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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095794
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】組成物、膜及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20230629BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20230629BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230629BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20230629BHJP
   C08L 51/10 20060101ALI20230629BHJP
   C08F 265/04 20060101ALI20230629BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20230629BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20230629BHJP
   C09K 11/70 20060101ALI20230629BHJP
   C09K 11/88 20060101ALI20230629BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20230629BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
C08L65/00
C08F2/44 A
C08K3/013
C08L33/04
C08L51/10
C08F265/04
C09K11/06
C09K11/08 J
C09K11/70
C09K11/88
C09K11/02 Z
G02B5/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022191919
(22)【出願日】2022-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2021210552
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川(良永) 裕佳子
(72)【発明者】
【氏名】大川 春樹
(72)【発明者】
【氏名】小松 慶史
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 真芳
(72)【発明者】
【氏名】土谷 崇夫
【テーマコード(参考)】
2H042
4H001
4J002
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
2H042BA02
2H042BA20
4H001CA01
4H001CA05
4H001XA15
4H001XA16
4H001XA30
4H001XA34
4H001XA49
4J002BG021
4J002BN191
4J002DC006
4J002FD016
4J002FD070
4J002GP00
4J002GQ00
4J011AA05
4J011AC04
4J011BA04
4J011PA05
4J011PA69
4J011PB25
4J011PC02
4J011PC08
4J011QA23
4J011SA65
4J011TA03
4J011TA07
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J026AA45
4J026AC00
4J026BA28
4J026BA29
4J026DB06
4J026DB09
4J026DB11
4J026DB30
4J026DB36
4J026FA05
4J026FA09
4J026GA06
(57)【要約】
【課題】発光性無機半導体粒子を含む組成物であって、発光強度が良好な組成物、該組成物から形成される膜、及び、該膜を含む表示装置を提供する。
【解決手段】発光性無機半導体粒子(A)と発光性有機化合物(B)とを含む組成物、該組成物から形成される膜、及び、該膜を含む表示装置が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光性無機半導体粒子(A)と、発光性有機化合物(B)とを含む、組成物。
【請求項2】
前記発光性無機半導体粒子(A)は、その発光スペクトルにおいて、極大波長が480nm以上560nm以下又は570nm以上680nm以下である発光ピークを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記発光性有機化合物(B)は、その吸光スペクトルにおいて、極大波長が350nm以上550nm以下である吸光ピークを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
光散乱剤(C)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
樹脂(D)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
重合性化合物(E)及び重合開始剤(F)をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物から形成される膜。
【請求項8】
前記膜は、その発光スペクトルにおいて、極大波長が480nm以上560nm以下又は570nm以上680nm以下である発光ピークを有し、
前記発光ピークの半値全幅が50nm以下である、請求項7に記載の膜。
【請求項9】
請求項7に記載の膜を含む表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物及びそれから形成される膜、並びに該膜を含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、量子ドットを含む硬化性樹脂組成物、及び該硬化性樹脂組成物を用いて形成される波長変換膜が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-065178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の1つの目的は、量子ドット等の発光性無機半導体粒子を含む組成物であって、発光強度が良好な組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、該組成物から形成される膜、及び、該膜を含む表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に示される組成物、膜及び表示装置を提供する。
[1] 発光性無機半導体粒子(A)と、発光性有機化合物(B)とを含む、組成物。
[2] 前記発光性無機半導体粒子(A)は、その発光スペクトルにおいて、極大波長が480nm以上560nm以下又は570nm以上680nm以下である発光ピークを有する、[1]に記載の組成物。
[3] 前記発光性有機化合物(B)は、その吸光スペクトルにおいて、極大波長が350nm以上550nm以下である吸光ピークを有する、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 光散乱剤(C)をさらに含む、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5] 樹脂(D)をさらに含む、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6] 重合性化合物(E)及び重合開始剤(F)をさらに含む、[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の組成物から形成される膜。
[8] 前記膜は、その発光スペクトルにおいて、極大波長が480nm以上560nm以下又は570nm以上680nm以下である発光ピークを有し、
前記発光ピークの半値全幅が50nm以下である、[7]に記載の膜。
[9] [7]又は[8]に記載の膜を含む表示装置。
【発明の効果】
【0006】
発光性無機半導体粒子を含む組成物であって、発光強度が良好な組成物、該組成物から形成される膜、及び、該膜を含む表示装置を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<組成物>
本発明に係る組成物(以下、単に「組成物」ともいう。)は、発光性無機半導体粒子(A)(以下、単に「半導体粒子(A)」ともいう。)と、発光性有機化合物(B)とを含む。組成物は、後述する他の成分をさらに含むことができる。組成物は、光照射又は熱により硬化する硬化性組成物であってもよい。組成物のいくつかの実施形態を挙げると、例えば次のとおりである。
半導体粒子(A)と発光性有機化合物(B)とを含む組成物a、
半導体粒子(A)と発光性有機化合物(B)と溶剤(J)とを含む組成物b、
半導体粒子(A)と発光性有機化合物(B)と樹脂(D)と溶剤(J)とを含む組成物c、
半導体粒子(A)と発光性有機化合物(B)と樹脂(D)と重合性化合物(E)と重合開始剤(F)と溶剤(J)とを含む組成物d、
上記組成物a~dにおいて、有機配位子(G)をさらに含む組成物e、
上記組成物a~eにおいて、光散乱剤(C)をさらに含む組成物f。
【0008】
本発明に係る組成物は、良好な発光強度を示すことができ、該組成物から形成される膜もまた、良好な発光強度を示すことができる。本発明に係る組成物から形成される膜を、以下、単に「膜」ともいう。また、以下において、発光強度に関する記載は、特記しない限り、組成物及び/又は膜の発光強度について言及するものである。
以下、組成物に含まれる又は含まれ得る成分について説明する。
【0009】
[1]発光性無機半導体粒子(A)
組成物に含まれる半導体粒子(A)としては、量子ドット及びペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(以下、「ペロブスカイト化合物」ともいう。)が挙げられ、より好ましくは量子ドットである。量子ドットは、粒子径1nm以上100nm以下の発光性半導体微粒子であり、半導体のバンドギャップを利用し、紫外光又は可視光(例えば青色光)を吸収して発光する微粒子である。
【0010】
量子ドットとしては、例えば、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、CdHgTe、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe等の12族元素と16族元素との化合物;GaN、GaP、GaAs、AlN、AlP、AlAs、InN、InP、InAs、GaNP、GaNAs、GaPAs、AlNP、AlNAs、AlPAs、InNP、InNAs、InPAs、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlPAs、GaInNP、GaInNAs、GaInPAs、InAlNP、InAlNAs、InAlPAs等の13族元素と15族元素との化合物;PdS、PbSe等の14族元素と16族元素との化合物等が挙げられる。
【0011】
量子ドットがSやSeを含む場合、金属酸化物や有機物で表面修飾した量子ドットを使用してもよい。表面修飾した量子ドットを使用することで、組成物に含まれる又は含まれ得る反応成分によってSやSeが引き抜かれることを防止することができる。
また量子ドットは、上記の化合物を組み合わせてコアシェル構造を形成していてもよい。このような組み合わせとしては、コアがCdSeであり、シェルがZnSである微粒子、コアがInPであり、シェルがZnSeSである微粒子等が挙げられる。
【0012】
量子ドットのエネルギー状態はその大きさに依存するため、粒子径を変えることにより自由に発光波長を選択することが可能である。例えば、CdSeのみから構成される量子ドットの場合、粒子径が2.3nm、3.0nm、3.8nm、4.6nmであるときの発光スペクトル(蛍光スペクトル)のピーク波長(発光ピークの極大波長)は、それぞれ528nm、570nm、592nm、637nmである。また、量子ドットからの発光光はスペクトル幅が狭く、このような急峻なピークを有する光を組み合わせることにより、組成物から形成される膜を含む表示装置において、表示可能な色域を拡大させることができる。さらに、量子ドットは応答性が高く、光源から放射される光を効率良く利用することができる。
【0013】
ペロブスカイト化合物は、A、B及びXを成分とする、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物である。
Aは、ペロブスカイト型結晶構造において、Bを中心とする6面体の各頂点に位置する成分であって、1価の陽イオンである。
Xは、ペロブスカイト型結晶構造において、Bを中心とする8面体の各頂点に位置する成分を表し、ハロゲン化物イオン及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種のイオンである。
Bは、ペロブスカイト型結晶構造において、Aを頂点に配置する6面体及びXを頂点に配置する8面体の中心に位置する成分であって、金属イオンである。
【0014】
A、B及びXを成分とするペロブスカイト化合物としては、特に限定されず、3次元構造、2次元構造、疑似2次元構造のいずれの構造を有する化合物であってもよい。
3次元構造の場合には、ペロブスカイト化合物は、ABX(3+δ)で表される。
2次元構造の場合には、ペロブスカイト化合物は、ABX(4+δ)で表される。
ここで、δは、Bの電荷バランスに応じて適宜変更が可能な数であり、-0.7以上0.7以下である。
【0015】
ペロブスカイト化合物であって、ABX(3+δ)で表される、3次元構造のペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物の好ましい具体例としては、
CHNHPbBr、CHNHPbCl、CHNHPbI、CHNHPbBr(3-y)(0<y<3)、CHNHPbBr(3-y)Cl(0<y<3)、(HN=CH-NH)PbBr、(HN=CH-NH)PbCl、(HN=CH-NH)PbI
CHNHPb(1-a)CaBr(0<a≦0.7)、CHNHPb(1-a)SrBr(0<a≦0.7)、CHNHPb(1-a)LaBr(3+δ)(0<a≦0.7,0<δ≦0.7)、CHNHPb(1-a)BaBr(0<a≦0.7)、CHNHPb(1-a)DyBr(3+δ)(0<a≦0.7,0<δ≦0.7)、
CHNHPb(1-a)NaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、CHNHPb(1-a)LiBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、
CsPb(1-a)NaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、CsPb(1-a)LiBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、
CHNHPb(1-a)NaBr(3+δ-y)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、CHNHPb(1-a)LiBr(3+δ-y)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、CHNHPb(1-a)NaBr(3+δ-y)Cl(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、CHNHPb(1-a)LiBr(3+δ-y)Cl(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、
(HN=CH-NH)Pb(1-a)NaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(HN=CH-NH)Pb(1-a)LiBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(HN=CH-NH)Pb(1-a)NaBr(3+δ-y)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、(HN=CH-NH)Pb(1-a)NaBr(3+δ-y)Cl(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、
CsPbBr、CsPbCl、CsPbI、CsPbBr(3-y)(0<y<3)、CsPbBr(3-y)Cl(0<y<3)、CHNHPbBr(3-y)Cl(0<y<3)、
CHNHPb(1-a)ZnBr(0<a≦0.7)、CHNHPb(1-a)AlBr(3+δ)(0<a≦0.7,0≦δ≦0.7)、CHNHPb(1-a)CoBr(0<a≦0.7)、CHNHPb(1-a)MnBr(0<a≦0.7)、CHNHPb(1-a)MgBr(0<a≦0.7)、
CsPb(1-a)ZnBr(0<a≦0.7)、CsPb(1-a)AlBr(3+δ)(0<a≦0.7,0<δ≦0.7)、CsPb(1-a)CoBr(0<a≦0.7)、CsPb(1-a)MnBr(0<a≦0.7)、CsPb(1-a)MgBr(0<a≦0.7)、
CHNHPb(1-a)ZnBr(3-y)(0<a≦0.7,0<y<3)、CHNHPb(1-a)AlBr(3+δ-y)(0<a≦0.7,0<δ≦0.7,0<y<3)、CHNHPb(1-a)CoBr(3-y)(0<a≦0.7,0<y<3)、CHNHPb(1-a)MnBr(3-y)(0<a≦0.7,0<y<3)、CHNHPb(1-a)MgBr(3-y)(0<a≦0.7,0<y<3)、CHNHPb(1-a)ZnBr(3-y)Cl(0<a≦0.7,0<y<3)、CHNHPb(1-a)AlBr(3+δ-y)Cl(0<a≦0.7,0<δ≦0.7,0<y<3)、CHNHPb(1-a)CoBr(3+δ-y)Cl(0<a≦0.7,0<y<3)、CHNHPb(1-a)MnBr(3-y)Cl(0<a≦0.7,0<y<3)、CHNHPb(1-a)MgBr(3-y)Cl(0<a≦0.7,0<y<3)、
(HN=CH-NH)ZnBr(0<a≦0.7)、(HN=CH-NH)MgBr(0<a≦0.7)、(HN=CH-NH)Pb(1-a)ZnBr(3-y)(0<a≦0.7,0<y<3)、(HN=CH-NH)Pb(1-a)ZnBr(3-y)Cl(0<a≦0.7,0<y<3)等が挙げられる。
【0016】
ペロブスカイト化合物であって、ABX(4+δ)で表される、2次元構造のペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物の好ましい具体例としては、
(CNHPbBr、(CNHPbCl、(CNHPbI、(C15NHPbBr、(C15NHPbCl、(C15NHPbI、(CNHPb(1-a)LiBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(CNHPb(1-a)NaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(CNHPb(1-a)RbBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、
(C15NHPb(1-a)NaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(C15NHPb(1-a)LiBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(C15NHPb(1-a)RbaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、
(CNHPb(1-a)NaBr(4+δ-y)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、(CNHPb(1-a)LiBr(4+δ-y)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、(CNHPb(1-a)RbBr(4+δ-y)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、
(CNHPb(1-a)NaBr(4+δ-y)Cl(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、(CNHPb(1-a)LiBr(4+δ-y)Cl(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、(CNHPb(1-a)RbBr(4+δ-y)Cl(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、
(CNHPbBr、(C15NHPbBr
(CNHPbBr(4-y)Cl(0<y<4)、(CNHPbBr(4-y)(0<y<4)、
(CNHPb(1-a)ZnBr(0<a≦0.7)、(CNHPb(1-a)MgBr(0<a≦0.7)、(CNHPb(1-a)CoBr(0<a≦0.7)、(CNHPb(1-a)MnBr(0<a≦0.7)、
(C15NHPb(1-a)ZnBr(0<a≦0.7)、(C15NHPb(1-a)MgBr(0<a≦0.7)、(C15NHPb(1-a)CoBr(0<a≦0.7)、(C15NHPb(1-a)MnBr(0<a≦0.7)、
(CNHPb(1-a)ZnBr(4-y)(0<a≦0.7,0<y<4)、(CNHPb(1-a)MgBr(4-y)(0<a≦0.7,0<y<4)、(CNHPb(1-a)CoBr(4-y)(0<a≦0.7,0<y<4)、(CNHPb(1-a)MnBr(4-y)(0<a≦0.7,0<y<4)、
(CNHPb(1-a)ZnBr(4-y)Cl(0<a≦0.7,0<y<4)、(CNHPb(1-a)MgBr(4-y)Cl(0<a≦0.7,0<y<4)、(CNHPb(1-a)CoBr(4-y)Cl(0<a≦0.7,0<y<4)、(CNHPb(1-a)MnBr(4-y)Cl(0<a≦0.7,0<y<4)等が挙げられる。
【0017】
組成物は、光源から放射される光により特定波長の光を発光する半導体粒子(A)を1種のみを含有していてもよく、異なる波長の光を発光する半導体粒子(A)を2種以上組み合わせて含有していてもよい。上記特定波長の光としては、例えば、赤色光、緑色光、青色光が挙げられ、好ましくは、赤色光、緑色光である。半導体粒子(A)及びこれを含む組成物は、その発光スペクトルにおいて、極大波長が480nm以上560nm以下又は570nm以上680nm以下である発光ピークを有することができる。
【0018】
1つの実施形態において、組成物は半導体粒子(A)として半導体粒子(A-1)を含み、該半導体粒子(A-1)は、その発光スペクトルにおいて、極大波長が480nm以上560nm以下、好ましくは500nm以上560nm以下、より好ましくは520nm以上550nm以下である発光ピークを有する。他の実施形態において、組成物は半導体粒子(A)として半導体粒子(A-2)を含み、該半導体粒子(A-2)は、極大波長が570nm以上680nm以下、好ましくは590nm以上660nm以下、より好ましくは600nm以上650nm以下である発光ピークを有する。半導体粒子(A-1)及び半導体粒子(A-2)の上記発光ピークの半値全幅はそれぞれ、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下である。該半値全幅は、20nm以上又は30nm以上であってよい。半導体粒子(A)の発光スペクトルは、後述の実施例の欄に記載の測定方法に従って測定することができる。
【0019】
発光強度を向上させる観点から、半導体粒子(A-1)は、その吸光スペクトルにおいて、好ましくは、極大波長が450nm以上550nm以下である吸光ピークを有し、より好ましくは、極大波長が450nm以上550nm以下である吸光ピークを有し、かつ、500nm以下の波長域に吸収を有する。半導体粒子(A-1)は、その吸光スペクトルにおいて、極大波長が460nm以上530nm以下である吸光ピークを有することがより好ましい。
【0020】
発光強度を向上させる観点から、半導体粒子(A-2)は、その吸光スペクトルにおいて、好ましくは、極大波長が550nm以上650nm以下である吸光ピークを有し、より好ましくは、極大波長が550nm以上650nm以下である吸光ピークを有し、かつ、600nm以下の波長域に吸収を有する。半導体粒子(A-2)は、その吸光スペクトルにおいて、極大波長が560nm以上630nm以下である吸光ピークを有することがより好ましい。半導体粒子(A)の吸光スペクトルは、後述の実施例の欄に記載の測定方法に従って測定することができる。
【0021】
組成物が後述する樹脂(D)を含む場合、組成物における半導体粒子(A)の含有率は、組成物の固形分の総量に対して、例えば1質量%以上60質量%以下であり、好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上50質量%以下であり、なおさらに好ましくは20質量%以上40質量%以下である。
【0022】
組成物が後述する樹脂(D)を含まない場合、組成物における半導体粒子(A)の含有率は、組成物の固形分の総量に対して、例えば30質量%以上95質量%以下であり、好ましくは40質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上85質量%以下であり、さらに好ましくは55質量%以上80質量%以下であり、なおさらに好ましくは60質量%以上75質量%以下である。
【0023】
組成物は、例えば半導体粒子(A-1)及び半導体粒子(A-2)を含むなど、半導体粒子(A)を2種以上含んでいてもよい。この場合、半導体粒子(A)の含有率は、2種以上の半導体粒子(A)の合計含有率を意味する。組成物に含まれる又は含まれ得る後述の半導体粒子(A)以外の成分についても同様であり、該成分の含有量又は含有率は、2種以上含まれる場合には、それらの合計含有量又は合計含有率を意味する。
【0024】
本明細書において固形分の総量とは、組成物に含まれる成分のうち、溶剤(J)を除いた成分の合計を意味する。組成物の固形分中の含有率は、液体クロマトグラフィ又はガスクロマトグラフィ等の公知の分析手段で測定することができる。組成物の固形分中における各成分の含有率は、組成物調製時の配合から算出されてもよい。
【0025】
[2]有機配位子(G)
組成物は、有機配位子(G)をさらに含むことができ、半導体粒子(A)は、有機配位子(G)が配位した状態で組成物中に存在していてもよい。有機配位子(G)は、例えば、半導体粒子(A)に対する配位能を示す極性基を有する有機化合物である。有機配位子(G)は、例えば半導体粒子(A)の表面に配位することができる。組成物は、1種又は2種以上の有機配位子(G)を含むことができる。
【0026】
組成物において有機配位子(G)は、その少なくとも一部の分子が半導体粒子(A)に配位していることが好ましく、そのすべて又はほぼすべての分子が半導体粒子(A)に配位していてもよい。すなわち、組成物は、半導体粒子(A)に配位している有機配位子(G)を含むことが好ましいが、半導体粒子(A)に配位している有機配位子(G)とともに、半導体粒子(A)に配位していない有機配位子(G)を含んでいてもよい。
【0027】
半導体粒子(A)に配位している有機配位子(G)を含むことは、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から有利となり得る。有機配位子(G)は、例えば半導体粒子(A)の表面に配位することができる。
【0028】
有機配位子(G)の極性基は、例えば、チオール基(-SH)、カルボキシ基(-COOH)及びアミノ基(-NH)からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましい。該群より選択される極性基は、半導体粒子(A)への配位性を高めるうえで有利となり得る。高い配位性は、組成物における半導体粒子(A)の安定性及び分散性向上、並びに、発光強度向上等に寄与し得る。中でも、極性基は、チオール基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることがより好ましい。有機配位子(G)は、1個又は2個以上の極性基を有し得る。
【0029】
有機配位子(G)は、例えば、下記式(x):
-R (x)
で表される有機化合物であることができる。式中、Xは上記の極性基であり、Rはヘテロ原子(N、O、S、ハロゲン原子等)を含んでいてもよい1価の炭化水素基である。該炭化水素基は、炭素-炭素二重結合等の不飽和結合を1個又は2個以上有していてもよい。該炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有していてもよい。該炭化水素基の炭素数は、例えば1以上40以下であり、1以上30以下であってもよい。該炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-等で置換されていてもよい。
【0030】
基Rは、極性基を含んでいてもよい。該極性基の具体例については極性基Xに係る上記記述が引用される。
【0031】
極性基Xとしてカルボキシ基を有する有機配位子の具体例として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸のほか、飽和又は不飽和脂肪酸を挙げることができる。飽和又は不飽和脂肪酸の具体例は、ブチル酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の飽和脂肪酸;ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、イコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸等の一価不飽和脂肪酸;リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ステアドリン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、ドコサジエン酸、アドレン酸(ドコサテトラエン酸)等の多価不飽和脂肪酸を含む。
【0032】
極性基Xとしてチオール基又はアミノ基を有する有機配位子の具体例は、上で例示した極性基Xとしてカルボキシ基を有する有機配位子のカルボキシ基がチオール基又はアミノ基に置き換わった有機配位子を含む。
【0033】
上記のほか、上記式(x)で表される有機配位子としては、化合物(G-1)及び化合物(G-2)が挙げられる。
【0034】
〔化合物(G-1)〕
化合物(G-1)は、第1官能基及び第2官能基を有する化合物である。第1官能基はカルボキシ基(-COOH)であり、第2官能基はカルボキシ基又はチオール基(-SH)である。化合物(G-1)は、カルボキシ基及び/又はチオール基を有しているため、半導体粒子(A)に配位する配位子となり得る。組成物は、化合物(G-1)を1種のみ含んでいてもよいし2種以上含んでいてもよい。
【0035】
化合物(G-1)の一例は、下記式(G-1a)で表される化合物である。化合物(G-1)は、式(G-1a)で表される化合物の酸無水物であってもよい。
【0036】
【化1】

[式中、Rは、2価の炭化水素基を表す。複数のRが存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。上記炭化水素基は1以上の置換基を有していてもよい。置換基が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよく、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。上記炭化水素基に含まれる-CH-は-O-、-S-、-SO-、-CO-及び-NH-の少なくとも1つに置き換わっていてもよい。
pは、1~10の整数を表す。]
【0037】
で表される2価の炭化水素基としては、例えば、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。
【0038】
鎖状炭化水素基としては、例えば、直鎖状又は分岐状のアルカンジイル基が挙げられ、その炭素数は通常1~50であり、好ましくは1~20、より好ましくは1~10である。脂環式炭化水素基としては、例えば、単環式又多環式のシクロアルカンジイル基が挙げられ、その炭素数は通常3~50であり、好ましくは3~20、より好ましくは3~10である。芳香族炭化水素基としては、例えば、単環式又多環式のアレーンジイル基が挙げられ、その炭素数は通常6~20である。
【0039】
上記炭化水素基が有していてもよい置換基としては、例えば、炭素数1~50のアルキル基、炭素数3~50のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。上記炭化水素基が有していてもよい置換基は、好ましくは、カルボキシ基、アミノ基又はハロゲン原子である。
【0040】
上記炭化水素基に含まれる-CH-が-O-、-CO-及び-NH-の少なくとも1つに置き換わる場合、-CH-が置き換わるのは、好ましくは-CO-及び-NH-の少なくとも1つであり、より好ましくは-NH-である。pは、好ましくは1又は2である。
【0041】
式(G-1a)で表される化合物としては、例えば、下記式(1-1)~(1-9)で表される化合物が挙げられる。
【0042】
【化2】
【0043】
式(G-1a)で表される化合物の具体例を化学名で示せば、例えば、メルカプト酢酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトブタン酸、4-メルカプトブタン酸、メルカプトコハク酸、メルカプトステアリン酸、メルカプトオクタン酸、4-メルカプト安息香酸、2,3,5,6-テトラフルオロ-4-メルカプト安息香酸、L-システイン、N-アセチル-L-システイン、3-メルカプトプロピオン酸3-メトキシブチル、3-メルカプト-2-メチルプロピオン酸等が挙げられる。中でも3-メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸が好ましい。
【0044】
化合物(G-1)の他の一例は、多価カルボン酸化合物であり、好ましくは上記式(G-1a)で表される化合物において、式(G-1a)中の-SHがカルボキシ基(-COOH)に置き換わった化合物(G-1b)が挙げられる。
【0045】
化合物(G-1b)としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、オクタフルオロアジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、ドデカフルオロスベリン酸、3-エチル-3-メチルグルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、trans-3-ヘキセン二酸、セバシン酸、ヘキサデカフルオロセバシン酸、アセチレンジカルボン酸、trans-アコニット酸、1,3-アダマンタンジカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン-1,4-ジカルボン酸、cis-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、1,1-シクロプロパンジカルボン酸、1,1-シクロブタンジカルボン酸、cis-又はtrans-1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、cis-又はtrans-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,1-シクロペンタン二酢酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、デカヒドロ-1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ノルボルナンジカルボン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、フタル酸、3-フルオロフタル酸、イソフタル酸、テトラフルオロイソフタル酸、テレフタル酸、テトラフルオロテレフタル酸、2,5-ジメチルテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,1’-フェロセンジカルボン酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、ベンゾフェノン-2,4’-ジカルボン酸一水和物、ベンゾフェノン-4,4’-ジカルボン酸、2,3-ピラジンジカルボン酸、2,3-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸、3,4-ピリジンジカルボン酸、ピラゾール-3,5-ジカルボン酸一水和物、4,4’-スチルベンジカルボン酸、アントラキノン-2,3-ジカルボン酸、4-(カルボキシメチル)安息香酸、ケリドン酸一水和物、アゾベンゼン-4,4’-ジカルボン酸、アゾベンゼン-3,3’-ジカルボン酸、クロレンド酸、1H-イミダゾール-4,5-ジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,10-ビス(4-カルボキシフェノキシ)デカン、ジプロピルマロン酸、ジチオジグリコール酸、3,3’-ジチオジプロピオン酸、4,4’-ジチオジブタン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシジフェニルスルホン、エチレングリコール ビス(4-カルボキシフェニル)エーテル、3,4-エチレンジオキシチオフェン-2,5-ジカルボン酸、4,4’-イソプロピリデンジフェノキシ酢酸、1,3-アセトンジカルボン酸、メチレンジサリチル酸、5,5’-チオジサリチル酸、トリス(2-カルボキシエチル)イソシアヌレート、テトラフルオロコハク酸、α,α,α’,α’-テトラメチル-1,3-ベンゼンジプロピオン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸等。
【0046】
半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から、化合物(G-1)の分子量は、好ましくは3000以下、より好ましくは2500以下、さらに好ましくは2000以下、なおさらに好ましくは1000以下、特に好ましくは800以下、最も好ましくは500以下である。化合物(G-1)の分子量は、通常100以上である。
【0047】
上記分子量は、数平均分子量であってもよいし重量平均分子量であってもよい。この場合、数平均分子量及び重量平均分子量はそれぞれ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量である。
【0048】
組成物が化合物(G-1)を含む場合、組成物中の半導体粒子(A)に対する化合物(G-1)の含有量比は、質量比で、好ましくは0.001以上1以下、より好ましくは0.01以上0.5以下、さらに好ましくは0.02以上0.45以下である。該含有量比がこの範囲にあると、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から有利となり得る。
【0049】
組成物が化合物(G-1)及び後述する樹脂(D)を含む場合、組成物における化合物(G-1)の含有率は、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から、組成物の固形分の総量に対して、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以上10質量%以下、なおさらに好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以上8質量%以下である。
【0050】
組成物が化合物(G-1)を含み、後述する樹脂(D)を含まない場合、組成物における化合物(G-1)の含有率は、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から、組成物の固形分の総量に対して、好ましくは0.1質量%以上40質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上35質量%以下、さらに好ましくは0.2質量%以上30質量%以下、なおさらに好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、特に好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
【0051】
〔化合物(G-2)〕
化合物(G-2)は、化合物(G-1)とは異なる化合物であって、ポリアルキレングリコール構造を含み、かつ極性基を分子末端に有する化合物である。分子末端とは、化合物(G-2)中、最も長い炭素鎖(炭素鎖中の炭素原子は、酸素原子等の他の原子に置き換わっていてもよい。)の末端であることが好ましい。
組成物は、化合物(G-2)を1種のみ含んでいてもよいし2種以上含んでいてもよい。組成物は、化合物(G-1)又は化合物(G-2)を含んでいてもよいし、化合物(G-1)及び化合物(G-2)を含んでいてもよい。
なお、ポリアルキレングリコール構造を含み、上記第1官能基及び第2官能基を有する化合物は、化合物(G-1)に属するものとする。
【0052】
ポリアルキレングリコール構造とは、下記式:
【0053】
【化3】

で表される構造をいう(nは2以上の整数)。式中、Rはアルキレン基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基等が挙げられる。
【0054】
化合物(G-2)の具体例として、下記式(G-2a)で表されるポリアルキレングリコール系化合物を挙げることができる。
【0055】
【化4】
【0056】
式(G-2a)中、Xは極性基であり、Yは1価の基であり、Zは2価又は3価の基である。nは2以上の整数である。mは1又は2である。Rはアルキレン基である。
【0057】
極性基Xは、チオール基(-SH)、カルボキシ基(-COOH)及びアミノ基(-NH)からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましい。該群より選択される極性基は、半導体粒子(A)への配位性を高めるうえで有利となり得る。中でも、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から、極性基Xは、チオール基及びカルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることがより好ましい。
【0058】
基Yは1価の基である。基Yとしては特に制限されず、置換基(N、O、S、ハロゲン原子等)を有していてもよい1価の炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基に含まれる-CH-は、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-等で置換されていてもよい。上記炭化水素基の炭素数は、例えば1以上12以下である。該炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよい。
【0059】
基Yとしては、直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有する炭素数1以上12以下のアルキル基;直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有する炭素数1以上12以下のアルコキシ基等が挙げられる。該アルキル基及びアルコキシ基の炭素数は、好ましくは1以上8以下であり、より好ましくは1以上6以下であり、さらに好ましくは1以上4以下である。該アルキル基及びアルコキシ基に含まれる-CH-は、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-等で置換されていてもよい。中でも、基Yは、炭素数が1以上4以下である直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基であることが好ましく、炭素数が1以上4以下である直鎖状のアルコキシ基であることがより好ましい。
【0060】
基Yは、極性基を含んでいてもよい。該極性基としては、チオール基(-SH)、カルボキシ基(-COOH)及びアミノ基(-NH)からなる群より選択される少なくとも1種の基が挙げられる。ただし、上述のとおり、ポリアルキレングリコール構造を含み、上記第1官能基及び第2官能基を有する化合物は、化合物(G-1)に属するものとする。該極性基は、好ましくは基Yの末端に配置される。
【0061】
基Zは2価又は3価の基である。基Zとしては特に制限されず、ヘテロ原子(N、O、S、ハロゲン原子等)を含んでいてもよい2価又は3価の炭化水素基が挙げられる。該炭化水素基の炭素数は、例えば1以上24以下である。該炭化水素基は、不飽和結合を有していてもよい。
【0062】
2価の基である基Zとしては、直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有する炭素数1以上24以下のアルキレン基;直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有する炭素数1以上24以下のアルケニレン基等が挙げられる。該アルキル基及びアルケニレン基の炭素数は、好ましくは1以上12以下であり、より好ましくは1以上8以下であり、さらに好ましくは1以上4以下である。該アルキル基及びアルケニレン基に含まれる-CH-は、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-等で置換されていてもよい。3価の基である基Zの例としては、上記2価の基である基Zから水素原子を1つ取り除いた基を挙げることができる。
【0063】
基Zは、分岐構造を有していてもよい。分岐構造を有する基Zは、上記式(G-2a)に示されるポリアルキレングリコール構造を含む分岐鎖とは別の分岐鎖において、上記式(G-2a)に示されるポリアルキレングリコール構造とは別のポリアルキレングリコール構造を有していてもよい。
【0064】
中でも、基Zは、炭素数が1以上6以下である直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1以上4以下である直鎖状のアルキレン基であることがより好ましい。
【0065】
はアルキレン基であり、炭素数が1以上6以下である直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基であることが好ましく、炭素数が1以上4以下である直鎖状のアルキレン基であることがより好ましい。
【0066】
式(G-2a)中のnは2以上の整数であり、好ましくは2以上540以下であり、より好ましくは2以上120以下であり、さらに好ましくは2以上60以下である。
【0067】
化合物(G-2)の分子量は、例えば150以上10000以下程度であり得るが、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から、150以上5000以下であることが好ましく、150以上4000以下であることがより好ましい。該分子量は、数平均分子量であってもよいし重量平均分子量であってもよい。この場合、数平均分子量及び重量平均分子量はそれぞれ、GPCにより測定される標準ポリスチレン換算の数平均分子量及び重量平均分子量である。
【0068】
組成物が化合物(G-2)を含む場合、組成物中の半導体粒子(A)に対する化合物(G-2)の含有量比は、質量比で、好ましくは0.001以上2以下、より好ましくは0.01以上1.5以下、さらに好ましくは0.1以上1以下である。該含有量比がこの範囲にあると、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から有利となり得る。
【0069】
組成物が化合物(G-2)及び後述する樹脂(D)を含む場合、組成物における化合物(G-2)の含有率は、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から、組成物の固形分の総量に対して、好ましくは0.1質量%以上40質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上15質量%以下、なおさらに好ましくは2質量%以上12質量%以下である。
【0070】
組成物が化合物(G-2)を含み、後述する樹脂(D)を含まない場合、組成物における化合物(G-2)の含有率は、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から、組成物の固形分の総量に対して、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上30質量%以下、なおさらに好ましくは2質量%以上20質量%以下である。
【0071】
組成物が有機配位子(G)を含む場合、組成物中の半導体粒子(A)に対する有機配位子(G)の含有量の比は、質量比で、好ましくは0.001以上1以下、より好ましくは0.01以上0.8以下、さらに好ましくは0.02以上0.5以下である。該含有量比がこの範囲にあると、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から有利となり得る。ここでいう有機配位子(G)の含有量とは、組成物に含まれるすべての有機配位子の合計含有量である。
【0072】
組成物が有機配位子(G)及び後述する樹脂(D)を含む場合、組成物における有機配位子(G)の含有率は、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から、組成物の固形分の総量に対して、好ましくは0.1質量%以上40質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上15質量%以下、なおさらに好ましくは2質量%以上12質量%以下である。
【0073】
組成物が有機配位子(G)を含み、後述する樹脂(D)を含まない場合、組成物における有機配位子(G)の含有率は、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から、組成物の固形分の総量に対して、好ましくは0.1質量%以上50質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上30質量%以下、なおさらに好ましくは2質量%以上20質量%以下である。
【0074】
組成物が有機配位子(G)及び後述する樹脂(D)を含む場合、組成物における半導体粒子(A)及び有機配位子(G)の合計含有率は、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から、組成物の固形分の総量に対して、好ましくは10質量%以上75質量%以下、より好ましくは12質量%以上70質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上65質量%以下である。
【0075】
組成物が有機配位子(G)を含み、後述する樹脂(D)を含まない場合、組成物における半導体粒子(A)及び有機配位子(G)の合計含有率は、半導体粒子(A)の安定性及び分散性、並びに、発光強度を向上させる観点から、組成物の固形分の総量に対して、好ましくは10質量%以上95質量%以下、より好ましくは15質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上80質量%以下である。
【0076】
[3]発光性有機化合物(B)
組成物は、半導体粒子(A)とともに発光性有機化合物(B)を含む。これにより、発光強度を向上させることが可能となる。また、これにより、同じ発光強度を有する膜を得るにあたり、該膜の厚みを低減することが可能となる。
組成物に含まれる発光性有機化合物(B)としては、有機発光体として知られている化合物を用いることができる。有機発光体としては、有機蛍光体が挙げられる。有機蛍光体は、高分子化合物(ポリマー)であってもよいし、低分子化合物であってもよい。組成物は、1種又は2種以上の発光性有機化合物(B)を含むことができる。
【0077】
有機蛍光体である上記高分子化合物としては、例えば、特開2008-133346号公報、国際公開第2004/060970号、国際公開第2012/153083号及びケミカルレビュー(Chem. Rev.),第109巻,897-1091頁(2009年)等に記載されている高分子化合物(共役系高分子)が挙げられる。
【0078】
有機蛍光体である上記高分子化合物に含まれる構成単位としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、フルオレンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、アントラセンジイル基及びピレンジイル基等のアリーレン基;芳香族アミンから2個の水素原子を取り除いてなる基等の芳香族アミン残基;並びに、カルバゾールジイル基、フェノキサジンジイル基及びフェノチアジンジイル基等の2価の複素環基が挙げられ、これらの基は、置換基(該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基及びアリール基等が挙げられる。)を有していてもよい。すなわち、有機蛍光体である上記高分子化合物は、置換基を有していてもよいアリーレン基、置換基を有していてもよい芳香族アミン残基及び置換基を有していてもよい2価の複素環基のうちの少なくとも1種を含む高分子化合物であることが好ましく、置換基を有していてもよいアリーレン基と、置換基を有していてもよい芳香族アミン残基及び置換基を有していてもよい2価の複素環基のうちの少なくとも1種とを含む高分子化合物であることがより好ましい。
【0079】
有機蛍光体である上記高分子化合物がアリーレン基を含む場合、該高分子化合物中に含まれるアリーレン基の合計の含有量は、有機蛍光体としての機能が奏される範囲であればよい。有機蛍光体である上記高分子化合物がアリーレン基を含む場合、該高分子化合物中に含まれるアリーレン基の合計の含有量は、該高分子化合物に含まれる構成単位の合計の含有量に対して、例えば、1モル%以上100モル%以下であり、好ましくは50モル%以上99モル%以下、より好ましくは70モル%以上98モル%以下、さらに好ましくは90モル%以上97モル%以下である。
【0080】
有機蛍光体である上記高分子化合物が芳香族アミン残基及び/又は2価の複素環基を含む場合、有機蛍光体である上記高分子化合物中に含まれる芳香族アミン残基及び/又は2価の複素環基の合計の含有量は、有機蛍光体としての機能が奏される範囲であればよい。有機蛍光体である上記高分子化合物が芳香族アミン残基及び/又は2価の複素環基を含む場合、該高分子化合物中に含まれる芳香族アミン残基及び/又は2価の複素環基の合計の含有量は、該高分子化合物に含まれる構成単位の合計の含有量に対して、例えば、1モル%以上100モル%以下であり、好ましくは1モル%以上50モル%以下、より好ましくは2モル%以上30モル%以下、さらに好ましくは3モル%以上10モル%以下である。
【0081】
有機蛍光体である上記高分子化合物において、アリーレン基としては、例えば、下記に示す構成単位M1、構成単位M2、構成単位M3、構成単位M5及び構成単位M7が挙げられる。また、有機蛍光体である上記高分子化合物において、芳香族アミン残基としては、例えば、構成単位M6が挙げられる。また、有機蛍光体である上記高分子化合物において、2価の複素環基としては、例えば、構成単位M4が挙げられる。
【0082】
有機蛍光体である上記高分子化合物として、具体的には、以下の高分子化合物(共役系高分子)が挙げられる。
構成単位M1と構成単位M2と構成単位M3と構成単位M4とを含有する高分子化合物(構成単位の含有比率は、モル比で、例えばM1/M2/M3/M4=50/22.5/22.5/5)。
構成単位M1と構成単位M2と構成単位M4とを含有する高分子化合物(構成単位の含有比率は、モル比で、例えばM1/M2/M4=50/45/5)。
構成単位M3と構成単位M2と構成単位M4とを含有する高分子化合物(構成単位の含有比率は、モル比で、例えばM3/M2/M4=50/45/5)。
構成単位M1と構成単位M3と構成単位M5と構成単位M6とを含有する高分子化合物(構成単位の含有比率は、モル比で、例えばM1/M3/M5/M6=50/35/10/5)。
構成単位M1と構成単位M7と構成単位M3と構成単位M4とを含有する高分子化合物(構成単位の含有比率は、モル比で、例えばM1/M3/M5/M6=50/22.5/20.5/7)。
【0083】
【化5】

【化6】
【0084】
有機蛍光体である上記低分子化合物としては、例えば、それぞれ下記一般式で表される、[a]ビスピロメテン系化合物、[b]キサンテン系化合物、[c]テレフタル酸系化合物、[d]アリールインドール系化合物、[e]ケイ素架橋フルオレン系化合物、[f]ルブレン系化合物、[g]ペリレン系化合物、[h]オキサジアゾール系化合物又はチアジアゾール系化合物、[i]ベンゼンスルホン酸系化合物等が挙げられる。
【0085】
【化7】

【化8】

【化9】
【0086】
式[a]~[i]においてRは、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基を表す。式[c]においてXは、例えばハロゲン原子、アルコキシ基、シロキシ基又は1価の有機基を表す。式[d]においてXは、例えばSiを表す。式[h]においてXは、例えばO又はSを表す。
【0087】
発光性有機化合物(B)は、好ましくは、エネルギー移動型の発光性有機化合物である。すなわち、発光性有機化合物(B)は、好ましくは、吸光により獲得したエネルギーの少なくとも一部を、組成物又は膜中に存在する近傍の半導体粒子(A)に移動できる性質を有する。発光性有機化合物(B)は、より好ましくは、上記性質を有し、かつ、自らは発光しないか、又はほとんど発光しない。
【0088】
半導体粒子(A)とともに発光性有機化合物(B)を含む組成物によれば、該組成物又はそれから形成される膜に対して紫外光又は可視光(例えば青色光)等の励起光を照射したとき、発光性有機化合物(B)は、半導体粒子(A)だけでは吸収しきれない励起光を吸収することができる。これにより、励起光の利用効率を高めることができる。また、組成物又は膜から出射する励起光の漏れを抑制し得る。なおかつ、吸光により発光性有機化合物(B)が獲得したエネルギーの少なくとも一部が半導体粒子(A)に移動することにより、半導体粒子(A)による発光が増強され、組成物又は膜からの総発光量が増加するため、組成物又は膜の発光強度が向上する。この際、エネルギー移動が効率的に起こり、発光性有機化合物(B)が自らは発光しないか、又はほとんど発光しない場合には、半導体粒子(A)が示すシャープな発光スペクトル幅(半値全幅)を確保することができる。
【0089】
励起光の吸収効率を高める観点から、発光性有機化合物(B)は、その吸光スペクトルにおいて、好ましくは、極大波長が350nm以上550nm以下である吸光ピークを有し、より好ましくは、極大波長が360nm以上520nm以下である吸光ピークを有する。また、励起光の吸収効率を高める観点から、発光性有機化合物(B)は、400nm以上500nm以下の波長域に吸収を有する。発光性有機化合物(B)の吸光スペクトルは、後述の実施例の欄に記載の測定方法に従って測定することができる。
【0090】
1つの実施形態において、組成物は発光性有機化合物(B)として発光性有機化合物(B-1)を含み、該発光性有機化合物(B-1)は、その発光スペクトルにおいて、好ましくは極大波長が450nm以上550nm以下、より好ましくは450nm以上520nm以下、さらに好ましくは450nm以上500nm以下である発光ピークを有する。発光性有機化合物(B)の発光スペクトルは、後述の実施例の欄に記載の測定方法に従って測定することができる。
【0091】
1つの実施形態において、上記エネルギー移動の効率を高め、発光強度を向上させる観点から、組成物は、下記の半導体粒子(A-1)と発光性有機化合物(B-1)とを含む。
半導体粒子(A-1):吸光スペクトルにおいて、好ましくは、極大波長が450nm以上550nm以下である吸光ピークを有し、より好ましくは、極大波長が450nm以上550nm以下である吸光ピークを有し、かつ、500nm以下の波長域に吸収を有する。また、好ましくは、吸光スペクトルにおいて、極大波長が460nm以上530nm以下である吸光ピークを有する。
発光性有機化合物(B-1):発光スペクトルにおいて、好ましくは極大波長が450nm以上550nm以下、より好ましくは450nm以上520nm以下、さらに好ましくは450nm以上500nm以下である発光ピークを有する。
上記エネルギー移動の効率を高め、発光強度を向上させる観点から、発光性有機化合物(B-1)が有する上記発光ピークの極大波長は、半導体粒子(A-1)が有する上記吸光ピークの極大波長よりも小さいことが好ましい。
【0092】
他の実施形態において、組成物は発光性有機化合物(B)として発光性有機化合物(B-2)を含み、該発光性有機化合物(B-2)は、その発光スペクトルにおいて、好ましくは極大波長が480nm以上580nm以下、より好ましくは480nm以上550nm以下、さらに好ましくは480nm以上530nm以下である発光ピークを有する。
【0093】
他の実施形態において、上記エネルギー移動の効率を高め、発光強度を向上させる観点から、組成物は、下記の半導体粒子(A-2)と発光性有機化合物(B-2)とを含む。
半導体粒子(A-2):吸光スペクトルにおいて、好ましくは、極大波長が550nm以上650nm以下である吸光ピークを有し、より好ましくは、極大波長が550nm以上650nm以下である吸光ピークを有し、かつ、600nm以下の波長域に吸収を有する。また、好ましくは、吸光スペクトルにおいて、極大波長が560nm以上630nm以下である吸光ピークを有する。
発光性有機化合物(B-2):発光スペクトルにおいて、好ましくは極大波長が480nm以上580nm以下、より好ましくは480nm以上550nm以下、さらに好ましくは480nm以上530nm以下である発光ピークを有する。
上記エネルギー移動の効率を高め、発光強度を向上させる観点から、発光性有機化合物(B-2)が有する上記発光ピークの極大波長は、半導体粒子(A-2)が有する上記吸光ピークの極大波長よりも小さいことが好ましい。
【0094】
組成物が後述する樹脂(D)を含む場合、組成物における発光性有機化合物(B)の含有率は、組成物の固形分の総量に対して、例えば0.001質量%以上1質量%以下であり、発光強度を向上させる観点から、好ましくは0.0015質量%以上0.5質量%以下であり、より好ましくは0.002質量%以上0.4質量%以下であり、さらに好ましくは0.002質量%以上0.3質量%以下である。
組成物が後述する樹脂(D)を含まない場合、組成物における発光性有機化合物(B)の含有率は、組成物の固形分の総量に対して、例えば5質量%以上70質量%以下であり、好ましくは10質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上50質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以上45質量%以下であり、なおさらに好ましくは25質量%以上40質量%以下である。
【0095】
組成物が後述する樹脂(D)を含む場合、組成物における発光性有機化合物(B)の含有量は、半導体粒子(A)100質量部に対して、例えば0.001質量部以上1質量部以下であり、発光強度を向上させる観点から、好ましくは0.002質量部以上0.8質量部以下、より好ましくは0.003質量部以上0.5質量部以下、さらに好ましくは0.005質量部以上0.4質量部以下である。組成物が後述する樹脂(D)を含む場合、組成物中の発光性有機化合物(B)の含有量は、半導体粒子(A)及び有機配位子(G)との合計100質量部に対して、例えば0.001質量部以上1質量部以下であり、発光強度を向上させる観点から、好ましくは0.002質量部以上0.8質量部以下、より好ましくは0.003質量部以上0.5質量部以下、さらに好ましくは0.005質量部以上0.3質量部以下である。
【0096】
組成物が後述する樹脂(D)を含まない場合、組成物における発光性有機化合物(B)の含有量は、半導体粒子(A)100質量部に対して、例えば12質量部以上150質量部以下であり、発光強度を向上させる観点から、好ましくは20質量部以上100質量部以下、より好ましくは25質量部以上90質量部以下、さらに好ましくは30質量部以上80質量部以下である。組成物が後述する樹脂(D)を含まない場合、組成物中の発光性有機化合物(B)の含有量は、半導体粒子(A)及び有機配位子(G)との合計100質量部に対して、例えば10質量部以上100質量部以下であり、発光強度を向上させる観点から、好ましくは15質量部以上90質量部以下、より好ましくは20質量部以上80質量部以下、さらに好ましくは30質量部以上75質量部以下である。
【0097】
樹脂(D)を含む組成物において発光性有機化合物(B)の含有量が過度に大きい場合には、発光性有機化合物(B)の全量が組成物中に溶解しないことがある。この場合、膜物性に悪影響を与える可能性がある。この観点から、樹脂(D)を含む組成物における発光性有機化合物(B)の含有量は、半導体粒子(A)100質量部又は半導体粒子(A)及び有機配位子(G)との合計100質量部に対して、0.25質量部以下、さらには0.2質量部以下とすることが好ましいことがある。
【0098】
[4]光散乱剤(C)
組成物は、光散乱剤(C)をさらに含むことができる。該組成物から形成される樹脂膜は、光散乱性を示し得る。組成物は、光散乱剤(C)を2種以上含んでもよい。発光強度を向上させる観点から、組成物は、光散乱剤(C)をさらに含むことが好ましい。
【0099】
光散乱剤(C)としては、金属又は金属酸化物の粒子、ガラス粒子等の無機粒子が挙げられる。金属酸化物としては、TiO、SiO、BaTiO、ZnO等が挙げられ、効率的に光を散乱することから、好ましくはTiOの粒子である。光散乱剤(C)の粒子径は、例えば0.03μm以上20μm以下程度であり、好ましくは0.05μm以上1μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上0.5μm以下である。
【0100】
光散乱剤(C)としては、分散剤を用いて溶剤(J)の一部又は全部に予め光散乱剤を分散させたものを用いてもよい。分散剤としては市販品を用いることができる。市販品の例としては、
ビックケミー・ジャパン社製のDISPERBYK-101、102、103、106、107、108、109、110、111、116、118、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、192、2000、2001、2020、2025、2050、2070、2095、2150、2155;ANTI-TERRA-U、U100、203、204、250、;BYK-P104、P104S、P105、220S、6919;BYK-LPN6919、21116;LACTIMON、LACTIMON-WS;Bykumen等;
日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE-3000、9000、13000、13240、13650、13940、16000、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32550、33500、32600、34750、35100、36600、38500、41000、41090、53095、55000、76500等;
BASF社製のEFKA-46、47、48、452、4008、4009、4010、4015、4020、4047、4050、4055、4060、4080、4400、4401、4402、4403、4406、4408、4300、4310、4320、4330、4340、450、451、453、4540、4550、4560、4800、5010、5065、5066、5070、7500、7554、1101、120、150、1501、1502、1503等;
味の素ファインテクノ社製のアジスパーPA111、PB711、PB821、PB822、PB824等が挙げられる。
【0101】
組成物における光散乱剤(C)の含有率は、組成物の固形分の総量に対し、例えば0.001質量%以上50質量%以下であり、組成物又は膜の光散乱能及び発光強度を向上させる観点から、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは2質量%以上20質量%以下、さらに好ましくは2質量%以上15質量%以下、なおさらに好ましくは3質量%以上10質量%以下である。
【0102】
[5]樹脂(D)
組成物は、樹脂(D)をさらに含むことができる。組成物から膜を形成する観点からは、組成物は、樹脂(D)を含むことが好ましい。樹脂(D)は、1種又は2種以上の樹脂を含むことができる。樹脂(D)は非発光性であり、発光性有機化合物(B)とは区別される。樹脂(D)としては、以下の樹脂[K1]~[K4]等が挙げられる。
【0103】
樹脂[K1];不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種(a)(以下、「(a)」ともいう。)と、(a)と共重合可能な単量体(c)(ただし、(a)とは異なる。)(以下、「(c)」ともいう。)との共重合体;
樹脂[K2];(a)と(c)との共重合体に炭素数2~4の環状エーテル構造とエチレン性不飽和結合とを有する単量体(b)(以下、「(b)」ともいう。)を反応させた樹脂;
樹脂[K3];(b)と(c)との共重合体に(a)を反応させた樹脂;
樹脂[K4];(b)と(c)との共重合体に(a)を反応させ、さらにカルボン酸無水物を反応させた樹脂。
【0104】
(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o-、m-、p-ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸;
マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、3-ビニルフタル酸、4-ビニルフタル酸、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、ジメチルテトラヒドロフタル酸、1,4-シクロヘキセンジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸;
メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、5-カルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-カルボキシ-5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-カルボキシ-5-エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-カルボキシ-6-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-カルボキシ-6-エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン等のカルボキシ基を含有するビシクロ不飽和化合物;
無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、3-ビニルフタル酸無水物、4-ビニルフタル酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、ジメチルテトラヒドロフタル酸無水物、5,6-ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン無水物等の不飽和ジカルボン酸無水物;
こはく酸モノ〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2-(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等の2価以上の多価カルボン酸の不飽和モノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステル;
α-(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリル酸のような、同一分子中にヒドロキシ基及びカルボキシ基を含有する不飽和(メタ)アクリレート
等が挙げられる。
これらのうち、共重合反応性等の観点から、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸等が好ましい。
本明細書において(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリレート」等においても同様である。
【0105】
(b)は、例えば、炭素数2~4の環状エーテル構造(例えば、オキシラン環、オキセタン環及びテトラヒドロフラン環からなる群より選ばれる少なくとも1種)とエチレン性不飽和結合とを有する単量体である。(b)は、炭素数2~4の環状エーテル構造と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する単量体であることが好ましい。
【0106】
(b)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、β-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、β-エチルグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル-o-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル-m-ビニルベンジルグリシジルエーテル、α-メチル-p-ビニルベンジルグリシジルエーテル、2,3-ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,4-ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,5-ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,6-ビス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,3,4-トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,3,5-トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,3,6-トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、3,4,5-トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン、2,4,6-トリス(グリシジルオキシメチル)スチレン等のオキシラン環とエチレン性不飽和結合とを有する単量体;
3-メチル-3-メタクリルロイルオキシメチルオキセタン、3-メチル-3-アクリロイルオキシメチルオキセタン、3-エチル-3-メタクリロイルオキシメチルオキセタン、3-エチル-3-アクリロイルオキシメチルオキセタン、3-メチル-3-メタクリロイルオキシエチルオキセタン、3-メチル-3-アクリロイルオキシエチルオキセタン、3-エチル-3-メタクリロイルオキシエチルオキセタン、3-エチル-3-アクリロイルオキシエチルオキセタン等のオキセタン環とエチレン性不飽和結合とを有する単量体;
テトラヒドロフルフリルアクリレート(例えば、ビスコートV#150、大阪有機化学工業(株)製)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等のテトラヒドロフラン環とエチレン性不飽和結合とを有する単量体
等が挙げられる。
樹脂[K2]~[K4]の製造時の反応性が高く、未反応の(b)が残存しにくいことから、(b)としては、オキシラン環とエチレン性不飽和結合とを有する単量体が好ましい。
【0107】
(c)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル(メタ)アクリレート(当該技術分野では、慣用名として「ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート」といわれている。また、「トリシクロデシル(メタ)アクリレート」という場合がある。)、トリシクロ[5.2.1.02,6]デセン-8-イル(メタ)アクリレート(当該技術分野では、慣用名として「ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート」といわれている。)、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、プロパルギル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;
マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等のジカルボン酸ジエステル;
ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2’-ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジ(ヒドロキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジ(2’-ヒドロキシエチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ジエトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシ-5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシ-5-エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ヒドロキシメチル-5-メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-tert-ブトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ビス(tert-ブトキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5,6-ビス(シクロヘキシルオキシカルボニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン等のビシクロ不飽和化合物;
N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-スクシンイミジル-3-マレイミドベンゾエート、N-スクシンイミジル-4-マレイミドブチレート、N-スクシンイミジル-6-マレイミドカプロエート、N-スクシンイミジル-3-マレイミドプロピオネート、N-(9-アクリジニル)マレイミド等のジカルボニルイミド誘導体;
スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-メトキシスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、1,3-ブタジエンイソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン
等が挙げられる。
これらのうち、共重合反応性及び樹脂(D)の耐熱性の点から、スチレン、ビニルトルエン、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン等が好ましい。
【0108】
樹脂[K1]において、それぞれに由来する構成単位の比率は、樹脂[K1]を構成する全構成単位中、
(a)に由来する構成単位;2モル%以上60モル%以下
(c)に由来する構成単位;40モル%以上98モル%以下
であることが好ましく、
(a)に由来する構成単位;10モル%以上50モル%以下
(c)に由来する構成単位;50モル%以上90モル%以下
であることがより好ましい。
樹脂[K1]の構成単位の比率が上記の範囲にあると、組成物の保存安定性及び膜の耐溶剤性に優れる傾向がある。
【0109】
樹脂[K1]は、例えば、文献「高分子合成の実験法」(大津隆行著 発行所(株)化学同人 第1版第1刷 1972年3月1日発行)に記載された方法及び当該文献に記載された引用文献を参考にして製造することができる。
【0110】
具体的には、(a)及び(c)の所定量、重合開始剤並びに溶剤等を反応容器中に入れて、例えば、窒素により酸素を置換することにより、脱酸素雰囲気にし、攪拌しながら、加熱及び保温する方法が挙げられる。
用いられる重合開始剤及び溶剤等は、特に限定されず、当該分野で通常使用されているものを使用することができる。例えば、重合開始剤としては、アゾ化合物(2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等)や有機過酸化物(ベンゾイルペルオキシド等)が挙げられ、溶剤としては、各モノマーを溶解するものであればよく、組成物に含まれていてもよい溶剤(J)として後述する溶剤等が挙げられる。
【0111】
得られた共重合体は、反応後の溶液をそのまま使用してもよいし、濃縮あるいは希釈した溶液を使用してもよいし、再沈殿等の方法で固体(粉体)として取り出したものを使用してもよい。重合の際の溶剤として後述の溶剤(J)を使用すれば、反応後の溶液をそのまま組成物の調製に使用することができるため、組成物の製造工程を簡略化することができる。
【0112】
樹脂[K2]は、(a)と(c)との共重合体に、(b)が有する炭素数2~4の環状エーテルを(a)が有するカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物に付加させることにより製造することができる。
まず(a)と(c)との共重合体を、樹脂[K1]の製造方法として記載した方法と同様にして製造する。この場合、それぞれに由来する構成単位の比率は、樹脂[K1]について述べた比率と同じであることが好ましい。
【0113】
次に、上記共重合体中の(a)に由来するカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物の一部に、(b)が有する炭素数2~4の環状エーテルを反応させる。
(a)と(c)との共重合体の製造に引き続き、フラスコ内雰囲気を窒素から空気に置換し、(b)、カルボン酸又はカルボン酸無水物と環状エーテルとの反応触媒(例えば有機リン化合物、金属錯体、アミン化合物等)及び重合禁止剤(例えばハイドロキノン等)等の存在下、例えば60℃以上130℃以下で、1時間以上10時間以下反応することにより、樹脂[K2]を製造することができる。
【0114】
(b)の使用量は、(a)100モルに対して、好ましくは5モル以上80モル以下、より好ましくは10モル以上75モル以下である。この範囲にすることにより、組成物の保存安定性、並びに、膜の耐溶剤性、耐熱性及び機械強度のバランスが良好になる傾向がある。
【0115】
反応触媒としての有機リン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン等が挙げられる。反応触媒としてのアミン化合物としては、例えば脂肪族第三級アミン化合物又は脂肪族第四級アンモニウム塩化合物等が使用可能であり、その具体例としては、例えばトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチルアミン、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド等が挙げられる。反応触媒は、好ましくは有機リン化合物である。
【0116】
反応触媒の使用量は、(a)、(b)及び(c)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上5質量部以下である。
重合禁止剤の使用量は、(a)、(b)及び(c)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上5質量部以下である。
【0117】
仕込方法、反応温度及び時間等の反応条件は、製造設備や重合による発熱量等を考慮して適宜調整することができる。なお、重合条件と同様に、製造設備や重合による発熱量等を考慮し、仕込方法や反応温度を適宜調整することができる。
【0118】
樹脂[K3]は、第一段階として、上述した樹脂[K1]の製造方法と同様にして、(b)と(c)との共重合体を得る。上記と同様に、得られた共重合体は、反応後の溶液をそのまま使用してもよいし、濃縮あるいは希釈した溶液を使用してもよいし、再沈殿等の方法で固体(粉体)として取り出したものを使用してもよい。
【0119】
(b)及び(c)に由来する構成単位の比率は、上記共重合体を構成する全構成単位の合計モル数に対して、それぞれ、
(b)に由来する構成単位;5モル%以上95モル%以下
(c)に由来する構成単位;5モル%以上95モル%以下
であることが好ましく、
(b)に由来する構成単位;10モル%以上90モル%以下
(c)に由来する構成単位;10モル%以上90モル%以下
であることがより好ましい。
【0120】
樹脂[K3]は、樹脂[K2]の製造方法と同様の条件で(b)と(c)との共重合体が有する(b)に由来する環状エーテルに、(a)が有するカルボン酸又はカルボン酸無水物を反応させることにより得ることができる。
上記共重合体に反応させる(a)の使用量は、(b)100モルに対して、5モル以上80モル以下が好ましい。
【0121】
樹脂[K4]は、樹脂[K3]に、さらにカルボン酸無水物を反応させた樹脂である。環状エーテルとカルボン酸又はカルボン酸無水物との反応により発生するヒドロキシ基に、カルボン酸無水物を反応させる。
カルボン酸無水物としては、例えば、無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、3-ビニルフタル酸無水物、4-ビニルフタル酸無水物、3,4,5,6-テトラヒドロフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、ジメチルテトラヒドロフタル酸無水物、5,6-ジカルボキシビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン無水物等が挙げられる。
カルボン酸無水物の使用量は、(a)の使用量1モルに対して、0.5~1モルが好ましい。
【0122】
樹脂[K1]、樹脂[K2]、樹脂[K3]及び樹脂[K4]としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体等の樹脂[K1];
ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させた樹脂、トリシクロデシル(メタ)アクリレート/スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させた樹脂、トリシクロデシル(メタ)アクリレート/ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸共重合体にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させた樹脂等の樹脂[K2];
トリシクロデシル(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレートの共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させた樹脂、トリシクロデシル(メタ)アクリレート/スチレン/グリシジル(メタ)アクリレートの共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させた樹脂等の樹脂[K3];
トリシクロデシル(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレートの共重合体に(メタ)アクリル酸を反応させた樹脂にさらにテトラヒドロフタル酸無水物を反応させた樹脂等の樹脂[K4]等が挙げられる。
樹脂(D)は、樹脂[K2]、樹脂[K3]及び樹脂[K4]からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0123】
樹脂(D)のさらなる例として、特開2018-123274号公報に記載の樹脂が挙げられる。該樹脂としては、側鎖に二重結合を有するとともに、主鎖に、下記式(I)で表される構成単位(α)と、下記式(II)で表される構成単位(β)とを含み、さらに酸基を含む重合体(以下、「樹脂(Da)」ともいう。)が挙げられる。
酸基は、例えば樹脂(Da)が、酸基含有単量体(例えば(メタ)アクリル酸等)に由来する構成単位(γ)を含むことで、樹脂中に導入されたものであることができる。樹脂(Da)は、好ましくは、主鎖骨格に構成単位(α)、(β)及び(γ)を含む。
【0124】
【化10】

[式中、R及びRは、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~25の炭化水素基を表す。nは、式(I)で表される構成単位の平均繰り返し単位数を表し、1以上の数である。]
【0125】
【化11】

[式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。Rは、同一又は異なって、炭素数4~20の直鎖状又は分岐鎖状炭化水素基を表す。mは、式(II)で表される構成単位の平均繰り返し単位数を表し、1以上の数である。]
【0126】
樹脂(Da)において、構成単位(α)の含有割合は、樹脂(Da)の耐熱性や保存安定性の観点から、樹脂(Da)の主鎖骨格を与える全単量体単位の総量100質量%に対し、例えば0.5質量%以上50質量%以下であり、好ましくは1質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質量%以上30質量%以下である。式(I)中のnは、樹脂(Da)中の構成単位(α)の平均繰り返し単位数を表し、構成単位(α)の含有割合が上記範囲内になるようにnを設定することができる。
【0127】
構成単位(β)の含有割合は、膜の耐溶剤性の観点から、樹脂(Da)の主鎖骨格を与える全単量体単位の総量100質量%に対し、例えば10質量%以上90質量%以下であり、好ましくは20質量%以上80質量%以下、より好ましくは30質量%以上75質量%以下である。式(II)中のmは、樹脂(Da)中の構成単位(β)の平均繰り返し単位数を表し、構成単位(β)の含有割合が上述した範囲内になるようにmを設定することができる。
【0128】
構成単位(γ)の含有割合は、溶剤(J)に対する樹脂(Da)の溶解性等の観点から、樹脂(Da)の主鎖骨格を与える全単量体単位の総量100質量%に対し、例えば0.5質量%以上50質量%以下であり、好ましくは2質量%以上50質量%以下、より好ましくは5質量%以上45質量%以下である。
【0129】
樹脂(D)は、上述の樹脂[K1]、樹脂[K2]、樹脂[K3]、樹脂[K4]及び樹脂(Da)からなる群より選ばれる1種以上を含むことができる。
【0130】
樹脂(D)は、GPCによって測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが、例えば1000以上9000以下であり、組成物の現像性及び組成物又は膜の発光強度の観点から、好ましくは2000以上8500以下であり、より好ましくは3000以上8500以下である。樹脂(D)のMwは、用いる原料の選択、仕込方法、反応温度及び時間等の反応条件を適宜組み合わせて調整することができる。樹脂(D)のMwは、後述の実施例の欄に記載の測定方法に従って測定することができる。あるいは、組成物に含まれる樹脂(D)について、GPCを用いてMwを測定してもよい。
【0131】
GPCによって測定される樹脂(D)の分子量分布[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]は、例えば1.0以上6.0以下であり、発光強度を向上させる観点から、好ましくは1.2以上4.0以下である。
【0132】
樹脂(D)の酸価は、組成物の現像性及び膜の耐溶剤性の観点から、好ましくは90mgKOH/g以上150mgKOH/g以下、より好ましくは95mgKOH/g以上140mgKOH/g以下、さらに好ましくは100mgKOH/g以上130mgKOH/g以下である。樹脂(D)の酸価は、酸基を有するモノマー成分(例えば上記(a))の含有率によって調整することができる。
【0133】
樹脂(D)の酸価は、樹脂(D)1gを中和するに必要な水酸化カリウムの量(mg)として測定される値であり、例えば水酸化カリウム水溶液を用いて滴定することにより求めることができる。具体的には、後述の実施例の欄に記載の測定方法に従って測定することができる。あるいは、組成物に含まれる樹脂(D)について、例えばその構造解析を行うことにより、酸価を求めてもよい。
【0134】
樹脂(D)は、発光強度を向上させる観点から、二重結合当量が、300g/eq以上2000g/eq以下の樹脂を含むことが好ましく、500g/eq以上1500g/eq以下である樹脂を含むことがより好ましい。300g/eq以上2000g/eq以下の二重結合当量を有する樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。樹脂(D)は、好ましくは(メタ)アクリル系樹脂からなる。
【0135】
組成物における樹脂(D)の含有率は、組成物の固形分の総量に対して、例えば5質量%以上80質量%以下であり、好ましくは10質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは13質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは17質量%以上55質量%以下である。樹脂(D)の含有率が上記範囲であると、半導体粒子(A)が分散し易くなり、発光強度が高くなりやすい傾向にある。
【0136】
組成物において、後述する重合性化合物(E)に対する樹脂(D)の質量比(固形分比)は、例えば1以上であり、組成物の現像性及び組成物又は膜の発光強度の観点から、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上である。
【0137】
[6]重合性化合物(E)
組成物は、重合性化合物(E)をさらに含むことができる。重合性化合物(E)は、後述する重合開始剤(F)から発生した活性ラジカル、酸等によって重合し得る化合物である。重合性化合物(E)としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物等の光重合性化合物が挙げられ、例えば(メタ)アクリル酸エステル化合物である。重合性化合物(E)の他の例は、熱重合性化合物である。組成物は、重合性化合物(E)を2種以上含んでいてもよい。
【0138】
重合性化合物(E)は、好ましくは、分子内にエチレン性不飽和結合を3個以上有する光重合性化合物である。重合性化合物(E)の重量平均分子量は、好ましくは150以上、より好ましくは250以上であり、好ましくは2900以下、より好ましくは1500以下である。
【0139】
分子内にエチレン性不飽和結合を3個以上有する光重合性化合物としては、分子内にエチレン性不飽和結合を3個以上有し、かつ、酸性官能基を有する化合物(Ea)、分子内にエチレン性不飽和結合を3個以上有し、かつ、酸性官能基を有しない化合物(Eb)が挙げられる。重合性化合物(E)は、化合物(Ea)及び化合物(Eb)の少なくとも1種を含むことが好ましく、化合物(Ea)を2種以上、化合物(Eb)を2種以上、又は化合物(Ea)の少なくとも1種と化合物(Eb)の少なくとも1種とを含んでいてもよい。
上記酸性官能基としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。中でも、酸性官能基は、カルボキシ基であることが好ましい。
【0140】
重合性化合物(E)が化合物(Ea)を含むことにより、組成物における半導体粒子(A)の分散性を向上させることができ、発光特性を向上させ得る。また、重合性化合物(C)が化合物(Ea)を含むことにより、組成物の硬化性及び耐熱性を向上させ得る。
【0141】
化合物(Ea)が有するエチレン性不飽和結合は、好ましくは(メタ)アクリロイルオキシ基である。化合物(Ea)1分子が有するエチレン性不飽和結合の数は、好ましくは3以上5以下、より好ましくは3である。化合物(Ea)1分子が有する酸性官能基の数は、1以上である。2以上の酸性官能基を有する場合は、それぞれの酸性官能基は異なってもいてもよく同一であってもよいが、少なくとも1つのカルボキシ基を有することが好ましい。
【0142】
化合物(Ea)としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基及びヒドロキシ基を有する化合物を多塩基酸変性して得られた化合物が挙げられる。該化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートと二塩基酸(例えばコハク酸、マレイン酸)又はその酸無水物とをモノエステル化した化合物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートと二塩基酸(例えばコハク酸、マレイン酸)又はその酸無水物とをモノエステル化した化合物等が挙げられる。
【0143】
化合物(Eb)が有するエチレン性不飽和結合は、好ましくは(メタ)アクリロイルオキシ基である。化合物(Eb)1分子が有するエチレン性不飽和結合の数は、好ましくは3以上6以下である。
【0144】
化合物(Eb)としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコール変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコール変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。中でも、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0145】
組成物が重合性化合物(E)を含む場合、組成物における重合性化合物(E)の含有率は、組成物の固形分の総量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。重合性化合物(E)の含有率が上記範囲内にあると、組成物の現像性及び膜の耐溶剤性が向上する傾向にある。
【0146】
[7]重合開始剤(F)
組成物は、重合開始剤(F)をさらに含むことができる。重合開始剤(F)は、光や熱の作用により活性ラジカル、酸等を発生し、重合性化合物(E)の重合を開始し得る化合物である。組成物は、1種又は2種以上の重合開始剤(F)を含むことができる。
重合開始剤(F)としては、オキシム化合物、アルキルフェノン化合物、ビイミダゾール化合物、トリアジン化合物及びアシルホスフィン化合物等の光重合開始剤、アゾ系化合物や有機過酸化物等の熱重合開始剤が挙げられる。
【0147】
オキシム化合物の一例は、下記式(1)で表される第1分子構造を有するオキシム化合物である。以下、該オキシム化合物を「オキシム化合物(1)」ともいう。
【0148】
【化12】
【0149】
重合開始剤(F)としてオキシム化合物(1)を含むことは、発光強度を向上させる観点から有利となり得る。このような効果を奏することができる一因は、オキシム化合物(1)が有する特有の分子構造に起因して、オキシム化合物(1)が光重合を開始させる際に必要となるオキシム化合物(1)の開裂(分解)前後でのオキシム化合物(1)の吸収波長が大きく変化することから、オキシム化合物(1)は光ラジカル重合開始能力が高いことにあると推定される。
【0150】
式(1)中、Rは、R11、OR11、COR11、SR11、CONR1213又はCNを表す。
11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基又は炭素数2~20の複素環基を表す。
11、R12又はR13で表わされる基の水素原子は、OR21、COR21、SR21、NR22Ra23、CONR2223、-NR22-OR23、-N(COR22)-OCOR23、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換されていてもよい。
21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基又は炭素数2~20の複素環基を表す。
21、R22又はR23で表される基の水素原子は、CN、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はカルボキシ基で置換されていてもよい。
11、R12、R13、R21、R22又はR23で表される基がアルキレン部分を有する場合、該アルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR24-、-NR24CO-、-NR24COO-、-OCONR24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1~5回中断されていてもよい。
24は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基又は炭素数2~20の複素環基を表す。
11、R12、R13、R21、R22又はR23で表される基がアルキル部分を有する場合、該アルキル部分は、分枝鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、R12とR13及びR22とR23はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよい。
*は、オキシム化合物(1)が有する第1分子構造以外の他の分子構造である第2分子構造との結合手を表す。
【0151】
式(1)中のR11、R12、R13、R21、R22、R23及びR24で表される炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2-エチルヘキシル基、tert-オクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシルエチル基等が挙げられる。
【0152】
式(1)中のR11、R12、R13、R21、R22、R23及びR24で表される炭素数6~30のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、上記アルキル基で1つ以上置換されたフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基等が挙げられる。
【0153】
式(1)中のR11、R12、R13、R21、R22、R23及びR24で表される炭素数7~30のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α-メチルベンジル基、α、α-ジメチルベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
【0154】
式(1)中のR11、R12、R13、R21、R22、R23及びR24で表される炭素数2~20の複素環基としては、例えば、ピリジル基、ピリミジル基、フリル基、チエニル基、テトラヒドロフリル基、ジオキソラニル基、ベンゾオキサゾール-2-イル基、テトラヒドロピラニル基、ピロリジル基、イミダゾリジル基、ピラゾリジル基、チアゾリジル基、イソチアゾリジル基、オキサゾリジル基、イソオキサゾリジル基、ピペリジル基、ピペラジル基、モルホリニル基等が挙げられ、好ましくは5~7員複素環である。
【0155】
式(1)中のR12とR13及びR22とR23はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよいとは、R12とR13及びR22とR23はそれぞれ一緒になって接続する窒素原子、炭素原子又は酸素原子とともに環を形成していてもよいことを意味する。
式(1)中のRa12とRa13及びRa22とRa23が一緒になって形成し得る環としては、例えば、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、ピペリジン環、モルホリン環、ラクトン環、ラクタム環等が挙げられ、好ましくは5~7員環である。
【0156】
式(1)中のR11、R12、R13、R21、R22及びR23が置換基として有してもよいハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0157】
式(1)中のRは、好ましくはR11であり、より好ましくは炭素数1~20のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1~10のアルキル基であり、なおさらに好ましくは1~6のアルキル基である。
【0158】
式(1)で表される第1分子構造に連結される第2分子構造の一例は、下記式(2)で表される構造である。第2分子構造とは、オキシム化合物(1)が有する上記第1分子構造以外の他の分子構造部分を意味する。
式(2)において「*」で表される結合手は、式(1)において「*」で表される結合手と直接結合している。すなわち、第2分子構造が式(2)で表される構造である場合、式(2)中の「-*」を有するベンゼン環と式(1)中の「-*」を有するカルボニル基とは直接結合している。
【0159】
【化13】
【0160】
式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、R11、OR11、SR11、COR11、CONR1213、NR12COR11、OCOR11、COOR11、SCOR11、OCSR11、COSR11、CSOR11、CN又はハロゲン原子を表す。
が複数存在するとき、それらは同じであっても異なっていてもよい。
が複数存在するとき、それらは同じであっても異なっていてもよい。
11、R12及びR13は、上記と同じ意味を表す。
s及びtは、それぞれ独立に、0~4の整数を表す。
Lは、硫黄原子、CR3132、CO又はNR33を表す。
31、R32及びR33は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基又は炭素数7~30のアラルキル基を表す。
31、R32又はR33で表される基がアルキル部分を有する場合、該アルキル部分は、分枝鎖状であってもよく、環状であってもよく、R31、R32及びR33は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよい。
は、ヒドロキシ基、カルボキシ基又は下記式(2-1)
【0161】
【化14】

(式(2-1)中、Lは、-O-、-S-、-NR22-、-NR22CO-、-SO-、-CS-、-OCO-又は-COO-を表す。
22は、上記と同じ意味を表す。
は、炭素数1~20のアルキル基からv個の水素原子を除いた基、炭素数6~30のアリール基からv個の水素原子を除いた基、炭素数7~30のアラルキル基からv個の水素原子を除いた基又は炭素数2~20の複素環基からv個の水素原子を除いた基を表す。
で表される基がアルキレン部分を有する場合、該アルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR22-、-NR22COO-、-OCONR22-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1~5回中断されていてもよく、該アルキレン部分は分枝鎖状であってもよく、環状であってもよい。
4aは、OR41、SR41、CONR4243、NR42COR43、OCOR41、COOR41、SCOR41、OCSR41、COSR41、CSOR41、CN又はハロゲン原子を表す。
4aが複数存在するとき、それらは同じであっても異なっていてもよい。
41、R42及びR43は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基又は炭素数7~30のアラルキル基を表し、R41、R42及びR43で表される基がアルキル部分を有する場合、該アルキル部分は分枝鎖状であってもよく、環状であってもよく、R42とR43は、一緒になって環を形成していてもよい。
vは1~3の整数を表す。)
で表される基を表す。
*は、オキシム化合物(1)が有する第1分子構造との結合手を表す。
【0162】
式(2)中のR11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、R31、R32及びR33、並びに上記式(2-1)中のR22、R41、R42及びR43で表される炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基の例は、式(1)中のR11、R12、R13、R21、R22、R23及びR24についての例と同様である。
【0163】
式(2)中のR11、R12、R13、R21、R22、R23、R24、並びに上記式(2-1)中のR22で表される炭素数2~20の複素環基の例は、式(1)中のR11、R12、R13、R21、R22、R23及びR24についての例と同様である。
【0164】
式(2)中のR31、R32及びR33は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって環を形成していてもよいとは、R31、R32及びR33は、それぞれ独立に、隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって接続する窒素原子とともに環を形成していてもよいことを意味する。
式(2)中のR31、R32及びR33が隣接するどちらかのベンゼン環と一緒になって形成し得る環の例は、式(1)中のRa12とRa13及びRa22とRa23が一緒になって形成し得る環についての例と同様である。
【0165】
上記式(2-1)中のLは、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基又は炭素数2~20の複素環基からv個の水素原子を除いた基を表す。
【0166】
炭素数1~20のアルキル基からv個の水素原子を除いた基としては、例えば、vが1の場合、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、1,2-ジメチルプロピレン基、1,3-ジメチルプロピレン基、1-メチルブチレン基、2-メチルブチレン基、3-メチルブチレン基、4-メチルブチレン基、2,4-ジメチルブチレン基、1,3-ジメチルブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-2,2-ジイル基等のアルキレン基が挙げられる。
【0167】
炭素数6~30のアリール基からv個の水素原子を除いた基としては、例えば、vが1の場合、1,2-フェニレン基、1,3-フェニレン基、1,4-フェニレン基、2,6-ナフチレン基、1,4-ナフチレン基、2,5-ジメチル-1,4-フェニレン基、ジフェニルメタン-4,4’-ジイル基、2,2-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイル基、ジフェニルスルフィド-4,4’-ジイル基、ジフェニルスルホン-4,4’-ジイル基等のアリーレン基が挙げられる。
【0168】
炭素数7~30のアラルキル基からv個の水素原子を除いた基としては、例えば、vが1の場合、下記式(a)で表される基及び下記式(b)で表される基等が挙げられる。
【0169】
【化15】

[式(a)及び(b)中、L及びLは、炭素数1~10のアルキレン基を表し、L及びLは、単結合又は炭素数1~10のアルキレン基を表す。]
【0170】
炭素数1~10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、1-メチルプロピレン基、2-メチルプロピレン基、1,2-ジメチルプロピレン基、1,3-ジメチルプロピレン基、1-メチルブチレン基、2-メチルブチレン基、3-メチルブチレン基、4-メチルブチレン基、2,4-ジメチルブチレン基、1,3-ジメチルブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられる。
【0171】
炭素数2~20の複素環基からv個の水素原子を除いた基としては、例えば、vが1の場合、2,5-ピリジンジイル基、2,6-ピリジンジイル基、2,5-ピリミジンジイル基、2,5-チオフェンジイル基、3,4-テトラヒドロフランジイル基、2,5-テトラヒドロフランジイル基、2,5-フランジイル基、3,4-チアゾールジイル基、2,5-ベンゾフランジイル基、2,5-ベンゾチオフェンジイル基、N-メチルインドール-2,5-ジイル基、2,5-ベンゾチアゾールジイル基、2,5-ベンゾオキサゾールジイル基等の2価の複素環基が挙げられる。
【0172】
式(2)中のR及びR、並びに上記式(2-1)中のR4aで表されるハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0173】
溶剤(J)への溶解性、及び/又は、組成物の現像性の観点から、式(2)で表される構造の好ましい例は、下記式(2a)で表される構造である。
【0174】
【化16】

[式(2a)中、L’は、硫黄原子又はNR50を表し、R50は、直鎖状、分枝鎖状又は環状の炭素数1~20のアルキル基を表し、R、R、R、s及びtは、前記と同じ意味を表す。]
【0175】
上記と同様の観点から、式(2)で表される構造の他の好ましい例は、下記式(2b)で表される構造である。
【0176】
【化17】

[式(2b)中、R44は、ヒドロキシ基、カルボキシ基又は下記式(2-2)
【0177】
【化18】

(式(2-2)中、L11は、-O-又は*-OCO-を表し、*はL12との結合手を表し、L12は、炭素数1~20のアルキレン基を表し、該アルキレン基は、1~3個の-O-により中断されていてもよく、R44aは、OR55又はCOOR55を表し、R55は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。)
で表される基を表す。]
【0178】
44は、好ましくは、式(2-2)で表される基である。この場合、オキシム化合物(1)の溶剤(J)への溶解性及び組成物の現像性の点で有利となる。
【0179】
12で表されるアルキレン基の炭素数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~4である。
44aは、好ましくはヒドロキシ基又はカルボキシ基であり、より好ましくはヒドロキシ基である。
【0180】
式(2)で表される第2分子構造を有するオキシム化合物(1)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、特開2011-132215号公報に記載の方法で製造することができる。
【0181】
式(1)で表される第1分子構造に連結される第2分子構造の他の一例は、下記式(3)で表される構造である。
式(3)において「*」で表される結合手は、式(1)において「*」で表される結合手と直接結合している。すなわち、第2分子構造が式(3)で表される構造である場合、式(3)中の「-*」を有するベンゼン環と式(1)中の「-*」を有するカルボニル基とは直接結合している。
【0182】
【化19】
【0183】
式(3)中、Rは、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基又は炭素数2~20の複素環基を表す。
で表される基がアルキル部分を有する場合、該アルキル部分は、分枝鎖状であってもよく、環状であってもよい。
で表される基の水素原子は、R21、OR21、COR21、SR21、NR2223、CONR2223、-NR22-OR23、-N(COR22)-OCOR23、NR22COR21、OCOR21、COOR21、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、SCOR21、OCSR21、COSR21、CSOR21、水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換されていてもよい。
21、R22及びR23は、上記と同じ意味を表す。
21、R22又はR23で表される基の水素原子は、CN、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はカルボキシ基で置換されていてもよい。
21、R22及びR23で表される基がアルキレン部分を有する場合、該アルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR24-、-NR24CO-、-NR24COO-、-OCONR24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1~5回中断されていてもよい。
24は、上記と同じ意味を表す。
21、R22及びR23で表される基がアルキル部分を有する場合、該アルキル部分は、分枝鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、R22とR23は一緒になって環を形成していてもよい。
、R、R及びRは、それぞれ独立に、R61、OR61、SR61、COR62、CONR6364、NR65COR61、OCOR61、COOR62、SCOR61、OCSR61、COSR62、CSOR61、水酸基、ニトロ基、CN又はハロゲン原子を表す。
61、R62、R63、R64及びR65は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基又は炭素数2~20の複素環基を表す。
61、R62、R63、R64又はR65で表わされる基の水素原子は、OR21、COR21、SR21、NR22Ra23、CONR2223、-NR22-OR23、-N(COR22)-OCOR23、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換されていてもよい。
とR、RとR及びRとRはそれぞれ一緒になって環を形成していてもよい。
*は、オキシム化合物(1)が有する第1分子構造との結合手を表す。
【0184】
式(3)中のR、R21、R22、R23、R24、R61、R62、R63、R64及びR65で表される炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数2~20の複素環基の例は、式(1)中のR11、R12、R13、R21、R22、R23及びR24についての例と同様である。
【0185】
式(3)中のR22とR23は一緒になって環を形成していてもよいとは、R22とR23は一緒になって接続する窒素原子、炭素原子又は酸素原子とともに環を形成していてもよいことを意味する。
式(3)中のR22とR23が一緒になって形成し得る環の例は、式(1)中のRa12とRa13及びRa22とRa23が一緒になって形成し得る環についての例と同様である。
【0186】
式(3)中のR、R、R及びRで表されるハロゲン原子、R、R21、R22、R23、R61、R62、R63、R64及びR65の水素原子を置換してもよいハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0187】
溶剤(J)への溶解性、及び/又は、組成物の現像性の観点から、1つの好ましい形態において、Rは、下記式(3-1)で表される基である。
【0188】
【化20】

[式(3-1)中、Zは、炭素数1~20のアルキル基から1個の水素原子を除いた基、炭素数6~30のアリール基から1個の水素原子を除いた基、炭素数7~30のアラルキル基から1個の水素原子を除いた基又は炭素数2~20の複素環基から1個の水素原子を除いた基を表し、
Zで表される基がアルキレン部分を有する場合、該アルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR24-、-NR24COO-、-OCONR24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1~5回中断されていてもよく、該アルキレン部分は分枝鎖状であってもよく、環状であってもよく、
21、R22及びR24は、前記と同じ意味を表す。]
【0189】
式(3-1)中のZは、上記と同様の観点から、好ましくは、メチレン基、エチレン又はフェニレン基である。
式(3-1)中のR21及びR22は、上記と同様の観点から、好ましくは、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数6~30のアリール基であり、より好ましくは、メチル基、エチル基又はフェニル基である。
上記と同様の観点から、他の1つの好ましい形態において、Rは、ニトロ基である。
【0190】
式(3)で表される第2分子構造を有するオキシム化合物(1)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、特開2000-80068号公報及び特開2011-178776号公報に記載の方法で製造することができる。
【0191】
式(1)で表される第1分子構造に連結される第2分子構造のさらに他の一例は、下記式(4)で表される構造である。
式(4)において「*」で表される結合手は、式(1)において「*」で表される結合手と直接結合している。すなわち、第2分子構造が式(4)で表される構造である場合、式(4)中の「-*」を有するベンゼン環と式(1)中の「-*」を有するカルボニル基とは直接結合している。
【0192】
【化21】
【0193】
式(4)中、R71は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基又は炭素数2~20の複素環基を表す。
71で表される基がアルキル部分を有する場合、該アルキル部分は、分枝鎖状であってもよく、環状であってもよい。
71で表される基の水素原子は、R21、OR21、COR21、SR21、NR2223、CONR2223、-NR22-OR23、-N(COR22)-OCOR23、NR22COR21、OCOR21、COOR21、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、SCOR21、OCSR21、COSR21、CSOR21、水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換されていてもよい。
21、R22及びR23は、前記と同じ意味を表す。
21、R22又はR23で表される基の水素原子は、CN、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はカルボキシ基で置換されていてもよい。
21、R22及びR23で表される基がアルキレン部分を有する場合、該アルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR24-、-NR24CO-、-NR24COO-、-OCONR24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1~5回中断されていてもよい。
24は、上記と同じ意味を表す。
21、R22及びR23で表される基がアルキル部分を有する場合、該アルキル部分は、分枝鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、R22とR23は一緒になって環を形成していてもよい。
72、R73及び3個のR74は、それぞれ独立に、R61、OR61、SR61、COR62、CONR6364、NR65COR61、OCOR61、COOR62、SCOR61、OCSR61、COSR62、CSOR61、水酸基、ニトロ基、CN又はハロゲン原子を表す。
61、R62、R63、R64及びR65は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基又は炭素数2~20の複素環基を表す。
61、R62、R63、R64又はR65で表わされる基の水素原子は、OR21、COR21、SR21、NR22Ra23、CONR2223、-NR22-OR23、-N(COR22)-OCOR23、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換されていてもよい。
72とR73及び2個のR74はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよい。
*は、オキシム化合物(1)が有する第1分子構造との結合手を表す。
【0194】
式(4)中のR71、R21、R22、R23、R24、R61、R62、R63、R64及びR65で表される炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数2~20の複素環基の例は、式(1)中のR11、R12、R13、R21、R22、R23及びR24についての例と同様である。
【0195】
式(4)中のR22とR23は一緒になって環を形成していてもよいとは、R22とR23は一緒になって接続する窒素原子、炭素原子又は酸素原子とともに環を形成していてもよいことを意味する。
式(4)中のR22とR23が一緒になって形成し得る環の例は、式(1)中のRa12とRa13及びRa22とRa23が一緒になって形成し得る環についての例と同様である。
【0196】
式(4)中のR72、R73及びR74で表されるハロゲン原子、R71、R21、R22、R23、R61、R62、R63、R64及びR65の水素原子を置換してもよいハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0197】
式(4)で表される第2分子構造を有するオキシム化合物(1)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、国際公開第2017/051680号及び国際公開第2020/004601号に記載の方法で製造することができる。
【0198】
式(1)で表される第1分子構造に連結される第2分子構造のさらに他の一例は、下記式(5)で表される構造である。
式(5)において「*」で表される結合手は、式(1)において「*」で表される結合手と直接結合している。すなわち、第2分子構造が式(5)で表される構造である場合、式(5)中の「-*」を有するピロール環と式(1)中の「-*」を有するカルボニル基とは直接結合している。
【0199】
【化22】
【0200】
式(5)中、R81は、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基又は炭素数2~20の複素環基を表す。
81で表される基がアルキル部分を有する場合、該アルキル部分は、分枝鎖状であってもよく、環状であってもよい。
81で表される基の水素原子は、R21、OR21、COR21、SR21、NR2223、CONR2223、-NR22-OR23、-N(COR22)-OCOR23、NR22COR21、OCOR21、COOR21、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、SCOR21、OCSR21、COSR21、CSOR21、水酸基、ニトロ基、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換されていてもよい。
21、R22及びR23は、上記と同じ意味を表す。
21、R22又はR23で表される基の水素原子は、CN、ハロゲン原子、ヒドロキシ基又はカルボキシ基で置換されていてもよい。
21、R22及びR23で表される基がアルキレン部分を有する場合、該アルキレン部分は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-NR24-、-NR24CO-、-NR24COO-、-OCONR24-、-SCO-、-COS-、-OCS-又は-CSO-により1~5回中断されていてもよい。
24は、上記と同じ意味を表す。
21、R22及びR23で表される基がアルキル部分を有する場合、該アルキル部分は、分枝鎖状であってもよく、環状であってもよく、また、R22とR23は一緒になって環を形成していてもよい。
82、R83、R84、R85及びR86は、それぞれ独立に、R61、OR61、SR61、COR62、CONR6364、NR65COR61、OCOR61、COOR62、SCOR61、OCSR61、COSR62、CSOR61、水酸基、ニトロ基、CN又はハロゲン原子を表す。
61、R62、R63、R64及びR65は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基又は炭素数2~20の複素環基を表す。
61、R62、R63、R64又はR65で表わされる基の水素原子は、OR21、COR21、SR21、NR22Ra23、CONR2223、-NR22-OR23、-N(COR22)-OCOR23、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換されていてもよい。
83とR84、R84とR85及びR85とR86はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよい。
*は、オキシム化合物(1)が有する第1分子構造との結合手を表す。
【0201】
式(5)中のR81、R21、R22、R23、R24、R61、R62、R63、R64及びR65で表される炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数2~20の複素環基の例は、式(1)中のR11、R12、R13、R21、R22、R23及びR24についての例と同様である。
【0202】
式(5)中のR22とR23は一緒になって環を形成していてもよいとは、R22とR23は一緒になって接続する窒素原子、炭素原子又は酸素原子とともに環を形成していてもよいことを意味する。
式(5)中のR22とR23が一緒になって形成し得る環の例は、式(1)中のRa12とRa13及びRa22とRa23が一緒になって形成し得る環についての例と同様である。
【0203】
式(5)中のR82、R83、R84、R85及びR86で表されるハロゲン原子、R81、R21、R22、R23、R61、R62、R63、R64及びR65の水素原子を置換してもよいハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0204】
式(5)で表される第2分子構造を有するオキシム化合物(1)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、国際公開第2017/051680号及び国際公開第2020/004601号に記載の方法で製造することができる。
【0205】
式(1)で表される第1分子構造に連結される第2分子構造のさらに他の一例は、下記式(6)で表される構造である。
式(6)において「*」で表される結合手は、式(1)において「*」で表される結合手と直接結合している。すなわち、第2分子構造が式(6)で表される構造である場合、式(6)中の「-*」を有するベンゼン環と式(1)中の「-*」を有するカルボニル基とは直接結合している。
【0206】
【化23】
【0207】
式(6)中、4個のR91、R92、R93、R94、R95、R96及びR97は、それぞれ独立に、R61、OR61、SR61、COR62、CONR6364、NR65COR61、OCOR61、COOR62、SCOR61、OCSR61、COSR62、CSOR61、水酸基、ニトロ基、CN又はハロゲン原子を表す。
61、R62、R63、R64及びR65は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアリールアルキル基又は炭素数2~20の複素環基を表す。
61、R62、R63、R64又はR65で表わされる基の水素原子は、OR21、COR21、SR21、NR22Ra23、CONR2223、-NR22-OR23、-N(COR22)-OCOR23、-C(=N-OR21)-R22、-C(=N-OCOR21)-R22、CN、ハロゲン原子、又はCOOR21で置換されていてもよい。
21、R22及びR23は、上記と同じ意味を表す。
92とR93、R94とR95、R95とR96及びR96とR97はそれぞれ一緒になって環を形成していてもよい。
*は、オキシム化合物(1)が有する第1分子構造との結合手を表す。
【0208】
式(6)中のR21、R22、R23、R61、R62、R63、R64及びR65で表される炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~30のアリール基、炭素数7~30のアラルキル基、炭素数2~20の複素環基の例は、式(1)中のR11、R12、R13、R21、R22及びR23についての例と同様である。
【0209】
式(6)中のR22とR23は一緒になって環を形成していてもよいとは、R22とR23は一緒になって接続する窒素原子、炭素原子又は酸素原子とともに環を形成していてもよいことを意味する。
式(6)中のR22とR23が一緒になって形成し得る環の例は、式(1)中のRa12とRa13及びRa22とRa23が一緒になって形成し得る環についての例と同様である。
【0210】
式(6)中のR91、R92、R93、R94、R95、R96及びR97で表されるハロゲン原子、R21、R22、R23、R61、R62、R63、R64及びR65の水素原子を置換してもよいハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0211】
式(6)で表される第2分子構造を有するオキシム化合物(1)の製造方法は、特に限定されないが、例えば、国際公開第2017/051680号及び国際公開第2020/004601号に記載の方法で製造することができる。
【0212】
光重合開始剤の他の例は、オキシム化合物(1)以外の他の光重合開始剤である。他の光重合開始剤としては、オキシム化合物(1)以外のオキシム化合物、アルキルフェノン化合物、ビイミダゾール化合物、トリアジン化合物及びアシルホスフィン化合物が挙げられる。
【0213】
オキシム化合物(1)以外のオキシム化合物としては、下記式(d1)で表される部分構造を有するオキシム化合物が挙げられる。*は結合手を表す。
【0214】
【化24】
【0215】
式(d1)で表される部分構造を有するオキシム化合物としては、例えば、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-3-シクロペンチルプロパン-1-オン-2-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(3,3-ジメチル-2,4-ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチルプロパン-1-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチルプロパン-1-オン-2-イミン;特開2011-132215号公報、国際公開2008/78678号、国際公開2008/78686号、国際公開2012/132558号記載の化合物等が挙げられる。イルガキュア(登録商標)OXE01、同OXE02、同OXE03(以上、BASF社製)、N-1919、NCI-930、NCI-831(以上、ADEKA社製)等の市販品を用いてもよい。
【0216】
中でも、式(d1)で表される部分構造を有するオキシム化合物は、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミン及びN-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-3-シクロペンチルプロパン-1-オン-2-イミンからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミンがより好ましい。
【0217】
アルキルフェノン化合物は、下記式(d2)で表される部分構造又は下記式(d3)で表される部分構造を有する化合物である。これらの部分構造中、ベンゼン環は置換基を有していてもよい。
【0218】
【化25】
【0219】
式(d2)で表される構造を有する化合物としては、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]ブタン-1-オン等が挙げられる。OMNIRAD(登録商標)369、同907、同379(以上、IGM Resins社製)等の市販品を用いてもよい。
【0220】
式(d3)で表される構造を有する化合物としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロペニルフェニル)プロパン-1-オンのオリゴマー、α,α-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0221】
感度の点で、アルキルフェノン化合物としては、式(d2)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0222】
ビイミダゾール化合物としては、例えば、式(d5)で表される化合物が挙げられる。
【0223】
【化26】

[式(d5)中、R~Rは、置換基を有していてもよい炭素数6~10のアリール基を表す。]
【0224】
炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、エチルフェニル基及びナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~4のアルコキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは塩素原子である。炭素数1~4のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等挙げられ、好ましくはメトキシ基である。
【0225】
ビイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール(例えば、特開平06-75372号公報、特開平06-75373号公報等参照。)、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(アルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(ジアルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール(例えば、特公昭48-38403号公報、特開昭62-174204号公報等参照。)、4,4’5,5’-位のフェニル基がカルボアルコキシ基により置換されているイミダゾール化合物(例えば、特開平7-10913号公報等参照。)等が挙げられる。中でも、下記式で表される化合物又はこれらの混合物が好ましい。
【0226】
【化27】
【0227】
トリアジン化合物としては、例えば、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。中でも、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジンが好ましい。
【0228】
アシルホスフィン化合物としては、例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。OMNIRAD(登録商標)819(IGM Resins社製)等の市販品を用いてもよい。
【0229】
オキシム化合物(1)以外の他の光重合開始剤の別の例としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;9,10-フェナンスレンキノン、2-エチルアントラキノン、カンファーキノン等のキノン化合物;10-ブチル-2-クロロアクリドン、ベンジル、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物等が挙げられる。
【0230】
組成物が重合開始剤(F)を含む場合、組成物における重合開始剤(F)の含有量は、重合性化合物(E)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは300質量部以下、より好ましくは200質量部以下である。また、組成物における重合開始剤(F)の含有量は、樹脂(D)及び重合性化合物(E)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。重合開始剤(F)の含有量が上記範囲内にあると、組成物が高感度化して露光時間が短縮される傾向があるため、膜の生産性が向上する傾向にある。
【0231】
[8]重合開始助剤(F1)
組成物は、重合開始剤(F)とともに重合開始助剤(F1)をさらに含むことができる。重合開始助剤(F1)は、重合開始剤(F)によって開始された重合性化合物(E)の重合を促進するために用いられる化合物、もしくは増感剤である。重合開始助剤(F1)としては、アミン化合物、アルコキシアントラセン化合物、チオキサントン化合物及びカルボン酸化合物等が挙げられる。組成物は、重合開始助剤(F1)を2種以上含んでいてもよい。
【0232】
アミン化合物としては、例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(通称ミヒラーズケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0233】
アルコキシアントラセン化合物としては、例えば、9,10-ジメトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジブトキシアントラセン等が挙げられる。
【0234】
チオキサントン化合物としては、例えば、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン等が挙げられる。
【0235】
カルボン酸化合物としては、例えば、フェニルスルファニル酢酸、メチルフェニルスルファニル酢酸、エチルフェニルスルファニル酢酸、メチルエチルフェニルスルファニル酢酸、ジメチルフェニルスルファニル酢酸、メトキシフェニルスルファニル酢酸、ジメトキシフェニルスルファニル酢酸、クロロフェニルスルファニル酢酸、ジクロロフェニルスルファニル酢酸、N-フェニルグリシン、フェノキシ酢酸、ナフチルチオ酢酸、N-ナフチルグリシン、ナフトキシ酢酸等が挙げられる。
【0236】
組成物が重合開始助剤(F1)を含む場合、組成物における重合開始助剤(F1)の含有量は、重合性化合物(E)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上300質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上200質量部以下である。また、組成物における重合開始助剤(F1)の含有量は、樹脂(D)及び重合性化合物(E)の合計量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上30質量部以下、より好ましくは1質量部以上20質量部以下である。重合開始助剤(F1)の含有量が上記範囲内にあると、組成物のさらなる高感度化を図ることができる。
【0237】
[9]酸化防止剤(H)
組成物は、酸化防止剤(H)をさらに含むことができる。酸化防止剤(H)としては、工業的に一般に使用される酸化防止剤であれば特に限定はなく、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、リン/フェノール複合型酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤等を用いることができる。組成物は、酸化防止剤(H)を2種以上含んでいてもよい。
【0238】
リン/フェノール複合型酸化防止剤は、例えば、分子中にリン原子とフェノール構造とをそれぞれ1以上有する化合物である。中でも、組成物の現像性及び組成物又は膜の発光強度の観点から、酸化防止剤(H)は、リン/フェノール複合型酸化防止剤を含むことが好ましい。
【0239】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、イルガノックス(登録商標)1010(Irganox 1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF(株)製)、同1076(Irganox 1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASF(株)製)、同1330(Irganox 1330:3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、BASF(株)製)、同3114(Irganox 3114:1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、BASF(株)製)、同3790(Irganox 3790:1,3,5-トリス((4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、BASF(株)製)、同1035(Irganox 1035:チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF(株)製)、同1135(Irganox 1135:ベンゼンプロパン酸の3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-C7-C9側鎖アルキルエステル、BASF(株)製)、同1520L(Irganox 1520L:4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、BASF(株)製)、同3125(Irganox 3125、BASF(株)製)、同565(Irganox 565:2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3’、5’-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、BASF(株)製)、アデカスタブ(登録商標)AO-80(アデカスタブ AO-80:3,9-ビス(2-(3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、(株)ADEKA製)、スミライザー(登録商標)BHT、同GA-80、同GS(以上、住友化学(株)製)、サイアノックス(登録商標)1790(Cyanox 1790、(株)サイテック製)、ビタミンE(エーザイ(株)製)等が挙げられる。
【0240】
リン系酸化防止剤としては、例えば、イルガフォス(登録商標)168(Irgafos 168:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト、BASF(株)製)、同12(Irgafos 12:トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d、f][1,3,2]ジオキサフォスフィン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、BASF(株)製)、同38(Irgafos 38:ビス(2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、BASF(株)製)、アデカスタブ(登録商標)329K、同PEP36、同PEP-8(以上、(株)ADEKA製)、Sandstab P-EPQ(クラリアント社製)、Weston(登録商標)618、同619G(以上、GE社製)、Ultranox626(GE社製)等が挙げられる。
【0241】
リン/フェノール複合型酸化防止剤としては、例えば、スミライザー(登録商標)GP(6-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン)(住友化学(株)製)等が挙げられる。
【0242】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル又はジステアリール等のジアルキルチオジプロピオネート化合物及びテトラキス[メチレン(3-ドデシルチオ)プロピオネート]メタン等のポリオールのβ-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0243】
組成物における酸化防止剤(H)の含有量は、樹脂(D)100質量部に対して、例えば1質量部以上50質量部以下、膜の発光量及び耐熱性の観点から、好ましくは5質量部以上40質量部以下、より好ましくは7質量部以上30質量部以下である。
【0244】
[10]レベリング剤(I)
組成物は、レベリング剤(I)をさらに含むことができる。レベリング剤(I)としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びフッ素原子を有するシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらは、側鎖に重合性基を有していてもよい。レベリング剤(I)は、組成物の現像性及び組成物又は膜の発光強度の観点から、好ましくはフッ素系界面活性剤である。組成物は、レベリング剤(I)を2種以上含んでいてもよい。
【0245】
シリコーン系界面活性剤としては、分子内にシロキサン結合を有する界面活性剤等が挙げられる。具体的には、トーレシリコーンDC3PA、同SH7PA、同DC11PA、同SH21PA、同SH28PA、同SH29PA、同SH30PA、同SH8400(商品名:東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP322、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341(信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF4446、TSF4452及びTSF4460(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0246】
フッ素系界面活性剤としては、分子内にフルオロカーボン鎖を有する界面活性剤等が挙げられる。具体的には、フロラード(登録商標)FC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、メガファック(登録商標)F142D、同F171、同F172、同F173、同F177、同F183、同F554、同F575、同R30、同RS-718-K(DIC(株)製)、エフトップ(登録商標)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、サーフロン(登録商標)S381、同S382、同SC101、同SC105(旭硝子(株)製)及びE5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)等が挙げられる。
【0247】
フッ素原子を有するシリコーン系界面活性剤としては、分子内にシロキサン結合及びフルオロカーボン鎖を有する界面活性剤等が挙げられる。具体的には、メガファック(登録商標)R08、同BL20、同F475、同F477及び同F443(DIC(株)製)等が挙げられる。
【0248】
組成物がレベリング剤(I)を含む場合、組成物におけるレベリング剤(I)の含有率は、組成物の総量に対して、例えば0.001質量%以上1.0質量%以下、好ましくは0.005質量%以上0.75質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上0.5質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下である。レベリング剤(I)の含有率が上記範囲内にあると、膜の平坦性をより良好にすることができる。
【0249】
[11]溶剤(J)
組成物は、1種又は2種以上の溶剤(J)を含むことができる。溶剤(J)は、好ましくは、樹脂(D)、重合性化合物(E)及び重合開始剤(F)を溶解するものである。溶剤(J)としては、例えば、エステル溶剤(分子内に-COO-を含み、-O-を含まない溶剤)、エーテル溶剤(分子内に-O-を含み、-COO-を含まない溶剤)、エーテルエステル溶剤(分子内に-COO-と-O-とを含む溶剤)、ケトン溶剤(分子内に-CO-を含み、-COO-を含まない溶剤)、アルコール溶剤(分子内にOHを含み、-O-、-CO-及びCOO-を含まない溶剤)、芳香族炭化水素溶剤、アミド溶剤、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0250】
エステル溶剤としては、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-ブチル、2-ヒドロキシイソブタン酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、シクロヘキサノールアセテート及びγ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0251】
エーテル溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アニソール、フェネトール及びメチルアニソール等が挙げられる。
【0252】
エーテルエステル溶剤としては、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及びジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0253】
ケトン溶剤としては、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、アセトン、2-ブタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、4-メチル-2-ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びイソホロン等が挙げられる。
【0254】
アルコール溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリン等が挙げられる。
【0255】
芳香族炭化水素溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等が挙げられる。
【0256】
アミド溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0257】
溶剤(J)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングコールモノエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、及び芳香族炭化水素溶剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0258】
1つの好ましい実施形態において、溶剤(J)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングコールモノエチルエーテル、及び4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンからなる群より選択される1種又は2種以上と、芳香族炭化水素溶剤とを含む。
【0259】
他の好ましい実施形態において、溶剤(J)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、芳香族炭化水素溶剤とを含む。該芳香族炭化水素溶剤は、好ましくは、トルエン、キシレン等の沸点が100℃以上150℃以下の溶剤である。芳香族炭化水素溶剤を併用することにより、発光性有機化合物(B)の溶解性を高めることができる。
【0260】
溶剤(J)は、固形分以外の成分であり、例えば半導体粒子(A)の分散液や樹脂(D)の溶液等に含まれる溶剤も溶剤(J)に包含される。
組成物における溶剤(J)の含有率は、該組成物の総量に対する該組成物に含まれる全溶剤の合計質量の割合であり、組成物の総量に対して、好ましくは40質量%以上95質量%以下、より好ましくは55質量%以上90質量%以下、さらに好ましくは70質量%以上80質量%以下である。言い換えると、組成物の固形分は、好ましくは5質量%以上60質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上45質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上40質量%以下である。溶剤(J)の含有率が上記範囲内にあると、塗布時の組成物層の平坦性がより良好になり、また適切な厚みの膜を形成しやすい傾向がある。また、組成物の固形分を低め(例えば40質量%以下)に設定することは、発光性有機化合物(B)の完全溶解を確保する又は溶解量を高めるうえで有利である。
【0261】
[12]その他の成分
組成物は必要に応じて、重合禁止剤、充填剤、他の高分子化合物、密着促進剤、光安定剤、連鎖移動剤等、当該技術分野で公知の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0262】
<組成物の製造方法>
組成物は、所定の成分、並びに必要に応じて使用される他の成分を混合する工程を含む方法によって製造することができる。組成物の製造方法は、発光性有機化合物(B)を調製する工程、樹脂(D)を調製する工程等をさらに含むことができる。
【0263】
<膜及びその製造方法>
本発明に係る膜(以下、単に「膜」ともいう。)は、上記本発明に係る組成物から形成される膜である。膜は、例えば、組成物を基板に塗布した後に乾燥させる工程を含む方法によって得ることができる。ただし、膜は、これに限定されるものではなく、溶剤(J)を含むものであってもよい。
【0264】
一実施形態において、本発明に係る組成物は、樹脂(D)をさらに含む樹脂組成物R1である。樹脂組成物R1から形成される樹脂膜は、該組成物を基板に塗布した後に乾燥させることにより形成することができる。
また、他の実施形態において、本発明に係る組成物は、重合性化合物(E)及び熱重合性化合物から選択される1種以上の重合性化合物と、重合開始剤(F)及び熱重合開始剤から選択される1種以上の重合開始剤とをさらに含む硬化性組成物R2である。硬化性組成物R2は、樹脂(D)をさらに含んでいてもよい。硬化性組成物R2から形成される本発明に係る膜は、硬化膜である。硬化膜は、硬化性組成物R2を基板に塗布した後に乾燥させ、光の作用及び/又は熱の作用で硬化させることにより得ることができる。
硬化性組成物R2の一態様は、重合性化合物(E)及び重合開始剤(F)をさらに含む光硬化性組成物R3である。光硬化性組成物R3は、樹脂(D)をさらに含んでいてもよい。
【0265】
膜は、上記基板全面に形成されていてもよいし、上記基板の一部にパターン状に形成されていてもよい。膜をパターン状に形成する方法としては、フォトリソグラフ法、インクジェット法、印刷法等が挙げられる。印刷法としては、ステンシル印刷法、スクリーン印刷法、アプリケーターによる印刷塗工等が挙げられる。
【0266】
基板としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミナケイ酸塩ガラス、表面をシリカコートしたソーダライムガラス等のガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂板、シリコン、上記基板上にアルミニウム、銀、銀/銅/パラジウム合金薄膜等を形成したもの等が挙げられる。
【0267】
樹脂組成物R1から形成されるパターン状の樹脂膜は、以下のようにして作製することができる。まず、樹脂組成物R1をマスクを介して基板上に塗布して、パターン状の組成物層を形成する。樹脂組成物の塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、スリット アンド スピンコート法等が挙げられる。
【0268】
次に、組成物層を乾燥させる(溶剤等の揮発成分を除去する)ことにより樹脂膜を得る。乾燥方法としては、加熱乾燥、減圧乾燥又はこれらの組み合わせが挙げられる。加熱乾燥を行う場合の温度は、好ましくは30℃以上250℃以下、より好ましくは50℃以上235℃以下である。加熱時間は、好ましくは10秒間以上180分間以下、より好ましくは30秒間以上90分間以下である。減圧乾燥を行う場合は、50Pa以上150Pa以下の圧力下で行うことが好ましい。組成物層の乾燥は、例えば乾燥温度の異なる複数の乾燥工程を実施するなど、複数段で実施してもよい。
【0269】
光硬化性組成物R3から形成されるパターン状の硬化膜は、フォトリソグラフ法を用いる方法を例に挙げると、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、光硬化性組成物R3を基板上に塗布し、加熱乾燥(プリベーク)及び/又は減圧乾燥することにより溶剤等の揮発成分を除去して、組成物層を得る。塗布方法としては、上記と同様の方法が挙げられる。
【0270】
加熱乾燥を行う場合の温度は、30℃以上120℃以下が好ましく、50℃以上110℃以下がより好ましい。加熱時間は、10秒間以上60分間以下であることが好ましく、30秒間以上30分間以下であることがより好ましい。減圧乾燥を行う場合は、50Pa以上150Pa以下の圧力下、20℃以上25℃以下の温度範囲で行うことが好ましい。
【0271】
次に、組成物層は、目的のパターン形状を形成するためのフォトマスクを介して露光される。露光に用いられる光源としては、250nm以上450nm以下の波長の光を発生する光源が好ましい。例えば、該波長の光から、重合開始剤(F)の吸収波長に応じて、436nm付近、408nm付近、又は365nm付近の光をバンドパスフィルタにより選択的に取り出してもよい。光源として具体的には、水銀灯、発光ダイオード、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ等が挙げられる。
【0272】
露光面全体に均一に平行光線を照射することができたり、フォトマスクと組成物層が形成された基板との正確な位置合わせを行うことができたりするため、マスクアライナ及びステッパ等の露光装置を使用することが好ましい。露光された組成物層は、該組成物層に含まれる重合性化合物(E)等が重合することにより硬化する。
【0273】
露光後の組成物層を現像液に接触させて現像することにより、組成物層の未露光部が現像液に溶解して除去されて、パターン状の硬化膜が得られる。現像液としては、例えば、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等のアルカリ性化合物の水溶液や有機溶剤が挙げられる。アルカリ性化合物の水溶液中の濃度は、好ましくは0.01質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.03質量%以上5質量%以下である。有機溶剤としては、上述の溶剤(J)と同様のものが挙げられる。現像液は、界面活性剤を含んでいてもよい。
現像方法は、パドル法、ディッピング法及びスプレー法等のいずれでもよい。さらに現像時に基板を任意の角度に傾けてもよい。
【0274】
現像により得られたパターン状の膜に対して、さらに加熱(ポストベーク)を行うことが好ましい。加熱温度は、150℃以上250℃以下が好ましく、160℃以上235℃以下がより好ましい。加熱時間は、1分間以上120分間以下が好ましく、10分間以上60分間以下がより好ましい。現像後に加熱を行うことにより、膜に含まれる未反応の重合性化合物(E)等の重合を進行させることができるため、より耐薬品性に優れた硬化膜を得ることができる。現像を行わない場合においても、露光された組成物層に対して、加熱(ポストベーク)をさらに行うことが好ましい。
【0275】
一方、基板全面に硬化膜を形成する方法としては、硬化性組成物を基板に塗布し、必要に応じて乾燥させて組成物層を形成し、該組成物層を加熱及び/又は該組成物層全面に露光する方法が挙げられる。
【0276】
硬化性組成物R2から形成される硬化膜は、硬化性組成物R2に含まれる重合性化合物及び重合開始剤の硬化反応物を含む。該硬化反応物は、重合性化合物、重合開始剤の構造に起因する構造を含む物質である。重合性化合物、重合開始剤の構造に起因する構造とは、例えば、重合性化合物、重合開始剤の硬化反応部位以外の骨格構造又はその部分である。
【0277】
本発明に係る膜の厚みは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば1μm以上20μm以下、好ましくは1.5μm以上18μm以下、より好ましくは2μm以上14μm以下、さらに好ましくは2μm以上12μm以下である。膜の厚みが過度に小さいと、膜の厚さ方向における発光性有機化合物(B)及び光散乱剤(C)(含まれる場合)の総量が少なくなるため、膜に励起光を照射したときに、励起光が膜によって十分に吸収・散乱されずに膜を透過する割合が大きくなる傾向がある。
パターン状の膜の形状及び寸法は特に制限されない。パターン状の膜は、例えばその平面視形状が方形形状である。
【0278】
膜は、紫外光又は可視光(例えば青色光)を照射することにより、照射光とは異なる波長の光を発光することができる。半導体粒子(A)の成分や粒子径を選択することによって、発光する光の波長を選択することができる。膜は、照射光の波長を変換する機能を有するため、表示装置の色変換層等として利用可能である。本発明に係る膜は、良好な発光強度を示すことができる。
【0279】
膜は、その発光スペクトルにおいて、極大波長が480nm以上560nm以下又は570nm以上680nm以下である発光ピークを有することができる。
1つの実施形態において、膜は、上述の半導体粒子(A-1)を含み、その発光スペクトルにおいて、極大波長が480nm以上560nm以下、好ましくは500nm以上560nm以下、より好ましくは520nm以上550nm以下である発光ピークを有する。他の実施形態において、膜は、上述の半導体粒子(A-2)を含み、その発光スペクトルにおいて、極大波長が570nm以上680nm以下、好ましくは590nm以上660nm以下、より好ましくは600nm以上650nm以下である発光ピークを有する。膜の上記発光ピークの半値全幅は、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下である。該半値全幅は、20nm以上又は30nm以上であってよい。膜の発光スペクトルは、後述の実施例の欄に記載の測定方法に従って測定することができる。
【0280】
<表示装置>
本発明に係る膜は、良好な発光強度を示し得るため、表示装置、特に、液晶表示装置、有機EL表示装置又は無機EL表示装置における色変換層(波長変換層)として有用である。かかる表示装置としては、例えば、特開2006-309219号公報、特開2006-310303号公報、特開2013-15812号公報、特開2009-251129号公報、特開2014-2363号公報等に記載される表示装置が挙げられる。
【0281】
本発明に係る表示装置は上記膜を含み、通常は光源をさらに含む。表示装置は、例えば、光吸収層、光反射部材(反射フィルム等)、拡散フィルム、輝度強化部、プリズムシート、導光板、要素間の媒体材料層等の層をさらに含んでいてもよい。
【0282】
光吸収層は、特定波長の範囲の光を透過し、それ以外の波長範囲の光を吸収する波長選択性を有する層である。光吸収層は通常、染料、顔料等の着色剤を含む層であり、上記膜上に配置することができる。光吸収層としては、カラーフィルタとして従来公知のものを用いることができる。
【0283】
光反射部材は、光源の光を上記硬化膜に向けて反射させるための部材であり、反射鏡、反射粒子のフィルム、反射金属フィルム、又は反射体等であってよい。拡散フィルムは、光源の光又は膜から発した光を拡散させるためのフィルムであり、増幅拡散フィルム等であってよい。輝度強化部は、光の一部分を、光が伝送された方向に向かって反射して戻すための部材である。
【0284】
プリズムシートは、代表的には、基材部とプリズム部とを有する。基材部は、隣接する部材に応じて省略してもよい。プリズムシートは、任意の適切な接着層(例えば、接着剤層、粘着剤層)を介して隣接する部材に貼り合わせることができる。プリズムシートは、視認側とは反対側(背面側)に凸となる複数の単位プリズムが並列されて構成されている。プリズムシートの凸部を背面側に向けて配置することにより、プリズムシートを透過する光が集光されやすくなる。また、プリズムシートの凸部を背面側に向けて配置すれば、凸部を視認側に向けて配置する場合と比較して、プリズムシートに入射せずに反射する光が少なく、輝度の高い表示装置を得ることができる。
【0285】
導光板としては、任意の適切な導光板が用いられる。例えば、横方向からの光を厚さ方向に偏向可能となるよう、背面側にレンズパターンが形成された導光板、背面側及び/又は視認側にプリズム形状等が形成された導光板が用いられる。
【0286】
表示装置は、隣接する要素(層)間の光路上に1以上の媒体材料からなる層を含んでいてもよい。1以上の媒体材料としては、例えば真空、空気、ガス、光学材料、接着剤、光学接着剤、ガラス、ポリマー、固体、液体、ゲル、硬化材料、光学結合材料、屈折率整合又は屈折率不整合材料、屈折率勾配材料、クラッディング又は抗クラッディング材料、スペーサー、シリカゲル、輝度強化材料、散乱又は拡散材料、反射又は抗反射材料、波長選択性材料、波長選択性抗反射材料又は当該技術分野で既知の他の好適な媒体が含まれるが、これらに限定されず、任意の好適な材料が含まれてもよい。
【0287】
表示装置の具体例としては、例えば、ELディスプレイや液晶ディスプレイ用の波長変換材料を備えたものが挙げられる。具体的には、波長変換層としての上記膜を導光板の端面(側面)に沿うように、青色光源と導光板の間に配置し、白色光を放出するバックライト(オンエッジ方式のバックライト)とし、導光板側に光吸収層を配置した表示装置;波長変換層としての上記膜を導光板の上に設置して、導光板の端面(側面)に置かれた青色光源から導光板を通して波長変換層に照射される光を白色光として放出するバックライト(表面実装方式のバックライト)とし、波長変換層上に光吸収層を配置した表示装置;上記膜を青色光源の発光部近傍に設置して波長変換層とし、照射される光を白色光として放出するバックライト(オンチップ方式のバックライト)とし、波長変換層上に光吸収層を配置した表示装置;互いに異なる領域である第1領域、第2領域及び第3領域を有する青色光源と、該青色光源の第1領域上に配置され、赤色光を発する上記膜である第1波長変換層と、該青色光源の第2領域上に配置され、緑色光を発する上記膜である第2波長変換層と、第1波長変換層上に必要に応じて配置される赤色光を透過する第1光吸収層と、第2波長変換層上に必要に応じて配置される緑色光を透過する第2光吸収層とを含む、赤色発光領域(すなわち、第1領域)、緑色発光領域(すなわち、第2領域)及び青色発光領域(すなわち、第3領域)を有する表示装置等が挙げられる。
【実施例0288】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」及び「部」は、特記のない限り、質量%及び質量部である。
【0289】
<測定>
(1)膜の厚み
作製した膜(硬化膜)について、膜厚測定装置(Bruker社製「DEKTAKXT」)を用いて、厚みを測定した。
【0290】
(2)半導体粒子(A)の発光スペクトル
絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス製「C9920-02」、励起光450nm、室温、大気下)を用いて、波長450nmにおける吸光度が0.4となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」という。)で希釈した半導体粒子(A-1)の分散液bの発光スペクトルを測定した。半導体粒子(A-2)の分散液bbについても同様にして発光スペクトルを測定した。
半導体粒子(A-1)は、極大波長が542nmである発光ピークを有していた。半導体粒子(A-2)は、極大波長が637nmである発光ピークを有していた。
【0291】
(3)発光性有機化合物(B)の発光スペクトル
絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス製「C9920-02」、励起光450nm、室温、大気下)を用いて、波長450nmにおける吸光度が0.1以上0.5以下となるように、発光性有機化合物(B)をガラス基板上に配置したサンプルの発光スペクトルを測定した。
【0292】
(4)膜の発光スペクトル
後述する実施例又は比較例で作製したガラス基板と硬化膜との積層体を測定サンプルとし、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス製「C9920-02」、励起光450nm、室温、大気下)を用いて、該測定サンプルの発光スペクトルを測定した。得られた発光スペクトルから、極大波長が480nm以上560nm以下又は570nm以上680nm以下である発光ピークの最大波長(λmax)と該発光ピークの半値全幅とを求めた。
【0293】
(5)半導体粒子(A)の吸光スペクトル
半導体粒子(A-1)の分散液bに対してPGMEAを加えることにより、測定時の吸光度の最高値が、250nm以上800nm以下の波長域において4以下になるように調整して、測定サンプルを得た。積分球を具備した紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所製「UV-3600」)を用いて、該測定サンプルの吸光スペクトルを測定した(測定波長間隔:0.5nm)。バックグラウンドはPGMEA溶媒で取得した。半導体粒子(A-2)の分散液bbについても同様にして吸光スペクトルを測定した。
半導体粒子(A-1)は、極大波長が498nm(四捨五入値)である吸光ピークを有していた。半導体粒子(A-2)は、極大波長が605nm(四捨五入値)である吸光ピークを有していた。
【0294】
(6)発光性有機化合物(B)の吸光スペクトル
発光性有機化合物(B)を、これを溶解可能な溶媒に溶かして溶液を得た。溶液における発光性有機化合物(B)の濃度は、測定時の吸光度の最高値が、250nm以上800nm以下の波長域において4以下になるように調整した。この溶液をガラス基板上に塗布して乾燥を行うことにより、ガラス基板と塗膜との積層体を得、これを測定サンプルとした。溶液の塗布、乾燥により平滑な膜が得られない場合には、溶液自体を測定サンプルとした。積分球を具備した紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所製「UV-3600」)を用いて、該測定サンプルの吸光スペクトルを測定した(測定波長間隔:0.5nm)。測定値の表記は四捨五入値である。バックグラウンドは、何も塗布していないガラス基板、及び発光性有機化合物(B)を溶解させるために使用した溶媒単体で取得した。
【0295】
(7)膜の吸光スペクトル
後述する実施例又は比較例で作製したガラス基板と硬化膜との積層体を測定サンプルとし、積分球を具備した紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所製「UV-3600」)を用いて、該測定サンプルの吸光スペクトルを測定した(測定波長間隔:0.5nm)。バックグラウンドはガラス基板で取得した。得られた吸光スペクトルから、波長450nmにおける吸光度を求めた。測定値の表記は四捨五入値である。
【0296】
(8)膜の発光強度EI’
発光ピーク波長が450nmである青色LEDランプを点光源とするバックライト上に光拡散板を配置してバックライト部とした。光拡散板を上に向けてバックライト部を載置し、光拡散板の表面から高さ60cmの位置に、分光放射輝度計(トプコン(株)製「SR-UL1R」)を設置した。後述する実施例又は比較例で作製したガラス基板と硬化膜との積層体を測定サンプルとし、該測定サンプルを、硬化膜を上に向けて光拡散板の表面に配置した。この状態でバックライトを点灯させ、硬化膜から発せられる光について、上記分光放射輝度計を用いて分光放射輝度スペクトルを測定し(測定波長間隔:1nm)、このスペクトルから、上記(4)で得られた極大波長が480nm以上560nm以下又は570nm以上680nm以下である発光ピークの、測定サンプルを設置せずに測定した400nm以上500nm以下の波長域の積分値に対する比を求めた。そして、1.0×10μW・cm-2の光源を想定し、該光源の表面1cmから放射される励起光を想定して、上記の比に1.0×10を乗じることにより、膜の発光強度EI(μW)を算出した。さらに、下記式に基づき、得られたEIを膜の厚み5μm又は4μmで規格化して、EI’(膜の厚みが5μm又は4μmであるときのEI)を求めた。
EI’(μW)=EI(μW)×5又は4(μm)/膜の厚み(μm)
【0297】
(9)樹脂の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mn
樹脂の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定は、GPC法により以下の条件で行った(標準ポリスチレン換算)。
装置;K2479((株)島津製作所製)
カラム;SHIMADZU Shim-pack GPC-80M
カラム温度;40℃
溶媒;テトラヒドロフラン
流速;1.0mL/min
検出器;RI
校正用標準物質 ;TSK STANDARD POLYSTYRENE F-40、F-4、F-288、A-2500、A-500(東ソー(株)製)
【0298】
(10)樹脂の酸価
樹脂溶液3gを精秤し、アセトン90gと水10gとの混合溶剤に溶解し、0.1規定のKOH水溶液を滴定液として用いて、自動滴定装置(平沼産業社製「COM-555」)により、樹脂溶液の酸価を測定し、溶液の酸価と溶液の固形分とから固形分1g当たりの酸価(mgKOH/g)を求めた。
【0299】
(11)樹脂溶液の固形分
樹脂溶液をアルミカップに約1gはかり取り、180℃で1時間乾燥した後、質量を測定した。その質量減少量から、樹脂溶液の固形分(質量%)を計算した。
【0300】
<製造例1-1:半導体粒子(A-1)の分散液の調製>
有機配位子(Ga)としてオレイン酸が配位した半導体粒子(A-1)〔緑色発光のInP/ZnSeS量子ドット〕のトルエン分散液aを準備した。分散液aを減圧蒸留し、トルエンを除去した。固形分30部に対しキシレン70部を添加して、半導体粒子(A-1)の分散液b(固形分30%)を得た。
【0301】
表1に示される、硬化性樹脂組成物における有機配位子(Ga)の含有量については、次の方法に従って半導体粒子(A-1)の分散液aにおける有機配位子(Ga)の濃度を測定し、これに基づいて算出した。すなわち、半導体粒子(A-1)の分散液aを150℃で真空乾燥して溶媒を除去した後、残った固形分について、熱重量分析装置「TGDTA6200」を用いて、重量変化を昇温速度5℃/minで50℃から550℃まで測定した。50℃から500℃までの変化重量を有機配位子(Ga)の重量として、半導体粒子(A-1)の分散液aにおける有機配位子(Ga)の濃度を算出した。
【0302】
<製造例1-2:半導体粒子(A-2)の分散液の調製>
有機配位子(Ga)としてオレイン酸が配位した半導体粒子(A-2)〔赤色発光のInP/ZnSeS量子ドット〕のトルエン分散液aaを準備した。分散液aaを減圧蒸留し、トルエンを除去した。固形分30部に対しキシレン70部を添加して、半導体粒子(A-2)の分散液bb(固形分30%)を得た。表2に示される、硬化性樹脂組成物における有機配位子(Ga)の含有量は、製造例1-1と同様にして算出した。
【0303】
<製造例2:光散乱剤(C-1)の分散液の調製>
酸化チタンナノ粒子70部に、DISPERBYK21116(ビックケミー・ジャパン製)を固形分で3部、PGMEAを全量が100部になるように加えた後、ペイントシェイカーで十分に分散するまで撹拌して、散乱剤(C-1)の分散液(固形分73%)を得た。
【0304】
<製造例3:樹脂(D-1)溶液の調製>
撹拌器、温度計付き還流冷却管、滴下ロート及び窒素導入管を具備したフラスコに、PGMEAを110部投入した後、窒素置換しながら撹拌し、80℃に昇温した。ジシクロペンタニルメタクリレート25部、メチルメタクリレート26部、メタクリル酸16部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)11部をPGMEA110部に溶解した溶液を、滴下ロートからフラスコ中に滴下した後、80℃で3時間撹拌した。
次に、グリシジルメタクリレート16部、2、2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)0.4部、トリフェニルホスフィン0.8部をフラスコ内に投入して110℃まで昇温、8時間撹拌することで重合体中のカルボン酸とエポキシ基とを反応させて、重合性不飽和結合を導入した。次いで、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物17部を加え3時間反応を続けて、側鎖にカルボン酸基を導入した。反応液を室温まで冷却することで樹脂(D-1)溶液を得た。
樹脂(D-1)は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mwが7600、分子量分布が2.1、酸価が100mgKOH/gであり、樹脂(D-1)溶液中の固形分は40質量%であった。
【0305】
<実施例1~3、比較例1>
(1)硬化性樹脂組成物の調製
製造例1-1で得られた半導体粒子(A-1)の分散液b、製造例2で得られた光散乱剤(C-1)の分散液、製造例3で得られた樹脂(D-1)溶液、並びに、表1に示される他の成分をそれぞれ所定量混合して、硬化性樹脂組成物を調製した。
【0306】
添加量から求められる硬化性樹脂組成物における各成分の含有量は表1に示されるとおりである。表1において、溶剤(J)以外の成分は固形分換算の含有量(単位:質量部)である。溶剤(J)の含有量の単位は質量部である。例えば半導体粒子(A-1)は、硬化性樹脂組成物の調製において半導体粒子(A-1)の分散液として配合されているが、表1に示される含有量は、その分散液に含まれる半導体粒子(A-1)それ自体の量である。表1における溶剤(J)には、硬化性樹脂組成物の調製に用いた分散液や溶液に含有される溶剤が含まれている。
【0307】
(2)膜の作製
5cm角のガラス基板(コーニング社製「イーグル2000」)上に、硬化性樹脂組成物を、スピンコート法で塗布した後、100℃で3分間プリベークして硬化性組成物層を形成した。この硬化性組成物層が形成された基板に対して、露光機(ウシオ電機(株)製「マニュアルマスクアライナー(UPE-1255MA)」)を用いて、大気雰囲気下、40mJ/cmの露光量(365nm基準)で光照射し、現像後、180℃で30分間ポストベークを行うことにより硬化膜を形成した。
【0308】
実施例1~3及び比較例1で得られた膜(硬化膜)について、厚み、表1に示される最大波長(λmax)を有する発光ピークの半値全幅、波長450nmにおける吸光度、及び、発光強度EI’(膜の厚みが5μmであるときのEI)を求めた。それらの結果を表1に示す。
【0309】
【表1】
【0310】
表1(表2についても同様)に示される成分の略称の詳細は次のとおりである。
〔1〕有機配位子(Ga):オレイン酸
〔2〕発光性有機化合物(B-1):上記構成単位M1と構成単位M2と構成単位M4とを、50/45/5のモル比で含有する発光性有機ポリマー(固形分100%)。特開2008-133346号公報の合成例1に記載される方法を参考にして製造した。発光性有機化合物(B-1)のポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは2.6×10、数平均分子量Mnは1.1×10であった。また、発光性有機化合物(B-1)の発光スペクトルを測定したところ、極大波長が485nmである発光ピークを有しており、吸光スペクトルを測定したところ、極大波長が390nmである吸光ピークを有していた。
〔3〕発光性有機化合物(B-2):下記式で表される化合物(固形分100%)。発光性有機化合物(B-2)の発光スペクトルを測定したところ、極大波長が520nmである発光ピークを有しており、吸光スペクトルを測定したところ、極大波長が500nmである吸光ピークを有していた。
【0311】
【化28】
【0312】
〔4〕重合性化合物(E-1):光重合性化合物。M-510(カルボキシ基を有する多塩基酸変性アクリレート、東亞合成社製、固形分100%)
〔5〕重合性化合物(E-2):光重合性化合物。A-9550(ジペンタエリスリトールポリアクリレート、新中村化学社製、固形分100%)
〔6〕重合開始剤(F-1):光重合開始剤。下記式で表される化合物(固形分100%)。特開2011-132215号公報に記載される方法により製造した。
【0313】
【化29】
【0314】
〔7〕酸化防止剤(H-1):Sumilizer-GP(リン/フェノール複合型酸化防止剤、住友化学社製、固形分100%)
〔8〕レベリング剤(I-1):F-554(フッ素系レベリング剤、DIC社製、固形分100%)
〔9〕溶剤(J-1):PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
〔10〕溶剤(J-2):キシレン
【0315】
<実施例4~6、比較例2>
(1)硬化性樹脂組成物の調製
製造例1-2で得られた半導体粒子(A-2)の分散液bb、製造例2で得られた光散乱剤(C-1)の分散液(実施例4のみ)、製造例3で得られた樹脂(D-1)溶液、並びに、表2に示される他の成分をそれぞれ所定量混合して、硬化性樹脂組成物を調製した。
【0316】
添加量から求められる硬化性樹脂組成物における各成分の含有量は表2に示されるとおりである。表2において、溶剤(J)以外の成分は固形分換算の含有量(単位:質量部)である。溶剤(J)の含有量の単位は質量部である。例えば半導体粒子(A-2)は、硬化性樹脂組成物の調製において半導体粒子(A-2)の分散液として配合されているが、表2に示される含有量は、その分散液に含まれる半導体粒子(A-2)それ自体の量である。表2における溶剤(J)には、硬化性樹脂組成物の調製に用いた分散液や溶液に含有される溶剤が含まれている。
【0317】
(2)膜の作製
実施例1~3、比較例1と同様にして硬化膜を形成した。
【0318】
実施例4~6及び比較例2で得られた膜(硬化膜)について、厚み、表2に示される最大波長(λmax)を有する発光ピークの半値全幅、波長450nmにおける吸光度、及び、発光強度EI’(膜の厚みが4μmであるときのEI)を求めた。それらの結果を表2に示す。
【0319】
【表2】
【0320】
<製造例1-3:半導体粒子(A-1)の分散液の調製>
有機配位子(Ga)としてオレイン酸が配位した半導体粒子(A-1)〔緑色発光のInP/ZnSeS量子ドット〕のトルエン分散液aを準備した。分散液aを減圧蒸留し、トルエンを除去した。固形分50部に対しキシレン50部を添加して、半導体粒子(A-1)の分散液b’(固形分50%)を得た。
【0321】
<製造例1-4:半導体粒子(A-2)の分散液の調製>
有機配位子(Ga)としてオレイン酸が配位した半導体粒子(A-2)〔赤色発光のInP/ZnSeS量子ドット〕のトルエン分散液aaを準備した。分散液aaを減圧蒸留し、トルエンを除去した。固形分50部に対しキシレン50部を添加して、半導体粒子(A-2)の分散液bb’(固形分50%)を得た。
【0322】
<実施例7~10、比較例3>
(1)組成物の調製
製造例1-3で得られた半導体粒子(A-1)の分散液b’、及び、表3に示される他の成分をそれぞれ所定量混合して、溶液である組成物を調製した。表3における各成分についての数値は混合量であり、単位は質量部である。表3中の溶剤(J-2)は、半導体粒子(A-1)の分散液b’に含まれるキシレンを指す。
【0323】
(2)膜の作製
略正方形のガラス板を2枚用意した。一方のガラス板の4隅に、シリカ粒子(粒径100~200μm)を混合したボンドを載せ、これらのボンドを挟むようにして他方のガラス板を重ねた。2枚のガラス板の隙間に上記(1)で得られた組成物を注入し、毛細管現象を利用して、ガラス板間に該組成物の膜を形成した。膜の厚みは約100μmであった。
【0324】
(3)膜の吸光度の測定
上記(2)で得られたガラス板間に挟持された膜を測定サンプルとして、上述の測定方法に従い分光放射輝度スペクトルを測定した。測定サンプルを設置しない状態で同じ測定を行い、これをバックグラウンドとした。測定サンプルの分光放射輝度スペクトルにおける380nm以上470nm以下の波長域の積分値S1、及び、バックグラウンドの分光放射輝度スペクトルにおける380nm以上470nm以下の波長域の積分値S2から、下記式に従い、膜の吸光度を求めた。結果を表3に示す。
膜の吸光度A(%)=100×(S2-S1)/S2
【0325】
(4)膜の発光スペクトルの測定
上記(2)で得られたガラス板間に挟持された膜を測定サンプルとして、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス製「C9920-02」、励起光450nm、室温、大気下)を用いて、膜の発光スペクトルを測定した。測定サンプルを設置しない状態で同じ測定を行い、これをバックグラウンドとした。バックグラウンドスペクトルの470nm以上780nm以下の波長域における積分値に対する、測定サンプルについて得られた発光スペクトルの同波長域における積分値の割合B(%)を求めた。また、測定サンプルについて得られた発光スペクトルから、極大波長が480nm以上560nm以下である発光ピークの半値全幅を求めた。結果を表3に示す。
【0326】
【表3】
【0327】
表3(表4についても同様)に示される成分の略称の詳細は次のとおりである。
〔1〕有機配位子(Ga):オレイン酸
〔2〕発光性有機化合物(B-1):実施例1等で使用した発光性有機化合物(B-1)と同じ。
〔3〕発光性有機化合物(B-3):上記構成単位M3と構成単位M2と構成単位M4とを、50/45/5のモル比で含有する発光性有機ポリマー(固形分100%)。特開2008-133346号公報の合成例1に記載される方法を参考にして製造した。発光性有機化合物(B-3)のポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは1.9×10、数平均分子量Mnは7.5×10であった。また、発光性有機化合物(B-3)の発光スペクトルを測定したところ、極大波長が480nmである発光ピークを有しており、吸光スペクトルを測定したところ、極大波長が395nmである吸光ピークを有していた。
〔4〕発光性有機化合物(B-4):上記構成単位M1と構成単位M2と構成単位M3と構成単位M4とを、50/22.5/22.5/5のモル比で含有する発光性有機ポリマー(固形分100%)。特開2008-133346号公報の合成例1に記載される方法を参考にして製造した。発光性有機化合物(B-4)のポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは7.2×10、数平均分子量Mnは1.9×10であった。また、発光性有機化合物(B-4)の発光スペクトルを測定したところ、極大波長が470nmである発光ピークを有しており、吸光スペクトルを測定したところ、極大波長が385nmである吸光ピークを有していた。
〔5〕発光性有機化合物(B-5):上記構成単位M1と構成単位M3と構成単位M5と構成単位M6とを、50/35/10/5のモル比で含有する発光性有機ポリマー(固形分100%)。特開2008-133346号公報の合成例1に記載される方法を参考にして製造した。発光性有機化合物(B-5)のポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは3.4×10、数平均分子量Mnは1.5×10であった。また、発光性有機化合物(B-5)の発光スペクトルを測定したところ、極大波長が445nmである発光ピークを有しており、吸光スペクトルを測定したところ、極大波長が390nmである吸光ピークを有していた。
〔6〕溶剤(J-2):キシレン
〔7〕溶剤(J-3):アニソール
【0328】
<実施例11~14、比較例4>
(1)組成物の調製
製造例1-4で得られた半導体粒子(A-2)の分散液bb’、及び、表4に示される他の成分をそれぞれ所定量混合して、溶液である組成物を調製した。表4における各成分についての数値は混合量であり、単位は質量部である。表4中の溶剤(J-2)は、半導体粒子(A-2)の分散液bb’に含まれるキシレンを指す。
【0329】
(2)膜の作製、並びに、膜の吸光度及び発光スペクトルの測定
上記(1)で調製した組成物を用いたこと以外は実施例7と同様にして膜を作製し、該膜について、実施例7と同様にして分光放射輝度スペクトル及び発光スペクトルを測定した。
実施例7と同様にして、分光放射輝度スペクトルから求めた吸光度A(%)、発光スペクトルから求めた積分値の割合B(%)、及び、極大波長が570nm以上680nm以下である発光ピークの半値全幅を求めた。結果を表4に示す。
【0330】
【表4】