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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095383
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】炭化水素樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/10 20060101AFI20230629BHJP
   C08F 212/00 20060101ALI20230629BHJP
   C08F 232/08 20060101ALI20230629BHJP
   C08F 236/04 20060101ALI20230629BHJP
   C08F 232/04 20060101ALI20230629BHJP
   C08L 23/18 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C08F210/10
C08F212/00
C08F232/08
C08F236/04
C08F232/04
C08L23/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211235
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野澤 淳
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BB051
4J002BC021
4J002BK001
4J002BL001
4J002BP012
4J002GJ01
4J100AA02Q
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA05Q
4J100AA06Q
4J100AA07Q
4J100AA08Q
4J100AA09Q
4J100AA15Q
4J100AA16Q
4J100AA17Q
4J100AA19Q
4J100AB02P
4J100AB02Q
4J100AB03P
4J100AB03Q
4J100AB04P
4J100AB04Q
4J100AR03Q
4J100AR04Q
4J100AR05Q
4J100AR10P
4J100AR10Q
4J100AR22Q
4J100AR33Q
4J100AS04Q
4J100CA03
4J100DA01
4J100DA09
4J100DA23
4J100DA44
4J100FA12
4J100FA19
4J100FA34
4J100FA35
4J100FA37
4J100JA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低温特性、接着力および保持力に優れたホットメルト粘接着剤組成物を与えることのできる炭化水素樹脂を、高い生産性にて製造することのできる炭化水素樹脂の製造方法を提供すること。
【解決手段】炭化水素溶媒中、ルイス酸触媒を用いたカチオン重合により単量体を重合する工程を備える炭化水素樹脂の製造方法であって、芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有する第1の単量体を重合する第1重合工程と、脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有する第2の単量体を重合する第2重合工程とを備え、前記第1重合工程における、前記第1の単量体の使用割合を、重合に使用する単量体の全量に対し1~35質量%とする炭化水素樹脂の製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素溶媒中、ルイス酸触媒を用いたカチオン重合により単量体を重合する工程を備える炭化水素樹脂の製造方法であって、
芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有する第1の単量体を重合する第1重合工程と、
脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有する第2の単量体を重合する第2重合工程とを備え、
前記第1重合工程における、前記第1の単量体の使用割合を、重合に使用する単量体の全量に対し1~35質量%とする炭化水素樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記第1の単量体が、スチレン化合物、インデン化合物、およびC9留分からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の炭化水素樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記第2の単量体が、
1,3-ペンタジエン単量体1~60質量%、
炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体1~30質量%、
炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体0~65質量%、
脂環式ジオレフィン単量体0~10質量%、および
芳香族モノオレフィン単量体0~40質量%を含む請求項1または2に記載の炭化水素樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記第1重合工程における重合により形成される第1の重合体の軟化点が140~200℃であり、
前記第2重合工程における重合により形成される第2の重合体の軟化点が50~120℃である請求項1~3のいずれかに記載の炭化水素樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温特性、接着力および保持力に優れたホットメルト粘接着剤組成物を与えることのできる炭化水素樹脂を、高い生産性にて製造することのできる炭化水素樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モノオレフィン性不飽和炭化水素と鎖状共役ジオレフィンとを共重合することにより得られる炭化水素樹脂などの、炭素-炭素二重結合を有する炭化水素樹脂が知られている。このような炭化水素樹脂は、たとえば、ホットメルト粘接着剤組成物を形成するための粘着付与樹脂などとして用いられている。
【0003】
このような炭化水素樹脂として、たとえば、特許文献1では、軟化点が140~180℃である芳香族系炭化水素樹脂と、軟化点が70~110℃である非芳香族系炭化水素樹脂とを混合してなる炭化水素樹脂が開示されている。この特許文献1の技術においては、炭化水素樹脂として、芳香族系炭化水素樹脂と、非芳香族系炭化水素樹脂とを混合したものを用いることで、スチレン-共役ジエン系ブロック共重合体用の粘着付与剤として用いた場合に、得られる粘着剤組成物を、タック、接着力および保持力に優れたものとすることができると記載されいてる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-157686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術においては、芳香族系炭化水素樹脂と、非芳香族系炭化水素樹脂とを別々に製造し、これらを混合するものであるが、本発明者等が検討したところ、このような特許文献1の技術には、次のような問題があることがわかった。すなわち、芳香族系炭化水素樹脂を単独で得た場合には、芳香族系炭化水素樹脂は、溶融粘度が高く、溶融状態での送液性に劣るという問題があり、また、非芳香族系炭化水素樹脂を単独で得た場合には、非芳香族系炭化水素樹脂は、ブロッキングし易く、そのため、取り扱い性に劣るという問題があり、そのため、生産性の向上という観点より、改善が必要なものであった。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、低温特性、接着力および保持力に優れたホットメルト粘接着剤組成物を与えることのできる炭化水素樹脂を、高い生産性にて製造することのできる炭化水素樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく検討を行ったところ、炭化水素溶媒中、ルイス酸触媒を用いたカチオン重合により単量体を重合することにより炭化水素樹脂を製造する際に、芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有する第1の単量体を重合する工程と、脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有する第2の単量体を重合する工程とを別々に備えるものとし、さらには、この際における、第1の単量体の使用割合を、特定の範囲とすることにより、低温特性、接着力および保持力に優れたホットメルト粘接着剤組成物を与えることのできる炭化水素樹脂を、高い生産性にて製造することができることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、炭化水素溶媒中、ルイス酸触媒を用いたカチオン重合により単量体を重合する工程を備える炭化水素樹脂の製造方法であって、
芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有する第1の単量体を重合する第1重合工程と、
脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有する第2の単量体を重合する第2重合工程とを備え、
前記第1重合工程における、前記第1の単量体の使用割合を、重合に使用する単量体の全量に対し1~35質量%とする炭化水素樹脂の製造方法が提供される。
【0009】
本発明において、前記第1の単量体が、スチレン化合物、インデン化合物、およびC9留分からなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましい。
本発明において、前記第2の単量体が、1,3-ペンタジエン単量体1~60質量%、炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体1~30質量%、炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体0~65質量%、脂環式ジオレフィン単量体0~10質量%、および芳香族モノオレフィン単量体0~40質量%を含むものであることが好ましい。
本発明において、前記第1重合工程における重合により形成される第1の重合体の軟化点が140~200℃であり、前記第2重合工程における重合により形成される第2の重合体の軟化点が50~120℃であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低温特性、接着力および保持力に優れたホットメルト粘接着剤組成物を与えることのできる炭化水素樹脂を、高い生産性にて製造することのできる炭化水素樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の炭化水素樹脂の製造方法は、
炭化水素溶媒中、ルイス酸触媒を用いたカチオン重合により単量体を重合する工程を備える炭化水素樹脂の製造方法であって、
芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有する第1の単量体を重合する第1重合工程と、
脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有する第2の単量体を重合する第2重合工程とを備え、
前記第1重合工程における、前記第1の単量体の使用割合を、重合に使用する単量体の全量に対し1~35質量%とするものである。
【0012】
<炭化水素樹脂>
まず、本発明の製造方法により製造する炭化水素樹脂について、説明する。本発明の製造方法により製造する炭化水素樹脂は、ルイス酸触媒を用いたカチオン重合により単量体を重合することにより得られるものであればよく特に限定されない。
【0013】
本発明の製造方法により製造する炭化水素樹脂としては、特に限定されないが、C5/C9系炭化水素樹脂であることが好ましい。
【0014】
C5/C9系炭化水素樹脂は、ナフサを熱分解して得られるC5留分に含まれる単量体の少なくとも1種類およびナフサを熱分解して得られるC9留分に含まれる単量体の少なくとも1種類を含む単量体を重合して得られる炭化水素樹脂をいうものである。
【0015】
C5留分に含まれる単量体としては、たとえば、1,3-ペンタジエン、イソプレン、シクロペンタジエンなどの炭素数4~5の共役ジエン単量体を挙げることができ、なかでも、C5留分として1,3-ペンタジエンを含むものであること、すなわち、炭化水素樹脂が1,3-ペンタジエン単量体単位を含むものであることが好ましい。
【0016】
なお、C5留分に含まれる単量体および後述するC9留分に含まれる単量体は、ナフサを熱分解した際にC5留分またはC9留分として含まれ得る単量体であればよい。たとえば、上記C5留分に含まれる単量体やC9留分に含まれる単量体としては、ナフサを熱分解してC5留分として得られた単量体や、ナフサを熱分解してC9留分として得られた単量体に限定されるものではなく、他の合成方法等により得られた単量体であってもよい。
【0017】
C9留分に含まれる単量体としては、たとえば、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン化合物;インデン、1-メチルインデンなどのインデン化合物;クマロンなどの炭素数8~10の芳香族モノオレフィンを挙げることができる。
【0018】
このようなC5/C9系炭化水素樹脂としては、より具体的には、脂肪族単量体単位としての、1,3-ペンタジエン単量体単位、および炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体単位、ならびに、芳香族単量体単位としての、芳香族モノオレフィン単量体単位を少なくとも含む炭化水素樹脂が好ましく、当該炭化水素樹脂は、さらに必要に応じて、脂肪族単量体単位としての、炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体単位、および脂環式ジオレフィン単量体単位をさらに含むものであってもよい。
【0019】
炭化水素樹脂中における、1,3-ペンタジエン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは1~60質量%であり、より好ましくは10~55質量%、さらに好ましくは15~50質量%、さらにより好ましくは20~45質量%、特に好ましくは22~43質量%である。1,3-ペンタジエン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、低温特性により優れたものとすることができる。
【0020】
炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体単位を形成する炭素数4~6の脂環式モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合を1つと非芳香族性の環構造とを有する炭素数が4~6の炭化水素化合物である。炭素数4~6の脂環式モノオレフィンの具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロブテン、メチルシクロペンテンなどが挙げられる。
【0021】
炭化水素樹脂中における、炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは1~30質量%であり、より好ましくは3~27質量%、さらに好ましくは5~26質量%、さらにより好ましくは7~25質量%、特に好ましくは7~24質量%である。炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、低温特性により優れたものとすることができる。
【0022】
なお、炭素数4~6の脂環式モノオレフィンとしては、これに該当する各化合物の割合は任意の割合でよく、特に限定されないが、少なくともシクロペンテンが含まれていることが好ましく、炭素数4~6の脂環式モノオレフィン中にシクロペンテンの占める割合が50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0023】
芳香族モノオレフィン単量体単位を形成する芳香族モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合1つを有する芳香族化合物である。芳香族モノオレフィンの具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、ビニルトルエンなどのスチレン化合物;インデン、1-メチルインデンなどのインデン化合物;クマロンなどが挙げられる。
【0024】
炭化水素樹脂中における、芳香族モノオレフィン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0.8~50質量%であり、より好ましくは3~45質量%、さらに好ましくは5~35質量%、特に好ましくは6~27質量%である。芳香族モノオレフィン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、接着力および保持力により優れたものとすることができる。
【0025】
炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体単位を形成する炭素数4~8の非環式モノオレフィンは、その分子構造中にエチレン性不飽和結合1つを有し、環構造を有さない炭素数が4~8の鎖状炭化水素化合物である。炭素数4~8の非環式モノオレフィンの具体例としては、1-ブテン、2-ブテン、イソブチレン(2-メチルプロペン)などのブテン類;1-ペンテン、2-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテンなどのペンテン類;1-ヘキセン、2-ヘキセン、2-メチル-1-ペンテンなどのヘキセン類;1-ヘプテン、2-ヘプテン、2-メチル-1-ヘキセンなどのヘプテン類;1-オクテン、2-オクテン、2-メチル-1-ヘプテン、ジイソブチレン(2,4,4-トリメチル-1-ペンテンおよび2,4,4-トリメチル-1-ペンテン)などのオクテン類;などを挙げることができる。
【0026】
炭化水素樹脂中における、炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0~50質量%であり、より好ましくは10~47質量%、さらに好ましくは20~45質量%、特に好ましくは27~43質量%である。炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、低温特性により優れたものとすることができる。
【0027】
脂環式ジオレフィン単量体単位を形成する脂環式ジオレフィンは、その分子構造中に、2つ以上のエチレン性不飽和結合と非芳香族性の環構造とを有する炭化水素化合物である。脂環式ジオレフィンの具体例としては、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどのシクロペンタジエンの多量体、メチルシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンの多量体などが挙げられる。
【0028】
炭化水素樹脂中における、脂環式ジオレフィン単量体単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは0~10質量%であり、より好ましくは0.5~8質量%、さらに好ましくは1~6質量%、特に好ましくは1.5~4.5質量%である。脂環式ジオレフィン単量体単位の含有量を上記範囲とすることにより、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、低温特性により優れたものとすることができる。
【0029】
また、本発明の製造方法により製造される炭化水素樹脂としては、1,3-ペンタジエン単量体単位、炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体単位、芳香族モノオレフィン単量体単位、炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体単位、および脂環式ジオレフィン単量体単位以外の、その他の単量体単位を含んでいてもよい。
【0030】
このようなその他の単量体単位を形成するその他の単量体は、1,3-ペンタジエンなどと付加共重合され得る付加重合性を有する化合物であれば、特に限定されない。このようなその他の単量体としては、たとえば、1,3-ブタジエン、1,2-ブタジエン、イソプレン、1,3-ヘキサジエン、1,4-ペンタジエンなどの1,3-ペンタジエン以外の炭素数4~6の不飽和炭化水素;シクロヘプテンなどの炭素数7以上の脂環式モノオレフィン;エチレン、プロピレン、ノネンなどの炭素数4~8以外の非環式モノオレフィン;等が挙げられる。
【0031】
炭化水素樹脂中における、その他の単量体単位の含有量は、通常、0質量%~30質量%の範囲内であり、好ましくは0~25質量%、より好ましくは0~20質量%である。
【0032】
本発明の製造方法により得られる炭化水素樹脂の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500~2000の範囲、より好ましくは600~1500の範囲、さらに好ましくは700~1400の範囲である。本発明の製造方法により得られる炭化水素樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1000~4000の範囲、より好ましくは1200~3500の範囲、さらに好ましくは1400~2800の範囲である。また、本発明の製造方法により得られる炭化水素樹脂のZ平均分子量(Mz)は、好ましくは2000~15000の範囲、より好ましくは2500~12000の範囲、さらに好ましくは2800~10000の範囲である。
【0033】
本発明の製造方法により得られる炭化水素樹脂の数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)は、好ましくは1.2~3.5の範囲であり、より好ましくは1.5~3.0の範囲、さらに好ましくは1.7~2.6の範囲である。また、本発明の製造方法により得られる炭化水素樹脂の重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)は、好ましくは1.8~5.0の範囲であり、より好ましくは1.9~4.5の範囲、さらに好ましくは2.1~4.0の範囲である。
【0034】
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)および重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)を上記範囲とすることにより、たとえば、炭化水素樹脂をホットメルト粘接着剤組成物用途に用いる場合に、ベースポリマーとの相溶性を高めることができ、これにより、粘着性能を高めることができる。
【0035】
炭化水素樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)および重量平均分子量に対するZ平均分子量の比(Mz/Mw)は、高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値として求めることができる。
【0036】
また、本発明の製造方法により得られる炭化水素樹脂の軟化点は、特に限定されないが、好ましくは30℃以上であり、より好ましくは50℃~125℃、さらに好ましくは60℃~115℃の範囲内であり、特に好ましくは80℃~110℃である。軟化点を上記範囲とすることにより、たとえば、ブロッキングすることなく長期保存が可能であり、また、炭化水素樹脂をホットメルト粘接着剤組成物用途に用いる場合に、ホットメルト混錬時に樹脂の溶融が容易であり、かつ、ベースポリマーとの相溶性を高めることができ、これにより、粘着性能を高めることができる。炭化水素樹脂の軟化点は、JIS K 6863に従い測定することができる。
【0037】
<炭化水素樹脂の製造方法>
次いで、本発明の炭化水素樹脂の製造方法について、説明する。
本発明の炭化水素樹脂の製造方法は、
炭化水素溶媒中、ルイス酸触媒を用いたカチオン重合により単量体を重合する工程を備える炭化水素樹脂の製造方法であって、
芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有する第1の単量体を重合する第1重合工程と、
脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有する第2の単量体を重合する第2重合工程とを備え、
前記第1重合工程における、前記第1の単量体の使用割合を、重合に使用する単量体の全量に対し1~35質量%とするものである。
【0038】
本発明の製造方法の第1重合工程は、炭化水素溶媒中において、ルイス酸触媒を用いたカチオン重合により、芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有する第1の単量体を重合する工程である。
【0039】
ルイス酸触媒としては、特に限定されないが、フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒などが挙げられる。フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒としては、特に限定されないが、アルミニウム、鉄、タンタル、ジルコニウム、スズ、ベリリウム、ホウ素、アンチモン、ガリウム、ビスマス、モリブデンなどのハロゲン化物を挙げることができるが、これらのなかでも、塩化アルミニウム(AlCl)や臭化アルミニウム(AlBr)などのハロゲン化アルミニウムが好適である。フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒の使用量は、重合に使用する単量体全量(たとえば、第1重合工程で使用する第1の単量体および第2重合工程で使用する第2の単量体の合計)100質量部に対し、好ましくは、0.05~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部である。
【0040】
重合に際しては、触媒活性をより高めることができるという点より、フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒に加えて、ハロゲン化炭化水素を併用してもよい。
【0041】
ハロゲン化炭化水素の具体例としては、t-ブチルクロライド、t-ブチルブロマイド、2-クロロ-2-メチルブタン、トリフェニルメチルクロライドなどの3級炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素;ベンジルクロライド、ベンジルブロマイド、(1-クロロエチル)ベンゼン、アリルクロライド、3-クロロ-1-プロピン、3-クロロ-1-ブテン、3-クロロ-1-ブチン、ケイ皮クロライドなどの炭素-炭素不飽和結合に隣接する炭素原子にハロゲン原子が結合したハロゲン化炭化水素;などが挙げられる。これらのなかでも、触媒活性と取り扱い性とのバランスに優れるという観点より、t-ブチルクロライド、ベンジルクロライドが好ましい。ハロゲン化炭化水素は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。ハロゲン化炭化水素の使用量は、フリーデルクラフツ型のカチオン重合触媒に対するモル比で、好ましくは0.05~50の範囲、より好ましくは0.1~10の範囲である。
【0042】
炭化水素溶媒としては、重合反応を阻害しないものであれば特に制限はないが、飽和脂肪族炭化水素または芳香族炭化水素が好適である。飽和脂肪族炭化水素としては、たとえば、n-ペンタン、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、3-エチルペンタン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、2,2,3-トリメチルブタン、2,2,4-トリメチルペンタンなどの炭素数5~10の鎖状飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタンなどの炭素数5~10の環状飽和脂肪族炭化水素;などが挙げられる。芳香族炭化水素としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭素数6~10の芳香族炭化水素;などが挙げられる。炭化水素溶媒は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を組み合わせて用いてもよい。炭化水素溶媒の使用量は、特に限定されないが、重合に使用する単量体全量(たとえば、第1重合工程で使用する第1の単量体および第2重合工程で使用する第2の単量体の合計量)100質量部に対して、好ましくは10~1,000質量部、より好ましくは50~500質量部である。なお、炭化水素溶媒のうち一部については、第1重合工程で用いる第1の単量体中、あるいは、第2重合工程で用いる第2の単量体中に含有させた状態で重合系に添加してもよい。
【0043】
また、本発明の製造方法の第1重合工程においては、芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有する第1の単量体を重合するものである。第1重合工程によれば、芳香族単量体単位を80質量%以上の割合で含有する第1の重合体が、炭化水素溶媒中に溶解した状態で形成される。
【0044】
第1重合工程で用いる第1の単量体としては、芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有するものであればよいが、芳香族単量体を87~99質量%の割合で含有するものがより好ましく、芳香族単量体を85~98質量%の割合で含有するものがさらに好ましい。芳香族単量体の含有割合が少なすぎると、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、接着力および保持力に劣るものとなってしまう。
【0045】
第1の単量体を構成する芳香族単量体としては、特に限定されないが、上述した芳香族モノオレフィンを用いることができ、スチレン化合物およびインデン化合物から選択される少なくも一種を含有するものとすることが好ましい。あるいは、スチレン化合物および/またはインデン化合物とともに、あるいは、これらに代えて、C9留分を用いることも好ましい。
【0046】
なお、第1重合工程で用いる第1の単量体としては、芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有するものであればよく、芳香族単量体以外の単量体、たとえば、脂肪族単量体を含有していてもよい。脂肪族単量体としては、たとえば、1,3-ペンタジエン、炭素数4~6の脂環式モノオレフィン、炭素数4~8の非環式モノオレフィン、脂環式ジオレフィンの他、上述したその他の単量体単位を形成するその他の単量体などが挙げられる。また、第1重合工程で用いる第1の単量体として、C9留分を用いる場合には、第1の単量体中には、脂肪族単量体として、C9留分に含まれる脂肪族単量体(たとえば、ジシクロペンタジエンなど)が含まれることとなる。
【0047】
なお、第1重合工程における、重合系への第1の単量体の添加方法としては特に限定されず、重合開始時に、第1の単量体を、重合系に一括で添加する方法であってもよし、あるいは、第1の単量体を、重合系に連続的に滴下する方法であってもよいが、反応温度や重合の制御性という観点より、重合系に連続的に滴下する方法が好ましい。
【0048】
また、第1重合工程において使用する第1の単量体の使用量は、重合に使用する単量体の全量(たとえば、第1重合工程で使用する第1の単量体および第2重合工程で使用する第2の単量体の合計量)100質量部に対して、1~35質量部であり、好ましくは4~32質量部、より好ましくは7~30質量部である。第1の単量体の使用量が少なすぎると、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、接着力および保持力に劣るものとなってしいまい、一方、第1の単量体の使用量が多すぎると、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、低温特性に劣るものとなってしまう。
【0049】
第1重合工程において形成される第1の重合体の軟化点は、特に限定されないが、好ましくは140~200℃であり、より好ましくは145~190℃、さらに好ましくは150~180℃である。軟化点が上記範囲にあることにより、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、保持力特性により優れたものとすることができる。なお、第1の重合体の軟化点は、JIS K 6863に従い測定することができる。
【0050】
第1重合工程において重合反応を行う際の重合温度は、特に限定されないが、好ましくは-20℃~100℃、より好ましくは10℃~80℃である。また、重合反応時間は、適宜選択すればよいが、通常5分~12時間、好ましくは10分~6時間である。
【0051】
また、第2重合工程は、炭化水素溶媒中において、ルイス酸触媒を用いたカチオン重合により、脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有する第2の単量体を重合する工程である。第2重合工程によれば、脂肪族単量体単位を60質量%以上の割合で含有する第2の重合体が、炭化水素溶媒中に溶解した状態で形成される。
【0052】
本発明の製造方法によれば、上記した第1重合工程および第2重合工程の2つの重合工程を経る方法を採用するため、芳香族単量体単位を80質量%以上の割合で含有する第1の重合体と、脂肪族単量体単位を60質量%以上の割合で含有する第2の重合体とを同じ重合系に含有された状態で得ることができる。そのため、本発明の製造方法によれば、これらを別々に得た場合における問題を有効に解決できるものである。すなわち、芳香族単量体単位を比較的多く含む第1の重合体を単独で得た場合における、溶融粘度が高く、溶融状態での送液性に劣るという問題や、脂肪族単量体単位を比較的多く含む第2の重合体を単独で得た場合における、ブロッキングし易く、そのため、取り扱い性に劣るという問題を有効に解決することができるものである。そして、これにより、これら第1の重合体および第2の重合体を併用することによる効果である、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合における、低温特性、接着力および保持力の向上を可能としながら、高い生産性を実現できるものである。
【0053】
なお、本発明において、第1重合工程による重合を行った後に、第2重合工程による重合を行ってもよいし、これとは逆に、第2重合工程による重合を行った後に、第1重合工程による重合を行ってもよいが、重合の操作性や制御性の観点より、第1重合工程による重合を行った後に、第2重合工程による重合を行う方法が好ましい。
【0054】
第1重合工程による重合を行った後に、第2重合工程による重合を行った場合には、上記第1重合工程を経ることにより、芳香族単量体単位を80質量%以上の割合で含有する第1の重合体を含有する重合系中において、ルイス酸触媒を用いたカチオン重合により、第2の単量体が重合し、これにより、脂肪族単量体単位を60質量%以上の割合で含有する第2の重合体が、第1の重合体とともに、炭化水素溶媒中に溶解した状態で形成されることとなる。
あるいは、2重合工程による重合を行った後に、第1重合工程による重合を行った場合には、第2重合工程を経ることにより、脂肪族単量体単位を60質量%以上の割合で含有する第2の重合体を含有する重合系中において、ルイス酸触媒を用いたカチオン重合により、第1の単量体が重合し、これにより、芳香族単量体単位を80質量%以上の割合で含有する第1の重合体が、第2の重合体とともに、炭化水素溶媒中に溶解した状態で形成されることとなる。
【0055】
なお、本発明の製造方法においては、第1の重合体のうち一部については、第2の単量体が共重合されたものであってもよく、あるいは、第2の重合体のうち一部については、第1の単量体が共重合されたものであってもよい。
【0056】
第2重合工程で用いる第2の単量体としては、脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有するものであればよいが、脂肪族単量体を70~99.9質量%の割合で含有するものがより好ましく、脂肪族単量体を80~99.8質量%の割合で含有するものがさらに好ましい。脂肪族単量体の含有割合が少なすぎると、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、低温特性に劣るものとなってしまう。
【0057】
第2の単量体としては、脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有するものを用いればよいが、本発明においては、1,3-ペンタジエン単量体1~60質量%、炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体1~30質量%、炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体0~65質量%、脂環式ジオレフィン単量体0~10質量%、および芳香族モノオレフィン単量体0~40質量%を含有するものを用いることが好ましい。これらの単量体を上記範囲にて含有させることにより、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、低温特性により優れたものとすることができる。
【0058】
第2の単量体中における、1,3-ペンタジエン単量体の含有割合は、好ましくは1~60質量%、より好ましくは10~55質量%、さらに好ましくは20~50質量%、さらにより好ましくは25~47質量%、特に好ましくは30~45質量%である。
【0059】
第2の単量体中における、炭素数4~6の脂環式モノオレフィン単量体の含有割合は、好ましくは1~30質量%、より好ましくは3~27質量%、さらに好ましくは5~25質量%、さらにより好ましくは7~23質量%、特に好ましくは8~20質量%である。
【0060】
第2の単量体中における、炭素数4~8の非環式モノオレフィン単量体の含有割合は、好ましくは0~65質量%、より好ましくは20~61質量%、さらに好ましくは30~59質量%、特に好ましくは36~57質量%である。
【0061】
第2の単量体中における、脂環式ジオレフィン単量体の含有割合は、好ましくは0~10質量%、より好ましくは0.1~7質量%、さらに好ましくは0.2~4質量%、特に好ましくは0.3~1質量%である。
【0062】
第2の単量体中における、芳香族モノオレフィン単量体の含有割合は、好ましくは0~40質量%、より好ましくは0~30質量%、さらに好ましくは0~20質量%、特に好ましくは0~12質量%である。
【0063】
また、第2の単量体は、上述したその他の単量体単位を形成するその他の単量体を含有していてもよく、その他の単量体の単量体の含有割合は、通常、0質量%~30質量%の範囲内であり、好ましくは0~25質量%、より好ましくは0~20質量%である。
【0064】
なお、第2重合工程における、重合系への第2の単量体の添加方法としては特に限定されず、重合開始時に、第2の単量体を、重合系に一括で添加する方法であってもよし、あるいは、第2の単量体を、重合系に連続的に滴下する方法であってもよいが、反応温度や重合の制御性という観点より、重合系に連続的に滴下する方法が好ましい。
【0065】
また、第2重合工程において使用する第2の単量体の使用量は、重合に使用する単量体の全量(たとえば、第1重合工程で使用する第1の単量体および第2重合工程で使用する第2の単量体の合計量)100質量部に対して、好ましくは65~99質量部であり、より好ましくは68~96質量部、さらに好ましくは70~93質量部である。第2の単量体の使用量を上記範囲とすることで、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、低温特性、接着力および保持力をより高めることができる。
【0066】
第2重合工程において形成される第2の重合体の軟化点は、特に限定されないが、好ましくは50~120℃であり、より好ましくは60~100℃、さらに好ましくは70~90℃である。軟化点が上記範囲にあることにより、ホットメルト粘接着剤組成物とした場合に、低温性能により優れたものとすることができる。なお、第2の重合体の軟化点は、JIS K 6863に従い測定することができる。
【0067】
また、第2重合工程は、上記第1重合工程に続いて行うことが好ましく、そのため、ルイス酸触媒および炭化水素溶媒、ならびに必要に応じて用いられるハロゲン化炭化水素としては、上記第1重合工程で使用したものをそのまま使用すればよい。
【0068】
第2重合工程において重合反応を行う際の重合温度は、特に限定されないが、好ましくは-20℃~100℃、より好ましくは10℃~80℃である。また、重合反応時間は、適宜選択すればよいが、通常10分~12時間、好ましくは30分~6時間である。
【0069】
そして、第2重合工程において、所望の重合転化率が得られた時点で、メタノール、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液などの重合停止剤を重合反応系に添加することにより停止することにより、炭化水素樹脂を含む重合体溶液を得ることができる。
【0070】
次いで、得られた炭化水素樹脂を含む重合体溶液について、必要に応じて、炭化水素溶媒に不溶な触媒残渣をろ過などにより除去する処理を行うことで、炭化水素樹脂を得ることができる。
【0071】
なお、得られた炭化水素樹脂について、必要に応じて、炭化水素樹脂中の炭素-炭素二重結合を水素化する水素化反応を行ってもよい。
炭化水素樹脂の水素化は、水素化触媒の存在下において、炭化水素樹脂を水素と接触させることにより行うことができる。
【0072】
水素化触媒としては、特に限定されないが、ニッケル触媒が好ましい。特に、反応性が高いという観点より、担体としての担持無機化合物に、金属としてのニッケルを担持してなる化合物を主成分として含む触媒が好ましい。担体としての担持無機化合物の具体例としては、シリカ、アルミナ、ボリア、シリカ-アルミナ、珪藻土、白土、粘土、マグネシア、マグネシア-シリカ(シリカ-酸化マグネシウム)、チタニア、ジルコニアなどが挙げられ、これらのなかでも、反応性の観点より、マグネシア-シリカが好ましい。
【0073】
<ホットメルト粘接着剤組成物>
また、本発明においては、上記した本発明の製造方法により得られる炭化水素樹脂に、熱可塑性エラストマーを配合することで、ホットメルト粘接着剤組成物とすることができる。
【0074】
熱可塑性エラストマーとしては特に限定されないが、ホットメルト粘接着剤のベースポリマーとして用いられている熱可塑性エラストマーを制限なく用いることができるが、本発明の作用効果をより高めることできるという点より、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン系熱可塑性エラストマー、およびポリオレフィン系熱可塑性エラストマーから選択される少なくとも1種が好ましい。
【0075】
エチレン-酢酸ビニル共重合体としては、特に限定されないが、酢酸ビニル単量体単位含有量が、10~50質量%の範囲であるものが好ましく、15~40質量%の範囲であるものがより好ましく、15~35質量%の範囲であるものがさらに好ましい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体としては、メルトフローレイトが1~500g/10分のものが好ましく使用できる。
【0076】
なお、エチレン-酢酸ビニル共重合体としては、市販品として入手可能であり、たとえば、三井・デュポンポリケミカル社製の「EVAFLEX EV220(商品名)」やロッテケミカル社製の「VA900(商品名)」などを好適に用いることができる。
【0077】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されず、スチレン系モノマーと、スチレン系モノマーと共重合し得る他のモノマーとのランダム、ブロック、グラフト等の共重合体、およびこのような共重合体の水添物などが挙げられ、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックおよび少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックを含むブロック共重合体などが挙げられる。このようなブロック共重合体の具体例としては、スチレン-イソプレンジブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体、イソプレン-スチレン-イソプレントリブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン-イソプレンテトラブロック共重合体、およびこれらの混合物を好適に用いることができる。
【0078】
また、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されないが、たとえば、エチレン/α-オレフィン共重合体が挙げられる。エチレン/α-オレフィン共重合体を得るために、エチレンと共重合されるα-オレフィンは、特に限定されないが、たとえば、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどの炭素数3~20のα-オレフィンが好ましく、炭素数6~8のα-オレフィンがより好ましく、1-オクテンがさらに好ましい。α-オレフィンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0079】
エチレン/α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィン単位の含有割合は、特に限定されないが、全単量体単位に対してα-オレフィン単位が占める割合が、20~40モル%であることが好ましい。また、エチレン/α-オレフィン共重合体としては、メルトフローレイトが200~1500g/10分のものが好ましく使用できる。
【0080】
本発明に係るホットメルト粘接着剤組成物における、熱可塑性エラストマーと上記本発明の製造方法により得られる炭化水素樹脂との配合割合は、特に限定されないが、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、炭化水素樹脂が50~500質量部配合されることが好ましく、80~400質量部配合されることがより好ましい。炭化水素樹脂の配合割合がこの範囲にあると、ホットメルト粘接着剤組成物の接着力が特に良好なものとなる。
【0081】
本発明に係るホットメルト粘接着剤組成物は、本発明の製造方法により得られる炭化水素樹脂および熱可塑性エラストマーのみからなるものであってよいが、さらに、他の成分を含有するものであってもよい。ホットメルト粘接着剤組成物に含有され得る他の成分としては、ワックス、軟化剤、酸化防止剤、本発明の製造方法により得られる炭化水素樹脂以外の粘着付与樹脂、前述したもの以外の重合体、熱安定剤、紫外線吸収剤、充填剤など、その他の配合剤を添加することができる。なお、ホットメルト粘接着剤組成物は、溶剤を含まない、無溶剤の組成物であることが好ましい。
【0082】
本発明に係るホットメルト粘接着剤組成物を得るにあたり、上記した炭化水素樹脂、熱可塑性エラストマー、およびさらに必要に応じて添加されるその他の成分を混合する方法は特に限定されず、たとえば、それぞれの成分を溶剤に溶解し均一に混合した後、溶剤を加熱などにより除去する方法、各成分をニーダーなどで溶融混合する方法などを挙げることができる。混合をより効率的に行う観点からは、これらの方法のなかでも溶融混合が好適である。なお、溶融混合を行う際の温度は、特に限定されるものではないが、通常100~200℃の範囲である。
【0083】
本発明に係るホットメルト粘接着剤組成物は、上記本発明の製造方法により得られる炭化水素樹脂を粘着付与樹脂として含有しているため、低温特性、接着力および保持力に優れたものである。したがって、本発明に係るホットメルト粘接着剤組成物は、このような特性を活かし、種々の部材の接着に適用することが可能であり、しかも、省エネルギーで、生産性よく、保持力の高い接着を行うことができるものである。本発明に係るホットメルト粘接着剤組成物は、たとえば、各種の粘着テープやラベルの粘着剤として好適に使用される。具体的には、粘着テープやラベルを構成するシート状の基材上に、本発明に係るホットメルト粘接着剤組成物からなる粘着剤層を形成することで、基材と、本発明に係るホットメルト粘接着剤組成物からなる粘着剤層とからなる、粘着テープやラベルとして好適に使用される。
【実施例0084】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に断りのない限り質量基準である。
本実施例および比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
【0085】
〔炭化水素樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、ピークトップ分子量、および分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mw)〕
炭化水素樹脂について、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析し、標準ポリスチレン換算値の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)およびピークトップ分子量を求め、また、これらの結果に基づき、分子量分布Mw/Mn、Mz/Mwを求めた。なお、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析は、測定装置として、東ソー社製「HLC-8320GPC」を使用し、カラムは東ソー社製「TSKgel SuperMultiporeHZ」を3本連結したものを用い、テトラヒドロフランを溶媒として、40℃、1.0mL/minの流量で測定した。
【0086】
〔炭化水素樹脂のブロッキング性〕
炭化水素樹脂を5mm角程度の形状に破砕することで、複数の小片状サンプル30gを作製し、これを、10cm×10cmのポリエチレン製の袋に入れ、2kgの重しをのせ、常温(23℃)にて、12時間保持し、保持後の小片状サンプルについて、以下の基準でブロッキング性を評価した。
〇:ブロッキングが全く発生しなかった。
×:ブロッキングが発生した。
【0087】
〔炭化水素樹脂の溶融粘度〕
炭化水素樹脂を200℃に加熱することで溶融させ、温度200℃における溶融粘度を、B型粘度計を使用して測定した。
【0088】
〔炭化水素樹脂の軟化点〕
炭化水素樹脂について、JIS K 6863に従い測定した。
【0089】
〔ホットメルト粘接着剤組成物の剥離強度〕
得られたホットメルト粘接着剤組成物を、25μmのPETフィルムに厚み20~30μmとなるように溶融塗布して、塗布シートを得た。次いで、この塗布シートを裁断して試験片を得た。このようにして得られた試験片を用いて、PSTC-101(米国粘着テープ委員会による180°剥離接着試験)に準じて、被着体としてステンレス鋼板を使用して、引張速度300mm/min、温度23℃で測定することにより、常温での剥離強度(N/m)を評価した。値が大きいものほど、接着力に優れる。
【0090】
〔ホットメルト粘接着剤組成物のループタック(23℃)〕
上記と同様にして得られた試験片を用いて、PSTC-16(米国粘着テープ委員会によるループタック試験)に準じて、被着体としてステンレス鋼板を使用し、試験速度が300mm/分、接着部が25×25mm、温度23℃にて測定することにより、常温(23℃)でのループタック(N/25mm)を評価した。値が大きいものほど、初期接着力に優れる。
【0091】
〔ホットメルト粘接着剤組成物のループタック(0℃)〕
上記と同様にして得られた試験片を用いて、PSTC-16(米国粘着テープ委員会によるループタック試験)に準じて、被着体としてステンレス鋼板を使用し、試験速度が300mm/分、接着部が25×25mm、温度0℃にて測定することにより、低温(0℃)でのループタック(N/25mm)を評価した。値が大きいものほど、初期接着力に優れる。
【0092】
〔ホットメルト粘接着剤組成物の保持力〕
上記と同様にして得られた試験片を用いて、PSTC-107 Procedure A(米国粘着テープ委員会による保持力試験法)に準じ、被着体としてステンレス鋼板を使用して、接着部10×25mm、負荷1000±5g、温度50℃にて、剥がれるまでの時間(分)を測定することにより、保持力を評価した。値が大きいものほど、保持力に優れる。
【0093】
〔ホットメルト粘接着剤組成物のガラス転移温度〕
得られたホットメルト粘接着剤組成物について、示差走査熱量計(DSC)により、-40℃から180℃の間において、昇温速度4℃/分、周波数10rad/sにて、ガラス転移温度を測定した。なお、測定器としてARES-G2(TAインスツルメンツ社製)を用いた。
【0094】
〔実施例1〕
重合反応器に、炭化水素溶媒としてのシクロペンタン52.7部を仕込み、75℃に昇温した後、塩化アルミニウム1.0部を添加し、温度(75℃)を維持した状態のまま、ここに、第1の単量体として、C9留分(芳香族単量体89.4%、ジシクロペンタジエン10.6%を含有)28.6部を15分間かけて、連続的に滴下することで重合を行った(第1重合工程)。次いで、重合反応器に、第2の単量体(1,3-ペンタジエン32.1%、シクロペンテン15.0%、イソブチレン51.1%、ジイソブチレン1.2%、ジシクロペンタジエン0.1%、C4-C6不飽和炭化水素0.5%を含有)71.4部を45分間かけて、連続的に滴下することで重合を行った(第2重合工程)。なお、重合に際しては、第2の単量体は、粘度調整のため、炭化水素溶媒としてのC4-C6飽和炭化水素15.3部およびトルエン0.5部と混合し、C4-C6飽和炭化水素およびトルエンを混合した状態にて、重合反応容器に滴下した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を重合反応器に添加して、重合反応を停止した。重合停止により生成した沈殿物をろ過により除去することで、炭化水素樹脂を含む重合体溶液を得た。次いで、重合体溶液を蒸留釜に移し、窒素雰囲気下で、250℃にて、1時間加熱することでストリッピング操作を行い、炭化水素溶媒を除去することにより、固形状の炭化水素樹脂を得た。得られた炭化水素樹脂の組成は、炭化水素樹脂を構成するための原料の成分割合とほぼ同じであった。また、本実施例で使用したC9留分は、スチレン13~17質量%、インデン25~40質量%、α-メチルスチレン6~9質量%、β-メチルスチレン6~9質量%、ビニルトルエン25~45質量%、および1-メチルインデン3~7質量%を含有するものであった(後述する実施例2~6、比較例1,2,4においても同様。)。
そして、得られた炭化水素樹脂について、上記方法にしたがって、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)、ピークトップ分子量、および分子量分布(Mw/Mn、Mz/Mw)、ならびに軟化点の測定、さらには、ブロッキング性および溶融粘度の評価を行った。結果を表1に示す。
【0095】
〔実施例2~6〕
第1の単量体として、表1に示す単量体組成を有するC9留分を使用したこと、第2の単量体として、表1に示す単量体組成を有する単量体混合物を使用したこと、第1の単量体および第2の単量体の使用量を表1に示す量としたこと、塩化アルミニウムの使用量を表1に示す量としたこと、および、重合温度を表1に示す温度としたこと以外は、実施例1と同様にして、重合操作を行い、実施例2~6の炭化水素樹脂をそれぞれ得た。そして、得られた炭化水素樹脂について、実施例1と同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0096】
〔比較例1〕
第1の単量体として、表1に示す単量体組成を有するC9留分を使用したこと、第2の単量体として、表1に示す単量体組成を有する単量体混合物を使用したこと、第1の単量体および第2の単量体の使用量を表1に示す量としたこと以外は、実施例1と同様にして、重合操作を行い、比較例1の炭化水素樹脂をそれぞれ得た。そして、得られた炭化水素樹脂について、実施例1と同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
〔比較例2〕
重合反応器に、炭化水素溶媒としてのシクロペンタン52.7部を仕込み、75℃に昇温した後、塩化アルミニウム1.0部を添加し、温度(75℃)を維持した状態のまま、ここに、単量体として、表1に示す単量体組成を有する単量体混合物(表1中において、第2の単量体として記載した。また、C9留分については、C9留分中の芳香族単量体の量にて示した。)100部を60分間かけて、連続的に滴下することで重合を行った。なお、重合に際しては、単量体混合物には、粘度調整のため、炭化水素溶媒としてのC4-C6飽和炭化水素15.3部およびトルエン0.5部と混合し、C4-C6飽和炭化水素およびトルエンを混合した状態にて、重合反応容器に滴下した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を重合反応器に添加して、重合反応を停止した。重合停止により生成した沈殿物をろ過により除去することで、炭化水素樹脂を含む重合体溶液を得た。次いで、重合体溶液を蒸留釜に移し、窒素雰囲気下で、250℃にて、1時間加熱することでストリッピング操作を行い、炭化水素溶媒を除去することにより、固形状の炭化水素樹脂を得た。得られた炭化水素樹脂の組成は、炭化水素樹脂を構成するための原料の成分割合とほぼ同じであった。そして、得られた炭化水素樹脂について、実施例1と同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
なお、比較例2は、第1重合工程および第2重合工程の2段階の重合工程を経ず、芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有する第1の単量体と、脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有する第2の単量体とを、別々の重合工程ではなく、同じ重合工程において重合した実験例に相当する。
【0098】
〔比較例3〕
単量体として、表1に示す単量体組成を有する単量体混合物を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、重合操作を行い、比較例1の炭化水素樹脂をそれぞれ得た。そして、得られた炭化水素樹脂について、実施例1と同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
なお、比較例3は、第1重合工程および第2重合工程の2段階の重合工程を経ず、脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有する第2の単量体のみを重合した実験例に相当する。
【0099】
〔比較例4〕
重合反応器に、炭化水素溶媒としてのシクロペンタン52.7部を仕込み、75℃に昇温した後、塩化アルミニウム1.0部を添加し、温度(75℃)を維持した状態のまま、ここに、単量体として、C9留分(芳香族単量体89.4%、ジシクロペンタジエン10.6%を含有、表1中において、第1の単量体として記載した。)100部を60分間かけて、連続的に滴下することで重合を行った。なお、重合に際しては、C9留分には、粘度調整のため、炭化水素溶媒としてのC4-C6飽和炭化水素15.3部およびトルエン0.5部と混合し、C4-C6飽和炭化水素およびトルエンを混合した状態にて、重合反応容器に滴下した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を重合反応器に添加して、重合反応を停止した。重合停止により生成した沈殿物をろ過により除去することで、炭化水素樹脂を含む重合体溶液を得た。次いで、重合体溶液を蒸留釜に移し、窒素雰囲気下で、250℃にて、1時間加熱することでストリッピング操作を行い、炭化水素溶媒を除去することにより、固形状の炭化水素樹脂を得た。得られた炭化水素樹脂の組成は、炭化水素樹脂を構成するための原料の成分割合とほぼ同じであった。そして、得られた炭化水素樹脂について、実施例1と同様に各測定・評価を行った。結果を表1に示す。
なお、比較例4は、第1重合工程および第2重合工程の2段階の重合工程を経ず、芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有する第1の単量体のみを重合した実験例に相当する。
【0100】
〔実施例1A〕
スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(商品名「Quintac(登録商標)3421」、日本ゼオン社製)100部を攪拌翼型混練機に投入し、これに実施例1で得られた炭化水素樹脂100部、軟化剤(商品名「サンピュアN100」、ナフテン系プロセスオイル、日本サン石油社製)10部および酸化防止剤(商品名「イルガノックス1010」、BASF社製)1.5部を添加して系内を窒素ガスで置換したのち、160~180℃で1時間混練することにより、ホットメルト粘接着剤組成物を調製した。そして、得られたホットメルト粘接着剤組成物について、剥離強度、ループタック(23℃および0℃)、保持力およびガラス転移温度の各測定を行った。結果を表2に示す。
【0101】
〔実施例2A~6A〕
実施例1で得られた炭化水素樹脂100部に代えて、実施例2~6で得られた炭化水素樹脂100部をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様にして、ホットメルト粘接着剤組成物を調製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0102】
〔比較例1A~3A〕
実施例1で得られた炭化水素樹脂100部に代えて、比較例1~3で得られた炭化水素樹脂100部をそれぞれ使用した以外は、実施例1と同様にして、ホットメルト粘接着剤組成物を調製し、実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
表1に示すように、第1重合工程において、芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有する第1の単量体を重合し、また、第2重合工程において、脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有する第2の単量体を重合するとともに、第1の単量体の使用割合を、重合に使用する単量体の全量に対し1~35質量%とした場合には、得られる炭化水素樹脂は、ブロッキングが抑制されており、また、200℃における溶融粘度も低く、さらには、このような炭化水素樹脂を用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物は、0℃におけるループタックに優れ、低温特性に優れるものであり、また、接着力および保持力にも優れたものであった(実施例1~6、実施例1A~6A)。
なお、実施例1~6で得られた炭化水素樹脂から、第1重合工程で形成された第1の重合体と、第2重合工程で形成された第2の重合体と別途重合し、これらの軟化点を、JIS K 6863に従い測定したところ(測定器としてはASP-5(TANAKA社製)を使用)、第1重合工程で形成された第1の重合体の軟化点は150~170℃の範囲にあり、第2重合工程で形成された第2の重合体の軟化点は65~85℃の範囲であった。
【0106】
一方、第1重合工程および第2重合工程の2段階の重合工程を経たものの、第1重合工程における、第1の単量体の使用割合が多すぎる場合には、得られるホットメルト粘接着剤組成物は、0℃におけるループタックが低く、低温特性に劣るものであった(比較例1、比較例1A)。
第1重合工程および第2重合工程の2段階の重合工程を経ず、芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有する第1の単量体と、脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有する第2の単量体とを、別々の重合工程ではなく、同じ重合工程において重合した場合には、第1の単量体と第2の単量体とが共重合体してしまい、結果として、得られるホットメルト粘接着剤組成物は、0℃におけるループタックが低く、低温特性に劣り、さらには保持力にも劣るものであった(比較例2、比較例2A)。
また、第1重合工程および第2重合工程の2段階の重合工程を経ず、脂肪族単量体を60質量%以上の割合で含有する第2の単量体のみを重合した場合には、得られる炭化水素樹脂は、ブロッキングが発生するものとなり、さらには、これを用いて得られるホットメルト粘接着剤組成物は、接着力および保持力に劣るものであった(比較例3、比較例3A)。
さらに、第1重合工程および第2重合工程の2段階の重合工程を経ず、芳香族単量体を80質量%以上の割合で含有する第1の単量体のみを重合した場合には、得られる炭化水素樹脂は、200℃における溶融粘度が著しく高いものとなった(比較例4)。