(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096890
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】触媒の製造方法及びプロピレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 37/08 20060101AFI20230630BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20230630BHJP
B01J 23/02 20060101ALI20230630BHJP
C07C 1/20 20060101ALI20230630BHJP
C07C 11/06 20060101ALI20230630BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
B01J37/08
B01J37/02 101Z
B01J23/02 M
C07C1/20
C07C11/06
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021212927
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 翔太
(72)【発明者】
【氏名】小池 充
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA21C
4G169BB04A
4G169BB06B
4G169BB12C
4G169BC01A
4G169BC08A
4G169BC09A
4G169BC09B
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC41A
4G169BE06C
4G169BE08C
4G169CB25
4G169CB63
4G169CC21
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EB18Y
4G169EC02Y
4G169EC03Y
4G169FA02
4G169FB14
4G169FB30
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC21
4H006BA06
4H006BA10
4H006BC10
4H006BC18
4H039CA20
4H039CF30
(57)【要約】
【課題】本開示の一態様によれば、エタノールから高収率でプロピレンを製造することができ、副生成物の生成も抑制することができるプロピレン製造用の触媒の製造方法、及びプロピレンの製造方法を提供することができる。
【解決手段】第1族元素の金属、第2族元素の金属、及び希土類元素の金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの金属Mの化合物を、酸化ジルコニウムに担持させて担持混合物を得る担持工程、及び前記担持混合物を650℃以上で焼成して触媒を得る焼成工程を有する、触媒の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1族元素の金属、第2族元素の金属、及び希土類元素の金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの金属Mの化合物を、酸化ジルコニウムに担持させて担持混合物を得る担持工程、及び前記担持混合物を650℃以上で焼成して触媒を得る焼成工程を有する、触媒の製造方法。
【請求項2】
前記金属Mが、カルシウム、イットリウム及びランタノイドからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の触媒の製造方法。
【請求項3】
触媒中の金属Mとジルコニウムのモル比(M/Zr)が、0.001/1~0.5/1である、請求項1又は2に記載の触媒の製造方法。
【請求項4】
前記金属Mの化合物が、金属Mの硝酸塩、金属Mの酢酸塩及び金属Mのアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1~3のいずれか1つに記載の触媒の製造方法。
【請求項5】
前記焼成工程が、前記担持混合物を1000℃以下で焼成して触媒を得る焼成工程である、請求項1~4のいずれか1つに記載の触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つに記載の製造方法で得られた触媒が、エタノールからプロピレンを製造するために用いられるプロピレン製造用触媒である、請求項1~5のいずれか1つに記載の触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つに記載の製造方法で得られた触媒と、エタノールとを反応器中で接触させて、プロピレンを得る、プロピレンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の製造方法及びプロピレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動や化石資源の枯渇・価格高騰の懸念から、持続性のある原材料から基礎化学品を製造する技術が求められている。プロピレンは代表的な基礎化学品の一つであり、アクリル酸やアクロレイン等の化学品の原料やポリプロピレンなどの樹脂の原料として大量に使用されている。また、エタノールはバイオマスから製造でき、持続性のある原材料の一つである。そのため、持続性のある原材料からの基礎化学品の製造法の一つとして、エタノールからプロピレンを製造する方法が研究されている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、アルコール化合物からプロピレン等のオレフィン化合物を高い効率で製造するための触媒として、酸化ジルコニウムである成分とリチウム等の金属元素とを含む触媒が開示されている。
非特許文献1には、エタノールからプロピレンを高い選択性で得られる触媒として、共沈法によって得られたイットリウム修飾ジルコニア触媒が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】W.Xia et al.,”Highly selective catalytic conversion of ethanol to propylene over yttrium-modified zirconia catalyst”,Catalysis Communications,Vol.90,pp 10-13(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エタノールを原料としてプロピレンを製造する際に、従来から用いられている多孔質の酸化物系触媒を用いた場合、炭素数の多いオレフィンやアルカンなどの副生成物が多く生成しやすいという問題があった。
更に酸化ジルコニウム等の固体酸化物触媒を用いた場合、炭素数の多いオレフィンやアルカンの副生は抑制されるものの、アセトン等が副生し、プロピレンの収率は十分ではなかった。
そのため、前記のような副生成物の生成を抑え、プロピレンの収率を向上することができる触媒、また製造方法が求められていた。
そこで、本開示は、エタノールから高収率でプロピレンを製造することができ、副生成物の生成も抑制することができるプロピレン製造用の触媒の製造方法、及びプロピレンの製造方法に関する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の金属を酸化ジルコニウムに担持させ、特定条件で焼成して触媒を得、更にその触媒をプロピレンの製造に用いることで、前記課題を解決できることを見出し、発明を完成した。
【0008】
すなわち、本開示の一態様によれば、第1族元素の金属、第2族元素の金属、及び希土類元素の金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの金属Mの化合物を、酸化ジルコニウムに担持させて担持混合物を得る担持工程、及び前記担持混合物を650℃以上で焼成して触媒を得る焼成工程を有する、触媒の製造方法に関する技術を提供できる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、エタノールから高収率でプロピレンを製造することができ、副生成物の生成も抑制することができるプロピレン製造用の触媒の製造方法、及びプロピレンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、第1族元素の金属、第2族元素の金属、及び希土類元素の金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの金属Mの化合物を、酸化ジルコニウムに担持させて担持混合物を得る担持工程、及び前記担持混合物を650℃以上で焼成して触媒を得る焼成工程を有する、触媒の製造方法に関する技術である。
以下に、本開示について詳細に説明する。
【0011】
[触媒の製造方法]
本開示の触媒の製造方法は、第1族元素の金属、第2族元素の金属、及び希土類元素の金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの金属Mの化合物を、酸化ジルコニウムに担持させて担持混合物を得る担持工程、及び前記担持混合物を650℃以上で焼成して触媒を得る焼成工程を有する。
【0012】
<担持工程>
本開示の触媒の製造方法における担持工程は、第1族元素の金属、第2族元素の金属、及び希土類元素の金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの金属Mの化合物を、酸化ジルコニウムに担持させて担持混合物を得る工程である。
前記金属Mを酸化ジルコニウムに担持させることにより、触媒として作用する酸化ジルコニウムの表面近傍を効率的に修飾して活性を高めることができる。
【0013】
(第1族元素の金属、第2族元素の金属、及び希土類元素の金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの金属Mの化合物)
本工程に用いられる金属Mの化合物の金属である金属Mは、第1族元素の金属、第2族元素の金属、及び希土類元素の金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの金属である。
第1族元素の金属は、アルカリ金属であり、具体的にはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム及びフランシウムが挙げられる。
第2族元素の金属は、アルカリ土類金属であり、具体的にはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム及びラジウムが挙げられ、これらのなかでもカルシウムが好ましい。
希土類元素の金属は、具体的にはスカンジウム、イットリウム、及びランタノイドが挙げられ、これらのなかでもイットリウム及びランタノイドからなる群より選ばれる少なくとも1つが好ましく、イットリウムがより好ましい。
ここで、ランタノイドとは、15の金属元素の総称である。具体的には、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、及びルテチウムである。
以上のように、金属Mは、好ましくはカルシウム、イットリウム及びランタノイドからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、より好ましくはカルシウム及びイットリウムからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、更に好ましくはカルシウムである。
【0014】
金属Mの化合物は、金属Mの塩、金属Mの水酸化物、金属Mのアルコキシド、金属Mの酸化物等が挙げられ、好ましくは金属Mの塩及び金属Mのアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも1つである。
塩としては、無機塩及び有機塩が挙げられ、無機塩が好ましい。
無機塩としては、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、塩酸塩等が挙げられ、好ましくは硝酸塩である。
有機塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、有機リン酸塩等が挙げられ、好ましくはカルボン酸塩であり、より好ましくは酢酸塩である。
以上のように、金属Mの化合物は、好ましくは金属Mの硝酸塩、金属Mの酢酸塩及び金属Mのアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、より好ましくは金属Mの硝酸塩である。
【0015】
(酸化ジルコニウム)
本工程に用いられる酸化ジルコニウムは、粒子形状を有しており、前記金属Mを担持し、前記の効果を有するプロピレン製造用触媒となる。
本開示の触媒の製造方法における効果に影響のない範囲で、少量のハフニウムや少量のシリカ等が含まれていてもよい。
【0016】
(担持方法)
本工程における担持方法には、特に制限はないが、好ましくは含浸法及び吸着法からなる群より選ばれる少なくとも1つであり、より好ましくは含浸法である。
【0017】
含浸法は、金属Mの化合物を溶媒に溶解させて金属Mの化合物の溶液とし、該溶液と酸化ジルコニウムを混合して、溶媒を除去することで、金属Mの化合物を、酸化ジルコニウムに担持させて担持混合物を得る方法である。
【0018】
なお、金属Mの化合物に加え、本開示の製造方法の効果を損なわない範囲で、金属M以外の金属の化合物を用いてもよい。金属M以外の金属の化合物としてはジルコニウムの化合物が好ましい。
すなわち、前記金属Mの化合物の溶液は、好ましくはジルコニウムの化合物を含有する。つまり、本工程における好ましい担持方法は、金属Mの化合物とジルコニウムの化合物とを溶媒に溶解させて金属Mの化合物とジルコニウムの化合物の溶液とし、該溶液と酸化ジルコニウムを混合して、溶媒を除去することで、金属Mの化合物とジルコニウムの化合物を、酸化ジルコニウムに担持させて担持混合物を得る方法である。
【0019】
前記ジルコニウムの化合物は、硝酸ジルコニル、ジルコニウムの塩、ジルコニウムの水酸化物、ジルコニウムのアルコキシド、ジルコニウムの酸化物等が挙げられ、好ましくは硝酸ジルコニル、ジルコニウムの塩及びジルコニウムのアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも1つである。
塩としては、無機塩及び有機塩が挙げられ、無機塩が好ましい。
無機塩としては、硫酸塩、リン酸塩、塩酸塩等が挙げられる。
有機塩としては、カルボン酸塩、スルホン酸塩、有機リン酸塩等が挙げられ、好ましくはカルボン酸塩であり、より好ましくは酢酸塩である。
以上のように、ジルコニウムの化合物は、好ましくは硝酸ジルコニル、ジルコニウムの酢酸塩及びジルコニウムのアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、より好ましくは硝酸ジルコニルである。
【0020】
前記溶液における金属Mの化合物とジルコニウムの化合物のモル比(M/Zr)は、好ましくは100/1~2/1であり、より好ましくは30/1~3/1であり、更に好ましくは20/1~5/1である。
なお、前記モル比は、金属換算である。つまり、前記モル比はそれぞれの化合物に含まれる金属M(元素)のモル数とジルコニウム(元素)のモル数の比である。
金属Mの化合物に加え、ジルコニウムの化合物を酸化ジルコニウムに担持させることにより、副生成物の生成をより抑制することができ、オレフィンの収率も向上させることができる。この理由は不明であるが、酸化ジルコニウムの結晶構造が単斜晶から正方晶に変わり、重要な活性サイトと思われる表面酸素空孔が増加するためと考えられる。
【0021】
更に、金属Mの化合物とジルコニウムの化合物に加え、本開示の製造方法の効果を損なわない範囲で、その他の金属の化合物を用いてもよい。たとえば、その他の金属の化合物を前記の金属Mの化合物の溶液又は前記の金属Mの化合物とジルコニウムの化合物を含む溶液に含有させ、酸化ジルコニウムに担持させてもよい。
【0022】
前記溶液における溶媒は、金属Mの化合物が、溶解もしくは良好に分散すればよいが、好ましくは親水性溶媒であり、より好ましくは水である。つまり、前記溶液は好ましくは水溶液である。
前記溶液の金属Mの化合物の濃度は、酸化ジルコニウムに対して均一に担持できる濃度であれば、特に制限はないが、好ましくは0.005~5mol%であり、より好ましくは0.01~1mol%である。
【0023】
前記溶液の酸化ジルコニウムに対する量は、酸化ジルコニウムに対して均一に担持できる量であれば、特に制限はないが、酸化ジルコニウムに対して、好ましくは0.25~15質量倍であり、より好ましくは0.25~10質量倍であり、更に好ましくは0.25~5質量倍である。
また、金属Mの化合物と酸化ジルコニウムのモル比(M/Zr)は、好ましくは0.001/1~0.5/1であり、より好ましくは0.005/1~0.15/1である。
なお、前記モル比は、金属換算である。つまり、前記モル比は金属Mの化合物に含まれる金属M(元素)のモル数と、酸化ジルコニウムに含まれるジルコニウム(元素)のモル数の比である。
【0024】
溶媒を除去する方法には、制限はなく、加熱して溶媒を除去してもよく、減圧して溶媒を除去してもよく、これらを組み合わせてもよい。
溶媒として水を用いる場合、水を除去する温度は、好ましくは20~150℃であり、減圧下では、好ましくは20~100℃であり、より好ましくは20~80℃である。常圧(大気圧)下では、好ましくは105~150℃である。より好ましい方法として、減圧下、20~80℃で溶媒量が担持混合物全体の10質量%以下になるまで溶媒を除去し、次に、常圧(大気圧)下、105~150℃で溶媒量担持混合物全体の5質量%以下になるまで溶媒を除去する方法が挙げられる。
【0025】
<焼成工程>
本開示の触媒の製造方法における焼成工程は、前工程で得られた担持混合物を650℃以上で焼成して触媒を得る工程である。
本開示の触媒の製造方法において、担持混合物を650℃以上という高温で焼成することで、高収率でプロピレンを製造することができ、副生成物の生成も抑制することができるプロピレン製造用の触媒を得ることができる。
本開示の触媒の製造方法によって、このような効果を有する触媒が得られる理由は定かではないが、触媒表面で金属Mとジルコニウムが固溶し、活性点の大幅な増加や電荷密度に変化が生じるためであると考えられる。
【0026】
本工程における焼成温度は、650℃以上であり、好ましくは700℃以上である。また、好ましくは1000℃以下であり、より好ましくは900℃以下である。つまり、本工程は、好ましくは担持混合物を700℃以上で焼成して触媒を得る焼成工程であり、また、好ましくは担持混合物を1000℃以下で焼成して触媒を得る焼成工程であり、より好ましくは担持混合物を900℃以下で焼成して触媒を得る焼成工程である。
650℃以上で焼成することにより、前記のように触媒活性が向上し、1000℃以下で焼成すれば、比表面積の低下を抑制することができる。
【0027】
本工程における焼成は、好ましくは酸素存在下で行うが、全工程を酸素存在下で行ってもよく、焼成初期に酸素存在下で焼成して金属Mを酸化物とし、その後不活性ガス雰囲気下で650℃以上としてもよい。本工程における焼成は、純酸素雰囲気下で行ってもよく、酸素と不活性ガスの混合ガス雰囲気下で行ってもよい。なかでも、純酸素雰囲気下、又は空気雰囲気下で行うことが好ましく、空気雰囲気下で行うことがより好ましい。空気雰囲気下で行うことで、酸化ジルコニウムに担持した金属Mの化合物とジルコニウムの化合物を、効率的にかつ簡便に酸化物に変換することができる。
【0028】
本工程における焼成時間は、前記焼成温度や金属Mの種類によって、適宜調整すればよいが、好ましくは0.1~100時間であり、より好ましくは0.5~50時間であり、更に好ましくは1~20時間である。
【0029】
焼成工程で得られた触媒は、そのままプロピレンの製造に用いてもよいが、粉砕、造粒、成形等を行い、プロピレンの製造装置に適した形状に調整することが好ましい。
【0030】
本製造方法で得られた触媒の触媒中の金属Mとジルコニウムのモル比(M/Zr)は、好ましくは0.001/1~0.5/1であり、より好ましくは0.005/1~0.15/1である。このモル比は、金属換算である。つまり、前記モル比は触媒に含まれる金属M(元素)のモル数と、触媒に含まれるジルコニウム(元素)のモル数の比である。また、前記担持工程において、金属Mの化合物、溶液に任意に含まれるジルコニウムの化合物、及び酸化ジルコニウムの使用比率を調整して目的のモル比にすることができる。
また、触媒の触媒中の金属Mとジルコニウムのモル比(M/Zr)は、ICP発光分光分析によって求めることができる。具体的には実施例の方法によって求めることができる。
【0031】
本製造方法で得られた触媒のBET比表面積は、好ましくは10~150m2/gであり、より好ましくは15~100m2/gであり、更に好ましくは25~80m2/gである。
また、本開示の製造方法で得られた触媒は、好ましくは、エタノールからプロピレンを製造するために用いられるプロピレン製造用触媒である。
【0032】
<触媒>
本製造方法で得られた触媒は、好ましくは以下に示す触媒である。
第1族元素の金属、第2族元素の金属、及び希土類元素の金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの金属Mの酸化物と酸化ジルコニウムからなる触媒である。具体的には、第1族元素の金属、第2族元素の金属、及び希土類元素の金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの金属Mの酸化物が酸化ジルコニウムに担持されている触媒である。好ましくは第1族元素の金属、第2族元素の金属、及び希土類元素の金属からなる群より選ばれる少なくとも1つの金属Mの酸化物が酸化ジルコニウムの表面に担持されている触媒である。
【0033】
金属Mの好適な範囲は前記のとおりである。
前記触媒の触媒中の金属Mとジルコニウムのモル比(M/Zr)は、好ましくは0.001/1~0.5/1であり、より好ましくは0.005/1~0.15/1である。このモル比は、金属換算である。つまり、前記モル比は触媒に含まれる金属M(元素)のモル数と、触媒に含まれるジルコニウム(元素)のモル数の比である。また、前記製造方法の担持工程において、金属Mの化合物、溶液に任意に含まれるジルコニウムの化合物、及び酸化ジルコニウムの使用比率を調整して目的のモル比にすることができる。
触媒の触媒中の金属Mとジルコニウムのモル比(M/Zr)は、ICP発光分光分析によって求めることができる。具体的には実施例の方法によって求めることができる。
【0034】
前記触媒のBET比表面積は、好ましくは10~150m2/gであり、より好ましくは15~100m2/gであり、更に好ましくは25~80m2/gである。
また、前記触媒は、好ましくは、エタノールからプロピレンを製造するために用いられるプロピレン製造用触媒である。
【0035】
[プロピレンの製造方法]
本開示のプロピレンの製造方法は、前記製造方法で得られた触媒と、エタノールとを反応器中で接触させて、プロピレンを得る方法である。具体的には、本開示のプロピレンの製造方法は、第1族元素の金属、第2族元素の金属、及び希土類金属から選ばれる少なくとも1種の金属Mの化合物を、酸化ジルコニウムに担持させて担持混合物を得る担持工程、及び前記担持混合物を650℃以上で焼成して触媒を得る焼成工程を有する製造方法で得られた触媒と、エタノールとを反応器中で接触させて、プロピレンを得る方法である。
【0036】
本開示のプロピレンの製造方法に用いられるエタノールは、特に制限はないが、好ましくは、生物資源由来(バイオマス)のエタノール(バイオエタノール)を用いる。バイオエタノールを本開示の触媒と接触させることにより、化石燃料から得られたエタノールとは異なり、環境中の二酸化炭素濃度を増加させることなくプロピレンを製造することができる。
本開示のプロピレンの製造方法によれば、プロピレンを高収率で得ることができるが、生成物にはエチレンを含んでいてもよく、プロピレンとエチレンの混合物であってもよい。プロピレンは、前述のように、ポリプロピレンなどの樹脂原料だけでなく、アクリル酸やアクロレイン等の化学品の原料としても有用である。
【0037】
本開示のプロピレンの製造方法において、エタノールと触媒との接触方法は、特に限定されないが、触媒を充填した反応器内に、単にエタノールを導入するだけでもよい。反応器としては、固定床反応器、流動床反応器、回分式反応器、半回分式反応器等を例示することができるが、プロピレンの生産性の観点からは、固定床反応器又は流動床反応器が好ましく、固定床反応器がさらに好ましい。
【0038】
原料となるエタノールの状態は特に限定されないが、プロピレンの生成効率を高め、かつ反応が容易である観点から、反応時は気体であることが好ましい。また、反応器内で気体状のエタノールを触媒と接触させるとき、エタノールを他の成分と組み合わせて反応器内に供給してもよい。他の成分としては、例えば、窒素、水蒸気、水素、一酸化炭素、二酸化炭素、反応器出口から回収した生成物の全部又は一部、原料となるアルコール及び生成するプロピレンとの反応性が実質的に無い窒素などの不活性キャリアガス等を例示することができる。
【0039】
本開示のプロピレンの製造方法における反応温度は、特に限定されないが、好ましくは300~700℃であり、より好ましくは350~600℃である。この温度範囲で反応させることにより、プロピレンの収率を向上させることができる。
【実施例0040】
次に、本開示を実施例により、さらに詳細に説明するが、本開示の技術は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0041】
実施例及び比較例に示した触媒の製造で得られた触媒の分析方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)触媒中の金属Mとジルコニウムのモル比(M/Zr)
実施例及び比較例の触媒の触媒中の金属Mとジルコニウムのモル比(M/Zr)は、以下のように測定した。
実施例及び比較例で得られた触媒をアルカリ融解法によって溶液化した後、ICP発光分光分析装置Agilent 5100(アジレント・テクノロジー社製)を使用して、カルシウムとジルコニウムの量を定量し、モル比を算出した。なお、ICP発光分光分析における測定波長はCaが396.847nm、Zrが343.823nmとした。
【0042】
(2)触媒のBET比表面積
実施例及び比較例の触媒の比表面積は、触媒分析装置Belcat A(マイクロトラック・ベル社製)を用いて、BET1点法で測定した。前処理として、粉末に粉砕した前記触媒0.5gを、Heを流量30mL/分で流通しながら、400℃で30分間熱処理した後に、測定を行った。
【0043】
(3)プロピレンの収率及び反応の転化率
実施例及び比較例に示したプロピレンの製造において、反応管出口から排出されたガスをガスクロマトグラフィーで分析して、下記式によって、プロピレンの収率および反応の転化率を求めた。
(プロピレンの収率(mol%-C))=(生成物中の炭素モル数)/(反応に供した原料化合物中の炭素モル数)×100
(転化率(mol%-C))=[1-(反応後に残存した原料化合物中の炭素モル数)/(反応に供した原料化合物中の炭素モル数)]×100
【0044】
[触媒の製造]
実施例1~2及び比較例1
触媒は含浸法によって調製した。
硝酸カルシウム四水和物8.6gを30gの蒸留水に溶解させ、溶液を得た(溶液A)。
次に、ガラス製ナスフラスコに、円柱型単斜晶酸化ジルコニウム(第一稀元素化学工業株式会社製 RSC-HP)45gおよび溶液Aを入れた。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下60℃で4時間乾燥させた後、大気中110℃で12時間乾燥を継続し、次いで表1に示した温度(600~900℃)で3時間焼成して触媒であるCaO-ZrO2を得た。触媒であるCaO-ZrO2をメノウ乳鉢で粉砕し、0.25~0.5mmに整粒してプロピレンの製造に用いた。
【0045】
実施例3
硝酸カルシウム四水和物14.7gおよび硝酸ジルコニル二水和物2.2gを30gの蒸留水に溶解させ、溶液を得た(溶液B)。
次に、ガラス製ナスフラスコに、円柱型単斜晶酸化ジルコニウム(第一稀元素化学工業株式会社製 RSC-HP)45.5gおよび溶液Bを入れた。ロータリーエバポレーターを用いて減圧下60℃で4時間乾燥させた後、大気中110℃で12時間乾燥を継続し、800℃で3時間焼成して触媒であるCaO-ZrO2を得た。触媒であるCaO-ZrO2をメノウ乳鉢で粉砕し、0.25~0.5mmに整粒してプロピレンの製造に用いた。
【0046】
[プロピレンの製造]
実施例4~6及び比較例2
固定床流通式反応装置を使用した。前記実施例1~3及び比較例1で得られた整粒後の触媒1.0gをガラスライニングステンレス製反応管に充填し、0.5MPaGで窒素を12mL/分の流量で流通しながら、50mol%エタノール水溶液を0.02mL/分(液体)の速度で反応管に供給し、450℃で反応を行った。
反応管出口から排出されたガスをガスクロマトグラフィーで分析して、収率および転化率を求めた。
【0047】
【0048】
表1に示すとおり、実施例の触媒を用いることで、エタノールから高収率でプロピレンを製造することができ、副生成物の生成も抑制することができる。また、原料のエタノールからの転化率にも優れることがわかる。このように実施例の製造方法で得られた触媒は、エタノールから高収率でプロピレンを製造することができ、副生成物の生成も抑制できることがわかる。