IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ADEKAの特許一覧

特開2023-9771化合物、重合体、重合性組成物、接着剤、コーティング剤、硬化物及び硬化物の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009771
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】化合物、重合体、重合性組成物、接着剤、コーティング剤、硬化物及び硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 251/34 20060101AFI20230113BHJP
   C08F 20/34 20060101ALI20230113BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20230113BHJP
【FI】
C07D251/34 G CSP
C08F20/34
C08F299/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113334
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 豊史
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】岡本 衆資
【テーマコード(参考)】
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
4J100AL66P
4J100BA11P
4J100BA34P
4J100BC43P
4J100BC75P
4J100CA01
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA01
4J100JA03
4J127AA01
4J127AA03
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC031
4J127BC051
4J127BC121
4J127BD431
4J127BE511
4J127BE51Y
4J127BF581
4J127BF58X
4J127BF58Z
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG05Z
4J127BG271
4J127BG27X
4J127BG27Y
4J127BG27Z
4J127BG311
4J127BG31X
4J127BG31Z
4J127CA01
4J127FA08
4J127FA14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】硬化時の収縮が少ない重合性組成物を提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表される基を有する化合物である。

式中、R及びRは、水素原子又はメチル基を表し、R、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環基、又は前記炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が、下記<群A>より選ばれる2価の基に置換された基を表し、*は結合手を表す。
<群A>:炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-SO2
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される基を有する化合物。
【化1】

式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環基、又は前記炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が、下記<群A>より選ばれる2価の基に置換された基を表し、
*は結合手を表す。
<群A>:炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-SO2
【請求項2】
が水素原子である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
複素環を含有する請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
分子内に2つ以上のウレタン結合を有する請求項1~3の何れか一項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物をモノマーとする重合体。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を含有する重合性組成物。
【請求項7】
請求項6に記載の重合性組成物を含有する接着剤。
【請求項8】
請求項6に記載の重合性組成物を含有するコーティング剤。
【請求項9】
請求項6に記載の重合性組成物の硬化物。
【請求項10】
請求項6に記載の重合性組成物に、光照射する工程を有する硬化物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物を重合する重合体の製造方法。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性の化合物並びにそれを用いた重合体及び重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ウレタン結合とアクリロイル基とを有するウレタンアクリレートは、UV硬化が可能であることからコーティング剤、接着剤、UV硬化塗料及びレジスト等に広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ウレタン結合、チオウレタン結合又はイミノ基を有するエチレン性不飽和基含有反応性ウレタン化合物及びそれを含む硬化性組成物が記載されており、柔軟性及び密着強度等の特性に優れた硬化物が得られることが記載されている。また、特許文献2には、シクロ環構造またはビシクロ環構造と、ヌレート環構造とを有するウレタン(メタ)アクリレート(A)とコロイダルシリカ(B)とを含有するコーティング用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が記載されており、硬度が高く、且つ、低硬化収縮の硬化塗膜が形成できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/146685号
【特許文献2】特開2010-083959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、硬化時の収縮が少ない重合性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、エチレン性不飽和結合を2つ有する基を化合物中に導入することで、重合体にしたときの体積変化が抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
本発明は、下記一般式(I)で表される基を有する化合物である。
【0008】
【化1】
式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環基、又は前記炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が、下記<群A>より選ばれる2価の基に置換された基を表し、
*は結合手を表す。
<群A>:炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-SO2
【発明の効果】
【0009】
本発明の化合物を用いた重合性組成物は、硬化収縮が少ないことから、コーティング剤や接着剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の化合物は、前記一般式(I)で表される基を有する化合物である。
【0011】
前記一般式(I)における炭素原子数1~20の炭化水素基は、炭素原子及び水素原子からなる炭素原子数1~20の基である。炭素原子数1~20の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基及び炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環含有基が挙げられる。
【0012】
炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基及び炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基等が挙げられる。
【0013】
炭素原子数1~20のアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。直鎖のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、iso-アミル、tert-アミル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルが挙げられる。分岐のアルキル基としては、iso-プロピル、sec-ブチル、tert-ブチル、iso-ブチル、iso-ペンチル、tert-ペンチル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-ヘプチル、3-ヘプチル、iso-ヘプチル、tert-ヘプチル、iso-オクチル、tert-オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、へブロタデシル、オクタデシル等が挙げられる。
【0014】
炭素原子数3~20のシクロアルキル基としては、炭素原子数3~20の飽和単環式アルキル基、炭素原子数3~20の飽和多環式アルキル基、及びこれらの基の環中の水素原子の1つ以上がアルキル基で置換された炭素原子数4~20の基が挙げられる。前記飽和単環式アルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル及びシクロデシル等が挙げられる。前記飽和多環式アルキル基としては、アダマンチル、デカハイドロナフチル、オクタヒドロペンタレン及びビシクロ[1.1.1]ペンタニル等が挙げられる。飽和単環式又は飽和多環式アルキル基の環中の水素原子を置換するアルキル基としては、前記炭素原子数1~20のアルキル基として例示した基が挙げられる。飽和多環式アルキル基の環中の水素原子の1つ以上が、アルキル基で置換された基としては、例えば、ボルニル等が挙げられる。
【0015】
炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基とは、アルキル基の水素原子が、シクロアルキル基で置換された炭素原子数4~20の基を意味する。シクロアルキルアルキル基中のシクロアルキル基は単環であってもよく、多環であってもよい。シクロアルキル基が単環である炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、2-シクロブチルエチル、3-シクロペンチルプロピル、4-シクロヘキシルブチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルメチル、2-シクロノニルエチル及び2-シクロデシルエチル等が挙げられる。シクロアルキル基が多環である炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基としては、3-3-アダマンチルプロピル及びデカハイドロナフチルプロピル等が挙げられる。
【0016】
炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環含有基は、芳香族炭化水素環を含み、複素環を含まない炭化水素基であり、脂肪族炭化水素基を有していてもよい。芳香族炭化水素環含有基としては、例えば、炭素原子数6~20のアリール基及び炭素原子数7~20のアリールアルキル基が挙げられる。
【0017】
炭素原子数6~20のアリール基は、単環構造であってもよく、縮合環構造であってもよく、更に2つの芳香族炭化水素環が連結したものであってもよい。炭素原子数6~20の縮合環構造のアリール基としては、2つ以上の芳香族炭化水素環が縮合した構造である炭素原子数7~20の炭化水素型芳香族縮合環基等が挙げられる。
【0018】
炭素原子数6~20の単環構造のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル等が挙げられる。炭素原子数7~20の炭化水素型芳香族縮合環基としては、例えば、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、ピレニル、フルオレニル及びインデノフルオレニル等が挙げられる。
【0019】
2つの芳香族炭化水素環が連結したアリール基は、2つの単環構造の芳香族炭化水素環が連結したものであってもよく、単環構造の芳香族炭化水素環と縮合環構造の芳香族炭化水素環とが連結したものであってもよく、縮合環構造の芳香族炭化水素環と縮合環構造の芳香族炭化水素環とが連結したものであってもよい。
2つの芳香族炭化水素環を連結する連結基としては、単結合、スルフィド基(-S-)及びカルボニル基等が挙げられる。
2つの単環構造の芳香族炭化水素環が連結したアリール基としては、例えば、ビフェニル、ジフェニルスルフィド、ベンゾイルフェニル等が挙げられる。
【0020】
炭素原子数7~20のアリールアルキル基は、アルキル基中の水素原子の1つ以上がアリール基で置換された基である。炭素原子数7~20のアリールアルキル基としては、例えば、ベンジル、フルオレニル、インデニル、9-フルオレニルメチル、α-メチルベンジル、α,α-ジメチルベンジル、フェニルエチル及びナフチルプロピル基等が挙げられる。
【0021】
炭素原子数1~20の炭化水素基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、メルカプト基及びイソシアネート基等が挙げられる。
【0022】
前記炭素原子数2~20の複素環基は、複素環式化合物から水素原子を1つ除いた基である。複素環基は、単環構造であってもよく、縮合環構造であってもよい。炭素原子数2~20の縮合環構造の複素環基としては、複素環と、複素環又は炭化水素環とが縮合した構造である炭素原子数3~20の複素環含有縮合環基等が挙げられる。具体的な複素環基としては、例えば、ピリジル、キノリル、チアゾリル、テトラヒドロフラニル、ジオキソラニル、テトラヒドロピラニル、メチルチオフェニル、ヘキシルチオフェニル、ベンゾチオフェニル、ピロリル、ピロリジニル、イミダゾリル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピリミジニ、フリル、チエニル、ベンゾオキサゾール-2-イル、チアゾリル、イソチアゾリ、オキサゾリル、イソオキサゾリル、モルホルニル等が挙げられる。
複素環基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、水酸基、アミノ基、カルボキシ基、エポキシ基、メルカプト基及びイソシアネート基等が挙げられる。
本発明においては、硬化性が良好であることから、炭素原子数2~10の複素環基が好ましい。
【0023】
前記炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の2つ以上が前記<群A>より選ばれる2価の基に置換された基は、該2価の基が隣り合う構造を有しない。
【0024】
本発明において、基の炭素原子数は、基中の水素原子が置換基で置換されている場合、その置換後の基の炭素原子数を規定する。例えば、前記炭素原子数1~20のアルキル基の水素原子が置換されている場合、炭素原子数1~20とは、水素原子が置換された後の炭素原子数を指し、水素原子が置換される前の炭素原子数を指すのではない。
また、本発明において、所定の炭素原子数の基中のメチレン基が2価の基で置き換えられた基の炭素原子数は、その置換前の基の炭素原子数を規定する。例えば、炭素原子数1~20のアルキル基中のメチレン基が2価の基で置き換えられた基の場合、炭素原子数1~20とは、アルキル基中のメチレン基が2価の基で置き換えられる前の炭素原子数を指し、置き換えられた後の炭素原子数を指すのではない。
【0025】
本発明の化合物は、前記一般式(I)で表される基を分子内に1~3有することが好ましく、1~2有することがより好ましく、特に1つ有することが、硬化収縮が少ないため好ましい。例えば、本発明の化合物が、後述するイソシアヌレート環を含有する場合、前記一般式(I)で表される基を分子内に1~3有することが好ましく、なかでも1~2有することが好ましく、特に1つ有することが好ましい。
【0026】
前記一般式(I)中のR及びRが水素原子である化合物は、硬化性に優れることから好ましい。
【0027】
前記一般式(I)中のR、R、R及びRが水素原子である化合物は、硬化収縮が少なく、硬化性に優れることから好ましい。
【0028】
前記一般式(I)中のRが水素原子である化合物は、硬化収縮が少ないことから好ましい。
【0029】
前記一般式(I)中のRが水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基である化合物は、硬化収縮が少ないことから好ましく、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基である化合物は、更に硬化性に優れることから好ましい。
【0030】
本発明の化合物は、複素環を有することが、硬化収縮が少ないため好ましく、含窒素複素環を有することがより好ましく、イソシアヌレート環を有することが特に好ましい。
【0031】
本発明の化合物は、分子内に2つ以上のウレタン結合を有することが、硬化収縮が少ないため好ましく、特に分子内に3つ以上のウレタン結合を有することが好ましい。なかでも、ウレタン結合を有する下記一般式(II)で表される基を有し、さらにその他のウレタン結合を1つ以上有することが好ましい。
【0032】
【化2】
式中、R11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
13、R14、R15、R16及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環基、又は前記炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が、下記<群A>より選ばれる2価の基に置換された基を表し、
*は結合手を表す。
<群A>:炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-SO2
【0033】
前記一般式(II)中のR11及びR12が水素原子である化合物は、硬化性に優れることから好ましい。
【0034】
前記一般式(II)中のR13~R16が水素原子である化合物は、硬化収縮が少なく、硬化性に優れることから好ましい。
【0035】
前記一般式(II)中のR17が水素原子又は炭素原子数1~20のアルキル基である化合物は、硬化収縮が少ないことから好ましく、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基である化合物は、更に硬化性に優れることから好ましい。
【0036】
本発明の化合物は、下記計算式より算出されるウレタン価が200g/eq.~400g/eq.であることが、硬化収縮が少ないため好ましく、ウレタン価が240g/eq.~300g/eq.であることがより好ましい。
(ウレタン価)=(分子量)/(分子内のウレタン結合数)
【0037】
本発明の化合物のうち、イソシアヌレート環を有するものとしては、下記一般式(a)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【化3】
式中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、
、R、R、R、R、R、R18、R19、R20及びR21は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~20の炭化水素基、炭素原子数2~20の複素環基、又は前記炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が、下記<群A>より選ばれる2価の基に置換された基を表し、
、X及びXは、それぞれ独立に、炭素原子数1~20の2価の炭化水素基、又は前記2価の炭化水素基中のメチレン基の1つ以上が、下記<群A>より選ばれる2価の基に置換された基を表し、
n及びmは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
<群A>:炭素-炭素二重結合、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-SO2
【0039】
前記一般式(a)中の炭素原子数1~20の2価の炭化水素基としては、前記一般式(I)における炭素原子数1~20の炭化水素基として例示した基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0040】
前記一般式(a)中のR~Rの好ましい基は、前記一般式(I)中のR~Rの好ましい基として挙げたものと同様である。
【0041】
前記一般式(a)中のn及びmが1であり、R、R19及びRが水素原子である化合物は、分子内に3つのウレタン結合を有する化合物であり、硬化収縮が少ないため好ましい。
【0042】
前記一般式(a)中のn及びmが1であり、R18及びR20が炭素原子数1~20の炭化水素基である化合物は、硬化収縮が少ないため好ましく、炭素原子数1~20のアルキル基又は炭素原子数6~20のアリール基であることがより好ましく、硬化性が良好なことから炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数6~10のアリール基であることが特に好ましい。
【0043】
前記一般式(a)中のX、X及びXが、炭素原子数1~20のアルキレン基である化合物は、硬化収縮が小さいことから好ましく、さらに硬化性が良好になることから炭素原子数1~5のアルキレン基であることがより好ましく、特に炭素原子数1~3のアルキレン基であることが好ましい。炭素原子数1~3のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、n-プロピレン基が挙げられる。
【0044】
前記一般式(a)中のX、X及びXが、炭素原子数1~20のアルキレン基である場合、該アルキレン基が直鎖状アルキレン基であることが、硬化収縮が小さいため好ましい。
【0045】
本発明の化合物の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0046】
【化4】
【0047】
【化5】
【0048】
本発明の重合体は、前記一般式(I)で表される基を有する化合物をモノマーとするものであり、前記一般式(I)で表される基を有する化合物を重合することで製造できる。前記重合体は前記化合物の単独重合体でもよく、エチレン性不飽和結合を有する他の化合物との共重合体でもよい。
重合方法は特に制限されず、溶媒を使用した溶液重合でもよく、モノマーが液状の場合は塊状重合でもよい。
本発明の重合体は、耐熱性に優れることから好ましい。
【0049】
重合体の重合方法としては、所望の分子量の重合体を形成できる方法であればよく、例えば、重合開始剤を用いることができる。
重合に用いる重合開始剤は、エチレン性不飽和結合を有する化合物の重合に用いられるラジカル重合開始剤であればよく、従来既知の化合物を用いることが可能である。ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤のいずれも用いることができる。
【0050】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンジルジメチルケタール等のベンジルケタール類;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ベンジル-1-ジメチルアミノ-1-(4’-モルホリノベンゾイル)プロパン、2-モルホリル-2-(4’-メチルメルカプト)ベンゾイルプロパン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1-ヒドロキシ-1-ベンゾイルシクロヘキサン、2-ヒドロキシ-2-ベンゾイルプロパン、2-ヒドロキシ-2-(4’-イソプロピル)ベンゾイルプロパン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、4-ブチルベンゾイルトリクロロメタン、4-フェノキシベンゾイルジクロロメタン等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のオキサイド類;3-(2-メチル-2-モルホリノプロピオニル)-9-メチルカルバゾール等のカルバゾール類;ベンジル、ベンゾイル蟻酸メチル等のα-ジカルボニル類;特開2000-80068号公報、特開2001-233842号公報、特開2005-97141号公報、特表2006-516246号公報、特許第3860170号公報、特許第3798008号公報、WO2006/018973号公報、特開2011-132215号公報、WO2015/152153号公報に記載の化合物等のオキシムエステル類;p-メトキシフェニル-2,4-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ナフチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-ブトキシスチリル)-s-トリアジン等のトリアジン類;過酸化ベンゾイル、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、エチルアントラキノン、1,7-ビス(9’-アクリジニル)ヘプタン、チオキサントン、1-クロル-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、フェニルビフェニルケトン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、2-(p-ブトキシスチリル)-5-トリクロロメチル-1,3,4-オキサジアゾール、9-フェニルアクリジン、9,10-ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、チオキサントン/アミン等が挙げられる。
【0051】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-メチル)二塩酸塩、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(イソブチレート)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1-[(1-シアノ-1-メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2-フェニルアゾ-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、ジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド等が挙げられ、収率が高いことから2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物が好ましい。
【0052】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、tert-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル 4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレート、2,2-ジ(4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキシル)プロパン、p-メンタンヒドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0053】
熱ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、和光純薬工業社製「AIBN」(2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル))、「V-40」(1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、「VAm-110」(2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、「V-601」(ジメチル2,2’-アゾビス(イソブチレート))、大塚化学社製「OTAZO-15」(1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、「MAIB」(ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート)等が挙げられる。
【0054】
使用する熱ラジカル重合開始剤としては、反応効率および安全性から10時間半減期温度が、40℃~80℃のものが好ましく、50℃~70℃がより好ましい。
【0055】
共重合体の場合に用いる、エチレン性不飽和結合を有する他の化合物としては、例えば、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸-N-オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸トリス(2-アクリロイルオキシエチル)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート等のアクリレート化合物;メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ターシャリーブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、トリメチロールプロパントリメタクリレート、イソシアヌル酸トリス(2-メタクリロイルオキシエチル)等のメタクリレート化合物等が挙げられる。
【0056】
アクリレート化合物及びメタクリレート化合物の少なくとも一方をモノマーとして共重合した重合体は、基材への密着性に優れることから好ましい。硬化収縮が少ないことから、本発明の化合物の比率が、全モノマー中に50wt%以上であることが好ましく、75wt%以上であることがより好ましく、90wt%以上であることが特に好ましい。
【0057】
本発明の重合性組成物は、前記化合物を含有するものである。前記化合物を含有する重合性組成物は、硬化収縮が小さいため好ましい。前記重合性組成物は、前記重合体を含有してもよく、また前記重合開始剤を含有してもよい。
前記重合性組成物を構成する各成分については上述した通りである。
【0058】
前記重合開始剤の含有量は、前記化合物又は前記重合体100質量部に対して0.1~10質量部であることが、硬化性に優れることから好ましく、1~5質量部であることがより好ましい。
【0059】
ラジカル重合開始剤の含有量は、「エチレン性不飽和結合を有する化合物」100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~8質量部、さらに好ましくは0.5~6質量部である。
【0060】
前記重合性組成物は、溶剤を含有してもよい。溶剤としては、重合性組成物の各成分(本発明の化合物等)を溶解又は分散し得るものであればよく、例えば、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、ジエチルケトン、アセトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン及び2-ヘプタノン等のケトン系溶剤;エチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン及びジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、3-メトキシブチルアセテート、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、コハク酸ジメチル及びテキサノール等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールモノエチルエーテル等のセロソルブ系溶剤;メタノール、エタノール、イソ-又はn-プロパノール、イソ-又はn-ブタノール及びアミルアルコール等のアルコール系溶剤;エチレングリコールモノメチルアセテート、エチレングリコールモノエチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート及びエトキシエチルプロピオネート等のエーテルエステル系溶剤;ベンゼン、トルエン及びキシレン等のBTX系溶剤;ヘキサン、ヘプタン、オクタン及びシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;テレピン油、D-リモネン及びピネン等のテルペン系炭化水素油;ミネラルスピリット、スワゾール#310(以上、コスモ松山石油製);及びソルベッソ#100(以上、エクソン化学製);等のパラフィン系溶剤;四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエチレン、塩化メチレン及び1,2-ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系溶剤;クロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素系溶剤;カルビトール系溶剤、アニリン、トリエチルアミン、ピリジン、酢酸、アセトニトリル、二硫化炭素、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド及び水等が挙げられ、これらの溶剤は1種又は2種以上の混合溶剤として使用することができる。収率が良いことから、エーテル系溶剤が好ましく、特に1,4-ジオキサンが好ましい。
【0061】
モノマー濃度をコントロールすることにより、分子量をコントロールすることができる。0.01M~1.0Mで重合することにより、重合体の重合平均分子量をコントロールできることから好ましい。モノマー濃度を0.01M~0.5Mにコントロールすることで分子量分布の狭い重合体を得ることができることからより好ましい。反応時間、ポリマーの収量などの効率を考慮すると、特に0.05M~0.3Mにコントロールすることが好ましい。
【0062】
前記重合性組成物は、紫外線吸収剤を含有してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、及び酸化チタン微粒子等の紫外線を吸収する無機微粒子等が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
前記重合性組成物は、目的に応じて種々の成分を含有することができる。例えば、耐候性を向上させる目的でヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を含有してもよく、耐熱性及び耐候性を向上させる目的で酸化防止剤を含有してもよく、保存安定性を向上させる目的でラジカル重合禁止剤を含有してもよい。
【0064】
前記重合性組成物の硬化は、重合性組成物が重合開始剤を含む場合には、前記重合開始剤からラジカルを発生させることにより行うことができる。重合開始剤が光ラジカル重合開始剤である場合は光の照射によりラジカルが発生し、熱ラジカル重合開始剤である場合は加熱によりラジカルが発生する。
【0065】
具体的な硬化方法としては、例えば、前記重合性組成物を基材に塗布し、必要に応じて乾燥した後、加熱又は紫外線等の光を照射することにより硬化膜を形成する方法等が挙げられる。硬化条件は、使用するモノマーと開始剤の種類により適宜設定すればよい。
【0066】
前記重合性組成物が光ラジカル重合開始剤を含む場合、光照射する工程を有する製造方法によって硬化物を製造することができる。光源としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、発光ダイオード、CRT光源等が挙げられるが、好ましくは、波長300~450nmの光を発光する超高圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯等が用いられる。
【0067】
本発明の重合性組成物及び硬化物は、硬化性塗料、ワニス、硬化性接着剤、プリント基板、表示装置(カラーテレビ、PCモニタ、携帯情報端末及びデジタルカメラ等のカラー表示の液晶表示パネルにおけるカラーフィルタ、種々の表示用途用のカラーフィルタ、CCDイメージセンサのカラーフィルタ、タッチパネル、電気発光表示装置、プラズマ表示パネル、有機ELの黒色隔壁)、粉末コーティング、印刷インク、印刷版、接着剤、ゲルコート、電子工学用のフォトレジスト、電気メッキレジスト、エッチングレジスト、はんだレジスト、絶縁膜、ブラックマトリクス、及びLCDの製造工程において構造を形成するためのレジスト、電気及び電子部品を封入するための組成物、ソルダーレジスト、磁気記録材料、微小機械部品、導波路、光スイッチ、めっき用マスク、エッチングマスク、カラー試験系、ガラス繊維ケーブルコーティング、スクリーン印刷用ステンシル、ステレオリトグラフィによって三次元物体を製造するための材料、ホログラフィ記録用材料、画像記録材料、微細電子回路、脱色材料、画像記録材料のための脱色材料、マイクロカプセルを使用する画像記録材料用の脱色材料、印刷配線板用フォトレジスト材料、UV及び可視レーザー直接画像系用のフォトレジスト材料、プリント回路基板の逐次積層における誘電体層形成に使用するフォトレジスト材料及び保護膜等の各種の用途に使用することができる。
【0068】
本発明の重合性組成物は、硬化収縮が小さいことから位置精度に優れ、また密着性も高いため接着剤として特に有用である。また、硬化収縮が小さく、硬化後の変形が少ないことからコーティング剤としても特に有用である。
【0069】
本発明の硬化物の製造方法は、前記重合性組成物に光照射する工程を有するものであり、上述の重合性組成物の硬化物の製造方法で挙げた光照射する工程と同様とすることができる。
【実施例0070】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例等により何ら制限されるものではない。
【0071】
(中間体製造例1)
200mLの二つ口フラスコにトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート(15.66g;60.00mmol)、イミダゾール(10.20g;149.8mmol)及びN,N-ジメチルホルムアミド(50mL)を加えて均一系になるまで攪拌を行った。次に、tert-ブチルジメチルシリルクロライド(10.86g;72.00mmol)のDMF(40mL)溶液を滴下ロート入れて前記二つ口フラスコに装着し、系全体を窒素置換した。氷浴中で滴下ロートから前記溶液をゆっくりと滴下し、すべて加え終えた後に反応溶液を室温で12時間攪拌し、5%の炭酸ナトリウム水溶液(20mL)を加えて反応停止を行った。この反応溶液を酢酸エチル(400mL)と5%の炭酸ナトリウム水溶液(200mL)で分液し、有機層に硫酸ナトリウムを加えて2時間乾燥後にろ過し、得られたろ液を減圧濃縮することで溶媒を留去した。最後に、反応残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2/1→1/1→1/4)によって分画することで、目的のDiolを白色固体として得た(収量7.90g;21.1mmol、収率35%)。
m.p.=70.2-72.1 oC. 1H-NMR (400 MHz, CDCl3, at r.t., ppm) δ 4.14 (t, J = 5.2 Hz, 4H), 4.06 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 3.86-3.81 (m, 6H), 2.66 (s, 2H), 0.86 (s, 9H), 0.04 (s, 6H);13C-NMR (100 MHz, CDCl3, at r.t., ppm) δ 150.48, 149.60, 60.58, 59.60, 45.29, 44.78, 25.89, 18.35, -5.37; IR (ATR, cm-1) ν 3249, 2936, 2930, 2861, 2858, 1675, 1448, 1354, 1322, 1253, 1192, 1094, 991, 913, 836, 773. HRMS m/z: [M+H]+ Calcd for [C15H30N3O6Si1]+376.19039; Found 376.19058.
【0072】
【化6】
【0073】
(中間体製造例2)
50mLのナスフラスコ中でDiol(1.50g;4.00mmol)及びジラウリン酸ジブチルすず(152mg;0.240mmol)をジクロロメタン(4.0mL)に溶解させ、窒素置換を行った。この溶液にベンジルイソシアナート(1.07g;8.04mmol)のジクロロメタン(4.0mL)溶液をシリンジでゆっくりと加えた後、反応溶液を60℃で4時間反応させた。次に、この反応溶液に1MのテトラブチルアンモニウムフルオライドのTHF溶液(4.4mL:4.4mmol)を加え、室温で2時間反応させた。この反応溶液を減圧濃縮することで溶媒を留去し、得られた反応残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/2→1/4)によって分画することで、目的のBU(Bn)OHを白色固体として得た(収量1.61g;3.05mmol、収率76%)。
m.p.=63.2-69.4 oC; 1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, at r.t., ppm) δ 7.67 (t, J = 6.2 Hz, 2H), 7.31-7.19 (m, 10H), 4.81 (s, 1H), 4.14 (t, J = 6.2 Hz, 8H), 3.98 (t, J = 5.4 Hz, 4H), 3.81 (t, J = 6.4 Hz, 2H), 3.51 (brs, 2H); 13C-NMR (100 MHz, DMSO-d6, at r.t., ppm) δ 156.27, 148.89, 148.86, 139.59, 128.24, 126.96, 126.77, 60.47, 57.42, 44.31, 43.75, 41.67; IR (ATR, cm-1) ν 3340, 3028, 2962, 2926, 1674, 1522, 1450, 1358, 1315, 1236, 1134, 1039, 760, 696; HRMS m/z: [M+Na]+ Calcd for [C25H29N5Na1O8]+550.19138; Found 550.19204.
【0074】
【化7】
【0075】
(実施例1)
30mLのナスフラスコ中でBU(Bn)OH(791mg;1.50mmol)及びジラウリン酸ジブチルすず(19mg;0.030mmol)をジクロロメタン(3.0mL)に溶解させ、窒素置換を行った。この溶液に1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(395mg;1.65mmol)をシリンジで加え、40℃で2時間反応させた。この反応溶液を減圧濃縮することで溶媒を留去し、得られた反応残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/2)によって分画することで、目的のBU(Bn)DUAを無色透明液体として得た(収量1.11g;1.45mmol、収率97%)。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, at r.t., ppm) δ 7.65 (t, J = 6.0 Hz, 2H), 7.30-7.18 (m, 11H), 6.32 (dd, J = 1.6, 17.6 Hz, 2H), 6.14 (dd, J = 10.0, 10.8 Hz, 2H), 5.93 (dd, J = 1.2, 10.0 Hz, 2H), 4.21-3.94 (m, 20H), 1.24 (s, 3H);13C-NMR (100 MHz, DMSO-d6, at r.t., ppm) δ 165.45, 156.08, 154.69, 148.89, 148.82, 133.68, 133.55, 131.69, 128.23, 128.12, 128.01, 126.04, 125.80, 125.59, 125.19, 122.81, 121.54, 62.91, 60.98, 60.47, 41.71; IR (ATR, cm-1) ν 3327, 2956, 1682, 1522, 1452, 1406, 1363, 1240, 1182, 1061, 982, 808, 762, 698, 602; HRMS m/z: [M+Na]+ Calcd for [C36H42N6Na1O13]+789.27075; Found 789.27136.
【0076】
(実施例2)
10mLのナスフラスコにBU(Bn)DUA(307mg;0.400mmol)及び光重合開始剤A(8.5mg;0.016mmol)をN,N-ジメチルホルムアルデヒド(0.80mL)に溶解させ、窒素置換を行った。この反応系を室温で攪拌させながら、365nm、照度2000mWの光を6時間照射した。この反応溶液をメタノールに注いで生成物を再沈殿させ、得られた沈殿物を吸引ろ過で回収して100℃、0.10MPaの条件下で12時間加熱乾燥することで目的のPoly(BU(Bn)DUA)を淡黄色固体として得た(収量254mg、収率83%)。
Mn=25200, Mw=378000, Mw/Mn=15.00; 1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, at r.t., ppm) δ 7.62 (brs, 2H), 7.33-7.20 (brm, 11H), 4.27-3.98 (brm, 20H), 2.31 (brs, 1H), 1.68 (brs, 2H), 1.22 (brs, 3H);CPMAS (100 MHz, CDCl3, at r.t., ppm) δ 174.75, 157.41, 150.32, 140.50, 129.36, 62.53, 55.35, 43.87, 32.73, 19.44; IR (ATR, cm-1) ν 3342, 3028, 2953, 1682, 1518, 1452, 1371, 1317, 1236, 1142, 1078, 1041, 762, 698.
【0077】
【化8】
【0078】
(実施例3)
10mLのナスフラスコにBU(Bn)DUA(230mg;0.300mmol)及び光重合開始剤A(6.3mg;0.012mmol)をN,N-ジメチルホルムアルデヒド(3.0mL)に溶解させ、窒素置換を行った。この反応系を室温で攪拌させながら、365nm、照度2000mWの光を6時間照射した。この反応溶液をメタノールに注いで生成物を再沈殿させ、得られた沈殿物を吸引ろ過で回収して100℃、0.10MPaの条件下で12時間加熱乾燥することで目的のPoly(BU(Bn)DUA)を淡黄色固体として得た(収量180mg、収率78%)。
Mn=8600, Mw=14700, Mw/Mn=1.71; 1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6, at r.t., ppm) δ 7.62 (brs, 2H), 7.33-7.20 (brm, 11H), 4.27-3.98 (brm, 20H), 2.31 (brs, 1H), 1.68 (brs, 2H), 1.22 (brs, 3H);CPMAS (100 MHz, CDCl3, at r.t., ppm) δ 174.75, 157.41, 150.32, 140.50, 129.36, 62.53, 55.35, 43.87, 32.73, 19.44; IR (ATR, cm-1) ν 3342, 3028, 2953, 1682, 1518, 1452, 1371, 1317, 1236, 1142, 1078, 1041, 762, 698.
【0079】
(実施例4)
10mLのナスフラスコにBU(Bn)DUA(153mg;0.200mmol)及び光重合開始剤A(2.1mg;0.0040mmol)をN,N-ジメチルホルムアルデヒド(0.1mL)に溶解させ、窒素置換を行った。この反応系を室温で攪拌させながら、365nm、照度2000mWの光を6時間照射した。この反応溶液をメタノールに注いで生成物を再沈殿させ、得られた沈殿物を吸引ろ過で回収して100℃、0.10MPaの条件下で12時間加熱乾燥することで目的のPoly(BU(Bn)DUA)を淡黄色固体として得た(収量144mg、収率94%)。
CPMAS (100 MHz, CDCl3, at r.t., ppm) δ 174.75, 157.41, 150.32, 140.50, 129.36, 62.53, 55.35, 43.87, 32.73, 19.44; IR (ATR, cm-1) ν 3342, 3028, 2953, 1682, 1518, 1452, 1371, 1317, 1236, 1142, 1078, 1041, 762, 698.
【0080】
(比較例1)
BU(Bn)DUAに代えてビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート(111mg;0.300mmol)を用いた以外は、実施例3と同様にして比較重合体1を得た(収量101mg、収率91%)。
【0081】
(比較例2)
BU(Bn)DUAに代えてポリエチレングリコールジアクリレート(90.8mg;0.300mmol)を用いた以外は、実施例3と同様にして比較重合体2を得た(収量84.4mg、収率93%)。
【0082】
(比較例3)
BU(Bn)DUAに代えてトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(91.3mg;0.300mmol)を用いた以外は、実施例3と同様にして比較重合体3を得た(収量83.1mg、収率91%)。
【0083】
<体積変化率>
実施例3~5及び比較例1~3で得られた重合体について、以下のようにして体積変化率を測定した。結果を表1に示した。
モノマー及びポリマーの密度を、ヘリウム雰囲気下においてSHIMADZU AccuPyc 1330で測定し、下記式から体積変化率を算出した。体積変化率が-とは体積収縮を、+とは体積膨張をそれぞれ表している。
[(モノマーの密度-ポリマーの密度)/モノマーの密度]×100
体積変化率が小さいほど、低カールのコーティング剤となることから好ましい。体積変化率は+5%~-5%であることが好ましく、+1%~-1%であることがより好ましい。
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示した通り、本発明の化合物は、重合体にしたときの体積変化率が小さく、硬化収縮が少ない。