(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096716
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜付き基板およびその製造方法、ならびに表示装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20230630BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20230630BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20230630BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20230630BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230630BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20230630BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230630BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/027 515
G03F7/027 502
B41M5/00 120
G02B5/20
G03F7/20 501
G09F9/00 313
G09F9/30 349A
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212655
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國松 登
(72)【発明者】
【氏名】今野 高志
【テーマコード(参考)】
2H148
2H186
2H197
2H225
4J127
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H148AA03
2H148AA07
2H186AB11
2H186BA08
2H186DA18
2H186FA07
2H186FB04
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB29
2H186FB32
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB41
2H186FB44
2H186FB48
2H186FB56
2H197CA02
2H197CA05
2H197CA06
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197HA08
2H225AC32
2H225AC36
2H225AC43
2H225AC44
2H225AC47
2H225AC54
2H225AC58
2H225AC72
2H225AC79
2H225AD06
2H225AD07
2H225AD15
2H225AE06P
2H225AE12P
2H225AN02P
2H225AN33P
2H225AN36P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN42P
2H225AN72P
2H225AN82P
2H225AN94P
2H225AN97P
2H225AP00P
2H225AP03P
2H225AP08P
2H225AP10P
2H225BA01P
2H225BA05P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA22P
2H225BA29P
2H225BA32P
2H225BA33P
2H225CA15
2H225CA16
2H225CB05
2H225CC01
2H225CC13
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC121
4J127BD181
4J127BE341
4J127BE34Y
4J127BE411
4J127BE41Y
4J127BF451
4J127BF45X
4J127BF45Y
4J127BF45Z
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG05Y
4J127BG05Z
4J127BG251
4J127BG25Y
4J127BG25Z
4J127CB271
4J127DA06
4J127EA13
4J127FA17
4J127FA30
5C094ED02
5C094ED13
5G435HH04
(57)【要約】
【課題】光を十分に散乱させ、かつより等方的に散乱させることができる硬化膜を作製できる感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)光硬化性化合物と、(B)平均粒径が100nm以上600nm以下である、屈折率が1.9以上2.7以下の金属酸化物からなる粒子と、(C)光重合開始剤と、を含む感光性樹脂組成物。(B)成分が、中空率が10%以上90%以下の粒子であるとき、(B)成分の含有量は、固形分の全質量に対して15質量%以上70質量%以下であり、(B)成分が、中空率が10%未満の金属酸化物粒子であるとき、(B)成分の含有量は、固形分の全質量に対して25質量%以上70質量%以下である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光硬化性化合物と、
(B)平均粒径が100nm以上600nm以下である、屈折率が1.9以上2.7以下の金属酸化物からなる粒子と、
(C)光重合開始剤と、
を含み、
(B)成分が、中空率が10%未満の粒子であるとき、(B)成分の含有量は、固形分の全質量に対して15質量%以上70質量%以下であり、
(B)成分が、中空率が10%以上90%以下の粒子であるとき、(B)成分の含有量は、固形分の全質量に対して25質量%以上70質量%以下である、
感光性樹脂組成物。
【請求項2】
(A)成分は、(A1)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂と、(A2)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物と、を含み、
(A1)成分の含有量は、固形分の全質量に対して5質量%以上70質量%以下であり、(A2)成分の含有量は、固形分の全質量に対して1質量%以上20質量%以下である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(A1)成分は、一般式(1)で表される不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂である、請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、ハロゲン原子またはフェニル基であり、R
5は、水素原子またはメチル基であり、Xは、-CO-、-SO
2-、-C(CF
3)
2-、-Si(CH
3)
2-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-O-、フルオレン-9,9-ジイル基または直結合であり、Yは4価のカルボン酸残基であり、Zは、それぞれ独立して、水素原子または一般式(2)で表される置換基である。ただし、Zのうち1個以上は一般式(2)で表される置換基であり、nは平均値が1~20である。)
【化2】
(式(2)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2であり、*は、結合部位である。)
【請求項4】
(D)エポキシ化合物と(E)任意成分としてのエポキシ化合物の硬化剤および/または硬化促進剤とを含み、
(D)成分および(E)成分の合計含有量は、固形分の全質量に対して5質量%以上35質量%以下である、
請求項2または3に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(A)成分は、(A2)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物を含み、
(A2)成分の含有量は、固形分の全質量に対して30質量%以上83質量%以下である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を硬化してなる、硬化膜。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化膜を有する、硬化膜付き基板。
【請求項8】
前記硬化膜に対して前記硬化膜側から垂直に白色光を照射したときの直進した透過光の角度を0°とした場合の、60°における散乱光の強度は、6°における散乱光の強度に対して50%以上である、請求項7に記載の硬化膜付き基板。
【請求項9】
平均粒径が100nm以上600nm以下であり、中空率が10%未満である、屈折率が1.9以上2.7以下の金属酸化物からなる粒子を含む硬化膜を有する、光散乱層と、
平均粒径が100nm以上600nm以下であり、中空率が10%以上90%以下である粒子を含む硬化膜を有する、波長変換層と、
を有する、硬化膜付き基板であって、
前記光散乱層が有する前記硬化膜は、請求項1に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、硬化させてなる、硬化膜付き基板。
【請求項10】
前記波長変換層は、屈折率が1.9以上2.7以下の金属酸化物からなる前記粒子を含む、請求項9に記載の硬化膜付き基板。
【請求項11】
前記波長変換層は、前記硬化膜の全質量に対する前記粒子の含有量が5質量%以上70質量%以下である、請求項9または10に記載の硬化膜付き基板。
【請求項12】
請求項7~11のいずれか1項に記載の硬化膜付き基板を有する、表示装置。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか1項に記載の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する工程と、
前記塗布された感光性樹脂組成物を露光する工程と、を有する、
硬化膜付き基板の製造方法。
【請求項14】
前記露光する工程は、前記塗布された感光性樹脂組成物を、フォトマスクを介して露光する工程である、請求項13に記載の硬化膜付き基板の製造方法。
【請求項15】
前記塗布する工程は、前記感光性樹脂組成物をインクジェットにより塗布する工程である、請求項13または14に記載の硬化膜付き基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物、硬化膜、硬化膜付き基板およびその製造方法、ならびに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像や映像を表示する表示装置として、光源からの光(たとえば青色光)の波長を変換して他の色の光(たとえば赤色光や緑色光)にする波長変換層と、波長変換層を経ない光(たとえば青色光)の放射角度を波長変換層から出射する光の放射角度にあわせるための光散乱層と、を有する表示装置が知られている(たとえば、特許文献1および特許文献2)。また、波長変換層に隣接して光散乱層を配置して出射した光を波長変換層に戻し、波長変換層における変換効率を高めた表示装置も知られている(たとえば特許文献3)。
【0003】
このような光散乱層として、光を散乱させるための微粒子を樹脂中に分散させてなる層が知られている。たとえば、特許文献1および特許文献2には、平均粒径が1~100nmの金属酸化物を樹脂に分散させた分散層が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/129419号
【特許文献2】特開2020-205417号公報
【特許文献3】特開2019-049619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した光散乱機能を有する硬化膜には、光を十分に散乱させること、および散乱角度によらず光の強度をより均一にすること(等方的に散乱させること)が要求される。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、光を十分に散乱させ、かつより等方的に散乱させることができる硬化膜を作製できる感光性樹脂組成物、硬化膜および当該硬化膜を有する硬化膜付き基板、当該硬化膜付き基板の製造方法、ならびに当該硬化膜を有する表示装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一態様に関する感光性樹脂組成物は、(A)光硬化性化合物と、(B)平均粒径が100nm以上600nm以下である、屈折率が1.9以上2.7以下の金属酸化物からなる粒子と、(C)光重合開始剤と、を含む。(B)成分が、中空率が10%未満の金属酸化物粒子であるとき、(B)成分の含有量は、固形分の全質量に対して15質量%以上70質量%以下であり、(B)成分が、中空率が10%以上90%以下の粒子であるとき、(B)成分の含有量は、固形分の全質量に対して25質量%以上70質量%以下である。
【0008】
本発明の他の態様に関する硬化膜は、前記感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化膜である。
【0009】
本発明の他の態様に関する硬化膜付き基板は、前記硬化膜を含む。
【0010】
本発明の他の態様に関する硬化膜付き基板は、平均粒径が100nm以上600nm以下であり、中空率が10%未満である、屈折率が1.9以上2.7以下の金属酸化物からなる粒子を含む硬化膜を有する、光散乱層と、平均粒径が100nm以上600nm以下であり、中空率が10%以上90%以下である粒子を含む硬化膜を有する、波長変換層と、を有し、前記光散乱層が有する前記硬化膜は、前記感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、硬化させてなる。
【0011】
本発明の他の態様に関する硬化膜付き基板の製造方法は、前記感光性樹脂組成物を基板上に塗布する工程と、前記塗布された感光性樹脂組成物を露光する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光を十分に散乱させ、かつより等方的に散乱させることができる硬化膜を作製できる感光性樹脂組成物、硬化膜および当該硬化膜を有する硬化膜付き基板、当該硬化膜付き基板の製造方法、ならびに当該硬化膜を有する表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、光散乱層および波長変換層を有する画像表示装置の構成例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.感光性樹脂組成物
以下、本発明の一実施形態に関する感光性樹脂組成物は、(A)光硬化性化合物と、(B)平均粒径が100nm以上600nm以下である、屈折率が1.9以上2.7以下の金属酸化物からなる粒子と、(C)光重合開始剤と、を含む。
【0015】
1-1.(A)成分
(A)成分は、光の照射により重合および硬化する光硬化性化合物である。(A)成分は、感光性樹脂組成物に所定の感光性を付与する。
【0016】
(A)成分は、感光性樹脂組成物の用途に応じて適宜選択して使用することができる。たとえば、フォトリソグラフィーにより硬化膜をパターン化するときには、(A)成分は、感光性樹脂組成物の塗膜にアルカリ現像性を付与するための(A1)不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を含むことが好ましく、さらに露光感度を高めるための(A2)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物を含むことが好ましい。また、インクジェット法により微細なパターン状に感光性樹脂組成物を付与した後に硬化させるときには、(A)成分は、(A2)少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物を少なくとも含めばよい。
【0017】
1-1-1.(A1)成分
(A1)成分は、不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂である。(A1)成分は、アルカリ現像に対する可溶性を、感光性樹脂組成物の塗膜に付与することができる。
【0018】
(A1)成分は、1分子中に重合性不飽和基と、アルカリ可溶性を発現するための酸性基を有することが好ましく、重合性不飽和基とカルボキシ基とを有することがより好ましい。(A1)成分は、上記樹脂であれば特に限定されることなく、様々な種類の樹脂であり得る。(A1)成分は、重合性不飽和基を有するため、感光性樹脂組成物に優れた光硬化性を与え、また硬化時に分子量が大きくなりバインダーとしての作用を発揮する。また、(A1)成分は、酸性基を有するため、現像性およびパターニング特性(パターン線幅、パターン直線性)などの硬化膜の物性を向上させる。
【0019】
(A1)成分は、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応物を、さらに多塩基酸カルボン酸またはその無水物と反応させて得られる不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。上記不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂の製造時に、ヒドロキシ基と多塩基酸カルボン酸との反応でポリエステルが生成する。(A1)成分は、上記ポリエステルの平均の重合度が2~500程度の低分子量の樹脂であることが好ましい。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの総称であり、いずれもこれらの一方または両方を意味する。
【0020】
上記エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物の例には、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、ジフェニルフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、(o,m,p-)クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物(例えば、jER YX4000:三菱ケミカル株式会社製、「jER」は同社の登録商標)、ナフタレン骨格を含むフェノールノボラック化合物(例えば、NC-7000L:日本化薬株式会社製)、ナフトールアラルキル型エポキシ化合物、トリスフェノールメタン型エポキシ化合物(例えば、EPPN-501H:日本化薬株式会社製)、テトラキスフェノールエタン型エポキシ化合物などの芳香族構造を有するエポキシ化合物、多価アルコールのグリシジルエーテル、多価カルボン酸のグリシジルエステル、メタクリル酸とメタクリル酸グリシジルの共重合体に代表される(メタ)アクリル酸グリシジルをユニットとして含む(メタ)アクリロイル基を有するモノマーの共重合体、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル(例えば、リカレジンHBE-100:新日本理化株式会社製、「リカレジン」は同社の登録商標)などのグリシジル基を有するエポキシ化合物、1,4-シクロヘキサンジメタノール-ビス3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,1-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-m-ジオキサン(例えば、アラルダイトCY175:ハンツマン社製、「アラルダイト」は同社の登録商標)、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、CYRACURE UVR-6128:ダウ・ケミカル社製)、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、セロキサイド2021P:株式会社ダイセル製、「セロキサイド」は同社の登録商標)、ブタンテトラカルボン酸テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)修飾ε-カプロラクトン(例えば、エポリードGT401:株式会社ダイセル製、「エポリード」は同社の登録商標)、エポキシシクロヘキシル基を有するエポキシ化合物(例えば、HiREM-1:四国化成工業株式会社製)、ジシクロペンタジエン骨格を有する多官能エポキシ化合物(例えば、HP7200シリーズ:DIC株式会社製)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物(例えば、EHPE3150:株式会社ダイセル製)などの脂環式エポキシ化合物、エポキシ化ポリブタジエン(例えば、NISSO-PB・JP-100:日本曹達株式会社製、「NISSO-PB」は同社の登録商標)、シリコーン骨格を有するエポキシ化合物等が含まれる。
【0021】
(A1)成分の他の好ましい樹脂の例には、アクリル共重合体であるアルカリ可溶性樹脂が含まれる。
【0022】
上記アクリル共重合体の例には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の共重合体であって、(メタ)アクリロイル基およびカルボキシ基を有する樹脂が含まれる。上記樹脂の例には、グリシジル(メタ)アクリレートを含む(メタ)アクリル酸エステル類を溶剤中で共重合させて得られた共重合体に、(メタ)アクリル酸を反応させ、最後にジカルボン酸またはトリカルボン酸の無水物を反応させて得られる重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂が含まれる。上記共重合体は、特開2014-111722号公報に示されている、両端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化されたジエステルグリセロールに由来する繰返し単位20~90モル%、およびこれと共重合可能な1種類以上の重合性不飽和化合物に由来する繰返し単位10~80モル%で構成され、数平均分子量(Mn)が2000~20000かつ酸価が35~120mgKOH/gである共重合体、および特開2018-141968号公報に示されている、(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来するユニットと、(メタ)アクリロイル基およびジまたはトリカルボン酸残基を有するユニットと、を含む、重量平均分子量(Mw)3000~50000、酸価30~200mg/KOHの重合体である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂を参考にできる。
【0023】
硬化膜の耐熱性および耐溶剤性をより高める観点からは、(A1)成分は複数個の芳香環を有することが好ましく、フルオレン構造を含む繰り返し単位を有することがより好ましく、ビスアリールフルオレン骨格を含む繰り返し単位を有することがさらに好ましい。たとえば、(A1)成分は、下記一般式(1)で表される樹脂であることが好ましい。
【0024】
【化1】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数が1~5の直鎖または分岐鎖のアルキル基、ハロゲン原子またはフェニル基であり、R
5は、水素原子またはメチル基であり、Xは、-CO-、-SO
2-、-C(CF
3)
2-、-Si(CH
3)
2-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-O-、フルオレン-9,9-ジイル基または直結合であり、Yは4価のカルボン酸残基であり、Zは、それぞれ独立して、水素原子または一般式(2)で表される置換基であり、1個以上は一般式(2)で表される置換基である。nは平均値が1~20である。)
【0025】
【化2】
(式(2)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2であり、*は、結合部位である。)
【0026】
次に、上記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の製造方法について詳細に説明する。
【0027】
先ず、一般式(3)で表される1分子内に2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物(a-1)(以下、単に「エポキシ化合物(a-1)」ともいう)に不飽和基含有モノカルボン酸(例えば(メタ)アクリル酸)を反応させ、エポキシ(メタ)アクリレートを得る。なお、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の総称であり、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基およびメタクリロイル基の総称であり、これらの一方または両方を意味する。
【0028】
【化3】
(式(3)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数が1~5の直鎖または分岐鎖のアルキル基、ハロゲン原子またはフェニル基であり、Xは、-CO-、-SO
2-、-C(CF
3)
2-、-Si(CH
3)
2-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-O-、フルオレン-9,9-ジイル基または直結合である。)
【0029】
エポキシ化合物(a-1)は、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させることにより得られる2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物である。
【0030】
上記ビスフェノール類の例には、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)エーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン、4,4’-ビフェノール、3,3’-ビフェノール等が含まれる。これらの中でも、密着性をより高める観点から、フルオレン-9,9-ジイル基を有するビスフェノール類が好ましい。これらは、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記不飽和基含有モノカルボン酸化合物の例には、アクリル酸、メタクリル酸以外に、アクリル酸やメタクリル酸に無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等の酸一無水物を反応させた化合物などが含まれる。
【0032】
上記エポキシ化合物(a-1)と(メタ)アクリル酸との反応は、公知の方法を使用することができる。たとえば、特開平4-355450号公報には、2つのエポキシ基を有するエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用することにより、重合性不飽和基を含有するジオール化合物が得られることが記載されている。本発明において、上記反応で得られる化合物は、重合性不飽和基を含有するジオール化合物であり、一般式(4)で表される重合性不飽和基を含有するジオール(d)(以下、単に「一般式(4)で表されるジオール(d)」ともいう)である。
【0033】
【化4】
(式(4)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数が1~5の直鎖または分岐鎖のアルキル基、ハロゲン原子またはフェニル基であり、R
5は、水素原子またはメチル基であり、Xは、-CO-、-SO
2-、-C(CF
3)
2-、-Si(CH
3)
2-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-O-、フルオレン-9,9-ジイル基または直結合である。)
【0034】
一般式(4)で表されるジオール(d)の合成、およびそれに続く多価カルボン酸またはその無水物の付加反応、さらにカルボキシ基との反応性を有する重合性不飽和基を有する単官能エポキシ化合物等を反応させて、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の製造においては、通常、溶媒中で必要に応じて触媒を用いて反応を行う。
【0035】
溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒;ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系もしくはエステル系の溶媒;シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等が含まれる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、例えば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0036】
また、カルボキシ基とエポキシ基との反応においては触媒を使用することが好ましく、例えば、特開平9-325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等が記載されている。
【0037】
次に、エポキシ化合物(a-1)と(メタ)アクリル酸との反応で得られる一般式(4)で表されるジオール(d)と、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはその酸無水物(b)、およびテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを反応させて、一般式(1)で表される1分子内にカルボキシ基および重合性不飽和基を有するアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。
【0038】
【化5】
(式(1)中、R
1、R
2、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数が1~5の直鎖または分岐鎖のアルキル基、ハロゲン原子またはフェニル基であり、R
5は、水素原子またはメチル基であり、Xは、-CO-、-SO
2-、-C(CF
3)
2-、-Si(CH
3)
2-、-CH
2-、-C(CH
3)
2-、-O-、フルオレン-9,9-ジイル基または直結合であり、Yは4価のカルボン酸残基であり、Zは、それぞれ独立して、水素原子または一般式(2)で表される置換基であり、1個以上は一般式(2)で表される置換基である。nは平均値が1~20である。)
【0039】
【化6】
(式(2)中、Wは2価または3価のカルボン酸残基であり、mは1または2であり、*は、結合部位である。)
【0040】
一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂を合成するために使用される酸成分は、一般式(4)で表されるジオール(d)分子中の水酸基と反応し得る多価の酸成分であり、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)とテトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)とを併用することが必要である。上記酸成分のカルボン酸残基は、飽和炭化水素基または不飽和炭化水素基のいずれでもよい。また、これらのカルボン酸残基には-O-、-S-、カルボニル基等のヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。
【0041】
上記ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、脂環式炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、芳香族炭化水素ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸、またはそれらの酸一無水物等を用いることができる。
【0042】
上記鎖式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。
【0043】
脂環式炭化水素ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチル-3,6-エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、ノルボルナンジカルボン酸、クロレンド酸、ヘキサヒドロトリメリット酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物等が含まれる。
【0044】
芳香族ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の例には、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、1,8-ナフタレンジカルボン酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸等の酸一無水物、および任意の置換基が導入されたジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物が含まれる。
【0045】
ジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物の中では、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、トリメリット酸が好ましく、コハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸であることがより好ましい。また、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸においては、それらの酸一無水物を用いることが好ましい。上述したジカルボン酸またはトリカルボン酸の酸一無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
また、テトラカルボン酸またはその酸二無水物(c)としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸、脂環式炭化水素テトラカルボン酸、芳香族炭化水素テトラカルボン酸、またはそれらの酸二無水物等を用いることができる。
【0047】
鎖式炭化水素テトラカルボン酸の例には、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸、および脂環式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された鎖式炭化水素テトラカルボン酸等が含まれる。
【0048】
上記脂環式テトラカルボン酸の例には、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸、および鎖式炭化水素基、不飽和炭化水素基等の置換基が導入された脂環式テトラカルボン酸等が含まれる。
【0049】
芳香族テトラカルボン酸の例には、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸等が含まれる。
【0050】
テトラカルボン酸またはその酸二無水物の中では、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸であることが好ましく、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸であることがより好ましい。また、テトラカルボン酸またはその酸二無水物においては、その酸二無水物を用いることが好ましい。上述したテトラカルボン酸またはその酸二無水物は、その1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
ジオール(d)と酸成分(b)および(c)との反応方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。たとえば、特開平9-325494号公報には、反応温度が90~140℃でエポキシ(メタ)アクリレートとテトラカルボン酸二無水物を反応させる方法が記載されている。
【0052】
このとき、化合物の末端がカルボキシ基となるように、エポキシ(メタ)アクリレート(ジオール(d))、ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸またはそれらの酸一無水物(b)、およびテトラカルボン酸二無水物(c)のモル比が、(d):(b):(c)=1.0:0.01~1.0:0.2~1.0となるように反応させることが好ましい。
【0053】
たとえば、酸一無水物(b)、酸二無水物(c)を用いる場合には、ジオール(d)に対する酸成分の量〔(b)/2+(c)〕のモル比[〔(b)/2+(c)〕/(d)]が0.5より大きく1.0以下となるように反応させることが好ましい。上記モル比が0.5より大きいと、一般式(1)で表される不飽和基含有硬化性樹脂の末端が酸無水物とならないので、未反応酸二無水物の含有量が増大するのを抑制して、硬化性組成物の経時安定性を高めることができる。また、上記モル比が1.0以下だと、重合性不飽和基を含有するジオール(d)のうち未反応の成分の残存量が増大するのを抑制して、硬化性組成物の経時安定性を高めることができる。なお、一般式(1)で表される不飽和基含有硬化性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、(b)、(c)および(d)の各成分のモル比を、上述の範囲で任意に変更することができる。
【0054】
なお、ジオール(d)の合成、およびそれに続く多価カルボン酸またはその無水物の反応は、通常、溶媒中で必要に応じて触媒を用いて行う。
【0055】
上記溶媒の例には、エチルセロソルブアセテート、およびブチルセロソルブアセテートなどのセロソルブ系溶媒、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、およびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの高沸点のエーテル系またはエステル系の溶媒、ならびに、シクロヘキサノン、およびジイソブチルケトンなどのケトン系溶媒等が含まれる。なお、使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、たとえば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いることが好ましい。
【0056】
また、エポキシ基とカルボキシ基またはヒドロキシル基との反応は、触媒を使用して行うことが好ましい。上記触媒として、特開平9-325494号公報には、テトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、およびトリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィンなどのホスフィン類などが記載されている。
【0057】
(A1)成分は、重量平均分子量(Mw)が1000以上40000以下の化合物であることが好ましく、2000以上20000以下の化合物であることがより好ましい。(A1)成分のMwがより高いほど、硬化膜の密着性および柔軟性を高め、かつ架橋密度を調整しやすくなる。一方で、(A1)成分のMwがより低いほど、溶媒への(A1)成分の溶解性が高まり、かつ(A2)成分との相溶性を高めて、硬化膜の白濁抑止性、平坦性およびパターニング性を高めることができる。
【0058】
(A1)成分は、同様の観点から、酸価が30mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0059】
本明細書において、各成分の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)(たとえば、「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製))で求めたスチレン換算値とすることができる。また、酸価は、電位差滴定装置(たとえばm「COM-1600」(平沼産業株式会社製))を用いて求めた値とすることができる。ただし、モノマーなどの、構造から分子量が計算できる化合物については、構造から計算して得た値をその化合物の分子量としてもよい。
【0060】
なお、(A1)成分は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
1-1-2.(A2)成分
(A2)成分は、少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物である。(A2)成分は、感光性樹脂組成物の露光感度を高め、かつ硬化時に適度な架橋構造を形成して基板への硬化膜の密着性を高め、かつ硬化膜の現像性(解像性、たとえばパターンの直線性)を高める。
【0062】
(A2)成分の具体例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサ(メタ)アクリレート、フォスファゼンのアルキレンオキサイド変性ヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル類、エチレン性二重結合を有する化合物として(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマー等が含まれる。
【0063】
感光性樹脂組成物の露光感度をより高め、かつ硬化膜の架橋密度を高めて密着性を高める観点からは、(A2)成分は、3個以上のエチレン性不飽和結合を有することが好ましく、5個以上のエチレン性不飽和結合を有することがより好ましい。
【0064】
同様の観点から、(A2)成分のアクリル当量は、50以上300以下であることが好ましく、80以上200以下であることがより好ましい。なお、(A2)成分は遊離のカルボキシ基を有しない。
【0065】
なお、インクジェット法によって感光性樹脂組成物を付与し、パターンを形成するときは、感光性樹脂組成物の粘度上昇を抑制する観点から、(A2)成分は、2個のエチレン性不飽和結合を有することが好ましい。同様の観点から、(A2)成分としては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、および3-メチル-1,5ペンタンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0066】
また、感光性樹脂組成物が(A2)成分として2個のエチレン性不飽和結合を有する化合物を含むとき、硬化膜の形状変化や収縮を抑制する観点から、樹枝状ポリマーなどの、高分子量体であるマクロマーを併用してもよい。上記樹枝状ポリマーの例には、アクリル基を有する枝分子を放射状に組み立てた球状の巨大分子であるデンドリマーアクリレート、ハイパーブランチアクリルポリマー、およびハイパーブランチアクリルオリゴマーなどが含まれる。
【0067】
フォトリソグラフィーなどによりパターンを形成するときは、感光性樹脂組成物の塗膜にアルカリ現像性を付与しつつ、硬化膜の密着性、直線性、精細度および硬度を高めるため、(A1)成分と(A2)成分とを併用することが好ましい。このとき、(A1)成分の含有量は、固形分の全質量に対して5質量%以上70質量%以下であって、(A2)成分の含有量は、固形分の全質量に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。感光性樹脂組成物は、(B)成分によってアルカリ現像性が低下する傾向がある。そのため、硬化膜にアルカリ現像性を付与する(A1)成分の量はより多いことが好ましい。一方で、(A2)成分をより多くすることで、感光性樹脂組成物の露光感度、ならびに硬化膜の密着性、直線性、精細度および硬度をより高めことができる。光の散乱性を高めるための(B)成分を添加しつつ、これらの特性のバランスを考慮して(A1)成分および(A2)成分のそれぞれの含有量を調整すればよい。
【0068】
たとえば、(A1)成分の含有量は、固形分の全質量に対して5質量%以上70質量%以下であることが好ましく、5質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以上50質量%以下であることが特に好ましい。また、(A2)成分の含有量は、固形分の全質量に対して1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上10質量%以下であることがさらに好まし、4質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。
【0069】
なお、(A2)成分は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0070】
また、インクジェット法によって感光性樹脂組成物を付与し、パターンを形成するときは、アルカリ現像性は必ずしも必要とはされない。そのため、感光性樹脂組成物の粘度上昇を抑制する観点から、(A1)成分の含有量は固形分の全質量に対して0質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。一方で、(A2)成分の含有量は、固形分の全質量に対して30質量%以上83質量%以下であることが好ましく、35質量%以上83質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上80質量%以下であることがさらに好ましい。
【0071】
1-2.(B)成分
(B)成分は、平均粒径が100nm以上600nm以下の粒子であり、屈折率が1.9以上2.7以下の金属酸化物からなる粒子である。(B)成分は、硬化膜の光散乱性を高め、また光(特には光)をより等方的に散乱させる。
【0072】
(B)成分の平均粒径が100nm以上であると、硬化膜の光散乱性をより高め、かつ光をより等方的に散乱させることができる。(B)成分の平均粒径が600nm以下であると、硬化膜の密着性、直線性、精細度および平坦性などの諸特性が低下しにくい。また、(B)成分の平均粒径が600nm以下であると、インクジェット法による吐出性を高めやすい。上記観点から、(B)成分の平均粒径は、100nm以上450nm以下であることが好ましく、150nm以上400nm以下であることがより好ましい。
【0073】
(B)成分が、屈折率が1.9以上2.7以下の金属酸化物を材料としてなる粒子であると、硬化膜を透過する光を適当に屈折させて、光をより等方的に散乱させることができる。上記観点から、(B)成分の材料である金属酸化物の屈折率が、2.1以上2.7以下であることが好ましく、2.3以上2.7以下であることがより好ましい。
【0074】
(B)成分の平均粒径は、動的光散乱法の粒度分布計「粒径アナライザーFPAR-1000」を用い、キュムラント法により求めることができる。また、金属酸化物の屈折率は、アッベ屈折率計で589nmの波長の光で測定することができる。
【0075】
(B)成分の材料としての、屈折率が1.9以上2.7以下である金属酸化物の例には、酸化チタン(チタニア:TiO2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア:ZrO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、インジウム・スズ酸化物(ITO)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、五酸化ニオブ(Sb2O5)等の金属酸化物が含まれる。これらのうち、光の散乱性に優れ、かつ光を等方的に散乱させやすいことから、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムが好ましく、酸化チタンがより好ましい。
【0076】
(B)成分は、中実粒子であってもよいし、中空粒子であってもよい。なお、本明細書において、中実粒子とは、中空率が10%未満である粒子を意味し、中空粒子とは、中空率が10%以上90%以下である粒子を意味する。
【0077】
なお、本明細書において、中空率とは、粒子の外径から算出される当該粒子の体積に対する、当該粒子の中空径から算出される当該粒子内部の空隙の容積の比率を意味する。上記粒子の外径および中空径は、電子顕微鏡を用いた観察によって計測することができる。
【0078】
なお、本発明者らの知見によると、中実粒子は、中空粒子と比較して粒子への光の透過率が低いため、粒子に照射された光の大部分を散乱させる。そのため、中実粒子は、光散乱層における光の光散乱性を高めることができる。このような粒子は、反射による光源からの光の再利用効率を高めることができるため、光散乱層に好適である。
【0079】
(B)成分が中実粒子であるとき、(B)成分の含有量は、固形分の全質量に対して15質量%以上70質量%以下であり、15質量%以上60質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがさらに好ましい。(B)成分が中空粒子であるとき、(B)成分の含有量は、固形分の全質量に対して10質量%以上70質量%以下であり、20質量%以上60質量%以下であることが好ましく、30質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。(B)成分をより多くすることで、硬化膜の光散乱性を高め、かつより等方的に光を散乱させることができる。ただし、他の成分の相対量が少なくなることによる硬化膜の密着性、直線性、精細度および平坦性などの諸特性の低下を抑制するため、(B)成分の上記含有量は70質量%以下とする。
【0080】
1-3.(C)成分
(C)成分は、光重合開始剤である。
【0081】
(C)成分は、重合性不飽和結合を有し付加重合可能な化合物の重合を開始させ得る化合物であれば、特に限定されるものではない。(C)成分の例には、アセトフェノン化合物、トリアジン化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物、イミダゾール化合物、アシルオキシム化合物などの光重合開始剤が含まれる。なお、本明細書において、光重合開始剤は増感剤を含む意味で使用される。
【0082】
アセトフェノン化合物の例には、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーなどが含まれる。
【0083】
トリアジン化合物の例には、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(ピプロニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0084】
ベンゾイン化合物の例には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン-tert-ブチルエーテルなどが含まれる。
【0085】
ベンゾフェノン化合物の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4,4‘-ビス(N,N-ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどが含まれる。
【0086】
チオキサントン化合物の例には、チオキサントン、2-クロロチオキサン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが含まれる。
【0087】
イミダゾール化合物の例には、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルイミダゾール2量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5-トリアリールイミダゾール2量体などが含まれる。
【0088】
アシルオキシム化合物の例には、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-ビシクロヘプチル-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-アダマンチルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-テトラヒドロフラニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-チオフェニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-ベンゾアート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-モロフォニルメタン-1-オンオキシム-O-アセテート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-ビシクロヘプタンカルボキシレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-トリシクロデカンカルボシキレート、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-エタン-1-オンオキシム-O-アダマンタンカルボシキレート、1-[4-(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン-1,2-ジオン,2-O-ベンゾイルオキシム、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)カルバゾール-3-イル]エタノン-O-アセチルオキシム、(2-メチルフェニル)(7-ニトロ-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル)-アセチルオキシム、エタノン,1-[7-(2-メチルベンゾイル)-9,9-ジプロピル-9H-フルオレン-2-イル]-1-(O-アセチルオキシム)、エタノン,1-(-9,9-ジブチル-7-ニトロ-9H-フルオレン-2-イル)-1-O-アセチルオキシム、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1,2-オクタンジエン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-O-アセテート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-O-アセテート、4-エトキシ-2-メチルフェニル-9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾロ-3-イル-O-アセチルオキシムなどが含まれる。上記光重合開始剤は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
これらのうち、(C)成分は、アシルオキシム系(ケトオキシムを含む)光重合開始剤が好ましい。アシルオキシム系光重合開始剤は、感度が高いため、アクリル当量が比較的大きい(A2)成分を含む感光性樹脂組成物でも、十分な感光性を担保することができ、硬化膜の現像性(解像性)を十分に高めることができる。
【0090】
アシルオキシム系光重合開始剤の例には、一般式(5)または一般式(6)で表されるO-アシルオキシム系光重合開始剤、1-[4-(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン-1,2-ジオン-,2-O-ベンゾイルオキシム(Irgacure OXE-01、BASF社製、「Irgacure」は同社の登録商標)、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾ-ル-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)(Irgacure OXE-02、BASF社製)などが含まれる。
【0091】
【0092】
式(5)中、R6、R7は、それぞれ独立に、C1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基、C7~C20のアリールアルキル基またはC4~C12の複素環基であり、R8はC1~C15のアルキル基、C6~C18のアリール基またはC7~C20のアリールアルキル基である。ここで、アルキル基およびアリール基はC1~C10のアルキル基、C1~C10のアルコキシ基、C1~C10のアルカノイル基、ハロゲンで置換されていてもよく、アルキレン部分は、不飽和結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合を含んでいてもよい。また、アルキル基は直鎖、分岐または環状のいずれのアルキル基であってもよい。
【0093】
【0094】
式(6)中、R9およびR10はそれぞれ独立に、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基であるか、炭素数4~10のシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基もしくはアルキルシクロアルキル基であるか、または炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基である。R11は独立して炭素数2~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基またはアルケニル基であり、当該アルキル基またはアルケニル基中の-CH2-基の一部が-O-基で置換されていてもよい。さらに、これらR9~R11の基中の水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0095】
なお、(C)成分としては、活性ラジカル発生剤または酸発生剤を使用してもよい。
【0096】
活性ラジカル発生剤の例には、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’-ビス(o-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアントラキノン、ベンジル、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物などが含まれる。
【0097】
酸発生剤の例には、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムp-トルエンスルホナート、4-ヒドロキシフェニルジメチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-アセトキシフェニルジメチルスルホニウムp-トルエンスルホナート、4-アセトキシフェニル・メチル・ベンジルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムp-トルエンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホナート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートなどのオニウム塩類、ニトロベンジルトシレート類、ベンゾイントシレート類などが含まれる。
【0098】
また、それ自体では光重合開始剤や増感剤として作用しないが、上述の化合物と組み合わせて用いることにより、光重合開始剤や増感剤の能力を増大させ得るような化合物を添加してもよい。そのような化合物の例には、ベンゾフェノンと組みわせて使用すると効果のあるアミン系化合物が含まれる。上記アミン系化合物の例には、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸2-ジメチルアミノエチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルパラトルイジン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(エチルメチルアミノ)ベンゾフェノンなどが含まれる。
【0099】
(C)成分の含有量は、(A)成分の合計100質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。(C)成分の含有量が0.1質量部以上であると、適度な光重合の速度を有するので、十分な感度を担保できる。また、(C)成分の含有量が30質量部以下であると、マスクに対して忠実な線幅を再現できるとともにパターンエッジをシャープにすることができる。なお、(C)成分の含有量は、用いる(C)成分の種類に応じて、好適な範囲に設定すすることができる。
【0100】
なお、(C)成分は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
1-4.(D)成分、(E)成分
感光性樹脂組成物は、(D)エポキシ化合物、および(E)任意成分としてのエポキシ化合物の硬化剤および硬化促進剤を含んでいてもよい。感光性樹脂組成物は、(E)成分として、硬化剤および硬化促進剤の双方を含んでいてもよいし、いずれか一方のみを含んでいてもよい。
【0102】
(D)成分は、硬化膜の耐溶剤性を高めることができる。また、フォトリソグラフィーにより硬化膜をパターン化するときなどには、(D)成分は、感光性樹脂組成物を低温(たとえば150℃以下)のポストベークで硬化させることができるため、硬化膜の作製効率を高めることができる。また、(E)成分は、(D)成分の硬化性を高めて、低温のポストベークでもより硬化させやすくすることができる。
【0103】
(D)成分の例には、(A)成分について上述したエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物が含まれる。なお、これらの化合物は、その1種類の化合物のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
(D)成分は、上述したエポキシ化合物のうち、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物、ビスナフトールフルオレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物が好ましく、ビフェニル型エポキシ化合物がより好ましい。ビフェニル型のエポキシ化合物は、要求特性に合わせた硬化物の機械的強度や耐溶剤性と、光硬化時のマイクロレンズ形成用組成物のパターニング性を両立することができるとともに、感光性樹脂組成物を設計する自由度を大きくできる。
【0105】
(D)成分のエポキシ当量は、100g/eq以上500g/eq以下であることが好ましく、100g/eq以上400g/eq以下であることがより好ましく、100g/eq以上250g/eq以下であることがさらに好ましい。また、(D)成分の数平均分子量(Mn)は、100以上5000以下であることが好ましい。(D)成分のエポキシ当量が100g/eq以上であると、硬化膜の耐溶剤性が高まる。(D)成分のエポキシ当量が500g/eq以下であると、後工程でアルカリ性の薬液を使う場合でも十分な耐アルカリ性を維持することができる。また、(D)成分のMnが5000以下であると、後工程でアルカリ性の薬液を使う場合でも十分な耐アルカリ性を維持することができる。
【0106】
なお、(D)成分のエポキシ当量は、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-過塩素酸溶液で滴定して求めることができる。
【0107】
なお、(D)成分は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0108】
(E)成分としての硬化剤の例には、エポキシ樹脂の硬化に寄与するアミン系化合物、多価カルボン酸化合物、フェノール樹脂、アミノ樹脂、ジシアンジアミド、ルイス酸錯化合物等が含まれる。
【0109】
多価カルボン酸化合物の例には、多価カルボン酸、多価カルボン酸の無水物、および多価カルボン酸の熱分解性エステルが含まれる。多価カルボン酸とは1分子中に2つ以上のカルボキシ基を有する化合物をいい、例えば、コハク酸、マレイン酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキセン-4,5-ジカルボン酸、ノルボルナン-2,3-ジカルボン酸、フタル酸、3,6-ジヒドロフタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸、ベンゼン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、ブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸等が含まれる。多価カルボン酸の無水物の例には、上記化合物の酸無水物が含まれる。これは分子間酸無水物でもよいが、一般には分子内で閉環した酸無水物が用いられる。多価カルボン酸の熱分解性エステルの例には、上記化合物のt-ブチルエステル、1-(アルキルオキシ)エチルエステル、1-(アルキルスルファニル)エチルエステル(ただし、アルキルは炭素数1~20の飽和または不飽和の炭化水素基であり、炭化水素基は分岐構造や環構造を有していてもよく、任意の置換基で置換されていてもよい)等が含まれる。また、多価カルボン酸化合物としては2つ以上のカルボキシ基を有する重合体または共重合体も用いることができ、そのカルボキシ基は無水物または熱分解性エステルであってもよい。
【0110】
また、上記重合体または共重合体の例には、(メタ)アクリル酸を構成成分として含む重合体または共重合体((A1)成分を除く)、無水マレイン酸を構成成分として含む共重合体、テトラカルボン酸二無水物をジアミンやジオールと反応させて酸無水物を開環させた化合物等が含まれる。これらのうち、フタル酸、3,6-ジヒドロフタル酸、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ベンゼン-1,2,4-トリカルボン酸の各無水物が好ましい。多価カルボン酸化合物をエポキシ化合物の硬化剤として用いるときは、エポキシ化合物のエポキシ基の1モルに対して、多価カルボン酸化合物のカルボキシ基が0.5~1.5モル、より好ましくは0.6~1.2モルになるように配合するのがよい。
【0111】
硬化促進剤の例には、エポキシ樹脂の硬化促進に寄与する三級アミン、四級アンモニウム塩、三級ホスフィン、四級ホスホニウム塩、ホウ酸エステル、ルイス酸、有機金属化合物、イミダゾール類等が含まれる。これらのうち、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンもしくは1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エンまたはこれらの塩が好ましい。
【0112】
(D)成分および(E)成分の含有量は、固形分の全質量に対して5質量%以上35質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。(D)成分および(E)成分の上記含有量を5質量%以上とすると、硬化膜の耐溶剤性をより高めることができ、特にポストベークを低温で行っても、耐溶剤性が高い硬化膜を得ることができる。(D)成分および(E)成分の上記含有量を35質量%以下とすると、基板への硬化膜の密着性をより高めることができる。
【0113】
硬化促進剤の含有量は、(D)成分の含有量を100質量部としたときに0.01質量部以上2質量部以下となる量であることが好ましい。硬化促進剤の添加量を0.01質量部以上とすると、熱硬化後の樹脂膜パターンの耐溶剤性の発現状況等により添加量を調整することができる。また、硬化促進剤の添加量を2質量部以下とするとエポキシ化合物の硬化速度を適正な範囲とすることができる。
【0114】
なお、(E)成分は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0115】
1-5.(G)成分
感光性樹脂組成物は、(G)溶媒を含んでいてもよい。
【0116】
(G)成分の例には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;α-もしくはβ-テルピネオール等のテルペン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類などが含まれる。(G)成分は、その1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0117】
(G)成分の含有量は、目標とする粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物の全質量に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。(G)成分の含有量が30質量%以上であると、基板上に感光性樹脂組成物を塗布しやすい粘度とすることができ、90質量%以下であると、基板上に感光性樹脂組成物を塗布した後の乾燥に要する時間を短縮することができる。
【0118】
1-6.その他の成分
感光性樹脂組成物には、必要に応じて、(H)カップリング剤、(I)界面活性剤、(J)熱重合禁止剤および酸化防止剤、その他の樹脂成分、可塑剤、充填剤、レベリング剤、消泡剤、紫外線吸収剤、および粘度調整剤等の添加剤を配合することができる。
【0119】
カップリング剤の例には、シランカップリング剤などが含まれる。シランカップリング剤としては、反応基として、アミノ基、イソシアネート基、ウレイド基、エポキシ基、ビニル基、(メタ)アクリル基、メルカプト基等を有するものが好ましく、エポキシ基、イソシアネート基、メタクリル基を有するものがより好ましい。上記カップリング剤の具体例には、3-(グリシジルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が含まれる。
【0120】
熱重合禁止剤および酸化防止剤の例には、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン、ヒンダードフェノール系化合物等が含まれる。
【0121】
その他の樹脂成分の例には、ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、およびメラミン樹脂等が含まれる。
【0122】
可塑剤の例には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等が含まれる。充填剤の例には、ガラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等が含まれる。
【0123】
レベリング剤や消泡剤の例には、シリコーン系、フッ素系、アクリル系の化合物が含まれる。
【0124】
紫外線吸収剤の例には、ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、トリアジン化合物などが含まれる。
【0125】
1-7.製造方法
感光性樹脂組成物は、上述の各成分を混合することにより得ることができる。
【0126】
2.用途
上述の感光性樹脂組成物によれば、光散乱性が良好であり、かつ光(特には青色光)をより等方的に散乱させる硬化膜を作製することができる。そのため、上述の感光性樹脂組成物は、画像表示装置などの光散乱層の作製に好適に用いることができる。この光散乱層は、発光素子の発光層とそれに隣接する層との層間や、透明電極と透明基板との層間、透明基板と空気との層間などに配置させてもよいし、量子ドットや蛍光発光材料および有機発光材料を含む波長変換層に隣接して配置してもよい。また、青色光を出射する光源と、当該青色光を緑色および赤色に変換する波長変換層(緑および赤のサブピクセル)とを備える表示装置において、波長変換層を設けない青のサブピクセルに配置して、各色のサブピクセルから出射する光の放射角度(指向性)を揃えるための光散乱層として用いてもよい。また、青色光を出射する光源と、緑色光を出射する光源と、当該青色光を赤色に変換する波長変換層(赤のサブピクセル)とを備える表示装置において、波長変換層を設けない青のサブピクセルおよび緑のサブピクセルに配置して、各色のサブピクセルから出射する光の放射角度(指向性)を揃えるための光散乱層として用いてもよい。
【0127】
光散乱層として用いるとき、硬化膜は、透明基板(たとえばガラス基板)上に製膜されたときの450nmの光の透過率が55%未満であることが好ましく、50%未満であることがより好ましい。なお、透過率がより低いほど、より多くの光が散乱している(光の散乱性が高い)ことを示す。
【0128】
また、光散乱層として用いるとき、硬化膜は、透明基板上に製膜されたときに、硬化膜側から垂直に白色光を照射したときの直進した透過光の角度を0°とした場合の、60°における散乱光の強度が、6°における散乱光の強度に対して50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。なお、上記強度比が高いほど、より等方的に光が散乱していることを示す。
【0129】
上記光散乱層は、中実粒子を含む層であってもよいし、中空粒子を含む層であってもよいが、光散乱効率をより高める観点からは、中実粒子を含む層であることが好ましい。
【0130】
上記光散乱層は、波長変換層を有する画像表示装置に用いることができる。
図1Aおよび
図1Bは、光散乱層および波長変換層を有する画像表示装置の構成例を示す模式断面図である。なお、理解を容易にするため、
図1Aおよび
図1Bでは積層方向の縮尺を変更して、各層の厚みを強調している。
【0131】
図1Aに示す画像表示装置100は、青色光源から発せられる青色光の透過方向(図中矢印方向、図中上から下に向かう方向)に、この順に、第1の保護層110、光散乱層120(第1の光散乱層120)および波長変換層122、第2の保護層130、カラーフィルター層140およびガラス基板150を有する。
【0132】
第1の保護層110は、たとえば光散乱層120および波長変換層122の画素間に生じる凹凸を平坦化すること、画像表示装置100の信頼性を向上させることなどを目的として形成される層である。第1の保護層110は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などを用いた公知の保護層であればよい。
【0133】
光散乱層120は、上述の感光性樹脂組成物を塗布し硬化させてなる層であり、(A)成分の硬化物(樹脂)を母材とした硬化膜中に(B)成分が分散してなる層である。光散乱層120中の(B)成分の含有量は、感光性樹脂組成物中の固形分に対する(B)成分の量が維持される。そのため、(B)成分が、平均粒径が100nm以上600nm以下であり、中空率が10%未満である、屈折率が1.9以上2.7以下の金属酸化物からなる粒子であるときは、(B)成分の含有量は、硬化膜の全質量に対して15質量%以上70質量%以下である。また、(B)成分が、平均粒径が100nm以上600nm以下であり、中空率が10%以上90%以下である、屈折率が1.9以上2.7以下の金属酸化物からなる粒子であるときは、(B)成分の含有量は、硬化膜の全質量に対して10質量%以上70質量%以下である。
【0134】
波長変換層122は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などを母材とした硬化膜中に、波長変換用の量子ドットや蛍光発光材料および有機発光材料を含む層であり、青色光の波長を変換して赤色光や緑色光にする。
図1Aに示す画像表示装置は、青色光を赤色光に変換する波長変換層122aと、青色光を緑色光に変換する波長変換層122bと、を有する。これらの波長変換層は、層中で光を散乱させて光の移動距離を長くし、光の変換効率を高めるための粒子を含んでいてもよい。
【0135】
光散乱層120と波長変換層122とは、同一平面上に配置されており、隔壁層124によって区分けされた各画素に、光散乱層120、波長変換層122aおよび波長変換層122bのいずれかが配置される。
【0136】
第2の保護層130は、たとえばカラーフィルター層140の画素間に生じる凹凸を平坦化すること、製造工程における熱処理や薬品処理に対するカラーフィルター層140の耐久性を向上させること、画像表示装置100の信頼性を向上させることなどを目的として形成される層である。第2の保護層130は、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などを用いた公知の保護層であればよい。
【0137】
カラーフィルター層140は、色素を含むことにより、波長変換層122を通して波長を変換された光に含まれる、所望の波長以外の波長を有する光を吸収する層である。カラーフィルター層140は、赤色のカラーフィルター140a、緑色のカラーフィルター140b、および青色のカラーフィルター140cの、色素が異なる複数のカラーフィルターを有する。これらのカラーフィルターは、同一平面上に配置されており、ブラックマトリクス144によって区分けされた各画素に、いずれかのカラーフィルターが配置される。ただし、いずれも青色光の透過方向における、波長変換層122a(赤色)に対応する位置には赤色のカラーフィルター140aが、第2の波長変換層122a(緑色)に対応する位置には緑色のカラーフィルター140bが、光散乱層120に対応する位置には青色のカラーフィルター140cが、それぞれ配置される。
【0138】
そして、カラーフィルター層140に接して、ガラス基板150が配置される。
【0139】
なお、画像表示装置100の構成はこれに限定されることはなく、たとえば
図1Bに示すように、カラーフィルター層140とガラス基板150との間に、第2の光散乱層160を設けてもよい。
【0140】
上述の感光性樹脂組成物を硬化させてなる光散乱層は、画像表示装置100の第1の光散乱層120または第2の光散乱層160として使用することができる。なお、第1の光散乱層120および第2の光散乱層160のいずれか一方に上記光散乱層を使用してもよいし、第1の光散乱層120および第2の光散乱層160の双方に上記光散乱層を使用してもよい。
【0141】
ところで、波長変換層122は、層中で光を屈折させて波長変換層を透過する光の移動距離を長くし、波長の変換効率を高めるための粒子を含むことが好ましい。ここで、本発明者らの知見によれば、画像表示装置100に用いる波長変換層122は、上記粒子として中空粒子を含むことが好ましい。中空粒子は、中空粒子よりも透過率が高いにもかかわらず、散乱強度も高いという特性を有する。そのため、中空粒子は、波長変換層中での光の減光が生じにくく、一方で、波長変換層中で光を散乱させて光の移動距離を長くしやすいので、波長変換効率を高めることができる。このとき波長変換層122に用いる中空粒子は、波長変換層中での光の散乱効率を高める観点から、上述した感光性樹脂組成物の(B)成分として用いられる中空粒子であることが好ましい。
【0142】
画像表示装置100には、それぞれの画素ごとに発光ダイオード(LED)や有機発光ダイオード(OLED)などの発光素子が配置されており、画素毎の透過光の差を小さくするように、それぞれの画素毎に配置された発光素子から発する光の強度を変更することができる。
【0143】
画像表示装置100から得られる400nm~480nmの範囲の青色発光強度、480nm~590nmの範囲の緑色発光強度、および590nm~750nmの範囲の赤色発光強度のバランスをより良好にする観点からは、画像表示装置100は、(B)成分として中実粒子を含む上述の感光性樹脂組成物を塗布し硬化させてなる層を光散乱層120または光散乱層160として有し、中空粒子を含む層を波長変換層122として有することが好ましい。具体的には、光散乱層120または光散乱層160は、平均粒径が100nm以上600nm以下であり、中空率が10%未満である、屈折率が1.9以上2.7以下の金属酸化物からなる粒子を含む硬化膜を有し、上記硬化膜の全質量に対する上記粒子の含有量が5質量%以上70質量%以下である層であることが好ましい。また、波長変換層122は、平均粒径が100nm以上600nm以下であり、中空率が10%以上90%以下である粒子を含む硬化膜を有する層であることが好ましい。
【0144】
なお、波長変換層122は、中空粒子を含む感光性樹脂組成物を硬化してなる層であればよく、波長変換層を形成するための感光性樹脂組成物の組成は特に限定されない。ただし、(B)成分として中空粒子を含む上述の感光性樹脂組成物(ただし、中空粒子の量(感光性樹脂組成物中の固形分の全質量に対する中空粒子の含有量)は後述する範囲に変更することが好ましい。)を用いて波長変換層122を形成することは、精細なパターン形成をする観点から好ましい。
【0145】
具体的には、波長変換層122が含む中空粒子は、屈折率が1.9以上2.7以下の金属酸化物を材料としてなる粒子であることが好ましく、2.1以上2.7以下の金属酸化物を材料としてなる粒子であることがより好ましく、2.3以上2.7以下の金属酸化物を材料としてなる粒子であることがさらに好ましい。なお、波長変換層122が含む中空粒子は、光散乱層120が含む粒子との屈折率の差がより小さいことが好ましく、たとえば両者の屈折率の差は0以上0.5以下であることが好ましく、0以上0.3以下であることがより好ましく、両者は同一の金属酸化物を材料としてなる粒子であることがさらに好ましい。
【0146】
また、波長変換層122が含む中空粒子は、平均粒径が100nm以上450nm以下であることが好ましく、150nm以上400nm以下であることがより好ましい。
【0147】
また、波長変換層122は、上記硬化膜の全質量に対する上記粒子の含有量が5質量%以上70質量%以下であり、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、5質量%以上50質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。
【0148】
なお、上述の実施態様では、青色光を出射する光源と、当該青色光を緑色および赤色に変換する波長変換層(緑および赤のサブピクセル)とを備える表示装置について説明をしたが、青色光を緑色光に変換する波長変換層122bのかわりに光散乱層を配置して、緑色のサブピクセルは緑色光を出射する光源からの光の放射角度(指向性)を光散乱層で揃える構成としてもよい。
【0149】
硬化膜は、上述の感光性樹脂組成物を基板上に塗布する工程と、塗布された感光性樹脂組成物を露光して硬化させる工程と、により作製することができる。
【0150】
感光性樹脂組成物の塗布は、浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、およびスクリーン印刷法などの方法により行うことができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、塗膜が形成される。プリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することによって行われる。プリベークにおける加熱温度および加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択されればよく、たとえば60~110℃の温度(基板の耐熱温度を超えないように設定)で1~3分間行なえばよい。
【0151】
露光では、フォトマスクを介して塗膜に放射線を照射して露光することにより、パターンに対応した部分のレジストのみを感光させて光硬化させる。放射線の例には、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、およびX線などが含まれる。これらのうち、波長が250nm以上450nm以下の紫外線が好ましい。紫外線の照射は、超高圧水銀灯、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、遠紫外線灯等の光源を用いて行うことができる。放射線の露光量は、25mJ/cm2以上3000mJ/cm2以下であることが好ましい。
【0152】
アルカリ現像により、露光されなかった部分の塗膜を除去する。アルカリ現像は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化カリウム、ジエタノールアミン、およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどを含む水溶液により行うことができる。現像液には、必要に応じて界面活性剤を添加してもよい。シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法などにより現像液を塗膜に接触させることにより露光されず硬化しなかった塗膜が除去される。現像温度は、20~35℃であることが好ましい。
【0153】
アルカリ現像後、ポストベークにより、パターニングされた硬化膜を本硬化し、基板への密着性を高める。ポストベークは、180~250℃の温度で20~60分間行うなどの公知の方法により行うことができる。ただし、耐熱温度が150℃以下の基板上に光散乱性を有する硬化膜パターンを形成している場合などには、現像後、80~140℃の温度(基板の耐熱温度を超えないように設定)および20~90分の条件で熱処理(ポストベーク)が行われることが好ましく、温度90~120℃、加熱時間30~60分の条件で行われることがより好ましい。(D)成分や(E)成分を含有するときは、このような低温でも感光性樹脂組成物を十分に硬化および密着させることができる。
【0154】
なお、感光性樹脂組成物の塗布をインクジェット法により行い、パターン化された塗膜を形成してもよい。その後、上述の放射線による露光を行って塗膜を硬化させて、基板上に硬化膜を作製することができる。また、露光では、フォトマスクを介して塗膜に放射線を照射して露光してもよく、その後上述のアルカリ現像により露光されなかった部分の塗膜を除去してもよい。
【実施例0155】
以下、実施例および比較例に基づいて、本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0156】
まず、A成分のアルカリ可溶性樹脂の合成例から説明するが、これらの合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。各種測定機器について、同一の機種を使用した場合には、2か所目から機器メーカー名を省略している。また、[実験1]および[実験2]において、測定用硬化膜付き基板の作製に使用しているガラス基板は、全て同じ処理を施したガラス基板を使用している。
【0157】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W0(g)〕に含浸させて秤量し〔W1(g)〕、160℃にて2時間加熱した後の重量〔W2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W2-W0)/(W1-W0)
【0158】
[エポキシ当量]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させた後に臭化テトラエチルアンモニウムの酢酸溶液を加え、電位差滴定装置「COM-1600」(平沼産業株式会社製)を用いて1/10N-過塩素酸溶液で滴定して求めた。
【0159】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置「COM-1600」を用いて1/10N-KOH水溶液で滴定して求めた。
【0160】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)「HLC-8220GPC」(東ソー株式会社製、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuper H-2000(2本)+TSKgelSuper H-3000(1本)+TSKgelSuper H-4000(1本)+TSKgelSuper H-5000(1本)(東ソー株式会社製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー株式会社製、PS-オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた。
【0161】
また、以下の合成例等で使用する略号は次のとおりである。
AA :アクリル酸
BPFE :ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物)
BPDA :3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
THPA :テトラヒドロ無水フタル酸
TEAB :臭化テトラエチルアンモニウム
PGMEA :プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0162】
[合成例1]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にBPFE(114.4g、0.23モル)、AA(33.2g、0.46モル)、PGMEA(157g)およびTEAB(0.48g)を仕込み、100~105℃で20時間撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA(35.3g、0.12モル)、THPA(18.3g、0.12モル)を仕込み、120~125℃で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A1-1)を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.5質量%、酸価(固形分換算)は103mgKOH/g、GPC分析によるMwは3600であった。
【0163】
[合成例2]
合成例1のBPFEを、ビスフェノールフルオレン骨格の重合度を増やしたBPFEに変えた以外は、合成例1と同じ仕込み量と合成方法用いて、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂(A1-2)を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は50.0質量%、酸価(固形分換算)は92mgKOH/g、GPC分析によるMwは6000であった。
【0164】
[実施例1]
以下の成分を用いて、フォトリソグラフィー用の感光性樹脂組成物を調製した。
【0165】
(重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂)
(A1-1):上記合成例1で得られた樹脂溶液(固形分濃度56.5質量%)
(A1-2):上記合成例2で得られた樹脂溶液(固形分濃度50.0質量%)
【0166】
(光重合性化合物)
(A2-1):ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(DPHA(アクリル当量96~115)、日本化薬株式会社製)
【0167】
(金属酸化物粒子分散体)
(B-1):中空チタニア粒子(平均粒径306nm)、中空率約30%、濃度30質量%、分散剤3質量%、PGMEA67質量%の中空チタニア粒子分散体
(B-2):中実チタニア粒子(平均粒径200nm)、中空率0%、濃度30質量%、分散剤3質量%、PGMEA67質量%のチタニア粒子分散体
【0168】
(光重合開始剤)
(C):1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)(IrgacureOXE-01、BASF社製、「Irgacure」は同社の登録商標)
【0169】
(エポキシ化合物)
(D):3,4-エポキシシクロヘキサンカルボン酸(3’,4’-エポキシシクロヘキシル)メチル(セロキサイド2021P(エポキシ当量135)、株式会社ダイセル製)
【0170】
(硬化剤および硬化促進剤)
(E-1):ベンゼン1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物
(E-2):1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU(R))を2質量%含有するPGMEA溶液、サンアプロ株式会社製)
【0171】
(溶剤)
(G-1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
(G-2):1-メトキシ-2-プロパノール(MMPG)
【0172】
(その他添加剤)
(カップリング剤)
(H):3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(界面活性剤)
(I):メガファックF-560(20質量%含有PGMEA溶液)(DIC株式会社製)
【0173】
[実施例1]
上記の配合成分を表1に示す割合で配合して、実施例1~5および比較例1~2の感光性樹脂組成物を調製した。表1の数値はすべて質量部を表す。
【0174】
【0175】
[評価]
実施例1~5、比較例1~2の感光性樹脂組成物を用いて、以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0176】
[現像特性評価]
(現像特性評価用の硬化膜の作製)
表1に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cm2の紫外線を照射して表面を洗浄した、125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(以下「ガラス基板」という)上に、加熱硬化処理後の膜厚が4.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間プリベークをして硬化膜(塗膜)を作製した。次いで、上記硬化膜(塗膜)上にライン/スペース=20μm/20μmのネガ型フォトマスクを被せ、i線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで50mJ/cm2の紫外線を照射して、光硬化反応を行った。
【0177】
次いで、露光した上記硬化膜(塗膜)を25℃、0.04%水酸化カリウム溶液により1kgf/cm2のシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から20秒間、現像処理を行った後、5kgf/cm2のスプレー水洗を行い、上記硬化膜(塗膜)の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、熱風乾燥機を用いて120℃で60分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例1~5、および比較例1~2に係る硬化膜付き基板を得た。
【0178】
上記で得られた実施例1~5および比較例1~2の感光性樹脂組成物を硬化してなる硬化膜について、以下の項目について評価した結果を表2に示す。
【0179】
(パターン密着性)
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)後の20μmマスクパターンを光学顕微鏡で観察した。なお、△以上を合格とした。
(評価基準)
○:全く剥離していない
△:一部が剥離している
×:大部分が剥離している
【0180】
(パターン直線性)
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)後の20μmマスクパターンを光学顕微鏡で観察した。なお、△以上を合格とした。
(評価基準)
○:パターンエッジ部分のギザつきが認められない
△:パターンエッジ部分のギザつきが一部に認められる
×:パターンエッジ部分のギザつきが大部分に認められる
【0181】
(パターン精細度)
(評価方法)
本硬化(ポストベーク)後の10~50μmマスクパターンを光学顕微鏡観察した。なお、△以上を合格とした。
(評価基準)
○:15μm以上25μm未満のパターンが形成されている
△:25μm以上~50μm未満のパターンが形成されている
×:パターンが形成されていない
【0182】
[薬品耐性評価]
(耐溶剤性評価用の硬化膜の作製)
表1に示した感光性樹脂組成物を、ガラス基板上に、加熱硬化処理後の膜厚が4.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間プリベークをして硬化膜(塗膜)を作製した。次いで、上記硬化膜(塗膜)上にライン/スペース=20μm/20μmのネガ型フォトマスクを被せ、i線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで50mJ/cm2の紫外線を照射して、光硬化反応を行った。
【0183】
次いで、露光した上記硬化膜(塗膜)を25℃、0.05%水酸化カリウム溶液により1kgf/cm2のシャワー圧にて60秒間、現像処理を行った後、5kgf/cm2のスプレー水洗を行い、上記硬化膜(塗膜)の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、熱風乾燥機を用いて120℃で60分間、本硬化(ポストベーク)し、実施例1~5、および比較例1~2に係る硬化膜付き基板を得た。
(評価方法)
ガラス基板上に作製した硬化膜の表面をPGMEAに浸漬したウエスで連続して20往復擦った。なお、△以上を合格とした。
(評価基準)
○:硬化膜の表面に溶解が見られず、傷も付いていない
△:硬化膜の表面のごく一部に溶解が見られ、ごく一部に傷も付いている
×:硬化膜の表面が軟化しており、大部分に傷が付いている
【0184】
[光学特性評価]
(透過率の評価)
(評価方法)
耐溶剤性評価用に作製した硬化膜と同様の硬化膜を用いて、紫外可視近赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、450nmの透過率を測定した。なお、△以上を合格とした。
(評価基準)
○:透過率が50%未満
△:透過率が50%以上55%未満
×:透過率が55%以上
【0185】
[光散乱性の評価]
耐溶剤性評価用に作製した硬化膜と同様の硬化膜の表面に対し、垂直に白色光を照射し、透過散乱光についてゴニオフォトメータ「GP-1」(ニッカ電測株式会社製)を用いて測定した。なお、△以上を合格とした。
(評価基準)
◎:直進した透過光の角度を0°とした場合の6°、60°における散乱光の強度の評価を行い、60°における散乱光強度が6°における散乱光強度に対し65%以上
○:直進した透過光の角度を0°とした場合の6°、60°における散乱光の強度の評価を行い、60°における散乱光強度が6°における散乱光強度に対し60%以上65%未満
△:直進した透過光の角度を0°とした場合の6°、60°における散乱光の強度の評価を行い、60°における散乱光強度が6°における散乱光強度に対し50以上60%未満
×:直進した透過光の角度を0°とした場合の6°、60°における散乱光の強度の評価を行い、60°における散乱光強度が6°における散乱光強度に対し50%未満
【0186】
【0187】
上記実施例1~5、比較例1~2の結果から明らかなように、特定の平均粒径を有する粒子である、特定の屈折率を有する金属酸化物の粒子を含む感光性樹脂組成物を用いることにより、光散乱性に優れるとともに、精細なパターン形成をすることができる硬化膜を作製できることがわかった。これらの硬化膜は、ディスプレイにおける光拡散層として最適である。
【0188】
[実施例2]
以下の成分を用いて、インクジェット塗布用の感光性樹脂組成物を調製した。
【0189】
(光重合性化合物)
(A2-2):1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6HX-A)(ライトアクリレート1.6HX-A、共栄社化学株式会社製)
【0190】
(金属酸化物粒子分散体)
(B-3):中空チタニア粒子(平均粒径306nm)、中空率約30%、濃度60質量%、分散剤6質量%、1.6HX-Aが34質量%の中空チタニア粒子分散体
(B-4):中実チタニア粒子(平均粒径200nm)、中空率0%、濃度60質量%、分散剤6質量%、1.6HX-Aが34質量%の中実チタニア粒子分散体
【0191】
(光重合開始剤)
(C):1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)(IrgacureOXE-01、BASF社製、「Irgacure」は同社の登録商標)
【0192】
(その他添加剤)
(界面活性剤)
(I):メガファックF-563(DIC株式会社製)
【0193】
上記の配合成分を表3に示す割合で配合して、実施例6~10および比較例3~4の感光性樹脂組成物を調製した。表3の数値はすべて質量部を表す。
【0194】
【0195】
[評価]
実施例6~10および比較例3~4の感光性樹脂組成物を用いて、以下の評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0196】
[薬品耐性評価]
(耐溶剤性評価用の硬化膜の作製)
表1に示した感光性樹脂組成物を、ガラス基板上に、硬化処理後の膜厚が4.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、塗膜を作製した。次いで、上記塗膜に、i線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで50mJ/cm2の紫外線を照射して、光硬化反応を行うことにより、実施例6~10、および比較例3~4に係る硬化膜付き基板を得た。
【0197】
(評価方法)
ガラス基板上に作製した硬化膜の表面をPGMEAに浸漬したウエスで連続して20往復擦った。なお、△以上を合格とした。
(評価基準)
○:硬化膜の表面に溶解が見られず、傷も付いていない
△:硬化膜の表面のごく一部に溶解が見られ、ごく一部に傷も付いている
×:硬化膜の表面が軟化しており、大部分に傷が付いている
【0198】
[光学特性評価]
(透過率の評価)
(評価方法)
耐溶剤性評価用に作製した硬化膜と同様の硬化膜を用いて、紫外可視近赤外分光光度計「UH4150」(株式会社日立ハイテクサイエンス製)を用い、450nmの透過率を測定した。なお、△以上を合格とした。
(評価基準)
○:透過率が50%未満
△:透過率が50%以上55%未満
×:透過率が55%以上
【0199】
[光散乱性の評価]
耐溶剤性評価用に作製した硬化膜と同様の硬化膜の表面に対し、垂直に白色光を照射し、透過散乱光についてゴニオフォトメータ「GP-1」(ニッカ電測株式会社製)を用いて測定した。なお、△以上を合格とした。
(評価基準)
◎:直進した透過光の角度を0°とした場合の6°、60°における散乱光の強度の評価を行い、60°における散乱光強度が6°における散乱光強度に対し65%以上
○:直進した透過光の角度を0°とした場合の6°、60°における散乱光の強度の評価を行い、60°における散乱光強度が6°における散乱光強度に対し60%以上65%未満
△:直進した透過光の角度を0°とした場合の6°、60°における散乱光の強度の評価を行い、60°における散乱光強度が6°における散乱光強度に対し50以上60%未満
×:直進した透過光の角度を0°とした場合の6°、60°における散乱光の強度の評価を行い、60°における散乱光強度が6°における散乱光強度に対し50%未満
【0200】
【0201】
上記実施例6~10、比較例3~4の結果から明らかなように、特定の屈折率粒子である、特定の屈折率を有する金属酸化物の粒子を含む感光性樹脂組成物を用いることにより、光散乱性に優れるとともに、精細なパターン形成をすることができる硬化膜を作製できることがわかった。これらの硬化膜は、ディスプレイにおける光拡散層として最適である。なお、上記実施例6~10、比較例4の加工性樹脂組成物を市販のインクジェットヘッドヘッドから吐出したところ、問題なくパターンを形成することができた。
【0202】
[実施例3]
以下の方法で光散乱層および波長変換層を有する硬化膜付き基板を作製し、評価した。
【0203】
以下に新たに合成例等で使用する略号と合成例を説明する。
【0204】
TPP :トリフェニルホスフィン
MEK :2-ブタノン
C6FMA :CH2=C(CH3)COOCH2CH2(CF2)6F
MAA :メタクリル酸
2-HEMA :2-ヒドロキシエチルメタクリレート
V-65 :2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)
n-DM :n-ドデシルメルカプタン
BEI :1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート
DBTDL :ジブチル錫ジラウレート
TBQ :t-ブチル-p-ベンゾキノン
【0205】
[合成例3]
還留冷却器付き1Lの四つ口フラスコ中に、BPFE(244.3g、0.50mol)、AA(72.1g、1.0mol)、TPP(0.45g)、およびPGMEA(318g)を仕込み、100~105℃の加熱下で12時間撹拌し、反応生成物を得た。次いで、得られた反応生成物にBPDA(94.2g、0.32mol)およびTHPA(3.04g、0.02mol)を仕込み、115~120℃の加熱下で6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は56.5質量%であり、酸価(固形分換算)は90mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは4600であった。
【0206】
[合成例4]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にBPFE(114.4g、 0.23mol)、AA(33.2g、0.46mol)、PGMEA(156g)及びTEAB(0.48g)を仕込み、100~105℃で加熱下に20時間撹拌して反応させた。次いで、フラスコ内にBPDA(44.1g、0.15mol)、THPA(0.76g、0.005mol)を仕込み、120~125℃で加熱下に6時間撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.6質量%、酸価(固形分換算)は93mgKOH/g、GPC分析によるMwは8300であった。
【0207】
[合成例5]:
撹拌機を備えた内容積1,000cm3のオートクレーブに、MEK(415.1g)、C6FMA(81.0g)、MAA(18.0g)、2-HEMA(81.0g)、重合開始剤であるV-65(5.0g)およびn-DM(4.7g)を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、50℃で24時間重合させ、さらに70℃にて5時間加熱し、重合開始剤を不活性化し、共重合体の溶液を得た。共重合体は、数平均分子量(Mn)が5,540、Mwは13,200であった。次いで、撹拌機を備えた内容積300cm3のオートクレーブに上記共重合体の溶液(130.0g)、BEI(33.5g)、DBTDL(0.13g)、TBQ(1.5g)を仕込み、撹拌しながら、40℃で24時間反応させ、粗重合体を合成した。得られた粗重合体の溶液にヘキサンを加えて再沈精製した後、真空乾燥し、撥インク剤65.6gを得た。撥インク剤はMn7,540、Mw16,200、フッ素原子の含有率14.8(質量%)、C=Cの含有量3.73mmol/gおよび酸価35.1mgKOH/gであった。
【0208】
以下の成分を用いて、感光性樹脂組成物を調製した。
【0209】
(アルカリ可溶性樹脂)
(1):上記合成例3で得られた樹脂溶液(固形分濃度56.5質量%)
(2):上記合成例1で得られた樹脂溶液(固形分濃度56.5質量%)
(3):上記合成例4で得られた樹脂溶液(固形分濃度55.6質量%)
(4):クレゾールノボラック型エポキシ樹脂をAA、次いでTHPAと反応させて、アクリロイル基とカルボキシル基とを導入した樹脂をヘキサンで精製した樹脂、固形分70質量%、酸価(固形分換算)60mgKOH/g
【0210】
(光重合性化合物)
(1):ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサアクリレートとの混合物(DPHA(アクリル当量96~115)、日本化薬株式会社製)
【0211】
(光重合開始剤)
(1):エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)(イルガキュアOXE02、BASF社製)
(2):1-[4-(フェニルスルファニル)フェニル]オクタン-1,2-ジオン 2-O-ベンゾイルオキシム(イルガキュアOXE01、BASF社製)
(3):ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド
(4):イソプロピルチオキサントン
【0212】
(エポキシ化合物)
(1):テトラメチルビフェニル系エポキシ樹脂(YX-4000、日本化薬社製)
【0213】
(溶剤)
(1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
(2):シクロヘキサノン(ANON)
(3):ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)
(4):ジエチレングリコールメチルエチルエーテル(EDM)
(5):プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
(6):ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)
【0214】
(カップリング剤)
(1):3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(KBM-803、信越化学(株)製)
(2):3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
【0215】
(界面活性剤)
(1):BYK-330(ビックケミー社製)
(2):FZ-2122(1質量%PGMEA溶液)(東レ・ダウコーニング社製)
(3):BYK-302(1質量%PGMEA溶液)(ビックケミー社製)
【0216】
(顔料分散体)
(1):カーボンブラック濃度25.0質量%、高分子分散剤濃度5.0質量%のPGMEA分散液(固形分30.0質量%)
(2):微粒化されたピグメント・レッド254(BET法による比表面積85m2/g、キュムラント法による平均粒径72nm))15%、高分子分散剤10%のPGMEA溶液
(3):微粒化されたピグメント・グリーン7(BET法による比表面積75m2/g、キュムラント法による平均粒径32nm)15%、高分子分散剤10%のPGMEA溶液
(4):微粒化されたピグメント・ブルー15:6(BET法による比表面積90m2/g、キュムラント法による平均粒径57nm)15質量%、高分子分散剤10質量%のPGMEA溶液
【0217】
(撥インク剤)
(1):合成例5で得られた撥インク剤
【0218】
上記の配合成分を表5に示す割合で配合して、感光性樹脂組成物を調製した。表5の数値はすべて質量部を表す。
【0219】
【0220】
[硬化膜付き基板の作製方法]
図1に示した基板を作製するに当たっては、前記各層を、先に述べた順番とは逆の順番で形成した。波長変換層に用いる量子ドットが熱に弱い性質があることから、熱工程を必要とする各層の中で、波長変換層の形成をできるだけ後にする必要があるためである。
【0221】
まず、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000mJ/cm2の紫外線を照射して表面を洗浄した125mm×125mmのガラス基板「#1737」(コーニング社製)(以下「ガラス基板」という)上に、表5に記載のBM用組成物を、スピンコーターを用いてポストベーク後の膜厚が1.1μmとなるように塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間プリベークした。その後、露光ギャップを100μmに調整し、乾燥塗膜の上にライン/スペース=20μm/10μmのネガ型フォトマスクを介して、i線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで80mJ/cm2の紫外線を照射し、感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗膜を25℃、0.05%水酸化カリウム水溶液で、パターンが現れ始める現像時間+30秒間現像を行って、更に水洗を行って、塗膜の未露光部を除去してガラス基板上に画素パターンを形成し、その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間熱ポストベークすることによりブラックマトリクス層を形成した。
【0222】
次に、前記ブラックマトリクス層が形成された基板に対して、表5に記載のCF用組成物(赤)を、スピンコーターを用いてポストベーク後の膜厚が2.0μmとなるように塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間プリベークした。その後、前記ブラックマトリクスパターンの開口部の、赤画素に相当する部分のみが露光されるように配置した、20μmの開口部を有するネガ型フォトマスクを介して、i線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで100mJ/cm2の紫外線を照射し、露光部分の光反応を行った。次に、塗膜に対して23℃の0.4%炭酸ナトリウム水溶液で1分間現像を行い、更に水洗を行って、塗膜の未露光部を除去した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間ポストベークすることにより、赤色着色層(1色目の画素パターン)を得た。次に、上記の手順を表5に記載のCF用組成物(緑)を用いて同一の基板上に繰り返して実施し、緑画素に相当する部分に緑色着色層(2色目の画素パターン)を得た。更に、上記の手順を表5に記載のCF用組成物(青)を用いて同一の基板上に繰り返して実施し、青画素に相当する部分に青色着色層(3色目の画素パターン)を得た。こうして赤色・緑色・青色の3色の画素パターンを有する着色層を形成した。
【0223】
続いて、前記ブラックマトリクス層の上に着色層が形成された基板に対して、表5に記載の保護層用組成物を、スピンコーターを用いてポストベーク後の膜厚が1.5μmになるように塗布し、ホットプレートを用いて90℃2分間プリベークした。その後、i線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで100mJ/cm2の紫外線を全面に照射し、光反応を行った。その後、熱風乾燥機を用いて230℃で60分間、本硬化(ポストベーク)しを行うことにより、保護層を形成した。
【0224】
以上により、ガラス基板上にブラックマトリクス層、着色層、保護層の順で形成されたカラーフィルター層を形成した。
【0225】
続いて、前記カラーフィルター層の各着色層に対応する光散乱層、波長変換層を形成するための区分け目的の隔壁層を形成するため、前期カラーフィルター層に対して、表5に記載の隔壁用組成物を、スピンコーターを用いてポストベーク後の膜厚が5.0μmとなるように塗布し、ホットプレートを用いて90℃2分間プリベークした。その後、前記カラーフィルター層のブラックマトリクスパターンの領域が露光されるように配置した、ライン/スペース=20μm/10μmのネガ型フォトマスクを介して、i線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで150mJ/cm2の紫外線を照射し、露光部分の光反応を行った。次に、塗膜に対して23℃の0.4%テトラメチル水酸化アンモニウム水溶液で1分間現像を行い、更に水洗を行って、塗膜の未露光部を除去した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間ポストベークすることにより、隔壁層を形成した。
【0226】
次に、光散乱層および波長変換層を形成した。
【0227】
表6に、光散乱層および波長変換層の形成に用いた感光性樹脂組成物を示す。
光散乱層の形成には、表1の実施例3と同じ感光性樹脂組成物を用いた。波長変換層の形成には、量子ドット分散体として、以下の材料を、
(F-1):CdSe/ZnSコアシェルタイプ、リガンド修飾済み、発光波長540nm(MERCK社製)、濃度50質量%、PGMEA50質量%の緑色量子ドット分散体
(F-2):CdSe/ZnSコアシェルタイプ、リガンド修飾済み、発光波長630nm(MERCK社製)、濃度50質量%、PGMEA50質量%の赤色量子ドット分散体
光重合開始剤として以下の材料を、
(C-2):2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(Omnirad TPO、IGM resins社製)
それぞれ用いた以外は、光散乱層に用いた材料と同じ材料を使用した。
【0228】
実施例として作製した硬化膜付き基板では、波長変換層(緑画素および赤画素)に中空粒子を用いた。一方、比較例として作製した硬化膜付き基板では、波長変換層(緑画素および赤画素)に、光散乱層と同じ中実粒子を用いた。なお、本実験において使用した中空粒子および中実粒子は、固形分中の濃度が同等になるように調整した。上記の配合成分を表6に示す割合で配合して、光散乱層、波長変換層(緑)および波長変換層(赤)の感光性樹脂組成物を調製した。表Zの数値はすべて質量%を表す。
【0229】
【0230】
光散乱層を以下の方法で作製した。
【0231】
ガラス基板にカラーフィルター層および隔壁層を形成した基板に、表6に示す光散乱層用の組成物を、4.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間プリベークをして硬化膜(塗膜)を作製した。次いで、上記硬化膜(塗膜)上に20μm幅の開口部を有するネガ型フォトマスクを、開口部がカラーフィルター層の青色着色層に合わせて被せ、i線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで50mJ/cm2の紫外線を照射して、光硬化反応を行った。次いで、露光した上記硬化膜(塗膜)を25℃、0.04%水酸化カリウム溶液により1kgf/cm2のシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から20秒間、現像処理を行った後、5kgf/cm2のスプレー水洗を行い、上記硬化膜(塗膜)の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、熱風乾燥機を用いて120℃で60分間、本硬化(ポストベーク)し、光散乱層を形成した。
【0232】
続いて、波長変換層を次に示す方法で作製した。
【0233】
表6に示した感光性樹脂組成物を、前記基板上に、加熱硬化処理後の膜厚が4.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間プリベークをして硬膜(塗膜)を作製した。次いで、上記硬化膜(塗膜)上に20μmの開口部を有するネガ型フォトマスクを、波長変換層(緑)用の感光性樹脂組成物の場合は開口部がカラーフィルター層の緑色着色層に合せるようにして、波長変換層(赤)用の感光性樹脂組成物の場合は開口部がカラーフィルター層の赤色着色層に合せるようにして被せ、それぞれ、窒素雰囲気下で、波長395nmのLED光源から2000mJ/cm2の紫外線を照射して、光硬化反応を行った。 次いで、露光した上記硬化膜(塗膜)を25℃、0.04%水酸化カリウム溶液により1kgf/cm2のシャワー圧にて、パターンが現れ始める現像時間(ブレイクタイム=BT)から20秒間、現像処理を行った後、5kgf/cm2のスプレー水洗を行い、上記硬化膜(塗膜)の未露光部分を除去してガラス基板上に硬化膜パターンを形成し、熱風乾燥機を用いて120℃で60分間、本硬化(ポストベーク)し、波長変換層を作成した。
【0234】
最後に保護層を形成した。保護層は、光散乱層に用いた感光性樹脂組成物から金属酸化物粒子を除いた組成物を、加熱硬化後の膜厚が2.0μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、ホットプレートを用いて90℃で2分間プリベークをして硬化膜(塗膜)を作製した。次いで、上記硬化膜(塗膜)に対して、i線照度30mW/cm2の超高圧水銀ランプで50mJ/cm2の紫外線を照射して、光硬化反応を行った。次いで、熱風乾燥機を用いて120℃で60分間、本硬化(ポストベーク)し、保護層を形成した。
【0235】
以上により、カラーフィルター層の上に光散乱層および波長変換層を形成した硬化膜付き基板を得た。
【0236】
[評価]
前記硬化膜付き基板を用いて、以下の評価を行った。
【0237】
青色光源として、青色LED(ピーク波長450nm)を面発光光源として用い、その上に本実施例および比較例の硬化膜付き基板を、カラーフィルター層が上になるようにガラス面を上にして載せ、ガラス面側から積分球付きの分光放射計を用いて、分光スペクトルを測定した。
【0238】
その結果、本実施例の硬化膜付き基板から得られるスペクトルは、400nm~480nmの範囲の青色発光強度(光散乱層を経由して発せられるLED光源の光の強度)、480nm~590nmの範囲の緑色発光強度(緑色画素の波長変換層を経由して発せられる光の強度)、590nm~750nmの範囲の赤色発光強度(赤色画素の波長変換層を経由して発せられる光の強度)のバランスが優れているのに対し、比較例の硬化膜付き基板から得られるスペクトルは、青色発光強度に対して、緑色発光強度および赤色発光強度が相対的に弱く、3色のバランスが悪いことがわかった。
本発明の感光性樹脂組成物によれば、光散乱性に優れた硬化膜付き基板を得ることができる。例えば、表示装置における光拡散層などに有用である。特に、透過散乱光の分布に優れる点がディスプレイの視野角を広げる効果がある。さらに、この感光性樹脂組成物は低温で硬化しても耐溶剤性を得ることができる。