(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009685
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】基板処理方法及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
G01L 27/02 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
G01L27/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113149
(22)【出願日】2021-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】松田 梨沙子
(72)【発明者】
【氏名】庄司 慶太
【テーマコード(参考)】
2F055
【Fターム(参考)】
2F055AA39
2F055BB20
2F055CC60
2F055DD20
2F055EE40
2F055FF13
2F055FF18
2F055GG49
2F055HH01
(57)【要約】
【課題】基板処理システムにおけるガス流量の測定装置の妥当性を適切に診断すると共に、当該診断に係る時間を適切に短縮する。
【解決手段】基板処理方法であって、流量測定部の内部圧力が安定した状態で、複数の圧力センサにより第1の内部圧力を測定する工程と、複数の圧力センサの各々で測定された第1の内部圧力を相互に比較して第1の比較結果を取得する工程と、流量測定部の内部圧力が安定した状態で、複数の圧力センサにより第1の内部圧力とは異なる第2の内部圧力を測定する工程と、複数の圧力センサの各々で測定された第2の内部圧力を相互に比較して第2の比較結果を取得する工程と、第1の比較結果及び第2の比較結果に基づいて、複数の圧力センサの各々に較正が必要であるか否かを診断する工程と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理システムを用いて行われる基板の処理方法であって、
前記基板処理システムは、
前記基板を収容して所望のガス処理を施すチャンバと、
少なくとも前記チャンバの内部にガスを供給するガス供給部と、
前記ガス供給部からチャンバに供給されるガスの流量を調整する流量制御部と、
前記流量制御部の二次側に接続され、前記流量制御部から出力されるガスの流量を測定する流量測定部と、
前記流量測定部の内部圧力を測定する複数の圧力センサと、を備え、
前記基板の処理方法は、
前記流量測定部の内部圧力が安定した状態で、複数の前記圧力センサにより第1の内部圧力を測定する工程と、
複数の前記圧力センサの各々で測定された前記第1の内部圧力を相互に比較して第1の比較結果を取得する工程と、
前記流量測定部の内部圧力が安定した状態で、複数の前記圧力センサにより前記第1の内部圧力とは異なる第2の内部圧力を測定する工程と、
複数の前記圧力センサの各々で測定された前記第2の内部圧力を相互に比較して第2の比較結果を取得する工程と、
前記第1の比較結果及び前記第2の比較結果に基づいて、複数の前記圧力センサの各々に較正が必要であるか否かを診断する工程と、を含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記圧力センサの診断を行う工程においては、前記圧力センサの各々に生じた0点ずれ及びスパンズレの検知を行う、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記流量制御部の二次側に配置された流量制御部二次バルブと、
前記流量測定部の二次側に配置された流量制御器二次バルブと、を更に備え、
前記第1の内部圧力を測定する工程、及び、前記第2の内部圧力を測定する工程は、前記流量制御部二次バルブ及び前記流量制御器二次バルブが少なくとも閉止された状態で行われ、
前記基板処理方法は、
前記第1の内部圧力、又は、前記第2の内部圧力の少なくともいずれかを測定する工程において、前記流量測定部の内部圧力の安定性を確認する工程と、
当該内部圧力の安定性の確認結果に基づいて、前記流量制御部二次バルブ、及び前記流量制御器二次バルブのリークチェックを行う工程と、を更に含む、請求項1又は2に記載の基板処理方法。
【請求項4】
一連の前記工程のそれぞれが、前記基板処理システムの立ち上げ時において行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
一連の前記工程のそれぞれが、前記チャンバの内部で行われるガス処理の合間において行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項6】
基板を処理する基板処理システムであって、
前記基板を収容して所望のガス処理を施すチャンバと、
少なくとも前記チャンバの内部にガスを供給するガス供給部と、
前記ガス供給部からチャンバに供給されるガスの流量を調整する流量制御部と、
前記流量制御部の二次側に接続され、前記流量制御部から出力されるガスの流量を測定する流量測定部と、
前記流量測定部の内部圧力を測定する複数の圧力センサと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記流量測定部の内部圧力が安定した状態で、複数の前記圧力センサにより第1の内部圧力を測定する制御を行うことと、
複数の前記圧力センサの各々で測定された前記第1の内部圧力を相互に比較して第1の比較結果を取得する制御をおこなうことと、
前記流量測定部の内部圧力が安定した状態で、複数の前記圧力センサにより前記第1の内部圧力とは異なる第2の内部圧力を測定する制御をおこなうことと、
複数の前記圧力センサの各々で測定された前記第2の内部圧力を相互に比較して第2の比較結果を取得する制御をおこなうことと、
前記第1の比較結果及び前記第2の比較結果に基づいて、複数の前記圧力センサの各々に較正が必要であるか否かを診断する制御をおこなうことと、を実行する、基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流量制御器からガス流路に出力されたガスの流量を、ガス供給に伴うガス流路内の圧力の上昇速度と、ガス流路内の温度と、既知のガス流路容積と、に基づいてビルドアップ(Build Up)手法を用いて算出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、基板処理システムにおけるガス流量の測定装置の妥当性を適切に診断すると共に、当該診断に係る時間を適切に短縮する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板処理システムを用いて行われる基板処理方法であって、前記基板処理システムは、前記基板を収容して所望のガス処理を施すチャンバと、少なくとも前記チャンバの内部にガスを供給するガス供給部と、前記ガス供給部からチャンバに供給されるガスの流量を調整する流量制御部と、前記流量制御部の二次側に接続され、前記流量制御部から出力されるガスの流量を測定する流量測定部と、前記流量測定部の内部圧力を測定する複数の圧力センサと、を備え、前記基板処理方法は、前記流量測定部の内部圧力が安定した状態で、複数の前記圧力センサにより第1の内部圧力を測定する工程と、複数の前記圧力センサの各々で測定された前記第1の内部圧力を相互に比較して第1の比較結果を取得する工程と、前記流量測定部の内部圧力が安定した状態で、複数の前記圧力センサにより前記第1の内部圧力とは異なる第2の内部圧力を測定する工程と、複数の前記圧力センサの各々で測定された前記第2の内部圧力を相互に比較して第2の比較結果を取得する工程と、前記第1の比較結果及び前記第2の比較結果に基づいて、複数の前記圧力センサの各々に較正が必要であるか否かを診断する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板処理システムにおけるガス流量の測定装置の妥当性を適切に診断すると共に、当該診断に係る時間を適切に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態にかかるウェハ処理システムの構成例を示す平面図である。
【
図2】実施の形態にかかるガス供給機構の構成例を示す系統図である。
【
図3】実施の形態にかかるガス流量の測定方法を示すフロー図である。
【
図4】
図3に示すガス流量の測定方法におけるバルブの開閉タイミングを示す説明図である。
【
図5】自己診断の実施タイミングについての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、チャンバの内部空間に配置された半導体基板(以下、「ウェハ」という。)に対して、所望のガス雰囲気下でエッチング処理、成膜処理、クリーニング処理等の各種ガス処理が行われる。これらガス処理においては、処理対象のウェハに対して所望のガス処理結果を得るため、チャンバの内部空間に供給されるガスの流量を精密に測定することが重要になる。
【0009】
特許文献1には、チャンバ本体の内部空間に供給されるガスの流量を測定する流量測定システムを備えた基板処理システムが開示されている。特許文献1に記載の流量測定方法によれば、ガス流量の測定手法の一つとしてビルドアップ手法が用いられ、容積が既知のガス流路に対してガスを供給することで、当該ガス供給に伴うガス流路内の圧力上昇速度、ガス流路内の温度、及び当該ガス流路の容積に基づいてガス流量を測定する。
【0010】
ところで、特許文献1にも記載される当該流量測定システムでは、上述のようなガス流量の測定に加え、チャンバの内部空間にガスを出力する流量制御機器(例えばマスフローコントローラ等)の校正、すなわち0点調整やスパン(測定範囲)調整を行う場合がある。かかる場合、流量測定システムは流量制御機器から出力されるガス流量の基準として機能する。
【0011】
しかしながら、このように流量測定システムを用いて流量制御機器の校正が行われる場合、例えば基準となる当該流量測定システムが備える圧力センサにずれ、すなわち0点ずれやスパンずれが生じていると、流量制御機器から出力されるガス流量が所望のガス流量からずれた状態で校正され、この結果、処理対象のウェハに対して所望のガス処理結果が得られなくなるおそれがある。そこで、かかる流量測定システム(圧力センサ)のずれに起因する流量制御機器の校正の不具合を抑制するため、かかる圧力センサによる測定値に妥当性があるかを診断することが必要になる。
【0012】
圧力センサの測定値の診断は、従来、例えば当該圧力センサに診断用の外部機器を接続することにより行われる。しかしながら、このように外部機器を用いて診断を行う場合、かかる外部機器自身に妥当性があるかを更に確認する必要があることに加え、当該外部機器の着脱が必要になることから診断に長時間を要し、例えばシステムの定期メンテナンス等の時間を利用する必要があった。すなわち、このように従来の流量測定システムにおいては、圧力センサの測定値の妥当性の診断を行うという観点において改善の余地があった。
【0013】
本開示にかかる技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基板処理システムにおけるガス流量の測定装置の妥当性を適切に診断すると共に、当該診断に係る時間を適切に短縮する。以下、一実施形態にかかる基板処理システムとしてのウェハ処理システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0014】
<ウェハ処理システムの構成>
図1は、本実施形態にかかるウェハ処理システム1の構成の概略を示す平面図である。ウェハ処理システム1では、基板としてのウェハWに対して、例えばエッチング処理、成膜処理、クリーニング処理等の所望のガス処理を行う。
【0015】
図1に示すようにウェハ処理システム1は、大気部10と減圧部11がロードロックモジュール20、21を介して一体に接続された構成を有している。大気部10は、大気圧雰囲気下においてウェハWに所望の処理を行う大気モジュールを備える。減圧部11は、減圧雰囲気下においてウェハWに所望の処理を行う減圧モジュールを備える。
【0016】
ロードロックモジュール20、21は、それぞれゲートバルブ20a、21aを介して、大気部10の後述するローダモジュール30と接続されている。またロードロックモジュール20、21は、それぞれゲートバルブ20b、21bを介して、減圧部11の後述するトランスファモジュール50と接続されている。ロードロックモジュール20、21は、ウェハWを一時的に保持するように構成されている。また、ロードロックモジュール20、21は、内部を大気圧雰囲気と減圧雰囲気(真空状態)とに切り替えられるように構成されている。
【0017】
大気部10は、大気圧雰囲気下でウェハWを搬送するローダモジュール30を有している。ローダモジュール30には、複数のウェハWを保管可能なフープ31を載置する複数、例えば5つのロードポート32と、前述のロードロックモジュール20、21が設けられている。なお、ローダモジュール30には、ウェハWの水平方向の向きを調節するオリエンタモジュール(図示せず)や複数のウェハWを格納する格納モジュール(図示せず)などが設けられていてもよい。
【0018】
ローダモジュール30の内部には、当該ローダモジュール30の内部に延伸するガイドレール41上を移動自在に構成されたウェハ搬送機構40が設けられている。ウェハ搬送機構40は、ウェハWを保持して移動する搬送アーム42を有している。搬送アーム42は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸回りに移動自在に構成されている。そしてウェハ搬送機構40は、ロードポート32のフープ31、及びロードロックモジュール20、21に対してウェハWを搬送可能に構成されている。
【0019】
減圧部11は、減圧雰囲気下でウェハWを搬送するトランスファモジュール50を有している。トランスファモジュール50には、目的に応じてウェハWにエッチング処理、成膜処理、クリーニング処理等の所望のガス処理を行う複数、例えば6つのチャンバ60と、前述のロードロックモジュール20、21が設けられている。チャンバ60は、ゲートバルブ61を介してトランスファモジュール50に接続されている。なお、トランスファモジュール50に接続されるチャンバ60の数は図示の例に限定されるものではなく、任意に決定できる。
【0020】
トランスファモジュール50の内部には、当該トランスファモジュール50の内部に延伸するガイドレール71上を移動自在に構成されたウェハ搬送機構70が設けられている。ウェハ搬送機構70は、ウェハWを保持して移動する搬送アーム72を有している。搬送アーム72は、水平方向、鉛直方向、水平軸回り及び鉛直軸回りに移動自在に構成されている。そしてウェハ搬送機構70は、任意のチャンバ60、及びロードロックモジュール20、21に対してウェハWを搬送可能に構成されている。
【0021】
そしてトランスファモジュール50では、ロードロックモジュール20に保持されたウェハWを搬送アーム72で受け取り、任意のチャンバ60に搬送する。また、チャンバ60で所望の処理が施されたウェハWを搬送アーム72が保持し、ロードロックモジュール21に搬出する。
【0022】
また減圧部11には、チャンバ60のそれぞれに対してガスを供給するためのガス供給機構100が設けられている。ガス供給機構100は、チャンバ60に対するガスの供給を制御するガス制御ユニットを収容した、複数、例えば各チャンバ60に対応した6つのガスボックス110と、ガスボックス110(チャンバ60)の一次側(上流側)に設けられた少なくとも1つのガスソースを備えるガス供給部としてのメインガスユニット120と、チャンバ60に供給されるガスの流量を測定する流量測定ユニット130と、を備えている。なお、ガス供給機構100の詳細な構成は後述する。
【0023】
以上のウェハ処理システム1には制御装置としての制御部200が設けられている。制御部200は、例えばCPUやメモリ等を備えたコンピュータであり、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、ウェハ処理システム1におけるウェハWのガス処理を制御するプログラムが格納されている。またプログラム格納部には、後述の処理ガスの供給動作や後述の流量測定ユニット130の自己診断動作を制御するプログラムが更に格納されている。なお、上記プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記憶媒体Hに記録されていたものであって、当該記憶媒体Hから制御部200にインストールされたものであってもよい。また、当該記憶媒体Hは一時的なものであってもよいし、非一時的なものであってもよい。
【0024】
次に、上述したガス供給機構100の詳細な構成の一例について説明する。
図2はガス供給機構100のガス流路を構成する配管系を示す模式図である。なお、以下の説明においては、上述したようにガスの通流方向におけるメインガスユニット120側を一次側(上流側)、通流方向における後述の排気ユニット150側を二次側(下流側)、とそれぞれ言う場合がある。また
図2においては、図示が煩雑になることを抑制するため、ウェハ処理システム1に配置された6つのチャンバ60、及びガスボックス110のうち、一部の図示を省略する。
【0025】
メインガスユニット120には、1又はそれ以上のガスをそれぞれのガスボックス110に供給するためのガスソース121及び流量制御器122が設けられている。一実施形態において、メインガスユニット120は、1又はそれ以上のガスを、それぞれに対応のガスソース121からそれぞれに対応の流量制御器122を介してガスボックス110に供給するように構成される。各流量制御器122は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。
【0026】
メインガスユニット120の下流側には、接続配管123を介して複数、本実施形態においては上述したように各チャンバ60に対応して6つのガスボックス110が接続されている。また、接続配管123にはそれぞれのガスボックス110に対応してバルブ123aが配置され、かかるバルブ123aの開閉により、メインガスユニット120からそれぞれのガスボックス110へのガス供給を任意に切り替え可能に構成されている。
【0027】
ガスボックス110には、対応するそれぞれのチャンバ60に対する処理ガスの流量を制御するための流量制御器111が設けられている。流量制御器111は、例えばメインガスユニット120から供給されるガスの種類に応じて複数設けられていてもよい。また流量制御器111の一次側には流量制御器一次バルブ111aが配置され、かかる流量制御器一次バルブ111aの開閉によりメインガスユニット120からそれぞれの流量制御器111へのガス供給を任意に切り替え可能に構成されている。また、流量制御器111の二次側には流量制御器二次バルブ111bが配置され、流量制御器111から二次側へのガスの供給を任意に切り替え可能に構成されている。
【0028】
ガスボックス110の下流側には、接続配管112を介して対応するチャンバ60が接続されている。接続配管112には第1出力バルブ112aが配置され、かかる第1出力バルブ112aの開閉により、ガスボックス110からチャンバ60へのガス供給を任意に切り替え可能に構成されている。
【0029】
また、ガスボックス110の下流側には、接続配管112とは分岐して、測定配管131を介して流量測定ユニット130が接続されている。測定配管131には第2出力バルブ131aが配置され、かかる第2出力バルブ131aの開閉により、ガスボックス110から流量測定ユニット130へのガス供給を任意に切り替え可能に構成されている。
【0030】
本実施形態にかかるガスボックス110においては、一つの流量制御器111からガスを供給する場合に、例えばウェハ処理を目的としてチャンバ60に処理ガスを供給する場合は、第1出力バルブ112aを開放するとともに第2出力バルブ131aを閉止することで、処理ガスが接続配管112を通ってチャンバ60に供給される。一方、例えばガス流量の測定を目的として流量測定ユニット130にガスを供給する場合は、第2出力バルブ131aを開放するとともに第1出力バルブ112aを閉止することで、ガスが測定配管131を通って流量測定ユニット130に供給される。
【0031】
チャンバ60の内部には、上述したように接続配管112を介してウェハ処理の目的に応じた所望の処理ガスが供給される。そしてチャンバ60においては、供給された処理ガスを用いて、ウェハWに対してエッチング処理、成膜処理、クリーニング処理等の所望のガス処理が行われる。チャンバ60の内部に供給された処理ガスは、排気配管62を介して、後述の排気ユニット150に排出される。また、排気配管62には排気バルブ62aが配置され、かかる排気バルブ62aの開閉により、チャンバ60からの処理ガスの排気動作を制御可能に構成されている。
【0032】
流量測定ユニット130は、当該流量測定ユニット130の内部圧力を測定する複数、例えば本実施形態においては2つの圧力センサ132、133と、当該流量測定ユニット130の内部温度を測定する温度センサ134と、を含む。圧力センサ132、133による圧力測定レンジは任意に決定できるが、例えば流量測定ユニット130における圧力測定レンジを広くとるため、一方を高圧レンジ、他方を低圧レンジで測定可能なセンサとすることが好ましい。
【0033】
流量測定ユニット130の一次側は測定器一次バルブ130aを介して測定配管131に接続され、かかる測定器一次バルブ130aを開放することにより、ガスボックス110からのガスを流量測定ユニット130に導入可能に構成されている。また、流量測定ユニット130の二次側は測定器二次バルブ130bを介して後述の較正システム140に接続されている。
【0034】
本実施形態において流量測定ユニット130は、内部に流路を形成しガスボックス110からのガスを通流しうるように構成されている。したがって、上記圧力センサ132、133および温度センサ134が設けられる流量測定ユニット130の内部とは、測定器一次バルブ130aと測定器二次バルブ130bとの間の領域であって、ガス流路を形成する流量測定ユニット130自身の内部空間を指す。
【0035】
また、本実施形態において測定配管131は、内部に流路を形成しガスボックス110からのガスを通流しうるように構成されている。そして、本実施形態にかかる後述のガス流量の測定方法においては、ガスボックス110からのガスを、測定配管131を介して流量測定ユニット130に封入することで、当該測定配管131及び流量測定ユニット130の内部圧力の上昇速度を計測し、かかる上昇速度を用いてガス流量を測定する。
【0036】
較正システム140は、流量測定ユニット130によるガス流量の測定結果に基づいて、当該流量測定ユニット130の較正を行う。較正システム140は、基準器配管141及び基準器142を含む。また基準器配管141には基準器バルブ141aが配置され、当該基準器バルブ141aの開閉により、基準器142に対するガスの供給を任意に制御可能に構成されている。
【0037】
基準器配管141の上流側は、上述したように測定器二次バルブ130bを介して流量測定ユニット130に接続されている。また、基準器配管141の下流側は、較正バルブ140a及び排気配管143を介して、前述の排気配管62、すなわち後述の排気ユニット150に接続されている。また、排気配管143には排気バルブ143aが配置され、かかる排気バルブ143aの開閉により、排気配管143と排気配管62の連通を任意に切り替え可能に構成されている。
【0038】
排気ユニット150は、排気配管62の下流においてガスを排気するよう構成されている。排気ユニット150は、ウェハ処理システム1に配置された複数のチャンバ60のそれぞれに対応して設けられる複数の排気機構151と、排気機構151の下流側において、排気ガスの除害処理を行うための少なくとも1つの除害装置152と、を含む。排気機構151としては、例えばターボ分子ポンプやドライポンプ等の真空ポンプ、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0039】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な追加、省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0040】
ここで、本実施形態にかかるウェハ処理システム1においては、流量測定ユニット130を用いて流量制御器111から出力されるガス流量の測定が行われ、かかる測定結果に基づいて流量制御器111の較正、すなわち出力されるガス流量の調整が行われる場合がある。しかしながら、この時、流量測定ユニット130の圧力センサにずれ(例えば0点ずれやスパンずれ)が生じていると、流量制御器111の較正が適切に行われず、この結果、チャンバ60におけるウェハWに対するガス処理が適切に実行できなくなるおそれがある。
このため、流量測定ユニット130においては圧力センサによる測定結果に妥当性があるか否かを診断することが必要になるが、従来、かかる診断においては流量測定ユニット130に診断用の外部機器を接続する必要があり、当該診断に時間と手間を要した。
【0041】
そこで本実施形態にかかるウェハ処理システム1では、かかる流量測定ユニット130における圧力センサ132、133の診断を、診断用の外部機器を接続することなく、当該流量測定ユニット130による自己診断により行うことで、当該診断に要する時間と手間を省略する。
また更に、当該診断を、流量測定ユニット130を用いて行われる流量制御器111から出力されるガス流量の測定動作と同時に行うことにより、当該診断に要する時間を更に適切に短縮する。
【0042】
<ウェハ処理方法>
以下、上述のように構成された流量測定ユニット130を用いて行われる、ウェハ処理方法としての、流量測定ユニット130の自己診断を含むガス流量の測定方法について、図面を参照しながら説明する。
【0043】
なお、以下の説明においてはウェハ処理システム1のスタートアップ時(立ち上げ時)において、ガス流量の測定を行う場合を例に説明を行うが、ガス流量の測定を実行するタイミングはこれに限定されるものではない。具体的には、例えばチャンバ60の内部空間で行われるウェハWに対するガス処理の合間(ウェハ処理システム1のアイドル時)や、ウェハ処理システム1のメンテナンス時、等の任意のタイミングでガス流量の測定を実行できる。
【0044】
図3は、一実施形態に係るガス流量の測定方法の一連の流れを示すフロー図である。また
図4は、
図3に示したガス流量の測定方法における各種バルブの開閉タイミングを示している。
図4において、横軸は時間、縦軸は流量測定ユニット130の圧力センサによる圧力の測定値と、流量制御器二次バルブ111b、測定器一次バルブ130a、測定器二次バルブ130b及び較正バルブ140aの開閉状態をそれぞれ示している。なお、以下の説明においては、
図4のタイミング図での図示を省略したその他のバルブ(例えば出力バルブや排気バルブ等)については、特に言及にない場合には閉止されているものとする。
【0045】
また、以下の説明においては、上記ウェハ処理システム1の6つのガスボックス110のうち一のガスボックス110に配置された一の流量制御器111から出力されるガスの流量を測定する場合を例に説明を行うが、ウェハ処理システム1に配置された他のガスボックス110からガスが供給される場合であっても、同様の方法によりガス流量の測定を行うことができる。
【0046】
ガスボックス110からのガス流量の測定にあたっては、先ず、ガスボックス110、測定配管131及び流量測定ユニット130の内部が真空引きされる(
図3及び
図4の工程ST1)。なお、工程ST1では較正システム140の内部も真空引きされる。より具体的には、工程ST1では、測定対象の流量制御器111の流量制御器二次バルブ111b、第2出力バルブ131a、測定器一次バルブ130a、測定器二次バルブ130b及び較正バルブ140aが開放された状態で、排気バルブ143aが更に開放されることで、排気ユニット150によりガスボックス110、測定配管131及び流量測定ユニット130の内部が真空引きされる。
【0047】
続けて、測定対象の流量制御器111の流量制御器一次バルブ111aが開放され、測定配管131に対する流量制御器111からのガスの供給が開始される(
図3及び
図4の工程ST2)。次に、測定対象の流量制御器111の流量制御器二次バルブ111b及び測定器二次バルブ130bが閉止される(
図3及び
図4の工程ST3)。すなわち工程ST3においては、ガスボックス110の流量制御器111から出力されたガスが、流量制御器二次バルブ111bと測定器二次バルブ130bとの間で、すなわちガスボックス110の内部における流量制御器二次バルブ111bの下流側、測定配管131及び流量測定ユニット130の中で封入された第1の状態が形成される。
【0048】
また、かかる第1の状態においては、流量測定ユニット130の内部圧力P1が取得される(
図3の工程ST4)。内部圧力P1は流量測定ユニット130の二つの圧力センサ132、133により測定され、かかる2つの圧力センサ132、133による測定値PA、PBの平均値を内部圧力P1として取得してもよい。なお、工程ST3では、圧力センサ132、133による測定値PA、PBが安定しているときに内部圧力P1が取得されることが望ましい。測定値PA、PBは、例えばその変動量が所望の閾値以下である場合に安定しているものと判断され得る。
【0049】
また本実施形態にかかるガス流量の測定に際しては、かかる第1の状態において、流量測定ユニット130の第1の自己診断を実施する(
図3の工程ST5)。具体的には、工程ST4において内部圧力P1の取得のために測定された2つの圧力センサ132、133による測定値PA、PBを相互に比較することで、これら測定値PAと測定値PBとの間にズレがないことを確認する。測定値PA、PBは、例えばこれら測定値PA、PBの差分値が圧力センサ132、133の測定精度の許容差内に収まっている場合にズレがないものと判断され得る。
【0050】
換言すれば、本実施形態においては、流量測定ユニット130に配置された2つの圧力センサ132、133のうちのいずれか一方を標準器とみなして診断を行い、測定値PA、PBの差分が許容差内に収まっている場合にはこれら測定値に妥当性があると判断してガス流量の測定を継続する。そして、一方で測定値PA、PBの差分が許容差内に収まっていない場合には妥当性がないと判断し、これら圧力センサ132、133に較正が必要であることを通知する。
【0051】
また更に、本実施形態にかかるガス流量の測定に際しては、かかる第1の状態において、流量測定ユニット130の内部空間を構成する測定器一次バルブ130aと測定器二次バルブ130bのリークチェックを行う(
図3の工程ST6)。
【0052】
工程ST3で流量測定ユニット130の内部に形成される第1の状態では、上述したように流量制御器二次バルブ111bと測定器二次バルブ130bが閉止されている。換言すれば、第1の状態においては、流量制御器111からのガスの出力、及び排気ユニット150によるガスの排出が停止され、
図4に示したように内部圧力P1が安定する。
【0053】
この時、例えば流量制御器二次バルブ111bにリークがある場合には流量制御器111からのガスの出力が完全には停止されず、流量測定ユニット130の内部圧力P1が上昇する。一方、例えば測定器二次バルブ130bにリークがある場合には排気ユニット150によるガスの排出が完全には停止されず、流量測定ユニット130の内部圧力P1が減少する。このように、工程ST6においては内部圧力P1が安定する第1の状態において、当該内部圧力P1の上昇、又は減少を検知することで、流量制御器二次バルブ111bと測定器二次バルブ130bのリークチェックを実施することができる。
【0054】
図3及び
図4の説明に戻る。
流量測定ユニット130の内部圧力P1が取得され、流量測定ユニット130の第1の自己診断が行われると、次に、工程ST3において閉止された流量制御器二次バルブ111b及び測定器二次バルブ130bが開放される(
図3及び
図4の工程ST7)。次に、測定器二次バルブ130bが閉止され、かかる状態で流量制御器111からのガスの供給が継続されることで、測定配管131及び流量測定ユニット130の内部圧力が増加する第2の状態が形成される(
図3及び
図4の工程ST8)。
【0055】
測定配管131及び流量測定ユニット130の内部圧力が所望の値まで増加されると、次に、流量制御器二次バルブ111bが閉止される(
図3及び
図4の工程ST9)。すなわち工程ST9においては、ガスボックス110の流量制御器111から出力されたガスが、流量制御器二次バルブ111bと測定器二次バルブ130bとの間で、すなわちガスボックス110の内部における流量制御器二次バルブ111bの下流側、測定配管131及び流量測定ユニット130の中で封入された第3の状態が形成される。
【0056】
また、かかる第3の状態においては、流量測定ユニット130の内部圧力P2、及び内部温度T2が取得される(
図3の工程ST10)。内部圧力P2は流量測定ユニット130の二つの圧力センサ132、133により測定され、かかる2つの圧力センサ132、133による測定値PA、PBの平均値を内部圧力P2として取得してもよい。なお、工程ST10では、測定配管131及び流量測定ユニット130の内部圧力P2及び内部温度T2が安定しているときに圧力センサ132、133及び温度センサ134によって測定値が取得されることが望ましい。内部圧力P2及び内部温度T2は、例えばその変動量が所望の閾値以下である場合に安定しているものと判断され得る。
【0057】
流量測定ユニット130の内部圧力P2及び内部温度T2が取得されると、次に、測定器二次バルブ130bを開放するとともに、較正バルブ140aを閉止する(
図3及び
図4の工程ST11)。すなわち工程ST11においては、工程ST9において測定配管131及び流量測定ユニット130の中で封入されたガスが、測定器二次バルブ130bと較正バルブ140aとの間で封入された第4の状態が形成され、すなわち、工程ST9において測定配管131及び流量測定ユニット130の中で封入されたガスの少なくとも一部が、較正システム140へと排出される。
【0058】
次に、測定器二次バルブ130bが閉止されることにより、流量測定ユニット130と較正システム140との間が遮断された第5の状態が形成される(
図3及び
図4の工程ST12)。本実施形態においては、第3の状態(工程ST9)で流量測定ユニット130の内部に封入されていたガスが部分的に排出されることで、換言すれば封入されていたガスが完全に排出されることなく、第5の状態が形成される。従って、第3の状態(工程ST9)から第5の状態(工程ST12)を形成するのに要する時間が短縮される。
【0059】
なお、図示は省略するが、かかる工程ST12の後に較正バルブ140aを開放する工程を追加し、工程ST11から、かかる較正バルブ140aの開放まで繰り返すことにより、流量測定ユニット130の内部圧力を低下させてもよい。
【0060】
また、かかる第5の状態においては、流量測定ユニット130の内部圧力P3が取得される(
図3の工程ST13)。内部圧力P3は流量測定ユニット130の二つの圧力センサ132、133により測定され、かかる2つの圧力センサ132、133による測定値PA、PBの平均値を内部圧力P3として取得してもよい。なお、工程ST13では、測定配管131及び流量測定ユニット130の内部圧力P2が安定しているときに圧力センサ132、133によって測定値が取得されることが望ましい。内部圧力P3は、例えばその変動量が所望の閾値以下である場合に安定しているものと判断され得る。
【0061】
また本実施形態にかかるガス流量の測定に際しては、かかる第5の状態において、流量測定ユニット130の第2の自己診断を実施する(
図3の工程ST14)。かかる第2の自己診断は、例えば工程ST5における第1の自己診断と同様の方法により行われ得る。すなわち、工程ST13において内部圧力P3の取得のために測定された2つの圧力センサ132、133による測定値PA、PBを相互に比較することで、これら測定値PAと測定値PBとの間にズレがないことを確認する。
【0062】
本実施形態によれば、このように、上述の工程ST5における第1の自己診断に加え、工程ST14における第2の自己診断を実施する。これにより、本実施形態においては低圧雰囲気(内部圧力P1)と高圧雰囲気(内部圧力P3)の両方で流量測定ユニット130の自己診断を実施され、圧力センサ132、133に生じた不具合が0点ずれであるか、スパンずれであるか、を適切に診断することができる。
【0063】
なお、かかる第5の状態においては、上述の工程ST6と同様の方法により、流量測定ユニット130の内部空間を構成する測定器一次バルブ130aと測定器二次バルブ130bのリークチェックがさらに行われてもよい(
図3の工程ST15)。
【0064】
測定器一次バルブ130aと測定器二次バルブ130bにリークが発生しているか否かは、上述の工程ST6を実施することのみによってもでも判断できる。しかしながら、本実施形態においては、このように高圧雰囲気(内部圧力P3)において更にリークチェックを行うことで、測定器一次バルブ130aと測定器二次バルブ130bにリークが発生しているか否かを更に適切に診断することができる。
【0065】
図3及び
図4の説明に戻る。
流量測定ユニット130の内部圧力P3が取得され取得され、流量測定ユニット130の第2の自己診断が行われると、次に、測定器一次バルブ130aが開放されることで、工程ST9において測定配管131に封入されていたガスの少なくとも一部が流入して流量測定ユニット130の内部圧力が増加する第6の状態が形成される(
図3及び
図4の工程ST16)。
【0066】
その後、時間の経過により、測定配管131から流量測定ユニット130へのガスの流入、すなわち流量測定ユニット130の内部圧力が安定する第7の状態が形成される。内部圧力は、例えばその変動量が所望の閾値以下である場合に安定しているものと判断され得る。また、かかる第7の状態においては、流量測定ユニット130の内部圧力P4が取得される(
図3の工程ST17)。内部圧力P4は流量測定ユニット130の二つの圧力センサ132、133により測定され、かかる2つの圧力センサ132、133による測定値PA、PBの平均値を内部圧力P4として取得してもよい。
【0067】
流量測定ユニット130の内部圧力P4が取得されると、次に、流量制御器111から出力されたガス流量Qが、一例として下記式(1)により算出される(
図3の工程ST18)。
Q=(P2-P1)/Δt×(1/R)×[(Vst/Tst)+(V/T2)×
(P2-P3)/(P2-P4)] ・・・(1)
ここで、P1~P4はそれぞれ圧力センサ132、133による測定値、T2は温度センサ134による測定値、Vは測定配管131及び流量測定ユニット130の内部容積、Vstはガスボックス110における流量制御器111の下流側の配管の容積、Tstはガスボックス110における流量制御器111の下流側の配管の容温度、Δtは第2の状態(工程ST8)における内部圧力の上昇に要した時間、Rは気体定数、をそれぞれ表している。なお、(Vst/Tst)は適宜省略され得る。
【0068】
なお、ガス流量Qを算出するための上記式(1)は一例であり、適宜、他の算出式を用いてガス流量Qの算出を行ってもよい。
【0069】
その後、流量制御器111から出力されたガス流量Qが算出されると、較正バルブ140a及び流量制御器二次バルブ111bが順次開放され、流量測定ユニット130を用いて行われる一連のガス流量測定が完了する。なお、一連のガス流量測定の完了後、排気バルブ143aを開放することにより測定配管131より下流側流路の排気が更に行われてもよい。
【0070】
本実施形態にかかるウェハ処理、すなわち流量測定ユニット130の自己診断を含むガス流量の測定は以上のようにして行われる。
【0071】
以上の本実施形態によれば、上述したように、流量測定ユニット130が備える圧力センサ132、133の診断、すなわち例えば0点ずれやスパンずれにより較正が必要か否かの診断を、診断用の外部機器を接続することなく、当該流量測定ユニット130自身で簡易的に行うことができる。このため、かかる外部機器の着脱に要する時間が不要になり、当該流量測定ユニット130の診断にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0072】
また本実施形態によれば、このように外部機器の着脱を必要とせず、流量測定ユニット130にガスを通流することのみによって自己診断を行うことができるため、上述した一連の流れのように、流量制御器111の流量測定と同時にかかる診断を実行できる。換言すれば、
図5に示すように、ウェハ処理システム1の定期メンテナンスやトラブル時のメンテナンス等の長時間の空き時間を利用することなく、例えばチャンバ60におけるウェハ処理の合間である短時間のアイドル時を利用して診断を実行できる。このため、ウェハ処理システム1の定期メンテナンスやトラブル時のメンテナンスにおいてはかかる流量測定ユニット130の診断を省略できるため、ウェハ処理システム1のメンテナンスに係る時間を短縮できる。更に、本実施形態にかかるウェハ処理システム1によれば、上述の自己診断において不具合を発見した場合のみに流量測定ユニット130の較正を実行すればよいため、ウェハ処理システム1のメンテナンスに係る時間を更に省略できる。
【0073】
ただし、本実施形態にかかる流量測定ユニット130の自己診断のタイミングは、上述のようなウェハ処理システム1のスタートアップ時や、
図5に示したアイドル時に限定されるものではなく、適宜、ウェハ処理システム1のメンテナンスに際しても行われてよい。
【0074】
なお、以上の実施形態においては、流量測定ユニット130が2つの圧力センサ132、133を備え、かかる2つの圧力センサ132、133による測定結果を比較することで自己診断を行ったが、流量測定ユニット130に配置される圧力センサの数はこれに限定されず、少なくとも2つ以上の圧力センサを備えていれば、本開示に係る技術を適用できる。
【0075】
具体的には、例えば流量測定ユニット130が3つ以上の圧力センサ(図示せず)を備えている場合であっても、これら複数の圧力センサによる測定値を相互に比較することによって、少なくともいずれかの圧力センサに較正が必要か否かを診断できる。なお、かかる場合、特にそれぞれの圧力センサが異なる圧力測定レンジを有している場合においては、流量測定シーケンス中において自己診断を実施する回数を増やすこと好ましい。具体的には、例えば流量測定ユニット130が3つの圧力センサを備える場合においては、上記実施形態の第1の自己診断及び第2の自己診断に加え、更に、内部圧力P1又はP3とは異なる内部圧力で安定している際に、第3の自己診断が実施されることが望ましい。
【0076】
なお、以上の実施形態においては、流量測定ユニット130が備える2つの圧力センサ132、133の自己診断を行う場合を例に説明を行ったが、自己診断を行うセンサの種類は圧力センサに限定されるものでなく、例えば流量測定ユニット130が備える温度センサの自己診断が行われてもよい。具体的には、流量測定ユニット130に複数の温度センサ(図示せず)を設け、かかる温度センサの各々による複数の測定値を相互に比較することで、上記と同様の方法により自己診断を実施することができる。すなわち、例えば流量測定ユニット130が2つの温度センサを備える場合においては、これら温度センサによる測定値TA、TBを相互に比較し、これら測定値TA、測定値TBとの間にズレがないことを確認することで、これら温度センサに較正が必要か否かを、外部機器を接続することなく簡易的に診断することができる。
【0077】
なお、以上の実施形態においてはウェハ処理システム1が備える流量測定ユニット130において、圧力センサ132、133の自己診断を行う場合を例に説明を行ったが、本開示の技術に係る自己診断が行われる部材は、流量測定ユニット130には限定されない。すなわち、例えばチャンバ60に、当該チャンバ60の内部圧力を測定するための圧力センサが複数設けられている場合においては、これら測定センサによる各々の測定値を相互に比較することで、これら圧力センサに較正が必要か否かを、外部機器を接続することなく適切に診断できる。
【0078】
特に、このようにチャンバ60に複数の圧力センサを設けられている場合においては、当該チャンバ60において実施されるウェハWのガス処理時における圧力センサの測定値を利用して診断を実施できるため、これら圧力センサの診断に係る時間、及びチャンバ60のメンテナンスに係る時間を適切に短縮できる。
【0079】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 ウェハ処理システム
60 チャンバ
111 流量制御器
120 メインガスユニット
130 流量測定ユニット
132 圧力センサ
133 圧力センサ
W ウェハ