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特開2023-95808静電潜像現像用トナー及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095808
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】静電潜像現像用トナー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20230629BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
G03G9/08
G03G9/097 365
G03G9/08 384
G03G9/097 372
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022201409
(22)【出願日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2021210289
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】勝又 俊貴
(72)【発明者】
【氏名】唐戸 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】荒木 太郎
(72)【発明者】
【氏名】秋山 慎太朗
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA08
2H500AA10
2H500BA09
2H500BA16
2H500BA32
2H500CA31
2H500CA32
2H500CA36
2H500CA40
2H500EA62F
(57)【要約】
【課題】低温定着性、耐ホットオフ性、及び耐熱保存性に優れ、かつトナー飛散の発生が少ない静電潜像現像用トナーの提供。
【解決手段】少なくとも結着樹脂、離型剤、着色剤、及び粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、前記粒子が、1価以上のイオン価数を取り得る金属粒子及びハロゲン粒子から選択される少なくともいずれかであり、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光装置(SEM-EDX)により、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧1kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をXμmとした場合、前記粒子の存在面積の範囲が3μm≦Xμm≦10μmであり、かつ、SEM-EDXにより、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧3kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をYμmとした場合、前記粒子の減衰率が80%~100%である静電潜像現像用トナーである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂、離型剤、着色剤、及び粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、
前記粒子が、1価以上のイオン価数を取り得る金属粒子及びハロゲン粒子から選択される少なくともいずれかであり、
走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光装置(SEM-EDX)により、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧1kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をXμmとした場合、前記粒子の存在面積の範囲が3μm≦Xμm≦10μmであり、
かつ、
SEM-EDXにより、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧3kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をYμmとした場合、下記式(1)で表される前記粒子の減衰率が80%~100%であることを特徴とする静電潜像現像用トナー。
粒子の減弱率(%)=(X-Y)/X×100 ・・・ 式(1)
【請求項2】
SEM-EDXにより、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧1kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積の範囲が、4μm≦Xμm≦7μmである請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項3】
前記静電潜像現像用トナー表面における全反射吸収赤外分光(FTIR-ATR)法により測定した波数828cm-1における吸収スペクトルピークに対する波数2,850cm-1における吸収スペクトルピークの強度比(P2850/P828)が、0.10以上0.19以下である請求項1から2のいずれかに記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項4】
前記粒子が、フッ化物である請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項5】
前記静電潜像現像用トナー表面が、長鎖炭化水素基を有し、かつ親水性官能基を有するアニオン性界面活性剤を含有し、
前記静電潜像現像用トナー表面に含有される前記アニオン性界面活性剤中の80質量%~100質量%が、長鎖炭化水素基を有し、かつ2個以上の親水性官能基を有するアニオン性界面活性剤である請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項6】
請求項1に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法であって、
有機溶媒中に、結着樹脂前駆体、離型剤、及び着色剤を溶解させて得られる油相に、前記結着樹脂前駆体と伸長又は架橋する化合物を溶解させた後、前記油相を樹脂微粒子の存在する水系媒体中に分散させて乳化分散液を得、前記乳化分散液中で前記結着樹脂前駆体を架橋反応及び/又は伸長反応させ、前記有機溶媒を除去した後、粒子を添加して静電潜像現像用トナーを得ることを特徴とする静電潜像現像用トナーの製造方法。
【請求項7】
前記水系媒体が、更に界面活性剤を含有し、
前記界面活性剤が、長鎖炭化水素基を有し、かつ親水性官能基を有するアニオン性界面活性剤である請求項6に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像現像用トナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法による画像形成は、一般に、感光体(静電荷像担持体)上に静電荷像を形成し、該静電荷像を現像剤で現像して可視像(トナー像)とした後、該可視像を紙等の記録媒体に転写し定着することにより定着像とする一連のプロセスにより行われる。前記現像剤としては、キャリアとトナーとからなる二成分現像剤、及びキャリアを必要としない一成分現像剤(磁性トナー又は非磁性トナー)が知られている。
【0003】
例えば、高温高湿環境下で低画像密度の画像を繰り返し形成したときに生じる色点の発生、及び低温低湿環境下でトナー像の定着不良により生じる色点の発生を抑制する静電荷像現像用トナーとして、該静電荷像現像用トナー中の帯電制御剤濃度をエネルギー分散型X線分光法(EDX)により算出し、深さ方向の濃度を規定することーが提案されている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低温定着性、耐ホットオフ性、及び耐熱保存性に優れ、かつトナー飛散の発生が少ない静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂、離型剤、着色剤、及び粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、前記粒子が、1価以上のイオン価数を取り得る金属粒子及びハロゲン粒子から選択される少なくともいずれかであり、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光装置(SEM-EDX)により、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧1kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をXμmとした場合、前記粒子の存在面積の範囲が3μm≦Xμm≦10μmであり、かつ、SEM-EDXにより、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧3kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をYμmとした場合、下記式(1)で表される前記粒子の減衰率が80%~100%であることを特徴とする。
粒子の減弱率(%)=(X-Y)/X×100 ・・・ 式(1)
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、低温定着性、耐ホットオフ性、及び耐熱保存性に優れ、かつトナー飛散の発生が少ない静電潜像現像用トナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(静電潜像現像用トナー)
本発明の静電潜像現像用トナー(以下、単に「トナー」と略記することがある)は、少なくとも結着樹脂、離型剤、着色剤、及び粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、前記粒子が、1価以上のイオン価数を取り得る金属粒子及びハロゲン粒子から選択される少なくともいずれかであり、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光装置(SEM-EDX)により、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧1kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をXμmとした場合、前記粒子の存在面積の範囲が3μm≦Xμm≦10μmであり、かつ、SEM-EDXにより、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧3kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をYμmとした場合、下記式(1)で表される前記粒子の減衰率が80%~100%であることを満たしている必要がある。
粒子の減弱率(%)=(X-Y)/X×100 ・・・ 式(1)
前記静電潜像現像用トナーは、更に必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。
なお、本明細書において、「トナー」とはトナー粒子を含むもの又はトナー粒子からなるものであり、「トナー粒子」と「トナー母体粒子」とは同義とする。
【0008】
従来、トナーとしては、例えば、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの結着樹脂を着色剤などと共に溶融混練し、微粉砕した乾式トナーが用いられており、高品位、高画質の画像を得るために、トナーの粒径を小さくすることが試みられている。しかし、通常の混練、粉砕法による製造方法では、その粒子形状が不定形であり、二成分現像剤として用いる場合には現像部内でのキャリアとの攪拌や、一成分現像剤として用いる場合には現像ローラとトナー供給ローラ、層厚規制ブレードや摩擦帯電ブレードなどとの接触による接触ストレスにより、更にトナーが粉砕され、極微粒子が発生したり、流動化剤がトナー表面に埋め込まれるために画像品質が低下したりするという問題がある。また、その形状のために粉体としての流動性が悪く、多量の流動化剤を必要としたり、トナーボトル内への充填率が低く、コンパクト化への阻害要因となったりしており、小粒径化による利益が十分に得られていない。また、粉砕法では、得られる粒子の粒径に限界があり、更なる小粒径化に対応することができない。更に、フルカラー画像を作成するために多色トナーにより形成された画像の感光体から転写媒体や紙への転写プロセスも複雑になってきており、粉砕トナーのような不定形の形状では、転写性の悪さから、転写された画像に抜けが生じたり、それを補うためにトナー消費量が増大したりするという問題がある。
【0009】
したがって、更なる転写効率の向上を果たすことにより、トナーの消費量を減少させて画像の抜けのない高品位の画像を得ることや、ランニングコストを低減させたいという要求が高まっている。転写効率が非常に優れている場合、感光体や転写媒体から未転写トナーを取り除くためのクリーニングユニットが不要となり、機器の小型化、低コスト化が実現され、また、廃棄トナーもなくなる。このため、種々の球状のトナーの製造方法が考案され、例えば、懸濁重合法、乳化重合凝集法、ポリマー溶解懸濁法などによるトナーの製造方法が提案されている。
【0010】
懸濁重合法、乳化重合凝集法、ポリマー溶解懸濁法などの、水系媒体中でトナーを製造する方法において、帯電機能を付与するために、帯電制御剤(金属塩、フッ素活性剤等)をトナースラリー中に投入することで付与する方法がしばしば採用されるが、トナー表面の他物質の存在により、帯電制御剤が薄く均一に付与することが難しく、帯電量向上のために、帯電制御剤を多く付与すると厚みが生じ、低温定着性の担保が難しいという課題があった。また、帯電制御剤が薄く均一でない場合、帯電量が低い箇所が生じ、トナー飛散の発生に繋がることも課題である。
【0011】
例えば、特開2018-049150号公報では、トナー中の帯電制御剤濃度をエネルギー分散型X線分光装置(EDX)により算出し、深さ方向の濃度を規定することによって、温湿度に対する環境変動制の強いトナーが提案されている。しかし、深さ方向の厚みが大きい場合には定着性の担保が難しくなることや、均一性の概念が無いため、トナー飛散の発生を防ぎきれないという課題が残ってしまう。
【0012】
このような従来の問題に対して、本発明者らは鋭意検討し、本発明の静電潜像現像用トナーが前記構成を満たすことで、低温定着性、耐ホットオフ性、及び耐熱保存性等の諸特性が良好であり、かつトナー飛散の発生が少なく、実使用上の安定性が良好なトナー及び該トナーの効率的な製造方法を見出した。
【0013】
<<静電潜像現像用トナー表面の粒子の存在面積(Xμm)>>
前記静電潜像現像用トナーは、前記SEM-EDXにより、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧1kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をXμmとした場合、前記粒子の存在面積の範囲が3μm≦Xμm≦10μmであるが、4μm≦Xμm≦7μmであることが好ましい。前記粒子の存在面積(Xμm)が、3μm未満であると、帯電性が悪くなり、10μmを超えると、前記トナーに対する前記粒子の量が多くなるため、定着性が悪くなる。
【0014】
<<静電潜像現像用トナー表面における粒子の減弱率>>
前記静電潜像現像用トナーは、前記SEM-EDXにより、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧3kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をYμmとした場合、下記式(1)で表される前記粒子の減衰率が80%~100%であり、90%~100%が好ましい。前記粒子の減衰率が80%~100%であることによって、トナー表面への帯電制御剤の付着性が良好となり、より薄く、均一な帯電制御剤のトナー表面への付着が実現できる。前記粒子の減衰率が、80%未満であると、前記トナー表面における前記粒子の量が多くなるため、定着性が悪くなり、100%を超えると、前記粒子が前記トナーの内部に取り込まれている状態となるため、前記トナー表面における前記粒子の量が少なくなり、帯電性が悪くなる。
粒子の減弱率(%)=(X-Y)/X×100 ・・・ 式(1)
【0015】
<<静電潜像現像用トナー表面の粒子の存在面積(Yμm)>>
前記SEM-EDXにより、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧3kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をYμmとしては、前記粒子の減衰率が80%~100%である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.6μm≦Yμm≦2μmであることが好ましく、0.8μm≦Yμm≦1.4μmであることがより好ましい。前記粒子の存在面積(Yμm)が、前記好ましい範囲であると、帯電性が良好である。
【0016】
<<静電潜像現像用トナー表面の粒子の存在面積(Zμm)>>
前記SEM-EDXにより、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧5kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をZμmとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、帯電性の点から、Zμm=0であることが好ましい。
【0017】
前記加速電圧振りは前記トナーの測定深度振りに相当する。
例えば、結着樹脂にポリエステルを使用したトナー試料においては、加速電圧が1kVではトナー表面から約0.03μm内側の領域の情報、加速電圧が3kVではトナー表面から約0.08μm内側の領域の情報、加速電圧が5kVではトナー表面から約0.13μm内側の領域の情報が得られる。
なお、結着樹脂の種類によって、加速電圧に対する測定深度はほとんど変わらないため、本発明では、結着樹脂がポリエステル以外の場合であっても、加速電圧を1kV、3kV、及び5kVとして同様の結果を得ることができる。
【0018】
<<静電潜像現像用トナー表面におけるワックス相対量>>
前記静電潜像現像用トナー表面における全反射吸収赤外分光(FTIR-ATR)法により測定した波数828cm-1における吸収スペクトルピークに対する波数2,850cm-1における吸収スペクトルピークの強度比(P2850/P828)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.10以上0.19以下が好ましく、0.14以上0.16以下がより好ましい。前記強度比(P2850/P828)が、0.10以上であると、低温定着性が良好であり、0.19以下であると、耐ホットオフセット性が良好である。
前記強度比(P2850/P828)は、前記トナー表面における相対的な離型剤の量を示す指標である。
前記波数828cm-1における吸収スペクトルピーク及び波数2,850cm-1における吸収スペクトルピークは、測定試料として、トナー3gを自動ペレット成型器で6tの荷重で1分間プレスして直径40mm(厚さ約2mm)のトナーペレットを作製し、作製したトナーペレットを、フーリエ変換赤外(FT-IR)分光分析測定装置で、直径100μmゲルマニウム(Ge)結晶のマイクロATRにて、赤外線の入射角41.5°、分解能4cm-1、積算20回で測定することができる。前記強度比(P2850/P828)は、前記測定を4回行った平均値より求めた値である。
【0019】
前記トナーの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、4.9μm~5.5μmが好ましい。
前記トナーの体積平均粒径は、例えば、粒度測定器(マルチサイザーIII、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman CoulterMutlisizer 3 Version3.51)にて解析を行うことで測定することができる。
【0020】
<結着樹脂>
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、又はα-メチルスチレン等のスチレン類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-プロピル、メタクリル酸ラウリル、又はメタクリル酸2-エチルヘキシル等の不飽和結合を有するエステル類;アクリロニトリル、又はメタクリロニトリル等の不飽和結合を有するニトリル類;ビニルメチルエーテル、又はビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、又はビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;エチレン、プロピレン、又はブタジエン等のオレフィン類などの単量体を用いた重合体又は共重合体、若しくはこれらの混合物などが挙げられる。
また、更にエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、又はポリエーテル樹脂等の非ビニル系縮合樹脂又はこれら縮合樹脂に、ビニル系樹脂を混合したもの、これら重合体の存在下でビニル系単量体を重合することによって得られるグラフト重合体なども使用することができる。
【0021】
これらの中でも、前記結着樹脂は、低温定着性、及び色再現性等に優れる点で、ポリエステル樹脂を用いることが好ましい。
【0022】
<<ポリエステル樹脂>>
前記ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、非結晶性ポリエステル樹脂、変性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
-非結晶性ポリエステル樹脂-
前記非結晶性ポリエステル樹脂(以下、「未変性ポリエステル樹脂」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られる非結晶性ポリエステル樹脂などが挙げられる。
【0024】
なお、本発明において、前記非結晶性ポリエステル樹脂とは、上記のごとく、ポリオールと、ポリカルボン酸とを反応させて得られるものを指し、ポリエステル樹脂を変性したもの、例えば、後述するプレポリマー、及びそのプレポリマーを架橋及び/又は伸長反応させて得られる変性ポリエステル樹脂は、本発明においては前記非結晶性ポリエステル樹脂には含めず、変性ポリエステル樹脂として扱う。
前記非結晶性ポリエステルは、テトラヒドロフラン(THF)に可溶なポリエステル樹脂成分である。
【0025】
前記ポリオールとしては、例えば、ジオールなどが挙げられる。
前記ジオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、又はポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物;エチレングリコール、プロピレングリコール;水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのアルキレン(炭素数2~3)オキサイド(平均付加モル数1~10)付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記ポリカルボン酸としては、例えば、ジカルボン酸などが挙げられる。
前記ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、ドデセニルコハク酸、又はオクチルコハク酸等の炭素数1~20のアルキル基;炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記非結晶性ポリエステル樹脂は、酸価又は水酸基価を調整するため、その樹脂鎖の末端に3価以上のカルボン酸、3価以上のアルコール、又は3価以上のエポキシ化合物等を含んでもよい。これらは、1種を単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
【0028】
-変性ポリエステル樹脂―
前記変性ポリエステル樹脂(以下、「変性ポリエステル」と称することがある)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性水素基含有化合物と、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂(本明細書において、「プレポリマー」、「ポリエステルプレポリマー」、「結着樹脂前駆体」と称することがある)との反応生成物などが挙げられる。
【0029】
本実施形態で用いられる好ましいポリエステルプレポリマーは、末端に酸性基や水酸基等の活性水素基を有するポリエステルに、その活性水素基と反応するイソシアネート基等の官能基を導入したものである。このプレポリマーからウレア変性ポリエステル等の変性ポリエステルを誘導することができるが、本実施形態の場合、トナーの結着樹脂として用いる好ましい変性ポリエステルは、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーに対して、架橋剤及び/又は伸長剤としてアミン類を反応させて得られるウレア変性ポリエステルである。
【0030】
-活性水素基含有化合物-
前記活性水素基含有化合物は、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂と反応する化合物である。
【0031】
前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂に対する架橋剤としては、アミン類が用いられ、伸長剤としてはジイソシアネート化合物(ジフェニルメタンジイソシアネートなど)が用いられる。
【0032】
前記活性水素基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、又はメルカプト基などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記活性水素基は、アルコール性水酸基が好ましい。
【0033】
前記活性水素基含有化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂がイソシアネート基を含有するポリエステル樹脂である場合には、該ポリエステル樹脂と伸長反応及び架橋反応等により前記ポリエステル樹脂を高分子量化できる点で、アミン類が好ましい。
【0034】
以下に詳述するアミン類は、活性水素基と反応可能な変性ポリエステルに対する架橋剤や伸長剤として作用する。
【0035】
前記アミン類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミン、3価以上のポリアミン、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸、又はこれらのアミノ基をブロックしたものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0036】
前記ジアミンとしては、例えば、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、又は4,4’ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;4,4’-ジアミノ-3,3’ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、又はイソホロンジアミン等の脂環式ジアミン;エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、又はヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
【0037】
前記3価以上のポリアミンとしては、例えば、ジエチレントリアミン又はトリエチレンテトラミンなどが挙げられる。
【0038】
前記アミノアルコールとしては、例えば、エタノールアミン又はヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。
【0039】
前記アミノメルカプタンとしては、例えば、アミノエチルメルカプタン又はアミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。
【0040】
前記アミノ酸としては、アミノプロピオン酸又はアミノカプロン酸などが挙げられる。
【0041】
前記これらの化合物のアミノ基をブロックしたものとしては、上述のアミン類、及びケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物又はオキサゾリジン化合物などが挙げられる。
【0042】
これらのアミン類の中でも、ジアミン、又はジアミン及び少量の3価以上のポリアミンの混合物が好ましい。
【0043】
前記アミン類の比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、イソシアネート基を有するプレポリマー中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類中のアミノ基[NHx]の当量比[NCO]/[NHx]としては、1/2以上2/1以下が好ましく、1.5/1以上1/1.5以下がより好ましく、1.2/1以上1/1.2以下が更に好ましい。前記[NCO]/[NHx]が2/1以下又は1/2以上であると、ポリエステルの分子量が高くなり、耐ホットオフセット性が良好である。
【0044】
--活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂--
前記活性水素基含有化合物と反応可能な部位を有するポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂(以下、「イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー」と称することがある)などが挙げられる。前記イソシアネート基を含有するポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオールとポリカルボン酸との重縮合物で、且つ活性水素基を有するポリエステルを更にポリイソシアネートと反応させたものなどが挙げられる。
【0045】
前記ポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジオール、3価以上のアルコール、又はジオールと3価以上のアルコールとの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジオール、ジオールと少量の3価以上のアルコールとの混合物が好ましい。
【0046】
前記ジオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、又は1,6-ヘキサンジオール等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレンエーテルグリコール等のアルキレンエーテルグリコール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、又は水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はビスフェノールS等のビスフェノール類;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、又はブチレンオキサイド等の上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、又はブチレンオキサイド等の上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ジオールとしては、炭素数が2~12である鎖状アルキレングリコール、及びビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物の少なくともいずれかが好ましく、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加物と炭素数が2~12の鎖状アルキレングリコールとの混合物がより好ましい。
【0047】
前記3価以上のポリオールとしては、3価以上8価以下又はそれ以上のグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、又はソルビトール等の多価脂肪族アルコール;トリスフェノールPA、フェノールノボラック、又はクレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類;上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記ポリカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジカルボン酸、3価以上のカルボン酸、又はジカルボン酸と3価以上のカルボン酸との混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ジカルボン酸、ジカルボン酸と少量の3価以上のポリカルボン酸との混合物が好ましい。
【0049】
前記ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、又はセバシン酸等のアルキレンジカルボン酸;マレイン酸又はフマル酸等のアルケニレンジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、又はナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記ジカルボン酸は、炭素数4以上20以下のアルケニレンジカルボン酸、又は炭素数8以上20以下の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0050】
前記3価以上のポリカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、炭素数9以上20以下のトリメリット酸又はピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸などが挙げられる。
なお、前記ポリカルボン酸としては、上述の化合物の酸無水物、若しくは、メチルエステル、エチルエステル、又はイソプロピルエステル等の低級アルキルエステルを用いてポリオールと反応させてもよい。
【0051】
前記ポリオールと前記ポリカルボン酸とを重縮合させる際の、前記ポリオールとポリカルボン酸との比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]として、2/1以上1/1以下が好ましく、1.5/1以上1/1以下がより好ましく、1.3/1以上1.02/1以下が更に好ましい。
【0052】
前記ポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、又は2,6-ジイソシアナトメチルカプロエート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート又はシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;トリレンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;イソシアヌレート類、上述のポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、又はカプロラクタムなどでブロックしたものなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
前記ポリイソシアネートと、水酸基を有するポリエステル樹脂を反応させる場合、ポリイソシアネートの比率としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、イソシアネート基[NCO]と、水酸基とを有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、1/1以上5/1以下が好ましく、1.2/1以上4/1以下がより好ましく、1.5/1以上2.5/1以下が更に好ましい。前記[NCO]/[OH]が5/1以下であると、低温定着性が良好であり、前記[NCO]のモル比が1/1以上であると、変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が高くなり、耐ホットオフセット性が良好である。
【0054】
前記末端にイソシアネート基を有するプレポリマー中の前記ポリイソシアネート構成成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上30質量%以下がより好ましく、2質量%以上20質量%以下が更に好ましい。前記末端にイソシアネート基を有するプレポリマー中の前記ポリイソシアネート構成成分の含有量が0.5質量%以上であると、耐ホットオフセット性が良好であり、かつ耐熱保存性と低温定着性との両立の面で有利であり、40質量%以下であると低温定着性が良好である。
【0055】
前記イソシアネート基を有するプレポリマーに前記アミン類を反応させて得られるウレア変性ポリエステル等の変性ポリエステルは、その高分子成分の分子量を調整しやすく、乾式トナー、特に、オイルレス低温定着特性(定着用加熱媒体への離型オイル塗布機構のない広範な離型性及び定着性)を確保するのに好都合である。特に、ポリエステルプレポリマーの末端をウレア変性したものは、未変性のポリエステル樹脂自体の定着温度域での高流動性及び透明性を維持したまま、定着用加熱媒体への接着性を抑制することができる。
【0056】
更に、必要に応じて、伸長停止剤を用いてポリエステルの分子量を調整することができる。前記伸長停止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、又はラウリルアミン等のモノアミン;前記モノアミンをブロックしたケチミン化合物等の化合物などが挙げられる。
【0057】
前記ウレア変性ポリエステル等の変性ポリエステルの重量平均分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3,000以上20,000以下が好ましい。前記ウレア変性ポリエステル等の変性ポリエステルの重量平均分子量が、3,000以上であると、反応速度の制御が容易であり、製造安定性の点で有利であり、また、前記重量平均分子量が20,000以下であると、十分な変性ポリエステルが得られ、耐オフセット性が良好である。
【0058】
-結晶性ポリエステル樹脂-
前記結晶性ポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)との重縮合により得ることができる。
【0059】
前記多価アルコール化合物(PO)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価アルコール(DIO)又は3価以上の多価アルコール(TO)などが挙げられ、(DIO)単独、又は(DIO)と少量の(TO)との混合物が好ましい。
【0060】
前記2価アルコール(DIO)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、又は1,12-デカンジオール等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレンエーテルグリコール等のアルキレンエーテルグリコール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、又は水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、又はビスフェノールS等のビスフェノール類;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、又はブチレンオキサイド等の上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド付加物;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、又はブチレンオキサイド等の上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0061】
前記3価以上の多価アルコール(TO)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、又はソルビトール等の3価~8価又はそれ以上の多価脂肪族アルコール;トリスフェノールPA、フェノールノボラック、又はクレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類;上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0062】
前記多価カルボン酸(PC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2価カルボン酸(DIC)又は3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、(DIC)単独、又は(DIC)と少量の(TC)との混合物が好ましい。
【0063】
前記2価カルボン酸(DIC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、アジピン酸、又はセバシン酸等のアルキレンジカルボン酸;マレイン酸、又はフマル酸等のアルケニレンジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、又はナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらの中でも、前記2価カルボン酸(DIC)としては、炭素数4~20のアルケニレンジカルボン酸又は炭素数8~20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
【0064】
前記3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメリット酸、又はピロメリット酸等の炭素数9~20の芳香族多価カルボン酸などが挙げられる。
なお、多価カルボン酸(PC)としては、メチルエステル、エチルエステル、又はイソプロピルエステル等の上述のものの酸無水物又は低級アルキルエステルを用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
【0065】
前記結着樹脂の重量平均分子量(Mw)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐熱保存性を維持し、かつ低温定着性を効果的に発揮し、更にプレポリマーによる変性後の耐オフセット性を付与することができる点で、前記結着樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分の重量平均分子量(Mw)が、1,000以上30,000以下であることが好ましい。前記結着樹脂のTHF可溶分の重量平均分子量(Mw)が、1,000以上であると、オリゴマー成分が適度であるため耐熱保存性が良好であり、30,000以下であると、立体障害によりプレポリマーによる変性が不十分とならず、耐オフセット性が良好である。
【0066】
本明細書において、前記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、GPC測定装置(GPC-8220GPC、東ソー株式会社製)によって測定される。40℃のヒートチャンバー中でカラム(TSKgel(登録商標) SuperHZM-H(東ソー株式会社製)、長さ:15cmのカラムを3連にして使用)を安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを0.35mL/分間の流速で流し、試料濃度として0.05質量%~0.6質量%に調製した樹脂のTHF試料溶液を100μL注入することにより測定する。
試料の分子量測定に当たっては、試料の有する分子量分布を、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical Co.製、東洋ソーダ工業株式会社製、又は昭和電工株式会社製の、分子量(Mp)が、6.87×10(Mn/Mw:1.09)、1.39×10(Mn/Mw:1.04)、2.77×10(Mn/Mw:1.04)、9.91×10(Mn/Mw:1.05)、2.0×10(Mn/Mw:1.03)、9.82×10(Mn/Mw:1.02)、6.02×10(Mn/Mw:1.02)、2.79×10(Mn/Mw:1.04)、及び5.8×10(Mn/Mw:1.18)である標準ポリスチレン試料を用い、少なくとも9点程度の標準ポリスチレン試料から作成した分子量校正曲線を使用して、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を算出する。また、検出器には屈折率検出器を用いる。
【0067】
<離型剤>
前記離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、融点が50℃以上120℃以下の低融点の離型剤が好ましい。このような低融点の離型剤は、前記結着樹脂との分散の中において、該離型剤として効果的に定着ローラと前記静電潜像現像用トナー界面との間で働くことができ、これにより定着ローラにオイルの様に離型剤を塗布することなく耐ホットオフセット性に対して効果を示すことができる。
前記離型剤の融点は、示差走査熱量計(TG-DSCシステムTAS-100、理学電機株式会社製)を使用し、最大吸熱ピークを測定することにより求めることができる。
【0068】
このような離型剤としては、ロウ類、ワックス類などが挙げられ、その具体例としては、カルナウバワックス、綿ロウ、木ロウ、又はライスワックス等の植物系ワックス;ミツロウ、又はラノリン等の動物系ワックス;オゾケライト、又はセルシン等の鉱物系ワックス;パラフィン、マイクロクリスタリン、又はペトロラタム等の石油ワックスなどが挙げられる。また、これらの天然ワックスの他に、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素ワックス;エステル、ケトン、又はエーテル等の合成ワックスなども使用できる。更に、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、又は塩素化炭化水素等の脂肪酸アミド;低分子量の結晶性高分子樹脂である、ポリn-ステアリルメタクリレート、又はポリn-ラウリルメタクリレート等のポリアクリレートのホモ重合体又は共重合体(例えば、n-ステアリルアクリレート-エチルメタクリレートの共重合体等)などの、側鎖に長いアルキル基を有する結晶性高分子も用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
前記離型剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナーの全量に対して、2質量%以上15質量%以下が好ましい。前記離型剤の含有量が、2質量%以上であると、オフセット防止効果が良好であり、15質量%以下であると転写性及び耐久性が良好である。
【0070】
<着色剤>
前記着色剤としては、特に制限はなく、公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン、又はこれらの着色剤の混合物などを使用することができる。
【0071】
前記着色剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナーの全量に対して、1質量%以上15質量%以下が好ましく、3質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0072】
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。前記マスターバッチの製造又はマスターバッチと共に混練される結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述の変性ポリエステル樹脂及び未変性ポリエステル樹脂の他に、ポリスチレン、ポリp-クロロスチレン、又はポリビニルトルエン等のスチレン又はスチレン置換体の重合体;スチレン-p-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタリン共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸ブチル共重合体、スチレン-アクリル酸オクチル共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、又はスチレン-マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、又はパラフィンワックスなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
前記マスターバッチは、マスターバッチ用の樹脂及び着色剤を、3本ロールミル等のせん断分散装置によって混合及び混練することにより得ることができる。この際、前記着色剤及び前記樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。また、いわゆるフラッシング法は、着色剤を含んだ水性ペーストを樹脂及び有機溶剤と共に混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法である。このフラッシング法では、着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため、乾燥する工程が必要なく、本実施形態において好ましく用いられる。
【0074】
<粒子>
前記粒子は、1価以上のイオン価数を取り得る金属粒子及びハロゲン粒子から選択される少なくともいずれかであり、帯電制御剤として機能する性質を有する。
前記トナーは、前記粒子を含有し、かつ前述のトナー表面における粒子の存在面積(Xμm)及びトナー表面における粒子の減弱率を満たすことにより、前記粒子が、前記トナー表面に適切な厚みで均一に存在していることが保証され、低温定着性、耐ホットオフセット性、耐熱保存性、及び帯電性等の諸特性が良好であり、かつトナー飛散の発生が少なく、実使用上の安定性が良好なトナーとすることができる。
【0075】
前記粒子は、1価以上のイオン価数を取り得る金属粒子及びハロゲン粒子から選択される少なくともいずれかであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、チタン、亜鉛等の金属粒子;フッ素元素を含有するフッ化物等のハロゲン粒子などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記粒子は、帯電立ち上がり性に優れており、トナー飛散の改善に大きな効果があることから、フッ素元素を含有するフッ化物であることが好ましく、フッ素系界面活性剤がより好ましく、カチオン性フッ素系界面活性剤が特に好ましい。
【0076】
前記フッ素系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3-[オメガ-フルオロアルキル(C6~C11)オキシ]-1-アルキル(C3又はC4)スルホン酸ナトリウム、3-[オメガ-フルオロアルカノイル(C6~C8)-N-エチルアミノ]-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11~C20)カルボン酸及び金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7~C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4~C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N-プロピル-N-(2-ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6~C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6~C10)-N-エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6~C16)エチルリン酸エステル、フルオロアルキル基を有する脂肪族一級アミン、フルオロアルキル基を有する脂肪族二級アミン、フルオロアルキル基を有する脂肪族三級アミン、パーフルオロアルキル(C6~C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、又はイミダゾリニウム塩などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
前記フッ素系界面活性剤は、適宜合成したものを使用してもよく、市販品を使用してもよい。前記フッ素系界面活性剤の市販品としては、商品名で、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121(以上、AGCセイケミカル株式会社製)、フロラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135(以上、住友3M株式会社製)、ユニダインDS-101、DS-102、DS-202(以上、ダイキン工業株式会社製)、メガファックF-110、F-120、F-113、F-410、F-150、F-191、F-812、F-824、F-833(以上、DIC株式会社製)、エフトップEF-102、EF-103、EF-104、EF-105、EF-112、EF-123A、EF-123B、EF-132、EF-306A、EF-501、EF-201、EF-204(以上、三菱マテリアル電子化成株式会社製)、フタージェントF-100、F-150、F-300(以上、ネオス株式会社製)などが挙げられる。
【0078】
前記粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.0001μm~0.0030μmが好ましく、0.0001μm~0.0015μmがより好ましい。
【0079】
<その他の成分>
前記トナーは、前記結着樹脂、前記離型剤、前記着色剤、及び前記粒子以外のその他の成分を含んでいてもよい。
前記その他の成分としては、通常トナーに用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面活性剤、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料、樹脂微粒子、分散剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記トナーは、界面活性剤及び外添剤を含有することが好ましい。
前記トナーにおける前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0080】
<<界面活性剤>>
前記界面活性剤は、前記ポリエステルプレポリマーなどを含む有機溶媒相を、乳化又は分散するための分散剤として含有されることが好ましい。
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、長鎖炭化水素基を有し、かつ親水性官能基を有するアニオン性界面活性剤が好ましい。
このようなアニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、又はリン酸エステル等のアニオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
前記炭化水素基は、前記界面活性剤の分子構造中に含まれている疎水性の部分を構成し、例えば、水酸基に対する主鎖の炭素数が10以上の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩などが挙げられる。
前記炭化水素基の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1以上4以下が好ましく、1以上2以下がより好ましい。
前記炭化水素基の数は、液体クロマトグラフ質量分析計(例えば、LCMS-8030、株式会社島津製作所製)により分析することができる。
【0082】
前記親水性官能基は、前記界面活性剤の分子構造中に含まれている親水性の部分を示し、例えば、スルホ基などが挙げられる。
前記親水性官能基の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1以上4以下が好ましく、3以上4以下がより好ましい。
前記親水性官能基の数は、液体クロマトグラフ質量分析計(例えば、LCMS-8030、株式会社島津製作所製)により分析することができる。
【0083】
前記トナーにおいて、前記界面活性剤は、トナー表面に含有されることが好ましい。
前記トナー表面における長鎖炭化水素基を有し、かつ2個以上の親水性官能基を有するアニオン性界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、トナー表面に有する前記アニオン性界面活性剤の全量に対して、80質量%~100質量%が好ましく、90質量%~100質量%がより好ましい。前記トナー表面における長鎖炭化水素基を有し、かつ2個以上の親水性官能基を有するアニオン性界面活性剤の含有量が、80質量%以上であると、トナー飛散の発生が少なく、100質量%以下であると、低温定着性、耐ホットオフセット性、耐熱保存性、及び帯電性等の諸特性が良好であり、かつトナー飛散の発生が少ない。
【0084】
<<外添剤>>
前記外添剤は、前記トナーの流動性、現像性、及び帯電性を補助するために含有されることが好ましい。
前記外添剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、無機微粒子が好ましい。
【0085】
前記無機微粒子の一次粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm以上2μm以下であることが好ましく、5nm以上500nm以下であることがより好ましい。
【0086】
前記無機微粒子のBET法による比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20m/g以上500m/g以下であることが好ましい。
【0087】
前記無機微粒子の使用割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー全量に対して、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0088】
前記無機微粒子の具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、又は窒化ケイ素などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、前記無機粒子は、流動性の付与の点から、疎水性シリカ微粒子と、疎水性酸化チタン微粒子とを併用することが好ましい。特に、疎水性シリカ微粒子と、疎水性酸化チタン微粒子とを併用する場合、両微粒子の体積平均粒径が50mμ以下のものを使用して攪拌混合を行った場合、トナーとの静電力及びファンデルワールス力は格段に向上する。これにより、所望の帯電レベルを得るために行なわれる現像機内部の攪拌混合によっても、前記トナーから前記流動性付与剤が脱離することなく、良好な画像品質が得ることができるようになり、更に、転写残トナーの低減を図ることができる。
【0089】
前記外添剤として添加される前記酸化チタン微粒子は、環境安定性及び画像濃度安定性に優れている反面、帯電立ち上がり特性の悪化傾向を示すという負の面も持っている。前記酸化チタン微粒子の添加量が、前記シリカ微粒子の添加量よりも多くなると、上述の副作用の影響が大きくなることが考えられる。しかし、前記疎水性シリカ微粒子及び前記疎水性酸化チタン微粒子のそれぞれの添加量が、0.3質量%以上1.5質量%以下の範囲では、帯電立ち上がり特性が大きく損なわれず、所望な帯電立ち上がり特性が得られる。即ち、前記トナーによる印刷を繰り返し行っても、安定した画像品質が得ることができる点で好ましい。
【0090】
<<流動性向上剤>>
前記流動性向上剤はとして、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、又は変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
前記シリカ、前記酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理を行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0091】
<<クリーニング性向上剤>>
前記クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために前記トナーに添加されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、又はステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、又はポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子などが挙げられる。
前記ポリマー微粒子としては、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm~1μmのものが好適である。
【0092】
<<磁性材料>>
前記磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト粉、フェライト粉などが挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0093】
<<樹脂微粒子>>
前記樹脂微粒子としては、水系媒体中で水性分散液を形成し得る樹脂であれば、特に制限はなく、公知の樹脂の中から目的に応じて適宜選択することができ、熱可塑性樹脂であってもよいし、熱硬化性樹脂でもよい。
【0094】
前記樹脂微粒子の具体例としては、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、又はポリカーボネート樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、微細な球状の樹脂粒子の水性分散液が得られやすい点で、ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びポリエステル樹脂から選択される少なくとも1種で形成されていることが好ましい。
【0095】
前記ビニル樹脂は、ビニルモノマーを単独重合又は共重合したポリマーであり、例えば、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸-アクリル酸エステル重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、又はスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0096】
また、前記樹脂微粒子としては、少なくとも2つの不飽和基を有する単量体を含んでなる共重合体を用いることもできる。前記少なくとも2つの不飽和基を持つ単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(「エレミノールRS-30」;三洋化成工業製)、ジビニルベンゼン、又は1,6-ヘキサンジオールアクリレートなどが挙げられる。
【0097】
前記樹脂微粒子は、目的に応じて適宜選択した公知の方法に従って重合させることにより得ることができるが、該樹脂微粒子の水性分散液として得ることが好ましい。
【0098】
前記樹脂微粒子の水性分散液の調製方法としては、例えば、下記(1)~(8)の方法などが挙げられる。
(1)前記ビニル樹脂の場合、ビニルモノマーを出発原料として、懸濁重合法、乳化重合法、シード重合法、及び分散重合法から選択されるいずれかの重合反応により、直接、樹脂微粒子の水性分散液を製造する方法。
(2)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、又はエポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー又はオリゴマー等)又はその溶剤溶液を適当な分散剤の存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱、又は硬化剤を添加して硬化させて、樹脂微粒子の水性分散体を製造する方法。
(3)前記ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、又はエポキシ樹脂等の重付加乃至縮合系樹脂の場合、前駆体(モノマー又はオリゴマー等)又はその溶剤溶液(液体であることが好ましい。加熱により液状化してもよい)中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法。
(4)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、又は縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を機械回転式又はジェット式等の微粉砕機を用いて粉砕し、次いで、分級することによって樹脂微粒子を得た後、適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法。
(5)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、又は縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を霧状に噴霧することにより樹脂微粒子を得た後、該樹脂微粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法。
(6)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、又は縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液に貧溶剤を添加するか、又は予め溶剤に加熱溶解した樹脂溶液を冷却することにより樹脂微粒子を析出させ、次に溶剤を除去して樹脂粒子を得た後、該樹脂粒子を適当な分散剤存在下、水中に分散させる方法。
(7)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、まあは縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液を、適当な分散剤存在下、水性媒体中に分散させた後、加熱又は減圧等によって溶剤を除去する方法。
(8)予め重合反応(付加重合、開環重合、重付加、付加縮合、又は縮合重合等いずれの重合反応様式であってもよい)により調製した樹脂を溶剤に溶解した樹脂溶液中に適当な乳化剤を溶解させた後、水を加えて転相乳化する方法。
【0099】
<<分散剤>>
前記トナーは、前記界面活性剤以外の分散剤を含有していてもよい。前記界面活性剤以外の分散剤としては、例えば、水に難溶の無機化合物分散剤として、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、又はヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させてもよく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-シアノアクリル酸、α-シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、又は無水マレイン酸等の酸類;アクリル酸β-ヒドロキシエチル、メタクリル酸β-ヒドロキシエチル、アクリル酸β-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸β-ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ-ヒドロキシプロピル、アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N-メチローラアクリルアミド、又はN-メチローラメタクリルアミド等の水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、又はビニルプロピルエーテル等のビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、又は酪酸ビニル等のビニルアルコール及びカルボキシル基を含有する化合物のエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、又はこれらのメチローラ化合物;アクリル酸クロライド、又はメタクリル酸クロライド等の酸クロライド類;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、又はエチレンイミン等の窒素原子又はその複素環を有するものなどのホモポリマー又は共重合体;ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、又はポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等のポリオキシエチレン系;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、又はヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
前記トナーの製造方法としては、特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができるが、懸濁重合法、乳化重合凝集法、又はポリマー溶解懸濁法などの水系媒体中でトナーを製造する方法が好ましく、後述する本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法が、特に好ましい。
【0101】
(静電潜像現像用トナーの製造方法)
本発明の静電潜像現像用トナーの製造方法(以下、単に「トナーの製造方法」と称することがある)は、前述の静電潜像現像用トナーを製造する方法である。
前記トナーの製造方法は、油相調製工程と、水相調製工程と、乳化乃至分散工程と、架橋反応及び/又は伸長反応工程と、脱溶媒工程と、を含み、更に必要に応じて、洗浄工程、乾燥工程などのその他の工程を含む。
【0102】
前記トナーは、以下の方法で製造することができるが、この製造方法は、湿式製造法の一例であり、本発明のトナーの製造方法は、これに限定されることはなく、他の湿式製造法や、粉砕法などの乾式製造方法によっても製造することができるが、下記製造方法は、シャープな粒度分布の実現、伸長又は架橋する成分の導入による保存性の向上が実現できる点で好ましい。
【0103】
<油相調製工程>
前記油相調製工程は、有機溶媒中に、結着樹脂前駆体、前記離型剤、及び前記着色剤を溶解させて油相を調製する工程である。
具体的には、有機溶媒中に、前記トナー原料である前記着色剤、前記離型剤、前記結着樹脂の前駆体(ポリエステルプレポリマー)、及び前記ポリエステルプレポリマーと伸長又は架橋する化合物(前記アミン類、及び前記第3級アミン化合物など)を加えた油相を作製する。
【0104】
前記有機溶媒としては、前記トナー原料を溶解乃至分散可能な溶媒であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、除去の容易性の点で沸点が150℃未満の揮発性のものが好ましく、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、又はメチルイソブチルケトンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0105】
前記有機溶媒の使用量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記トナー原料100質量部に対し、40質量部~300質量部が好ましく、60質量部~140質量部がより好ましく、80質量部~120質量部が更に好ましい。
【0106】
<水相調製工程>
前記水相調製工程は、水系媒体に、前記樹脂微粒子を分散、好ましくは更に前記界面活性剤を分散又は溶解させた水相を調製する工程である。
【0107】
前記水系媒体としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、水、該水と混和可能な溶剤、又はこれらの混合物などが挙げられる。
前記水と混和可能な溶剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、アルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類、又は低級ケトン類などが挙げられる。
前記アルコールとしては、例えば、メタノール、イソプロパノール、又はエチレングリコール等が挙げられる。
前記低級ケトン類としては、例えば、アセトン、又はメチルエチルケトンなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0108】
前記樹脂微粒子の前記水系媒体中の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5質量%~10質量%が好ましい。
【0109】
前記界面活性剤の前記水系媒体中の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%~30質量%が好ましく、10質量%~25質量%がより好ましい。
【0110】
<乳化乃至分散工程>
前記乳化乃至分散工程は、前記油相を前記水相中に分散又は乳化させる工程である。
前記水系媒体相で前記ポリエステルプレポリマーからなる分散体を安定して形成させる方法としては、前記水系媒体相に有機溶媒に溶解又は分散させたポリエステルプレポリマーからなるトナー原料を加えて、せん断力により分散させる方法などが挙げられる。
【0111】
前記有機溶媒に溶解又は分散させたポリエステルプレポリマーと、他のトナー原料である着色剤、離型剤などは、水系媒体相で分散体を形成させる際に混合してもよいが、あらかじめトナー原料を混合後、有機溶媒に溶解又は分散させた後、水系媒体相にその混合物を加えて分散させたることがより好ましい。また、着色剤、離型剤などのトナー原料は、必ずしも、水系媒体相で粒子を形成させる時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後、添加してもよい。例えば、着色剤を含まない粒子を形成させた後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
【0112】
トナー原料を含む有機溶媒の分散の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、又は超音波等の公知の設備を適用することができる。これらの中でも、前記分散体の体積平均粒径を2μm以上20μm以下にすることができる高速せん断式が好ましい。
【0113】
高速せん断式分散機を使用した場合の回転数としては、特に限定はないが、1,000rpm以上30,000rpm以下が好ましく、5,000rpm以上20,000rpm以下がより好ましい。
【0114】
前記分散時間としては、特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1分間以上5分間以下である。
【0115】
前記分散時の温度としては、特に限定はないが、0℃以上150℃以下(加圧下)が好ましく、40℃以上98℃以下がより好ましい。前記分散時の温度が高温の方が、前記ポリエステルプレポリマーからなる分散体の粘度が低く、分散が容易な点で好ましい。
【0116】
前記ポリエステルプレポリマーの有機溶媒相に含まれる固形成分100質量部に対する水系媒体の使用量としては、特に制限はないが、50質量部以上2,000質量部以下が好ましく、100質量部以上1,000質量部以下がより好ましい。前記ポリエステルプレポリマーの有機溶媒相に含まれる固形成分100質量部に対する水系媒体の使用量が50質量部以上であると、トナー組成物の分散状態が良好であり、所定の粒径のトナー粒子が得られやすく、2,000質量部以下であると、処理水量の点で経済的である。また、必要に応じて、分散剤を用いることもできる。分散剤を用いたほうが、粒度分布がシャープになると共に分散が安定である点で好ましい。
【0117】
<架橋反応及び/又は伸長反応工程>
前記架橋反応及び/又は伸長反応工程は、前記水系媒体中でポリマーの伸長及び/又は架橋反応させ、ウレア変性ポリエステルを形成する工程である。これにより、前記水系媒体中にトナー母体粒子が形成される。
【0118】
前記ポリエステルプレポリマーの伸長及び/又は架橋反応時間としては、特に制限はなく、ポリエステルプレポリマーの有するイソシアネート基構造及びアミン類の組合せによる反応性により適宜選択されるが、10分間以上40時間以下が好ましく、2時間以上24時間以下がより好ましい。
【0119】
前記ポリエステルプレポリマーの伸長及び/又は架橋反応温度としては、特に制限はないが、0℃以上150℃以下が好ましく、40℃以上98℃以下がより好ましい。
【0120】
また、前記ポリエステルプレポリマーの伸長及び/又は架橋反応の際、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。前記触媒の具体例としては、ジブチルチンラウレート、又はジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0121】
<脱溶媒工程>
前記脱溶媒工程は、前記乳化分散液中で前記結着樹脂前駆体を架橋反応及び/又は伸長反応させた反応液から、有機溶媒を除去する工程である。
【0122】
得られた乳化分散体から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を完全に蒸発除去する方法を採用することができる。このとき、系内を層流の攪拌状態とし、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子を作製することができる。また、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状からラクビーボール状の間の形状を制御することができる。また、表面のモルフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
【0123】
分散安定剤として、リン酸カルシウム塩等の酸及びアルカリに溶解可能な化合物を用いた場合は、塩酸等の酸によりリン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、前記トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去することができる。また、酵素による分解などの操作によっても、同様にリン酸カルシウムを除去することができる。
【0124】
得られたトナー母体粒子は、必要に応じて分級操作を行い、所望の粒度分布に整えることができる。分級操作は液中で、サイクロン、デカンター、又は遠心分離などにより、微粒子部分を取り除くことができる。もちろん乾燥後に粉体として取得した後に分級操作を行ってもよいが、液体中で行うことが効率の面で好ましい。
【0125】
<洗浄工程>
前記洗浄工程は、前記脱溶媒工程で得られた架橋反応及び/又は伸長反応物(トナー母体粒子)を洗浄する工程である。
洗浄方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0126】
前記トナー原料としての前記粒子(帯電制御剤)は、洗浄工程の最終段階で添加されることが、前記トナー表面における粒子の存在面積(Xμm)及びトナー表面における粒子の減弱率を満たすことができる点で好ましい。
【0127】
<乾燥工程>
前記乾燥工程としては、前記洗浄後のトナー母体粒子を乾燥させて、静電潜像現像用トナーを得る工程である。
前記乾燥を行う方法としては、特に制限はなく、公知の乾燥機等を用いて行うことができる。
【0128】
(現像剤)
本発明の現像剤は、少なくとも本発明の静電潜像現像用トナーを含み、必要に応じて磁性キャリア等の適宜選択されるその他の成分を含む。
前記現像剤は、一成分現像剤であってもよく、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命が向上することから、二成分現像剤が好ましい。
【0129】
<磁性キャリア>
前記磁性キャリアとしては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができるが、芯材と、芯材を被覆する樹脂層を有するものが好ましい。
【0130】
-芯材-
前記芯材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉など従来から公知のものが使用できる。
【0131】
前記芯材の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20μm以上200μm以下が好ましい。
【0132】
-樹脂層-
前記樹脂層に用いられる材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、尿素-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、又はエポキシ樹脂等のアミノ系樹脂;アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、又はポリスチレン樹脂等のポリビニル系樹脂又はポリビニリデン系樹脂;スチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、フッ化ビニリデン及びアクリル単量体の共重合体、フッ化ビニリデン又はフッ化ビニルの共重合体、又はテトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー;又はシリコーン樹脂などが挙げられる。
【0133】
また、必要に応じて、導電粉などを前記被覆樹脂中に含有させてもよい。
前記導電粉としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、又は酸化亜鉛などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以下を併用してもよい。
【0134】
前記導電粉の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以下のものが好ましい。前記導電粉の体積平均粒径が1μm以下であると、電気抵抗の制御の点で良好である。
【0135】
前記現像剤は、前記トナーと、前記磁性キャリアを混合して用いることができ、前記現像剤中の前記磁性キャリアと前記トナーとの含有比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記キャリア100質量部に対して、前記トナー1質量部以上10質量部以下が好ましい。
【実施例0136】
以下に合成例、実施例、及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの合成例及び実施例に何ら限定されるものではない。
【0137】
以下の合成例において、結晶性ポリエステル樹脂、非結晶ポリエステル樹脂、ポリエステルプレポリマー等の各樹脂における、酸価、水酸基価、及び重量平均分子量(Mw)は、以下のようにして測定した。
【0138】
<<酸価の測定>>
酸化は、JIS K0070-1992に記載の測定方法に準拠して以下の条件で測定を行った。
まず、試料(前記各樹脂)0.5g(酢酸エチル可溶分では0.3g)をトルエン120mLに添加して、室温(23℃)で約10時間撹拌して溶解した。更に、エタノール30mLを添加して試料溶液とした。
電位差自動滴定装置(DL-53 Titrator、メトラー・トレド社製)及び電極DG113-SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23℃にて前記試料溶液の酸価を測定し、解析ソフトLabX Light Version 1.00.000を用いて解析した。なお、装置には、トルエン120mLとエタノール30mLとの混合溶媒を用いた。
測定は、前記測定方法にて実施することができるが、酸価は、具体的には次のように計算した。予め、標定された0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液で滴定し、滴定量から、下記式により酸価を求めた。
酸価[mgKOH/g]=滴定量[mL]×N×56.1[mg/mL]/試料質量[g]
(ただし、前記式において、「N」は、0.1N水酸化カリウム/アルコール溶液のファクターを示す。)
【0139】
<<水酸基価の測定>>
水酸基価は、JIS K0070-1966に記載の測定方法に準拠して以下の条件で測定を行った。
まず、試料(前記各樹脂)0.5gを100mLのメスフラスコに精秤し、これにアセチル化試薬5mLを正確に加えた。その後、100℃±5℃の浴中に浸して加熱した。1時間後~2時間後に前記メスフラスコを浴から取り出し、放冷後水を加えて振り動かして無水酢酸を分解した。次いで、分解を完全にするため、再びフラスコを浴中で10分間以上加熱し放冷後、有機溶媒でフラスコの壁をよく洗浄して試料溶液とした。
電位差自動滴定装置(DL-53 Titrator、メトラー・トレド社製)及び電極DG113-SC(メトラー・トレド社製)を用いて、23℃にて、N/2水酸化カリウムエチルアルコール溶液で前記試料溶液の電位差滴定を行い、水酸基価を測定し、解析ソフトLabX Light Version 1.00.000を用いて解析した。なお、装置には、トルエン120mLとエタノール30mLとの混合溶媒を用いた。
【0140】
<<重量平均分子量(Mw)の測定>>
重量平均分子量(Mw)、以下の方法で測定した。
・ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置:GPC-8220GPC(東ソー株式会社製)
・カラム:TSKgel(登録商標) SuperHZM-H(粒径:3μm、内径:6μm、長さ:15cm、3連)(東ソー株式会社製)
・温度:40℃
・溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
・流速:0.35mL/分間
・試料の前処理:試料をテトラヒドロフラン(THF、安定剤含有、富士フイルム和光純薬株式会社製)に0.15質量%で溶解後、0.2μmフィルターで濾過し、その濾過を試料として用いた。
前処理後のテトラヒドロフラン試料溶液(0.15質量%)を100μL注入して測定した。
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定に当たっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出した。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、昭和電工株式会社製のShowdex(登録商標)STANDARDのStd.No S-6870、S-136、S-277、S-991、S-2000、S-9.8、S-602、S-2.8、S-0.6、及びトルエンを用いた。
検出器にはRI(屈折率)検出器を用いた。
【0141】
(合成例A-1:結晶性ポリエステル樹脂(1)の合成)
窒素導入管、脱水管、攪拌器、及び熱伝対を装備した5リットルの四つ口フラスコに、1,12-デカンジオール2,500質量部、1,8-オクタン二酸2,330質量部、及びハイドロキノン4.9質量部を入れ、180℃で20時間反応させた後、200℃に昇温して6時間反応させ、更に8.3kPaにて10時間反応させて、[結晶性ポリエステル樹脂(1)]を合成した。
得られた[結晶性ポリエステル樹脂(1)]の融点は64℃、重量平均分子量(Mw)は5,720、酸価は28mgKOH/gであった。
【0142】
(合成例B-1:ワックス分散剤(1)の合成)
温度計及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン600質量部及び低分子量ポリエチレン(サンワックスLEL-400、軟化点128℃、三洋化成工業株式会社製)300質量部を入れ、充分溶解し、窒素置換後、スチレン2,310質量部、アクリロニトリル270質量部、アクリル酸ブチル150質量部、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート78質量部、及びキシレン455質量部の混合溶液を175℃で3時間かけて滴下して重合し、更にこの温度で30分間保持し、[ワックス分散剤(1)]を合成した。
【0143】
(合成例C-1:非結晶性ポリエステル(低分子ポリエステル)樹脂(1)の合成)
冷却管、攪拌機、及び窒素導入管の付いた反応槽中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物90質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物209質量部、テレフタル酸208質量部、アジピン酸46質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を投入し、常圧下、230℃で12時間反応させた。次いで、該反応液を10mmHg~15mmHgの減圧下にて5時間反応させた後、反応容器中に無水トリメリット酸25質量部を添加し、常圧下、180℃にて2時間反応させて、[非結晶性ポリエステル(1)]を合成した。
得られた[非結晶性ポリエステル(1)]の水酸基価は15mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は10,000、酸価は5mgKOH/gであった。
【0144】
(合成例D-1:ポリエステルプレポリマー(1)の合成)
冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682質量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物質量81部、テレフタル酸283質量部、無水トリメリット酸22質量部、及びジブチルチンオキサイド2質量部を入れ、常圧下、230℃で8時間反応させた。更に、10mmHg~15mmHgの減圧下、5時間反応させて[中間体ポリエステル]を合成した。
次に、冷却管、撹拌機、及び窒素導入管の付いた反応容器中に、前記合成した[中間体ポリエステル]410質量部、イソホロンジイソシアネート89質量部、及び酢酸エチル500質量部を入れ、100℃で5時間反応させて、[ポリエステルプレポリマー(1)]を合成した。
得られた[ポリエステルプレポリマー(1)]の遊離イソシアネート含有量は、1.53質量%であった。
【0145】
(合成例E-1:界面活性剤(1)の合成)
冷却管、攪拌機、及びガス導入管を備えた反応槽中に、ウンデカン(東京化成工業株式会社製)を1,000質量部投入し、ガス導入管から塩素ガスを導入しながら、100℃~120℃で液相塩素化反応を行った。上記塩化水素を除いた塩素化生成物にジフェニルエーテル(富士フイルム和光純薬株式会社製)を1,684質量部投入し、また塩化アルミニウム含量27質量%のアルキル化触媒を101質量部投入し、100℃で約60分間アルキル化反応を行った。上記アルキル化反応生成物を静置し、触媒の分離を行い、蒸留操作によって未反応成分を除去することによって、[アルキル化反応生成物(1)]を得た。上記[アルキル化反応生成物(1)]を、発煙硫酸を用いて60分間スルホン化を行い、水酸化ナトリウムで中和処理をすることによって[界面活性剤(1)]としてのアルキルベンゼンスルホン酸塩を得た。
【0146】
[界面活性剤(1)]について、以下の分析条件でLCMS分析を実施し、長鎖炭化水素基及び親水性官能基の数を求めた。その結果、[界面活性剤(1)]の長鎖炭化水素基は3個であり、親水性官能基は2個であった。
[LCMS分析条件]
・測定装置:LCMS-8030(株式会社島津製作所製)
・カラム:InertSustain(登録商標)Swift C18(粒径:2μm、内径:2.1μm、長さ:100μm、ジーエルサイエンス株式会社製)
・移動相:A溶液:0.5体積%酢酸アンモニウム水溶液/メタノール=80%/20%(v/v)
B溶液:メタノール
・グラジエントプログラム:A/B=0%/100%(v/v)→A/B=100%/0%(v/v)(10分間、5分間保持)→A/B=0%/100%(v/v)(15分間、5分間保持)
・流速:0.3mL/min
・注入量:0.2μL
【0147】
(合成例E-2:界面活性剤(2)の合成)
合成例E-1において、スルホン化の時間を、60分間から100分間に変更したこと以外は、合成例E-1と同様の方法で[界面活性剤(2)]を得た。[界面活性剤(1)]と同様の方法で測定した、[界面活性剤(2)]の長鎖炭化水素基は1個であり、親水性官能基は4個であった。
【0148】
(合成例E-3:界面活性剤(3)の合成)
合成例E-1において、スルホン化の時間を、60分間から80分間に変更したこと以外は、合成例E-1と同様の方法で[界面活性剤(3)]を得た。[界面活性剤(1)]と同様の方法で測定した、[界面活性剤(3)]の長鎖炭化水素基は2個であり、親水性官能基は3個であった。
【0149】
(合成例E-4:界面活性剤(4)の合成)
合成例E-1において、スルホン化の時間を、60分間から30分間に変更したこと以外は、合成例E-1と同様の方法で[界面活性剤(4)]を得た。[界面活性剤(1)]と同様の方法で測定した、[界面活性剤(4)]の長鎖炭化水素基は4個であり、親水性官能基は1個であった。
【0150】
(実施例1)
<トナーの作製>
-顔料・ワックス分散液の作製-
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、前記合成した[非結晶性ポリエステル(1)]723質量部、カルナウバワックス(WA-05、株式会社セラリカNODA製)110質量部、前記合成した[ワックス分散剤(1)]77質量部(ワックス分散剤の含有量はワックスに対し70質量%)、及び酢酸エチル947質量部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時問で30℃に冷却した。
次いで、容器内に、カーボンブラック(Printex35、デクサ社製)155質量部、及び酢酸エチル500質量部を仕込み、1時間混合し、原料溶解液を得た。
得られた原料溶解液1,324質量部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/時間、ディスク周速度6m/秒間、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック及びワックスの分散を行った。
次いで、前記合成した[非結晶性ポリエステル(1)]の65質量%酢酸エチル溶液1,042.3質量部を添加し、上記条件のビーズミルで1パスし、[顔料・ワックス分散液]を得た。
得られた[顔料・ワックス分散液]の固形分濃度は50質量%であった。
【0151】
-非結晶性ポリエステル樹脂(1)溶解液の作成-
金属製2L容器に、前記合成した[非結晶性ポリエステル(1)]100質量部、及び酢酸エチル400質量部を入れ、40℃で加熱溶解させた後、氷水浴中で冷却をし、[非結晶性ポリエステル樹脂(1)溶解液]を調製した。
【0152】
-油相の調製-
前記調製した[顔料・ワックス分散液]664質量部(ワックスのトナーにおける含有量4質量%)、前記合成した[ポリエステルプレポリマー(1)]73質量部、前記合成した[結晶性ポリエステル樹脂(1)溶解液]19質量部、前記合成した[非結晶性ポリエステル樹脂(1)溶解液]150質量部、及び5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン(シグマアルドリッチジャパン株式会社製)7.8質量部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、5,000rpmで1分間混合し、[油相]とした。
【0153】
-微粒子分散液(1)(有機微粒子エマルション)の合成-
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器内に、水683質量部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS-30、三洋化成工業株式会社製)11質量部、スチレン138質量部、メタクリル酸138質量部、及び過硫酸アンモニウム1質量部を仕込み、400回転/分間で15分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。
得られた乳濁液を加熱して、系内温度75℃まで昇温し、5時間反応させた。
更に、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液30質量部を添加し、75℃で5時間熟成させてビニル系樹脂(スチレン-メタクリル酸-メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液の[微粒子分散液(1)]を得た。[微粒子分散液(1)]中の樹脂微粒子の割合は20質量%であり、体積平均粒径は0.1μmであった。
【0154】
-水相の調製-
水884.0質量部、前記合成した[微粒子分散液(1)]16.0質量部、前記合成した[界面活性剤(1)]210.0質量部、及び酢酸エチル90.0質量部を混合し、乳白色の液体を得た。これを[水相]とした。
【0155】
-乳化及び脱溶媒-
次に、容器内に前記調製した[油相]800質量部、及び前記調製した[水相]1,200質量部を入れ、TKホモミキサーを用いて、18,000rpmで20分間混合し、乳化スラリーを得た。
得られた乳化スラリー2,050質量部に対しイオン交換水410質量部を添加したものを、撹拌機、及び温度計をセットした容器に投入し、30℃で8時間脱溶媒した後、45℃で4時間熟成させて、[分散スラリー]を得た。得られた[分散スラリー]の体積平均粒径は5.2μmであった。
【0156】
-洗浄及び乾燥-
得られた[分散スラリー]100質量部を減圧濾過した後、
(1)濾過ケーキにイオン交換水100質量部を添加し、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。
(2)前記(1)で得られた濾過ケーキに、10質量%水酸化ナトリウム水溶液100質量部を添加し、TKホモミキサーを用いて、12,000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した。
(3)前記(2)で得られた濾過ケーキに、10質量%塩酸100質量部を添加し、TKホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合した後、濾過した。
(4)前記(3)で得られた濾過ケーキに、イオン交換水100質量部を添加し、TK式ホモミキサーを用いて、12,000rpmで10分間混合し、トナー分散液を得た。
【0157】
カチオン性フッ素系界面活性剤(メガファックF-410、DIC株式会社製)をイオン交換水に溶解させ、濃度1質量%のカチオン性フッ素系界面活性剤溶液を作製した。
次いで、前記トナー分散液に、トナー固形分量に対して0.9質量%の前記カチオン性フッ素系界面活性剤を添加し、TK式ホモミキサーを用いて5,000rpmで混合した後濾過操作を行い、濾過ケーキを得た。
得られた濾過ケーキを、循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥させ、目開き75μmメッシュで篩い、[トナー母体粒子1]を作製した。
【0158】
-外添処理-
得られた[トナー母体粒子1]100質量部に、外添剤として疎水性シリカ(HDK(登録商標)H2000、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製)0.7質量部、及び疎水化酸化チタン(JMT-150IB、テイカ株式会社製)0.3質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(三井鉱山株式会社製)を用いて混合し、外添処理して、実施例1の[トナー1]を作製した。
【0159】
(実施例2)
<トナーの作製>
実施例1のトナーの作製において、「-水相の調製-」の工程における[界面活性剤(1)]を[界面活性剤(2)]に変更したこと、「-乳化及び脱溶媒-」の工程におけるTKホモミキサーの回転数を18,000rpmから8,000rpmに変更したこと、「-洗浄及び乾燥-」の工程におけるトナー固形分量に対するカチオン性フッ素系界面活性剤の添加量を0.9質量%から0.3質量%に変更したこと以外は、実施例1のトナーの作製と同様にして、実施例2の[トナー2]を作製した。
【0160】
(実施例3)
<トナーの作製>
実施例1のトナーの作製において、「-水相の調製-」の工程における[界面活性剤(1)]を[界面活性剤(3)]に変更したこと、「-洗浄及び乾燥-」の工程におけるトナー固形分量に対するカチオン性フッ素系界面活性剤の添加量を0.9質量%から0.4質量%に変更したこと以外は、実施例1のトナーの作製と同様にして、実施例3の[トナー3]を作製した。
【0161】
(実施例4)
<トナーの作製>
実施例1のトナーの作製において、「-水相の調製-」の工程における[界面活性剤(1)]を[界面活性剤(3)]に変更したこと、「-乳化及び脱溶媒-」の工程におけるTKホモミキサーの回転数を18,000rpmから13,000rpmに変更したこと、「-洗浄及び乾燥-」の工程におけるトナー固形分量に対するカチオン性フッ素系界面活性剤の添加量を0.9質量%から0.6質量%に変更したこと以外は、実施例1のトナーの作製と同様にして、実施例4の[トナー4]を作製した。
【0162】
(実施例5)
<トナーの作製>
実施例1のトナーの作製において、「-水相の調製-」の工程における[界面活性剤(1)]を[界面活性剤(2)]に変更したこと、「-乳化及び脱溶媒-」の工程におけるTKホモミキサーの回転数を18,000rpmから13,000rpmに変更したこと、「-洗浄及び乾燥-」の工程におけるトナー固形分量に対するカチオン性フッ素系界面活性剤の添加量を0.9質量%から0.6質量%に変更したこと以外は、実施例1のトナーの作製と同様にして、実施例5の[トナー5]を作製した。
【0163】
(実施例6)
<トナーの作製>
実施例1のトナーの作製において、「-油相の調製-」、「-水相の調製-」、「-乳化及び脱溶媒-」、及び「-洗浄及び乾燥-」を以下のように変更したこと以外は、実施例1のトナーの作製と同様にして、実施例6の[トナー6]を作製した。
【0164】
-油相の調製-
前記調製した[顔料・ワックス分散液]664質量部(ワックスのトナーにおける含有量4質量%)、前記合成した[結晶性ポリエステル樹脂(1)溶解液]28質量部、及び前記合成した[非結晶性ポリエステル樹脂(1)溶解液]223質量部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、5,000rpmで1分間混合し、[油相]とした。
【0165】
-水相の調製-
実施例1の「-水相の調製-」において、[界面活性剤(1)]を[界面活性剤(2)]に変更したこと以外は、実施例1の「-水相の調製-」と同様にして、実施例6の[水相]を得た。
【0166】
-乳化及び脱溶媒-
実施例1の「-乳化及び脱溶媒-」において、TKホモミキサーの回転数を18,000rpmから13,000rpmに変更したこと以外は、実施例1の「-乳化及び脱溶媒-」と同様にして、実施例6の[分散スラリー]を得た。得られた[分散スラリー]の体積平均粒径は約5μmであった。
【0167】
-洗浄及び乾燥-
実施例1の「-洗浄及び乾燥-」において、トナー固形分量に対するカチオン性フッ素系界面活性剤の添加量を0.9質量%から0.6質量%に変更したこと以外は、実施例1の「-洗浄及び乾燥-」と同様にして、実施例6の[トナー母体粒子6]を作製した。
【0168】
(実施例7)
<トナーの作製>
実施例1のトナーの作製において、「-水相の調製-」の工程における[界面活性剤(1)]を[界面活性剤(2)]に変更したこと、「-乳化及び脱溶媒-」の工程におけるTKホモミキサーの回転数を18,000rpmから13,000rpmに変更したこと、「-洗浄及び乾燥-」の工程におけるトナー固形分量に対するカチオン性フッ素系界面活性剤の添加量を0.9質量%から0.7質量%に変更したこと以外は、実施例1のトナーの作製と同様にして、実施例7の[トナー7]を作製した。
【0169】
(比較例1)
<トナーの作製>
実施例1のトナーの作製において、「-水相の調製-」の工程における[界面活性剤(1)]を[界面活性剤(4)]に変更したこと、「-乳化及び脱溶媒-」の工程におけるTKホモミキサーの回転数を18,000rpmから13,000rpmに変更したこと、「-洗浄及び乾燥-」の工程におけるトナー固形分量に対するカチオン性フッ素系界面活性剤の添加量を0.9質量%から0.4質量%に変更したこと以外は、実施例1のトナーの作製と同様にして、比較例1の[トナー8]を作製した。
【0170】
(比較例2)
<トナーの作製>
実施例1のトナーの作製において、「-水相の調製-」の工程における[界面活性剤(1)]を[界面活性剤(4)]に変更したこと、「-乳化及び脱溶媒-」の工程におけるTKホモミキサーの回転数を18,000rpmから13,000rpmに変更したこと、「-洗浄及び乾燥-」の工程におけるトナー固形分量に対するカチオン性フッ素系界面活性剤の添加量を0.9質量%から1.1質量%に変更したこと以外は、実施例1のトナーの作製と同様にして、比較例2の[トナー9]を作製した。
【0171】
(比較例3)
<トナーの作製>
実施例1のトナーの作製において、「-乳化及び脱溶媒-」の工程におけるTKホモミキサーの回転数を18,000rpmから13,000rpmに変更したこと、「-洗浄及び乾燥-」の工程におけるトナー固形分量に対するカチオン性フッ素系界面活性剤の添加量を0.9質量%から0.1質量%に変更したこと以外は、実施例1のトナーの作製と同様にして、比較例3の[トナー10]を作製した。
【0172】
実施例1~7及び比較例1~3で得られた[トナー1]~[トナー10]の各トナーについて、下記表1にまとめて示す。
【0173】
(トナーの物性測定)
実施例1~7及び比較例1~3で得られた[トナー1]~[トナー10]の各トナーについて、以下のようにしてトナー表面におけるハロゲン粒子の存在面積の測定及び減弱率の算出、トナー表面におけるワックス相対量の測定、並びにトナー表面における界面活性剤の残存率の測定を行った。結果は、下記表2に示す。
【0174】
<トナー表面におけるハロゲン粒子の存在面積の測定及び減弱率の算出>
-トナー表面におけるハロゲン粒子の存在面積の測定-
各トナー表面におけるハロゲン粒子の存在面積は、以下のようにして測定した。
走査型電子顕微鏡(SEM)及びエネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて、観察視野を100μmとし、以下の分析条件で、トナー表面のフッ素(F)元素についてEDXマッピングを実施し、トナー表面におけるハロゲン粒子の存在面積を求めた。
カーボンテープ上にトナーを満遍なく固定し、超高分解能走査型電子顕微鏡(FE-SEM ULTRA55、ZEISS社製)及びエネルギー分散型X線分析装置(NORAN System Six、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いて以下の分析条件でトナー表面を観察し、トナーの二次電子像を取得した。SEM画像とフッ素(F)元素のEDX画像とを見比べながらハロゲン粒子の存在面積を特定した。なお、各加速電圧にて、5点の視野について5回ずつ分析を行い、その平均値をトナー表面100μm当たりにおけるハロゲン粒子の存在面積とした。
[SEM分析条件]
・加速電圧:1kV、3kV、又は5kV
・エミッション:30mV
・W.D.(Working Distance):11mm
・観察倍率:40,000倍
・観察視野:100μm
・分解能:256×192ピクセル
・フレーム時間:最速(180s)
・フレーム数:10,000
[EDX分析条件]
・プローブ電流:high
・コンデンサレンズ:5
・検出部フィルター:スムージング
-ハロゲン粒子の減弱率の算出-
上記SEM-EDXにより、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧1kVで測定したトナー表面のハロゲン粒子の存在面積をXμmとし、上記SEM-EDXにより、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧3kVで測定したトナー表面のハロゲン粒子の存在面積をYμmとして、下記式(1)に基づきハロゲン粒子の減衰率を算出した。
粒子の減弱率(%)=(X-Y)/X×100 ・・・ 式(1)
【0175】
<トナー表面におけるワックス相対量の測定>
各トナー表面近傍のワックス相対量は、以下のようにして測定した。
測定試料として、各トナー3gを自動ペレット成型器(Type M No.50 BRP-E、MAEKAWA TESTING MACHINE CO.製)で6tの荷重で1分間プレスして直径40mm(厚さ約2mm)のトナーペレットを作製した。
作製したトナーペレットを、フーリエ変換赤外(FT-IR)分光分析測定装置(PERKIN ELMER社製のSpectrum OneにMultiScope FT-IR ユニットを設置したもの)で、直径100μmゲルマニウム(Ge)結晶のマイクロATRにて、赤外線の入射角41.5°、分解能4cm-1、積算20回で測定した。
得られた離型剤由来の波数2,850cm-1における吸収スペクトルピーク(高さのベースライン2,830cm-1~2,870cm-1)をP2850とし、結着樹脂由来の波数828cm-1における吸収スペクトルピーク(高さのベースライン743cm-1~890cm-1)をP828として、測定場所を変えて、それぞれ4回測定した平均値を求め、強度比(P2850/P828)を算出した。前記測定場所は、作製したトナーペレットの中心を0点として、横方向をxとし、縦方向をyとした場合、測定1点目をx:-10mm及びy:+10mmとし、測定2点目をx:+10mm及びy:+10mmとし、測定3点目をx:-10mm及びy:-10mmとし、測定4点目をx:+10mm及びy:-10mmの計4点とした。この強度比(P2850/P828)を各トナー表面近傍のワックス相対量とした。
【0176】
<トナー表面における界面活性剤の残存率の測定>
各トナー表面における界面活性剤の残存率は、以下のようにして測定した。
各トナー0.1gに10mLのメタノール添加し、30分間超音波照射を実施した。超音波照射後の分散液を、目開き2μmのフィルターでフィルタリングすることにより、界面活性剤抽出液を得た。得られた界面活性剤抽出液を測定試料とした。
前記測定試料について、合成した[界面活性剤(1)]、[界面活性剤(2)]、[界面活性剤(3)]、又は[界面活性剤(4)]を標準品として用い、絶対検量線法により、以下の分析条件でLCMS分析を実施した。前記測定試料から検出された最大ピークから、各界面活性剤成分の組成比を求めた。
[LCMS分析条件]
・測定装置:LCMS-8030(株式会社島津製作所製)
・カラム:InertSustain(登録商標)Swift C18(粒径:2μm、内径:2.1μm、長さ:100μm、ジーエルサイエンス株式会社製)
・移動相:A溶液:0.5体積%酢酸アンモニウム水溶液/メタノール=80%/20%(v/v)
B溶液:メタノール
・グラジエントプログラム:A/B=0%/100%(v/v)→A/B=100%/0%(v/v)(10分間、5分間保持)→A/B=0%/100%(v/v)(15分間、5分間保持)
・流速:0.3mL/min
・注入量:0.2μL
【0177】
(トナー評価)
次に、実施例1~7及び比較例1~3で得られた[トナー1]~[トナー10]の各トナーについて、以下のようにしてトナー飛散性、低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性の評価を行った。評価結果は、下記表3に示す。
【0178】
<トナー飛散性>
市販のデジタルフルカラープリンター(imagio MPC6000、A4横カラー50枚/分間、株式会社リコー製)を用い、画像面積率20%のチャートを、8万枚連続出力した際の機内のトナー汚染の程度を専門評価者が目視にて観察し、下記評価基準に基づき4段階でトナー飛散性を評価した。なお、「◎」、「〇」、又は「△」が実用上問題のないものである。
[評価基準]
◎:トナー汚れが全く観察されず良好な状態である
○:わずかに汚れが観察される程度で問題とはならい
△:少し汚れが観察される程度である
×:許容範囲外で非常に汚れがあり問題となる
【0179】
<低温定着性>
市販の複写機(imageo Neo C600)を使用し、A4サイズの用紙(T6000 70W T目、株式会社リコー製)の紙面の先端から5cmの位置に、3cm×5cmの長方形となるような画像をトナー付着量0.85mg/cmとなるように印刷した。
続いて定着部材の温度を120℃に常に制御した上で、線速300mm/secにて定着させた(トナー質量は画像出力前後の用紙の質量から計算した)。120℃においてオフセットの発生有無を専門評価者が目視評価にて観察し、下記評価基準に基づき4段階で低温定着性を評価した。なお、「◎」、「〇」、又は「△」が実用上問題のないものである。
[評価基準]
◎:コールドオフセットが発生していない
○:微小なコールドオフセット箇所が認められるが3箇所以下である
△:微小なコールドオフセット箇所が3箇所より多く発生している
×:コールドオフセットが発生しているおり、実用上問題がある
【0180】
<耐ホットオフセット性>
低温定着性の評価方法において、定着温度を、120℃から180℃に変更して実施したこと以外は、低温定着性の評価方法と同様の方法で操作を行い、180℃におけるホットオフセットの発生有無を専門評価者が目視評価にて観察し、下記評価基準に基づき4段階で耐ホットオフセット性を評価した。なお、「◎」、「〇」、又は「△」が実用上問題のないものである。
[評価基準]
◎:ホットオフセットが発生していない
○:微小なホットオフセット箇所が認められるが3箇所以下である
△:微小なホットオフセット箇所が3箇所より多く発生している
×:ホットオフセットが発生しており、実用上問題がある
【0181】
<耐熱保存性>
トナー5g(初期トナー量)を50℃にて8時間保管後、355μmの篩にて2分間ふるい、金網上に残ったトナーの質量(熱処理後トナー量)を測定した。下記式よりトナーの残存率を算出し、この残存率から下記評価基準に基づき4段階で耐熱保存性を評価した。なお、「◎」、「〇」、又は「△」が実用上問題のないものである。
残存率(%)=(初期トナー量(g)-熱処理後トナー量(g))/初期トナー量(g)×100
[評価基準]
◎:残存率が、5%未満。全く問題ないレベル
○:残存率が、5%以上10%未満。若干保存性が悪いが、実用上問題ないレベル
△:残存率が、10%以上30%未満。若干保存性が悪いが、実用上許容可能なレベル
×:残存率が、30%以上。実用上問題のあるレベル
【0182】
【表1】
【0183】
【表2】
【0184】
【表3】
【0185】
上記表3の評価結果から明らかなように、実施例1~7のトナーについて、トナー飛散性、低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性が十分に優れる結果となっていた。これに対して、比較例1~3のトナーについては、トナー飛散性、低温定着性、耐ホットオフセット性、及び耐熱保存性の少なくともいずれかに実用上問題のある結果となった。
【0186】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 少なくとも結着樹脂、離型剤、着色剤、及び粒子を含有する静電潜像現像用トナーであって、
前記粒子が、1価以上のイオン価数を取り得る金属粒子及びハロゲン粒子から選択される少なくともいずれかであり、
走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分光装置(SEM-EDX)により、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧1kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をXμmとした場合、前記粒子の存在面積の範囲が3μm≦Xμm≦10μmであり、
かつ、
SEM-EDXにより、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧3kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積をYμmとした場合、下記式(1)で表される前記粒子の減衰率が80%~100%であることを特徴とする静電潜像現像用トナーである。
粒子の減弱率(%)=(X-Y)/X×100 ・・・ 式(1)
<2> SEM-EDXにより、観察倍率40,000倍、観察視野100μm、加速電圧1kVで測定される前記静電潜像現像用トナー表面の前記粒子の存在面積の範囲が、4μm≦Xμm≦7μmである前記<1>に記載の静電潜像現像用トナーである。
<3> 前記静電潜像現像用トナー表面における全反射吸収赤外分光(FTIR-ATR)法により測定した波数828cm-1における吸収スペクトルピークに対する波数2,850cm-1における吸収スペクトルピークの強度比(P2850/P828)が、0.10以上0.19以下である前記<1>から<2>のいずれかに記載の静電潜像現像用トナーである。
<4> 前記粒子が、フッ化物である前記<1>から<3>のいずれかに記載の静電潜像現像用トナーである。
<5> 前記静電潜像現像用トナー表面が、長鎖炭化水素基を有し、かつ親水性官能基を有するアニオン性界面活性剤を含有し、
前記静電潜像現像用トナー表面に含有される前記アニオン性界面活性剤中の80質量%~100質量%が、長鎖炭化水素基を有し、かつ2個以上の親水性官能基を有するアニオン性界面活性剤である前記<1>から<4>のいずれかに記載の静電潜像現像用トナーである。
<6> 前記<1>から<5>のいずれかに記載の静電潜像現像用トナーの製造方法であって、
有機溶媒中に、結着樹脂前駆体、離型剤、及び着色剤を溶解させて得られる油相に、前記結着樹脂前駆体と伸長又は架橋する化合物を溶解させた後、前記油相を粒子の存在する水系媒体中に分散させて乳化分散液を得、前記乳化分散液中で前記結着樹脂前駆体を架橋反応及び/又は伸長反応させ、前記有機溶媒を除去した後、粒子を添加して静電潜像現像用トナーを得ることを特徴とする静電潜像現像用トナーの製造方法である。
<7> 前記水系媒体が、更に界面活性剤を含有し、
前記界面活性剤が、長鎖炭化水素基を有し、かつ親水性官能基を有するアニオン性界面活性剤である前記<6>に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法である。
である。
【0187】
前記<1>から<5>のいずれかに記載の静電潜像現像用トナー、並びに前記<6>及び<7>に記載の静電潜像現像用トナーの製造方法は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0188】
【特許文献1】特許第6763258号