(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098232
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】洗浄液、及び基板の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230703BHJP
C11D 3/30 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/304 647B
C11D3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021214865
(22)【出願日】2021-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】和田 幸久
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 航平
(72)【発明者】
【氏名】呉 朝逸
(72)【発明者】
【氏名】脇屋 和正
【テーマコード(参考)】
4H003
5F157
【Fターム(参考)】
4H003DA09
4H003DA12
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB08
4H003EB13
4H003EB14
4H003EB22
4H003FA04
4H003FA07
5F157AA35
5F157AA36
5F157AA96
5F157BC13
5F157BD02
5F157BD07
5F157BD09
5F157BF38
5F157BF39
5F157BF52
5F157BF59
5F157BF72
5F157BF73
5F157DB03
5F157DB57
(57)【要約】
【課題】卑金属含有物と貴金属含有物とが隣接して存在する基板において金属間の腐食電位差を低減可能な洗浄液、及び前記洗浄液を用いた基板の洗浄方法の提供。
【解決手段】ルテニウムを含有する第1の金属原子含有層とルテニウム以外の金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板であって、前記第1の金属原子含有層及び前記第2の金属原子含有層の少なくとも一方が表面に露出した基板を洗浄するための洗浄液。下記式(a1)で表される化合物、前記化合物の水和物、及び前記化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種のヒドラジン化合物(A)と、前記ヒドラジン化合物(A)以外のアミン、及び第4級水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性化合物(B)と、を含む。R
1及びR
2は、カルボニル基を含まない有機基又は水素原子を表す。
[化1]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルテニウムを含有する第1の金属原子含有層とルテニウム以外の金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板であって、前記第1の金属原子含有層及び前記第2の金属原子含有層の少なくとも一方が表面に露出した基板を洗浄するための洗浄液であって、
下記一般式(a1)で表される化合物、前記化合物の水和物、及び前記化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種のヒドラジン化合物(A)と、
前記ヒドラジン化合物(A)以外のアミン、及び第4級水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性化合物(B)と、
を含む、洗浄液。
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、カルボニル基を含まない有機基又は水素原子を表す。]
【請求項2】
貴金属原子を含有する第1の金属原子含有層と卑金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板であって、前記第1の金属原子含有層及び前記第2の金属原子含有層の少なくとも一方が表面に露出した基板を洗浄するための洗浄液であって、
下記一般式(a1)で表される化合物、前記化合物の水和物、及び前記化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種のヒドラジン化合物(A)と、
前記ヒドラジン化合物(A)以外のアミン、及び第4級水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性化合物(B)と、
を含む、洗浄液。
【化2】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、カルボニル基を含まない有機基又は水素原子を表す。]
【請求項3】
ヒドロキシカルボン酸(C)をさらに含む、請求項1又は2に記載の洗浄液。
【請求項4】
前記洗浄液の全質量に対する前記ヒドラジン化合物(A)の濃度が、1.0質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項5】
前記塩基性化合物(B)は、第4級水酸化物、第3級モノアミン及び第3級アルカノールアミンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の洗浄液。
【請求項6】
緩衝剤、防食剤、界面活性剤、及び有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の洗浄液。
【請求項7】
前記緩衝剤は、pKaが6~11の化合物である請求項6に記載の洗浄液。
【請求項8】
前記第2の金属原子含有層が銅を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の洗浄液。
【請求項9】
配線層の化学機械研磨後の前記基板の洗浄に用いられ、前記配線層は前記第1の金属原子含有層又は第2の金属原子含有層である、請求項1~8のいずれか一項に記載の洗浄液。
【請求項10】
デュアルダマシンプロセスにより、配線層に接続するビアが形成された後の前記基板の洗浄に用いられる、請求項1~8のいずれか一項に記載の洗浄液。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の洗浄液を用いて、ルテニウム原子を含有する第1の金属含有層とルテニウム以外の金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板であって、前記第1の金属原子含有層及び前記第2の金属原子含有層の少なくとも一方が表面に露出した基板を洗浄する工程を含む、基板の洗浄方法。
【請求項12】
請求項1~10いずれか一項に記載の洗浄液を用いて、貴金属原子を含有する第1の金属原子含有層と卑金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板であって、前記第1の金属原子含有層及び前記第2の金属原子含有層の少なくとも一方が表面に露出した基板を洗浄する工程を含む、基板の洗浄方法。
【請求項13】
前記基板が、配線層の化学機械研磨後の基板であり、前記配線層は前記第1の金属原子含有層又は前記第2の金属原子含有層である、請求項11又は12に記載の基板の洗浄方法。
【請求項14】
前記第1の金属原子含有層がルテニウム含有バリア層又はルテニウム含有ライナー層であり、前記第2の金属原子含有層が銅含有配線層である、請求項11~13のいずれか1項に記載の基板の洗浄方法。
【請求項15】
前記基板が、前記銅含有配線層の化学機械研磨後の基板である、請求項14に記載の基板の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液、及び基板の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置に用いられる配線基板では、配線層の形成に際し、ライナー層又はバリア層等を配線層に隣接させて設ける場合がある。これらの層の形成材料として、次世代配線では、低抵抗化、及び埋め込み改善等のために、ルテニウムの使用が検討されている。
【0003】
配線基板の製造工程では、化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)による平坦化、及びビア形成等が行われる。これらの工程後には、基板に付着する削り屑等の不純物の除去のため、基板の洗浄が行われる。
例えば、特許文献1には、銅配線基板のCMP後に用いる洗浄用組成物として、有機塩基、銅エッチング剤、有機リガンド、及びヒドラジド化合物を含む水性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
銅等の卑金属を配線材料に用い、ルテニウム等の貴金属をライナー層等に用いた配線基板では、卑金属含有物と貴金属含有物とが隣接して存在する。このような配線基板を従来の洗浄液で洗浄すると、卑金属と貴金属との腐食電位差が大きくなり、ガルバニック腐食が発生しやすい。そのため、卑金属と貴金属との腐食電位差を低減可能な洗浄液が求められる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、卑金属含有物と貴金属含有物とが隣接して存在する基板において金属間の腐食電位差を低減可能な洗浄液、及び前記洗浄液を用いた基板の洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0008】
本発明の第1の態様は、ルテニウムを含有する第1の金属原子含有層とルテニウム以外の金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板であって、前記第1の金属原子含有層及び前記第2の金属原子含有層の少なくとも一方が表面に露出した基板を洗浄するための洗浄液であって、下記一般式(a1)で表される化合物、前記化合物の水和物、及び前記化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種のヒドラジン化合物(A)と、前記ヒドラジン化合物(A)以外のアミン、及び第4級水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性化合物(B)と、を含む、洗浄液である。
【0009】
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、カルボニル基を含まない有機基又は水素原子を表す。]
【0010】
本発明の第2の態様は、貴金属原子を含有する第1の金属原子含有層と卑金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板であって、前記第1の金属原子含有層及び前記第2の金属原子含有層の少なくとも一方が表面に露出した基板を洗浄するための洗浄液であって、下記一般式(a1)で表される化合物、前記化合物の水和物、及び前記化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種のヒドラジン化合物(A)と、前記ヒドラジン化合物(A)以外のアミン、及び第4級水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性化合物(B)と、を含む、洗浄液である。
【0011】
【化2】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、カルボニル基を含まない有機基又は水素原子を表す。]
【0012】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様にかかる洗浄液を用いて、ルテニウム原子を含有する第1の金属含有層とルテニウム以外の金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板であって、前記第1の金属原子含有層及び前記第2の金属原子含有層の少なくとも一方が表面に露出した基板を洗浄する工程を含む、基板の洗浄方法である。
【0013】
本発明の第4の態様は、前記第1又は第2の態様にかかる洗浄液を用いて、貴金属原子を含有する第1の金属原子含有層と卑金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板であって、前記第1の金属原子含有層及び前記第2の金属原子含有層の少なくとも一方が表面に露出した基板を洗浄する工程を含む、基板の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、卑金属含有物と貴金属含有物とが隣接して存在する基板において金属間の腐食電位差を低減可能な洗浄液、及び前記洗浄液を用いた基板の洗浄方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】一実施形態の洗浄液が適用される基板の一例を示す。
【
図1B】一実施形態の洗浄液が適用される基板の一例を示す。
【
図2A】一実施形態の洗浄液が適用される基板の一例を示す。
【
図2B】一実施形態の洗浄液が適用される基板の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の態様:洗浄液)
本発明の第1の態様にかかる洗浄液は、下記一般式(a1)で表される化合物、前記化合物の水和物、及び前記化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種のヒドラジン化合物(A)と、前記ヒドラジン化合物(A)以外のアミン、及び第4級水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性化合物(B)と、を含む。
本態様にかかる洗浄液は、ルテニウムを含有する第1の金属原子含有層とルテニウム以外の金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板であって、前記第1の金属原子含有層及び前記第2の金属原子含有層の少なくとも一方が表面に露出した基板を洗浄するために用いられる。
【0017】
【化3】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、カルボニル基を含まない有機基又は水素原子を表す。]
【0018】
<ヒドラジン化合物(A)>
本実施形態にかかる洗浄液は、前記一般式(a1)で表される化合物(以下、「化合物(A1)」ともいう)、前記化合物の水和物、及び前記化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種のヒドラジン化合物(A)(以下、「(A)成分」ともいう)を含有する。(A)成分は、それぞれ後述する、ルテニウム等の貴金属とルテニウム以外の金属(例えば、銅等の卑金属)が隣接して存在する基板の洗浄工程において、両金属の腐食電位差を低減する作用を有する。
【0019】
前記式(a1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、カルボニル基を含まない有機基又は水素原子を表す。R1及びR2における有機基は、カルボニル基を含まないため、化合物(A)がヒドラジドとなることはない。
【0020】
R1及びR2における有機基としては、置換基を有してもよい炭化水素基が挙げられる。前記炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
【0021】
R1及びR2における脂肪族炭化水素基は、飽和脂肪族炭化水素基であってもよく、不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい。前記脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよく、環構造を含んでもよい。
直鎖状の脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数1~10の直鎖状のアルキル基が挙げられ、炭素原子数1~8が好ましく、炭素原子数1~6がより好ましく、炭素原子数1~4又は炭素原子数1~3がさらに好ましく、炭素原子数1若しくは2が特に好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
分岐鎖状の脂肪族炭化水素基としては、炭素原子数3~10の分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、炭素原子数3~8が好ましく、炭素原子数3~6がより好ましく、炭素原子数3又は4がさらに好ましい。具体例としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられる。
環構造を含む脂肪族炭化水素基は、脂環式基を含む脂肪族炭化水素基である。前記脂環式基は、単環式基であってもよく、多環式基であってもよい。
単環式基の脂肪族炭化水素基としては、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。前記モノシクロアルカンとしては、炭素原子数3~6が好ましい。モノシクロアルカンの具体例としては、シクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
多環式基の脂肪族炭化水素基としては、ポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。前記ポリシクロアルカンとしては、炭素原子数7~12が好ましい。ポリシクロアルカンの具体例としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。
【0022】
R1及びR2における芳香族炭化水素基は、芳香環を少なくとも1つ有する炭化水素基である。前記芳香環は、4n+2個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式であってもよく、多環式であってもよい。芳香環の炭素原子数は5~30が好ましく、炭素原子数5~20がより好ましく、炭素原子数6~15がさらに好ましく、炭素原子数6~12が特に好ましい。
芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素環;前記芳香族炭化水素環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換された芳香族複素環等が挙げられる。芳香族複素環におけるヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。芳香族複素環として具体的には、ピリジン環、チオフェン環等が挙げられる。
芳香族炭化水素基の具体例としては、前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環から水素原子を1つ除いた基(アリール基またはヘテロアリール基);2以上の芳香環を含む芳香族化合物(例えばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ除いた基;前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、1-ナフチルメチル基、2-ナフチルメチル基、1-ナフチルエチル基、2-ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)等が挙げられる。前記芳香族炭化水素環または芳香族複素環に結合するアルキレン基は、炭素原子数1~4が好ましく、炭素原子数1~3がより好ましく、炭素原子数1が特に好ましい。
【0023】
R1及びR2における炭化水素基は、置換基を有してもよい。前記置換基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基、アルキル基、又はビニル基が挙げられる。ただし、前記置換基は、カルボニル基を含まない。
【0024】
R1及びR2は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基、又は水素原子が好ましく、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は水素原子がより好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基、又は水素原子がさらに好ましい。前記直鎖状のヒドロキシアルキル基又は直鎖状のアルキル基は、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~3がより好ましく、炭素原子数1又は2がさらに好ましい。前記分岐鎖状のヒドロキシアルキル基又は直鎖状のアルキル基は、炭素原子数3~6が好ましく、炭素原子数3がより好ましい。
【0025】
化合物(A1)の具体例としては、例えば、ヒドラジン、2-ヒドラジノエタノール、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジエチルヒドラジン、1,2-ジエチルヒドラジン、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、1,2-ジメチルヒドラジン、1,2-ジイソプロピルヒドラジン、シクロヘキシルヒドラジン、アリルヒドラジン、イソプロピルヒドラジン、トリルヒドラジン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
(A)成分は、化合物(A1)の水和物であってもよい。化合物(A1)の水和物における水和水の数は、特に限定されない。化合物(A1)の水和物としては、一水和物、二水和物、三水和物等が挙げられる。化合物(A1)の水和物の具体例としては、ヒドラジン一水和物が挙げられる。
【0027】
(A)成分は、化合物(A1)の塩であってもよい。化合物(A1)の塩は、無機物との塩でもよく、有機物との塩でもよい。塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、炭酸塩等が挙げられるが、これらに限定されない。化合物(A1)の塩の具体例としては、t-ブチルヒドラジン塩酸塩、硫酸ヒドラジン、炭酸ヒドラジン、トリルヒドラジン塩酸塩等が挙げられる。
【0028】
(A)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の洗浄液における(A)成分の含有量は、特に限定されないが、洗浄液の全質量に対し、1.0質量%(10000ppm)以下が挙げられ、0.3質量%(3000ppm)以下が好ましく、0.1質量%(1000ppm)以下がより好ましく、0.05質量%(500pm)以下がさらに好ましく、0.02質量%(200pm)以下が特に好ましい。(A)成分には、劇物も含まれるため、(A)成分の効果が発現される限り、低濃度で用いることが好ましい。本実施形態の洗浄液における(A)成分の含有量は、例えば、0.01質量%(100pm)以下、又は0.009質量%(90pm)以下であってもよい。
(A)成分の含有量の下限値は、特に限定されないが、洗浄液の全質量に対し、0.0001質量%(1ppm)以上が挙げられ、0.0005質量%(5ppm)以上が好ましく、0.001質量%(10ppm)以上がより好ましく、0.002質量%(20ppm)以上がさらに好ましく、0.003質量%(30ppm)以上が特に好ましい。(A)成分の含有量が前記好ましい下限値以上であると、本実施形態の洗浄液を用いて基板を洗浄した際に、ルテニウム等の貴金属と他の金属(後述の卑金属又は非ルテニウム金属)との腐食電位差が低減されやすくなる。
本実施形態の洗浄液における(A)成分の含有量の範囲としては、洗浄液の全質量に対し、0.0001質量%(1ppm)~1.0質量%(10000ppm)が挙げられ、0.0001質量%(1ppm)~0.3質量%(3000ppm)又は0.0005質量%(5ppm)~0.1質量%(1000ppm)が好ましく、0.002質量%(20ppm)~0.05質量%(500ppm)がさらに好ましく、0.002質量%(30ppm)~0.02質量%(200ppm)、又は0.002質量%(30ppm)~0.009質量%(90ppm)が特に好ましい。
【0029】
<塩基性化合物(B)>
本実施形態の洗浄液は、前記ヒドラジン化合物(A)以外のアミン、及び第4級水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性化合物(B)(以下、「(B)成分」ともいう)を含有する。(B)成分により、洗浄液のpHを高くすることができ、洗浄性が向上する。
【0030】
≪第4級水酸化物:(B1)成分≫
(B)成分は、第4級水酸化物(以下、「(B1)成分」ともいう)であってもよい。(B1)成分としては、下記一般式(b1)で表される化合物が挙げられる。
【0031】
【化4】
[式中、Rb
1~Rb
4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基を表し;Zは、窒素原子又はリン原子を表す。]
【0032】
前記式(b1)中、Rb1~Rb4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基を表す。
Rb1~Rb4における置換基を有してもよい炭化水素基は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基であってもよく、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であってもよい。前記脂肪族炭化水素基としては、前記式(a1)中のR1及びR2で挙げたものと同様のものが挙げられる。前記芳香族炭化水素基としては、前記式(a1)中のR1及びR2で挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0033】
Rb1~Rb4における炭化水素基は、置換基を有してもよい。前記置換基としては、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシ基が挙げられる。
【0034】
Rb1~Rb4は、置換基を有してもよい脂肪族炭化水素基が好ましく、置換基を有してもよい直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、直鎖状若しくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基、直鎖状若しくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基、又は水素原子がさらに好ましい。前記直鎖状のヒドロキシアルキル基又は直鎖状のアルキル基は、炭素原子数1~6が好ましく、炭素原子数1~3がより好ましく、炭素原子数1又は2がさらに好ましい。前記分岐鎖状のヒドロキシアルキル基又は直鎖状のアルキル基は、炭素原子数3~6が好ましく、炭素原子数3がより好ましい。
【0035】
前記式(b1)中、Zは、窒素原子又はリン原子を表す。
【0036】
(B1)成分が第4級アミンの水酸化物である場合、具体例としては、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、ジメチルビス(2-ヒドロキエチル)アンモニウムヒドロキシド(DMEMAH)、トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド(THEMAH)、コリン、ジメチルジエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエタノールアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリブチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0037】
(B1)成分が第4級ホスホニウムの水酸化物である場合、具体例としては、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラプロピルホスホニウムヒドロキシド、テトラエチルホスホニウムヒドロキシド、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラフェニルホスホニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、エチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、プロピルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、アリルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ドデシルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、テトラデシルトリフェニルホスホニウムヒドキシド、ヘキサデシルトリフェニルホスホニウムヒドロキシド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0038】
(B1)成分としては、TEAH、TMAH、DMEMAH,THEMAH、コリン、及びテトラブチルホスホニウムヒドロキシドが好ましい。
【0039】
≪(A)成分以外のアミン:(B2)成分≫
(B)成分は、(A)成分以外のアミン(以下、「(B2)成分」ともいう)であってもよい。但し、前記(B1)成分に該当すものは、(B2)成分から除かれる。(B2)成分としては、アンモニア、第1級モノアミン、第2級モノアミン、第3級モノアミン、水酸化物以外の第4級アンモニウム塩、第2級環状アミン、第3級環状アミン、第4級環状アミン、第1級アルカノールアミン、第2級アルカノールアミン、第3級アルカノールアミン、ジアミン、ポリアミン等が挙げられる。(B2)成分のアミンとしては、塩基性を示すものであれば、特に限定されないが、水溶性アミンが好ましい。(B2)成分は、水溶液中で塩基性を示すものが好ましい。(B2)成分は、水溶性等の観点から、脂肪族アミンが好ましい。
【0040】
第1級モノアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、n-ブチルアミン、イソプロピルアミン、tert-ブチルアミン等のアルキルアミン;シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロヘキサンメチルアミン等のシクロアルキルアミン;メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシプロピルアミン、プロポキシプロピルアミン等のアルコキシアミン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
第2級モノアミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ブチルメチルアミン等のアルキルアミン;N,N-ジシクロヘキシルアミン、N-シクロペンチルシクロヘキサンアミン等のシクロアルキルアミン;メトキシ(メチルアミン)、N-(2-メトキシエチル)エチルアミン等のアルコキシアミン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
第3級モノアミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、ジメチル-n-ブチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン等のアルキルアミン;トリシクロペンチルアミン、トリシクロヘキシルアミン等のシクロアルキルアミン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
第4級アンモニウム塩としては、第4級アンモニウムのフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、酢酸塩等が挙げられる。第4級アンモニウムカチオンとしては、前記式(b1)のカチオン部と同様のものが挙げられる。第4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラプロピルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、テトラプロピルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラメチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、テトラブチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムヨージド、テトラエチルアンモニウム硫酸水素塩、テトラメチルアンモニウム硫酸水素塩、テトラプロピルアンモニウム硫酸水素塩、テトラブチルアンモニウム硫酸水素塩、テトラプロピルアンモニウム硫酸水素塩、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
第2級環状アミンとしては、ピペリジン類(ピペリジン骨格を有する化合物)、ピロリジン類(ピロリジン骨格を有する化合物)、モルホリン類(モルホリン骨格を有する化合物)等が挙げられる。第2級環状アミンであるピペリジン類としては、ピペリジン、2-ピペコリン、3-ピペコリン、4-ピペコリン、2,6-ジメチルピペリジン、3,5-ジメチルピペリジン等が挙げられる。ピロリジン類としては、ピロリジン、2-メチルピロリジン、3-メチルピロリジン等が挙げられる。モルホリン類としては、モルホリン、2-メチルモルホリン、3-メチルモルホリン等が挙げられる。
【0045】
第3級環状アミンとしては、ピペリジン類、ピロリジン類、モルホリン類等が挙げられる。ピペリジン類としては、N-メチルピペリジン等が挙げられる。ピロリジン類としては、N-メチルピロリジン等が挙げられる。モルホリン類としては、N-メチルモルホリン等が挙げられる。
【0046】
第4級環状アミンとしては、ピペリジン類、ピロリジン類、モルホリン類等のフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、酢酸塩等が挙げられる。
【0047】
第1級アルカノールアミンとしては、メタノールアミン、2-アミノエタノール、1-アミノ-2-プロパノール、2-アミノ-1-プロパノール、4-アミノ-1-ブタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
第2級アルカノールとしては、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-メチルプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、2-[(ヒドロキシメチル)アミノ]エタノール、4-メチルアミノブタノール、3-ピペリジンメタノール、4-ピペリジンメタノール、2-ピペリジンエタノール、4-ピペリジンエタノール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
第3級アルカノールとしては、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルプロパノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
ジアミンは、第1級ジアミン、第2級ジアミン、及び第3級ジアミンのいずれであってもよい。第1級ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ブタン1,4-ジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、ペンタン-1,5-ジアミン等が挙げられるが、これらに限定されない。第2級ジアミンとしては、2-メチルピペラジン、2,3-ジメチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、N,N'-ジメチルエタンジアミン、N,N'-ジメチルプロパンジアミン、N,N'-ジエチルエチレンジアミン、N,N'-ジエチルプロパンジアミン、N,N'-ジイソプロピルエチレンジアミン等が挙げられるが、これらに限定されない。第3級ジアミンとしては、4-ジメチルアミノピリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノプロパン、N,N,N’,N’-テトラメチル-1,3-ジアミノブタン、N’,N’-テトラメチル-1,4-ジアミノブタン、N,N,N’,N’-テトラメチルフェニレンジアミン、1,2-ジピペリジノエタン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
ポリアミンは、3個以上のアミノ基を含む化合物である。ポリアミンは、第1級アミノ基、第2級アミノ基、及び第3級アミノ基のいずれを含んでいてもよい。ポリアミンとしては、スペルミン、スペルミジン、3,3'-イミノビス(プロピルアミン)、N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)ブチルアミン、N-(3-アミノプロピル)-N-ドデシルプロパン-1,3-ジアミン、N,N,N'-,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジプロピレントリアミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、2-アミノメチルピリミジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、1-アミノ-4-シクロペンチルピペラジン、1-(2-ピリジル)ピペラジン等が挙げられる。
【0052】
(B2)成分は、第3級アミン、第2級アミン、及び第1級アミンのいずれでもよいが、第3級アミン又は第2級アミンが好ましく、第3級アミンがより好ましい。(B2)成分は、モノアミンが好ましく、第3級モノアミン又は第3級アルカノールアミンがより好ましく、第3級脂肪族モノアミン又は第3級アルカノールアミンがさらに好ましく、酸化膜の除去量の調整の点で第3級脂肪族モノアミンが特に好ましく、除去後の清浄性が良好な点で第3級アルカノールアミンが特に好ましい。
【0053】
(B)成分は、(B1)成分、又は第3級アミンが好ましく、(B1)成分、第3級モノアミン、又は第3級アルカノールアミンがより好ましく、(B1)成分、第3級脂肪族モノアミン、又は第3級アルカノールアミンがさらに好ましく、(B1)成分が特に好ましい。
【0054】
(B)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の洗浄液における(B)成分の含有量は、特に限定されないが、洗浄液の全質量に対し、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、4質量%、3質量%以下、又は2質量%以下が特に好ましい。(B)成分の含有量の下限値は、特に限定されないが、洗浄液の全質量に対し、0.001質量%以上が挙げられ、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上がさらに好ましく、0.03質量%以上、又は0.05質量%以上が特に好ましい。(B)成分の含有量が前記好ましい下限値以上であると、洗浄液のpHを高く維持しやすい。(B)成分の含有量が前記好ましい上限値以下であると、他の成分とのバランスが取りやすくなる。
本実施形態の洗浄液における(B)成分の含有量の範囲としては、洗浄液の全質量に対し、0.001質量%~10質量%が挙げられ、0.002質量%~5質量%が好ましく、0.01質量%~3質量%がさらに好ましく、0.02質量%~2.0質量%、又は0.03質量%~1.5質量%が特に好ましい。
【0055】
本実施形態の洗浄液は、(B2)成分を含有すれば、(B1)成分を含有しなくてもよい。本実施形態の洗浄液は、(B1)成分を1種含有すれば、他の(B1)成分は含有しなくてもよい。本実施形態の洗浄液は、例えば、第4級水酸化物の具体例として例示した前記化合物の1種以上を含有しなくてもよい。
【0056】
本実施形態の洗浄液は、(B1)成分を含有すれば、(B2)成分を含有しなくてもよい。本実施形態の洗浄液は、(B2)成分を1種含有すれば、他の(B2)成分を含有しなくてもよい。本実施形態の洗浄液は、例えば、第1級モノアミン、第2級モノアミン、第3級モノアミン、第4級アンモニウム塩、第2級環状アミン、第3級環状アミン、第4級環状アミン、第1級アルカノールアミン、第2級アルカノールアミン、第3級アルカノールアミン、ジアミン、及びポリアミンからなる群より選択される1種以上を含有しなくてもよい。本実施形態の洗浄液は、例えば、これらのアミンの具体例として例示した前記化合物の1種以上を含有しなくてもよい。本実施形態の洗浄液は、例えば、第1級芳香族モノアミン、第2級芳香族モノアミン、第3級芳香族モノアミン、第4級芳香族アンモニウム塩、第1級アミノフェノール、第2級アミノフェノール、第3級アミノフェノール、芳香族ジアミン、及び芳香族ポリアミンからなる群より選択される1種以上を含有しなくてもよい。
【0057】
<任意成分>
本実施形態の洗浄液は、上記(A)成分及び(B)成分に加えて、任意成分を含んでもよい。任意成分としては、ヒドロキシカルボン酸、水、水溶性有機溶剤、界面活性剤、防食剤等が挙げられる。
【0058】
≪ヒドロキシカルボン酸(C)≫
本実施形態の洗浄液は、ヒドロキシカルボン酸(C)(以下、「(C)成分」ともいう)を含有してもよい。(C)成分により、洗浄液の洗浄性が向上する。
【0059】
ヒドロキシカルボン酸は、ヒドロキシ基とカルボキシ基とを含む化合物である。本明細書において、ヒドロキシカルボン酸とは、ヒドロキシ基、カルボキシ基、及び炭化水素基からなる化合物を意味する。ヒドロキシカルボン酸は、ヒドロキシ基、及びカルボキシ基以外の官能基を有さず、水素原子、酸素原子、及び炭素原子以外の原子を含まない。ヒドロキシカルボン酸は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸であってもよく、芳香族ヒドロキシカルボン酸であってもよいが、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、グルコン酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、グルクロン酸、グルカル酸、ラクトビオン酸、N-アセチルノイラミン酸、N-グライコリルノイラミン酸、デアミノノイラミン酸等が挙げられる。
【0060】
ヒドロキシカルボン酸は、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましく、グルコン酸、酒石酸、リンゴ酸、及びクエン酸がより好ましく、クエン酸、及びグルコン酸がさらに好ましい。
【0061】
(C)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の洗浄液が(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量は、特に限定されないが、洗浄液の全質量に対し、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、3質量%、2質量%以下、1質量%以下、0.8質量%以下、0.6質量%以下、又は0.5質量%以下が特に好ましい。(C)成分の含有量の下限値は、特に限定されないが、洗浄液の全質量に対し、0.001質量%以上が挙げられ、0.005質量%以上が好ましく、0.01質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上がさらに好ましく、0.03質量%以上、又は0.1質量%以上が特に好ましい。(C)成分の含有量が前記好ましい下限値以上であると、洗浄性がより向上する。(C)成分の含有量が前記好ましい上限値以下であると、他の成分とのバランスが取りやすくなる。
本実施形態の洗浄液における(C)成分の含有量の範囲としては、洗浄液の全質量に対し、0.001質量%~10質量%が挙げられ、0.005質量%~5質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がさらに好ましく、0.02質量%~0.8質量%、又は0.03質量%~0.5質量%が特に好ましい。
本実施形態の洗浄液は、ヒドロキシカルボン酸を含有しなくてもよく、ヒドロキシカルボン酸の具体例として例示した前記化合物の1種以上を含有しなくてもよい。
【0062】
≪水≫
本実施形態の洗浄液は、溶媒として水を含有することが好ましい。水は、不可避的に混入する微量成分を含んでいてもよい。本実施形態の洗浄液に用いられる水は、蒸留水、イオン交換水、及び超純水などの浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に一般的に使用される超純水を用いることがより好ましい。
【0063】
本実施形態の洗浄液中の水の含有量は、特に限定されないが、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、97質量%以上が特に好ましい。本実施形態の洗浄液中の水の含有量の上限値は、特に限定はされないが、99.95質量%未満が好ましく、99.9質量%以下がより好ましく、99.7質量%以下がより好ましく、99.4質量%以下がより好ましい。
【0064】
≪防食剤:(D)≫
本実施形態の洗浄液は、防食剤を含有してもよい。
防食剤としては、例えば、トリアゾール環、イミダゾール環、ピリジン環、フェナントロリン環、テトラゾール環、ピラゾール環、ピリミジン環、プリン環等の含窒素複素環を含む化合物が挙げられる。
【0065】
トリアゾール環を含む化合物としては、例えば、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、3-アミノ-1H-1,2,4-トリアゾール、1-アセチル-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン、1,2,4-トリアゾロ[4,3-a]ピリジン-3(2H)-オン、3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-3-オールなどのトリアゾール類;1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、2,3-ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾール、4-ヒドロキシベンゾトリアゾール、4-カルボキシル-1H-ベンゾトリアゾール、4-カルボキシル-1H-ベンゾトリアゾールメチルエステル、4-カルボキシル-1H-ベンゾトリアゾールブチルエステル、4-カルボキシル-1H-ベンゾトリアゾールオクチルエステル、5-ヘキシルベンゾトリアゾール、[1,2,3-ベンゾトリアゾリル-1-メチル][1,2,4-トリアゾリル-1-メチル][2-エチルヘキシル]アミン、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール、ビス[(1-ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸、3-アミノトリアゾールなどのベンゾトリアゾール類等が挙げられる。
【0066】
イミダゾール環を含む化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2、4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-アミノイミダゾール、ベンゾイミダゾールなどのイミダゾール類;2,2’-ビイミダゾールなどのビイミダゾール類等が挙げられる。中でも、ビイミダゾール類が好ましく、2,2’-ビイミダゾールがより好ましい。
【0067】
ピリジン環を含む化合物としては、例えば、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン、1-アセチル-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、3-ヒドロキシピリジン、4-ヒドロキシピリジン、2-アセトアミドピリジン、4-ピロリジノピリジン、2-シアノピリジン、2,6-ピリジンカルボン酸、2,4,6-トリメチルピリジンなどのピリジン類;2,2’-ビピリジル、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジル、4,4-ジノニル-2,2-ビピリジル、2,2”-ビピリジン-6,6’-ジカルボン酸、4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジルなどのビピリジル類等が挙げられる。中でも、ビピリジル類が好ましく、2,2’-ビピリジル、4,4’-ジメチル-2,2’-ビピリジル、4,4’-ジ-tert-ブチル-2,2’-ビピリジル、4,4-ジノニル-2,2-ビピリジル、2,2”-ビピリジン-6,6’-ジカルボン酸、4,4’-ジメトキシ-2,2’-ビピリジルがより好ましい。
【0068】
フェナントロリン環を含む化合物としては、例えば、1,10-フェナントロリン等が挙げられる。
【0069】
テトラゾール環を含む化合物としては、例えば、1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、1-(2-ジアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール等が挙げられる。
【0070】
ピラゾール環を含む化合物としては、例えば、3,5-ジメチルピラゾール、3-アミノ-5-メチルピラゾール、4-メチルピラゾール、3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール等が挙げられる。
【0071】
ピリミジン環を含む化合物としては、例えば、ピリミジン、4-メチルピリミジン、1,2,4-トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン、1,3,4,6,7,8-ヘキサハイドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、1,3-ジフェニル-ピリミジン-2,4,6-トリオン、1,4,5,6-テトラハイドロピリミジン、2,4,5,6-テトラアミノピリミジンサルフェイト、2,4,5-トリハイドロキシピリミジン、2,4,6-トリアミノピリミジン、2,4,6-トリクロロピリミジン、2,4,6-トリメトキシピリミジン、2,4,6-トリフェニルピリミジン、2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシピリミジン、2,4-ジアミノピリミジン、2-アセトアミドピリミジン、2-アミノピリミジン、2-メチル-5,7-ジフェニル-(1,2,4)トリアゾロ(1,5-a)ピリミジン、2-メチルサルファニル-5,7-ジフェニル-(1,2,4)トリアゾロ(1,5-a)ピリミジン、2-メチルサルファニル-5,7-ジフェニル-4,7-ジヒドロ-(1,2,4)トリアゾロ(1,5-a)ピリミジン、4-アミノピラゾロ[3,4-d]ピリミジン等が挙げられる。
【0072】
プリン環を含む化合物としては、アデニン、グアニン、ヒポキサンチン、キサンチン、尿酸、テオフィリン等が挙げられる。
【0073】
防食剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の洗浄液が防食剤を含有する場合、防食剤の含有量は、特に限定されないが、洗浄液の全質量に対し、0.0001~0.2質量%(1~2000ppm)が好ましく、0.0003~0.1質量%(3~1000ppm)がより好ましく、0.0005~0.05質量%(5~500ppm)がさらに好ましく、0.001~0.03質量%(10~300ppm)が特に好ましい。
【0074】
本実施形態の洗浄液は、トリアゾール環を含む化合物、イミダゾール環を含む化合物、ピリジン環を含む化合物、フェナントロリン環を含む化合物、テトラゾール環を含む化合物、ピラゾール環を含む化合物、ピリミジン環を含む化合物、及びプリン環を含む化合物からなる群より選択される1種以上を含有しなくてもよく、防食剤の具体例として例示した前記化合物の1種以上を含有しなくてもよい。本実施形態の洗浄液は、防食剤を含有しなくてもよい。
【0075】
≪緩衝剤:(E)≫
本実施形態の洗浄液は、緩衝剤を含有してもよい。緩衝剤は、溶液のpHの変化を抑制する作用を有する化合物である。
緩衝剤は、pH緩衝能を有する化合物であれば、特に限定されない。緩衝剤は、例えば、pKaが6~11の化合物を用いることができる。
緩衝剤としては、例えば、グッド緩衝剤が挙げられる。グッド緩衝剤としては、2-シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸(CHES)、3-シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(CAPS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、4-(シクロヘキシルアミノ)-1-ブタンスルホン酸(CABS)、トリシン、ビシン、2-モルホリノエタンスルホン酸一水和物(MES)、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-Tris)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-(2-ヒドロキシプロパン-3-スルホン酸)(HEPSO)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)等が挙げられる。
【0076】
緩衝剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の洗浄液が緩衝剤を含有する場合、緩衝剤の含有量は、特に限定されないが、洗浄液の全質量に対し、0.001質量%~10質量%が挙げられ、0.005質量%~5質量%が好ましく、0.01質量%~1質量%がさらに好ましく、0.05質量%~0.5質量%、又は0.05質量%~0.3質量%が特に好ましい。
【0077】
本実施形態の洗浄液は、緩衝剤を含有しなくてもよく、緩衝剤の具体例として例示した前記化合物の1種以上を含有しなくてもよい。
【0078】
≪有機溶剤≫
本実施形態の洗浄液は、本発明の効果を損なわない範囲で、有機溶剤を含有ししてもよい。有機溶剤は、水溶性有機溶剤が好ましい。水溶性有機溶剤としては、アルコール類(例えば、イソプロパノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、フルフリルアルコール、及び2-メチルー2,4-ペンタンジオール等)、ジメチルスルホキシド、エーテル類(例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル)等が挙げられる。
【0079】
水溶性有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の洗浄液が水溶性有機溶剤を含有する場合、水溶性有機溶剤の含有量は、水の量と水溶性有機溶剤の量との合計に対して50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
本実施形態の洗浄液は、有機溶剤又は水溶性有機溶剤を含有しなくてもよく、水溶性有機溶剤の具体例として例示した前記化合物の1種以上を含有しなくてもよい。
【0080】
≪界面活性剤≫
本実施形態の洗浄液は、基板に対する洗浄液の濡れ性の調整の目的等のために、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0081】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤等が挙げられる。
【0082】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、脂肪酸アミドスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルプロピオン酸、アルキルホスホン酸、脂肪酸の塩等が挙げられる。「塩」としてはアンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、テトラメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0083】
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルピリジウム系界面活性剤等が挙げられる。第4級アンモニウム塩系界面活性剤は、上記(B2)成分として用いられてもよい。
【0084】
両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤、アミンオキサイド型界面活性剤等が挙げられる。
【0085】
これらの界面活性剤は一般に商業的に入手可能である。界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の洗浄液が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、洗浄液の全質量に対し、0.0001~5質量%が好ましく、0.001~3質量%がより好ましく、0.002~1質量%がさらに好ましく、0.002~0.2質量%が特に好ましい。界面活性剤の含有量が前記好ましい範囲であると、発泡剤により発生する気泡が緻密になりやすくなる。
【0086】
本実施形態の洗浄液は、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選択される1種以上を含有しなくてもよく、これらの界面活性剤として例示した前記化合物の1種以上を含有しなくてもよい。本実施形態の洗浄液は、界面活性剤を含有しなくてもよい。
【0087】
≪不純物等≫
本実施形態の洗浄液には、例えば、Fe原子、Cr原子、Ni原子、Zn原子、Ca原子、又はPb原子等の金属原子を含む金属不純物が含まれていてもよい。本実施形態の洗浄液における前記金属原子の合計含有量は、洗浄液の全質量に対し、好ましくは100質量ppt以下である。金属原子の合計含有量の下限値は、低いほど好ましいが、例えば、0.001質量ppt以上が挙げられる。金属原子の合計含有量は、例えば、0.001質量ppt~100質量pptが挙げられる。金属原子の合計含有量を前記好ましい上限値以下とすることで、洗浄液の欠陥抑制性や残渣抑制性が向上する。金属原子の合計含有量を前記好ましい下限値以上とすることで、金属原子が系中に遊離して存在しにくくなり、洗浄対象物全体の製造歩留まりに悪影響を与えにくくなると考えられる。
金属不純物の含有量は、例えば、フィルタリング等の精製処理により調整することができる。フィルタリング等の精製処理は、洗浄液を調製する前に、原料の一部又は全部に対して行ってもよく、洗浄液の調製後に行ってもよい。
【0088】
本実施形態の洗浄液には、例えば、有機物由来の不純物(有機不純物)が含まれていてもよい。本実施形態の洗浄液における前記有機不純物の合計含有量は、好ましくは、5000質量ppm以下である。有機不純物の含有量の下限は、低いほど好ましいが、例えば0.1質量ppm以上が挙げられる。有機不純物の合計含有量としては、例えば、0.1質量ppm~5000質量ppmが挙げられる。
【0089】
本実施形態の洗浄液には、例えば、光散乱式液中粒子計数器によって計数されるようなサイズの被計数体が含まれていてもよい。被計数体のサイズは、例えば、0.04μm以上である。本実施形態の洗浄液における被計数体の数は、例えば、洗浄液1mLあたり1,000個以下であり、下限値は例えば1個以上である。洗浄液中の被計数体の数が前記範囲内であることにより、洗浄液による金属腐食抑制効果が向上すると考えられる。
【0090】
前記有機不純物及び/又は被計数体は、洗浄液に添加されてもよく、洗浄液の製造工程において不可避的に洗浄液に混入されるものであってもよい。洗浄液の製造工程において不可避的に混入される場合としては、例えば、有機不純物が、洗浄液の製造に用いる原料(例えば、有機溶剤)に含まれる場合、及び、洗浄液の製造工程で外部環境から混入する(例えば、コンタミネーション)場合等が挙げられるが、上記に制限されない。
被計数体を洗浄液に添加する場合、洗浄対象物の表面粗さ等を考慮して特定のサイズごとに存在比を調整してもよい。
【0091】
<pH>
本実施形態の洗浄液のpHは、8以上13以下が好ましい。洗浄液のpHは、pH9以上が好ましく、pH10以上がより好ましく、pH11以上がさらに好ましい。洗浄液のpHは、pH14以下が好ましく、pH13.5以下がさらに好ましい。洗浄液のpHの範囲としては、pH8~pH13.5が好ましく、pH9~13.0がより好ましい。
前記pHの値は、常温(23℃)、常圧(1気圧)の条件下において、pHメーターにより測定される値である。
【0092】
<保存容器>
本実施形態の洗浄液の保存方法は、特に限定されず、保存容器も従来公知のものを使用できる。洗浄液の安定性が確保されるように、容器に保存する際の容器内の空隙率、及び/又は空隙部分を充填するガス種は適宜設定すればよい。例えば、保管容器内の空隙率としては、0.01~30体積%程度が挙げられる。
【0093】
本実施形態の洗浄液は、使用時に、洗浄液を2~2000倍に希釈して希釈液を得た後、前記希釈液を用いて洗浄工程を実施してもよい。
【0094】
一実施形態において、洗浄液は、ヒドラジド化合物、エチレンオキサイド含化合物、プロピレンオキサイド含化合物、アルキレンオキサイド含化合物、フッ素化合物、糖類、糖アルコール類、カテコール類、無機アルカリ化合物、アルコール、グリセリン、グリセリン誘導体、アスコルビン酸、カルボヒドラジド、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ヒドロキシアミン、ジエチルヒドロキシアミン、ジメチルグリオキシム、メチルエチルケトオキシム、亜硫酸アンモニウム、カルボン酸類、ポリホスホン酸類、アリールホスホン酸類、前記化合物のアンモニウム塩、アルカリ金属塩、飽和脂肪族1価アルコール、アルコキシアルコール、グリコール、グリコールエーテル、ケトン、ニトリル、アミノポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、プリン、アゾール、ピリミジン、チアゾール、チアゾリノン、ポリフェノール、バルビツール酸誘導体、研磨剤、及びシッフ塩基からなる群より選択される1種以上を含有しなくてもよい。
【0095】
<基板>
本実施形態の洗浄液が適用される基板は、ルテニウムを含有する第1の金属原子含有層とルテニウム以外の金属原子(以下、「非ルテニウム金属」ともいう)を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板である。前記基板では、第1の金属原子含有層及び第2の金属原子含有層の少なくとも一方が、表面に露出している。
【0096】
第1の金属原子含有層は、ルテニウム原子を含有する。第1の金属原子含有層が含有するルテニウム原子は、ルテニウムの単体でもよく、ルテニウムの合金でもよく、ルテニウム化合物でもよい。ルテニウム化合物としては、例えば、ルテニウムの酸化物、ルテニウムの窒化物、ルテニウムの酸窒化物等が挙げられる。第1の金属原子含有層におけるルテニウムの含有量は、第1の金属原子含有層を形成する組成物の全質量に対して、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。第1の金属原子含有層は、公知の方法で形成することができ、例えば、CVD、ALD、PVD等を用いることができる。
【0097】
第2の金属原子含有層は、非ルテニウム金属を含有する。第2の金属原子含有層が含有する非ルテニウム金属は、非ルテニウム金属の単体でもよく、非ルテニウム金属の合金でもよく、非ルテニウム金属化合物でもよい。非ルテニウム金属化合物としては、例えば、非ルテニウム金属の酸化物、非ルテニウム金属の窒化物、非ルテニウム金属の酸窒化物等が挙げられる。第2金属含有層は、第2の金属原子含有層が含有する金属原子としては、例えば、卑金属の金属原子が挙げられる。本明細書において、卑金属とは、銅、鉄、ニッケル、アルミニウム、鉛、亜鉛、スズ、タングステン、モリブデン、タンタル、マグネシウム、コバルト、ビスマス、カドミウム、チタン、ジルコニウム、アンチモン、マンガン、ベリリウム、クロム、ゲルマニウム、バナジウム、ガリウム、ハフニウム、インジウム、ニオブ、レニウム、及びタリウムを意味する。第2の金属原子含有層が含有する非ルテニウム金属としては、卑金属の単体、卑金属の合金、卑金属の酸化物、卑金属の窒化物、卑金属の酸窒化物が挙げられる。
第2の金属原子含有層の形成材料の具体例としては、銅、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)が挙げられる。第2の金属原子含有層は、公知の方法で形成することができ、例えば、メッキ、CVD、ALD、PVD等を用いることができる。
【0098】
基板において、第1の金属原子含有層及び第2の金属原子含有層の少なくとも一方は、表面に露出している。第1の金属原子含有層及び第2の金属原子含有層のいずれか一方のみが露出していてもよく、両方が露出してもよい。
基板において、第1の金属原子含有層と第2の金属原子含有層とは、接触して存在している。第1の金属原子含有層と第2の金属原子含有層とは、少なくとも一部が接触していればよい。第1の金属原子含有層と第2の金属原子含有層とは、少なくとも一方の金属原子含有層が露出している部分で接触していることが好ましい。第1の金属原子含有層と第2の金属原子含有層とは、隣接して存在していることが好ましい。
【0099】
図1Aに、本実施形態の洗浄液が適用される基板の一例を示す。
図1Aに示す基板1は、例えば、配線層のCMP後の基板である。基板1では、Low-k層30に、配線層20が形成されている。配線層20の下層には、配線層20に隣接してライナー層10が形成されている。
図1Bに示すように、ライナー層10の下層に、ライナー層10に隣接してバリア層11が形成されていてもよい。
【0100】
基板1において、第1の金属原子含有層は、ライナー層10であってもよく、配線層20であってもよい。第1の金属原子含有層がライナー層10である場合、第2の金属原子含有層が配線層20となる。第1の金属原子含有層が配線層20である場合、第2の金属原子含有層がライナー層10となる。
第1の金属原子含有層がライナー層10である場合、第2の金属原子含有層は銅を含むことが好ましい。例えば、第1の金属原子含有層は、ルテニウム含有ライナー層10であり、第2の金属原子含有層は、銅含有配線層20である。バリア層11を有する場合、バリア層11は、TiN又はTaNを含有してもよい。第1の金属含有層は、バリア層11であってもよい。この場合、ライナー層10は省略されてもよい。例えば、第1の金属含有層はルテニウム含有バリア層であってもよい。
第1の金属原子含有層が配線層20である場合、第2の金属原子含有層はTiN又はTaNを含むことが好ましい。例えば、第1の金属原子含有層は、ルテニウムを形成材料とする配線層20であり、第2の金属原子含有層は、TiN又はTaNを形成材料とするライナー層10である。
【0101】
基板1では、ルテニウムを含む第1の金属原子含有層と、非ルテニウム金属を含む第2の金属含有層とが、隣接して表面に露出している。基板1を洗浄液で洗浄すると、洗浄液との接触により、金属に腐食電位が生じる。第1の金属原子含有層に含まれるルテニウムは、従来の洗浄液では腐食電位が高くなり、第2の金属原子含有層に含まれる非ルテニウム金属との間の腐食電位差が大きくなる。これにより、第1の金属原子含有層と第2の金属原子含有層との境界面においてガルバニック腐食が発生する。
ガルバニック腐食とは、電解液のような腐食環境下で異なる金属が接触し電子伝導したときに、片方の金属の腐食が促進される現象である。ガルバニック腐食は、2種の金属と環境との間で腐食電池が形成されることで生じる。
【0102】
一方、本実施形態の洗浄液では、ルテニウムの腐食電位が高くなりすぎず、非ルテニウム金属との腐食電位差が低減される。そのため、基板1のように、第1の金属原子含有層と第2の金属原子含有層とが隣接して存在する基板を洗浄しても、ガルバニック腐食の発生が抑制される。
【0103】
図2A及び
図2Bは、本実施形態の洗浄液が適用される基板の別の例である。
図2に示す基板100は、例えば、デュアルダマシンプロセスにより、配線層120に接続するビア140及びトレンチ150が形成された後の基板である。ビア140を形成するLow-k層130の下層(配線層120と隣接するライナー層110の上層)にはエッチストップ層が含まれていてもよい(図示せず)。基板100では、Low-k層130に、配線層120が形成されている。配線層120の下層には、配線層120に隣接してライナー層110が形成されている。ライナー層110の下層には、ライナー層110に隣接してバリア層が形成されていてもよい。デュアルダマシンとは、ビアと溝(トレンチ)とを形成しておき、成膜によりビアと溝とに同時に金属の埋め込みを行い、次いで研磨により余分な体積部分を除去することで、ビアと溝との埋め込みを同時に行う方法である。
【0104】
基板100において、第1の金属原子含有層は、ライナー層110であってもよく、配線層120であってもよい。第1の金属原子含有層がライナー層110である場合、第2の金属原子含有層が配線層120となる。第1の金属原子含有層が配線層120である場合、第2の金属原子含有層がライナー層110となる。ライナー層110及び配線層120の形成材料としては、前記
図1Aの基板1と同様のものが挙げられる。基板100がバリア層を有する場合、ライナー層110は省略されてもよい。バリア層の形成材料としては、
図1Bの基板1’と同様のものが挙げられる。
【0105】
基板100では、ビア140は、配線層120上に形成されており、配線層120は露出しているが、ライナー層110は露出していない。
しかし、ビア形成の過程においてビアのアライメントずれが生じ、
図2Bに示す基板100’のように、ライナー層110が露出する場合がある。基板100’のようにライナー層110と配線層120とが露出している場合、従来の洗浄液で洗浄すると、第1の金属原子層に含まれるルテニウムと、第2の金属原子層に含まれる非ルテニウム金属との腐食電位差により、ライナー層110と配線層120との境界面でガルバニック腐食が発生する。一方、本実施形態の洗浄液では、ルテニウムと非ルテニウム金属との腐食電位差が低減されるため、ガルバニック腐食の発生が抑制される。
ビア形成後の洗浄では、ビアのアライメントずれにより、配線層120とともにライナー層110が露出している可能性がある。本実施形態の洗浄液を用いることにより、ビアノアライメントずれが生じていたとしても、ガルバニック腐食の発生を抑制することができる。
【0106】
CMP後又はビア形成後の基板では、これらの処理により発生した金属削り屑等の不純物が基板に付着している。そのような金属削り屑には、金属、金属酸化物が含まれている。例えば、基板が銅配線層を含む場合、不純物は、銅酸化物(CuOx)を含む。本実施形態の洗浄液を用いることにより、これらの不純物を基板表面から効率よく除去することができる。
【0107】
本実施形態の洗浄液によれば、ヒドラジン化合物(A)と、塩基性化合物(B)とを含有することにより、ルテニウムと非ルテニウム金属が接触して存在する基板の洗浄においても、ガルバニック腐食の発生を抑制しつつ、第1の金属原子含有層と第2の金属原子含有層に由来する金属及び/又は金属酸化物等の残渣(ドライエッチングやCMP等の工程で生じる残渣)を効率よく除去することができる。本実施形態の洗浄液では、ヒドラジン化合物(A)により、ルテニウムの腐食電位の上昇が抑制され、非ルテニウム金属との腐食電位差が低減される。これにより、ガルバニック腐食の発生が抑制されると考えられる。また、(B)成分を含有することで、洗浄液のpHが適切に維持され、上記の残渣(特に金属酸化物残渣)に対する洗浄性が良好になると考えられる。
【0108】
(第2の態様:洗浄液)
本発明の第2の態様にかかる洗浄液は、前記一般式(a1)で表される化合物、前記化合物の水和物、及び前記化合物の塩からなる群より選択される少なくとも1種のヒドラジン化合物(A)と、前記ヒドラジン化合物(A)以外のアミン、及び第4級水酸化物からなる群より選択される少なくとも1種の塩基性化合物(B)と、を含む。
本態様にかかる洗浄液は、貴金属原子を含有する第1の金属原子含有層と卑金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板であって、前記第1の金属原子含有層及び前記第2の金属原子含有層の少なくとも一方が表面に露出した基板を洗浄するために用いられる。
【0109】
本実施形態の洗浄液の組成は、第1の態様の洗浄液と同様である。
【0110】
<基板>
本実施形態の洗浄液が適用される基板は、貴金属原子を含有する第1の金属原子含有層と卑金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板である。前記基板では、第1の金属原子含有層及び前記第2の金属原子含有層の少なくとも一方が、表面に露出している。
【0111】
第1の金属原子含有層は、貴金属原子を含有する。本明細書において、貴金属とは、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及びレニウム(Re)を意味する。第1の金属原子含有層が含有する貴金属原子は、貴金属の単体でもよく、貴金属の合金でもよく、貴金属化合物でもよい。貴金属化合物としては、例えば、貴金属の酸化物、貴金属の窒化物、貴金属の酸窒化物等が挙げられる。第1の金属原子含有層における貴金属の含有量は、第1の金属原子含有層を形成する組成物の全質量に対して、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、100質量%であってもよい。第1の金属原子含有層は、公知の方法で形成することができ、例えば、CVD、ALD,PVD等を用いることができる。
【0112】
第2の金属原子含有層は、卑金属原子を含有する。第2の金属原子含有層が含有する卑金属原子は、卑金属の単体でもよく、卑金属の合金でもよく卑金属化合物でもよい。卑金属化合物としては、例えば、卑金属の酸化物、卑金属の窒化物、卑金属の酸窒化物等が挙げられる。
【0113】
本実施形態の洗浄液が適用される基板は、第1の金属原子含有層が貴金属原子を含有し、第2の金属原子含有層が卑金属原子を含有すること以外は、上記第1態様の洗浄液の説明で例示した基板と同様である。
【0114】
第1の金属原子含有層と第2の金属原子含有層とが接触して存在する場合、従来の洗浄液で基板を洗浄すると、貴金属の腐食電位が高くなり、卑金属との腐食電位差が大きくなる。これにより、第1の金属原子含有層と第2の金属原子含有層との境界面においてガルバニック腐食が発生する。
一方、本実施形態の洗浄液では、貴金属の腐食電位が高くなりすぎず、卑金属との腐食電位差が低減される。そのため、基板1のように、金属原子含有層と第2の金属原子含有層とが隣接して存在する基板を洗浄しても、ガルバニック腐食の発生が抑制される。
【0115】
本実施形態の洗浄液によれば、ヒドラジン化合物(A)と、塩基性化合物(B)とを含有することにより、貴金属と卑金属とが接触して存在する基板の洗浄においても、ガルバニック腐食の発生を抑制しつつ、第1の金属原子含有層と第2の金属原子含有層に由来する金属及び/又は金属酸化物等の残渣(ドライエッチングやCMP等の工程で生じる残渣)を効率よく除去することができる。本実施形態の洗浄液では、ヒドラジン化合物(A)により、貴金属の腐食電位の上昇が抑制され、卑金属との腐食電位差が低減される。これにより、ガルバニック腐食の発生が抑制されると考えられる。また、(B)成分を含有することで、洗浄液のpHが適切に維持され、上記の残渣(特に金属酸化物残渣)に対する洗浄性が良好になると考えられる。
【0116】
(基板の洗浄方法:第3態様)
第3の態様にかかる基板の洗浄方法は、前記第1の態様にかかる洗浄液を用いて、基板を洗浄する工程を含む。前記基板は、ルテニウム原子を含有する第1の金属含有層とルテニウム以外の金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板である。前記基板では、第1の金属原子含有層及び第2の金属原子含有層の少なくとも一方が、表面に露出している。
【0117】
<基板を洗浄する工程:洗浄工程>
本工程は、第1の態様にかかる処理液を用いて基板を洗浄する工程である。本工程は、洗浄液を基板に接触させる操作を含む。洗浄方法の方法は、特に限定されず、公知の洗浄方法を用いることができる。かかる方法としては、例えば、一定速度で回転している基板上に洗浄液を吐出し続ける方法(枚葉洗浄法)、洗浄液中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に洗浄液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0118】
洗浄処理を行う温度は、特に限定されない。洗浄処理の温度としては、例えば、15~60℃が挙げられる。処理液の温度を高くすることで、洗浄性能は向上するが、洗浄液の組成変化を小さく抑えること、及び作業性、安全性、コスト等を考慮し、適宜、洗浄液の温度を選択することができる。
【0119】
洗浄時間は、基板表面の不純物、残渣等の除去に十分な時間を適宜選択することができる。洗浄時間としては、例えば、10秒~30分、10秒~15分、10秒~10秒、又は10秒~5分が挙げられる。
【0120】
第1の態様にかかる洗浄液は、使用時に、2~2000倍に希釈して希釈液を得てもよい。本工程において、前記希釈液を使用して基板を洗浄してもよい。
【0121】
<基板>
洗浄対象の基板は、第1の態様にかかる洗浄液の適用対象として説明したものと同様のものが挙げられる。基板は、配線層のCMP後の基板(例えば、
図1)であってもよい。基板は、デュアルダマシンプロセスにより、配線層に接続するビアが形成された後の基板(例えば、
図2A,
図2B)であってもよい。
【0122】
<任意工程>
本実施形態の方法は、上記洗浄工程に加えて、任意工程を含んでもよい。任意工程としては、例えば、CMP工程、ビア形成工程、コンタクト形成工程等が挙げられる。
【0123】
(CMP工程)
本実施形態の方法は、前記洗浄工程の前に、CMP工程を含んでもよい。CMP工程は、基板にCMP処理を施す工程である。CMP工程を行うことにより、基板の表面が平坦化される。CMP工程は、基板上に、ライナー層及び配線層を成膜したのち、配線層を平坦化するために行うことができる。
例えば、基板にLow-k層を成膜し、Low-k層にトレンチとビアを形成する。次いで、ライナー層を成膜し、次いで、配線層を成膜する。次いで、CMPにより、基板表面を平坦化する。CMP後の基板には、第1及び/又は第2の金属原子含有層に由来する金属の酸化物等を含む削り屑が付着しているが、前記洗浄工程を行うことにより、ガルバニック腐食の発生を抑制しつつ、削り屑を除去することができる。
【0124】
(ビア形成工程)
本実施形態の方法は、前記洗浄工程の前に、ビア形成工程を含んでもよい。ビアは、例えば、配線層に接続するように形成することができる。ビアの形成は、デュアルダマシンプロセスにおいて行ってもよい。
例えば、ライナー層及び配線層が形成された基板に対し、Low-k層を成膜する。Low-k層の下層には、SiCN、SiCO又はAl2O3等を含むエッチストップ層が形成されていてもよい。次いで、Low-k層に配線層に接続するビアを形成する。ビアは、例えば、ドライエッチング又はウェットエッチング等により形成することができる。ビア形成後の基板には、第1及び/又は第2の金属原子含有層に由来する金属の酸化物等、エッチストップ層又はLow-k層由来のエッチング残渣等が付着しているが、前記洗浄工程を行うことにより、ガルバニック腐食の発生を抑制しつつ、削り屑(残渣)を除去することができる。
ビア形成工程では、ビアと共にトレンチを形成してもよい。前記洗浄工程は、デュアルダマシンプロセスにおいて、ビア及びトレンチが形成された後の基板に対して行ってもよい。
【0125】
本実施形態の方法によれば、前記第1の態様にかかる洗浄液を用いて基板を洗浄するため、ルテニウムと非ルテニウム金属が隣接して存在する場合であっても、両金属間の腐食電位差を低減し、ガルバニック腐食の発生を抑制し、良好な洗浄性を保持することができる。
【0126】
(基板の洗浄方法:第4態様)
第4の態様にかかる基板の洗浄方法は、前記第2の態様にかかる洗浄液を用いて、基板を洗浄する工程を含む。前記基板は、貴金属原子を含有する第1の金属含有層と卑金属原子を含有する第2の金属原子含有層とが接触して存在する基板である。前記基板では、第1の金属原子含有層及び第2の金属原子含有層の少なくとも一方が、表面に露出している。
【0127】
<基板を洗浄する工程>
本工程は、第2の態様にかかる処理液を用いて基板を洗浄する工程である。本工程は、前記第3の態様にかかる基板の洗浄方法と同様に行うことができる。
【0128】
<任意工程>
本実施形態の方法は、上記洗浄工程に加えて、任意工程を含んでもよい。任意工程としては、例えば、CMP工程、ビア形成工程、コンタクト形成工程等が挙げられる。これらの方法は、前記第3態様にかかる基板の洗浄方法において説明した方法と同様に行うことができる。
【0129】
<基板>
洗浄対象の基板は、第2の態様にかかる洗浄液の適用対象として説明したものと同様のものが挙げられる。基板は、配線層のCMP後の基板(例えば、
図1)であってもよい。基板は、デュアルダマシンプロセスにより、配線層に接続するビアが形成された後の基板(例えば、
図2A,
図2B)であってもよい。
【0130】
本実施形態の方法によれば、前記第2の態様にかかる洗浄液を用いて基板を洗浄するため、貴金属と卑金属が隣接して存在する場合であっても、両金属間の腐食電位差を低減し、ガルバニック腐食の発生を抑制し、良好な洗浄性を保持することができる。
【実施例0131】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0132】
<洗浄液の調製>
(実施例1~24、比較例1~5)
表1~3に示す各成分を水に溶解し、各例の洗浄液を調製した。
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
表1~3中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は洗浄液の全質量に対する質量%を示す。
<ヒドラジン化合物(A)>
(A)-1:2-ヒドラジノエタノール。
(A)-2:ヒドラジン一水和物。
(A)-3:t-ブチルヒドラジン塩酸塩。
【0137】
【0138】
<第4級水酸化物(B1)>
(B1)-1:テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)。
(B1)-2:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)。
(B1)-3:トリス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムヒドロキシド(THEMAH)。
(B1)-4:コリン。
(B1)-5:テトラブチルホスホニウムヒドロキシド。
【0139】
【0140】
<アミン(B2)>
(B2)-1:トリエタノールアミン。
(B2)-2:ジエタノールアミン。
(B2)-3:ブチルアミン。
(B2)-4:トリエチルアミン。
【0141】
【0142】
<ヒドロキシカルボン酸(C)>
(C)-1:クエン酸。
(C)-2:グルコン酸。
【0143】
【0144】
<防食剤(D)>
(D)-1:トリアゾール。
(D)-2:ベンゾトリアゾール(BTA)。
(D)-3:アデニン。
(D)-4:3-アミノ-1,2,4-トリアゾール。
【0145】
【0146】
<緩衝剤(E)>
(E)-1:ビシン。
(E)-2:2-シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸(CHES)。
(E)-3:トリシン。
【0147】
【0148】
[腐食電位(ΔEcorr)の評価]
基板には、12インチシリコン基板上にPVD法によるルテニウム膜(60nm)又は8インチシリコン基板上にPVD法により銅膜(30nm)を成膜した基板を用いた。ポテンショスタット(GAMRY社製のR600+)を用いて、各例の洗浄液中での基板のTafel plotを測定し、腐食電位(Ecorr)を求めた。ポテンショスタットの電極には、参照電極(Ag/AgCl)、対電極(Pt)、作用電極(基板)を使用した。下記式により、腐食電位差(ΔEcorr)を算出した。
ΔEcorr=(銅基板のEcorr)-(ルテニウム基板のEcorr)
【0149】
以下の評価基準で評価し、その結果を「腐食電位差(ΔEcorr)」として、表4~6に示した。
評価基準:
A:-100~100mV
B:100mV超
C:-100mV未満
【0150】
[洗浄性の評価]
洗浄性は、CuOxのエッチングレートとして評価した。基板には、8インチシリコン基板上にPVD法により銅膜(30nm)を成膜した基板を用いた。基板を5質量%の過酸化水素水に浸漬し、室温で、10分間撹拌した。この処理により、銅を銅酸化物(CuOx)に酸化させた。次いで、基板を取り出して水洗し、窒素ブローで乾燥した。洗浄処理は、基板を1.5×2cmに切断して作製したクーポンにより行った。200mLビーカーに、各例の洗浄液100mLを入れ、クーポンを浸漬した。クーポンの浸漬中、室温、300rpmで撹拌した。3分間浸漬した後、クーポンを取出して水洗し、窒素ブローで乾燥した。
X線電子分光装置(Rigaku社製PrimusIV)を用いて、X線電子分光法(XPS)により、過酸化水素処理前及び洗浄処理後の銅膜厚を測定した。洗浄処理による銅膜厚の減少量を算出し、CuOxエッチングレート(A/min)として表4~6に示した。
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
表4~6の結果から、実施例1~24の洗浄液では、腐食電位差が十分に低減されることが確認された。一方、比較例1~5の洗浄液では、腐食電位差が大きかった。
実施例1~24の洗浄液は、洗浄性も維持されていることが確認された。