して重力mgとモーメントM1が作用する。mは上側搬送ガイド120の質量、gは重力加速度である。またM1は、重力mgの分力F1(
図6A参照)による回動軸Sまわりの回転モーメントである。
【0034】
図6Aに示すように、上側搬送ガイド120に作用する重力mgは、傾斜搬送路に対して垂直方向の力F1(ローラ法線方向の分力)と、傾斜搬送路に平行な方向の力F2(ローラ接線方向の分力)に分けることができる。力F2は、上側搬送ガイド120の筐体を傾斜搬送路に沿って下向きに変形させようとする方向に作用する。
【0035】
上側搬送ガイド120の筐体に十分な剛性があれば力F2で筐体が変形するおそれはないが、筐体を高剛性にするほど質量増により重力mgも大きくなる。このため、上側搬送ガイド120の変形は程度差はあっても不可避であるのが実際である。このような上側搬送ガイド120の変形が発生すると、搬送ローラ111の位置(回動軸Sと反対側の位置)が
図6Bの破線⇒実線のように下側にズレて(傾斜して)しまい、これが用紙スキューや用紙ジャムの要因となる。
【0036】
(●引張スプリング)
そこで本実施形態では、
図7A、
図7Bのように、第1付勢部材としての引張スプリング160を配設した。この引張スプリング160は、
図7Aの第1開放状態から
図7Bの第2開放状態のように上側搬送ガイド120を開くにつれて短くなる。
【0037】
引張スプリング160によって、以下に説明するように上側搬送ガイド120の筐体の変形や搬送ローラ111の傾斜を防止することができる。引張スプリング160は安価であり、傾斜搬送機構を低コストかつ簡易に構成可能である。
【0038】
引張スプリング160は、側板130の内側面に配設されたブラケット131と、上側搬送ガイド120の上面に配設されたブラケット123の間に張架されている。したがって、
図7A⇒
図7Bのように上側搬送ガイド120を大きく開いた状態でジャム処理をする際に、引張スプリング160が平面視(
図7BのB矢視)では回動軸Sに近づき、引張スプリング160の張力F3の分力F3sinθが回動軸Sに沿って上方に作用する。ここでθは引張スプリング160の傾斜角である。
【0039】
図7Bは図示の関係でF3sinθの方向が下向きになっているが、回動軸Sが紙面奥側に向かって傾斜しているので、張力F3の分力F3sinθは回動軸Sに沿って上向きに作用する。この上向きの分力F3sinθが、上側搬送ガイド120に作用する重力mgの分力F2(
図6A)と均衡することで、上側搬送ガイド120の筐体の変形や搬送ローラ111の傾斜を防止することができる。
【0040】
一方、上側搬送ガイド120には回動軸Sを中心とするM1、M1’の回転モーメントが作用する。回転モーメントM1、M1’は上側搬送ガイド120に作用する重力mgによるもので、上側搬送ガイド120の重心が水平方向で回動軸Sに近づくにつれてM1⇒M1’と低減する。
【0041】
回転モーメントM1、M1’をガススプリング140だけで支えるのは、ガススプリング140の小径化・低廉化にとって好ましくない。本実施形態では、
図7Bの上側搬送ガイド120に作用する分力F3cosθで、M1、M1’とは反対方向の回転モーメントM2(
図8)が得られる。
【0042】
したがって、当該回転モーメントM2によってガススプリング140の負担を軽減し、小径化・低廉化を図ることができる。また、ガススプリング140の負担軽減に伴って上側搬送ガイド120の変形防止も図ることができる。
【0043】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、前記実施形態は上り傾斜の傾斜搬送機構であったが、下り傾斜の傾斜搬送機構にも同様に本発明を適用することができる。
【0044】
また、本発明は用紙Pを上下方向に搬送する搬送機構にも同じように適用可能である。この場合、上下方向の搬送路の片側に配設される片側搬送ガイド(一般的に開閉ドアの内側に配設される)の上端部であって、回動軸Sから搬送路の幅方向で離間した部分が第1付勢部材としての引張スプリングで回動軸Sの方向に付勢される。
【0045】
片側搬送ガイドは回動軸Sを中心として水平方向に開閉するので、フリーストップのためにガススプリング140を設ける必要性は少ない。しかし、片側搬送ガイドをポップアップ式に開きたい場合はガススプリング140などの第2付勢部材を配設してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1:インクジェットプリンタ(画像形成装置) 10:搬入部
11:搬入トレイ 11A:下段搬入トレイ
11B:上段搬入トレイ 12、12A、12B:給送装置
20:前処理部 21:塗布部
30:画像形成部 31:搬送ドラム
32:液滴吐出部 33A~33D:液滴吐出ユニット
34:渡し胴 35:受け渡し胴
40:乾燥部 41:搬送機構部
50:搬出部 60:反転機構部
61:搬送経路 62:搬送ローラ
110:下側搬送ガイド 111:駆動側搬送ローラ
112:排紙ローラ 113:入口側搬送ローラ
114:排紙トレイ 120:上側搬送ガイド
121:補強リブ 122:上端ブラケット
130:側板 131:ブラケット
140:ガススプリング 150:支持部
160:引張スプリング J:ジャム処理可能エリア
P:用紙 H1、H2:ヒンジ部
S:回動軸
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】