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  • 特開-遮水層構築工法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009727
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】遮水層構築工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/18 20060101AFI20230113BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113238
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】301044565
【氏名又は名称】株式会社ホージュン
(71)【出願人】
【識別番号】504211762
【氏名又は名称】家島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
(71)【出願人】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(74)【代理人】
【識別番号】100154014
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 裕士
(74)【代理人】
【識別番号】100154520
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 祐子
(72)【発明者】
【氏名】水野 正之
(72)【発明者】
【氏名】佐古田 又規
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】大西 文明
(72)【発明者】
【氏名】下村 和也
(72)【発明者】
【氏名】長束 勇
(72)【発明者】
【氏名】上野 和広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 周之
【テーマコード(参考)】
2D044
【Fターム(参考)】
2D044CA00
(57)【要約】
【課題】土構造物の斜面を平滑にせずとも、漏水を防止することができる遮水層構築工法を提供する。
【解決手段】堤体Tの斜面Taに対して型枠10を設置し、その設置した型枠10内にベントナイト混合土2を充填すると共に、その設置した型枠10の外側に覆土3を撒き出し、その後、型枠10を引き抜き、ベントナイト混合土2と覆土3を転圧するという工程を繰り返し行うことにより、堤体Tの斜面Taに対してベントナイト混合土2を段状に構築してなる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土構造物の斜面に対してベントナイト混合土を段状に構築してなる遮水層構築工法。
【請求項2】
前記土構造物の斜面に対して所定の型枠を設置し、その設置した所定の型枠内にベントナイト混合土を充填すると共に、その設置した所定の型枠の外側に覆土を撒き出す第1工程と、
前記第1工程が終了した後、前記所定の型枠を引き抜き、前記ベントナイト混合土と前記覆土を転圧する第2工程と、を含み、
前記第1工程と前記第2工程を繰り返し行うことにより、前記土構造物の斜面に対して前記ベントナイト混合土を段状に構築してなる請求項1に記載の遮水層構築工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮水層構築工法に関する。
【背景技術】
【0002】
土木構造物のうち、天然材料である土質材料や岩石材料等を用いて構成される土構造物(例えば盛土、堤体、堤防等)は、最も材料コストが安いこともあり、古くからいたる場所に構築されてきた。
【0003】
ところで、このような土構造物は、地震や豪雨等によりしばしば自然災害に見舞われる。その被災状況はクラックが生じる程度の軽微なものから崩壊に至る甚大なものまで様々である。土構造物が崩壊した場合は、土構造物の崩壊箇所を含む部分を一旦撤去したのち、再度建設する等の措置が必要となる。しかしながら、崩壊に至るケースに比べ、クラックが生じたり、或いは、さらにクラックの周囲に段差が生じたりする軽微なケースが多い。また、自然災害以外にも、土構造物は経時劣化や地盤変動によってクラックや空隙を生じたり、コンクリート構造物等との境界に空隙を生じたりする場合がある。
【0004】
かくして、このような土構造物に生じたクラックや空隙などの欠陥を放置しておくと、漏水が発生し、崩壊等の事故に繋がる恐れがあることから、早期に修復する必要がある。そこで、土構造物に生じたクラック等を補修する方法として、図5に示すような前刃金工法が知られている。この前刃金工法は、ため池Wの堤体Tからなる土構造物に対して、刃金土Hを使用して、傾斜遮水ゾーンを構築するというものである。
【0005】
ところで、このような前刃金工法は、漏水を防止することができるものの、昨今、使用する刃金土Hが枯渇しかかっており、採取しづらくなってきているという問題があった。
【0006】
そこで、この前刃金工法の代替工法として、特許文献1に記載のような遮水シートを用いた工法が知られている。すなわち、この工法は、図6に示すように、堤体Tの斜面Taに遮水シートSを敷設し、この遮水シートSによって、漏水を防止するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009-179942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のような工法は、遮水シートSを敷設するにあたって、堤体Tの斜面Taを平滑にする必要があり、万が一、堤体Tの斜面Taに、図6(a)に示すような空隙Kが存在すると、この箇所から漏水が発生するという問題があった。或いは、遮水シートSが劣化することによって、パインピング現象が発生(図6(b)に示す矢印Y10参照)し、もって、図6(b)に示すように、遮水シートSが破損し、漏水が発生するという問題があった。そのため、遮水シートSを敷設するにあたっては、必ず、堤体Tの斜面Taを平滑にしなければならないといった問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、土構造物の斜面を平滑にせずとも、漏水を防止することができる遮水層構築工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記本発明の目的は、以下の手段によって達成される。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0011】
請求項1の発明によれば、土構造物(例えば、堤体T)の斜面(Ta)に対してベントナイト混合土(2)を段状に構築してなることを特徴としている。
【0012】
また、請求項2の発明によれば、上記請求項1に記載の遮水層構築工法において、前記土構造物(例えば、堤体T)の斜面(Ta)に対して所定の型枠(10)を設置し、その設置した所定の型枠(10)内にベントナイト混合土(2)を充填すると共に、その設置した所定の型枠(10)の外側に覆土(3)を撒き出す第1工程(図2(a)参照)と、
前記第1工程(図2(a)参照)が終了した後、前記所定の型枠(10)を引き抜き、前記ベントナイト混合土(2)と前記覆土(3)を転圧する第2工程(図2(b)参照)と、を含み、
前記第1工程(図2(a)参照)と前記第2工程(図2(b)参照)を繰り返し行うことにより、前記土構造物(例えば、堤体T)の斜面(Ta)に対して前記ベントナイト混合土(2)を段状に構築してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。なお、括弧内は、後述する実施形態の参照符号を付したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
請求項1に係る発明によれば、土構造物(例えば、堤体T)の斜面(Ta)に対して土質材料であるベントナイト混合土(2)を段状に構築しているから、土構造物の斜面を平滑にせずとも、漏水を防止することができる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、土構造物(例えば、堤体T)の斜面(Ta)に対して所定の型枠(10)を設置し、その設置した所定の型枠(10)内にベントナイト混合土(2)を充填すると共に、その設置した所定の型枠(10)の外側に覆土(3)を撒き出し、その後、所定の型枠(10)を引き抜き、ベントナイト混合土(2)と覆土(3)を転圧するという工程を繰り返し行うことにより、土構造物(例えば、堤体T)の斜面(Ta)に対してベントナイト混合土(2)を段状に構築するようにしている。これにより、簡単容易に、土構造物(例えば、堤体T)の斜面(Ta)に対してベントナイト混合土(2)を段状に構築することができる。さらには、所定の型枠(10)内にベントナイト混合土(2)を充填すると共に、その設置した所定の型枠(10)の外側に覆土(3)を撒き出しするようにしているから、ベントナイト混合土(2)と覆土(3)を簡単容易に構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、ため池の堤体からなる土構造物に本発明の一実施形態に係る遮水層を構築した状態を示す説明図、(b)は(a)に示すX部分の拡大図である。
図2】(a)は、堤体の斜面に同実施形態に係る型枠を用いて覆土及びベントナイト混合土の層を形成した状態を示す説明図、(b)は、(a)に示す状態から転圧機を用いて覆土及びベントナイト混合土を転圧している状態を示す説明図である。
図3】同実施形態に係る型枠の斜視図である。
図4】同実施形態に係る型枠を、堤体の斜面に横並びに複数並設し、該型枠内にベントナイト混合土を充填している状態を示す斜視図である。
図5】ため池の堤体からなる土構造物に刃金土を構築した状態を示す説明図である。
図6】(a)は、空隙が形成されているため池の堤体からなる土構造物の斜面に対して遮水シートを敷設した状態を示す説明図、(b)は、(a)に示す状態からパインピング現象が発生し、遮水シートが破損した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る遮水層構築工法の一実施形態を、図面を参照して具体的に説明する。なお、以下の説明において、上下左右の方向を示す場合は、図示正面から見た場合の上下左右をいうものとする。
【0018】
図1(a)に示すように、本実施形態に係る遮水層1は、例えば、ため池Wの堤体Tからなる土構造物の斜面Taに対して、段状に構築されるものである。より詳しく説明すると、図1(b)に示すように、遮水層1は、堤体Tの斜面Taに沿って、段状に構築されているベントナイト混合土2と、ベントナイト混合土2のため池W側の側面に構築されている覆土3と、で構成されている。このベントナイト混合土2は、母材となる砂質系土砂にベントナイトを一定量混合して得られる材料である。ベントナイトは、天然の粘土鉱物であり、吸水により膨潤する性質を有している。そのため、この膨潤性によって高い遮水性や自己修復性(損傷などの理由によって低下した遮水性が、徐々に回復する性質)の発揮が期待できる。それゆえ、このベントナイト混合土2は、ベントナイトの膨潤性により、母材の遮水性の改善が可能となる。また、ベントナイト混合土2で使用するベントナイトは、無機土質材料のため、長期的にみても不燃性で劣化・分解することが無く半永久的に遮水機能を保つことができる。なお、本実施形態においては、ベントナイト混合土2の透水係数を1×10-6cm/sec以下にすることによって(図5に示す刃金土Hの透水係数は1×10-5cm/sec)、薄層化を実現し、もって、コストダウンを図れるようにしている。
【0019】
以下、この遮水層1を構築する方法を具体的に説明することとする。
【0020】
<遮水層を構築する方法の説明>
遮水層1を構築するにあたっては、まず、図2(a)に示すように、堤体Tの斜面Taの最下面Ta1にベントナイト混合土2を充填し、約20cm程度の厚みのベントナイト混合土2の層を構築する。
【0021】
次いで、図3に示すような型枠10を使用する。この型枠10は、金属等で形成されており、図3に示すように、上面10aが開放され、下面10bが開放され、左側面10cが閉止され、右側面10dが閉止され、前面10eが閉止され、後面10fが開放された横長の逆台形状に形成されている。そして、図3に示すように、このような型枠10の左側面10cの上面10a側には、コ字状の左把持部10c1が一体的に設けられ、型枠10の右側面10dの上面10a側には、コ字状の右把持部10d1が一体的に設けられている。
【0022】
かくして、このように形成される型枠10は、堤体Tの斜面Taの最下面Ta1に構築されているベントナイト混合土2の層上に設置されると共に、図4に示すように、堤体Tの斜面Ta側に後面10fが位置するように設置される。そして、このように設置された型枠10は、堤体Tの斜面Taの長手方向に沿って、横並びに複数並設される。しかして、この状態で、図4に示すように、油圧ショベル(図示せず)のバケットBを用いて、型枠10の上面10a側から、型枠10内にベントナイト混合土2が充填されることとなる。この際、型枠10の後面10fが開放されているから、型枠10内にベントナイト混合土2を充填するだけで、ベントナイト混合土2を堤体Tの斜面Taに簡単容易に配置させることができる。しかして、複数並設された型枠10内にベントナイト混合土2が充填されると、型枠10の前面10e側に、覆土3が撒き出しされることとなる。
【0023】
かくして、このように、型枠10内にベントナイト混合土2が充填され、型枠10の前面10e側に、覆土3が撒き出しされると、図2(a)に示すように、型枠10が矢印Y1方向に引き抜かれることとなる。この際、型枠10の下面10bが開放されているから、型枠10を引き抜いた際、型枠10内に充填されたベントナイト混合土2を、堤体Tの斜面Taに残置することができる。なお、型枠10を引き抜く際、型枠10の左把持部10c1及び右把持部10d1にワイヤー等が取り付けられ、引き抜かれることとなる。
【0024】
次いで、図2(b)に示すように、従来周知の構造である転圧機Rを用いて、覆土3及びベントナイト混合土2を転圧し、約20cm程度の厚みの覆土3及びベントナイト混合土2の層を構築する。
【0025】
かくして、上記のような型枠10及び転圧機Rを用いて、上記説明した処理を繰り返し行うことにより、約20cm程度の厚みの覆土3及びベントナイト混合土2の層を段状に形成することができることとなる。これにより、図1(a)に示すような、遮水層1が、堤体Tの斜面Taに構築されることとなる。
【0026】
しかして、以上説明した本実施形態に示す方法にて、堤体Tの斜面Taに対してベントナイト混合土2を段状に構築するようにすれば、堤体Tの斜面を平滑にせずとも、漏水を防止することができる。すなわち、ベントナイト混合土2は、土質材料であるから、堤体Tの斜面Taが平滑になっておらず岩などが出て凹凸形状になっていたとしても、その凹凸部分にベントナイト混合土2が入り込んで馴染むこととなり、もって、パインピングの原因となる図6(b)に示すような空隙Kが堤体Tの斜面Taに形成される事態を防止することができる。それゆえ、堤体Tの斜面Taに対してベントナイト混合土2を段状に構築するようにすれば、堤体Tの斜面Taを平滑にせずとも、漏水を防止することができる。
【0027】
また、本実施形態においては、堤体Tの斜面Taに対して型枠10を設置し、その設置した型枠10内にベントナイト混合土2を充填すると共に、その設置した型枠10の前面10a側に覆土3を撒き出し、その後、型枠10を引き抜き、ベントナイト混合土2と覆土3を転圧するという工程を繰り返し行うことにより、堤体Tの斜面Taに対してベントナイト混合土2を段状に構築することができる。これにより、簡単容易に、堤体Tの斜面Taに対してベントナイト混合土2を段状に構築することができる。
【0028】
さらに、本実施形態においては、型枠10内にベントナイト混合土2を充填し、型枠10の前面10e側に、覆土3を撒き出しするようにしているから、ベントナイト混合土2と覆土3を簡単容易に構築することが可能となる。
【0029】
なお、本実施形態において示した遮水層を構築する方法はあくまで一例であり、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において種々の変形・変更が可能である。例えば、本実施形態においては、土構造物として、ため池Wの堤体Tを例にして説明したが、それに限らず、漏水を防止する箇所であれば、汚染水等、どのような箇所にも適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 遮水層
2 ベントナイト混合土
3 覆土
10 型枠(所定の型枠)
T 堤体(土構造物)
Ta 斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6