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特開2023-95524液体吐出装置、液体吐出方法、プログラム、および液体吐出システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095524
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出方法、プログラム、および液体吐出システム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230629BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B41J2/01 201
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211468
(22)【出願日】2021-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】津田 直明
(72)【発明者】
【氏名】目崎 大輔
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA07
2C056EA08
2C056EB58
2C056EC07
2C056EC37
2C056EC70
2C056EC71
2C056EC75
2C056EC77
2C056EC79
2C056ED05
2C056FA10
(57)【要約】
【課題】隣接する2つの部分描画物の間の繋ぎ目を目立たなくできるようにすること。
【解決手段】液体吐出装置は、液体を吐出する吐出ノズルと、吐出ノズルを保持するキャリッジと、キャリッジを搬送する搬送部と、吐出ノズルを用いた描画物の描画を制御する制御部とを備え、制御部は、描画物を複数の部分描画物に分割する分割部と、隣接する2つの部分描画物のうち、一方の部分描画物の端部と、他方の部分描画物の端部とに対し、凹凸形状からなるマスク処理を施すマスク部と、一方の部分描画物の端部と、他方の部分描画物の端部とが重なるように、隣接する2つの部分描画物を描画する描画実行部とを有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出ノズルと、
前記吐出ノズルを保持するキャリッジと、
前記キャリッジを搬送する搬送部と、
前記吐出ノズルを用いた描画物の描画を制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記描画物を複数の部分描画物に分割する分割部と、
隣接する2つの前記部分描画物のうち、一方の前記部分描画物の端部と、他方の前記部分描画物の端部とに対し、凹凸形状からなるマスク処理を施すマスク部と、
一方の前記部分描画物の端部と、他方の前記部分描画物の端部とが重なるように、隣接する2つの前記部分描画物を描画する描画実行部と
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記マスク部は、
一方の前記部分描画物の端部と、他方の前記部分描画物の端部とに対し、互いに凹凸が逆転している前記凹凸形状からなる前記マスク処理を施す
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記マスク部は、
一方の前記部分描画物の端部と、他方の前記部分描画物の端部とに対し、1ドットライン毎に長さが異なる前記凹凸形状からなる前記マスク処理を施す
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記マスク部は、
前記凹凸形状のうちの複数の凸形状部の各々を、前記部分描画物の本体部から途切れることなく突出した形状に形成する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記描画実行部は、
一方の前記部分描画物の端部に対し、通常よりも大滴の前記液体を吐出して、前記凹凸形状のうちの凸形状部を描画する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記描画実行部は、
一方の前記部分描画物の端部に対し、通常よりも小滴の前記液体を吐出して前記凹凸形状のうちの凹形状部を埋める描画を行う
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記描画実行部は、
一方の前記部分描画物の端部に対し、前記凹凸形状のうちの凸形状部の副走査方向の一方側となる部分のみ、前記凹形状部を埋める描画を行い、
他方の前記部分描画物を、前記副走査方向の前記一方側にずらして描画する
ことを特徴とする請求項6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記描画実行部は、
前記凹形状部を、主走査方向において間欠的に埋める描画を行う
ことを特徴とする請求項6または7に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記描画実行部は、
前記凹形状部を、主走査方向における半分以上全部未満の長さで埋める描画を行う
ことを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記描画実行部は、
前記凹形状部の主走査方向における中間位置に、前記凹形状部を、主走査方向における半分以上全部未満の長さで埋める描画を行う
ことを特徴とする請求項9に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記描画実行部は、
他方の前記部分描画物の端部の前記凹凸形状のうちの凸形状部における、一方の前記部分描画物の端部の前記小滴の液体で埋められた部分と重なる部分に対し、インクの吐出量を少なくする
ことを特徴とする請求項6から10のいずれか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
液体を吐出する吐出ノズルと、前記吐出ノズルを保持するキャリッジと、前記キャリッジを搬送する搬送部と、前記吐出ノズルを用いた描画物の描画を制御する制御部と、を備えた液体吐出装置による液体吐出方法であって、
前記描画物を複数の部分描画物に分割する分割工程と、
隣接する2つの前記部分描画物のうち、一方の前記部分描画物の端部と、他方の前記部分描画物の端部とに対し、凹凸形状からなるマスク処理を施すマスク工程と、
一方の前記部分描画物の端部と、他方の前記部分描画物の端部とが重なるように、隣接する2つの前記部分描画物を描画する描画実行工程と
を含むことを特徴とする液体吐出方法。
【請求項13】
液体を吐出する吐出ノズルと、前記吐出ノズルを保持するキャリッジと、前記キャリッジを搬送する搬送部と、前記吐出ノズルを用いた描画物の描画を制御する制御部とを備えた液体吐出装置用のプログラムであって、
コンピュータを、
前記描画物を複数の部分描画物に分割する分割部、
隣接する2つの前記部分描画物のうち、一方の前記部分描画物の端部と、他方の前記部分描画物の端部とに対し、凹凸形状からなるマスク処理を施すマスク部、および、
一方の前記部分描画物の端部と、他方の前記部分描画物の端部とが重なるように、隣接する2つの前記部分描画物を描画する描画実行部
として機能させるためのプログラム。
【請求項14】
液体を吐出する吐出ノズルと、前記吐出ノズルを保持するキャリッジと、前記キャリッジを搬送する搬送部とを備えた液体吐出装置と、
前記吐出ノズルを用いた描画物の描画を制御する制御部と
を備えた液体吐出システムであって、
前記制御部は、
前記描画物を複数の部分描画物に分割する分割部と、
隣接する2つの前記部分描画物のうち、一方の前記部分描画物の端部と、他方の前記部分描画物の端部とに対し、凹凸形状からなるマスク処理を施すマスク部と、
一方の前記部分描画物の端部と、他方の前記部分描画物の端部とが重なるように、隣接する2つの前記部分描画物を描画する描画実行部と
を有することを特徴とする液体吐出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出方法、プログラム、および液体吐出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、キャリッジを移動させながら、被描画物に向けてヘッドからインクを吐出することにより、被描画物に対して描画物を描画することが可能な液体吐出装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来、液体吐出装置の描画可能な描画物のサイズよりも大きな描画物の描画を行う場合、描画対象の描画物を、描画可能なサイズ単位で複数の部分描画物に分割して、被描画物または液体吐出装置を移動させながら、複数の部分描画物を順次描画する必要があった。
【0004】
このため、従来、隣接する2つの部分描画物の間の繋ぎ目に隙間が生じてしまい、当該繋ぎ目が目立つといった問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決するため、隣接する2つの部分描画物の間の繋ぎ目を目立たなくできるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、一実施形態に係る液体吐出装置は、液体を吐出する吐出ノズルと、吐出ノズルを保持するキャリッジと、キャリッジを搬送する搬送部と、吐出ノズルを用いた描画物の描画を制御する制御部とを備え、制御部は、描画物を複数の部分描画物に分割する分割部と、隣接する2つの部分描画物のうち、一方の部分描画物の端部と、他方の部分描画物の端部とに対し、凹凸形状からなるマスク処理を施すマスク部と、一方の部分描画物の端部と、他方の部分描画物の端部とが重なるように、隣接する2つの部分描画物を描画する描画実行部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態に係る液体吐出装置によれば、隣接する2つの部分描画物の間の繋ぎ目を目立たなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る液体吐出装置の外観を示す図
図2】一実施形態に係るキャリッジの正面図
図3】一実施形態に係るキャリッジの平面図
図4】一実施形態に係るキャリッジの側面図
図5】一実施形態に係る液体吐出装置が備える制御系の構成を示す図
図6】一実施形態に係る液体吐出装置が備える制御部の機能構成の一例を示す図
図7】一実施形態に係る液体吐出装置が備える制御部による処理の手順の一例を示すフローチャート
図8】一実施形態に係る液体吐出装置による隣接する2つの部分描画物(描画前)の一例を示す図
図9】一実施形態に係る液体吐出装置による隣接する2つの部分描画物(描画前)の一例を示す図
図10】一実施形態に係る液体吐出装置によって描画される描画物の一例を示す図
図11】一実施形態に係る液体吐出装置によって描画される描画物の他の一例を示す図
図12】一実施形態に係る液体吐出装置によって描画される部分描画物の第1変形例を示す図
図13】一実施形態に係る液体吐出装置によって描画される描画物の第1変形例を示す図
図14】一実施形態に係る液体吐出装置によって描画される部分描画物の第2変形例を示す図
図15】一実施形態に係る液体吐出装置によって描画される描画物の第2変形例を示す図
図16】一実施形態に係る液体吐出装置によって描画される部分描画物の第3変形例を示す図
図17】一実施形態に係る液体吐出装置によって描画される部分描画物の第4変形例を示す図
図18】一実施形態に係る液体吐出装置によって描画される部分描画物の第5変形例を示す図
図19】一実施形態に係る液体吐出装置によって描画される部分描画物の第6変形例を示す図
図20】一実施形態に係る液体吐出装置によって描画される部分描画物の第7変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、一実施形態について説明する。
【0010】
(液体吐出装置100の構成)
図1は、一実施形態に係る液体吐出装置100の外観を示す図である。図1(a)は、液体吐出装置100の右側面図である。図1(b)は、液体吐出装置100の平面図である。
【0011】
図1に示すように、液体吐出装置100は、キャリッジ300を備える。キャリッジ300は、被描画物10に対向して設けられており、被描画物10に向けてインク(「液体」の一例)を吐出することができる。
【0012】
また、液体吐出装置100は、X軸レール101、Y軸レール102、およびZ軸レール103を備える。X軸レール101は、Z軸レール103をX軸方向に移動可能に保持する。Y軸レール102は、X軸レール101をY軸方向に移動可能に保持する。Z軸レール103は、キャリッジ300をZ軸方向に移動可能に保持する。
【0013】
また、液体吐出装置100は、X方向駆動部104、Y方向駆動部105、およびZ方向駆動部106を備える。X方向駆動部104は、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX軸方向に移動させる。Y方向駆動部105は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY軸方向に移動させる。Z方向駆動部106は、キャリッジ300をZ軸レール103に沿ってZ軸方向に移動させる。
【0014】
このように構成された液体吐出装置100は、キャリッジ300をX軸、Y軸、およびZ軸方向に移動させながら、キャリッジ300に保持されているヘッド350Y、350M、350C、および350Kから、被描画物10に向けてインクを吐出することにより、被描画物10に描画物を描画することができる。
【0015】
なお、被描画物10としては、例えば、自動車のボディ、鉄道車両のボディ、航空機のボディ、建物の壁面、道路の路面等である。
【0016】
また、X軸レール101、Y軸レール102、Z軸レール103、X方向駆動部104、Y方向駆動部105、およびZ方向駆動部106は、キャリッジ300を搬送する「搬送部」の一例である。
【0017】
(キャリッジ300の構成)
図2は、一実施形態に係るキャリッジ300の正面図である。図3は、一実施形態に係るキャリッジ300の平面図である。図4は、一実施形態に係るキャリッジ300の側面図である。
【0018】
キャリッジ300は、ヘッド350Y、350M、350C、および350Kを保持する。ヘッド350Y、350M、350C、および350Kは、それぞれ、Y、M、C、Kの各色のインクを吐出する。ヘッド350Y、350M、350C、および350Kの各々は、複数の吐出ノズル352を有するノズル面352Aを備える。ヘッド350Y、350M、350C、および350Kの各々は、ヘッド固定板303によって、ノズル面352Aが水平面と交差するように、且つ、複数の吐出ノズル352の配列方向がX軸方向に対して傾斜するように固定される。これにより、複数の吐出ノズル352の各々は、水平方向にインクを吐出することができる。
【0019】
また、キャリッジ300は、ワイパユニット300Aを備える。ワイパユニット300Aは、インク受け面304、ワイパ305、洗浄液供給部306、および洗浄液回収部材307を有する。インク受け面304は、吐出ノズル352から吐出されたインクを受け止める。ワイパ305は、ワイパユニット300Aが移動するときに、吐出ノズル352およびノズル面352Aに接触する。洗浄液供給部306は、洗浄液供給チューブ308から供給される洗浄液を、ワイパ305およびインク受け面304へ供給する。洗浄液回収部材307は、インク受け面304の下方に配置され、インク受け面304が受け止めたインク、および、ワイパ305およびインク受け面304に供給された洗浄液を回収することができる。また、洗浄液回収部材307は、洗浄液回収チューブ309を介して、インクおよび洗浄液を排出する。
【0020】
このように構成されたキャリッジ300では、ワイパユニット300Aがノズル面352Aに対向する位置に移動することにより、インク受け面304が、吐出ノズル352から吐出されたインクを受けることが可能となる。また、キャリッジ300では、ワイパユニット300Aがノズル面352Aに対向する位置で移動することにより、ワイパ305が、ノズル面352Aをクリーニングすることができる。
【0021】
キャリッジ300は、上部ガイド板310H、下部ガイド板310L、上部板311H、下部板311Lを備える。上部ガイド板310Hは、ヘッド固定板303の上部に固定されている。下部ガイド板310Lは、ヘッド固定板303の下部に固定されている。上部板311Hは、ワイパユニット300Aの上部に固定されている。下部板311Lは、ワイパユニット300Aの下部に固定されている。ヘッド固定板303、上部ガイド板310H、および下部ガイド板310Lは、吐出ノズル352を保持し、ワイパユニット300Aを移動可能に支持する筐体として機能する。
【0022】
上部ガイド板310Hには、ガイド溝312が形成されており、下部ガイド板310Lにも同様のガイド溝が形成されている。上部板311Hおよび下部板311Lには、それぞれ上部ガイド板310Hおよび下部ガイド板310Lに向けて突出するピン313が設けられている。
【0023】
さらに、キャリッジ300は、モータ314と、モータ314と同軸で回転するローラ314Aと、ローラ314Aに掛け回されたベルト315と、ベルト315が掛け回されたローラ316Aと、ローラ316Aを同軸で支持する回転軸316と、回転軸316に同軸で支持されるローラ316Bと、ローラ316Bに掛け回されたベルト317と、ベルト317が掛け回されたローラ318およびローラ319と、ワイパユニット300Aの上部板311Hとベルト317を連結する上部取り付け部320と、を備える。
【0024】
また、キャリッジ300は、回転軸316に同軸で支持されるローラ321と、ローラ321に掛け回されたベルト322と、ベルト322が掛け回されたローラ323およびローラ324と、ワイパユニット300Aの下部板311Lとベルト322を連結する下部取付部325と、を備える。
【0025】
また、キャリッジ300は、センサ326Aおよびセンサ326Bを備える。センサ326Aは、ワイパユニット300Aが待機位置(ホームポジション)にあることを検知する。センサ326Bは、ワイパユニット300Aが移動終了位置(折返し位置)にあることを検知する。
【0026】
以上の構成により、キャリッジ300では、モータ314を駆動すると、ベルト315を介してベルト317およびベルト322に回転駆動力が伝達され、ベルト317およびベルト322に連結されたワイパユニット300Aが移動する。その際、ピン313が、ガイド溝312の内側を摺動して移動することにより、ガイド溝312に沿ってワイパユニット300Aが移動する。
【0027】
(液体吐出装置100が備える制御系の構成)
図5は、一実施形態に係る液体吐出装置100が備える制御系の構成を示す図である。
【0028】
図5に示すように、液体吐出装置100は、コンプレッサ330、エアーレギュレータ331、インクタンク333、エアーレギュレータ334、洗浄液タンク336、開閉弁337、真空発生器338、電磁弁339、廃液タンク340、制御部360、および濃度検出部341を備える。
【0029】
コンプレッサ330およびエアーレギュレータ331は、加圧された空気をインクタンク333へ供給する。インクタンク333は、インク332を貯留する。エアーレギュレータ334は、コンプレッサ330と接続される。コンプレッサ330およびエアーレギュレータ334は、加圧された空気を洗浄液タンク336へ供給する。洗浄液タンク336は、洗浄液335を貯留する。開閉弁337は、洗浄液タンク336と洗浄液供給部306の間に設けられる。真空発生器338は、コンプレッサ330から受けた加圧空気により負圧を発生させる。電磁弁339は、コンプレッサ330および真空発生器338の加圧ポートに接続される。廃液タンク340は、真空発生器338のドレンポートに接続される。真空発生器338の吸引ポートには、洗浄液回収チューブ309が接続される。
【0030】
制御部360は、センサ326Aおよびセンサ326Bの検知信号に基づきモータ314を制御する。濃度検出部341は、インクに含まれるアセトン等の引火性の溶媒の蒸気濃度を検出する。制御部360は、濃度検出部341により検出される溶媒の蒸気濃度を入力し、図1に示したX方向駆動部104、Y方向駆動部105およびZ方向駆動部106を制御してキャリッジ300をX軸、Y軸、およびZ軸方向に移動させるとともに、ヘッド350、開閉弁337、および電磁弁339を制御する。
【0031】
制御部360は、例えば、全体の制御を司るCPUと、CPUに描画動作等の制御を実行させるためのプログラム、その他の固定データを格納するROMと、描画データ等を一時格納するRAMと、PC等のホストから描画データ等を受信するときに使用するデータ及び信号の送受を行うためのI/Fと、により構成される。
【0032】
液体吐出装置100では、制御部360がヘッド350を制御することにより、インクタンク333からヘッド350へ加圧されたインクが供給される。また、液体吐出装置100では、制御部360が開閉弁337を開くことにより、洗浄液タンク336から洗浄液供給部306へ加圧された洗浄液が供給される。また、液体吐出装置100では、制御部360が電磁弁339を開くことにより、コンプレッサ330が真空発生器338に加圧空気を送り込むと、真空発生器338の吸引ポートに負圧が発生し、洗浄液回収部材307内の液体が、洗浄液回収チューブ309を介して吸引されて廃液タンク340に排出される。
【0033】
(制御部360の機能構成の一例)
図6は、一実施形態に係る液体吐出装置100が備える制御部360の機能構成の一例を示す図である。なお、制御部360は、液体吐出装置100の各ハードウェア構成とともに、「液体吐出システム」を構成する。制御部360は、本実施形態のように液体吐出装置100に設けられてもよく、液体吐出装置100の外部に設けられてもよい。
【0034】
図6に示すように、制御部360は、取得部361、分割部362、マスク部363、および描画実行部364を備える。
【0035】
取得部361は、描画対象の描画物の画像データを取得する。例えば、取得部361は、描画物リストをディスプレイに表示し、当該描画物リストの中から描画対象の描画物をユーザに選択させることにより、選択された描画物を描画対象の描画物として取得する。なお、取得部361は、描画対象の描画物を、液体吐出装置100が備える記憶装置から取得してもよく、液体吐出装置100の外部に設けられている記憶装置から取得してもよい。また、ユーザによる描画物の選択は、液体吐出装置100において行われてもよく、液体吐出装置100の外部の装置から行われてもよい。
【0036】
分割部362は、取得部361によって取得された描画対象の描画物の画像データに基づいて、描画対象の描画物を、印刷単位での複数の部分描画物に分割する。例えば、分割部362は、描画対象の描画物の横方向の印刷サイズが、印刷可能な横方向の印刷サイズを超える場合、描画対象の描画物を、印刷可能な横方向の印刷サイズ毎に、複数の部分描画物に分割する。
【0037】
マスク部363は、分割部362によって分割された複数の部分描画物の各々に対し、隣接する2つの部分描画物の間の繋ぎ目を目立たなくするための、マスク処理を施す。具体的には、マスク部363は、横方向(主走査方向)に隣接する2つの部分描画物のうち、一方の部分描画物の端部と、他方の部分描画物の端部とに対し、凹凸形状からなるマスク処理を施す。この際、マスク部363は、各部分描画物の端部に対し、隣接する部分描画物の端部の画像を用いた凹凸形状を有する、所定の横幅のオーバーラップ部を付与する。
【0038】
特に、本実施形態では、マスク部363は、一方の部分描画物の端部と、他方の部分描画物の端部とに対し、互いに凹凸が逆転している(すなわち、互いに嵌り合う)凹凸形状からなるマスク処理を施す。
【0039】
さらに、本実施形態では、マスク処理の効果を最適化するため、マスク部363は、一方の部分描画物の端部と、他方の部分描画物の端部とに対し、1ドットライン毎に長さが異なる凹凸形状からなるマスク処理を施す。
【0040】
描画実行部364は、マスク部363によってマスク処理が施された複数の部分描画物の描画を実行する。具体的には、描画実行部364は、被描画物10に対して、複数の部分描画物を1部分描画物毎に描画する。なお、描画実行部364による各部分描画物の描画は、具体的には、キャリッジ300をX軸、Y軸、およびZ軸方向に移動させながら、キャリッジ300が備えるヘッド350Y、350M、350C、および350Kから、被描画物10に向けてインクを吐出することである。
【0041】
この際、描画実行部364は、隣接する2つの部分描画物において、一方の部分描画物の端部(凹凸形状を有するオーバーラップ部)と、他方の部分描画物の端部(凹凸形状を有するオーバーラップ部)とが重なるように、複数の部分描画物を1部分描画物毎に描画する。これにより、隣接する2つの部分描画物の境界部分が、一方の部分描画物の端部の凹凸形状と、一方の部分描画物の端部の凹凸形状とが嵌り合ってシームレスとなるため、隣接する2つの部分描画物の間の繋ぎ目を目立たなくすることができる。
【0042】
なお、制御部360の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0043】
(制御部360による処理の手順の一例)
図7は、一実施形態に係る液体吐出装置100が備える制御部360による処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0044】
まず、取得部361が、描画対象の描画物の画像データを取得する(ステップS701)。
【0045】
次に、分割部362が、ステップS701で取得された描画対象の描画物の画像データに基づいて、描画対象の描画物を、描画単位での複数の部分描画物に分割する(ステップS702)。
【0046】
次に、マスク部363が、ステップS702で分割された複数の部分描画物の各々に対し、隣接する2つの部分描画物の間の繋ぎ目を目立たなくするための、マスク処理を施す(ステップS703)。
【0047】
次に、ユーザが液体吐出装置100または被描画物10を移動した後、描画実行部364が、マスク部363によってマスク処理が施された複数の部分描画物のうち、描画が完了していない一の部分描画物(移動後の位置に対応する一の部分描画物)を選択して、選択された一の部分描画物の描画を実行する(ステップS704)。この際、描画実行部364は、描画済みの他の部分描画物の端部(凹凸形状を有するオーバーラップ部)と、描画対象の一の部分描画物の端部(凹凸形状を有するオーバーラップ部)とが重なるように、描画対象の一の部分描画物を描画する。
【0048】
なお、ユーザが液体吐出装置100または被描画物10を移動した後の、描画が完了していない一の部分描画物の選択、および、選択された一の部分描画物の描画開始指示は、ユーザが手動で行うようにしてもよい。この場合、描画実行部364は、ステップS704において、ユーザによって選択および描画開始指示がなされた一の部分描画物を描画する。
【0049】
次に、描画実行部364が、全ての部分描画物の描画が完了したか否かを判断する(ステップS705)。
【0050】
ステップS705において、全ての部分描画物の描画が完了していないと判断された場合(ステップS705:No)、制御部360は、ステップS704へ処理を戻す。
【0051】
一方、ステップS705において、全ての部分描画物の描画が完了したと判断された場合(ステップS705:Yes)、制御部360は、図7に示す一連の処理を終了する。
【0052】
(液体吐出装置100による描画の一例)
図8および図9は、一実施形態に係る液体吐出装置100による隣接する2つの部分描画物(描画前)の一例を示す図である。図10は、一実施形態に係る液体吐出装置100によって描画される描画物の一例を示す図である。
【0053】
図8に示す部分描画物812は、描画対象の描画物810(図10参照)を2分割することによって生成された部分描画物であり、隣接する2つの部分描画物のうちの、左側に描画される部分描画物である。
【0054】
図9に示す部分描画物814は、描画対象の描画物810(図10参照)を2分割することによって生成された部分描画物であり、隣接する2つの部分描画物のうちの、右側に描画される部分描画物である。
【0055】
図8に示すように、左側の部分描画物812は、マスク部363により、右端部に設けられたオーバーラップ部812Aに対して、マスク処理が施されている。具体的には、オーバーラップ部812Aには、部分描画物814のオーバーラップ部814Aに対して凹凸が逆転している(すなわち、互いに嵌り合う)凹凸形状からなるマスク処理が施されている。
【0056】
一方、図9に示すように、右側の部分描画物814は、マスク部363により、左端部に設けられたオーバーラップ部814Aに対して、マスク処理が施されている。具体的には、オーバーラップ部814Aには、部分描画物812のオーバーラップ部812Aに対して凹凸が逆転している(すなわち、互いに嵌り合う)凹凸形状からなるマスク処理が施されている。
【0057】
特に、図8および図9に示す例では、マスク処理の効果を最適化するため、オーバーラップ部812Aとオーバーラップ部814Aとに対し、1ドットライン毎に長さが異なる凹凸形状からなるマスク処理が施されている。
【0058】
また、図8および図9に示す例では、オーバーラップ部812Aにおける各凹形状の左右方向(主走査方向)の長さは、オーバーラップ部814Aにおける各凸形状部の左右方向(主走査方向)の長さと等しくなっている。
【0059】
また、図8および図9に示す例では、オーバーラップ部812Aにおける各凸形状部の左右方向(主走査方向)の長さは、オーバーラップ部814Aにおける各凹形状の左右方向(主走査方向)の長さと等しくなっている。
【0060】
また、オーバーラップ部812Aにおける各凸形状部の末端部(左端部)は、部分描画物812の画像本体に対して隙間無く接続されている。
【0061】
また、オーバーラップ部814Aにおける各凸形状部の末端部(右端部)は、部分描画物814の画像本体に対して隙間無く接続されている。
【0062】
そして、図10に示すように、描画実行部364は、部分描画物812のオーバーラップ部812Aと、部分描画物814のオーバーラップ部814Aとが重なるように、部分描画物812および部分描画物814を描画する。具体的には、描画実行部364は、まず、オーバーラップ部812Aを含む左側の部分描画物812を描画する。そして、ユーザが液体吐出装置100または被描画物10を左右方向に移動した後、描画実行部364は、オーバーラップ部814Aを含む右側の部分描画物814を描画する。
【0063】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、図10に示すように、部分描画物812と部分描画物814とによって形成される描画物810において、部分描画物812と部分描画物814との境界部分が、オーバーラップ部812Aの凹凸形状と、オーバーラップ部814Aの凹凸形状とが嵌り合ってシームレスとなるため、部分描画物812と部分描画物814との間の繋ぎ目を目立たなくすることができる。
【0064】
また、一実施形態に係る液体吐出装置100において、万が一、部分描画物812と部分描画物814との間に左右方向(主走査方向)の位置ずれが生じた場合であっても、部分描画物812と部分描画物814との間の隙間は、1ドットライン単位で左右方向(主走査方向)の広範囲且つランダムに分散されるため、当該隙間を目立たなくすることができる。
【0065】
(上下方向(副走査方向)の位置ずれの発生例)
図11は、一実施形態に係る液体吐出装置100によって描画される描画物の他の一例を示す図である。図11に示す描画物810-2は、描画実行部364により、図8に示す部分描画物812のオーバーラップ部812Aと、図9に示す部分描画物814のオーバーラップ部814Aとが重なるように、図8に示す部分描画物812および図9に示す部分描画物814を描画することによって、形成されたものである。但し、図11に示す描画物810-2では、部分描画物812と部分描画物814との間に、上下方向(副走査方向)の位置ずれが生じている。このため、図11に示す描画物810-2では、オーバーラップ部812Aとオーバーラップ部814Aとが重なる領域に、上下方向(副走査方向)の位置ずれによる白いスジが生じている。
【0066】
(液体吐出装置100による描画の第1変形例)
図12は、一実施形態に係る液体吐出装置100によって描画される部分描画物の第1変形例を示す図である。図13は、一実施形態に係る液体吐出装置100によって描画される描画物の第1変形例を示す図である。
【0067】
図12に示す部分描画物812-2は、図8に示す部分描画物812の変形例である。
図12に示す例では、部分描画物812-2のオーバーラップ部812Aにおける各凸形状部の太さ(上下幅)は、図8に示す部分描画物812のオーバーラップ部812Aにおける各凸形状部の太さ(上下幅)よりも、太くなっている。
【0068】
図13に示す描画物810-3は、描画実行部364により、図12に示す部分描画物812-2のオーバーラップ部812Aと、図9に示す部分描画物814のオーバーラップ部814Aとが重なるように、図12に示す部分描画物812-2および図9に示す部分描画物814を描画することによって、形成されたものである。
【0069】
図13に示すように、描画物810-3では、部分描画物812-2と部分描画物814との間に、上下方向(副走査方向)の位置ずれが生じているにも関わらず、部分描画物812-2のオーバーラップ部812Aにおける各凸形状部の太さが太くなっているため、オーバーラップ部812Aとオーバーラップ部814Aとが重なる領域において、上下方向(副走査方向)の位置ずれによる白いスジが解消している。
【0070】
例えば、描画実行部364は、部分描画物812-2のオーバーラップ部812Aにおける各凸形状部を、吐出ノズル352の開閉時間や開閉量を調整して、通常よりも大きなインク滴で描画することにより、各凸形状部の太さを通常よりも太く形成することができる。
【0071】
(液体吐出装置100による描画の第2変形例)
図14は、一実施形態に係る液体吐出装置100によって描画される部分描画物の第2変形例を示す図である。図15は、一実施形態に係る液体吐出装置100によって描画される描画物の第2変形例を示す図である。
【0072】
図14に示す部分描画物812-3は、図12に示す部分描画物812-2の変形例である。図14に示す例では、描画実行部364により、部分描画物812-3のオーバーラップ部812Aにおける凹形状部に対し、吐出ノズル352の開閉時間や開閉量を調整して、通常よりも小滴のインク滴を吐出することにより、当該凹形状部を埋める小滴描画がなされている。特に、薄い色であるグレー色のインク滴によってオーバーラップ部812Aの凹形状部を埋める小滴描画がなされている。
【0073】
図15に示す描画物810-4は、描画実行部364により、図14に示す部分描画物812-3のオーバーラップ部812Aと、図9に示す部分描画物814のオーバーラップ部814Aとが重なるように、図14に示す部分描画物812-3および図9に示す部分描画物814を描画することによって、形成されたものである。
【0074】
図15に示すように、描画物810-4では、部分描画物812-3と部分描画物814との間に、上下方向(副走査方向)の位置ずれが生じているにも関わらず、部分描画物812-3のオーバーラップ部812Aにおける凹形状部が、通常よりも小滴のインク滴によって埋められているため、オーバーラップ部812Aとオーバーラップ部814Aとが重なる領域において、上下方向(副走査方向)の位置ずれによる白いスジが視認され難くなっている。
【0075】
また、描画物810-4では、上下方向(副走査方向)の位置ずれに伴って、オーバーラップ部812Aの凹形状部と、オーバーラップ部814Aの凸形状部とが重なる部分に、濃い色のスジが部分的に生じているが、オーバーラップ部812Aの凹形状部における小滴描画が、薄い色のインク滴を用いて形成されているため、濃い色のスジが視認され難くなっている。
【0076】
(液体吐出装置100による描画の第3変形例)
図16は、一実施形態に係る液体吐出装置100によって描画される部分描画物の第3変形例を示す図である。
【0077】
図16に示す部分描画物812-4は、図14に示す部分描画物812-3の変形例である。図16に示す例では、描画実行部364により、部分描画物812-4のオーバーラップ部812Aにおける凹形状部に対し、吐出ノズル352の開閉時間や開閉量を調整して、通常よりも小滴のインク滴を吐出することにより、当該凹形状部を埋める小滴描画がなされている。特に、薄い色であるグレー色のインク滴によってオーバーラップ部812Aの凹形状部を埋める小滴描画がなされている。
【0078】
但し、図16に示す例では、描画実行部364により、オーバーラップ部812Aにおける各凹形状部において、凸形状部の下側となる部分のみ、小滴描画がなされている。
【0079】
描画実行部364は、図16に示す部分描画物812-4のオーバーラップ部812Aと、図9に示す部分描画物814のオーバーラップ部814Aとが重なるように、図16に示す部分描画物812-4および図9に示す部分描画物814を描画する。
【0080】
この際、描画実行部364は、部分描画物814を下方にずらして描画することで、オーバーラップ部812Aの凹形状部における小滴描画がなされていない部分が、白いスジとして発生しないようにすることができ、且つ、濃い色のスジも目立たないようにすることができる。
【0081】
(液体吐出装置100による描画の第4変形例)
図17は、一実施形態に係る液体吐出装置100によって描画される部分描画物の第4変形例を示す図である。
【0082】
図17に示す部分描画物812-5は、図14に示す部分描画物812-3の変形例である。図17に示す例では、描画実行部364により、部分描画物812-5のオーバーラップ部812Aにおける凹形状部に対し、吐出ノズル352の開閉時間や開閉量を調整して、通常よりも小滴のインク滴を吐出することにより、当該凹形状部を埋める小滴描画がなされている。特に、薄い色であるグレー色のインク滴によってオーバーラップ部812Aの凹形状部を埋める小滴描画がなされている。
【0083】
但し、図17に示す例では、描画実行部364により、オーバーラップ部812Aにおける各凹形状部において、左右方向(主走査方向)に間欠的に、小滴描画がなされている。
【0084】
描画実行部364は、図17に示す部分描画物812-5のオーバーラップ部812Aと、図9に示す部分描画物814のオーバーラップ部814Aとが重なるように、図17に示す部分描画物812-5および図9に示す部分描画物814を描画する。
【0085】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、部分描画物812-5と部分描画物814との間に、上下方向(副走査方向)の位置ずれが生じた場合であっても、オーバーラップ部812Aとオーバーラップ部814Aとが重なる領域において、オーバーラップ部812Aの凹形状部になされた小滴描画によって、上下方向(副走査方向)の位置ずれによる白いスジを視認され難くすることができる。
【0086】
また、一実施形態に係る液体吐出装置100は、上下方向(副走査方向)の位置ずれに伴って、オーバーラップ部812Aの凹形状部と、オーバーラップ部814Aの凸形状部とが重なる部分に、濃い色のスジが部分的に生じるが、オーバーラップ部812Aの凹形状部になされた小滴描画が、小滴且つ薄い色のインク滴が用いられ、且つ、左右方向(主走査方向)に間欠的に形成されているため、濃い色のスジを視認され難くすることができる。
【0087】
(液体吐出装置100による描画の第5変形例)
図18は、一実施形態に係る液体吐出装置100によって描画される部分描画物の第5変形例を示す図である。
【0088】
図18に示す部分描画物812-6は、図14に示す部分描画物812-3の変形例である。図18に示す例では、描画実行部364により、部分描画物812-6のオーバーラップ部812Aにおける凹形状部に対し、吐出ノズル352の開閉時間や開閉量を調整して、通常よりも小滴のインク滴を吐出することにより、当該凹形状部を埋める小滴描画がなされている。特に、薄い色であるグレー色のインク滴によってオーバーラップ部812Aの凹形状部を埋める小滴描画がなされている。
【0089】
但し、図18に示す例では、描画実行部364により、オーバーラップ部812Aにおける各凹形状部に対し、左右方向(主走査方向)における半分以上全部未満の長さで、小滴描画がなされている。
【0090】
描画実行部364は、図18に示す部分描画物812-6のオーバーラップ部812Aと、図9に示す部分描画物814のオーバーラップ部814Aとが重なるように、図18に示す部分描画物812-6および図9に示す部分描画物814を描画する。
【0091】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、部分描画物812-6と部分描画物814との間に、上下方向(副走査方向)の位置ずれが生じた場合であっても、オーバーラップ部812Aとオーバーラップ部814Aとが重なる領域において、オーバーラップ部812Aの凹形状部になされた小滴描画によって、上下方向(副走査方向)の位置ずれによる白いスジを視認され難くすることができる。
【0092】
また、一実施形態に係る液体吐出装置100は、上下方向(副走査方向)の位置ずれに伴って、オーバーラップ部812Aの凹形状部と、オーバーラップ部814Aの凸形状部とが重なる部分に、濃い色のスジが部分的に生じるが、オーバーラップ部812Aの凹形状部になされた小滴描画が、小滴且つ薄い色のインク滴が用いられ、且つ、左右方向(主走査方向)における半分以上全部未満の長さを有するため、濃い色のスジの左右方向(主走査方向)の長さを短くすることができ、濃い色のスジを視認され難くすることができる。
【0093】
(液体吐出装置100による描画の第6変形例)
図19は、一実施形態に係る液体吐出装置100によって描画される部分描画物の第6変形例を示す図である。
【0094】
図19に示す部分描画物812-7は、図18に示す部分描画物812-6の変形例である。図19に示す例では、描画実行部364により、部分描画物812-7のオーバーラップ部812Aにおける凹形状部に対し、吐出ノズル352の開閉時間や開閉量を調整して、通常よりも小滴のインク滴を吐出することにより、当該凹形状部を埋める小滴描画がなされている。特に、薄い色であるグレー色のインク滴によってオーバーラップ部812Aの凹形状部を埋める小滴描画がなされている。さらに、図19に示す例では、描画実行部364により、オーバーラップ部812Aにおける各凹形状部に対し、左右方向(主走査方向)における半分以上全部未満の長さで、小滴描画がなされている。
【0095】
但し、図19に示す例では、描画実行部364により、オーバーラップ部812Aにおける各凹形状部において、当該凹形状部の左右方向(主走査方向)における中間位置に、小滴描画がなされている。
【0096】
描画実行部364は、図19に示す部分描画物812-7のオーバーラップ部812Aと、図9に示す部分描画物814のオーバーラップ部814Aとが重なるように、図19に示す部分描画物812-7および図9に示す部分描画物814を描画する。
【0097】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、部分描画物812-7と部分描画物814との間に、上下方向(副走査方向)の位置ずれが生じた場合であっても、オーバーラップ部812Aとオーバーラップ部814Aとが重なる領域において、オーバーラップ部812Aの凹形状部になされた小滴描画によって、上下方向(副走査方向)の位置ずれによる白いスジを視認され難くすることができる。
【0098】
また、一実施形態に係る液体吐出装置100は、上下方向(副走査方向)の位置ずれに伴って、オーバーラップ部812Aの凹形状部と、オーバーラップ部814Aの凸形状部とが重なる部分に、濃い色のスジが部分的に生じるが、オーバーラップ部812Aの凹形状部になされた小滴描画が、小滴且つ薄い色のインク滴が用いられ、且つ、左右方向(主走査方向)における半分以上全部未満の長さを有するものであるため、濃い色のスジの左右方向(主走査方向)の長さを短くすることができ、よって濃い色のスジを視認され難くすることができる。
【0099】
さらに、一実施形態に係る液体吐出装置100は、オーバーラップ部812Aの凹形状部になされた小滴描画が、当該凹形状部の左右方向(主走査方向)における中間位置に形成されるため、凹形状部において小滴描画がなされない空白部分を、小滴描画の両外側に分散できるため、万が一、上下方向(副走査方向)の位置ずれによる白いスジが生じた場合であっても、当該白いスジの左右方向(主走査方向)の長さを短くすることができ、よって、当該白いスジを視認され難くすることができる。
【0100】
(液体吐出装置100による描画の第7変形例)
図20は、一実施形態に係る液体吐出装置100によって描画される部分描画物の第7変形例を示す図である。
【0101】
図20に示す部分描画物814-2は、図9に示す部分描画物814の変形例であり、且つ、図18に示す部分描画物812-6に対応するものである。図20に示す例では、描画実行部364により、部分描画物814-2のオーバーラップ部814Aにおける凸形状部に対し、部分描画物812-6のオーバーラップ部812Aの凹形状部になされた小滴描画と重なる部分には、吐出ノズル352の開閉時間や開閉量を調整することにより、インクの吐出量が少なくなっている。
【0102】
描画実行部364は、図18に示す部分描画物812-6のオーバーラップ部812Aと図20に示す部分描画物814-2のオーバーラップ部814Aとが重なるように、図18に示す部分描画物812-6および図20に示す部分描画物814-2を描画する。
【0103】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、部分描画物812-6と部分描画物814-2との間に、上下方向(副走査方向)の位置ずれが生じた場合であっても、オーバーラップ部812Aとオーバーラップ部814Aとが重なる領域において、オーバーラップ部812Aの凹形状部になされた小滴描画によって、上下方向(副走査方向)の位置ずれによる白いスジを視認され難くすることができる。
【0104】
また、一実施形態に係る液体吐出装置100は、上下方向(副走査方向)の位置ずれに伴って、オーバーラップ部812Aの凹形状部と、オーバーラップ部814Aの凸形状部とが重なる部分に、濃い色のスジが部分的に生じるが、オーバーラップ部814Aに凸形状部(オーバーラップ部814Aの凸形状部と重なる部分)のインクの吐出量が少なくなっているため、濃い色のスジの濃度を弱めて、濃い色のスジを視認され難くすることができる。
【0105】
(効果)
以上説明したように、一実施形態に係る液体吐出装置100は、液体を吐出する吐出ノズル352と、吐出ノズル352を保持するキャリッジ300と、キャリッジ300を搬送する搬送部と、吐出ノズル352を用いた描画物の描画を制御する制御部360とを備え、制御部360は、描画物を複数の部分描画物に分割する分割部362と、隣接する2つの部分描画物のうち、一方の部分描画物の端部と、他方の部分描画物の端部とに対し、凹凸形状からなるマスク処理を施すマスク部363と、一方の部分描画物の端部と、他方の部分描画物の端部とが重なるように、隣接する2つの部分描画物を描画する描画実行部364とを有する。
【0106】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、隣接する2つの部分描画物の境界部分が、一方の部分描画物の端部の凹凸形状と、一方の部分描画物の端部の凹凸形状とが嵌り合ってシームレスとなるため、隣接する2つの部分描画物の間の繋ぎ目を目立たなくすることができる。
【0107】
一実施形態に係る液体吐出装置100において、マスク部363は、一方の部分描画物の端部と、他方の部分描画物の端部とに対し、互いに凹凸が逆転している凹凸形状からなるマスク処理を施すことができる。
【0108】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、隣接する2つの部分描画物の境界部分が、一方の部分描画物の端部の凹凸形状と、一方の部分描画物の端部の凹凸形状とが完全に嵌り合ってシームレスとなるため、隣接する2つの部分描画物の間の繋ぎ目をより目立たなくすることができる。
【0109】
また、一実施形態に係る液体吐出装置100において、一方の部分描画物の端部と、他方の部分描画物の端部とに対し、1ドットライン毎に長さが異なる凹凸形状からなるマスク処理を施すことができる。
【0110】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、万が一、隣接する2つの部分描画物の間に主走査方向の位置ずれが生じた場合であっても、隣接する2つの部分描画物の間の隙間は、1ドットライン単位で主走査方向の広範囲且つランダムに分散されるため、当該隙間を目立たなくすることができる。
【0111】
特に、マスク部363は、凹凸形状のうちの複数の凸形状部の各々を、部分描画物の本体部から途切れることなく突出した形状に形成する。これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、複数の凸形状部の各々を部分描画物の本体部から途切れるように設けた場合と比較して、描画後の隣接する2つの部分描画物の間(すなわち、オーバーラップ部)における隙間の発生量を抑制することができる。複数の凸形状部の各々を部分描画物の本体部から途切れるように設けた場合、本体部と凸形状部との間の隙間(空白部分)が、そのまま、描画後の隣接する2つの部分描画物の間(すなわち、オーバーラップ部)における隙間となってしまうからである。
【0112】
また、一実施形態に係る液体吐出装置100において、描画実行部364は、一方の部分描画物の端部に対し、通常よりも大滴の液体を吐出して凹凸形状のうちの凸形状部を描画することができる。
【0113】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、万が一、隣接する2つの部分描画物の間に、副走査方向の位置ずれが生じた場合であっても、一方の部分描画物の端部の凹凸形状と、一方の部分描画物の端部の凹凸形状とが重なる領域において、副走査方向の位置ずれによって白いスジが発生しないようにすることができる。
【0114】
また、一実施形態に係る液体吐出装置100において、描画実行部364は、一方の部分描画物の端部に対し、通常よりも小滴の液体を吐出して凹凸形状のうちの凹形状部を埋める描画を行うことができる。
【0115】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、万が一、隣接する2つの部分描画物の間に、副走査方向の位置ずれが生じた場合であっても、一方の部分描画物の端部の凹凸形状と、一方の部分描画物の端部の凹凸形状とが重なる領域において、副走査方向の位置ずれによって生じる白いスジおよび濃い色のスジを視認され難くすることができる。
【0116】
また、一実施形態に係る液体吐出装置100において、描画実行部364は、一方の部分描画物の端部に対し、凹凸形状のうちの凸形状部の副走査方向の一方側となる部分のみ、凹形状部を埋める描画を行い、他方の部分描画物を、副走査方向の一方側にずらして描画することができる。
【0117】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、万が一、隣接する2つの部分描画物の間に、副走査方向の位置ずれが生じた場合であっても、一方の部分描画物の端部の凹凸形状と、一方の部分描画物の端部の凹凸形状とが重なる領域において、一方の部分描画物の端部の凹形状部における小滴描画がなされていない部分が、白いスジとして発生しないようにすることができ、且つ、濃い色のスジも目立たないようにすることができる。
【0118】
また、一実施形態に係る液体吐出装置100において、描画実行部364は、凹形状部を、主走査方向において間欠的に埋める描画を行うことができる。
【0119】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、万が一、隣接する2つの部分描画物の間に、副走査方向の位置ずれが生じた場合であっても、一方の部分描画物の端部の凹凸形状と、一方の部分描画物の端部の凹凸形状とが重なる領域において、副走査方向の位置ずれによって生じる白いスジおよび濃い色のスジを視認され難くすることができる。
【0120】
また、一実施形態に係る液体吐出装置100において、描画実行部364は、凹形状部を、主走査方向における半分以上全部未満の長さで埋める描画を行うことができる。
【0121】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、万が一、隣接する2つの部分描画物の間に、副走査方向の位置ずれが生じた場合であっても、一方の部分描画物の端部の凹凸形状と、一方の部分描画物の端部の凹凸形状とが重なる領域において、副走査方向の位置ずれによって生じる白いスジおよび濃い色のスジを視認され難くすることができる。
【0122】
また、一実施形態に係る液体吐出装置100において、描画実行部364は、凹形状部の主走査方向における中間位置に、凹形状部を、主走査方向における半分以上全部未満の長さで埋める描画を行うことができる。
【0123】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、万が一、隣接する2つの部分描画物の間に、副走査方向の位置ずれが生じた場合であっても、一方の部分描画物の端部の凹凸形状と、一方の部分描画物の端部の凹凸形状とが重なる領域において、一方の部分描画物の端部の凹形状部における小滴描画がなされていない空白部分を、小滴描画がなされている部分の主走査方向における両外側に分散できるため、当該空白部分による白いスジの主走査方向の長さを短くすることができ、よって、当該白いスジを視認され難くすることができる。
【0124】
また、一実施形態に係る液体吐出装置100において、描画実行部364は、他方の部分描画物の端部の前記凹凸形状のうちの凸形状部における、一方の部分描画物の端部の小滴の液体で埋められた部分と重なる部分に対し、インクの吐出量を少なくすることができる。
【0125】
これにより、一実施形態に係る液体吐出装置100は、万が一、隣接する2つの部分描画物の間に、副走査方向の位置ずれが生じた場合であっても、一方の部分描画物の端部の凹凸形状と、一方の部分描画物の端部の凹凸形状とが重なる領域において、副走査方向の位置ずれによって生じる白いスジおよび濃い色のスジを視認され難くすることができる。
【0126】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0127】
例えば、上記実施形態では、描画物を上下方向(副走査方向)に対して平行な直線で分割し、複数の部分描画物をマスク処理を介して左右方向につなぎ合わせる例を説明したが、これに限らず、例えば、描画物を上下方向(副走査方向)に対して斜めの直線で分割し、複数の部分描画物をマスク処理を介して左右方向につなぎ合わせるようにしてもよい。
【0128】
例えば、上記実施形態では、描画物の左右方向を主走査方向として、複数の部分描画物をマスク処理を介して左右方向につなぎ合わせる例を説明したが、これに限らず、例えば、描画物の上下方向を主走査方向として、複数の部分描画物をマスク処理を介して上下方向につなぎ合わせるようにしてもよい。
【0129】
なお、本発明において描画される描画物は、画像のような絵であってもよいし、単色の画像(ベタ塗画像)であってもよい。
【符号の説明】
【0130】
10 被描画物
100 液体吐出装置
101 X軸レール
102 Y軸レール
103 Z軸レール
104 X方向駆動部
105 Y方向駆動部
106 Z方向駆動部
300 キャリッジ
350Y,350M,350C,350K ヘッド
352 吐出ノズル
352A ノズル面
360 制御部
361 取得部
362 分割部
363 マスク部
364 描画実行部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0131】
【特許文献1】特開2021-146672号公報
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