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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096345
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法および発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/62 20100101AFI20230630BHJP
   H01L 33/60 20100101ALI20230630BHJP
【FI】
H01L33/62
H01L33/60
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212024
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】山田 元量
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA02
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CA13
5F142CB03
5F142CB23
5F142CB24
5F142CD02
5F142CD16
5F142CE03
5F142CE08
5F142CE16
5F142CG03
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG43
5F142DA12
5F142DA13
5F142DB14
5F142DB16
5F142FA30
5F142GA11
5F142GA21
5F142GA28
(57)【要約】
【課題】発光装置の光取出し効率を向上させる。
【解決手段】発光装置の製造方法は、配線層10を有する基板110の配線層上に、ハンダ38、フラックス46および光反射性粒子44を含有するハンダ組成物30を付与する工程(A)と、電極21、22を有する発光素子120の電極をハンダ組成物に対向させてハンダ組成物上に発光素子を配置する工程(B)と、リフローによりハンダを溶融させて光反射性粒子をハンダ組成物の表面に移動させ、ハンダにより電極を配線層に電気的に接続する工程(C)とを含む。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線層を有する基板の前記配線層上に、ハンダ、フラックスおよび光反射性粒子を含有するハンダ組成物を付与する工程(A)と、
電極を有する発光素子の前記電極を前記ハンダ組成物に対向させて前記ハンダ組成物上に前記発光素子を配置する工程(B)と、
リフローにより前記ハンダを溶融させて前記光反射性粒子を前記ハンダ組成物の表面に移動させ、前記ハンダにより前記電極を前記配線層に電気的に接続する工程(C)と
を含む、発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記基板の前記配線層は、第1配線および第2配線を含み、
前記工程(A)は、前記第1配線および前記第2配線のそれぞれの上に前記ハンダ組成物を付与する工程を含み、
前記工程(B)は、前記発光素子を前記基板に向けて押圧することにより前記第1配線上のハンダ組成物の一部と前記第2配線上のハンダ組成物の一部とを互いに接触させる工程を含み、
前記工程(C)は、前記ハンダ組成物を前記第1配線上および前記第2配線上に分離させる工程(C1)を含む、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記基板の前記配線層は、第1配線および第2配線を含み、
前記工程(A)は、前記第1配線と前記第2配線とを跨ぐようにして前記ハンダ組成物を前記配線層上に配置する工程を含み、
前記工程(C)は、前記ハンダ組成物中の前記ハンダのうち前記第1配線と前記第2配線とを跨いでいた部分を前記第1配線上および前記第2配線上に分離させる工程(C1)を含む、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(C1)は、前記光反射性粒子の一部および前記フラックスの一部を、前記基板に対向する、前記発光素子の下面のうち前記電極を除く第1領域上、および、前記基板の、前記発光素子側の上面のうち前記配線層を除く第2領域上の一方または両方に配置する工程を含む、請求項2または3に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記光反射性粒子は、酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素または二酸化ジルコニウムの粒子である、請求項1から4のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(A)において、前記ハンダ組成物は、前記光反射性粒子を0.1質量パーセント以上5質量パーセント以下の割合で含有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記工程(C)の後、少なくとも前記光反射性粒子および前記発光素子を封止部材で覆う工程(D)をさらに備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記工程(D)の後、光分解により前記フラックスの一部を除去する工程(E)をさらに備える、請求項7に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
上面および前記上面とは反対側の下面を有する発光素子であって、前記下面に設けられた一対の電極を含む発光素子と、
配線層を有する基板と、
前記基板の前記配線層と前記電極のそれぞれとの間に位置し、前記発光素子を前記配線層に電気的に接続する、ハンダを含有する接合部材と、
前記接合部材のそれぞれの表面のうち、前記電極および前記配線層のいずれにも接していない領域上に配置された光反射層と
を備え、
前記光反射層は、光反射性粒子およびフラックスを含む、発光装置。
【請求項10】
前記基板上に位置し、少なくとも前記光反射層および前記発光素子を覆う封止部材をさらに備える、請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記光反射層は、前記発光素子に接する空隙を有し、
前記光反射性粒子の一部は、前記空隙に位置する、請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記光反射性粒子の一部は、前記発光素子の前記下面のうち前記電極を除く第1領域上、および、前記基板の、前記発光素子側の上面のうち前記配線層を除く第2領域上の一方または両方に位置する、請求項9から11のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項13】
前記光反射性粒子の一部は、前記発光素子の前記下面のうち前記電極を除く第1領域上、および、前記基板の、前記発光素子側の上面のうち前記配線層を除く第2領域上に位置し、
前記封止部材は、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する部分を含む、請求項10または11に記載の発光装置。
【請求項14】
前記光反射層は、前記接合部材の表面のうち、前記電極および前記配線層のいずれにも接していない領域の20%以上を被覆している、請求項9から13のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項15】
前記基板は、前記配線層上に前記光反射性粒子が配置された領域を含む、請求項9から14のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項16】
前記光反射性粒子は、酸化チタン、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素または二酸化ジルコニウムの粒子である、請求項9から15のいずれか1項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置の製造方法と、発光装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
LEDに代表される半導体発光素子をその一部に含む発光装置が広く使用されている。下記の特許文献1は、固体樹脂、ハンダの粒子およびフラックスから構成された異方性接合フィルムにより発光素子をプリント配線板に実装したLED装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-077870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板上の発光素子を含む発光装置の分野では、光取出し効率のさらなる向上の要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のある実施形態による発光装置の製造方法は、配線層を有する基板の前記配線層上に、ハンダ、フラックスおよび光反射性粒子を含有するハンダ組成物を付与する工程(A)と、電極を有する発光素子の前記電極を前記ハンダ組成物に対向させて前記ハンダ組成物上に前記発光素子を配置する工程(B)と、リフローにより前記ハンダを溶融させて前記光反射性粒子を前記ハンダ組成物の表面に移動させ、前記ハンダにより前記電極を前記配線層に電気的に接続する工程(C)とを含む。
【0006】
本開示の他のある実施形態による発光装置は、上面および前記上面とは反対側の下面を有する発光素子であって、前記下面に設けられた一対の電極を含む発光素子と、配線層を有する基板と、前記基板の前記配線層と前記電極のそれぞれとの間に位置し、前記発光素子を前記配線層に電気的に接続する、ハンダを含有する接合部材と、前記接合部材のそれぞれの表面のうち、前記電極および前記配線層のいずれにも接していない領域上に配置された光反射層とを備え、前記光反射層は、光反射性粒子およびフラックスを含む。
【発明の効果】
【0007】
本開示の実施形態によれば、発光装置の光取出し効率を向上可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示のある実施形態による発光装置の外観の一例を模式的に示す図である。
図2図1に示す断面のうち発光素子とその周辺とを拡大して示す模式的な断面図である。
図3】光反射性粒子の配置の他の一例を示す模式的な断面図である。
図4】光反射性粒子の配置のさらに他の一例を示す模式的な断面図である。
図5】光反射性粒子の配置のさらに他の一例を示す模式的な断面図である。
図6】光反射性粒子の配置のさらに他の一例を示す模式的な断面図である。
図7】本開示の他のある実施形態による発光装置の模式的な断面図である。
図8図7の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
図9】本開示のさらに他のある実施形態による発光装置の模式的な断面図である。
図10図9に示す光源のうちの1つとその周辺とを拡大して示す模式的な断面図である。
図11図9に示す発光装置から区画部材を取り出して示す模式的な上面図である。
図12】本開示のさらに他の実施形態による、発光装置の例示的な製造方法を説明するためのフローチャートである。
図13】本開示のさらに他のある実施形態による発光装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図14】本開示のさらに他のある実施形態による発光装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図15】本開示のさらに他のある実施形態による発光装置の例示的な製造方法を説明するための模式的な断面図である。
図16】発光装置の製造方法の第1の変形例を説明するための模式的な断面図である。
図17】発光装置の製造方法の第1の変形例を説明するための模式的な断面図である。
図18】発光装置の製造方法の第2の変形例を説明するための模式的な断面図である。
図19】発光素子の下面と、基板の上面との間にアンダーフィルを配置した構成例を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を詳細に説明する。以下の実施形態は、例示であり、本開示による発光装置およびその製造方法は、以下の実施形態に限られない。例えば、以下の実施形態で示される数値、形状、材料、ステップ、そのステップの順序などは、あくまでも一例であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の改変が可能である。以下に説明する各実施形態は、あくまでも例示であり、技術的に矛盾が生じない限りにおいて種々の組み合わせが可能である。
【0010】
図面が示す構成要素の寸法、形状などは、分かりやすさのために誇張されている場合があり、実際の発光装置における寸法、形状および構成要素間の大小関係を反映していない場合がある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。
【0011】
以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。以下の説明では、特定の方向または位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」およびそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向または位置を分かりやすさのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」などの用語による相対的な方向または位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面、実際の製品、製造装置などにおいて、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本開示において「平行」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面などが0°から±5°程度の範囲にある場合を含む。また、本開示において「垂直」または「直交」とは、特に他の言及がない限り、2つの直線、辺、面などが90°から±5°程度の範囲にある場合を含む。
【0012】
(発光装置の実施形態)
図1は、本開示のある実施形態による発光装置の外観の一例を示す。図1では、発光装置を上方から見た外観と、発光装置をその中央付近で切断したときの模式的な垂直断面とを合わせて1つの図に示している。なお、図1には、説明の便宜のために、互いに直交するX方向、Y方向およびZ方向を示す矢印をあわせて図示している。本開示の他の図面においてもこれらの方向を示す矢印を図示することがある。
【0013】
図1に示す発光装置100Aは、発光素子が基板の配線層にフリップチップ接続された発光装置の一例である。発光装置100Aは、基板110と、一対の電極を有する発光素子120と、接合部材131、132と、接合部材131の一部を覆う光反射層141と、接合部材132の一部を覆う光反射層142とを含む。図1に例示する構成において、発光装置100Aは、発光素子120などの、基板110の上面110a上の構造を覆う封止部材150をさらに有している。
【0014】
基板110は、配線層10と、配線層10を支持する基材16とを含む。配線層10は、第1配線11および第2配線12を含んでいる。ここでは、基板110の上面110aは、矩形状を有しており、その矩形状の一辺は、X方向またはY方向に平行である。
【0015】
図2は、図1に示す断面のうち発光素子120とその周辺とを拡大して模式的に示す。発光素子120は、基板110側に位置する下面120bと、下面120bとは反対側に位置する上面120aとを有する。発光素子120は、下面120b側に電極21および電極22を有する。
【0016】
図2に例示する構成において、発光素子120は、透光性基板24と、半導体積層構造25と、反射膜28とを含む。反射膜28は、透光性基板24の上面24a上に配置されている。この例では、反射膜28の上面が発光素子120の上面120aを構成している。半導体積層構造25は、透光性基板24の、上面24aとは反対側の主面上に位置する。上述の電極21および22は、半導体積層構造25の、透光性基板24との界面とは反対側に位置する面上に設けられ、半導体積層構造25に電流を供給する機能を有する。
【0017】
接合部材131および132のそれぞれは、発光素子120を基板110の配線層10に電気的に接続する。接合部材131および132のうち、接合部材131の少なくとも一部は、発光素子120の電極21と、配線層10の第1配線11との間に位置する。他方、接合部材132の少なくとも一部は、発光素子120の電極22と、配線層10の第2配線12との間に位置する。
【0018】
図2に模式的に示すように、発光装置100Aは、接合部材131の表面131aの一部を覆う光反射層141を有する。光反射層141は、接合部材131の表面131aのうち、発光素子120の電極21および基板110の配線層10のいずれにも接していない領域上に位置する。また、発光装置100Aは、接合部材132の表面132aの一部を覆う光反射層142を有する。光反射層141と同様に、光反射層142は、表面132aのうち、電極22および配線層10のいずれにも接していない領域上に位置する。
【0019】
光反射層141、142および接合部材131、132は、後述のハンダ組成物30の硬化により得られる構造である。後に詳しく説明するように、ハンダ組成物30は、粒子状のハンダ、フラックス、光反射性粒子および溶剤を含む。接合部材131、132は、主にハンダから構成され、光反射層141、142は、ハンダ組成物30に含まれていたフラックスおよび光反射性粒子を含有する。ハンダ組成物30は、フラックスなどの樹脂を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。ただし、ハンダ組成物30は、青色光の照射を受けて変色しやすい熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)を含有しない。
【0020】
図2に模式的に示すように、光反射層141および光反射層142のそれぞれは、フラックス46と、それぞれの全部または一部がフラックス46中に位置する光反射性粒子44とを含む。光反射性粒子44の例は、酸化チタンの粒子、酸化アルミニウムの粒子、二酸化ケイ素の粒子または二酸化ジルコニウムの粒子であり、光反射層141および光反射層142は、典型的には、白色を呈する。本明細書における「光反射性」の用語は、波長が430nm以上700nm以下の可視域全体にわたって70%以上の反射率を示すことを指す。他方、一般的なハンダの主成分であるスズの可視域における反射率は、高々50%程度である。また、一般的なハンダは、経時的な酸化などによって表面の光沢が失われ、反射率が低下する。
【0021】
本開示の実施形態によれば、発光素子120から出射されて接合部材131、132に向かって進行する光のより多くの部分を接合部材131、132の表面の光反射層141、142で反射させ得る。すなわち、一般的なハンダを利用した実装と比較して、ハンダによる光の吸収が低減される結果、より多くの光を発光装置の外部に取り出すことが可能になり、光の取出し効率を向上できる。
【0022】
光反射層141は、接合部材131の表面131aのうち電極21および第1配線11のいずれにも接していない領域の20%以上100%以下を被覆し得る。ハンダ表面における光吸収抑制の観点からは、光反射層141が接合部材131の表面131aのうち上記領域の50%以上を被覆しているとより有利である。光反射層142も同様に、接合部材132の表面132aのうち電極22および第2配線12のいずれにも接していない領域の20%以上100%以下を被覆していることが好ましく、上記領域の50%以上を被覆していることがより好ましい。接合部材131、132の表面のうち発光素子120の電極および配線層10のいずれにも接していない領域のより多くを光反射層141、142で覆うことにより、光の取出し効率をより向上させ得る。
【0023】
光反射性粒子44の材料とフラックス46の材料との間の屈折率差(例えば450nmの波長を有する光に対する屈折率の差)が0.5以上であると有益である。光反射性粒子44およびフラックス46の界面での全反射が生じやすくなり、その結果、光取出し効率が向上するからである。なお、光取出し効率向上の観点からは、光反射性粒子44の平均粒径が0.1μm以上10μm以下の範囲であると有利である。ここで、「平均粒径」とは、体積基準の累積分布において累積値が50%に達する粒径(D50:メジアン径)を指す。中心粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えばMALVERN社製 MASTER SIZER 2000)により測定可能である。
【0024】
接合部材131の表面131aの法線方向に沿った光反射層141の厚さは、例えば0.1μm以上30μm以下の範囲である。接合部材132の表面132aの法線方向に沿った光反射層142の厚さも同様に、例えば0.1μm以上30μm以下の範囲である。
【0025】
図1および図2に示す例では、発光装置100Aは、基板110上の構造を覆う封止部材150をさらに有している。封止部材150は、透光性を有し、図2に示すように、少なくとも光反射層141、142と、発光素子120とを覆う。ここで、本明細書における「透光性」の用語は、入射した光に対して拡散性を示すことをも包含するように解釈され、「透明」であることに限定されない。例えば、母材とは異なる屈折率を有する光拡散材が分散させられることにより、封止部材150が光拡散機能を有していてもよい。
【0026】
後述するように、光反射層141、142中のフラックス46は、発光素子120からの光を受けて分解され得る。光反射層141、142を覆う封止部材150を基板110上に設けることにより、光分解によってフラックス46の一部または全部が失われた場合であっても、接合部材131、132上からの光反射性粒子44の脱落を抑制できる。光反射性粒子44の脱落が抑制される結果、光反射性粒子44の脱落に起因する、光反射層141、142の反射率の低下を回避し得る。
【0027】
図3は、光反射性粒子44の配置の他の一例を模式的に示す。図3に示す例では、光反射性粒子44およびフラックス46が、発光素子120の下面120bのうち電極21、22を除く領域R1(第1領域)上にも位置している。領域R1上に光反射性粒子44が位置することにより、発光素子120の下面120bから発せられる光を光反射性粒子44によって反射させることができるので、基板110に吸収される光を低減できる。すなわち、光取出し効率をさらに向上させ得る。
【0028】
領域R1には、フラックス46が実質的に存在せず、実質的に光反射性粒子44から構成された光反射層が位置していてもよい。領域R1上の光反射性粒子44は、封止部材150のうち発光素子120の下面120bと基材16との間に位置する部分に覆われることにより、領域R1上に保持される。
【0029】
図4は、光反射性粒子の配置のさらに他の一例を模式的に示す。図4に示す例では、基板110の上面110a、すなわち、基板110の主面のうち発光素子120側の1つの面上に光反射性粒子44およびフラックス46が配置されている。この例において、光反射性粒子44は、基板110の上面110aの全体ではなく配線層10を除く一部の領域R2(第2領域)上に位置している。
【0030】
基板110の上面110aの領域R2に光反射性粒子44を配置することにより、領域R2上の光反射性粒子44による反射を利用して、基板110の上面110aによる光の吸収を低減しながら、発光装置100Aの上方に向かう光を増大させ得る。すなわち、光取出し効率向上の効果が期待できる。
【0031】
上述の領域R1と同様に、領域R2には、フラックス46が実質的に存在せず、実質的に光反射性粒子44から構成された光反射層が位置していてもよい。領域R1上の光反射性粒子44と同様に、領域R2上の光反射性粒子44も、封止部材150に覆われ得る。
【0032】
図5は、光反射性粒子の配置のさらに他の一例を模式的に示す。図5に例示する構成において、光反射性粒子44は、発光素子120の下面120bの領域R1上と、基板110の上面110aの領域R2上との両方に位置している。なお、領域R1上の光反射性粒子44は、領域R2上の光反射性粒子44と比較して発光素子120のより近くに位置する。領域R1上への光反射性粒子44の配置は、光が大きく拡がる前に光の進行方向を変えることを可能にする。基板110による光吸収の低減の観点からは、領域R1上への光反射性粒子44の配置は、より効果的である。
【0033】
さらに、図5に示す例においては、Z方向において領域R1と領域R2とに挟まれた空間に、封止部材150の一部が位置している。封止部材150が、領域R1と領域R2との間に位置する部分を含むことにより、領域R1上の光反射性粒子44および領域R2上の光反射性粒子44を封止部材150で覆うことができる。領域R1および領域R2を覆うように封止部材150を設けることにより、領域R1および/または領域R2からの光反射性粒子44の脱落に起因する反射率の低下、ひいては、光取出し効率の低下を回避し得る。
【0034】
図6は、光反射性粒子の配置のさらに他の一例を模式的に示す。図6に示すように、一部の光反射性粒子44が基板110の配線層10上(ここでは第1配線11上および第2配線12上)に位置することもあり得る。この例のように、基板110は、配線層10上に光反射性粒子44の配置された領域R3を含んでいてもよい。領域R3は、基板110の上面110aの法線方向に見た平面視において、配線層10のうち発光素子120に重ならない領域であり得る。平面視における領域R3の外形は、典型的には、不定形である。
【0035】
図6に例示するような構成によれば、基板110の上面110a側のより多くの領域上に光反射性粒子44が配置されることにより、発光素子120から出射された光のうち配線層10によって吸収される光の割合を低減でき、光の取出し効率をより向上させ得る。
【0036】
領域R3には、フラックス46が実質的に存在せず、実質的に光反射性粒子44から構成された光反射層が位置していてもよい。領域R1上または領域R2上の光反射性粒子44と同様に、領域R3上の光反射性粒子44も、封止部材150に覆われ得る。
【0037】
図7は、本開示の他のある実施形態による発光装置の断面を模式的に示す。図2に示す発光装置100Aと比較して、図7に示す発光装置100Bは、光反射層141、142に代えて、光反射層141B、142Bを有する。光反射層141Bおよび142Bの一方または両方は、1以上の空隙50を有する。空隙50は、発光素子120の近くに位置し、典型的には、発光素子120に接する。
【0038】
図8は、図7の一部を拡大して示す。図8に例示する構成において、空隙50は、発光素子120に接している。図8に模式的に示すように、空隙50の一部が封止部材150内に位置することもあり得る。
【0039】
後述するように、空隙50は、光反射層141B、142Bを形成するためのハンダ組成物に含まれるフラックス中の有機物の光分解により形成される空間である。そのため、図8に模式的に示すように、空隙50の内部には光反射性粒子44が位置し得る。空隙の内部が空気で満たされている場合、空隙50内部の光反射性粒子44の表面は、空気との界面を構成する。すなわち、図2図6に示す例のように光反射性粒子44がフラックス46で被覆されている場合と比較して、光反射性粒子44とその周囲の媒質との間の屈折率差が拡大するので、より効果的に光反射性粒子44の表面における反射を利用し得る。
【0040】
図9は、本開示のさらに他のある実施形態による発光装置の断面の一例を示す。図9に示す発光装置200は、基材26および基材26上の配線層20を有する基板210と、基板210に実装された複数の光源220とを含む。光源220は、基板210の上面210a側に二次元に配置され得る。図9では、これら複数の光源220のうち、X方向に沿って並ぶ2つが表されている。
【0041】
図10は、発光装置200の光源220のうちの1つとその周辺とを拡大して模式的に示す。複数の光源220のそれぞれは、上述の発光装置100Aまたは発光装置100Bと同様の構成を有する。図10に例示する構成において、光源220は、下面120b側に位置する電極21、22を含む発光素子120と、発光素子120の電極21、22を配線層20に接続する接合部材131、132と、発光素子120を覆う封止部材150とを有する。
【0042】
上述の各例と同様に、接合部材131の表面131aの一部上には、光反射層141が位置している。また、接合部材132の表面132aの一部上には、光反射層142が位置する。接合部材131の表面131aの一部と、接合部材132の表面132aの一部とを光反射層141および光反射層142でそれぞれ覆うことにより、光反射性粒子44による拡散反射を利用して、光の取出し効率を向上させ得る。発光装置200中の各発光素子120とその周辺の構造は、図2図6を参照しながら説明した例のいずれと同様であってもよい。
【0043】
図9に示す例において、発光装置200は、複数の壁部60を含む区画部材260をさらに有する。なお、この例では、区画部材260と配線層20との間に、複数の貫通孔70hを有する絶縁層270が配置されている。図10に示すように、発光素子120を覆う封止部材150は、配線層20のうち貫通孔70hから露出された部分と、絶縁層270の一部とをも覆い得る。
【0044】
図11は、発光装置200から区画部材260を取り出して模式的に示す。区画部材260の壁部60は、X方向またはY方向に延び、基板210上の各光源220は、これら壁部60で取り囲まれる。
【0045】
区画部材260は、基板210の上面210aに平行な底部62をさらに有し得る。底部62は、それぞれが例えば円形の開口を有する複数の貫通孔62hを有し、各光源220は、これら貫通孔62hのうち対応する1つの内側に位置する。区画部材260が底部62を有することにより、光源220から出射された光のうち基板210に向かって進行する成分を底部62で反射させることができる。
【0046】
区画部材260は、例えば白色フィラーを含有する樹脂材料から形成される。複数の壁部60のうち、隣り合う2つの光源220の間に位置する部分は、基板210の上面210aに対して傾斜する傾斜面60aを有する。壁部60の傾斜面60aでの反射を利用して、光源220からの光の進行方向を基板210の上方へ向けることができる。この意味で、区画部材260をリフレクタと呼ぶこともできる。
【0047】
図9に示すように、発光装置200は、区画部材260の上方に、波長変換シート、プリズムシート、光拡散シートなどを含む1以上の光学シートをさらに有し得る。図9に示す例では、発光装置200は、区画部材260の上方に配置された波長変換シート280と、プリズムシート282と、プリズムシート282の上方に位置する光拡散シート284とを有する。この例では、プリズムシート282は、波長変換シート280と光拡散シート284との間に配置されている。発光装置200は、例えば液晶表示装置のバックライトユニットに適用可能である。
【0048】
(発光装置の例示的な製造方法)
図12は、本開示のさらに他の実施形態による、発光装置の製造方法の一例を示す。図12に例示する製造方法は、基板の配線層上にハンダ組成物を付与する工程(ステップS1)と、ハンダ組成物上に発光素子を配置する工程(ステップS2)と、リフローによりハンダを溶融させてハンダ組成物中の光反射性粒子をハンダ組成物の表面に移動させる工程(ステップS3)とを含む。以下、図1に示す発光装置100Aを例にとり、各工程を詳細に説明する。
【0049】
(基板の配線層上にハンダ組成物を付与する工程)
まず、配線層10を有する基板110を準備し、図13に示すように、配線層10の所定の位置(例えばランド上)にハンダ組成物30を付与する(図12のステップS1)。図13に示す例では、配線層10の第1配線11および第2配線12のそれぞれの表面上にハンダ組成物30を配置している。ハンダ組成物30の付与には、印刷法を適用できる。
【0050】
本実施形態では、ハンダ組成物30として、溶剤、フラックス46および粒子状のハンダ38に加えて光反射性粒子44をさらに含有する混合物を配線層10上の所定の箇所に配置する。
【0051】
ハンダ組成物30中の光反射性粒子44の含有量は、典型的には、0.1質量パーセント以上5質量パーセント以下の範囲であり、好ましくは、0.7質量パーセント以上2質量パーセント以下の範囲である。ハンダ組成物30が0.1質量パーセント以上の割合で光反射性粒子44を含有することにより、リフローの実行後に、発光素子120からの光に対して比較的に高い反射率を示す光反射層141、142を形成できる。ハンダ組成物30中の光反射性粒子44の割合を5質量パーセント以下とすることにより、ハンダ組成物30の粘度が過度に高くなることを防止し得る。ハンダ組成物30の粘度の低下は、印刷によるハンダ組成物30の塗布を容易にする。
【0052】
(ハンダ組成物上に発光素子を配置する工程)
次に、発光素子120を準備し、ハンダ組成物30上に発光素子120を配置する(図12のステップS2)。このとき、図14に示すように、発光素子120の電極21および電極22を第1配線11上のハンダ組成物30および第2配線12上のハンダ組成物30にそれぞれ向けてハンダ組成物30上に発光素子120を配置する。発光素子120の配置は、基板110に向けての発光素子120の押圧を伴っていてもよい。
【0053】
(ハンダ組成物中の光反射性粒子をハンダ組成物の表面に移動させる工程)
次に、リフローによりハンダ組成物30中のハンダ38を溶融させ、ハンダ38によって電極21、22を配線層10に電気的に接続する。ハンダ38の硬化により、図15に示すように、その表面131aの一部に光反射層141を有する接合部材131と、その表面132aの一部に光反射層142を有する接合部材132とが得られる(図12のステップS3)。
【0054】
リフローを通した加熱により、ハンダ38が溶融し、ハンダ組成物30中のハンダ38の粒子同士が結合しはじめると、ハンダ38の表面張力により、光反射性粒子44およびフラックス46がハンダ38の外側に押し出される。その結果、光反射性粒子44がハンダ組成物30の表面に移動することとなり、接合部材131および接合部材132のそれぞれの表面のうち、電極21、22および配線層10のいずれにも接していない領域上に選択的に、光反射層141または光反射層142を形成することができる。なお、ハンダ組成物30中の一部の光反射性粒子44が、硬化後のハンダ38の内部すなわち接合部材131または接合部材132の内部に残存することもあり得る。
【0055】
リフローの実行により光反射層141、142を形成した後、必要に応じて、発光素子120を覆う封止部材150を形成してもよい。封止部材150で光反射層141、142を覆うことにより、光反射性粒子44の脱落を抑制できる。封止部材150は、ポッティング、トランスファー成型などによって透光性の樹脂材料から形成できる。典型的には、封止部材150は、光反射層141および光反射層142をも覆う。封止部材150の一部は、発光素子120の下面120bと基板110の上面110aとに挟まれた空間に位置していてもよい。
【0056】
なお、リフローの工程において、ハンダ38の溶融によりハンダ組成物30の外側に向かって押し出されたフラックス46は、発光素子120からの光(例えば青色光)の照射を受けて徐々に分解され得る。発光装置100Aに封止部材150を設けることにより、フラックス46が光分解を受けた場合でも、光反射性粒子44を接合部材131の表面131a上と接合部材132の表面132a上とに、または、接合部材131の表面131a上または接合部材132の表面132a上に保持させ得る。
【0057】
光反射層141および光反射層142の形成後、フラックス46の少なくとも一部は、例えば光分解により除去されてもよい。フラックス46として用いられる材料の分子量は、例えば、500以下である。フラックス46の材料の分子量が500以下であると、発光素子120からの光(例えば青色光)の照射によりフラックス46を分解しやすく、フラックス46の事後的な除去に有利である。フラックス46の材料の分子量が過度に大きいと、光分解後の残渣の経時的な変色により、光反射層における反射率が低下することがある。フラックス46の材料の分子量が比較的に小さいと、このような現象に起因する反射率の低下を回避し得る。
【0058】
フラックス46の除去は、意図的な光照射により実行されてもよいし、意図しない光分解により達成されてもよい。例えば、発光装置100Aの使用に伴う発光素子120からの光を受けて、光反射層141中または光反射層142中のフラックス46のうち発光素子120の近くに位置する部分が時間の経過とともに失われることがあり得る。このような場合、フラックス46の光分解により、発光素子120の近傍に空隙50が事後的に形成されることになり、図7に示すような、空隙50を有する発光装置100Bを得ることができる。空隙50は、発光装置100Aの使用時に限らず、出荷前の駆動試験において形成されることもあり得る。
【0059】
フラックス46が光分解されることにより、フラックス46に覆われていた光反射性粒子44の表面は、フラックス46よりも低屈折率の媒質(典型的には空気)と接することになる。すなわち、低屈折率の媒質と光反射性粒子44との界面が形成されることにより、発光素子120からの光を反射させる効果が向上する。また、光反射性粒子44が空隙50の内部に位置することにより、光反射性粒子44の脱落を防止しつつ、例えば発光素子120近傍のように光束の大きな領域に光反射性粒子44を留めることができる。
【0060】
なお、洗浄によるフラックスの除去とは異なり、発光素子120からの光を受けることによるフラックス46の分解は、発光素子120を透光性の樹脂材料などで封止した後に生じる。そのため、発光素子120からの光を利用した、フラックス46の光分解は、空隙50の内部に光反射性粒子44を配置することを可能にする。他方、光反射層141および光反射層142の形成後にフラックス46の洗浄工程を実行すると、光反射性粒子44を支持するフラックス46の大部分が光反射層141、142から除去される。その後に封止部材150を形成しようとすると、封止部材150の材料が光反射性粒子44同士の隙間に入り込む。そのため、空隙50のような構造を形成することは、一般的に困難である。なお、光分解を利用したフラックス46の除去において、フラックス46の全部が除去されることは、必須ではない。例えば、空隙50の内部にフラックス46の一部が残存することもあり得る。
【0061】
発光素子120からの光を利用した、フラックス46の光分解は、より光束の大きな領域で優先的に生じ得る。すなわち、より光束の大きな領域に位置する光反射性粒子44の表面に、例えば空気との間の界面が形成されやすい。これは、光束の大きな領域ほど、光を反射させる構造が自発的に形成されやすいことを意味し、光の取出し効率を効率的に向上させ得る。
【0062】
(製造方法の変形例)
上述したように、配線層10上にハンダ組成物30を付与した後、ハンダ組成物30上に発光素子120を配置する際、発光素子120が基板110に向けて押圧されることがある。このとき、発光素子120の電極21と電極22との間の距離が小さく、それに対応して配線層10の第1配線11と第2配線12との間の距離が小さい場合には、発光素子120によって押されることにより、図16に模式的に示すように、第1配線11上のハンダ組成物30の一部と第2配線12上のハンダ組成物30の一部とが互いに接触することがある。
【0063】
第1配線11上のハンダ組成物30と第2配線12上のハンダ組成物30とが互いに接触した状態であっても、その後にリフローを実行してハンダ38を溶融させることにより、これらを分離させることができる。すなわち、リフローの実行により、ハンダ組成物30のうち第1配線11と第2配線12との間に位置していた部分は、基材16および配線層10の間の濡れ性の差によって、第1配線11上および第2配線12上に分離する。
【0064】
このとき、ハンダ組成物30中のハンダ38が第1配線11上または第2配線12上に移動することにより、図17に模式的に示すように、第1配線11または第2配線12のいずれにも重ならない領域上にハンダ組成物30中の光反射性粒子44およびフラックス46を残し得る。図17は、溶融したハンダ38が、基板110の上面110aのうち第1配線11と第2配線12とに挟まれた領域から後退することにより、上面110aのうち配線層10を除く領域R2上に、ハンダ組成物30中の光反射性粒子44の一部およびフラックス46の一部が配置された例を示している。
【0065】
また、図17に示す例では、基板110に対向する、発光素子120の下面120bのうち電極21および電極22を除く領域R1上にもハンダ組成物30中の光反射性粒子44の他の一部およびフラックス46の他の一部を配置している。領域R1上への光反射性粒子44およびフラックス46の配置は、ハンダ組成物30中のハンダ38を溶融させて、発光素子120の下面120bのうち電極21と電極22とに挟まれた領域からハンダ38を後退させることによって達成し得る。光反射性粒子44およびフラックス46は、領域R2および領域R1の両方に配置されてもよいし、これらの一方に配置されてもよい。
【0066】
配線層10上へのハンダ組成物30の付与においては、図18に模式的に示すように、第1配線11と第2配線12とを跨ぐようにしてハンダ組成物30を配線層10上に配置してもかまわない。リフローの実行によりハンダ組成物30中のハンダ38が溶融すると、溶融したハンダ38は、基板110の上面110aに垂直な断面において第1配線11と第2配線12とに挟まれた領域から、第1配線11上または第2配線12上に移動する。すなわち、ハンダ組成物30のうち第1配線11と第2配線12とを跨いでいた部分は、第1配線11上および第2配線12上に分離する。したがって、この場合も、領域R2および領域R1の一方または両方に光反射性粒子44およびフラックス46を残し得る。
【0067】
発光素子120の下面120bと、基板110の上面110aとの間の空間は、透光性の封止部材によって埋められてもよいし、図19に示す発光装置100Cのように、いわゆるアンダーフィルとしての樹脂層180によって埋められてもよい。それぞれが光反射性粒子44およびフラックス46を含む、基板110上の光反射層と、発光素子120上の光反射層との間に樹脂層180を配置することにより、光分解によってフラックス46が失われた場合であっても、光反射性粒子44の脱落を抑制できる。
【0068】
また、発光素子120と基板110との間の空間を樹脂層180あるいは封止部材で充填することにより、フラックスのような、線膨張率が大きくかつ比較的に硬い部材で空間を埋めた場合と比較して、温度サイクルに起因する、接合部材131、132へのクラックの発生を抑制し得る。樹脂層180は、光反射層141、142をも覆っていてもよい。
【0069】
なお、配線層10上へのハンダ組成物30の配置において、付与されるハンダ組成物30の量によっては、ハンダ組成物30の一部が、配線層10のうち平面視において発光素子120と重なる領域の外側(例えば第1配線11のランドの外側に位置する部分または第2配線12のランドの外側に位置する部分)にまで拡がることがあり得る。あるいは、配線層10上へのハンダ組成物30の配置後、基板110に向けた発光素子120の押圧により、ハンダ組成物30が配線層10の例えばランドの範囲を越えて拡がることもあり得る。そのようなハンダ組成物30の配置の下でリフローを実行すると、ハンダ組成物30中の主にハンダ38が、発光素子120の電極21、22と、配線層10とに挟まれた領域に集まる結果、配線層10のうち平面視において発光素子120に重ならない領域上(例えば、図6に示す領域R3上)に光反射性粒子44およびフラックス46が残り得る。すなわち、図6に示すように、配線層10のうち平面視において発光素子120に重ならない領域に、これらの材料を含む光反射層が形成され得る。
【0070】
以下、本開示の実施形態による発光装置の各構成要素をより詳細に説明する。
【0071】
[発光素子120]
発光素子120は、電流の供給により発光する半導体素子であり、その典型例は、LEDである。上述したように、図2に例示する構成において、発光素子120は、サファイアまたは窒化ガリウムなどの透光性基板24と、半導体積層構造25と、反射膜28と、一対の電極21、22とを含む。
【0072】
半導体積層構造25は、n側半導体層と、p側半導体層と、n側半導体層とp側半導体層とに挟まれた活性層とを含む。活性層は、単一量子井戸(SQW)構造としてもよいし、複数の井戸層を含む多重量子井戸(MQW)構造としてもよい。半導体積層構造25は、窒化物半導体を含有する複数の半導体層を有する。窒化物半導体は、InAlGa1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)からなる化学式において組成比xおよびyをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成を含む。活性層の発光ピーク波長は、目的に応じて適宜選択することができる。活性層は、例えば可視光または紫外光を発光可能に構成されている。
【0073】
半導体積層構造25は、それぞれが、n側半導体層と、活性層と、p側半導体層とを含む発光部を複数含んでいてもよい。半導体積層構造25が複数の発光部を含む場合、半導体積層構造25に含まれる複数の井戸層の発光ピーク波長は、互いに異なっていてもよいし、同じであってもよい。なお、発光ピーク波長が同じとは、数nm程度のばらつきがある場合も含む。
【0074】
複数の発光部の発光ピーク波長の組み合わせは、適宜選択することができる。例えば、半導体積層構造25が2つの発光部を含む場合、これらの発光部が発する光の組み合わせとして、青色光と青色光、緑色光と緑色光、赤色光と赤色光、紫外光と紫外光、青色光と緑色光、青色光と赤色光、または、緑色光と赤色光などの組み合わせが挙げられる。例えば、半導体積層構造25が3つの発光部を含む場合、これらの発光部が発する光の組み合わせとして、青色光、緑色光および赤色光の組み合わせが挙げられる。各発光部は、他の井戸層と発光ピーク波長が異なる1以上の井戸層を含んでいてもよい。
【0075】
反射膜28は、透光性基板24の上面24a上に設けられる。透光性基板24の上面24aの全体を反射膜28で覆うことにより、発光素子120の光軸上の輝度を適度に低下させつつ、半導体積層構造25からの光を発光素子120の主に側面から取り出すことが可能になる。反射膜28の典型例は、誘電体多層膜である。反射膜28は、金属膜または白色の樹脂層であってもよい。
【0076】
発光素子120は、正極および負極の組として、電極21および22を下面120bに有する。電極21の外縁から電極22の外縁までの最短距離は、例えば50μm以上500μm以下である。電極21、22の材料の例は、金、銀、スズ、白金、ロジウム、チタン、アルミニウム、タングステン、パラジウム、ニッケル、または、これらの1種以上を含む合金である。
【0077】
[ハンダ組成物30]
上述したように、ハンダ組成物30は、ハンダ38、光反射性粒子44、フラックス46、溶剤を含む。ハンダ組成物30中のハンダ38には、ハンダとして一般に用いられている材料の粒子を適用し得る。ハンダ38の材料の例は、Au含有合金、Ag含有合金、Pd含有合金、In含有合金、Pb-Pd含有合金、Au-Ga含有合金、Au-Sn含有合金、Sn含有合金、Sn-Cu含有合金、Sn-Cu-Ag含有合金、Au-Ge含有合金、Au-Si含有合金、Al含有合金、Cu-In含有合金である。
【0078】
光反射性粒子44としては、酸化チタンの粒子、酸化アルミニウムの粒子、二酸化ケイ素の粒子または二酸化ジルコニウムの粒子を適用できる。フラックス46は、ロジンおよび溶剤の混合物であり、活性剤などの添加物をさらに含有し得る。フラックス46のロジンとしては、トールロジン、ガムロジンおよびウッドロジンのいずれをも適用し得る。フラックス46は、ロジンを酸で処理した酸変性ロジンの1種以上を含んでいてもよい。フラックス46が酸変性ロジンを含むことにより、濡れ性の向上が期待できる。酸変性ロジンの例は、アクリル酸変性ロジン、アクリル酸変性水添ロジン、マレイン酸変性ロジンおよびマレイン酸変性水添ロジンである。
【0079】
活性剤としては、有機酸、ハロゲン系活性剤(例えば、有機ハロゲン化合物またはアミンハロゲン化水素酸塩)、アミン、および、有機リン系化合物(例えば、ホスホン酸エステルまたはフェニル置換ホスフィン酸)などを用いることができる。フラックス46は、上記の化合物の1種を単独で、あるいは、2種以上を含んでいてもよい。ハンダ組成物30中の各成分の含有量は、JIS Z 3910:2017に規定されている方法に従い、例えばICP発光分光分析法により測定できる。
【0080】
なお、市販のハンダ組成物には、接合強度の向上を目的として、エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を含有するものが存在する。これに対し、ハンダ組成物30は、エポキシ樹脂を含有しない。エポキシ樹脂は、青色光により変色することがある。ハンダ組成物30がエポキシ樹脂を含有しないので、本開示の実施形態によれば、ハンダ組成物30から形成された接合部材131、132(または光反射層141、142)は、エポキシ樹脂の変色に起因する、光出力の低下を回避できる。すなわち、本開示の実施形態によれば、長期の使用に対する発光装置の信頼性を確保し得る。
【0081】
[封止部材150]
封止部材(例えば封止部材150)は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂またはそれらを混合した樹脂、ガラスなどから形成され、典型的には、発光素子120を覆うドーム状の部分を含む。母材とは屈折率の異なる材料を封止部材の材料に分散させることにより、封止部材に光拡散の機能を付与してもよい。例えば、封止部材が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムまたは酸化亜鉛の粒子などの光拡散材を含んでいてもよい。母材中に分散させる光拡散材として、D50で定義される粒径が1nm以上100nm以下であるようなナノ粒子を用いてもよい。
【0082】
封止部材は、光拡散材に代えて、あるいは、光拡散材とともに、蛍光体などの波長変換材料を含有していてもよい。封止部材中に含有させられる蛍光体には、公知の材料を適用することができる。蛍光体の例は、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Y(Al,Ga)12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Lu(Al,Ga)12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Tb(Al,Ga)12:Ce)、βサイアロン系蛍光体(例えば、(Si,Al)(O,N):Eu)、α系サイアロン蛍光体(例えば、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu)、窒化物系蛍光体、または、フッ化物系蛍光体である。窒化物系蛍光体としては、CASN系蛍光体(例えば、CaAlSiN:Eu)またはSCASN系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Eu)などを用いることができる。フッ化物系蛍光体としては、KSF系蛍光体(例えば、KSiF:Mn)、KSAF系蛍光体(例えば、K(Si,Al)F:Mn)またはMGF系蛍光体(例えば、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn)などを用いることができる。
【0083】
イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(YAG系蛍光体)は、青色光を黄色光に変換する波長変換材料の例である。βサイアロン系蛍光体は、青色光を緑色光に変換する波長変換材料の例である。CASN系蛍光体およびSCASN系蛍光体は、青色光を赤色光に変換する波長変換材料の例であり、KSF系蛍光体、KSAF系蛍光体、MGF系蛍光体も、青色光を赤色光に変換する波長変換材料の例である。蛍光体は、ペロブスカイト構造を有する蛍光体(例えば、CsPb(F,Cl,Br,I))、または、量子ドット蛍光体(例えば、CdSe、InP、AgInSまたはAgInSe)などであってもよい。
【0084】
[基板110、210]
基板110は、基材16と、基材16に支持された配線層10とを含む。基材16は、樹脂、ガラス、セラミックスなどから形成される絶縁性の部材である。基材16の材料として、ガラス繊維強化樹脂(ガラスエポキシ樹脂)などの複合材料を用いてもよい。基板110と同様に、図9に示す基板210も、基材26と、基材26に支持された配線層20とを有する。配線層10および配線層20は、Cu、Fe、Ni、Al、AgもしくはAuなどの金属、または、これらの1種以上を含む合金から形成される導電層である。基板210は、フレキシブルプリント基板(FPC)であってもよい。
【0085】
[区画部材260]
図11を参照しながら説明したように、発光装置200は、各光源220を取り囲む複数の壁部60を有する区画部材260を含む。区画部材260の材料の例は、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの酸化物粒子を含有する樹脂材料である。
【0086】
区画部材260の形状は、金型を用いた各種成型法または光造形によって得ることが可能である。例えば、酸化物粒子などの白色フィラーを含有するポリエチレンテレフタレート(PET)のシートから、真空成型により区画部材260を得ることが可能である。白色フィラーを含有しない樹脂シートの成型によって得られた部材の表面に反射材を配置することにより、区画部材260を得てもよい。区画部材260を形成するための樹脂シートの厚さは、例えば100~500μmである。
【0087】
[絶縁層270]
絶縁層270は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、オキセタン樹脂、シリコーン樹脂、変成シリコーン樹脂などの樹脂材料から形成され、絶縁性のレジストとして機能する。絶縁層270は、区画部材260と同様に、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの光反射性の粒子を含有することにより、入射した光を反射させる機能をさらに有していてもよい。絶縁層270が光反射性の粒子を含有することにより、光の利用効率向上させることができる。図20に示すように、底部62を有する区画部材260が適用される場合、絶縁層270は、区画部材260の底部62と、基板210との間に配置される。
【0088】
[波長変換シート280、プリズムシート282および光拡散シート284]
図9および図20に例示する構成において、発光装置(発光装置200、200A)は、波長変換シート280、プリズムシート282および光拡散シート284を有している。典型的には、波長変換シート280、プリズムシート282および光拡散シート284は、基板210に近い側からこの順に配置される。
【0089】
波長変換シート280は、典型的には、樹脂中に蛍光体などの粒子が分散された材料から形成される。波長変換シート280の母材の例は、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂もしくはフッ素樹脂、または、これらの2種以上を含む材料である。波長変換シート280に含有させる蛍光体としては、封止部材に分散させ得る蛍光体として例示した波長変換材料を適用できる。波長変換シート280の厚さは、例えば、100μm以上200μm以下の範囲であり得る。
【0090】
光拡散シート284は、入射する光を拡散させ、透過させる。光を拡散させる構造は、光拡散シート284の表面に凹凸を設けたり、光拡散シート284は中に屈折率の異なる材料を分散させたりすることによって光拡散シート284に付与される。光拡散シート284は、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂などの、可視光に対して光吸収の少ない材料から形成される。光拡散シート284として、ディフューザーフィルムなどの名称で市販されている光学シートを利用可能である。光拡散シート284の下面は、区画部材260から離れていてもよいし、接していてもよい。
【0091】
プリズムシート282は、それぞれが所定の方向に延びる複数のプリズムが配列された構造を有する。プリズムシート282は、種々の方向から入射する光の進行方向を+Z方向に屈折させる機能を有する。例えば3M社の高度構造光学複合体(ASOC)をプリズムシート282として用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本開示の実施形態により得られる発光装置は、各種照明用光源、車載用光源、ディスプレイ用光源などに有用である。本開示の実施形態は、特に、液晶表示装置用バックライトユニットに有利に適用できる。
【符号の説明】
【0093】
10、20 配線層
11 第1配線
12 第2配線
16、26 基材
21、22 発光素子の電極
30 ハンダ組成物
38 ハンダ
44 光反射性粒子
46 フラックス
50 空隙
100A~100C 発光装置
110 基板
120 発光素子
131、132 接合部材
141、142、141B、142B 光反射層
150 封止部材
180 樹脂層(アンダーフィル)
200 発光装置
210 基板
220 光源
図1
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