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特開2023-97887液滴吐出モジュール、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097887
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】液滴吐出モジュール、液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20230703BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/16 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214259
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】甘利 清志
(72)【発明者】
【氏名】大島 久慶
(72)【発明者】
【氏名】青木 慎司
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF23
2C057AF93
2C057AN07
2C057AP25
2C057AP82
2C057BF04
(57)【要約】
【課題】駆動体を位置固定する固定部材が位置ズレしにくい液滴吐出モジュールを提供する。
【解決手段】ノズル302を開閉する弁体331と、長手方向に伸縮する駆動体(圧電素子332)と、駆動体を保持すると共に長手方向一端部に弁体を支持する保持体370と、保持体を収容する筒状のハウジング310bと、保持体の長手方向他端部に当接すると共に、長手方向に延びるすり割り溝361bが形成され、ハウジングに対して固定される固定部材361と、すり割り溝の間隔を広げる拡大部材(イモネジ380)とを備え、拡大部材によってすり割り溝の間隔を広げて固定部材の外周面を外側部材の内周面に固定することを特徴とする液滴吐出モジュール。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルを開閉する弁体と、
長手方向に伸縮する駆動体と、
前記駆動体を保持すると共に長手方向一端部に前記弁体を支持する保持体と、
当該保持体を収容する筒状のハウジングと、
前記保持体の長手方向他端部に当接すると共に、長手方向に延びるすり割り溝が形成され、前記ハウジングに対して固定される固定部材と、
当該すり割り溝の間隔を広げる拡大部材とを備え、
当該拡大部材によって前記すり割り溝の間隔を広げて前記固定部材の外周面を前記外側部材の内周面に固定することを特徴とする液滴吐出モジュール。
【請求項2】
前記拡大部材が、前記すり割り溝を横断するように前記固定部材に螺合するネジ部材を有することを特徴とする請求項1の液滴吐出モジュール。
【請求項3】
前記拡大部材が、前記すり割り溝の内面に長手方向に延びて形成された雌ネジ孔に対して長手方向から螺合するテーパネジ部材を有することを特徴とする請求項1の液滴吐出モジュール。
【請求項4】
ノズルを開閉する弁体と、
長手方向に伸縮する駆動体と、
前記駆動体を保持すると共に長手方向一端部に前記弁体を支持する保持体と、
当該保持体を収容する筒状のハウジングと、
前記保持体の長手方向他端部に当接すると共に、長手方向外側に雄ネジ部が形成された被螺合部材と、
前記被螺合部材の前記雄ネジ部に螺合する雌ネジ孔を有し、前記ハウジングに対して固定される第2固定部材とを備え、
前記被螺合部材の前記雄ネジ部を回転することで前記ハウジングに対する前記被螺合部材の長手方向位置を調整可能に構成したことを特徴とする液滴吐出モジュール。
【請求項5】
ノズルを開閉する弁体と、
長手方向に伸縮する駆動体と、
前記駆動体を保持すると共に長手方向一端部に前記弁体を支持する保持体と、
当該保持体を収容する筒状のハウジングと、
前記保持体の長手方向他端部に当接する被接着部材とを備え、
前記被接着部材は接着剤によって前記ハウジングに接着されることを特徴とする液滴吐出モジュール。
【請求項6】
前記接着剤がエポキシ系接着剤であることを特徴とする請求項5の液滴吐出モジュール。
【請求項7】
前記駆動体が圧電素子であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項の液滴吐出モジュール。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項の液滴吐出モジュールを複数備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項の液滴吐出モジュールまたは請求項8の液滴吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子などの駆動体を使用した液滴吐出モジュールと、当該液滴吐出モジュールを有する液滴吐出ヘッドおよび液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置を備えた画像形成装置として、例えば特許文献1(特開2020-23177号公報)などに記載のインクジェットプリンタがある。この液滴吐出装置のインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)には、液滴を記録媒体に向けて噴射するためのノズルが設けられている。ノズルの内側には弁体が配置され、当該弁体に対して、長手方向に伸縮作動する圧電素子などの駆動体(アクチュエータ)が連結される。
【0003】
駆動体が長手方向に伸縮作動(振動)することで弁体が開閉され、弁体が開いた瞬間にノズルから高圧インクが液滴となって噴射される。駆動体は、長手方向に弾性伸縮可能な保持体に圧縮状態で収容される。そして当該保持体の長手方向一端部に弁体が支持・連結される一方、反対側の長手方向他端部がインクジェットヘッドのハウジングに固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、弁体の変形量を調整するため図9の液滴吐出モジュール330は、保持体370の長手方向他端部を当接させるハウジング310b側の固定部材361の位置を軸線方向(上下方向)に調節し、当該固定部材361をボルト362で固定していた。しかしながら、ノズル302と弁体331の相対位置を正確に調整してボルト362を締付完了しても、液滴の吐出流量にはバラつきが発生することが分かった。
【0005】
すなわち、図10(a)~(c)に示すように、液滴吐出流量は弁開閉時間と弁体変位量(ストローク)によって決まる。弁体変位量は、圧電素子変位で弁体を封止するのに必要な弁体変位量にて決定される。
【0006】
弁体変位量は固定部材361の調整位置により決定されるが、固定部材361の調整位置決定後のボルト362固定にてストローク変化を起こす。この原因は、ボルト362を締め付ける際に当該ボルト362の皿状頭部がハウジング310bの側面と擦れ合ってボルト362の先端部が軸線方向に振れる(揺動する)からである。ボルト362の先端部が軸線方向に振れる(揺動する)と、ストローク変化により液滴吐出流量がバラつく。
【0007】
そこで本発明の目的は、駆動体を位置固定する固定部材の位置ズレを防止可能な液滴吐出モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の液滴吐出モジュールは、ノズルを開閉する弁体と、長手方向に伸縮する駆動体と、前記駆動体を保持すると共に長手方向一端部に前記弁体を支持する保持体と、当該保持体を収容する筒状のハウジングと、前記保持体の長手方向他端部に当接すると共に、長手方向に延びるすり割り溝が形成され、前記ハウジングに対して固定される固定部材と、当該すり割り溝の間隔を広げる拡大部材とを備え、当該拡大部材によって前記すり割り溝の間隔を広げて前記固定部材の外周面を前記外側部材の内周面に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって固定部材の位置ズレを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの外観説明図である。
図2】本実施形態に係る液滴吐出ヘッドの全体断面図である。
図3】液滴吐出ヘッドの加熱手段の位置を示す説明図である。
図4A】第1実施形態に係る液滴吐出モジュールの断面図である。
図4B】第2実施形態に係る液滴吐出モジュールの断面図である。
図4C】第3実施形態に係る液滴吐出モジュールの断面図である。
図5】第4実施形態に係る液滴吐出モジュールの断面図である。
図6A】第5実施形態に係る液滴吐出モジュールの断面図である。
図6B】第5実施形態に係る液滴吐出モジュールの分解図である。
図7】第6実施形態に係る液滴吐出モジュールの断面図である。
図8】液滴吐出装置の全体概略構成図である。
図9】従来の液滴吐出モジュールの断面図である。
図10】弁体変位量のバラつきによる液滴吐出流量のバラつきを説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(●液滴吐出ヘッド)
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態に係る液滴吐出ヘッドの外観説明図である。図1(a)は液滴吐出ヘッドの全体斜視図、図1(b)は同ヘッドの全体側面図である。
【0012】
液滴吐出ヘッド300は、ハウジング310aと、ハウジング310aに接合(積層)して設けたハウジング310bとを備える。ハウジング310aは金属等の熱伝導性の高い材質からなり、ハウジング310bは樹脂等の熱伝導性の低い材質からなる。
【0013】
また、ハウジング310aは、その正面と背面にヒータ340を備える。ヒータ340は温度制御が可能であり、ハウジング310aを加熱する。また、ハウジング310bは、その上部に電気信号の通信のためのコネクタ350を備える。
【0014】
ここで、ハウジング310aは第1筐体の一例であり、ハウジング310bは第2筐体の一例である。また、ヒータ340は加熱手段の一例である。なお、以下の説明において2つのハウジングを総称する場合は、ハウジング310と記す。
【0015】
図2は、本発明の実施形態に係る液滴吐出ヘッド300の全体断面図(図1(a)のA-A線矢視断面図)である。ハウジング310aは、液滴を吐出するノズル302を備えたノズル板301を保持する。また、ハウジング310aは、供給ポート311側からの液体をノズル板301上を経て回収ポート313側へ送る流路312(液体供給部)を備える。
【0016】
ハウジング310bは、ハウジング310aの流路312と接続する供給ポート311および回収ポート313を備える。供給ポート311と回収ポート313との間には、流路312内の液体をノズル302から液滴として吐出するための液滴吐出モジュール330を配置している。
【0017】
(●液滴吐出モジュール)
液滴吐出モジュール330は、ハウジング310aに設けたノズル302の数に対応しており、本例では1列に並べた8個のノズル302に対応する8個の液滴吐出モジュール330を備えた構成を示している。なお、ノズル302および液滴吐出モジュール330の数および配列は上記に限るものではない。
【0018】
例えば、ノズル302および液滴吐出モジュール330の数は、複数ではなく1個であってもよい。また、ノズル302および液滴吐出モジュール330の配列は、1列ではなく、複数列で配置してもよい。
【0019】
なお、図2において符号315は、ハウジング310aとハウジング310bとの接合部に設けたシール部材である。本例ではシール部材315としてOリングを用いており、ハウジング310aとハウジング310bとの接合部からの液体の漏れを防いでいる。
【0020】
上記の構成により、供給ポート311は、加圧した状態の液体(インクや塗料など)を外部から取り込み、液体を矢印a1方向へ送り、液体を流路312に供給する。流路312は、供給ポート311からの液体を矢印a2方向へ送る。そして、回収ポート313は、流路312に沿って配置したノズル302から吐出しなかった液体を矢印a3方向へ回収する。
【0021】
液滴吐出モジュール330は、ノズル302を開閉する弁体331と、弁体331を駆動する駆動体としての圧電素子332を備える。圧電素子332は電圧の印加により長手方向に伸縮作動する。ハウジング310bは、圧電素子332の上端部と対向する位置に規制部材314を備えている。規制部材314は、圧電素子332の上端部に当接しており、圧電素子332の固定点を成している。
【0022】
ここで、ノズル板301は板部材の一例であり、ノズル302は液滴吐出口の一例である。また、弁体331は弁体の一例であり、圧電素子332は駆動体の一例である。
【0023】
上記の構成において、圧電素子332を作動して弁体331を上方向へ動かした場合は、弁体331によって閉じていたノズル302が開いた状態になり、ノズル302から液滴を吐出することができる。また、圧電素子332を作動して弁体331を下方向へ動かした場合は、弁体331の先端部がノズル302に当接してノズル302が閉じた状態になり、ノズル302から液滴は吐出しなくなる。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係る液滴吐出ヘッド300の加熱手段との位置関係を示す説明図である。ハウジング310aは、ヒータ340を図3に破線で示すように、複数のノズル302を横断するようにしてノズル302の近傍に備えている。
【0025】
(●液滴吐出ヘッドの熱膨張)
次に、液滴吐出ヘッド300の熱膨張について説明する。圧電素子332で弁体331を動かしてノズル302を開閉する液滴吐出ヘッド300では、圧電素子332を高い周波数で駆動し続けると、圧電素子332の発熱により圧電素子332と弁体331に熱膨張が起こる。圧電素子332は、図2の説明で述べたように、圧電素子332の上端部の規制部材314を固定点としているため、熱膨張した圧電素子332は図4(a)の矢印a4方向へ伸びて、弁体331をノズル板301側へ押し下げる。
【0026】
また、圧電素子332からの熱は、圧電素子332と接している弁体331にも伝わり、弁体331自体も熱膨張により矢印a5方向へ伸びる。その結果、弁体331の先端部331aとノズル板301との接触部では、先端部331aをノズル板301に押し込む状態が発生する。
【0027】
圧電素子332の作動によって弁体331が変位する量は一定であるため、ノズル板301に対する弁体331の先端部331aの押込量が大きくなる程、ノズル302を開くことが難しくなる。例えば、熱膨張が起きていない状態では、圧電素子332の作動により弁体331が所定量だけ上昇し、ノズル板301と弁体331の先端部331aとの間に適正な隙間を形成する。流路312内の液体はこの隙間を通り、ノズル302から吐出することができる。
【0028】
しかし、熱膨張により弁体331の先端部331aがノズル板301に喰い込んだ状態では、弁体331を所定量上昇しても、ノズル板301と弁体331との間に適正な隙間を得ることができない。ノズル板301と弁体331との間の隙間は、適正値よりも狭い隙間となり、液体の流体抵抗が大きくなるため、ノズル302からの液滴吐出速度も低下し、狙いの吐出適量を得ることができなくなる。
【0029】
また、ハウジング310は、圧電素子332と接触していないため、圧電素子332からの熱によるハウジング310の熱膨張は殆ど生じない。すなわち、ハウジング310の内部では、熱膨張による圧電素子332および弁体331の伸びが発生している一方で、ハウジング310およびノズル板301は圧電素子332からの熱による熱膨張の影響を殆ど受けない。こうした熱膨張の差は、ノズル302と弁体331との水平方向における相対位置においても位置ずれを招く。
【0030】
また、ヘッド周囲の環境温度によっても、ノズル板301およびハウジング310aの伸縮が発生する場合がある。ハウジング310aの伸縮が発生した場合は、圧電素子332の発熱時と同様に、ノズル板301と弁体331の先端部331aとの間に適正な隙間が得られず、狙いの吐出適量を得ることができなくなる。
【0031】
上述のように、本実施形態は、液滴を吐出するノズル302を備えるノズル板301と、ノズル302を開閉する弁体331と、弁体331を駆動する圧電素子332と、ノズル板301、弁体331および圧電素子332を保持するハウジング310とを有する液滴吐出ヘッド300である。そして、ハウジング310のノズル302近傍に、ハウジング310を加熱するヒータ340を備える。これにより、温度変化による液滴の吐出ばらつきを低減することが可能な液滴吐出ヘッド300を提供することができる。
【0032】
また、ハウジング310は、ヒータ340を備えるハウジング310aと、ヒータ340を備えない筒状のハウジング310bとからなる。そして、圧電素子332はハウジング310bに備えている。これにより、ノズル302近傍に集中的に熱を供給することができ、弁体331に対するノズル302の位置補正の応答性を高めることができる。
【0033】
また、ハウジング310aは金属からなり、ハウジング310bは樹脂からなる。これにより、ノズル302周辺の温度を上げ易くなり、ノズル302の位置補正の応答性をより高めることができる。
【0034】
(●第1実施形態)
次に、液滴吐出モジュール330の第1実施形態を図4Aに基づいて説明する。ハウジング310bの下端部には圧縮バネ366が配設されている。また圧縮バネ366の上方のハウジング310b内に、圧電素子332を保持した保持体370が収容されている。この圧縮バネ366で保持体370が上方に付勢されている。
【0035】
なお、ノズル302の位置補正の応答性を高めるためには上述の構成とすることが好ましいが、これに代えて、ハウジング310aとハウジング310bとを単一の1つの部材で形成してもよい。また、ハウジング310aとノズル板301とを単一の1つの部材で形成してもよい。
【0036】
この保持体370の長手方向一端部に弁体331が支持されている。弁体331の軸部外周には、高圧インクの漏出防止用にOリング316が上下二段で装着されている。
【0037】
ハウジング310bの上端部に、圧電素子332を保持した保持体370の長手方向他端部を突当てる固定部材361が収容されている。当該固定部材361には、その上端部から長手方向に延びたすり割り溝361bが形成されている。すり割り溝361bの片側には雌ネジ孔361cが横方向に貫通形成され、すり割り溝361bの反対側はネジなしの止まり孔361dとなっている。
【0038】
そして、すり割り溝361bを横方向に横断するようにして、拡大部材ないしネジ部材としてのイモネジ380が雌ネジ孔361cに螺合されている。イモネジ380の先端部380aは、止まり孔361dの底部に当接している。ハウジング310bには、イモネジ380を挿入するためのバカ穴310b3が形成されている。
【0039】
なお、ネジ部材はイモネジ380に限られない。レイアウトに余裕があれば、ハウジング310bにネジ部材が着座しないように隙間を設け、ナベ小ネジ、バインドネジ等のネジ頭を持つものを使用してもよい。また、すり割り溝361bを横方向に拡大する機能を有するものであれば、ネジ部材に限らず使用可能である。
【0040】
固定部材361の上下方向の位置調整とハウジング310bに対する位置固定は、次のように行う。まず、図4Aでイモネジ380を緩めた状態で固定部材361の上下方向の位置調整を行う。その後、イモネジ380を図4Aに示すように矢印方向に締付け、イモネジ380の先端部380aで止まり孔361dの底部を押圧する。これにより、すり割り溝361bの間隔が図4Aで矢印方向に広がり、固定部材361の外周面が、ハウジング310bの内周面に圧着する。
【0041】
このようにして、固定部材361をハウジング310bに位置固定することができる。これにより、ハウジング310bに対する保持体370と弁体331の軸線方向位置が高精度に定まる。イモネジ380を締付ける際、当該イモネジ380はハウジング310bとまったく接触しないので、当該接触に伴う反力が固定部材361に作用することがない。したがって、図9(a)のボルト362による位置固定のように弁体変位量(ストローク)に影響することがない。
【0042】
したがって、図10(c)のようなチャンネル間の液滴吐出流量のバラつきを低減することができる。また、チャンネル間吐出流量のバラつきを低減することで、初期画像調整時間の短縮やヘッド交換時の調整時間短縮などの利便性も向上することができる。
【0043】
(●第2実施形態)
図4Aでは、イモネジ380をハウジング310bのバカ穴310b3を通してすり割り溝361bを横断するように固定部材361に螺合させたが、図4Bのように、ハウジング310bの外側で固定部材361に螺合させてもよい。この場合は、ハウジング310bにバカ穴を形成しなくて済む。イモネジ380の締付けにより、すり割り溝361bを拡大する作用は図4Aと同様である。
【0044】
(●第3実施形態)
図4Cは、すり割り溝361bの内面に長手方向(上下方向)に雌ネジ孔361eを形成し、当該雌ネジ孔361eに対してテーパ状のイモネジ380をねじ込むようにしたものである。イモネジ380は先細で基端部にいくにつれて太径となっているので、イモネジ380を雌ネジ孔361eにねじ込むにしたがってすり割り溝361bが左右方向に拡大する。したがって、図4A図4Bと同様に、イモネジ380をハウジング310bに接触させることなく、固定部材361をハウジング310bに固定することができる。これにより、ハウジング310bに対する保持体370と弁体331の軸線方向位置が高精度に定まる。
【0045】
(●第4実施形態)
図5は、固定部材361のすり割り溝361bを横断する方向にイモネジ380用の貫通孔を形成し、すり割り溝361bの片側に雌ネジ孔361cを形成し、反対側は雌ネジ孔のない貫通孔にしている。この雌ネジ孔のない貫通孔に被突当部材としての突当板381が収容されている。突当板381はイモネジ380の回転方向に回転可能な状態で貫通穴に収容されている。突当板381は銅合金系の材料で構成したり、製品の用途・特性等に対応してSUS、鉄、アルミ合金等で構成することも可能である。
【0046】
イモネジ380を締付けてその先端部380aを突当板381に突き当て、突当板381の背面を押圧すると、当該突当板381の前面がハウジング310bの内面に圧着する。そうすると、前述した実施形態と同様にすり割り溝361bが矢印方向(左右方向)に拡大し、固定部材361をハウジング310bに固定することができる。これにより、ハウジング310bに対する保持体370と弁体331の軸線方向位置が高精度に定まる。
【0047】
突当板381はイモネジ380の回転方向に回転可能な構成としているため、イモネジ380を締付ける際の締結力がハウジング310bに伝わることを抑制できる。これにより、イモネジ380によって固定部材361をハウジング310bに対して固定部材361を圧着させて固定する際にハウジング310bと固定部材361との位置関係がズレるのを防止できる。
【0048】
(●第5実施形態)
図6Aと6Bは、すり割り溝361bやイモネジ380を使用しないで、板状の第2固定部材390を使用して被螺合部材363の位置を固定する構成である。被螺合部材363は前述した固定部材361と同等の機能を有し、保持体370の長手方向他端部を被螺合部材363に突当てることで、ハウジング310bに対する保持体370と弁体331の軸線方向位置が高精度に定まる。すなわち、被螺合部材363の上端に長手方向外側に延びる雄ネジ部363fを形成し、この雄ネジ部363fを第2固定部材390の雌ネジ孔390bに螺合する。
【0049】
第2固定部材390は、雌ネジ孔390bの周りに複数のバカ穴390aが形成されている。これらバカ穴390aに挿入したボルト391の先端をハウジング310b側の雌ネジ孔310b4に螺合することで第2固定部材390をハウジング310bに固定する。
【0050】
被螺合部材363を回転することで被螺合部材363の上下方向位置を調整することができる。被螺合部材363を位置決めした後、雄ねじ部にナット392を螺合して緩み止めとする。このように第2固定部材390を使用した被螺合部材363の位置固定でも、ナット392を締付ける際にハウジング310bに力が作用しないので、被螺合部材363の位置がズレることがない。したがって、弁体変位量(ストローク)に対する影響を防止することができる。
【0051】
(●第6実施形態)
図7の第6実施形態は、前述した実施形態と異なり、特別な部材は使用せず、被接着部材364を接着剤395によってハウジング310bに直接固定するようにしたものである。被接着部材364は前述した固定部材361と同等の機能を有し、被接着部材364の接着の際にハウジング310bに力が作用しないので、被接着部材364を軸線方向で高精度に位置決めできる。
【0052】
これにより、ハウジング310bに対する保持体370と弁体331の軸線方向位置も高精度に定まる。接着剤395を使用するので、いったん被接着部材364を固定した後は被接着部材364を取外すことは困難であるが、簡単低コストに被接着部材364を位置固定することができるという利点がある。
【0053】
接着固定に用いる接着剤395は、エポキシ系接着剤を用いることで強度や対候性等を得ることができる。エポキシ系接着剤は高温硬化、長時間硬化を必要とするものが多いので、強度や耐候性等を満足する場合は、短時間で接合力を得られるUV接着剤や嫌気性接着剤を用いることも可能である。
【0054】
(●液滴吐出装置)
図8は、前述した液滴吐出モジュール330を使用した液滴吐出装置1000の全体概略構成図である。図8(a)は液滴吐出装置の側面図、図8(b)は同装置の平面図である。液滴吐出装置1000は、対象物の一例である被描画物100に対向して設置している。液滴吐出装置1000は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101およびY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。
【0055】
Y軸レール102は、X軸レール101がY軸方向に移動可能なようにX軸レール101を保持する。また、X軸レール101は、Z軸レール103がX軸方向に移動可能なようにZ軸レール103を保持する。そして、Z軸レール103は、キャリッジ1がZ軸方向に移動可能なようにキャリッジ1を保持する。
【0056】
液滴吐出装置1000は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ軸方向に動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX軸方向に動かすX方向駆動部72を備える。また、液滴吐出装置1000は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY軸方向に動かすY方向駆動部82を備える。さらに、液滴吐出装置1000は、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ軸方向に動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0057】
上述の第1乃至第4実施形態で説明した液滴吐出ヘッド300は、ヘッド300のノズル302が被描画物100に対向するようにヘッド保持体70に取り付けて使用する。上記のように構成した液滴吐出装置1000は、キャリッジ1をX軸、Y軸およびZ軸の方向に動かしながら、ヘッド保持体70に取り付けたヘッド300(図示せず)から被描画物100に向けて液体の一例であるインクを吐出し、被描画物100に描画を行う。
【0058】
「液体吐出装置」は、X軸、Y軸およびZ軸の3方向に平行移動可能かつX軸、Y軸およびZ軸の各軸のまわりに回転可能なロボットアームを備え、当該ロボットアームの先端に液滴吐出ヘッドを取り付けた構成としてもよい。この構成の場合、ロボットアームを被描画物に対して平行移動または回転しながら、液滴吐出ヘッドから被描画物へ液滴を向けて吐出をおこなうことで、被描画物に描画をおこなう。
【0059】
上述の「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターンや一様な塗料の膜などを形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。例えば前記圧電素子332は、長手方向に伸縮作動する他の駆動体に代替可能であり、たとえば電磁ソレノイドで長手方向に伸縮作動するピストンを圧電素子332の代わりに使用することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1:キャリッジ 70:ヘッド保持体
72:X方向駆動部 82:Y方向駆動部
92:第1のZ方向駆動部 93:第2のZ方向駆動部
100:被描画物 101:X軸レール
102:Y軸レール 103:Z軸レール
300:液滴吐出ヘッド 301:ノズル板
302:ノズル 310:ハウジング
310a:ハウジング 310b:ハウジング
310b3:バカ穴 310b4:雌ネジ孔
311:供給ポート 312:流路
313:回収ポート 314:規制部材
315:シール部材 316:Oリング
330:液滴吐出モジュール 331:弁体
331a:先端部 332:圧電素子(駆動体)
340:ヒータ 350:コネクタ
361:固定部材 361b:すり割り溝
361c:雌ネジ孔 361d:止まり孔
361e:雌ネジ孔 362:ボルト
363:被螺合部材 363a:雄ネジ部
364:被接着部材 366:圧縮バネ
370:保持体 380:イモネジ(ネジ部材、拡大部材)
380a:先端部 381:突当板
390:第2固定部材 390a:バカ穴
390b:雌ネジ孔 391:ボルト
392:ナット 395:接着剤
1000:液滴吐出装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2020-23177号公報
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10