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特開2023-97030半導体装置、バイオセンサ、バイオセンサアレイ、および論理回路
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097030
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】半導体装置、バイオセンサ、バイオセンサアレイ、および論理回路
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20230630BHJP
   H10K 10/40 20230101ALI20230630BHJP
   H10K 85/20 20230101ALI20230630BHJP
   H10K 71/10 20230101ALI20230630BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20230630BHJP
   H01L 29/16 20060101ALI20230630BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20230630BHJP
   G01N 27/414 20060101ALI20230630BHJP
   B82Y 10/00 20110101ALI20230630BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 625
H01L29/28 100A
H01L29/28 250E
H01L29/28 310E
H01L29/06 601N
H01L29/16
H01L29/78 617S
H01L29/78 617N
H01L29/78 618E
G01N27/414 301V
B82Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213152
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】須藤 亮太
(72)【発明者】
【氏名】細野 信人
【テーマコード(参考)】
5F110
【Fターム(参考)】
5F110BB04
5F110BB09
5F110CC01
5F110CC03
5F110CC07
5F110DD01
5F110DD05
5F110DD06
5F110EE08
5F110EE22
5F110EE27
5F110EE30
5F110FF01
5F110FF02
5F110FF09
5F110FF12
5F110FF21
5F110FF27
5F110GG01
5F110GG04
5F110GG20
5F110GG22
5F110GG41
5F110HK02
5F110HK03
5F110HK04
5F110HK21
5F110HK22
5F110HM12
5F110NN02
5F110NN03
5F110NN05
5F110NN22
5F110NN23
5F110NN24
5F110NN27
5F110NN33
5F110NN35
5F110NN36
5F110NN71
5F110QQ05
(57)【要約】
【課題】原子層状材料の下地からの影響を抑制し、かつ歩留まりを高く原子層状材料を形成することができる半導体装置、バイオセンサ、バイオセンサアレイ、および論理回路を提供する。
【解決手段】本発明は、第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の一方の面側に設けられる絶縁部と、前記絶縁部と接続されたソース電極と、前記絶縁部と接続されたドレイン電極と、前記絶縁部上において前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられ、かつ原子層状材料を含む接触部と、を備え、前記接触部は、前記絶縁部と対向する第1面と反対側の第2面において試料と接触可能であり、前記絶縁部は、前記接触部と対向する面側に、前記第1ゲート電極を基準とした凹凸構造を有する。
【選択図】図2-1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ゲート電極と、
前記第1ゲート電極の一方の面側に設けられる絶縁部と、
前記絶縁部と接続されたソース電極と、
前記絶縁部と接続されたドレイン電極と、
前記絶縁部上において前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられ、かつ原子層状材料を含む接触部と、を備え、
前記接触部は、前記絶縁部と対向する第1面と反対側の第2面において試料と接触可能であり、
前記絶縁部は、前記接触部と対向する面側に、前記第1ゲート電極を基準とした凹凸構造を有する、半導体装置。
【請求項2】
前記原子層状材料は、グラフェンを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記絶縁部は、多孔質体である、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記絶縁部、前記接触部における前記第1ゲート電極とは反対側の面を覆う第1絶縁膜をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
基板と、
前記基板と前記第1ゲート電極との間に設けられる第2絶縁膜と、
をさらに備える請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
第2ゲート電極と、
前記第2ゲート電極と前記第2面との間に設けられる第3絶縁膜と、
をさらに備える請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2面側に設けられる液体と、
前記液体に接続される第3ゲート電極と、
をさらに備える請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2面側に受容部をさらに備える請求項1から5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置を備え、
所定物質の濃度に応じた前記接触部の電荷の変化に基づいて、前記所定物質を検出する、バイオセンサ。
【請求項10】
請求項8記載の半導体装置を複数組合せたバイオセンサアレイ。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体装置を複数組み合わせた論理回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、バイオセンサ、バイオセンサアレイ、および論理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
グラフェン(原子層状材料の一例)をチャネル(接触部の一例)に用いたグラフェン電界効果トランジスタ(GFET:Graphene Field Effect Transistor)は、グラフェンの持つ特異な物性から様々な用途への応用が期待されている。特に、シリコン(Si)の100倍以上の超高移動度を持つこと、および2次元形状のためチャネルの体積に対する表面積比が大きいことから、高感度センサへの応用に注目が集まっている。その中でも、グラフェンは、炭素のみから構成され生体分子と相性が良いため、特に生体分子等のバイオセンシングへの応用が非常に期待されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のGFETは、チャネルとなるグラフェンが下地膜(絶縁部の一例)と全面で接触しており、接触面積が大きいので、下地膜のクーロン散乱等の影響を非常に大きく受ける。例えば、グラフェンの下全面が中空構造の場合は、200,000cm/V・sという超高移動度を示すのに対し、センサ等で一般的に使われるシリコン熱酸化膜(SiO)上では5,000cm/V・sほどに抑制されてしまう。
【0004】
これに対して、グラフェンの下全面が中空構造である構造が知られている(非特許文献1参照)。この構成によれば超高移動度を示すことができるが(非特許文献1参照)、中空構造上へのグラフェン膜の形成は、転写工程の際のダメージおよびグラフェンにかかる応力、グラフェン自体の持つ欠陥等によって破れてしまったりする。そのため、中空構造上へのグラフェン膜の形成は、非常に歩留まりが低くなる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、原子層状材料の下地からの影響を抑制し、かつ歩留まりを高く原子層状材料を形成することができる半導体装置、バイオセンサ、バイオセンサアレイ、および論理回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、第1ゲート電極と、前記第1ゲート電極の一方の面側に設けられる絶縁部と、前記絶縁部と接続されたソース電極と、前記絶縁部と接続されたドレイン電極と、前記絶縁部上において前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に設けられ、かつ原子層状材料を含む接触部と、を備え、前記接触部は、前記絶縁部と対向する第1面と反対側の第2面において試料と接触可能であり、前記絶縁部は、前記接触部と対向する面側に、前記第1ゲート電極を基準とした凹凸構造を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、原子層状材料の下地からの影響を抑制し、かつ歩留まりを高く原子層状材料を形成することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1-1】図1-1は、従来のグラフェントランジスタの構成の一例を表す図である。
図1-2】図1-2は、従来のグラフェントランジスタの構成の一例を表す図である。
図2-1】図2-1は、第1の実施の形態にかかる半導体装置を適用したグラフェントランジスタの一例の断面図および鳥瞰図である。
図2-2】図2-2は、第1の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの変形例の断面図および鳥瞰図である。
図2-3】図2-3は、第1の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの変形例の断面図および鳥瞰図である。
図2-4】図2-4は、第1の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの変形例の断面図である。
図2-5】図2-5は、第1の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの変形例の断面図である。
図3-1】図3-1は、第2の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。
図3-2】図3-2は、第2の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの変形例の断面図である。
図3-3】図3-3は、第2の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの変形例の断面図である。
図4-1】図4-1は、第3の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。
図4-2】図4-2は、第3の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。
図4-3】図4-3は、第3の実施の形態にかかるグラフェントランジスタを2つ有するトランジスタアレイの一例の断面図である。
図4-4】図4-4は、第3の実施の形態にかかるグラフェントランジスタを2つ有するトランジスタアレイの他の例の断面図である。
図4-5】図4-5は、第3の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの4×4アレイの一例を示す図である。
図5-1】図5-1は、第4の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。
図5-2】図5-2は、第4の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。
図5-3】図5-3は、第4の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。
図5-4】図5-4は、第4の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。
図5-5】図5-5は、第4の実施の形態にかかるグラフェントランジスタをアレイ化した低電圧CMOSインバータ回路(論理反転回路)の一例の回路図である。
図5-6】図5-6は、第4の実施の形態にかかるグラフェントランジスタをアレイ化した低電圧CMOSインバータ回路の入出力特性の一例を示す図である。
図6-1】図6-1は、第5の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。
図6-2】図6-2は、第5の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。
図6-3】図6-3は、第5の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。
図6-4】図6-4は、第5の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。
図7-1】図7-1は、第6の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。
図7-2】図7-2は、第6の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。
図7-3】図7-3は、第6の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。
図8-1】図8-1は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。
図8-2】図8-2は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。
図8-3】図8-3は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。
図8-4】図8-4は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。
図8-5】図8-5は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタを用いた溶液センサアレイの断面図である。
図8-6】図8-6は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタを用いた溶液センサアレイの断面図である。
図8-7】図8-7は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタを用いた溶液センサアレイの断面図である。
図8-8】図8-8は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタを用いた溶液センサアレイの断面図である。
図8-9】図8-9は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタを用いたセンサの4×4アレイの一例を示す図である。
図8-10】図8-10は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタを用いたセンサによるホルモンのセンシング結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、半導体装置、バイオセンサ、バイオセンサアレイ、および論理回路の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1-1および図1-2は、従来のグラフェントランジスタの構成の一例を表す図である。従来のグラフェントランジスタは、基板1、絶縁膜2、チャネル3、ソース電極4、およびドレイン電極5を備えている。基板1は、導電性を有するもの、例えば、高濃度にドーピングされたシリコン基板であっても良い。
【0011】
ソース電極4およびドレイン電極5は、電圧Vdsを印加した状態で、基板1に電圧Vgsが印加されることで、チャネル3にキャリアを誘起させて、ソースドレイン間電流Idsが流れる。グラフェントランジスタは、電圧Vgsの値によって、ソースドレイン間電流Idsを変調することができ、これにより、トランジスタ(バックゲート型トランジスタ)として動作する。
【0012】
トランジスタの性能指標として、電界効果移動度μFEが用いられ、μFEは、下記の式(1)で表される。
【数1】
ここで、Lはチャネル長を表し、Wはチャネル幅を表し、Vdsはソースドレイン間電圧を表し、gは下記の式(2)で表される相互コンダクタンスを表し、COXは下記の式(3)で表されるゲート容量を表す。
【0013】
【数2】
【数3】
ここで、εは真空中の誘電率(8.85×10‐14F/cm)を表し、εはゲート絶縁膜の比誘電率を表し、dはゲート絶縁膜の膜厚を表す。
【0014】
チャネルとなるグラフェン自体は、室温で200,000cm/Vsを超えるキャリア移動度μを持つことが実験的に示されている。しかし、実際に電界効果トランジスタとして利用する場合の上記の式(1)から算出する電界効果移動度μFEは、グラフェンの下地膜のフォノン散乱およびクーロン散乱の影響等により数万cm/Vs程度に制限されてしまう。
【0015】
実際に、グラフェンが室温で200,000cm/Vsを超えるキャリア移動度μを持つことを示した非特許文献1では、図1-2のように絶縁膜2とソースドレイン電極間のチャネル3の間を全て空洞にすることで、下地膜のチャネル3への影響を最小化している。
【0016】
しかし、図1-2に示す構造を作製するプロセスは非常に難易度が高く、非特許文献2では、工業利用のために大面積でグラフェンを作製できるCVD(Chemical Vapor Deposition)法で作製した単層グラフェンを空洞(キャビティ)構造の上に転写した際の歩留まりが2.7%と非常に低いことが示されている。低歩留まりの原因として、下地が空洞のためグラフェン膜に応力がかかり破れてしまうことが考えられる。
【0017】
図2-1は、第1の実施の形態にかかる半導体装置を適用したグラフェントランジスタの一例の断面図および鳥瞰図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタ(半導体装置の一例)は、多孔質体の絶縁膜上に形成されるグラフェントランジスタである。具体的には、グラフェントランジスタは、基板1(第1ゲート電極の一例)、多孔質体の絶縁膜2(絶縁部の一例)、チャネル3、絶縁膜2と接続されるソース電極4、および絶縁膜2に接続されるドレイン電極5を備えている。
【0018】
ここで、チャネル3は、絶縁膜2上においてソース電極4とドレイン電極5との間に設けられ、試料と接触可能なグラフェン(原子層状材料の一例)を含む接触部の一例である。また、チャネル3は、絶縁膜2と対向する面(第1面の一例)と反対側の面(第2面の一例)において試料と接触可能である。試料は、基板1にも接触可能である。
【0019】
また、ここで、絶縁膜2は、例えば、チャネル3と対向する面側に、基板1を基準とした孔としての複数の凹凸構造を有する絶縁部の一例である。例えば、絶縁膜2は、チャネル3と対向する面側に孔としての複数の凹凸構造を有する絶縁膜、すなわち多孔質体の絶縁膜であっても良い。すなわち、絶縁膜2は、チャネル3と対向する面側に、基板1を基準として、第1距離の位置に設けられる第1面と、当該第1距離とは異なる第2距離の位置に設けられる第2面と、を有する。これにより、絶縁膜2と、チャネル3とは、絶縁膜2の凸部でのみ接触しており、絶縁膜2の凹部では接触していない。その結果、多孔質体の絶縁膜2上に原子層状材料を含むチャネル3を形成することで、原子層状材料の下地(絶縁膜2)からの影響を抑制し、かつ歩留まりを高く原子層状材料を形成することができる。
【0020】
図2-2~2-5は、第1の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの変形例の断面図および鳥瞰図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図2-2に示すように、絶縁膜2のチャネル3と対向する面の全面に孔(すなわち、凹凸構造)が形成されていても良い。また、本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図2-3に示すように、チャネル3となるグラフェンがソース電極4およびドレイン電極5の外側まで延長されていても良い。また、本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図2-4に示すように、絶縁膜2が有する孔が基板1まで貫通していても良い。また、絶縁膜2が有する孔は曲率をもって延びる孔であっても良く、複数の孔同士が連通する連通孔であっても良い。
【0021】
図2-2に示すグラフェントランジスタは、絶縁膜2におけるチャネル3と対向する面の全面が多孔質体になっており、絶縁膜2におけるチャネル3と対向する面において多孔質体とする領域を限定するプロセスが必要ないという利点がある。また、チャネル3が含むグラフェンは、ソース電極4とドレイン電極5間で電気的導通が取れれば良いので、チャネル3は、少なくとも、ソース電極4およびドレイン電極5に接触していれば良い。つまり、図2-3に示すように、チャネル3が、ソース電極4およびドレイン電極5以外の電極と接していなければ、ソース電極4およびドレイン電極5の外側まで伸びていても良い。また、図2-4に示すグラフェントランジスタは、グラフェンを含むチャネル3の下に完全に絶縁膜2が存在しない箇所が存在するため、絶縁膜2のクーロン散乱の影響を大きく抑えられる。
【0022】
多孔質体の絶縁膜2(孔としての複数の凹凸構造を有する絶縁膜2)と、チャネル3とは、絶縁膜2の凸部でのみ接触しており、絶縁膜2の凹部では接触していないという構造を有する。しかし、この構造を形成するために、チャネル3が含むグラフェンの形成手法は、一般的なウェット転写での形成であると、水等の溶液が多孔質体内に残留してしまう懸念、グラフェンが多孔質体に追従してしまう(凹部でも絶縁膜2とグラフェンが接触してしまう)懸念がある。そのため、R2R(Roll to Roll)、PDMS等の樹脂を介したスタンプ等のドライ転写によって、チャネル3が含むグラフェンを形成することが好ましい。
【0023】
ここで、絶縁膜2が有する多孔質体の孔径は、多孔質体の生成法にもよるが、数nm~100nm程度であり、チャネル3の長さより小さい。また、チャネル3が有する多孔質体の孔の深さは、孔径程度であっても良いし、貫通していても良い。ここでいう貫通は、図2-4のように、絶縁膜2のチャネル3側の面から基板1に対して垂直方向に貫通していても良いし、図2-5に示すように、絶縁膜2のチャネル3側の面から基板1に対して垂直方向とは異なる方向で貫通していても良い。絶縁膜2にこのような構造を形成することで、図1-1に示す従来のグラフェントランジスタと比較して、チャネル3と下地膜(絶縁膜2)との接触面積が小さくなるため、下地膜のグラフェンへの影響を抑制できる。また、図1-2に示す従来のグラフェントランジスタよりグラフェンへかかる応力が小さくなるため、グラフェントランジスタの歩留まり向上が期待できる。
【0024】
本実施の形態では、基板1は、シリコン(Si)基板であるが、これに限定するものではなく、導体であれば良い。また、凹凸面部(凹凸構造)を有する絶縁膜2は、酸化シリコン(SiO)膜とする。凹凸面部の形成方法は、例えば、非特許文献3に示すように、原子層1層単位での制御が可能なALD(Atomic Layer Deposition)法でAl膜とSiO膜を交互に積層形成した後、Al膜のみが溶解するリン酸系溶液でエッチングすることにより形成可能である。絶縁膜2の膜厚は、積層するAl膜とSiO膜の総サイクル数で決まるが、各積層膜が十分厚いと溶液エッチング後に凹凸構造が形成されない為、各積層膜は10サイクル以下が望ましい。また、絶縁膜2の総膜厚が薄いと、凹凸構造が十分に形成されない為、凹凸構造の厚みが100nm以上にすることが望ましい。この方法で絶縁膜2に凹凸構造を作成することにより、孔径が数nm~数十nmの凹凸構造を均一に形成することが可能である。
【0025】
また、絶縁膜2が有する凹凸構造の孔径は、Al膜とSiO膜の積層膜の割合(膜厚)により変えることができるため、各積層膜の比率は、1~10サイクルの中で最適化することが望ましい。例えば、Al膜とSiO膜の比率は、1サイクル:1サイクルであっても良いし、2サイクル:5サイクルであっても良い。
【0026】
また、ここで、絶縁膜2がSiOの例を示したが、積層させる膜、エッチャントを適切に選択することで、酸化アルミニウム(AlO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化チタン(TiO)、酸化タンタル(TaO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化イットリウム(YO)等、ALD法で形成可能な酸化膜であれば形成可能である。また、トランジスタの絶縁部として絶縁膜2を形成する場合、絶縁膜2は、高誘電率を持つ酸化アルミニウム(AlO)、酸化ハフニウム(HfO)等が好ましい。凹凸構造を有する絶縁膜2の形成方法としては、ALD法以外にも、陽極酸化法等で凹凸構造を形成しても良い。
【0027】
チャネル3は、グラフェンであっても良いが、グラフェン以外にも、グラフェンと同様の原子層状材料であっても良い。例えば、二硫化モリブデン(MoS)、二セレン化タングステン(WSe)等に代表される遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC:Transition Metal DiChalcogenide)、黒リン、シリセン、ゲルマネンは、原子層状のため下地膜からの影響が大きいと予想されるため、グラフェンと同様の効果が期待できる。
【0028】
ソース電極4およびドレイン電極5は、例えば、Au、Cr/Au、Ti/Au、Ni/Au、Pd/Au、Cr/Ni/Au、Ti/Ni/AuやCr/Pd/Au、Ti/Pd/Auとする。CrおよびTiは、基板1との密着層として機能する。また、NiおよびPdは、例えば、チャネル3がグラフェンだった場合、接触抵抗の低減層として機能する。
【0029】
このように、第1の実施の形態にかかるグラフェントランジスタによれば、多孔質体の絶縁膜2と、チャネル3とは、絶縁膜2の凸部でのみ接触しており、絶縁膜2の凹部では接触していない。その結果、多孔質体の絶縁膜2上に原子層状材料を含むチャネル3を形成することで、原子層状材料の下地(絶縁膜2)からの影響を抑制し、かつ歩留まりを高く原子層状材料を形成することができる。
【0030】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、グラフェントランジスタが、チャネルにおける、基板とは反対側の面を覆う絶縁膜を備える例である。以下の説明では、第1の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0031】
図3-1は、第2の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図3-1に示すように、多孔質体の絶縁膜2、チャネル3、ソース電極4、およびドレイン電極5における、基板1とは反対側の面が絶縁膜6(第1絶縁膜の一例)で覆われている。
【0032】
絶縁膜6は、パッシベーション膜として機能する。例えば、絶縁膜6は、ALD(Atomic Layer Deposition)法で形成した酸化アルミニウム(Al)、酸化シリコン(SiO)、防湿性に優れる有機膜であるパリレン膜、CVD(Chemical Vapor Deposition)法で形成した窒化シリコン(SiN)、塗布型絶縁膜、またはそれらの積層膜等が適用可能である。図3-1に示すように、絶縁膜6でチャネル3が覆われているため、測定環境による意図しないドーピング、例えば、大気中の水分および酸素の影響を抑制することが可能である。
【0033】
図3-2は、第2の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの変形例の断面図である。図3-2に示すように、チャネル3は、ソース電極4およびドレイン電極5の上に配置されていても良い。ソース電極4およびドレイン電極5間で電気的導通が取れれば良いので、少なくとも、チャネル3は、ソース電極4およびドレイン電極5に接触していれば良い。つまり、チャネル3は、ソース電極4およびドレイン電極5を全て覆っていても良いし、または、他の電極と接していなければ、ソース電極4およびドレイン電極5の外側まで伸びていても良い。
【0034】
ただし、図3-2に示すグラフェントランジスタは、ソース電極4およびドレイン電極5の上にチャネル3が配置されるため、ソース電極4およびドレイン電極5の段差によってチャネル3に応力がかかってしまう可能性がある。そのため、ソース電極4およびドレイン電極5の形状は、図3-2に示すように、テーパー形状(例えば、順テーパー形状)が望ましい。
【0035】
また、図3-2に示すグラフェントランジスタでは、その作製プロセス上、ソース電極4およびドレイン電極5を形成した後に、チャネル3のグラフェンを形成する。そのため、ソース電極4およびドレイン電極5の形成プロセス中のチャネル3へのダメージおよび意図しないドーピング等を抑制することができる。具体的には、チャネル3とフォトレジストとの接触による化学ドーピングおよびリフトオフ等で用いる剥離液によってチャネル3が、多孔質体の絶縁膜2から剥がれてしまうなどの問題を避けることができる。
【0036】
図3-3は、第2の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの変形例の断面図である。図3-3に示すように、ソース電極4およびドレイン電極5が、多孔質体の絶縁膜2に埋め込まれていても良い。ソース電極4およびドレイン電極5間で電気的導通が取れれば良いので、少なくとも、チャネル3は、ソース電極4およびドレイン電極5に接触していれば良い。つまり、チャネル3は、ソース電極4およびドレイン電極5を全て覆っていても良い。また、チャネル3は、他の電極と接していなければ、ソース電極4およびドレイン電極5の外側まで伸びていても良い。
【0037】
図3-3に示すグラフェントランジスタでは、チャネル3を平坦に形成可能であり、かつ、その作製プロセス上、ソース電極4およびドレイン電極5を形成後にチャネル3のグラフェンを形成する。そのため、チャネル3への応力、ソース電極4およびドレイン電極5の形成プロセス中のチャネル3へのダメージおよび意図しないドーピング等を抑制することができる。具体的には、チャネル3とフォトレジストとの接触による化学ドーピングおよびリフトオフ等で用いる剥離液によってチャネル3が多孔質体の絶縁膜2から剥がれてしまうなどの問題を避けることができる。
【0038】
なお、図3-1~3-3に示す絶縁膜2は、図2-1~2-5に示すグラフェントランジスタと同様に、ソース電極4およびドレイン電極5間のチャネル3の領域の下が多孔質体となっていれば、基板1全面に凹凸構造が形成されていても良く、または、凹凸構造の孔が基板1に貫通していても構わない。
【0039】
このように、第2の実施の形態にかかるグラフェントランジスタによれば、絶縁膜6の導入、ソース電極4とドレイン電極5とチャネル3の配置の工夫によって測定環境による意図しないドーピング、例えば、大気中の水分および酸素の影響、チャネル3にかかる応力、ソース電極4およびドレイン電極5の形成プロセス中のチャネル3へのダメージ等を抑制することが可能である。
【0040】
(第3の実施の形態)
本実施の形態は、グラフェントランジスタが、基板と、ゲート電極と、の間に絶縁膜を有する例である。以下の説明では、上述の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0041】
図4-1は、第3の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、基板1(基板の一例)、ゲート電極7(第1ゲート電極の一例)、基板1とゲート電極7との間に設けられる絶縁膜8(第2絶縁膜の一例)、絶縁膜2、チャネル3、ソース電極4、およびドレイン電極5を備える絶縁膜上グラフェントランジスタである。絶縁膜2とチャネル3は、絶縁膜2の凸部でのみ接触しており、絶縁膜2の凹部では接触していない。
【0042】
基板1と絶縁膜8は、絶縁性を有する基板として一体化しても良く、例えば、ポリイミド、PEN、PET等の可撓性を有する基板であっても良い。可撓性を有する基板1上にグラフェントランジスタを形成すると、曲面上にグラフェントランジスタを応用したセンサ等を形成でき、例えば、人体に貼る形態のセンサ等を実現可能であり、バイタルデータのセンシングにとって非常に有用である。また、可撓性を有する基板1上にグラフェントランジスタを形成することにより、センサと体を密着させることが可能となり、心拍および筋電位をリアルタイムに正確に検出でき、体臭、または汗,涙等の体液のセンシングをリアルタイムにできる等の可能性があり、それらのデータから健康状態および気分等を知ることもできる可能性がある。
【0043】
また、図4-1に示すグラフェントランジスタによれば、ゲート電極7が基板1の表面に配置されるため、グラフェントランジスタの集積化および実装が容易になる。また、グラフェントランジスタをアレイ化する場合に、個々の素子(グラフェントランジスタ)に個々のゲート電圧を印加可能であり、素子毎に基準電圧(ディラック電圧)の制御が可能である等の利点がある。
【0044】
図4-2は、第3の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図4-2に示すように、チャネル3、ソース電極4、ドレイン電極5、および絶縁膜8が、絶縁膜6で覆われていても良い。これにより、図4-1に示すグラフェントランジスタと同等の機能を有し、かつ絶縁膜6でチャネル3が覆われているため、測定環境による意図しないドーピング、例えば、大気中の水分および酸素の影響を抑制することが可能である。
【0045】
図4-3は、第3の実施の形態にかかるグラフェントランジスタを2つ有するトランジスタアレイの一例の断面図である。図4-4は、第3の実施の形態にかかるグラフェントランジスタを2つ有するトランジスタアレイの他の例の断面図である。図4-3,4-4に示すグラフェントランジスタアレイによれば、ゲート電極7およびゲート電極7′のそれぞれに異なるゲート電圧を印加することが可能であり、個々のチャネル3およびチャネル3’に個別で任意のキャリアを誘起させることができ、個々のグラフェントランジスタの基準電圧(ディラック電圧)の制御が可能である。また、個々のグラフェントランジスタの基準電圧(ディラック電圧)を個々に制御可能なため、グラフェントランジスタアレイのセンサ間の特性ばらつきを抑制および制御し、精度よく各種情報を測定することができる。
【0046】
図4-5は、第3の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの4×4アレイの一例を示す図である。本実施の形態では、4×4アレイ(論理回路の一例)は、図4-5に示すように、グラフェントランジスタS11~S44が配置されたトランジスタアレイである。グラフェントランジスタS11~S44のそれぞれは、例えば、図4-2に示すグラフェントランジスタアレイと同様の構造を備える。
【0047】
ソース電極4は、全センサ(グラフェントランジスタ)で共通であり、各グラフェントランジスタに個々のゲート電圧、ドレイン電圧を印加可能な構成である。例えば、トランジスタS11のゲート電圧はゲート電圧G11であり、ドレイン電圧はドレイン電圧D11から印加する。なお、図4-1~4-5に示すグラフェントランジスタの絶縁膜2は、図2-1と同様に、ソース電極4とドレイン電極5間のチャネル3の領域の下が多孔質体となっていれば、基板1の全面であっても良く、また、凹凸構造の孔がゲート電極7に貫通していても構わない。
【0048】
このように、第3の実施の形態にかかるグラフェントランジスタによれば、ゲート電極7が基板1の表面に配置されるため、グラフェントランジスタの集積化および実装が容易になる。また、グラフェントランジスタをアレイ化する場合に、個々の素子(グラフェントランジスタ)に個々のゲート電圧を印加可能であり、素子毎に基準電圧(ディラック電圧)の制御が可能である。
【0049】
(第4の実施の形態)
本実施の形態は、グラフェントランジスが、トップゲート電極と、チャネルにおける絶縁膜とは反対側の面と、の間に設けられる絶縁膜を備える例である。以下の説明では、上述の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0050】
図5-1は、第4の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。具体的には、グラフェントランジスタは、図5-1に示すように、基板1、多孔質体の絶縁膜2、チャネル3、ソース電極4、ドレイン電極5、ゲート絶縁膜14、およびトップゲート電極15(第2ゲート電極の一例)を備える絶縁膜上トップゲート型グラフェントランジスタである。多孔質体の絶縁膜2と、チャネル3とは、絶縁膜2の凸部でのみ接触しており、絶縁膜2の凹部では接触していない。
【0051】
ゲート絶縁膜14(第3絶縁膜の一例)は、トップゲート電極15と、チャネル3における絶縁膜2と反対側の面と、の間に設けられる絶縁膜である。ゲート絶縁膜14には、ALD法またはCVD法で形成した酸化シリコン(SiO)または酸化アルミニウム(Al)、酸化ハフニウム(HfO)、またはそれらの積層膜等が適用可能である。ゲート絶縁膜14は、グラフェントランジスタの特性の向上のために、その膜厚は薄く、高誘電率の材料が好ましい。
【0052】
本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図5-1に示すように、トップゲート電極15が基板1の表面に配置されるため、集積化および実装が容易になる。また、基板1が、高濃度にドーピングしたシリコン基板の場合、トップゲート電極15と基板1のデュアルゲートトランジスタとして利用できる等などの利点がある。
【0053】
図5-2は、第4の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図5-2に示すように、チャネル3が全てゲート絶縁膜14に覆われていても良い。ただし、図5-2に示すグラフェントランジスタでは、ソース電極4およびドレイン電極5とトップゲート電極15の電気的短絡(ショート)を防ぐため、ゲート絶縁膜14の膜厚が、ソース電極4およびドレイン電極5の膜厚より厚くなければならない。この場合、ゲート絶縁膜14でチャネル3が全て覆われているため、測定環境による意図しないドーピング、例えば、大気中の水分および酸素の影響を抑制することが可能である。
【0054】
さらに、アクセス領域と呼ばれるソース電極4およびドレイン電極5と、ゲート絶縁膜14との間に水平方向の距離がないため、チャネル3の領域全体にゲート電圧が印加され、グラフェントランジスタの特性の向上に寄与できる。また、図5-2に示すグラフェントランジスタにおいても、図5-1に示すグラフェントランジスタと同様に、基板1が、例えば、高濃度にドーピングしたシリコン基板の場合、トップゲート電極15と基板1のデュアルゲートトランジスタとして利用できるなどの利点がある。
【0055】
図5-3は、第4の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図5-3に示すように、基板1、絶縁膜8、ゲート電極7、多孔質体の絶縁膜2、チャネル3、ソース電極4、ドレイン電極5、ゲート絶縁膜14、およびトップゲート電極15を備えるデュアルゲート型グラフェントランジスタであっても良い。多孔質体の絶縁膜2と、チャネル3とは、絶縁膜2の凸部でのみ接触しており、絶縁膜2の凹部では接触していない。
【0056】
図5-3に示すグラフェントランジスタは、図5-1,5-2に示すグラフェンゲートトランジスタと比較して、ボトムゲート電極(図5-1,5-2に示すグラフェントランジスタでは基板1、図5-3に示すグラフェントランジスタではゲート電極7で)が基板1の表面に配置されるため、グラフェントランジスタの集積化および実装が容易になる。また、グラフェントランジスタをアレイ化する場合に、個々の素子に個々のゲート電圧を印加できるなどの利点がある。
【0057】
図5-4は、第4の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図5-4に示すように、チャネル3が全てゲート絶縁膜14に覆われていても良く、図5-3に示すグラフェントランジスタと同等の機能を有する。図5-4に示すグラフェントランジスタは、ゲート絶縁膜14でチャネル3が全て覆われているため、測定環境による意図しないドーピング、例えば、大気中の水分および酸素の影響を抑制することが可能である。さらに、ソース電極4およびドレイン電極5と、ゲート絶縁膜14と、の間の水平方向の距離であるアクセス領域がないため、チャネル3の領域全体にゲート電圧が印加されるので、グラフェントランジスタの特性の向上に寄与できる。
【0058】
図5-5は、第4の実施の形態にかかるグラフェントランジスタをアレイ化した低電圧CMOSインバータ回路(論理反転回路)の一例の回路図である。図5-6は、第4の実施の形態にかかるグラフェントランジスタをアレイ化した低電圧CMOSインバータ回路の入出力特性の一例を示す図である。図5-6において、縦軸は、出力信号線Voutに印加される電圧を表し、横軸は、入力信号線Vinに印加される電圧を表す。
【0059】
図5-1~5-4に示すグラフェントランジスタの構造は、アレイ化することで様々な電気回路を構成できる。図5-5(a)に示す低電圧CMOSインバータ回路において、VddとVssは、電源線の電位であり、例えば、VddはVssに対して、0.5~1.0V程度の電位差を有する。また、Vinが入力信号線であり、Voutが出力信号線である。Vdd側のグラフェントランジスタが、pMOSFET(p‐channel Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor) Mpであり、Vss側のグラフェントランジスタが、nMOSFET(n‐channel Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor) Mnである。
【0060】
入力信号線VinがVssと同じ電位を持つとき、pMOSFET Mpがオンになり、nMOSFET Mnオフになる。このとき、出力信号線Voutの電位は、Vddとほぼ等しくなる。また、入力信号線VinがVddと同じ電位を持つとき、pMOSFET Mpがオフになり、nMOSFET Mnがオンになる。このため、出力信号線Voutの電位は、Vssとほぼ等しくなる。このように、入力信号線Vinと反対の電位が出力信号線Voutに現れることになる。
【0061】
図5-5(b)に示すように、電源線のVddは450mVである。この例では、入力信号線Vinの電位が0.15Vを超えた場合に、出力信号線Voutの電位がVddの0.45Vから0Vに変化する。すなわち、“0”と“1”の論理を判定する入力電位(論理反転閾値の入力電位)が0.15Vとなっている。そして、低電圧CMOSインバータ回路の入出力特性(図5-6参照)に示すように、それぞれpMOSFETの論理反転閾値電位、nMOSFETの論理反転閾値電位である。
【0062】
ここで、低電圧CMOSインバータ回路の例を示したが、グラフェンの超高移動度を活かした高周波回路、例えば、LNA(Low Noise Amplifier)等、他の回路にも適用可能である。
【0063】
図5-1~5-4に示すグラフェントランジスタの絶縁膜2は、図2-1と同様に、ソース電極4とドレイン電極5間のチャネル3の領域の下が多孔質体となっていれば、基板1の全面が多孔質体となっていても良く、また、絶縁膜2が有する孔が基板1またはゲート電極7に貫通していても構わない。また、図5-3および図5-4に示すグラフェントランジスタにおいて、基板1と絶縁膜8は、絶縁性を有する基板として一体化しても良く、例えば、ポリイミド、PEN、PET等の可撓性を有する基板でも良い。可撓性を有する基板1上にグラフェントランジスタを形成することにより、曲面上にグラフェントランジスタを応用したセンサ等を形成でき、例えば、人体に貼る形態のセンサ等を実現可能であり、バイタルデータのセンシングにとって非常に有用である。センサと体を密着させることが可能となり、心拍および筋電位をリアルタイムに正確に取れ、体臭、または汗,涙等の体液のセンシングをリアルタイムにできる等の可能性があり、それらのデータから健康状態や気分等を知ることもできる可能性がある。
【0064】
このように、第4の実施の形態にかかるグラフェントランジスタによれば、トップゲート電極15が基板1の表面に配置されるため、集積化および実装が容易になる。また、基板1が、高濃度にドーピングしたシリコン基板の場合、トップゲート電極15と基板1のデュアルゲートトランジスタとして利用できる等などの利点がある。
【0065】
(第5の実施の形態)
本実施の形態は、グラフェントランジスタが、チャネルにおける絶縁膜とは反対側の面側に設けられる液体と、当該液体内に設けられるゲート電極と、を備える例である。以下の説明では、上述の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0066】
図6-1は、第5の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。多孔質体の絶縁膜上溶液ゲート型グラフェントランジスタを表す図で、本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図6-1に示すように、基板1、多孔質体の絶縁膜2、チャネル3、ソース電極4、ドレイン電極5、絶縁膜6、ゲート電極9、および液体10を備える絶縁膜上溶液ゲート型グラフェントランジスタである。絶縁膜2とチャネル3は、絶縁膜2の凸部でのみ接触しており、絶縁膜2の凹部では接触していない。液体10は、チャネル3における絶縁膜2と反対の面側に設けられる液体の一例である。ゲート電極9(第3ゲート電極の一例)は、液体10に接続される。
【0067】
本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、ゲート電極9に電圧が印加されることにより、液体10内のゲート電極9近傍とチャネル3近傍に電気二重層を形成し、チャネル3にキャリアを誘起する。電気二重層の厚さは、数nm程度であるため、低電圧で高電界をチャネル3に印加することができる。
【0068】
ゲート電極9は、液体10内での電極電位の安定性および再現性に優れる銀―塩化銀電極(Ag/AgCl)、カロメル電極、パラジウム・水素電極(Pd/H2)等が好ましい。液体10は、電気二重層を形成できる液体であれば何でも良いが、トランジスタの特性安定性を確保できるよう、pHを一定に保つことのできるリン酸緩衝食塩水(PBS:Phosphate-Buffered Saline)等が好ましい。
【0069】
本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、基板1が、例えば、高濃度にドーピングしたシリコン基板である場合、ゲート電極9と基板1のデュアルゲートトランジスタとしても利用できる。
【0070】
図6-2は、第5の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図6-2に示すように、基板1、絶縁膜8、ゲート電極7、絶縁膜2、チャネル3、ソース電極4、ドレイン電極5、ゲート電極9、および液体10を備えている。絶縁膜2とチャネル3は、絶縁膜2の凸部でのみ接触しており、絶縁膜2の凹部では接触していない。
【0071】
図6-2に示すグラフェントランジスタは、図6-1に示すデュアルゲートトランジスタとして利用する場合と比べて、ボトムゲート(図6-1に示すグラフェントランジスタの基板1、図6-2に示すグラフェントランジスタのゲート電極7)が基板1の表面に配置されるため、グラフェントランジスタの集積化および実装が容易になる。また、グラフェントランジスタをアレイ化する場合に個々の素子に個々のゲート電圧を印加できるなどの利点がある。
【0072】
図6-3および図6-4は、第5の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。図6-1および図6-2に示すグラフェントランジスタでは、ゲート電極9は、棒状の電極であるが、液体10を介してチャネル3と接続していれば良く、図6-3および図6-4に示すように、絶縁膜2上または絶縁膜8上にゲート電極9が形成されていても良い。
【0073】
図6-1~6-4に示す絶縁膜2は、図2と同様に、ソース電極4とドレイン電極5間のチャネル3の領域が多孔質体となっていれば、基板1の全面が多孔質体であっても良く、また、孔が基板1またはゲート電極7に貫通していても良い。
【0074】
図6-2および図6-4に示すグラフェントランジスタにおいて、基板1と絶縁膜8は、絶縁性を有する基板として一体化しても良く、例えば、ポリイミド、PEN、PET等の可撓性を有する基板でも良い。可撓性を有する基板上にグラフェントランジスタを形成すると、曲面上にグラフェントランジスタを応用したセンサ等を形成でき、例えば、人体に貼る形態のセンサ等を実現可能であり、バイタルデータのセンシングにとって非常に有用である。また、センサと体を密着させることが可能となり、心拍および筋電位をリアルタイムに正確に取れ、体臭、または汗,涙等の体液のセンシングをリアルタイムにできる等の可能性があり、それらのデータから健康状態や気分等を知ることもできる可能性がある。
【0075】
このように、第5の実施の形態にかかるグラフェントランジスタによれば、低電圧で高電界を印加可能な電気二重層溶液ゲートトランジスタとして利用できる。
【0076】
(第6の実施の形態)
本実施の形態は、グラフェントランジスタが、チャネルにおける絶縁膜とは反対の面側に受容層を備える例である。以下の説明では、上述の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0077】
図7-1は、第6の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図7-1に示すように、図2-1に示すグラフェントランジスタのチャネル3上に受容層11(受容部の一例)を備え、ガスセンサとして機能可能な絶縁膜上グラフェントランジスタである。受容層11は、標的物質12のみを補足し、標的物質12以外の物質13には反応しない。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、受容層11が標的物質12を補足した際にソース電極4とドレイン電極5との間に流れる電流Idsが変化することで、標的物質12の有無および濃度を電気的にセンシングが可能である。
【0078】
受容層11は、標的物質12に応じて適宜選択する。例えば、標的物質12が水素(H)の場合、受容層11は、パラジウム(Pd)膜等であっても良い。また、標的物質12が酸素(O)の場合、受容層11は、酸化チタン(TiO)膜であっても良い。また、標的物質12が二酸化窒素(NO)の場合、受容層11は、酸化亜鉛(ZnO)膜、酸化スズ(SnO)膜等であっても良い。また、標的物質12がアンモニア(NH3)の場合、受容層11は、臭化第一銅(CuBr)膜等であっても良い。
【0079】
図7-2は、第6の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図7-2に示すように、ソース電極4およびドレイン電極5が絶縁膜6に覆われているという点で、図7-1に示すグラフェントランジスタと異なるが、図7-1に示すグラフェントランジスタと同等の機能を有する。図7-2に示すグラフェントランジスタは、ソース電極4とドレイン電極5間が受容層11で接続されないため、センシングの際にノイズとなる受容層11自体に流れる電流の影響をなくすことができる。
【0080】
図7-3は、第6の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図7-3に示すように、基板1、絶縁膜8、ゲート電極7、絶縁膜2、チャネル3、ソース電極4、ドレイン電極5、絶縁膜6、および受容層11を備えている。絶縁膜2とチャネル3は、絶縁膜2の凸部でのみ接触しており、絶縁膜2の凹部では接触していない。
【0081】
図7-3に示すグラフェントランジスタによれば、ゲート電極7が基板1の表面に配置されるため、グラフェントランジスタの集積化および実装が容易になり、グラフェントランジスタをアレイ化する場合に個々の素子に個々のゲート電圧を印加できるなどの利点がある。例えば、図7-3に示すグラフェントランジスタによれば、センサアレイを形成でき、各センサ(グラフェントランジスタ)に、受容層11が形成される。受容層11は、センサ毎に異なっていても良い。これにより、センサの種類だけ、検出する標的物質12を設定できる。
【0082】
図7-1~7-3に示すグラフェントランジスタの絶縁膜2は、図2-1に示すグラフェントランジスタと同様に、ソース電極4とドレイン電極5間のチャネル3の領域の下が多孔質体となっていれば、基板1の全面が多孔質体であっても良く、また、多孔質体の孔が基板1またはゲート電極7に貫通していても構わない。
【0083】
図7-3に示すグラフェントランジスタおいて、基板1と絶縁膜8は、絶縁性を有する基板として一体化しても良く、例えば、ポリイミド、PEN、PET等の可撓性を有する基板でも良い。可撓性を有する基板上にグラフェントランジスタを形成することにより、曲面上にグラフェントランジスタを応用したセンサ等を形成でき、例えば、人体に貼る形態のセンサ等を実現可能であり、バイタルデータのセンシングにとって非常に有用である。センサと体を密着させることが可能となり、心拍および筋電位をリアルタイムに正確に取れる、体臭、または汗,涙等の体液のセンシングをリアルタイムにできる等の可能性があり、それらのデータから健康状態や気分等を知ることもできる可能性がある。
【0084】
このように、第6の実施の形態にかかるグラフェントランジスタによれば、受容層11が標的物質12を補足した際にソース電極4とドレイン電極5との間に流れる電流Idsが変化することで、標的物質12の有無および濃度を電気的にセンシングが可能である。
【0085】
(第7の実施の形態)
本実施の形態は、グラフェントランジスタが、受容層におけるチャネルとは反対の面側に液体を備える例である。以下の説明では、上述の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0086】
図8-1は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの一例の断面図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図8-1に示すように、図6-1に示す絶縁膜上溶液ゲート型グラフェントランジスタのチャネル3上に受容層11を備え、溶液センサとして機能する絶縁膜上グラフェントランジスタである。また、本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図8-1に示すように、受容層11におけるチャネル3とは反対の面側に液体10を有する。受容層11は、センシング標的物質12以外の物質13には反応しない。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、受容層11が標的物質12を補足した際にソース電極4とドレイン電極5間に流れる電流Idsが変化することで、標的物質12の有無および濃度を電気的にセンシングが可能である。すなわち、本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、標的物質(所定物質の一例)の有無および濃度に応じたチャネル3の電荷の変化に基づいて標的物質を検出するバイオセンサに適用可能である。
【0087】
受容層11は、標的物質12に応じて適宜選択する。例えば、標的物質12が分子の場合、受容層11は、それに対応した分子鋳型が好ましい。また、標的物質12がイオンの場合、受容層11は、それに対応したイオノフォアが好ましい。また、標的物質12がホルモンなどの抗原の場合、受容層11は、それに対応した抗体が好ましい。また、標的物質12が核酸分子の場合、受容層11は、それに対応した核酸(DNA、RNA)アプタマーが好ましい。また、標的物質12がアミノ酸およびタンパク質等である場合、受容層11は、それに対応したペプチドおよびアプタマー等が好ましい。
【0088】
図8-1に示すグラフェントランジスタは、基板1が、例えば、高濃度にドーピングしたシリコン基板である場合、ゲート電極9と基板1のデュアルゲートトランジスタとしても利用できる。
【0089】
図8-2は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。本実施の形態にかかるグラフェントランジスタは、図8-2に示すように、基板1、絶縁膜8、ゲート電極7、絶縁膜2、チャネル3、ソース電極4、ドレイン電極5、絶縁膜6、および受容層11を備えている。絶縁膜2とチャネル3は、絶縁膜2の凸部でのみ接触しており、絶縁膜2の凹部では接触していない。
【0090】
図8-2に示すグラフェントランジスタは、図8-1に示すグラフェントランジスタをデュアルゲートトランジスタとして利用する場合と比べて、ボトムゲート(図8-1に示すグラフェントランジスタでは基板1、図8-2に示すグラフェントランジスタではゲート電極7)を基板1の表面に配置できるので、グラフェントランジスタの集積化および実装が容易になる。また、グラフェントランジスタをアレイ化する場合に、個々の素子に個々のゲート電圧を印加できるなどの利点がある。
【0091】
図8-3および図8-4は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタの他の例の断面図である。図8-1および図8-2に示すグラフェントランジスタでは、ゲート電極9が棒状の例を示したが、液体10を介してチャネル3と接続していれば、ゲート電極9は、図8-3および図8-4に示すように、絶縁膜2上、または絶縁膜8上に形成されていても良い。
【0092】
図8-5~8-8は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタを用いた溶液センサアレイの断面図である。具体的には、図8-5に示す溶液センサアレイは、図8-1に示すグラフェントランジスタを2つ有する溶液センサアレイである。また、図8-6に示す溶液センサアレイは、図8-2に示すグラフェントランジスタを2つ有する溶液センサアレイである。図8-7に示す溶液センサアレイは、図8-3に示すグラフェントランジスタを2つ有する溶液センサアレイである。図8-8に示す溶液センサアレイは、図8-4に示すグラフェントランジスタを2つ有する溶液センサアレイである。
【0093】
図8-6および図8-8に示す溶液センサアレイは、ゲート電極7とゲート電極7′のそれぞれに異なるゲート電圧を印加することが可能であり、個々のチャネル3およびチャネル3’に個別で任意のキャリアを誘起させることができ、基準電圧(ディラック電圧)の制御が可能である。また、基準電圧(ディラック電圧)を個々に制御可能なため、トランジスタアレイのセンサ間の特性ばらつきを抑制および制御し、精度よく測定することができる。
【0094】
図8-9は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタを用いたセンサの4×4アレイの一例を示す図である。具体的には、図8-9に示す4×4アレイは、図8-2に示す絶縁膜上グラフェントランジスタを複数組合せたバイオセンサアレイの一例であり、センサS11~S44のそれぞれが図8-2に示す絶縁膜上グラフェントランジスタの構造を備える。ソースは、全センサS11~S44で共通であり、各絶縁膜上グラフェントランジスタに個々のゲート電圧、ドレイン電圧を印加可能な構成である。例えば、トランジスタS11のゲート電圧はG11であり、トランジスタS11のドレイン電圧はD11から印加する。
【0095】
また、図8-9に示す4×4アレイの構成の上に、受容層11(チャネル3上の絶縁膜6が存在しない領域)と、標的物質以外の物質12および標的物質13を含んだ液体10と、ゲート電極9と、を形成することも可能である。
【0096】
図8-9に示す4×4アレイを用いて、例えば、唾液中のホルモンバランスをセンシングする場合、エストロン、エストラジオール、エストリオール、プロゲステロン、テストステロン、DHT(ジヒドロテストステロン)、アンドロステンジオン、アンドロステロン、コルチゾール、等の複数のホルモンを一度にセンシングすることができる。図8-9に示す4×4アレイによれば、複数のホルモンのそれぞれの絶対量が分かるだけでなく、単一のサンプルから各ホルモン同士を比較した場合のバランスも把握可能となる。
【0097】
図8-10は、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタを用いたセンサによるホルモンのセンシング結果の一例を示す図である。4×4アレイにおける各センサS11~S44の位置を工夫することで、図8-10に示すように、ホルモンの偏り等を可視化することも実現可能となる。
【0098】
図8-1~8-9に示すグラフェントランジスタが有する絶縁膜2は、図2-1と同様に、ソース電極4とドレイン電極5間のチャネル3の領域の下が多孔質体となっていれば、基板1の全面が多孔質体であっても良く、また、多孔質体の孔が基板1またはゲート電極7に貫通していても構わない。
【0099】
図8-2、図8-4、図8-6、および図8-8において、基板1と絶縁膜8は、絶縁性を有する基板として一体化しても良く、例えば、ポリイミド、PEN、PET等の可撓性を有する基板でも良い。可撓性を有する基板上にグラフェントランジスタを形成することにより、曲面上にグラフェントランジスタを応用したセンサ等を形成でき、例えば、人体に貼る形態のセンサ等を実現可能であり、バイタルデータのセンシングにとって非常に有用である。センサと体を密着させることが可能となり、心拍および筋電位をリアルタイムに正確に検出できる。また、体臭、または汗,涙等の体液のセンシングをリアルタイムにできる等の可能性があり、それらのデータから健康状態や気分等を知ることもできる可能性がある。
【0100】
このように、第7の実施の形態にかかるグラフェントランジスタによれば、受容層11が標的物質12を補足した際にソース電極4とドレイン電極5間に流れる電流Idsが変化することで、標的物質12の有無および濃度を電気的にセンシングが可能である。
【符号の説明】
【0101】
1 基板
2,6,8 絶縁膜
3 チャネル
4 ソース電極
5 ドレイン電極
7,9 ゲート電極
10 液体
11 受容層
14 ゲート絶縁膜
15 トップゲート電極
【先行技術文献】
【特許文献】
【0102】
【特許文献1】特開2018-014360号公報
【非特許文献】
【0103】
【非特許文献1】K.I.Bolotin et al., Solid State Comm.146,351(2008)
【非特許文献2】S.Wagner et al./Microelectronic Engineering 159 (2016) 108-113
【非特許文献3】L Ghazaryan et al.Nanotechnology 27 (2016) 255603
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
図5-1】
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図5-6】
図6-1】
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図8-4】
図8-5】
図8-6】
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図8-8】
図8-9】
図8-10】