IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特開2023-9866画像形成方法、及びインクジェット記録装置
<>
  • 特開-画像形成方法、及びインクジェット記録装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009866
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】画像形成方法、及びインクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20230113BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230113BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20230113BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20230113BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41J2/01 129
C09D11/101
C09D11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113501
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】廣川 悠哉
(72)【発明者】
【氏名】原田 成之
(72)【発明者】
【氏名】齋賀 拓也
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EC29
2C056EC31
2C056EC36
2C056EC41
2C056FA04
2C056FD20
2C056HA44
2C056HA45
2C056HA46
2H186AB11
2H186AB12
2H186AB13
2H186AB23
2H186BA08
2H186DA12
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB55
4J039AD09
4J039AD21
4J039AE04
4J039BE26
4J039EA33
4J039EA36
4J039EA48
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】耐擦過性、光沢度、及び生産性に優れた画像形成方法の提供。
【解決手段】記録媒体に、重合性化合物及び重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化性インクを吐出して画像を形成するインク印字工程と、前記画像に活性エネルギー線を照射し、前記画像を硬化させる活性エネルギー線照射工程と、硬化した前記画像を乾燥させる乾燥工程と、加圧部材及び加熱部材によって前記画像を平滑化する平滑化工程と、を有する画像形成方法であり、前記重合性化合物が、ウレタンアクリレート樹脂エマルジョン及び重合性モノマーを含み、前記重合性モノマーの1分子あたりの二重結合数が4以上6以下である画像形成方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に、重合性化合物及び重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化性インクを吐出して画像を形成するインク印字工程と、
前記画像に活性エネルギー線を照射し、前記画像を硬化させる活性エネルギー線照射工程と、
硬化した前記画像を乾燥させる乾燥工程と、
加圧部材及び加熱部材によって前記画像を平滑化する平滑化工程と、を有する画像形成方法であり、
前記重合性化合物が、ウレタンアクリレート樹脂エマルジョン及び重合性モノマーを含み、
前記重合性モノマーの1分子あたりの二重結合数が4以上6以下であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記ウレタンアクリレート樹脂エマルジョンの含有量が、1.1質量%以上8.8質量%以下である、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記ウレタンアクリレート樹脂エマルジョンの含有量が、2.2質量%以上6.6質量%以下である、請求項1から2のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記重合性モノマーの含有量が、4.0質量%以上12.0質量%以下である、請求項1から3のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記重合性モノマーの含有量が、6.0質量%以上10.0質量%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記平滑化工程において、1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下の圧力で、前記画像を平滑化する、請求項1から5のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項7】
前記平滑化工程において、前記加熱部材の表面温度が、70℃以上110℃以下である、請求項1から6のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記乾燥工程において、乾燥温度が50℃以上110℃以下である、請求項1から7のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記乾燥工程における乾燥時間が、50msec以上700msec以下である、請求項1から8のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記画像形成方法において、50mmφのテフロン(登録商標)製シャーレ中で、UV-A積算光量が5J/cm及び照度が5.0W/cmとなるように紫外線を照射し、乾燥温度が100℃、乾燥時間が12時間の条件で乾燥させた後の平滑化工程時の加熱温度における貯蔵弾性率G‘が、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である活性エネルギー線硬化性インクである、請求項1から9のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記画像形成方法において、50mmφのテフロン(登録商標)製シャーレ中で、UV-A積算光量が5J/cm及び照度が5.0W/cmとなるように紫外線を照射し、乾燥温度が100℃、乾燥時間が12時間の条件で乾燥させた後の25℃における貯蔵弾性率G‘が、1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下である活性エネルギー線硬化性インクである、請求項1から10のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項12】
記録媒体に、重合性化合物及び重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化性インクを吐出して画像を形成するインク印字手段と、
前記画像に活性エネルギー線を照射し、前記画像を硬化させる活性エネルギー線照射手段と、
硬化した前記画像を乾燥させる乾燥手段と、
加圧部材及び加熱部材によって前記画像を平滑化する平滑化手段と、を有するインクジェット記録装置であり、
前記重合性化合物が、ウレタンアクリレート樹脂エマルジョン及び重合性モノマーを含み、
前記重合性モノマーの1分子あたりの二重結合数が4以上6以下であることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法、及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方法は、容易にカラー画像の記録が可能であり、ランニングコストが低いなどの理由から、近年、急速に普及してきている。インクジェット記録用インクとしては、顔料を微粒子状にして水に分散させた水性顔料インクが注目されている。
近年、主剤として水を含有し、紫外線照射により側鎖間で架橋結合可能な高分子化合物を含有する顔料インクを用いて、ラジカル反応により耐擦過性を有するインク膜を形成することができる水性顔料インクなどが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、紫外線照射により効果する水系インクをシングルパスのシステムに利用し高い生産性を実現する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、耐擦過性、光沢度、及び生産性に優れた画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、本発明の画像形成方法は、記録媒体に重合性化合物を含む活性エネルギー線硬化性インクを吐出して画像を形成するインク印字工程と、
前記画像に活性エネルギー線を照射し、前記画像を硬化させる活性エネルギー線照射工程と、
硬化した前記画像を乾燥させる乾燥工程と、
加圧部材及び加熱部材によって前記画像を平滑化する平滑化工程と、を有する画像形成方法であり、
前記重合性化合物が、ウレタンアクリレート樹脂エマルジョン及び重合性モノマーを含み、
前記重合性モノマーの1分子あたりの二重結合数が4以上6以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によると、耐擦過性、光沢度、及び生産性に優れた画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本発明の画像形成方法を実施するための本発明のインクジェット記録装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(画像形成方法及びインクジェット記録装置)
本発明の画像形成方法は、インク印字工程と、活性エネルギー線照射工程と、乾燥工程と、平滑化工程と、を有し、更に必要に応じて、その他の工程を有する。
本発明のインクジェット記録装置は、インク印字手段と、活性エネルギー線照射手段と、乾燥手段と、平滑化手段と、を有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
【0008】
本発明の画像形成方法及びインクジェット記録装置は、従来の紫外線照射により硬化する水系インク、及びそのインクを使ったシステムでは達成できなかった高い耐擦過性、光沢性、生産性を、インクとシステムの最適な組み合わせによって実現するという知見に基づくものである。
【0009】
本発明の画像形成方法は、ウレタンアクリレート樹脂エマルジョン及び1分子あたりに二重結合を有する重合性モノマーを用いることで、ウレタンアクリレート樹脂による柔軟性と、重合性モノマーの架橋点に由来する硬度との両方の性質を持ち合わせたインク膜を形成することができ、耐擦過性が向上する。また、前記柔軟性と前記硬度は、平滑化工程で平滑化されるのときにも適しており、高い光沢性を実現することができる。
本発明は、記録媒体に活性エネルギー線硬化性インク(以下、インクと称することがある)を吐出して画像を形成した直後に、活性エネルギー線を照射することにより前記インク中で架橋反応が起こり、耐擦過性の高いインク膜を形成することができ、更に、乾燥工程及び平滑化工程において、滲みや光沢性の悪化を起こさずに処理を行うことができる。前記活性エネルギー線照射工程では、必ずしもインクを完全に硬化させる必要はなく、インクの滲みを抑えることができれば十分に目的を達成できる。
【0010】
<インク印字工程>
前記インク印字工程は、記録媒体に重合性化合物を含む活性エネルギー線硬化性インクを吐出して画像を形成する工程である。
前記インク印字工程では、連続的に記録媒体を移動させ、一定の位置に保持されたインクジェットヘッド(以下、記録ヘッドと称することがある)から記録媒体上にインクを吐出するライン方式が好ましい。
前記インクジェットヘッドの方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。
前記オンデマンド型としては、例えば、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられるが、吐出信頼性の観点からピエゾ方式が好ましい。
【0011】
前記活性エネルギー線硬化性インクの吐出時の液滴の大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1pl以上30pl以下が好ましい。
前記液滴の吐出速度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5m/s以上20m/s以下が好ましい。
前記液滴の吐出時の駆動周波数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1kHz以上が好ましい。
前記インク印字工程における解像度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、300dpi以上が好ましい。
【0012】
前記記録ヘッドとしては、多数のノズルを有することが好ましく、インクをエネルギーの作用によりインク滴化して吐出するヘッド部及び記録ユニットのいずれかを有することがより好ましい。
前記記録ヘッドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液室部と、流体抵抗部と、振動板と、ノズル部材とを有することが好ましく、前記記録ヘッドの少なくとも一部がシリコーン及びニッケルのいずれかを含有する材料から形成されていることが好ましい。
前記記録ヘッドのノズル径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30μm以下が好ましく、1μm以上20μm以下がより好ましい。
【0013】
<<活性エネルギー線硬化性インク>>
前記活性エネルギー線硬化性インクとしては、重合性化合物及び重合開始剤を含み、反応性を有さない樹脂成分、アミン化合物を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含むことができる。
【0014】
-重合性化合物-
前記重合性化合物としては、樹脂エマルジョン及び重合性モノマーを含むことが好ましい。
【0015】
--樹脂エマルジョン--
前記樹脂エマルジョンとしては、重合性官能基を有し、活性エネルギー線によって他の粒子と重合反応することが可能な粒子である。重合性官能基を有する樹脂エマルジョンを硬化型組成物に含有させることにより、硬化型組成物を硬化した硬化膜を平滑性(光沢性)、柔軟性、及び耐擦過性が優れたものとすることができる。
【0016】
前記重合性官能基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリレート基、ビニル基、エポキシ基、メタクリレート基などが挙げられる。これらの中でも、高い耐擦過性が得られる点から、アクリレート基が好ましい。
【0017】
前記樹脂エマルジョンとしては、水に分散することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アクリレート基を有する樹脂エマルジョンなどが挙げられる。アクリレート基を有する樹脂エマルジョンとしては、例えば、ポリウレタン粒子などが挙げられる。
前記ポリウレタン粒子としては、例えば、ウレタンアクリレート樹脂エマルジョンなどが挙げられる。
前記ウレタンアクリレート樹脂エマルジョンを用いることで、ウレタンアクリレート樹脂のソフトセグメントをインク膜中に導入することができるのでインク膜が高靭性化し、耐擦過性の向上に繋がる。更に、ウレタンアクリレート樹脂エマルジョンを添加することにより加熱時にインク膜が軟化しやすくなるため、平滑化工程において、密で平滑なインク膜を形成しやすくなり高い耐擦過性と光沢性を付与することができる。
また、架橋点を多く持つ重合性モノマーを利用することにより前記ウレタンアクリレート樹脂を硬い架橋点で繋ぎ合わせることができるため、耐擦過性が向上し、活性エネルギー線に対する反応性も向上することで生産性が高くなる。
【0018】
前記ウレタンアクリレート樹脂エマルジョンとしては、適宜合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。
前記市販品としては、例えば、Ucecoat(登録商標)6558(ダイセル・オルネクス社製)、Ucecoat(登録商標)6559(ダイセル・オルネクス社製)、Ebecryl(登録商標)2002(ダイセル・オルネクス社製)、Ebecryl(登録商標)2003(ダイセル・オルネクス社製)、Ucecoat(登録商標)7710(ダイセル・オルネクス社製)、Ucecoat(登録商標)7655(ダイセル・オルネクス社製)、Ucecoat(登録商標)7770(ダイセル・オルネクス社製)、NeoradR(登録商標)440(Avecia社製)、NeoradR(登録商標)441(Avecia社製)、NeoradR(登録商標)447(Avecia社製)、NeoradR(登録商標)448(Avecia社製)、Bayhydrol(登録商標)UV2317(COVESTRO社製)、Bayhydrol(登録商標)UV VP LS2348(COVESTRO社製)、Lux(登録商標)430(ALBERDING BOLEY社製)、Lux(登録商標)399(ALBERDING BOLEY社製)、Lux(登録商標)484(ALBERDING BOLEY社製)、Laromer(登録商標)LR8949(BASF社製)、Laromer(登録商標)LR8983(BASF社製)、Laromer(登録商標)PE22WN(BASF社製)、Laromer(登録商標)PE55WN(BASF社製)、Laromer(登録商標)UA9060(BASF社製)などが挙げられる。これらの中でも、Ucecoat(登録商標)7770(ダイセル・オルネクス社製)、Laromer(登録商標)LR8983(BASF社製)が好ましい。Ucecoat(登録商標)7770(ダイセル・オルネクス社製)、Laromer(登録商標)LR8983(BASF社製)であると耐擦過性を向上させることがきる。
【0019】
前記樹脂エマルジョンの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
【0020】
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0021】
前記樹脂エマルジョンの含有量としては、組成物全量に対して、固形分として1.1質量%以上8.8質量%以下が好ましく、2.2質量%以上6.6質量%以下がより好ましい。樹脂エマルジョンの含有量が1.1質量%以上8.8質量%以下であると、耐擦過性を向上させることができる。
【0022】
<<重合性モノマー>>
前記重合性モノマーとしては、前記重合性モノマーの1分子辺りの二重結合数が4以上6以下であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記二重結合数が4以上であると、活性エネルギー線に対する反応性とウレタンアクリレート樹脂の架橋点が多くなり、生産性と耐擦過性の向上に繋がる。前記二重結合数が6以下であると、インク膜が硬くなりすぎるのを抑制でき、平滑化工程において密で平滑なインク膜が形成でき、耐擦過性と光沢性が向上する。
【0023】
前記重合性モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテルなどを併用することもできる。より具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、γ-ブチロラクトンアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ホルマール化トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート〔CH=CH-CO-(OC)n-OCOCH=CH(n≒)〕、ポリエチレングリコールジアクリレート〔CH=CH-CO-(OC)n-OCOCH=CH(n≒9)〕、ポリエチレングリコールジアクリレート〔CH=CH-CO-(OC)n-OCOCH=CH(n≒14)〕、ポリエチレングリコールジアクリレート〔CH=CH-CO-(OC)n-OCOCH=CH(n≒23)〕、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート〔CH=C(CH)-CO-(OC)n-OCOC(CH)=CH(n≒7)〕、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、プロピレンオキサイド変性テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルペンタ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタントリ(メタ)アクリレート、ポリウレタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンペンタ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ジシクロペンタジエンビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、エチルオキセタンメチルビニルエーテル、特許文献3及び4に記載される4官能の(メタ)アクリルアミドモノマー、特許文献5に記載される4~17官能のポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルポリアクリレートなどが挙げられる。これらの中でも分散媒である水に対する溶解度、組成物粘度、基材上の硬化膜(塗膜)の厚みなどを考慮して選択して添加してもよいが、耐擦過性の向上の観点から、特許文献3及び4に記載される4官能の(メタ)アクリルアミドモノマー、特許文献5に記載される4~6官能のポリオキシエチレンポリグリセリルエーテルポリアクリレートが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
前記重合性モノマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、組成物全量に対して、4.0質量%以上12.0質量%以下が好ましく、6.0質量%以上10.0質量%以下がより好ましい。前記重合性モノマーの含有量が4.0質量%以上12.0質量%以下であると、耐擦過性を向上させることができる。
【0025】
-重合開始剤-
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合開始剤は、十分な硬化速度を得るために、組成物の総質量(100質量%)に対し、5~20質量%含まれることが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
また、上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミンおよび4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0026】
--反応性を有さない樹脂成分--
前記反応性を有さない樹脂成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、これらの樹脂からなる樹脂粒子などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
前記樹脂粒子は、水を分散媒として分散した樹脂エマルジョンの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0027】
前記反応性を有さない樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
【0028】
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0029】
前記反応性を有さない樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、0質量%以上30質量%以下が好ましく、0質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0030】
--アミン化合物--
本発明では、インク中にアミン化合物を添加することが可能であり、沸点120℃以上200℃以下且つ分子量100以下であるアミン化合物を添加することが好ましい。これにより、さらに良好なメンテナンス性を実現している。
【0031】
前記アミン化合物としては、1級、2級、3級、4級アミン及びそれらの塩のいずれであっても構わない。なお、4級アミンとは、窒素原子に4つのアルキル基が置換した化合物を意味する。
【0032】
前記アミン化合物としては、次の(I)又は(II)式であらわされる化合物が好ましい。
【化1】
・・・(I)
[式中、R1、R2、R3は水素原子、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキル基、ヒドルキシエチル基を示す。但し、すべて水素原子である場合を除く。]
【化2】
・・・(II)
[式中、R4、R5、R6は水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、1~4のアルキル基を示す。]
【0033】
前記(I)及び(II)式で表される化合物としては、例えば、1-アミノー2-プロパノール、3-アミノー1-プロパノール、N-メチルエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、1-アミノー2-メチループロパノールなどが挙げられる。
【0034】
前記アミン化合物のインク中における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクのpH調整の観点から、0.01質量%~5質量%が好ましく、0.05質量%~2質量%が特に好ましい。
【0035】
また、インク中に含まれるアミン化合物は、前記アミン化合物に加えて他のアミン化合物を併用して用いることができる。
【0036】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、従来公知の、色材、界面活性剤、重合禁止剤、レべリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
【0037】
<インク膜の動的粘弾性>
前記活性エネルギー線硬化性インクのインク膜は次のような手順で作製することができる。50mmφのテフロン(登録商標)製シャーレへ前記活性エネルギー線硬化性インクを6g秤取り、Integration technology製のUV照射装置Subzero085(Dバルブ使用)を用いて5.0W/cmの照度でUV-Aの積算光量が5J/cmになるように照射し十分硬化させた後に、100℃で12時間加熱乾燥させることでインク膜が得られる。
得られたインク膜は長さ30mm、幅10mmの大きさに切り出した。次いで、冷凍機付ARES-G2(TA Instruments社製)を用い、測定を行う。サンプル固定用治具としてトーション固体クランプを用い、20℃にてサンプルを装置にセットした後、2gのAuto tensionをかけた状態で-50℃まで冷却する。-50℃に到達してから10分間後、以下の測定条件にて測定する。
・測定モード:temperature sweep
・測定温度範囲:-50℃~150℃
・昇温速度:5℃/分
・周波数:1Hz
・初期歪:0.1%
・Auto tension:2g
【0038】
前記動的粘弾性としては、平滑化工程時の加熱温度における貯蔵弾性率G‘が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であることが好ましく、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であることがより好ましい。平滑化工程時の加熱温度における貯蔵弾性率G‘が1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であると、平滑化工程時にインク膜がよく軟化し密で平滑なインク膜が形成できるため、光沢性と耐擦過性の向上に繋がる。
更に、前記動的粘弾性としては、25℃における貯蔵弾性率G‘が1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であることが好ましく、5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であることがより好ましい。25℃における貯蔵弾性率G‘が1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であると、画像を擦過する際のインク膜の硬度を高くできるため擦過によりインク膜に傷が付きにくく結果的に耐擦過性を向上することができる。
【0039】
<活性エネルギー線照射工程>
前記活性エネルギー線照射工程としては、画像に活性エネルギー線を照射し、前記画像を硬化させる工程である。
【0040】
前記活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硬化性の観点で紫外線を用いることができる。
前記活性エネルギー線を照射するための光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、熱陰極管、冷陰極管、LEDなどが挙げられる。これらの中でも、波長領域が広いため前処理剤を硬化させる光源として有効である観点から、メタルハライドランプが好ましい。
【0041】
前記メタルハライドランプにおけるメタルハライドとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Pb、Sn、Feなどの金属のハロゲン化物が挙げられ、光開始剤の吸収スペクトルに合わせて適宜選択できる。
前記メタルハライドランプにおけるランプとしては、硬化に有効なランプであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。UV照射ランプの場合は、熱が発生し、記録媒体が変形してしまう可能性があるため、冷却機構、例えば、コールドミラー、コールドフィルター、ワーク冷却などが具備されていることが好ましい。
【0042】
前記光源の照度としては、硬化性の観点から0.1W/cm以上1.5W/cm以下で用いることが好ましい。
また、インク硬化時におけるUV-Aの積算光量は、17mJ/cm以上2,000mJ/cm以下が好ましく、200mJ/cm以上2,000mJ/cm以下より好ましい。UV-Aの積算光量が、17mJ/cm以上であると、インク膜が十分硬化し、処理液を付与したときの滲みを防止することができる。また、UV-Aの積算光量が、2,000mJ/cm以下であると、記録媒体の焦げ付きなど記録媒体に対する悪影響を抑制することができる。
【0043】
前記活性エネルギー線照射工程における活性エネルギー線の照射時間としては、0.5秒以上15秒以下が好ましく、0.5秒以上10秒以下がより好ましい。前記照射時間が0.5秒以上であると、インクが十分に濡れ拡がり平滑なインク膜が形成され光沢性が向上する。前記照射時間が15秒以下であると、インクが滲むことを抑制でき高画質の画像を提供することができる。
【0044】
<乾燥工程>
前記乾燥工程としては、硬化した画像を乾燥させる工程である。前記乾燥工程においてインク及び処理液を乾燥させることで、インク及び処理液密着した状態で膜が形成されることで耐擦過性の優れた画像を提供することができる。
前記乾燥工程では、熱源を使用した加熱乾燥が有用であり、乾燥手段によって行われる。
【0045】
前記乾燥手段としては、記録媒体の記録面を均一に加熱可能であるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、温風(熱風)を印字面に吹き付けることによる温風乾燥、記録媒体に接するドラムローラーを暖めることによるドラム乾燥、ニクロム線ヒーター、ハロゲンヒーター、セラミックヒーター、カーボンヒーターなどが挙げられる。これらの中でも、風量や温度で乾燥強度の調節が容易で、記録媒体に直接触れることなく印字面を素早く均一に加熱することが可能であり、生産性や画質が向上する点で、温風乾燥が好ましい。
【0046】
前記乾燥工程における記録媒体の表面温度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以上110℃以下が好ましく、70℃以上100℃以下がより好ましい。前記表面温度が50℃以上であると、オーバーコート処理液に含まれる樹脂の合着が進むため耐擦過性が向上し、前記表面温度が110℃以下であると、乾燥速度が穏やかになるため光沢度が向上する。
【0047】
前記乾燥工程において温風を用いる場合の温風の風速としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5m/s以上20m/s以下が好ましく、8m/s以上15m/s以下がより好ましい。前記風速が5m/s以上であると、生産性が向上し、前記風速が20m/s以下であると、光沢度が向上する。
【0048】
前記乾燥工程における乾燥時間としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50msec以上700msecが好ましく、200msec以上500msecがより好ましい。乾燥時間が50msec以上であると、インク膜が十分に乾燥し平滑化工程で部材にインクが付着したりして画像の光沢性することを抑制できる。乾燥時間が700msec以下であると、高い生産性を実現することができる。
【0049】
<平滑化工程>
前記平滑化手段としては、加圧部材及び加熱部材によって前記画像を平滑化する工程である。平滑化工程により、インク膜は圧縮されて密で平滑なインク膜を形成でき、高い耐擦過性と光沢性を付与することができる。また、平滑化工程は加熱しながら行うことがより好ましい。加熱しながら平滑化を行うことによりインク膜が軟化し、より密で平滑なインク膜にすることができ、更なる耐擦過性と光沢性の向上に繋げることができる。
【0050】
前記インク中には、ウレタンアクリレート樹脂エマルジョンが含まれており加熱時にインク膜が軟化しやすくなるため、前記平滑化工程において、密で平滑なインク膜を形成しやすくなり高い耐擦過性と光沢性を付与することができる。
【0051】
前記加圧部材及び加熱部材の組合せとしては、加圧ローラと加熱ローラとの組合せ、加圧ローラと加熱ローラと無端ベルトとの組合せ、加圧ローラとホットプレートとの組合せなどが挙げられる。これらの中でも、画像の光沢性向上の観点から加圧ローラと加熱ローラとの組合せが好ましい。加圧ローラと加熱ローラとの組合せの手段を用いて、前記加圧ローラを加熱乾燥工程後の記録媒体の印字面と接触させ、加熱ローラは記録媒体の裏面と接触させることが好ましい。
【0052】
前記加圧ローラとしては、表面エネルギーの低い撥水性部材を表面に設けたローラであることが好ましい。
前記加圧ローラとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体などのフッ素系樹脂、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム材料、樹脂や金属、ゴムの表面にフッ素処理をしたものなどが挙げられる。加圧ローラへのインク付着を抑制し画像の光沢性向上をさせる観点から、四フッ化エチレン樹脂、フルオロシリコーンゴムを加圧ローラの部材として用いることが好ましい。
【0053】
前記加熱ローラとしては、ローラ部材の内部に加熱部を内蔵することでローラ表面を加熱することができるものが好ましい。
前記ローラ部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加圧ローラ同様、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン/パーフルオロアルコキシエチレン共重合体などのフッ素系樹脂、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴムなどのゴム材料、樹脂や金属、ゴムの表面にフッ素処理をしたものなどが挙げられる。これらの中でも、前記加熱部の温度に対して耐久できる部材を使用することが好ましい。
【0054】
前記加熱部としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハロゲンヒーターランプなどが挙げられる。
【0055】
前記加圧ローラ及び前記加熱部ローラ部における加熱温度としては、50℃以上110℃以下が好ましく、70℃以上110℃以下がより好ましく、80℃以上100℃以下が特に好ましい。前記加熱が70℃以上であると、平滑化工程時にインク膜を軟化させてより光沢性の高い画像を形成することができる。前記表面温度が110℃以下であると、過度にインク膜を加熱することで樹脂成分が分解して耐擦過性が悪化してしまうことを抑制することができる。
【0056】
前記平滑化工程における加圧圧力としては、5.0×10Pa以上5.0×10Pa以下が好ましく、1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下がより好ましく、1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下が特に好ましい。前記平滑化工程における加圧圧力が5.0×10Pa以上であると、密で平滑なインク膜を形成できるため、光沢性と耐擦過性の向上に繋がる。前記平滑化工程における加圧圧力が5.0×10Pa以下であると、加圧部が不自然に加圧されることによって画像の外観を損ねることを抑制することができる。
【0057】
図1に、本発明の画像形成方法を実施するためのインクジェット記録装置の一例を示す。
本発明のインクジェット記録装置は、インクジェットヘッド2、活性エネルギー線照射装置3、乾燥手段4、加圧部材5、加熱部材6、搬送ベルト7を有する。
本発明の画像形成方法は、記録媒体1上に、インクジェットヘッド2によってインクを付与するインク印字工程を行い、その後、インクが印字された前記記録媒体に対して活性エネルギー線照射装置3によって活性エネルギー線を照射する活性エネルギー線照射工程が行われ、前記インクを硬化させる。その後、乾燥手段4によって硬化したインクを乾燥させる乾燥工程が行われる、その後、加圧部材5及び加熱部材6によって平滑化工程が行われる。前記記録媒体1は、搬送ベルト7によって、各工程に搬送される。
【0058】
<記録媒体>
記録に用いる記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、ボール紙、段ボール、ライナー紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙などが挙げられる。
【実施例0059】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、例中の「部」は「質量部」であり、「%」は、評価基準中のものを除き、「質量%」である。
【0060】
-シアン料分散液の調製例-
機械式撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレン11.2質量部、アクリル酸2.8質量部、ラウリルメタクリレート12.0質量部、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0質量部、スチレンマクロマー4.0質量部、及びメルカプトエタノール0.4質量部を混合し、65℃に昇温した。
次に、スチレン100.8質量部、アクリル酸25.2質量部、ラウリルメタクリレート108.0質量部、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0質量部、ヒドロキシルエチルメタクリレート60.0質量部、スチレンマクロマー36.0質量部、メルカプトエタノール3.6質量部、アゾビスメチルバレロニトリル2.4質量部、及びメチルエチルケトン18質量部を混合した混合溶液を2.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。滴下後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8質量部及びメチルエチルケトン18質量部の混合溶液を0.5時間かけて、フラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスメチルバレロニトリル0.8質量部を添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364質量部を添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800質量部得た。
次に、得られたポリマー溶液Aを28質量部と、フタロシアニン顔料(大日精化工業株式会社、クロモファインブルーA-220JC)26質量部、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液13.6質量部、メチルエチルケトン20質量部、及びイオン交換水13.6質量部を十分に撹拌した後、ロールミルを用いて混練しペーストを得た。得られたペーストを純水200質量部に投入し、充分に攪拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、更に粗大粒子を除くためにこの分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、顔料15質量%含有、固形分20質量%の顔料含有ポリマー微粒子分散液を得た。得られた顔料分散液におけるポリマー微粒子の平均粒子径(D50)を測定した。なお、粒度分布測定装置(日機装株式会社製、ナノトラックUPA-EX150)で測定した平均粒子径(D50)は56.0nmであった。
【0061】
(製造例1)
-インク1の調製-
下記表1に示す水溶性有機溶剤(湿潤剤)、及び水を混合し、1時間撹拌して均一に混合する。重合性材料を添加して1時間撹拌し、顔料分散液、重合開始剤、消泡剤、pH調整剤を添加し1時間撹拌した。この分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、粗大粒子やごみを除去して、インクジェット用インク1を作製した。インクジェット用インク1の硬化・乾燥膜の動的粘弾性の測定結果は表2から表4に示す。
【0062】
(製造例2~10)
-インク2~10の調製-
製造例1において、表1に記載の組成に変更した以外は、製造例1と同様の方法でインク2~10を調製した。インク2~10の貯蔵弾性率G’(Pa)の測定結果を表2から表4に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
(実施例1)
記録ヘッドとしてピエゾ方式のオンデマンド型ヘッドを搭載し、インク印字工程、活性エネルギー線照射工程、乾燥工程、平滑化工程を全てインラインで1回の記録媒体搬送で行えるようにしたシングルパス印刷装置を用いて、上記インク1によって画像を形成した。
まず、インク印字工程において、インク印字手段としてのピエゾ方式のオンデマンド型ヘッドから、ヘッドギャップ2mm、1滴あたりの吐出量4pl、1,200dpi、付着量1.0μl/cmの条件で、記録媒体(コートボール紙OKボール、王子製紙株式会社製)にインク1を吐出し画像を印字した。
その後、活性エネルギー線照射工程において、活性エネルギー線照射手段としてのIntegration technology製の紫外線照射装置Subzero085(Dバルブ使用)を用いて紫外線を照射し、前記画像を硬化させた。前記紫外線照射装置では2灯のランプを使用して、UVランプ強度が3.7W/cm、UV-Aの積算光量が352mJ/cmとなるように紫外線を照射した。
その後、乾燥工程において、乾燥手段としての温風加熱ヒーターを用いて、乾燥温度が70℃、風速が10m/s、乾燥時間が100msecの条件で画像を乾燥させた。
その後、平滑化工程において、平滑化手段としての加圧ローラ及び加熱ローラを用いて100℃で加熱しながら圧力2.1×10Paで画像を平滑化させた。
また、画像の形成は、23±0.5℃、50±5%RHに調整された環境条件下で実施した。
【0066】
(実施例2~13及び比較例1~4)
実施例1においてインク、平滑化工程における圧力及び温度と、加熱乾燥工程における温度及び時間とを表3から表5に記載の内容に変更した以外は、実施例1と同様に実施例2~13及び比較例1~4を得た。
【0067】
実施例1~13及び比較例1~4において、得られたインクジェット用インク及び処理液を使用し、「耐擦過性」、「光沢性」及び「生産性」を測定及び評価した。結果を表3から表5に示す。
【0068】
<耐擦過性評価>
前記のシングルパス印刷装置を用いて、5cm×20cmのベタ画像を作製し、次に、摩擦堅牢度試験機RT-300(大栄科学精器製作所製)(染色堅牢度試験方法(JIS L-0849)に規定されている摩擦試験機II形(学振形)に準拠した装置)に、作製した硬化物とJIS L 0803準拠 試験用添付白布 綿(カナキン3号)と取り付け、加重分銅500gを取り付けて、硬化物を100回、往復摩擦させた。試験後の綿布の濃度を、eXact Scan(X-Rite製)で測定し、試験していない綿布との濃度差を評価した。測定結果を以下の評価基準に基づいて評価した。評価はAが最も良く、許容範囲はC以上とした。
[評価基準]
A:0.02以下
B:0.02超0.1以下
C:0.1超0.2以下
D:0.2超0.3以下
E:0.3超
【0069】
<光沢性評価>
前記のシングルパス印刷装置を用いて、5cm×20cmのベタ画像を作製した。前記画像の光沢性は、目視にて以下の評価基準に基づいて評価した。
[評価基準]
A:非常に高い光沢感があり、画像に高級感がある
B:非常に高い光沢感がある
C:高い光沢感がある(記録媒体地肌部よりもやや光沢が高いレベル)
D:やや光沢感がある(記録媒体地肌部と同程度の光沢レベル)
E:光沢感がない(記録媒体地肌部よりも光沢が低いレベル)
【0070】
<生産性評価>
前記のシングルパス印刷装置を用いて、5cm×5cmの単色ベタパッチが並ぶ画像を作製した。前記画像の生産性は、画像の滲み状態を目視にて以下の評価基準に基づいて評価した。評価はAが最も良く、許容範囲はC以上とした。
【0071】
[評価基準]
A:色の境界の滲みは見られない
B:一部で色の境界の滲みが見られる
C:全体に色の境界の滲みが見られる
D:激しい色の境界の滲みが見られ、目視で明らかに分かるレベル
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
【表5】
【0075】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 記録媒体に、重合性化合物及び重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化性インクを吐出して画像を形成するインク印字工程と、
前記画像に活性エネルギー線を照射し、前記画像を硬化させる活性エネルギー線照射工程と、
硬化した前記画像を乾燥させる乾燥工程と、
加圧部材及び加熱部材によって前記画像を平滑化する平滑化工程と、を有する画像形成方法であり、
前記重合性化合物が、ウレタンアクリレート樹脂エマルジョン及び重合性モノマーを含み、
前記重合性モノマーの1分子あたりの二重結合数が4以上6以下であることを特徴とする画像形成方法である。
<2> 前記ウレタンアクリレート樹脂エマルジョンの含有量が、1.1質量%以上8.8質量%以下である、前記<1>に記載の画像形成方法である。
<3> 前記ウレタンアクリレート樹脂エマルジョンの含有量が、2.2質量%以上6.6質量%以下である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<4> 前記重合性モノマーの含有量が、4.0質量%以上12.0質量%以下である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<5> 前記重合性モノマーの含有量が、6.0質量%以上10.0質量%以下である、前記<1>から<4>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<6> 前記平滑化工程において、1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下の圧力で、前記画像を平滑化する、前記<1>から<5>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<7> 前記平滑化工程において、前記加熱部材の表面温度が、70℃以上110℃以下である、前記<1>から<6>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<8> 前記乾燥工程において、乾燥温度が50℃以上110℃以下である、前記<1>から<7>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<9> 前記乾燥工程における乾燥時間が、50msec以上700msec以下である、前記<1>から<8>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<10> 前記画像形成方法において、50mmφのテフロン(登録商標)製シャーレ中で、UV-A積算光量が5J/cm及び照度が5.0W/cmとなるように紫外線を照射し、乾燥温度が100℃、乾燥時間が12時間の条件で乾燥させた後の平滑化工程時の加熱温度における貯蔵弾性率G‘が、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下である活性エネルギー線硬化性インクである、前記<1>から<9>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<11> 前記画像形成方法において、50mmφのテフロン(登録商標)製シャーレ中で、UV-A積算光量が5J/cm及び照度が5.0W/cmとなるように紫外線を照射し、乾燥温度が100℃、乾燥時間が12時間の条件で乾燥させた後の25℃における貯蔵弾性率G‘が、1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下である活性エネルギー線硬化性インクである、前記<1>から<10>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<12> 記録媒体に、重合性化合物及び重合開始剤を含む活性エネルギー線硬化性インクを吐出して画像を形成するインク印字手段と、
前記画像に活性エネルギー線を照射し、前記画像を硬化させる活性エネルギー線照射手段と、
硬化した前記画像を乾燥させる乾燥手段と、
加圧部材及び加熱部材によって前記画像を平滑化する平滑化手段と、を有するインクジェット記録装置であり、
前記重合性化合物が、ウレタンアクリレート樹脂エマルジョン及び重合性モノマーを含み、
前記重合性モノマーの1分子あたりの二重結合数が4以上6以下であることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0076】
前記<1>から<11>のいずれかに記載の画像形成方法、及び前記<12>に記載のインクジェット記録装置は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特開2013-237781公報
【特許文献2】特許第4714949号公報
【特許文献3】特許第5764416号公報
【特許文献4】特許第5486536号公報
【特許文献5】特開2008-201955公報
【符号の説明】
【0078】
1 記録媒体
2 インクジェットヘッド
3 活性エネルギー線照射装置
4 乾燥手段
5 加圧部材
6 加熱部材
7 搬送ベルト
図1