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特開2023-97857熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、及びマイクロチャンネル熱交換器
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  • 特開-熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、及びマイクロチャンネル熱交換器 図1
  • 特開-熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、及びマイクロチャンネル熱交換器 図2
  • 特開-熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、及びマイクロチャンネル熱交換器 図3
  • 特開-熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、及びマイクロチャンネル熱交換器 図4
  • 特開-熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、及びマイクロチャンネル熱交換器 図5
  • 特開-熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、及びマイクロチャンネル熱交換器 図6
  • 特開-熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、及びマイクロチャンネル熱交換器 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097857
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、及びマイクロチャンネル熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 3/04 20060101AFI20230703BHJP
   F28F 3/00 20060101ALI20230703BHJP
   F28F 3/08 20060101ALI20230703BHJP
   F28D 9/02 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
F28F3/04 A
F28F3/00 311
F28F3/08 311
F28D9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214214
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西田 耕作
(72)【発明者】
【氏名】赤田 郁朗
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA18
3L103AA37
(57)【要約】
【課題】高い強度と高い熱通過率との双方を実現した熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、及びマイクロチャンネル熱交換器を提供する。
【解決手段】第1熱交換器用プレートは、第1開口によって形成される入口ヘッダと、第2開口によって形成される出口ヘッダと、入口ヘッダから出口ヘッダに向かう流体の流路を複数本の並列流路に仕切るように、入口ヘッダと出口ヘッダとの間に設けられる複数の仕切壁と、複数の仕切壁を連結する連結部とを備え、複数の仕切壁のうち1以上の仕切壁は、流体の流れ方向における連結部の位置において切欠きを有し、切欠きを有する仕切壁を挟んで両側にある一対の並列流路は切欠きを介して互いに連通する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口によって形成される入口ヘッダと、
第2開口によって形成される出口ヘッダと、
前記入口ヘッダから前記出口ヘッダに向かう流体の流路を複数本の並列流路に仕切るように、前記入口ヘッダと前記出口ヘッダとの間に設けられる複数の仕切壁と、
前記複数の仕切壁を連結する連結部と、
を備え、
前記複数の仕切壁のうち1以上の前記仕切壁は、前記流体の流れ方向における前記連結部の位置において切欠きを有し、
前記切欠きを有する前記仕切壁を挟んで両側にある一対の前記並列流路は前記切欠きを介して互いに連通する
熱交換器用プレート。
【請求項2】
前記連結部は、プレート厚さ方向における前記複数の仕切壁のそれぞれの両端のうち、一方側にあるそれぞれの一端のみに連結される
請求項1に記載の熱交換器用プレート。
【請求項3】
前記切欠きは、前記複数の仕切壁のうち前記プレート厚さ方向における他方側の端に形成され、
前記切欠きの切欠き底と、前記連結部の前記他方側の面は、前記プレート厚さ方向において互いに同じ位置にある
請求項2に記載の熱交換器用プレート。
【請求項4】
前記連結部のうちで前記流体の前記流れ方向における上流端は、下流側に向かって円弧状に凹む
請求項2または3に記載の熱交換器用プレート。
【請求項5】
前記流体の流れ方向において、前記連結部の両端はそれぞれ、前記切欠きの両端に対して外側に位置する
請求項1乃至4の何れか1項に記載の熱交換器用プレート。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の複数の第1の熱交換器用プレートを備える熱交換器用プレート積層体。
【請求項7】
請求項6に記載の熱交換器用プレート積層体を備えるマイクロチャンネル熱交換器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、及びマイクロチャンネル熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のマイクロチャンネル熱交換器は、熱交換器用プレートとしてステンレスや銅などの金属の数ミリ以下の薄板を用い、これにエッチング加工を用いて微細な流路を形成し、これを積層させることによって異なる流体が伝熱壁を隔てて交互に流れながら熱交換を行う熱交換器である。マイクロチャンネル熱交換器は、水力直径が数ミリ以下の微細流路を多数並列に緻密に配置しながら積層させることで、小容積で大きな伝熱面積を持たせることができる。微細流路は出入口ヘッダと接続させた多数の並列流路から構成されることから、偏流が起こり易く、特に流体が液体や気液二相流であり、沸騰・蒸発を伴う場合には偏流を抑制させる構造を用いる必要がある。この点、例えば特許文献1では、第1流路を流れる第1流体の液相が蒸発することによって気泡が発生し、第1流体が逆流する結果、第1流路において第1流体の偏流が発生する事象が見出されている。そこで同文献では、第1流路の上流側の部位が波形に形成され、且つ、下流側の部位が直線状に形成される。これによって、気泡が下流側に流れやすくなり、第1流体の偏流が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-020068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の発明者らの知見によれば、エッチング加工を用いて熱交換器用プレートに微細な流路を形成する場合、片面からエッチングを行い半円形の断面流路を形成する方法と、両面からエッチングを行い、エッチング面を繋げて正方形や矩形に近い断面の流路を形成する方法がある。流路の水力直径が同じである場合、容積当たりの伝熱面積を増加させたコンパクトな熱交換器とするにはプレートの両側からエッチング加工を行う方が好ましい。また、半円形流路よりも正方形や矩形流路の方が角部の数が多くなり、角部に表面張力によって液膜が集まり、その他の部分で液膜厚さが薄くなることによって生じる蒸発伝熱促進効果により高い熱通過率が得られる。しかし、この構造では流路がスリット状になるため、流路長が長い場合には、流路壁の間隔を一定の値に保持することが困難になる。また、プレートを積層させて拡散接合によって組立てる際に、流路壁が変形して流路形状を維持できなくなり、接合不良や偏流を生じることになる。
さらに上記特許文献において第1流体の偏流を抑制する一定の効果が発揮されるものの、更なる改善の余地がある。
【0005】
本開示の目的は、コンパクトさと高い熱通過率との双方を実現した熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、及びマイクロチャンネル熱交換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の少なくとも一実施形態に係る熱交換器用プレートは、
第1開口によって形成される入口ヘッダと、
第2開口によって形成される出口ヘッダと、
前記入口ヘッダから前記出口ヘッダに向かう流体の流路を複数本の並列流路に仕切るように、前記入口ヘッダと前記出口ヘッダとの間に設けられる複数の仕切壁と、
前記複数の仕切壁を連結する連結部とを備え、
前記複数の仕切壁のうち1以上の前記仕切壁は、前記流体の流れ方向における前記連結部の位置において切欠きを有し、
前記切欠きを有する前記仕切壁を挟んで両側にある一対の前記並列流路は前記切欠きを介して互いに連通する。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態に係る熱交換器用プレート積層体は、
前記入口ヘッダから前記出口ヘッダまで第1の流体が流れるように構成される、上記の複数の第1の熱交換器用プレートと、
前記入口ヘッダから前記出口ヘッダまで第2の流体が流れるように構成され、前記複数の第1の熱交換器用プレートと交互に配置される、上記の複数の第2の熱交換器用プレートとを備える。
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係るマイクロチャンネル熱交換器は、上記の熱交換器用プレート積層体を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、コンパクトさと高い熱通過率との双方を実現した熱交換器用プレート、熱交換器用プレート積層体、及びマイクロチャンネル熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るマイクロチャンネル熱交換器の概念的な説明図である。
図2】一実施形態に係るマイクロチャンネル熱交換器の別の概念的な説明図である。
図3図2のA-A線矢視方向におけるプレート積層体の概念的な断面図である。
図4】一実施形態に係る第1熱交換器用プレートの概念的な説明図である。
図5】一実施形態に係る第2熱交換器用プレートの概念的な説明図である。
図6】一実施形態に係る仕切壁及び切欠きの概念的な拡大図である。
図7図6のB-B線矢視方向における仕切壁及び切欠きの概念的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
なお、同様の構成については同じ符号を付し説明を省略することがある。
【0012】
<1.マイクロチャンネル熱交換器1の概要>
図1図5を参照し、本開示の一実施形態に係るマイクロチャンネル熱交換器1(以下、単に「熱交換器1」という場合がある)の概要を例示する。図1は、一実施形態に係る熱交換器1の概念的な説明図である。図2は、一実施形態に係る熱交換器1の別の概念的な説明図である。図3は、図2のA-A線矢視方向におけるプレート積層体30の概念的な断面図である。図4は、一実施形態に係る第1熱交換器用プレート31の概念的な説明図である。図5は、一実施形態に係る第2熱交換器用プレート32の概念的な説明図である。
【0013】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る熱交換器1は、第1流体F1が循環するための1次冷媒回路11と、第2流体F2が循環するための2次冷媒回路12とを含む冷凍サイクルに組み込まれる。本実施形態では、気液2相状態で熱交換器1に流入する第1流体F1と、第1流体F1よりも高温の飽和温度を持つ気相状態で熱交換器1に流入する第2流体F2とが互いに熱交換する。第1流体F1は、熱交換によって加熱・蒸発されて熱交換器1から流出し、1次冷媒回路11を1次冷媒として循環する過程で気液2相状態に戻る。詳細な図示は省略するが、本例の1次冷媒回路11は、圧縮機、凝縮器、及び膨張弁などを備え、膨張弁によって膨張した気液2相状態の第1流体F1が熱交換器1に流入する。一方、第2流体F2は、熱交換によって冷却されて比較的低温の液相状態で熱交換器1から流出し、2次冷媒回路12を2次冷媒として循環する過程で他の熱媒体を冷却する。本例の2次冷媒回路12は、受液器(レシーバ)、ポンプ、及び冷却器などを備える。冷却器は、第2流体F2と、冷凍庫の庫内を循環する空気などの熱媒体とを熱交換させるように構成されてもよい。冷却器で熱交換して蒸発した第2流体F2は気相の状態で熱交換器1に戻る。なお一例として、第1流体F1は気相または液相のNHであり、且つ、第2流体F2は気相または液相のCOであるが、第1流体F1と第2流体F2は上記以外の冷媒であってもよく、第2流体F2はブラインなどの相変化をしない液体でもよい。
【0014】
本開示の一実施形態に係る熱交換器1は、積層された複数のプレート35と、複数のプレート35を両側から挟む一対のエンドプレート37、38とを含むプレート積層体30を備える。プレート積層体30に含まれるこれらプレートは、一例として拡散接合によって互いに接続されている。
【0015】
図1図2に示すように、エンドプレート37には、膨張弁を経由した気液2相状態の第1流体F1をプレート積層体30に供給する第1供給管51と、第1流体F1を排出する第1排出管59とが接合されている。第1供給管51及び第1排出管59は、それぞれ、積層された複数のプレート35の各々に設けられる第1連通口41及び第2連通口42と連通する。
【0016】
さらにエンドプレート37には、冷却器から供給される比較的高温の気相状態にある第2流体F2をプレート積層体30に供給する第2供給管52と、比較的低温の液相状態にある第2流体F2をレシーバに向けて排出するための第2排出管57とが設けられる。第2供給管52と第2排出管57は、それぞれ、積層された複数のプレート35の各々に設けられる第3連通口43及び第4連通口44と連通する。
【0017】
図2図3を参照し、本実施形態の複数のプレート35の構成についての説明を続ける。複数のプレート35の内部では、第1連通口41から供給される第1流体F1が流れる複数本の並列流路318と、第3連通口43から供給される第2流体F2が流れる複数本の並列流路328とが形成されている。複数本の並列流路318と複数本の並列流路328は、互いに仕切られている。
【0018】
具体的には、一対のエンドプレート37、38によって挟まれる複数のプレート35は、積層方向に沿って交互に配置される複数の第1熱交換器用プレート31及び複数の第2熱交換器用プレート32と、複数の仕切プレート33とを含む。第1熱交換器用プレート31及び第2熱交換器用プレート32は、各々、積層方向の両側から一対の仕切プレート33によって挟まれる。つまり、複数のプレート35では積層方向の一方側から順に、第1熱交換器用プレート31、仕切プレート33、第2熱交換器用プレート32、及び仕切プレート33が順に配置される構成が採用される。以下、これら3種のプレートを総称する場合に単に「プレート35」といい、プレート35の厚さ方向を「プレート厚さ方向」という場合がある。プレート厚さ方向は、プレート積層体30の積層方向と一致する。
【0019】
図4に示すように、第1熱交換器用プレート31は、第1連通口41を含む第1開口111によって形成される入口ヘッダ311と、第2連通口42を含む第2開口122によって形成される出口ヘッダ312と、入口ヘッダ311と出口ヘッダ312の間に設けられる複数本の仕切壁315とを備える。複数本の仕切壁315は、それぞれ、入口ヘッダ311と出口ヘッダ312に向かう第1流体F1の流路を複数本の並列流路318に仕切るように設けられる。本例の各仕切壁315は、入口ヘッダ311から出口ヘッダ312との間で直線状に延在する。以下の説明では、仕切壁315の延在方向を「第1流体F1の流れ方向」といい、複数の仕切壁315が並ぶ方向を「並列流路318の幅方向」という場合がある。なお、本実施形態では既述の通り、第1熱交換器用プレート31は一対の仕切プレート33によって挟まれている(図3参照)。従って、並列流路318は、複数本の仕切壁315と一対の仕切プレート33によって規定される。また、本実施形態の入口ヘッダ311は、下流側に向かうほど流路幅が狭くなるように構成されるが、他の実施形態に係る入口ヘッダ311は、上流側の流路幅と下流側の流路幅とが同じになるように構成されてもよい。
【0020】
図5に示すように、第2熱交換器用プレート32は、第3連通口43を含む第1開口221によって形成される入口ヘッダ321と、第4連通口44を含む第2開口222によって形成される出口ヘッダ322と、入口ヘッダ321と出口ヘッダ322の間に設けられる複数本の仕切壁325とを備える。複数本の仕切壁325は、それぞれ、入口ヘッダ321と出口ヘッダ322に向かう第2流体F2の流路を複数本の並列流路328に仕切るように設けられる。本例の各仕切壁325は、入口ヘッダ321から出口ヘッダ322との間で折れ曲がり且つ直線状に延在する。以下の説明では、仕切壁325の延在方向を「第2流体F2の流れ方向」といい、複数の仕切壁325が並ぶ方向を「並列流路328の幅方向」という場合がある。なお、本実施形態では既述の通り、第2熱交換器用プレート32は一対の仕切プレート33によって挟まれている(図3参照)。従って、並列流路328は、複数本の仕切壁315と一対の仕切プレート33によって規定される。
【0021】
図1図5を参照して説明した上記構造を有する熱交換器1での第1流体F1と第2流体F2の熱交換は、以下のように行われる。入口ヘッダ311から複数の並列流路318に流入する第1流体F1は、入口ヘッダ321から複数の並列流路328に流入する第2流体F2と、仕切プレート33を介して熱交換を行う。気液2相状態で流入した第1流体F1は、第1流体F1の流れ方向の下流側に向かうに従い加熱され、気化した状態で出口ヘッダ312から第1排出管59を経由して熱交換器1から排出される。一方、比較的高温の気相状態で流入した第2流体F2は、第2流体F2の流れ方向の下流側に向かうに従い冷却・凝縮され、比較的低温の液相状態で出口ヘッダ322から第2排出管57を経由して熱交換器1から排出される。
【0022】
<2.第1熱交換器用プレート31の構成の詳細>
図4図6、及び図7を参照し、本開示の一実施形態に係る第1熱交換器用プレート31の詳細を例示する。図6は、一実施形態に係る仕切壁315及び切欠き314の概念的な拡大図である。図7は、図6のB-B線矢視方向における仕切壁315及び切欠き314の概念的な断面図である。
【0023】
<2-1.連結部317と切欠き314の構造>
図6に示すように、本実施形態の第1熱交換器用プレート31は、複数の仕切壁315を連結する少なくとも1つの連結部317を備える。本実施形態では、全ての仕切壁315がそれぞれ、いずれかの連結部317に連結されるが、連結部317が介在しない2つ以上の仕切壁315が設けられてもよい。
【0024】
本実施形態では、複数の仕切壁315のうち1以上の仕切壁315は、第1流体F1の流れ方向における連結部317の位置において切欠き314を有する。切欠き314は、並列流路318の幅方向において連結部317と並ぶ。本例では、全ての仕切壁315のそれぞれに切欠き314が設けられる。また、本実施形態では、切欠き314を有する仕切壁315を挟んで両側にある一対の並列流路318は、切欠き314を介して互いに連通する。つまり、一対の並列流路318に連通する連通路316が切欠き314によって規定される。
【0025】
従って、図4の拡大図に例示されるように、第1流体F1は、切欠き314によって規定される連通路316を介して、複数の並列流路318の間を移動することができる。複数の並列流路318のそれぞれを流れる第1流体F1の混合と分岐が起こるので、複数の並列流路318における第1流体F1の流動様相を均等化できる。これにより、例えば並列流路318の下流側において、液相の第1流体F1が消失するドライアウトが局所的に発生するのを抑制できる。従って、第1熱交換器用プレート31は高い熱通過率を実現できる。また、連結部317が設けられることによって、第1熱交換器用プレート31の組立前及び組立時における仕切壁315の変形と位置ずれを抑制することができる。特に、第1熱交換器用プレート31などのプレート積層体30を構成するプレートに拡散接合が行われるとき、加熱開始直後は均等な加熱ができず、プレートに温度勾配ができる。結果、温度勾配に起因する膨張差によって仕切壁315が変形するおそれがあるが、本実施形態では、連結部317が設けられることによって、上記変形を抑制することができる。
【0026】
本開示の一実施形態に係る連結部317を作製するための加工方法は、例えば以下の通りである(図6図7参照)。はじめに、並列流路318が形成されるように、第1熱交換器用プレート31を作製するためのプレート状の基材に両面エッチング処理が施される。そして、連結部317の設置場所にのみ、両面エッチング処理に代えてハーフエッチング処理が施され、これにより連結部317が形成される。従って、プレート厚さ方向において、複数の仕切壁315のそれぞれの両端のうち一方側にあるそれぞれの一端315Aのみに、連結部317は接続される。従って、連結部317は、並列流路318を部分的に塞ぐ絞りとして機能することができる。なお、図7の例では、仕切壁315のうちでプレート厚さ方向の略中心から一端315Aまでの部位が、連結部317に連結される。
【0027】
発明者らの推察によれば、並列流路318に流れる第1流体F1の圧力は大きく変動することがある。例えば、液相の第1流体F1が沸騰することによる圧力変動(図4の下側の拡大図では、気泡を符号Buによって示す)、第1流体F1の乾き度の違いによって圧力差の違いが生じることがある。この場合、第1流体F1の偏流が発生しやすくなる。
この点、上記構成によれば、連結部317が、プレート厚さ方向における各仕切壁315の両端のうち一方側にある一端315Aのみに連結される。従って、連結部317は、並列流路318を部分的に塞ぐ絞りとしても機能する。これにより、連結部317において適度な圧力損失が発生し、上記のような圧力変動に起因した複数本の並列流路318間における圧力の差異を小さくすることができる。
従って、切欠き314によって規定される連通路316を第1流体F1が流れ易くなるので、複数本の並列流路318における第1流体F1の編流を抑制することができる。よって、第1熱交換器用プレート31は、高い熱通過率を達成することができる。
【0028】
なお、図4では、連結部317と切欠き314が左右一列に並ぶように構成されるが、本開示はこれに限定されず、例えば、切欠き314を避けた位置にて、連結部317が左右一列に並ぶように配置されてもよい。一例を挙げると、複数の仕切壁315のそれぞれの上流端を繋ぐように(つまり、入口ヘッダ311に臨むように)、連結部317は一列に配置されてもよい。別の例を挙げると、複数の仕切壁315のそれぞれの下流端を繋ぐように(つまり、出口ヘッダ312に臨むように)、連結部317は一列に配置されてもよい。さらに別の例を挙げると、図4で示される、切欠き314A、314Dの間、切欠き314D、314Cの間、または切欠き314C、314Bの間に、連結部317が一列に並ぶように配置されてもよい。そして、入口ヘッダ311から出口ヘッダ312に向かって規定間隔で連結部317が配置されてもよい。この場合、第1流体F1の流れ方向において規定間隔で配置される連結部317のいずれかが切欠き314と左右に一列に並ぶ。なお、入口ヘッダ311から出口ヘッダ312に向かって連結部317は等ピッチで配置されなくてもよい。
【0029】
図6図7に示すように、本実施形態の切欠き314は、複数の仕切壁315のうちプレート厚さ方向における他方側の端である他端315Bに形成される。切欠き314の切欠き底309と、連結部317の他方側の面317Fは、プレート厚さ方向において同じ位置にある。つまり、連結部317の面317Fと切欠き底309は直接的に連結される。上記構成によれば、切欠き314によって規定される連通路316を通過した第1流体F1は、連結部317の他方側の面317Fを伝って並列流路318に流入することができる。第1流体F1が連結部317を経由することで、連通路316から並列流路318に向かう第1流体F1の混合と分岐が生じるので、複数本の並列流路318における第1流体F1の編流を抑制することができ、第1熱交換器用プレート31は、高い熱通過率を達成することができる。
【0030】
また、図6に示すように、連結部317のうち第1流体F1の流れ方向における上流端399は、下流側に向かって円弧状に凹む。上記構成によれば、第1流体F1の流れ方向に沿って第1流体F1が連結部317を通過するときに発生する圧力損失が過大になるのを抑制できる。これにより、仕切壁315の延在方向に沿った第1流体F1の流れの剥離が生じるのを抑制できる。よって、圧力損失の増加を抑制できる。
【0031】
また、第1流体F1の流れ方向において、連結部317の両端はそれぞれ、切欠き314の両端に対して外側に位置する。上記構成によれば、連結部317による仕切壁315や並列流路328形状の変形を防止できる。
【0032】
<2-2.切欠き314(連通路316)の配置例>
図4を参照し、切欠き314の配置例を説明する。なお、以下の説明では、切欠き314と連結部317が第1流体F1の流れ方向において互いに同じ位置に配置される実施形態を例示するが、切欠き314と連結部317の流れ方向における位置は異なってもよい。
【0033】
本実施形態では、並列流路318の幅方向に配列される複数の切欠き314が、第1流体F1の流れ方向に沿って4列配置される。4列の切欠き314のうちで、最も上流側にある列の切欠き314は第1切欠き314Aであり、最も下流側にある列の切欠き314は第2切欠き314Bである。そして、第1流体F1の流れ方向において第2切欠き314Bと隣り合う切欠き314が第3切欠き314Cであり、第1切欠き314A及び第3切欠き314Cのそれぞれと隣り合う切欠き314が第4切欠き314Dである。つまり、複数の切欠き314は、上流側から順に、複数の第1切欠き314A(1列目)、複数の第4切欠き314D(2列目)、複数の第3切欠き314C(3列目)、複数の第2切欠き314B(4列目)を備える。第1切欠き314Aによって規定される連通路316は、第1連通路316Aである。同様に、第2切欠き314B、第3切欠き314C、及び第4切欠き314Dによって規定される連通路316は、それぞれ、第2連通路316B、第3連通路316C、及び第4連通路316Dである。なお、本実施形態では一例として、第1切欠き314A、第2切欠き314B、第3切欠き314C、及び第4切欠き314Dのそれぞれの個数は互いに同一である。
【0034】
本実施形態では、第1流体F1の流れ方向における入口ヘッダ311と1以上の切欠き314との間の第1距離は、第1流体F1の流れ方向における出口ヘッダ312と1以上との切欠き314との間の第2距離よりも小さい。より具体的な一例として、第1距離は、入口ヘッダ311から第1切欠き314Aの中央までの最短距離(寸法L1)であり、第2距離は、出口ヘッダ312から第2切欠き314Bの中央までの最短距離(寸法L2)である。上記構成によれば、第1距離が第2距離よりも短いので、第1切欠き314Aによって規定される第1連通路316A(連通路316)が、入口ヘッダ311に近づく。これにより、入口ヘッダ311と第1切欠き314Aとの間において、第1流体F1の液相の沸騰による気泡の発生、または気泡の成長が起きても、この気泡を第1切欠き314Aよって形成される第1連通路316Aに導くことができる。従って、気泡が入口ヘッダ311に逆流することに起因する、複数本の並列流路318における第1流体F1の偏流が抑制され、高い熱通過率を実現した第1熱交換器用プレート31を提供できる。
なお、他の実施形態では、切欠き314は、第1切欠き314A、第2切欠き314B、第3切欠き314C、または第4切欠き314Dの少なくともいずれかを含まなくてもよい。例えば、第2切欠き314B、第3切欠き314C、及び第4切欠き314Dが設けられない実施形態では、第2距離は、第1切欠き314Aから出口ヘッダ312との間の距離(寸法M)になる。この場合でも、上記した利点は得られる。同様に、第2切欠き314B、第3切欠き314C、及び第4切欠き314Dのうちで第3切欠き314Cと第4切欠き314Dのみが設けられる実施形態では、第2距離は、第3切欠き314Cから出口ヘッダ312までの間の距離となる。
【0035】
また本実施形態では、1以上の切欠き314は、複数の仕切壁315のそれぞれに含まれ、第1流体F1の流れ方向において互いに同じ位置に配置される複数の第1切欠き314Aを備える。従って、第1切欠き314Aによって規定される連通路316である第1連通路316Aは、並列流路318の幅方向に並ぶ。上記構成によれば、複数本の並列流路318のいずれにおいて気泡が発生しても、いずれかの第1連通路316Aに流入できるので、第1流体F1の偏流を抑制でき、気泡の入口ヘッダ311への逆流を抑制できる。
【0036】
また本実施形態では、第1距離(図4の例では寸法L1)は、並列流路318の全長(寸法K)に対して0%を上回り且つ10%未満であり、より好ましくは0%を上回り5%以下である。この構成によってもたらされる作用は以下の通りである。
上記構成によれば、第1距離は、並列流路318の全長に対して0%を上回り且つ10%未満であるので、入口ヘッダ311から複数本の並列流路318のそれぞれに流入して間もない第1流体F1が、第1切欠き314Aによって形成される第1連通路316Aを介して混流する。つまり、第1連通路316Aは、入口ヘッダ311と類似の機能を果たすこととなり、入口ヘッダ311から並列流路318に流入した第1流体F1は、各並列流路318の絞りを通過して、下流側に向けて供給される。さらに第1連通路316A内では、入口ヘッダ311のような右向き(一方向)の流れがなく、両方向の流れを可能とするため、複数の並列流路318において気液の割合(乾き度)の偏りがあっても、それを解消するように第1連通路316A内で第1流体F1の混合と再分配を行うことができる。また、並列流路318において第1流体F1の気泡が発生して逆流が起こる場合であっても、第1連通路316Aにおいて入口ヘッダ311からの流れと混合され、再分配されて並列流路318に供給される。従って、複数本の並列流路318の上流側における第1流体F1の乾き度を均等化させることができ、第1流体F1の偏流を抑制できる。よって、高い熱通過率を実現した第1熱交換器用プレート31を提供できる。
【0037】
また本実施形態の第1熱交換器用プレート31は、第1切欠き314Aよりも下流側に位置し、第1流体F1の流れ方向において第1切欠き314Aと隣り合う1以上の隣接切欠き313を備える。本例では、第4切欠き314Dが隣接切欠き313に該当する。そして、第1切欠き314Aと隣接切欠き313との間の最短距離である隣接距離(寸法A)が並列流路318の全長に対して25%以上且つ90%未満となる。この隣接距離は、並列流路318の全長に対して25%以上且つ35%未満であることがより好ましい。
第1切欠き314Aと隣接切欠き313とが、流れ方向において互いに近接し過ぎると、隣接切欠き313によって形成される連通路316(本例では第4連通路316D)での第1流体F1の流動が過剰に弱くなり、複数本の並列流路318の間における第1流体F1の混流が起こりづらくなる。この点、上記構成によれば、第1切欠き314Aと隣接切欠き313が適度に互いに離れるので、連通路316での第1流体F1の流動を適正化でき、複数本の並列流路318における第1流体F1の混ざり合いを促進できる。よって、高い熱通過率を実現した熱交換器用プレートを実現できる。
【0038】
なお、本開示は第4切欠き314Dが隣接切欠き313に該当する実施形態に限定されない。第2切欠き314B、第3切欠き314C、または第4切欠き314Dのうちで、第4切欠き314Dが設けられない実施形態では、第3切欠き314Cが第1切欠き314Aと第1流体F1の流れ方向において隣り合う隣接切欠き313に該当する。この場合の上記隣接距離は、並列流路318の全長に対して50%以上60%未満であることが好ましい。
【0039】
本実施形態では、上述したように、1以上の切欠き314は、第1切欠き314Aと第2切欠き314Bとを備える。上記構成によれば、第1切欠き314Aよりも下流側にある第2切欠き314Bによって形成される連通路316である第2連通路316Bを介して、第1流体F1が複数本の並列流路318の間を流れることができる。従って、第1流体F1が複数本の並列流路318の間で適度に混流することができる。よって、複数本の並列流路318の間における第1流体F1の偏流を抑制することができ、熱交換器用プレートは高い熱通過率を達成することができる。
【0040】
本実施形態の第2距離(図4の例では寸法L2)は、並列流路318の全長に対して、10%以上且つ35%以下である。発明者らの知見によれば、入口ヘッダ311に気液2相状態の第1流体F1が供給されるように第1熱交換器用プレート31が使用される場合、複数本の並列流路318の上流側では、並列流路318に応じて乾き度の違いが現れる傾向にある。特に入口ヘッダ311を形成する第1開口111のうちで上流側の部位(第1連通口41に近い部位)と接続する並列流路318では第1流体F1の乾き度が大きくなる傾向にあり、該並列流路318の流れ方向の下流側ではドライアウトが生じ易くなる傾向になる。一方で、並列流路318を流れる液相の第1流体F1の液膜は薄い方が高い熱通過率が発揮される。従って、ドライアウトが生じうる並列流路318に別の並列流路318から第1流体F1が流入する位置は、ドライアウトが生じうる位置に対して近接することが好ましい。この点、上記構成によれば、第2切欠き314Bによって規定される第2連通路316Bが出口ヘッダ312から適度に離れることにより、ドライアウトの発生が見込まれる領域よりも僅かに上流側で、第1流体F1の混流が促進される。よって、第1熱交換器用プレート31は、熱通過率の低下を抑制しつつ、第1流体F1のドライアウトを効果的に抑制することができる。
【0041】
既述の通り、本実施形態の切欠き314は、さらに、1以上の第3切欠き314Cを備える。第3切欠き314Cは、第1切欠き314Aと第2切欠き314Bとの間に位置し、第1流体F1の流れ方向において第2切欠き314Bと隣り合う。入口ヘッダ311と第3切欠き314Cとの間の距離(寸法B)は、並列流路318の全長に対して、50%以上且つ60%未満である。上記構成によれば、第3切欠き314Cによって形成される連通路316である第3連通路316Cを介して、複数本の並列流路318の間で第1流体F1は混流する。第1流体F1が混流する機会が増大するうえに、第1切欠き314Aと第3切欠き314Cとが、適度に互いに離れているので、第3連通路316Cにおける第1流体F1の流動を確保することができ、複数本の並列流路318の間での第1流体F1の混流をさらに効果的に促進することができる。
【0042】
既述の通り、本実施形態の切欠き314は、1以上の第4切欠き314Dを備える。第4切欠き314Dは、第1切欠き314Aと第2切欠き314Bとの間に位置し、第1流体F1の流れ方向に第1切欠き314Aと隣り合う。そして、入口ヘッダ311と第4切欠き314Dとの間の最短の距離(寸法A)は、並列流路318の全長に対して25%以上且つ35%未満である。上記構成によれば、第1切欠き314Aと第2切欠き314Bとの間にある第4切欠き314Dによって形成される連通路316である第4連通路316Dを介して、複数本の並列流路318の間で第1流体F1は混流する。第1流体F1が混流する機会が増大するうえに、第1切欠き314Aと第4切欠き314Dとが、適度に互いに離れているので、第4連通路316Dにおける第1流体F1の流動を確保することができ、複数本の並列流路318の間での第1流体F1の混流をさらに効果的に促進することができる。
【0043】
<3.第2熱交換器用プレート32の構成の詳細>
図5を参照し、第2熱交換器用プレート32の構成の詳細を例示する。第2熱交換器用プレート32は、第1熱交換器用プレート31の同様の構成を有する。具体的には、第2熱交換器用プレート32は、第1開口221に形成される入口ヘッダ321と、第2開口222によって形成される出口ヘッダ322と、入口ヘッダ321と出口ヘッダ322の間に設けられる複数の仕切壁325とを備える。複数の仕切壁325は、入口ヘッダ321から出口ヘッダ322に向かう第2流体F2の流路を仕切るように設けられる。
【0044】
<5.その他>
本開示は、上記した幾つかの実施形態に限定されない。並列流路318は、並列流路318の全長に亘って直線状に延在する代わりに、ジグザグパターンに形成される流路を部分的に含んでもよい。ジグザグパターンは、湾曲するコーナーを有するパターン、及び、直線状に折れ曲がるコーナーを有するパターンを含む概念である。
【0045】
<6.まとめ>
本開示は、例えば以下のように把握される。
【0046】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る熱交換器用プレート(第1熱交換器用プレート31)は、
第1開口(111)によって形成される入口ヘッダ(311)と、
第2開口(122)によって形成される出口ヘッダ(312)と、
前記入口ヘッダから前記出口ヘッダに向かう流体(第1流体F1)の流路を複数本の並列流路(318)に仕切るように、前記入口ヘッダと前記出口ヘッダとの間に設けられる複数の仕切壁(315)と、
前記複数の仕切壁を連結する連結部(317)と、
を備え、
前記複数の仕切壁のうち1以上の前記仕切壁は、前記流体の流れ方向における前記連結部の位置において切欠き(314)を有し、
前記切欠きを有する前記仕切壁を挟んで両側にある一対の前記並列流路は前記切欠きを介して互いに連通する。
【0047】
上記1)の構成によれば、両面エッチングを用いたコンパクトかつ高い熱通過率を有する熱交換器の製作において課題となる仕切壁や並列流路形状の変形、それによって生じる組立時の接合不良を防止できる。また、流体は、切欠きによって規定される連通路を介して、複数本の並列流路の間で移動することができる。これにより、乾き度の異なる流体が混流することができるので、複数本の並列流路における流体の流動様相が均等化する。従って、液相の流体が消失するドライアウトが並列流路で局所的に発生するのを抑制でき、熱交換器用プレートは高い熱通過率を実現できる。以上より、コンパクトさと高い熱通過率との双方を実現した熱交換器用プレートを提供できる。
【0048】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の熱交換器用プレートであって、
前記連結部は、プレート厚さ方向における前記複数の仕切壁のそれぞれの両端のうち、一方側にあるそれぞれの一端(315A)のみに連結される。
【0049】
発明者らの推察によれば、並列流路に流れる流体の圧力は大きく変動することがある。例えば、流体の気化に伴う気泡の発生または気泡の成長が特定の並列流路において起こると、該並列流路では流体圧力は大きく変動する。別の例を挙げると、流体が並列流路を流れるに従い流体の乾き度が増加すると、同様に流体圧力が大きく変動する。この点、上記2)の構成によれば、連結部が、プレート厚さ方向における各仕切壁の両端のうち一方側にある一端のみに連結される。従って、連結部は、並列流路を部分的に塞ぐ絞りとしても機能する。これにより、連結部において適度な圧力損失が発生し、上記のような圧力変動による複数本の並列流路間における圧力の差異を小さくすることができる。従って、切欠きによって規定される連通路を流体が流れ易くなるので、複数本の並列流路における流体の編流を抑制することができる。よって、熱交換器用プレートは、高い熱通過率を達成することができる。
【0050】
3)幾つかの実施形態では、上記1)または2)に記載の熱交換器用プレートであって、
前記切欠きは、前記複数の仕切壁のうち前記プレート厚さ方向における他方側の端(315B)に形成され、
前記切欠きの切欠き底(309)と、前記連結部の前記他方側の面(317F)は、前記プレート厚さ方向において互いに同じ位置にある。
【0051】
上記3)の構成によれば、切欠きによって規定される連通路を通過した流体は、連結部の他方側の面を伝って並列流路に流入することができる。流体が連結部を経由することで、連通路から並列流路に向かう流体の圧力損失が過大になることを抑制でき、連通路における流体の滞留を抑制することができる。これにより、複数本の並列流路における流体の編流を抑制することができ、熱交換器用プレートは、高い熱通過率を達成することができる。
【0052】
4)幾つかの実施形態では、上記2)または3)に記載の熱交換器用プレートであって、
前記連結部のうちで前記流体の前記流れ方向における上流端(399)は、下流側に向かって円弧状に凹む。
【0053】
上記4)の構成によれば、流れ方向に沿って流体が連結部を通過するときに発生する圧力損失が過大になるのを抑制することができ、連結部の上流側から下流側への流れ方向に沿った流体の流れが過度に弱まるのを抑制できる。つまり、切欠きによって規定される連通路における流体の流れが過度に支配的になるのを抑制できるので、複数本の並列流路の間における流体の流動様相を均等化することができる。
【0054】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から4)のいずれかに記載の熱交換器用プレートであって、
前記流体の流れ方向において、前記連結部の両端はそれぞれ、前記切欠きの両端に対して外側に位置する。
【0055】
上記5)の構成によれば、連結部による仕切壁や並列流路形状の変形を防止できる。
【0056】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から5)のいずれかに記載の熱交換器用プレート積層体(30)は、
上記1)乃至5)の何れかに記載の複数の第1の熱交換器用プレート(第1熱交換器用プレート31)を備える。
【0057】
上記6)の構成によれば、上記1)と同様の理由によって、コンパクトさと高い熱通過率との双方を実現した熱交換器用プレート積層体を提供できる。
【0058】
7)幾つかの実施形態では、上記6)に記載のマイクロチャンネル熱交換器は、
上記6)に記載の熱交換器用プレート積層体を備える。
【0059】
上記7)の構成によれば、上記1)と同様の理由によって、コンパクトさと高い熱通過率との双方を実現した熱交換器を提供できる。
【符号の説明】
【0060】
1 :熱交換器(マイクロチャンネル熱交換器)
30 :プレート積層体
31 :第1熱交換器用プレート
32 :第2熱交換器用プレート
35 :プレート
111、122 :第1開口
122、222 :第2開口
309 :切欠き底
311、321 :入口ヘッダ
312、322 :出口ヘッダ
314、324 :切欠き
315、325 :仕切壁
315A :一端
317、327 :連結部
317F :面
318、328 :並列流路
325 :仕切壁
327 :連結部
399 :上流端
F1 :第1流体
F2 :第2流体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7