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特開2023-98085水硬性結合材用硬化剤、硬化剤スラリー、二成分型硬化性組成物、積層造形用水硬性組成物スラリー及びその製造方法、積層体の製造方法、並びに硬化体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098085
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】水硬性結合材用硬化剤、硬化剤スラリー、二成分型硬化性組成物、積層造形用水硬性組成物スラリー及びその製造方法、積層体の製造方法、並びに硬化体
(51)【国際特許分類】
   C04B 22/14 20060101AFI20230703BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20230703BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20230703BHJP
   C04B 14/04 20060101ALI20230703BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20230703BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20230703BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
C04B22/14 A
C04B24/06 A
C04B18/14 Z
C04B14/04 Z
C04B28/02
B28B1/30
B28C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214602
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】桐山 宏和
(72)【発明者】
【氏名】伊勢島 佳
(72)【発明者】
【氏名】関 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】松富 豊
【テーマコード(参考)】
4G052
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G052DA01
4G052DA08
4G052DB12
4G052DC06
4G056AA06
4G056CB32
4G112MB13
4G112PA02
4G112PA03
4G112PA28
4G112PB10
4G112PB17
4G112PC04
4G112PC05
4G112PC06
4G112PE01
4G112PE02
(57)【要約】
【課題】
水硬性結合材を含む主材と混合した際に、十分な混合性、積層性、速硬性及び強度発現性を有する水硬性組成物を得ることができる水硬性結合材用硬化剤を提供すること。
【解決手段】
ミョウバンと、塩基性アルミニウム塩とを含み、塩基性アルミニウム塩が、アルミニウムイオンと、2~6個の炭素原子を有するヒドロキシ酸イオンとを含む塩基性塩である、水硬性結合材用硬化剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミョウバンと、塩基性アルミニウム塩とを含み、
前記塩基性アルミニウム塩が、アルミニウムイオンと、2~6個の炭素原子を有するヒドロキシ酸イオンとを含む塩基性塩である、水硬性結合材用硬化剤。
【請求項2】
前記ミョウバンの平均粒子径が0.05~1.0mmである、請求項1に記載の水硬性結合材用硬化剤。
【請求項3】
前記塩基性アルミニウム塩が、塩基性乳酸アルミニウムである、請求項1又は2に記載の水硬性結合材用硬化剤。
【請求項4】
水硬性結合材、遅延剤及び水を含む主材スラリーを硬化させるための、請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性結合材用硬化剤。
【請求項5】
前記主材スラリーが骨材を含む、請求項4に記載の水硬性結合材用硬化剤。
【請求項6】
シリカ質粉末及び骨材の少なくとも一方を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の水硬性結合材用硬化剤。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の水硬性結合材用硬化剤と、水とを含む、硬化剤スラリー。
【請求項8】
主材と硬化剤とを分離した状態で備え、
前記主材が、水硬性結合材と遅延剤とを含み、
前記硬化剤がミョウバンと塩基性アルミニウム塩とを含み、
前記塩基性アルミニウム塩が、アルミニウムイオンと、2~6個の炭素原子を有するヒドロキシ酸イオンとを含む塩基性塩である、二成分型硬化性組成物。
【請求項9】
水硬性結合材、遅延剤、ミョウバン、塩基性アルミニウム塩及び水を含み、
前記塩基性アルミニウム塩が、アルミニウムイオンと、2~6個の炭素原子を有するヒドロキシ酸イオンとを含む塩基性塩である、積層造形用水硬性組成物スラリー。
【請求項10】
更に、シリカ質粉末及び骨材の少なくとも一方を含むことを特徴とする、請求項9に記載の積層造形用水硬性組成物スラリー。
【請求項11】
水硬性結合材、遅延剤及び水を含む主材スラリーと、請求項7に記載の硬化剤スラリーとを混合することを含む、積層造形用水硬性組成物スラリーの製造方法。
【請求項12】
請求項9又は10に記載の積層造形用水硬性組成物スラリーの積層体を造形することを含む、積層体の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の積層体の硬化物である、硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性結合材用硬化剤、硬化剤スラリー、二成分型硬化性組成物、積層造形用水硬性組成物スラリー及びその製造方法、積層体の製造方法、並びにセメント硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形法は、目的とする造形物の三次元データを元にして、樹脂、金属、セラミックなどの材料を二次元加工することを繰り返し、積層・造形する方法である。その中で、材料押出方式は、造形材料を直接ノズルなどの開口部を通して選択的に押し出しながら積み重ねていく方法であり、近年では、セメントや粘土鉱物スラリーを用いた押出方式の積層造形技術の研究も積極的に行われている。
【0003】
材料押出方式の積層造形を行うにあたり、積層造形用材料(硬化性組成物)に求められる性能として、例えば、材料の送液し易さ(以下、送液性という。)、ノズルから出た後であり且つ硬化前の材料が自重で変形しないこと(以下、積層性という。)が挙げられる。一般的に材料の送液性と積層性とはトレードオフの関係にあり、例えば、流動性が高く送液性が良好な材料は積層した形状を保持できずに崩壊する可能性が高い。
【0004】
送液性と積層性のトレードオフ関係を解決するために、材料設計の面では粘度に時間やせん断速度依存性がある、高チクソトロピー性を目指すことが一般的である。高チクソトロピー性材料であれば、送液の際にポンプや流路から掛かるせん断応力により粘度が下がるため高い送液性が得られ、吐出後は粘度や降伏値が回復して積層性を付与することができる。例えば、特許文献1、2は高チクソトロピー性材料をコンセプトとした造形用セメント組成物やそれを用いた積層造形方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-185645号公報
【特許文献2】特開2018-140906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一成分型の硬化性組成物は、水と混合した瞬間から硬化が始まるため、時間管理が煩雑であり、可使時間と積層性を両立しにくいという問題がある。また、二成分型の硬化性組成物であっても、水硬性結合材を含む主材と硬化剤を混合した際にフロックを生じることにより、混合性が低下する場合がある。更に、従来の硬化性組成物は、依然として積層性が不十分である、また、得られるセメント硬化体の強度が不十分である場合も多い。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、水硬性結合材を含む主材と混合した際に、十分な混合性、積層性、速硬性及び強度発現性を有するセメント組成物を得ることができる水硬性結合材用硬化剤を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような水硬性結合材用硬化剤を用いた硬化剤スラリー、二成分型硬化性組成物、積層造形用水硬性組成物スラリー及びその製造方法、積層体の製造方法、並びに硬化体を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、水硬性結合材を含む主材と、ミョウバン及び塩基性アルミニウム塩を含む硬化剤とを混合することで、混合性、積層性、速硬性及び強度発現性の全てをバランスよく有する二成分型硬化性組成物の製造に有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の水硬性結合材用硬化剤は、ミョウバンと、塩基性アルミニウム塩とを含み、塩基性アルミニウム塩が、アルミニウムイオンと、2~6個の炭素原子を有するヒドロキシ酸イオンとを含む塩基性塩である。
【0009】
上記ミョウバンの平均粒子径が0.05~1.0mmであると好ましい。
【0010】
上記塩基性アルミニウム塩が、塩基性乳酸アルミニウムであると好ましい。
【0011】
水硬性結合材、遅延剤及び水を含む主材スラリーを硬化させるための、水硬性結合材用硬化剤。
【0012】
上記主材スラリーが骨材を含むと好ましい。
【0013】
上記水硬性結合材用硬化剤がシリカ質粉末及び骨材の少なくとも一方を含むと好ましい。
【0014】
本発明の硬化剤スラリーは、水硬性結合材用硬化剤と、水とを含む。
【0015】
本発明の二成分型硬化性組成物は、主材と硬化剤とを分離した状態で備え、主材が、水硬性結合材と遅延剤とを含み、硬化剤がミョウバンと塩基性アルミニウム塩とを含み、塩基性アルミニウム塩が、アルミニウムイオンと、2~6個の炭素原子を有するヒドロキシ酸イオンとを含む塩基性塩である。
【0016】
本発明の積層造形用水硬性組成物スラリーは、水硬性結合材、遅延剤、ミョウバン、塩基性アルミニウム塩及び水を含み、塩基性アルミニウム塩が、アルミニウムイオンと、2~6個の炭素原子を有するヒドロキシ酸イオンとを含む塩基性塩である。
【0017】
上記積層造形用水硬性組成物スラリーは、更に、シリカ質粉末、骨材の少なくとも一方を含むと好ましい。
【0018】
本発明の積層造形用水硬性組成物スラリーの製造方法は、水硬性結合材、遅延剤及び水を含む主材スラリーと、上記硬化剤スラリーとを混合することを含む。
【0019】
本発明の積層体の製造方法は、上記積層造形用水硬性組成物スラリーの積層体を造形することを含む。
【0020】
本発明の硬化体は、積層体の硬化物である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、水硬性結合材を含む主材と混合した際に、十分な混合性、積層性、速硬性及び強度発現性を有する水硬性組成物を得ることができる水硬性結合材用硬化剤を提供することができる。また、本発明によれば、そのような水硬性結合材用硬化剤を用いた硬化剤スラリー、二成分型硬化性組成物、積層造形用水硬性組成物スラリー及びその製造方法、積層体の製造方法、並びに硬化体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<水硬性結合材用硬化剤>
本発明の一実施形態に係る水硬性結合材用硬化剤は、ミョウバンと、塩基性アルミニウム塩とを含み、塩基性アルミニウム塩が、アルミニウムイオンと、2~6個の炭素原子を有するヒドロキシ酸イオンとを含む塩基性塩である。このような水硬性結合材用硬化剤によれば、水硬性結合材を含む主材と混合した際に、十分な混合性、積層性、速硬性及び強度発現性を有する水硬性組成物を得ることができる。また、本実施形態の水硬性結合材用硬化剤と主材とを混合して得られた硬化性組成物は、送液性にも優れる。なお、水硬性結合材用硬化剤は、水を添加していない状態(プレミックス粉等)であり、使用時に水を添加してスラリー等の状態にして使用する。
【0023】
(ミョウバン)
本明細書において、ミョウバンとは、1価の陽イオンの硫酸塩と、3価の金属イオンの硫酸塩との複塩を指す。ミョウバンとしては、特に限定されないが、例えば、カリミョウバン、アンモニウムミョウバン、ナトリウムミョウバン、鉄ミョウバン、クロムミョウバン、及びそれらの無水物(焼ミョウバン)等が挙げられる。これらのミョウバンのうち、1種のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。入手容易性及び価格の面、更には水を含み硬化剤スラリーを調節する場合の観点からは、カリミョウバンが好ましい。
【0024】
ミョウバンの平均粒子径は、0.05~1.0mmであってよく、好ましくは0.1~0.9mm、より好ましくは0.2~0.8mm、更に好ましくは0.3~0.7mmである。ミョウバンの粒度が上記範囲にあることで、主材スラリーとの混合時に凝集を生じず、混合性を向上することができる。
【0025】
ミョウバンの平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定される体積基準の頻度分布から求める。レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置としては、例えば(株)島津製作所製、「SALD-2200」を用いて乾式条件で測定する。
ミョウバンの平均粒子径の算出手順について、具体的に説明すると、以下のものであってよい。すなわち、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いた測定で得られた粒子径に対する体積基準の頻度の関係から、粒子径の対数値についてその粒子径に対する体積基準の頻度を重みとする加重平均値を求める。
【0026】
ミョウバンの含有量は混合する主材スラリー中の水硬性結合材の総量に対して、好ましくは2~20質量%、より好ましくは5~15質量%、更に好ましくは7~12質量%である。ミョウバンの含有量が上記範囲にあることで、好適な速硬性、強度発現性を得ることができる。
【0027】
水硬性結合材用硬化剤におけるミョウバンの含有量は、水硬性結合材用硬化剤の総量に対して、好ましくは3~90質量%、より好ましくは5~70質量%、更に好ましくは7~50質量%であり、特に好ましくは、7~20質量%である。また、水硬性結合材用硬化剤におけるミョウバンの含有量は、ミョウバンと塩基性アルミニウム塩との合計量に対して、65~98質量%、70~95質量%又は75~90質量%であってよい。ミョウバンの含有量が上記範囲にあることで、主材スラリーと混合した際に、好適な速硬性、強度発現性を得ることができる。
【0028】
(塩基性アルミニウム塩)
本実施形態の水硬性結合材用硬化剤に含まれる塩基性アルミニウム塩は、アルミニウムイオンと、2~6個の炭素原子を有するヒドロキシ酸イオンとを含む塩基性塩である。ここで、塩基性塩とは、水酸化物イオン(OH)を含む塩である。言い換えれば、塩基性アルミニウム塩は、アルミニウムとヒドロキシ酸との塩におけるアニオンの一部を水酸化物イオンで置換したものである。塩基性アルミニウム塩は、一般式:Al(OH)3-xで表される。ここで、x及びbは、塩基性アルミニウム塩が全体として電気的に中性となるように選択される。塩基性アルミニウム塩を使用することにより、フロックの形成を抑制することができるため、特に混合性を向上させることができる。
【0029】
塩基性アルミニウム塩に含まれるヒドロキシ酸イオンが有する炭素原子の個数は、2~4個であると好ましく、2又は3個であるとより好ましく、3個であると更に好ましい。
【0030】
塩基性アルミニウム塩としては、塩基性乳酸アルミニウム、塩基性ヒドロキシ酢酸アルミニウム、塩基性クエン酸アルミニウム、塩基性酒石酸アルミニウム等が挙げられ、塩基性乳酸アルミニウムが好ましい。これらは水和物であってもよい。塩基性アルミニウム塩は、1種のみを使用してもよいが、2種以上を併用してもよい。
【0031】
塩基性乳酸アルミニウムは、一般式Al(OH)3-x(Lac.acid)(0<x<3)で表される化合物であり、Al/乳酸がモル比で0.3~2.0のものが好ましい。なお、Lac.acidは乳酸イオンである。塩基性乳酸アルミニウムは、水和物であってもよい。市販されている塩基性乳酸アルミニウムとしては、例えば、「タキセラムM160-P」(多木化学株式会社製)等が挙げられ、これらを用いることができる。
【0032】
塩基性アルミニウム塩の含有量は、混合する主材スラリー中の水硬性結合材の総量に対して、好ましくは0.5~3.0質量%、より好ましくは0.7~2.8質量%、更に好ましくは1.0~2.5質量%である。塩基性アルミニウム塩の含有量が当該範囲であると、主材スラリーと混合した際により好適な積層性や速硬性が得られると共に、異常凝結又は強度発現性の低下を抑制できる傾向にある。
【0033】
水硬性結合材用硬化剤における塩基性アルミニウム塩の含有量は、水硬性結合材用硬化剤の総量に対して、好ましくは1.0~20質量%、より好ましくは1.5~17質量%、更に好ましくは2.0~15質量%であり、特に好ましくは、2.5~5質量%である。また、塩基性アルミニウム塩の含有量は、ミョウバンと塩基性アルミニウム塩との合計量に対して、10~35質量%、12~30質量%又は15~25質量%であってよい。塩基性アルミニウム塩の含有量が当該範囲であると、主材スラリーと混合した際に好適な積層性や速硬性が得られると共に、異常凝結又は強度発現性の低下を抑制できる傾向にある。
【0034】
水硬性結合材用硬化剤はミョウバン及び塩基性乳酸アルミニウム以外に、シリカ質粉末、骨材、消泡剤、増粘剤、流動化剤、繊維等を含有してもよい。水硬性結合材用硬化剤は、シリカ質粉末及び骨材の少なくとも一方を含むと好ましい。
【0035】
(シリカ質粉末)
シリカ質粉末としての種類は特に限定されないが、シリカを含む粉末であればよく、例えば、シリカフューム(例えば、JISA6207:2016「コンクリート用シリカフューム」で規定されるもの)、フライアッシュ(例えば、JISA6201:2015「コンクリート用フライアッシュ」で規定されるもの)、珪石粉、カオリン、メタカオリン等が挙げられる。
本実施形態に係る水硬性結合材用硬化剤がシリカ質粉末を含むことにより、硬化剤スラリー及び、積層造形用水硬性組成物スラリーの送液性、積層性、及び強度発現性をより向上することができる。
【0036】
シリカ質粉末の比表面積(ブレーン値もしくはBET比表面積)は、好ましくは2000cm/g以上、より好ましくは、3000cm/g以上である。
【0037】
水硬性結合材用硬化剤がシリカ質粉末を含む場合、シリカ質粉末の含有量は、主材スラリー中の水硬性結合材の総量に対して、好ましくは5~100質量%であり、より好ましくは7~70質量%であり、更に好ましくは10~50質量%である。
【0038】
水硬性結合材用硬化剤がシリカ質粉末を含む場合、水硬性結合材用硬化剤におけるシリカ質粉末の含有量は、水硬性結合材用硬化剤の総量に対して、好ましくは5~60質量%であり、より好ましくは10~55質量%であり、更に好ましくは15~50質量%である。
【0039】
(骨材)
骨材は、JISA5308:2019等に規定されるコンクリート用骨材や、建材等に使用される珪砂が好ましい。骨材の粒子径は、硬化剤スラリー、積層造形用水硬性組成物スラリーの送液性の観点から、好ましくは2000μm未満、より好ましくは1180μm未満である。砂の粒子径はJISZ8801-1:2019に規定される目開き寸法の異なる数個の篩を用いて測定することができる。水硬性結合材用硬化剤が骨材を含む場合、水硬性結合材用硬化剤中の骨材の含有量は、主材中の水硬性結合材、主材中の骨材との質量の合計を基準として例えば10~80質量%であり、好ましくは20~70質量%、更に好ましくは30~60質量%である。
【0040】
水硬性結合材用硬化剤が骨材を含む場合、水硬性結合材用硬化剤における骨材の含有量は、水硬性結合材用硬化剤の総量に対して、10~90質量%であり、好ましくは15~80質量%、更に好ましくは20~70質量%である。
【0041】
(消泡剤)
水硬性結合材用硬化剤が消泡剤を含むことにより、積層造形用水硬性組成物スラリーの強度発現性を向上することができる。
消泡剤としては、公知のものを用いることができる。消泡剤の具体例としては、例えば、鉱油系、シリコーン系、アルコール系、ポリエーテル系等の合成物質又は植物由来の天然物質等であってよく、分散性及び持続性の観点から、好ましくはポリエーテル系の消泡剤及び鉱油系の消泡剤である。消泡剤は1種、又は2種類以上の成分を併用して用いることができる。
【0042】
消泡剤の含有量は、主材スラリー中の水硬性結合材の総量に対して、好ましくは0.02~1.0質量%であり、より好ましくは0.05~0.7質量%であり、更に好ましくは0.1~0.5質量%である。
【0043】
水硬性結合材用硬化剤における消泡剤の含有量は、水硬性結合材用硬化剤の総量に対して、好ましくは0.05~3.0質量%であり、より好ましくは0.1~2質量%であり、更に好ましくは0.12~1質量部である。
【0044】
水硬性結合材用硬化剤は、粉末同士を混合したプレミックス粉であってもよく、水を含有する硬化剤スラリーであってもよい。硬化剤スラリーに含まれる水は特に限定されないが、例えば、水道水、蒸留水、脱イオン水等であってよい。硬化剤スラリーにおける水の含有量は、硬化剤スラリーの総量に対して、5~70質量%であってよく、10~50質量%であってよい。
【0045】
<主材>
主材としては特に限定されず、水硬性結合材を含む組成物であれば、特に制限なく使用できる。主材は、粉末同士を混合したプレミックス粉であってもよく、水を含有する主材スラリーであってもよい。
【0046】
主材スラリーは、水硬性結合材、遅延剤及び水を含むものであってよい。
【0047】
(水硬性結合材)
本明細書における水硬性結合材とは、セメントを含み水硬性を示す材料であり、混和材を含んでいてもよい。セメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及び耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメントやフライアッシュセメントなどの各種混合セメントが挙げられる。これらのセメントのうちの1種のみを用いてもよいし、複数種類を混合して用いてもよい。この中でも、積層造形用水硬性組成物スラリーの硬化特性を良好にする観点からは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント及び超早強ポルトランドセメントからなる群から選ばれた少なくとも1種のポルトランドセメントを用いることがより好ましい。
【0048】
水硬性結合材は、更に、混和材を含んでいてもよい。混和材としては、高炉スラグ微粉末(例えば、JISA6206:2013「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に適合するもの)、石灰石微粉末、シリカフューム(例えば、JISA6207:2016「コンクリート用シリカフューム」で規定されるもの)、フライアッシュ(例えば、JISA6201:2015「コンクリート用フライアッシュ」で規定されるもの)、カオリン、メタカオリン、珪石粉、膨張材などの各種混和材が挙げられる。その中でも、主材スラリーや積層造形用水硬性組成物スラリーの送液性や流動性保持時間(可使時間)の観点から、高炉スラグ微粉末を含むことが好ましい。
上記混和材が含まれる場合の含有量は、主材中の水硬性結合材の総量に対して、例えば1~99質量%であり、好ましくは10~90質量%、更に好ましくは30~70質量%である。
混和材の含有量が上記範囲にあることで、主材スラリーの好適な送液性や流動保持時間を実現することができる。
【0049】
高炉スラグ微粉末は、JISA6206:2013「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に適合するものが好ましい。高炉スラグのブレーン比表面積は、好ましくは2500~10000cm/g、より好ましくは3000~9000cm/g、更に好ましくは4000~8000cm/gである。
【0050】
(遅延剤)
遅延剤としては、特に制限はなく、オキシカルボン酸類、糖類、無機系遅延剤等が挙げられ、オキシカルボン酸類が好ましい。
【0051】
オキシカルボン酸類は、オキシカルボン酸及びそれらの塩を含む。オキシカルボン酸としては例えば、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、ヘプトン酸等を挙げることができる。
【0052】
オキシカルボン酸の塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等、及びアルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)を挙げることができ、その中でもナトリウム塩がより好ましく用いられる。また、特にグルコン酸ナトリウムが凝結遅延効果、入手容易性及び価格の面から好ましい。オキシカルボン酸は、1種、又は2種類以上の成分を併用して用いることができる。
【0053】
主材が遅延剤を含む場合の遅延剤の含有量は、主材中の水硬性結合材の総量に対して、好ましくは0.05~1.5質量%であり、より好ましくは0.1~1.0質量%であり、更に好ましくは0.2~0.8質量%である。遅延剤の含有量を上記範囲とすることで、好適な流動保持時間(可使時間)を得ることができる。
【0054】
(水)
主材スラリーに含まれる水は特に限定されず、例えば、水道水、蒸留水、脱イオン水等であってよい。主材スラリー中の水の含有量は、水硬性結合材の総量に対して、好ましくは20~100質量%、より好ましくは25~90質量%、更に好ましくは30~80質量%である。
【0055】
主材は、水硬性結合材、遅延剤及び水以外に、骨材、増粘剤、減水剤、消泡剤、繊維等を含有してもよい。主材スラリーは、骨材を含むと好ましい。
【0056】
(骨材)
主材における骨材は、JISA5308:2019等に規定されるコンクリート用骨材や、建材等に使用される珪砂が好ましい。骨材の粒子径は、主材スラリー、積層造形用セメントスラリーの送液性の観点から、好ましくは2000μm未満、より好ましくは1180μm未満である。骨材の粒子径はJISZ8801―1:2019に規定される目開き寸法の異なる数個の篩を用いて測定することができる。主材が骨材を含む場合、主材中の骨材の含有量は、水硬性結合材と骨材との総量に対して、例えば1~80質量%であり、好ましくは20~70質量%、更に好ましくは30~70質量%である。
【0057】
(減水剤)
主材は、本発明の効果が損なわれない範囲で、減水剤をさらに含んでいることが好ましい。減水剤を含ませることにより、送液性をより向上した主材スラリーを実現することができる。
好ましく用いられる減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤等が挙げられる。ポリカルボン酸系減水剤の具体例としては、ポリエーテル・ポリカルボン酸系減水剤、変形ポリカルボン酸系減水剤等が挙げられる。本発明に係る主材スラリーは、これらの減水剤を単独、又は2種類以上の成分を併用して用いることができる。
減水剤の含有量は、主材中の水硬性結合材の総量に対して、好ましくは0.05~1.0質量%であり、より好ましくは0.1~0.7質量%であり、さらに好ましくは0.2~0.5質量%である。減水剤の含有量を上記範囲とすることで、送液性をより向上することができる。
【0058】
(増粘剤)
主材は、本発明の効果が損なわれない範囲で、増粘剤を含んでよい。具体的には、有機系増粘剤としてのセルロース系増粘剤、デンプン系増粘剤、グアーガム系増粘剤、ビニル系増粘剤等に加え、無機系増粘剤としてのベントナイト、カオリナイト、タルク等が挙げられる。これらを単独、又は2種類以上の成分を併用して用いることができる。
増粘剤の含有量は、主材スラリー中の水硬性結合材の総量に対して、好ましくは0.01~1.0質量%であり、より好ましくは、0.03~0.8質量%、さらに好ましくは0.05~0.5質量%である。
【0059】
(主材スラリーの流動性(送液性))
主材スラリーの流動性は、「JISR5021:2015セメントの物理試験方法」に記載のフロー試験により評価することができる。15回の落下運動後のフロー値としては、140mm以上が好ましく、より好ましくは150mm以上が好ましく、さらに好ましくは170mm以上である。主材スラリーのフロー値を調節する方法としては、例えば水と水硬性結合材の比率、骨材の比率、流動化剤の含有量等の配合により調節することができる。
【0060】
本実施形態の二成分型硬化性組成物は、上記主材と上記水硬性結合材用硬化剤(硬化剤)とを分離した状態で備えるものであってよい。二成分型硬化性組成物における主材は、プレミックス粉であってもよく、水を含有する主材スラリーであってもよい。二成分型硬化性組成物における硬化剤は、プレミックス粉であってもよく、水を含有する硬化剤スラリーであってもよい。
【0061】
本実施形態の二成分型硬化性組成物は、主材スラリーと硬化剤スラリーとを接触させて使用する。そのため、使用するまでは両者が接触しないよう分離した状態で保持される。例えば、主材と硬化剤とを別々の容器、袋等に梱包した状態で保持されてよい。
【0062】
<積層造形用水硬性組成物スラリー>
本実施形態の積層造形用水硬性組成物スラリーは、上記主材スラリーと硬化剤スラリーとを混合したものである。すなわち、積層造形用水硬性組成物スラリーは、水硬性結合材、遅延剤、ミョウバン、塩基性アルミニウム塩及び水を含み、塩基性アルミニウム塩が、アルミニウムイオンと、2~6個の炭素原子を有するヒドロキシ酸イオンとを含む塩基性塩である。積層造形用水硬性組成物スラリーは、水硬性モルタル組成物であってよい。
【0063】
本実施形態の積層造形用水硬性組成物スラリーを製造する方法は、とくに限定されないが、例えば、主材スラリーと硬化剤スラリーとをそれぞれ用意し、主材スラリーと硬化剤スラリーとを混合することを含む方法が挙げられる。主材スラリーと硬化剤スラリーとを混合する方法としては、特に限定されないが、例えば、スタティックミキサーやダイナミックミキサーなどのインラインミキサー、ホバートミキサー、コンクリートミキサー、モルタルミキサー等を使用することが出来る。
【0064】
本実施形態の積層造形用水硬性組成物スラリーは、例えば、立体造形物を製造するために使用することができる。立体造形物は、例えば、3Dプリンタにより製造されてよい。積層造形用水硬性組成物スラリーをノズル等により吐出して層を形成してよく、形成された層上に繰り返し層を形成した積層体としてもよい。本実施形態の硬化体は、上記積層造形用水硬性組成物スラリーを硬化したものであってよく、上記積層体を硬化したものであってよい。
【実施例0065】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0066】
<使用材料>
セメント(C):早強ポルトランドセメント(宇部三菱セメント社製)
混和材(BFS):高炉スラグ微粉末「パワーメント」(宇部三菱セメント社製)ブレーン比表面積 4670cm/g
減水剤(SP):ポリカルボン酸系高性能減水剤「マイティ21P」(花王株式会社製)
増粘剤(MC):水溶性メチルセルロース系増粘剤「マーポローズ90MP-300T」(松本油脂株式会社製)
遅延剤(GNa):グルコン酸ナトリウム(試薬)
細骨材1(S1):鹿島珪砂6号(高野商事株式会社)
細骨材2(S2):N70号(日瓢礦業株式会社製)
水(W):水道水
急結剤1(Alm1):市販のカリミョウバンを粉砕分級したもの(平均粒子径:0.62mm)
急結剤2(Alm2):市販のカリミョウバンを粉砕分級したもの(平均粒子:0.46mm)
急結剤3(Alm3):市販のカリミョウバンを粉砕分級したもの(平均粒子:0.12mm)
急結剤4(AF):市販の硫酸アルミニウム系液体急結剤(硫酸アルミニウム50%含有)
塩基性乳酸アルミニウム(AlLac):「タキセラムM-160P」(多木化学株式会社製)
シリカ質粉末(SF):シリカフューム「EFACO」(巴工業株式会社製)BET比表面積:16.9m/g
消泡剤(DF):「アデカネートB115F」(株式会社ADEKA製)
【0067】
<主材スラリーの製造、安定性>
表1中の粉体原料をあらかじめ乾式混合し、プレミックス粉を調製した。これに所定量の水を加えてホバートミキサーで30秒低速で練り混ぜた後、撹拌を30秒休止し、容器側面や底面に付着した粉体やペーストをかき落とした。休止後、中速で90秒間練り混ぜ、30分間静置した。静置後、再度中速で90秒練り混ぜて主材スラリーを調製した。
製造した主材スラリーの安定性は、「JISR5201:2015セメントの物理試験方法」に記載のフロー試験により確認した。1日おきに、ホバートミキサーを用いて中速で90秒間練り混ぜた後、15回の落下運動後のフローを測定したところ、製造直後のフロー値は198mmであった。更に8日経過後のフロー値は182mmであった。
【0068】
【表1】
【0069】
<硬化剤スラリーの製造、安定性>
表2中の粉体原料をあらかじめ混合しプレミックス粉を調製した。これに水を加えてホバートミキサーで30秒低速で練り混ぜた後、撹拌を30秒休止し、容器側面や底面に付着した粉体やペーストをかき落とした。休止後、高速で120秒間練り混ぜ、硬化剤スラリーを調製した。
製造した硬化剤スラリーの安定性は、pH及びフロー試験により確認した。1日おきに、ホバートミキサーを用いて中速で90秒間練り混ぜた後、pHと15打のモルタルフローを測定したところ、製造直後でpH=3.2、15打フローは190mmであり、8日後ではpH=3.7、15打フローは192mmであった。このことから、硬化剤スラリーも主材スラリーと同様に、1週間以上経過しても好適な流動性を保持していた。
【0070】
【表2】
【0071】
<混合性の評価>
(評価1:2液カートリッジによる送液混合)
表3に示す組成の硬化剤スラリーを調製した。なお、以下、表3及び表4において、配合量は、主材の水硬性結合材100質量%に対する量である。
2液カートリッジシステム「DM400型手動ガン」(MIXPAC社製)とスタティックミキサーを用いて、主材スラリーと硬化剤スラリーとを送液しながら混合した。区分けされた専用カートリッジ「CD400」に表1の主材スラリーと表3の硬化剤スラリーをそれぞれ別々に充填して手動ガンにセットし、先端にスタティックミキサー(型式262-616-01)を接続した。手動ガンの引き金を引いてそれぞれのスラリーを同時に吐出送液し、スタティックミキサーの先端まで到達したものを“○”、スタティックミキサーの途中で閉塞が生じたものを“×”で表記した。
【0072】
(評価2:ホバートミキサー混合時の電流値)
ホバートミキサーの容器に表1の配合で製造した主材スラリーを入れ、そこへ表3の配合で製造した硬化剤スラリーをそれぞれ投入し、中速で60秒間練り混ぜを行い、積層造形用水硬性組成物スラリーを製造した。このとき、ホバートミキサーの電源コードにクランプロガー「ZN-CTC11」(オムロン株式会社製)を接続し、電流値を測定することで硬化剤スラリーを添加した際の混合性を定量的に評価した。電流値の測定データから最大値(a)と、収束した漸近値(b)を抽出し、a/bを算出した。a/bの値が小さいほど、練り混ぜの際にホバートミキサーが安定して動作でき、負荷が小さい、つまり混合性が高いと言える。
【0073】
【表3】
【0074】
<積層造形用水硬性組成物スラリーの製造>
ホバートミキサーの容器に表1の配合で製造した主材スラリーを入れ、そこへ表4の配合で製造した硬化剤スラリーをそれぞれ投入し、中速で60秒間練り混ぜを行い、積層造形用水硬性組成物スラリーを製造した。これらの積層造形用水硬性組成物スラリーについて、前記の混合性に加え、以下の積層性、速硬性、強度発現性の評価を行った。
【0075】
(積層性の評価:ゴム硬度の測定)
練り混ぜた積層造形用セメントスラリーをφ125mm×H25mmのステンレス製シャーレに充填し、表面をスクレーパーで平らに均した。ラップで表面を覆って、デュロメーター「アスカーゴム硬度計F型」(高分子計器株式会社製)をゆっくりと置き、目盛を読み取った。非特許文献:前堀伸平ら,『セメント・コンクリート』,セメント協会、2020年10月,No.884,p.9~15に示すように、静置状態のゴム硬度計の読み値と積層可能高さには一定の関係性が認められるため、ゴム硬度は積層性の指標となり得る。
【0076】
(速硬性の評価:始発時間の測定)
「JISR5021:2015セメントの物理試験方法」に準拠して、ビカー針装置を用いて、積層造形用材料セメントスラリーの始発時間を測定した。材料が始発時間に達していれば、材料はダレなどの変形を生じず、自立性は十分確保されている。
【0077】
<強度発現性の評価:圧縮強度試験>
「JISR5021:2015セメントの物理試験方法」に準拠して、40mm×40mm×160mmの供試体を製作し、材齢1日および7日の圧縮強度試験を行った。型枠の脱型は材齢1日強度測定の直前に行い、その後は20℃、50RH%の条件下で気中養生を行った。
【0078】
【表4】
【0079】
<結果>
実施例2-1~2-8は、いずれも混合性、積層性、速硬性、及び強度発現性が良好であった。
比較例2‐1及び2-2について、市販の硫酸アルミニウム系急結剤AFをB×5.3~7.0%用いた場合、混合性評価においてフロックが形成してミキサーの電流値が上昇し、混合性に劣るという結果となった。更に硫酸アルミニウム系急結剤の添加量を減らしたところ(比較例2-3)、混合性は改善されたものの、以降の積層性、速硬性、及び強度発現性についてはいずれも悪化した。
比較例2‐4について、硬化剤がミョウバンを含むものの、塩基性乳酸アルミニウムを含まなかった場合、積層性に劣る結果となった。比較例2-5において、硫酸系の急結剤を含まず、塩基乳酸アルミニウムのみを添加した場合、強度発現性に劣る結果となった。