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特開2023-98082中華まん類用穀粉組成物、及びこれを用いた中華まん類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098082
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】中華まん類用穀粉組成物、及びこれを用いた中華まん類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20230703BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20230703BHJP
   A21D 2/18 20060101ALI20230703BHJP
   A21D 2/36 20060101ALI20230703BHJP
   A21D 13/31 20170101ALI20230703BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A23L35/00
A21D2/18
A21D2/36
A21D13/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214597
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】貴島 聡
(72)【発明者】
【氏名】山下 敦子
(72)【発明者】
【氏名】木本 匡昭
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】塚本 一民
(72)【発明者】
【氏名】茂木 大介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 俊之
(72)【発明者】
【氏名】村上 浩二
【テーマコード(参考)】
4B023
4B032
4B036
【Fターム(参考)】
4B023LC05
4B023LE26
4B023LE30
4B023LG06
4B023LK08
4B032DB40
4B032DG02
4B032DK15
4B032DK30
4B032DK40
4B032DP17
4B032DP30
4B032DP33
4B032DP46
4B036LC04
4B036LF12
4B036LH12
4B036LH22
4B036LH29
4B036LH35
4B036LH38
4B036LP01
4B036LP14
4B036LP16
4B036LP24
(57)【要約】
【課題】生地の二次加工性に優れ、かつ再加熱又は保温した後にも良好な食感を有する中華まん類の提供。
【解決手段】AOAC2011.25法で分析される食物繊維量が20質量%以上の高食物繊維小麦粉を、穀粉類中に15~100質量%含有する、中華まん類用穀粉組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
AOAC2011.25法で分析される食物繊維量が20質量%以上の高食物繊維小麦粉を、穀粉類中に15~100質量%含有する、中華まん類用穀粉組成物。
【請求項2】
前記高食物繊維小麦粉における、コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が30質量%以上である、請求項1記載の穀粉組成物。
【請求項3】
前記高食物繊維小麦粉がSBEIIaの活性が低い改変小麦由来の小麦粉である、請求項1又は2記載の穀粉組成物。
【請求項4】
穀粉類100質量部あたり0.1~10質量部のグルテンを含有する、請求項1~3のいずれか1項記載の穀粉組成物。
【請求項5】
AOAC2011.25法で分析される食物繊維量が20質量%以上の高食物繊維小麦粉を、穀粉類中に15~100質量%含有する原料粉を用いる、中華まん類の製造方法。
【請求項6】
前記高食物繊維小麦粉における、コンカナバリンA法で分析された総澱粉中のアミロース含有量が30質量%以上である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記高食物繊維小麦粉がSBEIIaの活性が低い改変小麦由来の小麦粉である、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
前記原料粉が穀粉類100質量部あたり0.1~10質量部のグルテンを含有する、請求項5~7のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中華まん類用穀粉組成物、及びこれを用いた中華まん類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中華まん類は、製造後すぐに食されるだけでなく、製造したものを電子レンジ、ウォーマーなどで再加熱又は長時間保温してから食することが多い。しかし、再加熱又は長時間保温した中華まん類は、皮が硬くなるなど食感が低下する。
【0003】
近年、低糖質食品に対する需要が拡大しており、穀粉の代わりに食物繊維素材を配合した生地から製造される低糖質なベーカリー食品や麺類が提供されている。しかし、従来の食物繊維を多く含む生地は、作業性が低く、また該生地から得られた食品は食感が低下しがちである。特許文献1には、水不溶性食物繊維(IDF)と水溶性高分子食物繊維(HSDF)の総量が5質量%以下であり、水溶性低分子食物繊維(LSDF)の量が25質量%以上である加工澱粉からなる水溶性食物繊維強化剤、これをベーカリー食品や麺に使用すること、及び該食物繊維強化剤を添加した食品の食感が良好であることが記載されている。
【0004】
穀物に含まれる澱粉にはアミロースとアミロペクチンが含まれる。アミロースは、消化酵素による消化性が悪く、そのため、ヒトの消化酵素で消化されない難消化性成分、すなわち食物繊維として機能し得、難消化性澱粉に分類される。高アミロース澱粉としては、高アミロース型トウモロコシ由来の高アミロースコーンスターチがよく知られている。また近年、澱粉合成に関連する酵素に変異を有することでアミロース含量を増加させた高アミロース小麦が開発されている(非特許文献1、2)。特許文献2~5には、澱粉分枝酵素SBEIIaの遺伝子の点変異を有し、SBEIIaの活性が低下しており、穀粒に含まれる澱粉のアミロース含有量が高い高アミロース小麦が開示されている。しかし一方で、アミロースは食品がパサついたり硬くなったりする原因でもある。例えば、前述の非特許文献2には、高アミロース小麦から製造したパンが、通常の小麦を使用したものと比べて膨らみが悪く品質に劣っていたこと、一方で、高アミロース小麦粉の配合によりパスタのようなテクスチャーの中華麺が得られたことが記載されている。そのため、ベーカリーやうどん等の麺類では、食品の食感をソフトで口当たりのよいものにしたい場合、アミロース含量の低い穀粉が利用されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-95316号公報
【特許文献2】特表2007-504803号公報
【特許文献3】特表2008-526690号公報
【特許文献4】特表2015-504301号公報
【特許文献5】特表2019-527054号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J Jpn Assoc Dietary Fiber Res, 2003, 7(1):20-25
【非特許文献2】Trends in Food Science and Technology, 2006, 17:448-456
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、食物繊維を豊富に含有しているにもかかわらず生地の二次加工性に優れ、かつ再加熱又は保温した後にも良好な食感を有する中華まん類を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、AOAC2011.25法で分析される食物繊維量が20質量%以上の高食物繊維小麦粉を、穀粉類中に15~100質量%含有する、中華まん類用穀粉組成物を提供する。
また本発明は、AOAC2011.25法で分析される食物繊維量が20質量%以上の高食物繊維小麦粉を、穀粉類中に15~100質量%含有する原料粉を用いる、中華まん類の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の穀粉組成物によれば、食物繊維を豊富に含有しているにもかかわらず二次加工性に優れた中華まん類用生地を製造することができる。また本発明の穀粉組成物により製造した中華まん類は、製造直後だけでなく、再加熱又は保温した後にも良好な食感を有することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、中華まん類用穀粉組成物、及びそれを用いる中華まん類の製造方法を提供する。本発明で製造される中華まん類は、その原料穀粉中に、AOAC2011.25法で分析される食物繊維量が20質量%以上である高食物繊維小麦粉を含有することを特徴とする。従前、食品成分表又は食品表示基準における食物繊維の分析方法としては、プロスキー法(AOAC985.29法)、プロスキー変法(AOAC991.43法)、AOAC2001.03法などが採用されていた。しかし、これらの方法で分析される食物繊維には、コーデックス食品委員会が定義した食物繊維(ALINORM 09/32/26)のうち、一部の難消化性澱粉、イヌリン、大豆オリゴ糖などの低分子量水溶性食物繊維が含まれていなかった。これに対し、AOAC2011.25法は、一部の難消化性澱粉、イヌリン、大豆オリゴ糖などの低分子量水溶性食物繊維も分析可能な方法である。好ましくは、本発明で使用される高食物繊維小麦粉における、AOAC2011.25法で分析される食物繊維量は、20~50質量%であり、より好ましくは25~48質量%である。
【0011】
本発明で使用される高食物繊維小麦粉は、含有する澱粉自体が難消化性であるために食物繊維含有量が高い小麦粉である。本発明で使用される高食物繊維小麦粉の例としては、高アミロース小麦由来の小麦粉が挙げられる。好ましくは、本発明で使用される高食物繊維小麦粉は、アミロース含量が30質量%以上の高アミロース小麦粉である。より好ましくは、アミロース含量が35質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上の高アミロース小麦粉が使用される。本発明で使用される高食物繊維小麦粉は、澱粉自体の難消化性に起因せずに難消化性を示す小麦粉、例えばふすま由来の食物繊維(セルロース等)の存在により難消化性を示す小麦粉(ふすま粉、上記の高アミロース小麦に由来しない全粒粉など)とは区別される。
【0012】
小麦粉のアミロース含有量とは、該小麦粉に含まれる総澱粉中のアミロース含有量をいう。本明細書における小麦粉のアミロース含有量は、コンカナバリンA(ConA)法により分析された値として定義され、例えば、該小麦粉をMegazyme社のアミロース/アミロペクチン分析キット(AMYLOSE/AMYLOPECTIN ASSAY KIT)で分析することで測定することができる。従来一般的なアミロース含有量の分析方法としては、(1) アミロースのヨウ素に対する結合能の高さを利用した方法(ヨウ素親和力測定法;例えば電流滴定法、比色定量法、AACC61-03法など)、(2) アミロペクチンとConAが特異的に結合することを利用した方法(ConA法)が知られている。しかし(1)を利用した方法ではアミロース量がより高く算出される傾向がある。例えば、非特許文献1や非特許文献2に記載されるSGP-1遺伝子の機能欠失型変異(null変異)を有する高アミロース小麦粉のアミロース含有量は、ヨウ素親和力測定法では37質量%程度であるが、ConA法では31質量%程度である。なお、従来一般的な小麦粉のアミロース含有量は、ヨウ素法では32質量%未満、ConA法では28質量%未満である。
【0013】
本発明において高食物繊維小麦粉として使用され得る高アミロース小麦粉の例としては、澱粉分枝酵素SBEIIaの活性が低い改変小麦由来の小麦粉が挙げられる。そのような改変小麦由来の小麦粉の例としては、特許文献2~5に記載される、SBEIIaの遺伝子の変異を有し、SBEIIaの活性が低下している高アミロース小麦由来の小麦粉が挙げられる。より具体的な例としては、穀粒中のSBEIIaタンパク質の量又は活性が野生型小麦穀粒中の量又は活性の2%よりも低い高アミロース小麦由来の小麦粉、1つ以上、例えば1つ又は2つのSBEIIa遺伝子のnull変異を有する高アミロース小麦由来の小麦粉、などが挙げられる。
【0014】
例えば、本発明で使用される高食物繊維小麦粉は、前述した高アミロース小麦の穀粒を通常の手順で製粉することによって製造することができる。例えば、本発明で使用される高食物繊維小麦粉は、該高アミロース小麦の穀粒の胚乳画分のみを実質的に含む小麦粉であってもよく、又は、該高アミロース小麦の穀粒の胚乳画分に加えてさらに胚芽やふすま画分を含む小麦粉(例えば全粒粉)であってもよい。
【0015】
本発明で使用される高食物繊維小麦粉は、灰分が、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.2~0.8質量%である。本明細書における小麦粉の灰分は、直接灰化法(ISS Standard Methods No.104/1)に従って測定した値をいう。
【0016】
本発明において、前述した高食物繊維小麦粉は、中華まん類の原料穀粉として使用される。すなわち、該高食物繊維小麦粉を含有する原料穀粉は、中華まん類用穀粉組成物として使用され、該穀粉組成物を用いて中華まん類が製造される。当該原料穀粉のうち、好ましくは15~100質量%、より好ましくは15~90質量%、さらに好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは50~80質量%が該高食物繊維小麦粉である。したがって、本発明の中華まん類用穀粉組成物は、該高食物繊維小麦粉を、該穀粉組成物に含まれる穀粉類の全質量中、好ましくは15~100質量%、より好ましくは15~90質量%、さらに好ましくは20~80質量%、さらに好ましくは50~80質量%含有し得る。
【0017】
本発明の中華まん類用穀粉組成物は、前述した高食物繊維小麦粉以外の他の穀粉類を含有していてもよい。当該他の穀粉類の例としては、前述した高食物繊維小麦粉以外の小麦粉(典型的にはアミロース含有量が28質量%未満の小麦粉)、ライ麦粉、大麦粉、コーンフラワー、米粉、そば粉などが挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を使用することができるが、好ましくは、該他の穀粉類は該高食物繊維小麦粉以外の小麦粉であり、その例としては、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム粉、全粒粉などから選択される1種又は2種以上が挙げられる。
【0018】
本発明の中華まん類用穀粉組成物は、前記高食物繊維小麦粉を含有する原料穀粉以外に、他の材料を含有することができる。当該他の材料としては、中華まん類の製造に通常使用され得るもの、例えば、澱粉類;イースト;膨張剤;食塩;砂糖、蜂蜜、水あめ等の糖類;牛乳、脱脂粉乳、コンデンスミルク等の乳製品;ショートニング、バター、マーガリン、ラード、植物油等の油脂類;液卵、全卵粉、卵白粉などの卵製品;グルテン、大豆蛋白質、カゼイン等の蛋白類;香料;調味料;乳化剤、保存剤、pH調整剤、着色料等の添加剤、などが挙げられ、これらのいずれか1種又は2種以上を使用することができる。該澱粉類としては、例えば、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の澱粉、及びこれらにα化、アセチル化、エーテル化、エステル化、酸化処理、架橋処理等の処理を施した加工澱粉が挙げられる。
【0019】
本発明の中華まん類用穀粉組成物における、穀粉類の総量、ならびに他の材料の配合量は、製造する中華まん類の種類や所望される性質に応じて適宜変更することができる。好ましくは、該穀粉組成物における穀粉類(前記高食物繊維小麦粉及び他の穀粉を含む)の総量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。また好ましくは、該中華まん類用穀粉組成物はグルテンを含有し、該穀粉組成物におけるグルテンの量(ただし穀粉類中に含有されている成分は含まない)は、穀粉類100質量部あたり、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.2~5質量部である。
【0020】
本発明で提供される中華まん類は、原料粉として前記本発明の中華まん類用穀粉組成物を用いる以外は、通常の手順に従って製造することができる。具体的には、原料粉から生地を調製し、該生地を、発酵、分割、成形(包餡)、ホイロなどの工程を経た後、蒸し加熱することで、中華まん類が製造される。
【0021】
生地の調製においては、原料粉を含む生地原料と、水分とを混合して中華まん類の生地を調製する。該生地の調製において、前記高食物繊維小麦粉、他の穀粉、及び他の材料は、一度に又は任意の順序で混合することができる。さらに、該生地原料として、該原料粉と別途で液糖、油脂などを添加してもよい。水分としては、水、塩水、ガス含有水(炭酸水等)などを使用することができる。該生地原料に対する水分の添加量は、適宜調整すればよいが、好ましくは、原料粉100質量部に対して30~70質量部である。
【0022】
生地の調製の具体的手順は、特に限定されず、中華まん類の生地の調製のために使用される通常の手順をいずれも使用することができる。例えば、本発明の中華まん類の生地は、ストレート法、中種法などのいずれの方法を使用して調製されてもよい。調製した生地から、発酵、分割、成形(包餡)、ホイロ、蒸し加熱などを経て、本発明の中華まん類が製造される。
【0023】
中華まん類の製造工程に用いられる条件や装置は、特に限定されず、中華まん類の製造に従来用いられている製造条件、製造装置などを適宜使用することができる。例えば、生地による包餡(具材の包み)作業は、手作業で行ってもよいが、一般的に使用される自動包餡機を使用して行うことができる。本発明の中華まん類の生地は、食物繊維を豊富に含有しているにもかかわらず二次加工性に優れているので、包餡等の作業が比較的容易である。
【0024】
中華まん類に用いる具材の種類は、特に限定されず、肉、魚介、野菜、豆、穀物、芋、果物、ナッツ、乳製品、クリーム類などを適宜使用することができる。例えば、肉と野菜を調味した肉餡や、カレー餡、ピザ餡、小豆餡、芋餡、チーズクリーム、チョコクリームなどの中華まん類に従来使用されている具材を、本発明の中華まん類の具材として使用することができる。
【0025】
製造され得る中華まん類の種類としては、従来から中華まん類の範疇に入るものとして取り扱われている製品、例えば、肉まん、あんまん、カレーまん、ピザまん、角煮まん、チーズクリームまん、チョコまん、などを挙げることができる。ただし、本発明で製造される中華まん類の種類は、上記に限定されず、任意の具材を有するものを包含する。また、製造される中華まん類の重量、形状、寸法などは、特に限定されず、具材や嗜好に合わせて適宜選択することができる。
【0026】
本発明の中華まん類は、製造後直ちに喫食してもよいが、必要に応じて適宜包装して、常温、冷蔵、チルド、又は冷凍状態で保存、流通、又は販売することができる。本発明で製造される中華まん類には、常温、冷蔵、チルド及び冷凍状態で保存又は流通される中華まん類がいずれも包含される。好ましくは、本発明で製造される中華まん類は、製造後に蒸し器、電子レンジなどで再加熱して喫食されるか、又はウォーマーなどで保温された後に喫食されるものである。本発明で製造される中華まん類は、製造直後だけでなく、再加熱又は保温した後にも、良好な食感を有することができる。
【実施例0027】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0028】
材料
・高アミロース小麦由来小麦粉(HAW):SBEIIa変異遺伝子を有する、SBEIIaの発現量の低い小麦穀粒から得られた高食物繊維小麦粉。食物繊維量28.9質量%、アミロース含有量47.4質量%(総澱粉中)、灰分0.57質量%。
・強力粉:1CW(No.1 Canada Wheat)由来小麦粉。食物繊維量3.4質量%、アミロース含有量25.1質量%(総澱粉中)、灰分0.43質量%。
・中力粉:ASW(Australian Standard White)由来小麦粉。食物繊維量2.8質量%、アミロース含有量23.3質量%(総澱粉中)、灰分0.37質量%。
・ハイアミロースコーンスターチ:食物繊維量59.9質量%、アミロース含有量86.5質量%(総澱粉中)。
食物繊維量はAOAC2011.25法により測定した。アミロース含量はアミロース/アミロペクチン分析キット(Megazyme社)により測定した。
【0029】
試験例1 中華まんの製造(ストレート法)
表1記載の原料から、下記に示す手順に従ってストレート法により生地を調製し、中華まんを製造した。生地で包む具材としては、挽肉に玉ねぎ等の野菜類と調味料、香辛料などを加えて製造した肉餡を用いた。分割した生地で具材を包む成形(包餡)工程は、自動包餡機(レオン自動機株式会社製「火星人CN511」)を用いて行った。
【0030】
[製造工程(ストレート法)]
ミキシング:低速で7分→高速10分
捏上温度:25℃
発酵(27℃、湿度75%):15分
分割:50g/1個
成形(包餡):分割した生地1個で35gの肉餡を包む
ホイロ(40℃、湿度50%):30分
蒸し:102℃の蒸気で12分
【0031】
生地の二次加工性(ミキシング時の生地の弾力、進展性、べたつきの無さ、ミキシング終了時の生地のつながり、及び発酵生地の弾力、進展性、べたつきの無さ)を、訓練されたパネラー10名により下記基準で評価した。同じパネラー10名により、製造直後の中華まん、ならびに、製造後に24時間冷蔵(4℃)保存した後、品温60℃以上になるまで600Wで電子レンジ加熱するか又はウォーマー(65℃)で6時間保温した中華まんについて下記基準で食感を評価した。10名の評価の平均点を求めた。
<評価基準>
二次加工性
5点:対照よりも優れる
4点:対照よりもやや優れる
3点:対照と同等である
2点:対照よりもやや劣る
1点:対照よりも劣る
食感(口溶け)
5点:対照よりも優れる
4点:対照よりもやや優れる
3点:対照と同等である
2点:対照よりもやや劣る
1点:対照よりも劣る
食感(歯切れ)
5点:対照よりも優れる
4点:対照よりもやや優れる
3点:対照と同等である
2点:対照よりもやや劣る
1点:対照よりも劣る
【0032】
結果を表1に示す。高食物繊維小麦粉を含む生地から製造した中華まんは、通常の小麦粉から製造した対照の中華まんと比べて、生地の二次加工性が向上し、かつ口溶けと歯切れに優れていた。
【0033】
【表1】
【0034】
試験例2 中華まんの製造(中種法)
表2記載の原料から、下記に示す手順に従って中種法により生地を調製し、中華まんを製造した。生地の成形(包餡)の手順及び使用した具材は、試験例1と同様にした。生地の二次加工性、及び製造した中華まんの食感を試験例1と同様に評価した。結果を表2に示す。
【0035】
[製造工程(中種法)]
中種
ミキシング:(油脂添加)低速5分→中低速2分
捏上温度:24℃
発酵時間(27℃、湿度75%):60分
本捏
ミキシング:(油脂添加)低速7分→中低速10分→中高速1.5分
捏上温度:25℃
分割:65g/1個
成形(包餡):分割した生地1個で40gの肉餡を包む
ホイロ(50℃、湿度40%):45分
ラックタイム(室温):5分
蒸し(100℃、蒸気圧設定1.0気圧):16分
【0036】
【表2】