(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096469
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】円偏光板及び有機EL表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230630BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20230630BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20230630BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20230630BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230630BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
G02B5/30
H05B33/02
H05B33/14 A
H01L27/32
G09F9/30 365
G09F9/00 313
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212268
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 央人
(72)【発明者】
【氏名】呉 大▲ショウ▼
【テーマコード(参考)】
2H149
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB12
2H149AB13
2H149BA02
2H149CA02
2H149DA02
2H149DA12
2H149EA03
2H149EA06
2H149EA12
2H149FA02X
2H149FA03W
2H149FA05X
2H149FA24Y
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2H149FA63
2H149FA66
2H149FD18
2H149FD25
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC21
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3K107EE26
3K107EE45
3K107FF00
3K107FF14
5C094BA27
5C094DA13
5C094ED14
5C094FB06
5G435BB05
5G435DD11
5G435FF05
5G435HH05
(57)【要約】
【課題】帯電防止剤を含有する円偏光板であって、湿熱環境下において光学特性の劣化を生じにくい円偏光板及び該円偏光板を含む有機EL表示装置を提供する。
【解決手段】有機EL表示装置用円偏光板であって、直線偏光板と、第1粘着剤層と、少なくとも1層の位相差層を含む位相差層構造体とをこの順に含み、第1粘着剤層が帯電防止剤を含有する円偏光板、及び、該円偏光板を含む有機EL表示装置が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL表示装置用円偏光板であって、
直線偏光板と、第1粘着剤層と、少なくとも1層の位相差層を含む位相差層構造体とをこの順に含み、
前記第1粘着剤層が帯電防止剤を含有する、円偏光板。
【請求項2】
直線偏光板と、第1粘着剤層と、少なくとも1層の位相差層を含む位相差層構造体と、第2粘着剤層とをこの順に含み、
前記第1粘着剤層及び前記第2粘着剤層のうち、前記第1粘着剤層のみが帯電防止剤を含有する、円偏光板。
【請求項3】
JIS K 7129-1:2019に規定される感湿センサ法による温度40℃における前記直線偏光板の水蒸気透過度をW1、前記位相差層構造体の水蒸気透過度をW2とするとき、
W1が5〔g/(m2・24hr)〕以上100〔g/(m2・24hr)〕以下であり、
W2が300〔g/(m2・24hr)〕以上900〔g/(m2・24hr)〕以下である、請求項1又は2に記載の円偏光板。
【請求項4】
JIS K 7129-1:2019に規定される感湿センサ法による温度40℃における前記直線偏光板の水蒸気透過度をW1、前記位相差層構造体の水蒸気透過度をW2とするとき、
W1/W2が0.006以上0.4以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の円偏光板。
【請求項5】
前記帯電防止剤の含有量は、前記第1粘着剤層に含まれる樹脂100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の円偏光板。
【請求項6】
前記帯電防止剤がイオン性化合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の円偏光板。
【請求項7】
前記位相差層が液晶硬化層である、請求項1~6のいずれか1項に記載の円偏光板。
【請求項8】
前記直線偏光板は、直線偏光子と、その片面又は両面に積層される保護フィルムとを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の円偏光板。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の円偏光板を含む、有機EL表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円偏光板及び有機EL表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、直線偏光子及び位相差フィルムを有する円偏光板と、画像表示パネルとを視認側からこの順に有する画像表示装置であって、円偏光板が有する位相差フィルムと画像表示パネルとが、帯電防止剤を含有する感圧性接着剤によって接合されている画像表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された画像表示装置では、静電気によって画像表示パネルが破壊される現象を抑制すべく、直線偏光子及び位相差フィルムを有する円偏光板と画像表示パネルとを貼合する感圧性接着剤に帯電防止剤が含有されている。しかしながら、帯電防止剤は、湿熱環境下において、直線偏光子や位相差フィルムの光学特性の劣化を引き起こす要因となり得る。
【0005】
本発明の目的は、帯電防止剤を含有する円偏光板であって、湿熱環境下において光学特性の劣化を生じにくい円偏光板及び該円偏光板を含む有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の円偏光板及び有機EL表示装置を提供する。
[1] 有機EL表示装置用円偏光板であって、
直線偏光板と、第1粘着剤層と、少なくとも1層の位相差層を含む位相差層構造体とをこの順に含み、
前記第1粘着剤層が帯電防止剤を含有する、円偏光板。
[2] 直線偏光板と、第1粘着剤層と、少なくとも1層の位相差層を含む位相差層構造体と、第2粘着剤層とをこの順に含み、
前記第1粘着剤層及び前記第2粘着剤層のうち、前記第1粘着剤層のみが帯電防止剤を含有する、円偏光板。
[3] JIS K 7129-1:2019に規定される感湿センサ法による温度40℃における前記直線偏光板の水蒸気透過度をW1、前記位相差層構造体の水蒸気透過度をW2とするとき、
W1が5〔g/(m2・24hr)〕以上100〔g/(m2・24hr)〕以下であり、
W2が300〔g/(m2・24hr)〕以上900〔g/(m2・24hr)〕以下である、[1]又は[2]に記載の円偏光板。
[4] JIS K 7129-1:2019に規定される感湿センサ法による温度40℃における前記直線偏光板の水蒸気透過度をW1、前記位相差層構造体の水蒸気透過度をW2とするとき、
W1/W2が0.006以上0.4以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の円偏光板。
[5] 前記帯電防止剤の含有量は、前記第1粘着剤層に含まれる樹脂100質量部に対して0.5質量部以上5質量部以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の円偏光板。
[6] 前記帯電防止剤がイオン性化合物である、[1]~[5]のいずれかに記載の円偏光板。
[7] 前記位相差層が液晶硬化層である、[1]~[6]のいずれかに記載の円偏光板。
[8] 前記直線偏光板は、直線偏光子と、その片面又は両面に積層される保護フィルムとを含む、[1]~[7]のいずれかに記載の円偏光板。
[9] [1]~[8]のいずれかに記載の円偏光板を含む、有機EL表示装置。
【発明の効果】
【0007】
帯電防止剤を含有する円偏光板であって、湿熱環境下において光学特性の劣化を生じにくい円偏光板、及び、該円偏光板を含む有機EL表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る円偏光板の一例を示す概略断面図である。
【
図2】本発明に係る円偏光板の他の一例を示す概略断面図である。
【
図3】本発明に係る円偏光板のさらに他の一例を示す概略断面図である。
【
図4】本発明に係る円偏光板のさらに他の一例を示す概略断面図である。
【
図5】本発明に係る円偏光板のさらに他の一例を示す概略断面図である。
【
図6】本発明に係る有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下のすべての図面は、本発明の理解を助けるために示すものであり、図面に示される各構成要素のサイズや形状は、実際の構成要素のサイズや形状とは必ずしも一致しない。
【0010】
<円偏光板>
図1は、本発明に係る円偏光板(以下、単に「円偏光板」ともいう。)の一例を示す概略断面図である。本発明に係る円偏光板は、直線偏光板1と、第1粘着剤層10と、位相差層構造体2とをこの順に含む。直線偏光板1と第1粘着剤層10とは通常接しており、第1粘着剤層10と位相差層構造体2とは通常接している。直線偏光板1と位相差層構造体2との間に配置される第1粘着剤層10は、帯電防止剤を含有する。なお、用語「円偏光板」は、楕円偏光板を含む。
【0011】
本発明に係る円偏光板は通常、有機EL表示素子等の画像表示素子の視認側に配置される。このように円偏光板を配置することによって、画像表示素子に入射した外光が、該素子が有する内部電極等により反射して外部に出射する内部反射光を抑制することができる。すなわち、円偏光板は反射防止膜として好適である。
【0012】
本発明に係る円偏光板によれば、第1粘着剤層10が帯電防止剤を含有しているため、静電気による画像表示素子の破壊や誤作動を防止又は抑制することができる。また、本発明に係る円偏光板によれば、直線偏光板1と位相差層構造体2との間に配置される第1粘着剤層10に帯電防止剤が含有されているため、画像表示素子との貼合に用いる粘着剤層に帯電防止剤が含有されている場合(特許文献1に記載された画像表示装置のような場合)と比較して、湿熱環境下において光学特性の劣化を生じにくい。具体的には、湿熱環境下において、直線偏光板1の光学特性(偏光度及び透過率)の劣化が生じにくいとともに、位相差層構造体2の光学特性(位相差特性)の劣化が生じにくい。位相差特性の劣化(変化)は円偏光板の反射色相の変化を意味する。反射色相の変化を抑制することは、円偏光板を反射防止膜として用いるうえで肝要である。
【0013】
湿熱環境下での帯電防止剤による円偏光板の光学特性の劣化は、帯電防止剤を含有する粘着剤層から、帯電防止剤が水分とともに他の層へ移行することによるものと推定される。本発明に係る円偏光板において、湿熱環境下での帯電防止剤による光学特性の劣化を抑制する効果が、特許文献1に記載された構成のものと比較して高いのは、本発明に係る円偏光板では、帯電防止剤の移行方向が、直線偏光板方向と位相差層構造体方向の2つの方向に分散されるため、帯電防止剤による直線偏光板及び位相差層構造体への影響がそれぞれ緩和されるためであると考えられる。
【0014】
以下、円偏光板についてより詳細に説明する。
(1)直線偏光板
直線偏光板1は、直線偏光子を含む。直線偏光子は、自然光等の非偏光な光線から、ある一方向の直線偏光を選択的に透過させる機能を有する。直線偏光子としては、二色性色素を吸着させた延伸フィルム又は延伸層、重合性液晶化合物の硬化物及び1種以上の二色性色素を含む液晶硬化層等が挙げられる。
【0015】
二色性色素を吸着させた延伸フィルムである直線偏光子は、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをヨウ素等の二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及び、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。
【0016】
二色性色素を吸着させた延伸フィルムの厚みは、通常30μm以下であり、好ましくは18μm以下、より好ましくは15μm以下である。該厚みは、通常1μm以上であり、例えば5μm以上であってよい。
【0017】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することによって得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとそれに共重合可能な他の単量体との共重合体が用いられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸系化合物、オレフィン系化合物、ビニルエーテル系化合物、不飽和スルホン系化合物、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド系化合物が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルのいずれでもよいことを意味する。(メタ)アクリレート等の「(メタ)」も同様の意味である。
【0018】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85モル%以上100モル%以下程度であり、好ましくは98モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール等も使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000以上10000以下であり、好ましくは1500以上5000以下である。
【0019】
二色性色素を吸着させた延伸層である直線偏光子は、一軸延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたフィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及び、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。
あるいは、二色性色素を吸着させた延伸層である直線偏光子は、上記ポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を基材層上に塗布する工程、得られた積層体を一軸延伸する工程、一軸延伸された積層体のポリビニルアルコール系樹脂層を二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着された積層体をホウ酸水溶液で処理する工程、及び、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造することができる。基材層は、円偏光板に組み込まれてもよいし、直線偏光子から剥離除去されてもよい。基材層の材料及び厚みは、後述する熱可塑性樹脂フィルムの材料及び厚みと同様であってよい。
【0020】
液晶硬化層である直線偏光子を形成するために用いる重合性液晶化合物は、重合性反応基を有し、かつ、液晶性を示す化合物である。重合性反応基は、重合反応に関与する基であり、光重合性反応基であることが好ましい。光重合性反応基は、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基をいう。光重合性反応基としては、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。重合性液晶化合物の種類は特に限定されず、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、及び、これらの混合物を用いることができる。重合性液晶化合物の液晶性は、サーモトロピック性液晶でもリオトロピック性液晶でもよく、サーモトロピック液晶を秩序度で分類すると、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。
【0021】
液晶硬化層において、二色性色素は、重合性液晶化合物の硬化物中に分散し、配向している。液晶硬化層である直線偏光子に用いられる二色性色素としては、300nm以上700nm以下の範囲に吸収極大波長を有するものが好ましい。このような二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、及び、アントラキノン色素等が挙げられ、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、及び、スチルベンアゾ色素等が挙げられ、好ましくはビスアゾ色素、及び、トリスアゾ色素である。二色性色素は単独でも、2種以上を組み合わせてもよく、3種以上を組み合わせることが好ましい。特に、3種以上のアゾ色素を組み合わせることがより好ましい。二色性色素の一部が反応性基を有していてもよく、また液晶性を有していてもよい。
【0022】
液晶硬化層である直線偏光子は、例えば、基材層上に形成した配向膜上に、重合性液晶化合物及び二色性色素を含む直線偏光子形成用組成物を塗布し、重合性液晶化合物を重合して硬化させることによって形成することができる。配向膜の厚みは、例えば5nm以上1μm以下である。基材層上に、直線偏光子形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を基材層とともに延伸することによって、直線偏光子を形成してもよい。直線偏光子を形成するために用いる基材層は、円偏光板に組み込まれてもよい。
【0023】
基材層としては、熱可塑性樹脂フィルムが挙げられる。熱可塑性樹脂フィルムを構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);(メタ)アクリル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。中でも、熱可塑性樹脂フィルムは、環状ポリオレフィン系樹脂フィルム、セルロースエステル系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム又は(メタ)アクリル系樹脂フィルムであることが好ましい。
【0024】
熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、薄型化の観点から、通常300μm以下であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、なおさらに好ましくは30μm以下であり、また、通常1μm以上であり、例えば5μm以上又は20μm以上であってよい。
【0025】
基材層上にハードコート層(HC層)が形成されていてもよい。ハードコート層は、基材層の一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度及び耐スクラッチ性を向上させることができる。ハードコート層を有する基材層の該ハードコート層上に直線偏光子を形成する場合、該ハードコート層は後述する保護層となり得る。
【0026】
重合性液晶化合物及び二色性色素を含む直線偏光子形成用組成物、並びに、この組成物を用いた直線偏光子の製造方法としては、特開2013-37353号公報、特開2013-33249号公報、特開2017-83843号公報等に記載のものを例示することができる。直線偏光子形成用組成物は、重合性液晶化合物及び二色性色素に加えて、溶媒、重合開始剤、架橋剤、レベリング剤、酸化防止剤、可塑剤、増感剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの成分は、それぞれ1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
直線偏光子形成用組成物が含有していてもよい重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物であり、より低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合性開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生できる光重合開始剤が挙げられ、中でも、光の作用によりラジカルを発生する光重合開始剤が好ましい。重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の総量100質量部に対して、好ましくは1質量部以上10質量部以下、より好ましくは3質量部以上8質量部以下である。この範囲内であると、重合性基の反応が十分に進行し、かつ、液晶化合物の配向状態を安定化させやすい。
【0028】
液晶硬化層である直線偏光子の厚みは、通常10μm以下であり、好ましくは0.5μm以上8μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下である。
【0029】
直線偏光子の視感度補正偏光度Pyは、通常95%以上であり、好ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは98.7%以上、なおさらに好ましくは99.5%以上、特に好ましくは99.9%以上であり、99.99%以上であってもよい。直線偏光子の視感度補正偏光度Pyは、99.999%以下又は99.99%以下であってもよい。視感度補正偏光度Pyは、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製の「V7100」)を用いて、得られた偏光度に対して「JIS Z 8701」の2度視野(C光源)により視感度補正を行うことで算出することができる。
【0030】
直線偏光子の視感度補正偏光度Pyを高くすることは、円偏光板の反射防止機能を高めるうえで有利である。視感度補正偏光度Pyが95%未満であると、反射防止機能を果たせないことがある。
【0031】
直線偏光子の視感度補正単体透過率Tyは、通常41%以上であり、好ましくは41.1%以上、より好ましくは41.2%以上であり、42%以上であってもよく、42.5%以上であってもよい。直線偏光子の視感度補正単体透過率Tyは、通常50%以下であり、48%以下であってもよく、46%以下であってもよく、44%以下であってもよく、43%以下であってもよい。視感度補正単体透過率Tyが過度に高いと視感度補正偏光度Pyが低くなりすぎて、円偏光板の反射防止機能が不十分となることがある。視感度補正単体透過率Tyは、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製の「V7100」)を用いて、得られた透過率に対して「JIS Z 8701」の2度視野(C光源)により視感度補正を行うことで算出することができる。
【0032】
直線偏光板1は、上述の基材層と液晶硬化層である直線偏光子との積層体であってもよい。あるいは基材層は、直線偏光子から剥離除去されてもよい。液晶硬化層である直線偏光子を含む直線偏光板1は、配向膜を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0033】
直線偏光板1は、直線偏光子を保護するための保護層を有していてもよい。保護層は、直線偏光子の片側又は両側に配置することができる。直線偏光子の両側に保護層が積層されている場合、二つの保護層は同種であってもよいし、異種であってもよい。保護層は、例えば、有機物層又は無機物層である。有機物層又は無機物層は、例えば、コーティングにより形成される層である。有機物層は、保護層形成用組成物(例えば(メタ)アクリル系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ポリイミド系樹脂組成物等)の硬化物層、水溶性樹脂層(例えばポリビニルアルコール系樹脂層)等である。硬化型の保護層形成用組成物は、活性エネルギー線硬化型であってもよいし、熱硬化型であってもよい。無機物層は、例えばシリコン酸化物等から形成することができる。保護層が有機物層である場合、保護層はハードコート層(HC層)やオーバーコート層(OC層)と呼ばれるものであってもよい。保護層は、上述の基材層又は配向膜上に直接的に形成されてもよく、直線偏光子上に直接的に形成されてもよい。
【0034】
保護層が有機物層である場合、例えば活性エネルギー線硬化型の保護層形成用組成物を上述の基材層上又は基材層上に形成された配向膜上に塗布し、活性エネルギーを照射して硬化させることにより保護層(例えばHC層)を形成することができる。保護層は、基材層が剥離して除去された状態で円偏光板に組み込まれてもよい。保護層形成用組成物を塗布する方法としては、例えばスピンコート法等が挙げられる。保護層が無機物層である場合、例えばスパッタリング法、蒸着法等によって保護層を形成することができる。オーバーコート層(OC層)は、例えば、直線偏光子の表面に直接塗布することにより形成することができる。保護層の厚みは、例えば0.1μm以上10μm以下であり、好ましくは5μm以下である。
【0035】
保護層は、熱可塑性樹脂フィルムであってもよい。熱可塑性樹脂フィルムとしては、上述のものを用いることができる。保護層が熱可塑性樹脂フィルムである場合、熱可塑性樹脂フィルムは、例えば、後述の貼合層を介して直線偏光子に貼合される。該貼合層は、好ましくは接着剤層である。あるいは、保護層の上に直線偏光子が形成され得る。円偏光板は、直線偏光子における第1粘着剤層とは反対側に、熱可塑性樹脂フィルム及び硬化物層からなる群より選択される少なくとも1つの保護層を備えることが好ましい。
図2は、円偏光板の他の一例を示す概略断面図である。
図2に示される円偏光板において、直線偏光板1は、直線偏光子1bと、直線偏光子1bの一方面に第1貼合層1dを介して貼合される保護層1aと、直線偏光子1bの他方面に第1貼合層1dを介して貼合される保護層1cとを含む。
【0036】
(2)位相差層構造体
図2に示すように、円偏光板は位相差層構造体2を含み、位相差層構造体2は、少なくとも1層の位相差層、すなわち、第1位相差層2aを含む。位相差層構造体2は、第1位相差層2aのみを有していてもよいし、2層以上の位相差層からなる積層構造であってもよい。すなわち、位相差層構造体2は、第1位相差層2aとは別の位相差層(例えば
図2に示される第2位相差層2b)を1層以上含んでいてもよい。
【0037】
第1位相差層2aは、例えばλ/4層である。位相差層構造体2が2層の位相差層を含む場合、位相差層の組み合わせとしては、直線偏光板1側から順に、λ/4層とポジティブC層との組み合わせ、λ/2層とλ/4層との組み合わせ、ポジティブC層とλ/4層との組み合わせが挙げられる。位相差層同士の積層には第2貼合層2cを用いることができる。
【0038】
λ/4層は、波長550nmにおける面内位相差値Re(550)が、通常90nm以上220nm以下の範囲であり、好ましくは100nm以上200nm以下の範囲である。λ/2層は、波長550nmにおける面内位相差値Re(550)が、好ましくは200nm以上300nm以下の範囲である。また、ポジティブC層は、波長550nmにおける厚み方向の位相差値Rth(550)が、通常-170nm以上-10nm以下の範囲であり、好ましくは-150nm以上-20nm以下の範囲である。
【0039】
位相差層構造体2は、上述の内部反射を効果的に抑制する観点から、好ましくは逆波長分散性を有し、より好ましくは波長分散αが0.95以下であり、さらに好ましくは波長分散αが0.80以上0.93以下であり、なおさらに好ましくは波長分散αが0.80以上0.90以下であり、特に好ましくは波長分散αが0.80以上0.88以下である。波長分散αとは、波長450nmにおける面内位相差値Re(450)と波長550nmにおける面内位相差値Re(550)との比である。
波長分散α=面内位相差値Re(450)/面内位相差値Re(550)
【0040】
第1位相差層2a及び他の位相差層は、上述する熱可塑性樹脂フィルムから延伸等により形成される位相差フィルムであってもよいし、液晶硬化層であってもよい。液晶硬化層は、重合性液晶化合物が配向状態で重合硬化した硬化物層である。位相差層構造体2は、好ましくは、液晶硬化層を1層以上含み、2層又はそれ以上の層を含んでいてもよい。
【0041】
重合性液晶化合物としては、棒状の重合性液晶化合物及び円盤状の重合性液晶化合物が挙げられ、これらのうちの一方を用いてもよく、これらの両方を含む混合物を用いてもよい。棒状の重合性液晶化合物が基材層に対して水平配向又は垂直配向した場合は、該重合性液晶化合物の光軸は、該重合性液晶化合物の長軸方向と一致する。円盤状の重合性液晶化合物が配向した場合は、該重合性液晶化合物の光軸は、該重合性液晶化合物の円盤面に対して直交する方向に存在する。
【0042】
重合性液晶化合物を重合することによって形成される液晶硬化層が面内位相差を発現するためには、重合性液晶化合物を適した方向に配向させればよい。重合性液晶化合物が棒状の場合は、該重合性液晶化合物の光軸を基材層平面に対して水平に配向させることで面内位相差が発現し、この場合、光軸方向と遅相軸方向とは一致する。重合性液晶化合物が円盤状の場合は、該重合性液晶化合物の光軸を基材層平面に対して水平に配向させることで面内位相差が発現し、この場合、光軸と遅相軸とは直交する。重合性液晶化合物の配向状態は、配向膜と重合性液晶化合物との組み合わせによって調整することができる。
【0043】
重合性液晶化合物は、少なくとも1つの重合性反応基を有し、かつ、液晶性を有する化合物である。重合性液晶化合物を2種類以上併用する場合、少なくとも1種類が分子内に2以上の重合性反応基を有することが好ましい。重合性反応基は、重合反応に関与する基であり、光重合性反応基であることが好ましい。光重合性反応基は、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基をいう。光重合性反応基の例は上述のものと同様である。重合性液晶化合物が有する液晶性は、サーモトロピック性液晶でもリオトロピック液晶でもよく、サーモトロピック液晶を秩序度で分類すると、ネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。
【0044】
位相差層構造体2は、位相差層に隣接する配向膜を含んでいてもよい。配向膜は、重合性液晶化合物を所望の方向に配向させる配向規制力を有する。配向膜は、重合性液晶化合物の分子軸を基材層に対して垂直配向した垂直配向膜であってもよく、重合性液晶化合物の分子軸を基材層に対して水平配向した水平配向膜であってもよく、重合性液晶化合物の分子軸を基材層に対して傾斜配向させる傾斜配向膜であってもよい。
【0045】
液晶硬化層の厚みは、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、2μm以上であってもよく、また、10μm以下であることが好ましく、8μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。配向膜の厚みは、例えば5nm以上1μm以下である。
【0046】
液晶硬化層は、基材層上に、重合性液晶化合物を含む液晶層形成用組成物を塗布、乾燥し、重合性液晶化合物を重合させることによって形成することができる。液晶層形成用組成物は、基材層上に形成された配向膜上に塗布してもよい。基材層の材料及び厚みは、上述する熱可塑性樹脂フィルムの材料及び厚みと同様であってよい。基材層は、液晶硬化層である位相差層とともに位相差層構造体2に組み込まれてもよく、基材層を剥離して、液晶硬化層のみ、又は、該液晶硬化層及び配向膜が位相差層構造体2に組み込まれてもよい。
【0047】
図2に示される円偏光板の例において、位相差層構造体2は、第1位相差層2a及び第2位相差層2bを備えており、これらは第2貼合層2cにより貼合されている。ただし、第2貼合層2c及び第2位相差層2bは省略されてもよい。
図2に示される円偏光板の例において、直線偏光板1は、直線偏光子1bとその両面に第1貼合層1dを介して積層される保護層1a,1cとを備える。ただし、保護層1a,1cのいずれかを省略してもよい。
【0048】
位相差層構造体2は、位相差層及び配向膜以外の層を含んでいてもよい。このような層としては位相差の発現を目的としない層が挙げられ、例えば、未延伸フィルムが挙げられる。未延伸フィルムとしては、上述の熱可塑性樹脂フィルムを用いることができる。位相差層構造体2が熱可塑性樹脂フィルム2dを含む例を
図3に示す。
図3に示される例において、熱可塑性樹脂フィルム2dは、第3貼合層2eを介して第2位相差層2bに貼合されている。ただし、熱可塑性樹脂フィルム2dは、配向膜と貼合されてもよい。位相差層構造体2が熱可塑性樹脂フィルム2dを含むことにより、位相差層構造体2の水蒸気透過度W2を低くする方向へ調整することができる。なお、後述する第2粘着剤層は位相差層構造体2には含まれない。
【0049】
熱可塑性樹脂フィルム2dは、ハードコート層を有していてもよい。ハードコート層は、熱可塑性樹脂フィルム2dの一方の面に形成されていてもよいし、両面に形成されていてもよい。ハードコート層については上述の記載が引用される。ハードコート層の有無によっても位相差層構造体2の水蒸気透過度W2を調整することができる。
【0050】
(3)直線偏光板及び位相差層構造体の水蒸気透過度
湿熱環境下における円偏光板の光学特性の劣化、とりわけ、位相差層構造体2の位相差特性の劣化を生じにくくするために、直線偏光板1及び位相差層構造体2は、適切な範囲の水蒸気透過度を有していることが好ましい。具体的には、直線偏光板1の水蒸気透過度W1は、位相差層構造体2の水蒸気透過度W2よりも小さいことが好ましい。両者の水蒸気透過度がこのような関係であるときに上記劣化を抑制できるのは、平面視における水蒸気の過度な侵入を抑制することができ、適度に帯電防止剤の移行を調整しやすいためであると推定される。よって、上記劣化を生じにくくするためには、W1<W2である方が、W1=W2又はW1>W2であることよりも有利である。
【0051】
本明細書において水蒸気透過度とは、JIS K 7129-1:2019に規定される感湿センサ法による温度40℃における水蒸気透過度を意味し、より詳細には後述する実施例の項に記載される方法によって測定される。
【0052】
上記劣化をより効果的に抑制するために、水蒸気透過度W1及びW2は、下記〔a〕及び〔b〕の少なくとも1つを満たすことがより好ましく、両者を満たすことがさらに好ましい。水蒸気透過度W1及びW2の単位は、g/(m2・24hr)である。
〔a〕W1が5以上100以下であり、かつ、W2が300以上900以下である。
〔b〕W1/W2が0.006以上0.4以下である。
【0053】
〔a〕に関し、W1が5以上であることは、平面視における水蒸気の侵入抑制の点で有利であり、100以下であることは、帯電防止剤を直線偏光板1及び位相差構造体2に適度に拡散させる点で有利である。また、W2が300以上であることは、位相差構造体2の位相差特性の劣化を抑制する点で有利であり、900以下であることは、円偏光板の光学特性の劣化を抑制する点で有利である。
【0054】
上記劣化をより効果的に抑制する観点から、W1は、好ましくは10以上90以下、より好ましくは15以上85以下、さらに好ましくは20以上80以下、特に好ましくは30以上60以下である。また、上記劣化をより効果的に抑制する観点から、W2は、好ましくは350以上850以下、より好ましくは400以上800以下、さらに好ましくは450以上750以下、特に好ましくは500以上700以下である。
【0055】
上記劣化をより効果的に抑制する観点から、W2とW1との差は、好ましくは500以上、より好ましくは600以上、さらに好ましくは700以上、特に好ましくは800以上である。W2とW1との差は、通常、850以下である。
【0056】
〔b〕に関し、W1/W2が0.006以上であることは、直線偏光層の保護の点で有利であり、0.4以下であることは、位相差構造体2の保護の点で有利である。上記劣化をより効果的に抑制する観点から、W1/W2は、好ましくは0.010以上0.26以下、より好ましくは0.015以上0.20以下、さらに好ましくは0.025以上0.18以下、特に好ましくは0.05以上0.1以下である。
【0057】
直線偏光板1の水蒸気透過度W1は、例えば、組み合わせる保護層の材質、枚数、膜厚によって調整することができる。また保護層にハードコート、帯電防止コートのようなコート層を設けることでも調整可能であり、直線偏光板と保護層を接着する際の接着剤組成物を適宜選択することによっても調整することができる。位相差層構造体2の水蒸気透過度W2も同様の手法で調整することができる。
【0058】
(4)第1粘着剤層
直線偏光板1と位相差層構造体2との間に介在し、両者を貼合するための第1粘着剤層10は、帯電防止剤を含有する帯電防止性の粘着剤層である。第1粘着剤層10は、ベースポリマーと帯電防止剤とを含有する粘着剤組成物から構成することができる。粘着剤層は、例えば粘着剤組成物から構成される層又はこの層に対して何らかの処理を施してなる層であってよい。粘着剤とは、感圧式接着剤とも呼ばれるものである。本明細書において「接着剤」とは、粘着剤(感圧式接着剤)以外の接着剤をいい、粘着剤とは明確に区別される。
【0059】
ベースポリマーとしては、(メタ)アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、ウレタン系樹脂、エステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等が挙げられる。中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れる(メタ)アクリル系樹脂が好適である。粘着剤組成物は、活性エネルギー線硬化型又は熱硬化型であってもよい。
【0060】
(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステルの1種又は2種以上をモノマーとする重合体又は共重合体が好適に用いられる。(メタ)アクリル系樹脂には、極性モノマーを共重合させることが好ましい。極性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基等の極性基を有するモノマーが挙げられる。
【0061】
帯電防止剤としては、イオン性化合物が挙げられる。イオン性化合物は、無機カチオン又は有機カチオンと、無機アニオン又は有機アニオンとを有する化合物である。第1粘着剤層10は、2種以上のイオン性化合物を含有していてもよい。
【0062】
無機カチオンとしては、例えば、リチウムカチオン〔Li+〕、ナトリウムカチオン〔Na+〕、カリウムカチオン〔K+〕等のアルカリ金属イオンや、ベリリウムカチオン〔Be2+〕、マグネシウムカチオン〔Mg2+〕、カルシウムカチオン〔Ca2+〕等のアルカリ土類金属イオン等が挙げられる。有機カチオンとしては、例えば、イミダゾリウムカチオン、ピリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、ホスホニウムカチオン等が挙げられる。有機カチオン成分は、ベースポリマーとの相溶性に優れることから好ましく用いられる。
【0063】
無機アニオンとしては、例えば、クロライドアニオン〔Cl-〕、ブロマイドアニオン〔Br-〕、ヨーダイドアニオン〔I-〕、テトラクロロアルミネートアニオン〔AlCl4
-〕、ヘプタクロロジアルミネートアニオン〔Al2Cl7
-〕、テトラフルオロボレートアニオン〔BF4
-〕、ヘキサフルオロホスフェートアニオン〔PF6
-〕、パークロレートアニオン〔ClO4
-〕、ナイトレートアニオン〔NO3
-〕、ヘキサフルオロアーセネートアニオン〔AsF6
-〕、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン〔SbF6
-〕、ヘキサフルオロニオベートアニオン〔NbF6
-〕、ヘキサフルオロタンタレートアニオン〔TaF6
-〕、ジシアナミドアニオン〔(CN)2N-〕等が挙げられる。
【0064】
有機アニオンとしては、例えば、アセテートアニオン〔CH3COO-〕、トリフルオロアセテートアニオン〔CF3COO-〕、メタンスルホネートアニオン〔CH3SO3
-〕、トリフルオロメタンスルホネートアニオン〔CF3SO3
-〕、p-トルエンスルホネートアニオン〔p-CH3C6H4SO3
-〕、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン〔(FSO2)2N-〕、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)2N-〕、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニドアニオン〔(CF3SO2)3C-〕、ジメチルホスフィネートアニオン〔(CH3)2POO-〕、(ポリ)ハイドロフルオロフルオライドアニオン〔F(HF)n
-〕(nは1~3程度)、チオシアンアニオン〔SCN-〕、パーフルオロブタンスルホネートアニオン〔C4F9SO3
-〕、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン〔(C2F5SO2)2N-〕、パーフルオロブタノエートアニオン〔C3F7COO-〕、(トリフルオロメタンスルホニル)(トリフルオロメタンカルボニル)イミドアニオン〔(CF3SO2)(CF3CO)N-〕、パーフルオロプロパン-1,3-ジスルホネートアニオン〔-O3S(CF2)3SO3
-〕、カーボネートアニオン〔CO3
2-〕等が挙げられる。
【0065】
上記したアニオン成分の中でも特に、フッ素原子を含むアニオン成分は、帯電防止性能に優れるイオン性化合物を与えることから好ましく用いられる。具体的には、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、又はビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンが挙げられる。
【0066】
イオン性化合物の具体例は、上記カチオン成分とアニオン成分との組み合わせから適宜選択することができる。有機カチオンを有するイオン性化合物の例を有機カチオンの構造ごとに分類して掲げると、次のようなものが挙げられる。
【0067】
ピリジニウム塩:
N-ヘキシルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-デシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ドデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-テトラデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ヘキサデシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ドデシル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-テトラデシル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ベンジル-2-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ベンジル-4-メチルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド
N-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-オクチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
N-ブチル-4-メチルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
【0068】
イミダゾリウム塩:
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ヘキサフルオロホスフェート、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム p-トルエンスルホネート、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム メタンスルホネート、
1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド。
【0069】
ピロリジニウム塩:
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
N-ブチル-N-メチルピロリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド。
【0070】
4級アンモニウム塩:
テトラブチルアンモニウム ヘキサフルオロホスフェート、
テトラブチルアンモニウム p-トルエンスルホネート、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム ジメチルホスフィネート。
【0071】
また、無機カチオンを有するイオン性化合物の例を挙げると、次のようなものがある。
リチウム ブロマイド、
リチウム ヨーダイド、
リチウム テトラフルオロボレート、
リチウム ヘキサフルオロホスフェート、
リチウム チオシアネート、
リチウム パークロレート、
リチウム トリフルオロメタンスルホネート、
リチウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
リチウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
リチウム ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、
リチウム トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタニド、
リチウム p-トルエンスルホネート、
ナトリウム ヘキサフルオロホスフェート、
ナトリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
ナトリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
ナトリウム p-トルエンスルホネート、
カリウム ヘキサフルオロホスフェート、
カリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド、
カリウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、
カリウム p-トルエンスルホネート。
これらイオン性化合物のうち、本願発明の効果である湿熱環境下における光学特性劣化抑制の観点からは、ピリジニウム塩が好ましく、ピリジウム塩の内、N-オクチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート、N-デシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミドがより好ましく、N-デシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミドがさらに好ましい。
【0072】
イオン性化合物は、室温において固体であることが好ましい。常温で液体であるイオン性化合物を用いる場合に比べ、帯電防止性能を長期間保持することができる。このような帯電防止性の長期安定性という観点から、イオン性化合物は、30℃以上、さらには35℃以上の融点を有することが好ましい。一方で、その融点があまり高すぎると、ベースポリマーとの相溶性が悪くなるため、融点は好ましくは90℃以下、より好ましくは70℃以下、さらに好ましくは50℃未満である。
【0073】
帯電防止剤の含有量は、第1粘着剤層10に含まれる樹脂(ベースポリマー)100質量部に対して、通常0.2質量部以上8質量部以下、好ましくは0.3質量部以上5質量部以下、より好ましくは0.5質量部以上5質量部以下、さらに好ましくは0.5質量部以上4質量部以下、特に好ましくは1質量部以上3.5質量部以下である。イオン性化合物の含有量が上記範囲内であることは、十分な帯電防止性能の確保と粘着剤層の耐久性維持との両立に有利である。
【0074】
粘着剤組成物は、架橋剤をさらに含有していてもよい。架橋剤としては、2価以上の金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成する金属イオン、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリアミン化合物、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するポリエポキシ化合物又はポリオール、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するポリイソシアネート化合物が挙げられる。中でも、ポリイソシアネート化合物が好ましい。架橋剤の含有量は、第1粘着剤層10に含まれる樹脂(ベースポリマー)100質量部に対して、通常0.1質量部以上1質量部以下である。
【0075】
活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線や電子線のような活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルム等の被着体に密着させることができ、活性エネルギー線の照射によって硬化して密着力の調整ができる性質を有する。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、紫外線硬化型であることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物は、活性エネルギー線重合性化合物をさらに含有する。必要に応じて、光重合開始剤、光増感剤等を含有させてもよい。
【0076】
第1粘着剤層10を構成する粘着剤組成物は、上記以外のその他の成分を含むことができる。その他の成分としては、シラン化合物、架橋触媒、耐候安定剤、酸化防止剤、タッキファイヤー、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー、光散乱性微粒子等の添加剤が挙げられる。
【0077】
第1粘着剤層10の厚みは、例えば250μm以下であり、薄型化の観点から好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。該粘着剤層の厚みの下限値は、耐久性の観点からは、例えば1μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上である。
【0078】
(5)第2粘着剤層
図2及び
図3に示されるように、円偏光板は、その視認側(直線偏光板1側)とは反対側の面に積層される第2粘着剤層20を含むことができる。円偏光板は、有機EL表示装置等の画像表示装置に好適に適用することができる。画像表示装置に適用される場合、円偏光板の直線偏光板1側が視認側となるように、すなわち、位相差層構造体2側が画像表示素子側となるように、画像表示素子の視認側に配置される。第2粘着剤層20は、画像表示素子への円偏光板の貼合に用いることができる。
【0079】
第2粘着剤層20の構成については、第1粘着剤層10についての記載が引用される。ただし、第2粘着剤層20は、実質的に帯電防止剤を含有しないことが好ましい。実質的に含有しないとは、帯電防止剤の含有量が、第2粘着剤層20に含まれる樹脂(ベースポリマー)100質量部に対して0.1質量部以下であることを意味し、該含有量は、好ましくは0.05質量部以下、より好ましくは0.01質量部以下、さらに好ましくは0質量部である。第2粘着剤層20が実質的に帯電防止剤を含有しないことは、湿熱環境下における円偏光板の光学特性の劣化、とりわけ、位相差層構造体の位相差特性の劣化を生じにくくするうえで有利である。
【0080】
本発明の1つの実施形態に係る円偏光板は、直線偏光板1と、第1粘着剤層10と、位相差層構造体2と、第2粘着剤層20とをこの順に含み、第1粘着剤層10は帯電防止剤を含有し、第2粘着剤層20は帯電防止剤を実質的に含有しない。本発明の他の実施形態に係る円偏光板は、直線偏光板1と、第1粘着剤層10と、位相差層構造体2と、第2粘着剤層20とをこの順に含み、第1粘着剤層10及び第2粘着剤層20のうち、第1粘着剤層10のみが帯電防止剤を含有する。
【0081】
(6)セパレートフィルム
図4に示されるように、円偏光板は、第2粘着剤層20の外表面(第2位相差層2bとは反対側の表面)を保護するためのセパレートフィルム21を含むことができる。
図4に示される円偏光板は、セパレートフィルム21を有すること以外は
図2に示される円偏光板と同様の層構成を有する。セパレートフィルム21は通常、片面にシリコーン系、フッ素系等の離型剤などによる離型処理が施された熱可塑性樹脂フィルムで構成され、その離型処理面が第2粘着剤層20に貼り合わされる。
【0082】
セパレートフィルム21を構成する熱可塑性樹脂は、例えばポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂等である。セパレートフィルム21の厚みは、例えば10μm以上50μm以下である。
【0083】
(7)プロテクトフィルム
図5に示されるように、円偏光板は、直線偏光板1側の面に積層されるプロテクトフィルム30を含んでいてもよい。
図5に示される円偏光板は、プロテクトフィルム30を有すること以外は
図4に示される円偏光板と同様の層構成を有する。プロテクトフィルム30は、例えば、基材フィルムとその上に積層される粘着剤層とで構成される。粘着剤層については上述の第2粘着剤層20についての記載が引用される。基材フィルムを構成する樹脂は、例えば、ポリエチレンのようなポリエチレン系樹脂、ポリプロピレンのようなポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートのようなポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂であることができる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂である。
【0084】
(8)貼合層
円偏光板は、2つの層(又はフィルム)を接合するための貼合層を含むことができる。貼合層としては、直線偏光子1bと保護フィルム1a,1cとを貼合する第1貼合層1d、第1位相差層2aと第2位相差層2bとを貼合する第2貼合層2c、第2位相差層2b(又は第1位相差層2a)と熱可塑性樹脂フィルム2dとを貼合する第3貼合層2e等が挙げられる。
【0085】
貼合層は、粘着剤組成物から構成される粘着剤層又は接着剤組成物から構成される接着剤層である。粘着剤層については、上述の第2粘着剤層20についての記載が引用される。
【0086】
接着剤組成物としては、例えば、水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤等が挙げられる。水系接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤等が挙げられる。活性エネルギー線硬化型接着剤は、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって硬化する接着剤であり、例えば重合性化合物及び光重合性開始剤を含む接着剤、光反応性樹脂を含む接着剤、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含む接着剤等が挙げられる。上記重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性(メタ)アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマー等の光重合性モノマー、及びこれらモノマーに由来するオリゴマー等が挙げられる。上記光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射して中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカル等の活性種を発生する物質を含む化合物が挙げられる。
【0087】
接着剤組成物から構成される貼合層の厚みは、例えば0.1μm以上であってよく、好ましくは0.5μm以上、1μm以上又は2μm以上であり、100μm以下、50μm以下、25μm以下、15μm以下又は5μm以下であってもよい。貼合層を介して貼合される対向する二つの表面は、予めコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面活性化処理を行ってもよい。
【0088】
<画像表示装置>
本発明に係る画像表示装置(以下、単に「画像表示装置」ともいう。)は、本発明に係る円偏光板と、画像表示素子とを含む。画像表示装置としては、例えば有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(無機EL)表示装置、液晶表示装置、電界発光表示装置等の画像表示装置が挙げられ、好ましくは有機EL表示装置である。有機EL表示装置において、円偏光板は、内部反射光を抑制するための反射防止膜として機能する。画像表示装置は、タッチパネル機能、ブルーライトカット機能、視野角調整機能等を有していてもよい。
【0089】
画像表示装置において、円偏光板は、画像表示素子の視認側に配置される。第2粘着剤層20を用いて、円偏光板を画像表示素子に貼合することができる。画像表示装置は、スマートフォン、タブレット等のモバイル機器、テレビ、デジタルフォトフレーム、電子看板、測定器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器等として用いることができる。
【0090】
図6は、本発明に係る画像表示装置の例としての有機EL表示装置の一例を示す概略断面図である。
図6では、円偏光板の一例として
図3に示される円偏光板が用いられている。円偏光板は、その第2粘着剤層20を用いて有機EL表示素子100に貼合されている。
【0091】
円偏光板における第2粘着剤層20とは反対側の面(視認側の最表面)には、第4貼合層40を介して前面板50が積層されてもよい。第4貼合層40については、上述の貼合層についての記載が引用される。
【0092】
前面板50は、画像表示装置の視認側の最表面を構成し、画像表示装置の前面(画面)を保護する機能を有することができる。前面板50は、ウィンドウフィルムと呼ばれるものであってもよい。前面板50は、光を透過可能な板状体であれば、材料及び厚みは限定されることはなく、また1層のみから構成されてよく、2層以上から構成されてもよい。前面板50としては、樹脂製の板状体(例えば樹脂板、樹脂シート、樹脂フィルム等)、ガラス製の板状体(例えばガラス板、ガラスフィルム等)、後述のタッチセンサパネルが挙げられる。円偏光板に前面板50を設ける場合、前面板50は円偏光板の視認側に配置される。
【0093】
前面板50の厚みは、例えば30μm以上500μm以下であり、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0094】
樹脂製の板状体を構成する樹脂としては、例えばトリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリ(メタ)アクリル、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリメチルメタアクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で又は2種以上混合して用いることができる。強度及び透明性向上の観点から、樹脂製の板状体は、好ましくは、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等で形成される熱可塑性樹脂フィルムである。
【0095】
前面板50は、硬度の観点から、好ましくは、基材フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層(HC層)が設けられたフィルムである。基材フィルムとしては、上記熱可塑性樹脂から構成されるフィルムを用いることができる。ハードコート層は、基材フィルムの一方の面に形成されていてもよいし、両方の面に形成されていてもよい。ハードコート層を設けることにより、硬度及びスクラッチ性を向上させた前面板とすることができる。ハードコート層は、例えば、紫外線硬化型樹脂の硬化層である。紫外線硬化型樹脂としては、例えば(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等が挙げられる。ハードコート層は、強度を向上させるために、添加剤を含んでいてもよい。添加剤は限定されることはなく、無機系微粒子、有機系微粒子、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0096】
前面板50がガラス板である場合、ガラス板は、ディスプレイ用強化ガラスが好ましく用いられる。ガラス板の厚みは、例えば10μm以上1000μm以下であってよく、10μm以上800μm以下であってもよい。ガラス板を用いることにより、優れた機械的強度及び表面硬度を有する前面板を構成することができる。
【0097】
前面板50は、剛性が高いことが好ましく、例えばヤング率が70GPa以上であり、80GPa以上であってもよい。前面板50のヤング率は、通常100GPa以下である。ヤング率は次のようにして測定できる。長辺110mm×短辺10mmの前面板60の測定用サンプルをスーパーカッタを用いて切り出す。次いで、引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフ AG-Xplus試験機)の上下つかみ具で、つかみ具の間隔が5cmとなるように上記測定用サンプルの長辺方向両端を挟み、温度23℃、相対湿度55%の環境下、引張速度4mm/分で測定用サンプルの長さ方向に引張り、得られる応力-ひずみ曲線における20~40MPa間の直線の傾きから、温度23℃、相対湿度55%でのヤング率を算出できる。
【0098】
画像表示素子は画像表示パネルを含み、さらにタッチセンサパネルを含むことができる。画像表示パネルとしては公知のものを用いることができ、例えば有機ELパネル等が挙げられる。有機EL表示素子100は、有機ELパネルを含む画像表示素子である。タッチセンサパネルとしては公知のものを用いることができる。画像表示素子が画像表示パネル及びタッチセンサパネルを含む場合、これらは、通常、円偏光板側から、タッチセンサパネル、画像表示パネルの順で配置される。
【実施例0099】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0100】
[測定]
(1)層の厚み
粘着剤層の厚みは、接触式膜厚測定装置(株式会社ニコン製の「MS-5C」)を用いて測定した。直線偏光子及び配向膜については、レーザー顕微鏡(オリンパス株式会社製の「OLS4100」)を用いて測定した。
【0101】
(2)水蒸気透過度
JIS K 7129-1:2019に規定される感湿センサ法により、直線偏光板の水蒸気透過度W1及び位相差層構造体の水蒸気透過度W2を測定した。透過セルの温度は40℃、高湿度チャンバの相対湿度は100%、低湿度チャンバの相対湿度は10%とした。
【0102】
(3)位相差特性
位相差特性は、王子計測機器株式会社の「KOBRA-WPR」を使用して測定した。
【0103】
(4)単体透過率、視感度補正偏光度の測定
円偏光板の視感度補正単体透過率、視感度補正偏光度は円偏光板の直線偏光板側へ、プリズムからの直線偏光を入射させて、積分球付き分光光度計(日本分光株式会社製の「V7100」)にて測定した。波長380nm~780nmの範囲においてMD透過率とTD透過率を求め、式(A)、式(B)に基づいて各波長における単体透過率、偏光度を算出した。さらにJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率(Ty)及び視感度補正偏光度(Py)を求めた。なお、「MD透過率」とは、グラントムソンプリズム(Glan-Thompson prism)から出る偏光の向きと偏光板サンプルの透過軸を平行にしたときの透過率である。式(A)、式(B)においては「MD透過率」を「MD」と表す。また、「TD透過率」とは、グラントムソンプリズムから出る偏光の向きと偏光板サンプルの透過軸を直交にしたときの透過率であり、式(A)、式(B)においては「TD透過率」を「TD」と表す。
単体透過率(%)=(MD+TD)/2 式(A)
偏光度(%)={(MD-TD)/(MD+TD)}×100 式(B)
【0104】
<実施例1>
(1)直線偏光板の作製
厚み30μmのポリビニルアルコール系樹脂フィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を乾式延伸により約5倍に縦一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、温度60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の質量比が0.05/5/100である温度28℃の水溶液に60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の質量比が8.5/8.5/100である温度72℃の水溶液に300秒間浸漬した。引き続き温度26℃の純水で20秒間洗浄した後、温度65℃で乾燥処理を行って、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素が吸着配向している、厚み12μmの直線偏光子を得た。
【0105】
水100質量部に対し、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔株式会社クラレ製の「KL-318」〕を3質量部溶解して、ポリビニルアルコール水溶液を調製した。得られた水溶液に水溶性ポリアミドエポキシ樹脂(田岡化学工業株式会社製の「スミレーズレジン650(30)」、固形分濃度30質量%)を、水100質量部に対し、1.5質量部の割合で混合して、水系接着剤を得た。
【0106】
上記で得られた直線偏光子の一方の面に、上記で得られた水系接着剤を塗布し、水系接着剤層の上に、厚み25μmのトリアセチルセルロースフィルム(以下、「TACフィルム」ともいう。)を積層した。また、直線偏光子の他方の面に、上記で得られた水系接着剤を塗布し、水系接着剤層の上に、厚み32μmのハードコート(HC)層付きトリアセチルセルロースフィルム(以下、「HC-TACフィルム」ともいう。)を、TACフィルム側が水系接着剤層に接するように積層した。得られた積層体を温度80℃で5分間乾燥することにより、直線偏光子の両面に保護フィルムを有する直線偏光板を得た。直線偏光板の層構造は、HC-TACフィルム/水系接着剤層/直線偏光子/水系接着剤層/TACフィルムである。
【0107】
得られた直線偏光板について水蒸気透過度W1を測定したところ、45〔g/(m2・24hr)〕であった。
【0108】
(2)位相差層構造体の作製
透明樹脂からなる第1基材層上に配向膜を形成し、棒状のネマチック重合性液晶化合物を含む液晶層形成用組成物を塗布して、第1基材層付き第1位相差層を作製した。第1位相差層はλ/4層であった。第1位相差層の厚みは1μmであった。第1位相差層の波長分散α〔面内位相差値Re(450)/面内位相差値Re(550)〕は0.87であり、Re(550)は142nmであった。
【0109】
また、以下の方法により、第2基材層付き第2位相差層を作製した。まず、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート10.0質量部と、トリメチロールプロパントリアクリレート10.0質量部と、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート10.0質量部と、光重合開始剤としてイルガキュア907を1.50質量部とを、溶媒であるメチルエチルケトン70.0質量部中で溶解させ、配向膜形成用組成物を調製した。続いて、光重合性ネマチック液晶化合物20.0質量部と、光重合開始剤としてイルガキュア907を1.0質量部とを、溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート80.0質量部中に溶解させ、液晶層形成用組成物を調製した。
【0110】
第2基材層の片面にコロナ処理を施し、コロナ処理面に、上記で調製した配向膜形成用組成物をバーコーターにて塗布した。塗布層に対し温度80℃で60秒間の熱処理を施した後、紫外線を照射し、配向膜形成用組成物を重合及び硬化させて、第2基材層上に厚み1.8μmの配向膜を形成した。配向膜上に、上記で調製した液晶層形成用組成物を塗布した。塗布層に対し温度80℃で60秒間の熱処理を施した後、紫外線を照射し、液晶層形成用組成物を重合及び硬化させて、配向膜上に厚み0.7μmの液晶硬化層を形成した。以上により、第2基材層付き第2位相差層が得られた。第2位相差層の厚み方向位相差値Rthは-75nmであった。
【0111】
以下に示すカチオン硬化性成分を混合し、紫外線硬化型接着剤を調製した。
3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:CEL2021P、株式会社ダイセル製):70質量部
ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(商品名:EX-211、ナガセケムテックス株式会社製):20質量部
2-エチルヘキシルグリシジルエーテル(商品名:EX-121、ナガセケムテックス株式会社製):10質量部
カチオン重合開始剤(商品名:CPI-100、50%溶液、サンアプロ株式会社製):4.5質量部(実質固形分2.25質量部)
1,4-ジエトキシナフタレン:2.0質量部
【0112】
第1基材層付き第1位相差層の位相差層側及び第2基材層付き第2位相差層の位相差層側に、それぞれコロナ処理を施した。一方のコロナ処理面に、上で調製した紫外線硬化性接着剤を塗布して、第1基材層付き第1位相差層と第2基材層付き第2位相差層とを貼り合わせた。第2基材層側から紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化させて、接着剤層を形成した。硬化後の紫外線硬化型接着剤層の厚みは1.5μmであった。
【0113】
第1基材層付き第1位相差層と第2基材層付き第2位相差層との貼合体から第1基材層及び第2基材層を剥離除去して位相差層構造体を得た。位相差層構造体の層構造は、配向膜/第1位相差層/紫外線硬化型接着剤層/第2位相差層/配向膜である。
【0114】
得られた位相差層構造体について水蒸気透過度W2を測定したところ、600〔g/(m2・24hr)〕であった。
【0115】
(3)第1粘着剤層用粘着剤組成物の調製
(3-1)アクリル系樹脂の製造
冷却管、窒素導入管、温度計、及び撹拌機を備えた反応容器に、アクリル酸ブチル(BA)、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸2-フェノキシエチル(PEA)、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)及びアクリル酸(AA)を表1に示すモノマー組成(モノマー全量を100質量部)となるように仕込み、酢酸エチル100質量部を反応容器に投入し、希釈してモノマー混合物とした。窒素ガスで反応容器内の空気を置換して酸素を追い出した後、内温を55℃に昇温後、重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリル0.12質量部を酢酸エチル10質量部に溶かした溶液を全量添加した。重合開始剤を添加した後、1時間反応容器内温を55℃で保持し、次いで内温を54~56℃に保ちながら酢酸エチルを反応容器内へ連続的に加え、アクリル系樹脂の濃度が35質量%となった時点で酢酸エチルの添加を止め、さらに酢酸エチルの添加開始から12時間経過するまでこの温度で保温した。最後に酢酸エチルを加えてアクリル系樹脂の濃度が20質量%となるように調節し、アクリル系樹脂の酢酸エチル溶液を調製した。
得られたアクリル系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量Mw及び分子量分布[重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn]を表1に併せて示す。
【0116】
【0117】
(3-2)粘着剤組成物の調製
上記(3-1)で得られたアクリル系樹脂の固形分100質量部に対し、架橋剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体の酢酸エチル溶液(固形分濃度75質量% コロネートL 東ソー(株)製)0.5質量部、シラン化合物として3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403、信越化学工業(株)製)0.5質量部、帯電防止剤として、イオン性化合物であるN-オクチル-4-メチルピリジニウム ヘキサフルオロホスフェート3質量部を混合し、さらにアクリル系樹脂の固形分濃度が15質量%となるように酢酸エチルを添加して粘着剤組成物を調製した。架橋剤の配合量(質量部)は固形分換算量である。
【0118】
(4)第2粘着剤層の用意
第2粘着剤層として、(メタ)アクリル系樹脂を含む粘着剤組成物から構成され、帯電防止剤を含有しない厚み15μmの粘着剤層を用意した。
【0119】
(5)円偏光板の作製
上記(1)で得られた直線偏光板におけるTACフィルム側の表面に、上記(3)で調製した帯電防止剤を含有する第1粘着剤層用粘着剤組成物を塗布した。次に、上記(2)で得られた位相差層構造体における、第1基材層の剥離除去により露出した配向膜上に、上記直線偏光板の上記第1粘着剤層用粘着剤組成物を塗布した面で貼合した。さらに、位相差層構造体が有する第2位相差層側の配向膜の表面に上記(4)で用意した帯電防止剤を含有しない粘着剤層を貼合し、乾燥して、円偏光板を得た。円偏光板の層構造は、HC-TACフィルム/水系接着剤層/直線偏光子/水系接着剤層/TACフィルム/帯電防止剤を含有する粘着剤層(第1粘着剤層)/配向膜/第1位相差層/紫外線硬化型接着剤層/第2位相差層/配向膜/帯電防止剤を含有しない粘着剤層(第2粘着剤層)である。貼合し、乾燥した後形成された第1粘着剤層と第2粘着剤層の厚みは、それぞれ20μm、15μmであった。
【0120】
(6)円偏光板の湿熱耐久性試験
上記(5)で得られた円偏光板について次の湿熱耐久性試験を実施した。まず、円偏光板を30mm×30mmの大きさの正方形に裁断した。この際、直線偏光子の吸収軸と正方形の辺とが平行になるように裁断した。裁断した円偏光板を、その帯電防止剤を含有しない粘着剤層を介して、40mm×40mmの無アルカリガラス(コーニング社製の「EAGLE XG」)に貼合し、さらに、円偏光板の直線偏光板の上に(メタ)アクリル樹脂系の粘着剤層(帯電防止剤を含有しない)を介して、40mm×40mmの無アルカリガラス(コーニング社製の「EAGLE XG」)を貼合して評価用サンプルを作製した。この評価用サンプルについて、波長550nmにおける面内位相差値〔Re(550)〕、視感度補正単体透過率Ty及び視感度補正偏光度Pyの測定を行った。
【0121】
次に、評価用サンプルを温度65℃、相対湿度90%RHの条件下で336時間保管する湿熱耐久性試験を行い、試験後の評価用サンプルについて、Re(550)、視感度補正単体透過率Ty及び視感度補正偏光度Pyの測定を行った。湿熱耐久性試験前後におけるRe(550)の差の絶対値ΔRe、視感度補正単体透過率Tyの差の絶対値ΔTy、及び、視感度補正偏光度Pyの差の絶対値ΔPyを求め、下記の基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0122】
[ΔRe]
E:0.5nm以下である。
G:1.0nm以下である。
F:1.0nm超である。
[ΔTy及びΔPy]
E:1.0%以下である。
G:1.0%超3.0%以下である。
F:3.0%超である。
【0123】
<実施例2>
(1)直線偏光板の作製
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚さ20μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素:ヨウ素カリウム:水の質量比が0.02:2:100の水溶液に30℃で浸漬してヨウ素染色を行った(以下、ヨウ素染色工程ともいう。)。ヨウ素染色工程を経たポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ化カリウム:ホウ酸:水の質量比が12:5:100の水溶液に56.5℃で浸漬してホウ酸処理を行った(以下、ホウ酸処理工程ともいう)。ホウ酸処理工程を経たポリビニルアルコールフィルムを8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向している直線偏光子(延伸後の厚さ8μm)を得た。この際、ヨウ素染色工程とホウ酸処理工程において延伸を行った。かかる延伸におけるトータル延伸倍率は5.3倍であった。
【0124】
上記で得られた直線偏光子の一方の面に、実施例1と同様の水系接着剤を塗布し、水系接着剤層の上に、厚み29μmのHC層付きシクロオレフィン系樹脂フィルム(以下、「HC-COPフィルム」ともいう。)を、COPフィルム側が水系接着剤層に接するように積層した。得られた積層体を温度80℃で5分間乾燥することにより、直線偏光子の一方の面に保護フィルムを有する直線偏光板を得た。直線偏光板の層構造は、HC-COPフィルム/水系接着剤層/直線偏光子である。
【0125】
(2)円偏光板の作製
上記(1)で作製した直線偏光板を用いたこと以外は実施例1と同様にして円偏光板を作製し、湿熱耐久性試験を実施した。結果を表2に示す。円偏光板の層構造は、HC-COPフィルム/水系接着剤層/直線偏光子/帯電防止剤を含有する粘着剤層(第1粘着剤層)/配向膜/第1位相差層/紫外線硬化型接着剤層/第2位相差層/配向膜/帯電防止剤を含有しない粘着剤層(第2粘着剤層)である。直線偏光板の水蒸気透過度W1及び位相差層構造体の水蒸気透過度W2を併せて表2に示す。
【0126】
<実施例3>
直線偏光板と位相差層構造体とを貼合するための第1粘着剤層用粘着剤組成物(帯電防止剤を含有する)として、以下の調製方法で得られた粘着剤組成物を用いたこと以外は実施例2と同様にして円偏光板を作製し、湿熱耐久性試験を実施した。結果を表2に示す。円偏光板の層構造は、実施例2と同じである。直線偏光板の水蒸気透過度W1及び位相差層構造体の水蒸気透過度W2を併せて表2に示す。
【0127】
(第1粘着剤層用粘着剤組成物の調製)
冷却管、窒素導入管、温度計及び攪拌機を備えた反応容器に、溶媒としての酢酸エチル190質量部、アクリル酸ブチル70.0質量部、アクリル酸メチル10.0質量部、アクリル酸2-フェノキシエチル16.0質量部、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル4.0質量部の混合溶液を仕込み、窒素ガスで装置内の空気を置換して酸素を追い出しながら、内温を55℃に上げた。その後、重合開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル0.15質量部を酢酸エチル10質量部に溶かした溶液を全量添加した。内温54~56℃で10時間保温した。最後に、アクリル系樹脂の濃度が20質量%となるように酢酸エチルを反応容器に加えた。
【0128】
上で得られたアクリル系樹脂の固形分100質量部に対し、架橋剤(キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体 商品名「タケネートD110N」、三井化学社製)0.3質量部、シラン系化合物(KBM-403:グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(液体)、信越化学工業(株)製)0.5質量部、帯電防止剤としてイオン性化合物(N-デシルピリジニウム ビス(フルオロスルホニル)イミド)1.5質量部を混合し、さらにアクリル系樹脂の固形分濃度が14質量%となるように酢酸エチルを添加して、粘着剤組成物を得た。
【0129】
<比較例1>
(メタ)アクリル系樹脂を含む粘着剤組成物から構成される厚み5μmの粘着剤層(帯電防止剤を含有しない)を第1粘着剤層とし、実施例1で使用した粘着剤組成物(実施例1において第1粘着剤層用粘着剤組成物として用いたもの)から構成される厚み20μmの粘着剤層(帯電防止剤を含有する)を第2粘着剤層としたこと以外は実施例1と同様にして円偏光板を作製し、湿熱耐久性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0130】
<比較例2>
第2粘着剤層を構成する粘着剤組成物において、イオン性化合物であるN-オクチル-4-メチルピリジニウム6フッ化リンの混合量を3質量部から6質量部に変更したこと以外は比較例1と同様にして円偏光板を作製し、湿熱耐久性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0131】
<比較例3>
実施例3で使用した粘着剤組成物(実施例3において第1粘着剤層用粘着剤組成物として用いたもの)から構成される粘着剤層(帯電防止剤を含有する)を第2粘着剤層(厚み20μm)としたこと以外は比較例1と同様にして円偏光板を作製し、湿熱耐久性試験を実施した。結果を表2に示す。
【0132】
<実施例4>
(1)位相差層構造体の作製
実施例1で得られた第1基材層付き第1位相差層と第2基材層付き第2位相差層との貼合体から第2基材層を剥離除去した。HC層を有する厚み25μmのTACフィルム(HC-TACフィルム)を用意し、このフィルムを、厚み5μmの(メタ)アクリル樹脂系の粘着剤層を介して、上記貼合体の第2位相差層側に貼合した。さらに第1基材層を剥離除去して、位相差層構造体を得た。位相差層構造体の層構造は、配向膜/第1位相差層/紫外線硬化型接着剤層/第2位相差層/配向膜/粘着剤層/HC-TACフィルムである。
【0133】
(2)円偏光板の作製
上記(1)で得られた位相差層構造体を用いたこと以外は実施例1と同様にして円偏光板を作製し、湿熱耐久性試験を実施した。結果を表2に示す。円偏光板の層構造は、HC-TACフィルム/水系接着剤層/直線偏光子/水系接着剤層/TACフィルム/帯電防止剤を含有する粘着剤層(第1粘着剤層)/配向膜/第1位相差層/紫外線硬化型接着剤層/第2位相差層/配向膜/粘着剤層/HC-TACフィルムである。
【0134】
比較例1~3及び実施例4について、直線偏光板の水蒸気透過度W1及び位相差層構造体の水蒸気透過度W2を併せて表2に示す。
【0135】
1 直線偏光板、1a,1c 保護層、1b 直線偏光子、1d 第1貼合層、2 位相差層構造体、2a 第1位相差層、2b 第2位相差層、2c 第2貼合層、2d 熱可塑性樹脂フィルム、2e 第3貼合層、10 第1粘着剤層、20 第2粘着剤層、21 セパレートフィルム、30 プロテクトフィルム、40 第4貼合層、50 前面板、100 有機EL表示素子。