IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特開-送液ポンプ 図1
  • 特開-送液ポンプ 図2
  • 特開-送液ポンプ 図3
  • 特開-送液ポンプ 図4
  • 特開-送液ポンプ 図5
  • 特開-送液ポンプ 図6A
  • 特開-送液ポンプ 図6B
  • 特開-送液ポンプ 図7A
  • 特開-送液ポンプ 図7B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023097906
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】送液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/32 20060101AFI20230703BHJP
   F04B 23/06 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
G01N30/32 C
F04B23/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214281
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】塚田 修大
(72)【発明者】
【氏名】金井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岩佐 翔
(72)【発明者】
【氏名】原田 裕至
(72)【発明者】
【氏名】用田 祐介
【テーマコード(参考)】
3H071
【Fターム(参考)】
3H071AA01
3H071BB01
3H071BB13
3H071CC17
3H071DD01
3H071DD06
3H071DD31
(57)【要約】
【課題】溶媒の膨張と、溶媒の圧力に依存する漏れと、溶媒の流量に依存する漏れを考慮できて、流量精度の高い送液が可能な送液ポンプを提供する。
【解決手段】本発明による送液ポンプ1は、第1プランジャ21を備える第1プランジャポンプ101と、第2プランジャ22を備え、第1プランジャポンプ101と接続された第2プランジャポンプ102と、第2プランジャポンプ102からの送液圧力P2を測定する圧力センサ110と、第1プランジャ21と第2プランジャ22の駆動を制御する制御部10とを備える。制御部10は、送液圧力P2に依存するパラメータC1、C0と、送液圧力P2と、液体の目標流量とを用いて、第1プランジャ21の移動速度v1と第2プランジャ22の移動速度v2を求める。パラメータC1、C0は、送液圧力P2と、液体の流量Q0との関係を表す式のパラメータである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する送液ポンプであって、
移動可能な第1プランジャを備える第1プランジャポンプと、
移動可能な第2プランジャを備え、前記第1プランジャポンプと接続された第2プランジャポンプと、
前記第2プランジャポンプの下流側に配置され、前記第2プランジャポンプから吐出された前記液体の圧力である送液圧力を測定する圧力センサと、
前記圧力センサが測定した前記送液圧力を入力するとともに、前記第1プランジャの駆動と前記第2プランジャの駆動を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記送液圧力に依存するパラメータと、前記送液圧力と、前記液体の予め設定された流量である目標流量とを用いて、前記第1プランジャの移動速度と前記第2プランジャの移動速度を求め、
前記パラメータは、前記送液圧力と前記液体の流量との関係を表す式のパラメータである、
ことを特徴とする送液ポンプ。
【請求項2】
前記制御部は、前記送液ポンプが前記液体を吐出している間に、前記圧力センサから前記送液圧力を入力して前記パラメータを計算して求め、求めた前記パラメータを用いて前記第1プランジャの移動速度と前記第2プランジャの移動速度を求める、
請求項1に記載の送液ポンプ。
【請求項3】
前記パラメータは、前記送液圧力に対して線形に変化するパラメータである、
請求項1に記載の送液ポンプ。
【請求項4】
前記液体の流量を測定する流量計を備え、
前記制御部は、前記送液圧力と前記流量計が測定した流量との関係に基づいて、前記パラメータを求める、
請求項1に記載の送液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を送るポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
送液ポンプは、定量の液体を送るためのポンプであり、例えば液体クロマトグラフに用いられる。液体クロマトグラフを用いた分析では、分析結果に高い再現性が必要であり、このためには送液ポンプに高い流量精度が求められる。
【0003】
一般に、液体クロマトグラフは、液体である溶媒を送液する送液ポンプ、試料を液体クロマトグラフに導入するためのインジェクタ、分離カラム、検出器、廃液容器、及びこれらの機器を制御するシステム制御部を備える。液体クロマトグラフに用いられる送液ポンプは、直列に接続された2台のプランジャポンプで構成されることが一般的である。上流側のプランジャポンプ(第1プランジャポンプ)は、溶媒を吸引し、圧縮して吐出する。第1プランジャポンプのみでは一定流量を送液することができないため、第1プランジャポンプの下流側にもう一台のプランジャポンプ(第2プランジャポンプ)が接続される。第2プランジャポンプは、第1プランジャポンプの脈流を打ち消す動作をする(すなわち、第1プランジャポンプが溶媒を吸引し圧縮するときに、溶媒を吐出する)。送液ポンプは、第1プランジャポンプと第2プランジャポンプのこのような動作により、一定流量の溶媒を送液することができる。
【0004】
送液ポンプから吐出された溶媒には、インジェクタによって、分析対象である試料が注入される。試料が注入された溶媒は、分離カラムに導入されて成分ごとに分離され、その後、検出器により、試料成分に応じた特性、例えば吸光度、蛍光強度、及び屈折率などが検出される。分離カラムには、微小粒子が充填されている。溶媒が微小粒子の隙間を流れる際の流体抵抗によって、送液ポンプには数十メガパスカルから百メガパスカル超の負荷圧力が発生する。この負荷圧力の大きさは、分離カラムの径(例えば、数ミリメートル程度)、微小粒子の大きさ(例えば、数マイクロメートル程度)、及び通過流量に応じて異なる。
【0005】
溶媒は、負荷圧力まで圧縮されて送液ポンプから吐出される。分離カラムの下流側にある検出器では、溶媒の圧力はほぼ大気圧である。このため、溶媒は、検出器では送液ポンプ内の状態に対して膨張している。また、送液ポンプでは、シール部や構成部品の接続部から微小な量の溶媒が漏れることがある。したがって、送液ポンプで高い流量精度を得るためには、溶媒の膨張と漏れを考慮して、送液ポンプを制御する必要がある。溶媒の漏れには、圧力に依存する漏れと流量に依存する漏れがある。
【0006】
溶媒の膨張又は漏れを考慮した従来の送液ポンプの例は、例えば特許文献1と特許文献2に開示されている。
【0007】
特許文献1には、溶媒の圧縮の影響を補正する技術が開示されている。特許文献1に記載された送液装置は、ポンプ部から吐出流路へ吐出される移動相(流体)の流量の大気圧下についての換算値が設定された流量になるようなプランジャポンプの吐出速度を求める吐出速度算出部と、吐出速度算出部が求めた吐出速度で吐出行程中のプランジャポンプを動作させる吐出動作制御部とを備えるので、大気圧下での移動相の体積流量が設定された流量となるようにプランジャの駆動速度を正確に制御することができ、移動相の圧縮性に起因する送液流量のずれを小さくすることができる。
【0008】
特許文献2には、漏れを検出して、さらに補正する技術が開示されている。特許文献2に記載された装置では、所定のある一定の圧力において流量が0になるようにポンプを駆動し、このときのプランジャの変位を分析することで漏れの検出を行い、検出した漏れを補正するようにポンプ流量を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2019/082243号
【特許文献2】欧州特許第2244091号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された技術では、溶媒の膨張のみを考慮して送液ポンプを制御し、溶媒の漏れが考慮されていない。このため、送液ポンプに求められた流量精度に対して、漏れの大きさが無視できない場合には、求められた流量精度を達成することが難しい。
【0011】
特許文献2に開示された技術では、溶媒の漏れを考慮してポンプ流量を調整するが、溶媒の圧力に依存する漏れのみを考慮しており、流量に依存する漏れを考慮していない。このため、送液ポンプに求められた流量精度に対して、流量が変化した場合の漏れの変化が無視できない場合には、求められた流量精度を達成することが難しい。
【0012】
このように、従来の技術では、溶媒の膨張と、溶媒の圧力に依存する漏れと、溶媒の流量に依存する漏れを考慮していないので、これらを考慮して高い流量精度で送液できる送液ポンプが望まれている。
【0013】
本発明は、溶媒の膨張と、溶媒の圧力に依存する漏れと、溶媒の流量に依存する漏れを考慮できて、流量精度の高い送液が可能な送液ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による送液ポンプは、液体を吐出する送液ポンプであって、移動可能な第1プランジャを備える第1プランジャポンプと、移動可能な第2プランジャを備え、前記第1プランジャポンプと接続された第2プランジャポンプと、前記第2プランジャポンプの下流側に配置され、前記第2プランジャポンプから吐出された前記液体の圧力である送液圧力を測定する圧力センサと、前記圧力センサが測定した前記送液圧力を入力するとともに、前記第1プランジャの駆動と前記第2プランジャの駆動を制御する制御部とを備える。前記制御部は、前記送液圧力に依存するパラメータと、前記送液圧力と、前記液体の予め設定された流量である目標流量とを用いて、前記第1プランジャの移動速度と前記第2プランジャの移動速度を求める。前記パラメータは、前記送液圧力と前記液体の流量との関係を表す式のパラメータである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、溶媒の膨張と、溶媒の圧力に依存する漏れと、溶媒の流量に依存する漏れを考慮できて、流量精度の高い送液が可能な送液ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例1による送液ポンプを備える液体クロマトグラフの構成を示す模式図である。
図2】溶媒を通常送液する際の、第1プランジャと第2プランジャの変位、及び溶媒の吐出流量と吐出圧力を示すグラフである。
図3】2つの送液ポンプを備える液体クロマトグラフの構成を示す模式図である。
図4】送液ポンプの流量精度に影響を与える因子の関係を模式的に説明する図である。
図5】送液圧力に対する検出器での溶媒の流量を模式的に示す図である。
図6A】基本流量がQb1の場合に、送液圧力に対する検出器での溶媒の流量の測定値の例を模式的に示す図である。
図6B】基本流量がQb2の場合に、送液圧力に対する検出器での溶媒の流量の測定値の例を模式的に示す図である。
図7A】送液圧力に対し、式(5)から得られたパラメータC1をプロットした例を模式的に示す図である。
図7B】送液圧力に対し、式(6)から得られたパラメータC0をプロットした例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による送液ポンプは、液体である溶媒を吐出して送るポンプであり、例えば、液体クロマトグラフに適用することができる。本発明による送液ポンプは、溶媒の膨張と、溶媒の圧力に依存する漏れと、溶媒の流量に依存する漏れを考慮してポンプ動作(より具体的には、プランジャの移動速度)を決定し、流量精度の高い送液が可能である。本発明による送液ポンプでは、ポンプ制御部が、送液圧力と検出器での溶媒の流量との関係を表す式のパラメータの値を求め、このパラメータを用いて求めた速度でプランジャを駆動する。さらに、本発明による送液ポンプは、送液中の圧力をフィードバックして、送液中にパラメータを調整することもできる。
【0018】
以下では、本発明の実施例による送液ポンプを説明する。なお、以下で述べる流量とは、特に説明をしない限り、体積流量のことである。
【実施例0019】
<送液ポンプ及び液体クロマトグラフの構成例>
図1は、本発明の実施例1による送液ポンプ1を備える液体クロマトグラフ100の構成を示す模式図である。液体クロマトグラフ100は、送液ポンプ1、試料を液体クロマトグラフ100に導入するためのインジェクタ2、分離カラム3、検出器4、廃液容器5、及びこれらの機器を制御するシステム制御部7を備える。
【0020】
インジェクタ2、分離カラム3、検出器4、及び廃液容器5には、液体クロマトグラフに一般に用いられるものを使用することができるので、本実施例では、これらの機器の詳細な構成についての説明を省略する。
【0021】
送液ポンプ1は、ポンプ制御部であるコントローラ10、圧力センサ110、第1プランジャポンプ101、第2プランジャポンプ102、連結流路103、第1電磁弁81、第2電磁弁82、モータドライバ210、パージバルブドライバ310、パージバルブ311、廃液タンク312、及び電磁弁ドライバ410を備える。送液ポンプ1は、液体(例えば、溶媒)を吐出する。送液ポンプ1は、その下流側に、インジェクタ2、分離カラム3、検出器4、及び廃液容器5を接続可能である。本実施例では、送液ポンプ1の下流に、インジェクタ2、分離カラム3、検出器4、及び廃液容器5が接続されている。検出器4は、送液ポンプ1が吐出した液体(溶媒)に含まれる試料の特性を検出する。
【0022】
第1プランジャポンプ101と第2プランジャポンプ102は、互いに直列に接続されている。第1プランジャポンプ101が上流側に配置され、第2プランジャポンプ102が下流側に配置されている。なお、第1プランジャポンプ101と第2プランジャポンプ102は、互いに並列に接続されてもよい。本実施例では、第1プランジャポンプ101と第2プランジャポンプ102が直列に接続されている例を説明する。
【0023】
圧力センサ110は、第2プランジャポンプ102の下流側に設置されている。圧力センサ110は、第2プランジャポンプ102から吐出された溶媒(液体)の圧力(吐出圧力)を測定し、測定した圧力値をコントローラ10へ出力する。
【0024】
詳細は後述するが、コントローラ10は、圧力センサ110が測定した吐出圧力と予め定められた動作シーケンスに基づき、モータドライバ210及び電磁弁ドライバ410に指令値を与えてこれらのドライバを動作させる。また、コントローラ10は、予め定められた動作シーケンスに基づき、パージバルブドライバ310に指令値を与えてこれを動作させる。
【0025】
第1プランジャポンプ101は、第1加圧室11、第1プランジャ21、第1吸引通路31、第1吐出通路41、第1逆止弁51、第2逆止弁52、第1シール61、及び軸受71を有する第1ポンプヘッド111を備える。第1逆止弁51は、第1吸引通路31の流路上に配置されている。第2逆止弁52は、第1吐出通路41の流路上に配置されている。第1逆止弁51と第2逆止弁52は、溶媒の流通方向を制限する。第1プランジャ21は、加圧部材であり、軸受71により第1プランジャポンプ101内を摺動して移動可能に保持されている。第1シール61は、第1加圧室11からの液漏れを防止している。
【0026】
第2プランジャポンプ102は、第2加圧室12、第2プランジャ22、第2吸引通路32、第2吐出通路42、第2シール62、及び軸受72を有する第2ポンプヘッド112を備える。第2逆止弁52と第2吸引通路32は、連結流路103により互いに連結されている。すなわち、第1プランジャポンプ101と第2プランジャポンプ102は、直列に接続され、第1プランジャポンプ101が上流側に設置されている。第2プランジャ22は、加圧部材であり、軸受72により第2プランジャポンプ102内を摺動して移動可能に保持されている。第2シール62は、第2加圧室12からの液漏れを防止している。
【0027】
本明細書において、プランジャ(第1プランジャ21と第2プランジャ22)の「上昇」とは、加圧室(第1加圧室11と第2加圧室12)の内部の溶媒が圧縮又は吐出される方向のプランジャの移動(図1における右向きの動き)を表す。一方、プランジャの「下降」とは、加圧室の内部に溶媒が吸引される方向のプランジャの移動(図1における左向きの動き)を表す。また、「上限点」とは、プランジャが加圧室の内部を移動できる範囲において、最も上昇した位置を示す。「下限点」とは、プランジャが加圧室の内部を移動できる範囲において、最も下降した位置を示す。
【0028】
第1プランジャ21の往復運動は、第1電動モータ211、減速装置221、及び直動装置231により制御される。より具体的には、第1プランジャ21は、コントローラ10により、以下のようにして制御される。モータドライバ210は、コントローラ10の指令値に基づいて第1電動モータ211に駆動電力を与えて、第1電動モータ211を回転させる。第1電動モータ211の回転は、減速装置221により減速され、直動装置231により直線運動に変換される。第1プランジャ21は、直動装置231のこの直線運動にしたがって往復運動をする。
【0029】
同様に、第2プランジャ22の往復運動は、第2電動モータ212、減速装置222、及び直動装置232により制御される。より具体的には、第2プランジャ22は、コントローラ10により、以下のようにして制御される。モータドライバ210は、コントローラ10の指令値に基づいて第2電動モータ212に駆動電力を与えて、第2電動モータ212を回転させる。第2電動モータ212の回転は、減速装置222により減速され、直動装置232により直線運動に変換される。第2プランジャ22は、直動装置232のこの直線運動にしたがって往復運動をする。
【0030】
減速装置221と直動装置231は、これらを組み合わせることによって第1電動モータ211の回転動力を増幅して直線運動力に変換することから、広義に動力伝達機構装置と呼ぶことができる。このことは、減速装置222及び直動装置232についても同様である。
【0031】
減速装置221、222の具体例としては、平歯車、プーリー、遊星歯車、及びウォームギヤなどを挙げることができる。減速装置221、222を設ける主な理由は、第1及び第2電動モータ211、212のトルクを増大させるためである。もし第1及び第2電動モータ211、212に十分なトルクを発生させる能力があるならば、必ずしも減速装置221、222を設置する必要はない。
【0032】
直動装置231、232の具体例としては、ボールねじ、カム、及びラックピニオンなどを挙げることができる。
【0033】
パージバルブドライバ310は、コントローラ10の指令値に基づいてパージバルブ311に駆動電力を与える。パージバルブ311は、第2プランジャポンプ102の下流側に接続されている。パージバルブ311は、第2プランジャポンプ102から吐出された溶媒が流れる方向を、インジェクタ2側又は廃液タンク312側のどちらかに切り替える。
【0034】
電磁弁ドライバ410は、コントローラ10の指令値に基づいて第1電磁弁81と第2電磁弁82に駆動電力を与える。送液ポンプ1の外部には、第1溶媒511を収容する溶媒容器と、第2溶媒512を収容する溶媒容器が設置されている。第1電磁弁81と第2電磁弁82の開閉と、第1プランジャポンプ101と第2プランジャポンプ102(第1プランジャ21と第2プランジャ22)の駆動により、第1溶媒511と第2溶媒512は、送液ポンプ1へ送液される。
【0035】
第1プランジャポンプ101が溶媒を吸引するときには、第1電磁弁81と第2電磁弁82のうち一方が開いて他方が閉じた状態となり、第1溶媒511と第2溶媒512のうち一方が吸引される。吸引された溶媒は、合流部90、第1逆止弁51、及び第1吸引通路31を通過して第1加圧室11に流入する。吸引されて第1加圧室11の内部に流入した溶媒は、第1プランジャ21の上昇に伴って圧縮される。
【0036】
溶媒が圧縮されることで第1加圧室11の内部の圧力が第2加圧室12の内部の圧力より大きくなると、溶媒は、第1吐出通路41、第2逆止弁52、連結流路103、及び第2吸引通路32を通過して第2加圧室12に流入し、第2吐出通路42から吐出される。
【0037】
送液ポンプ1から吐出された溶媒には、インジェクタ2によって、分析対象である試料が注入される。試料が注入された溶媒は、分離カラム3に導入されて成分ごとに分離され、その後、検出器4により、試料成分に応じた吸光度、蛍光強度、及び屈折率などが検出される。分離カラム3には微小粒子が充填されており、溶媒が微小粒子の隙間を流れる際の流体抵抗によって、送液ポンプ1には数十メガパスカルから百メガパスカル超の負荷圧力が発生する。この負荷圧力の大きさは、分離カラム3の径や長さ、微小粒子の種類や大きさ、及び通過流量などに応じて異なる。
【0038】
送液ポンプ1は、検出器4の上流側又は下流側に流量計8を備えることができる。図1では、一例として、流量計8が検出器4の上流側に設置されている。流量計8は、送液ポンプ1が吐出した溶媒の、検出器4での流量を測定する。流量計8が測定した値は、コントローラ10に入力される。なお、送液ポンプ1は、流量計8を備えなくてもよい。
【0039】
<送液方法>
本実施例による送液ポンプ1を用いて溶媒を通常送液する際の送液方法の概略を説明する。「通常送液」とは、送液ポンプ1が吐出した溶媒をインジェクタ2、分離カラム3、及び検出器4へ流し、試料を分析する場合の送液方法である。なお、試料を分析しない場合(溶媒を廃液タンク312に送液する場合)の送液方法は、試料を分析する場合と同様の動作となるため、説明を省略する。
【0040】
図2は、送液ポンプ1により溶媒を通常送液する際の、第1プランジャ21と第2プランジャ22の変位、及び溶媒の吐出流量と吐出圧力を示すグラフである。図2に示す4つのグラフにおいて、横軸は、時間を示し、縦軸は、上から順に、第1プランジャ21の変位、第2プランジャ22の変位、溶媒の吐出流量、及び溶媒の吐出圧力を示す。ここで、吐出流量は、送液ポンプ1が吐出した溶媒の流量(送液ポンプ1が吐出した直後の溶媒の流量)であり、吐出圧力は、圧力センサ110が検出する圧力、すなわち送液ポンプ1から吐出された溶媒の圧力である。第1プランジャ21の変位と第2プランジャ22の変位は、上昇方向(図1の右方向)を正方向とし、下降方向(図1の左方向)を負方向とする。吐出流量は、吐出を正とし、吸引を負とする。
【0041】
通常送液において、第1プランジャ21と第2プランジャ22は、ともに下限点を基準として動作する。
【0042】
通常送液において、第1プランジャポンプ101と第2プランジャポンプ102は、ともに周期的な動作をする。図2では、4周期分の動作が示されている。1つの送液周期の中には、時間順に区間a、区間b、区間c、及び区間dという4つの区間がある。
【0043】
区間aは、第1プランジャ21が下降して溶媒を吸引する区間である。区間bは、第1プランジャ21が上昇して溶媒を圧縮する区間である。区間aと区間bでは、第1加圧室11から溶媒が吐出されないので、第2プランジャ22が上昇して溶媒を吐出する。詳細は後述するが、区間bには、第1プランジャ21が上昇する区間b1と、その後に第1プランジャ21が停止する区間b2がある。区間cは、第2プランジャ22が下降して溶媒を吸引する区間である。区間cでは、第1プランジャ21は、上昇して、第2プランジャ22の吸引分と送液ポンプ1が吐出する分の溶媒を吐出する。区間dでは、第1プランジャ21は、上昇して溶媒を吐出し、第2プランジャ22は、停止する。
【0044】
第1プランジャポンプ101と第2プランジャポンプ102は、このような動作を行うことで、送液ポンプ1からの吐出流量をほぼ一定に保つことができ、吐出圧力もほぼ一定にすることができる。
【0045】
第1プランジャ21は、区間b1と区間b2とで動作が異なる。第1プランジャ21がこれらの動作を切り替えるタイミングは、例えば、圧力センサ110が吐出圧力の脈動を検出したタイミングとすることができる。具体的には、区間b1で、第1プランジャ21が上昇して圧縮動作を続けると、第1加圧室11の内部の溶媒の圧力が吐出圧力を超えることによって、吐出流量が瞬間的に大きくなり、これに伴って吐出圧力も瞬間的に大きくなる。図2には、このようにして生じる吐出流量と吐出圧力の脈動を示している。
【0046】
コントローラ10は、圧力センサ110が吐出圧力の脈動を検出したタイミングで、第1プランジャ21の動作を、区間b1での動作から区間b2での動作に切り替える。
【0047】
以下では、漏れがない場合に送液ポンプ1から吐出される、圧縮された状態(高圧の状態)の溶媒の体積流量を「基本流量Qb」と呼ぶ。基本流量Qbは、区間a、bと区間c、dに分けて、以下の式(1)と式(2)で表される。
Qb=v2×A (区間a、b) (1)
Qb=(v1+v2)×A (区間c、d) (2)
v1は、第1プランジャ21の移動速度である。v2は、第2プランジャ22の移動速度である。Aは、第1プランジャ21と第2プランジャ22の断面積であり、既知の値である。ただし、第1プランジャ21と第2プランジャ22の断面積が同一であると仮定している。
【0048】
基本流量Qbは、区間a、bでは、第2プランジャ22が上昇して押しのけた溶媒の体積をその区間の時間で割った値にほぼ一致し、区間c、dでは、第1プランジャ21が上昇して押しのけた溶媒の体積と第2プランジャ22が下降して引き込んだ溶媒の体積との差分をその区間の時間で割った値にほぼ一致する。すなわち、基本流量Qbは、漏れがない場合に送液ポンプ1から吐出される、圧縮された状態の溶媒の体積流量である(ただし、脈動は考慮しない)。図2に示した吐出流量は、漏れがない場合の体積流量、すなわち基本流量Qbであり、脈動も示されている。
【0049】
基本流量Qbがわかると、断面積Aが既知であるため、式(1)と式(2)から区間a、bと区間c、dでのv1とv2、すなわち第1プランジャ21と第2プランジャ22を移動させる速度が求められる。ただし、v1とv2の比を予め定めておく必要がある。具体的には、区間a、bでは、式(1)からv2が求められる。このとき、第1プランジャ21の動作は吐出流量に影響しないので、区間aで溶媒を吸引する速度と、区間bで溶媒を圧縮する速度は、区間a、bの時間の範囲内で任意の値をとることができる。区間dでは、図2の第2プランジャ22の変位からv2=0なので、式(2)からv1が求められる。区間cでは、区間cの時間で第2プランジャ22が下限点に戻るようにv2が求められ、そして式(2)からv1が求められる。
【0050】
<液体クロマトグラフの他の構成例>
図3は、2つの送液ポンプ1001、1002を備える液体クロマトグラフ200の構成を示す模式図である。図3に示す液体クロマトグラフ200は、送液ポンプ1001、送液ポンプ1002、インジェクタ2、分離カラム3、検出器4、廃液容器5、及びシステム制御部7を備える。送液ポンプ1001と送液ポンプ1002は、本実施例による送液ポンプ1(図1)と同じ構成を備える。
【0051】
図3に示した液体クロマトグラフ200は、並列に接続された2つの送液ポンプ1001、1002を有し、いわゆる高圧グラジエント分析が可能な構成を備える。送液ポンプ1001、1002は、互いに異なる溶媒を送液する。すなわち、送液ポンプ1001は、第1溶媒511と第2溶媒512を送液し、送液ポンプ1002は、第3溶媒513と第4溶媒514を送液する。送液ポンプ1001からの流路と送液ポンプ1002からの流路は、インジェクタ2の上流側にある合流点6で合流する。
【0052】
送液ポンプ1001から送液された溶媒と送液ポンプ1002から送液された溶媒は、合流点6より下流側で混合されて分離カラム3に送液される。送液ポンプ1001、1002の流量は、分析項目に応じてシステム制御部7によりそれぞれ適切に設定される。
【0053】
高圧グラジエント分析の際には、一般に、送液ポンプ1001と送液ポンプ1002の合計の流量を一定とし、それぞれの送液ポンプ1001、1002の流量を変化させて、分離カラム3に流れる溶媒の濃度を変化させる。したがって、1回の分析で、それぞれの送液ポンプ1001、1002の流量が逐次変化していく。このため、目標流量(検出器4での目標とする流量)に応じたポンプ動作(プランジャの駆動速度)の補正が必要である。
【0054】
<流量精度に影響を与える因子>
図4は、送液ポンプ1の流量精度に影響を与える因子の関係を模式的に説明する図である。図4では、紙面の左右方向に長い長方形で流量を示している。各長方形の左右方向の長さが、流量(体積流量)の大きさを示す。なお、溶媒の送液圧力(吐出圧力)をP2で表し、検出器4での溶媒の圧力をP0で表す。送液圧力P2は、送液ポンプ1の内部での溶媒の圧力であり、圧力センサ110で測定される圧力である。検出器4での溶媒の圧力P0は、大気圧にほぼ等しく、送液圧力P2よりも低い。
【0055】
溶媒の流量は、溶媒の漏れと膨張により変化する。以下では、溶媒の漏れによる流量の変化と、溶媒の膨張による流量の変化について説明する。
【0056】
溶媒は、圧力が送液圧力(吐出圧力)P2のときには圧縮されている。第1プランジャ21と第2プランジャ22は、この状態の溶媒を基本流量Qbで押しのける。溶媒の漏れがなければ、この基本流量Qbの溶媒が送液ポンプ1から吐出される。実際には、プランジャ21、22とシール61、62の隙間や、逆止弁51、52の接続部分などから溶媒の漏れが発生するため、この漏れの分だけ送液ポンプ1から吐出される流量は、基本流量Qbよりも小さくなる。
【0057】
溶媒の漏れには、圧力に依存する漏れと、流量に依存する漏れがある。圧力に依存する漏れの量をQleakPで表し、流量に依存する漏れの量をQleakQで表す。
【0058】
図4に示すように、圧力が送液圧力P2の溶媒は、漏れがない場合には、流量が基本流量Qbである。圧力に依存する漏れと流量に依存する漏れがある場合には、流量は、QleakPとQleakQの和だけ小さくなる。すなわち、漏れがある場合には、送液ポンプ1から吐出される溶媒(圧力はP2)の流量Q2は、溶媒の膨張を考慮しないと、基本流量Qbより(QleakP+QleakQ)だけ小さい。
【0059】
圧力に依存する漏れは、送液ポンプ1の内部の溶媒の圧力と、送液ポンプ1の外部の圧力(大気圧)との圧力差によって、上述の漏れの発生個所から溶媒が漏れ出す現象である。圧力に依存する漏れは、圧力差が大きいほど大きい。
【0060】
流量に依存する漏れは、例えば、プランジャ21、22が下降するときにプランジャ21、22に溶媒が付着して、シール61、61とプランジャ21、22の隙間から溶媒が漏れ出す現象である。流量に依存する漏れは、例えば、図2に示した区間cにおいて第2プランジャ22が下降する際に発生する。流量が大きいと、区間cでの第2プランジャ22の下降距離が大きく、このために多くの溶媒が漏れる。
【0061】
圧力に依存する漏れのメカニズムと流量に依存する漏れのメカニズムは、この他にもいくつか存在すると考えられる。
【0062】
また、図4に示すように、検出器4では、溶媒が膨張することにより、流量が変化する。検出器4での溶媒の圧力は、大気圧にほぼ等しいP0であり、送液圧力P2よりも低い。このため、検出器4での溶媒は、送液ポンプ1の内部での溶媒よりも膨張している。この膨張により、検出器4での溶媒の流量Q0は、Q2(送液ポンプ1から送液圧力P2で吐出される溶媒の流量)よりも大きい。
【0063】
本実施例による送液ポンプ1は、溶媒の圧力に依存する漏れと、溶媒の流量に依存する漏れと、溶媒の膨張を考慮し、これらの影響による溶媒の流量の変化を補正することで、流量精度の高い送液が可能である。
【0064】
図5は、送液圧力P2に対する検出器4での溶媒の流量Q0を模式的に示す図であり、溶媒の流量の補正によって、検出器4での溶媒の流量Q0がどのように変化するかを模式的に示している。図5のグラフにおいて、線1~4は溶媒の流量が大きい場合(高流量の場合)を示し、線5~8は溶媒の流量が高流量の場合よりも小さい場合(低流量の場合)を示している。なお、既に述べたように、送液圧力P2は、送液ポンプ1の内部での溶媒の圧力であり、圧力センサ110で測定される圧力である。
【0065】
破線1は、送液ポンプ1から吐出された溶媒の流量が基本流量Qbの場合の検出器4での流量Q0、すなわち溶媒の漏れがなく、流量の補正(溶媒の膨張による流量の変化の補正)が行われる前の検出器4での流量Q0を示す。溶媒は、圧力が大きいほど、大きく圧縮されていて検出器4での膨張が大きい(検出器4での圧力は、大気圧にほぼ等しいP0である)。したがって、溶媒は、送液圧力P2が大きいほど、検出器4での流量Q0が大きい。なお、送液圧力P2が大気圧に等しいときは、溶媒の圧縮と膨張がないために、検出器4での流量Q0は基本流量Qbである。
【0066】
点線2は、溶媒に圧力に依存する漏れがあり、流量に依存する漏れがない場合の、流量の補正が行われる前の検出器4での流量Q0を示す。点線2で示す流量は、圧力に依存する漏れの分だけ、破線1で示した流量よりも小さい。ただし、圧力に依存する漏れは、送液圧力P2が大気圧に等しいときには生じないので、送液圧力P2が大気圧に等しいときは、検出器4での流量Q0は基本流量Qbである。
【0067】
一点鎖線3は、溶媒に圧力に依存する漏れと流量に依存する漏れの両方がある場合の、流量の補正が行われる前の検出器4での流量Q0を示す。一点鎖線3で示す流量は、流量に依存する漏れの分だけ、点線2で示した流量よりも小さい。流量に依存する漏れは、圧力に依存せず、送液圧力P2が大気圧に等しいときでも生じる。このため、送液圧力P2が大気圧に等しいときの検出器4での流量Q0は、基本流量Qbに一致しない。
【0068】
実線4は、検出器4での目標とする流量Q0である目標流量を示す。実線4で示す目標流量は、一点鎖線3で示す流量に対して、溶媒の膨張と、溶媒の圧力に依存する漏れと、溶媒の流量に依存する漏れとによる流量の変化を補正した場合の流量である。目標流量の値は、予め設定しておくことができる。
【0069】
破線5、点線6、一点鎖線7、及び実線8で示される流量は、線1~4で示された流量よりも小さいが、それぞれ破線1、点線2、一点鎖線3、及び実線4と同様の流量特性を示す。
【0070】
本実施例による送液ポンプ1では、検出器4での流量Q0が、送液圧力P2に対して目標流量で一定になるように、すなわち図5に実線4と実線8で示した流量特性となるように、コントローラ10が第1プランジャ21と第2プランジャ22を駆動する。実線4と実線8で示した流量特性は、送液圧力P2ごとに基本流量Qbを変えること(すなわち、溶媒の膨張と漏れによる流量の変化を補正すること)で得られる。
【0071】
<漏れの補正式>
図5に一点鎖線3で示した流量特性を、式(3)で近似して表す。
Q0=exp(f(P2))×(Qb-Cleakp×P2-Cleakq×Qb)
+Qoffset (3)
式(3)において、Q0は検出器4での流量、P2は送液圧力、f(P2)は送液圧力P2に対する膨張率の関数(送液圧力P2での溶媒の体積に対する大気圧での溶媒の体積の比率)、Qbは基本流量、Cleakpは圧力に依存する漏れに関する比例係数、Cleakqは流量に依存する漏れに関する比例係数、Qoffsetは近似式の調整係数である。
【0072】
送液圧力P2は、圧力センサ110で測定される。関数f(P2)で与えられる値には、文献に記載された値などの公知の値を用いてもよいし、実測して得られた値を用いてもよい。Qoffsetは、図4図5を用いて説明した考え方に含まれない脈動などの影響や、流量の測定誤差などを調整して、流量の測定値を式(3)にフィッティングさせるためのパラメータである。
【0073】
式(3)を変形して、
Qb=C1×Q0+C0 (4)
とする。ただし、パラメータC1、C0は、
C1=1/((1-Cleakq)×exp(f(P2))) (5)
C0=(1/(1-Cleakq))
×(Cleakp×P2-Qoffset/exp(f(P2)) (6)
である。また、C1、C0が送液圧力P2に対して線形に変化するパラメータ(送液圧力P2の1次関数で表されるパラメータ)であるとすると、
C1=C1a×P2+C1b (7)
C0=C0a×P2+C0b (8)
と表される。
【0074】
本実施例による送液ポンプ1では、コントローラ10は、パラメータC1、C0と、目標とする検出器4での流量Q0(すなわち目標流量)を用いて、式(4)から検出器4での目標流量(Q0)に対する基本流量Qbを求め、この基本流量Qbを用いて式(1)、(2)から第1プランジャ21の移動速度v1と第2プランジャ22の移動速度v2を求め、求めた移動速度v1と移動速度v2でそれぞれ第1プランジャ21と第2プランジャ22を駆動する。パラメータC1、C0は、送液圧力P2に依存し、送液圧力P2を用いて求めることができる。
【0075】
本実施例による送液ポンプ1では、送液圧力P2ごとにパラメータC1、C0、すなわち式(4)から得られる基本流量Qbを変えることで、図5に実線4と実線8で示した流量特性(検出器4での流量Q0が、送液圧力P2に対して目標流量で一定である流量特性)が得られる。本実施例による送液ポンプ1は、このようにして第1プランジャ21と第2プランジャ22を駆動して流量を補正することで、流量精度の高い送液が可能である。
【0076】
パラメータC1とC0は、流量の補正に用いられるパラメータ(補正パラメータ)であり、送液圧力P2と検出器4での溶媒の流量Q0との関係を表す式(式(3)を変形させた式(4))のパラメータである。補正パラメータC1、C0は、式(5)と式(6)にしたがって、又は式(7)と式(8)にしたがって設定される。すなわち、補正パラメータC1、C0は、求め方が2つある。コントローラ10は、補正パラメータC1、C0を式(5)と式(6)で求める場合には、係数Cleakp、Cleakq、Qoffset、及び関数f(P2)を記憶し、補正パラメータC1、C0を式(7)と式(8)で求める場合には、係数C1a、C1b、C0a、及びC0bを記憶する。
【0077】
式(5)~式(8)の各パラメータの値は、溶媒の物性(例えば、粘度や圧縮率など)によって変化する。コントローラ10は、式(5)~式(8)の各パラメータの値を溶媒ごとに(例えばテーブルとして)記憶しておき、溶媒に応じてパラメータC1、C0の値を変更することができる。又は、コントローラ10は、パラメータC1、C0を表す係数の値を溶媒の物性に対して関数化して記憶しておき、溶媒ごとにパラメータC1、C0の値を求め、溶媒に応じてパラメータC1、C0の値を変更することができる。
【0078】
なお、式(3)のCleakpとCleakqとQoffsetの求め方については、後述する。
【0079】
<圧力フィードバック>
式(5)と式(6)(又は式(7)と式(8))に示すように、補正パラメータC1、C0は、送液圧力P2に依存する。送液圧力P2は、分離カラム3や配管の状態と、温度による溶媒の粘度の変化などによって変化する。このため、送液圧力P2に応じてパラメータC1、C0を調整し、調整したパラメータC1、C0に基づいて送液ポンプ1を駆動させることが望ましい。そこで、圧力センサ110の測定値をコントローラ10にフィードバックさせて、コントローラ10がパラメータC1、C0を再計算(調整)することが望ましい。
【0080】
コントローラ10は、送液圧力P2のフィードバックとして、送液ポンプ1が溶媒を吐出している間に、リアルタイム(実際はコントローラ10の制御周期)で圧力センサ110から測定値(送液圧力P2)を入力する。コントローラ10は、送液ポンプ1が溶媒を吐出している間に、このフィードバックで得られた送液圧力P2を用い、式(5)と式(6)(又は式(7)と式(8))に基づいてパラメータC1、C0を計算して求め、求めたC1、C0を用いて式(4)から目標流量(Q0)に対する基本流量Qbを算出し、この基本流量Qbを用いて第1プランジャ21と第2プランジャ22の移動速度v1、v2を求めて第1プランジャ21と第2プランジャ22を駆動する。本実施例による送液ポンプ1は、このようにして、送液圧力P2が変化しても、検出器4での流量Q0が目標流量で一定になるように調整することができる。
【0081】
送液圧力P2のフィードバックは、任意のタイミングですることができ、例えば、上記のリアルタイムや、送液ポンプ1の駆動周期ごとにすることもできる。送液ポンプ1の駆動周期ごとにフィードバックを行うと、パラメータC1、C0を算出する時間間隔が大きくなるため、コントローラ10の演算能力が低くても流量を容易に補正することができる。したがって、高価なコントローラ10を使う必要がなくなり、装置コストを低くすることができる。
【0082】
<補正パラメータの決め方>
式(5)と式(6)で表される補正パラメータC1、C0は、溶媒ごとに、複数の基本流量Qbについて、送液圧力P2に対する検出器4での溶媒の流量Q0を測定することで決定することができる。検出器4での溶媒の流量Q0は、流量計8で測定することができる。なお、測定する基本流量Qbの数が多いほど、補正パラメータC1、C0をより精度良く求めることができる。
【0083】
図6A図6Bは、送液圧力P2に対する検出器4での溶媒の流量Q0の測定値の例を模式的に示す図である。本実施例では、一例として、基本流量Qbが2通りの場合について説明する。図6Aには、基本流量がQb1の例を、図6Bには、基本流量がQb2(<Qb1)の例を、それぞれ示している。
【0084】
図6A図6Bに示すように、複数(本実施例では2通り)の基本流量Qb(Qb1、Qb2)に対して、横軸を送液圧力P2とし、縦軸を検出器4での流量Q0として測定値をプロットし、流量特性線図を得る。そして、流量特性線図(図6A図6B)を、膨張率の関数f(P2)の値に文献などから求めた公知の値を用いて、式(3)にフィッティングさせることで、Cleakq、Cleakp、及びQoffsetの値を求めることができる。Cleakq、Cleakp、及びQoffsetの値は、例えば、流量特性線図の基本流量Qbと送液圧力P2に対する流量Q0の測定値を、数値最適化の手法を用いて式(3)にフィッティングさせることで求められる。そして、求めたこれらの値を、式(5)と式(6)に代入することで、パラメータC1、C0を求めることができる。
【0085】
コントローラ10は、以上に説明したように、圧力センサ110が測定した送液圧力P2と、流量計8が測定した検出器4での溶媒の流量Q0との関係に基づいて、パラメータC1、C0を求めることができる。
【0086】
コントローラ10は、補正パラメータC1、C0を、次のようにして式(7)と式(8)から求めることもできる。
【0087】
図7Aは、送液圧力P2に対し、式(5)から得られたパラメータC1をプロットした例を模式的に示す図である。図7Bは、送液圧力P2に対し、式(6)から得られたパラメータC0をプロットした例を模式的に示す図である。なお、Cleakq、Cleakp、及びQoffsetの値は、上記の方法で求めた。
【0088】
図7Aに示すプロット線を線形近似した直線を求めることで、式(7)のパラメータC1を表すパラメータC1aとC1bを求めることができる。また、図7Bに示すプロット線を線形近似した直線を求めることで、式(8)のパラメータC0を表すパラメータC0aとC0bを求めることができる。
【0089】
検出器4での溶媒の流量Q0を流量計8で測定して補正パラメータC1、C0を定める又は更新するタイミングは、任意に定めることができ、例えば、送液ポンプ1の組み立て直後(初期状態)、送液ポンプ1を使用箇所に設置した直後、及び使用箇所での送液ポンプ1の定期メンテナンスのときなどを挙げることができる。なお、送液ポンプ1が流量計8を備えない場合には、ユーザーが流量計8を設置して溶媒の流量Q0を測定する。
【0090】
コントローラ10は、送液ポンプ1が流量計8を備える場合には、送液ポンプ1の稼働中に随時、補正パラメータC1、C0を更新することができる。
【0091】
システム制御部7は、流量計8が測定した値を、自動又はユーザーによる入力で記録することができる。システム制御部7は、上述した演算によって各パラメータを算出し、コントローラ10に入力することもできる。
【0092】
また、ユーザーは、各パラメータの値をシステム制御部7に入力することもできる。
【0093】
また、液体クロマトグラフ100のシステムがインターネットなどのネットワーク環境に接続されている場合には、ユーザー又は装置メーカーが、流量計8の測定値又は各パラメータの値をネットワーク経由でシステム制御部7に入力することもできる。
【0094】
以上説明したように、本実施例による送液ポンプ1は、溶媒の膨張と、溶媒の圧力に依存する漏れと、溶媒の流量に依存する漏れを考慮できて、目標流量に応じて基本流量Qbを補正することができ、流量精度の高い送液が可能である。
【0095】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0096】
1…送液ポンプ、2…インジェクタ、3…分離カラム、4…検出器、5…廃液容器、6…合流点、7…システム制御部、8…流量計、10…コントローラ、11…第1加圧室、12…第2加圧室、21…第1プランジャ、22…第2プランジャ、31…第1吸引通路、32…第2吸引通路、41…第1吐出通路、42…第2吐出通路、51…第1逆止弁、52…第2逆止弁、61…第1シール、62…第2シール、71、72…軸受、81…第1電磁弁、82…第2電磁弁、90…合流部、100…液体クロマトグラフ、101…第1プランジャポンプ、102…第2プランジャポンプ、103…連結流路、110…圧力センサ、111…第1ポンプヘッド、112…第2ポンプヘッド、200…液体クロマトグラフ、210…モータドライバ、211…第1電動モータ、212…第2電動モータ、221…減速装置、222…減速装置、231…直動装置、232…直動装置、310…パージバルブドライバ、311…パージバルブ、312…廃液タンク、410…電磁弁ドライバ、511…第1溶媒、512…第2溶媒、513…第3溶媒、514…第4溶媒、1001、1002…送液ポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B