(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023098697
(43)【公開日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ロータ、及びモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20230703BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022209742
(22)【出願日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2021215096
(32)【優先日】2021-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】萱野 雅浩
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 匡
(72)【発明者】
【氏名】伊東 和徳
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CA14
5H622PP10
(57)【要約】
【課題】総トルクの低下を抑制しつつ、耐遠心力性能を確保可能なロータ、及びモータを提供する。
【解決手段】ロータ30は、ロータコア20と、一極対以上の磁極部10と、を備える。磁極部10は、第1磁石孔21と、第2磁石孔22と、第1ボンド磁石31と、第2ボンド磁石32と、第1磁路41と、第2磁路42と、第3磁路43と、第1リブ44と、中央リブ45Aと、第1周辺リブ45Bと、第2周辺リブ45Cと、を備える。中央リブ45Aと第1周辺リブ45Bと第2周辺リブ45Cの幅W2は、第1リブ44の幅W1よりも広く、且つ互いに等しい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に沿って延伸した円柱状に形成されたロータコアと、前記ロータコアに埋め込まれるボンド磁石とを備え、これらロータコア及びボンド磁石で構成される一極対以上の磁極部を有するロータであって、
前記磁極部は、
前記回転軸の軸方向視において、前記ロータコアの径方向の外側に向かって開いた円弧状に形成され、前記ボンド磁石としての第1ボンド磁石が埋め込まれた第1磁石孔と、
前記軸方向視において、前記第1磁石孔よりも前記径方向の内側に設けられ、前記径方向の外側に向かって開いた円弧状に形成され、前記ボンド磁石としての第2ボンド磁石が埋め込まれた第2磁石孔と、
前記第1磁石孔よりも前記径方向の外側に設けられた第1磁路と、
前記第1磁石孔よりも前記径方向の内側、且つ、前記第2磁石孔よりも前記径方向の外側に設けられた第2磁路と、
前記第2磁石孔よりも前記径方向の内側に設けられた第3磁路と、
前記径方向に延伸した磁極中心線に沿って延伸し、前記第1磁路と前記第2磁路とを接続するとともに、前記ロータコアの周方向に沿って前記第1磁石孔を、2つに分割する第1リブと、
前記第2磁路と前記第3磁路とを接続するとともに、前記周方向に沿って前記第2磁石孔を4つに分割する3つの第2リブと、を備え、
前記3つの第2リブは、前記第2磁石孔の前記周方向の中央において、前記磁極中心線に沿って延伸した中央リブと、前記周方向において前記中央リブの両側に設けられた第1周辺リブ及び第2周辺リブと、を含み、
前記中央リブと前記第1周辺リブと前記第2周辺リブの幅は、前記第1リブの幅よりも広く、且つ互いに等しい、
ロータ。
【請求項2】
前記第1ボンド磁石及び前記第2ボンド磁石は、前記第1磁石孔よりも前記径方向の外側且つ前記磁極中心線上に位置する配向中心点に向ってラジアル配向されており、
前記第1磁石孔は、前記第2磁路側の円弧の両端部である第1端部と第2端部とを有し、
前記第1周辺リブは、前記第1端部を通り前記磁極中心線に平行な第1仮想直線と前記磁極中心線との間に設けられており、
前記第2周辺リブは、前記第2端部を通り前記磁極中心線に平行な第2仮想直線と前記磁極中心線との間に設けられている、
請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記第1周辺リブ及び前記第2周辺リブは、前記第3磁路から前記第2磁路に向かうにつれて、徐々に前記磁極中心線に近づくように前記磁極中心線に対して傾斜している、
請求項1又は2に記載のロータ。
【請求項4】
前記第1ボンド磁石及び前記第2ボンド磁石は、前記第1磁石孔よりも前記径方向の外側且つ前記磁極中心線上に位置する配向中心点に向ってラジアル配向されており、
第1交点及び/又は第2交点は、(i)外側領域の重心点上、又は、(ii)前記配向中心点上、又は、(iii)前記重心点から前記径方向の外側、且つ、前記配向中心点までの前記径方向の内側に位置しており、
前記第1交点は、前記第1周辺リブを通り前記第1周辺リブの長手方向に延伸した第1リブ直線と前記磁極中心線との交点であり、
前記第2交点は、前記第2周辺リブを通り前記第2周辺リブの長手方向に延伸した第2リブ直線と前記磁極中心線との交点であり、
前記外側領域は、前記ロータのうちの前記第3磁路よりも前記径方向の外側の領域である、
請求項3に記載のロータ。
【請求項5】
前記第1ボンド磁石及び前記第2ボンド磁石は、前記第1磁石孔よりも前記径方向の外側且つ前記磁極中心線上に位置する配向中心点に向ってラジアル配向されており、
前記第1磁石孔は、前記第1磁路側の円弧の両端部である第3端部と第4端部とを有し、
前記第1周辺リブは、前記第3端部を通り前記磁極中心線に平行な第3仮想直線に対して前記磁極中心線と反対側に設けられており、
前記第2周辺リブは、前記第4端部を通り前記磁極中心線に平行な第4仮想直線に対して前記磁極中心線と反対側に設けられている、
請求項1又は2に記載のロータ。
【請求項6】
前記第2磁路は、前記径方向の外側の第1外縁と、前記径方向の内側の第2外縁と、を有し、
前記第1外縁及び前記第2外縁は、前記磁極中心線上の第1外縁中心点を中心とする円弧に形成されている、
請求項1又は2に記載のロータ。
【請求項7】
前記第1ボンド磁石及び前記第2ボンド磁石は、前記第1磁石孔よりも前記径方向の外側且つ前記磁極中心線上に位置する配向中心点に向ってラジアル配向されており、
前記第1外縁中心点は、前記配向中心点と一致する、
請求項6に記載のロータ。
【請求項8】
前記第2磁石孔の配向方向の幅は、前記ロータコアの外周縁から前記磁極中心線に近づくにつれて、前記径方向の内側に向けて拡大している、
請求項1又は2に記載のロータ。
【請求項9】
前記第3磁路は、前記径方向の外側の第3外縁を有し、
前記第3外縁の前記第1周辺リブから前記第2周辺リブまでの部分は、前記磁極中心線上の第2外縁中心点を中心とする円弧状に形成されている、
請求項1又は2に記載のロータ。
【請求項10】
前記第1ボンド磁石及び前記第2ボンド磁石は、前記第1磁石孔よりも前記径方向の外側且つ前記磁極中心線上に位置する配向中心点に向ってラジアル配向されており、
前記第2外縁中心点は、前記配向中心点と一致する、
請求項9に記載のロータ。
【請求項11】
前記第3磁路は、前記径方向の外側の第3外縁を有し、
前記第3外縁は、前記ロータコアの外周縁上の2つの外縁端部と、前記2つの外縁端部からそれぞれ延伸した2つの外縁直線部と、を有し、
前記2つの外縁直線部は、隣接する前記磁極部との境界である磁極境界線と平行な直線形状に形成されている、
請求項1又は2に記載のロータ。
【請求項12】
前記第1ボンド磁石及び前記第2ボンド磁石は、前記第1磁石孔よりも前記径方向の外側且つ前記磁極中心線上に位置する配向中心点に向ってラジアル配向されており、
前記第1磁石孔は、2つの第3磁石孔を含み、
前記第2磁石孔は、前記ロータコアの外周側に配置された2つの第4磁石孔と、前記中央リブ側に配置された2つの第5磁石孔とを含み、
前記2つの第3磁石孔の各々は、前記ロータコアの外周縁に沿って配置された2つの第1丸角部と、前記第1リブに沿って配置された2つの第2丸角部と、を備え、
前記2つの第4磁石孔の各々は、前記ロータコアの外周縁に沿って配置された2つの第3丸角部を備え、
前記2つの第5磁石孔の各々は、前記中央リブに沿って配置された2つの第4丸角部を備え、
前記2つの第1丸角部と前記2つの第3丸角部のうち前記配向中心点から遠い位置に配置された丸角部の曲率半径は、前記配向中心点から近い位置に配置された丸角部の曲率半径よりも大きく、
前記2つの第2丸角部と前記2つの第4丸角部のうち前記配向中心点から遠い位置に配置された丸角部の曲率半径は、前記配向中心点から近い位置に配置された丸角部の曲率半径よりも大きい、
請求項1又は2に記載のロータ。
【請求項13】
請求項1又は2に記載のロータと、
ティースと、前記ティースに巻回されるコイルと、を有するステータと、を備え、
前記第2磁路の幅は、前記ティースの幅以上であり、
前記第3磁路の幅は、前記ティースの幅の半分以上である、
モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータ及びモータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のロータは、円筒状のロータコアと、一磁極ごとに形成された複数の磁石列と、リブと、を備える。複数の磁石列の各々は、ロータコアの径方向の外側に向って開口する同じ中心点の円弧状に形成されており、複数のボンド磁石を有する。リブは、複数の磁石列の各々において、隣接するボンド磁石間に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のリブは、ロータが回転したときの遠心力に対する応力を緩和して、ロータの破損を抑制する。リブを設けることによってロータの強度は向上するが、外部からロータへ入る磁束がリブへ流れる。そのため、リラクタンストルクに寄与する磁束が減少し、リラクタンストルクが低下する。ひいては、ロータを適用したモータの効率が低下する。
【0005】
本開示は、総トルクの低下を抑制しつつ、耐遠心力性能を確保可能なロータ、及びモータを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のロータ(30)は、ロータコア(20)及びボンド磁石(31,32)で構成される一極対以上の磁極部(10)を有する。ロータコア(20)は、回転軸に沿って延伸した円柱状に形成される。ボンド磁石(31,32)は、ロータコア(20)に埋め込まれる。磁極部(10)は、第1磁石孔(21)と、第2磁石孔(22)と、第1ボンド磁石(31)と、第2ボンド磁石(32)と、第1磁路(41)と、第2磁路(42)と、第3磁路(43)と、第1リブ(44)と、3つの第2リブ(45A,45B,45C)と、を備える。第1磁石孔(21)は、回転軸の軸方向視において、ロータコア(20)の径方向の外側に向って開いた円弧状に形成され、ボンド磁石としての第1ボンド磁石が埋め込まれる。第2磁石孔(22)は、軸方向視において、第1磁石孔(22)よりも径方向の内側に設けられ、径方向の外側に向って開いた円弧状に形成され、ボンド磁石としての第2ボンド磁石が埋め込まれる。第1磁路(41)は、第1磁石孔(21)よりも径方向の外側に設けられる。第2磁路(42)は、第1磁石孔(21)よりも径方向の内側、且つ、第2磁石孔(22)よりも径方向の外側に設けられる。第3磁路(43)は、第2磁石孔(22)よりも径方向の内側に設けられる。第1リブ(44)は、径方向に延伸した磁極中心線(L0)に沿って延伸し、第1磁路(41)と第2磁路(42)とを接続するとともに、ロータコア(20)の周方向に沿って第1磁石孔(21)を、2つ(21A,21B)に分割する。3つの第2リブ(45A,45B,45C)は、第2磁路(42)と第3磁路(43)とを接続するとともに、周方向に沿って第2磁石孔(22)を4つ(22A,22B,22C,22D)に分割する。3つの第2リブ(45A,45B,45C)は、中央リブ(45A)と、第1周辺リブ(45B)と第2周辺リブ(45C)と、を含む。中央リブ(45A)は、第2磁石孔(22)の周方向の中央において、磁極中心線(L0)に沿って延伸する。第1周辺リブ(45B)及び第2周辺リブ(45C)は、周方向において中央リブ(45A)の両側に設けられる。中央リブ(45A)と第1周辺リブ(45B)と第2周辺リブ(45C)の幅(W2)は、第1リブ(44)の幅(W1)よりも広く、且つ互いに等しい。
【0007】
ロータが回転すると、遠心力がロータに作用する。第2リブは、第1リブよりも支える質量が大きいため、第2リブには、第1リブよりも、より大きな遠心力に抗する必要がある。第1リブ及び第2リブに生じる応力が、第1リブ及び第2リブの材料の限界値(言い換えると降伏点)を超えると、第1リブ及び第2リブが塑性変形する。本開示では、第1リブよりも大きな応力が発生する第2リブの幅を、第1リブの幅よりも広くし、且つ、第2リブの本数を第1リブの本数よりも増やしている。これにより、幅を広く、且つ本数を増やす前と比較して第2リブに発生する応力が低下するため、ロータの強度が向上し、耐遠心力性能が向上する。また、第2リブよりも小さな応力が生じる第1リブの幅は、第2リブの幅よりも狭くなっているため、第1リブへ流れる磁束が抑制され、リラクタンストルクの低下が抑制される。さらに、中央リブと第1周辺リブと第2周辺リブの幅が、互いに等しいため、いずれかが異なる場合と比較して、第2磁路から第3磁路への短絡が均一化され、第2磁路における磁束の流れが安定し、リラクタンストルクの低下がより抑制される。したがって、総トルクの低下を抑制しつつ、耐遠心力性能を確保することができる。
【0008】
また、上記ロータは、永久磁石としてボンド磁石を備えているため、高速回転時に顕著に影響が現れる渦電流の発生が抑制されるので、高速回転時の効率悪化を抑制する効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係るモータの鉛直断面図である。
【
図2】本実施形態に係るモータの1磁極の鉛直断面図である。
【
図3】本実施形態に係るロータの第1及び第2ボンド磁石の形状を示す図である。
【
図4】本実施形態に係るロータの第1及び第2ボンド磁石の形状を示す図である。
【
図5】第1参考例に係るモータの1磁極の鉛直断面図である。
【
図6】第2参考例に係るモータの1磁極の鉛直断面図である。
【
図7】本実施形態、第1参考例及び第2参考例に係るマグネットトルク及びリラクタンストルクの比較を示す図である。
【
図8】第2実施形態に係るロータの1磁極の鉛直断面図である。
【
図9】第2実施形態に係るロータに生じる応力の分布を示す図である。
【
図10】第3参考例に係るロータに生じる応力の分布を示す図である。
【
図11】第4参考例に係るロータに生じる応力の分布を示す図である。
【
図12】第2実施形態、第3参考例及び第4参考例の各々の応力の最大値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、本開示のロータ及びモータの例示的な実施形態を説明する。
<1-1.全体構成>
図1は、本実施形態に係るモータ100を回転軸に垂直な断面で切断した鉛直断面図である。モータ100は、ロータ30と、ステータ80と、を備える。ステータ80は、複数のティース81と、複数のティース81に巻回されるコイル82と、を備え、ロータ30の外側に配置される。
【0011】
ロータ30は、埋め込み磁石型(IPM)であり、ロータコア20と、複数の磁極部10と、を備える。複数の磁極部10は、ロータコア20の一磁極ごとに形成されている。本実施形態では、ロータ30は、8個の磁極部10を備える。
【0012】
図2~4は、本実施形態に係るロータ30の1つの磁極部10の鉛直断面図である。磁極部10は、第1磁石孔21と、第2磁石孔22と、第1磁路41と、第2磁路42と、ボンド第3磁路43と、第1リブ44と、3つの第2リブ45A,45B,45Cと、第1磁石31と、第2ボンド磁石32と、を備える。
【0013】
第1磁石孔21は、ロータコア20の回転軸の軸方向視において、ロータコア20の径方向の外側に向って開いた円弧状に形成されている。以下では、ロータコア20の回転軸方向を軸方向、ロータコア20の径方向を径方向、ロータコア20の周方向を周方向と称する。
【0014】
第2磁石孔22は、軸方向視において、第1磁石孔21よりも径方向の内側に設けられている。第2磁石孔22は、径方向の外側に向って開いた円弧状に形成されている。
第1磁路41は、第1磁石孔21よりも径方向の外側に設けられている。すなわち、第1磁路41は、第1磁石孔21と、ロータコア20の外周縁250との間に設けられている。第2磁路42は、第1磁石孔21よりも径方向の内側、且つ、第2磁石孔22よりも径方向の外側に設けられている。第3磁路43は、第2磁石孔22よりも径方向の内側に設けられている。
【0015】
第1リブ44は、磁極中心線L0に沿って延伸し、第1磁路41と第2磁路42を接続する。磁極中心線L0は、回転軸の軸心から磁極の中心を通るように引いた経線である。第1リブ44は、周方向に沿って、第1磁石孔21を2つの第3磁石孔21A,21Bに分割する。2つの第3磁石孔21A,21Bは、磁極中心線L0に対して対称に配置されている。
【0016】
3つの第2リブ45A,45B,45Cは、第2磁路42と第3磁路43とを接続し、周方向に沿って、第2磁石孔22を2つの第4磁石孔22A,22B及び2つの第5磁石孔22C,22Dに分割する。以下では、3つの第2リブ45A,45B,45Cをまとめて第2リブ45と称する。
【0017】
第2リブ45は、中央リブ45Aと、第1周辺リブ45Bと、第2周辺リブ45Cと、を含む。中央リブ45Aは、磁極中心線L0に沿って延伸している。第1周辺リブ45B及び第2周辺リブ45Cは、中央リブ45Aの両側に設けられている。第1周辺リブ45B及び第2周辺リブ45Cは、周方向において、磁極中心線L0から等距離に磁極中心線L0に沿って設けられている。すなわち、第1周辺リブ45B及び第2周辺リブ45Cは、磁極中心線L0に対して対称に配置されている。
【0018】
2つの第4磁石孔22A,22Bは、磁極中心線L0に対して対称に配置されており、第1及び第2周辺リブ45B,45Cと外周縁250との間に配置されている。2つの第5磁石孔22C,22Dは、磁極中心線L0に対して対称に配置されており、第1及び第2周辺リブ45B,45Cと中央リブ45Aとの間に配置されている。
【0019】
第1ボンド磁石31及び第2ボンド磁石32は、磁粉と樹脂とを混合した材料で形成されている。第1ボンド磁石31及び第2ボンド磁石32は、配向中心点Pcに向ってラジアル配向されている。配向中心点Pcは、第1磁石孔21よりも外側且つ磁極中心線L0上に位置する。本実施形態では、配向中心点Pcは、外周縁250の外側且つ磁極中心線L0上に位置する。
【0020】
図2に示す磁極部10では、第1及び第2ボンド磁石31,32の磁化ベクトルは、径方向の内側から外側へ向いている。この磁極部10に隣接する磁極部10(図示なし)では、第1及び第2ボンド磁石31,32の磁化ベクトルは、径方向の外側から内側へ向いている。
【0021】
第1ボンド磁石31は、2つの分割磁石31A,31Bを含む。2つの分割磁石31A,31Bのうちの一方は、第3磁石孔21A,21Bの一方に埋め込まれており、2つの分割磁石31A,31Bの他方は、2つの第3磁石孔21A,21Bの他方に埋め込まれている。詳しくは、分割磁石31Aは、第3磁石孔21Aの内周面に接するように、第3磁石孔21Aに隙間なく充填されており、分割磁石31Bは、第3磁石孔21Bの内周面に接するように、第3磁石孔21Bに隙間なく充填されている。
【0022】
第2ボンド磁石32は、2つの周辺磁石32A,32Bと、2つの中央磁石32C,32Dを含む。2つの周辺磁石32A,32Bのうちの一方は、2つの第4磁石孔22A,22Bのうちの一方に埋め込まれ、2つの周辺磁石32A,32Bのうちの他方は、2つの第4磁石孔22A,22Bのうちの他方に埋め込まれている。2つの中央磁石32C,32Dのうちの一方は、2つの第5磁石孔22C,22Dのうちの一方に埋め込まれ、2つの中央磁石32C,32Dのうちの他方は、2つの第5磁石孔22C,22Dのうちの他方に埋め込まれている。詳しくは、周辺磁石32Aは、第4磁石孔22Aの内周面に接するように、第4磁石孔22Aに隙間なく充填されており、周辺磁石32Bは、第4磁石孔22Bの内周面に接するように、第4磁石孔22Bに隙間なく充填されている。中央磁石32Cは、第5磁石孔22Cの内周面に接するように、第5磁石孔22Cに隙間なく充填されており、中央磁石32Dは、第5磁石孔32Dの内周面に接するように、第5磁石孔32Dに隙間なく充填されている。
【0023】
第1リブ44は、幅W1を有し、第2リブ45は、幅W2を有する。第2リブ45の幅W2は、第1リブ44の幅W1よりも広い。
ロータ30の回転に伴いロータコア20は遠心力を受ける。第1リブ44は、第1磁路41と第1磁路41の径方向内側に位置する第2磁路42とを接続する。よって、第1リブ44には、遠心力により第1磁路41が径方向外側へ変位しようする力に抗する応力が発生する。
【0024】
第2リブ45は、第2磁路42と第2磁路42の径方向内側に位置する第3磁路43とを接続する。さらに第2磁路42には、上記の通り第1リブ44を介して第1磁路41が接続されている。よって、第2リブ45には、遠心力により第1磁路41及び第2磁路42が径方向外側へ変位しようする力に抗する応力が発生する。
【0025】
第2リブ45は、第1リブ44よりも大きな遠心力に抗する必要がある。このため、第2リブ45の本数を、第1リブ44よりも多い3本に設定している。また、第2リブ45の幅W2を、第1リブ44の幅W1よりも大きく設定している。
【0026】
第2リブ45の幅W2が、第1リブ44の幅W1よりも広くなっているため、幅W2を広くする前と比較して第2リブ45に生じる応力が低下する。したがって、ロータ30の強度が向上し、耐遠心力性能が向上する。一方で、第1リブ44の幅W1、及び第2リブ45の幅W2のすべてを広くすると、ステータ80からロータ30へ入る磁束のうち、各リブへ入る磁束が増加し、リラクタンストルクTrに寄与する磁束が減少する。そこで、第1リブ44の幅W1を、第2リブ45の幅W2よりも狭くすることにより、リラクタンストルクTrの低下を抑制することができる。
【0027】
さらに、中央リブ45Aと第1周辺リブ45Bと第2周辺リブ45Cの幅W2は互いに等しい。この構成により、リブの幅が広いものと狭いものとが混在する場合と比較して、第2磁路42から第3磁路43への短絡が均一化されるため、第2磁路42における磁束の流れがより安定することにより、リラクタンストルクTrの低下がより抑制される。
【0028】
図3に示すように、第2磁路42は、第1外縁421と第2外縁422とを備える。第1外縁421は、第2磁路42の径方向の外側の外縁である。第2外縁422は、第2磁路42の径方向の内側の外縁である。第1及び第2外縁421,422は、配向中心点Pcを中心とする円弧に形成されている。すなわち、第2磁路42の配向方向(すなわち、磁化方向)の幅Waは一定になっている。したがって、ステータ80からロータ30へ入る磁束が第2磁路42へ流れやすく、リラクタンストルクTrを確保しやすい。
【0029】
さらに、第2磁路42の配向方向の幅Waは、ティース81の幅Wtよりも大きい。そのため、ティース81から供給される磁束が第2磁路42へ流れやすく、第2磁路42を流れる磁束量が確保される。
【0030】
また、第1外縁421及び第2外縁422が配向中心点Pcを中心としているため、第1及び第2ボンド磁石31,32から生じる磁束が、第2磁路42と直交する。したがって、第1及び第2ボンド磁石31,32から生じる磁束は、磁極中心線L0に沿う成分(いわゆるd-q座標軸におけるd軸成分)となるため、マグネットトルクTmを確保しやすい。
【0031】
また、第1及び第2リブ44,45において、磁気飽和が生じるよう第1及び第2ボンド磁石31,32の磁力を設定している。したがって、第1磁路41から第2磁路42、第2磁路42から第3磁路43へ磁束が流れることが抑制されている。すなわち、磁極中心線L0に沿う磁気抵抗が大きくなり、磁極境界線LL(
図3参照)に沿う磁気抵抗が小さく設定されている。このため、ステータ80からロータ30に供給される磁束は、磁極境界線LL付近から進入し反対側の磁極境界線LL付近からステータ80へ進出する流れるため、リラクタンストルクTrが確保しやすい。
【0032】
図4において、第2磁石孔22上に描かれた破線は、第2磁石孔22の径方向外側の円弧と同心の仮想円弧を示す。仮想円弧は、第2磁石孔22の径方向外側の円弧よりも径方向内側に位置し、第2磁石孔22の外周縁250側の端部(具体的には、後述する第3丸角部221b)を通る円弧である。
【0033】
図4に示すように、第2磁石孔22の配向方向の幅Wcは、外周縁250から磁極中心線L0に近づくにつれて、径方向の内側に向けて拡大している。第2磁石孔22の幅Wcは外側に向けては拡大していないので、第2磁路42の幅Waは一定に維持される。すなわち、幅Wcを径方向の内側に向けて拡大したことにより、幅Waが一定に維持されつつ、第2ボンド磁石32が増大している。
【0034】
また、第3磁路43の配向方向の幅Wbは、磁極中心線L0に近い側において、磁極中心線L0に遠い側と比べて十分に大きいため、幅Wcを径方向の内側に向けて拡大しても、幅Wbが確保され、第3磁路43を流れる磁束量が維持される。すなわち、リラクタンストルクTrを確保しつつ、第2ボンド磁石32の増大分だけマグネットトルクTmが増加する。
【0035】
詳しくは、第4磁石孔22A,22Bの径方向内側の外縁が、外周縁250から磁極中心線L0に近づくにつれて、径方向の内側に向けて拡大している。すなわち、第4磁石孔22A,22Bの配向方向の幅Wcは、外周縁250から磁極中心線L0に近づくにつれて、径方向の内側に向けて拡大している。
【0036】
第4磁石孔22A,22Bの径方向内側の外縁は、第1直線部220A,220Bと、第2直線部220C,220Dを有する。第1直線部220A,220Bは、磁極境界線LLと平行な直線に形成されている。磁極境界線LLは、隣接する2つの磁極部10の境界線であり、ロータコア20の軸心を通る直線である。第1直線部220A,220Bは、第4磁石孔22A,22Bの外周縁250側の端部(具体的には、第3丸角部221b)から延伸した直線に形成されている。第2直線部220C,220Dは、第4磁石孔22A,22Bの第1及び第2周辺リブ45B、45C側の端部から延伸した直線に形成されている。第1直線部220Aと第2直線部220Cとは滑らかな曲線で接続されている。第1直線部220Bと第2直線部220Dとは滑らかな曲線で接続されている。
【0037】
第5磁石孔22C,22Dの径方向内側の外縁は、配向中心点Pcを中心とする円弧状に形成されている。すなわち、第5磁石孔22C,22Dの配向方向の幅Wcは一定に形成されている。
【0038】
図3に示すように、第3磁路43は、第3外縁431を備える。第3外縁431は、第3磁路43の径方向の外側の外縁である。第3外縁431は、第1外縁直線部431aa,431abと、第2外縁直線部431ba,431bbと、外縁円弧部431cと、を備える。さらに、第3磁路43は、外縁端部43a,43bを備える。
【0039】
外縁端部43a,43bは、外周縁250上に位置する端部である。第1外縁直線部431aaは、外縁端部43aから延伸している。第1外縁直線部431abは、外縁端部43bから延伸している。第1外縁直線部431aa,431abは、磁極境界線LLと平行な直線である。第1外縁直線部431aaは、第4磁石孔22Aの第1直線部220Aに対応しており、第1外縁直線部431abは、第4磁石孔22Bの第1直線部220Bに対応している。
【0040】
第2外縁直線部431baは、第1外縁直線部431aaに対して交差する方向に延びる直線であって、第1外縁直線部431aaに滑らかな曲線で接続されている。第2外縁直線部431bbは、第1外縁直線部431abに対して交差する方向に延びる直線であって、第1外縁直線部431abに滑らかな曲線で接続されている。第2外縁直線部431baは、第4磁石孔22Aの第2直線部220Cに対応しており、第2外縁直線部431bbは、第4磁石孔22Bの第2直線部220Dに対応している。
【0041】
第3磁路43の配向方向の幅Wbは、第1外縁直線部431aa,431abの部分で最小になる。第1外縁直線部431aa,431abにおいて、幅Wbは、ティース81の幅Wtの半分よりも大きい。すなわち、第3磁路43の幅Wbは、すべての部分においてティース81の幅Wtの半分よりも大きい。
【0042】
図3に示すように、第1外縁直線部431abと隣接する磁極部10の第1外縁直線部431aaとの間に、2つの磁極部10の第3磁路43が接続した接続磁路430が形成される。同様に、第1外縁直線部431aaと隣接する磁極部10の第1外縁直線部431abとの間に、2つの磁極部10の第3磁路43が接続した接続磁路430が形成される。これらの接続磁路430の幅は第3磁路43の幅であるWbの2倍であり、ティース81の幅Wtよりも大きい。したがって、ティース81から供給される磁束が接続磁路430から第3磁路43へ流れやすく、第3磁路43を流れる磁束量が確保される。
【0043】
外縁円弧部431cは、第3外縁431の第1周辺リブ45Bから第2周辺リブ45Cまでの部分であり、配向中心点Pcを中心とする円弧状に形成されている。外縁円弧部431cは、第5磁石孔22C,22Dの径方向内側の円弧に対応している。
【0044】
すなわち、第3外縁431は、円弧状を維持しつつ、第3磁路43の幅Wbを十分に確保し、且つ、第2ボンド磁石32をできる限り大きくするように形成されている。要するに、第3外縁431は、円弧状の維持と、第3磁路43の幅Wbの確保と、第2ボンド磁石32の大きさの確保とのバランスを取るような形に形成されている。
【0045】
第3外縁431の形状が円弧状に維持されていることにより、第1及び第2ボンド磁石31,32から生じる磁束の多くが、第3磁路43と直交し、マグネットトルクTmを確保しやすい。
【0046】
図4に示すように、第3磁石孔21A,21B、第4磁石孔22A,22B、及び第5磁石孔22C,22Dの各々は、4つの丸角部を備える。丸角部は、所定の曲率の曲面を有する角である。
【0047】
詳しくは、第3磁石孔21A,21Bの各々は、2つの第1丸角部211a,211bと、2つの第2丸角部212a,212bと、を備える。第4磁石孔22A,22Bの各々は、2つの第3丸角部221a,221bを備える。第5磁石孔22C,22Dの各々は、2つの第4丸角部222a,222bを備える。
【0048】
2つの第1丸角部211a,211bは、外周縁250に沿って配置されており、第1丸角部211bは、第1丸角部211aよりも配向中心点Pcから遠い位置に配置されている。2つの第3丸角部221a,221bは、外周縁250に沿って配置されており、第3丸角部221bは、第3丸角部221aよりも配向中心点Pcから遠い位置に配置されている。
【0049】
2つの第1丸角部211a,211b及び2つの第3丸角部221a,221bのうち配向中心点Pcから遠い位置に配置された丸角部の曲率半径は、配向中心点Pcから近い位置に配置された丸角部の曲率半径よりも大きい。すなわち、第3丸角部221b、第3丸角部221a、第1丸角部211b、第1丸角部211aの順に、曲率半径が大きい。丸角部の曲率半径が大きいほど、丸角部はカーブの緩やかな曲面を有する。
【0050】
2つの第2丸角部212a,212bは、第1リブ44に沿って配置されており、第2丸角部212bは、第2丸角部212aよりも配向中心点Pcから遠い位置に配置されている。2つの第4丸角部222a,222bは、中央リブ45Aに沿って配置されており、第4丸角部222bは、第4丸角部222aよりも配向中心点Pcから遠い位置に配置されている。
【0051】
径方向外側よりも径方向内側に位置するリブが支える質量が大きいため、径方向の内側の丸角部には径方向の外側の丸角部と比較して大きな遠心力が作用する。その点、本構成によれば、径方向の内側に位置する丸角部は、径方向の外側に位置する丸角部よりも大きい曲率半径を有しているため、すべて同じ曲率半径の丸角部を採用する場合と比較して、応力の集中を抑制することができる。したがって、ロータ30の耐遠心力性能を確保することができる。
【0052】
一方、上述の丸角部のうち径方向の外側の丸角部は、径方向の内側の丸角部よりも小さい曲率半径を有しているため、すべて同じ曲率半径の丸角部を採用する場合と比較して、とくに第3磁石孔21A,21Bの磁石孔の大きさを確保することができるため、当該磁石孔に埋め込むボンド磁石の量を確保することができる。したがって、マグネットトルクTmを確保することができ、ひいてはロータ30のトルクを確保することができる。
【0053】
<1-2.周辺リブの配置>
次に、
図2を参照して、第1及び第2周辺リブ45B,45Cの位置について説明する。第1周辺リブ45Bは、第1仮想直線L1と磁極中心線L0との間に設けられている。また、第1周辺リブ45Bは、第3仮想直線L3に対して磁極中心線L0と反対側に設けられている。
【0054】
第1仮想直線L1は、第1端部P1を通り磁極中心線L0に平行な直線である。第1端部P1は、第1磁石孔21(具体的には、第3磁石孔21A)の第2磁路42の側の円弧の端部である。第3仮想直線L3は、第3端部P3を通り磁極中心線L0に平行な直線である。第3端部P3は、第1磁石孔21(具体的には、第3磁石孔21A)の第1磁路41側の円弧の端部である。
【0055】
ここで、第1周辺リブ45Bが、第1仮想直線L1と磁極中心線L0との間に設けられているとは、第1周辺リブ45Bの長手方向の中央部分である第1中央部450Bが、第1仮想直線L1と磁極中心線L0と間に設けられていることであり、第1周辺リブ45Bの全体が、第1仮想直線L1と磁極中心線L0との間に設けられていなくてもよい。同様に、第1周辺リブ45Bが、第3仮想直線L3に対して磁極中心線L0と反対側に設けられているとは、第1中央部450Bが、第3仮想直線L3に対して磁極中心線L0と反対側に設けられていることであり、第1周辺リブ45Bの全体が、第3仮想直線L3に対して磁極中心線L0と反対側に設けられていなくてもよい。
【0056】
同様に、第2周辺リブ45Cは、第2仮想直線L2と磁極中心線L0との間に設けられている。また、第2周辺リブ45Cは、第4仮想直線L4に対して磁極中心線L0と反対側に設けられている。
【0057】
第2仮想直線L2は、第2端部P2を通り磁極中心線L0に平行な直線である。第2端部P2は、第1磁石孔21(具体的には、第3磁石孔21B)の第2磁路42の側の円弧の端部である。第4仮想直線L4は、第4端部P4を通り磁極中心線L0に平行な直線である。第4端部P4は、第1磁石孔21(具体的には、第3磁石孔21B)の第1磁路41側の円弧の端部である。
【0058】
また、第2周辺リブ45Cが、第2仮想直線L2と磁極中心線L0との間に設けられているとは、第2周辺リブ45Cの長手方向の中央部分である第2中央部450Cが、第2仮想直線L2と磁極中心線L0との間に設けられていることであり、第2周辺リブ45Cの全体が、第2仮想直線L2と磁極中心線L0との間に設けられていなくてもよい。同様に、第2周辺リブ45Cが、第4仮想直線L4に対して磁極中心線L0と反対側に設けられているとは、第2中央部450Cが、第4仮想直線L4に対して磁極中心線L0と反対側に設けられていることであり、第2周辺リブ45Cの全体が、第4仮想直線L4に対して磁極中心線L0と反対側に設けられていなくてもよい。
【0059】
このように、第1周辺リブ45Bを、第1仮想直線L1と第3仮想直線L3との間に設け、第2周辺リブ45Cを、第2仮想直線L2と第4仮想直線L4との間に設けることにより、マグネットトルクTmを最大化できる。これに対して、第1参考例及び第2参考例に係る第1周辺リブ45B及び第2周辺リブ45Cの配置では、マグネットトルクTmが減少する。
【0060】
なお、第1周辺リブ45Bが、第1仮想直線L1と第3仮想直線L3との間に設けられているとは、第1中央部450Bが、第1仮想直線L1と第3仮想直線L3との間に設けられていることであり、第1周辺リブ45Bの全体が、第1仮想直線L1と第3仮想直線L3との間に設けられていなくてもよい。また、第2周辺リブ45Cが、第2仮想直線L2と第4仮想直線L4との間に設けられているとは、第2中央部450Cが、第2仮想直線L2と第4仮想直線L4との間に設けられていることであり、第2周辺リブ45Cの全体が、第2仮想直線L2と第4仮想直線L4との間に設けられていなくてもよい。
【0061】
図5に、第1参考例に係る磁極部10を示す。第1参考例に係る第1周辺リブ45Bは、第1仮想直線L1と磁極中心線L0との間に設けられているが、第3仮想直線L3に対して磁極中心線L0と反対側に設けられていない。第1参考例に係る第1周辺リブ45Bは、第3仮想直線L3と磁極中心線L0との間に設けられている。同様に、第1参考例に係る第2周辺リブ45Cは、第4仮想直線L4と磁極中心線L0との間に設けられている。
【0062】
すなわち、第1参考例に係る第1及び第2周辺リブ45B,45Cは、本実施形態に係る第1及び第2周辺リブ45B,45Cよりも中央リブ45Aの近くに配置されている。これにより、第1参考例に係る第4磁石孔22A,22Bは、本実施形態に係る第4磁石孔22A,22Bよりも大きく、第1参考例に係る第5磁石孔22C,22Dは、本実施形態に係る第5磁石孔22C,22Dよりも小さい。
【0063】
第1参考例では、本実施形態と比べて、中央磁石32C,32Dが小さくなることにより、中央磁石32C,32Dにおける磁化方向と直交する方向の長さが短くなるため、中央磁石32C,32Dのパーミアンスが上昇する。また、周辺磁石32A,32Bが大きくなることにより、周辺磁石32A,32Bにおける磁化方向と直交する方向の長さが長くなるため、周辺磁石32A,32Bのパーミアンスが低下する。中央磁石32C,32Dのパーミアンスの上昇割合と、周辺磁石32A,32Bのパーミアンスの低下割合とが等しい場合、第1参考例におけるマグネットトルクTmは、本実実施形態におけるマグネットトルクTmと等しい。
【0064】
しかしながら、周辺磁石32A,32Bが大きくなることによって、周辺磁石32A,32Bの形状の非線形性が強くなるため、中央磁石32C,32Dのパーミアンスの上昇割合よりも、周辺磁石32A,32Bのパーミアンスの低下割合の方が大きくなる。したがって、第1参考例に係る第2ボンド磁石32の全体のパーミアンスは、本実施形態に係る第2ボンド磁石32の全体のパーミアンスよりも低下する。ひいては、第1参考例におけるマグネットトルクTmは、本実施形態におけるマグネットトルクTmよりも減少する。
【0065】
図6に、第2参考例に係る磁極部10を示す。第2参考例に係る第1周辺リブ45Bは、第3仮想直線L3に対して磁極中心線L0と反対側に設けられているが、第1仮想直線L1と磁極中心線L0との間に設けられていない。第2参考例に係る第1周辺リブ45Bは、第1仮想直線L1に対して磁極中心線L0と反対側に設けられている。同様に、第2参考例に係る第2周辺リブ45Cは、第2仮想直線L2に対して磁極中心線L0と反対側に設けられている。
【0066】
すなわち、第2参考例に係る第1及び第2周辺リブ45B,45Cは、本実施形態に係る第1及び第2周辺リブ45B,45Cよりも外周縁250の近くに配置されている。これにより、第2参考例に係る第4磁石孔22A,22Bは、本実施形態に係る第4磁石孔22A,22Bよりも小さく、第2参考例に係る第5磁石孔22C,22Dは、本実施形態に係る第5磁石孔22C,22Dよりも大きい。
【0067】
第2ボンド磁石32がラジアル配向されているため、第1及び第2周辺リブ45B,45Cを外周縁250に近づけるほど、第2ボンド磁石32から供給される磁束のうち、第1及び第2周辺リブ45B,45Cを通る磁束の割合が増加する。第1及び第2周辺リブ45B,45Cの磁気抵抗は比較的大きいため、第1及び第2周辺リブ45B,45Cを通る磁束の割合が増加すると、マグネットトルクTmが減少する。
【0068】
図7に、本実施形態と、第1及び第2参考例との比較を示す。コイル82に電流が流れていない時における第1参考例の磁束φmは、本実施形態と比べて3%減少している。また、この時の第2参考例の磁束φmは、本実施形態と比べて5.2%減少している。電流が流れていない時における磁束φmは、第1及び第2ボンド磁石31,32から供給される磁束に相当する。
【0069】
また、モータ100が最大トルクを出力する時における第1参考例のマグネットトルクTmは、本実施形態と比べて2.9%減少している。また、この時の第2参考例のマグネットトルクTmは、本実施形態と比べて5.1%減少している。一方で、この時の第1及び第2参考例のリラクタンストルクTrは、本実施形態と比べて略等しい。
【0070】
したがって、第1及び第2参考例と本実施形態とを比較することにより、第1及び第2周辺リブ45B,45Cの位置に応じて、リラクタンストルクTrはほとんど変化しないが、マグネットトルクTmは変化することがわかる。そして、マグネットトルクTmは、本実施形態のように、第1周辺リブ45Bを、第1仮想直線L1と第3仮想直線L3との間に設け、第2周辺リブ45Cを、第2仮想直線L2と第4仮想直線L4との間に設けることにより、マグネットトルクTmを最大化できることがわかる。
【0071】
また、本実施形態、第1及び第2参考例のいずれでも、総トルクTにおけるリラクタンストルクTrの割合は、総トルクTにおけるマグネットトルクTmの割合よりも大きい。したがって、モータ100は、マグネットトルクTmよりもリラクタンストルクTrを活用したモータと言える。
【0072】
<1-3.効果>
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)ロータ30が回転すると、遠心力がロータ30に作用する。第2リブ45は、第1リブ44よりも支える質量が大きいため、第2リブ45は、第1リブ44よりも、より大きな遠心力に抗する必要がある。第1リブ44及び第2リブ45に生じる応力が、第1リブ44及び第2リブ45の材料の限界値を超えると、第1リブ44及び第2リブ45が塑性変形する。そのため、第1リブ44よりも大きな遠心力に抗する必要がある第2リブ45の幅W2を、第1リブ44の幅W1よりも広くし、且つ、第2リブ45の本数を第1リブ44の本数よりも増やしている。これにより、幅を広く、且つ本数を増やす前と比較して第2リブ45に発生する応力が低下するため、第2リブ45の塑性変形が抑制される。したがって、ロータ30の強度が向上し、耐遠心力性能が向上する。また、第2リブ45よりも小さい応力が生じる第1リブ44の幅W1が、第2リブ45の幅W2よりも狭くなっているため、第1リブ44へ流れる磁束が抑制され、リラクタンストルクTrの低下が抑制される。さらに、中央リブ45Aと第1周辺リブ45Bと第2周辺リブ45Cの幅W2が、互いに等しいため、いずれかが異なる場合と比較して、第2磁路42から第3磁路43への短絡が均一化され、第2磁路42における磁束の流れが安定し、リラクタンストルクTrの低下がより抑制される。したがって、総トルクTの低下を抑制しつつ、耐遠心力性能を確保することができる。
【0073】
また、ロータ30は、永久磁石としてボンド磁石を備えているため、高速回転時に顕著に影響が現れる渦電流の発生が抑制されるので高速回転時の効率悪化を抑制する効果も得られる。
【0074】
(2)第1及び第2ボンド磁石31,32が、配向中心点Pcに向ってラジアル配向されている。したがって、第1及び第2周辺リブ45B,45Cの位置を外周縁250に近づけるほど、第2ボンド磁石32から供給される磁束のうち、第1及び第2周辺リブ45B,45Cを通る磁束の割合が増加する。第1及び第2周辺リブ45B,45Cの磁気抵抗は比較的大きいため、第1及び第2周辺リブ45B,45Cを通る磁束の割合が増加すると、マグネットトルクTmが減少する。これに対して、第1及び第2周辺リブ45B,45Cを、第1及び第2仮想直線L1,L2と磁極中心線L0との間に設けることにより、第2ボンド磁石32から第1及び第2周辺リブ45B,45Cへ出力される磁束が抑制される。よって、マグネットトルクTmの減少を抑制できる。ひいては、総トルクTの低下をより抑制できる。
【0075】
(3)第1及び第2周辺リブ45B,45Cの位置を磁極中心線L0に近づけると、非線形性の強い周辺磁石32A,32Bが大きくなる。その結果、第2ボンド磁石32の全体のパーミアンスが低下し、マグネットトルクTmが減少する。これに対して、第1及び第2周辺リブ45B,45Cを、第3及び第4仮想直線L3,L4に対して磁極中心線L0の反対側に設けることにより、マグネットトルクTmの減少を抑制できる。
【0076】
(4)第1周辺リブ45Bを第1仮想直線L1と第3仮想直線L3との間に配置し、第2周辺リブ45Cを第2仮想直線L2と第4仮想直線L4との間に配置することにより、マグネットトルクTmを最大化できる。ひいては、総トルクTを最大化できる。
【0077】
(5)第1及び第2外縁421,422が同じ中心点の円弧であるため、第2磁路42の配向方向の幅Waが一定である。したがって、ステータ80からロータ30へ入る磁束が第2磁路42へ流れやすくなり、リラクタンストルクTrを確保しやすい。また、第1及び第2外縁421,422の中心点が、配向中心点Pcと一致しているため、第1及び第2ボンド磁石31,32から生じる磁束が第2磁路42と直交する。したがって、マグネットトルクTmを確保しやすい。ひいては、総トルクTの低下をより抑制することができる。
【0078】
(6)第2磁石孔22の配向方向の幅Wcが、外周縁250から磁極中心線L0に近づくにつれて、径方向の内側へ向けて拡大している。これにより、幅Wcが一定の場合と比べて、第2ボンド磁石32を径方向の内側へ向けて大きくし、マグネットトルクTmを増加させることができる。また、幅Wcは径方向の外側へは拡大していないので、第2磁路42の幅Waが維持され、第2磁路42を流れる磁束量を維持できる。さらに、第3磁路43の配向方向の幅Wbは、磁極中心線L0に近い側が遠い側と比べて十分に大きいため、磁極中心線L0の近傍で幅Wcを径方向の内側へ向けて拡大しても、第3磁路43を流れる磁束量を維持できる。よって、リラクタンストルクTrを確保しつつ、マグネットトルクTmを増加させることができるため、総トルクTを増加させることができる。
【0079】
(7)第3外縁431は、外縁円弧部431cを備える。これにより、第3外縁431の形状が円弧状に維持され、第1及び第2ボンド磁石31,32から生じる磁束の多くが、第3磁路43と直交し、マグネットトルクTmを確保しやすい。
【0080】
(8)第3外縁431は、第1外縁直線部431aa,431abを備える。これにより、第3磁路43の幅Wbが最も小さい部分において、互いに隣接する2つの磁極部10の間に、2つ第3磁路43が接続した接続磁路430が形成される。接続磁路430の幅は、ティース81の幅Wtよりも十分に大きいため、リラクタンストルクTrを確保しやすい。また、第4磁石孔22A,22Bの径方向外側の外縁が円弧状に形成され、第4磁石孔22A,22Bの径方向内側の外縁が直線の組み合わせで形成されている。これにより、第4磁石孔22A,22Bの径方向外側及び内側の外縁が円弧状に形成されている場合と比較して、軸方向視における第4磁石孔22A,22B及び第5磁石孔22C,22Dの面積が大きくなり、第2磁石孔22に充填される第2ボンド磁石32の量が多くなる。そのため、マグネットトルクTmを増加させることができる。ひいては、総トルクTを増加させることができる。
【0081】
(9)径方向外側よりも径方向内側に位置するリブが支える質量が大きいため、径方向の内側の丸角部には径方向の外側の丸角部と比較して大きな遠心力が作用する。その点、本構成によれば、径方向の内側に位置する丸角部は、径方向の外側に位置する丸角部よりも大きい曲率半径を有しているため、すべて同じ曲率半径の丸角部を採用する場合と比較して、応力の集中を抑制することができる。したがって、ロータ30の耐遠心力性能を確保することができる。
【0082】
一方、上述の丸角部のうち径方向の外側の丸角部は、径方向の内側の丸角部よりも小さい曲率半径を有しているため、すべて同じ曲率半径の丸角部を採用する場合と比較して、とくに第3磁石孔21A,21Bの磁石孔の大きさを確保することができるため、当該磁石孔に埋め込むボンド磁石の量を確保することができる。したがって、マグネットトルクTmを確保することができ、ひいてはロータ30のトルクを確保することができる。
【0083】
(10)第2磁路42の幅Waは、ティース81の幅Wtよりも大きいので、ティース81から第2磁路42へ流れる磁束量を確保できる。また、互いに隣接する2つの磁極部10の第2ボンド磁石32の間に、2つの第3磁路43を接続した接続磁路430が形成される。接続磁路430の幅は、第3磁路43の幅であるWbの2倍であり、ティース81の幅Wtよりも大きいので、ティース81から接続磁路430へ流れる磁束量を確保できる。よって、リラクタンストルクTrを確保でき、ひいては、モータ100の総トルクTを確保できる。
【0084】
<1-4.変形例>
次に、上記第1実施形態の変形例について説明する。
(a)第1実施形態において、第3外縁431は、第1外縁直線部431aa,431abと、第2外縁直線部431ba,431bbと、外縁円弧部431cと、を備えていたが、第3外縁431は、第1外縁直線部431aa,431abと、外縁円弧部431cに対応する第1外縁円弧部と、第2外縁円弧部と、を備えていてもよい。第2外縁円弧部は、第2外縁直線部431ba,431bbの代わりに、第2外縁直線部431ba,431bbの位置に、第1外縁円弧部と同心の円弧状に形成される。
【0085】
(b)第1実施形態では、第3磁路43の幅Wbの最小値は、ティース81の幅Wtの半分よりも大きくなっていたが、幅Wbの最小値は、ティース幅Wtと等しくてもよい。
(c)第1実施形態において、第4丸角部222bの曲率半径r1、第4丸角部222aの曲率半径r2、第2丸角部212bの曲率半径r3、第2丸角部212aの曲率半径r4は、r1>r2>r3>r4の関係になっていたが、r1≧r2≧r3≧r4の関係であってもよい。
【0086】
(d)第1実施形態では、第1外縁421及び第2外縁422が配向中心点Pcを中心とした円弧であった、すなわち第1外縁中心点は配向中心点Pcと一致していたが、第1外縁421及び第2外縁422は、磁極中心線L0上の点であれば、配向中心点Pcと異なる第1外縁中心点を中心とする円弧であってもよい。
【0087】
(e)第1実施形態では、第3外縁431が配向中心点Pcを中心とした円弧であった、すなわち第2外縁中心点は配向中心点Pcと一致していたが、第3外縁431は、磁極中心線L0上の点であれば、配向中心点Pcと異なる第2外縁中心点を中心とする円弧あってもよい。また、第3外縁431の円弧の中心点は、第1外縁421及び第2外縁422の円弧の中心点と異なっていてもよい。すなわち、第1外縁中心点、第2外縁中心点、及び配向中心点Pcは、それぞれ異なっていてもよい。
【0088】
(f)第1実施形態では、第1周辺リブ45Bは、第1仮想直線L1と第3仮想直線L3との間に設けられていたが、第1周辺リブ45Bを、第1仮想直線L1に対して第3仮想直線L3と反対側に設けてもよいし、第1周辺リブ45Bを第3仮想直線L3と磁極中心線L0との間に設けてもよい。また、第2周辺リブ45Cは、第2仮想直線L2と第4仮想直線L4との間に設けられていたが、第2周辺リブ45Cを、第2仮想直線L2に対して第4仮想直線L4と反対側に設けてもよいし、第2周辺リブ45Cを第4仮想直線L4と磁極中心線L0との間に設けてもよい。このように、第1及び第2周辺リブ45B,45Cを配置しても、第1実施形態よりも総トルクTは低下するものの、総トルクTの低下を抑制しつつ、耐遠心力性能を確保したロータを実現できる。
【0089】
(第2実施形態)
<2-1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0090】
上述した第1実施形態に係る3つの第2リブ45は、中央リブ45Aと、第1周辺リブ45Bと、第2周辺リブ45Cと、を含んでいた。これに対して、
図8に示すように、第2実施形態に係る3つの第2リブ45は、中央リブ45Aと、第3周辺リブ451Bと、第4周辺リブ451Cと、を含む。すなわち、第2実施形態において、磁極部10は、第1周辺リブ45B及び第2周辺リブ45Cの代わりに、第3周辺リブ451Bと第4周辺リブ451Cとを備える。
【0091】
<2-2.周辺リブの配置>
第3周辺リブ451Bは、幅W2を有し、第1周辺リブ45Bと同様に、第1仮想直線L1と磁極中心線L0との間に設けられている。すなわち、第1周辺リブ45Bと同様に、第3中央部452Bが、第1仮想直線L1と磁極中心線L0との間に設けられている。第3中央部452Bは、第3周辺リブ451Bの長手方向の中央部分である。
【0092】
また、第3周辺リブ451Bは、第1周辺リブ45Bと同様に、第3仮想直線L3に対して磁極中心線L0と反対側に設けられている。すなわち、第1周辺リブ45Bと同様に、第3中央部452Bが、第3仮想直線L3に対して磁極中心線L0と反対側に設けられている。したがって、第3中央部452Bは、第1仮想直線L1と第3仮想直線L3との間に設けられている。
【0093】
第4周辺リブ451Cは、幅W2を有し、第2周辺リブ45Cと同様に、第2仮想直線L2と磁極中心線L0との間に設けられている。すなわち、第2周辺リブ45Cと同様に、第4中央部452Cが、第2仮想直線L2と磁極中心線L0との間に設けられている。すなわち、第2周辺リブ45Cと同様に、第4中央部452Cが、第2仮想直線L2と磁極中心線L0との間に設けられている。第4中央部452Cは、第4周辺リブ451Cの長手方向の中央部分である。
【0094】
また、第4周辺リブ451Cは、第2周辺リブ45Cと同様に、第4仮想直線L4に対して磁極中心線L0と反対側に設けられている。すなわち、第2周辺リブ45Cと同様に、第4中央部452Cは、第4仮想直線L4に対して磁極中心線L0と反対側に設けられている。したがって、第4周辺リブ451Cは、第2仮想直線L2と第4仮想直線L4との間に設けられている。
【0095】
第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cは、磁極中心線L0に対して対称に配置されている。第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cは、第3磁路43から第2磁路42に向かうにつれて、徐々に磁極中心線L0に近づくように、磁極中心線L0に対して傾斜している。このように、第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cが磁極中心線L0に対して傾いていることにより、ロータ30の強度が向上し、耐遠心力性能が向上する。なお、本実施形態におけるモータ100の磁気性能は、第1実施形態と同等の磁気性能が得られる。
【0096】
第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cの磁極中心線L0に対する傾斜角度は、所定の条件を満たすように設定されている。具体的には、所定の条件は、第1交点Pa及び第2交点Pbが、重心点Pmよりも径方向の外側、且つ、配向中心点Pcよりも径方向の内側に位置していることである。
【0097】
第1交点Paは、第1リブ直線LL1と磁極中心線L0との交点である。第1リブ直線LL1は、第3周辺リブ451Bの幅方向の中央を通り、第3周辺リブ451Bの長手方向に延伸した直線である。第2交点Pbは、第2リブ直線LL2と磁極中心線L0との交点である。第2リブ直線LL2は、第4周辺リブ451Cの幅方向の中央を通り、第4周辺リブ451Cの長手方向に延伸した直線である。本実施形態では、第3周辺リブ451Bと第4周辺リブ451Cが磁極中心線L0に対して対称に配置されているため、第1交点Paと第2交点Pbは一致する。
【0098】
重心点Pmは、
図8においてハッチングで示す外側領域の重心である。すなわち、重心点Pmは、外側領域の質量に対して作用する重力の合力の作用点である。外側領域は、ロータ30のうちの第3磁路43よりも径方向の外側の領域である。上記外側領域は、中央リブ45A、第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cが質量を支えている領域である。本実施形態では、磁極部10は、磁極中心線L0に対して対称な構成を有するため、重心点Pmは、磁極中心線L0上に位置する。
【0099】
第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cの磁極中心線L0に対する傾斜角度が、所定の条件が成立するように設定されている場合、所定の条件が成立していない場合と比べて、第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cに生じる応力がより低下する。したがって、ロータ30の強度が向上し、耐遠心力性能が向上する。
【0100】
図9に本実施形態に係る磁極部10に生じる応力の分布を示す。
図10に第3参考例に係る磁極部に生じる応力の分布を示す。
図11に第4参考例に係る磁極部に生じる応力の分布を示す。第3参考例は、第1交点Pa及び第2交点Pbが、配向中心点Pcよりも径方向の外側に位置している例である。第4参考例は、第1交点Pa及び第2交点Pbが、重心点Pmよりも径方向の内側に位置している例である。
【0101】
図9に示す本実施形態では、第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cにおいて、応力の強い領域が広がっており、局所的に大きな応力が発生していない。一方、
図10に示す第3参考例では、2つの周辺リブにおいて、本実施形態よりも応力の強い領域が狭く、局所的に大きな応力が発生している。また、
図11に示す第4参考例では、2つの周辺リブにおいて、応力の強い領域が本実施形態と同程度に広がっているが、本実施形態よりも更に強い応力の領域が生じている。
【0102】
図12に、本実施形態、第3参考例及び第4参考例における中央リブの付け根において生じる応力の最大値と、周辺リブの付け根に生じる応力の最大値を示す。中央リブの付け根に生じる応力の最大値は、本実施形態、第3参考例及び第4参考例で略等しい。一方、周辺リブの付け根に生じる応力の最大値は、本実施形態が最も小さい。したがって、周辺リブの磁極中心線L0に対する傾斜角度が、所定の条件が成立するように設定されている場合、所定の条件が成立していない場合と比べて、周辺リブに生じる応力の最大値が小さく、ロータ30の強度が向上していることがわかる。
【0103】
<2-3.効果>
以上詳述した第2実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)~(10)を奏するとともに、以下の効果を奏する。
【0104】
(11)第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cが、第3磁路43から第2磁路42に向かうにつれて、徐々に磁極中心線L0に近づくように、磁極中心線L0対して傾斜している。これにより、第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cが磁極中心線L0に平行である場合と比べて、第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cに生じる応力を低下させ、ロータ30の耐遠心力性能を向上させることができる。ひいては、第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cの幅W2を細くすることができる。したがって、第2磁石孔22をより広くすることができ、第2磁石孔22に充填するボンド磁石の量を増加させることができる。その結果として、モータ100のマグネットトルクTmを増加させることができるため、モータ100の性能が向上する。
【0105】
(12)第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cを、上述の所定の条件が成立するように設けることにより、上述の所定の条件が成立していない場合と比べて、第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cに生じる応力をより低下させることができる。ひいては、第3周辺リブ451B及び第4周辺リブ451Cの幅W2をより細くすることができる。
【0106】
<2-4.変形例>
次に、上記第2実施形態の変形例について説明する。
上記第2実施形態は、第1実施形態と同様に、(a)~(f)のように変形しても実現できる。さらに、上記第2実施形態は以下のように変形しても実現できる。
【0107】
(g)第2実施形態において、第3周辺リブ451Bと第4周辺リブ451Cは、磁極中心線L0に対して対称に設けられていたが、第3周辺リブ451Bと第4周辺リブ451Cは、磁極中心線L0に対して非対称であってもよい。この場合、第1リブ直線LL1と磁極中心線L0との交点である第1交点Pa及び第2リブ直線LL2と磁極中心線L0との交点である第2交点Pbは重ならない。しかしながら、第1交点Pa及び第2交点Pbの少なくとも一方が、重心点Pmと配向中心点Pcとの間に位置することにより、第1交点Pa及び第2交点Pbの両方が、重心点Pmと配向中心点Pcとの間に位置していない場合と比べて、ロータ30の強度を上げて、耐遠心力性能を向上させることができる。なお、第3周辺リブ451Bと第4周辺リブ451Cを磁極中心線L0に対して非対称とする設計は、ロータ30の回転方向によって使用する最高回転速度域が異なる場合に採用することが望ましい。
【0108】
(h)第2実施形態及び上記(g)において、第1交点Pa及び第2交点Pbは、重心点Pm上に位置していてもよいし、配向中心点Pc上に位置していてもよい。すなわち、第1交点Pa及び第2交点Pbの少なくとも一方が、重心点Pm上を含む当該重心点Pmから配向中心点Pc上を含む配向中心点Pcまでの線分の間に位置している構成であれば、ロータ30の耐遠心力性能が向上する。
【符号の説明】
【0109】
10…磁極部、20…ロータコア、21…第1磁石孔、22…第2磁石孔、30…ロータ、31…第1ボンド磁石、32…第2ボンド磁石、41…第1磁路、42…第2磁路、43…第3磁路、44…第1リブ、45A…中央リブ、45B…第1周辺リブ、45C…第2周辺リブ、450B…第1中央部、450C…第2中央部、451B…第3周辺リブ、451C…第4周辺リブ、452B…第3中央部、452C…第4中央部、80…ステータ、81…ティース、82…コイル、100…モータ。