IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特開2023-98565管理装置、生産システム、抽出方法およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098565
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】管理装置、生産システム、抽出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/379 20170101AFI20230703BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230703BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230703BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20230703BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20230703BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230703BHJP
   B22F 10/14 20210101ALI20230703BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20230703BHJP
   B22F 10/80 20210101ALI20230703BHJP
   B22F 12/90 20210101ALI20230703BHJP
【FI】
B29C64/379
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/20
B29C64/393
B33Y50/02
B22F10/14
B22F10/28
B22F10/80
B22F12/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022106795
(22)【出願日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2021213901
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100110607
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 進也
(72)【発明者】
【氏名】面▲高▼ 克彦
(72)【発明者】
【氏名】進藤 秀規
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AM14
4F213AM23
4F213AP11
4F213AQ01
4F213WA22
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL45
4F213WW39
4F213WW45
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】 許容範囲外となる構造物であっても廃棄せず、有効利用することを可能にする装置、システム、方法およびプログラムを提供すること。
【解決手段】 管理装置15は、少なくとも造形装置で造形された造形物を含む複数の構造物を管理する装置であり、造形装置で造形された複数の構造物の中から、構造物の形状情報に基づいて、2以上の構造物の組み合わせを抽出する抽出手段41を含む。また、管理装置15は、造形された複数の構造物を測定する測定装置から、形状情報として、測定装置の測定結果を取得する取得手段40を含む。
【選択図】 図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも造形装置で造形された造形物を含む複数の構造物を管理する管理装置であって、
前記複数の構造物の中から、前記構造物の形状情報に基づいて、2以上の構造物の組み合わせを抽出する抽出手段を含む、管理装置。
【請求項2】
前記構造物を測定する測定装置から、前記形状情報として、該測定装置の測定結果を取得する取得手段を含む、請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記測定結果を保持するデータ保持手段を含み、
前記抽出手段は、前記データ保持手段が保持する前記測定結果に基づき、前記2以上の構造物の組み合わせを抽出する、請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記複数の構造物のそれぞれを識別する識別手段を含み、
前記取得手段は、前記識別手段により識別された構造物を測定装置により測定した測定結果を、該構造物を識別する識別情報とともに取得する、請求項2に記載の管理装置。
【請求項5】
前記測定結果に基づき、前記構造物が所定の基準を満たしているか否かを判定する判定手段を含み、
前記判定手段が、前記各構造物につき累積した判定結果に基づき、造形エリアの変更を指示する、請求項4に記載の管理装置。
【請求項6】
前記判定手段が、前記所定の基準を満たしていないと判定した構造物を造形した造形エリアを、造形データを作成するシステムに対し、造形エリアの対象外とするように指示する、請求項5に記載の管理装置。
【請求項7】
前記判定手段が、前記所定の基準を満たしていないと判定した構造物を造形した造形エリアを、前記造形装置の表示部に対し、造形エリアの対象外として表示するように指示する、請求項5に記載の管理装置。
【請求項8】
前記測定結果に基づき、前記構造物が所定の基準を満たしているか否かを判定する判定手段を含み、
前記判定手段が、前記各構造物につき累積した判定結果に基づき、前記造形装置を含む生産システムのメンテナンスを実行するか否かを判定する、請求項4に記載の管理装置。
【請求項9】
前記測定結果に基づき、前記構造物が所定の基準を満たしているか否かを判定する判定手段を含み、
前記判定手段が、前記各構造物につき累積した判定結果に基づき、性能が高い構造物を製造可能なエリアを判定する、請求項4に記載の管理装置。
【請求項10】
前記測定結果に基づき、前記構造物が所定の基準を満たしているか否かを判定する判定手段と、
前記所定の基準を満たしていないと判定された不要な構造物を測定した測定結果を品質データとして収集する品質データ処理手段と
を含む、請求項4に記載の管理装置。
【請求項11】
前記識別手段は、前記造形装置により造形された後に焼結装置により焼結された構造物を識別する、請求項4に記載の管理装置。
【請求項12】
前記抽出手段は、前記複数の構造物として、複数の第1の構造物および複数の第2の構造物のそれぞれの測定結果に含まれる1以上の特徴点の情報に基づき、所定の条件に適合する第1の構造物と第2の構造物の組み合わせを抽出する、請求項4に記載の管理装置。
【請求項13】
前記複数の構造物のうち、第1の構造物の測定結果に含まれる1以上の特徴点の分布を算出する分布算出手段と、
算出された前記分布に第2の構造物の1以上の特徴点の分布を適合させるように、前記造形装置を含む生産システムが前記構造物を製造するために使用するパラメータを最適化するパラメータ判定手段と
を含む、請求項12に記載の管理装置。
【請求項14】
前記分布算出手段は、前記第1の構造物の測定結果として、前記造形装置により造形された第1の構造物を測定した測定結果、もしくは前記造形装置により造形された後に焼結装置により焼結された第1の構造物を測定した測定結果のいずれかに含まれる1以上の特徴点の情報を使用する、請求項13に記載の管理装置。
【請求項15】
前記複数の構造物のうち、第1の構造物の測定結果に含まれる1以上の特徴点の分布を算出する分布算出手段と、
算出された前記分布に第2の構造物の1以上の特徴点の分布を適合させるように、前記造形装置が前記第2の構造物を造形するために使用する造形データを最適化する演算手段と
を含む、請求項12に記載の管理装置。
【請求項16】
前記分布算出手段は、前記第1の構造物の測定結果として、前記造形装置により造形された第1の構造物を測定した測定結果、もしくは前記造形装置により造形された後に焼結装置により焼結された第1の構造物を測定した測定結果のいずれかに含まれる1以上の特徴点の情報を使用する、請求項15に記載の管理装置。
【請求項17】
前記抽出手段は、前記測定結果として、前記造形装置により造形された構造物を測定した結果、もしくは前記造形装置により造形された後に焼結装置により焼結された構造物を測定した結果のいずれかに含まれる1以上の特徴点の情報を用いて、前記組み合わせを抽出する、請求項12に記載の管理装置。
【請求項18】
前記造形装置の造形のシミュレーションを実行する演算手段を含み、
前記抽出手段は、前記演算手段のシミュレーション結果に基づき、所定の条件に適合する第1の構造物と第2の構造物の組み合わせを抽出する、請求項1に記載の管理装置。
【請求項19】
前記演算手段は、造形された複数の構造物の測定結果と、造形後に焼結された複数の構造物の測定結果とを収集し、収集された前記測定結果に基づき、前記シミュレーションを実行する、請求項18に記載の管理装置。
【請求項20】
前記第1の構造物と前記第2の構造物を組み合わせて製品としての締結構造物を製造する場合の該締結構造物の少なくとも一部をラティス構造とし、前記締結構造物の前記ラティス構造を有する部分の1以上の特徴点を測定した締結構造物測定結果と、前記締結構造物が締結される締結対象構造物の、前記ラティス構造を有する部分に当接する締結箇所の1以上の特徴点を測定した締結対象構造物測定結果と、前記締結構造物と前記締結対象構造物を締結した後の少なくとも強度を測定した締結測定結果とを対応付けた複数の締結情報を保持するデータ保持手段と、
前記複数の締結情報と、入力された締結対象構造物の締結箇所の1以上の特徴点の測定結果とに基づき、入力された前記締結対象構造物に締結させる締結構造物を決定する演算手段と
を含む、請求項12に記載の管理装置。
【請求項21】
前記演算手段は、前記複数の締結情報と、入力された締結対象構造物の締結箇所の1以上の特徴点の測定結果と、入力された締結条件とに基づき、入力された前記締結対象構造物に締結させる締結構造物を決定する、請求項20に記載の管理装置。
【請求項22】
造形物を造形する造形装置と、少なくとも前記造形装置により造形された前記造形物を含む2以上の構造物の組み合わせに係る情報を管理する請求項1~21のいずれか1項に記載の管理装置とを含む、生産システム。
【請求項23】
前記管理装置が管理する前記2以上の構造物の組み合わせに係る情報を出力する出力装置を含む、請求項22に記載の生産システム。
【請求項24】
2以上の構造物の組み合わせをコンピュータにより抽出する方法であって、
少なくとも造形装置で造形された造形物を含む複数の構造物の中から、前記構造物の形状情報に基づいて、前記2以上の構造物の組み合わせを抽出するステップ
を含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造形装置により造形される構造物を管理する管理装置、該管理装置を含む生産システム、2以上の構造物の組み合わせを抽出する方法およびその抽出する処理をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
造形装置としての3Dプリンタは、様々な三次元形状を有する構造物を造形することができる。しかしながら、造形された複数の構造物が全て設計通りの形状や寸法にはならない。
【0003】
構造物として造形物をより忠実に再現する目的で、造形物の表面形状の情報を読み取り、読み取った表面形状の情報に基づき、内部構造の情報を含む造形物情報を検索するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のシステムは、より忠実に再現することで、許容範囲外となる構造物を削減することができるが、許容範囲外となった構造物は廃棄せざるを得ないという問題があった。
【0005】
本発明は上述した課題を解決するものであり、許容範囲外となる構造物であっても廃棄せず、有効利用することを可能にする装置、システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、少なくとも造形装置で造形された造形物を含む複数の構造物を管理する管理装置であって、
複数の構造物の中から、構造物の形状情報に基づいて、2以上の構造物の組み合わせを抽出する抽出手段
を含む、管理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、許容範囲外となる構造物であっても廃棄せず、有効利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】生産システムの構成例を示した図。
図2】測定装置と管理装置の接続例を示した図。
図3】生産システムを使用して製品を製造する作業フローの一例を示した図。
図4】造形エリアの変更について説明する図。
図5】造形エリアを変更する処理の流れを示したフローチャート。
図6】造形エリア変更によるメンテナンスの実行について説明する図。
図7】造形エリア変更によるメンテナンスの実行の流れを示したフローチャート。
図8】精度が高い構造物が造形されるエリアを判定する処理について説明する図。
図9】精度が高い構造物が造形されるエリアを判定する処理の流れを示したフローチャート。
図10】不要な構造物から品質データを取得する処理について説明する図。
図11】不要な構造物から品質データを取得する処理の流れを示したフローチャート。
図12】従来の2つの構造物を組み合わせて製品を製造する例を示した図。
図13】管理装置のハードウェア構成の一例を示した図。
図14】管理装置の機能構成の一例を示したブロック図。
図15】管理装置が備える演算手段の構成例を示したブロック図。
図16】管理装置により実行される処理の一例を示したフローチャート。
図17】管理装置で2つの構造物の組み合わせを抽出し、抽出した組み合わせに基づき製品を製造する第1の例を示した図。
図18】管理装置で2つの構造物の組み合わせを抽出し、抽出した組み合わせに基づき製品を製造する第2の例を示した図。
図19】管理装置で2つの構造物の組み合わせを抽出し、抽出した組み合わせに基づき製品を製造する第3の例を示した図。
図20】各装置のパラメータを管理装置が最適化する処理について説明する図。
図21】管理装置が造形データを最適化する処理について説明する図。
図22】焼結前後の測定結果を用いて造形データを最適化する処理について説明する図。
図23】管理装置で2つの構造物の組み合わせを抽出し、抽出した組み合わせに基づき製品を製造する第4の例を示した図。
図24】管理装置で2つの構造物の組み合わせを抽出し、抽出した組み合わせに基づき製品を製造する第5の例を示した図。
図25】2つの構造物の組み合わせを抽出する第1の方法について説明する図。
図26】2つの構造物の組み合わせの結果の出力について説明する図。
図27】2つの構造物の組み合わせを抽出する第2の方法について説明する図。
図28】2つの構造物の組み合わせを抽出する第3の方法について説明する図。
図29】組み合わせに係る2つの構造物のうちの一方をラティス構造とし、締結構造物として製造される製品を、締結対象構造物に応じて決定する第1の方法について説明する図。
図30】締結構造物としてのブラインドリベットについて説明する図。
図31】ブラインドリベットの一部をラティス構造とし、締結対象構造物を穴が形成された板とし、ブラインドリベットを板に締結している様子を示した図。
図32】締結構造物としてのバネ付きネジを、締結対象構造物としての板に締結している様子を示した図。
図33】組み合わせに係る2つの構造物のうちの一方をラティス構造とし、締結構造物として製造される製品を、締結対象構造物に応じて決定する第2の方法について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について実施形態をもって説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。
【0010】
図1は、生産システムの構成例を示した図である。図1の生産システムは、造形装置10、情報処理装置11、乾燥装置12、余剰粉除去装置13、脱脂・焼結装置14、管理装置15、測定装置16およびネットワーク17を少なくとも含む。図1に示す生産システムは、少なくとも造形装置10で構造物として造形物を造形し、造形された造形物を含む複数の構造物の中から、構造物の形状情報に基づいて、2以上の構造物の組み合わせを抽出し、抽出した組み合わせに基づき、2以上の構造物を組み合わせて製品を製造するシステムである。ここで、構造物は、生産システムにより造形された三次元形状を有する構造物であり、一例として、造形装置で造形途中、乾燥後、余剰粉除去後、脱脂後、焼結後のいずれの段階のものも含む。造形された構造物は、例えば何らかの部品であり、製品は、種類が異なる2以上の構造物を組み合わせて製造されるものとして適宜説明する。
【0011】
生産システムは、製品を製造するために組み合わされる2種類以上の造形物としての構造物を造形する造形装置10と、造形装置10に対して各構造物を造形するためのデータを作成するための情報処理装置11とを含む。情報処理装置11は、ソフトウェアとして設計ツールを実装し、三次元形状の形状データとしてデータを作成する。設計ツールは、使用する粉体や造形液の種類等の設計条件の入力を可能とし、入力された設計条件に基づき、データを作成することができる。設計ツールは、データを作成することができるソフトウェアであれば、いかなるソフトウェアであってもよい。
【0012】
造形装置10は、情報処理装置11と通信を行い、情報処理装置11から受信したデータに基づき、複数の構造物を造形する。1つのデータに基づき一度に造形される複数の構造物は、1種類の複数の構造物であってもよいし、組み合わせに係る2種類以上の複数の構造物であってもよい。
【0013】
造形装置10としては、選択的にレーザーを照射するSLS(Selective Laser Sintering)方式、電子線を照射するEBM(Electron Beam Melting)方式、造形液を塗布するBJ(Binder Jetting)方式等の3Dプリンタを用いることができる。図1では、BJ方式の造形装置10を用いている例について説明するが、造形装置10の方式はBJ方式以外の方式も適用可能である。
【0014】
BJ方式の造形装置10では、所定の厚さの粉体を含む層を1層分形成し、吐出ノズルから当該層の表面の所定位置に造形液を吐出することを繰り返し、複数の層が積層した積層物を形成する。積層物は、乾燥することにより固化物が形成される。固化物には粉体が余剰粉として付着しており、固化物から余剰粉が除去される。固化物は、粉体間の隙間に造形液が介在し、粉体同士を単に造形液で接着しただけの状態であり、グリーン体と呼ばれる。グリーン体は、強度が低いことから、造形液の樹脂成分を揮発させて除去することにより粉体間の距離を縮めて密にし、焼き固めることにより強度を向上させる。
【0015】
このことから、生産システムは、積層物を乾燥させる乾燥装置12、余剰粉を除去する余剰粉除去装置13、造形液の樹脂成分を揮発させて除去し、焼き固める脱脂・焼結装置14を含む。乾燥装置12、脱脂・焼結装置14は、ヒータ等の加熱手段を含む。余剰粉除去装置13は、余剰粉を除去できれば、篩を用いる方法、刷毛で払い落す方法、遠心分離による方法等のいずれの方法を用いたものであってもよい。
【0016】
管理装置15は、造形された構造物の形状情報に基づき、2以上の構造物の組み合わせを抽出し、その組み合わせに係る情報を記憶して構造物を管理する。測定装置16は、構造物の形状情報を取得するため、造形された構造物の各寸法等を測定する。測定装置16は、カメラ、3Dスキャナ、ノギス、ハイトゲージ、定規、表面粗さ計、三次元測定機、超音波測定装置、CT(Computed tomography)、X線装置、密度測定器等である。測定装置16で測定された形状情報には、画像、対象物の二次元、三次元座標、メッシュ情報、点群、表面粗さ、内部欠陥、密度等が含まれる。
【0017】
一例として、3Dスキャナの説明をする。3Dスキャナは、接触式と非接触式がある。接触式は、センサーや探針を構造物に接触させ、接触した位置の座標を取得する。精度の高い形状情報を取得できる。
【0018】
非接触式は、パターン光投影方式とレーザー光線方式がある。パターン光投影方式は、パターンを構造物に投影する。そして、構造物の凹凸によるパターンの歪みを認識し、スキャナから構造物までの距離を計測して座標を取得する。一度にスキャンできる面積が広いので、全体のスキャンにかかる時間を短縮できる。また、比較的ノイズの少ない形状情報を取得できる。
【0019】
レーザー光線方式は、レーザー光線を構造物に投影する。座標を取得する方式は、三角法、タイムオブフライト、および位相差がある。
【0020】
三角法は、構造物に照射したレーザー光線の反射光をセンサーで識別する。そして、三角法によって距離を求めて座標を取得する。タイムオブフライトは、構造物に照射したレーザー光線の反射光が、センサーに到達するまでの時間から距離を求めて座標を取得する。位相差は、構造物に波長の異なるレーザー光線を照射し、反射光の位相差から距離を求めて座標を取得する。レーザー光線方式は、大きさを問わず、スキャンが可能である。
【0021】
管理装置15は、測定装置16により測定された測定結果に基づき、2以上の構造物の組み合わせを抽出する。
【0022】
管理装置15は、一度に複数造形される構造物のそれぞれを識別するため、造形から焼結までの各構造物を監視する。各構造物には、識別情報(ID等)が付与される。識別情報は、構造物が特定できるように一意に付与されていればよく、その手段は問わない。例えば、構造物の表面に識別情報が形成されるようにデータに付与することができる。これにより、造形から焼結までの間、カメラ等で撮影した構造物表面の識別情報により各構造物を識別することができる。また、造形から余剰粉を除去するまでは、各装置内の位置により各構造物を識別し、余剰粉除去後、構造物表面に手書きやラベルを貼付する等して識別情報を付与し、各構造物を識別してもよい。
【0023】
管理装置15は、抽出した組み合わせに係る情報を、付与された識別情報を用いて管理する。組み合わせに係る情報を用いて2以上の構造物を組み立てることにより、一定の品質を満たす製品を製造することができる。図1に示す例では、2種類の構造物が製造され、一方の構造物内に他方の構造物を挿入して製品を製造している。
【0024】
管理装置15は、情報処理装置11、測定装置16とともにネットワーク17に接続され、情報処理装置11や測定装置16と通信を行うことができる。これにより、管理装置15は、測定装置16から測定結果を、ネットワーク17を介して受信することができ、シミュレーションを行った場合、シミュレーション結果を情報処理装置11へ送信することができる。ネットワーク17は、有線、無線のいずれであってもよく、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等のいずれであってもよい。なお、ネットワーク17には、造形装置10が接続されていてもよい。
【0025】
図1は、複数の構造物として、1つの造形装置10で2以上の構造物を造形する例を説明したが、複数の造形装置10で2以上の構造物を造形してもよい。この場合、複数の造形装置10はそれぞれ同じ方式であってもよいし、異なる方式を組み合わせてもよい。
【0026】
また、造形装置10と他の装置を組み合わせて2以上の構造物を製造してもよい。他の装置とは、金型など造形装置10以外の装置を指す。造形装置10と同様に、他の装置はネットワーク17を介して情報処理装置11、管理装置15、および測定装置16と接続されている。他の装置で製造された構造物等はネットワーク17を介して接続されている情報処理装置11、管理装置15、および測定装置16でそれぞれ処理、管理、および測定される。他の装置は、情報処理装置11と通信を行い、情報処理装置11から受信したデータに基づき、複数の構造物を製造する。なお、他の装置はネットワーク17に接続されていなくてもよい。管理装置15は、他の装置で製造された構造物に識別情報を付与して管理する。また、測定装置16は、構造物の形状情報を取得するため、製造された構造物の各寸法等を測定する。
【0027】
管理装置15は、測定装置16により測定された測定結果に基づき、2以上の構造物の組み合わせを抽出する。造形装置10で造形された構造物以外にも、造形装置10で造形された構造物と他の装置で製造された構造物の組み合わせも抽出可能である。他の装置で製造された構造物の中から組み合わせを抽出することもできる。これにより、例えば、造形装置10とは異なる拠点にある他の装置で製造された構造物を輸送する場合、全ての構造物をトレースすることができるので、一定の品質を満たす製品を製造することができる。
【0028】
測定装置16により測定された測定結果は、図2(a)に示すように、測定装置16とネットワーク経由で接続された管理装置15で管理されてもよい。また、図2(b)に示すように、測定装置16と接続された処理装置18で測定結果を一次処理し、必要な形状情報等を管理装置15へ送り、管理してもよい。なお、エッジコンピュータとして処理装置18で一次処理を行い、送信する情報量を削減することで、帯域を圧迫せず、通信コストを削減することができる。
【0029】
図3は、生産システムを使用して、造形装置10が製品を製造する作業フローの一例を示した図である。ステップ100から開始し、ステップ101では、情報処理装置11がデータを作成する。データに基づき、造形対象の構造物を造形する場合、情報処理装置11は、作成したデータを造形装置10へ送信する。ステップ102では、造形装置10が受信したデータに基づき、構造物を造形する。
【0030】
造形装置10により造形された積層物としての構造物は、乾燥装置12へ送られ、ステップ103で乾燥される。乾燥後、余剰粉除去装置13へ送られ、ステップ104で余剰粉体が除去される。ステップ105では、余剰粉が除去されたグリーン体としての構造物を脱脂し、焼結する。ステップ106では、測定装置16により構造物の各寸法等を測定する。ステップ107では、管理装置15が、測定装置16の測定結果に基づき、造形された複数の構造物の中から、2以上の構造物の組み合わせを抽出する。ステップ108では、抽出した組み合わせを基に、構造物の組み合わせを決定し、ステップ109で作業を終了する。
【0031】
造形装置10の方式によっては、ステップ103、ステップ104、ステップ105は適宜省略可能である。ここでは、造形装置10で構造物を製造する場合について説明したが、他の装置で製造した構造物を測定、管理してもよい。この場合、ステップ106で他の装置で製造した構造物の各寸法等を測定する。
【0032】
構造物の各寸法等を測定した測定結果を参照すると、品質が所定の基準に満たない造形精度が低い造形エリアが存在する場合がある。造形精度が低い造形エリアで構造物を製造しても、品質を満たさない構造物は廃棄することになるので、材料が無駄になる。このような造形エリアは、次回の造形時に材料を配置できないように、造形エリアを変更することが望ましい。ここでは次回の造形時としているが、次回以降の造形時であってもよい。なお、次回以降とした場合、部品交換等により造形環境が変化した場合、造形エリアを変更し、再び全エリアで造形することができる。
【0033】
図4は、図3に示したステップ106以降の造形エリアの変更について説明する図である。ステップ106で取得した各寸法等の測定結果は、管理装置15もしくはデータ保持専用の装置等のデータ保持部70に保持され、累積される。管理装置15等の判定部71は、造形エリアによって造形精度が異なることから、累積された測定結果に基づき、造形エリアに対する造形品質が所定の基準を満たすか否か、すなわち一定以上の精度であり、合格か否かを判定する。例えば、実際に造形され、測定された径の寸法と、設計時の径の寸法の差が0.5mm以下であれば合格とした場合、図3に示す例では、測定結果(計測データ)のうちのX方向へ最も大きく、Y方向へ最も小さいエリアにある構造物が0.5mmを超え、不合格(NG)と判定されている。
【0034】
判定部71は、判定結果をCAM(Computer Aided Manufacturing)/CAD(Computer Aided Design)72へ送信し、造形エリアデータとして反映させる。CADは、三次元形状の形状データを作成するシステムで、CAMは、CADが作成した形状データから加工データを作成するシステムである。判定結果が反映されると、CAM/CAD72では、次回の造形時、判定結果で不合格となったエリアには、材料を配置することができなくなる。
【0035】
また、判定部71は、判定結果を次の造形時の造形エリアデータとして、造形装置10等の製造部73へ送信する。これにより、判定部71は、製造部73の表示部であるユーザーインターフェース(UI)74に対し、新たに造形エリアデータの対象外となった造形エリアの情報を表示させ、造形対象から外すように指示する。
【0036】
UI74に表示される造形エリアの情報は、色付けしたり、測定結果(数値)を表示したりして、品質が合格の他の造形エリアと区別可能に表示される。したがって、当該他の造形エリアと区別可能に表示できれば、色付け、数値の表示に限定されるものではない。
【0037】
図5は、造形エリアを変更する処理の流れを示したフローチャートである。ステップ106の構造物の寸法等を測定した後、ステップ106_1Aへ進み、データ保持部70に測定結果を保持し、蓄積する。ステップ106_2Aでは、造形された構造物の全数につき、測定結果を保持したかを判定し、保持していない場合、ステップ106へ戻り、保持した場合、ステップ106_3Aへ進む。
【0038】
ステップ106_3Aでは、各エリアで造形された構造物の造形品質が合格か否かを判定する。全て合格の場合、ステップ106_7Aへ進み、処理を終了する。一方、不合格の構造物がある場合、ステップ106_4Aへ進み、造形エリアを変更し、不合格の構造物が造形されたエリアを、造形エリアの対象外とするように指示する。ステップ106_5Aでは、造形データを作成するシステムとしてCAM/CAD72に造形エリアの変更を反映し、ステップ106_6Aでは、製造部73に造形エリアの変更を反映させる。ここでは、CAM/CAD72への反映に続いて、製造部73への反映を実行しているが、この順序に限定されるものではなく、製造部73への反映を先に実行してもよいし、CAM/CAD72への反映と、製造部73への反映を並行して実行してもよい。変更を反映させたところで、ステップ106_7Aへ進み、処理を終了する。
【0039】
図6は、造形エリア変更によるメンテナンスの実行について説明する図である。製造部73は、積層物の乾燥やグリーン体の焼結等のため、FAN75やヒータ76を備える。造形エリアに変更が生じる場合、FAN75やヒータ76の時系列劣化や各種駆動部品の状態変化により、造形環境に差異が生じている可能性が高い。このため、造形エリアを変更する場合、調整や部品交換等のメンテナンスを実行することができる。
【0040】
図7は、造形エリア変更によるメンテナンスの実行の流れを示したフローチャートである。ステップ106~ステップ106_3Bまでは、図5に示したステップ106~ステップ106_3Aまでの処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0041】
ステップ106_3Bで不合格の構造物があると判定された場合、ステップ106_4Bへ進み、異常ありで、製造部73のメンテナンスを実行すると判定し、ステップ106_5Bで、FAN75のメンテナンスを実行し、ステップ106_6Bで、ヒータ76のメンテナンスを実行する。なお、メンテナンスは、FAN75とヒータ76に限らず、造形に関わるその他の装置や部品についても行うことができる。また、メンテナンスの順序は、FAN75、ヒータ76の順に限定されるものではなく、ヒータ76、FAN75の順であってもよいし、FAN75、ヒータ76を並行して実施してもよい。メンテナンス後、ステップ106_7Bで処理を終了する。
【0042】
構造物の各寸法等を測定した測定結果を参照すると、造形品質が所定の基準を満たし、その精度が高い構造物が造形されるエリアも分かる。精度が高い構造物は、設計時の寸法と実際に造形した寸法がほぼ同じ構造物である。このような精度が高い構造物については、付加価値を付け、高級品として提供することができる。
【0043】
図8は、精度が高い構造物が造形されるエリアを判定する処理について説明する図である。測定装置16等の測定部77は、造形エリアに対する造形品質に必要な情報として、締結部の特徴点、剪断力、引張力等を測定する。測定結果は、データ保持部70に保持される。
【0044】
判定部71は、保持された測定結果に基づき、精度の高い構造物が造形されたエリアを判定する。判定部71は、判定結果を製造部73に送信し、製造部73のUI74等に構造物の色を変える等して表示するように指示する。
【0045】
図8に示す例では、設計時の径の寸法と、測定された径の寸法との差が、0.05mm未満で、小数点第2位以下が四捨五入されて0.0mmとされた構造物が造形されたエリアが、精度の高い構造物のエリアとして丸で囲んで表示されている。ここでは、径の寸法のみで判定しているが、これに限られるものではなく、長さ等のその他の要素で判定してもよいし、その他の要素を含めた複数の要素で判定してもよい。
【0046】
図9は、精度が高い構造物が造形されるエリアを判定する処理の流れを示したフローチャートである。ステップ106の構造物の寸法等を測定した後、ステップ106_1Cへ進み、造形エリアに対する造形品質を判定する。ステップ106_2Cでは、判定した造形品質の情報がデータ保持部70に保持される。ステップ106_3Cでは、N数の造形品質の情報が確保されたかを判定する。Nは、1以上の整数である。確保されていない場合、ステップ106へ戻る。
【0047】
ステップ106_3CでN数の造形品質の情報が確保された場合、ステップ106_4Cへ進み、精度の高い構造物のエリアがあるか否かを判定する。精度の高い構造物のエリアがある場合、ステップ106_5Cへ進み、測定結果とどのエリアの色を変えて表示するかを示す情報を、製造部73等へ送信し、製造部73のUI74等に対してその情報の表示を指示する。そして、ステップ106_6Cへ進み、処理を終了する。一方、精度の高い構造物のエリアがない場合、ステップ106_6Cへ直接進み、処理を終了する。
【0048】
判定部71は、測定結果に基づき、所定の基準を満たさない構造物が造形されたエリアを、造形エリアから外すために判定を行う。この判定において、所定の基準を満たさない構造物は、不要な構造物となる。また、所定の基準を満たす構造物であっても、組み合わせる相手方の構造物が同数存在しない場合、相手方の構造物の数を超えた分が余りとなり、不要な構造物となる。
【0049】
構造物の性能は、締結部の特徴点、剪断力、引張力等によって評価することができる。不要な構造物とは言え、性能評価できる部分が残っているのに、評価することなく廃棄してしまうのは、材料の無駄等につながる。不要な構造物を組み合わせて品質として問題のない製品を製造できる場合もあるからである。そこで、性能評価できる部分についてより多くの品質データを取得しておき、構造物の組み合わせの際に活用できるようにしておくことが望ましい。
【0050】
図10は、不要な構造物から品質データを取得する処理について説明する図である。判定部71は、測定結果からどの構造物が不要な構造物かを判定する。判定された不要な構造物は、図10中の表に示すように、中空円筒状の構造物の場合、形がNG、横(例えば幅や径)がNG、長さがNG、余りに分類される。円柱状の構造物が挿入される中空円筒状の構造物の性能は、締結部の特徴点、剪断力、引張力によって評価できる。剪断力は、図10中の表に示すように、矢線に示す方向に構造物の内部の面をずらすような力である。引張力は、図10中の表に示すように、矢線に示す方向に構造物を引っ張る力である。
【0051】
性能評価できる部分は、分類によって異なり、形や横がNGの場合、長さが設計時の長さとほぼ同じであるため、引張力が性能評価できる部分となる。長さがNGの場合、形状や径が設計時の形状や径とほぼ同じであるため、締結部の特徴点、剪断力が性能評価できる部分となる。余りの場合、形状や径に加えて、長さも設計時の形状等とほぼ同じであるため、締結部の特徴点、剪断力、引張力の全てが性能評価できる部分となる。
【0052】
測定部77は、不要な構造物につき、性能評価できる部分に対して測定を行う。例えば、ある不要な構造物が、性能評価できる部分が長さである場合、当該長さを測定する。
【0053】
管理装置15等の品質データ処理部78は、性能評価できる部分の測定結果を品質データとして取得し、取得した品質データを、各構造物に付与された識別情報と関連付け、データ保持部70に送信して保持(記憶)させる。
【0054】
図11は、不要な構造物から品質データを取得する処理の流れを示したフローチャートである。図11(a)に示すステップ106~ステップ106_3Dまでは、図9に示したステップ106~ステップ106_3Cまでの処理と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0055】
ステップ106_3DでN数の造形品質の情報が確保された場合、ステップ110へ進み、不要な構造物を用い、性能評価できる部分に対して測定を行う。具体的には、図11(b)に示すように、ステップ110_1で、締結部の特徴点の形状や寸法を測定し、ステップ110_2で、剪断力を測定し、ステップ110_3で、引張力を測定する。これは、特徴点、剪断力、引張力を全て測定する場合の例を示したもので、例えば形や横がNGの場合、図10中の表に示すように、ステップ110_3の引張力のみを測定することができる。
【0056】
再び図11(a)を参照して、ステップ111では、測定結果を品質データとして取得し、ステップ112で、データ保持部70に品質データを保持させ、ステップ113で、処理を終了する。品質データは、構造物に付与された識別情報が関連付けられ、保持される。
【0057】
再び図3を参照して、ステップ107で、造形装置10で造形された構造物と他の装置で製造された構造物の中から1以上の構造物の組み合わせを抽出する。そして、ステップ108では、抽出した組み合わせを基に、構造物の組み合わせを決定する。
【0058】
組み合わせに係る情報は、2以上の構造物を組み合わせて製品を製造する際に使用される。また、組み合わせに係る情報は、情報処理装置11においてどのようなデータを用いると、どのように変形するか、また、どのような構造物が造形されるかを予測するためのシミュレーションに利用することができる。
【0059】
粉体を用いる造形装置10で複数の構造物を一度に造形する場合、粉体を敷き詰めた層の厚さを全体にわたって一定にし、その密度を均一にすることは難しく、造形位置によって造形液の浸透の仕方が異なり、乾燥装置12等の各装置内の配置によって熱の伝わり方が異なる。このため、造形された複数の構造物が全て設計通りの形状や寸法にはならない。そこで、従来においては、許容範囲を設け、許容範囲内のものを、所定の基準を満たすものとして製品に使用し、許容範囲外のものは廃棄している。
【0060】
図12に示す例では、2種類以上の構造物として、中空円筒状の構造物Aと、構造物Aの中空部分に挿入される円柱状の構造物Bを造形し、構造物A内に構造物Bを挿入して製品を製造している。図12(a)に示すように、設計通りの形状で構造物Aと構造物Bが造形されると、いずれも断面がほぼ円形で、構造物Aの中空部分の径が構造物Bの径よりわずかに大きく、構造物A内に構造物Bを挿入して製品を製造することができる。
【0061】
一方、図12(b)の変形A’、変形A”変形B’、変形B”に示すように、許容範囲外の、指定された公差を超えて変形してしまうと、このように変形した構造物は使用不可となる。公差は、許容される範囲の最大値と最小値の差(許容差)である。構造物同士の組み合わせは、基本的に公差が厳しく設定されており、公差から外れてしまうと、製品に使用することはできず、使用不可の構造物は廃棄となる。
【0062】
図12(b)では、変形A’、A”は、中空部分の楕円形の断面の長軸方向と短軸方向の長さの差が公差を超えており、変形B’、B”は、楕円形の断面の長軸方向と短軸方向の長さの差が公差を超えている。
【0063】
図12(b)の変形A’と変形B’、変形A”と変形B”をそれぞれ比較すると、中空部分の楕円形の断面と楕円形の断面がそれぞれ同じ方向に変形し、その変形量がほぼ同じである。すると、変形A’内に変形B’を挿入することが可能で、変形A”内に変形B”を挿入することが可能である。これらが製品として提供するために必要とされる挿入長や挿入圧等の所定の条件を満たす場合、品質としては問題がないのに廃棄してしまうのは材料等の無駄になる。
【0064】
そこで、廃棄される構造物であっても、組み合わせる変形A’と変形B’、変形A”と変形B”の各寸法等を測定し、測定結果に基づき、品質として問題のない製品を製造するために用いることができる、これら2つの構造物の組み合わせを抽出できるように管理装置15を構成する。
【0065】
図13は、2つの構造物の組み合わせを抽出し、組み合わせに係る情報を記憶することにより造形された構造物を管理する管理装置15のハードウェア構成の一例を示した図である。管理装置15は、一般的なコンピュータと同様、CPU(Central Processing Unit)20、ROM(Read Only Memory)21、RAM(Random Access Memory)22、HD(Hard Disk)23、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ24を備える。また、管理装置15は、ディスプレイ25、外部機器接続I/F(Interface)26、ネットワークI/F27、データバス28、キーボード29、ポインティングデバイス30、DVD-RW(Digital Versatile Disk Rewritable)ドライブ31、メディアI/F32を備える。
【0066】
CPU20は、管理装置15全体の動作を制御する。ROM21は、IPL(Initial Program Loader)等のCPU20の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM22は、CPU20に対して作業領域を提供する。HD24は、プログラム等の各種データを記憶する。HDDコントローラ24は、CPU20の制御に従ってHD24に対する各種データの読み出し、または書き込みを制御する。ここでは、各種データを記憶する記憶装置としてHDDを使用しているが、これに限られるものではなく、SSD(Solid State Drive)等を使用してもよい。
【0067】
ディスプレイ25は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字または画像等の各種情報を表示する。外部機器接続I/F26は、各種の外部機器を接続するためのインターフェースである。この場合の外部機器は、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリやプリンタ等である。ネットワークI/F27は、通信ネットワークを利用してデータ通信をするためのインターフェースである。データバス28は、CPU20等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0068】
キーボード29は、文字、数値、各種指示等の入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。ポインティングデバイス30は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動等を行う入力手段の一種である。DVD-RWドライブ31は、着脱可能な記録媒体の一例としてのDVD-RW33に対する各種データの読み出し、または書き込みを制御する。なお、DVD-RWに限らず、DVD-R等であってもよい。メディアI/F32は、フラッシュメモリ等の記録メディア34に対するデータの読み出し、または書き込みを制御する。
【0069】
図14は、管理装置15の機能構成の一例を示したブロック図である。管理装置15は、取得手段40、抽出手段41、データ保持手段42、識別手段43、演算手段44、入力受付手段45を含む。これらの機能手段は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、処理回路とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようにプログラミングされたプロセッサや、各機能を実行するように設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0070】
取得手段40は、造形装置10で造形された構造物の形状情報として、測定装置16により測定された測定結果を取得する。また、他の装置で製造された構造物の形状情報として、測定装置16により測定された測定結果を取得する。抽出手段41は、取得手段40により取得された測定結果に基づき、複数の構造物の中から、組み合わせた場合に製品の品質を満たす2以上の構造物の組み合わせを抽出する。製品の品質を満たす場合、図11(b)に示す設計通りの構造物Aと構造物Bのほか、従来では廃棄の対象となっていた変形A’と変形B’、変形A”と変形B”を構造物の組み合わせとして抽出することができるようになる。
【0071】
測定結果は、1以上の特徴点の情報を含む。第1の構造物と第2の構造物を組み合わせる場合、抽出手段41は、造形された複数の第1の構造物と複数の第2の構造物のそれぞれの測定結果に含まれる1以上の特徴点の情報に基づき、所定の条件に適合する第1の構造物と第2の構造物の組み合わせを抽出することができる。
【0072】
なお、構造物1に対し、構造物2、構造物3のいずれの組み合わせも、所定の条件に適合し、製品の品質を満たす場合があり得る。このような場合、構造物2、構造物3のうち、より良い品質となる構造物(例えば構造物2)を採用し、構造物1と構造物2を最適な組み合わせとして抽出することができる。これは一例であり、例えば構造物1との比較において、最初に製品の品質を満たすと判断した構造物等を採用してもよい。
【0073】
データ保持手段42は、取得手段40により取得された測定結果を保持する。データ保持手段42は、複数の構造物の測定結果のほか、製品としての締結構造物の測定結果、締結構造物が締結される締結対象構造物の測定結果、締結の強度等の測定結果を対応付けた複数の締結情報を保持する。
【0074】
識別手段43は、造形装置10による造形開始から脱脂・焼結装置14による脱脂・焼結が完了するまでの各構造物を、カメラ等の撮像装置から取得した画像に基づき識別する。また、識別手段43は、他の装置で製造開始から終了までの各構造物を、カメラ等の撮像装置から取得した画像に基づき識別する。識別手段43は、各装置内の位置や配置等により各構造物を識別し、各構造物の表面に形成する等して付与された識別情報により各構造物を識別する。取得手段40は、識別手段43により識別された構造物を測定装置16により測定した測定結果を、その構造物を識別する識別情報とともに取得することができる。
【0075】
演算手段44は、複数の構造物造形のシミュレーションを実行する。データ保持手段42は、余剰粉を除去した後の複数の構造物を測定した測定結果と、焼結後の複数の構造物を測定した測定結果とを保持する。演算手段44は、データ保持手段42に収集された各測定結果に基づき、余剰粉を除去した後の測定結果から焼結後の構造物の寸法等を予測するためのシミュレーションを実行する。また、演算手段44は、データ保持手段42が保持する複数の締結情報と、入力された締結対象構造物の締結箇所の1以上の特徴点の測定結果とに基づき、当該締結対象構造物に締結させる締結構造物を決定する。演算手段44は、複数の締結情報、締結箇所の測定結果に加えて、入力された締結対象構造物への締結構造物の締結条件等にも基づき、締結構造物を決定することができる。入力受付手段45は、演算手段44が演算に使用する締結条件等の入力を受け付ける。
【0076】
演算手段44は、さらに機械学習プログラムを実装してもよい。演算手段44は、構造物を造形するためのデータと測定結果等から機械学習によって、最適なシミュレーションを実行することができる。機械学習プログラムは、図15に示すように、データ蓄積手段80、学習手段81、推定手段82として機能させることができる。データ蓄積手段80は、構造物を造形するためのデータ、測定結果、シミュレーションの結果を受け付け、データとして蓄積する。学習手段81は、データ蓄積手段80に蓄積されているデータから特徴量を抽出し、それらの関係を学習する。推定手段82は、学習手段81が学習した結果に基づいて、構造物の形状変化等を推定し、この推定に基づいて、シミュレーションを実行する。
【0077】
管理装置15は、少なくとも抽出手段41を含み、その他の取得手段40やデータ保持手段42等については必要に応じて設けることができる。管理装置15は、判定部71に相当する判定手段、品質データ処理部78に相当する品質データ処理手段を備えることができる。
【0078】
図16は、管理装置15により実行される処理の一例を示したフローチャートである。管理装置15は、造形装置10等により2種類以上の複数の構造物が造形された後、各種の構造物を組み合わせて製品を製造する前に、この処理を実行する。造形装置10のみで2種類以上の複数の構造物が造形されてもよいし、造形装置10と他の装置で2種類以上の複数の構造物が製造されてもよい。ステップ200から開始し、ステップ201では、造形された構造物の寸法等が測定装置16により測定され、測定装置16から測定結果を取得する。ステップ202では、測定結果を保持する。
【0079】
ステップ203では、1つの構造物を選択する。ステップ204では、選択した構造物の測定結果と他の構造物の測定結果を比較する。ステップ205では、選択した構造物と組み合わせる構造物を抽出する。これにより、選択した構造物と抽出した構造物の組み合わせが、抽出すべき構造物の組み合わせとなる。
【0080】
選択した構造物と異なる種類の構造物の測定結果が比較される。選択した構造物が指定された公差内の構造物である場合、測定結果が指定された公差内の他の種類の構造物が組み合わせる構造物として抽出される。
【0081】
選択した構造物が指定された公差を超える構造物である場合、測定結果が指定された公差を超える、選択した構造物と異なる種類の構造物であって、選択した構造物内に挿入可能で、挿入長や挿入圧等の所定の条件に適合する構造物が組み合わせる構造物として抽出される。選択した構造物が挿入する側の構造物である場合は、選択した構造物が挿入可能で、所定の条件に適合する構造物が組み合わせる構造物として抽出される。
【0082】
ステップ206では、選択した構造物と抽出した構造物との組み合わせに係る情報を記憶する。記憶する情報は、例えば選択した構造物の識別情報と抽出した構造物の識別情報とを対応付けた情報である。
【0083】
ステップ207では、選択する構造物がなくなったかを判定し、まだ存在する場合、ステップ203へ戻り、組み合わせを抽出する処理を実行する。一方、存在しない場合、ステップ208へ進み、処理を終了する。
【0084】
以下、具体的な実施例をもって詳細に説明する。図17は、管理装置15で2つの構造物の組み合わせを抽出し、抽出した組み合わせに基づき製品を製造する第1の例を示した図である。互いに組み合わされる複数の構造物Aと複数の構造物Bを同じ生産システムで製造する場合、上述したように、各装置内の位置によって粉体の密度、造形液の浸透、熱のかかり方等が異なるため、全てが同じ寸法の構造物Aや構造物Bは製造できない。
【0085】
このため、図17に示すような公差内の断面が円形という特徴C、C’を有する構造物A、Bのほか、公差を超える断面が楕円形という特徴D、D’、E、E’を有する構造物A、Bが製造される。
【0086】
構造物A内に構造物Bを挿入する形で製品を組み立てる場合、ある1つの構造物Aの形状に適した構造物Bを複数の構造物の中から選択し、選択した構造物Bを挿入することで組み立てた後の製品の品質を一定に保つことができる。構造物Aの形状に適した構造物Bとは、例えば、特徴Cを有する構造物Aに対して特徴C’を有する構造物B、特徴Dを有する構造物Aに対して特徴D’を有する構造物B、特徴Eを有する構造物Aに対して特徴E’を有する構造物Bがそれに相当する。これは、構造物Aが変形していたとしても、その形状に合致する構造物Bを割り当てることで、一定の品質の製品を組み立てられることを意味し、このような変形した構造物も使用して製品として製造することで廃棄される構造物数を減らし、歩留まり向上とコスト削減につなげることができる。造形工程において一般的に変形が大きいと言われる3Dプリンタに適用することで、より高い効果を得ることができる。
【0087】
図17に示す例では、各構造物の形状情報(特徴)に基づき、組み合わせを抽出することを説明したが、特徴だけではなく、寸法や形状等を詳細に測定し、測定結果を用いることで、より適切に構造物の組み合わせを抽出することができる。
【0088】
図18は、管理装置15で2つの構造物の組み合わせを抽出し、抽出した組み合わせに基づき製品を製造する第2の例を示した図である。
【0089】
図18に示す例では、寸法や形状等を測定する測定装置16を含んでいる。構造物Aと構造物Bを組み合わせて製品を組み立てる場合、構造物Aと構造物Bが当接するそれぞれの接合部の寸法、形状、特徴等を測定装置16により、製造された全ての構造物につき、測定結果として取得する。例えば、構造物Aの接合部の寸法は、内径、長手方向の長さ等であり、形状は、円筒形等である。構造物Bの接合部の寸法は、外径、長手方向の長さ等であり、形状は、円柱形等である。特徴は、真円や楕円等の断面の形状、表面粗さ等の表面状態等である。
【0090】
断面が真円や楕円等の特徴に加え、接合部の寸法、構造物の形状等の情報を用いることで、構造物A内に構造物Bが挿入可能か否か、挿入したときの挿入長はどの程度になるか、挿入圧が適度な圧力か否か等が分かり、1の構造物Aに対し、複数の構造物Bの中でどの構造物Bが最適な構造物Bかを判定し、抽出することが可能となる。最適な構造物か否かは、所定の条件に適合する構造物か否かにより判定することができる。所定の条件に適合する構造物が複数の場合、適合する複数の構造物のいずれを採用してもよく、製造した場合により品質が良い構造物や最初に所定の条件に適合すると判定した構造物等を採用することができる。
【0091】
図18に示す例では、測定装置16により測定した測定結果を用いて組み合わせを抽出することを説明したが、測定結果を保持しておき、測定結果を比較することで、容易に組み合わせを抽出することができる。図19は、管理装置15で2つの構造物の組み合わせを抽出し、抽出した組み合わせに基づき製品を製造する第3の例を示した図である。
【0092】
図19に示す例では、測定装置16で測定した測定結果を保持するデータ保持手段42を備え、全ての測定結果にアクセスすることが可能となっている。データ保持手段42は、管理装置15が備えるHDDやSSD等の不揮発性保存領域や、管理装置15に接続されたUSBメモリ等であってもよく、NAS(Network Attached Storage)等の単体で機能するデータ保存装置であってよい。
【0093】
データ保持手段42が全ての構造物A、Bを測定した測定結果を保持することで、抽出手段41は、データ保持手段42が保持する測定結果を用い、構造物Aと構造物Bの適切な組み合わせを抽出することができる。組み合わせる構造物A、Bの接合部(組み立て対象部位)の寸法差の比較や、構造物A、Bの形状の相似比により、構造物A、Bの最適な組み合わせを判定することができる。さらに、表面粗さを比較し、組み立てに最適な組み合わせを判定してもよい。
【0094】
構造物Aを製作し、測定した測定結果から特徴点の分布を算出し、算出した分布に最適となるように構造物Bを製作することができれば、余りを少なくし、効率的に構造物を組み合わせることが可能となる。
【0095】
図20は、各装置のパラメータを管理装置15が最適化する処理について説明する図である。製造部73で構造物Aの完成品を製作し、測定部77で測定を行う。管理装置15が備える分布算出手段46が、測定部77の測定結果に基づき、構造物Aの1以上の特徴点の分布を算出する。管理装置15が備えるパラメータ判定手段47は、算出された分布に構造物Bの1以上の特徴点の分布を適合させるように、構造物Bが製作される造形条件、乾燥条件、焼結条件等の各パラメータを判定(算出)することにより最適化し、製造部73を構成する造形装置10をはじめとする各装置に設定する。
【0096】
製造部73は、設定されたパラメータを使用して構造物Bを製造する。測定部77は、製造された構造物Bの完成品の測定を行う。このときの測定結果の分布は、構造物Aの分布に適合した分布に近くなることから、互いに余りが少なくなるように効率的に組み合わせることができる。
【0097】
図21は、管理装置15が造形データを最適化する処理について説明する図である。図20に示した例では、各装置のパラメータを最適化したが、造形データを修正することによっても、構造物Aの分布に適合した分布をもつ構造物Bを製造することができる。このため、分布算出手段46で分布を算出した後、演算手段44で、構造物Aの分布に構造物Bの1以上の特徴点の分布を適合させるように、構造物Bを製造するために使用する造形データを修正し、最適化することができる。演算手段44は、機械学習プログラムを使用し、図15に示した各手段として機能させて、造形データを最適化することができる。なお、これは一例であるため、造形データの最適化の方法は、機械学習プログラムを使用した方法に限定されるものではない。
【0098】
製造部73は、最適化された造形データを使用して構造物Bを製造する。測定部77は、製造された構造物Bの完成品の測定を行う。このときの測定結果の分布は、構造物Aの分布に適合した分布に近くなることから、互いに余りが少なくなるように効率的に組み合わせることができる。
【0099】
図20および図21に示した例では、構造物Aの焼結後の測定結果を用いて分布を算出している。焼結前後の変形による相関関係が十分に分かっている場合は、焼結後の測定結果ではなく、造形後であって、焼結前の余剰粉を除去した後に測定した測定結果を用いて分布を推定してもよい。図22は、余剰粉を除去した後に測定した測定結果を用い、分布算出手段46が分布を推定し、構造物Aの焼結にかかる時間の間に、演算手段44が、算出された分布に合わせて構造物Bの造形データを修正する。この場合も、上記の機械学習プログラムを使用して造形データを修正することができるが、造形データの最適化の方法は、機械学習プログラムを使用した方法に限定されるものではない。
【0100】
このように焼結時間の間に、造形データを修正することで、構造物Bの製造を早期に開始し、時間的に効率良く製作することができ、さらに、互いに余りが少なくなるように効率的に組み合わせることができる。
【0101】
構造物A、Bを製作した後、構造物A、Bの組み合わせを抽出するためには、複数の構造物の中から、組み合わせに係る個々の構造物A、Bを識別する必要がある。図23は、管理装置15で2つの構造物の組み合わせを抽出し、抽出した組み合わせに基づき製品を製造する第4の例を示した図である。
【0102】
図23に示す例では、識別手段43を設け、造形開始から造形終了まで、どこにある構造物がどれであるかを監視し、各構造物を識別できるように構成されている。これにより、各構造物と測定結果も対応付けることができる。
【0103】
造形装置10等には、撮像装置としてのカメラが取り付けられ、識別手段43は、カメラにより撮影された画像や映像から各構造物を識別する。各構造物を識別することを可能にするため、造形開始前に、各構造物を一意に識別し、各構造物の造形によって表面に現れる識別情報(識別記号データ)をデータに付与することができる。各構造物を識別することができれば、これに限られるものではなく、造形終了時に、装置内の位置を対応付けながら一意に識別する識別記号が記載されたラベル等を貼付してもよい。
【0104】
図23に示す例では、造形終了までを監視しているが、造形終了後、脱脂・焼結を実施する場合、脱脂・焼結後まで監視することができる。図24は、管理装置15で2つの構造物の組み合わせを抽出し、抽出した組み合わせに基づき製品を製造する第5の例を示した図である。
【0105】
図24に示す例では、カメラにより脱脂・焼結装置14内も監視し、造形終了後に各構造物を測定した後も、全ての構造物を識別できている状態のまま、脱脂・焼結装置14にて脱脂・焼結を行い、焼結後に各構造物を測定し、その測定結果も対応付けることが可能となる。
【0106】
各構造物への識別記号の付与をラベルの貼付で行う場合、脱脂・焼結により焼失する可能性がある。そこで、脱脂・焼結装置14へ投入する前に、脱脂・焼結装置14内の位置とラベルの識別記号とを対応付けて記録しておき、焼結終了後、各位置の構造物に対応する識別記号が記載されたラベルを貼付することができる。これにより、造形開始から焼結後の測定結果までの全構造物の品質を把握することができる。
【0107】
次に、2つの構造物の組み合わせを抽出する方法について詳細に説明する。図25は、2つの構造物の組み合わせを抽出する第1の方法について説明する図である。抽出手段41は、測定装置16から取得された測定結果のうち、焼結された第1の構造物の測定結果に含まれる1以上の特徴点のデータと、焼結された第2の構造物の測定結果に含まれる1以上の特徴点のデータとを比較し、組み立てに最適な組み合わせを抽出する。
【0108】
図25に示すように、構造物Aの上部から構造物Bの下部を挿入して組み立てられる製品の場合、構造物Aにおいては、構造物Bが挿入されてくる円筒形上部の内側形状を特徴点とし、その寸法等を測定する。また、構造物Bにおいては、挿入部となる円柱形下部の外側形状を特徴点とし、その寸法等を測定する。
【0109】
測定結果は、データ保持手段42で保持されていてもよく、保持された各特徴点のデータを比較し、組み立てに最適な組み合わせを抽出することができる。これにより、構造物の廃棄を減らし、一定の組み立て品質を確保することが可能となる。
【0110】
2つの構造物の組み合わせの結果は、図26に示すように、レポートとして出力することができる。レポートは、例えば出力装置として印刷装置を使用して印刷出力することができる。なお、レポートの出力は、紙への出力のほか、表示部への表示、壁やスクリーンへの投影等であってもよい。これらの場合、出力装置として表示装置や投影装置等を用いることができる。このようなレポートの出力により、品質管理担当者の手を煩わせることなく、利用者に対して組み合わせの結果や、その結果による品質・性能を提示することが可能となる。
【0111】
図25に示す例では、焼結後に測定した測定結果を用いて最適な組み合わせを抽出しているが、造形後であって、脱脂・焼結前に測定した測定結果も取得することで、造形後の測定結果と焼結後の測定結果の相関を取り、焼結後の測定結果に寄らず、造形後の測定結果を基に最適な組み合わせを抽出することができるようになる。図27は、2つの構造物の組み合わせを抽出する第2の方法について説明する図である。
【0112】
図27では、脱脂・焼結装置14で焼結された後の構造物の1以上の特徴点を測定した測定結果に加え、脱脂・焼結前の造形後の構造物の1以上の特徴点を測定した測定結果を取得し続ける。これにより、造形後の測定結果と焼結後の測定結果との相関が取れるようになる。すなわち、造形後の測定結果がどのように変化すれば、焼結後の測定結果がどのように変化するかが分かり、造形後の形状等から焼結後の形状等を予測できるようになる。すると、どの構造物を組み合わせれば最適な組み合わせになるかが造形後の測定結果から分かるので、組み合わせに係る構造物を優先的に脱脂・焼結装置14へ投入し、効率的に構造物製造を行うことが可能となる。
【0113】
図27では、単に脱脂・焼結前後の測定結果の相関を取っているだけであるため、脱脂・焼結前の測定結果を取得しなければ、脱脂・焼結後の測定結果を予測することができない。しかしながら、データ、造形条件、乾燥条件、造形位置等に応じた測定結果を収集することで、焼結後の測定結果を推定する推定式等を構築することができる。すると、造形のためのデータや造形条件等を入力することで、シミュレーションを実行し、造形後の構造物のデータを予測し、焼結後の構造物のデータを予測することができる。これにより、造形前から最適な組み合わせを抽出することができ、組み立てまでを考慮した構造物の製造計画の立案が容易になる。
【0114】
図28は、2つの構造物の組み合わせを抽出する第3の方法について説明する図である。図28に示す例では、演算手段44が構造物Aの変形をシミュレーションにより予測し、構造物Bの変形をシミュレーションにより予測し、それぞれのシミュレーション結果を用いて組み合わせのシミュレーションを行う。抽出手段41は、組み合わせのシミュレーション結果に基づき、最適な組み合わせを抽出する。
【0115】
構造物A、Bの変形に関しては、構造シミュレーションや焼結シミュレーション等を実施することにより予測することができる。なお、シミュレーションはいずれか1つを実施してもよいし、組み合わせて実施してもよい。シミュレーションは、事前に測定した測定結果を用いて作成した推定式等の推定モデルを使用して実行することができる。組み合わせのシミュレーションは、構造物A内に構造物Bが入らない挿入不可や、隙間があり、組み立てできない接合不可等の組み立て不可となるケースを含め、挿入長や挿入圧等をシミュレーションし、許容される挿入長や挿入圧等の所定の条件に適合する組み合わせを抽出する。
【0116】
構造物の変形は、造形中、脱脂・焼結中等に発生するため、それぞれの工程が終了するごとに出来た構造物の寸法等を測定し、測定結果を出来るだけ多く収集することで、シミュレーションに使用する推定モデルを構築することができる。また、推定モデルは、測定結果を収集するごとに修正し、シミュレーションの精度を向上させることができる。
【0117】
推定モデルは、造形から焼結までの変形シミュレーションについて作成することができ、作成した変形シミュレーションの推定モデルから、構造物を組み合わせ、所定の条件に適合するか否かを判定する組み合わせシミュレーションに使用するモデルを作成することができる。これにより、各モデルを作成後も継続的に更新することができ、シミュレーションの精度を継続的に向上させることができる。
【0118】
また、シミュレーションにより実際に造形する前に、どのような形状の構造物が造形されるか正確に予測できるので、正確に最適な構造物の組み合わせを抽出することができる。
【0119】
これまで2以上の構造物を組み合わせて製品を製造するため、2以上の構造物の最適な組み合わせを抽出し、その組み合わせに係る情報を記憶して管理し、管理する情報に基づき、2以上の構造物を組み合わせ、製品を製造することについて説明してきた。製造された製品は、例えばブラインドリベットやバネ付きネジ等の、締結対象構造物としての板等に締結する締結構造物である場合がある。
【0120】
締結構造物を締結対象構造物に締結する場合、締結対象構造物に設けられる穴に締結構造物を通して締結することになる。例えば、ネジを板に締結する場合、板の面に対して垂直にネジを挿入することで所定の締結力で締結することができる。しかしながら、板の面に対してネジが斜めに挿入される場合があり、これでは所定の締結力を得ることができない。また、板に設けられた穴が、板の面に対して垂直に延びるように形成されるとは限らず、斜めに形成される場合がある。この場合も、所定の締結力を得ることができない。
【0121】
そこで、締結構造物を締結対象構造物に締結させる場合のそれぞれが当接する締結部をラティス構造とすることで、締結対象に倣いやすい形状を作りつつ、必要な部分は強度を確保し、必要以上に変形しない構造物を作り出すことができる。ラティス構造は、格子状の構造で、3Dプリンタにおいて金属製品を製造する際、強度を向上させ、軽量化するために採用される。ラティス構造のような複雑な形状は、3Dプリンタでのみ製造可能であり、DfAM(Design for Additive Manufacturing)形状と呼ばれる。
【0122】
締結構造物を締結対象構造物と締結し、所定の強度を得るためには、DfAM形状を有する締結構造物の形状を、締結対象構造物の締結部の特徴点や強度等の締結条件に適した形状にする必要がある。
【0123】
図29は、締結部にラティス構造を有する締結構造物として製造される製品を、締結対象構造物に応じて決定する第1の方法について説明する図である。生産システムを用いて製造され、特徴点を測定した、締結部にDfAM形状を有する締結構造物と、生産システムの測定装置16により締結部の特徴点を測定した締結対象構造物とを締結し、締結後の強度等を測定し、締結データとして保持する。締結データは、形状等が異なる締結構造物を、締結箇所の形状等が異なる締結対象構造物と締結し、その強度等を測定することにより複数の締結データとして取得する。締結データは、締結部の特徴点、締結時に必要な力、剪断力、引張力等のデータを含むことができる。
【0124】
抽出手段41は、締結対象構造物の締結部の特徴点や強度等の締結条件に基づき、当該締結対象構造物と締結するのに適した締結構造物の形状等を決定することができる。決定した締結構造物の形状等は、そのような形状等の締結構造物を製造するために、締結構造物を構成する各構造物を造形するためのデータの作成に使用される。
【0125】
締結部にDfAM形状を有する締結構造物は、測定装置16において、例えば外径、長さ、真円度等の特徴点の寸法や形状等が測定される。締結構造物と締結される締結対象構造物は、測定装置16において、締結箇所の板厚、穴形状等の特徴点の寸法や形状等が測定される。それぞれを測定後、締結構造物を締結対象構造物に締結し、締結時に必要となる力、締結後の剪断力、締結後の引張力等の締結性能を測定する。
【0126】
このような測定や締結を繰り返すことで、締結構造物と締結対象構造物の特徴点と締結性能の相関を取ることができる。この相関関係を、締結構造物を造形するためのデータとともに保持しておき、締結対象構造物と締結するための締結条件(締結性能)を入力することで、保持しておいた相関関係から締結対象構造物に適した締結構造物を抽出することができる。これにより、締結対象構造物の締結箇所が異形、例えば真円ではなく、変形してしまっていても、その構造物を廃棄することなく、その状態に適合可能な締結構造物を作ることができる。
【0127】
ここで、図30を参照し、締結構造物の一例であるブラインドリベットについて説明する。ブラインドリベットは、図30(a)、(b)に示すように、締結したい金属板50に穴51を、ドリル52等を使用して開ける。開けた穴51の大きさ、金属板50の厚さを測定する。穴51の大きさ、金属板50の厚さから、リベット径や長さを決定する。リベット53は、フランジ54、シャフト55を有する。
【0128】
図30(c)に示すように金属板50に開けられた穴51にリベットを差し込み、締結する場合、穴51に適したリベット径を有するリベット53を選択し、選択したリベット53を穴51に差し込む。穴51に差し込まれたリベット53は、図30(d)に示すようにシャフト55がリベッター56により引き抜かれる。この引き抜きにより、図30(e)に示すようにシャフト55の頭部57がその周囲の円筒形の構造物である円筒体58内に入り込み、円筒体58が外径方向へ拡張し、シャフト55が頭部57を円筒体58内に残して切断され、引き抜かれる。
【0129】
図31は、ブラインドリベットの締結部59をDfAM形状として製造され、それを金属板50に締結した様子を示した図である。図31(a)は、通常のリベット締結時の状態を示した図であり、図31(b)、(c)は、変形穴にDfAM形状を有するリベットで締結した状態を示した図である。リベット53は、穴51に対し、斜めに挿入されているが、DfAM形状を有する締結部59が穴51の形状に倣い、変形し、締結条件に適合して締結されている。締結部59がDfAM形状でなければ、締結条件としての所定の強度以上で締結させることはできないが、締結部59をDfAM形状とすることで、穴51の形状に合った形で変形し、穴51に密着して締結させることができるので、所定の強度以上の締結力を得ることが可能となる。
【0130】
図32は、締結構造物の別の例としてバネ付きネジについて説明する図である。図32に示すバネ付きネジ60は、拡張された頭部61と棒状の挿入部62とを有するネジの挿入部62をコイル状に巻かれたバネ63に差し込み、ネジの頭部61とバネ63が一体化されたものである。バネ付きネジ60は、締結対象構造物としての板64に挿入部62の先鋭な先端を突き刺すようにして挿入部62を挿入し、バネ付きネジ60を板64に締結する。
【0131】
バネ付きネジのバネ63は、ネジのゆるみ止めとして、ネジと板64に反力を与える。バネ付きネジは、板への締結時にネジの頭部61とバネ63の接合部が破断し、バネが分離する。バネ63は、ネジの頭部61と板64とを引き離す方向へ反力を与えて、ネジのゆるみを防止する。
【0132】
これらのブラインドリベットやバネ付きネジは、締結対象構造物の穴径や板厚等の必要なパラメータを設計ツールに入力することで、これまでに得られた測定結果を踏まえて最適なデータを作成することができる。
【0133】
図33は、締結部にラティス構造を有する締結構造物として製造される製品を、締結対象構造物に応じて決定する第2の方法について説明する図である。図29に示した第1の方法では、測定結果に基づき、締結構造物を決定している。蓄積された測定結果の中に同じ測定結果となる締結対象構造物が存在すればよいが、存在しない場合、その締結対象構造物と締結するのに最適な締結構造物を決定することができない。
【0134】
そこで、蓄積された測定結果の相関関係から推定モデルを作成し、作成した推定モデルを使用し、締結条件の入力を受け付けてシミュレーションを実行することで、入力された締結条件に適合する締結構造物を決定することができる。このようなシミュレーションを実行することで、過去に一致する例がなくても、新しい締結条件にも対応する締結構造物を提案することが可能となる。
【0135】
以上に説明してきたように、許容範囲外となる構造物は通常廃棄となるが、組み合わせて製品としての品質を確保できるものについては、有効利用することができる。このため、廃棄される構造物を減らし、歩留まりを向上させ、コスト削減に貢献することが可能となる。また、設定条件に適合する組み合わせを抽出するので、一定の品質を確保することもできる。
【0136】
これまで本発明の一実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の構成要素を変更若しくは削除し、または本実施形態の構成要素を他の構成要素を追加するなど、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0137】
10…造形装置
11…情報処理装置
12…乾燥装置
13…余剰粉除去装置
14…脱脂・焼結装置
15…管理装置
16…測定装置
17…ネットワーク
18…処理装置
20…CPU
21…ROM
22…RAM
23…HD
24…HDDコントローラ
25…ディスプレイ
26…外部機器接続I/F
27…ネットワークI/F
28…データバス
29…キーボード
30…ポインティングデバイス
31…DVD-RWドライブ
32…メディアI/F
33…DVD-RW
34…記録メディア
40…取得手段
41…抽出手段
42…データ保持手段
43…識別手段
44…演算手段
45…入力受付手段
46…分布算出手段
47…パラメータ判定手段
50…金属板
51…穴
52…ドリル
53…リベット
54…フランジ
55…シャフト
56…リベッター
57…頭部
58…円筒体
59…締結部
60…バネ付きネジ
61…頭部
62…挿入部
63…バネ
64…板
70…データ保持部
71…判定部
72…CAM/CAD
73…製造部
74…UI
75…FAN
76…ヒータ
77…測定部
78…品質データ処理部
80…データ蓄積手段
81…学習手段
82…推定手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0138】
【特許文献1】特開2017-087718号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33