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特開2023-96742電源装置、電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法、電源装置を通信によって制御する方法、電源装置の試験方法、及び、複数の電源装置の試験方法
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  • 特開-電源装置、電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法、電源装置を通信によって制御する方法、電源装置の試験方法、及び、複数の電源装置の試験方法 図1
  • 特開-電源装置、電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法、電源装置を通信によって制御する方法、電源装置の試験方法、及び、複数の電源装置の試験方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096742
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】電源装置、電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法、電源装置を通信によって制御する方法、電源装置の試験方法、及び、複数の電源装置の試験方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212690
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 裕介
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 崇史
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS04
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730BB81
5H730DD04
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD26
5H730FG05
5H730FG12
5H730FG24
5H730XX12
5H730XX15
5H730XX19
5H730XX23
5H730XX25
5H730XX32
5H730XX35
5H730XX45
(57)【要約】
【課題】スイッチング電源の影響を受けず且つ特性を犠牲にせずに電源装置を通信によって制御することができ、その後に速やかに所望の電圧を出力し得る電源装置を提供する。
【解決手段】本発明の実施形態の電源装置1は、外部回路E1への通電をスイッチングするスイッチング電源部11~14と、スイッチング電源部11~14を制御する制御部2と、制御部2と外部機器Mとの間で信号を送受信する通信部3と、制御部2に指示を与える入力信号を受け付ける入力端子4と、を備えている。スイッチング電源部11~14は、それぞれ、出力端子に接続されていて出力電流をスイッチングする出力回路と、出力回路を制御するスイッチング制御回路と、を含み、制御部2は、入力端子4への入力信号に応じて、スイッチング制御回路を機能させたまま出力回路のスイッチングを停止させるように構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部回路への通電をスイッチングする1以上のスイッチング電源部と、
前記1以上のスイッチング電源部それぞれを制御する制御部と、
前記制御部と外部機器との間で信号を送受信する通信部と、
前記制御部に指示を与える入力信号を受け付ける入力端子と、
を備え、
前記1以上のスイッチング電源部は、それぞれ、出力端子に接続されていて出力電流をスイッチングする出力回路と、前記出力回路を制御するスイッチング制御回路と、を含み、
前記制御部は、前記入力端子への入力信号に応じて、前記スイッチング制御回路を機能させたまま前記出力回路のスイッチングを停止させるように構成されている電源装置。
【請求項2】
前記入力端子の機能が、前記スイッチングを停止させる入力信号以外の信号の入力を受け付ける又は前記電源装置から信号を出力するように切り換えられる、請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記1以上のスイッチング電源部は複数のスイッチング電源部を含み、
前記制御部は、前記入力端子への入力信号に応じて、前記複数のスイッチング電源部それぞれにおいて、前記スイッチング制御回路を機能させたまま前記出力回路の前記スイッチングを停止させるように構成されている、請求項1又は2記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記入力端子への入力信号に応じて前記スイッチングを停止させたときは、前記スイッチングが停止していることを示す信号を前記通信部から前記外部機器に送信させるように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項5】
1以上のスイッチング電源部を含んでいて通信によって制御される電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法であって、
前記電源装置に電源電圧を印加することによって、前記スイッチング電源部が含む、出力電流をスイッチングする出力回路を制御するスイッチング制御回路を機能させることと、
前記スイッチング制御回路を機能させたまま前記出力回路のスイッチングを停止させることと、
を含む、電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法。
【請求項6】
1以上のスイッチング電源部及び外部機器から信号を受信する通信部を含んでいる電源装置を通信によって制御する方法であって、
前記スイッチング電源部が含む、出力電流をスイッチングする出力回路及び前記出力回路を制御するスイッチング制御回路のうちの前記スイッチング制御回路を機能させたまま前記出力回路のスイッチングを停止させることと、
前記スイッチングが停止している間に制御信号を前記通信部に送ることによって前記電源装置を制御することと、
を含む、電源装置を通信によって制御する方法。
【請求項7】
前記1以上のスイッチング電源部は複数のスイッチング電源部を含み、
前記出力回路の前記スイッチングを停止させることは、前記電源装置が含む一つの入力端子に所定の信号を印加することによって、前記複数のスイッチング電源部それぞれにおいて、前記スイッチング制御回路を機能させたまま前記出力回路の前記スイッチングを停止させることを含む、請求項6記載の電源装置を通信によって制御する方法。
【請求項8】
1以上のスイッチング電源部を含んでいて通信によって制御される電源装置の試験方法であって、
前記スイッチング電源部が含む、出力電流をスイッチングする出力回路及び前記出力回路を制御するスイッチング制御回路のうちの前記スイッチング制御回路を機能させたまま前記出力回路のスイッチングを停止させることと、
停止した前記スイッチングを再開させて前記電源装置の少なくとも一つの特性を測定することと、を含む電源装置の試験方法。
【請求項9】
前記出力回路の前記スイッチングを停止させる前に第1試験モードで前記電源装置の第1特性を測定することと、
前記スイッチングの停止中に、前記通信によって前記電源装置を前記第1試験モードから第2試験モードに切り替えることと、
停止した前記スイッチングを再開させて前記第2試験モードで前記電源装置の第2特性を測定することと、をさらに含む、請求項8記載の電源装置の試験方法。
【請求項10】
前記出力回路の前記スイッチングを停止させることは、
前記電源装置が含む一つの入力端子に通信に依らずに所定の信号を印加することによって前記スイッチング制御回路を機能させたまま前記出力回路の前記スイッチングを停止させることを含む、請求項8又は9記載の電源装置の試験方法。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか1項に記載の電源装置の試験方法を用いて複数の電源装置を試験することを含み、
前記出力回路の前記スイッチングを停止させることは、前記複数の電源装置において、それぞれの前記スイッチング制御回路を機能させたまま前記出力回路の前記スイッチングを一斉に停止させることを含む、複数の電源装置の試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置、電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法、電源装置を通信によって制御する方法、電源装置の試験方法、及び、複数の電源装置の試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入力電圧を所望の電圧に変換して出力する電源装置が多くの電気機器に用いられている。例えば入力電圧を効率良く所望の電圧に変換するスイッチング電源を含む電源装置が用いられている。さらに、複数のスイッチング電源を含む電源装置、及び、スイッチング電源とロー・ドロップ・アウト(LDO)レギュレータを含む電源装置のような複合型の電源装置も、仕様の異なる複数の電源を必要とする、スマートフォンなどの携帯機器、家庭用電化製品、ロボットなどの産業用機器、及び自動車などの輸送機器などに用いられている。このような複合型の電源装置は、複数の電源それぞれの出力電圧を制御する回路と共に半導体装置に集積され、パワー・マネジメント・インテグレーテッド・サーキット(PMIC)としても提供されている。
【0003】
また近年では、通信を介してPMICなどの電源装置を制御することも行われている。例えば、インター・インテグレーテッド・サーキット(I2C)やシリアル・ペリフェラル・インターフェース(SPI)などの通信規格に対応する通信インターフェースを備えるPMICも提供されている。
【0004】
一方、スイッチング電源では、例えば数百kHz~数MHzの周波数で電流をスイッチングすることによって入力側から出力側に提供される電力が調整される。すなわち、スイッチング電源では、例えば数MHzのオーダーの周波数で電流の通電と遮断とが切り換えられたり通電方向が切り換えられたりするので、スイッチング電源の周囲の回路の動作がそのスイッチングによる干渉を受けることがある。例えば特許文献1では、放送波を受信する受信装置を備えていて入力電源からの電圧を発信回路の発信周波数でスイッチングする電源装置において、発信周波数の高調波と放送波の周波数との差が予め設定された偏差内にあるときに、発信周波数を変化させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2005-130081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように通信によって制御されるスイッチング電源を含む電源装置では、例えば前述したSPIなどの通信規格によるデジタル通信で伝送される信号に、スイッチング電源のスイッチングによるグランドレベルの変動やスイッチング電源から放出される電磁波によってノイズが生じることがある。特定の通信規格に沿って伝送されるべき信号にノイズによって意図せぬレベル変動が生じると、送信側から送られた信号に含まれる情報が受信側で正確に受け取られないことがある。また、送信された信号が通信規格に従わない信号となり果てて受信側で受け取られないこともある。すなわち、通信による電源装置の制御が不能になることがある。また、通信信号に生じるノイズは、特許文献1の開示のようにスイッチング電源の発振周波数を特定の周波数から少々ずらしたところで顕著に抑制され得ない。スイッチング電源の発振周波数が数kHz程度であれば、通信信号にノイズが生じる頻度が少なくなるため実質的な通信障害は生じ難くなるが、発振周波数が低いと、例えば効率などの電源装置の所望の特性が得られないことがある。
【0007】
また、このような通信によって制御されるスイッチング電源を含む電源装置、例えばPMICの動作試験では、スイッチング電源によるノイズによってPMICとの間で正常な通信を確実に行い得ないために、PMICを試験項目に適した状態(モード)に設定若しくは切り換えられなかったり、適した状態にするのに時間を要したりすることがある。そのため、PMICの試験時間が増大したり、良品が不良判定されて見かけ上の歩留まりが低下したりすることがある。動作試験が数kHz程度のスイッチング周波数で実施されれば、前述したように通信障害が生じない可能性があるが、そのような試験は、使用時の動作状態に対する代替試験となってしまい、想定される使用条件で求められる特性が得られるか否かの試験になり得ない。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑み、スイッチング電源の影響を受けず且つ特性を犠牲にせずに電源装置を通信によって制御することができ、しかも、その通信による制御後に速やかに所望の電圧を出力し得る電源装置を提供することを課題とする。また、本発明は、スイッチング電源の影響を受けずに電源装置を通信によって制御することを可能にし、しかも、その制御後に速やかに電源装置が所望の電圧を出力することを可能にする、電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法を提供することを課題とする。また本発明は、制御後に速やかに電源装置が所望の電圧を出力することができる、スイッチング電源の影響を受けずに電源装置を通信によって制御する方法を提供することを課題とする。また、本発明は、試験中にスイッチング電源の影響を受けず且つ速やかに通信によって電源装置を制御することができ、もって容易に短い時間で電源装置を試験することができる、電源装置の試験方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電源装置の一実施形態は、外部回路への通電をスイッチングする1以上のスイッチング電源部と、前記1以上のスイッチング電源部それぞれを制御する制御部と、前記制御部と外部機器との間で信号を送受信する通信部と、前記制御部に指示を与える入力信号を受け付ける入力端子と、を備え、前記1以上のスイッチング電源部は、それぞれ、出力端子に接続されていて出力電流をスイッチングする出力回路と、前記出力回路を制御するスイッチング制御回路と、を含み、前記制御部は、前記入力端子への入力信号に応じて、前記スイッチング制御回路を機能させたまま前記出力回路のスイッチングを停止させるように構成されている。
【0010】
本発明の電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法の一実施形態は、1以上のスイッチング電源部を含んでいて通信によって制御される電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法であって、前記電源装置に電源電圧を印加することによって、前記スイッチング電源部が含む、出力電流をスイッチングする出力回路を制御するスイッチング制御回路を機能させることと、前記スイッチング制御回路を機能させたまま前記出力回路のスイッチングを停止させることと、を含む。
【0011】
本発明の電源装置を通信によって制御する方法は、1以上のスイッチング電源部及び外部機器から信号を受信する通信部を含んでいる電源装置を通信によって制御する方法であって、前記スイッチング電源部が含む、出力電流をスイッチングする出力回路及び前記出力回路を制御するスイッチング制御回路のうちの前記スイッチング制御回路を機能させたまま前記出力回路のスイッチングを停止させることと、前記スイッチングが停止している間に制御信号を前記通信部に送ることによって前記電源装置を制御することと、を含む。
【0012】
本発明の電源装置の試験方法は、1以上のスイッチング電源部を含んでいて通信によって制御される電源装置の試験方法であって、前記スイッチング電源部が含む、出力電流をスイッチングする出力回路及び前記出力回路を制御するスイッチング制御回路のうちの前記スイッチング制御回路を機能させたまま前記出力回路のスイッチングを停止させることと、停止した前記スイッチングを再開させて前記電源装置の少なくとも一つの特性を測定することと、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電源装置によれば、スイッチング電源部のスイッチング制御回路を機能させたまま出力回路のスイッチングを停止させることを制御部に指示する入力信号を受け付ける入力端子が備えられているので、スイッチング電源の影響を受けず且つ特性を犠牲にせずに電源装置を通信によって制御することができ、しかも、その通信による制御後に速やかに所望の電圧を出力し得る電源装置を提供することができる。また、本発明の電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法、本発明の電源装置を通信によって制御する方法、及び本発明の電源装置の試験方法によれば、スイッチング電源部のスイッチング制御回路が機能したまま出力回路のスイッチングが停止されるので、スイッチング電源の影響を受けずに電源装置を通信によって制御することができ、しかも、その制御後に速やかに電源装置に所望の電圧を出力させることができ、もって容易に短い時間で電源装置を試験することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の電源装置の一例の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係るスイッチング電源部の内部の構成を示すブロック図。
図3】電源装置の通信信号及び出力電圧に生じるノイズを示す図。
図4】本発明の一実施形態の電源装置の活用例を示すブロック図。
図5】本発明の一実施形態の電源装置の試験方法の一例を示すフローチャート。
図6】本発明の一実施形態の電源装置の試験方法の手順の一例を示すタイミングチャート。
図7】本発明の一実施形態の複数の電源装置の試験方法の手順の一例を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<電源装置の構成>
つぎに、図面を参照しながら本発明の電源装置の実施形態が説明されるが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1には、一実施形態の電源装置の一例である電源装置1が示されている。図1の電源装置1には外部回路E1~E4が接続され、外部回路E1~E4には、それぞれ負荷LD1~LD4が接続されている。図1の電源装置1には、さらに外部機器Mが接続されている。図1の例において外部機器Mは、電源装置1の電圧生成及び出力機能を制御する半導体集積回路装置であるマイコンであるが、本実施形態の電源装置に接続される外部機器はマイコンに限定されない。また、負荷LD1~LD4は、一定の電圧を供給されて必要な電力を消費する任意の電子部品、電子部品の組み合わせ、電気機器、又は電気的システムであり得る。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態の電源装置1は、1以上のスイッチング電源部(図1の例では四つのスイッチング電源部11~14)と、1以上のスイッチング電源部それぞれを制御する制御部2と、制御部2と外部機器Mとの間で信号を送受信する通信部3と、入力端子(第1入力端子)4と、を備えている。制御部2はスイッチング電源部11~14のそれぞれを制御する。各スイッチング電源部11~14は、それぞれ、負荷LD1~LD4にそれぞれ接続される外部回路E1~E4への通電をスイッチングする。そして各スイッチング電源部11~14は、それぞれ、外部回路E1~E4に電流を供給する又は外部回路E1~E4を駆動する。
【0018】
図1の例の電源装置1は、さらに、3つのLDOレギュレータ15を備えている。各LDOレギュレータ15は、図示されない負荷に対して所定の電圧で電力を供給する。なお一実施形態の電源装置は、スイッチング電源部11~14のような、スイッチング電源を含む1以上の任意の数の電源部、及びLDOレギュレータ15のようなリニアレギュレータを含む任意の数の電源部を備え得る。
【0019】
図1の電源装置1では、スイッチング電源部11~14、制御部2、通信部3、及び3つのLDOレギュレータ15が、1チップの半導体装置に集積されている。すなわち、電源装置1は、本実施形態の電源装置が所謂パワーマネジメントIC(PMIC)として具現化されている例である。しかし、本実施形態の電源装置は、必ずしも1チップの半導体装置に集積されていなくてもよく、個別に形成された各構成要素を接続することによって構成されていてもよい。
【0020】
スイッチング電源部11~14は、それぞれ、外部回路E1~E4に接続されるドライバを含んでおり、各ドライバを構成する電界効果型トランジスタ(FET)などのスイッチング素子が電流を通電する状態と遮断する状態との間でスイッチングする。スイッチング電源部11(第1スイッチング電源部)は、ハイサイド側のプリドライバT1及びローサイド側のプリドライバT2を備えている。プリドライバT1及びプリドライバT2の出力ノードは、それぞれ電源装置1の出力端子に接続されている。プリドライバT1及びプリドライバT2は、例えばFETのようなスイッチング素子で構成される。
【0021】
外部回路E1は、ハイサイド側のメインドライバS1、ローサイド側のメインドライバS2、コイルL1、及びコンデンサC1を含んでいる。図1の例においてメインドライバS1、S2はFETからなる。メインドライバS1、S2のゲートに、スイッチング電源部11のプリドライバT1、T2が、それぞれ、電源装置1の出力端子を介して接続されている。本実施形態の説明において「メインドライバ」は負荷LD1~LD4に電流を供給するドライバであり、「プリドライバ」はメインドライバを駆動するドライバである。
【0022】
メインドライバS1のソースとメインドライバS2のドレインとコイルL1の一端とが接続され、メインドライバS1のドレインは入力電源(VDD)に接続され、メインドライバS2のソースはグランドに接続されている。また、メインドライバS1のソースとメインドライバS2のドレインの接続点は、メインドライバS1のドレイン・ソース間の電圧をモニタするためにスイッチング電源部11に接続される。コイルL1の他端とグランドとの間にコンデンサC1が接続され、コイルL1とコンデンサC1との接続ノードに負荷LD1が接続されている。また、コイルL1とコンデンサC1との接続ノードは、フィードバック制御(エラー検出)のためにスイッチング電源部11に接続されている。スイッチング電源部11と外部回路E1とによって降圧型のスイッチンレギュレータが構成され、その出力電圧が負荷LD1に提供される。
【0023】
スイッチング電源部12(第2スイッチング電源部)は、ハイサイド側のプリドライバT3及びメインドライバT5、並びに、ローサイド側のプリドライバT4及びメインドライバT6を備えている。図1の例においてメインドライバT5、T6はFETからなる。プリドライバT3及びプリドライバT4は、例えばFETのようなスイッチング素子で構成される。メインドライバT5のソースとメインドライバT6のドレインとが電源装置1の出力端子に接続されている。メインドライバT5、T6は外部回路E2に電流を供給し、さらに外部回路E2を介して負荷LD2に電流を供給する。メインドライバT5、T6のゲートにプリドライバT3、T4がそれぞれ接続されており、プリドライバT3、T4によってメインドライバT5、T6がそれぞれ駆動される。メインドライバT5のドレインは外部回路E1の出力(スイッチング電源部11によるスイッチング電源の出力(VDD2))に接続され、メインドライバT6のソースはグランドに接続されている。
【0024】
外部回路E2は、コイルL2及びコンデンサC2を含んでいる。コイルL2の一端が電源装置1の出力端子を介してメインドライバT5、T6に接続され、コイルL2の他端とグランドとの間にコンデンサC2が接続されている。また、コイルL2とコンデンサC2との接続ノードは、フィードバック制御(エラー検出)のためにスイッチング電源部12に接続されている。スイッチング電源部12と外部回路E2とによって降圧型のスイッチンレギュレータが構成され、その出力電圧が、コイルL2及びコンデンサC2に接続されている負荷LD2に提供される。
【0025】
スイッチング電源部13(第3スイッチング電源部)は、プリドライバT7(ローサイド側)を含んでいる。プリドライバT7は、例えばFETのようなスイッチング素子で構成される。プリドライバT7の出力は電源装置1の出力端子に接続されている。外部回路E3は、メインドライバS3(ローサイド側)、コイルL3、コンデンサC3、及びダイオードD1を含んでいる。図1の例においてメインドライバS3はFETからなる。メインドライバS3のゲートに、電源装置1の出力端子を介してプリドライバT7が接続されている。メインドライバS3のドレインにコイルL3の一端及びダイオードD1のアノードが接続され、コイルL3の他端は入力電源(VDD)に接続され、ダイオードD1のカソードとグランドとの間にコンデンサC3が接続されている。コンデンサC3とダイオードD1との接続ノードは、フィードバック制御(エラー検出)のためにスイッチング電源部13に接続されている。スイッチング電源部13と外部回路E3とによって昇圧型のスイッチンレギュレータが構成され、その出力電圧が、コンデンサC3及びダイオードD1に接続されている負荷LD3に提供される。
【0026】
スイッチング電源部14(第4スイッチング電源部)は、スイッチング電源部12と同様に構成されている。ハイサイド側のメインドライバのドレインは外部回路E3の出力(スイッチング電源部13によるスイッチング電源の出力(VDD4))に接続されている。外部回路E4は、外部回路E2と同様に構成されている。スイッチング電源部14と外部回路E4とによって昇圧型のスイッチンレギュレータが構成され、その出力電圧が負荷LD4に提供される。
【0027】
なお、スイッチング電源部11~14のいずれかを構成する各プリドライバ及び各メインドライバは、バイポーラトランジスタで構成されていてもよく、ジャンクション型FETで構成されていてもよい。また、各プリドライバは、ハイサイド側及びローサイド側のスイッチング素子を含んでいてもよい。さらに、各プリドライバは、例えばFETで構成される複数のドライバの入力と出力とが接続されて後段のドライバが前段のドライバによって駆動される、2以上の複数段階に渡って駆動能力を高める多段階構造を有していてもよい。
【0028】
通信部3は、SPI、又はI2Cのような所定の通信規格に従って、外部機器Mから電源装置1の制御に関する信号を受信し、受信信号に基づく信号を制御部2へと出力する。通信部3は、外部機器Mに電源装置1から送られるべき信号(例えば応答信号)を送信してもよい。図1の例は、SPIプロトコルに従って、通信部3と外部機器Mとが交信する例であり、通信部3は、クロック線SCK、データ入力線SDI、及びデータ出力線SDOの三つの信号線で、外部機器Mと接続されている。
【0029】
制御部2は、ロジック制御回路2a、入出力回路2b、電圧モニタ回路2c、及び自己診断回路2dを含んでいる。ロジック制御回路2aは、通信部3を介して受け取る外部機器Mからの指示、入出力回路2bから受け取る所定のレベルの制御信号、及び、内蔵するROM(図示せず)の記憶内容に基づいて、スイッチング電源部11~14それぞれのスイッチング動作を制御する。例えば、ロジック制御部2aは、各スイッチング電源部11~14に所定の信号を出力することによって、スイッチング電源部11~14それぞれにおけるスイッチングの開始と停止、及び、スイッチング電源部11~14間のスイッチング開始のシーケンスなどを制御する。
【0030】
制御部2は、サーマルシャットダウン機能を備えていてもよい。例えば、温度検知素子(図示せず)によって電源装置1の温度を検知して、検知温度が、電源装置1を構成する半導体装置のジャンクション温度よりも適度に低い所定の温度を超えた場合は、シャットダウン信号をスイッチング電源部11~14に送ってスイッチング電源部11~14によるスイッチングを停止させてもよい。
【0031】
電圧モニタ回路2c及び自己診断回路2dは、協働して電源装置1の故障を検出する。すなわち、この両回路によって、電源装置1から負荷LD1~LD4それぞれに所望の電圧が提供されていないことが検出される。そのため、負荷LD1~LD4と外部回路E1~E4それぞれとの接続ノードが電源装置1の入力端子を介して電圧モニタ回路2cに接続されている。電圧モニタ回路2cは、入力される電圧(各負荷に提供されている電圧)に応じた被検信号を自己診断回路2dに送る。
【0032】
自己診断回路2dでは、被検信号が示す電圧を故障の判定基準と比較し、被検信号が示す電圧が正常と判断できる基準を超えていれば、エラー信号を電源装置1の出力端子を介して外部に出力する。図1の例では、自己診断回路2dは、マイコンである外部機器Mに接続されている。マイコンである外部機器Mでは、エラー信号を受け取ると、電源装置1が用いられている機器やシステムにおいて、動作の停止や所定の安全な状態への移行などのフェールセーフ処理が実行される。
【0033】
入出力回路2bは、電源装置1に通信部3による通信以外の方法で入力される信号又は電圧の印加を受け付ける。入出力回路2bは、入力された信号又は印加された電圧を、そのまま又は必要な処理を加えて、ロジック制御回路2aに出力する。図1の例では、入出力回路2bの一つの入力ポートが入力端子4に接続されている。入出力回路2bは、ロジック制御回路2aから受け取る信号や所定の電圧を外部機器Mなどに出力してもよい。
【0034】
入出力回路2bは、入力された信号や電圧に応じた信号や電圧を自ら生成して外部に(例えば外部機器Mに)出力する機能を有していてもよい。例えば入出力回路2bは、外部機器M(マイコン)が正常に動作していることを監視するウォッチドッグタイマの機能を有していてもよい。その場合、入出力回路2bは、一定間隔で外部機器Mから出力されるパルス信号(クリアパルス)を受け取り、所定の期間以上クリアパルスが入力されない場合、図示されない出力端子から外部機器Mにリセット信号を出力してもよい。
【0035】
入力端子4は、電源装置1の外部から所望の信号や所望の大きさの電圧を印加できるように電源装置1に備えられている外部端子である。入力端子4は、制御部2に指示を与える入力信号を受け付けるように構成されている。従って、入力端子4に入力される信号や電圧によって示される情報が制御部2に伝達されるように電源装置1の内部回路が構成されている。
【0036】
入力端子4には、後述されるように、スイッチング電源部11~14のスイッチングを停止させる信号が入力される。図1の例において、入力端子4は入出力回路2bに接続されている。従って、入出力回路2bが前述したようにウォッチドッグタイマの機能を有する場合、外部機器Mであるマイコンからの前述したクリアパルスが入力端子4に入力されてもよい。すなわち、入力端子4の機能は、制御部2において、スイッチング電源部11~14のスイッチングを停止させる入力信号以外の信号の入力を受け付けるように切り換えられてもよい。さらに、入力端子4の機能は、制御部2において、電源装置1からの信号を出力するように切り換えられてもよい。スイッチング電源部11~14のスイッチングを停止させる入力信号以外に入力端子4に入力される信号としては、スイッチング電源装置の同期信号となる入力信号や内蔵するROMの書き込み入力信号が例示される。また、信号の出力へと機能を切り替えられた入力端子4から出力される信号としては、エラー信号が例示される。入力端子4の機能が切り替えられるように制御部2を構成することにより、電源装置1が図1の例のようにPMICのような半導体集積回路装置に集積される場合に、外部端子の数を削減することができる。
【0037】
<スイッチング電源部の構成>
次に、図1のスイッチング電源部11を例に、電源装置1が備えるスイッチング電源部11~14がさらに説明される。図2には、スイッチング電源部11の内部の構成が、簡略化された制御部2と共に示されている。図2に示されるように、スイッチング電源部11は、出力端子51に接続されている出力回路11aと、スイッチング制御回路11bとを含んでいる。出力回路11aは、図1を参照して説明したプリドライバT1及びプリドライバT2を含み、出力端子51から出力される電流をスイッチングする。スイッチング制御回路11bは、制御部2の制御の下で出力回路11aのスイッチングを制御する。スイッチング制御回路11bは、エラーアンプ111と、発振器112と、PWMコンパレータ113と、ロジック回路114と、レベルシフタ115と、基準電圧源119と、を有している。
【0038】
スイッチング制御回路11bでは、負荷LD1に提供される電圧(スイッチング電源部11によって構成されるスイッチング電源の出力電圧)が抵抗R1と抵抗R2とによって分圧された電圧Veがエラーアンプ111の反転入力端子に入力される。エラーアンプ111の非反転入力端子には、基準電圧源119によって生成された基準電圧VREFが印加され、電圧Veと基準電圧VREFとの差電圧が増幅されてエラーアンプ111から出力される。なお、基準電圧源119には、電源装置1の起動時の突入電流を低減するために、生成する電圧が電源装置1への電源の印加から例えば数ミリ秒程度かけて電圧VREFに達するように、ソフトスタート機能が設けられる。
【0039】
発振器112は、例えば数MHz程度の周波数を有する三角波を出力し、この三角波と、エラーアンプ111の出力とが、PWMコンパレータ113によって比較され、負荷LD1に印加されている電圧と、負荷LD1に印加すべき所望の電圧との差に応じたパルス幅のパルス信号がロジック回路114に入力される。ロジック回路114は、入力されるパルス信号のパルス幅を有するスイッチング信号を、レベルシフタ115に出力すると共にローサイド側のプリドライバT2に出力する。レベルシフタ115は、ロジック回路114から受け取るスイッチング信号のレベルをハイサイド側のプリドライバT1の駆動に適したレベルにシフトしてプリドライバT1に出力する。その結果、プリドライバT1、T2が、負荷LD1に印加される電圧を所望の電圧に近付けるのに適した間隔で、出力端子51を通る出力電流をスイッチングする。
【0040】
図1の例のスイッチング制御回路11bは、さらに過熱保護回路116と、過電圧保護回路117と、過電流保護回路118と、を含んでいる。過熱保護回路116は、スイッチング電源部11の温度が所定の温度を超えていることを検知して検知結果をロジック回路114に出力する。過電圧保護回路117は、負荷LD1に印加される電圧が所定の電圧を超えていることを検知して検知結果をロジック回路114に出力する。過電流保護回路118は、プリドライバT1、T2、及びメインドライバS1、S2に流れる電流が所定の電流を超えていることを検知して検知結果をロジック回路114に出力する。ロジック回路114は、これら各保護回路から、過熱、過電圧、及び/又は過電流が生じているとの検知結果を受け取ると、例えばスイッチング信号の出力を停止する。
【0041】
図1に示される他のスイッチング電源部12~14も、図2のスイッチング電源部11と同様に構成され得る。但し、スイッチング電源部12では、出力回路11aはプリドライバT3、T4及びメインドライバT5、T6(図1参照)を含み、スイッチング電源部13では、出力回路11aはプリドライバT7(図1参照)だけを含み、スイッチング電源部14では、出力回路11aは、スイッチング電源部12同様に、二つのプリドライバ及び二つのメインドライバを含む。
【0042】
すなわち、各スイッチング電源部11~14において出力回路11aは、少なくとも、電源装置1の出力端子に接続されているドライバによって構成される。そして、前述した多段階構造のように、出力端子に接続されているドライバ(後段のドライバ)を駆動する前段のドライバが存在する場合は、出力回路11aは、後段のドライバと全ての前段のドライバとで構成され得る。一方、スイッチング制御回路11bは、スイッチング電源部11~14それぞれにおける出力回路11a以外の回路によって構成される。
【0043】
出力回路11aは、ロジック回路114の内部ノードが取り得るハイレベル及びロウレベル間の振幅を超える振幅で動作する回路素子群で構成される回路ブロックとも定義され得る。すなわち、プリドライバT1、T2などには、ロジック回路114に印加される電源電圧よりも大きい電源電圧が印加されてもよい。その場合、プリドライバT1、T2などは、ロジック回路114が取り得るハイレベルとロウレベル間の振幅を超える振幅で動作し得ることになる。
【0044】
<通信信号におけるノイズ干渉>
図1及び図2に示される電源装置1のようにスイッチング電源を有していて外部機器との間で通信によって信号を送受する電源装置では、前述したようにスイッチング電源のスイッチングによって通信信号が干渉を受け、通信信号にノイズが生じ易い。図3には、一例として、電源装置1のような電源装置のスイッチング電源の出力電圧の波形fvと通信信号(図1の電源装置1におけるデータ入力線SDIで伝送される信号に相当する通信信号)の波形fcとが示されている。なお、図3の波形fcは実際の通信信号のHレベルのタイミングを拡大して表示している。図3の波形fc及び波形fvが観測される電源装置では、1MHzのスイッチング周波数でスイッチング電源が動作している。波形fv及び波形fc共に、スイッチングのタイミングと同期する、1/(2×スイッチング周波数)の周期(500ナノ秒)でスパイクノイズが生じている。
【0045】
このようなノイズが通信信号に重畳していると、例えば外部機器から送られる信号が電源装置で誤って受け取られたり、全く受け取られなかったりして、通信による電源装置の制御が不能になることがある。しかし、電源装置全体の機能を停止させると、通信自体が不能になるし、電源装置のスイッチング周波数を低くしたのでは、電源装置の本来の性能が得られ難くなる。また、図2を参照して説明した発振器112や基準電圧源119のような、スイッチング電源部をスイッチングさせる要素の動作を完全に停止させると、前述したようにソフトスタート機能が設けられている場合に、再度スイッチングを開始させる際に無用な起動時間を要することになる。
【0046】
<スイッチング電源部の出力回路のスイッチング停止>
そこで本実施形態では、このような問題が解決されるように電源装置が構成されている。再度図1及び図2を参照して、本実施形態の電源装置1の構成を説明する。本実施形態の電源装置1では、各スイッチング電源部に含まれるスイッチング制御回路11bを機能させたまま出力回路11aのスイッチングを停止させることが通信によらない方法で可能なように構成されている。すなわち、制御部2が、電源装置1に備えられる入力端子4への入力信号に応じて、スイッチング制御回路11bを機能させたまま出力回路11aのスイッチングを停止させるように構成されている。出力回路11aのスイッチングが停止されると、電源装置1及びその周囲において、高速で比較的大きな電流の通電と遮断が切り換わったり通電方向が反転したりしないので、例えスイッチング制御回路11b内で発振やスイッチングが継続していても、スイッチングによるノイズが通信信号に生じ難い。
【0047】
例えば、図2に示されるように、入力端子4に入力された信号のハイレベル又はロウレベル信号が、図2に破線で示されるように制御部2を介してスイッチング電源部11のロジック回路114に停止信号Spとして入力されてもよい。その際、入力端子4に入力された信号の波形が制御部2においてバッファ2eによって整形されてもよい。或いは、制御部2が、入力端子4にロウレベルの電圧が印加される、又はハイレベルの電圧が印加されるのに応じて、レベルを反転させる停止信号Spを新たに生成して、ロジック回路114に出力してもよい。そしてロジック回路114は、停止信号Spがロウレベルの間、又はハイレベルの間、レベルシフタ115及び出力回路11aへのスイッチング信号の出力を停止してもよい。また、レベルシフタ115が出力ディスイネーブル機能を有するときは、停止信号Spがレベルシフタ115に入力され、レベルシフタ115によって出力回路11aへのスイッチング信号の出力が停止されてもよい。なおレベルシフタ115は、ロジック回路114とプリドライバT2との間にも適宜設けられ得る。
【0048】
また、制御部2は、前述したサーマルシャットダウン機能を用いて、出力回路11aのスイッチングを停止させてもよい。すなわち、制御部2は、入力端子4にハイレベル又はロウレベルの電圧が印加されると、図示されない温度検知素子による検知温度が所定の温度を超えていなくても、シャットダウン信号をロジック回路114に送ってもよい。この際、そのシャットダウン信号が温度上昇によるものではなく入力端子4に入力される電圧レベルによるものであることを示す付帯信号をシャットダウン信号と共に送ってもよい。そしてロジック回路114によって付帯信号が受け取られると、出力回路11aのスイッチングを停止させること以外は、スイッチング電源部11~14において真のサーマルシャットダウンの場合と異なる動作が行われてもよい。
【0049】
なお、本実施形態において「スイッチング制御回路11bを機能させる」は、少なくともエラーアンプ111、基準電圧源119、発振器112、及びPWMコンパレータ113を、出力回路11aのスイッチングを停止させる入力信号が入力端子4に入力されていないときと同様に動作させることを意味している。また「スイッチング制御回路11bを機能させる」は、これら各要素を動作させることに加えて、過熱保護回路116、過電圧保護回路117、及び過電流保護回路118の一部又は全部を、出力回路11aのスイッチングを停止させる入力信号が入力端子4に入力されていないときと同様に動作させることを意味してもよい。
【0050】
また、本実施形態において「入力端子への入力信号に応じて、・・・出力回路のスイッチングを停止させる」は、出力回路11aが前述したように多段階構造のドライバを含むときは、少なくとも、電源装置1の出力端子(出力端子51など)に接続された「後段のドライバ」、すなわち最も負荷(負荷LD1など)側に配置されているドライバのスイッチングを停止させることを意味している。或いは、「入力端子への入力信号に応じて、・・・出力回路のスイッチングを停止させる」は、出力回路11aが多段階構造のドライバを含むときは、後段のドライバに加えて、前述した「前段のドライバ」のうちの、例えば100mA以上、好ましくは50mA以上の電流が流れるドライバのスイッチングを停止させることを意味していてもよい。
【0051】
本実施形態では、このように制御部2が入力端子4への入力信号に応じて出力回路11aのスイッチングを停止させるように構成されている。例えば入力端子4へのハイレベル電圧又はロウレベル電圧のような所定の電圧レベルの信号を入力することによって、出力回路11aのスイッチングが停止される。従って、ノイズの少ない通信信号で適切に電源装置1を制御することができる。また、本実施形態では、スイッチング制御回路11bを機能させたまま出力回路11aのスイッチングが停止されるので、例えば外部機器Mからの制御信号の受信後に、速やかにスイッチング電源部11~14を動作させることができる。従って、本実施形態によれば、スイッチング電源の影響を受けず且つ特性を犠牲にせずに電源装置を通信によって制御することができ、しかも、その通信による制御後に速やかに所望の電圧を出力し得る電源装置を提供することができる。
【0052】
なお、入力端子4へ所定の電圧レベルの信号の印加は、任意の方法で行うことが可能である。例えば、図1に破線で示されるように、入力端子4とマイコンなどの外部機器Mとが接続され、外部機器Mから入力端子4に信号が入力されてもよい。そして、その後に外部機器Mから通信部3に制御信号が送信されてもよい。
【0053】
また、制御部2は、入力端子4への入力信号に応じてスイッチング電源部11~14の出力回路11aのスイッチングを停止させたときは、出力回路11aのスイッチングが停止していることを示す確認信号を通信部3から外部機器Mに送信させてもよい。外部機器Mでは、この確認信号を受信してから、すなわち、ノイズの生じ難い状況であることを確認してから、電源装置1に制御信号を送信してもよい。より確実に、適切な通信が行われると考えられる。
【0054】
図1に示される電源装置1は、複数のスイッチング電源部11~14を含んでいる。スイッチング電源部11~14の全てにおいて、制御部2によって、入力端子4への入力信号に応じて、スイッチング制御回路11bを機能させたまま出力回路11aのスイッチングが停止させるように構成されていてもよいし、その一部のスイッチング電源部だけが、スイッチングを停止するように構成されていてもよい。その場合でも、通信信号に生じるノイズが低減されることがある。
【0055】
また、複数のスイッチング電源部11~14それぞれに対応する入力端子4、すなわち複数の入力端子4が備えられていてもよい。そして個々の入力端子4への入力信号に応じて、複数のスイッチング電源部11~14のうちの対応するスイッチング電源部の出力回路11aのスイッチングだけが停止されてもよい。或いは、制御部2は、唯一備えられた入力端子4への入力信号に応じて、複数のスイッチング電源部11~14それぞれにおいて、スイッチング制御回路11bを機能させたまま一斉に出力回路11aのスイッチングを停止させるように構成されていてもよい。より容易且つ確実に、通信信号に生じるノイズが低減されると考えられる。
【0056】
<スイッチング停止の活用例>
図4を参照して、電源装置1全体の機能又はスイッチング電源部のスイッチング制御回路の機能を止めずに出力回路11aのスイッチングを停止させることの活用例について説明する。先ず、スイッチング電源部の出力回路11aのスイッチングだけを停止することによって、電源装置1を用いる機器やシステムにおいて、電源装置1の故障時に正常にフェールセーフ処理のような故障時処理機能が動作するか否かの試験を行うことができる。すなわち、電源装置1には前述したように電圧モニタ回路2c及び自己診断回路2dが備えられ得る。自己診断回路2dが故障発生と判断した場合に生成するエラー信号は、例えば図4に示されるように、マイコンである外部機器Mに送られる。外部機器Mでは、電源装置1の故障時の処理がプログラムされており、外部機器Mは、故障発生時にはそのプログラムに沿って動作するように構成されている。従って、電源装置1において、意図的にスイッチングを停止させて故障状態を疑似的に発生させ、エラー信号を受信した外部機器M及び外部機器Mに制御される機器やシステムが故障時の動作を適切に行うか否かを試験することができる。電源装置1全体の機能を停止させていない、すなわち電圧モニタ回路2c及び自己診断回路2dが機能しているので、このような故障時の動作の試験をすることができる。
【0057】
また、出力回路11aのうちのローサイド側のスイッチングだけを停止し得るように構成することによって、出力回路11aのローサイド側だけのスイッチングを停止して、ローサイド側のメインドライバS2(及び図示されないプリドライバ)が正常か否かを確認することができる。すなわち、図4に示されるようにメインドライバS2などを構成するFETはボディダイオードを備えているため、ローサイド側が故障していても見かけ上、スイッチング電源は意図通りの電圧を出力することがあり、そのため故障を検知し難い。ローサイド側が故障すると消費電流が増加するが、電源装置1自体の消費電流のばらつきもあるので、単に消費電流を確認するだけではローサイド側の故障は検出し難い。そこで、意図的にローサイド側のドライバのスイッチングだけを停止させ、その前後の消費電流の変化によってローサイド側の故障が検出され得る。すなわち、意図的にスイッチングを停止させる前後で消費電流が一定値以上増加しなければ、ローサイド側のドライバが故障していると判断することができる。
【0058】
さらに、出力回路11aのスイッチングだけを止めることによって、電源装置1が用いられる機器やシステムのEMC(Electromagnetic Compatibility)性能の向上を図ることができる。すなわち、電源装置1において出力回路11aのスイッチングだけを停止してその機器やシステムのEMC試験を行うことによって、EMCノイズの発生源が出力回路11aやその先のメインドライバS1、S2であると特定したり、これらを被疑発生源から除外したりすることができる。従って対策を効率良く見出すことができ、EMC性能を向上させ得ることがある。
【0059】
<電源装置の試験方法>
次に、図1及び図2に示される電源装置1が試験される場合を例に、本発明の一実施形態の電源装置の試験方法を、引き続き図1及び図2を参照しながら説明する。併せて、本発明の一実施形態の電源装置を通信によって制御する方法、及び、一実施形態の電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法について説明する。
【0060】
本実施形態の電源装置の試験方法は、1以上のスイッチング電源部を含んでいて通信によって制御される電源装置の試験方法である。図1の例の電源装置1を例に説明すると、本実施形態の電源装置の試験方法は、スイッチング電源部11~14が含む、電源装置1の出力電流をスイッチングする出力回路11a、及び出力回路11aのスイッチングを制御するスイッチング制御回路11bのうちのスイッチング制御回路11bを機能させたまま、出力回路11aのスイッチングを停止させることを含んでいる。本実施形態の電源装置1の試験方法は、さらに、停止した出力回路11aのスイッチングを再開させて電源装置1の少なくとも一つの特性を測定することを含んでいる。
【0061】
図3を参照して前述したように、電源装置1のスイッチング電源部11~14のようなスイッチング電源を構成するスイッチング回路を含む電源装置では、外部機器との間の通信信号にノイズが生じ易い。そのため、電源装置の複数の特性を、各特性の測定に適した状態(モード)に電源装置のモードを順次切り替えながら測定を行う場合に、通信によって速やかに且つ適切に電源装置のモードを設定又は切り替えられないことがある。その場合、前述したように、試験時間が増大したり、良品が不良判定されて見かけ上の歩留まりが低下したりすることがある。また、試験時のスイッチング周波数を低くしてしまうと、想定される使用条件で求められる特性が得られるか否かの試験になり得ない。
【0062】
そこで、本実施形態の電源装置の試験方法は、図1の電源装置1の場合、スイッチング制御回路11bを機能させたまま出力回路11aのスイッチングを停止させることを含んでいる。そして、停止した出力回路11aのスイッチングを再開させてから、電源装置1の少なくとも一つの特性が測定される。出力回路11aのスイッチングが停止するので、通信信号に生じるノイズを低減することができる。従って、その間に、通信で制御信号を送って電源装置1の試験モードを正しく設定又は変更することができる。そして、その試験モードにおいて測定を行うべく出力回路11aのスイッチングを再開させるときには、スイッチング制御回路11bは出力回路11aの停止中も機能しているので、出力回路11aのスイッチングを速やかに再起動させることができる。
【0063】
このように本実施形態の電源装置の試験方法によれば、容易且つ適切に、しかも短い時間で、電源装置を試験することができる。なお「スイッチング制御回路を機能させる」は、図1の電源装置1では、少なくとも、前述したように図2に示されるエラーアンプ111、基準電圧源119、発振器112、及びPWMコンパレータ113を、出力回路11aのスイッチングを停止させないときと同様に動作させることを意味している。
【0064】
図1及び図2の電源装置1は、スイッチング電源部11~14の出力回路11aのスイッチングを停止させる入力信号を受け付ける入力端子4を備えている。従って、本実施形態の電源装置の試験方法において、出力回路のスイッチングを停止させることは、電源装置1が含む入力端子4のような、一つの入力端子に通信に依らずに所定の信号を印加することを含んでいてもよい。通信に依らずに所定の信号を印加するので、例えば電源装置1において出力回路11aがスイッチングを行っていても、意図通りの信号を入力端子4に入力することができる。入力端子4への、例えばロウレベル電圧又はハイレベル電圧のような所定の信号の入力によって、電源装置1では、スイッチング制御回路11bを機能させたまま、出力回路11aのスイッチングを停止させることができる。
【0065】
本実施形態の電源装置の試験方法によれば、出力回路のスイッチングを停止することによって、電源装置のモードを通信によって適切に設定又は変更することができる。図1及び図2に加えて図5及び図6を参照して、図1及び図2の電源装置1について行う場合を例に、電源装置の試験モードを切り替えながら行う試験方法を説明する。図5には、本実施形態の電源装置の試験方法の一例のフローチャートが示され、図6には、その試験方法におけるタイミングチャートが示されている。図6において、VDDは電源装置1の内部の電源電圧を示している。Sw1~Sw4はスイッチング電源部11~14それぞれの出力回路11aのスイッチング状態を示していて、細かなパルスが示されている区間においてスイッチングが行われている。Siは入力端子4への入力信号を示していて、図6では、ロウレベル電圧の入力によってスイッチング電源部11~14において出力回路11aのスイッチングが停止される。Pcは、通信部3で受信される制御信号において電源装置1にモードの変更を指示する制御パルスである。図6では、制御パルスPcの受信ごとに、電源装置1の試験モードが、試験モードM1、M2、M3、M4、・・・と切り換えられる。
【0066】
電源装置1に電源電圧が印加されると(図5のステップST1)、図6に示されるように、内部の電源電圧VDDが立ち上がる。しかし、制御部2(図1参照)のシーケンス制御により、スイッチング電源部11~14のいずれにおいてもスイッチングは直ちには開始されない。そして図6において時間t1で、制御パルスPcが入力される。時間t1では、スイッチング電源部11~14のいずれにおいてもスイッチングが始まっていないので、制御パルスPcが制御部2に正しく伝わり、電源装置1の状態が第1試験モードM1に設定される(図5のステップST2)。また、スイッチング電源部11~14それぞれにおいてスイッチングが開始される。すなわち、各スイッチング電源部のスイッチング制御回路11b(図2参照)が、基準電圧源119による基準電圧の生成、発振器112の発振、及び、PWMコンパレータ113の比較動作などによって機能し、出力回路11aをスイッチングさせる。また、入力信号Siとしてハイレベル電圧が入力される。そして第1試験モードM1において、電源装置1の第1特性が測定される(図5のステップST3)。
【0067】
第1特性、及び後述される第2~第4特性としては、スイッチング周波数、スイッチングパルスのデューティ比、ドライバを構成するFETのオン抵抗、及び、各スイッチング電源部の出力電圧などが例示されるが、電源装置1の試験において測定される特性は、これらに限定されない。また、第1試験モードM1、及び後述される第2~第4試験モードは、第1~第4の特性の測定に適した状態であって電源装置1が有する任意のモードである。
【0068】
その後、時間t2において、入力信号Siによってロウレベル電圧が入力され、制御部2によって出力回路11aのスイッチングが停止される(図5のステップST4)。図6では、入力端子4への入力信号Siによるロウレベル電圧の入力によって、スイッチング電源部11~14の全てにおいてスイッチングが停止している。入力信号Siの電圧がロウレベルの間、スイッチング電源部11~14の全てにおいてスイッチングが継続的に停止する。なお、出力回路11aのスイッチングは停止しているが、スイッチング制御回路11bは機能したままである。
【0069】
そして、各スイッチング電源部においてスイッチングが停止している間に、時間t3で、通信によって制御パルスPcが送られる。出力回路11aのスイッチングが停止しているので、制御部2まで制御パルスPcが適切に伝えられ、電源装置1の試験モードが次の測定に適した第2試験モードに設定される(図5のステップST5)。また、時間t4において入力信号Siとしてハイレベル電位が入力され、スイッチング電源部11~14の出力回路11aにおいてスイッチングが再開される(図5のステップST6)。そして、第2試験モードで電源装置1の第2特性が試験される(図5のステップST7)。
【0070】
その後、同様に、試験モードが第3試験モードM3、第4試験モードM4、・・・と切り替えられながら、第3特性、第4特性、・・・が順に測定され、所望の全ての特性が測定されれば試験が終了する。なお、図6の例において、第3試験モードM3では、各スイッチング電源部においてスイッチングが停止したままである。これは、第3試験モードM3では、出力回路11aのスイッチングを停止させた状態で測定可能な特性、例えば出力回路11aを構成するFETのオン抵抗や、その他のDC特性などが測定されるからである。このように出力回路11aのスイッチングが停止している試験モードから次の試験モードに切り替える時には、図6の例と異なり、出力回路11aのスイッチングを停止すべく所定の電圧レベルの信号が入力端子4に入力されなくてもよい。
【0071】
図5及び図6に示されるように、本実施形態の電源装置の試験方法は、例えば図1及び図2の電源装置1では、出力回路11aのスイッチングを停止させる前に第1試験モードで電源装置1の第1特性を測定することと、出力回路11aのスイッチングの停止中に、通信によって電源装置1を第1試験モードM1から第2試験モードM2に切り替えることと、停止した出力回路11aのスイッチングを再開させて第2試験モードM2で電源装置1の第2特性を測定することと、をさらに含んでいてもよい。
【0072】
また、図6の例のように複数のスイッチング電源部を含む電源装置の試験では、図1の電源装置1を例にすると、入力端子4のような一つの入力端子に所定の信号を印加することによって、複数のスイッチング電源部11~14それぞれにおいて、スイッチング制御回路11bを機能させたまま出力回路11aのスイッチングを停止させてもよい。なお、試験対象の電源装置が複数のスイッチング電源部を含んでいる場合であっても、そのうちの一つ又は一部のスイッチング電源部のみにおいてスイッチングが停止され、その間に通信によって試験モードを切り替える制御信号が送られてもよい。その場合でも、通信される信号に生じるノイズが低減され得るからである。
【0073】
なお、本実施形態の電源装置の試験方法を用いて、複数の電源装置が試験されてもよい。図7には、同時に試験される複数の電源装置のうちの二つに関して、図6と同様のタイミングチャートが示されている。SwA1~SwA4は、試験される二つの電源装置のうちの一方の四つのスイッチング電源部それぞれにおけるスイッチング状態を示し、SwB1~SwB4は、試験される二つの電源装置のうちの他方の四つのスイッチング電源部それぞれにおけるスイッチング状態を示している。VDD、Si、及びPcは図6と同様に用いられている。
【0074】
図7において、複数の電源装置に一斉に電源電圧VDDが印加されると、各電源装置の各スイッチング電源部においてスイッチングが開始される。そして、時間t2で、入力信号Siによってロウレベル電圧が印加されると、スイッチングの状態を示すSwA1~SwA4及びSwB1~SwB4に示されるように、複数の電源装置それぞれの全てのスイッチング電源部において、スイッチングが停止される。そして、時間t3での制御パルスPcの入力後、時間t4で入力信号Siによってハイレベル電圧が印加されると、複数の電源装置それぞれの全てのスイッチング電源部においてスイッチングが再開される。そして制御パルスPcの入力によって切換えられた試験モードで所望の特性の試験が実施される。
【0075】
このように、本実施形態の電源装置の試験方法を用いて複数の電源装置、例えば図2に例示の電源装置1の複数が試験される場合、複数の電源装置1それぞれのスイッチング制御回路11bを機能させたまま出力回路11aのスイッチングを一斉に停止させてもよい。多くの電源装置を効率よく試験することができる。
【0076】
<電源装置を通信によって制御する方法>
本発明の一実施形態の電源装置を通信によって制御する方法(以下「本制御方法」とも称される)は、例えば図1の例の電源装置1のような、1以上のスイッチング電源部11~14、及び、外部機器から制御信号を受信する通信部3を含んでいる電源装置を通信によって制御する方法である。本制御方法は、先に説明された一実施形態の電源装置の試験方法における、電源装置の通信による制御方法と同様である。従って、図1及び図2に示される電源装置1を例に説明すると、本制御方法は、スイッチング電源部11~14が含む、出力電流をスイッチングする出力回路11a、及び出力回路11aのスイッチングを制御するスイッチング制御回路11bのうちのスイッチング制御回路11bを機能させたまま出力回路11aのスイッチングを停止させることを含んでいる。そして、本制御方法は、さらに、出力回路11aのスイッチングが停止している間に、制御信号を通信部3に送ることによって電源装置1を制御することを含んでいる。そのため、本制御方法によれば、スイッチング電源の影響を受けずに電源装置を通信によって制御することができ、しかも、その制御後に速やかに電源装置に所望の電圧を出力させることができる。
【0077】
なお、出力回路11aのスイッチングの停止中に通信によって電源装置1が制御される事項は、前述した試験モードの設定又は切り換え、出力電圧の変更、スイッチング周波数の変更、並びに、過熱判定、過電流判定、及び/又は過電圧判定の閾値、などが例示されるが、スイッチングの停止中に制御される事項はこれらに限定されない。
【0078】
また、一実施形態の電源装置の試験方法の説明で述べたように、電源装置が複数のスイッチング電源部を含む場合、本制御方法では、図1及び図2に示される電源装置1を例に説明すると、電源装置1の入力端子4のような一つの入力端子に所定の信号を印加することによって、複数のスイッチング電源部11~14それぞれにおいて、スイッチング制御回路11bを機能させたまま出力回路11aのスイッチングを一斉に停止させてもよい。電源装置をより確実に、また効率良く制御できると考えられる。
【0079】
<電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法>
本発明の一実施形態の、電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法(以下「本ノイズ低減方法」とも称される)は、例えば図1の例の電源装置1のような、1以上のスイッチング電源部11~14を含んでいて通信によって制御される電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法である。本ノイズ低減方法は、先に説明された一実施形態の電源装置の試験方法におけるノイズの低減方法と同様である。従って、図1及び図2に示される電源装置1を例に説明すると、本ノイズ低減方法は、電源装置1に電源電圧を印加することによって、スイッチング電源部11~14が含む、出力回路11aを制御するスイッチング制御回路11bを機能させることと、スイッチング制御回路11bを機能させたまま出力回路11aのスイッチングを停止させることと、を含んでいる。そのため、本ノイズ低減方法によれば、スイッチング電源の影響を受けずに電源装置を通信によって制御することができ、しかも、その制御後に速やかに電源装置に所望の電圧を出力させることができる。
【0080】
なお、本ノイズ低減方法における出力回路のスイッチングの停止は、図1の例の電源装置1が有する入力端子4のような入力端子への所定の信号の入力によって行われてもよく、スイッチング制御回路を機能させたまま出力回路のスイッチングを停止させ得る他の任意の手段を用いて行われてもよい。
【0081】
電源装置において通信信号に重畳するノイズを低減する方法、電源装置を通信によって制御する方法、及び電源装置の試験方法の実施形態が、図1及び図2の電源装置1を例に説明されたが、これら各方法は、スイッチング電源部を含んでいて通信によって制御される任意の電源装置に適用され得る。
【符号の説明】
【0082】
1 電源装置
11~14 スイッチング電源部
11a 出力回路
11b スイッチング制御回路
111 エラーアンプ
112 発振器
113 PWMコンパレータ
119 基準電圧源
2 制御部
3 通信部
4 入力端子
E1~E4 外部回路
LD1~LD4 負荷
M 外部機器
M1~M4 試験モード
Si 入力信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7