(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097889
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230703BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
B41J2/14 301
B41J2/14 607
B41J2/18
B41J2/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214261
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】中島 牧人
(72)【発明者】
【氏名】甘利 清志
(72)【発明者】
【氏名】金松 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】村井 秀世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 辰己
(72)【発明者】
【氏名】和田 啓
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA18
2C056EA21
2C056FA04
2C056FA15
2C056HA05
2C056KB03
2C056KB08
2C056KB16
2C057AF63
2C057AG12
2C057AG44
2C057AG76
2C057AN07
2C057BA08
2C057BA14
2C057BF04
2C057DB01
2C057DB07
(57)【要約】
【課題】弾性部材の芯材端部に対する密着性を向上させることを課題とする。
【解決手段】インクを吐出するノズル14と、移動可能に設けられ、ノズル14を開閉する開閉弁31と、を備えた液体吐出ヘッド10であって、開閉弁31は芯材310を有し、芯材310はノズル14側の端部に芯材端部311を有し、芯材端部311は、その内側に、ノズル14側へ開口した凹部312を有し、芯材端部311の凹部312および外側の側面311aに跨ってシール部材40が設けられることを特徴とする。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口と、
移動可能に設けられ、前記吐出口を開閉する開閉弁と、を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記開閉弁は芯材を有し、
前記芯材の前記吐出口側の端部に芯材端部が設けられ、
前記芯材端部は、その内側に、前記吐出口側へ開口した凹部を有し、
前記芯材端部の外側の側面および前記凹部に跨って弾性部材が設けられることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記芯材端部の外側の側面に溝部が形成され、当該溝部に前記弾性部材が設けられる請求項1記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記弾性部材が接着剤により前記芯材端部に接着される請求項1または2いずれか記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記弾性部材の前記開閉弁の移動方向の厚みであって、その前記吐出口に対向する部分の厚みを厚みT1とし、前記弾性部材の前記開閉弁の移動方向の厚みであって、前記凹部を囲う前記芯材端部の部分である凸部の前記開閉弁の移動方向の前記吐出口側の端面に対応する部分の厚みを厚みT2とすると、
1.6≦T1/T2≦6に設定される請求項1から3いずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記弾性部材の、前記芯材端部の凹部を囲う凸部の外周端あるいは内周端に対応する部分に面取りがなされる請求項1から4いずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記吐出口が形成された吐出口形成部材を備え、
前記芯材端部の凹部を囲う凸部を有し、
前記弾性部材は、前記凸部よりも前記吐出口形成部材側において、前記吐出口形成部材と対向する平坦部を有し、
前記弾性部材の平坦部の径方向の幅をW1、前記芯材端部の前記凸部の径方向の幅をW2とすると、W1<W2に設定される請求項1から5いずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記弾性部材は前記芯材端部の外側の側面全周にわたって設けられる請求項1から6いずれか1項に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
請求項1から7いずれか1項に記載の液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドおよび液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉弁を吐出口に対して開閉することにより、液体の吐出を制御する液体吐出ヘッドが存在する。このような液体吐出ヘッドでは、開閉弁を閉じた際に吐出口を封止するために、開閉弁に弾性部材が設けられる。
【0003】
例えば特許文献1(米国特許US2012/0105522A1)では、開閉弁の吐出口側内面に設けられた凹部に、パーフルオロエラストマーからなる弾性部材が設けられている。
【0004】
しかし、弾性部材の開閉弁に対する密着性が十分でないと、弾性部材と開閉弁との間に隙間が生じてしまうという問題があった。特に、開閉弁を繰り返し上下動させ、弾性部材を吐出口に何度も押し当てることにより、弾性部材が開閉弁から剥がれて両者の間に隙間ができてしまうという問題があった。
【0005】
そして、このように形成された隙間の分だけ、開閉弁の開放時に、開閉弁と吐出口を有するノズル板などの部材との間に形成される隙間の大きさがばらつき、吐出口からの液体の吐出量にもばらつきが生じるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では、弾性部材の芯材端部に対する密着性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、液体を吐出する吐出口と、移動可能に設けられ、前記吐出口を開閉する開閉弁と、を備えた液体吐出ヘッドであって、前記開閉弁は芯材を有し、前記芯材の前記吐出口側の端部に芯材端部が設けられ、前記芯材端部は、その内側に、前記吐出口側へ開口した凹部を有し、前記芯材端部の外側の側面および前記凹部に跨って弾性部材が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弾性部材の芯材端部に対する密着性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの全体断面図である。
【
図3】液体吐出ヘッドに設けられたヒータの位置を示す図である。
【
図5】開閉弁のノズル側先端部の構成を示す平面図である。
【
図9】芯材端部とシール部材の間に接着剤を設けた開閉弁を示す平面図である。
【
図10】本実施形態と異なる開閉弁の構成を示す平面図である。
【
図11】
図10の比較例における圧電素子の変位量とリフト量との関係を示す図である。
【
図12】
図3の実施形態における圧電素子の変位量とリフト量との関係を示す図である。
【
図14】
図13と異なる液体吐出装置の全体概略構成図である。
【
図15】
図1の液体吐出装置の自動車に対する配置例を示す斜視図である。
【
図16】
図1の液体吐出装置の自動車に対する他の配置例を示す斜視図である。
【
図17】液体吐出装置により球面に液体を吐出した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観説明図である。
図1(a)は液体吐出ヘッドの全体斜視図、
図1(b)は同ヘッドの全体側面図である。本実施形態の液体吐出ヘッドは、液体としてのインクを吐出する。
【0011】
液体吐出ヘッド10は、第1筐体としての第1ハウジング11aと、第2筐体としての第2ハウジング11bとを備える。第2ハウジング11bは第1ハウジング11aに積層および接合される。第1ハウジング11aは金属等の熱伝導性の高い材質からなり、第2ハウジング11bは樹脂等の熱伝導性の低い材質からなる。以下の説明において2つのハウジングを総称する場合は、ハウジング11と記す。
【0012】
また、第1ハウジング11aは、その正面と背面に、加熱手段としてのヒータ12を備える。ヒータ12は温度制御が可能であり、第1ハウジング11aを加熱する。また第2ハウジング11bは、その上部に電気信号の通信のためのコネクタ13を備える。
【0013】
図2は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド10の全体断面図で
図1(a)のA-A線矢視断面図である。第1ハウジング11aは、吐出口形成部材としてのノズル板15を保持する。ノズル板15は、液体を吐出する、吐出口としてのノズル14を備える。また、第1ハウジング11aは、液体供給部である流路17を備える。流路17は、供給ポート16側からのインクを、ノズル板15上を経て回収ポート18側へ送る。
【0014】
第2ハウジング11bは、供給ポート16および回収ポート18を備える。供給ポート16および回収ポート18は、流路17の一方側および他方側にそれぞれ接続される。供給ポート16と回収ポート18との間には、複数の液体吐出モジュール30を配置している。液体吐出モジュール30は流路17内のインクをノズル14から吐出する。また液体吐出モジュール30の上部に規制部材20が設けられる。
【0015】
液体吐出モジュール30は、第1ハウジング11aに設けたノズル14の数に対応しており、本例では1列に並べた8個のノズル14に対応する8個の液体吐出モジュール30を備えた構成を示している。なお、ノズル14および液体吐出モジュール30の数および配列は上記に限るものではない。例えば、ノズル14および液体吐出モジュール30の数は、複数ではなく1個であってもよい。また、ノズル14および液体吐出モジュール30の配列は、1列ではなく、複数列であってもよい。
【0016】
なお、
図2において符号19は、第1ハウジング11aと第2ハウジング11bとの接合部に設けたハウジングシール部材である。本例ではハウジング シール部材としてOリングを用いており、第1ハウジング11aと第2ハウジング11bとの接合部からのインクの漏れを防いでいる。
【0017】
上記の構成により、供給ポート16は、加圧した状態のインクを外部から取り込み、インクを矢印a1方向へ送り、インクを流路17に供給する。流路17は、供給ポート16からのインクを矢印a2方向へ送る。そして、回収ポート18は、流路17に沿って配置したノズル14から吐出しなかったインクを矢印a3方向へ回収する。
【0018】
液体吐出モジュール30は、開閉弁31と、駆動体としての圧電素子32を備える。開閉弁31はノズル14を開閉する。圧電素子32は開閉弁31を駆動する。また圧電素子32は電圧の印加により、
図2の上下方向である長手方向に伸縮作動する。
【0019】
上記の構成において、圧電素子32を作動して開閉弁31を上方向へ動かした場合は、開閉弁31によって閉じていたノズル14が開いた状態になり、ノズル14からインクを吐出することができる。また、圧電素子32を作動して開閉弁31を下方向へ動かした場合は、開閉弁31の先端部がノズル14を封止してノズル14が閉じた状態になり、ノズル14からインクは吐出しなくなる。
【0020】
図3は、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッド10の加熱手段との位置関係を示す説明図である。第1ハウジング11aは、ヒータ12を
図3に破線で示すように、複数のノズル14を横断するようにしてノズル14の近傍に備えている。
【0021】
次に、液体吐出モジュール30の詳細を
図4に基づいて説明する。
図4(a)は単一の液体吐出モジュールの断面図、
図4(b)は
図4(a)の要部拡大図である。開閉弁31の軸部外周には、高圧インクの漏出防止用にOリング34が上下二段で装着されている。
【0022】
液体吐出モジュール30は、前述の開閉弁31および圧電素子32と、固定部材33と、保持体35と、プラグ36などを主に備える。
【0023】
保持体35はその内部に駆動体収容部35aを有し、駆動体収容部35aに圧電素子32を収容して保持する。保持体35は、圧電素子32の長手方向に弾性伸縮可能な金属で構成されている。弾性伸縮可能な金属として、例えばSUS304やSUS316Lなどのステンレス鋼を使用可能である。保持体35は、長手方向に延びた細長部材を圧電素子32の周囲に複数本配置(例えば90°間隔で4本配置)した枠体であって、細長部材の相互間を通して圧電素子32を保持体35の内側に入れることができる。
【0024】
圧電素子32の長手方向は
図4(a)に示す両矢印方向Aであり、この長手方向Aは開閉弁31や液体吐出モジュール30、第2ハウジング11bの長手方向でもある。また、開閉弁31の移動方向でもある。
【0025】
保持体35のノズル14側の先端部に開閉弁31が連結されている。また保持体35のノズル14側に蛇腹部35bが形成されている。蛇腹部35bは、圧電素子32を伸縮作動させる際に、保持体35の先端側を圧電素子32と同じように長手方向に伸縮作動させるためのものである。
【0026】
また保持体35のノズル14側と反対側である基端側に固定部材33が連結されている。別の言い方をすると、固定部材33は第2ハウジング11bの上端部に収容されている。
【0027】
固定部材33は径方向に延在する貫通ネジ穴33aを有する。貫通ネジ穴33aに第2ハウジング11b外から位置決めネジ60がねじ込まれている。
【0028】
位置決めネジ60は、第2ハウジング11bの上端部に形成された長手方向の長穴11b1に挿通され、
図4で第2ハウジング11bの長手方向に所定長さ移動可能である。固定部材33を長手方向に位置決めした状態にして位置決めネジ60を締め付ける。
【0029】
一方、第2ハウジング11bの上端開口部には雌ネジ穴11b2が形成されている。この雌ネジ穴11b2に、
図2の規制部材20に当接するプラグ36が螺合されている。プラグ36は、位置決めネジ60で長手方向に位置決めした固定部材33の上端部に当接して、固定部材33を最終的に位置固定する。
【0030】
第2ハウジング11bの下端部には圧縮バネ37が配設されている。この圧縮バネ37で、圧電素子32および圧電素子32を保持した保持体35などが上方に付勢されている。
【0031】
次に、開閉弁31の長手方向一方側端部であって、ノズル14に対向する側の端部の構成について説明する。この開閉弁31の長手方向一方側端部は、開閉弁31のノズル14を開閉する部分である。
【0032】
図5に示すように、開閉弁31は、芯材310と、弾性部材としてのシール部材40と、を有する。芯材310はステンレスなどの金属材料により形成される。芯材310は、
図5の下側であるノズル14側の端部に芯材端部311を有する。芯材端部311は、その内側に、ノズル側に開口した凹部312を有する。芯材端部311は、長手方向の凹部312に対応する部分において円筒状をなし、長手方向の凹部312に対応する部分以外の部分が円柱状をなしている。ただし、必ずしも断面が円形である必要はない。また凹部312は、円柱状部材を例えば切削加工や研磨加工することにより形成できる。凹部312を設けることにより、インクの直進距離を長くすることができる。
【0033】
シール部材40は、凹部312と、芯材端部311の外周面である芯材端部311の外側の側面311aとに跨って設けられる。本実施形態のシール部材40はパーフルオロエラストマーにより構成される。シール部材40として、具体的には「ダイエルGA-55:ダイキン工業株式会社登録商標」、「AFLAS Premium PM1100:旭硝子株式会社登録商標」、「Kerlez:デュポン株式会社登録商標」、等を用いるのが好ましい。
【0034】
凹部312およびシール部材40の、芯材端部311の径方向の長さは、ノズル14の直径よりも大きく設けられる。つまり、開閉弁31を閉鎖時に、シール部材40がノズル14を覆って封止することができる。
【0035】
次に、開閉弁31の開閉動作について説明する。
【0036】
圧電素子32が作動して開閉弁31を
図4(a)の矢印a4方向へ押し下げることで、
図6(a)に示すように、シール部材40の底面がノズル板15に接触し、ノズル14を覆う。しかし、この状態ではノズル14は完全に封止されていない。
【0037】
図6(b)に示すように、
図6(a)の状態から圧電素子32が開閉弁31をさらに下方へ押圧することで、シール部材40が芯材310とノズル板15との間で押しつぶされる。この状態で、ノズル板15からシール部材40に対して矢印b1方向の応力が発生する。この応力が矢印b2で示すインク供給圧よりも高くなることで、シール部材40によりノズル14を封止できる。
【0038】
さらに、
図6(c)に示すように、圧電素子32が作動して開閉弁31を上方向へ移動させる。これにより、ノズル板15と開閉弁31との間に隙間gが形成される。これにより、矢印a5方向へインクが供給される。ノズル14が開放される。この隙間gは、開閉弁31のノズル板15からのリフト量と言い換えることができ、以下、この隙間gを開閉弁31のリフト量gとも呼ぶ。そして、圧電素子32の駆動により開閉弁31が上下動することにより、ノズル14からインクが吐出される。
【0039】
上記のパーフルオロエラストマーからなるシール部材40を備えた芯材端部311を成形する際には、プレスまたは射出成型により芯材310を成形するとともに、加熱した金型内にパーフルオロエラストマーを充填し、パーフルオロエラストマーを加硫する。これにより、芯材310とシール部材40とを一体成形する。
【0040】
パーフルオロエラストマーの加硫に際しては、パーオキサイド加硫を用いることが好ましい。パーオキサイド加硫では、原料ポリマー中に組み込まれたヨウ素、臭素を反応点とし、多官能不飽和化合物を架橋助剤として、過酸化物によって発生するラジカル反応によって橋架け構造を生成する。配合された過酸化物の熱分解によって発生したラジカルがヨウ素や臭素と反応してポリマーラジカルを生成する。このポリマーラジカルが多官能不飽和化合物に負荷することで橋架け構造を生成する反応である。このようなヨウ素、臭素は、架橋モノマーとして共重合によって導入される方法と、連鎖移動反応を利用して分子末端に導入される方法がある。多官能不飽和化合物としては、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)やトリメタリルイソシアヌレート(TMAIC)を用いることが好ましい。
【0041】
パーフルオロエラストマーの加硫では、1次加硫をおこなったあと、さらに2次加硫をおこなうことが好ましい。これにより、加硫反応を十分に完結させることができ、パーフルオロエラストマーの圧縮永久歪等の機械物性が安定させることができる。加硫方法は選択する成形方法によって最適条件を選べばよく、たとえばプレスによる1次加硫では160度~180度で数分から20分程度の条件が好ましい。さらに、2次加硫では220度~250度で2~4時間程度の条件が好ましい。
【0042】
このように、芯材端部311に凹部312を設けることにより、シール部材40の凹部312内に設けられた部分が、シール部材40の芯材端部311からの抜け止めとして機能する。特に本実施形態では、シール部材40を開閉弁31に一体成形することにより、シール部材40を凹部312内に隙間なく設けることができ、シール部材40と凹部312との間に隙間が形成されにくくなる。
【0043】
仮に、シール部材40の芯材端部311に対する密着性が十分でなく、凹部312とシール部材40との間に隙間ができると、ノズル14から吐出されるインクの量にばらつきが生じてしまう。つまり、このような隙間が生じやすい構成では、シール部材40の
図6の下面の位置がばらつきやすくなる。また、凹部312とシール部材40との間に隙間ができることで、開閉弁31を
図6(b)のようにノズル板15に押し当てた際に、シール部材40が押し込まれて圧縮される量の誤差が大きくなる。これにより、圧電素子の動作量に対する実際の開閉弁の移動量に誤差が生じ、
図6(c)の開閉弁31のリフト量gにもばらつきが生じてしまう。
【0044】
これに対して本実施形態では、シール部材40を凹部312と芯材端部311の側面311aに跨って設けることで、シール部材40の芯材端部311に対する密着性を向上させることができる。つまり、側面311aによってシール部材40を保持することで、例えば開閉弁31が上下動を繰り返した際に、凹部312に設けられたシール部材40が剥がれて凹部312内に隙間を形成したり、凹部312内のシール部材40が芯材端部311から脱落したりすることを防止できる。これにより、後述する開閉弁31の開閉動作により開閉弁31をノズル板に押し付けて圧縮したり、またこの圧縮状態から開閉弁31を開放して圧縮状態を解除した際に、開閉弁31のノズル14側の端部であるシール部材40の底面の位置のばらつきを抑制できる。これにより、リフト量gのばらつきを抑制し、ノズル14から吐出されるインクの量のばらつきを抑制できる。特に本実施形態では、シール部材40を芯材端部311の側面311a全周にわたって設けることで、シール部材40の芯材端部311に対する密着性をより向上させることができる。
【0045】
また、シール部材40を、凹部312内だけでなく、底面311b、そして、側面311a(側面311aの特に底面311b側の部分)に跨って設けることにより、開閉弁31を閉じた際のノズル14の封止性を向上させることができる。
【0046】
ここで、
図5に示すように、シール部材40のノズルに対向する部分の厚みを厚みT1とする。また、芯材端部311の凹部312を囲う部分を凸部319とし、凸部319の長手方向のノズル14側の端面である芯材端部311の底面311bに対応するシール部材40の部分の厚みを厚みT2とする。凸部319は円筒状をなす。このとき、T1/T2の値は1.6以上6以下とすることが好ましい。厚みT1を大きくすると凹部312内に配置されるシール部材40の大きさは大きくなるものの、熱膨張時に凹部312の下方向へ変形しやすくなるという問題がある。また厚みT2を大きくすると開閉弁31によるノズル14の封止性には有利であるものの、圧電素子32の作動量が大きくなってしまうという問題がある。これらのことを考慮して、厚みT1と厚みT2を上記の範囲に設定している。なお、厚みT1を別の言い方をすると、凹部312の
図5の上端部で底部からシール部材40のノズル14側の端部までの長手方向の長さである。
【0047】
また、
図7に示すように、シール部材40は凸部319の端縁D1,D2に対応する位置に薄肉部40aを有する構成とすることができる。具体的に、薄肉部40aはシール部材40の端縁D1,D2に対応する隅部(
図7の点線部参照)をR面取りあるいはC面取りした形状をそれぞれなしている。ただし、面取りの角度はC面取りの45度に限るものではない。本実施形態の薄肉部40aとは、シール部材40のその他の部分よりも厚みの小さい部分である。この「厚みが小さい部分」とは、必ずしも厚みの絶対値が小さい部分であることのみを意味するものではなく、シール部材40が芯材端部311の形状に倣った形状であると仮定した時に、シール部材40端部の芯材端部311からのオフセット量がその他の部分よりも小さい部分であることを意味していてもよい。例えば本実施形態の薄肉部40aは、
図7に点線で示す形状よりもその厚みが小さく、シール部材40のその他の部分よりも芯材端部311からのオフセット量が小さい。また、このシール部材40の芯材端部311の端縁D1,D2などに「対応する部分」とは、シール部材40が芯材端部311に倣った形状であると仮定した時に、芯材端部311の端縁D1,D2などの各部分に相当する部分のことである。また端縁D1,D2は芯材端部311の底面311bあるいは凸部319の長手方向のノズル14側の端面の周状の端縁であり、端縁D1はその外周端、端縁D2はその内周端である。
【0048】
また別の言い方をすると、シール部材40の幅W1を幅W2よりも小さく設ける。幅W1は、シール部材40の凸部319よりもノズル板15(
図4(b)参照)側である
図7の下側において、ノズル板15に対向して設けられる平坦部40bの幅である。幅W2は凸部319の径方向の幅である。ここで言う凸部319の径方向の幅W2とは、
図5の凸部319あるいは芯材端部311の外径W0を指すものではなく、凸部319の周方向に設けられた肉厚部分の径方向の幅を示すものである。
【0049】
図7に示すように、シール部材40が熱膨張したり膨潤する際には、芯材端部311の端縁D1,D2に対応する部分が特に大きくなりやすい。従って、上記のようにシール部材40の膨張しやすい部分を予め小さく設けることにより、シール部材40の端縁D1,D2に対応する位置が尖るなど、シール部材40の膨張により、シール部材40のノズル板15に接触する面が大きく変形することを防止できる。従って、開閉弁31開放時の隙間gのばらつきを抑制し、液体吐出ヘッドによるインクの吐出量を安定させることができる。
【0050】
また、開閉弁31の先端部の変形例として、
図8に示すように、芯材端部311の側面311aに溝部313を設けてもよい。溝部313は側面311aに周状に設けられ、芯材端部311の長手方向に複数設けられる。
【0051】
溝部313を設けることにより、シール部材40の成形時に、シール部材40を構成する材料であるパーフルオロエラストマーが溝部313に入り込む。これにより、シール部材40成形後にこの溝部313に入り込んだシール部材40の部分が、シール部材40の芯材端部311からの抜け止めとして機能する。これにより、シール部材40の芯材端部311に対する密着性をさらに向上させることができる。
【0052】
また
図9に示すように、芯材端部311とシール部材40との接触部分に接着剤41を塗布してもよい。これにより、シール部材40の芯材端部311に対する密着性をさらに向上させることができる。シール部材40および開閉弁31を成形する際には、この接着剤をあらかじめ芯材端部311に塗布した状態で、1次加硫を行うことが好ましい。
【0053】
次に、上記実施形態の開閉弁およびシール部材によるノズル14からの吐出インク量の変動抑制効果を実験した結果について説明する。
【0054】
本実施形態の構成として、
図5に示す構成の開閉弁31およびシール部材40を用いる。シール部材の材料であるパーフルオロエラストマーの配合として、「ダイエルGA-55」:ダイキン工業株式会社登録商標)100重量部に対して、MTカーボンブラック20重量部、トリアリルイソシアヌレート4重合部、パーオキサイド1重合部を用いる。プレス加工により芯材310とシール部材40とを一体成形する。シール部材40の1次加硫にはプレス加硫を160度で10分、2次加硫には熱滞留式オーブン加硫を250度で4時間行う。以上により形成された開閉弁31を有する液体吐出ヘッドを「実施例」とする。
【0055】
ここで、本実施形態と異なる形態の開閉弁を有する液体吐出ヘッドを「比較例」として実験する。そして、この「比較例」の液体吐出ヘッドに設けられた開閉弁およびシール部材の構成について
図10を用いて説明する。開閉弁400は、ノズル側の先端部401の底面に凹部402を有する。凹部402内にはシール部材440が設けられる。シール部材440は、成型部品の状態で、圧力を加えて凹部402内に嵌め込まれる。以上の開閉弁400を有する液体吐出ヘッドを「比較例」とする。このような開閉弁400では、シール部材440は前述のように凹部402内に機械的にはめ込まれているだけであるため、シール部材440の凹部402内での密着性が十分でなく、
図10のように凹部402とシール部材440との間に隙間が形成される。
【0056】
以上の「実施例」および「比較例」のシール部材を有する開閉弁を圧電素子に接続し、液体吐出モジュールからリード線を引き出して液体吐出ヘッドを作成した。
【0057】
その他の設定条件は以下の通りである。なお、下記の開閉弁の初期シール封止位置5μmとは、
図6(a)のシール部材40がノズル板15に接触した位置を圧電素子の変位量の基準位置とした際の
図6(b)の封止状態における圧電素子の変位量である。
圧電素子による開閉弁の初期シール封止位置:5μm
開閉弁のリフト量の初期設定値:20μm
ノズル側の凹部の径:500μm
ノズルの孔径:150μm
インクの粘度:30mPa・S
インク室に付与される圧力0.45MPa
インク供給時間:30分
【0058】
以上の「実施例」および「比較例」のそれぞれの液体吐出ヘッドについて、1分後、10分後、30分後のそれぞれインク流量を測定した。その結果、「実施例」ではインク流量が30分後までほとんど一定であるのに対して、「比較例」では時間と共に流量が増加し、最終的にはリークが発生した。評価後の「比較例」の液体吐出ヘッドを分解してシール部材の表面位置を確認すると、開閉弁の長手方向に縮小していた。これは、シール部材と芯材との間に隙間があるために、シール部材の位置ずれが発生したものと考えられる。
【0059】
このように、本実施形態の開閉弁31の構成により、液体吐出ヘッドによるインク流量のばらつきを抑制できる。
【0060】
図11は「比較例」の構成のリフト量gのばらつきについて示す図である。
図11の横軸Xは圧電素子の変位量、
図11の縦軸がリフト量gを示している。
【0061】
図11に示すように、リフト量gが、その上限値をプロットした点線B1と下限値をプロットした点線B2との間でばらつく。このばらつきは、主にシール部材440と凹部402との間に形成された隙間により生じる。つまり、このように隙間ができるため、シール部材の底面の位置がばらつきやすく、また開閉弁を閉じた際のシール部材の圧縮量にもばらつきを生じる。
【0062】
これに対して、
図12は「実施例」の開閉弁31を用いた場合のリフト量gのばらつきについて示す図である。
図11と
図12を比較してわかるように、本実施形態では、点線C1と点線C2との幅として示されるリフト量gの変動幅が
図11の開閉弁400を用いた場合と比較して小さい。従って、本実施形態の構成により、ノズル14から安定した量のインクを吐出できることがわかる。これは、本実施形態の開閉弁31で、シール部材40の芯材310に対する密着性が良好なためである。
【0063】
次に、以上で説明した液体吐出ヘッド10を備えた液体吐出装置について説明する。
【0064】
図13は、液体吐出装置100の全体概略構成図である。
図13(a)は液体吐出装置の側面図、
図13(b)は同装置の平面図である。液体吐出装置100は、対象物の一例である液体付与対象500に対向して設置されている。液体吐出装置100は、X軸レール101と、このX軸レール101と交差するY軸レール102と、X軸レール101およびY軸レール102と交差するZ軸レール103を備える。特に本実施形態では、各レール101,102,103は互いに直交する方向に延在する。
【0065】
Y軸レール102は、X軸レール101がY軸方向に移動可能なようにX軸レール101を保持する。また、X軸レール101は、Z軸レール103がX軸方向に移動可能なようにZ軸レール103を保持する。そして、Z軸レール103は、キャリッジ1がZ軸方向に移動可能なようにキャリッジ1を保持する。
【0066】
液体吐出装置100は、キャリッジ1をZ軸レール103に沿ってZ軸方向に動かす第1のZ方向駆動部92と、Z軸レール103をX軸レール101に沿ってX軸方向に動かすX方向駆動部72を備える。また、液体吐出装置100は、X軸レール101をY軸レール102に沿ってY軸方向に動かすY方向駆動部82を備える。さらに、液体吐出装置100は、キャリッジ1に対してヘッド保持体70をZ軸方向に動かす第2のZ方向駆動部93を備える。
【0067】
前述した液体吐出ヘッドは、液体吐出ヘッド10のノズル14(
図2参照)が液体付与対象500に対向するようにヘッド保持体70に取り付けられる。このように構成した液体吐出装置100は、キャリッジ1をX軸、Y軸およびZ軸の方向に動かしながら、ヘッド保持体70に取り付けた液体吐出ヘッドから液体付与対象500に向けて液体の一例であるインクを吐出し、液体付与対象500に描画を行う。
【0068】
次に、液体吐出装置の別の実施例であるインクジェットプリンタ201の構成について、
図14~
図17を参照して説明する。
図14は、実施形態に係る液体吐出装置の一例としてのインクジェットプリンタ201の構成を示す構成図である。
図15は、プリント対象である自動車Mに対する
図14に示すインクジェットプリンタ201の配置例を示す説明図である。
図16は、液体付与対象である自動車Mに対する
図14に示すインクジェットプリンタ201の他の配置例を示す説明図である。
図17は、インクジェットプリンタで球面に画像をプリントした場合の説明図である。
図17(a)は、インクジェットプリンタ201で球面に画像をプリントした場合の説明図、
図17(b)は、球面に四角形をプリントした場合の結果を示す説明図、
図17(c)は、球面にインクジェットプリンタ201で四角形を連続してプリントした場合の説明図である。
【0069】
図14に示すように、インクジェットプリンタ201は、概略として、液体吐出ヘッド202と、撮影手段としてのカメラ204と、X-Yテーブル203と、画像編集ソフトウエアSと、制御部209と、駆動部211とを備えている。カメラ204は液体吐出ヘッド202の近傍に配設される。X-Yテーブル203は液体吐出ヘッド202およびカメラ204をX方向およびY方向へ移動させる。画像編集ソフトウエアSはカメラ204で撮影した画像を編集する。制御部209は、予め設定した制御プログラムに基づいてX-Yテーブル203を動作させて液体吐出ヘッド202からインクを吐出させる。駆動部211は、制御部209からの制御に基づいて、カメラ204を撮影位置に移動させたり、液体吐出ヘッド202を液体吐出位置に移動させたりする。
【0070】
液体吐出ヘッド202は、複数の弁型ノズルを備えて構成されている。液体吐出ヘッド202は液体付与対象である被塗装物Mの被塗装面に向けてインクを吐出する。なお、ここでいう「インク」には「塗料」も含まれるものとする。
【0071】
インクは各弁型ノズルから液体吐出ヘッド202に対して垂直に吐出される。即ち、液体吐出ヘッド202のインクの吐出面は、X-Yテーブル203の移動によって形成されるXY平面と平行であり、各弁型ノズルから吐出されるインクドットはX-Y平面に対して垂直な方向に吐出される。また、各弁型ノズルから吐出されるインクの吐出方向はそれぞれ平行な方向である。各弁型ノズルは、それぞれ所定の色のインクタンクと連結されている。このインクタンクは加圧装置によって加圧されている。各弁型ノズルと液体付与対象Mのプリント面との距離は20cm程度であれば、問題なくインクドットをプリント面に吐出することができる。
【0072】
X-Yテーブル203は、概略として、X軸205と、Y軸206を備えて構成されている。X軸205は直線移動機構を備える。Y軸206はX軸205を2つのアームで保持しつつ、X軸205をY方向へ移動させる。X軸205のスライダに液体吐出ヘッド202および後述するカメラ204が取り付けられている。また、Y軸206にはシャフト207が設けられている。このシャフト207をロボットアーム208で保持する。ロボットアーム208により、液体吐出ヘッド202を液体付与対象Mに対してインクの吐出を行うべき所定位置に自由に配置できるようになっている。例えば、液体付与対象Mが自動車である場合に、
図16に示すような横位置に配置したり、
図15に示すような上部に配置したりすることができる。尚、ロボットアーム208は、予め制御部209に格納されたプログラムに基づいて、その動作が制御される。
【0073】
カメラ204は、液体吐出ヘッド202の近傍であるX軸205のスライダに配設される。カメラ204はX-Y方向に移動しながら液体付与対象Mの液体付与面の所定の範囲を一定の微小な間隔で撮影を行う。カメラ204はいわゆるデジタルカメラである。カメラ204は、液体付与面の所定の範囲について、複数の細分割画像の撮影が可能なレンズの仕様や解像度等の仕様が適宜に選択される。カメラ204による液体付与面の複数の細分割画像の撮影については、制御部209に予め設けられたプログラムに従って連続的、かつ、自動的に行われる。
【0074】
制御部209は、記憶装置と、中央処理装置と、キーボードやマウス等の入力装置と、モニタ210と、必要に応じてDVDプレイヤー等を備えたいわゆるマイクロコンピュータによって構成される。記憶装置は各種のプログラムおよび撮影済みの画像のデータや印刷すべき画像のデータ等を記録保存する。中央処理装置はプログラムに従って各種の処理を実行する。モニタ210は制御部209への入力情報や制御部209による処理結果等を表示する。
【0075】
制御部209は、カメラ204で撮影された複数の細分割画像データを、画像処理ソフトを用いて画像処理を行う。具体的には、制御部209は、平面ではない液体付与対象Mの液体付与面を平面に投影した合成プリント面の生成を行う。また制御部209は、液体付与面に形成された画像に連続するように、描画対象画像を編集することにより、描画対象編集画像の生成を行う。例えば、
図17(c)に示した描画対象画像であるプリント画像252bについて、隣接するプリント画像252aとの間に非プリント領域253が形成されないようにプリント画像252bを合成プリント面に整合するように編集することにより、描画対象編集画像を生成する。そして、この描画対象編集画像に基づいて、実際に液体吐出ヘッド202によってインクを吐出することで、プリント画像252aとの間に隙間なくプリント画像252bを形成することが可能となる。なお、制御部209によって動作制御された駆動部211により、カメラ204による複数の細分割画像の撮影や液体吐出ヘッド202の各ノズルからのインクの吐出による画像の形成が行われる。
【0076】
なお、
図17(a)では、球状物の液体付与対象251の球面状の表面にインクジェットノズルによって二次元の四角形を形成するような場合に、ノズルヘッド250に搭載された各インクジェットノズルから噴射されるインクの吐出方向が図示されている。
図17(b)では、ノズルヘッド250に搭載された各インクジェットノズルから噴射されるインクはノズルヘッド250に対して垂直方向に吐出されるので、液体付与対象251の表面にプリントされたプリント画像252aが、周辺が歪んだ形状の四角形となることが図示されている。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0078】
本願において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッド又を備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体吐出装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0079】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0080】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0081】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0082】
上記「液体が付着可能なもの」とは、前述した液体付与対象のことであり、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0083】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0084】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0085】
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0086】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0087】
10 液体吐出ヘッド
14 ノズル(吐出口)
15 ノズル板(吐出口形成部材)
30 液体吐出モジュール
31 開閉弁
311 芯材端部
311a 芯材端部の外側の側面
311b 芯材端部の底面
312 凹部
313 溝部
319 凸部
32 圧電素子(駆動体)
40 シール部材(弾性部材)
40b シール部材の平坦部
41 接着剤
100 液体吐出装置
A 長手方向(開閉弁の移動方向)
D1 凸部のノズル側端面の外周端
D2 凸部のノズル側端面の内周端
【先行技術文献】
【特許文献】
【0088】
【特許文献1】米国特許US2012/0105522A1