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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097588
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】研磨装置および研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/013 20120101AFI20230703BHJP
   B24B 37/34 20120101ALI20230703BHJP
   B24B 49/04 20060101ALI20230703BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20230703BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
B24B37/013
B24B37/34
B24B49/04 Z
B24B49/12
H01L21/304 621D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021213796
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】木下 将毅
(72)【発明者】
【氏名】岸 貴士
(72)【発明者】
【氏名】宮川 俊樹
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA19
3C034BB93
3C034CA02
3C034CB03
3C158AA07
3C158AC02
3C158AC04
3C158CB06
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB14
5F057AA02
5F057AA24
5F057BA15
5F057CA12
5F057DA03
5F057EB11
5F057GA05
(57)【要約】
【課題】研磨パッドに設けられた透明窓の内面での結露を防止し、正確な膜厚を測定することができる研磨装置を提供する。
【解決手段】研磨装置は、研磨面2aを有する研磨パッド2と、ワークピースWを研磨面2aに押し付けるための研磨ヘッド1と、研磨パッド2内に配置された透明窓33と、研磨パッド2を支持する研磨テーブル3と、透明窓33の下方に配置され、透明窓33を通して光をワークピースWに導き、透明窓33を通してワークピースWからの反射光を受けるための光学式センサヘッド32と、透明窓33と光学式センサヘッド32との間の空間60を冷却するための冷却装置63を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面を有する研磨パッドと、
前記ワークピースを前記研磨面に押し付けるための研磨ヘッドと、
前記研磨パッド内に配置された透明窓と、
前記研磨パッドを支持する研磨テーブルと、
前記透明窓の下方に配置され、前記透明窓を通して光を前記ワークピースに導き、前記透明窓を通して前記ワークピースからの反射光を受けるための光学式センサヘッドと、
前記透明窓と前記光学式センサヘッドとの間の空間を冷却するための冷却装置を備えている、研磨装置。
【請求項2】
前記前記冷却装置は、前記空間内に露出する冷却面を有している、請求項1に記載の研磨装置。
【請求項3】
前記冷却装置の冷却動作を制御する動作制御部をさらに備えている、請求項1または2に記載の研磨装置。
【請求項4】
前記動作制御部は、前記ワークピースの研磨後に前記冷却装置の冷却動作を開始させるように構成されている、請求項3に記載の研磨装置。
【請求項5】
前記動作制御部は、前記ワークピースの研磨中に前記冷却装置の冷却動作を開始させるように構成されている、請求項3に記載の研磨装置。
【請求項6】
前記動作制御部は、前記研磨面の温度から前記空間内の温度を減算して温度差を算定し、前記温度差がしきい値以上に維持されるように、前記冷却装置の冷却動作を制御するように構成されている、請求項3乃至5のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項7】
前記空間内の湿度を低下させる除湿装置をさらに備えている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の研磨装置。
【請求項8】
ワークピースを研磨パッドの研磨面に押し付けて前記ワークピースを研磨し、
前記ワークピースの研磨中に、前記研磨パッド内に配置された透明窓を通して光を光学式センサヘッドから前記ワークピースに導き、前記ワークピースからの反射光を前記透明窓を通して前記光学式センサヘッドで受け、
前記透明窓と前記光学式センサヘッドとの間の空間を冷却装置により冷却する、研磨方法。
【請求項9】
前記前記冷却装置は、前記空間内に露出する冷却面を有している、請求項8に記載の研磨方法。
【請求項10】
前記冷却装置による前記空間の冷却は、前記ワークピースの研磨後に開始される、請求項8または9に記載の研磨方法。
【請求項11】
前記冷却装置による前記空間の冷却は、前記ワークピースの研磨中に開始される、請求項8または9に記載の研磨方法。
【請求項12】
前記研磨面の温度から前記空間内の温度を減算することで温度差を算定し、
前記温度差がしきい値以上に維持されるように、前記空間を前記冷却装置により冷却する、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の研磨方法。
【請求項13】
前記空間内の湿度を低下させることをさらに含む、請求項8乃至12のいずれか一項に記載の研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハ、基板、パネルなどの半導体デバイスの製造に使用されるワークピースを研磨しながら、ワークピースの膜厚を測定する技術に関し、特にワークピースからの反射光に含まれる光学情報に基づいてワークピースの膜厚を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、シリコンウェーハ上に種々の材料が膜状に繰り返し形成され、積層構造を形成する。この積層構造を形成するためには、最上層の表面を平坦にする技術が重要となっている。このような平坦化の一手段として、化学機械研磨(CMP)が使用されている。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は研磨装置によって実行される。この種の研磨装置は、一般に、研磨パッドを支持する研磨テーブルと、膜を有するウェーハを保持する研磨ヘッドと、研磨液(例えばスラリー)を研磨パッド上に供給する研磨液供給ノズルとを備える。研磨装置は、研磨ヘッドと研磨テーブルをそれぞれ回転させながら、研磨液供給ノズルから研磨液を研磨パッド上に供給する。研磨ヘッドは、ウェーハの表面を研磨パッドに押し付けることにより、ウェーハと研磨パッドとの間に研磨液が存在した状態で、ウェーハの表面を形成する膜を研磨する。
【0004】
絶縁膜やシリコン層などの膜の厚さ(以下、単に膜厚と称する)を測定するために、研磨装置は、一般に、光学式膜厚測定装置を備える。この光学式膜厚測定装置は、光源から発せられた光をセンサヘッドからウェーハの表面に導き、ウェーハからの反射光をセンサヘッドで受け、反射光のスペクトルを解析することで、ウェーハの膜厚を決定するように構成される。研磨装置は、決定された膜厚に基づいてウェーハの研磨を終了する、またはウェーハの研磨条件を変更することが可能である。
【0005】
ウェーハの研磨中は、研磨液や研磨屑が研磨パッド上に存在する。研磨液や研磨屑がセンサヘッドに付着すると、ウェーハに照射される光の強度と、ウェーハからの反射光の強度が低下し、正確な膜厚を測定することができない。そこで、センサヘッドとウェーハとの間に透明窓を配置する技術がある。透明窓は研磨パッド内に配置されており、光は透明窓を通じてウェーハに照射され、ウェーハからの反射光は透明窓を通過してセンサヘッドに受けられる。研磨パッドに設けられた透明窓は、研磨液や研磨屑がセンサヘッドに接触することを防止して、良好な光路を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-220683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ウェーハの研磨が終了すると、ウェーハの研磨された面または研磨パッドを洗浄するために、研磨パッド上に水が供給されることがある。しかしながら、研磨パッド上に供給された水は、研磨パッドに設けられた透明窓を冷却し、透明窓の内面(裏面)に結露が生じることがある。特に、ウェーハの研磨中は研磨パッドとウェーハとの摩擦により研磨パッドは高温となる。そして、ウェーハの研磨後に透明窓が水により急に冷却されると、透明窓の内面(裏面)に結露が生じやすい。透明窓の内面に発生した結露は、光の通過を妨げ、次のウェーハの研磨中の膜厚測定精度を低下させてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、研磨パッドに設けられた透明窓の内面での結露を防止し、正確な膜厚を測定することができる研磨装置および研磨方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、研磨面を有する研磨パッドと、前記ワークピースを前記研磨面に押し付けるための研磨ヘッドと、前記研磨パッド内に配置された透明窓と、前記研磨パッドを支持する研磨テーブルと、前記透明窓の下方に配置され、前記透明窓を通して光を前記ワークピースに導き、前記透明窓を通して前記ワークピースからの反射光を受けるための光学式センサヘッドと、前記透明窓と前記光学式センサヘッドとの間の空間を冷却するための冷却装置を備えている、研磨装置が提供される。
【0010】
一態様では、前記前記冷却装置は、前記空間内に露出する冷却面を有している。
一態様では、前記研磨装置は、前記冷却装置の冷却動作を制御する動作制御部をさらに備えている。
一態様では、前記動作制御部は、前記ワークピースの研磨後に前記冷却装置の冷却動作を開始させるように構成されている。
一態様では、前記動作制御部は、前記ワークピースの研磨中に前記冷却装置の冷却動作を開始させるように構成されている。
一態様では、前記動作制御部は、前記研磨面の温度から前記空間内の温度を減算して温度差を算定し、前記温度差がしきい値以上に維持されるように、前記冷却装置の冷却動作を制御するように構成されている。
一態様では、前記研磨装置は、前記空間内の湿度を低下させる除湿装置をさらに備えている。
【0011】
一態様では、ワークピースを研磨パッドの研磨面に押し付けて前記ワークピースを研磨し、前記ワークピースの研磨中に、前記研磨パッド内に配置された透明窓を通して光を光学式センサヘッドから前記ワークピースに導き、前記ワークピースからの反射光を前記透明窓を通して前記光学式センサヘッドで受け、前記透明窓と前記光学式センサヘッドとの間の空間を冷却装置により冷却する、研磨方法が提供される。
【0012】
一態様では、前記前記冷却装置は、前記空間内に露出する冷却面を有している。
一態様では、前記冷却装置による前記空間の冷却は、前記ワークピースの研磨後に開始される。
一態様では、前記冷却装置による前記空間の冷却は、前記ワークピースの研磨中に開始される。
一態様では、前記研磨面の温度から前記空間内の温度を減算することで温度差を算定し、前記温度差がしきい値以上に維持されるように、前記空間を前記冷却装置により冷却する。
一態様では、前記研磨方法は、前記空間内の湿度を低下させることをさらに含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透明窓と光学式センサヘッドとの間の空間内の温度は、冷却装置により冷却される。結果として、空間内の露点温度が下がり、空間に面する透明窓の内面での結露が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】研磨装置の一実施形態を示す模式図である。
図2】スペクトル処理装置によって生成されたスペクトルの一例を示す図である。
図3】透明窓と光学式センサヘッドの配置の一実施形態を示す断面図である。
図4】透明窓と光学式センサヘッドの配置の他の実施形態を示す断面図である。
図5】冷却装置の一実施形態を示す模式図である。
図6】冷却装置の一実施形態を示す模式図である。
図7】透明窓と光学式センサヘッドの配置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
図8】透明窓と光学式センサヘッドの配置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
図9】除湿装置の一実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、研磨装置の一実施形態を示す模式図である。図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド2を支持する研磨テーブル3と、半導体デバイスの製造に使用されるウェーハ、基板、パネルなどのワークピースWを研磨パッド2に押し付ける研磨ヘッド1と、研磨テーブル3を回転させるテーブルモータ6と、研磨パッド2上にスラリーなどの研磨液を供給するための研磨液供給ノズル5と、ワークピースWの研磨後に研磨パッド2上に純水を供給するための純水供給ノズル8を備えている。研磨パッド2の上面は、ワークピースWを研磨する研磨面2aを構成する。
【0016】
研磨ヘッド1はヘッドシャフト10に連結されており、ヘッドシャフト10は研磨ヘッドモータ18に連結装置17を介して連結されている。連結装置17の構成は特に限定されないが、プーリおよびベルトの組み合わせ、または歯車の組み合わせ、またはスプロケットとチェーンの組み合わせなどから構成されている。研磨ヘッドモータ18は、研磨ヘッド1をヘッドシャフト10とともに矢印で示す方向に回転させる。研磨テーブル3はテーブルモータ6に連結されており、テーブルモータ6は研磨テーブル3および研磨パッド2を矢印で示す方向に回転させるように構成されている。
【0017】
ワークピースWは次のようにして研磨される。研磨テーブル3および研磨ヘッド1を図1の矢印で示す方向に回転させながら、研磨液供給ノズル5から研磨液が研磨テーブル3上の研磨パッド2の研磨面2aに供給される。ワークピースWは研磨ヘッド1によって回転されながら、研磨パッド2上に研磨液が存在した状態でワークピースWは研磨ヘッド1によって研磨パッド2の研磨面2aに押し付けられる。ワークピースWの表面は、研磨液の化学的作用と、研磨液に含まれる砥粒および/または研磨パッド2の機械的作用により研磨される。
【0018】
研磨装置は、ワークピースWの膜厚を測定する膜厚測定装置20を備えている。膜厚測定装置20は、光を発する光源22と、光源22の光をワークピースWに照射し、ワークピースWからの反射光を受ける光学式センサヘッド32と、光学式センサヘッド32に連結された分光器40と、ワークピースWからの反射光の強度測定データに基づいてワークピースWの膜の厚さを決定するスペクトル処理装置45と、光学式センサヘッド32の上方に配置された透明窓33を備えている。透明窓33は研磨パッド2内に配置され、光学式センサヘッド32は、研磨テーブル3に取り付けられている。透明窓33および光学式センサヘッド32は、研磨テーブル3とともに回転する。
【0019】
研磨テーブル3が一回転するたびに、光源22から発せられた光は、光学式センサヘッド32に伝送され、光学式センサヘッド32からワークピースWの表面に導かれる。光はワークピースWの表面で反射し、ワークピースWの表面からの反射光は光学式センサヘッド32によって受けられ、分光器40に送られる。分光器40は所定の波長範囲に亘って反射光を波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を測定することで反射光の強度測定データを生成する。反射光の強度測定データは、分光器40からスペクトル処理装置45に送られる。
【0020】
スペクトル処理装置45は、反射光の強度測定データから、ワークピースWの反射光のスペクトルを生成するように構成されている。反射光のスペクトルは、反射光の波長と強度との関係を示す線グラフ(すなわち分光波形)として表される。反射光の強度は、反射率または相対反射率などの相対値として表わすこともできる。
【0021】
スペクトル処理装置45は、プログラムが格納された記憶装置45aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置45bを備えている。スペクトル処理装置45は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。記憶装置45aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置45bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、スペクトル処理装置45の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0022】
図2は、スペクトル処理装置45によって生成されたスペクトルの一例を示す図である。スペクトルは、光の波長と強度との関係を示す線グラフ(すなわち分光波形)として表される。図2において、横軸はワークピースWから反射した光の波長を表わし、縦軸は反射した光の強度から導かれる相対反射率を表わす。相対反射率とは、反射光の強度を示す指標値であり、光の強度と所定の基準強度との比である。各波長において光の強度(実測強度)を所定の基準強度で割ることにより、装置の光学系や光源固有の強度のばらつきなどの不要なノイズを実測強度から除去することができる。
【0023】
図2に示す例では、反射光のスペクトルは、相対反射率と反射光の波長との関係を示す分光波形であるが、反射光のスペクトルは、反射光の強度自体と、反射光の波長との関係を示す分光波形であってもよい。
【0024】
スペクトル処理装置45は、研磨テーブル3が一回転する間にワークピースWからの反射光の強度測定データを受け取り、この強度測定データから反射光のスペクトルを生成する。スペクトル処理装置45は、反射光のスペクトルからワークピースWの膜厚を決定するように構成されている。スペクトルに基づいてワークピースWの膜厚を決定する方法には、公知の技術が用いられる。例えば、スペクトル処理装置45は、反射光のスペクトルに最も形状が近い参照スペクトルを参照スペクトルライブラリの中から決定し、この決定された参照スペクトルに関連付けられた膜厚を決定する。他の例では、スペクトル処理装置45は、反射光のスペクトルに対してフーリエ変換を実行し、得られた周波数スペクトルから膜厚を決定する。
【0025】
図1を参照して、膜厚測定装置20の詳細について説明する。分光器40は、光検出器41を備えている。一実施形態では、光検出器41は、フォトダイオード、CCD、CMOS、またはInGaAs(インジウム・ガリウム・ヒ素)センサなどから構成されている。光学式センサヘッド32は、光源22および光検出器41に光学的に連結されている。光検出器41はスペクトル処理装置45に電気的に接続されている。
【0026】
膜厚測定装置20は、光源22から発せられた光をワークピースWの表面に導く投光用光ファイバーケーブル51と、ワークピースWからの反射光を受け、反射光を分光器40に送る受光用光ファイバーケーブル56を備えている。投光用光ファイバーケーブル51の先端および受光用光ファイバーケーブル56の先端は、研磨テーブル3内に位置している。光学式センサヘッド32は、投光用光ファイバーケーブル51の先端および受光用光ファイバーケーブル56の先端から構成されている。
【0027】
光源22は、光を投光用光ファイバーケーブル51を通じて光学式センサヘッド32に送り、光学式センサヘッド32は光を透明窓33を通じてワークピースWに向けて放つ。ワークピースWからの反射光は、透明窓33を透過し、光学式センサヘッド32に受けられる。さらに、ワークピースWからの反射光は、受光用光ファイバーケーブル56を通じて分光器40に送られる。分光器40は反射光をその波長に従って分解し、各波長での反射光の強度を所定の波長範囲に亘って測定する。分光器40は、反射光の強度測定データをスペクトル処理装置45に送る。スペクトル処理装置45は、反射光の強度測定データから反射光のスペクトルを生成し、反射光のスペクトルに基づいてワークピースWの膜厚を決定する。
【0028】
図3は、透明窓33と光学式センサヘッド32の配置の一実施形態を示す断面図である。図3に示すように、光学式センサヘッド32は研磨テーブル3内に設置され、透明窓33は研磨パッド2に形成された通孔34内に配置されている。透明窓33は、研磨パッド2の通孔34を完全に閉じており、これにより研磨液や研磨屑が光学式センサヘッド32に接触することが防止される。
【0029】
研磨パッド2内には空間60が形成されている。空間60は、透明窓33の内面(裏面)33aと、研磨パッド2の通孔34と、研磨テーブル3により形成されている。この空間60は、閉じられた空間である。空間60は、透明窓33と光学式センサヘッド32との間に位置している。透明窓33の内面33aと、光学式センサヘッド32は、空間60に面している。透明窓33の外面は、研磨パッド2の研磨面2aよりもやや低い位置にある。
【0030】
投光用光ファイバーケーブル51の先端および受光用光ファイバーケーブル56の先端から構成される光学式センサヘッド32は、空間60および透明窓33を通じて光をワークピースWに向けて放出し、ワークピースWからの反射光は、透明窓33および空間60を透過した後に光学式センサヘッド32によって受けられる。透明窓33は、光を透過させる材料から構成された窓である。透明窓33の材料は特に限定されないが、例えば透明な樹脂から構成されている。
【0031】
研磨装置は、空間60を冷却するための冷却装置63を備えている。冷却装置63の冷却面63aは、空間60に露出している。冷却装置63の例としては、冷却素子、冷却素子と熱伝導材料との組み合わせ、水冷装置などが挙げられる。冷却素子の例としてはペルチェ素子が挙げられる。熱伝導材料の例としては銅、アルミニウム、ステンレス鋼などの金属が挙げられる。
【0032】
図3に示す実施形態では、ペルチェ素子が冷却装置63に使用されている。冷却装置63を構成するペルチェ素子の一部は、空間60内に位置し、他の部分は研磨テーブル3に位置している。より具体的には、ペルチェ素子の冷却面63aは、空間60内に露出しており、ペルチェ素子の放熱面63bは研磨テーブル3内に配置されている。
【0033】
図示しないが、一実施形態では、図3に示す冷却装置63を構成する冷却素子(本実施形態ではペルチェ素子)の放熱面63bに、少なくとも1つの冷却素子(例えばペルチェ素子)の冷却面を接触させ、積層された複数の冷却素子を備えた冷却装置63を構成してもよい。積層された複数の冷却素子は、空間60内の熱を順次伝達させることができる。他の実施形態では、図3に示す冷却装置63を構成する冷却素子の放熱面63bに、水冷装置を接触させてもよい。
【0034】
冷却装置63は動作制御部65に接続されており、冷却装置63の冷却動作は動作制御部65によって制御される。動作制御部65は、プログラムが格納された記憶装置65aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置65bを備えている。動作制御部65は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。記憶装置65aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置65bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、動作制御部65の具体的構成はこれらの例に限定されない。
【0035】
ワークピースWの研磨中は研磨パッド2とワークピースWとの摩擦により研磨パッド2は高温となる。ワークピースWの研磨後は、ワークピースWの研磨された面の洗浄、または研磨パッド2の洗浄、または研磨パッド2のドレッシングなどの目的のために、純水供給ノズル8から純水が研磨パッド2の研磨面2aに供給される。純水の供給に伴い、透明窓33の温度が低下する。その結果、透明窓33の内面(裏面)33aに結露が生じることがある。透明窓33の内面33aに発生した結露は、光の通過を妨げ、次のワークピースの研磨中の膜厚測定精度を低下させてしまう。
【0036】
そこで、透明窓33の内面33aでの結露を防止するために、動作制御部65は冷却装置63を駆動させて、空間60を冷却させる。冷却装置63による空間60の冷却により、空間60内の露点温度が下がり、結果として、空間60に面する透明窓33の内面33aでの結露が防止される。
【0037】
動作制御部65は、ワークピースWの研磨後に冷却装置63の冷却動作を開始させるように構成されている。例えば、ワークピースWの研磨後であって、純水が研磨パッド2に供給される前または同時に、動作制御部65は、冷却装置63の冷却動作を開始させる。
【0038】
一実施形態では、動作制御部65は、ワークピースWの研磨中に冷却装置63の冷却動作を開始させるように構成されてもよい。ワークピースWの研磨中は、研磨パッド2とワークピースWとの摩擦熱により、空間60内の温度が上昇する。空間60内の温度が上昇すると、ワークピースWの研磨後に透明窓33が純水により冷却されたときに、透明窓33の内面33aに結露が生じやすい。そこで、動作制御部65は、ワークピースWの研磨中に冷却装置63により空間60を冷却させ、これにより空間60内の温度(すなわち露点温度)を低下させる。このような動作により、ワークピースWの研磨後に透明窓33が純水により冷却されたときに、空間60に面する透明窓33の内面33aでの結露を防止することができる。
【0039】
図4は、透明窓33と光学式センサヘッド32の配置の他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図3を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図4に示す実施形態では、研磨装置は、研磨パッド2の研磨面2a(および透明窓33)の温度を測定するパッド面温度測定装置67と、空間60内の温度を測定する内部温度測定装置68を備えている。
【0040】
パッド面温度測定装置67は、研磨パッド2の上方に配置された非接触型温度センサである。例えば、赤外線温度センサをパッド面温度測定装置67として使用することができる。内部温度測定装置68は、空間60内に配置されている。内部温度測定装置68が空間60内の温度を測定することができる限りにおいて、内部温度測定装置68の配置および構成は特に限定されない。
【0041】
パッド面温度測定装置67および内部温度測定装置68は、動作制御部65に接続されており、研磨面2aの温度の測定値および空間60内の温度の測定値は動作制御部65に送信されるようになっている。動作制御部65は、研磨面2aの温度の測定値および空間60の温度の測定値に基づいて冷却装置63の冷却動作を制御するように構成されている。より具体的には、動作制御部65は、研磨面2aの温度の測定値から空間60内の温度の測定値を減算して温度差を算定し、温度差がしきい値以上に維持されるように冷却装置63の冷却動作を制御する。
【0042】
このような冷却動作により、空間60内の温度は常に研磨面2aの温度よりも低く維持され、空間60に面する透明窓33の内面33aでの結露を防止することができる。結露を防止できる上記しきい値は、研磨装置が置かれる環境に依存しやすいので、しきい値は、過去の研磨時に得られた結露観察データから決定されてもよい。
【0043】
図5は、冷却装置63の他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図3を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。この実施形態では、冷却装置63として、冷却素子73と熱伝導材料75との組み合わせが用いられている。より具体的には、冷却素子73の全体は、空間60の下方に配置され、空間60外にある。熱伝導材料75は、冷却素子73の冷却面73aに接触している。熱伝導材料75の一部は空間60内に位置しており、他の部分は研磨テーブル3内に位置している。より具体的には、熱伝導材料75の一部は空間60内に露出しており、冷却装置63の冷却面63aは、熱伝導材料75の露出面から構成されている。冷却素子73の例としてはペルチェ素子が挙げられ、熱伝導材料75の例としては銅、アルミニウム、ステンレス鋼などの金属が挙げられる。
【0044】
図5に示す実施形態によれば、熱伝導材料75は冷却素子73により冷却され、空間60は熱伝導材料75により冷却される。ペルチェ素子などの冷却素子73の全体は、研磨テーブル3内に埋設されているので、冷却素子73から放熱された熱は、空間60には伝達されにくいという利点がある。
【0045】
図示しないが、一実施形態では、冷却素子73の放熱面73bに、少なくとも1つの冷却素子の冷却面を接触させ、積層された複数の冷却素子を備えた冷却装置63を構成してもよい。積層された複数の冷却素子は、空間60内の熱を順次伝達させることができる。他の実施形態では、冷却素子73の放熱面73bに、水冷装置を接触させてもよい。
【0046】
図6は、冷却装置63のさらに他の実施形態を示す模式図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図3を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。この実施形態では、冷却装置63として、水冷装置が用いられている。より具体的には、冷却装置63は、水などの冷却液が流れる冷却液流路77と、少なくとも一部が空間60内に露出する熱伝導材料78を備えている。冷却液流路77は、空間60の直下に位置しており、熱伝導材料78内を延びている。
【0047】
本実施形態では、熱伝導材料78の一部は空間60内に位置しており、他の部分は研磨テーブル3内に位置している。一実施形態では、熱伝導材料78の全体が空間60内に位置してもよい。冷却装置63の冷却面63aは、熱伝導材料78の露出面から構成されている。冷却液流路77を流れる冷却液は熱伝導材料78を冷却し、熱伝導材料78は空間60内を冷却することができる。
【0048】
冷却液流路77には流量制御弁79が設けられており、冷却液流路77を流れる冷却液の流量は流量制御弁79によって調節される。流量制御弁79は動作制御部65に電気的に接続されており、流量制御弁79の動作は動作制御部65によって制御される。
【0049】
図4を参照して説明した実施形態は、図5および図6を参照して説明した実施形態にも適用可能である。
【0050】
図7は、透明窓33と光学式センサヘッド32の配置のさらに他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成および動作は、図4を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図7に示す実施形態では、研磨装置は、空間60内の湿度を低下させる除湿装置85を備えている。除湿装置85は、空間60内に配置されている。除湿装置85の具体例としては、固体高分子電解質膜を備えた除湿素子、ドライガスを空間60内に供給するドライガス除湿装置、シリカゲルなどの除湿剤、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0051】
本実施形態では、除湿装置85は、固体高分子電解質膜を備えた除湿素子から構成されている。除湿装置85は、動作制御部65に接続されており、除湿装置85の除湿動作は動作制御部65によって制御される。除湿装置85は、空間60内の水分を除去することができるので、空間60に面する透明窓33の内面33aでの結露を防止することができる。
【0052】
一実施形態では、図8に示すように、研磨装置は、空間60内の湿度を測定する湿度測定装置86をさらに備えてもよい。湿度測定装置86は空間60内に配置されている。湿度測定装置86は、動作制御部65に接続されており、空間60内の湿度の測定値は動作制御部65に送信されるようになっている。動作制御部65は、空間60内の湿度の測定値に基づいて除湿装置85の除湿動作を制御するように構成されている。
【0053】
図9は、除湿装置85の他の実施形態を示す模式図である。この実施形態では、除湿装置85は、ドライガス除湿装置と除湿剤との組み合わせを備えている。より具体的には、除湿装置85は、空気などのドライガスが流れるドライガス循環ライン90と、ドライガス循環ライン90内に設けられた除湿剤92と、ドライガスをドライガス循環ライン90内で移送するファン95を有している。除湿剤92の例としては、シリカゲルが挙げられる。
【0054】
ドライガス循環ライン90は、空間60で開口し、空間60に連通している。ファン95が駆動されると、空気などのドライガスは、ドライガス循環ライン90から空間60内に流入し、空間60を満たし、さらに空間60からドライガス循環ライン90に流入する。空間60を流れたドライガスは、除湿剤92に接触し、除湿される。除湿されたドライガスは、ドライガス循環ライン90から空間60内に再び流入する。このようにして、ドライガスは、空間60と除湿剤92との間を循環する。一実施形態では、除湿剤92に代えて、固体高分子電解質膜を備えた除湿素子が設けられてもよい。
【0055】
図8を参照して説明した実施形態は、図9を参照して説明した実施形態に適用することができる。図7乃至図9を参照して説明した実施形態は、図3乃至図6を参照して説明した実施形態のいずれかと組み合わせてもよい。
【0056】
今まで説明した実施形態では、研磨装置は、1組の透明窓33および光学式センサヘッド32を備えているが、研磨装置は複数組の透明窓33および光学式センサヘッド32を備えてもよい。
【0057】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0058】
W ワークピース
1 研磨ヘッド
2 研磨パッド
2a 研磨面
3 研磨テーブル
5 研磨液供給ノズル
6 テーブルモータ
8 純水供給ノズル
10 ヘッドシャフト
17 連結装置
18 研磨ヘッドモータ
20 膜厚測定装置
22 光源
32 光学式センサヘッド
33 透明窓
34 通孔
40 分光器
41 光検出器
45 スペクトル処理装置
45a 記憶装置
45b 演算装置
51 投光用光ファイバーケーブル
56 受光用光ファイバーケーブル
60 空間
63 冷却装置
65 動作制御部
65a 記憶装置
65b 演算装置
67 パッド面温度測定装置
68 内部温度測定装置
73 冷却素子
75 熱伝導材料
77 冷却液流路
78 熱伝導材料
79 流量制御弁
85 除湿装置
86 湿度測定装置
90 ドライガス循環ライン
92 除湿剤
95 ファン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9