(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097121
(43)【公開日】2023-07-07
(54)【発明の名称】バイアス回路及びAB級増幅回路
(51)【国際特許分類】
H03F 1/30 20060101AFI20230630BHJP
H03F 3/34 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H03F1/30 220
H03F3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213287
(22)【出願日】2021-12-27
(71)【出願人】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大司
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
5J500AA58
5J500AA63
5J500AC04
5J500AC05
5J500AC54
5J500AC82
5J500AF05
5J500AF10
5J500AF17
5J500AH09
5J500AH19
5J500AH29
5J500AK02
5J500AK05
5J500AK09
5J500AK11
5J500AK12
5J500AM13
5J500AM17
5J500AM22
5J500AT01
5J500NF06
5J500NF10
(57)【要約】
【課題】電源電圧が広い範囲で変動しても精度よく入力バイアス電圧を出力できるバイアス回路及びAB級増幅回路を提供する。
【解決手段】第1電圧ミラー回路3が、第1端子T31と第2端子T32の電圧がほぼ等しくなるように動作し、第3端子T33と第2端子T32の電流とがほぼ等しくなるように動作する。第1端子T31には電圧V11が入力される。第2電圧ミラー回路7が、第2端子T32が接続された第4端子T71と第5端子T72の電圧とがほぼ等しくなるように動作し、第6端子T73と第4端子T71の電流とがほぼ等しくなるように動作する。第1電流源回路4が、第3端子T33に接続され、第2電流源回路5が、第2端子T32に接続される。電圧制御電流源回路6が、第3端子T33の電圧が入力され、入力された電圧値に応じた電流を第6端子T73に対して出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子に入力される電圧と第2端子に出力される電圧がほぼ等しくなるように動作し、第3端子に入力される電流と前記第2端子から出力される電流とがほぼ等しくなるように動作する機能を持つ第1電圧ミラー回路と、
前記第1電圧ミラー回路の前記第1端子に出力電圧を入力する電圧発生回路と、
前記第2端子が接続された第4端子に入力される電圧と第5端子から出力される電圧とがほぼ等しくなるように動作し、第6端子に入力された電流と前記第4端子から出力される電流とがほぼ等しくなるように動作する機能を持つ第2電圧ミラー回路と、
前記第1電圧ミラー回路の前記第3端子が接続された第1電流源回路と、
前記第1電圧ミラー回路の前記第2端子及び前記第2電圧ミラー回路の前記第4端子が接続された第2電流源回路と、
前記第1電圧ミラー回路の前記第3端子に入力が接続され、前記第2電圧ミラー回路の前記第6端子に出力が接続され、入力された電圧値に応じた電流を出力する電圧制御電流源回路とを備え、
前記電圧制御電流源回路の出力から入力にかけて負帰還経路が設けられた、
バイアス回路。
【請求項2】
請求項1に記載のバイアス回路において、
位相補償回路をさらに備えた、
バイアス回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバイアス回路において、
前記電圧制御電流源回路は、ゲート又はベースが前記入力となり、ドレイン又はコレクタが前記出力となる第1トランジスタを有する、
バイアス回路。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のバイアス回路において、
前記第2電圧ミラー回路は、ドレイン又はコレクタが前記第6端子となり、ソース又はエミッタが前記第4端子となる第2トランジスタと、前記第2トランジスタにカレントミラー接続され、ソース又はエミッタが前記第5端子となる第3トランジスタと、前記第3トランジスタのソース又はエミッタに接続される第3電流源回路とを有し、
前記電圧制御電流源回路から出力される電流と前記第3電流源回路の電流の比は、前記第2トランジスタと前記第3トランジスタのサイズ比又はエミッタ面積比に等しく設定されている、
バイアス回路。
【請求項5】
請求項4に記載のバイアス回路において、
前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタは、前記第1電圧ミラー回路及び前記電圧制御電流源回路を構成するトランジスタよりも高耐圧のトランジスタから構成されている、
バイアス回路。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のバイアス回路において、
前記第1電圧ミラー回路は、第4電流源回路と、前記第4電流源回路がドレイン又はコレクタに接続され、ソース又はエミッタが前記第1端子となる第4トランジスタと、前記第4トランジスタにカレントミラー接続され、ソース又はエミッタが前記第2端子となり、ドレイン又はコレクタが前記第3端子となる第5トランジスタとを有し、
前記第4電流源回路の電流と前記第1電流源回路の電流の比は、前記第4トランジスタと前記第5トランジスタのサイズ比又はエミッタ面積比に等しく設定されている、
バイアス回路。
【請求項7】
請求項6に記載のバイアス回路において、
前記第1電圧ミラー回路は、前記第4トランジスタにカスコード接続された第6トランジスタと、前記第5トランジスタにカスコード接続された第7トランジスタとを有する、
バイアス回路。
【請求項8】
請求項1~5の何れか1項に記載のバイアス回路において、
前記第1電圧ミラー回路は、ソース又はエミッタが前記第2端子となり、ドレイン又はコレクタが前記第3端子となる第8トランジスタと、前記第8トランジスタのゲート又はベースに出力が接続され、前記第8トランジスタのソース又はエミッタに反転入力が接続され、非反転入力が前記第1端子となる差動増幅器とを有する、
バイアス回路。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載のバイアス回路において、
前記電圧発生回路は、ダイオード接続された第9トランジスタを有する、
バイアス回路。
【請求項10】
請求項1~9の何れか1項に記載のバイアス回路において、
前記第1電圧ミラー回路、前記第2電圧ミラー回路及び前記電圧発生回路を構成するトランジスタがNchのトランジスタから構成され、
前記電圧制御電流源回路を構成するトランジスタがPchのトランジスタから構成された、
バイアス回路。
【請求項11】
請求項1~9の何れか1項に記載のバイアス回路において、
前記第1電圧ミラー回路、前記第2電圧ミラー回路及び前記電圧発生回路を構成するトランジスタがPchのトランジスタから構成され、
前記電圧制御電流源回路を構成するトランジスタがNchのトランジスタから構成された、
バイアス回路。
【請求項12】
入力電圧に応じた差動電流を出力する差動入力部と、
互いに直列接続されたNchの第10トランジスタ及びPchの第11トランジスタと、前記第10トランジスタ及び前記第11トランジスタの間に接続された出力端子とを有するAB級出力回路と、
前記第10トランジスタのゲート又はベースに接続された請求項10に記載のバイアス回路と、前記第11トランジスタのゲート又はベースに接続された請求項11に記載のバイアス回路とを有し、前記差動入力部から出力される差動電流に応じた出力電圧及び出力電流を前記出力端子に出力するように前記第10トランジスタ及び前記第11トランジスタを制御する制御回路とを備えた、
AB級増幅回路。
【請求項13】
請求項12に記載のAB級増幅回路において、
請求項10に記載のバイアス回路に正の第1正電源電圧を供給する第1正電源端子と、
前記AB級出力回路に正の第2正電源電圧を供給する第2正電源端子と、
請求項10に記載バイアス回路及び前記AB級出力回路に負電源電圧を供給する負電源端子とを備え、
前記第1正電源電圧及び前記第2正電源電圧は異なる電圧である、
AB級増幅回路。
【請求項14】
請求項12に記載のAB級増幅回路において、
請求項11に記載のバイアス回路に負の第1負電源電圧を供給する第1負電源端子と、
前記AB級出力回路に負の第2負電源電圧を供給する第2負電源端子と、
請求項11に記載のバイアス回路及び前記AB級出力回路に正電源電圧を供給する正電源端子とを備え、
前記第1負電源電圧及び前記第2負電源電圧は異なる電圧である、
AB級増幅回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアス回路及びAB級増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
増幅回路の出力段は、電力効率と電源駆動力を向上させるため、AB級構成とすることが多い。AB級出力回路の静止電流や入力バイアス電圧を安定化させる手法として、非特許文献1に記載のAB級増幅回路が提案されている。
【0003】
従来のAB級増幅回路を構成するAB級出力回路と、AB級出力回路に入力バイアス電圧を供給するバイアス回路とについて
図14を参照して説明する。
図14に示すようにAB級出力回路10は、互いに直列接続されたNchのトランジスタMn1及びPchのトランジスタMp1を有している。
【0004】
図14に示すNchバイアス回路100は、トランジスタMn1に入力バイアス電圧を与える回路である。Nchバイアス回路100は、ゲートにバイアス電圧Vbが供給されたトランジスタM104から構成された電流源101と、電流源101から電流が供給されるトランジスタM101と、トランジスタM101にカレントミラー接続されたトランジスタM102と、トランジスタM102に電流を供給する電流源102と、ダイオード接続されたトランジスタM103とを有している。上述したトランジスタM102のソースが、トランジスタMn1のゲートに接続される。
【0005】
上述した電流源101,102は等しい電流をトランジスタM101,M102に供給する。トランジスタM101,M102には等しい電流が流れているため、トランジスタM101,M102のゲート・ソース間電圧が等しくなる。このため、AB級出力回路10が静止状態の場合、トランジスタM102のソース電圧は、トランジスタM103のゲート・ソース間電圧と等しくなる。すなわち、トランジスタM103のゲート・ソース間電圧が、トランジスタMn1のゲートに入力バイアス電圧として入力される。
【0006】
上述したNchバイアス回路100は、AB級増幅回路の電源電圧が40Vや60Vといった高電圧でも動作可能な高耐圧としたい場合がある。このため、AB級出力回路10は、トランジスタMn1にカスコード接続されたNch、高耐圧のトランジスタMn2と、トランジスタMp1にカスコード接続されたPch、高耐圧のトランジスタMp2とをさらに有している。以上の構成により、トランジスタMp1,Mn1のドレイン・ソース間に大きな電圧がかからないように保護することができる。また、Nchバイアス回路100においては、トランジスタM101,M102,M104について高耐圧のトランジスタを用いる。
【0007】
ところで、電流源101を構成するトランジスタM104のドレイン・ソース電圧Vdsは、下記の式(1)で表される。
Vds=VDD-(Vgsm101+Vgsm103) …(1)
VDD:電源電圧
Vgsm101:トランジスタM101のゲート・ソース間電圧
Vgsm103:トランジスタM103のゲート・ソース間電圧
【0008】
電源電圧VDDが低下して電圧Vdsが低下すると、トランジスタM104が飽和領域で動作できず、三極管領域での動作となってしまうため、トランジスタM104のドレイン電流が低下する。トランジスタM104のドレイン電流が低下すると、トランジスタM101,M102に流れる電流が低下し、トランジスタMn1の入力バイアス電圧が変わってしまう。そこで、電源電圧VDDとしては、トランジスタM104が三極管領域で動作しないような最低動作電源電圧を供給する必要がある。しかしながら、上述した高耐圧トランジスタM101は、ゲート酸化膜が厚い関係で、閾値電圧が大きく、ゲート・ソース間電圧Vgsm101が大きくなる。ゲート・ソース間電圧Vgsm101が大きくなると、上記式(1)から明らかなように、電源電圧VDDの最低動作電源電圧が制限されてしまう、という問題があった。
【0009】
トランジスタMp1に入力バイアス電圧を与えるPchバイアス回路は、Nchバイアス回路100の「Pch」を「Nch」に代え、正電源、負電源の接続を逆にして説明できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Ron Hogervorst, John P. Tero, Ruud G. H. Eschauzier, and Johan H. Huijsing, “A Compact Power-Efficient 3 V CMOS Rail-to-Rail Input/Output Operational Amplifier for VLSI Cell Libraries”, IEEE JOURNAL OF SOLID-STATE CIRCUITS. VOL. 29. NO 12. DECEMBER 1994.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電源電圧が広い範囲で変動しても精度よく入力バイアス電圧を出力できるバイアス回路及びAB級増幅回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係るバイアス回路及びAB級増幅回路は、下記[1]~[14]を特徴としている。
[1]
第1端子に入力される電圧と第2端子に出力される電圧がほぼ等しくなるように動作し、第3端子に入力される電流と前記第2端子から出力される電流とがほぼ等しくなるように動作する機能を持つ第1電圧ミラー回路と、
前記第1電圧ミラー回路の前記第1端子に出力電圧を入力する電圧発生回路と、
前記第2端子が接続された第4端子に入力される電圧と第5端子から出力される電圧とがほぼ等しくなるように動作し、第6端子に入力された電流と前記第4端子から出力される電流とがほぼ等しくなるように動作する機能を持つ第2電圧ミラー回路と、
前記第1電圧ミラー回路の前記第3端子が接続された第1電流源回路と、
前記第1電圧ミラー回路の前記第2端子及び前記第2電圧ミラー回路の前記第4端子が接続された第2電流源回路と、
前記第1電圧ミラー回路の前記第3端子に入力が接続され、前記第2電圧ミラー回路の前記第6端子に出力が接続され入力された電圧値に応じた電流を出力する電圧制御電流源回路とを備え、
前記電圧制御電流源回路の出力から入力にかけて負帰還経路が設けられた、
バイアス回路であること。
[2]
[1]に記載のバイアス回路において、
位相補償回路をさらに備えた、
バイアス回路であること。
[3]
[1]又は[2]に記載のバイアス回路において、
前記電圧制御電流源回路は、ゲート又はベースが前記入力となり、ドレイン又はコレクタが前記出力となる第1トランジスタを有する、
バイアス回路であること。
[4]
[1]~[3]の何れか1項に記載のバイアス回路において、
前記第2電圧ミラー回路は、ドレイン又はコレクタが前記第6端子となり、ソース又はエミッタが前記第4端子となる第2トランジスタと、前記第2トランジスタにカレントミラー接続され、ソース又はエミッタが前記第5端子となる第3トランジスタと、前記第3トランジスタのソース又はエミッタに接続される第3電流源回路とを有し、
前記電圧制御電流源回路から出力される電流と前記第3電流源回路の電流の比は、前記第2トランジスタと前記第3トランジスタのサイズ比又はエミッタ面積比に等しく設定されている、
バイアス回路であること。
[5]
[4]に記載のバイアス回路において、
前記第2トランジスタ及び前記第3トランジスタは、前記第1電圧ミラー回路及び前記電圧制御電流源回路を構成するトランジスタよりも高耐圧のトランジスタから構成されている、
バイアス回路であること。
[6]
[1]~[5]の何れか1項に記載のバイアス回路において、
前記第1電圧ミラー回路は、第4電流源回路と、前記第4電流源回路がドレイン又はコレクタに接続され、ソース又はエミッタが前記第1端子となる第4トランジスタと、前記第4トランジスタにカレントミラー接続され、ソース又はエミッタが前記第2端子となり、ドレイン又はコレクタが前記第3端子となる第5トランジスタとを有し、
前記第4電流源回路の電流と前記第1電流源回路の電流の比は、前記第4トランジスタと前記第5トランジスタのサイズ比又はエミッタ面積比に等しく設定されている、
バイアス回路であること。
[7]
[6]に記載のバイアス回路において、
前記第1電圧ミラー回路は、前記第4トランジスタにカスコード接続された第6トランジスタと、前記第5トランジスタにカスコード接続された第7トランジスタとを有する、
バイアス回路であること。
[8]
[1]~[5]の何れか1項に記載のバイアス回路において、
前記第1電圧ミラー回路は、ソース又はエミッタが前記第2端子となり、ドレイン又はコレクタが前記第3端子となる第8トランジスタと、前記第8トランジスタのゲート又はベースに出力が接続され、前記第8トランジスタのソース又はエミッタに反転入力が接続され、非反転入力が前記第1端子となる差動増幅器とを有する、
バイアス回路であること。
[9]
[1]~[8]の何れか1項に記載のバイアス回路において、
前記電圧発生回路は、ダイオード接続された第9トランジスタを有する、
バイアス回路であること。
[10]
[1]~[9]の何れか1項に記載のバイアス回路において、
前記第1電圧ミラー回路、前記第2電圧ミラー回路及び前記電圧発生回路を構成するトランジスタがNchのトランジスタから構成され、
前記電圧制御電流源回路を構成するトランジスタがPchのトランジスタから構成された、
バイアス回路であること。
[11]
[1]~[9]の何れか1項に記載のバイアス回路において、
前記第1電圧ミラー回路、前記第2電圧ミラー回路及び前記電圧発生回路を構成するトランジスタがPchのトランジスタから構成され、
前記電圧制御電流源回路を構成するトランジスタがNchのトランジスタから構成された、
バイアス回路であること。
[12]
入力電圧に応じた差動電流を出力する差動入力部と、
互いに直列接続されたNchの第10トランジスタ及びPchの第11トランジスタと、前記第10トランジスタ及び前記第11トランジスタの間に接続された出力端子とを有するAB級出力回路と、
前記第10トランジスタのゲート又はベースに接続された請求項10に記載のバイアス回路と、前記第11トランジスタのゲート又はベースに接続された請求項11に記載のバイアス回路とを有し、前記差動入力部から出力される差動電流に応じた出力電圧及び出力電流を前記出力端子に出力するように前記第10トランジスタ及び前記第11トランジスタを制御する制御回路とを備えた、
AB級増幅回路であること。
[13]
[12]に記載のAB級増幅回路において、
[10]に記載のバイアス回路に正の第1正電源電圧を供給する第1正電源端子と、
前記AB級出力回路に正の第2正電源電圧を供給する第2正電源端子と、
[10]に記載バイアス回路及び前記AB級出力回路に負電源電圧を供給する負電源端子とを備え、
前記第1正電源電圧及び前記第2正電源電圧は異なる電圧である、
AB級増幅回路であること。
[14]
[12]に記載のAB級増幅回路において、
[11]に記載のバイアス回路に負の第1負電源電圧を供給する第1負電源端子と、
前記AB級出力回路に負の第2負電源電圧を供給する第2負電源端子と、
[11]に記載のバイアス回路及び前記AB級出力回路に正電源電圧を供給する正電源端子とを備え、
前記第1負電源電圧及び前記第2負電源電圧は異なる電圧である、
AB級増幅回路であること。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電源電圧が広い範囲で変動しても精度よく入力バイアス電圧を出力できるバイアス回路及びAB級増幅回路を提供する。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1実施形態におけるNchバイアス回路を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態におけるNchバイアス回路の回路図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態におけるNchバイアス回路の回路図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態におけるNchバイアス回路の回路図である。
【
図5】
図5は、第4実施形態におけるNchバイアス回路の回路図である。
【
図6】
図6は、第5実施形態におけるPchバイアス回路を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、第5実施形態におけるPchバイアス回路の回路図である。
【
図8】
図8は、第6実施形態におけるPchバイアス回路の回路図である。
【
図9】
図9は、第7実施形態におけるPchバイアス回路の回路図である。
【
図10】
図10は、第8実施形態におけるPchバイアス回路の回路図である。
【
図11】
図11は、第9実施形態におけるAB級増幅回路の回路図である。
【
図12】
図12は、第10実施形態におけるAB級増幅回路の回路図の一部である。
【
図13】
図13は、第11実施形態におけるAB級増幅回路の回路図の一部である。
【
図14】
図14は、従来のAB級増幅回路を構成するAB級出力回路と、Pchバイアス回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
図1は、本発明のNchバイアス回路1(=バイアス回路)の一実施形態を示す回路図である。
図1に示すNchバイアス回路1は、正電源電圧VDD1,負電源電圧VSS1からNchのトランジスタの入力バイアス電圧Vb1を生成して、出力端子T1から出力する回路である。
【0017】
Nchバイアス回路1は、電圧発生回路2と、第1電圧ミラー回路3と、第1電流源回路4と、第2電流源回路5と、電圧制御電流源回路6と、第2電圧ミラー回路7とを備えている。
【0018】
電圧発生回路2は、一端が負電源端子T22に接続され、他端が後述する第1電圧ミラー回路3の第1端子T31に接続され、第1端子T31に対して電圧V11(=出力電圧)を出力する。上記負電源端子T22には、負電源電圧VSS1が供給されている。第1電圧ミラー回路3は、第1端子T31に入力された電圧V11と第2端子T32から出力される電圧V11とがほぼ等しくなるように動作する。
【0019】
第1電流源回路4は、一端が正電源端子T21に接続され、他端が第1電圧ミラー回路3の第3端子T33に接続される。上記正電源端子T21には、正電源電圧VDD1が供給されている。第1電圧ミラー回路3は、第3端子T33に入力された電流I4とほぼ等しい電流を第2端子T32から出力するように動作する。
【0020】
第2電流源回路5は、第1電圧ミラー回路3の第2端子T32と負電源端子T22との間に接続されている。第2電流源回路5は、電流I5を供給する。電圧制御電流源回路6は、入力T61が第1電流源回路4と第3端子T33との間に接続されている。電圧制御電流源回路6は、入力T61に入力された電圧値に応じた電流I6を出力T62から出力する。
【0021】
第2電圧ミラー回路7には、第4端子T71に第1電圧ミラー回路3の第2端子T32が接続され、電圧V11が入力される。第2電圧ミラー回路7は、第4端子T71に入力された電圧V11と第5端子T72から出力される電圧とがほぼ等しくなるように動作する。第5端子T72は、出力端子T1に接続され、電圧V11とほぼ等しい入力バイアス電圧Vb1が出力される。
【0022】
第2電圧ミラー回路7は、第6端子T73に電圧制御電流源回路6から出力される電流I6が供給される。第2電圧ミラー回路7は、第6端子T73に入力される電流I6と第4端子T71から出力される電流とがほぼ等しくなるように動作する。
【0023】
以上の構成を用いることで、第1電圧ミラー回路3の第1端子T31に入力された電圧V11と第2電圧ミラー回路7の第5端子T72から出力される入力バイアス電圧Vb1とが等しくなるように設計制御できる。また、電圧制御電流源回路6の出力T62から入力T61にかけて負帰還経路が形成される。このため、電圧制御電流源回路6から出力される電流I6が、第2電流源回路5に流れる電流I5から第1電流源回路4に流れる電流I4を差し引いた値となるように、入力T61に入力される電圧が調整される。これにより、第2電圧ミラー回路7の第6端子T73から第4端子T71に所望の電流が流れるように設計制御できる。
【0024】
次に、上記概略で説明したNchバイアス回路1の詳細について
図2を参照して説明する。
図2に示すように、電圧発生回路2は、ダイオード接続されたトランジスタM21(=第9トランジスタ)を有している。トランジスタM21は、Nch、低耐圧の電界効果トランジスタから構成され、ゲート・ソース間電圧を電圧V11として発生する。第1電圧ミラー回路3は、定電流源31(=第4電流源回路)と、カレントミラー接続されたトランジスタM31(=第4トランジスタ),トランジスタM32(=第5トランジスタ)とを有し、サイズ比(W/L)は1:1に設定されている。定電流源31は、一端が正電源端子T21に接続され、第1電流源回路4と等しい電流I4を供給する電流源である。なお、トランジスタM31,M32のサイズ比が1:mに設定される場合には、定電流源31と第1電流源回路4が供給する電流の比も1:mに設定すればよい。トランジスタM31,M32は、Nch、低耐圧の電界効果トランジスタから構成されている。
【0025】
トランジスタM31は、ドレイン、ゲートが定電流源31の他端に接続され、ソースが電圧発生回路2に接続される。このトランジスタM31のソースが、第1電圧ミラー回路3の第1端子T31となる。トランジスタM32は、ゲートがトランジスタM31のゲート・ドレインに接続され、ドレインが第1電流源回路4に接続され、ソースが第2電流源回路5に接続される。このトランジスタM32のソースが、第1電圧ミラー回路3の第2端子T32となり、ドレインが第1電圧ミラー回路3の第3端子T33となる。
【0026】
電圧制御電流源回路6は、トランジスタM61(=第1トランジスタ)を有している。トランジスタM61は、Pch、低耐圧の電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM61は、ソースが正電源端子T21に接続され、ドレインが第2電圧ミラー回路7に接続され、ゲートが第1電流源回路4とトランジスタM32のドレインとの接続点に接続されている。このトランジスタM61のゲートが入力T61となり、ドレインが出力T62となる。
【0027】
第2電圧ミラー回路7は、定電流源71(=第3電流源回路)と、カレントミラー接続されたトランジスタM71(=第2トランジスタ),トランジスタM72(=第3トランジスタ)とを有し、サイズ比(W/L)は1:1に設定されている。定電流源71は、一端が負電源端子T22に接続され、トランジスタM61に流れる電流I6と等しい電流I6を供給する電流源である。なお、トランジスタM71,M72のサイズ比が1:mに設定される場合には、トランジスタM61に流れる電流と定電流源71が供給する電流の比も1:mに設定すればよい。トランジスタM71,M72は、Nch、高耐圧の電界効果トランジスタから構成されている。
【0028】
トランジスタM71は、ドレイン・ゲートがトランジスタM61のドレインに接続され、ソースがトランジスタM32のソースと第2電流源回路5との接続点に接続されている。このトランジスタM71のソースが、第2電圧ミラー回路7の第4端子T71となり、ドレインが、第2電圧ミラー回路7の第6端子T73となる。トランジスタM72は、ゲートがトランジスタM71のドレイン・ゲートに接続され、ソースが定電流源71の他端に接続されている。また、トランジスタM72のソースには、出力端子T1が接続されている。このトランジスタM72のソースが、第2電圧ミラー回路7の第5端子T72となる。
【0029】
以上の構成によれば、トランジスタM31,M32には、互いに等しい電流I4が流れる。このため、トランジスタM31,M32のゲート・ソース間電圧が等しくなり、トランジスタM32のソース電圧(第2端子T32の電圧)は、トランジスタM31のソース電圧V11とほぼ等しくなる。
【0030】
また、負帰還経路を構成するトランジスタM61には、電流I5から電流I4を差し引いた電流I6が流れ、この電流I6がトランジスタM71に供給される。トランジスタM71,M72には、互いに等しい電流I6が流れる。このため、トランジスタM71,M72のゲート・ソース間電圧が等しくなり、トランジスタM72のソース電圧(入力バイアス電圧Vb1)が、トランジスタM71のソース電圧V11とほぼ等しくなる。
【0031】
上述した構成によれば、トランジスタM61が三極管領域で動作する小さいドレイン・ソース間電圧となっても、負帰還経路を構成するトランジスタM61のドレイン電流は一定に保たれる。このため、電源電圧(VDD1-VSS1)が大きく低下しても、高耐圧のトランジスタM71に流れるドレイン電流及びゲート・ソース間電圧を一定に保つことができ、結果として、高耐圧トランジスタM72のソース電圧(=入力バイアス電圧Vb1を一定に保つことができる。上述した
図14に示す従来のNchバイアス回路100の場合、高耐圧のトランジスタM104が一定のドレイン電流を出力できるドレイン・ソース間電圧は数百mV程度である。これに対して、本実施形態のNchバイアス回路1によれば、トランジスタM61のドレイン・ソース間電圧は数十mVまで下がっても一定のドレイン電流を保つことができる。このため、本実施形態のNchバイアス回路1は、低電圧動作が可能となり、電源電圧範囲を広げることができる。すなわち、電源電圧が広い範囲で変動しても精度よく入力バイアス電圧Vb1を出力できる。
【0032】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態におけるNchバイアス回路1Bについて
図3を参照して説明する。
図3において、上述した第1実施形態で説明した
図2に示すNchバイアス回路1と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第1実施形態と第2実施形態とで異なる点は、第1電圧ミラー回路3Bの構成である。第1電圧ミラー回路3Bは、第1実施形態と同じ定電流源31、トランジスタM31,M32に加えて、トランジスタM33,M34を有する。トランジスタM33,M34は、Nch、低耐圧の電界効果トランジスタから構成されている。
【0033】
トランジスタM33(=第6トランジスタ)は、トランジスタM31にカスコード接続されている。トランジスタM33は、ソースがトランジスタM31のドレインに接続され、ドレインが定電流源31及びトランジスタM31のゲートに接続されている。トランジスタM34(=第7トランジスタ)は、トランジスタM32にカスコード接続されている。トランジスタM34は、ソースがトランジスタM32のドレインに接続され、ドレインが第1電流源回路4及びトランジスタM61のゲートに接続されている。トランジスタM33,M34のゲートにはバイアス電圧Vb3が供給されている。
【0034】
以上の構成によれば、トランジスタM31,M32のドレイン・ソース間電圧の変動を低減することができ、入力バイアス電圧Vb1が電圧V11と等しくなるよう制御する精度が向上する。
【0035】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態におけるNchバイアス回路1Cについて
図4を参照して説明する。
図4において、上述した第1実施形態で説明した
図2に示すNchバイアス回路1と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第1実施形態と第3実施形態とで異なる点は、第1電圧ミラー回路3Cの構成である。第1電圧ミラー回路3Cは、差動増幅器32と、トランジスタM32(=第8トランジスタ)とを有している。差動増幅器32は、反転入力がトランジスタM32のソースに接続され、非反転入力が電圧発生回路2に接続されている。本実施形態では、差動増幅器32の非反転入力が第1電圧ミラー回路3Cの第1端子T31に相当する。
【0036】
第3実施形態によれば、差動増幅器32によってトランジスタM32のソース電圧を制御する。詳しく説明すると、差動増幅器32の仮想短絡現象によって、トランジスタM32のソース電圧は、電圧発生回路2が出力する電圧V11と等しくなるように制御される。
【0037】
以上の構成によれば、トランジスタM32のドレイン・ソース間電圧が変動しても、ゲート・ソース間電圧の変動を低減することができ、入力バイアス電圧Vb1が電圧V11と等しくなるよう制御する精度が向上する。
【0038】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態におけるNchバイアス回路1Dについて
図5を参照して説明する。
図5において、上述した第1実施形態で説明した
図2に示すNchバイアス回路1と同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第1実施形態と第3実施形態とで異なる点は、Nchバイアス回路1Dが、位相補償容量C1を有している点である。位相補償容量C1は、一端が正電源端子T21に接続され、他端がトランジスタM61のゲートに接続されている。
【0039】
上述した第1~第3実施形態では、トランジスタM61が負帰還経路を構成しているため、発振する場合がある。そのため第4実施形態では、位相補償回路として、トランジスタM61のゲートに位相補償容量C1を接続している。これにより、Nchバイアス回路1Dの発振を抑制することができる。なお、
図5に示す例では、位相補償容量C1の一端は正電源端子T21に接続されていたが、位相補償容量C1の一端は低インピーダンスな端子に接続されていればよく、負電源端子T22に接続してもよい。
【0040】
(第5実施形態)
図6は、本発明のPchバイアス回路1Eの一実施形態を示す回路図である。
図1に示すPchバイアス回路1Eは、正電源電圧VDD1,負電源電圧VSS1からPchのトランジスタの入力バイアス電圧Vb2を生成する回路である。
【0041】
なお、第5実施形態のPchバイアス回路1Eは、第1実施形態のNchバイアス回路1の説明において、「Nch」を「Pch」に読み替え、符号2~7、T1、T31~T33、T61,T62、T71~T73を符号2E~7E、T1E、T31E~T33E、T61E,T62E、T71E~T73Eに読み替え、負電源端子T22、負電源電圧VSS1を正電源端子T21、正電源電圧VDD1に読み替え、正電源端子T21、正電源電圧VDD1を負電源端子T22、負電源電圧VSS1に読み替え、電圧V11、Vb1を電圧V21、Vb2に読み替えて説明できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0042】
次に、上記概略で説明したPchバイアス回路1Eの詳細について
図7を参照して説明する。
図7に示すPchバイアス回路1Eは、
図2に示すNchバイアス回路1の説明において、上述した読み替えに加えて、符号31、71、M21、M31,M32、M61、M71,M72を符号31E、71E、M21E、M31E,M32E、M61E、M71E,M72Eに読み替えて説明できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0043】
以上の構成によれば、トランジスタM31E,M32Eには、互いに等しい電流I4が流れる。このため、トランジスタM31E,M32Eのゲート・ソース間電圧が等しくなり、トランジスタM32Eのソース電圧(第2端子T32Eの電圧)は、トランジスタM31Eのソース電圧V21とほぼ等しくなる。
【0044】
また、負帰還経路を構成するトランジスタM61Eには、電流I5から電流I4を差し引いた電流I6が流れ、この電流I6がトランジスタM71Eに供給される。トランジスタM71E,M72Eには、互いに等しい電流I6が流れる。このため、トランジスタM71E,M72Eのゲート・ソース間電圧が等しくなり、トランジスタM72Eのソース電圧(入力バイアス電圧Vb2)が、トランジスタM71Eのソース電圧V21とほぼ等しくなる。
【0045】
上述した構成によれば、トランジスタM61Eが三極管領域で動作する小さいドレイン・ソース間電圧となっても、負帰還経路を構成するトランジスタM61Eのドレイン電流は一定に保たれる。このため、電源電圧(VDD1-VSS1)が大きく低下しても、高耐圧のトランジスタM71Eに流れるドレイン電流及びゲート・ソース間電圧を一定に保つことができ、結果として、高耐圧トランジスタM72Eのソース電圧(=入力バイアス電圧Vb2を一定に保つことができる。上述した
図14に示す従来のNchバイアス回路100に対応するPchバイアス回路の場合、高耐圧のトランジスタM104が一定のドレイン電流を出力できるドレイン・ソース間電圧は数百mV程度である。これに対して、本実施形態のPchバイアス回路1Eによれば、トランジスタM61Eのドレイン・ソース間電圧は数十mVまで下がっても一定のドレイン電流を保つことができる。このため、本実施形態のPchバイアス回路1Eは、低電圧動作が可能となり、電源電圧範囲を広げることができる。すなわち、電源電圧が広い範囲で変動しても精度よく入力バイアス電圧Vb2を出力できる。
【0046】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態におけるPchバイアス回路1F(=バイアス回路)について
図8を参照して説明する。
図8において、上述した第5実施形態で説明した
図7に示すPchバイアス回路1Eと同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第5実施形態と第6実施形態とで異なる点は、第1電圧ミラー回路3Fの構成である。第1電圧ミラー回路3Fは、第1実施形態と同じ定電流源31E、トランジスタM31E,M32Eに加えて、トランジスタM33F,M34Fを有する。トランジスタM33F,M34Fは、Pch、低耐圧の電界効果トランジスタから構成されている。
【0047】
トランジスタM33Fは、トランジスタM31Eにカスコード接続されている。トランジスタM33Fは、ソースがトランジスタM31Eのドレインに接続され、ドレインが定電流源31E及びトランジスタM31Eのゲートに接続されている。トランジスタM34Fは、トランジスタM32Eにカスコード接続されている。トランジスタM34Fは、ソースがトランジスタM32Eのドレインに接続され、ドレインが第1電流源回路4Eに接続されている。トランジスタM33F,M34Fのゲートにはバイアス電圧Vb4が供給されている。
【0048】
以上の構成によれば、トランジスタM31E,M32Eのドレイン・ソース間電圧の変動を低減することができ、入力バイアス電圧Vb2が電圧V21と等しくなるよう制御する精度が向上する。
【0049】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態におけるPchバイアス回路1Gについて
図9を参照して説明する。
図9において、上述した第5実施形態で説明した
図7に示すPchバイアス回路1Fと同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第5実施形態と第7実施形態とで異なる点は、第1電圧ミラー回路3Gの構成である。第1電圧ミラー回路3Gは、差動増幅器32Gと、トランジスタM32Eとを有している。差動増幅器32Gは、反転入力がトランジスタM32Eのソースに接続され、非反転入力が電圧発生回路2Eに接続されている。本実施形態では、差動増幅器32Gの非反転入力が第1電圧ミラー回路3Gの第1端子T31Eとなる。
【0050】
第7実施形態によれば、差動増幅器32GによってトランジスタM32Eのソース電圧を制御する。詳しく説明すると、差動増幅器32Gの仮想短絡現象によって、トランジスタM32Eのソース電圧は、電圧発生回路2Eが出力する電圧V21と等しくなるように制御される。
【0051】
以上の構成によれば、トランジスタM32Eのドレイン・ソース間電圧が変動しても、ゲート・ソース間電圧の変動を低減することができ、入力バイアス電圧Vb2が電圧V21と等しくなるよう制御する精度が向上する。
【0052】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態におけるPchバイアス回路1Hについて
図10を参照して説明する。
図10において、上述した第5実施形態で説明した
図7に示すPchバイアス回路1Eと同等の部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。第5実施形態と第8実施形態とで異なる点は、電圧制御電流源回路6Hの構成である。電圧制御電流源回路6Hは、トランジスタM61Eに加えて位相補償容量C1Hを有している。位相補償容量C1Hは、一端が負電源端子T22に接続され、他端がトランジスタM61Eのゲートに接続されている。
【0053】
上述した第5~第7実施形態では、トランジスタM61Eが負帰還経路を構成しているため、発振する場合がある。そのため第8実施形態では、位相補償回路として、トランジスタM61Eのゲートに位相補償容量C1Hを接続している。これにより、Pchバイアス回路1Hの発振を抑制することができる。なお、
図10に示す例では、位相補償容量C1Hの一端は負電源端子T22に接続されていたが、位相補償容量C1Hの一端は低インピーダンスな端子に接続されていればよく、正電源端子T21に接続してもよい。
【0054】
(第9実施形態)
次に、上述した第1実施形態に示すNchバイアス回路1と、第5実施形態に示すPchバイアス回路1Eとを組み込んだAB級増幅回路8について
図11を参照して説明する。なお、図を簡単にするために
図11においては、Nchバイアス回路1を構成するトランジスタM72、定電流源71についてはNchバイアス回路1を表すブロック外に記載し、Pchバイアス回路1Eを構成するトランジスタM72E、定電流源71EについてはPchバイアス回路1Eを表すブロック外に記載している。
【0055】
同図に示すように、AB級増幅回路8は、入力端子T41に入力された入力電位INMと、入力端子T42に入力された入力電位INPの差分である入力電圧を増幅して、出力端子T4から出力信号VOUTとして出力する回路である。
【0056】
AB級増幅回路8は、差動入力部9と、AB級出力回路10と、フローティング型の制御回路11とを有している。
【0057】
差動入力部9は、入力電流に応じた差動電流を出力する。差動入力部9は、ソースが共通接続された差動トランジスタM1,M2と、定電流源91とを有している。差動トランジスタM1,M2は、Pch、高耐圧の電界効果トランジスタから構成されている。差動トランジスタM1のゲートは、入力端子T41に接続され、差動トランジスタM2のゲートは、入力端子T42に接続されている。差動トランジスタM1,M2のソースは共通接続され、定電流源91に接続されている。
【0058】
定電流源91は、正電源端子T21と共通接続された差動トランジスタM1,M2のソースとの間に接続される。差動入力部9は、定電流源91が供給する定電流を差動トランジスタM1,M2に分流する。差動トランジスタM1,M2に流れる電流の電流比(分流比)は、入力電位INM,INPに応じた値となる。この差動トランジスタM1,M2に流れる電流差が差動電流として出力される。
【0059】
AB級出力回路10は、カスコード接続されたトランジスタMp1(=第11トランジスタ),トランジスタMp2と、コンデンサCm1と、カスコード接続されたトランジスタMn1(=第10トランジスタ),トランジスタMn2と、コンデンサCm2とを有している。トランジスタMp1,Mp2は、Pchの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタMp1は、低耐圧のトランジスタから構成され、トランジスタMp2は、高耐圧のトランジスタから構成されている。トランジスタMp1にカスコード接続されたトランジスタMp2により、トランジスタMp1を高耐圧から保護する。トランジスタMp1は、ソースが正電源端子T21に接続され、ドレインがトランジスタMp2のソースに接続され、ゲートがPchバイアス回路1Eの出力端子T1Eに接続されている。トランジスタMp2は、ドレインが出力端子T4に接続され、ゲートには一定のバイアス電圧Vb5が供給されている。コンデンサCm1は、トランジスタMp1のゲートとトランジスタMp2のドレインとの間に接続されている。
【0060】
トランジスタMn1,Mn2は、Nchの電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタMn1は、低耐圧のトランジスタから構成され、トランジスタMn2は、高耐圧のトランジスタから構成されている。トランジスタMn1にカスコード接続されたトランジスタMn2により、トランジスタMn1を高耐圧から保護する。トランジスタMn1は、ソースが負電源端子T22に接続され、ドレインがトランジスタMn2のソースに接続され、ゲートがNchバイアス回路1の出力端子T1に接続されている。トランジスタMn2は、ドレインが出力端子T4に接続され、ゲートには一定のバイアス電圧Vb6が供給されている。コンデンサCm2は、トランジスタMn1のゲートとトランジスタMn2のドレインとの間に接続されている。
【0061】
制御回路11は、差動トランジスタM1,M2に流れる電流差(差動電流)に応じてAB級出力回路10の出力電圧及び出力端子T4に流れる出力電流を制御するための回路である。出力信号VOUTは出力電圧及び出力電流に応じた値となる。制御回路11は、Nchバイアス回路1と、Pchバイアス回路1Eとを有している。
【0062】
Nchバイアス回路1と、Pchバイアス回路1Eとは、第1実施形態と同様であるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、Nchバイアス回路1を構成するトランジスタM72と、Pchバイアス回路1Eを構成するトランジスタM72Eとは、並列接続されている。詳しくは、トランジスタM72のソースがトランジスタM72Eのドレインに接続され、トランジスタM72のドレインがトランジスタM72Eのソースに接続されている。よって、定電流源71Eは電流I6を供給し、トランジスタM72,M72Eのゲート・ソース間電圧に応じて電流I6を分流する。
【0063】
また、本実施形態では、定電流源71は、トランジスタM3~M7と、定電流源711とから構成されている。トランジスタM3~M7は、Nch、低耐圧の電界効果トランジスタから構成されている。トランジスタM3は、ドレインがトランジスタM5のソースに接続され、ソースが負電源端子T22に接続され、ゲートがトランジスタM5のドレインに接続されている。トランジスタM4は、ドレインがトランジスタM6のソースに接続され、ソースが負電源端子T22に接続され、ゲートがトランジスタM3のゲートに接続されている。
【0064】
トランジスタM5は、ドレインがトランジスタM7のドレインに接続され、ゲートがトランジスタM6のゲートに接続される。トランジスタM6は、ドレインがトランジスタM72Eのドレイン及びトランジスタM72のソースに接続される。トランジスタM5,M6のゲートにはバイアス電圧Vb7が供給される。トランジスタM7は、ゲートがトランジスタM71E,M72Eのゲートに接続され、ソースが定電流源711に接続される。定電流源711は、正電源端子T21とトランジスタM7のソースとの間に接続され、電流I6を供給する。
【0065】
トランジスタM3のドレインとトランジスタM5のソースとの接続点には、差動トランジスタM1のドレインが接続されている。トランジスタM4のドレインとトランジスタM6のソースとの接続点には、差動トランジスタM2のドレインが接続されている。
【0066】
トランジスタM3~M6は、カスコードカレントミラー回路を構成し、トランジスタM3に流れる電流に応じて、トランジスタM4に流れる電流及びゲート電圧を制御するように動作する。差動トランジスタM2に流れる電流が差動トランジスタM1に流れる電流よりも少ない場合、差動トランジスタM2からトランジスタM4に流れる電流が少ない分、トランジスタM4のドレイン・ソース間の抵抗成分による電圧降下が小さくなり、トランジスタM6のゲート・ソース間電圧が大きくなり、トランジスタM6のドレイン電圧が低下する。結果として、トランジスタMn1のゲート・ソース間電圧は小さくなり、トランジスタMn1に流れる電流は減少する。また、トランジスタM6のドレイン電圧が低下することよって、トランジスタM72のゲート・ソース間電圧が大きくなり、定電流源71Eから流れる電流は、トランジスタM72に流れる割合が多くなり、トランジスタM72Eに流れる割合が少なくなる。すると、トランジスタM72Eはゲート・ソース間電圧が小さくなるようにソース電圧が低下し、トランジスタM72Eのソースに接続されたトランジスタMp1のゲート・ソース間電圧が大きくなり、トランジスタMp1に流れる電流は増加する。
【0067】
一方、差動トランジスタM1に流れる電流がトランジスタM2に流れる電流よりも少ない場合、差動トランジスタM2からトランジスタM4に流れる電流が多い分、トランジスタM4のドレイン・ソース間の抵抗成分による電圧降下が大きくなり、トランジスタM6のゲート・ソース間電圧が小さくなり、トランジスタM6のドレイン電圧が上昇する。結果として、トランジスタMn1のゲート・ソース間電圧は大きくなり、トランジスタMn1に流れる電流は増加する。また、トランジスタM6のドレイン電圧が上昇することよって、トランジスタM72のゲート・ソース間電圧が小さくなり、定電流源71Eから流れる電流は、トランジスタM72に流れる割合が少なくなり、トランジスタM72Eに流れる割合が多くなる。すると、トランジスタM72Eはゲート・ソース間電圧が大きくなるようにソース電圧が上昇し、トランジスタM72Eのソースに接続されたトランジスタMp1のゲート・ソース間電圧が小さくなり、トランジスタMp1に流れる電流は減少する。
【0068】
また、差動トランジスタM1,M2に流れる電流が等しい場合(静止状態の場合)、コンデンサCm1からトランジスタM72のドレイン及びトランジスタM72Eのソースに流れる電流と、トランジスタM72のソース及びトランジスタM72EのドレインからコンデンサCm2に流れる電流とが等しくなるため、出力電流は0となる。このとき、トランジスタMp1にはPchバイアス回路1Eにより入力バイアス電圧Vb2が供給され、トランジスタMn1にはNchバイアス回路1により入力バイアス電圧Vb1が供給されるため、トランジスタMp1,Mn1は双方ともオンする。
【0069】
(第10実施形態)
次に、第10実施形態におけるAB級増幅回路について
図12を参照して説明する。
図12において、上述した第1実施形態で説明した
図2に示すNchバイアス回路1、第9実施形態で説明した
図11に示すAB級増幅回路8と同一部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0070】
第9実施形態ではAB級出力回路10及びNchバイアス回路1の双方を同じ正電源端子T21に接続していた。これに対して、第10実施形態では、AB級出力回路10は正電源端子T23(=第2正電源端子)に接続され、Nchバイアス回路1は正電源端子T21(=第1正電源端子)に接続されている。正電源端子T23には、正電源電圧VDD2(=第2正電源電圧)が供給され、正電源電圧VDD2は正電源電圧VDD1(=第1正電源電圧)より高い電圧である。正電源電圧VDD1は、正電源電圧VDD2から生成するようにしてもよい。以上の構成のように、AB級出力回路10に供給する正電源電圧VDD2と、Nchバイアス回路1に供給する正電源電圧VDD1とを別電源とすることにより、Nchバイアス回路1は、正電源電圧VDD2の変動の影響を受け難くなる。
【0071】
(第11実施形態)
次に、第11実施形態におけるAB級増幅回路について
図13を参照して説明する。
図13において、上述した第5実施形態で説明した
図6に示すPchバイアス回路1E、第9実施形態で説明した
図11に示すAB級増幅回路8と同一部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0072】
第9実施形態ではAB級出力回路10及びPchバイアス回路1Eの双方を同じ負電源端子T22に接続していた。これに対して、第11実施形態では、AB級出力回路10は負電源端子T24(=第2負電源端子)に接続され、Pchバイアス回路1Eは負電源端子T22(=第1負電源端子)に接続されている。負電源端子T24には、負電源電圧VSS2(=第2負電源電圧)が供給され、負電源電圧VSS2は負電源電圧VSS1(=第1負電源電圧)より低い電圧である。負電源電圧VSS1は、負電源電圧VSS2から生成するようにしてもよい。以上の構成のように、AB級出力回路10に供給する負電源電圧VSS2と、Pchバイアス回路1Eに供給する負電源電圧VSS2とを別電源とすることにより、Pchバイアス回路1Eは、負電源電圧VSS2の変動の影響を受け難くなる。
【0073】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0074】
例えば、第9~第11実施形態に示すAB級増幅回路8を構成するNchバイアス回路1に代えて、第2~第4実施形態で説明したNcバイアス回路1B~1Dを用いてもよい。同様に、Pchバイアス回路1Eに代えて、第6~第8実施形態で説明したPchバイアス回路1F~1Hを用いてもよい。
【0075】
また、上述した第1~第11実施形態では、トランジスタは、電界効果トランジスタから構成されていたが、これに限ったものではない。トランジスタは、バイポーラトランジスタから構成されていてもよい。この場合、トランジスタのゲートをベースに、ソースをエミッタに、ドレインをコレクタに、サイズ比(W/L)をエミッタ面積比に読み替えて説明することができる。
【符号の説明】
【0076】
1,1B~1D Nchバイアス回路(バイアス回路)
1E~1H Pchバイアス回路(バイアス回路)
2,2E 電圧発生回路
3,3B,3C,3E,3F,3G 第1電圧ミラー回路
4,4E 第1電流源回路
5,5E 第2電流源回路
6,6E,6H 電圧制御電流源回路
7,7E 第2電圧ミラー回路
8 AB級増幅回路
9 差動入力部
10 AB級出力回路
11 制御回路
31,31E 定電流源(第4電流源回路)
32,32G 差動増幅器
71,71E 定電流源(第3電流源回路)
C1,C1H 位相補償容量(位相補償回路)
M21,M21E トランジスタ(第9トランジスタ)
M31,M31E トランジスタ(第4トランジスタ)
M32,M32E トランジスタ(第5トランジスタ、第8トランジスタ)
M33,M33F トランジスタ(第6トランジスタ)
M34,M34F トランジスタ(第7トランジスタ)
M61,M61E トランジスタ(第1トランジスタ)
M71,M71E トランジスタ(第2トランジスタ)
M72,M72E トランジスタ(第3トランジスタ)
Mn1 トランジスタ(第10トランジスタ)
Mp1 トランジスタ(第11トランジスタ)
T21 正電源端子(第1正電源端子)
T22 負電源端子(第1負電源端子)
T23 正電源端子(第2正電源端子)
T24 負電源端子(第2負電源端子)
T31,T31E 第1端子
T32,T32E 第2端子
T33,T33E 第3端子
T71,T71E 第4端子
T72,T72E 第5端子
T73,T73E 第6端子
V11,V21 電圧(出力電圧)
VDD1 正電源電圧(第1正電源電圧)
VDD2 正電源電圧(第2正電源電圧)
VSS1 負電源電圧(第1負電源電圧)
VSS2 負電源電圧(第2負電源電圧)