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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098086
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】定着装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20230703BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20230703BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
G03G15/20 510
F16C13/00 B
H05B3/00 335
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214605
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】藤原 仁
【テーマコード(参考)】
2H033
3J103
3K058
【Fターム(参考)】
2H033AA02
2H033AA09
2H033BA13
2H033BA25
2H033BA27
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
3J103AA02
3J103AA14
3J103AA23
3J103FA30
3J103GA02
3J103GA58
3J103HA03
3J103HA05
3J103HA12
3J103HA32
3J103HA53
3K058AA11
3K058AA71
3K058BA18
3K058CE13
3K058DA02
3K058GA06
(57)【要約】
【課題】第一の回転部材の第一層および第三層を除電すること、または、第一の回転部材の第一層および第二の回転部材の表層を除電することを課題とする。
【解決手段】加圧ローラ21と、加圧ローラ21との間でトナー像を担持した用紙Pが通過するニップ部を形成する定着ベルト20と、定着ベルト20の内周に接触し、定着ベルト20を加熱するヒータ22と、加圧ローラ21を除電する除電ブラシ37と、を備えた定着装置9であって、加圧ローラ21は、その内側から、導電性の芯金21a、非導電性の弾性層21b、導電性の表層21cをこの順で有し、除電ブラシ37は、芯金21aおよび表層21cに接触することを特徴とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の回転部材と、
前記第一の回転部材との間でトナー像を担持した記録媒体が通過するニップ部を形成する第二の回転部材と、
前記第二の回転部材の内側に接触し、前記第二の回転部材を加熱する加熱体と、 前記第一の回転部材を除電する除電部材と、を備えた定着装置であって、
前記第一の回転部材は、その内側から、導電性の第一層、非導電性の第二層、導電性の第三層をこの順で有し、
前記除電部材は、前記第一層および前記第三層に接触することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記除電部材は、さらに第二の回転部材の表層に接触する請求項1記載の定着装置。
【請求項3】
第一の回転部材と、
前記第一の回転部材との間でトナー像を担持した記録媒体が通過するニップ部を形成する第二の回転部材と、
前記第二の回転部材の内側に接触し、前記第二の回転部材を加熱する加熱体と、 前記第一の回転部材を除電する除電部材と、を備えた定着装置であって、
前記第一の回転部材は、その内側から、導電性の第一層、非導電性の第二層、導電性の第三層をこの順で有し、
前記除電部材は、前記第一層および前記第二の回転部材の表層に接触することを特徴とする定着装置。
【請求項4】
前記加熱体は、基材と、前記基材上に設けられた抵抗発熱体と、前記基材の前記抵抗発熱体が設けられた側の面に高熱伝導部材と、を有し、
前記除電部材はさらに前記高熱伝導部材に接触する請求項1から3いずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記高熱伝導部材はグラフェンである請求項4記載の定着装置。
【請求項6】
前記除電部材は、前記第一層あるいは前記第三層に接触する複数の毛状部を有する接触部と、前記接触部を保持する保持部とを備えたブラシ状部材であり、
前記保持部は、前記接触部の前記第一層に接触する部分を保持する部分が、前記接触部の前記第三層に接触する部分を保持する部分よりも前記第一の回転部材側に突出している請求項1から5いずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記除電部材は、前記第一層あるいは前記第三層に接触する複数の毛状部を有する接触部と、前記接触部を保持する保持部とを備えたブラシ状部材であり、 前記毛状部の前記保持部に保持される被保持位置から当該毛状部が前記第三層に接触する位置までの距離のうち、その最短距離を距離L1、前記毛状部の前記保持部に保持される被保持位置から当該毛状部が前記第一層に接触する位置までの距離のうち、その最短距離を距離L2とすると、
L1<L2である請求項1から6いずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記除電部材は、前記第一層あるいは前記第三層に接触する複数の毛状部を有する接触部と、前記接触部を保持する保持部とを備えたブラシ状部材であり、
前記第一層に接触する前記毛状部の径が、前記第三層に接触する前記毛状部の径よりも大きい請求項1から7いずれか1項に記載の定着装置。
【請求項9】
前記第二層は弾性層である請求項1から8いずれか1項に記載の定着装置。
【請求項10】
前記第一層は、その外面が外側へ露出した露出部を有し、
前記第一層は、前記露出部の前記除電部材が接触する部分に拡径部を有する請求項1から9いずれか1項に記載の定着装置。
【請求項11】
前記第一の回転部材の軸部を保持する軸受をさらに有する請求項1から10いずれか1項に記載の定着装置であって、
前記軸受は非導電性の材料により形成される定着装置。
【請求項12】
前記第一層は、その外面が外側へ露出した露出部を有し、
前記除電部材は、前記第一の回転部材の回転軸方向の前記露出部に対向する部分が前記露出部に接近するように、前記第一の回転部材の回転軸方向に対して傾いて配置される請求項1から11いずれか1項に記載の定着装置。
【請求項13】
前記第一の回転部材の軸部を保持する軸受を有する請求項12記載の定着装置であって、
前記除電部材は、前記第一層あるいは前記第三層に接触する複数の毛状部を有する接触部と、前記接触部を保持する保持部とを有し、
前記第三層の前記回転軸方向の前記軸受側の外面側端部から、前記軸受の前記第一の回転部材を保持する部分の前記第一の回転部材の回転軸上の中央位置まで結んだ線を第1の線とし、
前記保持部の前記接触部を保持する保持面が前記第一の回転部材の回転軸に対してなす角度をθ1とし、前記第1の線が前記第一の回転部材の回転軸に対してなす角度をθ2とすると、
θ1>θ2である定着装置。
【請求項14】
請求項1から13いずれか1項に記載の定着装置を備えた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定着装置には、第一の回転部材としての加圧ローラが設けられる。加圧ローラは、例えばその内側から第一層としての芯金、第二層としての弾性層、第三層としての表層が積層されている。
【0003】
このような加圧ローラの弾性層は、その弾性や伸張性を確保する観点から、非導電性の材料により形成される。このため、表層と芯金は電気的に導通していないため、それぞれを除電する必要がある。つまり、加圧ローラの表層が帯電することによって静電オフセットによる画像不良の原因となってしまう。また、芯金が帯電することにより、電気的なノイズを発生させるといった不具合がある。
【0004】
例えば特許文献1(特開平06-318006号公報)では、加圧ローラの芯金と表層とを導通させる導電性チューブが設けられる。そして、導電性部材が、加圧ローラの端面に係合する。
【0005】
特許文献1の構成では、芯金と表層とを導通させる部材が必要になり、回転部材を除電する構成として、さらに検討の余地があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第一の回転部材の第一層および第三層を除電すること、または、第一の回転部材の第一層および第二の回転部材の表層を除電することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、第一の回転部材と、前記第一の回転部材との間でトナー像を担持した記録媒体が通過するニップ部を形成する第二の回転部材と、前記第二の回転部材の内側に接触し、前記第二の回転部材を加熱する加熱体と、前記第一の回転部材を除電する除電部材と、を備えた定着装置であって、前記回転部材は、その内側から、導電性の第一層、非導電性の第二層、導電性の第三層をこの順で有し、前記除電部材は、前記第一層および前記第三層に接触することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の定着装置によれば、第一の回転部材の第一層および第三層、あるいは、第一の回転部材の第一層および第二の回転部材の表層を除電できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】画像形成装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図3】本実施形態の定着装置に設けられた除電ブラシを示す平面図である。
図4】除電ブラシの取付構造を示す平面図である。
図5】除電ブラシの他の取付構造を示す正面図である。
図6】加圧ローラの異なる構成を示す平面図である。
図7】側板による加圧ローラの保持構成を示す平面図である。
図8図3と配置の異なる除電ブラシを示す平面図である。
図9】保持部の構成が図3と異なる除電ブラシを示す平面図である。
図10】接触部の構成が図3と異なる除電ブラシを示す平面図である。
図11】定着ベルトに接触する除電ブラシの構成を示す側面図である。
図12図11の除電ブラシの斜視図である。
図13】バンディング画像の発生を説明する図である。
図14】ヒータの平面図である。
図15】ヒータへの電力供給を示す図である。
図16図14と抵抗発熱体の形状が異なるヒータの平面図である。
図17図14図16と抵抗発熱体の形状が異なるヒータの平面図である。
図18】定着ベルトの配列方向の温度分布を示す図で、(a)図がヒータの平面図、(b)図が定着ベルトの温度分布を示す図である。
図19図16のヒータの分割領域を示す図である。
図20図19と異なる形状の分割領域を示す図である。
図21図17のヒータの分割領域を示す図である。
図22】ヒータ、第1高熱伝導部材、ヒータホルダの斜視図である。
図23】第1高熱伝導部材、定着ベルト、ヒータの長手方向の位置関係を示す図である。
図24】除電ブラシが芯金、定着ベルト表層、第1高熱伝導部材に接触する様子を示す斜視図である。
図25】第1高熱伝導部材の配置を示すヒータの平面図である。
図26】第1高熱伝導部材の配置の異なる例を示すヒータの平面図である。
図27】第1高熱伝導部材の配置のさらに異なる例を示すヒータの平面図である。
図28図2とは異なる実施形態の定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図29】ヒータ、第1高熱伝導部材、第2高熱伝導部材、ヒータホルダの斜視図である。
図30】第1高熱伝導部材および第2高熱伝導部材の配置を示すヒータの平面図である。
図31】第1高熱伝導部材および第2高熱伝導部材の異なる配置の例を示すヒータの平面図である。
図32】グラフェンの原子結晶構造を示す図である。
図33】グラファイトの原子結晶構造を示す図である。
図34図30と第2高熱伝導部材の配置が異なるヒータを示す平面図である。
図35図2図28とは異なる実施形態の定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図36】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図37】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図38】上記と異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図39】上記とさらに異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図40図39の定着ベルトの端部の支持構造を示す図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は(b)図A-A線の断面図である。
図41】上記とさらに異なる定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図42図41の定着装置の斜視断面図である。
図43図41の定着装置の正面断面図である。
図44】ベルト支持部材の斜視図である。
図45】ベルト支持部材の変形例を示す斜視図である。
図46図41の定着装置の側面断面図で、反射部材の反射面を示す図である。
図47図1と異なる画像形成装置の概略構成図である。
図48】本発明の一実施形態に係る定着装置の概略構成を示す側面断面図である。
図49図48の定着装置におけるヒータの平面図である。
図50】ヒータおよびヒータホルダの斜視図である。
図51】ヒータに対するコネクタの取付状態を示す斜視図である。
図52】サーミスタとサーモスタットの配置を示す図である。
図53】フランジの溝部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0011】
図1は、本発明の実施の一形態に係る画像形成装置の概略構成図である。本実施形態の画像形成装置は、本発明の加熱装置の一態様として、用紙上のトナー画像を用紙に定着させる定着装置を有する。
【0012】
図1に示す画像形成装置100は、画像形成装置本体に対して着脱可能な4つの作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkを備える。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。これらの色の現像剤は、カラー画像の色分解成分に対応する。各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkは、像担持体としてのドラム状の感光体2と、帯電装置3と、現像装置4と、クリーニング装置5とを備える 。帯電装置3は感光体2の表面を帯電する。現像装置4は、感光体2の表面に現像剤としてのトナーを供給してトナー画像を形成する。クリーニング装置5は感光体2の表面をクリーニングする。
【0013】
また、画像形成装置100は、露光装置6と、給紙装置7と、転写装置8と、加熱装置としての定着装置9と、排紙装置10とを備える。露光装置6は、各感光体2の表面を露光し、その表面に静電潜像を形成する。給紙装置7は、記録媒体としての用紙Pを用紙搬送路14に供給する。転写装置8は各感光体2に形成されたトナー画像を用紙Pに転写する。定着装置9は用紙Pに転写されたトナー画像を用紙P表面に定着させる。排紙装置10は用紙Pを装置外に排出する。各作像ユニット1、感光体2、帯電装置3、露光装置6、転写装置8などは、用紙に画像を形成するための画像形成手段を構成している。
【0014】
転写装置8は、中間転写体としての無端状の中間転写ベルト11と、一次転写部材としての4つの一次転写ローラ12と、二次転写部材としての二次転写ローラ13とを有する。中間転写ベルト11は複数のローラによって張架される。一次転写ローラ12は各感光体2上のトナー画像を中間転写ベルト11へ転写する。二次転写ローラ13は中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像を用紙Pへ転写する。複数の一次転写ローラ12は、それぞれ、中間転写ベルト11を介して感光体2に接触している。これにより、中間転写ベルト11と各感光体2とが互いに接触し、これらの間に一次転写ニップが形成される。一方、二次転写ローラ13は、中間転写ベルト11を介して中間転写ベルト11を張架するローラの1つに接触している。これにより、二次転写ローラ13と中間転写ベルト11との間には二次転写ニップが形成されている。
【0015】
また、用紙搬送路14における給紙装置7から二次転写ニップ(二次転写ローラ13)に至るまでの途中には、一対のタイミングローラ15が設けられている。
【0016】
次に、図1を参照して上記画像形成装置の印刷動作について説明する。
【0017】
印刷動作開始の指示があると、各作像ユニット1Y,1M,1C,1Bkにおいては、感光体2が図1の時計回りに回転駆動され、帯電装置3によって感光体2の表面が均一な高電位に帯電される。次いで、原稿読取装置によって読み取られた原稿の画像情報、あるいは端末からプリント指示されたプリント情報に基づいて、露光装置6が各感光体2の表面を露光する。これにより、露光された部分の電位が低下して静電潜像が形成される。そして、この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給され、各感光体2上にトナー画像が形成される。
【0018】
各感光体2上に形成されたトナー画像は、各感光体2の回転に伴って回転し、一次転写ニップ(一次転写ローラ12の位置)に達する。そしてトナー画像は、図1の反時計回りに回転駆動する中間転写ベルト11に順次重なり合うように転写される。そして、中間転写ベルト11上に転写されたトナー画像は、中間転写ベルト11の回転に伴って二次転写ニップ(二次転写ローラ13の位置)へ搬送される。トナー画像は、二次転写ニップにおいて搬送されてきた用紙Pに転写される。この用紙Pは、給紙装置7から供給されたものである。給紙装置7から供給された用紙Pは、タイミングローラ15によって一旦停止された後、中間転写ベルト11上のトナー画像が二次転写ニップに至るタイミングに合わせて二次転写ニップへ搬送される。かくして、用紙P上にフルカラーのトナー画像が担持される。また、トナー画像が転写された後、各感光体2上に残留するトナーは各クリーニング装置5によって除去される。
【0019】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置9へと搬送され、定着装置9によって用紙Pにトナー画像が定着される。その後、用紙Pは排紙装置10によって装置外に排出されて、一連の印刷動作が完了する。
【0020】
続いて、定着装置の構成について説明する。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、加熱体としてのヒータ22と、保持部材としてのヒータホルダ23と、支持部材としてのステー24と、温度検知部材としてのサーミスタ25と、第1高熱伝導部材28等を備えている。定着ベルト20は無端状のベルトからなる。加圧ローラ21は定着ベルト20の外周面に接触して、定着ベルト20との間に定着ニップNを形成する。ヒータ22は定着ベルト20を加熱する。ヒータホルダ23はヒータ22を保持する。ステー24はヒータホルダ23を支持する。サーミスタ25は第1高熱伝導部材28の温度を検知する。
【0022】
図2の紙面に直交する方向は定着ベルト20、加圧ローラ21、ヒータ22、ヒータホルダ23、ステー24、第1高熱伝導部材28等の長手方向であり、以下、この方向を単に長手方向と呼ぶ。なお、この長手方向は搬送される用紙の幅方向、定着ベルト20のベルト幅方向、そして、加圧ローラ21の軸方向でもある。定着装置に設けられる加圧部材は、本発明の加熱装置に設けられる第一の回転部材の一態様である。本実施形態の定着装置9には、この加圧部材の具体例として加圧ローラ21が設けられる。また定着装置に設けられる定着部材は、本発明の加熱装置に設けられる第二の回転部材の一態様である。本実施形態の定着装置9には、この定着部材の具体例として定着ベルト20が設けられる。
【0023】
定着ベルト20は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。定着ベルト20の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。また、定着ベルト20の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト20の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0024】
加圧ローラ21は、例えば外径が25mmである。加圧ローラ21は、その内側から、第一層としての芯金21aと、第二層としての弾性層21bと、第三層としての表層21cとを有する。中実の芯金21aは導電性材料により形成され、本実施形態では鉄製である。弾性層21bは非導電性材料により形成され、本実施形態では厚みが3.5mmのシリコーンゴムで形成される。弾性層21bを非導電層とすることで、弾性層21bに導電性を付与するためのフィラーなどの材料を添加する必要がなく、その弾性や伸縮性を確保できる。
【0025】
加圧ローラ21が付勢手段によって定着ベルト20側へ付勢されることで、加圧ローラ21は定着ベルト20を介してヒータ22に圧接される。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNが形成される。また、加圧ローラ21は駆動手段によって回転駆動されるように構成されており、加圧ローラ21が図2の矢印方向に回転すると、これに伴って定着ベルト20が従動回転する。
【0026】
ヒータ22は、定着ベルト20の幅方向に渡って長手状に設けられた面状の加熱部材である。ヒータ22は、板状の基材30と、基材30上に設けられた抵抗発熱体31と、抵抗発熱体31を被覆する絶縁層32等で構成されている。また、ヒータ22は、絶縁層32側で定着ベルト20の内周面に対して接触しており、抵抗発熱体31から発された熱は、絶縁層32を介して定着ベルト20へと伝達される。ただしこの接触とは、摺動シートなどの導電性部材を介した接触であってもよい。ヒータ22に対して電源200(図15参照)からAC電圧を印加することにより、主に抵抗発熱体31が発熱する。本実施形態では、抵抗発熱体31や絶縁層32が基材30の定着ベルト20側(定着ニップN側)に設けられているが、反対に、抵抗発熱体31や絶縁層32を基材30のヒータホルダ23側に設けてもよい。その場合、抵抗発熱体31の熱が基材30を介して定着ベルト20に伝達されることになるため、基材30は窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料で構成されることが望ましい。また、基材30を熱伝導率の高い材料で構成することで、抵抗発熱体31を基材30の定着ベルト20側とは反対側に配置しても、定着ベルト20を十分に加熱することが可能である。
【0027】
ヒータホルダ23およびステー24は、定着ベルト20の内周側に配置されている。ステー24は、金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置9の両側板に支持されている。ステー24によってヒータホルダ23およびヒータ22が支持されることで、加圧ローラ21が定着ベルト20に加圧された状態で、ヒータ22が加圧ローラ21の押圧力を確実に受けとめることができる。これにより、定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNを安定的に形成される。本実施形態では、ヒータホルダ23の熱伝導率は基材30よりも小さく設けられる。
【0028】
なお、ステー24がヒータホルダ23を支持するとは、加圧ローラ21の加圧方向(図の左右方向)に延在した部分、あるいは、厚みを持った部分を有するステー24が、ヒータホルダ23に対して、加圧ローラ21と反対側(図の左側)から当接することをいう。これにより、加圧ローラ21からの加圧力によるヒータホルダ23の撓み(本実施形態では、特に長手方向の撓み)を抑制できる。ただし、上記の当接には、ステー24がヒータホルダ23に直接当接している場合に限らず、他の部材を介して当接する場合も含む。「他の部材を介した当接」とは、図の左右方向において、ステー24とヒータホルダ23との間に他の部材が挟まれ、かつ、少なくともその一部が対応する位置で、ステー24が他の部材に当接し、他の部材がヒータホルダ23に当接する状態を指す。また、上記の加圧方向に延在する、とは、加圧ローラ21の加圧方向と同一の方向に限らず、加圧ローラ21の加圧方向から、ある程度の角度をもった方向へ延在する場合も含む。これらの場合でも、ステー24が、加圧ローラ21からの加圧力に抗してヒータホルダ23の撓みを抑制できることはもちろんである。
【0029】
ヒータホルダ23は、ヒータ22の熱によって高温になりやすいため、耐熱性の材料で形成されることが望ましい。例えば、ヒータホルダ23をLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成した場合は、ヒータ22からヒータホルダ23への伝熱が抑制される。これにより、ヒータ22が効率的に定着ベルト20を加熱することができる。
【0030】
また、ヒータホルダ23には、定着ベルト20をガイドするガイド部26が設けられている。ガイド部26は、ヒータ22のベルト回転方向の上流側(図2におけるヒータ22の下側)と下流側(図2におけるヒータ22の上側)とにそれぞれ設けられている。また、上流側と下流側のガイド部26は、ヒータ22の長手方向に渡って間隔をあけて複数配置されている。各ガイド部26は、略扇型に形成されており、定着ベルト20の内周面に対向するようにベルト周方向に延在する円弧状又は凸曲面状のベルト対向面260を有する。
【0031】
ヒータホルダ23は長手方向に複数の開口部23aを有する。開口部23aはヒータホルダ23の厚み方向に貫通した開口部である。この開口部23aに、サーミスタ25や後述するサーモスタットが設けられる。これらのサーミスタ25やサーモスタットは、バネ29により加圧されて第1高熱伝導部材28の裏面に押し当てられている。ただし、第1高熱伝導部材28(および後述する第2高熱伝導部材)にも同様に開口部を設け、サーミスタ25やサーモスタットが基材30の裏面に押し当てられる構成としてもよい。
【0032】
第1高熱伝導部材28は基材よりも熱伝導率の高い部材により構成される。本実施形態では、第1高熱伝導部材28は板状のアルミニウムにより構成される。その他、例えば銅や銀、グラフェン、グラファイトにより第1高熱伝導部材28を構成してもよい。第1高熱伝導部材28を板状とすることにより、ヒータホルダ23や第1高熱伝導部材28に対するヒータ22の位置精度を向上させることができる。
【0033】
次に、上記の熱伝導率の算出方法について説明する。熱伝導率を算出する際には、まず、対象の物体の熱拡散率を測定し、この熱拡散率を用いて熱伝導率を算出する。
【0034】
熱拡散率の計測は、熱拡散率・熱伝導率測定装置(商品名:ai-Phase Mobile 1u、株式会社アイフェイズ性)を用いた。
【0035】
上記熱拡散率を熱伝導率に換算するためには、密度と比熱容量の値が必要である。 密度の計測には、乾式自動密度計(商品名:Accupyc 1330、株式会社島津製作所製)を用いた。 また、比熱容量の計は、示差走査型熱量測定装置(商品名:商品名:DSC-60 株式会社島津製作所製)を用い、比熱容量が既知の基準物質としてサファイアを用いて測定した。本実施例では比熱容量測定を5回行い、50℃における平均値を用いた。密度および比熱容量をそれぞれρ、Cとすると、上記熱拡散率測定で得られた熱拡散率αとから、熱伝導率λは、以下の式(1)により得ることができる。
【0036】
【数1】
【0037】
本実施形態に係る定着装置9において、印刷動作が開始されると、加圧ローラ21が回転駆動され、定着ベルト20が従動回転を開始する。このとき、定着ベルト20の内周面がガイド部26のベルト対向面260に接触してガイドされることで、定着ベルト20は安定してかつ円滑に回転する。また、ヒータ22の抵抗発熱体31に電力が供給されることで、定着ベルト20が加熱される。そして、定着ベルト20の温度が所定の目標温度(定着温度)に到達した状態で、図2に示すように、未定着トナー画 像が担持された用紙Pが、定着ベルト20と加圧ローラ21との間(定着ニップN)に搬送されることで、未定着トナー画像が加熱および加圧されて用紙Pに定着される。定着ベルト20はヒータ22に加熱される被加熱部材である。
【0038】
ところで、加圧ローラ21表面の電荷が定着ベルト20に移動することがある。そして、加圧ローラ21が用紙上のトナーと逆極性に帯電することで、用紙上のトナーの一部が定着ベルト20表面に付着する。この付着したトナーが以降に定着ニップNに通紙された用紙Pに付着し、静電オフセットによる画像不良を生じるという問題がある。
【0039】
さらに本実施形態の加圧ローラ21には、導電層である芯金21aと表層21cとの間に、非導電層である弾性層21bが設けられており、芯金21aと表層21cとが導通していない。そして、芯金21aはその他の導電性部材とも接触しておらず、電気的に接続されていない。このため、芯金21aに溜まった電荷により電気的なノイズが発生するという問題がある。
【0040】
以上のような事情から、芯金21aと表層21cとをそれぞれ除電する必要がある。これに対して、芯金21aと表層21cとにそれぞれ異なる除電部材を配置することができる。しかし、定着装置の部品点数が増加してコストアップしてしまったり、定着装置が大型化するという問題があった。また、中間の弾性層21bに導電性フィラーなどを混ぜて導電層とし、芯金21aと表層21cとを電気的に接続することもできる。そして、芯金21aと表層21cとのいずれか一方に除電部材を接触させることで、これらの層を除電できる。しかしこの場合、弾性層21bに導電性フィラーを混ぜることで弾性層21bの弾性や伸縮性が悪化する。これにより、所定幅の定着ニップNを形成するためにより力で加圧ローラ21が定着ベルト20を加圧することが必要になり、定着装置の大型化や定着ベルト20の破損という別の問題が生じてしまう。
【0041】
次に、芯金21aと表層21cとを除電する本実施形態の定着装置の構成について、図3を用いて説明する。
【0042】
図3に示すように、加圧ローラ21の芯金21aは、表層21cおよび弾性層よりも軸方向へ突出し、その外周面が外側へ露出した露出部21a1を有する。以下、加圧ローラ21の露出部21a1以外の部分、つまり、加圧ローラ21の弾性層と表層21cと芯金21aの露出部21a1以外の部分とをまとめて、加圧ローラ21の本体部あるいは加圧ローラ21の本体側とも呼ぶ。
【0043】
また本実施形態の定着装置は、除電部材としての除電ブラシ37を有する。除電ブラシ37は、接触部37aと保持部37bとを有する。接触部37aは複数の毛状部からなり、この毛状部が芯金21aあるいは表層21cに接触する。保持部37bは、接触部37aの毛状部の一端側である根元部を保持する。この根元部は、毛状部の芯金21aあるいは表層21cに接触する側とは反対側の端部である。除電ブラシ37は、抵抗を介して接地されている。除電部材を本実施形態のようなブラシ状の部材とすることで、除電ブラシ37が芯金21aあるいは表層21cを傷つけることなく接触して除電できる。
【0044】
図4に示すように、除電ブラシ37は、接触部37a側と反対側に被保持部37dを有する。被保持部37dは定着装置の板金製の筐体40に取り付けられる。また、図5に示すように、側板41に取り付けられてもよい。被保持部37dの取付方法としては、例えばネジ止めによる取り付けができる。側板41には、加圧ローラ21の軸部やその軸受を取り付けるための孔部が既に形成されている。従って、側板41の強度確保の観点から、側板41にさらに被保持部37dを取り付けるための孔を設けるよりも、図4のように筐体40に被保持部37dを取り付ける方が好ましい。なお、図4は定着装置9の平面図で、図5は定着装置9の正面図である。
【0045】
除電ブラシ37は、図3の左右方向である加圧ローラ21の軸方向において、加圧ローラ21の表層21cおよび露出部21a1の両方に対向する位置に配置される。そして除電ブラシ37の接触部37aは、表層21cおよび露出部21a1の両方に接触する。これにより、芯金21aおよび表層21cのそれぞれを除電できる。
【0046】
以上のように本実施形態の構成によれば、共通の除電ブラシ37により芯金21aおよび表層21cの両方を除電できる。従って、定着装置の部品点数を減らし、定着装置のコストダウンや小型化ができる。
【0047】
次に、定着装置の除電構成の変形例について順に説明する。
【0048】
図6に示すように、芯金21aの露出部21a1は、加圧ローラ21の本体側に、露出部21a1よりもその径が大きい拡径部21a2を有する。
【0049】
除電ブラシ37が接触する部分である表層21cおよび露出部21a1を比較すると、加圧ローラ21の径方向で見た時に、表層21cおよび弾性層の厚み分だけ露出部21a1が除電ブラシ37から遠い位置にある。このため、図3のように除電ブラシ37を表層21cおよび露出部21a1に接触させると、接触部37aの毛状部の根元位置から見た時に露出部21a1は表層21cよりも加圧ローラ21の径方向の遠い位置に配置されることになる。これにより、接触部37aの露出部21a1に対する接触圧が表層21cに対する接触圧よりも弱くなる。
【0050】
これに対して本実施形態では、接触部37aを拡径部21a2に接触させることで、接触部37aの毛状部の根元部から芯金21aに対する接触位置までの距離を小さくできる。これにより、接触部37aの芯金21aに対する接触圧を高めることができる。従って、除電ブラシ37が芯金21aを適切に除電できる。
【0051】
またこのように、加圧ローラ21の本体側から露出した露出部21a1に拡径部21a2を設けることにより、加圧ローラ21の軸方向移動を規制できる。つまり、図7に示すように、加圧ローラ21の軸部は軸受38を介して側板41に保持されている。そして、加圧ローラ21が軸方向に位置ズレした際に、この軸部よりも径の大きい拡径部21a2が軸受38に接触することで、加圧ローラ21の軸方向の移動を規制できる。つまり、側板41が加圧ローラ21を軸方向の所定の位置に保持できる。従来は、加圧ローラ21の軸方向移動を規制するために、軸受38を側板41の軸方向外側に設け、そのさらに外側にCリングなどの規制部材を設けていた。本実施形態の構成により、このような規制部材を省略することができ、加圧ローラ21の側板41による保持構成を簡素化できる。
【0052】
また図8に示すように、除電ブラシ37を加圧ローラ21の回転軸方向Dに対して傾けて配置することもできる。つまり、接触部37aの各毛状部の根元部分の延在方向を、回転軸方向Dに対して90度と異なる方向に配置することができる。除電ブラシ37を傾ける方向は、除電ブラシ37の図8の右側の部分、つまり、加圧ローラ21の回転軸方向Dにおいて露出部21a1に対向する部分を、露出部21a1に近づける方向である。この除電ブラシ37の配置により、接触部37aの露出部21a1に接触する部分を露出部21a1に接近させることができる。従って、除電ブラシ37が芯金21aを適切に除電できる。
【0053】
芯金21aは、露出部21a1の側が軸受38により支持されている。軸受38は非導電性の材料により構成される。
【0054】
図8の除電ブラシ37の傾きである角度θ1は角度θ2よりも大きく設けられる。角度θ1は、除電ブラシ37の接触部37aの根元部分を保持する保持部37bの保持面37b1を延長した延長面H1が、加圧ローラ21の回転軸方向Dに対してなす角度である。特に、接触部37aの露出部21a1に接触する部分の根元部分を保持する保持面37b1を延長した延長面H1がなす角度である。また、加圧ローラ21の表層21cの露出部21a1側の軸方向端部であってその外周端から、露出部21a1の軸方向の軸受38に支持される部分の回転軸方向D上のへ結んだ線を第1の線H2とすると、角度θ2は第1の線H2が回転軸方向Dに対してなす角度である。
【0055】
角度θ1を角度θ2よりも大きく設けることにより、回転軸方向Dに対して除電ブラシ37を十分に傾けることができ、接触部37aを露出部21a1に十分に接近させることができる。従って、前述のように接触部37aの露出部21a1に対する接触圧を確保し、除電ブラシ37が芯金21aを適切に除電できる。
【0056】
前述のように、加圧ローラ21は芯金21aと表層21cとの両方を除電することが必要であるが、特に異常画像を防止する観点から表層21cの除電が重要である。これに対して本実施形態では、接触部37aが芯金21aの露出部21a1よりも表層21cにより近くに設けられる。具体的には、接触部37aを構成する毛状部の根元の位置、別の言い方をすると、毛状部の保持面37b1に保持される被保持位置、から表層21cまでの距離のうち、その最短距離を距離L1、接触部37aを構成する毛状部の根元の位置から露出部21a1までの距離のうち、その最短距離を距離L2とすると、L1<L2に設定される。これにより、接触部37aの表層21cに対する接触圧を確保し、除電ブラシ37が表層21cを適切に除電できる。なお、図8の実施形態を例に説明したが、その他の実施形態でも同様にL1<L2に設定することで、除電ブラシ37が表層21cを適切に除電できる。
【0057】
しかし、このように除電ブラシ37の配置を変える方法では、接触部37aの芯金21aに対する接触圧を大きくする効果に限界がある。
【0058】
そこで、図9に示すように、除電ブラシ37の保持部37bのうち、接触部37aの露出部21a1に接触する毛状部を保持する部分に、保持部37bのその他の部分よりも加圧ローラ21側へ突出した突出部37cを設けることもできる。別の言い方をすると、保持部37bの露出部21a1に対向する部分に突出部37cを設けることもできる。これにより、突出部37cの厚みによって突出部37cの保持面37c1と露出部21a1との距離を自由に変更できるため、加圧ローラ21のより内側に配置された芯金21aに対して、接触部37aをより近づけることができる。つまり、保持部37bの露出部21a側の接触部37aの根元部分を保持する保持面37c1が、表層21c側の接触部37aの根元部分を保持する保持面37b1よりも図9の上側である加圧ローラ21側に設けられる。従って、図5の除電ブラシ37の配置を変更する場合と比較して、接触部37aの芯金21aに対する接触圧をより高めることが可能である。従って、除電ブラシ37が芯金21aを適切に除電できる。
【0059】
以上の実施形態では、接触部37aと芯金21aあるいは表層21cとの距離を小さくすることで、その接触圧を確保する場合を例示したが、本発明はこれに限らない。例えば図10に示す実施形態では、除電ブラシ37の接触部37aのうち、露出部21a1側の接触部37a1を構成する毛状部の径が、表層21c側の接触部37a2を構成する毛状部の径よりも大きく設けられる。これにより、接触部37aの露出部21a1に対する接触圧を確保し、除電ブラシ37が芯金21aを適切に除電できる。なお、これとは逆に、接触部37aの表層21cに対する接触圧を大きくしたい場合には、接触部37a2を構成する毛状部の径を、接触部37a1を構成する毛状部の径よりも大きくしてもよい。なお、毛状部の径を大きくする方法としては毛一本一本の径を大きくしてもよいし、複数の毛を束ねた束の径を大きくしてもよい。
【0060】
本実施形態では、加圧ローラ21が、第一層としての芯金21a、第二層としての弾性層21b、第三層としての表層21cをこの順で有する。ただし、ここで言う「この順で有する」とは、加圧ローラ21がこれら三層のみによって構成されることを限定するものではなく、各層の間に他の層が設けられていてもよい。また、第一層よりも内側あるいは第三層よりも外側に他の層があってもよい。また第一層としての芯金21aは本実施形態のような中実の層であってもよいし、中空の層であってもよい。
【0061】
また以上の実施形態では、第一の回転部材である加圧ローラの第一層および第三層を除電する除電ブラシを説明したが、第一の回転部材の第三層に代えて、第二の回転部材の表層を除電する構成であってもよい。つまり、加圧ローラ21の表層21cと定着ベルト20の表層は定着ニップNにおいて接触しているので、そのいずれか一方を除電することにより、加圧ローラ21の表層21cあるいは定着ベルト20の表層に溜まった電荷を取り除くことができる。
【0062】
例えば図11に示すように、除電ブラシ37の接触部37aは、加圧ローラ21の芯金21a、および、第二回転部材としての定着ベルト20の表層20cに接触する。
【0063】
本実施形態の除電ブラシ37の保持部37bは、段差形状をなす。具体的には、保持部37bは、芯金21aに接触する接触部37aを保持する部分が、定着ベルト20に接触する接触部37aを保持する部分よりも加圧ローラ21の径方向中央側へ突出した形状をしている。図12に示すように、保持部37bは、板金材を曲げてプレス加工して形成され、保持部37bの曲げた部分同士の間に接触部37aを保持させる。
【0064】
本実施形態においては、加圧ローラ21の芯金21aおよび定着ベルト20の表層20cの両方を共通の除電ブラシ37により除電できる。従って、定着装置の部品点数を減らし、定着装置のコストダウンや小型化ができる。
【0065】
また本実施形態の除電ブラシ37によって定着ベルト20の表面を除電することにより、バンディング画像の発生を防止できる。つまり、ヒータ22にAC電圧を印加する定着装置9では、ヒータ22に設けられた絶縁層や定着ベルト20の表層がコンデンサと等価になる。この際、ヒータ22と定着ベルト20とが接触することで、定着ベルト20を介して定着ニップNに交流電圧が印加される。そして、図13に示すように、用紙Pが二次転写ニップNAと定着ニップNとの両方に接触している状態では、この交流電圧が図13の矢印で示すように用紙Pを介して二次転写ニップNAに伝播する。この交流電圧が転写電界に影響を与えることで、転写画像に周期的な濃度ムラが生じる、いわゆるバンディング画像の原因となってしまう。特に、高湿環境下や用紙Pに薄紙を用いた場合等、用紙Pが低抵抗の場合には、上記の問題が顕著になる。二次転写ニップNAは、二次転写ローラ13と二次転写対向ローラ16との間に形成されるニップ部である。
【0066】
本実施形態では、交流電圧を、定着ニップNから定着ベルト20、そして除電ブラシ37を介して接地側へ流すことができる。従って、上記のバンディング画像の形成を抑制できる。
【0067】
図14は、本実施形態に係るヒータの平面図である。
【0068】
図14に示すように、板状の基材30の表面には、複数(4つ)の抵抗発熱体31と、導電体としての給電線33A、33Bと、第1電極部34Aおよび第2電極部34Bとが設けられる。ただし、抵抗発熱体31の数は本実施形態に限らない。
【0069】
なお、ヒータ22等の長手方向(図2の紙面に直交する方向)は、本実施形態では、図14に示すように、複数の抵抗発熱体31の配列方向Xでもある。以下、この方向を単に配列方向とも呼ぶ。また、配列方向に交差する方向(本実施形態では垂直な方向)で、基材30の厚み方向と異なる方向である図14の上下方向Yを複数の抵抗発熱体31の配列方向に交差する方向、あるいは、単に配列交差方向とも呼ぶ。配列交差方向Yは、基材30の抵抗発熱体31を設けた面に沿う方向であり、ヒータ22の短手方向、あるいは、定着装置9に通紙される用紙の搬送方向でもある。
【0070】
複数の抵抗発熱体31によって、配列方向に複数に分割された発熱部35が構成されている。各抵抗発熱体31は、基材30の配列方向一方側端部(図14の左端)に設けられた一対の電極部34A、34Bに対して、給電線33A,33Bを介して電気的に並列に接続されている。給電線33A,33Bは、抵抗発熱体31よりも抵抗値の小さい導体で構成されている。互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、抵抗発熱体31間の絶縁性を確保する観点から、0.2mm以上が好ましく、0.4mm以上がさらに好ましい。また、互いに隣り合う抵抗発熱体31同士の隙間は、大きすぎると、その隙間の部分で温度低下が生じやすくなる。このため、配列方向に渡る温度ムラを抑制する観点から、上記隙間は5mm以下が好ましく、1mm以下がさらに好ましい。
【0071】
抵抗発熱体31は、PTC(正の温度抵抗係数)特性を有する材料で構成されており、温度が上昇すると抵抗値が上昇(ヒータ出力が低下)する特徴がある。
【0072】
抵抗発熱体31がPTC特性を有すること、および、配列方向に分割された発熱部35の構成により、小サイズ用紙を通紙時の定着ベルト20の過昇温を防止できる。つまり、発熱部35の全体幅よりも幅の小さい用紙を通紙した場合、紙幅より外側の領域では用紙によって定着ベルト20の熱が奪われないため、その部分に相当する抵抗発熱体31の温度が上昇する。抵抗発熱体31にかかる電圧は一定なので、紙幅より外側の抵抗発熱体31の温度が上昇し、その抵抗値が上昇すると、反対に出力(発熱量)が相対的に低下し、端部温度上昇が抑制される。また、複数の抵抗発熱体31が電気的に並列接続されていることで、印刷スピードを維持したまま非通紙部温度上昇を抑制することができる。なお、発熱部35を構成する発熱体は、PTC特性を有する抵抗発熱体以外のものであってもよい。また、抵抗発熱体は、ヒータ22の配列交差方向に複数列に配置されていてもよい。
【0073】
抵抗発熱体31は、例えば、銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により基材30に塗工し、その後、当該基材30を焼成することによって形成することができる。本実施形態では、抵抗発熱体31の抵抗値を常温で80Ωとしている。抵抗発熱体31の材料は、前述したもの以外に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO)の抵抗材料を用いてもよい。給電線33や電極部34の材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)をスクリーン印刷等で形成することができる。給電線33は、抵抗発熱体31よりも小さい抵抗値の導体で構成されている。
【0074】
基材30の材料としては、耐熱性および絶縁性に優れるアルミナや窒化アルミニウムなどのセラミックや、ガラス、マイカなどの非金属材料が好ましい。本実施形態では、配列交差方向の幅8mm、配列方向の幅270mm、厚さ1.0mmのアルミナ基材を使用している。他に、金属などの導電材料に絶縁性材料を積層したもので、基材30を構成してもよい。基材30の金属材料としては、アルミニウムやステンレスなどが低コストで好ましい。基材30をステンレス板により構成することで、熱応力による割れを抑制できる。また、ヒータ22の均熱性を向上し画像品位を高めるために、基材30を銅、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導率の材料で構成してもよい。
【0075】
絶縁層32は、例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスで構成される。絶縁層32によって抵抗発熱体31と給電線33とを被覆し、これらを絶縁・保護すると共に、定着ベルト20との摺動性を維持する。
【0076】
図15は、本実施形態に係るヒータへの電力供給回路を示す図である。
【0077】
図15に示すように、本実施形態では、各抵抗発熱体31に電力を供給するための電力供給回路が、交流電源200とヒータ22の電極部34A,34Bとを電気的に接続することで構成されている。また、電力供給回路には、供給電力量を制御するトライアック210が設けられている。各抵抗発熱体31への供給電力量は、サーミスタ25の検知温度に基づいて制御部220がトライアック210を介して制御する。制御部220は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータで構成される。
【0078】
本実施形態では、サーミスタ25が、最小通紙幅内であるヒータ22の配列方向中央領域と、ヒータ22の配列方向一端部側とに、それぞれ配置されている。さらに、ヒータ22の配列方向一端部側には、抵抗発熱体31の温度が所定温度以上となった場合に、抵抗発熱体31への電力供給を遮断する電力遮断手段としてのサーモスタット27が配置されている。サーミスタ25およびサーモスタット27は、第1高熱伝導部材28に接触してその温度を検知する。
【0079】
本実施形態では、第1電極部34Aおよび第2電極部34Bが配列方向の同じ側に設けられるが、それぞれ異なる側に設けられていてもよい。また抵抗発熱体31は、本実施形態の形状に限らない。例えば図16に示すように、抵抗発熱体31は長方形状であってもよいし、図17に示すように、抵抗発熱体31が線状部からなり、この線状部を折り返して略平行四辺形状をなす構成であってもよい。また図16に示すように、ブロック状の抵抗発熱体31の部分から給電線33の側に伸びる部分(配列交差方向に伸びる部分)は、抵抗発熱体31の一部であってもよいし、給電線33と同じ材料により構成されていてもよい。
【0080】
図18は定着ベルト20の配列方向の温度分布を示す図である。(a)図がヒータ22の配置を示す図である。(b)図は縦軸が定着ベルト20の温度Tを示し、横軸が定着ベルト20の配列方向の各位置を表している。
【0081】
図18(a)および図18(b)に示すように、ヒータ22に設けられる複数の抵抗発熱体31は配列方向に分割されており、抵抗発熱体31同士の分割領域Bが形成される。別の言い方をすると、ヒータ22に設けられる複数の抵抗発熱体31は間隔Bを置いて配置される。以下、分割領域としての範囲Bを間隔Bと呼ぶ。間隔Bでは、抵抗発熱体31が占める面積がその他の部分よりも小さくなり、発熱量が小さくなる。これにより、間隔Bにおける定着ベルト20の温度がその他の部分よりも小さくなり、定着ベルト20の配列方向の温度ムラの原因となる。また、分割領域である間隔Bの周辺の領域を含む拡大分割領域C(以下、単に領域Cと呼ぶ)においても、ヒータ22や定着ベルト20の温度が小さくなる。なお、ヒータ22の温度も、同様に間隔Bでの温度が小さくなる。ここで、図18(a)の拡大図に示すように、間隔Bは、ヒータ22の主たる発熱部分である抵抗発熱体31が配列方向に分割された部分全体を含む配列方向領域を意味する。また、間隔Bに加えて、抵抗発熱体31の接続部311に対応する範囲を含む領域を領域Cとする。この接続部311は、抵抗発熱体31のうち、配列交差方向に延在し、各給電線33A、33Bに接続される部分を指す。
【0082】
図19に示すように、図16に示した長方形状の抵抗発熱体31を有するヒータ22においても、間隔Bの温度がその他の部分よりも小さくなる。また図20に示す形状の抵抗発熱体31を有するヒータ22においても、間隔Bの温度がその他の部分よりも小さくなる。さらに、図21に示すように、図17に示す形状の抵抗発熱体31を有するヒータ22においても、間隔Bの温度がその他の部分よりも小さくなる。ただし、図18図20図21のように、隣り合う抵抗発熱体31同士を配列方向にオーバーラップさせることで、間隔Bのその他の部分に対する温度落ち込みを抑制できる。
【0083】
本実施形態では、上記の間隔における温度落ち込みを抑制して、定着ベルト20の配列方向の温度ムラを抑制するために、前述した第1高熱伝導部材28を設けている。以下、第1高熱伝導部材28についてより詳細に説明する。
【0084】
図2に示すように、第1高熱伝導部材28は、図2の左右方向において、ヒータ22とステー24との間に配置され、特にヒータ22とヒータホルダ23との間に挟まれる。つまり第1高熱伝導部材28は、一方の面を基材30の裏面に当接させ、他方の面をヒータホルダ23に当接させる。
【0085】
ステー24は、ヒータ22などの厚み方向に延在する二つの垂直部24aの当接面24a1をヒータホルダ23に当接させ、ヒータホルダ23、第1高熱伝導部材28、ヒータ22を支持する。配列交差方向(図2の上下方向)において、当接面24a1は抵抗発熱体31が設けられる範囲よりも外側に設けられる。これにより、ヒータ22からステー24への伝熱を抑制でき、ヒータ22が定着ベルト20を効率よく加熱できる。
【0086】
図22に示すように、第1高熱伝導部材28は、その厚みが0.3mm、配列方向の長さが222mm、配列交差方向の幅が10mmの板材により構成される。本実施形態では第1高熱伝導部材28は単一の板材により構成されるが、複数の部材からなってもよい。なお、図22では図2のガイド部26の記載を省略している。
【0087】
第1高熱伝導部材28は、ヒータホルダ23の凹部23bに嵌め込まれ、その上からヒータ22が取り付けられることで、ヒータホルダ23とヒータ22とに挟み込まれて保持される。本実施形態では、第1高熱伝導部材28の配列方向の幅がヒータ22の配列方向の幅と略同じに設けられる。第1高熱伝導部材28およびヒータ22は、凹部23bを形成する配列方向の両側壁(配列方向規制部)23b1により、配列方向の移動を規制される。このように、第1高熱伝導部材28の定着装置9内での配列方向の位置ズレを規制することで、配列方向の狙いの範囲に対して熱伝導効率を向上させることができる。また、第1高熱伝導部材28およびヒータ22は、凹部23bを形成する配列交差方向の両側壁(配列交差方向規制部)23b2により、配列交差方向の移動を規制される。
【0088】
また前述の除電ブラシ37を第1高熱伝導部材28に接触させる構成とすることもできる。例えば図23に示すように、第1高熱伝導部材28は、その配列方向一方側の端部に被接触部28aを有する。被接触部28aは定着ベルト20の幅方向一端よりも外側に設けられ、配列交差方向に曲げられた屈曲部である。ただし、被接触部28aの形状はこれに限らない。
【0089】
図24に示すように、除電ブラシ37の接触部37aが、芯金21aの露出部21a1、定着ベルト20の表層、そして、第1高熱伝導部材28の被接触部28aにそれぞれ接触してこれらを除電する。
【0090】
第1高熱伝導部材28を設ける配列方向の範囲は上記に限らない。例えば図25に示すように、配列方向の発熱部35に対応する範囲のみに第1高熱伝導部材28を設けてもよい(図25のハッチング部参照)。また、図26に示すように、配列方向の間隔Bに対応する位置で、その全域のみに第1高熱伝導部材28を設けることもできる。なお、図26では便宜上、抵抗発熱体31と第1高熱伝導部材28を図26の上下方向にずらして示しているが、両者は配列交差方向のほぼ同じ位置に配置される。ただし、これに限るものではなく、第1高熱伝導部材28が抵抗発熱体31の配列交差方向の一部に設けられていたり、後述の図27のように配列交差方向の全体を覆うようにして設けられていてもよい。さらに、図27に示すように、第1高熱伝導部材28を、配列方向の間隔Bに対応する位置に加えて、その間隔Bを間にはさむ両側の抵抗発熱体31にまたがって設けることもできる。この、両側の抵抗発熱体31にまたがって設ける、とは、第1高熱伝導部材28が両側の抵抗発熱体31と配列方向の位置が少なくとも一部重なることを言う。なお、ヒータ22の全ての間隔Bに対応して第1高熱伝導部材28を設けてもよいし、例えば図27のように間隔Bの1箇所に対応する位置にだけ第1高熱伝導部材28を設けるように、一部の間隔Bに対応する位置にだけ第1高熱伝導部材28を設けてもよい。ここで、配列方向の間隔Bに対応する位置に設ける、とは、間隔Bと配列方向に少なくともその一部が重なることを言う。
【0091】
加圧ローラ21の加圧力により、第1高熱伝導部材28はヒータ22とヒータホルダ23との間に挟み込まれてこれらの部材に密着する。第1高熱伝導部材28がヒータ22に接触することにより、ヒータ22の配列方向の熱伝導効率が向上する。そして、第1高熱伝導部材28が、配列方向において、ヒータ22の間隔Bに対応する位置に設けられることで、間隔Bにおける熱伝導効率を向上させることができ、配列方向の間隔Bの位置へ伝達される熱量を増やし、配列方向の間隔Bにおける温度を上昇させることができる。従って、ヒータ22の配列方向の温度ムラを抑制できる。これにより、定着ベルト20の配列方向の温度ムラを抑制できる。従って、用紙に定着される画像の定着ムラや光沢ムラを抑制できる。あるいは、間隔Bにおいて十分な定着性能を確保するために、ヒータ22による余分な加熱をする必要が無くなり、定着装置9の省エネ化を実現できる。また、配列方向の発熱部35全域にわたって第1高熱伝導部材28を設けることにより、ヒータ22による主な加熱領域(つまり、通紙される用紙の画像形成領域)全域において、ヒータ22の伝熱効率を向上させ、ヒータ22ひいては定着ベルト20の配列方向の温度ムラを抑制できる。
【0092】
特に本実施形態では、上記の第1高熱伝導部材28の構成と前述したPTC特性を有する抵抗発熱体31との組み合わせにより、小サイズ用紙通紙時の非通紙領域による過昇温を効果的に抑制できる。つまり、PTC特性により非通紙領域における抵抗発熱体31の発熱量を抑制すると共に、温度が上昇した非通紙部の熱量を通紙部の側へ効率的に伝達することができ、非通紙領域による過昇温を効果的に抑制できる。
【0093】
また間隔Bの周辺においても、間隔Bの発熱量が小さいことによりその温度が小さくなるため、第1高熱伝導部材28を配置することが好ましい。例えば本実施形態では、領域C(図19参照)に対応する位置に第1高熱伝導部材28を設けることにより、間隔Bおよびその周辺における配列方向の熱伝達効率を特に向上させ、ヒータ22の配列方向の温度ムラをより抑制できる。特に本実施形態では、配列方向において、発熱部35の全域にわたって第1高熱伝導部材28が設けられる。これにより、ヒータ22(定着ベルト20)の配列方向の温度ムラをより抑制できる。
【0094】
次に、定着装置の異なる実施形態について説明する。
【0095】
図28に示すように、本実施形態の定着装置9は、ヒータホルダ23と第1高熱伝導部材28との間に第2高熱伝導部材36を有する。第2高熱伝導部材36は、ヒータホルダ23やステー24、第1高熱伝導部材28等の部材の積層方向(図28の左右方向)において、第1高熱伝導部材28と異なる位置に設けられる。より詳しくは、第2高熱伝導部材36は第1高熱伝導部材28に重ね合わせされて設けられる。なお、図28図2とは異なり、配列方向の第2高熱伝導部材36が配置され、サーミスタ25が配置されていない断面を示している。
【0096】
第2高熱伝導部材36は基材30よりも熱伝導率の高い部材、例えばグラフェンやグラファイトにより構成される。本実施形態では、第2高熱伝導部材36は厚み1mmのグラファイトシートにより形成される。ただし、第2高熱伝導部材36をアルミニウムや銅、銀などの板材により形成してもよい。
【0097】
図29に示すように、配列方向に部分的に設けられた各第2高熱伝導部材36が、配列方向に複数配置される。ヒータホルダ23の凹部23bの第2高熱伝導部材36が設けられる部分は、その他の部分よりもその深さが一段深く設けられている。第2高熱伝導部材36は、配列方向の両側で、ヒータホルダ23との間に隙間が設けられる。これにより、第2高熱伝導部材36からヒータホルダ23への伝熱を抑制し、ヒータ22が定着ベルト20を効率的に加熱できる。なお、図29では図2のガイド部26の記載を省略している。
【0098】
図30に示すように、第2高熱伝導部材36(ハッチング部参照)は、配列方向において、間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に設けられ、特に本実施形態では、間隔B全域にわたって設けられる。ただし図30(および後述の図34)では、第1高熱伝導部材28が、配列方向の発熱部35に対応する領域のみに設けられる場合を示しているが、前述のようにこれに限らない。
【0099】
本実施形態のように、第1高熱伝導部材28に加えて、配列方向の間隔Bに対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に第2高熱伝導部材36を設けることで、間隔Bにおける配列方向の熱伝達効率を特に向上させ、ヒータ22の配列方向の温度ムラをより抑制できる。また、最も好ましくは、図31に示すように、間隔Bに対応する位置でその全域にのみ第1高熱伝導部材28および第2高熱伝導部材36を設ける。これにより、間隔Bに対応する位置で、その他の領域と比較して特に熱伝達効率を向上させることができる。なお、図31では便宜上、抵抗発熱体31と第1高熱伝導部材28そして第2高熱伝導部材36を、図31の上下方向にそれぞれずらして示しているが、これらは配列交差方向のほぼ同じ位置に配置される。ただし、これに限るものではなく、第1高熱伝導部材28や第2高熱伝導部材36が、抵抗発熱体31の配列交差方向の一部に設けられていたり、配列交差方向の全体を覆うようにして設けられていてもよい。
【0100】
上記と異なる本発明の一実施形態では、第1高熱伝導部材28および第2高熱伝導部材36が上記グラフェンシートにより構成される。これにより、グラフェンの面に沿う所定の方向、つまり、厚み方向ではなく配列方向に熱伝導率の高い第1高熱伝導部材28および第2高熱伝導部材36を形成できる。従って、ヒータ22や定着ベルト20の配列方向の温度ムラを効果的に抑制できる。
【0101】
グラフェンは薄片状の粉体である。グラフェンは、図32に示すように、炭素原子の平面状の六角形格子構造からなる。グラフェンシートとは、シート状のグラフェンであり、通常、単層である。炭素の単一層に不純物を含んでいてもよい。またグラフェンはフラーレン構造を有したものであってもよい。フラーレン構造は、一般的に、同数の炭素原子が5員環および6員環でかご状に縮環した多環体を形成してなる化合物として認識されており、例えば、C60、C70およびC80フラーレン又は3配位の炭素原子を有する他の閉じたかご状構造である。
【0102】
グラフェンシートは、人工物であり、例えば化学気相蒸着(CVD)法で作製されうる。
【0103】
グラフェンシートには市販品を用いることができる。グラフェンシートの大きさ、厚み、あるいは後述するグラファイトシートの層数などは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0104】
また、グラフェンを多層化したグラファイトは大きな熱伝導異方性を持つ。グラファイトは、図33に示すように、炭素原子の縮合六員環層面が平面状に広がった層を有し、この層が何重にも重なった結晶構造を有する。この結晶構造における炭素原子間は、層内での隣接する炭素原子同士は共有結合をなし、層間の炭素原子同士はファン・デル・ワールス結合をなす。そして、共有結合はファン・デル・ワールス結合に比べてその結合力が大きく、層内での結合と層間での結合とでは大きな異方性を持つ。つまり、第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36をグラファイトにより構成することで、第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36における配列方向の伝熱効率が厚み方向(つまり、部材の積層方向)に比べて大きくなり、ヒータホルダ23への伝熱を抑制できる。従って、ヒータ22の配列方向の温度ムラを効率よく抑制するとともに、ヒータホルダ23側へ流出する熱を最小限に抑えることができる。また第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36をグラファイトにより構成することで、700度程度まで酸化しない優れた耐熱性を第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36に持たせることができる。
【0105】
グラファイトシートの物性や寸法は、第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36に求められる機能に応じて適宜変更できる。例えば、高純度のグラファイトあるいは単結晶グラファイトを用いる、あるいは、グラファイトシートの厚みを大きくすることで、その熱伝導の異方性を高めることができる。また、定着装置9を高速化するために、厚みの小さいグラファイトシートを用いて定着装置9の熱容量を小さくしてもよい。また、定着ニップNやヒータ22の幅が大きい場合には、それに合わせて第1高熱伝導部材28あるいは第2高熱伝導部材36の配列方向の幅を大きくしてもよい。
【0106】
機械的強度を高める観点から、グラファイトシートの層数は11以上であることが好ましい。またグラファイトシートは部分的に単層と多層の部分とを含んでいてもよい。
【0107】
第2高熱伝導部材36は、配列方向において、間隔B(さらに領域C)に対応する位置で、隣り合う抵抗発熱体31の少なくとも一部に重なる位置に設けられればよく、図30の配置に限らない。例えば、図34に示すように、第2高熱伝導部材36Aは、配列交差方向において、基材30よりも配列交差方向の両側へ飛び出して設けられる。また第2高熱伝導部材36Bは、配列交差方向において、抵抗発熱体31が設けられる範囲に設けられる。第2高熱伝導部材36Cは、間隔Bの一部に設けられる。
【0108】
また、図35に示すように、本実施形態では、第1高熱伝導部材28とヒータホルダ23との間に厚み方向(図35の左右方向)の隙間を設ける。つまり、ヒータホルダ23のヒータ22、第1高熱伝導部材28、そして第2高熱伝導部材36を配置するための凹部23b(図29参照)の一部領域であって、配列方向の第2高熱伝導部材36が設けられた部分以外の部分で、配列交差方向の一部領域に、凹部23bの深さをその他の第1高熱伝導部材28を受ける部分よりも深くする、断熱層としての逃げ部23cを設ける。これにより、ヒータホルダ23と第1高熱伝導部材28との接触面積を最小限にとどめることができる。従って、第1高熱伝導部材28からヒータホルダ23への伝熱を抑制し、ヒータ22が定着ベルト20を効率的に加熱できる。なお、配列方向の第2高熱伝導部材36が設けられる断面では、前述の実施形態の図28のように、第2高熱伝導部材36がヒータホルダ23に当接する。
【0109】
また、特に本実施形態では、配列交差方向(図35の上下方向)において、抵抗発熱体31が設けられた範囲全域にわたって逃げ部23cが設けられる。これにより、特に第1高熱伝導部材28からヒータホルダ23への伝熱を抑制し、ヒータ22が定着ベルト20を効率的に加熱できる。なお、断熱層として、逃げ部23cのように空間を設ける構成の他、ヒータホルダ23よりも熱伝導率の低い断熱部材を設ける構成であってもよい。
【0110】
さらに、以上の説明では、第2高熱伝導部材36を第1高熱伝導部材28とは異なる部材として設けたが、これに限らない。例えば、第1高熱伝導部材28の間隔Bに対応する部分を、その他の部分よりも厚みを設けてもよい。
【0111】
これらの図28あるいは図35の実施形態においても、前述の実施形態と同様、第一の回転部材としての加圧ローラ21に対して、前述の図3などで示す実施形態の除電ブラシ37を接触させることができる。これにより、共通の除電ブラシ37により芯金21aおよび表層21cの両方を除電できる。従って、定着装置の部品点数を減らし、定着装置のコストダウンや小型化ができる。
【0112】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0113】
また、本発明は、前述の定着装置のほか、図36図38に示すような定着装置にも適用可能である。以下、図36図38に示す各定着装置の構成について簡単に説明する。
【0114】
まず、図36に示す定着装置9は、定着ベルト20に対して加圧ローラ21側とは反対側に、押圧ローラ44が配置されている。押圧ローラ44は、第一の回転部材としての定着ベルト20に対向して回転する第二の回転部材である。この押圧ローラ44とヒータ22とが定着ベルト20を挟んで加熱するように構成されている。一方、加圧ローラ21側では、定着ベルト20の内周にニップ形成部材45が配置されている。ニップ形成部材45は、ステー24によって支持されている。ニップ形成部材45と加圧ローラ21とによって、定着ベルト20を挟んで定着ニップNを形成している。
【0115】
次に、図37に示す定着装置9では、前述の押圧ローラ44が省略されており、定着ベルト20とヒータ22との周方向接触長さを確保するために、ヒータ22が定着ベルト20の曲率に合わせて円弧状に形成されている。その他は、図36に示す定着装置9と同じ構成である。
【0116】
図36図37に示す実施形態においても、第一の回転部材としての加圧ローラ21に対して、前述の図3などで示す実施形態の除電ブラシ37を接触させることができる。これにより、共通の除電ブラシ37により芯金21aおよび表層21cの両方を除電できる。従って、定着装置の部品点数を減らし、定着装置のコストダウンや小型化ができる。また、定着ベルト20の中間に弾性層などの非導電性の第二層が設けられ、第一層としての基層と第三層としての表層とが電気的に接続されていない構成の場合には、定着ベルト20の基層および表層に対して除電ブラシを接触させてもよい。
【0117】
最後に、図38に示す定着装置9について説明する。定着装置9は、加熱アセンブリ92、定着部材である定着ローラ93、対向部材である加圧アセンブリ94からなる。加熱アセンブリ92は、先の実施形態で説明したヒータ22、第1高熱伝導部材28、ヒータホルダ23、ステー24、第一の回転部材としての加熱ベルト120等を有する。定着ローラ93は、第一の回転部材としての加熱ベルト120に対向して回転する第二の回転部材である。また、定着ローラ93は、第一層としての導電性の芯金93aと、第二層としての非導電性の弾性層93bと、第三層としての導電性の表層93cとで構成されている。また、定着ローラ93に対して加熱アセンブリ92側とは反対側に、加圧アセンブリ94が設けられている。加圧アセンブリ94は、ニップ形成部材95とステー96とを配置し、これらニップ形成部材95とステー96を内包するように加圧ベルト97を回転可能に配置している。そして、加圧ベルト97と定着ローラ93との間の定着ニップN2に用紙Pを通紙して加熱および加圧して画像を定着する。
【0118】
図38の実施形態においても、第一の回転部材としての定着ローラ93に対して、前述の除電ブラシ37を適用できる。これにより、共通の除電ブラシ37により芯金93aおよび表層93cの両方を除電できる。従って、定着装置の部品点数を減らし、定着装置のコストダウンや小型化ができる。また、加熱ベルト120あるいは加圧ベルト97に弾性層などの非導電性の第二層が設けられ、第一層と第三層とが電気的に接続されていない構成の場合には、加熱ベルト120あるいは加圧ベルト97の第一層および第三層に対して除電ブラシを接触させてもよい。
【0119】
また、本発明を適用できる定着装置は、以上のような面状のヒータを有する定着装置に限らない。例えば図39に示すように、本実施形態の定着装置9は、加熱体としてハロゲンヒータ61を有する。また定着装置9は、定着ベルト20と、第一の回転部材としての加圧ローラ21と、ニップ形成部材62と、ステー24と、反射部材63と、温度センサ64と、分離部材65などを備えている。
【0120】
ハロゲンヒータ61は、その長手方向の両端部を側板に固定されている。本実施形態の定着装置の加熱体としては、ハロゲンヒータ以外に、IHやカーボンヒータなどであってもよい。また定着装置9が、長手方向に発熱領域の異なる複数のハロゲンヒータを有していてもよい。
【0121】
ニップ形成部材62は、ベースパッド621と、ベースパッド621の表面に設けられた摺動シート622とを有する。ベースパッド621は、長手方向にわたって配設されており、加圧ローラ21の加圧力を受けて定着ニップNの形状を決めるものである。また、ベースパッド621は、ステー24によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ21による圧力でニップ形成部材62に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ21の軸方向に渡って均一なニップ幅が得られるようにしている。本実施形態では、ベースパッド621の加圧ローラ21との対向面が平面状に形成されており、そのために定着ニップNはストレート形状になっている。定着ニップNをストレート形状にすることで、加圧ローラ21による加圧力を軽減することができる。
【0122】
また、ベースパッド621は、強度確保のためにある程度硬い材料で、かつ耐熱温度200℃以上の耐熱性材料で構成されている。これにより、トナー定着温度域で、熱によるニップ形成部材62の変形を防止し、安定した定着ニップNの状態を確保して、出力画質の安定化を図っている。ベースパッド621の材料としては、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂の他、金属、あるいはセラミックなどを使用することが可能である。
【0123】
摺動シート622は、ベースパッド621の少なくとも定着ベルト20と対向する表面に配設される。これにより、ベースパッド621が摺動シート622を介して間接的に定着ベルト20と接触する。定着ベルト20の回転中は、この摺動シート622に対して定着ベルト20が摺動するため、定着ベルト20に生じる摩擦力が軽減され、定着ベルト20の駆動トルクが低減される。なお、摺動シート622を有しない構成とすることも可能である。
【0124】
上記反射部材63は、ステー24とハロゲンヒータ61との間に配設されている。本実施形態では、反射部材63をステー24に固定している。反射部材63の材料としては、アルミニウムやステンレス等を使用することができる。このように反射部材63を配設していることにより、ハロゲンヒータ61からステー24側に放射された光が定着ベルト20へ反射される。これにより、定着ベルト20に照射される光量を多くすることができ、定着ベルト20を効率良く加熱することが可能となる。また、ハロゲンヒータ61からの輻射熱がステー24等に伝達されるのを抑制することができるので、省エネルギー化も図れる。
【0125】
定着ニップNを通過する用紙は加熱および加圧され、その表面上の画像が定着される。また定着ニップNを通過した用紙は、分離部材65により定着ベルト20から分離される。
【0126】
次に、図40(a)~(c)に基づいて、定着ベルト20の長手方向両端部を支持するための支持構造を説明する。この支持構造においては、定着ベルト20の両端部がその内周に挿入されたベルト保持部材66で回転自在に支持される。ベルト保持部材66が側板に取り付けられることで、定着装置9が画像形成装置に組み込まれる。なお、図40の(a)~(c)では、片側のベルト保持部材66のみを図示しているが、反対側のベルト保持部材も同様の構成となっているので、以下では、片側のベルト保持部材66についてのみ説明する。
【0127】
図40(a)(b)に示すように、ベルト保持部材66は、外周面が円筒面状をなす筒部66aと、筒部66aの外径側に張り出し、定着ベルト20の長手方向移動を規制するフランジ部66bとを有する。このベルト保持部材66は、例えば樹脂の射出成形により一体形成される。図40(c)に示すように、ベルト保持部材66の筒部66aは、定着ニップNの位置であるニップ形成部材62を配設した位置に長手方向の切欠きを有する断面C字形に形成されている。ベルト保持部材66の筒部66aは定着ベルト20の内周面に緩く嵌合されており、この筒部66aによって定着ベルト20の端部が回転可能に保持されている。上記ステー24の端部は、このベルト保持部材66に固定され位置決めされている。
【0128】
図40(a)(b)に示すように、定着ベルト20の長手方向端面とそれに対向するベルト保持部材66の対向面であるフランジ部66bの端面66b1との間には、定着ベルト20の端部を保護する保護部材としてのスリップリング69が配置されている。これにより、定着ベルト20に長手方向の寄りが生じた場合に、定着ベルト20の端部がベルト保持部材66のフランジ部66bの端面401に直接当接するのを防止することができ、端部の摩耗や破損を防ぐことができる。
【0129】
以上の支持構造においては、定着ベルト20の両端部のみがベルト保持部材66によって保持されているため、両端部間では定着ベルト20が定着ニップNを除いて変形可能な状態にある。
【0130】
図40(b)に示すように、加圧ローラ21とベルト保持部材66を軸方向でオーバーラップさせることなく軸方向にずらした状態で配置している。具体的には、ベルト保持部材66の先端と加圧ローラ21の端部211とは軸方向に離間させる。これにより、定着ベルト20に、加圧ローラ21およびベルト保持部材66の双方に対して非接触となる長手方向領域Jを形成し、定着ベルト20の先端縁付近での応力集中を緩和する。
【0131】
また、図41に示す定着装置9は、ハロゲンヒータ61がニップ形成部材62を加熱する。この定着装置9は、その他に、定着ベルト20と、第一の回転部材としての加圧ローラ21と、ニップ形成部材62と、反射部材63と、ガイド部材67と、温度センサ64と、を備えている。
【0132】
ニップ形成部材62は、定着ベルト20の内周面に接触する平板状のニップ形成部62aと、ニップ形成部62aの定着ベルト20の回転方向の両端部から加圧ローラ21側とは反対側に屈曲する一対の屈曲部62bと、を有している。
【0133】
ニップ形成部62aの定着ベルト20側のニップ形成面62cは、定着ベルト20の内周面に対して直接接触している。このため、定着ベルト20が回転したとき、定着ベルト20はニップ形成面62cに対して摺動する。ニップ形成面62cの耐摩耗性や摺動性を向上させるために、ニップ形成面62cにアルマイト処理やフッ素樹脂系材料を塗布してもよい。さらに、経時的な摺動性の確保のために、ニップ形成面62cにフッ素系グリース等の潤滑剤を塗布してもよい。本実施形態では、ニップ形成面62cが、平坦面状となっているが、凹形状やその他の形状であってもよい。例えば、ニップ形成面62cが加圧ローラ21側とは反対側へ凹んだ凹形状である場合は、定着ニップNの出口部が加圧ローラ21寄りになり、定着ベルト20に対する用紙の分離性が向上する。
【0134】
反射部材63は、ハロゲンヒータ61からの輻射熱(赤外線光)を反射する部材であり、定着ベルト20の長手方向と交差する断面において、少なくとも一部が定着ベルト20とハロゲンヒータ61との間に配置されている。また、反射部材63は、ニップ形成部材62と同様、定着ベルト20の内側で長手方向にわたって配置されている。本実施形態では、反射部材63が、一対の側壁部63aと、これらを連結する底壁部63bとから成る、断面U字状に形成されている。ニップ形成部材62は、その定着ベルト20の回転方向の両端部にて、反射部材63の一対の側壁部63aによって支持されている。また、各側壁部63aが、加圧ローラ21の加圧方向に延在していることで、加圧方向の剛性が高まり、加圧ローラ21の加圧力によるニップ形成部62aの撓みが抑制されるので、長手方向に渡って均一な幅の定着ニップNが得られるようになる。反射部材63は、その剛性を確保するため、SUSやSECCなどの鉄系金属材料によって形成されることが好ましい。
【0135】
ガイド部材67は、定着ベルト20の内側に配置され、回転する定着ベルト20をガイドするものである。本実施形態では、ガイド部材67が、定着ニップNに対してベルト回転方向の上流側と下流側の両方に設けられている。ガイド部材67は、反射部材63などに固定される取付部67aと、定着ベルト20の内周面に接触する曲面状のガイド部67bと、を有している。図42に示すように、ガイド部67bの定着ベルト20側のガイド面には、ベルト幅方向に渡って複数のリブ67cが等間隔に設けられている。この複数のリブ67cを有するガイド面に沿って定着ベルト20がガイドされることで、定着ベルト20は大きな変形を伴うことなく円滑に回転することができる。
【0136】
温度センサ64は、接触型又は非接触型のいずれでもよい。温度センサ64としては、例えばサーモパイル、サーモスタット、サーミスタ、NCセンサなど、公知の温度センサを適用可能である。
【0137】
図43に示すように、定着ベルト20は、その両端部に挿入された一対のベルト保持部材66によって回転可能に支持されている。定着装置9を構成するフレームである一対の側板68に固定されている。
【0138】
図44に示すように、ベルト保持部材66は、C字状の筒部66aと、フランジ部66bと、を有する。筒部66aは定着ベルト20の内周に挿入されて定着ベルト20を支持する。またベルト保持部材66には開口部66cが設けられており、この開口部66cを通してハロゲンヒータ61や反射部材63の両端部が各側板68に固定されている。ハロゲンヒータ61や反射部材63は、ベルト保持部材66に固定されてもよい。筒部66aは、図45に示す例のように、全周に渡って連続する筒状であってもよい。
【0139】
図46に示すように、反射部材63のハロゲンヒータ61側の面である反射部材63の内面には、ハロゲンヒータ61からの輻射熱(赤外線光)を反射する反射面63cが形成されている。本実施形態では、鉄系金属材料で構成された反射部材63の基材に対して、反射材を塗布することで反射面63cが形成されている。反射面63cは、反射材を塗布するほか、反射部材63の基材のハロゲンヒータ61側の面を研磨するなどにより形成されてもよい。
【0140】
本発明における「反射面」とは、ヒータからの赤外線光に対して70%以上の反射率を有する反射面を言う。例えば、反射面63cは、一般的に定着装置に用いられるヒータの赤外線光の波長である、900~1600nmの波長に対して70%以上、あるいは1000~1300nmの波長に対して70%以上の反射率を有する。反射率の測定は、分光光度計(例えば、日立ハイテクサイエンス社製の紫外可視赤外分光光度計UH4150)を用いて、公知の方法(例えば、入射角5°)で行うことができる。
【0141】
このような反射面63cが反射部材63に形成されていることで、ハロゲンヒータ61から照射される赤外線光は反射面63cによって反射され、その反射光がニップ形成部材62側へ照射される。これにより、ニップ形成部材62は、ハロゲンヒータ61から直接照射される赤外線光に加えて、反射面63cによって反射された赤外線光も照射されるため、効果的に加熱される。また、反射面63cによって赤外線光を反射することにより、反射部材63が加熱されることによる無駄な熱エネルギーの消費も抑制できるようになる。
【0142】
また、本実施形態では、反射部材63がニップ形成部材62を支持する支持部材としての機能も兼ねることで、別体の支持部材を設けなくてもよくなる。支持部材が別体である場合は、反射部材を支持部材とハロゲンヒータ61との間の狭いスペース内に配置するため、反射部材を薄く形成しなければならない。しかしながら、反射部材を薄く形成すると、反射部材の熱容量が小さくなるため、反射部材が温度上昇しやすくなる。その結果、反射部材が短時間で高温になり、反射部材が変色して反射率が低下する虞がある。これに対して、本実施形態のように、反射部材63に支持部材としての機能を持たせることで、反射部材63を厚く形成することができるので、その熱容量を大きくすることができ、ハロゲンヒータ61からの輻射熱による温度上昇が緩やかになる。これにより、ハロゲンヒータ61を長時間続けて使用しても、高温変色に伴う反射率の低下を抑制でき、高い加熱効率を維持できるようになる。
【0143】
図39あるいは図41に示す実施形態の定着装置においても、前述した実施形態の除電部材としての除電ブラシを適用することにより、共通の除電ブラシ37により芯金および表層の両方を除電できる。従って、定着装置の部品点数を減らし、定着装置のコストダウンや小型化ができる。
【0144】
また、本発明は、上記の実施形態で説明したような定着装置に限らず、用紙に塗布されたインクを乾燥させる乾燥装置、さらには、被覆部材としてのフィルムを用紙等のシートの表面に熱圧着するラミネータや、包材のシール部を熱圧着するヒートシーラーなどの熱圧着装置のような加熱装置にも適用可能である。このような装置にも本発明を適用することで、共通の除電部材により第一の回転部材の第一層および第三層を除電できる。
【0145】
本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。
【0146】
例えば図47に示すように、本実施形態の画像形成装置100は、感光体ドラムなどからなる画像形成手段50と、一対のタイミングローラ15等からなる用紙搬送部と、給紙装置7と、定着装置9と、排紙装置10と、読取部51と、を備える。給紙装置7は複数の給紙トレイを備え、それぞれの給紙トレイが異なるサイズの用紙を収容する。
【0147】
読取部51は原稿Qの画像を読み取る。読取部51は、読み取った画像から画像データを生成する。給紙装置7は、複数の用紙Pを収容し、搬送路へ用紙Pを送り出す。タイミングローラ15は搬送路上の用紙Pを画像形成手段50へ搬送する。
【0148】
画像形成手段50は、用紙Pにトナー像を形成する。具体的には、画像形成手段50は、感光体ドラムと、帯電ローラと、露光装置と、現像装置と、補給装置と、転写ローラと、クリーニング装置と、除電装置とを含む。トナー像は、例えば、原稿Qの画像を示す。定着装置9は、トナー像を加熱および加圧して、用紙Pにトナー像を定着させる。トナー像の定着された用紙Pは、搬送ローラなどにより排紙装置10へ搬送される。排紙装置10は、画像形成装置100の外部に用紙Pを排出する。
【0149】
次に、本実施形態の定着装置9について説明する。前述の実施形態の定着装置と共通する構成については、適宜その記載を省略する。
【0150】
図48に示すように、定着装置9は、定着ベルト20と、加圧ローラ21と、ヒータ22と、ヒータホルダ23と、ステー24と、サーミスタ25と、第1高熱伝導部材28等を備える。
【0151】
定着ベルト20と加圧ローラ21との間に定着ニップNが形成される。定着ニップNのニップ幅は10mm、定着装置9の線速は240mm/sである。
【0152】
定着ベルト20はポリイミドの基体と離型層とを備え、弾性層を有していない。離型層は、例えばフッ素樹脂からなる耐熱性のフィルム材からなる。定着ベルト20の外径は約24mmである。
【0153】
加圧ローラ21は、芯金21aと弾性層21bと表層21cとを含む。加圧ローラ21の外径は24~30mmで形成され、弾性層21bの厚みは3~4mmで形成される。
【0154】
ヒータ22は、基材と、断熱層と、抵抗発熱体などを含む導体層と、絶縁層とを含み、全体の厚みが1mmで形成される。また、ヒータ22の配列交差方向の幅Yは13mmである。
【0155】
図49に示すように、ヒータ22の導体層は、複数の抵抗発熱体31と、給電線33と、電極部34A~34Cとを備える。本実施形態においても、図49の拡大図に示すように、複数の抵抗発熱体31が配列方向に分割された分割領域としての間隔Bが形成される(ただし、図49では拡大図の範囲のみで間隔Bを図示しているが、実際は全ての抵抗発熱体31同士の間に間隔Bが設けられる)。抵抗発熱体31により、三つの発熱部35A~35Cが構成される。電極部34A,34Bに通電することにより、発熱部35A,35Cが発熱する。電極部34A,34Cに通電することにより、発熱部35Bが発熱する。例えば、小サイズ用紙に定着動作を行う場合には発熱部35Bを発熱させ、大サイズ用紙に定着動作を行う場合には全ての発熱部に発熱させることができる。
【0156】
図50に示すように、ヒータホルダ23は、その凹部23dにヒータ22および第1高熱伝導部材28を保持する。凹部23dは、ヒータホルダ23のヒータ22側に設けられる。凹部23dは、ヒータ22のその他の面よりもステー24側に凹となった基材30に略平行な面23d1と、ヒータホルダ23の配列方向両側(一方側でもよい)でヒータホルダ23の内側に設けられた壁部23d2と、配列交差方向両側でヒータホルダ23の内側に設けられた壁部23d3とにより構成される。ヒータホルダ23はガイド部26を有する。ヒータホルダ23はLCP(液晶ポリマー)により形成される。
【0157】
図51に示すように、コネクタ60は、樹脂製(例えばLCP)のハウジングと、ハウジング内に設けられた複数のコンタクト端子等を備える。
【0158】
コネクタ60は、ヒータ22とヒータホルダ23とを表側と裏側から一緒に挟むようにして取り付けられる。この状態で、各コンタクト端子が、ヒータ22の各電極部に接触(圧接)することで、コネクタ60を介して発熱部35と画像形成装置に設けられた電源とが電気的に接続される。これにより、電源から発熱部35へ電力が供給可能な状態となる。なお、各電極部34は、コネクタ60との接続を確保するため、少なくとも一部が絶縁層に被覆されておらず露出した状態となっている。
【0159】
フランジ53は、定着ベルト20の配列方向の両側に設けられ、定着ベルト20の両端をベルトの内側から保持する。フランジ53は定着装置9の筐体に固定される。フランジ53はステー24の両端に挿入される(図51のフランジ53からの矢印方向参照)。
【0160】
コネクタ60のヒータ22およびヒータホルダ23に対する取り付け方向はヒータの配列交差方向である(図51のコネクタ60からの矢印方向参照)。コネクタ60のヒータホルダ23に対する取り付け時に、コネクタ60とヒータホルダ23との一方に設けた凸部が、他方に設けた凹部に係合し、凸部が凹部内を相対移動する構成としてもよい。またコネクタ60は、配列方向のいずれか一方側であって、加圧ローラ21の駆動モータが設けられる側とは反対側で、ヒータ22およびヒータホルダ23に取り付けられる。
【0161】
図52に示すように、定着ベルト20の内周面に対向して、定着ベルト20の配列方向中央側と端部側にそれぞれサーミスタ25が設けられる。サーミスタ25により検知された定着ベルト20の配列方向中央側と端部側のそれぞれの温度に基づいて、ヒータ22を制御する。
【0162】
定着ベルト20の内周面に対向して、定着ベルト20の配列方向中央側と端部側にそれぞれサーモスタット27が設けられる。サーモスタット27により検知された定着ベルト20の温度が定められた閾値を超えた場合には、ヒータ22への通電を停止する。
【0163】
定着ベルト20の配列方向両端には、定着ベルト20の各端部を保持するフランジ53が設けられる。フランジ53はLCP(液晶ポリマー)により形成される。
【0164】
図53に示すように、フランジ53にはスライド溝53aが設けられる。スライド溝53aは、定着ベルト20の加圧ローラ21に対する接離方向に延在する。スライド溝53aには定着装置9の筐体の係合部が係合する。この係合部がスライド溝53a内を相対移動することにより、定着ベルト20は加圧ローラ21に対する接離方向へ移動できる。
【0165】
以上の定着装置9においても、第一の回転部材としての加圧ローラ21に対して、前述の図3などで示す実施形態の除電ブラシ37を接触させることができる。これにより、共通の除電ブラシ37により芯金21aおよび表層21cの両方を除電できる。従って、定着装置の部品点数を減らし、定着装置のコストダウンや小型化ができる。
【0166】
以上の実施形態では、除電ブラシとしてブラシ状の部材を説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、シート状の除電部材等、適宜の構成を採用できる。
【0167】
記録媒体としては、用紙P(普通紙)の他、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔等が含まれる。
【符号の説明】
【0168】
1 画像形成装置
9 定着装置(加熱装置)
20 定着ベルト(第二の回転部材あるいは定着部材)
21 加圧ローラ(第一の回転部材あるいは加圧部材)
21a 芯金(第一層)
21a1 露出部
21a2 拡径部
21b 弾性層(第二層)
21c 表層(第三層)
22 ヒータ(加熱体)
23 ヒータホルダ(保持部材)
31 抵抗発熱体
37 除電ブラシ(除電部材)
37a 接触部
37b 保持部
37b1 保持面
【先行技術文献】
【特許文献】
【0169】
【特許文献1】特開平06-318006号公報
図1
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