(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023096935
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】極端紫外光生成装置及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20230630BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20230630BHJP
G03F 1/84 20120101ALI20230630BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
G03F7/20 521
G03F1/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213007
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】本田 能之
【テーマコード(参考)】
2H195
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H195BA02
2H195BA10
2H195BD14
2H197AA10
2H197BA03
2H197BA11
2H197CA10
2H197CB16
2H197CC16
2H197CD12
2H197CD13
2H197GA01
2H197GA04
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA17
2H197GA18
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AA15
4C092AC09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】効率良くEUV光を生成し得るEUV光生成装置を提供する。
【解決手段】極端紫外光生成装置は、チャンバ装置中にドロップレットターゲットを吐出するターゲット供給部と、直線偏光を有するプリパルスレーザ光をドロップレットターゲットに照射して拡散ターゲットを生成するプリパルスレーザ光照射システムと、メインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射して極端紫外光を生成するメインパルスレーザ光照射システムと、を備え、拡散ターゲットに照射される際のメインパルスレーザ光の光軸に垂直な断面は、ドロップレットターゲットに照射される際のプリパルスレーザ光の偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ装置中にドロップレットターゲットを吐出するターゲット供給部と、
直線偏光を有するプリパルスレーザ光を前記ドロップレットターゲットに照射して拡散ターゲットを生成するプリパルスレーザ光照射システムと、
メインパルスレーザ光を前記拡散ターゲットに照射して極端紫外光を生成するメインパルスレーザ光照射システムと、
を備え、
前記拡散ターゲットに照射される際の前記メインパルスレーザ光の光軸に垂直な断面は、前記ドロップレットターゲットに照射される際の前記プリパルスレーザ光の偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状である
極端紫外光生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記拡散ターゲットに照射される際の前記メインパルスレーザ光の前記断面は、楕円形状である。
【請求項3】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記メインパルスレーザ光照射システムは、前記拡散ターゲットに照射される際の前記メインパルスレーザ光の前記断面を前記ドロップレットターゲットに照射される際の前記プリパルスレーザ光の前記偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状に整形する整形部を含む。
【請求項4】
請求項3に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プリパルスレーザ光の光路と前記メインパルスレーザ光の光路とが交差する位置に配置され、前記プリパルスレーザ光の光路及び前記メインパルスレーザ光の光路を重ね合わせる光路合成部材をさらに含み、
前記整形部は、前記メインパルスレーザ光の進行方向に対して前記光路合成部材よりも上流側に配置される。
【請求項5】
請求項3に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記整形部は、
シリンドリカル凹レンズと、
前記シリンドリカル凹レンズに向かい合うシリンドリカル凸レンズと、
前記シリンドリカル凹レンズ及び前記シリンドリカル凸レンズの少なくとも一方を移動させ、前記シリンドリカル凹レンズ及び前記シリンドリカル凸レンズの距離を調整するアクチュエータと、
を含む。
【請求項6】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記極端紫外光を反射する極端紫外光集光ミラーをさらに含み、
前記拡散ターゲットに照射される際の前記メインパルスレーザ光は、直線偏光を有し、
前記拡散ターゲットに照射される際の前記メインパルスレーザ光の偏光方向は、前記極端紫外光集光ミラーに進行する前記極端紫外光の中心軸及び前記極端紫外光集光ミラーによって反射される前記極端紫外光の中心軸を含む面に垂直である。
【請求項7】
請求項6に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記極端紫外光集光ミラーは、前記チャンバ装置中において前記極端紫外光が生成されるプラズマ生成領域を通過する直線であって前記拡散ターゲットに照射される際の前記メインパルスレーザ光の前記偏光方向に延びる前記直線を横切らないように、前記拡散ターゲットに照射される際の前記メインパルスレーザ光の光軸から側方に偏在した位置に配置される。
【請求項8】
請求項6に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記メインパルスレーザ光照射システムは、前記拡散ターゲットに照射される際の前記メインパルスレーザ光の前記偏光方向を、前記極端紫外光集光ミラーに進行する前記極端紫外光の中心軸及び前記極端紫外光集光ミラーによって反射される前記極端紫外光の中心軸を含む面に垂直な方向に変えるλ/2波長板を含む。
【請求項9】
請求項8に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記メインパルスレーザ光照射システムは、前記拡散ターゲットに照射される際の前記メインパルスレーザ光の前記断面を前記ドロップレットターゲットに照射される際の前記プリパルスレーザ光の前記偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状に整形する整形部を含み、
前記λ/2波長板は、前記メインパルスレーザ光の進行方向に対して前記整形部よりも下流側に配置される。
【請求項10】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記極端紫外光を反射する極端紫外光集光ミラーをさらに含み、
前記ドロップレットターゲットに照射される際の前記プリパルスレーザ光の前記偏光方向は、前記極端紫外光集光ミラーに進行する前記極端紫外光の中心軸及び前記極端紫外光集光ミラーによって反射される前記極端紫外光の中心軸を含む面に垂直である。
【請求項11】
請求項10に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記極端紫外光集光ミラーは、前記チャンバ装置中において前記極端紫外光が生成されるプラズマ生成領域を通過する直線であって前記拡散ターゲットに照射される際の前記プリパルスレーザ光の前記偏光方向に延びる前記直線を横切らないように、前記ドロップレットターゲットに照射される際の前記プリパルスレーザ光の光軸から側方に偏在した位置に配置される。
【請求項12】
請求項10に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プリパルスレーザ光照射システムは、前記ドロップレットターゲットに照射される際の前記プリパルスレーザ光の前記偏光方向を、前記極端紫外光集光ミラーに進行する前記極端紫外光の中心軸及び前記極端紫外光集光ミラーによって反射される前記極端紫外光の中心軸を含む面に垂直な方向に変えるλ/2波長板を含む。
【請求項13】
請求項12に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プリパルスレーザ光の光路と前記メインパルスレーザ光の光路とが交差する位置に配置され、前記プリパルスレーザ光の光路及び前記メインパルスレーザ光の光路を重ね合わせる光路合成部材をさらに含み、
前記λ/2波長板は、前記プリパルスレーザ光の進行方向に対して前記光路合成部材よりも上流側に配置される。
【請求項14】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記メインパルスレーザ光の波長と前記プリパルスレーザ光の波長とは、互いに異なる。
【請求項15】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記メインパルスレーザ光の波長と前記プリパルスレーザ光の波長とは、互いに同一である。
【請求項16】
チャンバ装置中にドロップレットターゲットを吐出するターゲット供給部と、
直線偏光を有するプリパルスレーザ光を前記ドロップレットターゲットに照射して拡散ターゲットを生成するプリパルスレーザ光照射システムと、
メインパルスレーザ光を前記拡散ターゲットに照射して極端紫外光を生成するメインパルスレーザ光照射システムと、
を備え、
前記拡散ターゲットに照射される際の前記メインパルスレーザ光の光軸に垂直な断面は、前記ドロップレットターゲットに照射される際の前記プリパルスレーザ光の偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状である
極端紫外光生成装置によって生成される前記極端紫外光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記極端紫外光を露光する
ことを含む電子デバイスの製造方法。
【請求項17】
チャンバ装置中にドロップレットターゲットを吐出するターゲット供給部と、
直線偏光を有するプリパルスレーザ光を前記ドロップレットターゲットに照射して拡散ターゲットを生成するプリパルスレーザ光照射システムと、
メインパルスレーザ光を前記拡散ターゲットに照射して極端紫外光を生成するメインパルスレーザ光照射システムと、
を備え、
前記拡散ターゲットに照射される際の前記メインパルスレーザ光の光軸に垂直な断面は、前記ドロップレットターゲットに照射される際の前記プリパルスレーザ光の偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状である
極端紫外光生成装置によって生成される前記極端紫外光をマスクに照射して前記マスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写する
ことを含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光生成装置及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV:Extreme UltraViolet)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた半導体露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLaser Produced Plasma(LPP)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第9130345号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0105712号明細書
【特許文献3】米国特許第9357625号明細書
【概要】
【0005】
本開示の一態様による極端紫外光生成装置は、チャンバ装置中にドロップレットターゲットを吐出するターゲット供給部と、直線偏光を有するプリパルスレーザ光をドロップレットターゲットに照射して拡散ターゲットを生成するプリパルスレーザ光照射システムと、メインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射して極端紫外光を生成するメインパルスレーザ光照射システムと、を備え、拡散ターゲットに照射される際のメインパルスレーザ光の光軸に垂直な断面は、ドロップレットターゲットに照射される際のプリパルスレーザ光の偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状であってもよい。
【0006】
また、本開示の一態様による電子デバイスの製造方法は、チャンバ装置中にドロップレットターゲットを吐出するターゲット供給部と、直線偏光を有するプリパルスレーザ光をドロップレットターゲットに照射して拡散ターゲットを生成するプリパルスレーザ光照射システムと、メインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射して極端紫外光を生成するメインパルスレーザ光照射システムと、を備え、拡散ターゲットに照射される際のメインパルスレーザ光の光軸に垂直な断面は、ドロップレットターゲットに照射される際のプリパルスレーザ光の偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状である極端紫外光生成装置によって生成される極端紫外光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含んでもよい。
【0007】
また、本開示の他の一態様による電子デバイスの製造方法は、チャンバ装置中にドロップレットターゲットを吐出するターゲット供給部と、直線偏光を有するプリパルスレーザ光をドロップレットターゲットに照射して拡散ターゲットを生成するプリパルスレーザ光照射システムと、メインパルスレーザ光を拡散ターゲットに照射して極端紫外光を生成するメインパルスレーザ光照射システムと、を備え、拡散ターゲットに照射される際のメインパルスレーザ光の光軸に垂直な断面は、ドロップレットターゲットに照射される際のプリパルスレーザ光の偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状である極端紫外光生成装置によって生成される極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、電子デバイスの製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子デバイスの製造装置とは別の電子デバイスの製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、比較例の極端紫外光生成装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、拡散ターゲットと拡散ターゲットに照射される際のメインパルスレーザ光の断面との関係の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、拡散ターゲットとメインパルスレーザ光の断面との関係の別の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の極端紫外光生成装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図7】
図7は、整形部の概略構成例を示す一部断面図である
【
図8】
図8は、実施形態1における拡散ターゲットとメインパルスレーザ光の断面との関係の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態2の極端紫外光生成装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図10】
図10は、拡散ターゲットを生成する際のプリパルスレーザ光の光軸に対するEUV光集光ミラーの配置位置をY方向から視る図である。
【
図11】
図11は、プリパルスレーザ光によって生成された拡散ターゲットをY方向から視る図である。
【
図13】
図13は、実施形態3の極端紫外光生成装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
【
図14】
図14は、Y方向の偏光を有するメインパルスレーザ光を照射された拡散ターゲットをY方向から視る図である。
【実施形態】
【0009】
1.概要
2.電子デバイスの製造装置の説明
3.比較例の極端紫外光生成装置の説明
3.1 構成
3.2 動作
3.3 課題
4.実施形態1の極端紫外光生成装置の説明
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
5.実施形態2の極端紫外光生成装置の説明
5.1 構成
5.2 作用・効果
6.実施形態3の極端紫外光生成装置の説明
6.1 構成
6.2 作用・効果
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.概要
本開示の実施形態は、極端紫外(EUV)と呼ばれる波長の光を生成する極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造装置に関するものである。なお、以下では、極端紫外光をEUV光という場合がある。
【0012】
2.電子デバイスの製造装置の説明
図1は、電子デバイス製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図1に示す電子デバイス製造装置は、EUV光生成装置100、及び露光装置200を含む。露光装置200は、反射光学系である複数のミラー211,212を含むマスク照射部210と、マスク照射部210の反射光学系とは別の反射光学系である複数のミラー221,222を含むワークピース照射部220とを含む。マスク照射部210は、EUV光生成装置100から入射したEUV光101によって、ミラー211,212を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部220は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光101を、ミラー221,222を介してワークピーステーブルWT上に配置された不図示のワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置200は、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光101をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで半導体デバイスを製造することができる。
【0013】
図2は、
図1に示す電子デバイス製造装置とは別の電子デバイス製造装置の全体の概略構成例を示す模式図である。
図2に示す電子デバイス製造装置は、EUV光生成装置100、及び検査装置300を含む。検査装置300は、反射光学系である複数のミラー311,313,315を含む照明光学系310と、照明光学系310の反射光学系とは別の反射光学系である複数のミラー321,323、及び検出器325を含む検出光学系320とを含む。照明光学系310は、EUV光生成装置100から入射したEUV光101をミラー311,313,315で反射して、マスクステージ331に配置されているマスク333を照射する。マスク333は、パターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系320は、マスク333からのパターンを反映したEUV光101をミラー321,323で反射して検出器325の受光面に結像させる。EUV光101を受光した検出器325は、マスク333の画像を取得する。検出器325は、例えばTDI(Time Delay Integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク333の画像により、マスク333の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置200を用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造することができる。
【0014】
3.比較例の極端紫外光生成装置の説明
3.1 構成
比較例のEUV光生成装置100について説明する。なお、本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。また、以下では、
図1に示すように外部装置としての露光装置200に向けてEUV光101を出射するEUV光生成装置100を用いて説明する。なお、
図2に示すように外部装置としての検査装置300にEUV光101を出射するEUV光生成装置100についても、同様の作用・効果を得ることができる。
【0015】
図3は、本例のEUV光生成装置100の全体の概略構成例を示す模式図である。
図3に示すように、EUV光生成装置100は、チャンバ装置10、メインパルスレーザ装置130を含むメインパルスレーザ光照射システムMPS、プリパルスレーザ装置140を含むプリパルスレーザ光照射システムPPS、及び制御システム120を主な構成として含む。
【0016】
チャンバ装置10は、密閉可能な容器である。チャンバ装置10は、低圧雰囲気の内部空間を囲う内壁10bを含む。また、チャンバ装置10はサブチャンバ15を含む。サブチャンバ15には、サブチャンバ15の壁を貫通するようにターゲット供給部40が取り付けられている。ターゲット供給部40は、タンク41、ノズル42、及び圧力調節器43を含み、ドロップレットターゲットDLをチャンバ装置10の内部空間に供給する。ドロップレットターゲットDLは、ドロップレットやターゲットと省略して呼ばれる場合がある。
【0017】
タンク41は、その内部にドロップレットターゲットDLとなるターゲット物質を貯蔵する。ターゲット物質は、スズを含む。タンク41の内部は、タンク41内の圧力を調節する圧力調節器43と連通している。タンク41には、ヒータ44及び温度センサ45が取り付けられている。ヒータ44は、ヒータ電源46から供給される電流により、タンク41を加熱する。この加熱により、タンク41内のターゲット物質は溶融する。温度センサ45は、タンク41を介してタンク41内のターゲット物質の温度を測定する。圧力調節器43、温度センサ45、及びヒータ電源46は、制御システム120に含まれるプロセッサ121に電気的に接続されている。
【0018】
ノズル42は、タンク41に取り付けられ、ターゲット物質を吐出する。ノズル42には、ピエゾ素子47が取り付けられている。ピエゾ素子47は、ピエゾ電源48に電気的に接続されており、ピエゾ電源48から印加される電圧で駆動される。ピエゾ電源48は、プロセッサ121に電気的に接続されている。ピエゾ素子47の動作により、ノズル42から吐出するターゲット物質はドロップレットターゲットDLにされる。
【0019】
チャンバ装置10は、ターゲット回収部14を含む。ターゲット回収部14は、チャンバ装置10の内壁10bに取り付けられる箱体であり、チャンバ装置10の内壁10bに設けられる開口10aを介してチャンバ装置10の内部空間に連通している。開口10aはノズル42の直下に設けられ、ターゲット回収部14は、開口10aを通過してターゲット回収部14に到達する不要なドロップレットターゲットDLを回収するドレインタンクである。
【0020】
チャンバ装置10の内壁10bには、少なくとも1つの貫通孔が設けられている。この貫通孔は、ウィンドウ12によって塞がれ、ウィンドウ12をメインパルスレーザ装置130及びプリパルスレーザ装置140から出射されるパルスレーザ光が透過する。
【0021】
また、チャンバ装置10の内部空間には、レーザ集光光学系13が配置されている。レーザ集光光学系13は、レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bを含む。レーザ光集光ミラー13Aは、ウィンドウ12を透過するレーザ光を反射して集光する。高反射ミラー13Bは、レーザ光集光ミラー13Aが集光する光を反射する。レーザ光集光ミラー13A及び高反射ミラー13Bの位置は、レーザ光マニュピレータ13Cにより、チャンバ装置10の内部空間でのレーザ光の集光位置がプロセッサ121から指定された位置になるように調節される。当該集光位置はノズル42の直下に位置するように調節されており、レーザ光が当該集光位置においてターゲット物質を照射すると、照射によってプラズマが生成されると共に、プラズマからEUV光101が放射される。プラズマが生成される領域をプラズマ生成領域ARと呼ぶことがある。
【0022】
チャンバ装置10の内部空間には、例えば、回転楕円面形状の反射面75aを含むEUV光集光ミラー75が配置される。反射面75aは、プラズマ生成領域ARにおいてプラズマから放射されるEUV光101を反射する。反射面75aは、第1焦点及び第2焦点を有する。反射面75aは、例えば、第1焦点がプラズマ生成領域ARに位置し、第2焦点が中間集光点IFに位置するように配置されてもよい。
図3では、第1焦点及び第2焦点を通る直線が焦点直線L0として示されている。以下では、焦点直線L0が延びる方向をZ方向、ドロップレットターゲットDLの吐出方向でありZ方向に直交する方向をY方向、Z方向及びY方向に直交する方向をX方向として説明することがある。
【0023】
また、EUV光生成装置100は、チャンバ装置10の内部空間及び露光装置200の内部空間を連通させる接続部19を含む。接続部19の内部には、アパーチャが形成された壁が配置されている。この壁は、アパーチャが第2焦点に位置するように配置されることが好ましい。接続部19はEUV光生成装置100におけるEUV光101の出射口であり、EUV光101は接続部19から出射されて露光装置200に入射する。
【0024】
また、EUV光生成装置100は、圧力センサ26及びターゲットセンサ27を含む。圧力センサ26及びターゲットセンサ27は、チャンバ装置10に取り付けられ、プロセッサ121に電気的に接続されている。圧力センサ26は、チャンバ装置10の内部空間の圧力を計測し、この圧力を示す信号をプロセッサ121に出力する。ターゲットセンサ27は、例えば撮像機能を含み、プロセッサ121からの指示によってノズル42のノズル孔から吐出するドロップレットターゲットDLの存在、軌跡、位置、流速等を検出する。ターゲットセンサ27は、チャンバ装置10の内部に配置されてもよいし、チャンバ装置10の外部に配置されてチャンバ装置10の壁に設けられる不図示のウィンドウを介してドロップレットターゲットDLを検出してもよい。ターゲットセンサ27は、不図示の受光光学系と、例えばCCD(Charge-Coupled Device)又はフォトダイオード等の不図示の撮像部とを含む。受光光学系は、ドロップレットターゲットDLの検出精度を向上させるために、ドロップレットターゲットDLの軌跡及びその周囲における像を撮像部の受光面に結像する。ターゲットセンサ27の視野内のコントラストを向上させるために配置される不図示の光源部による光の集光領域をドロップレットターゲットDLが通過するときに、撮像部はドロップレットターゲットDLの軌跡及びその周囲を通る光の変化を検出する。撮像部は、検出した光の変化を、ドロップレットターゲットDLのイメージデータに係る信号としての電気信号に変換する。撮像部は、この電気信号をプロセッサ121に出力する。
【0025】
メインパルスレーザ装置130は、例えば、YAGレーザ装置やCO2レーザ装置から成り、バースト動作するマスターオシレータを含み、メインパルスレーザ光MPLを出射する。なお、バースト動作とは、バーストオン時に連続したメインパルスレーザ光MPLを所定の繰り返し周波数で出射し、バーストオフ時にメインパルスレーザ光MPLの出射を抑制する動作である。
【0026】
プリパルスレーザ装置140は、所定方向に偏光する直線偏光を有するプリパルスレーザ光PPLを出射する。
図3の例では、プリパルスレーザ光PPLの波長は、メインパルスレーザ光MPLの波長と異なる。従って、例えば、メインパルスレーザ装置130がYAGレーザ装置であれば、プリパルスレーザ装置140は例えばCO
2レーザ装置である。なお、プリパルスレーザ光PPL及びメインパルスレーザ光MPLは、同一波長であってもよい。この場合メインパルスレーザ装置130及びプリパルスレーザ装置140は、例えば、共にYAGレーザ装置であるか、共にCO
2レーザ装置である。プリパルスレーザ装置140は、メインパルスレーザ装置130からメインパルスレーザ光MPLが出射するタイミングと異なるタイミングでプリパルスレーザ光PPLを出射できるように構成される。この制御は、後述の制御システム120により制御される。
【0027】
メインパルスレーザ光MPL及びプリパルスレーザ光PPLの進行方向は、複数のミラーを有するレーザ光デリバリ光学系によって調節される。メインパルスレーザ光MPLの進行方向を調節するレーザ光デリバリ光学系は、ミラー31,32を含む。プリパルスレーザ光PPLの進行方向を調節するレーザ光デリバリ光学系は、ミラー33及び光路合成部材34を含む。光路合成部材34は、プリパルスレーザ光PPLの光路とメインパルスレーザ光MPLの光路とが交差する位置に配置される。このように配置される光路合成部材34は、本例では、プリパルスレーザ光PPLを反射しメインパルスレーザ光MPLを透過させることで、メインパルスレーザ光MPLの光路とプリパルスレーザ光PPLの光路とを概ね重ね合わせるダイクロイックミラーである。これらミラー31,32,33及び光路合成部材34の少なくとも1つの向きは、不図示のアクチュエータで調節され、この調節によりメインパルスレーザ光MPLやプリパルスレーザ光PPLがウィンドウ12から適切にチャンバ装置10の内部空間に伝搬し得る。なお、プリパルスレーザ光PPL及びメインパルスレーザ光MPLが同一波長でそれぞれの偏光方向が90°異なる場合、光路合成部材34はポラライザーであってもよい。
【0028】
メインパルスレーザ光照射システムMPSは、メインパルスレーザ光MPLをターゲット物質に照射するシステムである。従って、本例では、メインパルスレーザ光照射システムMPSは、メインパルスレーザ装置130の他に、ミラー31,32、光路合成部材34、及びレーザ集光光学系13を含む。また、プリパルスレーザ光照射システムPPSは、プリパルスレーザ光PPLをターゲット物質に照射するシステムである。従って、本例では、プリパルスレーザ光照射システムPPSは、プリパルスレーザ装置140の他に、ミラー33、光路合成部材34、及びレーザ集光光学系13を含む。
【0029】
本開示の制御システム120のプロセッサ121は、制御プログラムが記憶された記憶装置と、当該制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)とを含む処理装置である。プロセッサ121は、本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされ、EUV光生成装置100全体を制御する。プロセッサ121には、圧力センサ26で計測されたチャンバ装置10の内部空間の圧力に係る信号や、ターゲットセンサ27によって撮像されたドロップレットターゲットDLのイメージデータに係る信号や、露光装置200からバースト動作を指示するバースト信号等が入力される。プロセッサ121は、上記各種信号を処理し、例えば、ドロップレットターゲットDLが吐出されるタイミング、ドロップレットターゲットDLの吐出方向等を制御してもよい。また、プロセッサ121は、メインパルスレーザ装置130及びプリパルスレーザ装置140の出射タイミング、メインパルスレーザ光MPL及びプリパルスレーザ光PPLの進行方向や集光位置等を制御してもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて後述のように他の制御が追加されてもよい。
【0030】
本例のプロセッサ121は、メインパルスレーザ装置130と、プリパルスレーザ装置140とに、制御システム120の遅延回路122を介して電気的に接続されている。遅延回路122は、プロセッサ121から出力されるメインパルスレーザ装置130及びプリパルスレーザ装置140のトリガ信号を僅かに変化させる。具体的には、メインパルスレーザ装置130の照射タイミングがプリパルスレーザ装置140の照射タイミングより遅くなるように、メインパルスレーザ装置130及びプリパルスレーザ装置140に入力されるトリガ信号にずれを生じさせる。
【0031】
チャンバ装置10には、エッチングガスをチャンバ装置10の内部空間に供給する中心側ガス供給部81が配置されている。上記のように、ターゲット物質はスズを含むため、エッチングガスは、例えば水素ガス濃度が100%と見做せる水素含有ガスである。或いは、エッチングガスは、例えば水素ガス濃度が3%程度のバランスガスでもよい。バランスガスには、窒素(N2)ガスやアルゴン(Ar)ガスが含まれている。ところで、ドロップレットターゲットDLを構成するターゲット物質がプラズマ生成領域ARでメインパルスレーザ光MPLを照射されてプラズマ化すると、スズの微粒子及びスズの荷電粒子が生じる。これら微粒子及び荷電粒子を構成するスズは、チャンバ装置10の内部空間に供給されたエッチングガスに含まれる水素と反応する。スズが水素と反応すると、常温で気体のスタンナン(SnH4)になる。
【0032】
中心側ガス供給部81は、円錐台の側面状の形状をしており、EUV光集光ミラー75の中央部に形成された貫通孔75cを挿通している。なお、中心側ガス供給部81は、コーンと呼ばれる場合がある。また、中心側ガス供給部81は、ノズルである中心側ガス供給口81aを含む。中心側ガス供給口81aは、反射面75aの第1焦点及び第2焦点を通る焦点直線L0上に設けられる。焦点直線L0は、反射面75aの中心軸方向に沿っている。中心側ガス供給口81aは、反射面75aの中心側からプラズマ生成領域ARに向かってエッチングガスを供給する。なお、エッチングガスは、焦点直線L0に沿って反射面75aの中心側から反射面75aから離れる方向に沿って、中心側ガス供給口81aから供給されることが好ましい。中心側ガス供給口81aは、中心側ガス供給部81の不図示の配管を介してタンクである不図示のガス供給装置に接続されており、ガス供給装置からエッチングガスが供給される。ガス供給装置は、プロセッサ121によって駆動を制御される。不図示の配管には、バルブである不図示の供給ガス流量調節部が配置されてもよい。
【0033】
中心側ガス供給口81aは、エッチングガスをチャンバ装置10の内部空間に供給するガス供給口であると共に、プリパルスレーザ光PPLやメインパルスレーザ光MPLがチャンバ装置10の内部空間に出射する出射口でもある。プリパルスレーザ光PPL及びメインパルスレーザ光MPLは、ウィンドウ12と中心側ガス供給口81aとを通過してチャンバ装置10の内部空間に向かって進行する。
【0034】
チャンバ装置10の内壁10bには、排気口10Eが設けられている。焦点直線L0上には露光装置200が配置されるため、排気口10Eは、焦点直線L0の側方における内壁10bに設けられている。排気口10Eの中心軸に沿う方向は、例えば、焦点直線L0に直交している。また、排気口10Eは、焦点直線L0に垂直な方向から見る場合において、プラズマ生成領域ARを基準として反射面75aとは反対側に設けられている。排気口10Eは、チャンバ装置10の内部空間のガスを排気する。排気口10Eは排気管10Pに接続されており、排気管10Pは排気ポンプ60に接続されている。
【0035】
上記のようにターゲット物質がプラズマ生成領域ARにおいてプラズマ化する際、排ガスとしての残留ガスがチャンバ装置10の内部空間に生成される。残留ガスは、ターゲット物質のプラズマ化により生じたスズの微粒子及び荷電粒子と、それらがエッチングガスと反応したスタンナンと、未反応のエッチングガスとを含む。なお、荷電粒子の一部はチャンバ装置10の内部空間で中性化するが、この中性化した荷電粒子も残留ガスに含まれる。残留ガスは、排気口10Eと排気管10Pとを介して排気ポンプ60に吸引される。
【0036】
3.2 動作
次に、比較例のEUV光生成装置100の動作について説明する。
【0037】
EUV光生成装置100では、例えば、新規導入時やメンテナンス時等において、チャンバ装置10の内部空間の大気が排気される。その際、大気成分の排気のために、チャンバ装置10の内部空間のパージと排気とを繰り返してもよい。パージガスには、例えば、窒素やアルゴンなどの不活性ガスが用いられることが好ましい。その後、チャンバ装置10の内部空間の圧力が所定の圧力以下になると、プロセッサ121は、ガス供給装置から中心側ガス供給部81を介してチャンバ装置10の内部空間へのエッチングガスの導入を開始させる。このときプロセッサ121は、チャンバ装置10の内部空間の圧力が所定の圧力に維持されるように、不図示の供給ガス流量調節部や排気ポンプ60を制御してもよい。その後、プロセッサ121は、エッチングガスの導入開始から所定時間が経過するまで待機する。
【0038】
また、プロセッサ121は、排気ポンプ60により、チャンバ装置10の内部空間の気体を排気口10Eから排気させ、圧力センサ26で計測されたチャンバ装置10の内部空間の圧力を示す信号に基づいて、チャンバ装置10の内部空間の圧力を略一定に保つ。
【0039】
また、プロセッサ121は、タンク41内のターゲット物質を融点以上の所定温度に加熱及び維持するために、ヒータ電源46からヒータ44に電流を供給させ、ヒータ44を昇温させる。このとき、プロセッサ121は、温度センサ45からの出力に基づいて、ヒータ電源46からヒータ44へ供給される電流の値を調節し、ターゲット物質の温度を所定温度に制御する。なお、所定温度は、ターゲット物質がスズである場合、スズの融点231.93℃以上の温度であり、例えば240℃以上290℃以下である。こうしてドロップレットターゲットDLを吐出する準備が完了する。
【0040】
準備が完了すると、プロセッサ121は、ノズル42のノズル孔から溶融したターゲット物質が所定の流速で吐出するように、圧力調節器43によって、不図示のガス供給源から不活性ガスをタンク41内に供給し、タンク41内の圧力を調節する。この圧力下で、ターゲット物質は、ノズル42のノズル孔からチャンバ装置10中に吐出する。ノズル孔から吐出するターゲット物質は、ジェットの形態をとってもよい。このとき、プロセッサ121は、ドロップレットターゲットDLを生成するために、ピエゾ電源48からピエゾ素子47に所定波形の電圧を印加する。ピエゾ電源48は、電圧値の波形が例えば正弦波状、矩形波状、或いはのこぎり波状となるように、電圧を印加する。ピエゾ素子47の振動は、ノズル42を経由してノズル42のノズル孔から吐出するターゲット物質へと伝搬し得る。ターゲット物質は、この振動により所定周期で分断され、液滴のドロップレットターゲットDLとなる。ドロップレットターゲットDLの直径は、概ね20μm以下である。
【0041】
ドロップレットターゲットDLが吐出されると、ターゲットセンサ27は、チャンバ装置10の内部空間の所定位置を通過するドロップレットターゲットDLの通過タイミングを検出する。プロセッサ121は、ドロップレットターゲットDLにプリパルスレーザ光PPLが照射されるように、ターゲットセンサ27からの信号に基づいて、プリパルスレーザ装置140からプリパルスレーザ光PPLが出射するタイミングを制御して、トリガ信号を出力する。プロセッサ121から出力されたトリガ信号は、遅延回路122を介してプリパルスレーザ装置140及びメインパルスレーザ装置130に入力する。ただし、遅延回路122は、トリガ信号をメインパルスレーザ装置130よりも先にプリパルスレーザ装置140に入力する。プリパルスレーザ装置140は、トリガ信号が入力されると、プリパルスレーザ光PPLを出射する。プリパルスレーザ光PPLが出射するタイミングにおいて、メインパルスレーザ光MPLは出射しない。
【0042】
プリパルスレーザ光PPLは、時間的なパルス幅が例えば10ps以上100ps以下のピコ秒パルスレーザ光、又は、パルス幅が例えば10ns以上300ns以下のナノ秒パルスレーザ光である。なお、上記パルス幅は、レーザ光の強度が最大値となる前後において、当該強度が当該最大値の半値となる時間同士の間隔を指す。ピコ秒パルスレーザ光とナノ秒パルスレーザ光とで、1パルス当たりのエネルギーは概ね等しい。従って、ピコ秒パルスレーザ光の方がナノ秒パルスレーザ光よりも高いエネルギー密度を有する。なお、プリパルスレーザ光PPLのフルーエンスは、例えば0.1J/cm2以上100J/cm2以下である。好ましくは、当該フルーエンスは、ピコ秒パルスレーザ光の場合1J/cm2以上20J/cm2以下であり、ナノ秒パルスレーザ光の場合1J/cm2以上3J/cm2以下である。プリパルスレーザ装置140から出射し直線偏光を有するプリパルスレーザ光PPLは、ミラー33、光路合成部材34で反射され、レーザ集光光学系13を介して、ドロップレットターゲットDLに照射される。このとき、プロセッサ121は、プリパルスレーザ光PPLがプラズマ生成領域ARの近傍に集光するように、レーザ集光光学系13のレーザ光マニュピレータ13Cを制御する。プリパルスレーザ光PPLが照射されたドロップレットターゲットDLは、レーザ光のエネルギーによりレーザアブレーションされることで拡散し、拡散ターゲットとなる。従って、プリパルスレーザ光照射システムPPSは、ドロップレットターゲットDLにプリパルスレーザ光PPLを照射して拡散ターゲットを生成するシステムである。
【0043】
拡散ターゲットは、ドロップレットターゲットDLが拡散したターゲットであるため、ドロップレットターゲットDLよりも、径が大きく、ターゲット物質の密度が低い。
【0044】
プリパルスレーザ装置140にトリガ信号が入力するタイミングから遅れて、メインパルスレーザ装置130にトリガ信号が入力すると、メインパルスレーザ装置130はメインパルスレーザ光MPLを出射する。プリパルスレーザ光PPLが出射するタイミングとメインパルスレーザ光MPLが出射するタイミングとの時間差は、例えば、ピコ秒パルスレーザ光の場合50ns以上500ns以下、ナノ秒パルスレーザ光の場合50ns以上150ns以下である。プロセッサ121及び遅延回路122は、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光MPLが照射されるように、メインパルスレーザ装置130からメインパルスレーザ光MPLが出射するタイミングを制御して、発光トリガ信号を出力する。
【0045】
メインパルスレーザ光MPLは、パルス幅が例えば1ns以上50ns以下のレーザ光であり、より好ましくは、15ns以上20ns以下のレーザ光である。メインパルスレーザ装置130から出射するメインパルスレーザ光MPLは、ミラー31,32で反射され、光路合成部材34を透過し、レーザ集光光学系13を介して、プラズマ生成領域ARにおいて拡散ターゲットに照射される。このとき、プロセッサ121は、メインパルスレーザ光MPLがプラズマ生成領域ARに集光するように、レーザ集光光学系13のレーザ光マニュピレータ13Cを制御する。メインパルスレーザ光MPLが照射された拡散ターゲットは、レーザ光のエネルギーによりプラズマとなり、このプラズマからEUV光を含む光が放射される。従って、メインパルスレーザ光照射システムMPSは、拡散ターゲットにメインパルスレーザ光MPLを照射してEUV光を生成するシステムである。
【0046】
このようにターゲット物質の密度が下げられた拡散ターゲットにメインパルスレーザ光MPLが照射されることで、ドロップレットターゲットDLに直接メインパルスレーザ光MPLが照射される場合と比べて、多くのターゲット物質がプラズマ化し、効率良くEUV光を放射させ得る。
【0047】
プラズマ生成領域ARで発生したEUV光を含む光のうち、EUV光101は、EUV光集光ミラー75によって中間集光点IFで集光された後、接続部19から露光装置200に入射する。
【0048】
なお、ターゲット物質がプラズマ化する際、上記のようにスズの微粒子が生じる。この微粒子は、チャンバ装置10の内部空間に拡散する。チャンバ装置10の内部空間に拡散する微粒子は、中心側ガス供給部81から供給される水素を含むエッチングガスと反応してスタンナンになる。エッチングガスとの反応により得られたスタンナンの多くは、未反応のエッチングガスの流れに乗って、排気口10Eに流入する。また、未反応の荷電粒子、微粒子、及びエッチングガスの少なくとも一部は、排気口10Eに流入する。
【0049】
排気口10Eに流入した未反応のエッチングガス、微粒子、荷電粒子、及びスタンナン等は、残留ガスとして排気管10Pから排気ポンプ60内に流入し無害化等の所定の排気処理が施される。
【0050】
3.3 課題
比較例のEUV光生成装置100では、プリパルスレーザ装置140は直線偏光を有するプリパルスレーザ光PPLを出射する。直線偏光を有するプリパルスレーザ光PPLがドロップレットターゲットDLに照射される際、拡散ターゲットは当該プリパルスレーザ光PPLの偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状に広がる傾向にある。ところで、メインパルスレーザ光MPLの光軸に垂直な断面は、一般的に円形状である。
図4は、拡散ターゲットDTと拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの断面との関係の一例を示す図である。
図5は、拡散ターゲットDTと拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの断面との関係の別の一例を示す図である。
図4及び
図5では、見易さのため拡散ターゲットDTを破線で示している。
図4に示すようにメインパルスレーザ光MPLの断面の直径が拡散ターゲットDTの断面の長手方向における長さよりも短い場合、メインパルスレーザ光MPLが拡散ターゲットDTの一部に照射されない。従って、一部のターゲット物質がプラズマ化され難くなり、プラズマ化されない未反応のターゲット物質は、排気管10Pから排出されたり、デブリとなってチャンバ装置10の内壁10bやEUV光集光ミラー75の反射面75aに付着したりする。これとは逆に、
図5に示すようにメインパルスレーザ光MPLの断面の直径が拡散ターゲットDTの断面の長手方向における長さよりも長い場合、メインパルスレーザ光MPLの断面が拡散ターゲットDTよりも大きくなる。従って、メインパルスレーザ光MPLの一部が拡散ターゲットDTに照射されず、メインパルスレーザ光MPLにロスが生じる。このため、効率良くEUV光を生成させたいとの要請がある。
【0051】
そこで、以下の実施形態では、効率良くEUV光を生成し得るEUV光生成装置が例示される。
【0052】
4.実施形態1の極端紫外光生成装置の説明
次に、実施形態1のEUV光生成装置100の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0053】
4.1 構成
図6は、本実施形態のEUV光生成装置100の全体の概略構成例を示す模式図である。本実施形態のEUV光生成装置100では、メインパルスレーザ光照射システムMPSが整形部150を含む点において、比較例のメインパルスレーザ光照射システムMPSと異なる。
【0054】
整形部150は、メインパルスレーザ光MPLの進行方向に対して光路合成部材34よりも上流側に配置される。
図6では、整形部150がミラー31及びミラー32の間に配置されている例を示している。
【0055】
図7は、整形部150の概略構成例を示す一部断面図である。具体的には、
図7は、メインパルスレーザ光MPLの光軸を含む面における整形部150の一部断面図である。整形部150は、台座151と、回転ステージ153と、アクチュエータ155a,155bと、筐体157と、シリンドリカル凹レンズ159aと、シリンドリカル凸レンズ159bと、ホルダ161a,161bと、ベース部材163と、ステージ165とを含む。
図7では、回転ステージ153及び筐体157を断面にて示している。
【0056】
筐体157の側壁には、メインパルスレーザ光MPLの入射口としての開口157aと、メインパルスレーザ光MPLの出射口としての開口157bとが設けられている。また、筐体157の底壁にはベース部材163が配置され、ベース部材163にはシリンドリカル凹レンズ159aを保持するホルダ161a及びステージ165が配置される。ステージ165には、シリンドリカル凸レンズ159bを保持するホルダ161bが配置される。
【0057】
シリンドリカル凹レンズ159aの凹面は開口157aに向かい合い、シリンドリカル凸レンズ159bはシリンドリカル凹レンズ159a及び開口157bの間に位置する。また、シリンドリカル凸レンズ159bの凸面は開口157bに向かい合い、シリンドリカル凸レンズ159bの凸面とは反対側の平面は、シリンドリカル凹レンズ159aの凹面とは反対側の平面に向かい合う。メインパルスレーザ光MPLがシリンドリカル凹レンズ159aを透過すると、メインパルスレーザ光MPLの光軸に垂直な断面は所定方向に拡がる。このメインパルスレーザ光MPLがシリンドリカル凸レンズ159bを透過すると、所定方向に拡がったメインパルスレーザ光MPLはコリメートされる。
【0058】
アクチュエータ155bは筐体157の外壁に取り付けられ、アクチュエータ155bの軸はメインパルスレーザ光MPLの光軸に沿って延在しており、アクチュエータ155bの軸の先端はステージ165の側面に接続されている。また、アクチュエータ155bは、プロセッサ121に電気的に接続され、プロセッサ121からの制御信号により軸をメインパルスレーザ光MPLの光軸に沿って移動させてステージ165を押し引きする。これにより、シリンドリカル凸レンズ159bが移動し、シリンドリカル凹レンズ159a及びシリンドリカル凸レンズ159bの距離が調整される。
【0059】
整形部150は、上記距離の調整によって、拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの光軸に垂直な断面をプリパルスレーザ光PPLの偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状に整形し、偏光方向における断面の長さを調整する。このようなメインパルスレーザ光MPLの断面は、偏光方向に長い楕円形状である。当該断面は、メインパルスレーザ光MPLの断面における強度分布のうちの当該メインパルスレーザ光MPLの強度が当該強度の最大値の半値以上の領域における断面である。
【0060】
回転ステージ153及びアクチュエータ155aは、台座151に配置される。回転ステージ153は筒状であり、回転ステージ153の内側において筐体157が支持される。アクチュエータ155aは、回転ステージ153に接続されると共にプロセッサ121に電気的に接続されており、筐体157を通過するメインパルスレーザ光MPLの光軸の軸周りに回転ステージ153をプロセッサ121からの制御信号によって回転させる。これにより、筐体157の内部のシリンドリカル凹レンズ159a及びシリンドリカル凸レンズ159bが回転し、拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの光軸に垂直な断面も光軸の軸周り方向に回転する。
【0061】
なお、ステージ165には、ホルダ161bではなくホルダ161aが配置されてもよい。或いは、ホルダ161a,161bは個別に別々のステージ165に配置され、それぞれのステージ165にアクチュエータ155bが個別に接続されてもよい。そして、アクチュエータ155bは、シリンドリカル凹レンズ159a及びシリンドリカル凸レンズ159bの少なくとも一方をメインパルスレーザ光MPLの光軸に沿って移動させ、シリンドリカル凹レンズ159a及びシリンドリカル凸レンズ159bの距離を調整してもよい。
【0062】
4.2 動作
次に、本実施形態におけるEUV光生成装置100の動作について説明する。
【0063】
比較例と同様にドロップレットターゲットDLがターゲット供給部40から吐出されると、プリパルスレーザ装置140は、直線偏光を有するプリパルスレーザ光PPLを出射する。そしてプリパルスレーザ光PPLがドロップレットターゲットDLに照射されると、拡散ターゲットDTが生成される。拡散ターゲットDTは、ドロップレットターゲットDLに照射される際の直線偏光を有するプリパルスレーザ光PPLによって、プリパルスレーザ光PPLの偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状に広がる傾向にある。以下に説明する
図8の配置では、例えばXZ平面を、直線偏光を有するプリパルスレーザ光PPLの入射面として説明する。また、ドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLがS偏光を有する場合、当該プリパルスレーザ光PPLの偏光方向はY方向である。また、ドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLがP偏光を有する場合、当該プリパルスレーザ光PPLの偏光方向はX方向である。
【0064】
図8は、本実施形態における拡散ターゲットDTと拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの断面との関係の一例を示す図である。S偏光を有するプリパルスレーザ光PPLがドロップレットターゲットDLに照射されると、
図8において破線で示すように拡散ターゲットDTはY方向に長い楕円形状に広がる傾向にある。
図8に実線で示すメインパルスレーザ光MPLの断面については後述する。なお、P偏光を有するプリパルスレーザ光PPLがドロップレットターゲットDLに照射されると、拡散ターゲットDTはX方向に長い楕円形状に広がる傾向にある。
【0065】
次に、本実施形態のプロセッサ121は、ターゲットセンサ27によって撮像された拡散ターゲットDTの形状に係る信号から長手方向における拡散ターゲットDTの長さ及び長手方向に直交する方向における拡散ターゲットDTの長さを計測する。そして、プロセッサ121は、計測結果からアクチュエータ155bを制御して、シリンドリカル凹レンズ159a及びシリンドリカル凸レンズ159bの距離を調整する。また、プロセッサ121は、計測結果からアクチュエータ155aを制御して、筐体157をメインパルスレーザ光MPLの光軸の軸周りに回転させる。
【0066】
次に、比較例と同様にメインパルスレーザ装置130はメインパルスレーザ光MPLを出射し、メインパルスレーザ光MPLは整形部150のシリンドリカル凹レンズ159a及びシリンドリカル凸レンズ159bを透過する。そして、メインパルスレーザ光MPLは、ミラー32で反射され、光路合成部材34及びウィンドウ12を透過し、ミラー13A,13Bで反射され、拡散ターゲットDTに照射される。拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの光軸に垂直な断面は、整形部150によってプリパルスレーザ光PPLの偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い楕円形状に整形される。上記の距離の調整によって、長手方向におけるメインパルスレーザ光MPLの断面の長さは、長手方向における拡散ターゲットDTの長さに近づく。
図8では、実線で示すメインパルスレーザ光MPLの当該長さをL1で示し、見易さのためメインパルスレーザ光MPLを僅かに拡散ターゲットDTよりも大きくしている。長さL1は、上記の距離が短くなると短くされ、上記の距離が長くなると長くされる。プロセッサ121は、長さL1が20μm以上100μm以上なるように、距離を調整する。また、筐体157の回転により、シリンドリカル凹レンズ159a及びシリンドリカル凸レンズ159bが回転し、拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの断面の長軸のX方向に対する傾きが調整される。ドロップレットターゲットDLに照射される際のS偏光を有するプリパルスレーザ光PPLに対して、プロセッサ121は、回転によって
図8に示すようにメインパルスレーザ光MPLの楕円形状の断面をY方向に縦長にする。また、ドロップレットターゲットDLに照射される際のP偏光を有するプリパルスレーザ光PPLに対して、プロセッサ121は、回転によってメインパルスレーザ光MPLの楕円形状の断面をX方向に縦長にする。距離及び長軸の傾きの調整によって、拡散ターゲットDTに対するメインパルスレーザ光MPLの照射のずれが抑制される。
【0067】
長さL1及び長軸の傾きが調整されたメインパルスレーザ光MPLは拡散ターゲットDTに照射され、拡散ターゲットDTからEUV光101が放射される。
【0068】
4.3 作用・効果
以上説明したように、本実施形態の拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの光軸に垂直な断面は、ドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLの偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状である。
【0069】
プリパルスレーザ光照射システムPPSは、プリパルスレーザ光PPLをターゲット供給部40からチャンバ装置10中に吐出されるドロップレットターゲットDLに照射して拡散ターゲットDTを生成する。生成された拡散ターゲットDTは、ドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLの偏光方向以外の方向よりも偏光方向に長い形状に広がる傾向にある。上記の構成では、拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLは、メインパルスレーザ光MPLの光軸に垂直な断面がプリパルスレーザ光PPLの偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状である。このため、メインパルスレーザ光MPLの断面が円形状で、当該円の直径がプリパルスレーザ光PPLの偏光方向における拡散ターゲットDTの長さよりも短い場合に比べ、メインパルスレーザ光MPLが拡散ターゲットDTの一部に照射されないことが抑制され得る。従って、ドロップレットターゲットDLは、プラズマ化され易くなり得る。また、これとは逆に、円の直径がプリパルスレーザ光PPLの偏光方向における拡散ターゲットDTの長さよりも長い場合に比べて、メインパルスレーザ光MPLのロスが抑制され得る。従って、本実施形態のEUV光生成装置100によれば、効率良くEUV光101を生成させ得る。
【0070】
また、本実施形態の整形部150は、シリンドリカル凹レンズ159aと、シリンドリカル凸レンズ159bと、シリンドリカル凹レンズ159a及びシリンドリカル凸レンズ159bの距離を調整するアクチュエータ155bとを含む。上記の構成では、アクチュエータ155bによるシリンドリカル凹レンズ159a及びシリンドリカル凸レンズ159bの距離の調整によって、拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの断面の長手方向における長さが調整され得る。従って、適切な断面を有するメインパルスレーザ光MPLが拡散ターゲットDTに照射され得る。
【0071】
また、プロセッサ121は、アクチュエータ155bによってシリンドリカル凹レンズ159a及びシリンドリカル凸レンズ159bの距離の調整を制御する。従って、EUV光生成装置100の管理者がシリンドリカル凹レンズ159a及びシリンドリカル凸レンズ159bの距離を手動で調整する場合に比べて、当該調整に対する管理者の負担が軽減し得る。
【0072】
また、整形部150は、メインパルスレーザ光MPLの進行方向に対して光路合成部材34よりも上流側に配置される。上記の構成によれば、メインパルスレーザ光MPLのみが整形部150に進行する。従って、整形部150は、拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの断面のみを、ドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLの偏光方向以外の方向よりも当該偏光方向に長い形状に整形し得る。
【0073】
なお、本実施形態のEUV光生成装置100では、メインパルスレーザ光MPLとプリパルスレーザ光PPLとは、異なる波長であるが偏光方向が一致していても異なっていてもよい。この場合、光路合成部材34は、ダイクロイックミラーである。また、メインパルスレーザ光MPLとプリパルスレーザ光PPLとは、同一波長で互いに偏光方向が90°異なるレーザ光であってもよい。この場合、光路合成部材34はポラライザーである。また、この場合、メインパルスレーザ装置130及びプリパルスレーザ装置140は、例えば、共にYAGレーザ装置であるか、共にCO2レーザ装置であってもよい。ポラライザーの偏光方向をメインパルスレーザ光MPLの偏光方向に一致させることで、メインパルスレーザ光MPLはポラライザーを透過する。また、ポラライザーの偏光方向をプリパルスレーザ光PPLの偏光方向と変えることで、ポラライザーはプリパルスレーザ光PPLを反射する。
【0074】
5.実施形態2の極端紫外光生成装置の説明
次に、実施形態2のEUV光生成装置100の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0075】
5.1 構成
図9は、本実施形態のEUV光生成装置100の全体の概略構成例を示す模式図である。本実施形態のEUV光生成装置100は、露光装置200ではなく検査装置300に向けてEUV光101を出射するEUV光生成装置100である。この場合、本実施形態のEUV光生成装置100では、露光装置200に向けてEUV光101を出射するEUV光生成装置100に比べて、EUV光101に対するEUV光集光ミラー75の捕集立体角を制限してもよい。捕集立体角の制限によって、EUV光集光ミラー75は、露光装置200に向けてEUV光101を出射するEUV光生成装置100に用いられる場合に比べて小さくできる。従って、本実施形態のEUV光生成装置100では、EUV光集光ミラー75は、ドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLの光軸の軸周り方向における光軸の周囲の全周に亘ってではなく当該光軸の周囲の一部に配置される点で、実施形態1のEUV光集光ミラー75とは異なる。つまり、EUV光集光ミラー75は、ドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLの光軸から側方に偏在した位置に配置される。また、EUV光集光ミラー75は、当該光軸の側方における所定範囲内にEUV光集光ミラー75が配置される点で、実施形態1のEUV光集光ミラー75とは異なる。
図10は、拡散ターゲットDTを生成する際のプリパルスレーザ光PPLの光軸に対するEUV光集光ミラー75の配置位置をY方向から視る図である。EUV光集光ミラー75における所定範囲は、ドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLの光軸に対して例えば33°以上105°以内の範囲である。
【0076】
本実施形態のEUV光生成装置100では、メインパルスレーザ装置130はX方向の偏光を有するメインパルスレーザ光MPLを出射し、プリパルスレーザ装置140はX方向の偏光を有するプリパルスレーザ光PPLを出射する。また、本実施形態のEUV光生成装置100では、メインパルスレーザ光MPLとプリパルスレーザ光PPLとは、同一波長である。このため光路合成部材34は、ポラライザーである。
【0077】
ところで、本実施形態とは異なり、X方向の偏光を有するプリパルスレーザ光PPLによって拡散ターゲットDTが生成される場合について説明する。この場合、
図10に示すように、当該拡散ターゲットDTはドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLの偏光方向であるX方向に広がる傾向にあり、当該拡散ターゲットDTから発生するデブリ171はX方向に飛散する傾向にある。EUV光集光ミラー75が所定範囲に配置される場合、EUV光集光ミラー75はデブリ171の飛散先に位置することになるため、デブリ171がEUV光集光ミラー75に飛散して付着することがある。
【0078】
そこで、本実施形態のEUV光生成装置100では、プリパルスレーザ光照射システムPPSが
図9に示すようにλ/2波長板141を含む点において、実施形態1のプリパルスレーザ光照射システムPPSと異なる。λ/2波長板141は、プリパルスレーザ光PPLの進行方向に対して光路合成部材34よりも上流側に配置される。
図9では、λ/2波長板141がミラー33と光路合成部材34との間に配置されている例が示されている。
【0079】
図11は、プリパルスレーザ光PPLによって生成された拡散ターゲットDTをY方向から視る図である。λ/2波長板141は、ドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLの偏光方向を、ドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLの光軸からEUV光集光ミラー75に向かう方向とは異なる方向に変える。λ/2波長板141は、X方向の偏光を有するプリパルスレーザ光PPLの偏光方向を回転させて、当該プリパルスレーザ光PPLをY方向の偏光を有するプリパルスレーザ光PPLに変える。つまり、λ/2波長板141は、プラズマ生成領域ARからEUV光集光ミラー75に進行するEUV光101の中心軸C1及びEUV光集光ミラー75によって反射されるEUV光101の中心軸C2を含むXZ平面に垂直なY方向に、ドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLの偏光方向を変える。
【0080】
5.2 作用・効果
図12は、
図11に示す拡散ターゲットDTをZ方向から視る図である。
図11及び
図12に示すように、本実施形態のEUV光集光ミラー75は、プラズマ生成領域ARを通過する直線であってドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLの偏光方向に延びる当該直線を横切らないように、ドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLの光軸から側方に偏在した位置に配置される。Y方向の偏光を有するプリパルスレーザ光PPLによって発生する拡散ターゲットDTは、ドロップレットターゲットDLに照射される際のプリパルスレーザ光PPLの偏光方向であるY方向に広がる傾向にある。また、当該拡散ターゲットDTから発生するデブリ171は、Y方向に飛散する傾向にある。このため、EUV光集光ミラー75へのデブリ171の飛散が抑制され得る。また、EUV光集光ミラー75へのデブリ171の付着が抑制されることで、EUV光生成装置100の不具合が抑制され得る。
【0081】
6.実施形態3の極端紫外光生成装置の説明
次に、実施形態3のEUV光生成装置100の構成を説明する。なお、上記において説明した構成と同様の構成については同一の符号を付し、特に説明する場合を除き、重複する説明は省略する。
【0082】
6.1 構成
図13は、本実施形態のEUV光生成装置100の全体の概略構成例を示す模式図である。本実施形態のEUV光生成装置100では、メインパルスレーザ光照射システムMPS及びプリパルスレーザ光照射システムPPSのそれぞれの構成が実施形態2のそれぞれの構成とは異なる。
【0083】
本実施形態のメインパルスレーザ光照射システムMPSは、メインパルスレーザ装置130、ミラー31,32、整形部150、λ/2波長板131、レーザ光集光ミラー13D、及び高反射ミラー13Eを含む。
【0084】
λ/2波長板131は、メインパルスレーザ光MPLの進行方向に対して整形部150よりも下流側に配置される。
図13では、λ/2波長板131は、ミラー32の上流側に配置される例が示されている。
図14は、Y方向の偏光を有するメインパルスレーザ光MPLを照射される拡散ターゲットDTをY方向から視る図である。λ/2波長板131は、拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの偏光方向を、拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの光軸からEUV光集光ミラー75に向かう方向とは異なる方向に変える。λ/2波長板131は、X方向の偏光を有するメインパルスレーザ光MPLの偏光方向を回転させて、当該メインパルスレーザ光MPLをY方向の偏光を有するメインパルスレーザ光MPLに変える。つまり、λ/2波長板131は、中心軸C1及び中心軸C2を含むXZ平面に垂直なY方向に、拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの偏光方向を変える。当該メインパルスレーザ光MPLは、
図13に示すようにミラー32によって反射されてチャンバ装置10の内壁10bに設けられているウィンドウ12aを透過してレーザ光集光ミラー13Dに進行する。
【0085】
レーザ光集光ミラー13D及び高反射ミラー13Eは、レーザ集光光学系13に含まれ、チャンバ装置10の内部空間に配置される。レーザ光集光ミラー13Dは、ウィンドウ12aを透過するメインパルスレーザ光MPLを反射して集光する。高反射ミラー13Eは、レーザ光集光ミラー13Dが集光する光をプラズマ生成領域ARに反射する。レーザ光集光ミラー13D及び高反射ミラー13Eの位置は、レーザ光マニュピレータ13Cにより、チャンバ装置10の内部空間でのメインパルスレーザ光MPLの集光位置がプロセッサ121から指定された位置になるように調節される。当該集光位置はノズル42の直下に位置するように調節されている。
【0086】
本実施形態のプリパルスレーザ光照射システムPPSは、プリパルスレーザ装置140140、ミラー33、λ/2波長板141、ミラー35、レーザ光集光ミラー13A、及び高反射ミラー13Bを含む。
【0087】
ミラー35は、λ/2波長板141とレーザ光集光ミラー13Aとの間に配置され、ミラー35からのプリパルスレーザ装置140をレーザ光集光ミラー13Aに向けて反射する。
【0088】
本実施形態では、メインパルスレーザ光MPLとプリパルスレーザ光PPLとは同一の偏光つまりX方向の偏光を有するため、ポラライザーは用いられない。また、本実施形態のメインパルスレーザ光MPLとプリパルスレーザ光PPLとは同一波長であるため、ダイクロイックミラーが用いられない。ポラライザー及びダイクロイックミラーが用いられないため、本実施形態のメインパルスレーザ光MPLの光路及びプリパルスレーザ光PPLの光路は、分けられておりプラズマ生成領域ARよりも上流において重ならない。なお、メインパルスレーザ光MPLとプリパルスレーザ光PPLとが異なる波長であれば、ダイクロイックミラーが用いられ、メインパルスレーザ光MPLの光路及びプリパルスレーザ光PPLの光路は、ダイクロイックミラーによってλ/2波長板131,141の下流側において重なってもよい。
【0089】
6.2 作用・効果
図15は、
図14に示す拡散ターゲットDTをZ方向から視る図である。
図14及び
図15に示すように、本実施形態のEUV光集光ミラー75は、プラズマ生成領域ARを通過する直線であって拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの偏光方向に延びる当該直線を横切らないように、拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの光軸から側方に偏在した位置に配置される。拡散ターゲットDTは、Y方向の偏光を有するメインパルスレーザ光MPLを照射されると、拡散ターゲットDTに照射される際のメインパルスレーザ光MPLの偏光方向であるY方向に拡散する傾向にある。また、当該拡散ターゲットDTから発生するデブリ171は、Y方向に飛散する傾向にある。このため、EUV光集光ミラー75へのデブリ171の飛散が抑制され得る。また、EUV光集光ミラー75へのデブリ171の付着が抑制されることで、EUV光生成装置100の不具合が抑制され得る。
【0090】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきであり、さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。