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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095489
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】経口組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/84 20060101AFI20230629BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 36/234 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 36/258 20060101ALI20230629BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20230629BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61K36/84
A61K9/20
A61K36/234
A61K36/258
A61P15/00
A61K47/02
A61K47/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211412
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 愛可
(72)【発明者】
【氏名】金本 美穂
【テーマコード(参考)】
4C076
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD27
4C076DD41
4C076FF01
4C076FF52
4C088AB18
4C088AB23
4C088AB40
4C088AC11
4C088BA06
4C088MA07
4C088MA35
4C088MA52
4C088NA09
4C088ZA81
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、カノウコソウ末を高含量で含む経口組成物の不快臭を低減できる製剤処方を提供することである。
【解決手段】カノコソウ末10重量%以上を含む経口組成物にセンキュウ末を配合することで、カノウコソウ末特有の強い不快臭が低減される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カノコソウ末10重量%以上と、(B)センキュウ末とを含む、経口組成物。
【請求項2】
前記(A)成分1重量部当たり、前記(B)成分を0.8重量部以上含有する、請求項1に記載の経口組成物。
【請求項3】
全生薬末100重量部当たり、前記(B)成分を21重量部以上含有する、請求項1又は2に記載の経口組成物。
【請求項4】
さらに(C)ニンジン末を含む、請求項1~3のいずれかに記載の経口組成物。
【請求項5】
錠剤である、請求項1~4のいずれかに記載の経口組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高含量のカノコソウ末を含みながら、カノコソウ末特有の強い不快臭が低減された経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カノコソウは、オミナエシ科の多年草の植物であり、日本薬局方の第一版から現在まで掲載され、古くから利用されてきた生薬である。カノコソウの生薬としての特徴は、精神安定作用を奏するところにあり、かつての向精神・神経薬の歴史において、精神神経疾患の治療薬の中心的存在であった(非特許文献1)。現在では、カノコソウ末は、婦人用医薬品に配合されて用いられている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】薬史学雑誌、51(2),96-103(2016)
【非特許文献2】“女性保健薬命の母A”,[online],小林製薬株式会社,[令和2年12月16日検索],インターネット<URL:https://www.kobayashi.co.jp/seihin/ih_a/pdf/ih_a.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カノコソウ末には、特有の強い不快臭がある。このため、経口組成物にカノコソウ末を配合して製剤する場合、服用に耐えるようにするため、その配合量はおのずと制限される。
【0005】
一方で、カノコソウ末による効能をより一層高めるためには、その配合量を増量することが望ましい。しかしながら、カノコソウ末を10重量%以上の高含量で経口組成物に配合したところ、特有の不快臭が顕著に強くなる課題に直面した。
【0006】
経口組成物の服用性を向上させるためには、一般的に製剤形態の工夫がなされる。カノコソウ末を高含量で含む経口組成物についても、例えば糖衣で完全包囲した糖衣錠として製剤することで服用性を向上することも考えられる。しかしながら、市販医薬品の糖衣錠は分包されていない形態で容器に収容されて提供されることがあり、カノコソウ末を高含量で含む経口組成物の糖衣錠のいずれかが割れると、経口組成物が露出して不快臭が漏出し、さらに他の糖衣錠にも不快臭が付着するため、服用性に悪影響することが考えられる。
【0007】
従って、カノウコソウ末を高含量で含む経口組成物については、製剤形態に依存しない手段で、不快臭を低減できる製剤処方が望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、カノウコソウ末を高含量で含む経口組成物の不快臭を低減できる製剤処方を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、カノコソウ末を高含量で含む経口組成物に、センキュウ末を配合することで、カノコソウ末特有の不快臭を低減できることを見出した。本発明は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0010】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)カノコソウ末10重量%以上と、(B)センキュウ末とを含む、経口組成物。
項2. 前記(A)成分1重量部当たり、前記(B)成分を0.6重量部以上含有する、項1に記載の経口組成物。
項3. 全生薬末100重量部当たり、前記(B)成分を21重量部以上含有する、項1又は2に記載の経口組成物。
項4. さらに(C)ニンジン末を含む、項1~3のいずれかに記載の経口組成物。
項5. 錠剤である、項1~4のいずれかに記載の経口組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、カノウコソウ末を高含量で含む経口組成物の不快臭を低減できる製剤処方が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の経口組成物は、(A)カノコソウ末(以下において「(A)成分」とも記載する。)10重量%以上と、(B)センキュウ末(以下において「(B)成分」とも記載する。)とを含むことを特徴とする。本発明の経口組成物は、さらに、(C)ニンジン末(以下において「(C)成分」とも記載する。)を含んでもよい。
【0013】
(A)カノコソウ末
本発明の経口組成物は、(A)成分としてカノコソウ末を含む。カノコソウ(鹿子草)は、オミナエシ科(Valerianaceae)のカノコソウValeriana fauriei Briquetの根及び根茎から得られるものであり、生薬(日本薬局方)として主に鎮静薬の用途に使用される。なお、カノコソウは、生薬名(日本薬局方)でもあるとともに植物名でもある。カノコソウ末については、日本粉末薬品株式会社、株式会社栃本天海堂等から商業的に入手可能である。
【0014】
本発明の経口組成物において、(A)成分の含有量は10重量%以上である。経口組成物に含まれるカノコソウ末の含有量が10重量%以上になると、本来、カノコソウ末特有の不快臭が顕著に強くなるが、本発明の経口組成物は、当該特有の不快臭が効果的に低減されている。
【0015】
本発明の経口組成物において、(A)成分の含有量は好ましくは10.5重量%以上、より好ましくは11重量%以上、さらに好ましくは11.4重量%以上が挙げられる。また、本発明の経口組成物における(A)成分の含有量はその上限において特に限定されるものではないが、例えば25重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下が挙げられる。
【0016】
(B)センキュウ末
本発明の経口組成物は、(B)成分としてセンキュウ末を含む。(B)成分は、(A)成分を10重量%以上の高含量で含む経口組成物において、(A)成分であるカノコソウ末特有の強い不快臭を低減する。
【0017】
センキュウ(川きゅう)は、セリ科(Umbelliferae)のセンキュウCnidium officinale Makinoの根茎を、通例、湯通ししたものであり、生薬(日本薬局方)として主に血管補強薬、婦人薬などの用途に使用される。なお、センキュウは、生薬名(日本薬局方)でもあるとともに植物名でもある。センキュウ末については、日本粉末薬品株式会社、株式会社栃本天海堂等から商業的に入手可能である。
【0018】
本発明の経口組成物において、(B)成分の含有量は、付与すべき不快臭低減効果に応じて適宜設定すればよいが、(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量として、例えば0.8重量部以上、好ましくは1重量部以上、より好ましくは1.3重量部以上、さらに好ましくは1.5重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、又は6重量部以上が挙げられる。(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量はその上限においても特に限定されないが、例えば10重量部以下が挙げられる。本発明の経口組成物において、(B)成分は(A)成分特有の不快臭の低減効果に優れるため、(B)成分を大量に用いなくとも、効果的に当該不快臭を低減できる。このような観点から、(A)成分1重量部当たりの(B)成分の含有量の好適な例として、7重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、又は2重量部以下が挙げられる。
【0019】
また、本発明の経口組成物中に含まれる全生薬末に対する(B)成分の含有量としては特に限定されないが、当該全生薬末100重量部に対する(B)成分の含有量としては、例えば21重量部以上が挙げられる。当該全生薬末100重量部に対する(B)成分の含有量はその上限においても特に限定されないが、例えば30重量部以下又は25重量部以下が挙げられる。
【0020】
本発明の経口組成物における(B)成分の具体的な含有量としては、例えば7重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、さらに好ましくは17重量%以上が挙げられ、80重量%以下、60重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、又は20重量%以下が挙げられる。
【0021】
(C)成分
本発明の経口組成物は、(C)成分としてニンジン末を含むことができる。ニンジン末も特有の臭いがあるが、(A)成分特有の不快臭のより一層の低減を目的として、(B)成分とともに配合することができる。
【0022】
ニンジン(人参)は、ウコギ科(Araliaceae)のオタネニンジン Panax ginseng C.A. Meyer (Panax schinseng Nees)の細根を除いた根又はこれを軽く湯通ししたものであり、生薬(日本薬局方)として主に強壮強精薬、消化促進薬、下痢止め薬、精神安定薬、血糖降下薬、強心薬、保温薬、抗疲労薬などの用途に使用される。なお、ニンジンは、生薬名(日本薬局方)でもあるとともに植物名でもある。ニンジンについては、日本粉末薬品株式会社、株式会社栃本天海堂等から商業的に入手可能である。
【0023】
本発明の経口組成物において、(C)成分の含有量としては特に限定されないが、(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量として、例えば0.5重量部以上、好ましくは0.6重量部以上、より好ましくは0.65重量部以上が挙げられる。(A)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量はその上限においても特に限定されないが、例えば6重量部以下又は5.2重量部以下が挙げられる。また、(B)成分1重量部当たりの(C)成分の含有量としては、例えば0.3重量部以上、好ましくは0.4重量部以上、より好ましくは0.45重量部以上が挙げられ、例えば4重量部以下又は3.2重量部以下が挙げられる。
【0024】
本発明の経口組成物における(C)成分の具体的な含有量としては、例えば10~70重量%、好ましくは20~60重量%が挙げられる。
【0025】
その他の成分
本発明の経口組成物は、上述の(A)成分及び(B)成分、並びに場合により配合される(C)成分の他に、製剤形態に応じた添加剤や基剤をさらに含んでいてもよい。添加剤及び基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、使用する添加剤及び基剤の種類、本発明の経口組成物の製剤形態等に応じて適宜設定される。
【0026】
添加剤及び基剤としては、具体的には、デンプン、乳糖、カルメロースカルシウム、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、合成ハイドロタルサイト、無水リン酸水素カルシウム、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポピドンが挙げられ、好ましくは、ステアリン酸マグネシウム及び合成ケイ酸アルミニウムが挙げられる。これらの添加剤及び基剤の含有量は、使用する添加剤及び基剤の種類に応じて適宜設定される。
【0027】
本発明の経口組成物が、上記添加剤や基剤をさらに含む場合、経口組成物全体中の添加剤及び基剤の配合量としては、総量で、例えば5~15重量%、好ましくは8~12重量%が挙げられる。また、本発明の経口組成物がステアリン酸マグネシウムを含む場合、その含有量としては、例えば0.1~1重量%、好ましくは0.3~0.7重量%が挙げられる。また、本発明の経口組成物が合成ケイ酸アルミニウムを含む場合、その含有量としては、4~16重量%、好ましくは7~12重量%、より好ましくは9~11重量%が挙げられる。
【0028】
また、本発明の経口組成物は、必要に応じて、更に他の栄養成分や薬理成分を含有していてもよい。このような栄養成分や薬理成分としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、上記(A)~(C)成分以外の生薬末及び/又は生薬抽出物、ビタミン類等が挙げられる。これらの栄養成分や薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0029】
製剤形態
本発明の経口組成物の製剤形態については、経口投与が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、丸剤、トローチ剤、チュアブル剤、カプセル剤等の固形状製剤;ゼリー剤等の半固形状製剤;液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液状製剤が挙げられる。
【0030】
これらの製剤形態の中でも、好ましくは固形状製剤が挙げられ、より好ましくは散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、丸剤が挙げられ、さらに好ましくは錠剤が挙げられる。錠剤としては、素錠及び糖衣錠が挙げられる。
【0031】
製造方法
本発明の経口組成物の製造方法は、上記生薬成分を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。
【実施例0032】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
(1)経口組成物の調製
表1に示す配合比率で経口組成物の散剤を調製した。
【0034】
(2)臭い抑制効果の評価
調製した経口組成物を六角タイプのバランストレイに均一に伸ばし、訓練された専門パネラー15人が、トレイ上の経口組成物から5cmの地点に鼻先を近づけ、カノコソウ末特有の不快臭のレベルを評価した。カノコソウ末のみからなる粉末に対して感じる当該不快臭のレベルを10、当該不快臭を感じない場合のレベルを0とする11段階にて、当該不快臭のレベルを評点し、平均化した。評点が3点以下であれば、経口組成物として服用に適していると評価できる。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
比較例1に示すとおり、カノコソウ末を高含量で含む口腔組成物は、服用に耐えないほどカノコソウ末特有の不快臭が強い物であった。一方、実施例1,2に示すとおり、カノコソウ末を高含量で含む口腔組成物にセンキュウ末を配合すると、当該不快臭が顕著に低減され、服用に適した物となった。なお、比較例2に示される通り、センキュウ末の代わりにトウキ末を配合した場合には、当該不快臭は全く低減できなかったことに鑑みると、実施例1,2で認められた顕著な不快臭低減効果は、センキュウ末を配合することによる特有の効果であると認められた。このように、実施例1,2によれば、カノコソウ末を高含量で含む口腔組成物にセンキュウ末を配合することで、服用に適する程度に不快臭が低減されたため、あらゆる製剤形態にも適用できることが判った。例えば、持ち歩き及び保存等に適した固形状製剤であり、且つ速やかな服用が可能な固形製剤である、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤(素錠及び糖衣錠)、丸剤の製剤形態にも適した物であった。また、割れて口腔組成物自体が露出するリスクがある糖衣錠にも適した物であった。