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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095347
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】デルタシグマ変調器
(51)【国際特許分類】
   H03M 3/02 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
H03M3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211171
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 一馬
【テーマコード(参考)】
5J064
【Fターム(参考)】
5J064AA04
5J064BA03
5J064BC07
5J064BC10
5J064BC16
(57)【要約】      (修正有)
【課題】回路面積が小さく、誤差を低減できるデルタシグマ変調器を提供する。
【解決手段】デルタシグマ変調器10は、入力されるアナログ信号を積分する第1の積分部と、第1の積分部が出力した信号を積分する第2の積分部と、第1の積分部が出力した信号及び第2の積分部が出力した信号の少なくとも一つを選択して、該選択した信号に応じた信号を出力する選択部と、選択部が出力した信号を量子化する量子化器と、量子化器の出力をDA変換して第1の積分部にフィードバックするフィードバック信号を出力するDA変換器と、第1の積分部及び第2の積分部を、第1の期間と第2の期間で異なる積分動作を行うように制御する制御回路とを備える。制御回路は、選択部を、第1の期間の量子化器の最終出力から第2の期間が開始する前までの間に、信号の選択を変更するように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されるアナログ信号を積分する第1の積分部と、
前記第1の積分部が出力した信号を積分する第2の積分部と、
前記第1の積分部が出力した信号及び前記第2の積分部が出力した信号の少なくとも一つを選択して、該選択した信号に応じた信号を出力する選択部と、
前記選択部が出力した信号を量子化する量子化器と、
前記量子化器の出力をDA変換して前記第1の積分部にフィードバックするフィードバック信号を出力するDA変換器と、
前記第1の積分部及び前記第2の積分部を、第1の期間と第2の期間で異なる積分動作を行うように制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記選択部を、前記第1の期間の前記量子化器の最終出力から前記第2の期間が開始する前までの間に、前記信号の選択を変更するように制御する
デルタシグマ変調器。
【請求項2】
前記制御部は、前記選択部を、前記信号の選択を前記第2の期間の少なくとも1クロック前に変更するように制御する
請求項1に記載のデルタシグマ変調器。
【請求項3】
前記制御部は、前記選択部を、前記第1の積分部が出力した信号及び前記第2の積分部が出力した信号の少なくとも一つを選択して、該選択した信号を前記アナログ信号に加算して出力するように制御する
請求項1または2に記載のデルタシグマ変調器。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第1の期間では、前記選択部を、前記第1の積分部が出力した信号及び前記第2の積分部が出力した信号を選択して、該選択した信号を前記アナログ信号に加算して出力するように制御し、
前記第1の期間の前記量子化器の最終出力から前記第2の期間の開始までの間に、前記選択部を、前記第2の積分部が出力した信号のみを選択して、該選択した信号を前記アナログ信号に加算して出力するように制御する
請求項3に記載のデルタシグマ変調器。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1の積分部を、前記第1の期間では、フィードバック係数が1の積分器として動作し、前記第2の期間では、フィードバック係数が0の積分器として動作するように制御し、
前記第2の積分部を、前記第1の期間では、フィードバック係数が1の積分器として動作し、前記第2の期間では、フィードバック係数が1より大きい積分器として動作するように制御する
請求項1から4のいずれか一項に記載のデルタシグマ変調器。
【請求項6】
前記デルタシグマ変調器は、入力される前記アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換の各周期後にリセットするインクリメンタル型のAD変換器である
請求項1から5のいずれか一項に記載のデルタシグマ変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デルタシグマ変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低消費電力で高分解能化を実現するための手法として、予め定められた期間が経過するまで、1次のフィードバック係数が1の積分器として動作し、予め定められた期間が経過した後に、1次のフィードバック係数が1よりも大きい増幅器として動作するインクリメンタル型デルタシグマ変調器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
[先行技術文献]
[特許文献]
特許文献1 特開2019-118100号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、デルタシグマ変調器が提供される。デルタシグマ変調器は、入力されるアナログ信号を積分する第1の積分部を備えてよい。デルタシグマ変調器は、第1の積分部が出力した信号を積分する第2の積分部を備えてよい。デルタシグマ変調器は、第1の積分部が出力した信号及び第2の積分部が出力した信号の少なくとも一つを選択して、該選択した信号に応じた信号を出力する選択部140を備えてよい。デルタシグマ変調器は、選択部140が出力した信号を量子化する量子化器を備えてよい。デルタシグマ変調器は、量子化器の出力をDA変換して第1の積分部にフィードバックするフィードバック信号を出力するDA変換器を備えてよい。デルタシグマ変調器は、第1の積分部及び第2の積分部を、第1の期間と第2の期間で異なる積分動作を行うように制御する制御部を備えてよい。制御部は、選択部140を、第1の期間の量子化器の最終出力から第2の期間が開始する前までの間に、信号の選択を変更するように制御してよい。
【0004】
制御部は、選択部140を、信号の選択を第2の期間の少なくとも1クロック前に変更するように制御してよい。
【0005】
制御部は、選択部140を、第1の積分部が出力した信号及び第2の積分部が出力した信号の少なくとも一つを選択して、該選択した信号をアナログ信号に加算して出力するように制御してよい。
【0006】
制御部は、第1の期間では、選択部140を、第1の積分部が出力した信号及び第2の積分部が出力した信号を選択して、該選択した信号をアナログ信号に加算して出力するように制御してよい。制御部は、第1の期間の量子化器の最終出力から第2の期間の開始までの間に、選択部140を、第2の積分部が出力した信号のみを選択して、該選択した信号をアナログ信号に加算して出力するように制御してよい。
【0007】
制御部は、第1の積分部を、第1の期間では、フィードバック係数が1の積分器として動作し、第2の期間では、フィードバック係数が0の積分器として動作するように制御してよい。制御部は、第2の積分部を、第1の期間では、フィードバック係数が1の積分器として動作し、第2の期間では、フィードバック係数が1より大きい積分器として動作するように制御してよい。
【0008】
デルタシグマ変調器は、入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換の各周期後にリセットするインクリメンタル型のAD変換器であってよい。
【0009】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るデルタシグマ変調器の構成例を示す。
図2】本実施形態に係るデルタシグマ変調器のより詳細な構成例を示す。
図3】本実施形態に係るデルタシグマ変調器の選択部のより詳細な構成例を示す。
図4】デルタシグマ変調器のタイミングチャートの比較例を示す。
図5】デルタシグマ変調器のタイミングチャートの比較例を示す。
図6】デルタシグマ変調器のタイミングチャートの実施例を示す。
図7】デルタシグマ変調器のタイミングチャートの実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本実施形態に係るデルタシグマ変調器10の構成例を示す。デルタシグマ変調器10は、一例として、入力されるアナログ信号Asigをデジタル信号DSIGに変換するAD変換の各周期後にリセットするインクリメンタル型のAD変換器である。デルタシグマ変調器10は、第1の期間と第2の期間からなる1周期のAD変換とAD変換後のリセット期間とを繰り返してよい。
【0013】
デルタシグマ変調器10は、加減算部110と、第1の積分部120と、第2の積分部130と、選択部140と、量子化器150と、デジタルフィルタ155と、DA変換器170と、制御回路180と、リセット回路190とを備える。なお、本願の制御部は、本実施形態の制御回路180とリセット回路190を有するものであってよい。
【0014】
加減算部110は、入力端子100と第1の積分部120とDA変換器170とに接続される。加減算部110は、入力端子100に入力されるアナログ信号AsigからDA変換器170が出力するフィードバック信号AFBを減算したアナログ信号AIN1を第1の積分部120に出力する。
【0015】
第1の積分部120は、第2の積分部130と選択部140とに接続され、入力端子100に入力されるアナログ信号Asigを積分する。第1の積分部120は、アナログ積分器であってよい。第1の積分部120は、アナログ信号Asigとフィードバック信号AFBとの差分であるアナログ信号AIN1を積分し、アナログ信号AOUT1を第2の積分部130と選択部140とに出力する。
【0016】
第2の積分部130は、選択部140に接続され、第1の積分部120が出力したアナログ信号AOUT1を積分する。第2の積分部130は、アナログ積分器であってよい。第2の積分部130は、第1の期間及び第2の期間において、DA変換器170が出力したフィードバック信号AFBを第1の積分部120を介して受信して、積分し、積分結果であるアナログ信号AOUT2を選択部140に出力する。
【0017】
選択部140は、入力端子100と量子化器150とに接続され、入力端子100に入力されるアナログ信号Asig、第1の積分部120が出力するアナログ信号AOUT1、及び第2の積分部130が出力するアナログ信号AOUT2のうちの少なくとも1つを選択して、選択した信号に応じたアナログ信号ASUM2を出力する。選択部140は、デルタシグマ変調器10のフィードフォワード制御を実行するための構成であってよい。
【0018】
量子化器150は、デジタルフィルタ155とDA変換器170とに接続され、選択部140が出力したアナログ信号ASUM2を量子化したデジタル信号Doutを出力する。量子化器150は、外部から供給されるクロック信号に応じて、アナログ信号ASUM2を量子化してよい。量子化器150は、1ビット量子化器として機能して、2値のデジタル信号Doutに量子化してよい。これに代えて、量子化器150は、マルチビット量子化器として機能し、多値のデジタル信号Doutに量子化してもよい。
【0019】
デジタルフィルタ155は、出力端子160に接続され、量子化器150が出力する変調デジタル信号Doutをフィルタリングしてデジタル信号DSIGを出力する。デジタルフィルタ155は、制御信号に応じて、第1の期間ではデジタル信号Doutのビットストリームを積算してデジタル積分する積分フィルタとして動作し、第2の期間では1より大きいフィードバック係数を持った積分フィルタとして動作してよい。デジタルフィルタ155は、クロック信号と同期してデジタル値を演算してよい。また、デジタルフィルタ155は、リセット回路190からリセット信号を受信したことに応じて、積算量をリセットしてよい。
【0020】
また、デジタルフィルタ155は、ローパスフィルタを有し、量子化器150で発生する量子化ノイズを低減させてよい。また、デジタルフィルタ155は、デシメーションフィルタを有し、サンプリング周波数を低減させてもよい。デジタルフィルタ155は、演算結果のデジタル値を示すデジタル信号DSIGを出力端子160に供給する。
【0021】
DA変換器170は、量子化器150の出力DOUTをDA変換(デジタルアナログ変換)して第1の積分部120にフィードバックするフィードバック信号AFBを出力する。DA変換器170は、クロック信号等と同期して、デジタル信号DOUTを、アナログ信号であるフィードバック信号AFBに変換してよい。
【0022】
制御回路180は、第2の積分部130と選択部140とデジタルフィルタ155とに接続され、第2の積分部130、選択部140、及びデジタルフィルタ155の動作を切り換える制御信号を出力する。制御回路180は、予め定められたタイミングで、第2の積分部130、選択部140、及びデジタルフィルタ155の動作を切り換えてよい。制御回路180は、第2の積分部130と選択部140とに異なる制御信号を出力してよい。また、制御回路180は、リセット回路190にリセット信号を供給すべきタイミングを通知してもよい。
【0023】
リセット回路190は、第1の積分部120と第2の積分部130とデジタルフィルタ155とに接続され、予め定められた周期毎に、第1の積分部120、第2の積分部130、及びデジタルフィルタ155の出力をリセットするリセット信号を出力する。リセット回路190は、インクリメンタル型デルタシグマ変調の1変換周期毎に第1の積分部120及び第2の積分部130が保持する積分値をリセットしてよい。また、リセット回路190は、インクリメンタル型デルタシグマ変調の1変換周期内で第1の積分部120及び第2の積分部130をリセットしてもよい。第1の積分部120と第2の積分部130は、制御回路180からの制御信号とリセット回路190からのリセット信号とにより、第1の期間と第2の期間で異なる積分動作を行うように制御される。
【0024】
図2は、本実施形態に係るデルタシグマ変調器10のより詳細な構成例を示す。図2は、図1のデルタシグマ変調器10における第1の積分部120と第2の積分部130をより詳細に示す。以下、これらについてより詳細に述べる。
【0025】
第1の積分部120は、第1の加算部200と、第1の切替部201とを有し、第1の切替部201の出力を第1の加算部200の入力に戻すフィードバック経路を有する。第1の加算部200は、加減算部110とフィードバック経路と第1の切替部201の入力とに接続され、加減算部110を介してフィードバック信号AFBに応じた信号が入力される。第1の加算部200は、加減算部110からのアナログ信号AIN1と、第1の切替部201からのアナログ信号AOUT1とを加算して、第1の切替部201にアナログ信号ASUM1を出力する。
【0026】
第1の切替部201は、第1の加算部200が出力するアナログ信号ASUM1を、第1の期間では1のゲインで出力し、第2の期間では1と0のゲインで交互に出力する。第1の切替部201は、第1の遅延素子205と、第1の増幅器210と、第1のマルチプレクサ215と、第2の遅延素子220と、第2のマルチプレクサ225とを有する。
【0027】
第1の遅延素子205は、第1の加算部200と第1のマルチプレクサ215の一方の入力との間に接続され、第1の加算部200からの信号ASUM1を遅延させて出力する。第1の増幅器210は、第1の加算部200と第1のマルチプレクサ215の他方の入力との間に接続され、第1の加算部200が出力する信号ASUM1を0のゲイン(すなわち、0V)で出力する。第1のマルチプレクサ215は、出力が第2の遅延素子220と第2のマルチプレクサ225の一方の入力とに接続され、第1の遅延素子205の出力と第1の増幅器210の出力とが入力され、リセット信号に応じて第1の遅延素子205の出力と第1の増幅器210の出力との一方を出力する。第1のマルチプレクサ215は、リセット期間では第1の増幅器210が0のゲインで出力する信号をリセット信号に応じて出力してよい。
【0028】
第2の遅延素子220は、第1のマルチプレクサ215の出力と第2のマルチプレクサ225の他方の入力との間に接続され、第1のマルチプレクサ215からの信号を遅延させて出力する。第2のマルチプレクサ225は、出力が第2の積分部130と第1の加算部200の入力とに接続される。第2のマルチプレクサ225は、第2の遅延素子220の出力と第1のマルチプレクサ215の出力とが入力され、リセット信号に応じて第2の遅延素子220の出力と第1のマルチプレクサ215の出力との一方を出力する。
【0029】
リセット回路190は、第1の積分部120を、第1の期間では、フィードバック係数が1の積分器として動作し、第2の期間では、フィードバック係数が0と1で交互に変化する積分器として動作するように制御してよい。これにより、第1の積分部120は、第1の期間では、入力された信号AIN1と直前のクロック周期で出力した信号AOUT1とを加算した信号AOUT1を出力し、第2の期間では、0Vと入力された信号AIN1とを交互に出力する。
【0030】
第2の積分部130は、第2の切替部203と、第2の加算部240と、第2の増幅器245と、第4のマルチプレクサ250と、第4の遅延素子255とを有する。第2の積分部130は、第2の加算部240の出力を、第2の増幅器245と、第4のマルチプレクサ250と、第4の遅延素子255とを介して第2の加算部240の入力に戻すフィードバック経路を有する。
【0031】
第2の切替部203は、第1の期間では第1の積分部120からの信号AOUT1を遅延させて出力し、第2の期間では第1の積分部120からの信号AOUT1を遅延させないで出力する。第2の切替部203は、第3の遅延素子230と、第3のマルチプレクサ235とを有する。第3の遅延素子230は、第1の積分部120と第3のマルチプレクサ235の一方の入力との間に接続され、第1の積分部120が出力する信号AOUT1を遅延させて出力する。第3のマルチプレクサ235は、他方の入力が第1の積分部120に接続され、出力が第2の加算部240の入力に接続される。第3のマルチプレクサ235は、制御信号に応じて第3の遅延素子230の出力と第1の積分部120の出力との一方を出力する。第3のマルチプレクサ235は、第1の期間では第3の遅延素子230からの信号を出力し、第2の期間では第1の積分部120からの信号AOUT1を出力してよい。
【0032】
第2の加算部240は、第3のマルチプレクサ235からのアナログ信号AIN2とフィードバック経路からのアナログ信号とを加算して、加算結果であるアナログ信号AOUT2を出力する。第2の増幅器245は、第2の加算部240の出力と第4のマルチプレクサ250の一方の入力との間に接続され、倍率x(例えばx>1)で第2の加算部240からのアナログ信号AOUT2を増幅して、出力する。第4のマルチプレクサ250は、他方の入力が第2の加算部240の出力に接続され、出力が第4の遅延素子255に接続される。第4のマルチプレクサ250は、制御信号に応じて第2の加算部240の出力と第2の増幅器245の出力との一方を出力する。第4の遅延素子255は、第2の加算部240に接続され、第4のマルチプレクサ250からの信号を遅延させて第2の加算部240に出力する。
【0033】
第4のマルチプレクサ250は、第1の期間では第2の加算部240からの信号AOUT2を出力し、第2の期間では第2の増幅器245からの増幅された信号を出力してよい。
【0034】
制御回路180は、第2の積分部130を、第1の期間では、フィードバック係数が1の積分器として動作し、第2の期間では、フィードバック係数が1より大きい積分器として動作するように制御してよい。これにより、第2の積分部130は、第1の期間では、入力された信号AIN2と直前のクロック周期で出力した信号AOUT2とを加算した信号AOUT2を出力し、第2の期間では、入力された信号AIN2と直前のクロック周期で出力した信号AOUT2をx倍した信号とを加算した信号AOUT2を出力する。
【0035】
ここで、フィードバック係数は、第1の積分部120及び第2の積分部130のそれぞれが有するフィードバック経路に配置された増幅器の倍率を示す。例えば、第1の積分部120及び第2の積分部130の加算部の出力から入力までの経路において、当該経路に入力された信号を増幅器を介さずに通す場合に、フィードバック係数は1であり、当該経路に入力された信号を倍率xの増幅器を介して通す場合に、フィードバック係数はxである。
【0036】
図3は、本実施形態に係るデルタシグマ変調器10の選択部140のより詳細な構成例を示す。
【0037】
選択部140は、3つの入力端子300,310,320と、第3の増幅器330と、第4の増幅器340と、選択スイッチ360と、第5の増幅器350と、第3の加算部370と、出力端子380とを有する。
【0038】
入力端子300は、デルタシグマ変調器10の入力端子100に接続され、アナログ信号Asigが入力される。入力端子310は、第1の積分部120に接続され、アナログ信号AOUT1が入力される。入力端子320は、第2の積分部130に接続され、アナログ信号AOUT2が入力される。第3の増幅器330は、入力端子300と第3の加算部370との間に接続され、アナログ信号Asigをα倍に増幅して出力する。第4の増幅器340は、入力端子310と選択スイッチ360の間に接続され、アナログ信号AOUT1をα倍に増幅して出力する。選択スイッチ360は、第4の増幅器340と第3の加算部370の間に配置され、制御回路180からの制御信号に応じてオン/オフされて、第4の増幅器340と第3の加算部370との間を接続/切断する。第5の増幅器350は、入力端子320と第3の加算部370の間に接続され、アナログ信号AOUT2をα倍に増幅して出力する。
【0039】
第3の加算部370は、出力端子380に接続され、入力端子100からのアナログ信号Asig、第1の積分部120からのアナログ信号AOUT1、第2の積分部130からのアナログ信号AOUT2が入力され、加算結果であるアナログ信号ASUM2を出力する。選択部140は、制御信号に応じて選択スイッチ360がオンされると、アナログ信号αsig、αOUT1、及びαOUT2を加算して出力し、制御信号に応じて選択スイッチ360がオフされると、アナログ信号αsig及びαOUT2を加算して出力してよい。
【0040】
なお、倍率α、α、αは、任意の値であってよい。また、選択スイッチ360は、追加で第5の増幅器350と第3の加算部370との間に配置されてもよい。この場合、選択部140は、制御信号に応じて、選択スイッチ360がオンの場合は追加の選択スイッチ360をオフし、追加の選択スイッチ360がオンの場合は選択スイッチ360をオフすることで、入力端子310及び入力端子320と第3の加算部370との間の接続を交互にオン/オフしてよい。
【0041】
図4は、デルタシグマ変調器10のタイミングチャートの比較例を示す。図4において、incrementalの期間は第1の期間を示し、exponentialの期間は第2の期間を示す。図4の横軸は時間を示す。図4において、RSTはリセット信号を示し、CLKは、デルタシグマ変調器10の各構成に入力されるクロック信号を示し、「第1の積分部」、「第2の積分部」、及び「選択部」は、incremental/exponentialの期間における第1の積分部120、第2の積分部130、及び選択部140の動作状態を示す。
【0042】
図4において、リセット回路190がRST信号をローに立ち下げた後、制御回路180は、第1の積分部120、第2の積分部130、及び選択部140に、incrementalの動作状態に切り替えるための制御信号を入力する。incrementalの期間終了時のクロック信号j+3(j>1)の立ち上がり後、制御回路180とリセット回路190は、第1の積分部120、第2の積分部130、及び選択部140にexponentialの動作状態に切り替えるための信号を同時に入力する。これにより、第1の積分部120、第2の積分部130、及び選択部140は、incrementalの動作状態からexponentialの動作状態に同時に切り替わる。
【0043】
図5は、デルタシグマ変調器10のタイミングチャートの比較例を示す。図5は、図4のタイミングチャートにおいて、第1の積分部120、第2の積分部130、及び選択部140の出力とクロック信号との対応関係を示す。クロック信号のリセット期間の終了からj回目の周期において、量子化器150が出力するデジタル信号DoutをD(j)と示し、当該D(j)をフィードバックして第1の積分部120が出力するアナログ信号AOUT1をI1(j)、I1(j)を用いて第2の積分部130が出力するアナログ信号AOUT2をI2(j)と示す。
【0044】
デルタシグマ変調器10は、リセット期間が終了してRST信号をローに立ち下げた後、incrementalの期間からAD変換周期が始まる。クロック信号CLKの最初の立ち上がりCLKの1にて、量子化器150は、選択部140の出力ASUM2を入力として最初の出力D(1)を供給する。第1の積分部120は、量子化器150の出力D(1)を次のCLKの2にてフィードバックで取り込み、出力I1(1)を供給する。このCLKの2にて同時に、量子化器150は、次の出力D(2)を供給する。第2の積分部130は、第1の積分部120の出力I1(1)を次のCLKの3にて取り込み、出力I2(1)を供給する。このCLKの3にて、量子化器150及び第1の積分部120は、ともに次の出力D(3)及びI1(2)を供給する。
【0045】
このように動作を繰り返すことで、量子化器150がCLKのj回目における出力D(j)を供給した後、第2の積分部130は、2クロック後のCLKのj+2回目に出力I2(j)を供給し、incrementalの動作状態を終了する。次のCLKのj+3回目から、exponentialの期間が開始される。クロック信号j+3の立ち上がり前に、選択部140は、第1の積分部120及び第2の積分部130からincrementalの動作状態での信号を受け取っているため、クロック信号j+3での出力D(j+3)はincrementalの動作状態の出力となってしまう。
【0046】
具体的には、出力D(j+3)の供給時の選択部140の出力ASUM2は、式(ASUM2=αsig+αOUT1+αOUT2)で示される。しかし、この出力ASUM2は、量子化器150のexponentialの期間の出力ではない。
【0047】
一方、量子化器150がexponentialの期間の最初の出力を供給するためには、選択部140は、exponentialの動作状態でなくてはならず、選択部140の出力ASUM2は、式(ASUM2=αsig+αOUT2)で示されるものである必要がある。従って、CLKのj+4回目にて選択部140をexponentialの動作状態として動作させた後に、量子化器150が量子化を行い、出力D(j+4)を供給する。第2の積分部130は、exponentialの期間では、出力D(j+4)を取り込み、出力I2(j+4)を供給する。以上より、比較例では、デルタシグマ変調器10の出力は、exponentialの期間への切り替え時に、出力D(j+3)の分、少なくとも1クロックの遅延が生じてしまう。
【0048】
図6は、デルタシグマ変調器10のタイミングチャートの実施例を示す。図6において、incrementalの期間は第1の期間を示し、exponentialの期間は第2の期間を示す。図6の横軸は時間を示す。図6において、RSTはリセット信号を示し、CLKは、デルタシグマ変調器10の各構成に入力されるクロック信号を示し、「第1の積分部」、「第2の積分部」、及び「選択部」は、incremental/exponentialの期間における第1の積分部120、第2の積分部130、及び選択部140の動作状態を示す。
【0049】
本実施形態のタイミングチャートにおいて、制御回路180は、選択部140を、第1の期間(incrementalの期間)の量子化器150の最終出力から第2の期間(exponentialの期間)が開始する前までの間に、信号の選択を変更するように制御する。図6においては、incrementalの期間後のexponentialの期間開始時のクロック信号j+3の立ち上がりの1クロック前にpreの期間を設けて、当該preの期間において選択部140が、exponentialの動作状態に切り替わるように制御される。
【0050】
図6において、RST信号をローに立ち下げた後、制御回路180とリセット回路190は、第1の積分部120、第2の積分部130、及び選択部140に、incrementalの動作状態に切り替えるための信号を入力する。クロック信号j+2の立ち上がりにおいて、制御回路180は、選択部140にexponentialの動作状態に切り替える(すなわち、選択部140の選択スイッチ360をオフする)ための信号を入力する。従って、preの期間においては、選択部140のみがexponentialの動作状態であり、第1の積分部120及び第2の積分部130は、incrementalの動作状態である。
【0051】
クロック信号j+3の立ち上がりにおいて、制御回路180とリセット回路190は、第1の積分部120及び第2の積分部130にexponentialの動作状態に切り替えるための信号を入力する。これにより、第1の積分部120及び第2の積分部130は、クロック信号j+3の立ち上がりにincrementalの動作状態からexponentialの動作状態に同時に切り替わる。
【0052】
図7は、デルタシグマ変調器10のタイミングチャートの実施例を示す。図7は、図6のタイミングチャートにおいて、第1の積分部120、第2の積分部130、及び選択部140の出力とクロック信号との対応関係を示す。クロック信号のリセット期間の終了からj回目の周期において、量子化器150が出力するデジタル信号DoutをD(j)と示し、当該D(j)をフィードバックして用いて第1の積分部120が出力するアナログ信号AOUT1をI1(j)、I1(j)を用いて第2の積分部130が出力するアナログ信号AOUT2をI2(j)と示す。デルタシグマ変調器10の動作は、incrementalの期間では図5と同様であり、説明を省略する。
【0053】
選択部140は、クロックのj+2回目にpreの期間となり、選択スイッチ360はオフになり、第2の積分部130の出力I2(j)を受け取る。従って、選択部140は、preの期間において式(ASUM2=αsig+αOUT2)で示される出力を供給する。第2の積分部130は、incrementalの動作状態のための制御信号が入力されているため、incrementalの動作状態で動作してI2(j)を得るが、選択部140は、exponentialの動作状態のための制御信号が入力されているためexponentialの動作状態で量子化器150に出力ASUM2を供給する。従って、量子化器150は、クロックのj+3回目の立ち上がりでは(すなわち、exponentialの期間開始時)、図5のD(j+4)と同等の出力を得ることが可能となり、exponentialの期間開始時の遅延を解消できる。
【0054】
なお、本実施例では、第2の期間開始の1クロック前に選択部140の制御を変えることで遅延解消しているが、インクリメンタル型デルタシグマ変調器の次数によっては第2期間開始の1クロック前に限定されない。図7を例に挙げると、第1の期間の量子化器150の最終出力D(j)を供給した後、第2の期間が開始する前までの間(すなわち、図7における2クロックの期間a)であれば、いずれのタイミングで選択部140の制御を切り替えてもよい。量子化器150が出力D(j)を供給した後から第2の期間開始までの区間は、出力D(j)を第2の積分部130までフィードバックさせるために動作しているため、この区間に得られる量子化器150の出力D(j+1)及びD(j+2)は不要なものになる。例えば、n次デルタシグマ変調器(n>1)の場合はnクロック前から選択部140の制御を切り替えてよく、具体的には、2次デルタシグマ変調器であれば第2の期間開始の2クロック前から、3次デルタシグマ変調器であれば第2の期間開始3クロック前から、第2の期間開始前までの間に、選択部140の制御を切り替えてよい。
【0055】
また、デルタシグマ変調器10は、リセット回路190を備えていなくてもよく、この場合は、リセット動作を行わないため、インクリメンタル型ではないAD変換器であってよい。
【0056】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0057】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0058】
10 デルタシグマ変調器
100 入力端子
110 加減算部
120 第1の積分部
130 第2の積分部
140 選択部
150 量子化器
155 デジタルフィルタ
160 出力端子
170 DA変換器
180 制御回路
190 リセット回路
200 第1の加算部
201 第1の切替部
205 第1の遅延素子
210 第1の増幅器
215 第1のマルチプレクサ
220 第2の遅延素子
225 第2のマルチプレクサ
203 第2の切替部
240 第2の加算部
245 第2の増幅器
250 第4のマルチプレクサ
255 第4の遅延素子
300 入力端子
310 入力端子
320 入力端子
330 第3の増幅器
340 第4の増幅器
350 第5の増幅器
360 選択スイッチ
370 第3の加算部
380 出力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7