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  • 特開-チャック袋 図1
  • 特開-チャック袋 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023095897
(43)【公開日】2023-07-06
(54)【発明の名称】チャック袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/25 20060101AFI20230629BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20230629BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230629BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230629BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B65D33/25 A
B65D30/02
B65D65/40 D
B32B27/00 D
B32B27/32 E
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023071067
(22)【出願日】2023-04-24
(62)【分割の表示】P 2018172366の分割
【原出願日】2018-09-14
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】岡本 大
(72)【発明者】
【氏名】伊東 亜依
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 豊明
(57)【要約】
【課題】包装袋を構成するシーラント層に親水性のEVOH樹脂を用いることなく、内容物の収着(吸着、吸収)を抑制することが可能なチャック袋を提供する。
【解決手段】内面にシーラント層20を有するフィルム11から構成される包装袋と、シーラント層20を介してフィルム11の内面に接合されたチャック13とを有するチャック袋であって、チャック13がオレフィン系樹脂からなり、チャック13を構成するオレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンまたはエチレン-メチルアクリレート共重合樹脂であり、シーラント層20がオレフィン系樹脂からなり、シーラント層20が環状オレフィン系樹脂を含む層を少なくとも1層有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面にシーラント層を有するフィルムから構成される包装袋と、前記シーラント層を介して前記フィルムの内面に接合されたチャックとを有するチャック袋であって、
前記チャックがオレフィン系樹脂からなり、前記チャックを構成するオレフィン系樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンまたはエチレン-メチルアクリレート共重合樹脂であり、前記シーラント層がオレフィン系樹脂からなり、前記シーラント層が環状オレフィン系樹脂を含む層を少なくとも1層有することを特徴とするチャック袋。
【請求項2】
前記シーラント層が、前記環状オレフィン系樹脂を含む層として、シクロオレフィンコポリマーからなる最内層を有することを特徴とする請求項1に記載のチャック袋。
【請求項3】
前記シーラント層が、最内層に厚さ10~25μmのポリエチレン層を有することを特徴とする請求項1に記載のチャック袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの内面にチャックが接合されたチャック袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食料品、化粧品、医薬品、医療用品などを包装するための包装袋において、開封した後に内容物を一時的に保存する等の目的で、包装袋を再封可能なチャック(ジッパー)を設けることがある。特許文献1には、ポリエチレン系チャックの熱溶着性と内容物成分の低い吸着性との両立が可能な包装袋として、熱溶着に用いるシーラント層の少なくとも1つの層が、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)層を含むことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-280403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、包装袋を構成するシーラント層がポリエチレン系樹脂である場合、内容物中の揮発性が高い成分がシーラント層に収着(吸着、吸収)されるため、その解決手段として、シーラント層がEVOH層を含む積層包装袋からなることが示されている。しかし、シーラント層がEVOH層を含むことが、すべての揮発成分に対し、有効な解決手段ではない。また、内容物の含水分濃度が高い場合、EVOHは親水性であるため、EVOHを包装袋の素材として使用することが困難であった。以上の点から、EVOH以外の素材を使用したチャック袋が求められている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、包装袋を構成するシーラント層に親水性のEVOH樹脂を用いることなく、内容物の収着(吸着、吸収)を抑制することが可能なチャック袋を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、内面にシーラント層を有するフィルムから構成される包装袋と、前記シーラント層を介して前記フィルムの内面に接合されたチャックとを有するチャック袋であって、前記チャックがオレフィン系樹脂からなり、前記シーラント層がオレフィン系樹脂からなり、前記シーラント層が環状オレフィン系樹脂を含む層を少なくとも1層有することを特徴とするチャック袋を提供する。
【0007】
前記シーラント層が、前記環状オレフィン系樹脂を含む層として、最内層にシクロオレフィンコポリマーを含む層を有してもよい。
前記シーラント層が最内層にポリエチレン層を有してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、包装袋を構成するシーラント層に環状オレフィン系樹脂を含む層を用いることで、内容物の収着(吸着、吸収)を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のチャック袋の一例を示す図である。
図2図1のII-II線に沿う部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好適な実施形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
【0011】
図1に、チャック袋の一例を示す。本実施形態のチャック袋10は、内面にシーラント層を有するフィルム11の周囲にシール部12を設けて構成される包装袋と、フィルム11のシーラント層を介してフィルム11の内面に接合されたチャック13とを有する。チャック13は、包装袋を横断するように配置されている。チャック13は、開封箇所を意図する切断線14の近傍に配置されてもよい。
【0012】
切断線14が切断される前は、チャック13がシール部12に囲まれるので、チャック13が外気や異物に触れるおそれがない。切断線14を切断し、チャック13を開くと、包装袋に収容した内容物を取り出すことができる。その後、チャック13を閉じると、再び包装袋を密封することができる。切断線14は、フィルム11を貫通しないハーフカット線でもよく、フィルム11を貫通した切れ目を断続的に有するミシン目でもよい。ハーフカット線、ミシン目等の易開封線を設けることにより、切断線14に沿った開封が容易になる。切断線14が易開封線を有せず、鋏などの刃物を用いる際の目安となる表示として、フィルム11に印刷などで設けられてもよい。また、切断線14として特段の易開封構造および表示を有しなくてもよい。切断線14の一端または両端に、開封の開始を容易にするため、ノッチ等の引き裂き開始手段を設けてもよい。
【0013】
図2に示すように、包装袋を構成するフィルム11は、チャック13を内側として対向するフィルム11を有する。これらのフィルム11は、異なるフィルムを重ね合わせたものでもよく、同一のフィルムを折り重ねたものでもよい。チャック13は、凹部13aを有する第1片31と、凸部13bを有する第2片32とから構成されている。第1片31および第2片32は、互いに対向する別のフィルム11に接合されている。凹部13aに凸部13bを嵌合させることにより、第1片31と第2片32とが結合し、チャック13が閉鎖される。
【0014】
凹部13aおよび凸部13bの形状は、特に限定されることなく、任意の構成を採用することが可能である。例えば、凹部13aは、切断線14に沿って連続した凹溝であってもよい。また、凸部13bは、切断線14に沿って連続した凸条であってもよい。第1片31が、凸部と凹部とを交互に有し、第2片32が、第1片31の凸部に対向する位置に凹部を、第1片31の凹部に対向する位置に凸部を有してもよい。
【0015】
第1片31および第2片32は、包装袋を構成するフィルム11に接合される箇所に、帯状のフィルム片を含む。これらのフィルム片が、凹部13aおよび凸部13bと一体的に成形されていてもよい。チャック13を構成する樹脂は、オレフィン系樹脂であることが好ましい。また、フィルム11のうち第1片31および第2片32が接合されるシーラント層20も、オレフィン系樹脂から構成されることが好ましい。
【0016】
オレフィン系樹脂は、非環状オレフィンまたは環状オレフィンの少なくとも1種以上を重合した樹脂である。非環状オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィンが挙げられる。環状オレフィンとしては、ノルボルネン等のノルボルネン系モノマーが挙げられる。ノルボルネン系モノマーは、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィンである。ノルボルネン系モノマーを含む重合体は、ノルボルネン骨格を維持する付加重合体でもよく、ノルボルネン骨格が開環する開環重合体でもよい。
【0017】
オレフィン系樹脂は、オレフィン以外のモノマーを含んでもよい。オレフィン以外のモノマーとしては、メチルアクリレート等のアクリル系モノマー、マレイン酸等の不飽和カルボン酸系モノマー、無水マレイン酸等の不飽和酸無水物系モノマー、酢酸ビニル、塩化ビニル等のビニル系モノマー等が挙げられる。
【0018】
チャック13を構成するオレフィン系樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-メチルアクリレート共重合樹脂が挙げられる。チャック13のうち第1片31を構成する樹脂と第2片32を構成する樹脂とは、同種でも異種でもよい。チャック13が上述のオレフィン系樹脂から構成されることにより、シーラント層20と熱圧着した際のシール強度を十分に高いものとなる。また、チャック袋に求められる再封性にも問題ないものとなる。
【0019】
シーラント層20は、オレフィン系樹脂からなる層を2層以上有してもよい。図2には、シーラント層20が最内層21、中間層22、外層23の3層を有する例を示す。シーラント層20が3層からなる場合、例えば、最内層21および外層23がポリエチレン系樹脂からなり、中間層22が環状オレフィン系樹脂を含む層であってもよい。
【0020】
ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)等のエチレンを主体とするポリオレフィン系樹脂が挙げられる。エチレンを主体とするポリオレフィン系樹脂の具体例としては、ブテンを共重合させたC4-LLDPE等、ヘキセンを共重合させたC6-LLDPE等、オクテンを共重合させたC8-LLDPE等が挙げられる。重合時の触媒等は特に制約はない。
【0021】
最内層21に用いられるポリエチレン系樹脂と、外層23に用いられるポリエチレン系樹脂とは、同種でも異種でもよい。また、最内層21および外層23の一方または両方について、2種類以上のポリエチレン系樹脂をブレンドして使用しても構わない。ポリエチレン系樹脂のエチレン含有率は、例えば50質量%以上、80質量%程度、90質量%程度、95質量%程度、99質量%程度、100質量%程度等が挙げられる。
【0022】
環状オレフィン系樹脂としては、オレフィン系樹脂のうち、モノマーとして環状オレフィンを含む構成の樹脂である。例えば、環状オレフィン1種の単独重合体、環状オレフィン2種以上の共重合体、環状オレフィンと非環状オレフィンとの共重合体等が挙げられる。環状オレフィン系樹脂の中でも、ノルボルネン骨格を有する環状オレフィンの重合体またはその水素添加物からなるシクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンとエチレン等の非環状オレフィンとのコポリマーからなるシクロオレフィンコポリマー(COC)が好ましい。
【0023】
シクロオレフィンポリマーとしては市販品を用いることができ、例えば日本ゼオン株式会社製のゼオネックス/ZEONEX(登録商標)、ゼオノア/ZEONOR(登録商標)を好適に用いることができる。シクロオレフィンコポリマーとしても市販品を用いることができ、例えば三井化学株式会社製のアペル/APEL(登録商標)、ポリプラスチックス株式会社製のトパス/TOPAS(登録商標)を好適に用いることができる。
【0024】
シーラント層20が、環状オレフィン系樹脂を含む層を有することにより、揮発性成分や内容物に含有される吸着性の高い成分がシーラント層20に収着(吸着、吸収)されにくいものとなる。シーラント層20の合計厚さを100%としたときの環状オレフィン系樹脂を含む層の厚さは、100%以下であり、例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%が挙げられる。
【0025】
シーラント層20が、環状オレフィン系樹脂を含む層として、最内層21にシクロオレフィンコポリマーを含む層を有してもよい。また、シーラント層20が、中間層22に環状オレフィン系樹脂を含む層を有するとき、最内層21にポリエチレン層を有してもよい。ポリエチレン層は、樹脂成分がポリエチレン系樹脂の少なくとも1種を50重量%以上含む層である。ポリエチレン層の樹脂成分にポリエチレン系樹脂が100重量%を占めてもよく、ポリエチレン系樹脂が2種以上の合計で50重量%以上の割合であってもよい。
【0026】
最内層21がポリエチレン層である場合に、シーラント層20の合計厚さを100%としたときの最内層21のポリエチレン層の厚さは、100%未満であり、例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%が挙げられる。また、最内層21のポリエチレン層の厚さは、例えば5~30μm、10~25μmが挙げられる。
【0027】
最内層21と中間層22と外層23との各層間は、他の材料を介在させることなく、共押出等により全面的に密着していてもよい。シーラント層20の各層を構成する樹脂は、発明の目的を損なわない範囲で、適宜の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤等が挙げられる。
【0028】
シーラント層20は、シーラント層20どうしのシール(接合)に用いることができる。シール方法には特に制約はなく、熱板シール、超音波シール、高周波シール、インパルスシール等が挙げられる。シーラント層20は、間に他の接着剤等を介在させることなく、最内層21どうしを対向させてヒートシールすることが可能である。シーラント層20の厚さは、加工性、柔軟性、非収着性等の観点から選択することが好ましく、特に限定されないが、例えば20~200μmの厚さが好ましい。
【0029】
包装袋を構成するフィルム11は、シーラント層20の外層23側に積層された基材層25を有する。シーラント層20と基材層25との間や、基材層25のシーラント層20と反対側には、他の層が積層されてもよい。例えばシーラント層20と基材層25との間に接着層24を設けてもよい。基材層25は、樹脂フィルムまたは樹脂以外の異種材料を含むことができる。異種材料としては、アルミニウム等の金属箔、紙等が挙げられる。基材層の貼り合わせには、接着剤、アンカー剤などを用いてもよい。
【0030】
基材層としては、耐熱性や強度などの機械的特性、印刷適性に優れた延伸フィルムが好ましく、具体的には、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(O-PET)フィルム等の延伸ポリエステル樹脂フィルム、2軸延伸ナイロン(O-Ny)フィルム等の延伸ポリアミド樹脂フィルム、2軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム等の延伸ポリオレフィン樹脂フィルム等を挙げることができる。基材層の厚さは通常10~50μmであり、好ましくは10~30μmである。基材層は、2層以上から構成されてもよい。基材層は、水分やガスの侵入を防ぐため、水蒸気バリア性樹脂やガスバリア性樹脂を含むことが好ましい。水蒸気バリア性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が挙げられる。ガスバリア性樹脂としては、ナイロン等のポリアミド樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。
【0031】
包装袋の形態は特に限定されず、例えば、平袋、ガゼット袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。チャック袋の内容物は特に限定されないが、飲食物、化粧品、薬剤等、香料や有効成分を含有する内容品の包装に好適に利用することができる。本実施形態のチャック袋は、チャックを開封すると取り出し口を大きく開くことができるため、キャップ付きスパウトによる再封が困難な、流動による注出が困難な内容物の包装にも適している。また、シーラント層において、内容物に含まれる成分の収着が低減されるため、収着されやすい成分、例えば低分子量の有機成分を含む内容物の包装に好適である。例えば液体または粘性体を固形物に吸収または付着させた内容物、あるいは固形物を液体または粘性体中に浸漬した内容物が挙げられる。具体例としては、医薬品等の有効成分、香料、アルコール類、油分等を含む製品として、消毒パッド、湿布薬、経皮吸収型製剤等の医薬品、美容マスク等の化粧品、果実、生菓子、漬物等の食品等が挙げられる。
【0032】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【実施例0033】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0034】
実施例1
厚さ15μmのポリエチレン層(外層)と、厚さ30μmのシクロオレフィンコポリマー層(最内層)とからなるシーラント層を成形した。ポリウレタン系接着剤を介して、外層のポリエチレン層を厚さ12μmのポリエステル樹脂からなる基材層とラミネートして、積層フィルムを得た。積層フィルムの内面にLLDPEからなるチャックを接合し、チャック袋を作製した。
【0035】
実施例2
厚さ15μmのポリエチレン層(外層)と、厚さ30μmのシクロオレフィンコポリマー層(中間層)と、厚さ15μmのポリエチレン層(最内層)とからなるシーラント層を成形した。ポリウレタン系接着剤を介して、外層のポリエチレン層を厚さ12μmのポリエステル樹脂からなる基材層とラミネートして、積層フィルムを得た。積層フィルムの内面にLLDPEからなるチャックを接合し、チャック袋を作製した。
【0036】
比較例1
厚さ15μmのポリエチレン層(外層)と、厚さ30μmのポリエチレン層(最内層)とからなるシーラント層を成形した。ポリウレタン系接着剤を介して、外層のポリエチレン層を厚さ12μmのポリエステル樹脂からなる基材層とラミネートして、積層フィルムを得た。積層フィルムの内面にLLDPEからなるチャックを接合し、チャック袋を作製した。
【0037】
シール強度
チャックとシーラント層とのシール強度は、JIS Z0238(ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法)と同様の方法により、15mm幅のサンプルをヒートシールし、300mm/minの速度でチャックとシーラント層を上下に引っ張るときの荷重(N)を測定し、シール強度(N/15mm)を求めた。
【0038】
チャック性能(官能試験)
チャック袋を両手で持ち、チャックを開封した後、チャックを手で押さえながら、再封する一連の動作を50回繰り返し、チャックの開閉のし易さを、5点満点で評価した。評価に際して、年齢(25歳~65歳)、性別をランダムに振り、パネラーは30人として平均値を求めた。
【0039】
内容物の非収着性
内容物に添加する成分は、酢酸トコフェロール、メントール、カンフルの3種類とし、次の手順で、成分ごとに収着量を求めた。
収着量の測定手順は、次のとおりである。チャックと異なる辺に開口部を設けた三方袋の形式で、縦横90mm×90mm、シール幅10mmでチャック袋を作製した。上記から選択した1種類の成分2gをエタノールと水の1:1混合溶媒150gに溶解させ、内容液を調製した。内容液を10mL量りとり、チャック袋の開口部から袋に充填し、開口部をヒートシールした。内容液を充填したチャック袋を40℃で4週間保管した。その後、チャック袋を開封し、内容液をチャック袋から出し、チャック袋を構成するフィルムのうち内容液との接触面を軽く拭いてから裁断し、所定面積のフィルム片に収着された成分を抽出溶媒5mLで抽出した。抽出液からシリンジを用いて定量を採取し、ガスクロマトグラフィーに注入し、成分濃度の定量値を得たのち、フィルムが内容液と接触する表面積100cm当たりの収着量を計算した。
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示すように、実施例1、2は比較例1と遜色のないシール強度およびチャック性能を有していた。実施例1、2では、いずれの成分でも収着量が3mg/100cm未満であったのに対して、比較例1では収着量が3mg/100cmを超えた。特に、酢酸トコフェロールの収着量は、比較例1では10mg/100cmを超える値となった。従って、実施例1、2のチャック袋は、内容物に含まれる成分の非収着性を有していることを確認することができた。
【符号の説明】
【0042】
10…チャック袋、11…フィルム、12…シール部、13…チャック、13a…凹部、13b…凸部、14…切断線、20…シーラント層、21…最内層、22…中間層、23…外層、24…接着層、25…基材層、31…第1片、32…第2片。
図1
図2