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特開2023-99017抗薬物抗体の形成を減少させるためのII型抗CD20抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023099017
(43)【公開日】2023-07-11
(54)【発明の名称】抗薬物抗体の形成を減少させるためのII型抗CD20抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20230704BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230704BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230704BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230704BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K38/20
A61P35/00
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023066320
(22)【出願日】2023-04-14
(62)【分割の表示】P 2018529991の分割
【原出願日】2016-12-06
(31)【優先権主張番号】15198715.3
(32)【優先日】2015-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16172739.1
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16193151.4
(32)【優先日】2016-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バカック, マリーナ
(72)【発明者】
【氏名】エヴェルス, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ピサ, パヴェル
(72)【発明者】
【氏名】ロスマン, エーファ
(72)【発明者】
【氏名】サーロ, ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ウマーニャ, パブロ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗薬物抗体の形成を減少させるためのII型抗CD20抗体を提供する。
【解決手段】対象における疾患を治療する方法における使用のためのII型抗CD20抗体であって、該方法が(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、及び、一定期間後に連続して、(ii)治療剤の対象への投与を含む治療レジメンを含み、ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である、II型抗CD20抗体を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における疾患を治療する方法における使用のためのII型抗CD20抗体であって、該方法が
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
II型抗CD20抗体。
【請求項2】
治療レジメンが、抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の投与に応答した、対象における抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる、請求項1に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項3】
治療レジメンが、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を効果的に減少させる、請求項1又は2に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項4】
治療剤がT細胞活性化治療剤である、請求項3に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項5】
(i)対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を減少させ、かつ/又は、(ii)対象における治療剤、具体的にはT細胞活性化治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を減少させるための方法であって、治療剤の投与前に対象へのII型抗CD20抗体の投与を含む方法における使用のためのII型抗CD20抗体。
【請求項6】
II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間が、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である、請求項5に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項7】
抗CD20抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1から6の何れか一項に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項8】
抗CD20抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、請求項1から7の何れか一項に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項9】
抗CD20抗体が、IgG抗体、具体的にはIgG抗体であり、かつ、抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%が非フコシル化されている、請求項1から8の何れか一項に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項10】
抗CD20抗体がオビヌツズマブである、請求項1から9の何れか一項に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項11】
治療剤がポリペプチドを含む、請求項1から10の何れか一項に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項12】
治療剤が抗体を含む、請求項1から11の何れか一項に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項13】
治療剤に含まれる抗体が、がん胎児性抗原(CEA)に特異的に結合する、請求項12に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項14】
治療剤に含まれる抗体が、
(i)配列番号14の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号15のHCDR2、及び配列番号16のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号17の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号18のLCDR2、及び配列番号19のLCDR3を含む軽鎖可変領域;又は
(ii)配列番号20の重鎖可変領域配列及び配列番号21の軽鎖可変領域配列
を含む、請求項13に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項15】
治療剤に含まれる抗体が、CD3、具体的にはCD3εに特異的に結合する、請求項12に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項16】
治療剤に含まれる抗体が、
(i)配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域;又は
(ii)配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列
を含む、請求項15に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項17】
治療剤に含まれる抗体が、CD20に特異的に結合する、請求項12に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項18】
治療剤に含まれる抗体が、
(i)配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域;又は
(ii)配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列
を含む、請求項15に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項19】
治療剤が、サイトカイン、具体的にはインターロイキン-2を含む、請求項1から18の何れか一項に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項20】
サイトカインが、アミノ酸置換F42A、Y45A、及びL72G(配列番号12のヒトIL-2配列に対する番号付け)を含む変異体ヒトIL-2ポリペプチドである、請求項19に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項21】
治療剤が、請求項14に記載の抗体、及び請求項20に記載のサイトカインを含むイムノコンジュゲートを含む、請求項1から20の何れか一項に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項22】
治療剤が、請求項14に記載の抗体、及び請求項20に記載の抗体を含む二重特異性抗体を含む、請求項1から16の何れか一項に記載のII型抗CD20抗体。
【請求項23】
治療剤が、請求項16に記載の抗体、及び請求項20に記載の抗体を含む二重特異性抗体を含む、請求項1から12及び16から18の何れか一項に記載のII型抗CD20抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、疾患を治療する方法、及び治療剤の投与に応答した抗薬物抗体(ADA)の形成を減少させる方法に関する。本発明は更に、疾患、具体的にはB細胞増殖性障害を治療する方法、及び治療剤、具体的にはT細胞活性化治療剤の投与に応答した有害作用を軽減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
臨床現場での利用が可能なバイオテクノロジー由来の治療剤の数は近年急激に増加しており、組換えヒトサイトカイン(例えば、α及びβインターフェロン、インターロイキン-2)、細胞増殖因子(例えば、GM-CSF)、ホルモン(例えば、グルカゴン)、神経筋拮抗薬(例えば、ボツリヌス毒素)、血液製剤(例えば、凝固因子VIII)、組換え受容体(例えば、エタネルセプト)及びモノクローナル抗体が含まれる。治療用タンパク質は一般的に安全で非毒性であると考えられているが、抗薬物抗体(ADA)として知られている、これらの治療剤に対する抗体は、治療中に発生し得る。
【0003】
ADAは、エリスロポエチン、第VIII因子、インスリン、免疫毒素及びモノクローナル抗体などの様々な治療剤に関連して観察されている(Schellekens and Casadevall, J Neurol (2004), 251 [Suppl 2]:II/4-II/9; Mossoba et al., Clin Cancer Res (2011) 17(11): 3697-3705; Hsu et al., British Journal of Dermatology (2014) 170, 261-273)。ADA形成は、例えばTNFブロッカーで治療された自己免疫患者において頻繁であり、臨床転帰に影響を及ぼす(Schaeverbecke et al., Rheumatology (2015) doi: 10.1093/rheumatology/kev277)。
【0004】
ADAの発生は、血清濃度及び治療剤の機能に影響を及ぼし得る。ADAの存在は、治療剤と抗体(中和、非中和又はその両方)との間の免疫複合体の形成により治療剤のクリアランスを増加させ、それにより治療剤の半減期を減少させる可能性がある。更に、治療剤の活性及び有効性は、抗体の治療剤への結合を介して減少し得る。ADAはまた、アレルギー反応又は過敏反応及び他の有害事象と関連し得る。
【0005】
免疫応答に関連するこれらの有害事象は治療薬の安全性及び有効性プロファイルに影響を及ぼす可能性があるので、ADAを克服又は阻害する戦略の同定及び開発は非常に重要である。
【0006】
例えば、タンパク質B細胞エピトープのマスキング若しくは改変、又はタンパク質T細胞エピトープの修飾を含む、タンパク質治療の免疫原性を低下させるための幾つかのタンパク質工学的アプローチが研究されている。しかし、これらのアプローチの臨床的安全性及び成功は試験されておらず、評価にかなりの時間を要することになる。従って、ADA応答を防ぐために、FDAが承認した試薬を使用して新しい介入を開発する差し迫った必要性が存在する。
【0007】
宿主の免疫抑制を目的とした化学療法ベースのアプローチが報告されている(Mossoba et al., Clin Cancer Res (2011) 17(11): 3697-3705)。
【0008】
抗CD20抗体リツキシマブは、Morbus Pompe患者の酵素補充療法に対する耐性を達成するために、メトトレキセート及び静脈内免疫グロブリンと組み合わせて使用されている(Mendelsohn et al., NEJM (2009) 360:2, 194-195)。しかし、臨床試験では、リツキシマブによる宿主前治療は、免疫毒素LMB-1に対するヒト免疫応答を阻害しなかった(Hassan et al., Clin Cancer Res (2004) 10, 16-18)。
【0009】
B細胞増殖性障害は、白血病及びリンパ腫の両方を含む異種の悪性腫瘍群を表す。リンパ腫はリンパ球から発生し、2つの主なカテゴリー:ホジキンリンパ腫(HL)及び非ホジキンリンパ腫(NHL)を含む。米国では、B細胞起源のリンパ腫は、非ホジキンリンパ腫の症例の約80-85%を構成し、B細胞サブセット内では、原型のB細胞における遺伝子型及び表現型の発現パターンに基づいてかなり異種性がある。例えば、B細胞リンパ腫サブセットには、濾胞性リンパ腫(FL)又は慢性リンパ球性白血病(CLL)などの遅発性の無痛性及び難治性疾患、並びにマントル細胞リンパ腫(MCL)及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などの、より攻撃的なサブタイプを含む。
【0010】
B細胞増殖性障害の治療のための種々の薬剤の利用可能性にもかかわらず、寛解を延長し、患者の治癒率を改善するための安全かつ有効な治療法の開発が継続的に必要とされている。
【0011】
現在検討されている戦略は、悪性B細胞に対するT細胞の結合(engagement)である。T細胞を悪性B細胞と効果的に結合(engage)させるために、最近の2つのアプローチが開発されている。これらの2つのアプローチは次のとおりである。1)腫瘍細胞を認識するために生体外で操作されたT細胞の投与(キメラ抗原受容体修飾T細胞療法[CAR-T細胞]としても知られている);及び2)内因性T細胞を活性化する薬剤、例えば二重特異性抗体の投与(Oak and Bartlett, Expert Opin Investig Drugs (2015) 24, 715-724)。
【0012】
第1のアプローチの例は、Maudeらの研究で報告されており、ここでは、30人の成人及び小児患者を、CD19を標的としたキメラ抗原受容体レンチウイルスベクターにより形質導入された自己T細胞で治療した(CTL019 CAR-T細胞)。その結果、6ヶ月間の無再発生存率67%及び全生存率78%に基づく持続的な寛解が得られた。しかし、全ての患者にはサイトカイン放出症候群(CRS)(腫瘍負荷に関連する)があり、27%の患者が重度のCRSを有していた。原因不明の中枢神経毒性も高頻度で認められた。
【0013】
対照的に、腫瘍標的を認識する内在性T細胞を活性化することを含む第2のアプローチは、このスケーラビリティの障害を回避し、競合する有効性、安全性データ及び潜在的に長期間の奏功期間も提供することができる。異なるCD20血液悪性腫瘍では、このアプローチは、微小残存病変陽性急性リンパ球性白血病(ALL)を有する患者について最近承認された、CD19 CD3標的T細胞二重特異性分子であるブリナツモマブ(Bargou et al., Science (2008) 321, 974-977)によって最も良く例示される。この化合物は、2つの単鎖Fv断片(いわゆるBiTE(登録商標)フォーマット)から構成され、細胞溶解性T細胞によるCD19細胞の溶解を導く。ブリナツモマブの主な制約は、短い半減期(約2時間)であり、これは4-8週間にわたるポンプによる連続注入を必要とする。それにもかかわらず、それは、重度のサイトカイン放出症候群及びCNS毒性を緩和するために必要とされるステップアップ投与(SUD)を伴う再発性/難治性非ホジキンリンパ腫(r/r NHL)及びALLの患者には潜在的有効性を有する(Nagorsen and Baeuerle, Exp Cell Res (2011) 317, 1255-1260)。
【0014】
CD20 CD3標的T細胞二重特異性分子、CD20XCD3 bsABは、次世代のB細胞標的抗体の別の例である。CD20XCD3 bsABは、B細胞上に発現されるCD20及びT細胞上に存在するCD3イプシロン鎖(CD3e)を標的とするT細胞二重特異性(TCB)抗体である。
【0015】
CD20XCD3bsABの作用機序は、CD20B細胞及びCD3 T細胞への同時の結合を含み、T細胞活性化及びB細胞のT細胞媒介死滅を導く。CD20 B細胞の存在下では、循環中であろうと組織内にあろうと、薬理学的に活性な用量は、T細胞活性化及び関連サイトカイン放出を引き起こすであろう。CD20XCD3 bsABは、競合的T細胞結合剤(engaging agent)よりも、非臨床モデルにおける効力が増強され、IgGベースのフォーマットを有するが、ブリナツモマブよりも大幅に改善された半減期を有する。
【0016】
サイトカイン放出は、T細胞の活性化の結果である。TeGeneroによって実施された第1相試験において(Suntharalingam et al., N Engl J Med (2006) 355,1018-1028)、6人の健常ボランティア全員が、不適切に投与されたT細胞刺激スーパーアゴニスト抗CD28モノクローナル抗体の注入後すぐに、致命的で重度のサイトカイン放出症候群(CRS)を経験した。より最近では、Maudeらによる、再発性ALLを有する患者のCD19標的、キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)治療に関する上記の研究において、30人全員がサイトカイン放出を有しており、これは患者の27%が重度として分類された。CRSは、CAR-T細胞療法の一般的であるが重度な合併症である(Xu and Tang, Cancer Letters (2014) 343, 172-178に総説される)。
【0017】
CD19-CD3 T細胞二重特異性剤であるブリナツモマブについても、重度のCRS及びCNS毒性が頻繁に観察されている。(Klinger et al., Blood. 2012;119(26):6226-6233)。全ての臨床試験において、ブリナツモマブを受けている患者では、約50%の患者で神経学的毒性が生じており、観察された毒性の種類は添付文書によく規定されている。
【0018】
CNS毒性が早期のサイトカイン放出又はT細胞活性化に関連するかどうか、又はどのようにしてそれがどのようにして関連するかは十分には理解されていない。ブリナツモマブと同様に、CD19標的CAR-T細胞で治療したr/r ALLの患者の43%(13/30)においてCNS AE(せん妄から全脳症までの範囲)が報告されている(Maude et al., N Engl J Med (2014) 371,1507-1517; Ghorashian et al., Br J Haematol (2015) 169, 463-478)。神経毒性作用は、典型的には、CRSの症状がピークに達して消散しはじめた後に起こった。しかし重度のCRSとの直接的で明確な関連は見出されなかった。著者らは、神経毒性の機序が直接的なCAR-T細胞媒介性毒性を伴い得ること、又はそれがサイトカイン媒介性であり得ることを提案した。対照的に、重度のCRSと神経毒性(例えば、脳症)との間の関連が、CD19標的化CAR-T細胞療法(Davila et al., Sci Transl Med (2014) 6, 224ra25)の別の研究で示唆されており、直接的なCAR-T誘導損傷と対比して、一般的なT細胞活性化に起因すると推測されている。
【0019】
サイトカイン放出及び/又はCNS関連毒性は、CD3細胞を組織限定(すなわち非循環)標的細胞に連結する他のT細胞二重特異性抗体と比較して、CD3細胞をB細胞に連結するT細胞二重特異性抗体において特に顕著である。
【0020】
従って、NHL及びCLLなどのB細胞増殖性障害を有する患者の治療に有意に寄与する可能性を有するこれらの有望な薬剤のこのような有害作用を低減又は防止する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0021】
本発明は、(i)対象への免疫原性治療剤の投与に応答したADAの形成は、効果的かつ持続的に防止され得る、(ii)治療剤、具体的にはCD20XCD3 bsABのようなT細胞活性化治療剤の対象への投与に伴うサイトカイン放出は、前記対象をII型抗CD20抗体、例えば、オビヌツズマブで前治療することによって有意に減少させることができる、という驚くべき発見に基づいている。
【0022】
オビヌツズマブは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び抗体依存性細胞貪食(ADCP)、低い補体依存性細胞傷害(CDC)活性及び高度な直接細胞死誘導を誘導する、CD20抗原に高親和性で結合するヒト化糖鎖操作II型抗CD20 mAbである。今日まで、オビヌツズマブの安全性プロファイル(サイトカイン放出を含む)は、進行中のオビヌツズマブ臨床試験において数百人の患者において評価され管理されてきた。
【0023】
理論に縛られることを望むものではないが、腫瘍細胞の排除を媒介するために投薬の開始から十分に高い治療剤の曝露レベルをサポートしつつ、(T細胞活性化)治療剤(例えば、CRS)による強力な全身性T細胞活性化からの、関連性の高い有害事象(AE)のリスクが低減されるように、オビヌツズマブ(GAZYVA(登録商標))前治療(GPT)の使用は、末梢血及び二次リンパ器官の両方におけるB細胞の急速な枯渇を助けるはずである。CD20XCD3bsABのような(T細胞活性化)治療剤の安全性プロファイルをサポートすることに加えて、GPTは、治療分子に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を防止するのにも役立つはずである。
【0024】
患者にとっては、GPTは、高められた安全性プロファイルを有する、より良好な薬物曝露に変わる必要性がある。
【0025】
GPTは、ステップアップ投与(SUD)などの他の方法と比較して、上記の目標を達成する上でより効果的でなければならない。例えば、単回投与のオビヌツズマブは、再発/難治性の患者が、一旦決定されたCD20XCD3 bsABなどのT細胞活性化治療剤の全治療用量を、ステップアップ投与からの時間遅延なしに受けることを可能にすべきである。それとは対照的に、進行中の第2相試験において、r/r DLBCLを有する患者のためのブリナツモマブ投与レジメンは、ダブルステップアップアプローチ(すなわち、9→28→112μg/m/日)を組み込んでおり、従って、112μg/m/日の最大用量に達するのに14日を要する(Viardot el at., Hematol Oncol (2015) 33, 242(Abstract 285))。実施例に示すように、オビヌツズマブでの前治療後、CD20XCD3 bsABのカニクイザルへの投与は、GPTなしで許容されるレベルよりも10倍高いレベルまで耐容された。第1のCD20XCD3bsAB注射に関連する末梢血において大きく減少したサイトカイン放出に加えて、効率的な末梢血B細胞枯渇及び抗腫瘍活性がGPTで観察された。
【0026】
従って、第1の態様において、本発明は、(i)対象における、治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を減少させ、かつ/又は、(ii)対象における、治療剤、具体的にはT細胞活性化治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を減少させるための方法であって、治療剤の投与前に対象へのII型抗CD20抗体の投与を含む方法を提供する。一実施態様では、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である。
【0027】
更なる態様において、本発明は、対象において疾患を治療する方法を提供し、該方法は、
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である。
【0028】
一実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の投与に応答した、対象における抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる。
【0029】
別の実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を効果的に減少させる。そのような実施態様では、治療剤は、好ましくは、T細胞活性化治療剤である。
【0030】
更なる態様において、本発明は、(i)対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を減少させ、かつ/又は、(ii)対象における治療剤、具体的にはT細胞活性化治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を減少させるための方法であって、治療剤の投与前に対象へのII型抗CD20抗体の投与を含む方法における使用のためのII型抗CD20抗体を提供する。
【0031】
一実施態様では、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である。
【0032】
更なる態様において、本発明は、対象において疾患を治療する方法における使用のためのII型抗CD20抗体を提供し、該方法は、
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した、対象におけるB細胞の数の減少のために十分である。
【0033】
一実施態様では、治療レジメンは、抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、(治療剤の投与に応答した)対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる。
【0034】
別の実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を効果的に減少させる。そのような実施態様では、治療剤は、好ましくは、T細胞活性化治療剤である。
【0035】
更なる態様において、本発明は、(i)対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成の減少、及び/又は、(ii)対象における治療剤、具体的にはT細胞活性化治療剤の投与に伴うサイトカイン放出の減少のための医薬の製造におけるII型抗CD20抗体の使用を提供し、
ここで、医薬は、
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンにおいて使用される。
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である。
【0036】
一実施態様では、治療レジメンは、抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる。
【0037】
別の実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を効果的に減少させる。そのような実施態様では、治療剤は、好ましくは、T細胞活性化治療剤である。
【0038】
更に別の態様において、本発明は、(i)対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成の減少、及び/又は、(ii)対象における治療剤、具体的にはT細胞活性化治療剤の投与に伴うサイトカイン放出の減少のためのキットを提供し、該キットはII型抗CD20抗体組成物と、治療レジメンにおいてII型抗CD20抗体組成物を使用するための説明書とを含むパッケージを含み、該治療レジメンは、
(i)II型抗CD20抗体組成物の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含み、
ここで、II型抗CD20抗体組成物の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である。
【0039】
一実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体組成物の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる。
【0040】
別の実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体組成物の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を効果的に減少させる。そのような実施態様では、治療剤は、好ましくは、T細胞活性化治療剤である。
【0041】
一実施態様では、キットは治療剤組成物を更に含む。
【0042】
更なる態様において、本発明は、対象において疾患を治療する方法における使用のための治療剤を提供し、該方法は、
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である。
【0043】
一実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の投与に応答した、対象における抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる。
【0044】
別の実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を効果的に減少させる。そのような実施態様では、治療剤は、好ましくは、T細胞活性化治療剤である。
【0045】
更なる態様において、本発明は、対象における疾患の治療のための医薬の製造における治療剤の使用を提供し、ここで治療は
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である。
【0046】
一実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の投与に応答した、対象における抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる。
【0047】
別の実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を効果的に減少させる。そのような実施態様では、治療剤は、好ましくは、T細胞活性化治療剤である。
【0048】
更なる態様において、本発明は、治療剤組成物と、治療レジメンにおいて治療剤組成物を使用するための説明書とを含むパッケージを含む、対象における疾患の治療のためのキットを提供し、該治療レジメンは
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤組成物の対象への投与
を含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤組成物の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である。
【0049】
一実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体組成物の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる。
【0050】
別の実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体組成物の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を効果的に減少させる。そのような実施態様では、治療剤は、好ましくは、T細胞活性化治療剤である。
【0051】
一実施態様では、キットはII型抗CD20抗体組成物を更に含む。
【0052】
本発明の方法、使用、II型抗CD20抗体、治療剤及びキットは、以下に記載する特徴の何れかを単独で又は組み合わせて組み込むことができる。
【0053】
一実施態様では、II型抗CD20抗体は、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0054】
より特定の実施態様では、II型抗CD20抗体は、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む。
【0055】
一実施態様では、II型抗CD20抗体は、IgG抗体、具体的にはIgG抗体である。
【0056】
一実施態様では、II型抗CD20抗体は、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される。一実施態様では、II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%が非フコシル化されている。
【0057】
特定の実施態様では、抗CD20抗体はオビヌツズマブである。
【0058】
幾つかの実施態様では、特に、対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成の減少に関与する本発明の関連する態様において、治療剤はポリペプチドを含む。
【0059】
幾つかの実施態様では、特に、対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成の減少に関与する本発明の関連する態様において、治療剤は抗体を含む。
【0060】
1つのそのような実施態様では、抗体は、がん胎児性抗原(CEA)に特異的に結合する。一実施態様では、抗体は、配列番号14の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号15のHCDR2、及び配列番号16のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号17の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号18のLCDR2、及び配列番号19のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。更なる実施態様では、抗体は、配列番号20の重鎖可変領域配列及び配列番号21の軽鎖可変領域配列を含む。
別のそのような実施態様では、抗体は、CD3、具体的にはCD3イプシロンに特異的に結合する。一実施態様では、抗体は、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。更なる実施態様では、抗体は、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む。
【0061】
幾つかの実施態様では、特に、対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成の減少に関与する本発明の関連する態様において、治療剤はサイトカインを含む。
【0062】
1つのそのような実施態様では、サイトカインはインターロイキン-2(IL-2)である。
【0063】
別のそのような実施態様では、サイトカインは、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G(配列番号12のヒトIL-2配列に対する番号付け)を含む変異体ヒトIL-2ポリペプチドである。
【0064】
幾つかの実施態様では、特に、対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成の減少に関与する本発明の関連する態様において、治療剤はイムノコンジュゲートを含む。
【0065】
1つのそのような実施態様では、イムノコンジュゲートは、(a)CEAに特異的に結合し、かつ、配列番号14の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号15のHCDR2、及び配列番号16のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号17の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号18のLCDR2、及び配列番号19のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗体、及び(b)アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G(配列番号12のヒトIL-2配列に対する番号付け)を含む変異体ヒトIL-2ポリペプチドを含む。
【0066】
特定のそのような実施態様では、治療剤は、セルグツズマブアムナロイキン(CEA-IL2v)を含む。
【0067】
幾つかの実施態様では、特に、対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成の減少に関与する本発明の関連する態様において、治療剤はCEA及びCD3に特異的に結合する二重特異性抗体を含む。
【0068】
1つのそのような実施態様では、治療剤は、
(i)CD3に特異的に結合し、かつ、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合部分;及び
(ii)CEAに特異的に結合し、かつ、配列番号14の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号15のHCDR2、及び配列番号16のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号17の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号18のLCDR2、及び配列番号19のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合部分
を含む二重特異性抗体を含む。
【0069】
特定の実施態様では、治療剤はCEA TCBを含む。
【0070】
幾つかの実施態様では、特に、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出の減少に関与する本発明の関連する態様において、治療剤はT細胞活性化治療剤である。
【0071】
一実施態様では、T細胞活性化治療剤は、抗体、具体的には多重特異性(例えば、二重特異性)抗体を含む。
【0072】
一実施態様では、抗体は活性化T細胞抗原に特異的に結合する。
【0073】
一実施態様では、抗体は、CD3、CD28、CD137(4-1BBとしても知られる)、CD40、CD226、OX40、GITR、CD27、HVEM、及びCD127の群から選択される抗原に特異的に結合する。
【0074】
一実施態様では、抗体はCD3、具体的にはCD3εに特異的に結合する。
【0075】
一実施態様では、抗体は、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0076】
一実施態様では、抗体は、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む。
【0077】
一実施態様では、抗体は、B細胞抗原、具体的には悪性B細胞抗原に特異的に結合する。
【0078】
一実施態様では、抗体は、CD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37及びCD5からなる群から選択される抗原、特にCD20又はCD19に特異的に結合する。
【0079】
一実施態様では、抗体はCD20に特異的に結合する。
【0080】
一実施態様では、抗体は、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。
【0081】
一実施態様では、抗体は、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む。
【0082】
一実施態様では、抗体は、多重特異性抗体、具体的には二重特異性抗体である。
【0083】
一実施態様では、多重特異性抗体は、(i)活性化T細胞抗原及び(ii)B細胞抗原に特異的に結合する。
【0084】
一実施態様では、多重特異性抗体は、(i)CD3並びに(ii)CD20及びCD19から選択される抗原に特異的に結合する。
【0085】
一実施態様では、多重特異性抗体はCD3及びCD20に特異的に結合する。
【0086】
幾つかの実施態様では、特に、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出の減少に関与する本発明の関連する態様において、治療剤は
(i)CD3に特異的に結合し、かつ、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合部分;及び
(ii)CD20に特異的に結合し、かつ、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合部分
を含む二重特異性抗体を含む。
【0087】
特定の実施態様では、治療剤はCD20XCD3 bsABを含む。
【0088】
幾つかの実施態様では、特に、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出の減少に関与する本発明の関連する態様において、治療剤は、キメラ抗原受容体(CAR)又はCAR、具体的にはB細胞抗原に特異的に結合するCAR、より具体的にはCD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37、及びCD5の群から選択される抗原に特異的に結合するCARを発現するT細胞を含む。
【0089】
幾つかの実施態様では、特に、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出の減少に関与する本発明の関連する態様において、疾患はB細胞増殖性障害、具体的にはCD20陽性B細胞障害である。一実施態様では、疾患は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】リツキシマブ又はビヒクルではなく、オビヌツズマブによる前治療は、カニクイザルにおける破傷風トキソイド特異的新規IgG抗体応答の減弱をもたらす。リツキサンはリツキシマブを、GA101はオビヌツズマブをそれぞれ示す。
図2】麻疹に対するベースライン力価を有する動物における麻疹/風疹追加免疫ワクチン接種による免疫再攻撃(re-challenge)に応答する麻疹特異的IgG抗体産生による記憶リコール応答は、カニクイザルにおいてオビヌツズマブ又はリツキシマブの何れによっても影響を受けない。リツキサンはリツキシマブを、GA101はオビヌツズマブをそれぞれ示す。
図3】オビヌツズマブ前治療開始前(BL=ベースライン)、RO6895882による治療の開始前(C1D1=サイクル1の1日目)及びRO6895882による治療の最中の末梢血試料中のB細胞数(CD45+CD19+)。線/記号は個々の患者を表す。C1D1時点以降、末梢血試料中にB細胞は検出されなかった。
図4】ベースライン(BL)及びオビヌツズマブによる治療後(治療)に採取した腫瘍生検におけるフローサイトメトリーによって検出されたCD19+細胞(B細胞)の減少。治療中の試料は、RO6895882による治療前又は治療中の何れかで得られた。CD19について陽性(Bリンパ球)染色されたCD45+細胞(リンパ球)の百分率は著しく減少した(B)。CD16+細胞(ナチュラルキラー細胞)(A)又はCD3+細胞(Tリンパ球)(C)の百分率について明確な変化は観察されなかった。線は個々の患者を表す。
図5】免疫組織化学により測定した、ベースライン(BL)及びオビヌツズマブでの治療後(治療)に採取した腫瘍生検におけるB細胞の減少。治療中の試料は、RO6895882による治療前又は治療中の何れかで得られた。Bリンパ球の密度は、CD20(A、B)及びPAX 5(C、D)で染色することによって測定した。両方の方法が、腫瘍及び周囲の正常組織におけるBリンパ球の枯渇を検出した。線は個々の患者を表す。
図6】本発明において有用なT細胞活性化二重特異性抗原結合分子(TCB)の例示的立体配置。(A、D)「1+1 CrossMab」分子の図。(B、E)別の順序でCrossfab及びFab成分(「反転型」)を有する(「2+1 IgG Crossfab」分子の図。(C、F)「2+1 IgG Crossfab」分子の図。(G、K)別の順序でCrossfab及びFab成分(「反転型」)を有する(「1+1 IgG Crossfab」分子の図。(H、L)「1+1 IgG Crossfab」分子の図。(I、M)2つのCrossFabを有する「2+1 IgG Crossfab」分子の図。(J、N)2つのCrossFab並びに別の順序でCrossfab及びFab成分(「反転型」)を有する「2+1 IgG Crossfab」分子の図。(O、S)「Fab-Crossfab」分子の図。(P、T)「Crossfab-Fab」分子の図。(Q、U)「(Fab)-Crossfab」分子の図。(R、V)「Crossfab-(Fab)」分子の図。(W、Y)「Fab-(Crossfab)」分子の図。(X、Z)「(Crossfab)-Fab」分子の図。黒い点:ヘテロ二量体化を促すFcドメイン内の任意選択的修飾。++、--:CH及びCLドメインに任意選択的に導入された反対の電荷のアミノ酸。Crossfab分子は、VH及びVL領域の交換を含むものとして示されているが、CH1及びCLドメインに電荷修飾が導入されていない実施態様では、代わりにCH1及びCLドメインの交換を含んでいてもよい。
図7】異なる治療群の末梢血中のB細胞及びT細胞の数。第1及び第2のCD20XCD3 bsAB投与の24時間後及び72時間後における、末梢血中のCD19 B細胞(A)及びCD3T細胞(B)のフローサイトメトリー分析。黒色の矢印は、CD20XCD3bsAB投与の日を示す。
図8】異なる治療群間の末梢血中に放出されたサイトカイン。CD20XCD3 bsABの第1及び第2の投与の24時間後及び72時間後の、ビヒクルマウス及び治療マウスの血液中のサイトカインの多重分析。ヒストグラムバーは5匹の動物の平均値を表し、誤差バーは標準偏差を示す。IFNγ(A)、TNFα(B)及びIL-6(C)の代表的なグラフを示す。オビヌツズマブ前治療を伴う及び伴わない、CD20XCD3 bsABの第1の注射のサイトカイン放出を比較する(比較される棒は接続線で示す)。
図9】CD20XCD3bsAB、オビヌツズマブ、及びビヌツズマブ前治療(Gpt)+CD20XCD3bsABの抗腫瘍活性。完全ヒト化NOGマウスにおける、単独療法としてのCD20XCD3 bsAB及びオビヌツズマブ又はGpt+CD20XCD3 bsABの抗腫瘍活性。黒い矢印は治療の開始を示す。(8<n<10)。腫瘍モデル:WSU-DLCL2。
図10】CD20XCD3bsAB及びGpt+CD20XCD3bsAB治療による投与後のカニクイザルの末梢血中に放出されたサイトカイン。(A)IFNγ、(B)IL-8、(C)TNFα、(D)IL-2、(E)IL-6。
図11】WSU-DLCL2腫瘍を有する完全ヒト化NOGマウスにおけるCD20XCD3 bsAB及びオビヌツズマブ前治療(Gpt)のステップアップ投与時の抗腫瘍活性。マウスは、CD20XCD3 bsABの分割用量(0.15、0.05、0.015mg/kg IV)又はGpt(10mg/kgのオビヌツズマブ)の第1の治療を受け(矢印)、次いで9回の治療サイクル(すなわち、9週間)の間に毎週0.5mg/kg(全用量)のCD20XCD3 bsABの静脈内注射を受けた。ビヒクル群では、18日目から1匹のマウスが示される。他の群については、n=9又はn=10。腫瘍モデル:WSU-DLCL2が皮下注射された。[CD20XCD3 bsAB 0.05mg/kg+CD20XCD3 bsAB0.05mg/kg]対[オビヌツズマブ10mg/kg+CD20XCD3 bsAB 0.5mg/kg] p=0.018(Dunnettの方法を用いたAUCの一元配置ANOVA分析)。
図12】WSU-DLCL2腫瘍を有する完全ヒト化NOGマウスからの肺におけるT細胞染色、(A-D)第1の治療の7日後、及び(E-H)第2の治療の24時間後。治療群は、以下の通りである(単一治療又は第1+第2の治療):(A)ビヒクル、(B)オビヌツズマブ10mg/kg、(C)CD20XCD3 bsAB 0.15mg/kg、(D)CD20XCD3 bsAB 0.5mg/kg、(E)ビヒクル+ビヒクル、(F)オビヌツズマブ10mg/kg+CD20XCD3 bsAB 0.5mg/kg、(G)CD20XCD3 bsAB 0.15mg/kg+CD20XCD3 bsAB 0.5mg/kg、(H)ビヒクル+CD20XCD3 bsAB 0.5mg/kg。肺の切片は、抗CD3抗体で免疫組織化学的に染色される(暗);核をヘマトキシリンで対比染色した。倍率20倍。矢印は、血管周囲のCD3陽性細胞の増加を指す。
図13】0.5mg/kgのCD20XCD3 bsABによる単回治療の24時間後に屠殺したヒト化NOGマウスの肺。血管における内皮へのT細胞の辺縁趨向及び接着(矢印)。幾つかのT細胞が血管周囲の空間(星印)に遊出した。(A)倍率20倍、(B)倍率40倍。
図14】カニクイザルにおける、オビヌツズマブ前治療を伴う又は伴わない単回静脈内投与後のCD20XCD3 bsABの血清濃度-時間曲線。カニクイザルに、オビヌツズマブ前治療(Gpt)(50mg/kg、CD20XCD3bsAB投与の4日前)を伴うか又は伴わずに、100-1000μg/kgのCD20XCD3 bsABの単回静脈内用量を投与した。6匹の動物が各用量群に示され、そのデータを平均±SDとして示した。
【発明を実施するための形態】
【0091】
定義
本明細書の用語は、以下で特に定義されない限り、当該技術分野で一般に使用されるように使用される。
【0092】
CD20(Bリンパ球抗原CD20、Bリンパ球表面抗原B1、Leu-16、Bp35、BM5、及びLF5としても知られ;ヒトタンパク質は、UniProtデータベースエントリー P11836において特徴づけられる)は、プレB及び成熟Bリンパ球において発現される約35kDの分子量を有する疎水性膜貫通タンパク質である(Valentine, M.A. et al., J. Biol. Chem. 264 (1989) 11282-11287; Tedder, T.F., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85 (1988) 208-212; Stamenkovic, I., et al., J. Exp. Med. 167 (1988) 1975-1980; Einfeld, D.A., et al., EMBO J. 7 (1988) 711-717; Tedder, T.F., et al., J. Immunol. 142 (1989) 2560-2568)。対応するヒト遺伝子は、MS4A1としても知られている、膜貫通4ドメイン、サブファミリーA、メンバー1である。この遺伝子は膜貫通4A遺伝子ファミリーのメンバーをコードする。この新生タンパク質ファミリーのメンバーは、共通の構造的特徴及び類似のイントロン/エクソンのスプライス境界により特徴づけられ、造血細胞及び非リンパ系組織の中に固有の発現パターンを示す。この遺伝子は、B-細胞の形質細胞への発達及び分化において役割を果たすB-リンパ球表面分子をコードする。このファミリーメンバーはファミリーメンバーのクラスター内の11q12に局在する。この遺伝子の選択的スプライシングは、同じタンパク質をコードする2つの転写変異体を生じる。
【0093】
特に断らない限り、本明細書で使用される用語「CD20」は、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス、ラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物由来の任意の天然型CD20を指す。その用語は、「完全長」で未処理のCD20、並びに細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のCD20を含む。その用語はまた、CD20の天然に生じる変異体、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子変異体を含む。一実施態様では、CD20はヒトCD20である。例示的なヒトCD20のアミノ酸配列を配列番号1に示す。
【0094】
用語「抗CD20抗体」及び「CD20に結合する抗体」は、CD20を標的とするうえで診断薬及び/又は治療剤として抗体が有用であるように、十分な親和性でCD20に結合することができる抗体を指す。一実施態様では、抗CD20抗体の、無関係な、非CD20タンパク質への結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定される場合、抗体のCD20への結合の約10%未満である。特定の実施態様では、CD20に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、又は≦0.001nM(例えば10-8M以下、例えば10-8M~10-13M、例えば10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の実施態様では、抗CD20抗体は、異なる種由来のCD20の間で保存されているCD20のエピトープに結合する。
【0095】
「II型抗CD20抗体」は、Cragg et al., Blood 103 (2004) 2738-2743; Cragg et al., Blood 101 (2003) 1045-1052, Klein et al., mAbs 5 (2013), 22-33に記載されるように、II型抗CD20抗体の結合特性及び生物活性を有する抗CD20抗体を意味し、以下の表1に要約される。
【0096】
II型抗CD20抗体の例は、例えば、オビヌツズマブ(GA101)、トシツモマブ(B1)、ヒト化B-Ly1抗体IgG1(国際公開第2005/044859号に開示のキメラヒト化IgG1抗体)、11B8 IgG1(国際公開第2004/035607号に開示)及びAT80 IgG1を含む。
【0097】
I型抗CD20抗体の例は、例えば、リツキシマブ、オファツムマブ、ベルツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、PRO13192、ublituximab、HI47 IgG3(ECACC、ハイブリドーマ)、2C6 IgG1(国際公開第2005/103081号に開示)、2F2 IgG1(国際公開第2004/035607号及び同第2005/103081号に開示)及び2H7 IgG1(国際公開第2004/056312号に開示)を含む。
【0098】
用語「ヒト化B-Ly1抗体」は、IgG1由来のヒト定常ドメインとのキメラ化及びその後のヒト化によって、マウスモノクローナル抗CD20抗体B-Ly1(マウス重鎖の可変領域:配列番号2(VH);マウス軽鎖の可変領域:配列番号3)(Poppema, S. and Visser, L., Biotest Bulletin 3 (1987) 131-139を参照)から得られた、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号に開示されているようなヒト化B-Ly1抗体を指す(国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号参照)。これらの「ヒト化B-Ly1抗体」は、国際公開第2005/044859号及び国際公開第2007/031875号で詳細に開示されている。
【0099】
本明細書で使用される用語「サイトカイン」は、生物学的若しくは細胞機能又はプロセス(例えば、免疫、炎症、及び造血)を媒介及び/又は調節する分子を指す。本明細書で使用される用語「サイトカイン」は、「リンホカイン」、「ケモカイン」、「モノカイン」、及び「インターロイキン」を含む。有用なサイトカインの例は、GM-CSF、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、MIP-1α、MIP-1β、TGF-β、TNF-α、及びTNF-βを含むが、これらに限定されない。特定のサイトカインはIL-2である。本明細書で使用される用語「サイトカイン」は、対応する野生型サイトカインのアミノ酸配列中に1つ又は複数のアミノ酸変異を含むサイトカイン変異体、例えば、Sauve et al., Proc Natl Acad Sci USA 88, 4636-40 (1991); Hu et al., Blood 101, 4853-4861 (2003) and US Pat. Publ. No. 2003/0124678; Shanafelt et al., Nature Biotechnol 18, 1197-1202 (2000); Heaton et al., Cancer Res 53, 2597-602 (1993)及び米国特許第5229109号;米国特許出願公開第2007/0036752号;国際公開第2008/0034473号;国際公開第2009/061853号;又は国際公開第2012/107417号に記載されるIL-2変異体なども含むことを意味する。
【0100】
特に断らない限り、本明細書で使用される用語「インターロイキン-2」又は「IL-2」は、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス、ラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物由来の任意の天然型IL-2を指す。その用語は、未処理のIL-2、並びに細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のIL-2を含む。その用語はまた、IL-2の天然に生じる変異体、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子変異体を含む。例示的なヒトIL-2のアミノ酸配列を配列番号12に示す。未処理のヒトIL-2は、成熟IL-2分子中に存在しない配列番号31の配列を有するN末端20アミノ酸シグナルペプチドを更に含む。本明細書で使用される用語「インターロイキン-2」は、対応する野生型サイトカインのアミノ酸配列中に1つ又は複数のアミノ酸変異を含むIL-2変異体、例えば、Sauve et al., Proc Natl Acad Sci USA 88, 4636-40 (1991); Hu et al., Blood 101, 4853-4861 (2003) and US Pat. Publ. No. 2003/0124678; Shanafelt et al., Nature Biotechnol 18, 1197-1202 (2000); Heaton et al., Cancer Res 53, 2597-602 (1993)及び米国特許第5229109号;米国特許出願公開第2007/0036752号;国際公開第2008/0034473号;国際公開第2009/061853号;又は国際公開第2012/107417号に記載されるIL-2変異体なども含むことを意味する。
【0101】
本明細書で使用される用語「IL-2変異体」又は「変異体IL-2ポリペプチド」は、完全長IL-2、IL-2の切断形態、及びIL-2が融合又は化学結合などによって別の分子に連結されている形態を含む、IL-2分子の様々な形態の任意の変異体形態を包含することを意図している。IL-2に関して使用される場合の「完全長」とは、成熟した天然の長さのIL-2分子を意味することを意図している。例えば、完全長ヒトIL-2は、133アミノ酸を有する分子を指す(例えば配列番号12を参照)。IL-2変異体の種々の形態は、IL-2とCD25との相互作用に影響を及ぼす少なくとも1つのアミノ酸変異を有することを特徴とする。この突然変異は、通常その位置に位置する野生型アミノ酸残基の置換、欠失、切断又は修飾を含み得る。アミノ酸置換によって得られる変異体が好ましい。他に指示がない限り、IL-2変異体は、本明細書において、IL-2変異体ペプチド配列、IL-2変異体ポリペプチド、IL-2変異体タンパク質又はIL-2変異体類似体と呼ぶことができる。本明細書では、様々な形態のIL-2の表記が、配列番号12に示される配列に関して行われる。本明細書では、同じ変異を示すために、様々な表記が使用される。例えば、42位のフェニルアラニンからアラニンへの変異は、42A、A42、A42、F42A、又はPhe42Alaとして示すことができる。
【0102】
本明細書で使用される「サイトカインの放出」又は「サイトカイン放出」という用語は、「サイトカインストーム」又は「サイトカイン放出症候群」(略して「CRS」)と同義であり、治療剤の投与中又は投与直後(例えば、1日以内)に、有害な症状を生じる、対象の血液中のサイトカイン、特に腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターフェロンγ(IFN-γ)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-2(IL-2)及び/又はインターロイキン-8(IL-8)のレベルの上昇を指す。サイトカイン放出は、治療剤に対する一般的な副作用であり、治療剤の投与に適時に関連する注入関連反応(IRR)の一種である。IRRは、典型的には、治療剤の投与中又は投与直後、すなわち、典型的には、注入後24時間以内に、主として最初の注入で生じる。場合によっては、例えば、CAR-T細胞の投与後、CRSは後になってやっと、例えば投与後数日で、CAR-T細胞の増殖時に起こり得る。発生率及び重症度は、典型的にはその後の注入によって減少する。症状は、症状のある不快感から致命的な事象までの範囲であり、発熱、悪寒、めまい、高血圧、低血圧、呼吸困難、不穏状態、発汗、紅潮、皮膚発疹、頻脈、頻脈、頭痛、腫瘍疼痛、吐き気、嘔吐及び/又は臓器不全が含まれる。
【0103】
本明細書で使用される用語「アミノ酸変異」は、アミノ酸の置換、欠失、挿入、及び修飾を包含することを意図している。置換、欠失、挿入、及び修飾の任意の組み合わせが、最終構築物が所望の特性、例えば、CD25又はFc受容体に対する結合の低減を保持することを前提に、最終構築物に到達するために行うことができる。アミノ酸配列の欠失及び挿入には、アミノ末端及び/又はカルボキシ末端の欠失、並びにアミノ酸の挿入が含まれる。特定のアミノ酸変異はアミノ酸の置換である。IL-2ポリペプチド又はFc領域の結合特性などを改変する目的で、非保存的アミノ酸置換、すなわち、1つのアミノ酸を、異なる構造及び/又は化学特性を有する別のアミノ酸で置換することが特に好ましい。アミノ酸置換には、20の標準のアミノ酸(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリジン)の天然に存在するアミノ酸誘導体又は天然に存在しないアミノ酸による置換が含まれる。アミノ酸変異は、当該技術分野で周知の遺伝学的方法又は化学的方法を用いて生成することができる。遺伝学的方法は、部位特異的突然変異誘発、PCR、遺伝子合成などを含み得る。遺伝子操作以外の方法、例えば化学的修飾によってアミノ酸の側鎖基を改変する方法も有用であり得ると考えられる。本明細書では、同じアミノ酸変異を示すために、様々な表記が使用される。例えば、Fc領域の329位におけるプロリンからグリシンへの置換は、329G、G329、G329、P329G、又はPro329Glyとして示される。
【0104】
特に断らない限り、本明細書で使用される用語「CD25」又は「IL-2受容体のαサブユニット」は、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス、ラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物由来の任意の天然型CD25を指す。その用語は、「完全長」で未処理のCD25、並びに細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のCD25を含む。その用語はまた、CD25の天然に生じる変異体、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子変異体を含む。特定の実施態様では、CD25はヒトCD25である。ヒトCD25のアミノ酸配列はUniProt(www.uniprot.org)アクセッション番号P01589、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_000408に示される。
【0105】
本明細書で使用される用語「高親和性IL-2受容体」は、受容体γサブユニット(一般的なサイトカイン受容体γサブユニット、γ、又はCD132としても知られている)、受容体βサブユニット(CD122又はp70としても知られている)及び受容体αサブユニット(CD25又はp55としても知られている)からなるIL-2受容体のヘテロ三量体形態を指す。対照的に、用語「中程度親和性IL-2受容体」は、αサブユニットを含まずに、γサブユニット及びβサブユニットのみを含むIL-2受容体を指す(総説として、Olejniczak and Kasprzak, Med Sci Monit 14, RA179-189 (2008)を参照)。
【0106】
「親和性」とは、分子(例えば、受容体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、リガンド)との間の非共有相互作用の総和の強度を指す。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、受容体とリガンド)のメンバー間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は、通常、解離定数(K)によって表される。この解離定数(K)は、解離速度定数と会合速度定数(それぞれ、koff及びkon)の比である。従って、等価な親和性は、速度定数の比が同じままである限り、異なる速度定数を含み得る。親和性は、当該技術分野で周知の十分に確立された方法によって測定することができる。親和性を測定するための特定の方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
【0107】
「減少(Reduction)」(及び「減少する(reduce)」又は「減少する(reducing)」などのその文法的変形)、例えば、B細胞の数又はADAの形成又はサイトカイン放出の減少とは、当該技術分野で周知の適切な方法によって測定されるように、それぞれの量の減少を指す。明確にするために、この用語はゼロ(又は分析方法の検出限界を下回る値)への減少、すなわち完全な消失又は除去も含む。逆に、「増加(increased)」は、それぞれの量における増加を指す。
【0108】
「調節性T細胞」又は「Treg細胞」とは、他のT細胞の応答を抑制することができる特別なタイプのCD4T細胞を意味する。Treg細胞は、IL-2受容体のαサブユニット(CD25)及び転写因子フォークヘッドボックスP3(FOXP3)の発現によって特徴づけられ(Sakaguchi, Annu Rev Immunol 22, 531-62 (2004))、腫瘍によって発現されるものを含む抗原に対する末梢自己寛容の誘導及び維持において重要な役割を果たす。Treg細胞は、それらの機能及び発達並びにその抑制特性の誘導のためにIL-2を必要とする。
【0109】
本明細書で使用される「抗原結合部分」は、抗原決定基に特異的に結合するポリペプチド分子を指す。一実施態様では、抗原結合部分は、それが結合する実体(例えば、サイトカイン又は第2の抗原結合部分)を標的部位へ、例えば特定の型の腫瘍細胞又は抗原決定基を有する腫瘍間質へと向けることができる。抗原結合部分には、本明細書において更に定義される抗体及びその断片が含まれる。好ましい抗原結合部分には、抗体重鎖可変領域及び抗体軽鎖可変領域を含む、抗体の抗原結合ドメインが含まれる。特定の実施態様では、抗原結合部分は、本明細書において更に定義され、当該技術分野で周知の抗体定常領域を含み得る。有用な重鎖定常領域は、5つのアイソタイプ:α、δ、ε、γ、又はμの何れかを含む。有用な軽鎖定常領域は、2つのアイソタイプ:κ及びλの何れかが含まれる。
【0110】
「特異的に結合する」とは、結合が、抗原について選択的であり、望ましくない相互作用又は非特異的相互作用とは区別可能であることを意味する。特定の抗原決定基に結合する抗原結合部分の能力は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)又は当業者によく知られている他の技術、例えば表面プラズモン共鳴技術(BIAcore機器で解析される)(Liljeblad et al., Glyco J 17, 323-329 (2000))及び伝統的な結合アッセイ(Heeley, Endocr Res 28, 217-229 (2002))の何れかによって測定することができる。
【0111】
本明細書において使用される用語「抗原決定基」は、「抗原」及び「エピトープ」と同義であり、抗原結合部分が結合し、抗原結合部分-抗原複合体を形成するポリペプチド巨大分子上の部位(例えば、アミノ酸の連続的ストレッチ又は非連続的アミノ酸の異なる領域から形成される立体構造)を指す。有用な抗原決定基は、例えば、腫瘍細胞の表面に、ウイルス感染細胞の表面に、他の疾患細胞の表面に、血清中に遊離した状態で、及び/又は細胞外マトリックス(ECM)に見出すことができる。
【0112】
本明細書において使用される用語「ポリペプチド」は、アミノ結合(ペプチド結合としても知られる)により線形に結合した単量体(アミノ酸)からなる分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖を指し、特定の長さの生成物を指すのではない。従って、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は2つ以上のアミノ酸の鎖を指すために用いられる任意の他の用語も「ポリペプチド」の定義に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これら用語の何れかの代わりに、又は何れかと交換可能に、使用することができる。用語「ポリペプチド」は、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、又は天然に存在しないアミノ酸による修飾を含むがこれらに限定されない、ポリペプチドの発現後修飾の生成物を指すことも意図している。ポリペプチドは、天然の生物源に由来してもよく、組換え技術によって産生されてもよいが、必ずしも指定の核酸配列から翻訳される必要はない。それは、化学合成を含む任意の方法で生成することができる。本発明のポリペプチドは、約3以上、5以上、10以上、20以上、25以上、50以上、75以上、100以上、200以上、500以上、1000以上、又は2000以上の大きさのアミノ酸からなってよい。ポリペプチドは、規定の三次元構造を有することができるが、必ずしもそのような構造を有するとは限らない。規定の三次元構造を有するポリペプチドは、折り畳まれていると言われ、規定の三次元構造を有さず、多数の異なるコンフォメーションをとることが可能なポリペプチドは折り畳まれていないと言われる。
【0113】
「単離された」ポリペプチド若しくは変異体、又はその誘導体は、その自然の環境にない目的のポリペプチドを意図する。特定の精製レベルは必要とされない。例えば、単離されたポリペプチドは、その天然又は自然の環境から除去することができる。宿主細胞に発現される、組換えにより産生されたポリペプチド及びタンパク質を、任意の適切な技術により分離、画分化、又は部分的若しくは実質的に精製された天然又は組換えポリペプチドのように、本発明のために単離することが考慮される。
【0114】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、最大のパーセント配列同一性を得るために必要ならば間隙を導入した後、いかなる保存的置換も配列同一性の一部と考えないとした場合の、参照ポリペプチドのアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のためのアラインメントは、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用する、当業者の技量の範囲にある種々の方法で達成可能である。当業者であれば、比較する配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含めた、配列を整列させるための適切なパラメータを決定することができる。しかし、ここでの目的のためには、%アミノ酸配列同一性値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を用いて得られる。ALIGN-2配列比較コンピュータプログラムはジェネンテック社によって作製され、ソースコードは米国著作権庁、ワシントンD.C.,20559に使用者用書類とともに提出され、米国著作権登録番号TXU510087の下で登録されている。また、ALIGN-2は、ジェネンテック社、サウスサンフランシスコ、カリフォルニアから公的に入手可能であるか、又はそのソースコードからコンパイルすることができる。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標)のV4.0Dを含む、UNIX(登録商標)オペレーティングシステム上での使用のためにコンパイルされるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムによって設定され変動しない。アミノ酸配列比較にALIGN-2が用いられる状況では、所与のアミノ酸配列Aの、所与のアミノ酸配列Bとの、又はそれに対する%アミノ酸配列同一性(あるいは、所与のアミノ酸配列Bと、又はそれに対して特定の%アミノ酸配列同一性を有する又は含む所与のアミノ酸配列Aと言うこともできる)は次のように計算される:
100×分率X/Y
ここで、Xは、配列アラインメントプログラムALIGN-2により、そのプログラムのAとBとの配列比較において、完全一致を記録したアミノ酸残基の数であり、YはBの全アミノ酸残基数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと異なる場合、AのBに対する%アミノ酸配列同一性は、BのAに対する%アミノ酸配列同一性とは異なることは理解されるであろう。特に断らない限り、本明細書で使用される全ての%アミノ酸配列同一性値は、ALIGN-2コンピュータプログラムを使用し、直前の段落で説明したようにして得られる。
【0115】
本明細書中で使用される場合、用語「エフェクター部分」は、例えばシグナル伝達又は他の細胞経路を介して細胞活性に影響を及ぼすポリペプチド、例えばタンパク質又は糖タンパク質を指す。従って、エフェクター部分は、細胞膜の外側からシグナルを伝達して、エフェクター部分に対する1つ又は複数の受容体を有する細胞の応答を調節する受容体媒介性シグナル伝達と関連し得る。一実施態様では、エフェクター部分は、エフェクター部分に対する1つ又は複数の受容体を有する細胞において細胞傷害性応答を誘発することができる。別の実施態様では、エフェクター部分は、エフェクター部分に対する1つ又は複数の受容体を有する細胞において増殖応答を誘発することができる。別の実施態様では、エフェクター部分は、エフェクター部分に対する受容体を有する細胞において分化を誘発することができる。別の実施態様では、エフェクター部分は、エフェクター部分に対する受容体を有する細胞内の内因性細胞タンパク質の発現を変化させる(すなわち、アップレギュレート又はダウンレギュレートする)ことができる。エフェクター部分の非限定的な例には、サイトカイン、成長因子、ホルモン、酵素、基質、及び補助因子が含まれる。エフェクター部分は、抗体などの抗原結合部分と様々な立体配置で会合してイムノコンジュゲートを形成することができる。
【0116】
本明細書で用いられる用語「細胞傷害性剤」とは、細胞の機能を阻害若しくは阻止し、かつ/又は細胞死若しくは細胞破壊を生ずる物質を指す。細胞傷害性薬物には、限定されないが、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体);化学療法剤又は薬物(例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン又は他の挿入剤);増殖阻害剤;酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素など;抗生物質;小分子毒素などの毒素、又は細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素(それらの断片及び/又はその変異体を含む);及び以下に開示される様々な抗腫瘍剤又は抗がん剤が含まれる。
【0117】
用語「抗体」は最も広い意味で用いられ、様々な抗体構造を包含し、限定しないが、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び、所望の抗原結合活性を示す限り、抗体断片を含む。
【0118】
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「完全抗体」は、本明細書中で互換的に使用され、天然型抗体構造と実質的に類似の構造を有するか、又は本明細書で定義されるFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0119】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部分を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、限定されないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFv)、及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。本明細書で使用される用語「抗体断片」はまた、単一ドメイン抗体も包含する。
【0120】
用語「免疫グロブリン分子」は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、ジスルフィド結合している2つの軽鎖と2つの重鎖からなる約150000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に、各重鎖は可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、その後に重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2、及びCH3)が続いている。同様に、N末端からC末端に、各軽鎖は可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、その後に軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインが続いている。免疫グロブリンの重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)、又はμ(IgM)と呼ばれる5つのクラスのうちの一つに割当てることができ、それらの幾つかは更にサブクラス、例えばγ(IgG)、γ(IgG)、γ(IgG)、γ(IgG)、α(IgA)及びα(IgA)に分けられる。免疫グロブリンの軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)とラムダ(λ)と呼ばれる、2つのタイプの1つに割り当てることができる。免疫グロブリンは、本質的に、免疫グロブリンのヒンジ領域を介して連結された2つのFab分子とFcドメインからなる。
【0121】
用語「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部又は全体に結合し、かつ抗原の一部又は全体に相補的な領域を含む抗体の部分を指す。抗原結合ドメインは、例えば、1つ又は複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)により提供される。好ましくは、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)及び抗体重鎖可変領域(VH)を含む。
【0122】
用語「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然型抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は一般に、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの超可変領域(HVR)とを含む類似構造を有する。例えば、Kindt et al., Kuby Immunology, 6thed., W.H. Freeman and Co., page 91 (2007)を参照。単一のVH又はVLドメインは、抗原結合特異性を付与するのに十分であろう。
【0123】
「ヒト抗体」は、ヒト又はヒト細胞により産生されるか、又はヒト抗体のレパートリーや他のヒト抗体をコードする配列を利用した非ヒト起源に由来する抗体のそれに対応するアミノ酸配列を有するものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0124】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基及びヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。特定の実施態様では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここではHVR(例えば、CDR)の全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のものに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、任意で、ヒト抗体由来の抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。抗体の「ヒト化型」、例えば、非ヒト抗体は、ヒト化を遂げた抗体を指す。
【0125】
本明細書で使用される用語「超可変領域」又は「HVR」は、配列が超可変であり(「相補性決定領域」又は「CDR」)、かつ/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/又は抗原接触残基(「抗原接触」)を含有する抗体可変ドメインの各領域を指す。一般的に、抗体は、VHに3つ(H1、H2、H3)、及びVLに3つ(L1、L2、L3)の計6つのHVRSを含む。本明細書において例示的なHVRは、
(a)アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)、及び96-101(H3)で生じる超可変ループ;
(b)アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)、及び95-102(H3)で生じるCDR(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c)アミノ酸残基27c-36(L1)、46-55(L2)、89-96(L3)、30-35b(H1)、47-58(H2)、及び93-101(H3)で生じる抗原接触(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));及び
(d)HVRアミノ酸残基46-56(L2)、47-56(L2)、48-56(L2)、49-56(L2)、26-35(H1)、26-35b(H1)、49-65(H2)、93-102(H3)、及び94-102(H3)を含む、(a)、(b)、及び/又は(c)の組み合わせ
を含む。
【0126】
特に断らない限り、可変ドメイン内のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書では上掲のKabatらに従って番号付けされる。
【0127】
「フレームワーク」又は「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に4つのFRのドメイン:すなわちFR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。従って、HVR及びFR配列は一般にVH(又はVL)の以下の配列に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0128】
抗体の「クラス」は、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体には5つの主要なクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらの幾つかは、更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IGA、及びIgAに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0129】
本明細書の用語「Fcドメイン」又は「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む。IgG重鎖のFc領域の境界はわずかに変化し得るが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226又はPro230から重鎖のカルボキシル末端まで延びると定義される。しかしながら、宿主細胞によって産生される抗体は、重鎖のC末端からの1つ又は複数の、特に1つ又は2つのアミノ酸の翻訳後切断を受け得る。従って、全長重鎖をコードする特異的核酸分子の発現によって宿主細胞によって生成される抗体は、全長重鎖を含み得るか、又は全長重鎖の切断型変異体(本明細書において「切断型変異体重鎖」とも称する)を含み得る。これは、重鎖の最後の2つのC末端アミノ酸がグリシン(G446)及びリジン(K447)(KabatのEUインデックスによる番号付け)である場合があり得る。従って、Fc領域のC末端リジン(Lys447)、又はC末端グリシン(Gly446)及びリジン(K447)は存在しても存在しなくてもよい。本明細書に明記されていない限り、Fc領域又は定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD, 1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムに従う(上も参照)。本明細書において使用されるFcドメインの「サブユニット」は、二量体Fcドメインを形成する2つのポリペプチドの一方、すなわち、免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含み、安定な自己会合能を有するポリペプチドを指す。例えば、IgG Fcドメインのサブユニットは、IgG CH2及びIgG CH3定常ドメインを含む。
【0130】
「ヘテロ二量体化を促進する修飾」とは、ペプチド骨格の操作、又はポリペプチド、例えば免疫グロブリン重鎖の翻訳後修飾であり、ホモ二量体を形成するような同一ポリペプチドを持つポリペプチドの会合を減少させるか又は防止する。本明細書において使用されるヘテロ二量体化を促進する修飾には、特に、二量体を形成することが望ましい2つのポリペプチドのそれぞれに施された別々の修飾を含み、これらの修飾は、2つのポリペプチドの会合を促進するように互いに相補的である。例えば、ヘテロ二量体化を促進する修飾は、二量体を形成するのに望ましいポリペプチドの一方又は両方の構造又は電荷を変化させることにより、それらの会合をそれぞれ立体的に又は静電的に好ましいものにすることができる。ヘテロ二量体化は、2つの同一ではないポリペプチド、例えば、重鎖の各々に融合した更なるイムノコンジュゲート構成要素(例えば、IL-2ポリペプチド)が同じではない2つの免疫グロブリン重鎖間で起こる。本発明に有用なイムノコンジュゲートにおいて、ヘテロ二量体化を促進する修飾は、免疫グロブリン分子の重鎖(複数可)、特にFcドメインにおいてである。幾つかの実施態様では、ヘテロ二量体化を促進する修飾は、アミノ酸変異、特にアミノ酸置換を含む。特定の実施態様では、ヘテロ二量体化を促進する修飾は、2つの免疫グロブリン重鎖の各々における別個のアミノ酸変異、特にアミノ酸置換を含む。
【0131】
同様に、「Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾」とは、Fcドメインのサブユニットを含むポリペプチドの、同一のポリペプチドとの会合によるホモ二量体の形成を減少させるか又は防止する、ペプチド骨格の操作又はFcドメインのサブユニットの翻訳後修飾である。本明細書において使用される会合を促進する修飾には、特に、会合することが望ましい2つのFcドメインサブユニット(すなわち、Fcドメインの第1及び第2のサブユニット)の各々に対して行われる別個の修飾が含まれ、これらの修飾は2つのFcドメインサブユニットの会合を促進するように、互いに相補的である。例えば、会合を促進する修飾は、Fcドメインサブユニットの一方又は両方の構造又は電荷を変化させることにより、それらの会合を、それぞれ立体的に又は静電的に好ましいものにすることができる。このように、(ヘテロ)二量体化は、第1のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドと、第2のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドとの間で起こり、これらのポリペプチドは、サブユニットの各々に融合した更なる成分(例えば、抗原結合部分)が同じでないという意味で非同一であり得る。幾つかの実施態様では、会合を促進する修飾は、Fcドメイン中にアミノ酸変異、特にアミノ酸置換を含む。特定の実施態様では、会合を促進する修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットの各々における別個のアミノ酸変異、特にアミノ酸置換を含む。
【0132】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFc領域の結合に続いて、エフェクター機能を実行するように受容体保有細胞を刺激するシグナル伝達現象を生じさせるFc受容体である。活性化Fc受容体には、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、及びFcαRI(CD89)が含まれる。
【0133】
用語「エフェクター機能」は、抗体に関して使用される場合、抗体アイソタイプによって変化する抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞貪食(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介抗原取り込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション、及びB細胞の活性化が含まれる。
【0134】
本明細書で使用される用語「エフェクター細胞」とは、それらの表面にエフェクター部分受容体、例えばサイトカイン受容体、及び/又はFc受容体を提示するリンパ球の集団を指し、エフェクター細胞はその受容体を介してエフェクター部分、例えばサイトカイン、及び/又は抗体のFc領域に結合し、標的細胞、例えば腫瘍細胞の破壊に寄与する。エフェクター細胞は、例えば、細胞傷害性作用又は貪食作用を媒介し得る。エフェクター細胞は、限定されるものではないが、CD8細胞傷害性T細胞、CD4ヘルパーT細胞、γδT細胞、NK細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞及びマクロファージ/単球などのエフェクターT細胞を含む。
【0135】
本明細書において使用される「操作する(engineer)、操作された(engineered)、操作(engineering)」などの用語は、ペプチド骨格の何れかの操作、又は天然に存在するポリペプチド又は組換えポリペプチド又はその断片の翻訳後修飾を含むと考慮される。操作は、アミノ酸配列、グリコシル化パターン、又は個々のアミノ酸の側鎖基の修飾、並びにこれらのアプローチの組み合わせを含む。特に、接頭語「糖鎖(glyco-)」を伴う「操作」並びに用語「糖鎖付加操作」には、細胞内で発現される糖タンパク質の糖鎖付加の改変を達成するためのオリゴ糖合成経路の遺伝子操作を含む、細胞の糖鎖付加機構の代謝操作が含まれる。更に、糖鎖付加操作には、糖鎖付加に対する変異及び細胞環境の影響が含まれる。一実施態様では、糖鎖付加操作はグリコシルトランスフェラーゼ活性の改変である。特定の実施態様では、操作はグルコサミニルトランスフェラーゼ活性及び/又はフコシルトランスフェラーゼ活性の改変をもたらす。糖鎖付加操作を用いて、「増加したGnTIII活性を有する宿主細胞」(例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)活性を有する1つ又は複数のポリペプチドの増加したレベルを発現するように操作された宿主細胞)、「増加したManII活性を有する宿主細胞」(例えば、α-マンノシダーゼII(ManII)活性を有する1つ又は複数のポリペプチドの増加したレベルを発現するように操作された宿主細胞)、又は「α(1,6)フコシルトランスフェラーゼ活性が減少した宿主細胞」(例えば、減少したレベルのα(1,6)フコシルトランスフェラーゼを発現するように操作された宿主細胞)を得ることができる。
【0136】
用語「宿主細胞、宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」は互換的に使用され、外因性の核酸が導入された細胞を指し、そのような細胞の子孫を含める。宿主細胞は、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含み、それには、継代の数に関係なく、それに由来する一次形質転換細胞及び子孫が含まれる。子孫は親細胞と核酸含量が完全に同一でなくてもよく、突然変異を含んでいてもよい。最初に形質転換された細胞においてスクリーニング又は選択されたものと同じ機能又は生物活性を有する変異型子孫が本明細書において含まれる。宿主細胞は、本発明のために使用されるタンパク質を生成するために使用することができる何れかの種類の細胞系である。一実施態様では、宿主細胞は、修飾されたオリゴ糖を有する抗体の産生を可能にするように操作される。特定の実施態様では、宿主細胞は、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)活性を有する1つ又は複数のポリペプチドの増加したレベルを発現するように操作されている。特定の実施態様では、宿主細胞は、α-マンノシダーゼII(ManII)活性を有する1つ又は複数のポリペプチドの増加したレベルを発現するように更に操作されている。宿主細胞は、培養細胞、例えば幾つか例を挙げると、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞、又はハイブリドーマ細胞といった哺乳動物の培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、及び植物細胞を含み、更には、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、又は培養された植物若しくは動物組織内部に含まれる細胞も含む。
【0137】
本明細書で使用される用語「GnTIII活性を有するポリペプチド」は、N-結合型オリゴ糖のトリマンノシルコアのβ-結合型マンノシドへのβ-1,4結合におけるN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基の付加を触媒することができるポリペプチドを指す。これは、特定の生物学的アッセイにおいて、用量依存性を伴って又は伴わずに測定されるように、β-1,4-マンノシル糖タンパク質4-β-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(EC 2.4.1.144)(国際生化学・分子生物学連合(NC-IUBMB)の命名委員会による)としても知られているβ(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIの活性に類似するが必ずしも同一ではない酵素活性を示す融合ポリペプチドを含む。用量依存性が存在する場合、それはGnTIIIのものと同一である必要はなく、GnTIIIと比較して所定の活性における用量依存性と実質的に類似している(すなわち、候補ポリペプチドは、GnTIIIに対してより大きな活性又は約25倍以下、好ましくは約10倍以下の活性、最も好ましくは約3倍以下の活性を示すであろう)。特定の実施態様では、GnTIII活性を有するポリペプチドは、GnTIIIの触媒ドメイン及び異種ゴルジ常在ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドである。特に、ゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼII又はGnTIの局在化ドメイン、最も具体的にはマンノシダーゼIIの局在化ドメインである。あるいは、ゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIの局在化ドメイン、GnTIIの局在化ドメイン、及びα1,6コアフコシルトランスフェラーゼの局在化ドメインからなる群より選択される。そのような融合ポリペプチドを生成し、それらを使用して増加したエフェクター機能を有する抗体を産生する方法は、国際公開第2004/065540号、米国仮特許出願番号60/495,142号及び米国特許出願公開第2004/0241817号に開示され、その全体の内容が参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0138】
本明細書で使用される用語「ゴルジ局在化ドメイン」は、ゴルジ複合体内の位置にポリペプチドを固定する役割を担うゴルジ常在ポリペプチドのアミノ酸配列を指す。一般に、局在化ドメインは、酵素のアミノ末端「テール」を含む。
【0139】
本明細書中で使用される用語「ManII活性を有するポリペプチド」は、N-結合型オリゴ糖の分枝GlcNAcManGlcNAcマンノース中間体中の末端1,3-及び1,6-結合α-D-マンノース残基の加水分解を触媒することができるポリペプチドを指す。これは、マンノシルオリゴ糖1,3-1,6-α-マンノシダーゼII(EC 3.2.1.114)(国際生化学・分子生物学連合(NC-IUBMB)の命名委員会による)としても知られているゴルジα-マンノシダーゼIIの活性に類似するが必ずしも同一ではない酵素活性を示すポリペプチドを含む。
【0140】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、免疫エフェクター細胞による抗体被覆標的細胞の溶解を導く免疫機構である。標的細胞は、Fc領域を含む抗体又はその断片が、一般にFc領域のN末端であるタンパク質部分を介して特異的に結合する細胞である。本明細書で使用される用語「増加した/減少したADCC」は、標的細胞を囲む媒質中の所定の抗体濃度において、上記に定義したADCCの機構により所定の時間内に溶解する標的細胞の数の増加/減少、及び/又は、ADCCの機構により所定の時間内に所定の数の標的細胞の溶解を達成するために必要な、標的細胞を囲む媒質中の抗体濃度の減少/増加の何れかとして定義される。ADCCの増加/減少は、同じ標準的な産生、精製、製剤化、及び貯蔵方法(これらは当業者に周知である)を用いて、但し操作されていない、同じ型の宿主細胞により産生される同じ抗体により媒介されるADCCに対して相対的なものである。例えば、本明細書に記載された方法によって糖鎖付加のパターンを改変するように(例えば、グリコシルトランスフェラーゼ、GnTIII、又は他のグリコシルトランスフェラーゼを発現するように)操作された宿主細胞によって産生される抗体によって媒介されるADCCの増加は、同じタイプの操作されていない宿主細胞によって産生される同じ抗体によって媒介されるADCCに対して相対的なものである。
【0141】
「増加した/減少した抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を有する抗体」とは、当業者に周知の任意の適切な方法によって決定されるように、増加した/減少したADCCを有する抗体を意味する。一つの許容されるin vitro ADCCアッセイは、次の通りである:
1)アッセイは、抗体の抗原結合領域によって認識される標的抗原を発現することが知られている標的細胞を使用する;
2)アッセイは、エフェクター細胞として、無作為に選択された健常ドナーの血液から単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)を使用する;
3)アッセイは、次のプロトコールに従って実施される:
i)標準的な密度遠心分離手順を使用してPBMCを単離し、5x10細胞/mlでRPMI細胞培養培地に懸濁させる;
ii)標準的な組織培養法により標的細胞を増殖させ、生存率が90%を越える指数増殖期から回収し、RPMI細胞培養培地中で洗浄し、100マイクロキュリーの51Crで標識し、細胞培養培地で2回洗浄し、10細胞/mlの密度で細胞培養培地に再懸濁させる;
iii)100マイクロリットルの上記の最終標的細胞懸濁液を、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移す;
iv)抗体を細胞培養培地で4000ng/mから0.04ng/mlに連続希釈し、50マイクロリットルの得られた抗体溶液を96ウェルマイクロタイタープレート中の標的細胞に添加し、上記の全濃度範囲をカバーする様々な抗体濃度で3回試験する。
v)最大放出(MR)コントロールに対して、標識された標的細胞を含むプレート中の更なる3つのウェルに、抗体溶液(上記のiv項)に代えて、50マイクロリットルの非イオン性洗浄剤(Nonidet,Sigma,St.Louis)の2%(VN)水溶液を添加する;
vi)自然放出(SP)コントロールに対して、標識された標的細胞を含むプレート中の更なる3つのウェルに、抗体溶液(上記のiv項)に代えて、50マイクロリットルのRPMI細胞培養培地を添加する;
vii)次いで、96ウェルマイクロタイタープレートを50xgで1分間遠心分離し、1時間4℃でインキュベートする;
viii)エフェクター:標的細胞の比率が25:1となるように各ウェルに50マイクロリットルのPBMC懸濁液(上記のi項)を添加して、該プレートを37℃、5%CO雰囲気下で4時間インキュベーター内に配置する;
ix)各ウェルから無細胞の上清を回収し、ガンマカウンターを使用して、実験的に放出された放射能(ER)を定量する;
x)特異的溶解の百分率を、各抗体濃度について、式(ER-MR)/(MR-SR)×100[式中、ERはその抗体濃度について定量された平均放射活性(上記ix項参照)であり、MRはMRコントロール(上記v項参照)について定量された平均放射活性(上記ix項参照)であり、SRはSRコントロール(上記vi項参照)について定量された平均放射活性(上記ix項参照)である]に従って計算する。
4)「増加した/減少したADCC」は、上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大百分率の増加/減少、及び/又は上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大百分率の半分を達成するのに必要な抗体濃度の減少/増加の何れかとして定義される。ADCCの増加/減少は、同じ標準的な産生、精製、製剤化、及び貯蔵方法(これらは当業者に周知である)を用いて、但し操作されていない、同じ型の宿主細胞により産生される同じ抗体により媒介され、上記アッセイにより測定される、ADCCに対して相対的なものである。
【0142】
本明細書で使用される用語「イムノコンジュゲート」は、サイトカインなどの少なくとも1つのエフェクター部分及び抗体などの抗原結合部分を含むポリペプチド分子を指す。特定の実施態様では、イムノコンジュゲートは、1つ以下のエフェクター部分を含む。本発明において有用な特定のイムノコンジュゲートは、本質的に1つのエフェクター部分及び1つ又は複数のペプチドリンカーによって連結された抗体からなる。本発明による特定のイムノコンジュゲートは融合タンパク質であり、すなわち、イムノコンジュゲートの成分はペプチド結合によって連結されている。
【0143】
本明細書で使用される用語「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を意味し、すなわち、例えば天然に生じる変異を含むか又はモノクローナル抗体調製物の製造時に発生し、一般的に少量で存在している可能性のある変異体抗体を除き、集団を構成する個々の抗体は同一であり、かつ/又は同じエピトープに結合する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。従って、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の製造を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、限定されるものではないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含めた様々な技術によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのこれらの方法及びその他の例示的な方法は本明細書に記載されている。
【0144】
本明細書で使用されるように、抗原結合部分などに関して「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、部分の各種類が2つ以上存在する場合、便宜上区別するために使用される。このような用語の使用は、明瞭に述べているのでない限り、特定の順序又は方向を付与することを意図しているのではない。
【0145】
用語「多重特異性」及び「二重特異性」とは、抗原結合分子が少なくとも2つの異なる抗原決定基に特異的に結合することができることを意味する。典型的には、二重特異性抗原結合分子は2つの抗原結合部位を含み、その各々は異なる抗原決定基に特異的である。特定の実施態様では、二重特異性抗原結合分子は、2つの抗原決定基、特に2つの異なる細胞上に発現される2つの抗原決定基に同時に結合することができる。
【0146】
本明細書において使用される用語「価」は、抗原結合分子内における特定数の抗原結合部位の存在を意味する。従って、「抗原への一価の結合」という用語は、抗原結合分子内において、抗原に特異的な1つの(かつ1つを超えない)抗原結合部位の存在を意味する。
【0147】
「抗原結合部位」は、抗原との相互作用を提供する抗原結合分子の部位、すなわち、1つ又は複数のアミノ酸残基を指す。例えば、抗体の抗原結合部位は、相補性決定領域(CDR)由来のアミノ酸残基を含む。天然の免疫グロブリン分子は、典型的には2つの抗原結合部位を有し、Fab分子は典型的には単一の抗原結合部位を有する。
【0148】
本明細書で使用される「T細胞活性化治療剤」は、対象においてT細胞活性化を誘導することができる治療剤、特に対象においてT細胞活性化を誘導するために設計された治療剤を指す。T細胞活性化治療剤の例には、CD3などの活性化T細胞抗原及びCD20又はCD19などの標的細胞抗原に特異的に結合する二重特異性抗体が含まれる。更なる例には、T細胞活性化ドメイン及びCD20又はCD19などの標的細胞抗原に特異的に結合する抗原結合部分を含むキメラ抗原受容体(CAR)が含まれる。
【0149】
本明細書で使用される「活性化T細胞抗原」は、抗原結合分子との相互作用の際にT細胞活性化を誘導又は増強することができるTリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球により発現される抗原決定基を指す。具体的には、活性化T細胞抗原と抗原結合分子との相互作用は、T細胞受容体複合体のシグナル伝達カスケードを誘発することにより、T細胞活性化を誘導することができる。例示的な活性化T細胞抗原はCD3である。
【0150】
本明細書で使用される「T細胞活性化」は、増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクター分子の放出、細胞傷害活性、及び活性化マーカーの発現から選択される、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の1つ又は複数の細胞応答を指す。本発明において使用されるT細胞活性化二重特異性抗原結合分子及びT細胞活性化治療剤は、T細胞活性化を誘導することができる。T細胞活性化を測定するための適切なアッセイは、本明細書に記載の技術分野において周知である。
【0151】
本明細書で使用される「標的細胞抗原」は、標的細胞、例えばがん細胞又は腫瘍間質の細胞などの腫瘍内細胞の表面に提示される抗原決定基を指す。
【0152】
本明細書で使用される「B細胞抗原」は、Bリンパ球、特に悪性Bリンパ球の表面に提示される抗原決定基を指す(その場合、抗原は「悪性B細胞抗原」とも呼ばれる)。
【0153】
本明細書で使用される「T細胞抗原」は、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の表面に提示される抗原決定基を指す。
【0154】
「Fab分子」は、免疫グロブリンの、重鎖(「Fab重鎖」)のVH及びCH1ドメインと、軽鎖(「Fab軽鎖」)のVL及びCLドメインとからなるタンパク質を指す。
【0155】
「キメラ抗原受容体」又は「CAR」とは、抗原結合部分、例えば、標的抗体の単鎖可変断片(scFv)、膜貫通ドメイン、細胞内T細胞活性化シグナル伝達ドメイン(例えば、T細胞受容体のCD3ゼータ鎖)及び任意選択的に1つ又は複数の細胞内共刺激ドメイン(例えば、CD28、CD27、CD137(4-1BB)、Ox40の)を含む遺伝子操作された受容体タンパク質を意味する。CARは、抗原認識、T細胞活性化、及び- 第2世代のCARの場合- T細胞の機能性及び持続性を増大させる同時刺激を媒介する。総説として、Jackson et al., Nat Rev Clin Oncol (2016) 13, 370-383を参照。
【0156】
「B細胞増殖性障害」とは、患者のB細胞の数が健常対象のB細胞の数と比較して増加しており、特に、B細胞の数の増加が疾患の原因又は特徴である疾患を意味する。「CD20陽性B細胞増殖性障害」は、B細胞、具体的には悪性B細胞(正常B細胞に加えて)がCD20を発現するB細胞増殖性障害である。例示的なB細胞増殖障害は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、並びに幾つかのタイプの多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)を含む。
【0157】
「融合した」とは、複数の成分(例えば、Fab分子及びFcドメインサブユニット)が、直接又は1つ又は複数のペプチドリンカーを介して、ペプチド結合により連結していることを意味する。
【0158】
「抗薬物抗体」又は「ADA」は、治療剤に結合し、対象における治療剤の血清濃度及び機能に影響を与え得る抗体を指す。ADAの存在は、治療剤と抗体(中和、非中和又はその両方)との間の免疫複合体の形成により治療剤のクリアランスを増加させ、それにより治療剤の半減期を減少させる可能性がある。更に、治療剤の活性及び有効性は、抗体の治療剤への結合を介して減少し得る(特にADAを中和する場合)。ADAはまた、アレルギー反応又は過敏反応及び他の有害事象と関連し得る。
【0159】
「有効量の」薬剤は、それが投与される細胞又は組織中に生理的変化をもたらすために必要な量を指す。
【0160】
薬剤、例えば、薬学的組成物の「治療的有効量」とは、所望の治療的又予防的結果を達成するために必要な用量及び期間での、有効な量を指す。治療的有効量の薬剤は、疾患の有害作用を、例えば、排除する、減少させる、遅延させる、最小化する、又は防止する。
【0161】
「治療剤」とは、治療されている対象における疾患の自然経過を変える試みにおいて対象に投与され、かつ、予防のために、又は臨床病理の経過の間に実行され得る、例えば薬学的組成物の有効成分を意味する。「免疫療法剤」は、例えば腫瘍に対する対象の免疫応答を回復又は増強する試みにおいて対象に投与される治療剤を指す。
【0162】
「個体」又は「対象」とは、哺乳動物である。哺乳動物には、限定されないが、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ)、霊長類(例えば、ヒト、及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、げっ歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれる。好ましくは、個体又は対象はヒトである。
【0163】
用語「薬学的組成物」は、その中に含有される活性成分の生物活性が有効であるような形態である調製物であって、組成物が投与されるであろう対象に対して許容できないほど毒性である追加の成分を含まない調製物を指す。
【0164】
「薬学的に許容される担体」は、対象に非毒性である、有効成分以外の薬学的組成物の成分を指す。薬学的に許容される担体には、限定されないが、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は保存剤が含まれる。
【0165】
本明細書で用いられる場合、「治療」(及び「治療する(treat)」又は「治療している(treating)」など文法上の変形)は、治療されている個体の疾患の自然経過を変えようと試みる臨床的介入を指し、予防のために、又は臨床病理の過程において実行され得る。治療の望ましい効果には、限定されないが、疾患の発症又は再発を予防すること、症状の緩和、疾患の直接的又は間接的な病理学的帰結の縮小、転移を予防すること、疾患の進行の速度を遅らせること、疾患状態の改善又は緩和、及び寛解又は予後の改善が含まれる。幾つかの実施態様では、本発明の方法は、疾患の発症を遅延させるか、又は疾患の進行を遅らせるために使用される。
【0166】
用語「添付文書」は、適応、用法、用量、投与法、併用療法、禁忌についての情報、及び/又はそのような治療用製品の使用に関する警告を含む、治療用製品の商用パッケージに慣習的に含められるインストラクションを指すために使用される。
【0167】
「CD3」は、特に断らない限り、霊長類(例えばヒト)、非ヒト霊長類(例えばカニクイザル)及びげっ歯類(例えば、マウス、ラット)などの哺乳動物を含む任意の脊椎動物由来の任意の天然型CD3を指す。その用語は、「完全長」で未処理のCD3、並びに細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のCD3を含む。その用語はまた、CD3の天然に生じる変異体、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子変異体を含む。一実施態様では、CD3はヒトCD3、具体的にはヒトCD3のイプシロンサブユニット(CD3ε)である。ヒトCD3εのアミノ酸配列はUniProt(www.uniprot.org)アクセッション番号P07766(バージョン144)、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_000724.1に示される。配列番号115も参照のこと。カニクイザル[Macaca fascicularis]CD3εのアミノ酸配列は、NCBI GenBank番号BAB71849.1に示される。配列番号116も参照のこと。
【0168】
特に断りのない限り、「CD19」は、Bリンパ球表面抗原B4又はT細胞表面抗原Leu-12としても知られているBリンパ球抗原CD19を指し、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然型CD19を含む。その用語は、「完全長」で未処理のCD19、並びに細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のCD19を含む。その用語はまた、CD19の天然に生じる変異体、例えば、スプライスバリアント又は対立遺伝子変異体を含む。一実施態様では、CD19はヒトCD19である。例示的なヒトCD19のアミノ酸配列はUniProt(www.uniprot.org)アクセッション番号P15391(バージョン174)、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_001770.5、及び配列番号117に示される。
【0169】
特に断りのない限り、「がん胎児性抗原」又は「CEA」(がん胎児性抗原関連細胞接着分子5(CEACAM5)としても知られている)は、霊長類(例えば、ヒト)、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然型CEAを指す。その用語は、「完全長」の未処理のCEA並びに細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のCEAを包含する。その用語はまた、天然に存在するCEAの変異体、例えばスプライスバリアント又は対立遺伝子変異体をも包含する。一実施態様では、CEAはヒトCEAである。ヒトCEAのアミノ酸配列はUniProt(www.uniprot.org)アクセッション番号P06731、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_004354.2に示される。
【0170】
特に断りのない限り、「線維芽細胞活性化タンパク質」又は「FAP」(セプラーゼとしても知られる)は、霊長類(例えば、ヒト)、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル)及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物源由来の任意の天然型FAPを指す。その用語は、「完全長」の未処理のFAP並びに細胞内でのプロセシングから生じた任意の形態のFAPを包含する。その用語はまた、天然に存在するFAPの変異体、例えばスプライスバリアント又は対立遺伝子変異体をも包含する。一実施態様では、FAPはヒトFAPである。ヒトFAPのアミノ酸配列はUniProt(www.uniprot.org)アクセッション番号Q12884、又はNCBI(www.ncbi.nlm.nih.gov/)RefSeq NP_004451.2に示される。
【0171】
「クロスオーバー」Fab分子(「Crossfab」とも表記される)は、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメイン又は定常ドメインが交換されている(すなわち、互いに置換されている)Fab分子を意味し、すなわち、クロスオーバーFab分子は、軽鎖可変ドメインVLと重鎖定常ドメイン1 CH1からなるペプチド鎖(N末端からC末端方向にVL-CH1)、及び重鎖可変ドメインVHと軽鎖定常ドメインCLからなるペプチド鎖(N末端からC末端方向にVH-CL)を含む。明確にするために、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子において、重鎖定常ドメイン1 CH1を含むペプチド鎖を、本明細書では(クロスオーバー)Fab分子の「重鎖」と呼ぶ。逆に、Fab軽鎖とFab重鎖の定常ドメインが交換されているクロスオーバーFab分子において、重鎖可変ドメインVHを含むペプチド鎖を、本明細書では(クロスオーバー)Fab分子の「重鎖」と呼ぶ。
【0172】
これに対して、「従来の」Fab分子とは、その天然フォーマットにおけるFab分子、すなわち重鎖可変ドメインと定常ドメインからなる重鎖(N末端からC末端方向にVH-CH1)、及び軽鎖可変ドメインと定常ドメインからなる軽鎖(N末端からC末端方向にVL-CL)を含むFab分子を意味する。
【0173】
II型抗CD20抗体
CD20分子(ヒトBリンパ球限定分化抗原又はBp35とも称される)は、悪性及び非悪性プレB及び成熟Bリンパ球の表面上に発現される疎水性膜貫通タンパク質であり、詳しく記述されている(Valentine, M.A., et al., J. Biol. Chem. 264 (1989) 11282-11287;及びEinfeld, D.A., et al., EMBO J. 7 (1988) 711-717; Tedder, T.F., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85 (1988) 208-212; Stamenkovic, I., et al., J. Exp. Med. 167 (1988) 1975-1980; Tedder, T.F., et al., J. Immunol. 142 (1989) 2560-2568)。
【0174】
CD20は、90%超のB細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)により高度に発現されるが(Anderson, K.C., et al., Blood 63 (1984) 1424-1433)、造血幹細胞、プロB細胞、正常形質細胞、又は他の正常組織上には見出されない(Tedder, T.F., et al., J, Immunol. 135 (1985) 973- 979)。
【0175】
CD20結合の様式と生物活性が有意に異なる、2つの異なるタイプの抗CD20抗体が存在する(Cragg, M.S., et al., Blood 103 (2004) 2738-2743;及びCragg, M.S., et al., Blood 101 (2003) 1045-1052)。I型抗CD20抗体は主に補体を利用して標的細胞を死滅させるが、II型抗体は主に細胞死の直接誘導により作用する。
【0176】
I型及びII型抗CD20抗体並びにそれらの特性は、例えば、Klein et al., mAbs 5 (2013), 22-33に総説される。II型抗CD20抗体は、CD20を脂質ラフトに局在せず、低CDC活性を示し、I型抗CD20抗体と比較して、B細胞に対する約半分の結合能力しか示さず、同型凝集及び直接細胞死を誘導する。これとは対照的に、II型抗体は、CD20を脂質ラフトに局在させ、高いCDC活性、B細胞に対する完全な結合能力を示し、同型凝集及び直接細胞死のごく弱い誘導を示す。
【0177】
オビヌツズマブ及びトシツモマブ(CAS番号192391-48)は、II型抗CD20抗体の例であり、一方、リツキシマブ、オファツムマブ、ベルツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、PRO131921及びウブリツキシマブ(ublituximab)は、I型抗CD20抗体の例である。
【0178】
本発明によれば、抗CD20抗体はII型抗CD20抗体である。本発明による一実施態様では、II型抗CD20抗体は、対象におけるB細胞の数を減少させることができる。一実施態様では、II型抗CD20抗体は、IgG抗体、具体的にはIgG1抗体である。一実施態様では、II型抗CD20抗体は完全長抗体である。一実施態様では、II型抗CD20抗体は、Fc領域、特にIgG Fc領域、又はより具体的にはIgG1 Fc領域を含む。一実施態様では、II型抗CD20抗体はヒト化B-Ly1抗体である。特に、II型抗CD20抗体は、マウスB-Ly1抗体の結合特異性を有するヒト化IgGクラスII型抗CD20抗体である(Poppema and Visser, Biotest Bulletin 3, 131-139 (1987);配列番号2及び3)。
【0179】
一実施態様では、II型抗CD20抗体は、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。特に、前記II型抗CD20抗体の重鎖可変領域フレームワーク領域(FR)のFR1、FR2、及びFR3は、VH1_10ヒト生殖系列配列によってコードされるヒトFR配列であり、前記抗CD20抗体の重鎖可変領域FR4は、JH4ヒト生殖系列配列によってコードされるヒトFR配列であり、前記II型抗CD20抗体の軽鎖可変領域FRのFR1、FR2、及びFR3は、VK_2_40ヒト生殖系列配列によってコードされるヒトFR配列であり、かつ、前記抗CD20抗体の軽鎖可変領域FR4は、JK4ヒト生殖系列配列によってコードされるヒトFR配列である。一実施態様では、II型抗CD20抗体は、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む。
【0180】
特定の実施態様では、II型抗CD20抗体はオビヌツズマブ(推奨INN、WHO Drug Information, Vol. 26, No. 4, 2012, p. 453)である。本明細書で使用される場合、オビヌツズマブは、GA101と同義である。商標名は、GAZYVA(登録商標)又はGAZYVARO(登録商標)である。これは、以前の全てのバージョン(例:Vol. 25, No. 1, 2011, p.75-76)に取って代わるものであり、以前はアフツズマブ(推奨INN、WHO Drug Information, Vol. 23, No. 2, 2009, p. 176;Vol. 22, No. 2, 2008, p. 124)として知られている。一実施態様では、II型抗CD20抗体はトシツモマブである。
【0181】
本発明において有用なII型抗CD20抗体は、対応する非操作抗体と比較して、増加したエフェクター機能を有するように操作され得る。一実施態様では、増加したエフェクター機能を有するように操作された抗体は、対応する非操作抗体と比較して、少なくとも2倍、少なくとも10倍又は少なくとも100倍増加したエフェクター機能を有する。エフェクター機能の増加は、限定しないが、Fc受容体結合の増加、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)の増加、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の増加、抗体依存性細胞貪食(ADCP)の増加、サイトカイン分泌の増加、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込みの増加、NK細胞に対する結合の増加、マクロファージに対する結合の増加、単球に対する結合の増加、多形核細胞に対する結合の増加、アポトーシスを誘導する直接的シグナル伝達の増加、標的結合抗体の架橋の増加、樹状細胞成熟の増加、又はT細胞プライミングの増加のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0182】
一実施態様では、エフェクター機能の増加は、Fc受容体結合の増加、CDCの増加、ADCCの増加、ADCPの増加、及びサイトカイン分泌の増加からなる群より選択される1つ又は複数である。一実施態様では、エフェクター機能の増加は、活性化Fc受容体への結合の増加である。1つのそのような実施態様では、活性化Fc受容体に対する結合親和性は、対応する非操作抗体の結合親和性と比較して、少なくとも2倍、特に少なくとも10倍増加する。特定の実施態様では、活性化Fc受容体は、FcγRIIIa、FcγRI、及びFcγRIIaの群から選択される。一実施態様では、活性化Fc受容体はFcγRIIIa、特にヒトFcγRIIIaである。別の実施態様では、エフェクター機能の増加はADCCの増加である。1つのそのような実施態様では、ADCCは、対応する非操作抗体により媒介されるADCCと比較して、少なくとも10倍、特に少なくとも100倍増加する。更に別の実施態様では、エフェクター機能の増加は、活性化Fc受容体への結合の増加及びADCCの増加をもたらす。
【0183】
エフェクター機能の増加は、当該技術分野で周知の方法によって測定することができる。ADCCを測定するための適切なアッセイは本明細書に記載される。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの他の例が、米国特許第5500362号;Hellstrom et al. Proc Natl Acad Sci USA 83, 7059-7063 (1986)及びHellstrom et al., Proc Natl Acad Sci USA 82, 1499-1502 (1985);米国特許第5821337号;Bruggemann et al., J Exp Med 166, 1351-1361 (1987)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を用いてもよい(例えばフローサイトメトリー用のACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、又は更に、目的の分子のADCC活性は、例えばClynes et al., Proc Natl Acad Sci USA 95, 652-656 (1998)に開示される動物モデルにおいてin vivoで評価することができる。Fc受容体に対する結合は、例えばELISAにより、又はBIAcore装置(GE Healthcare)のような標準的な計測手段を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)により容易に決定することができ、このようなFc受容体は組換え発現により得ることができる。特定の実施態様によれば、活性化Fc受容体に対する結合親和性は、25℃でBIACORE(登録商標)T100装置(GE Healthcare)を用いる表面プラズモン共鳴により測定される。あるいは、Fc受容体に対する抗体の結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株、例えばFcγIIIa受容体を発現するNK細胞を用いて評価してもよい。C1q結合アッセイはまた、抗体がC1qに結合できるかどうか、それによりCDC活性を有するかどうかを決定するために実行され得る。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996); Cragg, et al., Blood 101:1045-1052 (2003);及びCragg, and Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照)。
【0184】
エフェクター機能の増加は、例えば、Fc領域の糖鎖工学又は抗体のFc領域におけるアミノ酸変異の導入から生じ得る。一実施態様では、抗CD20抗体は、Fc領域に1つ又は複数のアミノ酸変異を導入することによって操作される。特定の実施態様では、アミノ酸変異はアミノ酸置換である。更により具体的な実施態様では、アミノ酸置換は、Fc領域の298位、333位及び/又は334位(残基のEU番号付け)にある。更に適切なアミノ酸変異は、例えば、Shields et al., J Biol Chem 9(2), 6591-6604 (2001);米国特許第6737056号;国際公開第2004/063351号及び国際公開第2004/099249号に記載されている。変異体Fc領域は、当該技術分野で周知の遺伝学的又は化学的方法を用いたアミノ酸の欠失、置換、挿入、又は修飾により調製することができる。遺伝学的方法は、コード化DNA配列の部位特異的突然変異誘発、PCR、遺伝子合成などを含み得る。正確なヌクレオチドの変化は、例えば配列決定により確認することができる。
【0185】
別の実施態様では、II型抗CD20抗体は、Fc領域における糖鎖付加の修飾によって操作される。特定の実施態様では、II型抗CD20抗体は、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される。抗体のFc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合の増加は、抗体がエフェクター機能の増加、特にADCCの増加をもたらす結果となる。
【0186】
より特定の実施態様では、II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%、好ましくは少なくとも約40%が非フコシル化されている。一実施態様では、II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%から約80%が非フコシル化されている。一実施態様では、II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%から約60%が非フコシル化されている。非フコシル化オリゴ糖は、ハイブリッド型又は複合型であってもよい。
【0187】
別の特定の実施態様では、II型抗CD20抗体は、非操作抗体と比較して、Fc領域における二分されたオリゴ糖の割合が増加するように操作される。より特定の実施態様では、II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%、好ましくは少なくとも約40%が二分されている。一実施態様では、抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%から約80%が二分されている。一実施態様では、II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%から約60%が二分されている。二分されたオリゴ糖は、ハイブリッド型又は複合型であってもよい。
【0188】
更に別の特定の実施態様では、抗CD20抗体は、非操作抗体と比較して、Fc領域における二分された、非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される。より特定の実施態様では、抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約100%、好ましくは少なくとも約15%、より好ましくは少なくとも約25%が二分され、非フコシル化されている。二分された、非フコシル化オリゴ糖は、ハイブリッド型又は複合型であってもよい。
【0189】
抗体Fc領域におけるオリゴ糖構造は、Umana et al., Nat Biotechnol 17, 176-180 (1999)又はFerrara et al., Biotechn Bioeng 93, 851-861 (2006)に記載されるように、当該技術分野で周知の方法、例えば、MALDI TOF質量分析によって分析することができる。非フコシル化オリゴ糖の百分率は、Asn297に結合し(例えば、複合体、ハイブリッド及び高マンノース構造)、N-グリコシダーゼFで処理した試料中でMALDI TOF MSによって同定された全てのオリゴ糖に対する、フコース残基を欠くオリゴ糖の量である。Asn297は、Fc領域(Fc領域残基のEU番号付け)でおよそ297の位置に位置するアスパラギン残基を指す;しかし、Asn297もまた位置297の上流又は下流のおよそ±3アミノ酸に、すなわち抗体の軽微な配列変異に起因して、位置294と300の間に位置し得る。二分された、又は二分された非フコシル化オリゴ糖の百分率も同様に決定される。
【0190】
一実施態様では、II型抗CD20抗体は、1つ又は複数のグリコシルトランスフェラーゼの活性が改変された宿主細胞中で抗体を産生させることによって、非操作抗体と比較して、Fc領域において修飾された糖鎖付加を有するように操作される。グリコシルトランスフェラーゼは、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)、β(1,4)-ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT)、β(1,2)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GnTI)、β(1,2)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼII(GnTII)及びα(1,6)-フコシルトランスフェラーゼを含む。特定の実施態様では、II型抗CD20抗体は、増加したβ(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)活性を有する宿主細胞中で抗体を産生することによって、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される。更により特定の実施態様では、宿主細胞は更にα-マンノシダーゼII(ManII)活性を増加させている。本発明に有用な抗体を操作するために用いることができる糖鎖工学の方法論は、Umana et al., Nat Biotechnol 17, 176-180 (1999); Ferrara et al., Biotechn Bioeng 93, 851-861 (2006);国際公開第99/54342号(米国特許第6602684号;欧州特許第1071700号);国際公開第2004/065540号(米国特許出願公開第2004/0241817号;欧州特許第1587921号)、国際公開第03/011878号(米国特許出願公開第2003/0175884号)により詳細に記載されており、これらの各々の全内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。この方法論を使用して糖鎖操作された抗体は、本明細書ではGlycoMabと称される。
【0191】
一般に、改変された糖鎖付加パターンを有する抗TNC A2抗体の産生のための細胞株を生成するために、本明細書に記載の細胞株を含む任意のタイプの培養細胞株を使用することができる。特定の細胞株には、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YOミエローマ細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、及び他の哺乳動物細胞が含まれる。特定の実施態様では、宿主細胞は、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII)活性を有する1つ又は複数のポリペプチドの増加したレベルを発現するように操作されている。特定の実施態様では、宿主細胞は、α-マンノシダーゼII(ManII)活性を有する1つ又は複数のポリペプチドの増加したレベルを発現するように操作されている。特定の実施態様では、GnTIII活性を有するポリペプチドは、GnTIIIの触媒ドメイン及び異種ゴルジ常在ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドである。特に、前記ゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIIのゴルジ局在化ドメインである。そのような融合ポリペプチドを生成し、それらを使用して増加したエフェクター機能を有する抗体を産生する方法は、Ferrara et al., Biotechn Bioeng 93, 851-861 (2006)及び国際公開第2004/065540号に開示され、その全体の内容が参照により本明細書に明確に組み込まれる。
【0192】
本発明に有用な抗体のコード配列及び/又はグリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドのコード配列を含み、かつ、生物学的に活性な遺伝子産物を発現する宿主細胞は、例えば、DNA-DNA又はDNA-RNAハイブリダイゼーション;「マーカー」遺伝子機能の存在又は非存在;宿主細胞中のそれぞれのmRNA転写物の発現によって測定された転写のレベルを評価すること;又はイムノアッセイによって若しくはその生物活性によって測定された遺伝子産物の検出 - 当該分野で周知の方法によって同定され得る。GnTIII又はManII活性を、例えば、GnTIII又はManIIそれぞれの生合成産物に結合するレクチンを使用することによって検出することができる。そのようなレクチンの例は、バイセクティングGlcNAcを含むオリゴ糖に優先的に結合するE-PHAレクチンである。GnTIII又はManII活性を有するポリペプチドの生合成産物(すなわち特定のオリゴ糖構造)は、前記ポリペプチドを発現する細胞によって産生された糖タンパク質から放出されたオリゴ糖の質量分析によっても検出することができる。あるいは、増加したエフェクター機能、例えば、GnTIII又はManII活性を有するポリペプチドにより操作された細胞によって産生される抗体によって媒介される、Fc受容体結合の増加を測定する機能アッセイが使用され得る。
【0193】
別の実施態様では、抗CD20抗体は、減少したα(1,6)-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する宿主細胞中で抗体を産生することによって、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される。減少したα(1,6)-フコシルトランスフェラーゼ活性を有する宿主細胞は、α(1,6)-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子が破壊されているか、さもなければ失活している、例えばノックアウトされている細胞であってもよい(Yamane-Ohnuki et al., Biotech Bioeng 87, 614 (2004); Kanda et al., Biotechnol Bioeng, 94(4), 680-688 (2006); Niwa et al., J Immunol Methods 306, 151-160 (2006)を参照)。
【0194】
脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の他の例には、タンパク質フコシル化が欠損したLec13 CHO細胞が挙げられる(Ripka et al., Arch Biochem Biophys 249, 533-545 (1986);米国特許出願公開第2003/0157108号;及び国際公開第2004/056312号、特に実施例11).あるいは、本発明に有用な抗体は、欧州特許第1176195(A1)号、国際公開第03/084570号、国際公開第03/085119号及び米国特許出願公開第2003/0115614号、2004/093621号、2004/110282号、2004/110704号、2004/132140号、米国特許第6946292号(Kyowa)に開示される技術に従って、例えば、抗体産生のために使用される宿主細胞中のGDP-フコーストランスポータータンパク質の活性を低下させるか又は無効にすることによって、Fc領域におけるフコース残基が減少するように糖鎖操作されてもよい。
【0195】
本発明に有用な糖鎖操作抗体はまた、国際公開第03/056914号(GlycoFi,Inc.)又は国際公開第2004/057002号及び国際公開第2004/024927号(Greenovation)において教示されるように、修飾された糖タンパク質を産生する発現系において産生され得る。
【0196】
治療剤
本発明は、種々の治療剤、特に対象において免疫原性である(すなわち、対象において免疫応答を誘導する能力を有する)及び/又は対象においてT細胞を活性化する治療剤に関連して有用である。そのような治療剤には、例えば組換えタンパク質が含まれる。
【0197】
一実施態様では、治療剤は、II型抗CD20抗体の投与を伴わない治療レジメンにおいて対象に投与された場合、対象においてADAの形成を誘導する。一実施態様では、治療剤は、II型抗CD20抗体の投与を伴わない治療レジメンにおいて対象に投与された場合、対象においてサイトカインの放出を誘導する。一実施態様では、治療剤は、II型抗CD20抗体の投与を伴わない治療レジメンにおいて対象に投与された場合、対象においてADAの形成とサイトカインの放出を誘導する。
【0198】
一実施態様では、治療剤は生物学的薬剤である。一実施態様では、治療剤はポリペプチド、特に組換えポリペプチドを含む。一実施態様では、治療剤は、対象において天然に存在しない及び/又は対象において免疫原性であるポリペプチドを含む。一実施態様では、治療剤は全身投与されるべきである。一実施態様では、治療剤は、注入、特に静脈内注入によって投与されるべきである。
【0199】
一実施態様では、治療剤は抗原結合ポリペプチドを含む。一実施態様では、治療剤は、抗体、抗体断片、Fcドメイン、及びイムノコンジュゲートの群から選択されるポリペプチドを含む。一実施態様では、治療剤は、抗体、抗体断片、抗原受容体又はその抗原結合断片、及び受容体リガンド又はその受容体結合断片の群から選択されるポリペプチドを含む。一実施態様では、治療剤は抗体を含む。一実施態様では、抗体はモノクローナル抗体である。一実施態様では、抗体はポリクローナル抗体である。一実施態様では、抗体はヒト抗体である。一実施態様では、抗体はヒト化抗体である。一実施態様では、抗体はキメラ抗体である。一実施態様では、抗体は完全長抗体である。一実施態様では、抗体はIgGクラス抗体、具体的にはIgG1サブクラス抗体である。一実施態様では、抗体は組換え抗体である。
【0200】
特定の実施態様では、治療剤は抗体断片を含む。抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)、Fv及びscFv断片、並びに以下に記載される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。所定の抗体断片の総説については、Hudson et al., Nat Med 9, 129-134 (2003)を参照。scFv断片の総説については、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York), pp. 269-315 (1994)を参照;また、国際公開第93/16185号;及び米国特許第5571894号及び第5587458号も参照。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivoでの半減期を増加させたFab及びF(ab’)2断片の議論については、米国特許第5869046号を参照されたい。一実施態様では、抗体断片は、Fab断片又はscFv断片である。
【0201】
ダイアボディは2価又は二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、欧州特許第404097号;国際公開第1993/01161号;Hudson et al., Nat Med 9, 129-134 (2003);及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)を参照。トリアボディ及びテトラボディもHudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。
【0202】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て又は一部、又は軽鎖可変ドメインの全て又は一部を含む抗体断片である。特定の実施態様では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6248516(B1)号を参照)。
【0203】
抗体断片は様々な技術で作成することができ、限定されないが、本明細書に記載するように、インタクトな抗体のタンパク分解、並びに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌又はファージ)による生産を含む。
【0204】
特定の実施態様では、治療剤はキメラ抗体を含む。特定のキメラ抗体が、例えば、米国特許第4816567号;及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)に記載されている。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又は非ヒト霊長類、例えばサル由来の可変領域)及びヒト定常領域を含む。更なる例では、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のそれから変化した「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、その抗原結合断片が含まれる。
【0205】
特定の実施態様では、治療剤はヒト化抗体を含む。典型的には、非ヒト抗体は、非ヒト親抗体の特異性及び親和性を保持しつつ、ヒトに対する免疫原性を低下させるためにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、1つ又は複数の可変ドメインを含み、ここで、HVR、例えばCDR(又はその一部)は非ヒト抗体に由来し、FR(又はその一部)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むであろう。幾つかの実施態様では、ヒト化抗体の幾つかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0206】
ヒト化抗体及びそれらの製造方法は、例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)に総説されており、更に、Riechmann et al., Nature332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA86:10029-10033 (1989);米国特許第5821337号、第7527791号、第6982321号、及び第7087409号;Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005) (特異性決定領域(SDR)のグラフティングを記述);Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (「リサーフェシング」を記述);Dall'Acqua et al., Methods36:43-60 (2005) (「FRシャッフリング」を記述);並びにOsbourn et al., Methods 36:61-68 (2005)及びKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (FRシャッフリングに対する「誘導選択」アプローチを記述)に記載されている。
【0207】
ヒト化に用いられ得るヒトフレームワーク領域は、限定されないが、「ベストフィット」法を用いて選択されるフレームワーク領域(例えば、Sims et al. J. Immunol. 151:2296 (1993)を参照;軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992);及びPresta et al. J. Immunol., 151:2623 (1993)を参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒトの生殖細胞系フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008)を参照);及びFRライブラリースクリーニング由来のフレームワーク領域(例えば、Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997)及びRosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996)を参照)を含む。
【0208】
特定の実施態様では、治療剤はヒト抗体を含む。ヒト抗体は、当該技術分野において周知の様々な技術を用いて生産することができる。ヒト抗体は一般的に、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-74 (2001) 及びLonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008)に記載されている。
【0209】
ヒト抗体は、抗原攻撃に応答してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に、免疫原を投与することによって調製することができる。このような動物は、典型的には内因性免疫グロブリン遺伝子座を置換するか、又は染色体外に存在するか若しくはその動物の染色体にランダムに組み込まれているヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含む。このようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、通常は不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の総説については、 Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005)を参照。また、例えばXENOMOUSETM技術を記載している米国特許第6075181号及び第6150584号、HuMab(登録商標)技術を記載している米国特許第5770429号、K-M MOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許第7041870号、及びVelociMouse(登録商標)技術を記載している米国特許出願公開第2007/0061900号も参照。このような動物により生成されるインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることにより、更に修飾され得る。
【0210】
ヒト抗体は、ハイブリドーマベースの方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の製造のためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987)、及びBoerner et al.,J. Immunol., 147: 86 (1991)を参照)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体もLi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006)に記載されている。更なる方法は、例えば米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の作製について説明している)及びNi, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006) (ヒト-ヒトハイブリドーマについて説明している)に記載されているものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)もまた、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005)及びVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載されている。
【0211】
ヒト抗体はまた、ヒト由来のファージディスプレイライブラリーから選択されたFvクローン可変ドメイン配列を単離することによって生成することもできる。このような可変ドメイン配列は、次に所望のヒト定常ドメインと組み合わせてもよい。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術を以下に記載する。
【0212】
治療剤に含まれる抗体は、所望の活性(複数可)を有する抗体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを作成して所望の結合特性を有する抗体のコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするための種々の方法が、当該技術分野で知られている。そのような方法は、例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001)に総説が、更に、例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554; Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks and Bradbury, in Methods in Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34): 12467-12472 (2004);及びLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004)に記載がある。
【0213】
特定のファージディスプレイ法では、VH遺伝子のレパートリー及びVL遺伝子のレパートリーをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別々にクローニングし、ファージライブラリーにおいてランダムに組換え、次いでWinter et al., Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994)に記載されるように、抗原結合ファージをスクリーニングする。ファージは、典型的には単鎖Fv(scFv)断片又はFab断片の何れかとして抗体断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なく、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。代わりに、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993)に記載されるように、ナイーブなレパートリーを、いかなる免疫感作も伴わずに、広範囲の非自己抗原及び自己抗原に対する抗体の単一起源を提供するために、(例えば、ヒトから)クローニングすることができる。最後に、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992)によって記載されているように、幹細胞由来の再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを用いて可変性に富むCDR3領域をコードし、in vitroでの再配列を達成することにより、ナイーブライブラリーを合成的に作製することもできる。ヒト抗体ファージライブラリーを記載している特許公報は、例えば米国特許第5750373号並びに米国特許出願公開第2005/0079574号、第2005/0119455号、第2005/0266000号、第2007/0117126号、第2007/0160598号、第2007/0237764号、第2007/0292936号、及び第2009/0002360号を含む。
【0214】
ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体又は抗体断片は、本明細書においてヒト抗体又はヒト抗体の断片とみなされる。
【0215】
特定の実施態様では、治療剤は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体を含む。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施態様では、結合特異性は異なる抗原に対するものである。特定の実施態様では、結合特異性は同じ抗原上の異なるエピトープに対するものである。二重特異性抗体はまた、抗原を発現する細胞に細胞傷害性剤を局在化させるために使用することもできる。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片として調製することができる。
【0216】
多重特異性抗体を作製するための技術は、限定されるものではないが、異なる特異性を有する二組の免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(Milstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)、国際公開第93/08829号、及びTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991)を参照)及び「ノブ・イン・ホール」技術(例えば米国特許第5731168号を参照)を含む。多重特異性抗体はまた、抗体のFc-ヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果を操作すること(国際公開第2009/089004A1号);2つ以上の抗体又は断片を架橋すること(例えば、米国特許第4676980号、及びBrennan et al., Science, 229: 81 (1985)を参照);二重特異性抗体を産生するためにロイシンジッパーを使用すること(例えば、Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992)を参照);二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993)を参照);単鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、Gruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994)を参照);及び、例えば、Tutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)に記載されているように、三重特異性抗体を調製することによって作製することができる。
【0217】
「オクトパス抗体(Octopus antibody)」を含む3つ以上の機能的抗原結合部位を有する操作抗体も本明細書に含まれる(例えば、米国特許第2006/0025576号を参照)。
【0218】
本明細書中の抗体又は断片はまた、2つの異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」又は「DAF」を含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号参照)。
【0219】
「クロスマブ(Crossmab)」抗体も本明細書に含まれる(例えば、国際公開第2009080251号、国際公開第2009080252号、国際公開第2009080253号、国際公開第2009080254号を参照)。
【0220】
二重特異性抗体断片を作製するための別の技術は、「二重特異性T細胞エンゲージャー(engager)」又はBiTE(登録商標)アプローチである(例えば、国際公開第2004/106381号、国際公開第2005/061547号、国際公開第2007/042261号及び国際公開第2008/119567号を参照)。このアプローチは、単一のポリペプチド上に配置された2つの抗体可変ドメインを利用する。例えば、単一のポリペプチド鎖は、2つの単鎖Fv(scFv)断片を含み、それぞれは、2つのドメイン間の分子内会合を可能にするのに十分な長さのポリペプチドリンカーによって分離された可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)ドメインを有する。この単一のポリペプチドは、2つのscFv断片の間にポリペプチドスペーサー配列を更に含む。各scFvは異なるエピトープを認識し、各scFvがその同族エピトープと結合している場合に、2つの異なる細胞型の細胞が近接しているか又は繋がれているように、これらのエピトープは異なる細胞型に特異的であり得る。このアプローチの1つの特定の実施態様は、免疫細胞によって発現される細胞表面抗原、例えばT細胞上のCD3ポリペプチドを認識するscFvであって、悪性又は腫瘍細胞などの標的細胞によって発現される細胞表面抗原を認識する別のscFvに連結されているscFvを含む。
【0221】
それが単一のポリペプチドであるため、二重特異性T細胞エンゲージャーは、当該技術分野で周知の任意の原核細胞又は真核細胞発現系、例えばCHO細胞株を用いて発現され得る。しかしながら、単量体二重特異性T細胞エンゲージャーを、単量体の意図された活性以外の生物活性を有し得る他の多量体種から分離するためには、特定の精製技術(例えば、欧州特許第1691833号を参照)が必要であろう。1つの例示的な精製スキームでは、分泌されたポリペプチドを含有する溶液を最初に金属アフィニティークロマトグラフィーに付し、ポリペプチドをイミダゾール濃度の勾配で溶出させる。この溶出液を陰イオン交換クロマトグラフィーを用いて更に精製し、ポリペプチドを塩化ナトリウム濃度の勾配を用いて溶出させる。最後に、この溶出液をサイズ排除クロマトグラフィーに付して単量体を多量体種から分離する。
【0222】
三価以上の抗体も考えられる。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tuft et al. J. Immunol. 147: 60 (1991)。
【0223】
特定の実施態様では、治療剤に含まれる抗体は、当該技術分野で知られており、容易に入手可能な付加的な非タンパク質性部分を含むように更に修飾することができる。抗体の誘導体化に適した部分は、限定しないが、水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーの非限定的な例は、限定されないが、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーの何れか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレン(prolypropylene)オキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにそれらの混合物を含む。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のために製造上の利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量であってよく、分枝状でも非分枝状でもよい。抗体に結合するポリマーの数は変化してもよく、複数のポリマーが結合する場合、それらは同一又は異なる分子であってもよい。一般的に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又は種類は、改善されるべき抗体の特定の特性又は機能、その抗体誘導体が規定された条件の下での治療に使用されるかどうかを含めた(ただし、これらに限定されない)考慮事項に基づいて決定することができる。
【0224】
治療剤はまた、1つ又は複数の細胞傷害性剤、例えば化学療法剤若しくは薬物、増殖阻害剤、毒素(例えばタンパク質毒素、細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素又はその断片)又は放射性同位体にコンジュゲートした抗体を含み得る。
【0225】
一実施態様では、治療剤は抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を含み、その中では抗体が、メイタンシノイド(米国特許第5208020号、第5416064号、及び欧州特許第0425235(B1)号を参照);アウリスタチン、例えばモノメチルアウリスタチン薬物部分であるDE及びDF(MMAE及びMMAF)(米国特許第5635483号、第5780588号、及び第7498298号を参照);ドラスタチン;カリケアマイシン又はその誘導体(米国特許第5712374号、第5714586号、第5739116号、第5767285号、第5770701号、第5770710号、第5773001号、及び第5877296号;Hinman et al., Cancer Res. 53:3336-3342 (1993);及びLode et al., Cancer Res. 58:2925-2928 (1998)を参照);アントラサイクリン、例えばダウノマイシン又はドキソルビシン(Kratz et al., Current Med. Chem. 13:477-523 (2006); Jeffrey et al., Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362 (2006); Torgov et al., Bioconj. Chem. 16:717-721 (2005); Nagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA97:829-834 (2000); Dubowchik et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters12:1529-1532 (2002); King et al., J. Med. Chem. 45:4336-4343 (2002);及び米国特許第6630579号を参照);メトトレキサート;ビンデシン;タキサン、例えばドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル(larotaxel)、テセタキセル(tesetaxel)、及びオルタタキセル(ortataxel);トリコテセン;及びCC1065を含む(ただし、これらに限定されない)1つ又は複数の薬物にコンジュゲートしている。
【0226】
別の実施態様では、治療剤は、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、(緑膿菌からの)外毒素A鎖、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリタンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)、及びトリコテセン(tricothecenes)を含む(ただし、これらに限定されない)酵素的に活性な毒素又はその断片にコンジュゲートしている、本明細書に記載の抗体を含む。
【0227】
他の実施態様では、治療剤は、放射性原子にコンジュゲートして放射性コンジュゲートを形成する、本明細書に記載の抗体を含む。種々の放射性同位体が、放射性コンジュゲートの製造のために入手可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体を含む。放射性コンジュゲートは、検出用に使用される場合、シンチグラフ検査のための放射性原子、例えばtc99m若しくはI123、又は核磁気共鳴(NMR)画像法(磁気共鳴画像法、MRIとしても知られる)のためのスピン標識、例えば、再びヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含み得る。
【0228】
抗体と細胞傷害性剤とのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオナート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミダート HCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン 2,6-ジイソシアネート)、及び二活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitetta et al., Science238:1098 (1987)に記載のようにして調製することができる。炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのためのキレート剤の例である。国際公開第94/11026号を参照。リンカーは、細胞内で細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res. 52:127-131 (1992);米国特許第5208020号)が使用され得る。
【0229】
幾つかの実施態様では、治療剤は、モノクローナル抗体、例えば、限定されるものではないが、アレムツズマブ(LEMTRADA(登録商標))、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標))、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標))、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標))、ペルツズマブ(OMNITARG(登録商標)、2C4)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標))、トシツモマブ(Bexxar(登録商標))、アブシキシマブ(REOPRO(登録商標))、アダリムマブ(HUMIRA(登録商標))、アポリズマブ、アセリズマブ(aselizumab)、アトリズマブ、バピネオズマブ、バシリキシマブ(SIMULECT(登録商標))、バビツキシマブ、ベリムマブ(BENLYSTA(登録商標))ブリアキヌマブ(briankinumab)、カナキヌマブ(ILARIS(登録商標))、セデリズマブ、セルトリズマブペゴル(CIMZIA(登録商標))、シドフシツズマブ(cidfusituzumab)、シドツズマブ(cidtuzumab)、シズツムマブ、クラザキズマブ(clazakizumab)、クレネズマブ、ダクリズマブ(ZENAPAX(登録商標))、ダロツズマブ、デノスマブ(PROLIA(登録商標)、XGEVA(登録商標))、エクリズマブ(SOLIRIS(登録商標))、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ(erlizumab)、フェルビズマブ(felvizumab)、フォントリズマブ、ゴリムマブ(SIMPONI(登録商標))、イピリムマブ、イムガツズマブ(imgatuzumab)、インフリキシマブ(REMICADE(登録商標))、ラベツズマブ、レブリキズマブ、レクサツムマブ、リンツズマブ、ルカツムマブ(lucatumumab)、ルリズマブペゴル(lulizumab pegol)、ルムレツズマブ(lumretuzumab)、マパツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モガムリズマブ、モタビズマブ、モタビズマブ(motovizumab)、ムロモナブ(muronomab)、ナタリズマブ(TYSABRI(登録商標))、ネシツムマブ(PORTRAZZA(登録商標))、ニモツズマブ(THERACIM(登録商標))、ノロビズマブ(nolovizumab)、ヌマビズマブ(numavizumab)、オロキズマブ(olokizumab)、オマリズマブ(XOLAIR(登録商標))、オナルツズマブ(MetMAbとしても知られる)、パリビズマブ(SYNAGIS(登録商標))、パスコリズマブ(pascolizumab)、ペクフシツズマブ(pecfusituzumab)、ペクツズマブ(pectuzumab)、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(登録商標))、パキセリズマブ、プリリキシマブ(priliximab)、ラリビズマブ(ralivizumab)、ラニビズマブ(LUCENTIS(登録商標))、レスリビズマブ(reslivizumab)、レスリズマブ(reslizumab)、レシビズマブ(resyvizumab)、ロバツムマブ(robatumumab)、ロンタリズマブ(rontalizumab)、ロベリズマブ(rovelizumab)、ルプリズマブ(ruplizumab)、サリルマブ、セクキヌマブ、セリバンツマブ(seribantumab)、シファリムマブ(sifalimumab)、シブロツズマブ(sibrotuzumab)、シルツキシマブ(SYLVANT(登録商標))シプリズマブ、ソンツズマブ(sontuzumab)、タドシズマブ(tadocizumab)、タリズマブ、テフィバズマブ(tefibazumab)、トシリズマブ(ACTEMRA(登録商標))、トラリズマブ(toralizumab)、ツクシツズマブ(tucusituzumab)、ウマビズマブ(umavizumab)、ウルトキサズマブ(urtoxazumab)、ウステキヌマブ(STELARA(登録商標))、ベドリズマブ(ENTYVIO(登録商標))、ビジリズマブ、ザノリムマブ、ザルツムマブを含み得る。
【0230】
一実施態様では、治療剤は、がんの治療に適応される抗体を含む。一実施態様では、治療剤は、自己免疫疾患の治療に適応される抗体を含む。一実施態様では、治療剤は免疫療法剤である。一実施態様では、治療剤は、がんの治療に適応される。幾つかの実施態様では、特に、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出の減少に関与する本発明の関連する態様において、がんはB細胞増殖性障害である。一実施態様では、がんは、CD20陽性B細胞増殖性障害である。一実施態様では、がんは、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選択される。一実施態様では、治療剤は免疫療法剤である。
【0231】
一実施態様では、治療剤は免疫抑制剤である。一実施態様では、治療剤は、自己免疫疾患の治療に適応される。
【0232】
理論に縛られることを望むものではないが、活性化共刺激分子を促進させることによって、又は負の共刺激分子を阻害することによってT細胞刺激を増強することは、腫瘍細胞死を促進し、それによりがんを治療し又はがんの進行を遅延させ得ると考えられる。幾つかの実施態様では、治療剤は、活性化共刺激分子に対するアゴニストを含み得る。幾つかの実施態様では、活性化共刺激分子は、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、又はCD127を含み得る。幾つかの実施態様では、活性化共刺激分子に対するアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、又はCD127に結合するアゴニスト抗体である。幾つかの実施態様では、治療剤は、GITRを標的とする抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、GITRを標的とする抗体はTRX518である。幾つかの実施態様では、治療剤は、阻害性共刺激分子に対するアンタゴニストを含み得る。幾つかの実施態様では、阻害性共刺激分子は、CTLA-4(CD152としても知られる)、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、又はアルギナーゼを含み得る。幾つかの実施態様では、阻害性共刺激分子に対するアンタゴニストは、CTLA-4、PD-1、TIM-3、BTLA、VISTA、LAG-3、B7-H3、B7-H4、IDO、TIGIT、MICA/B、又はアルギナーゼに結合するアンタゴニスト抗体である。
【0233】
幾つかの実施態様では、治療剤は、抗PD-1抗体を含み得る。一実施態様では、抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ、以前はランブロリズマブとして知られている)、CT-011(ピディリズマブ)からなる群から選択される。MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、又はニボルマブとしても知られるMDX-1106は、国際公開第2006/121168号に記載の抗PD-1抗体である。ペンブロリズマブ又は(以前は)ランブロリズマブとしても知られているMK-3475は、国際公開第2009/114335号に記載の抗PD-1抗体である。hBAT、hBAT-1又はピディリズマブとしても知られているCT-011は、国際公開第2009/101611号に記載の抗PD-1抗体である。
【0234】
幾つかの実施態様では、治療剤は、イムノアドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合されたPD-L1又はPD-L2の細胞外又はPD-1結合部分を含むイムノアドヘシン)を含み得る。一実施態様では、治療剤は、B7-DCIg(国際公開第2010/027827号及び国際公開第2011/066342号に記載のPD-L2-Fc融合可溶性受容体)としても知られているAMP-224を含むことができる。
【0235】
幾つかの実施態様では、治療剤は、抗PD-L1抗体を含み得る。一実施態様では、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A、MDX-1105、及びMEDI4736からなる群から選択される。抗体YW243.55.S70は、国際公開第2010/077634号に記載の抗PD-L1抗体である。BMS-936559としても知られているMDX-1105は、国際公開第2007/005874号に記載の抗PD-L1抗体である。MEDI4736は、国際公開第2011/066389号及び米国特許出願公開第2013/034559号に記載の抗PD-L1モノクローナル抗体である。一実施態様では、抗PD-L1抗体はアテゾリズマブである。
【0236】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CTLA-4(CD152としても知られる)に対する抗体、例えばブロッキング抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、イピリムマブ(MDX-010、MDX-101、又はYERVOY(登録商標)としても知られる)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、トレメリムマブ(チシリムマブ又はCP-675,206としても知られる)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、B7-H3(CD276としても知られる)に対する抗体、例えばブロッキング抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤はMGA271を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、TGFベータに対するアンタゴニスト、例えば、メテリムマブ(CAT-192としても知られる)、フレソリムマブ(GC1008としても知られる)、又はLY2157299を含み得る。
【0237】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CD137(TNFRSF9、4-1BB、又はILAとしても知られる)に対するアゴニスト、例えば活性化抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、ウレルマブ(BMS-663513としても知られる)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD137(TNFRSF9、4-1BB、又はILAとしても知られる)のリガンド、例えば4-1BBLを含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD40に対するアゴニスト、例えば活性化抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤はCP-870893を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、OX40(CD134としても知られる)に対するアゴニスト、例えば活性化抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、抗OX40抗体(例えばAgonOX)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤はOX40のリガンド、例えばOX40Lを含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD27に対するアゴニスト、例えば活性化抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、CDX-1127を含み得る。
【0238】
幾つかの実施態様では、治療剤は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞又はCTL)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、ドミナントネガティブTGFベータ受容体、例えば、ドミナントネガティブTGFベータII型受容体を含むT細胞を含み得る。
【0239】
幾つかの実施態様では、治療剤は、抗体-薬物コンジュゲートを含み得る。幾つかの実施態様では、抗体-薬物コンジュゲートは、メルタンシン(mertansine)又はモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を含む。幾つかの実施態様では、治療剤は、抗NaPi2b抗体-MMAEコンジュゲート(DNIB0600A又はRG7599としても知られる)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1、アド-トラスツズマブ エムタンシン、又はKADCYLA(登録商標)としても知られる)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、DMUC5754Aを含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、エンドセリンB受容体(EDNBR)を標的とする抗体-薬物コンジュゲート、例えばMMAEとコンジュゲートしたEDNBR(DEDN6526Aとしても知られる)に対する抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、ゲムツズマブオゾガミシン(gemtuzumab ozogamicin)(MYLOTARG(登録商標))を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、イノツズマブオゾガミシン(inotuzumab ozogamicin)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、ビヴァツヅマブメルタンシン(bivatuzumab mertansine)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、カンツズマブメルタンシン(cantuzumab mertansine)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、カンツズマブラブタンシン(cantuzumab ravtansine)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、ブレンツキシマブベドチン(ADECTRIS(登録商標))を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、ピナツヅマブベドチン(pinatuzumab vedotin)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、ポラツズマブベドチン(polatuzumab vedotin)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、グレムバツムマブベドチン(glembatumumab vedotin)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、ロルボツズマブメルタンシン(lorvotuzumab mertansine)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、タカツズマブテトラキセタン(tacatuzumab tetraxetan)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、バンドルツズマブベドチン(vandortuzumab vedotin(DSTP3086S))を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、イブリツモマブチウキセタン(ibritumomab tiuxetan(ZEVALIN(登録商標))を含み得る。
【0240】
幾つかの実施態様では、治療剤は、アンジオポエチン2(Ang2としても知られる)に対する抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、MEDI3617を含み得る。
【0241】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CSF-1R(M-CSFR又はCD115としても知られる)を標的とする抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、IMC-CS4(LY3022855))を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、エマクツズマブ(emactuzumab)を含み得る。
【0242】
幾つかの実施態様では、治療剤は、サイトカインを含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、インターフェロン、例えばインターフェロンアルファ又はインターフェロンガンマを含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、Roferon-A(組換えインターフェロンアルファ-2aとしても知られる)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、GM-CSF(組換えヒト顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、rhu GM-CSF、サルグラモスチム、又はLEUKIN E(登録商標)としても知られる)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、アルデスロイキン(PROLEUKIN(登録商標))を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、IL-12を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、IL-10を含み得る。
【0243】
幾つかの実施態様では、治療剤は、IL-2融合タンパク質を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、ツコツズマブセルモロイキン(tucotuzumab celmoleukin)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、ダルロイキン(darleukin)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、テロイキン(teleukin)を含み得る。
【0244】
幾つかの実施態様では、治療剤は、IL-10融合タンパク質を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、デカビル(dekavil)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、TNF融合タンパク質を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、フィブロムン(fibromun)を含み得る。
【0245】
幾つかの実施態様では、治療剤は、二重特異性抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、二重特異性抗体、例えば、限定されないが、デュリゴツズマブ、MM-111、MM141、TF2、ABT-981、ABT-122、LY3164530、SAR156597、GSK2434735、オゾラリズマブ(ozoralizumab)、ALX-0761、ALX-0061、ALX-0141、ACE910などを含み得る。
【0246】
幾つかの実施態様では、治療剤は、T細胞及び標的細胞、例えば腫瘍細胞に結合することができる二重特異性抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、T細胞上のCD3及び標的細胞抗原に特異的に結合する二重特異性抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びCD19に対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はブリナツモマブ(BLINCYTO(登録商標))である。一実施態様では、二重特異性抗体はAFM11である。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びEpCAMに対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はカツマキソマブ(REVOMAB(登録商標))である。一実施態様では、二重特異性抗体はソリトマブ(solitomab)(AMG 110、MT110)である。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びHer2に対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はエルツマキソマブ(ertumaxomab)である。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びPSMAに対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はBAY2010112(AMG212、MT112)である。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びCEAに対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はMEDI565(AMG211、MT111)である。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びCD33に対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はAMG330である。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びCD123に対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はMGD006である。一実施態様では、二重特異性抗体はXmAb(登録商標)14045である。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びCD38に対する二重特異性抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びgpA33に対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はMGD007である。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びCD20に対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はXmAb(登録商標)13676である。一実施態様では、二重特異性抗体はREGN1979である。一実施態様では、二重特異性抗体はFBTA05(Lymphomun).である。
【0247】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CD30及びCD16Aに対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はAFM13である。幾つかの実施態様では、治療剤は、DR5及びFAPに対する二重特異性抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、Ang2及びVEGFに対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はバヌシズマブ(vanucizumab)である。
【0248】
幾つかの実施態様では、治療剤は、Fcドメインを含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、Fcドメインを含む融合タンパク質を含み得る。
【0249】
幾つかの実施態様では、治療剤は、組換え受容体又はその断片を含み得る。幾つかの実施態様では、受容体はT細胞受容体である。幾つかの実施態様では、受容体はTNF受容体である。幾つかの実施態様では、治療剤は、エタネルセプト(ENBREL(登録商標))を含み得る。幾つかの実施態様では、受容体はVEGF受容体である。幾つかの実施態様では、治療剤は、アフリベルセプト(ziv-aflibercept)(ZALTRAP(登録商標))を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、アフリベルセプト(EYLEA(登録商標))を含み得る。幾つかの実施態様では、受容体はIL-1受容体である。幾つかの実施態様では、治療剤は、リロナセプト(ARCALYST(登録商標))を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、IMCgp100を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、キメラ抗原受容体(CAR)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、第IX因子-Fc融合タンパク質を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、第VIII因子-Fc融合タンパク質を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、CTLA-4-Fc融合タンパク質、例えば、ベラタセプト、アバタセプト(ORENCIA(登録商標))を含み得る。一実施態様では、治療剤は、ロミプロスチム(romiplostin)を含み得る。
【0250】
幾つかの実施態様では、治療剤は、組換え受容体リガンド、例えばTNF受容体リガンドを含み得る。
【0251】
幾つかの実施態様では、治療剤は、薬剤、例えば本明細書で命名される抗体のジェネリック、バイオシミラー又は非同等の生物学的バージョンを含み得る。
【0252】
一実施態様では、治療剤は、オビヌツズマブを含まない。
【0253】
T細胞活性化治療剤
以下に、本発明が有用であり得るT細胞活性化治療剤、特に、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出の減少に関与する本発明の態様を更に詳細に記載する。
【0254】
幾つかの実施態様では、治療剤は、活性化T細胞抗原に特異的に結合する抗体を含む。一実施態様では、治療剤は、CD3、CD28、CD137(4-1BBとしても知られる)、CD40、CD226、OX40、GITR、CD27、HVEM、及びCD127の群から選択される抗原に特異的に結合する抗体を含み得る。
【0255】
一実施態様では、治療剤は、CD3、具体的にはCD3εに特異的に結合する抗体を含む。
【0256】
一実施態様では、治療剤は、抗体H2C(PCT公開番号WO2008/119567)、抗体V9(Rodrigues et al., Int J Cancer Suppl 7, 45-50 (1992)及び米国特許第6054297号)、抗体FN18(Nooij et al., Eur J Immunol 19, 981-984 (1986))、抗体SP34(Pessano et al., EMBO J 4, 337-340 (1985))、抗体OKT3(Kung et al., Science 206, 347-349 (1979))、抗体WT31(Spits et al., J Immunol 135, 1922 (1985))、抗体UCHT1(Burns et al., J Immunol 129, 1451-1457 (1982))、抗体7D6(Coulie et al., Eur J Immunol 21, 1703-1709 (1991))若しくは抗体Leu-4であるか、又はそれらの抗体と結合を競合することができる抗体を含む。幾つかの実施態様では、治療剤はまた、国際公開第2005/040220号、国際公開第2005/118635号、国際公開第2007/042261号、国際公開第2008/119567号、国際公開第2008/119565号、国際公開第2012/162067号、国際公開第2013/158856号、国際公開第2013/188693号、国際公開第2013/186613号、国際公開第2014/110601号、国際公開第2014/145806号、国際公開第2014/191113号、国際公開第2014/047231号、国際公開第2015/095392号、国際公開第2015/181098号、国際公開第2015/001085号、国際公開第2015/104346号、国際公開第2015/172800号、国際公開第2016/020444号又は国際公開第2016/014974号に記載されるように、CD3に特異的に結合する抗体を含み得る。
【0257】
一実施態様では、治療剤は、B細胞抗原、具体的には悪性B細胞抗原に特異的に結合する抗体を含み得る。一実施態様では、治療剤は、CD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37及びCD5からなる群から選択される抗原、特にCD20又はCD19に特異的に結合する抗体を含み得る。
【0258】
幾つかの実施態様では、治療剤は、リツキシマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オカラツズマブ、ベルツズマブ、及びウブリツキシマブ(ublituximab)から選択される抗体を含み得る。
【0259】
幾つかの実施態様では、治療剤は、多重特異性抗体、具体的には二重特異性抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、T細胞及び標的細胞、例えば腫瘍細胞に結合することができる二重特異性抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、標的細胞はB細胞、具体的には悪性B細胞である。幾つかの実施態様では、治療剤は、(i)活性化T細胞抗原及び(ii)B細胞抗原に特異的に結合する二重特異性抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、T細胞上のCD3及び標的細胞抗原に特異的に結合する二重特異性抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、標的細胞抗原はB細胞抗原、具体的には悪性B細胞抗原である。幾つかの実施態様では、治療剤は、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE(登録商標))を含み得る。
【0260】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びCD20に対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はXmAb(登録商標)13676である。一実施態様では、二重特異性抗体はREGN1979である。一実施態様では、二重特異性抗体はFBTA05(Lymphomun).である。
【0261】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びCD19に対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はブリナツモマブ(BLINCYTO(登録商標))である。一実施態様では、二重特異性抗体はAFM11である。一実施態様では、二重特異性抗体はMGD011(JNJ-64052781)である。
【0262】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びCD38に対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体は、XmAb(登録商標)13551、XmAb(登録商標)15426、又はXmAb(登録商標)14702である。
【0263】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びBCMAに対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はBI836909である。
【0264】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びCD33に対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はAMG330である。
【0265】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3及びCD123に対する二重特異性抗体を含み得る。一実施態様では、二重特異性抗体はMGD006である。一実施態様では、二重特異性抗体はXmAb(登録商標)14045である。一実施態様では、二重特異性抗体はJNJ-63709178である。
【0266】
幾つかの実施態様では、治療剤は、組換え受容体又はその断片を含み得る。幾つかの実施態様では、受容体はT細胞受容体(TCR)である。幾つかの実施態様では、治療剤は、キメラ抗原受容体(CAR)を含み得る。
【0267】
幾つかの実施態様では、治療剤は、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するT細胞(例えば、細胞傷害性T細胞又はCTL)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、組換えT細胞受容体(TCR)を発現するT細胞を含み得る。
【0268】
一実施態様では、治療剤は、B細胞抗原、具体的には悪性B細胞抗原に特異的に結合するCARを含み得る。一実施態様では、治療剤は、CD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37及びCD5からなる群から選択される抗原、特にCD20又はCD19に特異的に結合するCARを含み得る。
【0269】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CD19に向けられたCAR、又はCD19に向けられたCARを発現するT細胞を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、KTE-C19、CTL019、JCAR-014、JCAR-015、JCAR-017、BPX-401、UCART19を含み得る。
【0270】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CD22に向けられたCAR又はCD22に向けられたCARを発現するT細胞を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、JCAR-018又はUCART22を含み得る。
【0271】
幾つかの実施態様では、治療剤は、T細胞活性化共刺激分子に対するアゴニストを含み得る。幾つかの実施態様では、T細胞活性化共刺激分子は、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、又はCD127を含み得る。幾つかの実施態様では、T細胞活性化共刺激分子に対するアゴニストは、CD40、CD226、CD28、OX40、GITR、CD137、CD27、HVEM、又はCD127に結合するアゴニスト抗体である。幾つかの実施態様では、治療剤は、GITRを標的とする抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、GITRを標的とする抗体はTRX518である。
【0272】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CD137(TNFRSF9、4-1BB、又はILAとしても知られる)に対するアゴニスト、例えば活性化抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、ウレルマブ(BMS-663513としても知られる)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD137(TNFRSF9、4-1BB、又はILAとしても知られる)のリガンド、例えば4-1BBLを含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD40に対するアゴニスト、例えば活性化抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、CP-870893を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、OX40(CD134としても知られる)に対するアゴニスト、例えば活性化抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、抗OX40抗体(例えばAgonOX)を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤はOX40のリガンド、例えばOX40Lを含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、CD27に対するアゴニスト、例えば活性化抗体を含み得る。幾つかの実施態様では、治療剤は、CDX-1127を含み得る。
【0273】
特定の治療剤
(i)抗薬物抗体(ADA)の形成の減少
以下に記載する治療剤は、本発明において、特に、対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成の減少に関与する本発明の関連する態様において、特に有用である。
【0274】
幾つかの実施態様では、治療剤は、がん胎児性抗原(CEA)に特異的に結合する抗体を含む。
【0275】
一実施態様では、CEAに特異的に結合する抗体は、配列番号14の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号15のHCDR2、及び配列番号16のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号17の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号18のLCDR2、及び配列番号19のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。更なる実施態様では、CEAに特異的に結合する抗体は、配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域配列、及び配列番号21の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域配列を含む。更なる実施態様では、CEAに特異的に結合する抗体は、配列番号20の重鎖可変領域配列及び配列番号21の軽鎖可変領域配列を含む。
【0276】
一実施態様では、CEAに特異的に結合する抗体は、配列番号136の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号137のHCDR2、及び配列番号138のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号139の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号140のLCDR2、及び配列番号141のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。更なる実施態様では、CEAに特異的に結合する抗体は、配列番号142と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域配列、及び配列番号143の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域配列を含む。更なる実施態様では、CEAに特異的に結合する抗体は、配列番号142の重鎖可変領域配列及び配列番号143の軽鎖可変領域配列を含む。
【0277】
一実施態様では、CEAに特異的に結合する抗体は完全長抗体である。一実施態様では、CEAに特異的に結合する抗体は、ヒトIgGクラスの抗体、具体的にはヒトIgGクラスの抗体である。一実施態様では、CEAに特異的に結合する抗体は、抗体断片、具体的にはFab分子又はscFv分子、より具体的にはFab分子である。一実施態様では、CEAに特異的に結合する抗体はヒト化抗体である。
【0278】
幾つかの実施態様では、治療剤は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)に特異的に結合する抗体を含む。一実施態様では、FAPに特異的に結合する抗体は、配列番号25と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域配列、及び配列番号26の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域配列を含む。更なる実施態様では、FAPに特異的に結合する抗体は、配列番号25の重鎖可変領域配列及び配列番号26の軽鎖可変領域配列を含む。
【0279】
一実施態様では、FAPに特異的に結合する抗体は完全長抗体である。一実施態様では、FAPに特異的に結合する抗体は、ヒトIgGクラスの抗体、具体的にはヒトIgGクラスの抗体である。一実施態様では、FAPに特異的に結合する抗体は、抗体断片、具体的にはFab分子又はscFv分子、より具体的にはFab分子である。一実施態様では、FAPに特異的に結合する抗体はヒト抗体である。
【0280】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3、具体的にはCD3イプシロンに特異的に結合する抗体を含む。一実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。更なる実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、配列番号38と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域配列、及び配列番号39の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域配列を含む。更なる実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む。
【0281】
一実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は完全長抗体である。一実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、ヒトIgGクラスの抗体、具体的にはヒトIgGクラスの抗体である。一実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、抗体断片、具体的にはFab分子又はscFv分子、より具体的にはFab分子である。特定の実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメイン又は定常ドメインが交換されている(すなわち、互いに置換されている)クロスオーバーFab分子である。一実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体はヒト化抗体である。
【0282】
幾つかの実施態様では、治療剤は、サイトカインを含む。一実施態様では、サイトカインは、GM-CSF、IL-1α、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-10、IL-12、IL-15、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、MIP-1α、MIP-1β、TGF-β、TNF-α、及びTNF-βからなる群より選択される。一実施態様では、サイトカインはIL-2、具体的にはヒトIL-2である。野生型ヒトIL-2の配列を配列番号12に示す。
【0283】
一実施態様では、治療剤は、野生型IL-2と比較してIL-2受容体のα-サブユニットへの結合親和性が低下した変異体IL-2ポリペプチドを含む。αサブユニット(CD25としても知られる)は、β及びγサブユニット(それぞれCD122及びCD132としても知られる)と共に、ヘテロ三量体高親和性IL-2受容体を形成するが、一方、β及びγサブユニットのみからなる二量体受容体は、中間親和性IL-2受容体と呼ばれる。Il-2受容体のαサブユニットへの結合が減少した変異体IL-2ポリペプチドは、調節T(Treg)細胞においてIL-2シグナル伝達を誘導する能力が低下しており、T細胞においてより少ない活性化誘導細胞死(AICD)を誘導し、野生型IL-2ポリペプチドと比較して、in vivoで毒性プロファイルが減少している(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2012/107417号を参照)。
【0284】
より特定の実施態様では、変異体IL-2ポリペプチドは、ヒトIL-2の残基42,45及び72に対応する位置に3つのアミノ酸置換を含む。更により特定の実施態様では、変異体IL-2ポリペプチドは、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G(配列番号12のヒトIL-2配列に対する番号付け)を含むヒトIL-2ポリペプチドである。一実施態様では、変異体IL-2ポリペプチドは、IL-2のO-グリコシル化部位を排除する、ヒトIL-2の位置3に対応する位置にアミノ酸変異を更に含む。一実施態様では、ヒトIL-2の残基3に対応する位置でのIL-2のO-グリコシル化部位を排除する前記アミノ酸変異は、T3A、T3G、T3Q、T3E、T3N、T3D、T3R、T3K、及びT3Pの群から選択されるアミノ酸置換である。特に、前記の更なるアミノ酸変異は、スレオニン残基をアラニン残基で置換するアミノ酸置換である。本発明において有用な特定の変異体IL-2ポリペプチドは、ヒトIL-2の残基3、42、45及び72に対応する位置に4つのアミノ酸置換を含む。特定のアミノ酸置換は、T3A、F42A、Y45A及びL72Gである。この変異体IL-2ポリペプチドは、CD25に対する検出可能な結合を示さず、T細胞においてアポトーシスを誘導する能力の低下、Treg細胞においてIL-2シグナル伝達を誘導する能力の低下、及びin vivoでの毒性プロファイルの減少を示す(例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる国際公開第2012/107417号を参照)。しかしながら、エフェクター細胞においてIL-2シグナル伝達を活性化し、エフェクター細胞の増殖を誘導し、NK細胞により二次サイトカインとしてIFN-γを生成する能力を保持する。
【0285】
上記実施態様の何れかによるIL-2又は変異体IL-2ポリペプチドは、発現又は安定性の増加などの更なる利点を提供する更なる突然変異を含み得る。例えば、125位のシステインは、セリン、アラニン、スレオニン又はバリンなどの中性アミノ酸で置換されていてもよく、米国特許第4,518,584号に記載されているように、C125S IL-2、C125A IL-2、C125T IL-2又はC125V IL-2をそれぞれ生じる。そこに記載されているように、IL-2のN末端アラニン残基を欠失させて、des-A1 C125S又はdes-A1 C125Aのような変異体を生じることもできる。代わりに、又は組み合わせて、IL-2変異体は、野生型ヒトIL-2の位置104で通常生じるメチオニンが、アラニンなどの中性アミノ酸によって置換される突然変異を含み得る(米国特許第5206344号を参照)。得られた変異体、例えば、des-A1 M104A IL-2、des-A1 M104A C125S IL-2、M104A IL-2、M104A C125A IL-2、des-A1 M104A C125A IL-2、又はM104A C125S IL-2(これら及び他の変異体は、米国特許第5116943号及びWeiger et al., Eur J Biochem 180, 295-300 (1989)に見出すことができる)を、本明細書に記載の特定のIL-2突然変異と組み合わせて使用してもよい。
【0286】
従って、特定の実施態様では、IL-2又は変異体IL-2ポリペプチドは、ヒトIL-2の残基125に対応する位置に更なるアミノ酸変異を含む。一実施態様では、前記更なるアミノ酸変異は、アミノ酸置換C125Aである。
【0287】
特定の実施態様では、変異体IL-2ポリペプチドは本質的に完全長IL-2分子、具体的にはヒト完全長IL-2分子である。一実施態様では、変異体IL-2ポリペプチドは、配列番号12の配列と少なくとも80%、少なくとも85%、又は少なくとも90%同一であるポリペプチド配列を含む。
【0288】
特定の実施態様では、変異体IL-2ポリペプチドは、配列番号13のポリペプチド配列を含む。
【0289】
幾つかの実施態様では、治療剤は、イムノコンジュゲートを含む。特定のイムノコンジュゲートは、国際公開第2012/107417号及び国際公開第2012/146628号に記載されている(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0290】
一実施態様では、イムノコンジュゲートは、本明細書に記載のCEAに特異的に結合する抗体、及び本明細書に記載の変異体IL-2ポリペプチドを含む。一実施態様では、抗体は完全長抗体である。
【0291】
一実施態様では、治療剤は、
(i)CEAに特異的に結合し、かつ、配列番号14の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号15のHCDR2、及び配列番号16のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号17の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号18のLCDR2、及び配列番号19のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含むヒトIgGサブクラスの抗体;及び
(ii)アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G(配列番号12のヒトIL-2配列に対する番号付け)を含む変異体ヒトIL-2ポリペプチド
を含むイムノコンジュゲートを含む。
【0292】
一実施態様では、イムノコンジュゲートは、本明細書に記載のFAPに特異的に結合する抗体、及び本明細書に記載の変異体IL-2ポリペプチドを含む。一実施態様では、抗体は完全長抗体である。
【0293】
一実施態様では、治療剤は、
(i)FAPに特異的に結合し、かつ、配列番号25の重鎖可変領域配列;及び配列番号26の軽鎖可変領域配列を含むヒトIgGサブクラスの抗体;及び
(ii)アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G(配列番号12のヒトIL-2配列に対する番号付け)を含む変異体ヒトIL-2ポリペプチド
を含むイムノコンジュゲートを含む。
【0294】
一実施態様では、イムノコンジュゲートは、1つ以下の変異体IL-2ポリペプチドを含む。一実施態様では、変異体IL-2ポリペプチドは、抗体重鎖のうちの一方のカルボキシ末端アミノ酸に、任意選択的にリンカーペプチドを介して融合される。適切な非免疫原性リンカーペプチドには、例えば、(GS)、(SG又はG(SGペプチドリンカーが含まれ、ここでnは一般に1~10の間の数であり、典型的には2~4の間の数である。一実施態様は、リンカーペプチドは(GS)である。
【0295】
一実施態様では、イムノコンジュゲートは、配列番号22の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチド、配列番号23の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチド、及び配列番号24の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチドを含む。
【0296】
一実施態様では、イムノコンジュゲートは、配列番号22の配列を含むポリペプチド、配列番号23の配列を含むポリペプチド、及び配列番号24の配列を含むポリペプチドを含む。
【0297】
一実施態様では、イムノコンジュゲートは、セルグツズマブアムナロイキン(cergutuzumab amunaleukin)である(WHO Drug Information(医薬物質のための国際一般名)、推奨INN:List 75,2016、出版前のコピー(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
【0298】
一実施態様では、イムノコンジュゲートは、配列番号27の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチド、配列番号28の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチド、及び配列番号29の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチドを含む。
【0299】
一実施態様では、イムノコンジュゲートは、配列番号27の配列を含むポリペプチド、配列番号28の配列を含むポリペプチド、及び配列番号29の配列を含むポリペプチドを含む。
【0300】
一実施態様では、治療剤は二重特異性抗体を含む。特定の二重特異性抗体は、PCT公開番号国際公開第2013/026833号及び国際公開第2014/131712号、PCT出願番号PCT/EP2016/073171(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0301】
一実施態様では、二重特異性抗体は、本明細書に記載のCEAに特異的に結合する抗体、及び本明細書に記載のCD3に特異的に結合する抗体を含む。一実施態様では、二重特異性抗体は、本明細書に記載のCD3に特異的に結合する第1の抗体と、本明細書に記載のCEAに特異的に結合する第2及び第3の抗体とを含む。一実施態様では、第1の抗体は、本明細書に記載のクロスオーバーFab分子であり、第2及び第1の抗体はそれぞれ、従来のFab分子である。一実施態様では、二重特異性抗体は、本明細書に記載のFcドメインを更に含む。二重特異性抗体は、本明細書に記載の抗体フォーマットを有することができ、かつ、本明細書に記載の抗原結合部分を含むことができる。二重特異性抗体は、本明細書に記載されるFc領域及び/又は抗原結合部分に修飾を含み得る。
【0302】
一実施態様では、治療剤は、
(i)CD3に特異的に結合し、かつ、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む第1の抗原結合部分であって、ここで、第1の抗原結合部分は、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変領域又は定常領域の何れか、特に定常領域が交換されるクロスオーバーFab分子である第1の抗原結合部分;
(ii)CEAに特異的に結合し、かつ、配列番号14の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号15のHCDR2、及び配列番号16のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号17の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号18のLCDR2、及び配列番号19のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む第2及び第3の抗原結合部分であって、ここで、第2及び第3の抗原結合部分はそれぞれFab分子、特に従来のFab分子である第2及び第3の抗原結合部分;
(iii)安定した会合が可能な第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン
を含む二重特異性抗体であって、
ここで、第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しており、かつ、第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、ここで、第3の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している二重特異性抗体を含む。
【0303】
一実施態様では、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合部分は、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む。一実施態様では、CEAに特異的に結合する第2及び第3の抗原結合部分は、配列番号20の重鎖可変領域配列及び配列番号21の軽鎖可変領域配列を含む。
【0304】
一実施態様では、抗原結合部分及びFc領域は、ペプチドリンカーによって、特に配列番号42及び配列番号43のペプチドリンカーによって、互いに融合される。一実施態様では、二重特異性抗体は、配列番号40の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチド、配列番号41の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチド、配列番号42の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチド、及び配列番号43の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチドを含む。
【0305】
一実施態様では、二重特異性抗体は、配列番号40の配列を含むポリペプチド、配列番号41の配列を含むポリペプチド、配列番号42の配列を含むポリペプチド、及び配列番号43の配列を含むポリペプチドを含む。(CEA TCB)
【0306】
一実施態様では、治療抗体は、
(i)CD3に特異的に結合し、かつ、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む第1の抗原結合部分であって、ここで、第1の抗原結合部分は、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変領域又は定常領域の何れか、特に可変領域が交換されるクロスオーバーFab分子である第1の抗原結合部分;
(ii)CEAに特異的に結合し、かつ、配列番号136の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号137のHCDR2、及び配列番号138のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号139の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号140のLCDR2、及び配列番号141のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む第2及び第3の抗原結合部分であって、ここで、第2及び第3の抗原結合部分はそれぞれFab分子、特に従来のFab分子である第2及び第3の抗原結合部分;
(iii)安定した会合が可能な第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインを含む二重特異性抗体であって、
ここで、第2の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端で第1の抗原結合部分のFab重鎖のN末端に融合しており、かつ、第1の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、ここで、第3の抗原結合部分が、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している二重特異性抗体を含む。
【0307】
一実施態様では、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合部分は、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む。一実施態様では、CEAに特異的に結合する第2及び第3の抗原結合部分は、配列番号142の重鎖可変領域配列及び配列番号143の軽鎖可変領域配列を含む。
【0308】
一実施態様では、抗原結合部分及びFc領域は、ペプチドリンカーによって、特に配列番号145及び配列番号146のペプチドリンカーによって、互いに融合される。
【0309】
一実施態様では、(ii)の第2及び第3のFab分子の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)(Kabatによる番号付け)によって置換され、かつ、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)によって、特にアルギニン(R)(Kabatによる番号付け)によって置換され、(ii)の第2及び第3のFab分子の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換され、かつ、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換されている。
【0310】
一実施態様では、二重特異性抗体は、配列番号144の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチド、配列番号145の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチド、配列番号146の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチド、及び配列番号147の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である配列を含むポリペプチドを含む。
【0311】
一実施態様では、二重特異性抗体は、配列番号144の配列を含むポリペプチド、配列番号145の配列を含むポリペプチド、配列番号146の配列を含むポリペプチド、及び配列番号147の配列を含むポリペプチドを含む。
【0312】
(ii)サイトカイン放出の減少
以下に記載する治療剤は、本発明において、特に、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出の減少に関与する本発明の関連する態様において、特に有用である。
【0313】
対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出の減少に関与する本発明の態様は、対象においてT細胞を活性化する治療剤(T細胞活性化治療剤)、すなわち対象においてT細胞活性化を誘導する能力を有する治療剤と関連して、特に有用である。そのような治療剤は、例えば、T細胞抗原(特に活性化T細胞抗原)、又はキメラ抗原受容体(CAR)又は組換えT細胞受容体(TCR)で修飾されたT細胞に向けられた抗体を含む。対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出の減少に関与する本発明の態様は、B細胞標的化T細胞活性化治療剤と関連して特に有用である。
【0314】
幾つかの実施態様では、治療剤は、CD3、具体的にはCD3イプシロンに特異的に結合する抗体を含む。
【0315】
一実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む。更なる実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、配列番号38と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域配列、及び配列番号39の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域配列を含む。更なる実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む。
【0316】
一実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、配列番号120の重鎖HVR 1(H1-HVR)、配列番号121のH2-HVR、及び配列番号122のH3-HVRを含む重鎖可変領域;並びに配列番号123の軽鎖HVR 1(L1-HVR)、配列番号124のL2-HVR、及び配列番号125のL3-HVRを含む軽鎖可変領域を含む。更なる実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、配列番号126と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域配列、及び配列番号127の配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域配列を含む。更なる実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、配列番号126の重鎖可変領域配列及び配列番号127の軽鎖可変領域配列を含む。
【0317】
一実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は完全長抗体である。一実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、ヒトIgGクラスの抗体、具体的にはヒトIgGクラスの抗体である。一実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、抗体断片、具体的にはFab分子又はscFv分子、より具体的にはFab分子である。特定の実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体は、Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメイン又は定常ドメインが交換されている(すなわち、互いに置換されている)クロスオーバーFab分子である。一実施態様では、CD3に特異的に結合する抗体はヒト化抗体である。
【0318】
一実施態様では、治療剤は、多重特異性抗体、具体的には二重特異性抗体を含む。一実施態様では、多重特異性抗体は、(i)活性化T細胞抗原及び(ii)B細胞抗原に特異的に結合する。特定の二重特異性抗体は、PCT公開番号国際公開第2016/020309号及びPCT出願番号PCT/EP2016/073041並びにPCT公開番号国際公開第2015/095392(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0319】
一実施態様では、二重特異性抗体はCD3及びCD20に特異的に結合する。一実施態様では、二重特異性抗体は、CD20に特異的に結合する抗原結合部分、及びCD3に特異的に結合する抗原結合部分を含む。一実施態様では、二重特異性抗体は、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合部分、及びCD20に特異的に結合する第2及び第3の抗原結合部分を含む。一実施態様では、第1の抗原結合部分はクロスオーバーFab分子であり、第2及び第1の抗原結合部分はそれぞれ従来のFab分子である。一実施態様では、二重特異性抗体は、Fcドメインを更に含む。二重特異性抗体は、本明細書に記載の抗体フォーマットを有することができ、かつ、本明細書に記載の抗原結合部分を含むことができる。二重特異性抗体は、本明細書に記載されるFc領域及び/又は抗原結合部分に修飾を含み得る。
【0320】
一実施態様では、治療剤は、
(i)CD3に特異的に結合し、かつ、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合部分;及び
(ii)CD20に特異的に結合し、かつ、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合部分
を含む二重特異性抗体を含む。
【0321】
一実施態様では、治療剤は、
(i)CD3に特異的に結合し、かつ、配列番号38の重鎖可変領域配列;及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む抗原結合部分;及び
(ii)CD20に特異的に結合し、かつ、配列番号10の重鎖可変領域配列;及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む抗原結合部分
を含む二重特異性抗体を含む。
【0322】
特定の実施態様では、治療剤は、
a)第1の抗原に特異的に結合する第1のFab分子;
b)第2の抗原に特異的に結合する第2のFab分子であって、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置換されている第2のFab分子;
c)第1の抗原に特異的に結合する第3のFab分子;及び
d)安定した会合が可能な第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン
を含む二重特異性抗体を含み;
ここで
(i)第1の抗原はCD20であり、かつ、第2の抗原はCD3、具体的にはCD3イプシロンであり;
(ii)a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子はそれぞれ、配列番号4の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号5の重鎖CDR2、配列番号6の重鎖CDR3、配列番号7の軽鎖CDR1、配列番号8の軽鎖CDR2、及び配列番号9の軽鎖CDR3を含み、かつ、b)の第2のFab分子は、配列番号32の重鎖CDR1、配列番号33の重鎖CDR2、配列番号34の重鎖CDR3、配列番号35の軽鎖CDR1、配列番号36の軽鎖CDR2、及び配列番号37の軽鎖CDR3を含み;
(iii)a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)(Kabatによる番号付け)によって置換され、かつ、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)によって、特にアルギニン(R)(Kabatによる番号付け)によって置換され、a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換され、かつ、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換され;かつ
(iv)a)の第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端でb)の第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、かつ、b)の第2のFab分子及びc)の第3のFab分子はそれぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0323】
一実施態様では、a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子はそれぞれ、配列番号10の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域と、配列番号11の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域とを含む。
【0324】
一実施態様では、a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子はそれぞれ、配列番号10の重鎖可変領域配列と、配列番号11の軽鎖可変領域配列とを含む。
【0325】
一実施態様では、b)の第2のFab分子は、配列番号38の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域と、配列番号39の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域とを含む。
【0326】
更に別の実施態様では、b)の第2のFab分子は、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む。
【0327】
特定の実施態様では、二重特異性抗体は、配列番号44の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチド、配列番号45の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチド、配列番号46の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチド、及び配列番号47の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチドを含む。更なる特定の実施態様では、二重特異性抗体は、配列番号44のポリペプチド配列、配列番号45のポリペプチド配列、配列番号46のポリペプチド配列、及び配列番号47のポリペプチド配列を含む。(CD20XCD3 bsAB)
【0328】
一実施態様では、治療剤は、
(i)CD3に特異的に結合し、かつ、配列番号120の重鎖HVR 1(H1-HVR)、配列番号121のH2-HVR、及び配列番号122のH3-HVRを含む重鎖可変領域;並びに配列番号123の軽鎖HVR 1(L1-HVR)、配列番号124のL2-HVR、及び配列番号125のL3-HVRを含む軽鎖可変領域を含む抗原結合部分;及び
(ii)CD20に特異的に結合し、かつ、配列番号128の重鎖HVR 1(H1-HVR)、配列番号129のH2-HVR、及び配列番号130のH3-HVRを含む重鎖可変領域;並びに配列番号131の軽鎖HVR 1(L1-HVR)、配列番号132のL2-HVR、及び配列番号133のL3-HVRを含む軽鎖可変領域を含む抗原結合部分
を含む二重特異性抗体を含む。
【0329】
一実施態様では、治療剤は、
(i)CD3に特異的に結合し、かつ、配列番号126の重鎖可変領域配列;及び配列番号127の軽鎖可変領域配列を含む抗原結合部分;及び
(ii)CD20に特異的に結合し、かつ、配列番号134の重鎖可変領域配列;及び配列番号135の軽鎖可変領域配列を含む抗原結合部分
を含む二重特異性抗体を含む。
【0330】
一実施態様では、二重特異性抗体は、CD19に特異的に結合する抗原結合部分、及びCD3に特異的に結合する抗原結合部分を含む。一実施態様では、二重特異性抗体は、CD3に特異的に結合する第1の抗原結合部分、及びCD19に特異的に結合する第2及び第3の抗原結合部分を含む。一実施態様では、第1の抗原結合部分はクロスオーバーFab分子であり、第2及び第1の抗原結合部分はそれぞれ従来のFab分子である。一実施態様では、二重特異性抗体は、Fcドメインを更に含む。二重特異性抗体は、本明細書に記載されるFc領域及び/又は抗原結合部分に修飾を含み得る。
【0331】
一実施態様では、治療剤は、
(i)CD3に特異的に結合し、かつ、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合部分;及び
(ii)CD19に特異的に結合し、かつ、配列番号48の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号49のHCDR2、及び配列番号50のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号51の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号52のLCDR2、及び配列番号53のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合部分
を含む二重特異性抗体を含む。
【0332】
一実施態様では、治療剤は、
(i)CD3に特異的に結合し、かつ、配列番号38の重鎖可変領域配列;及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む抗原結合部分;及び
(ii)CD19に特異的に結合し、かつ、配列番号54の重鎖可変領域配列;及び配列番号55の軽鎖可変領域配列を含む抗原結合部分
を含む二重特異性抗体を含む。
【0333】
特定の実施態様では、治療剤は、
a)第1の抗原に特異的に結合する第1のFab分子;
b)第2の抗原に特異的に結合する第2のFab分子であって、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置換されている第2のFab分子;
c)第1の抗原に特異的に結合する第3のFab分子;及び
d)安定した会合が可能な第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン
を含む二重特異性抗体を含み;
ここで
(i)第1の抗原はCD19であり、かつ、第2の抗原はCD3、具体的にはCD3イプシロンであり;
(ii)a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子はそれぞれ、配列番号48の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号49の重鎖CDR2、配列番号50の重鎖CDR3、配列番号51の軽鎖CDR1、配列番号52の軽鎖CDR2、及び配列番号53の軽鎖CDR3を含み、かつ、b)の第2のFab分子は、配列番号32の重鎖CDR1、配列番号33の重鎖CDR2、配列番号34の重鎖CDR3、配列番号35の軽鎖CDR1、配列番号36の軽鎖CDR2、及び配列番号37の軽鎖CDR3を含み;
(iii)a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)(Kabatによる番号付け)によって置換され、かつ、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)によって、特にアルギニン(R)(Kabatによる番号付け)によって置換され、a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換され、かつ、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換され;かつ
(iv)a)の第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端でb)の第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、かつ、b)の第2のFab分子及びc)の第3のFab分子はそれぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0334】
一実施態様では、a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子はそれぞれ、配列番号54の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域と、配列番号55の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域とを含む。
【0335】
一実施態様では、a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子はそれぞれ、配列番号54の重鎖可変領域配列と、配列番号55の軽鎖可変領域配列とを含む。
【0336】
一実施態様では、b)の第2のFab分子は、配列番号38の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域と、配列番号39の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域とを含む。
【0337】
更に別の実施態様では、b)の第2のFab分子は、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む。
【0338】
特定の実施態様では、二重特異性抗体は、配列番号47の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチド、配列番号56の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチド、配列番号57の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチド、及び配列番号58の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチドを含む。更なる特定の実施態様では、二重特異性抗体は、配列番号47のポリペプチド配列、配列番号56のポリペプチド配列、配列番号57のポリペプチド配列、及び配列番号58のポリペプチド配列を含む。
【0339】
一実施態様では、治療剤は、
(i)CD3に特異的に結合し、かつ、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合部分;及び
(ii)CD19に特異的に結合し、かつ、配列番号59の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号60のHCDR2、及び配列番号61のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号62の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号63のLCDR2、及び配列番号64のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む抗原結合部分
を含む二重特異性抗体を含む。
【0340】
一実施態様では、治療剤は、
(i)CD3に特異的に結合し、かつ、配列番号38の重鎖可変領域配列;及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む抗原結合部分;及び
(ii)CD19に特異的に結合し、かつ、配列番号65の重鎖可変領域配列;及び配列番号66の軽鎖可変領域配列を含む抗原結合部分
を含む二重特異性抗体を含む。
【0341】
特定の実施態様では、治療剤は、
a)第1の抗原に特異的に結合する第1のFab分子;
b)第2の抗原に特異的に結合する第2のFab分子であって、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置換されている第2のFab分子;
c)第1の抗原に特異的に結合する第3のFab分子;及び
d)安定した会合が可能な第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン
を含む二重特異性抗体を含み;
ここで
(i)第1の抗原はCD19であり、かつ、第2の抗原はCD3、具体的にはCD3イプシロンであり;
(ii)a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子はそれぞれ、配列番号59の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号60の重鎖CDR2、配列番号61の重鎖CDR3、配列番号62の軽鎖CDR1、配列番号63の軽鎖CDR2、及び配列番号64の軽鎖CDR3を含み、かつ、b)の第2のFab分子は、配列番号32の重鎖CDR1、配列番号33の重鎖CDR2、配列番号34の重鎖CDR3、配列番号35の軽鎖CDR1、配列番号36の軽鎖CDR2、及び配列番号37の軽鎖CDR3を含み;
(iii)a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)(Kabatによる番号付け)によって置換され、かつ、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)によって、特にアルギニン(R)(Kabatによる番号付け)によって置換され、a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換され、かつ、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換され;かつ
(iv)a)の第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端でb)の第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、かつ、b)の第2のFab分子及びc)の第3のFab分子はそれぞれFab重鎖のC末端でd)のFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合している。
【0342】
一実施態様では、a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子はそれぞれ、配列番号65の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域と、配列番号66の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域とを含む。
【0343】
一実施態様では、a)の第1のFab分子及びc)の第3のFab分子はそれぞれ、配列番号65の重鎖可変領域配列と、配列番号66の軽鎖可変領域配列とを含む。
【0344】
一実施態様では、b)の第2のFab分子は、配列番号38の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域と、配列番号39の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域とを含む。
【0345】
更に別の実施態様では、b)の第2のFab分子は、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む。
【0346】
特定の実施態様では、二重特異性抗体は、配列番号47の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチド、配列番号148の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチド、配列番号149の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチド、及び配列番号150の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるポリペプチドを含む。更なる特定の実施態様では、二重特異性抗体は、配列番号47のポリペプチド配列、配列番号148のポリペプチド配列、配列番号149のポリペプチド配列、及び配列番号150のポリペプチド配列を含む。
【0347】
抗体フォーマット
治療剤に含まれる抗体の成分、具体的には多重特異性抗体は、様々な立体配置で互いに融合することができる。例示的な立体配置を図6に示す。
【0348】
特定の実施態様では、抗体に含まれる抗原結合部分はFab分子である。そのような実施態様では、第1、第2、第3などの抗原結合性部分は、それぞれ第1、第2、第3などのFab分子と呼ぶことができる。更に、特定の実施態様では、抗体は、安定した会合が可能な第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインを含む。
【0349】
幾つかの実施態様では、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。
【0350】
一つのそのような実施態様では、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。このような特定の実施態様では、抗体は本質的に、第1及び第2のFab分子、第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン、及び任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーからなり、ここで第1のFab分子はFab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第2のFab分子はFab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような立体配置は図6G及び図6Kに模式的に示されている。任意選択的に、第1のFab分子のFab軽鎖と第2のFab分子のFab軽鎖は更に互いに融合していてよい。
【0351】
別のそのような実施態様では、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。このような特定の実施態様では、抗体は本質的に、第1及び第2のFab分子、第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン、及び任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーからなり、ここで、第1及び第2のFab分子はそれぞれ、Fab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットのうちの1つのN末端に融合している。そのような立体配置は図6A及び図6Dに模式的に示されている。第1及び第2のFab分子は、直接又はペプチドリンカーを介してFcドメインに融合することができる。特定の実施態様では、第1及び第2のFab分子はそれぞれ、免疫グロブリンヒンジ領域を介してFcドメインに融合している。特定の実施態様では、免疫グロブリンヒンジ領域は、特にFcドメインがIgGFcドメインであるヒトIgGヒンジ領域である。
【0352】
他の実施態様では、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。
【0353】
一つのそのような実施態様では、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。このような特定の実施態様では、抗体は本質的に、第1及び第2のFab分子、第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン、及び任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーからなり、ここで第2のFab分子はFab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第1のFab分子はFab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような立体配置は図6H及び図6Lに模式的に示されている。任意選択的に、第1のFab分子のFab軽鎖と第2のFab分子のFab軽鎖は更に互いに融合していてよい。
【0354】
Fab分子は、直接、又は1つ若しくは複数のアミノ酸、典型的には約2-20個のアミノ酸を含むペプチドリンカーを介して、Fcドメインへ又はお互いに融合し得る。ペプチドリンカーは当該技術分野において周知であり、本願明細書に記載される。適切な非免疫原性ペプチドリンカーには、例えば、(GS)、(SG、(GS)又は(SGペプチドリンカーが含まれる。「n」は通常は1~10、典型的には2~4の数である。一実施態様では、前記ペプチドリンカーは、少なくとも5アミノ酸の長さ、一実施態様では5~100個の長さ、更なる実施態様では10~50アミノ酸の長さを有する。一実施態様では、前記ペプチドリンカーは(GxS)又は(GxS)であり、ここでG=グリシン、S=セリン、及び(x=3、n=3、4、5又は6、及びm=0、1、2又は3)又は(x=4、n=2、3、4又は5及びm=0、1、2又は3)、一実施態様では、x=4及びn=2又は3、更なる実施態様では、x=4及びn=2である。一実施態様では、前記ペプチドリンカーは(GS)である。第1及び第2のFab分子のFab軽鎖を互いに融合させるための特に適切なペプチドリンカーは(GS)である。第1及び第2のFab分子のFab重鎖を連結するために適した例示的ペプチドリンカーは配列(D)-(GS)(配列番号118及び119)である。別の適切なそのようなリンカーは配列(GS)を含む。更に、リンカーは免疫グロブリンヒンジ領域(の一部)を含み得る。特にFab分子がFcドメインのサブユニットのN末端に融合している場合には、免疫グロブリンヒンジ領域又はその一部を介して、付加的なペプチドリンカーを用いて又は用いずに、融合することができる。
【0355】
標的細胞抗原に特異的に結合することができる単一の抗原結合部分(Fab分子など)を有する抗体(例えば、図6A、D、G、H、K、Lに示される)は、特に高親和性抗原結合部分の結合に続いて標的細胞抗原の内部移行が予想される場合に有用である。このような場合、標的細胞抗原に特異的な2つ以上の抗原結合部分の存在は、標的細胞抗原の内部移行を亢進し、それによりその利用可能性を低下させる可能性がある。
【0356】
しかしながら、他の多くの場合、例えば、標的部位への標的化を最適化するために又は標的細胞抗原の架橋を可能にするために、標的細胞抗原に特異的な2つ以上の抗原結合部分(Fab分子など)を含む抗体を有することが有利であろう(図6B、6C、6E、6F、6I、6J、6M又は6Nに示す例を参照)。
【0357】
従って、特定の実施態様では、抗体は、第1の抗原に特異的に結合する第3のFab分子を更に含む。第1の抗原は、好ましくは標的細胞抗原である。一実施態様では、第3のFab分子は従来のFab分子である。一実施態様では、第3のFab分子は、第1のFab分子と同一である(すなわち、第1及び第3のFab分子は、同じ重鎖及び軽鎖アミノ酸配列を含み、ドメインの同じ配置を有する(すなわち、従来型又はクロスオーバー型))。特定の実施態様では、第2のFab分子は、活性化T細胞抗原、具体的にはCD3に特異的に結合し、第1及び第3のFab分子は標的細胞抗原に特異的に結合する。
【0358】
別の実施態様では、抗体は、第2の抗原に特異的に結合する第3のFab分子を更に含む。これらの実施態様では、第2の抗原は、好ましくは標的細胞抗原である。一つのそのような実施態様では、第3のFab分子はクロスオーバーFab分子(Fab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCL及びCH1が互いに交換/置換されているFab分子)である。一つのそのような実施態様では、第3のFab分子は、第2のFab分子と同一である(すなわち、第2及び第3のFab分子は、同じ重鎖及び軽鎖アミノ酸配列を含み、ドメインの同じ配置を有する(すなわち、従来型又はクロスオーバー型))。一つのそのような実施態様では、第1のFab分子は、活性化T細胞抗原、具体的にはCD3に特異的に結合し、第2及び第3のFab分子は標的細胞抗原に特異的に結合する。
【0359】
一実施態様では、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端でFcドメインの第1又は第2のサブユニットのN末端に融合している。
【0360】
特定の実施態様では、第2及び第3のFab分子はそれぞれFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合し、かつ第1のFab分子はFab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。このような特定の実施態様では、抗体は、本質的に、第1、第2及び第3のFab分子、第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン、及び任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーからなり、ここで第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端において、第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端においてFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端において、Fcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような立体配置は、図6B及び6E(特定の実施態様では、第3のFab分子は従来のFab分子であり、好ましくは第1のFab分子と同一である)並びに図6I及び6M(代替的な実施態様では、第3のFab分子はクロスオーバーFab分子、好ましくは第2のFab分子と同一である)に模式的に示されている。第2及び第3のFab分子は、直接又はペプチドリンカーを介してFcドメインに融合することができる。特定の実施態様では、第2及び第3のFab分子はそれぞれ、免疫グロブリンヒンジ領域を介してFcドメインに融合している。特定の実施態様では、免疫グロブリンヒンジ領域は、特にFcドメインがIgGFcドメインであるヒトIgGヒンジ領域である。任意選択的に、第1のFab分子のFab軽鎖と第2のFab分子のFab軽鎖は更に互いに融合していてよい。
【0361】
別の実施態様では、第1及び第3のFab分子はそれぞれFab重鎖のC末端でFcドメインのサブユニットの1つのN末端に融合し、かつ第2のFab分子はFab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。このような特定の実施態様では、抗体は、本質的に、第1、第2及び第3のFab分子、第1及び第2のサブユニットからなるFcドメイン、及び任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーからなり、ここで第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端において、第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端においてFcドメインの第1のサブユニットのN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端において、Fcドメインの第2のサブユニットのN末端に融合している。そのような立体配置は、図6C及び6F(特定の実施態様では、第3のFab分子は従来のFab分子であり、好ましくは第1のFab分子と同一である)並びに図6J及び6N(代替的な実施態様では、第3のFab分子はクロスオーバーFab分子、好ましくは第2のFab分子と同一である)に模式的に示されている。第1及び第3のFab分子は、直接又はペプチドリンカーを介してFcドメインに融合することができる。特定の実施態様では、第1及び第3のFab分子はそれぞれ、免疫グロブリンヒンジ領域を介してFcドメインに融合している。特定の実施態様では、免疫グロブリンヒンジ領域は、特にFcドメインがIgGFcドメインであるヒトIgGヒンジ領域である。任意選択的に、第1のFab分子のFab軽鎖と第2のFab分子のFab軽鎖は更に互いに融合していてよい。
【0362】
Fab分子がFab重鎖のC末端で免疫グロブリンヒンジ領域を介してFcドメインの各サブユニットのN末端に融合した抗体の立体配置において、2つのFab分子、ヒンジ領域及びFcドメインは本質的に免疫グロブリン分子を形成する。特定の実施態様では、免疫グロブリン分子は、IgGクラスの免疫グロブリンである。更に特定の実施態様では、免疫グロブリンはIgGサブクラスの免疫グロブリンである。別の実施態様では、免疫グロブリンはIgGサブクラスの免疫グロブリンである。更に特定の実施態様では、免疫グロブリンはヒト免疫グロブリンである。他の実施態様では、免疫グロブリンは、キメラ免疫グロブリン又はヒト化免疫グロブリンである。
【0363】
幾つかの抗体において、第1のFab分子のFab軽鎖と第2のFab分子のFab軽鎖とが、任意選択的にペプチドリンカーを介して互いに融合している。第1及び第2のFab分子の立体配置に依存して、第1のFab分子のFab軽鎖は、そのC末端において、第2のFab分子のFab軽鎖のN末端に融合し得るか、又は第2のFab分子のFab軽鎖は、そのC末端において、第1のFab分子のFab軽鎖のN末端に融合し得る。第1及び第2のFab分子のFab軽鎖の融合は更に、マッチしないFab重鎖とFab軽鎖の誤対合を減少させ、また幾つかの抗体の発現に必要なプラスミドの数を減少させる。
【0364】
特定の実施態様では、抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次にFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))と、第1のFab分子のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))とを含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。特定の実施態様では、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合により共有結合している。
【0365】
特定の実施態様では、抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次にFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド((VH(2)-CL(2)-CH2-CH3(-CH4))と、第1のFab分子のFab重鎖がFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))とを含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。特定の実施態様では、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合により共有結合している。
【0366】
幾つかの実施態様では、抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次に第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次にFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))を含む。他の実施態様では、抗体は、第1のFab分子のFab重鎖が第2のFab分子のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次にFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2)-CH2-CH3(-CH4))を含む。
【0367】
これらの実施態様の幾つかにおいて、抗体は更に、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有する、第2のFab分子のクロスオーバーFab軽鎖ポリペプチド(VH(2)-CL(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。これらの実施態様の他のものにおいて、抗体は更に、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VL(1)-CL(1))、又は、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドが、第2のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(1)-CL(1)-VH(2)-CL(2))を必要に応じて含む。
【0368】
これらの実施態様による抗体は更に、(i)Fcドメインサブユニットポリペプチド(CH2-CH3(-CH4))、又は(ii)第3のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインのサブユニットと共有するポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-CH2-CH3(-CH4))及び第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))を含み得る。特定の実施態様では、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合により共有結合している。
【0369】
幾つかの実施態様では、抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次に第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次にFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VH(1)-CH1(1)-CH2-CH3(-CH4))を含む。他の実施態様では、抗体は、第1のFab分子のFab重鎖が第2のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次にFcドメインサブユニットとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-VH(2)-CL(2)-CH2-CH3(-CH4))を含む。
【0370】
これらの実施態様の幾つかにおいて、抗体は更に、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有する、第2のFab分子のクロスオーバーFab軽鎖ポリペプチド(VL(2)-CH1(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。これらの実施態様の他のものにおいて、抗体は更に、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VL(1)-CL(1))、又は、第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチドが、第2のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(1)-CL(1)-VH(2)-CL(2))を必要に応じて含む。
【0371】
これらの実施態様による抗体は更に、(i)Fcドメインサブユニットポリペプチド(CH2-CH3(-CH4))、又は(ii)第3のFab分子のFab重鎖が、カルボキシ末端ペプチド結合を、Fcドメインのサブユニットと共有するポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-CH2-CH3(-CH4))及び第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))を含み得る。特定の実施態様では、ポリペプチドは、例えばジスルフィド結合により共有結合している。
【0372】
幾つかの実施態様では、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。特定のこのような実施態様では、抗体はFcドメインを含まない。特定の実施態様では、抗体は、本質的に、第1及び第2のFab分子、及び任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーからなり、ここで第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。そのような立体配置は図6O及び図6Sに模式的に示されている。
【0373】
他の実施態様では、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。特定のこのような実施態様では、抗体はFcドメインを含まない。特定の実施態様では、抗体は、本質的に、第1及び第2のFab分子、及び任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーからなり、ここで第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。そのような立体配置は図6P及び図6Tに模式的に示されている。
【0374】
幾つかの実施態様では、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、かつ、抗体は更に第3のFab分子を含み、ここで前記第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。特定のそのような実施態様では、前記第3のFab分子は従来のFab分子である。他のそのような実施態様では、前記第3のFab分子は本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわちFab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCL及びCH1が互いに交換/置換されているFab分子である。特定のそのような実施態様では、抗体は、本質的に、第1、第2及び第3のFab分子、及び任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーからなり、ここで第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。そのような立体配置は図6Q及び図6Uに模式的に示されている.(特定の実施態様では、第3のFab分子は従来のFab分子であり、好ましくは第1のFab分子と同じである)。
【0375】
幾つかの実施態様では、第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、かつ、抗体は更に第3のFab分子を含み、ここで前記第3のFab分子は、Fab重鎖のN末端で第2のFab分子のFab重鎖のC末端に融合している。特定のそのような実施態様では、前記第3のFab分子は本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわちFab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが互いに交換/置換されているFab分子である。他のそのような実施態様では、前記第3のFab分子は従来のFab分子である。特定のそのような実施態様では、抗体は、本質的に、第1、第2及び第3のFab分子、及び任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーからなり、ここで第1のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のN末端で第2のFab分子のFab重鎖のC末端に融合している。そのような立体配置は図6W及び図6Yに模式的に示されている.(特定の実施態様では、第3のFab分子はクロスオーバーFab分子であり、好ましくは第2のFab分子と同じである)。
【0376】
幾つかの実施態様では、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、かつ、抗体は更に第3のFab分子を含み、ここで前記第3のFab分子は、Fab重鎖のN末端で第1のFab分子のFab重鎖のC末端に融合している。特定のそのような実施態様では、前記第3のFab分子は従来のFab分子である。他のそのような実施態様では、前記第3のFab分子は本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわちFab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが互いに交換/置換されているFab分子である。特定のそのような実施態様では、抗体は、本質的に、第1、第2及び第3のFab分子、及び任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーからなり、ここで第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のN末端で第1のFab分子のFab重鎖のC末端に融合している。そのような立体配置は図6R及び図6Vに模式的に示されている.(特定の実施態様では、第3のFab分子は従来のFab分子であり、好ましくは第1のFab分子と同じである)。
【0377】
幾つかの実施態様では、第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、かつ、抗体は更に第3のFab分子を含み、ここで前記第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。特定のそのような実施態様では、前記第3のFab分子は本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわちFab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが互いに交換/置換されているFab分子である。他のそのような実施態様では、前記第3のFab分子は従来のFab分子である。特定のそのような実施態様では、抗体は、本質的に、第1、第2及び第3のFab分子、及び任意選択的に1つ又は複数のペプチドリンカーからなり、ここで第2のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第1のFab分子のFab重鎖のN末端に融合しており、第3のFab分子は、Fab重鎖のC末端で第2のFab分子のFab重鎖のN末端に融合している。そのような立体配置は図6X及び図6Zに模式的に示されている.(特定の実施態様では、第3のFab分子はクロスオーバーFab分子であり、好ましくは第1のFab分子と同じである)。
【0378】
特定の実施態様では、抗体は、第1のFab分子のFab重鎖が第2のFab分子のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(すなわち、第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)ポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。
【0379】
特定の実施態様では、抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次に第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。
【0380】
特定の実施態様では、抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次に第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VH(1)-CH1(1))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。
【0381】
特定の実施態様では、抗体は、第3のFab分子のFab重鎖が第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第2のFab分子のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(すなわち、第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)ポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-VH(1)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))を更に含む。
【0382】
特定の実施態様では、抗体は、第3のFab分子のFab重鎖が第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第2のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(すなわち、第2のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)ポリペプチド(VH(3)-CH1(3)-VH(1)-CH1(1)-VH(2)-CL(2))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))を更に含む。
【0383】
特定の実施態様では、抗体は、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次に第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第3のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1)-VH(3)-CH1(3))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))を更に含む。
【0384】
特定の実施態様では、抗体は、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次に第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第3のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2)-VH(1)-CH1(1)-VH(3)-CH1(3))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は第3のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(3)-CL(3))を更に含む。
【0385】
特定の実施態様では、抗体は、第1のFab分子のFab重鎖が第2のFab分子のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次に第3のFab分子のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第3のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(すなわち、第3のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)ポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-VL(2)-CH1(2)-VL(3)-CH1(3))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(3)-CL(3))を含む。
【0386】
特定の実施態様では、抗体は、第1のFab分子のFab重鎖が第2のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次に第3のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第3のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する(すなわち、第3のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)ポリペプチド(VH(1)-CH1(1)-VH(2)-CL(2)-VH(3)-CL(3))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(3)-CH1(3))を含む。
【0387】
特定の実施態様では、抗体は、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、第3のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第3のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次に第2のFab分子のFab軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第2のFab分子のFab重鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖可変領域が軽鎖可変領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次に第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VL(3)-CH1(3)-VL(2)-CH1(2)-VH(1)-CH1(1))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第2のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(2)-CL(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域と共有するポリペプチド(VH(3)-CL(3))を含む。
【0388】
特定の実施態様では、抗体は、第3のFab分子のFab重鎖可変領域が、第3のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第3のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次に第2のFab分子のFab重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、これが次に第2のFab分子のFab軽鎖定常領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し(すなわち、第2のFab分子が、重鎖定常領域が軽鎖定常領域により置換されているクロスオーバーFab重鎖を含む)、これが次に第1のFab分子のFab重鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有するポリペプチド(VH(3)-CL(3)-VH(2)-CL(2)-VH(1)-CH1(1))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第2のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第2のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(2)-CH1(2))、及び第1のFab分子のFab軽鎖ポリペプチド(VL(1)-CL(1))を含む。幾つかの実施態様では、抗体は更に、第3のFab分子のFab軽鎖可変領域が、カルボキシ末端ペプチド結合を、第3のFab分子のFab重鎖定常領域と共有するポリペプチド(VL(3)-CH1(3))を含む。
【0389】
上記実施態様の何れによっても、抗体(例えば、Fab分子、Fcドメイン)の成分は、直接融合するか、又は様々なリンカー、特に1つ又は複数のアミノ酸、典型的には約2-20個のアミノ酸を含むペプチドリンカーを介して融合する。このようなリンカーは本明細書に記載されているか、又は当該技術分野で既知である。適切な非免疫原性ペプチドリンカーには、例えば、(GS)、(SG、(GS)又はG(SGペプチドリンカーが含まれ、ここでnは通常1~10、典型的には2~4の整数である。
【0390】
Fcドメイン
抗体、例えば、治療剤に含まれる二重特異性抗体又はイムノコンジュゲートは、抗体分子の重鎖ドメインを含む一対のポリペプチド鎖からなるFcドメインを含み得る。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインは二量体であり、その各々のサブユニットはCH2及びCH3 IgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの2つのサブユニットは、互いに安定に会合することができる。
【0391】
一実施態様では、FcドメインはIgG Fcドメインである。特定の実施態様では、FcドメインはIgG Fcドメインである。別の実施態様では、FcドメインはIgG Fcドメインである。より具体的な実施態様では、Fcドメインは、位置S228でのアミノ酸置換(Kabat番号付け)、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG Fcドメインである。このアミノ酸置換は、IgG抗体のin vivoでのFabアーム交換を減少させる(Stubenrauch et al., Drug Metabolism and Disposition 38, 84-91 (2010)を参照)。更に特定の実施態様では、Fcドメインはヒトである。ヒトIgG Fc領域の例示的な配列は配列番号30に与えられる。
【0392】
(i)ヘテロ二量体化を促進するFcドメインの修飾
治療剤に含まれる抗体、具体的には二重特異性抗体又はイムノコンジュゲートは、Fcドメインの2つのサブユニットの一方又は他方に融合された異なる成分(例えば、抗原結合ドメイン、サイトカイン)を含むことができ、従ってFcドメインの2つのサブユニットは典型的には2つの非同一ポリペプチド鎖に含まれる。これらのポリペプチドの組換え同時発現及びその後の二量体形成は、2つのポリペプチドの複数の可能な組み合わせをもたらす。組換え産生におけるそのような抗体の収率及び純度を改善するためには、所望のポリペプチドの会合を促進する修飾をその抗体のFcドメインに導入することが有利であろう。
【0393】
従って、特定の実施態様では、Fcドメインは、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間の最も広範なタンパク質-タンパク質相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメインにある。従って、一実施態様では、前記修飾はFcドメインのCH3ドメインにある。
【0394】
ヘテロ二量体化を強制するために、FcドメインのCH3ドメインにおける修飾のための幾つかのアプローチが存在し、例えば、国際公開第96/27011号、国際公開第98/050431号、欧州特許第1870459号、国際公開第2007/110205号、国際公開第2007/147901号、国際公開第2009/089004号、国際公開第2010/129304号、国際公開第2011/90754号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2012058768号、国際公開第2013157954号、国際公開第2013096291号に記載される。典型的には、そのようなアプローチの全てにおいて、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメイン及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインは、相補的な様式で両方とも改変され、各CH3ドメイン(又はそれを含む重鎖)はもはやそれ自身とホモ二量体化することができないが、相補的に改変された他のCH3ドメインとヘテロ二量体化するように強制される(第1及び第2のCH3ドメインがヘテロ二量体化し、2つの第1又は2つの第2のCH3ドメインの間にホモ二量体が形成されないように)。軽鎖の誤対合及びBence Jones型副生成物を減少させる、改良された重鎖ヘテロ二量体化のためのこれらの異なるアプローチは、重鎖軽鎖修飾(例えばFabアームにおける可変若しくは定常領域の交換/置換、又はCH1/CL界面における反対の電荷を有する荷電アミノ酸の置換の導入)と組み合わせた異なる選択肢として検討されている。
【0395】
特定の一実施態様では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する前記修飾はいわゆる「ノブ-イントゥ-ホール(knob-into-hole)」修飾であり、Fcドメインの2つのサブユニットの一方に「ノブ」修飾を、Fcドメインの2つのサブユニットの他方に「ホール」修飾を含んでいる。
【0396】
ノブ・イントゥー・ホール技術は、例えば、米国特許第5731168号;米国特許第7695936号; Ridgway et al., Prot Eng 9, 617-621 (1996)及びCarter, J Immunol Meth 248, 7-15 (2001)に記載される。一般に、この方法は、第1のポリペプチドの界面において隆起(「ノブ」)及び第2のポリペプチドの界面において対応する空洞(「ホール」)を導入することを含み、その結果、ヘテロ二量体形成を促進し、ホモ二量体形成を妨げるように隆起が空洞内に配置することができる。隆起は、第1のポリペプチドの界面から小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)と置換することによって構築される。隆起と同じか又は同様のサイズの相補的空洞が、大きなアミノ酸側鎖を小さいもの(例えばアラニン又はスレオニン)で置換することによって、第2のポリペプチドの接触面に作り出される。
【0397】
このように、特定の実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基がそれよりも大きな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置換され、それにより、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部の空洞内に配置可能な隆起が生成され、かつ、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基がそれよりも小さな側鎖体積を有するアミノ酸残基で置換され、それにより、第2のサブユニットのCH3ドメイン内部に、第1のサブユニットのCH3ドメイン内部の隆起を配置可能な空洞が生成される。
【0398】
好ましくは、より大きな側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)及びトリプトファン(W)からなる群から選択される。
【0399】
好ましくは、より小さな側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T)及びバリン(V)からなる群から選択される。
【0400】
隆起と空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を、例えば部位特異的変異誘発により、又はペプチド合成により改変することにより作り出すことができる。
【0401】
特定の実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」サブユニット)のCH3ドメインにおいて、366位のスレオニン残基がトリプトファン残基で置換され(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニット(「ホール」サブユニット)のCH3ドメインにおいて、407位のチロシン残基がバリン残基で置換されている(Y407V)。一実施態様では、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて更に、366位のスレオニン残基がセリン残基で置換され(T366S)、368位のロイシン残基がアラニン残基で置換されている(L368A)(KabatのEUインデックスによる番号付け)。
【0402】
更に別の実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて更に、354位のセリン残基がシステイン残基で置換され(S354C)、又は356位のグルタミン酸残基がシステイン残基で置換され(E356C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて更に、349位のチロシン残基がシステイン残基で置換されている(Y349C)(KabatのEUインデックスによる番号付け)。これらの2つのシステイン残基の導入は、Fcドメインの2つのサブユニット間のジスルフィド架橋の形成をもたらし、更に二量体を安定化させる(Carter, J Immunol Methods 248, 7-15 (2001))。
【0403】
特定の実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354C及びT366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S、L368A及びY407V(KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。
【0404】
特定の実施態様では、本明細書に記載のイムノコンジュゲート中の突然変異IL-2ポリペプチド又は本明細書に記載の二重特異性抗体中のCD3抗原結合部分は、Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」修飾を含む)に融合している。理論に縛られることを望むものではないが、IL-2ポリペプチド又はCD3抗原結合部分をFcドメインのノブ含有サブユニットに融合させることにより、2つのIL-2ポリペプチドを含むイムノコンジュゲート又は2つのCD3抗原結合部分を含む二重特異性抗体のそれぞれの生成を(更に)最小限に抑えることができるであろう(2つのノブ含有ポリペプチドの立体衝突)。
【0405】
ヘテロ二量体化を強制するためのCH3修飾の他の技術は、本発明による代替案として考えられており、例えば、国際公開第96/27011号、国際公開第98/050431号、欧州特許第1870459号、国際公開第2007/110205号、国際公開第2007/147901号、国際公開第2009/089004号、国際公開第2010/129304号、国際公開第2011/90754号、国際公開第2011/143545号、国際公開第2012/058768号、国際公開第2013/157954号、国際公開第2013/096291号に記載される。
【0406】
一実施態様では、欧州特許第1870459(A1)号に記載されているヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用される。このアプローチは、Fcドメインの2つのサブユニット間のCH3/CH3ドメイン界面における特定のアミノ酸位置に反対の電荷を有する荷電アミノ酸の導入に基づいている。好ましい一実施態様は、(Fcドメインの)2つのCH3ドメインのうちの1つにおけるアミノ酸変異R409D;K370E及びFcドメインのCH3ドメインの他方におけるアミノ酸変異D399K;E357K(KabatのEUインデックスによる番号付け)である。
【0407】
別の実施態様では、抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異T366W、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異T366S、L368A、Y407V、更にFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異R409D;K370E、及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異D399K;E357K(KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。
【0408】
別の実施態様では、抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異S354C、T366W、及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異Y349C、T366S、L368A、Y407Vを含み、又は抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異Y349C、T366W、及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異S354C、T366S、L368A、Y407V、更にFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異R409D;K370E、及びFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおけるアミノ酸変異D399K;E357K(全ての番号付けはKabatのEUインデックスによる)を含む。
【0409】
一実施態様では、国際公開第2013/157953号に記載されているヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用される。一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Kを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異L351D(KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。更なる実施態様では、第1のCH3ドメインは、更なるアミノ酸変異L351Kを含む。更なる実施態様では、第2のCH3ドメインは、Y349E、Y349D及びL368E(KabatのEUインデックスによる番号付け)から選択されるアミノ酸変異(好ましくはL368E)を更に含む。
【0410】
一実施態様では、国際公開第2012/058768号に記載されているヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用される。一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異T366A、K409Fを含む。更なる実施態様では、第2のCH3ドメインは、T411、D399、S400、F405、N390、又はK392の位置に、a)T411N、T411R、T411Q、T411K、T411D、T411E又はT411W、b)D399R、D399W、D399Y又はD399K、c)S400E、S400D、S400R、又はS400K、d)F405I、F405M、F405T、F405S、F405V又はF405W、e)N390R、N390K又はN390D、f)K392V、K392M、K392R、K392L、K392F又はK392E(KabatのEUインデックスによる番号付け)から選択される更なるアミノ酸変異を含む。更なる実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異T366V、K409Fを含む。更なる実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異Y407Aを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異T366A、K409Fを含む。更なる実施態様では、第2のCH3ドメインは、アミノ酸変異K392E、T411E、D399R及びS400R(KabatのEUインデックスによる番号付け)を更に含む。
【0411】
一実施態様では、例えば368及び409からなる群から選択される位置(KabatのEUインデックスによる番号付け)にアミノ酸修飾を有する、国際公開第2011/143545号に記載されるヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用される。
【0412】
一実施態様では、上述したノブ-イントゥ-ホール技術を使用する、国際公開第2011/090762号に記載されるヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用される。一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Wを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異Y407Aを含む。一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異T366Yを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異Y407T(KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。
【0413】
一実施態様では、抗体又はそのFcドメインはIgGサブクラスであり、国際公開第2010/129304号に記載されるヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用される。
【0414】
別の実施態様では、Fcドメインの第1及び第2のサブユニットの会合を促進する修飾は、例えばPCT刊行物の国際公開第2009/089004号に記載される静電ステアリング効果を媒介する修飾を含む。一般に、この方法は、ホモ二量体形成は静電的に不利になるが、ヘテロ二量体は静電的に有利になるように、2つのFcドメインサブユニットの界面にて、荷電したアミノ酸残基による1つ又は複数のアミノ酸残基の置換を含む。そのような実施態様の1つにおいて、第1のCH3ドメインは、K392又はN392の負に荷電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)とのアミノ酸置換、好ましくはK392D又はN392Dを含み、第2のCH3ドメインは、D399、E356、D356又はE357の正に荷電したアミノ酸(例えば、リジン(K)又はアルギニン(R))とのアミノ酸置換、好ましくはD399K、E356K、D356K、又はE357K、より好ましくはD399K及びE356Kを含む。更なる実施態様では、第1のCH3ドメインは、K409又はR409の負に荷電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D))とのアミノ酸置換、好ましくはK409D又はR409Dを更に含む。更なる実施態様では、第1のCH3ドメインは、K439及び/又はK370の負に荷電したアミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D))とのアミノ酸置換を更に含む(全ての番号はKabatのEUインデックスによる)。
【0415】
更に別の実施態様では、国際公開第2007/147901号に記載されているヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用される。一実施態様では、第1のCH3ドメインはアミノ酸変異K253E、D282K、及びK322Dを含み、第2のCH3ドメインはアミノ酸変異D239K、E240K、及びK292Dを含む(KabatのEUインデックスによる番号付け)。
【0416】
更に別の実施態様では、国際公開第2007/110205号に記載されているヘテロ二量体化アプローチが代替的に使用される。
【0417】
一実施態様では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換K392D及びK409Dを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換D356K及びD399K(Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。
【0418】
(ii)Fc受容体の結合及び/又はエフェクター機能を低減させるFcドメインの修飾
Fcドメインは、抗体、例えば二重特異性抗体又はイムノコンジュゲートに望ましい薬物動態特性を付与し、そのような薬物動態特性には、標的組織中への良好な蓄積に貢献する長い血清半減期、及び望ましい組織-血液分布比が含まれる。しかしながら、同時に、好ましい抗原保有細胞よりはむしろFc受容体を発現する細胞に対しての、抗体の望ましくない標的化を導く可能性がある。更には、Fc受容体シグナル伝達経路の同時活性化はサイトカイン放出の原因となる可能性があり、サイトカイン放出は、抗体が有し得る他の免疫賦活特性及び抗体の長い半減期と組み合わさって、サイトカイン受容体の過剰な活性化を招き、全身投与されると重い副作用性を引き起こす。
【0419】
従って、特定の実施態様では、治療剤に含まれる抗体、具体的には二重特異性抗体又はイムノコンジュゲートのFcドメインは、天然のIgG Fcドメインと比較した場合に、Fc受容体に対する結合親和性の低減及び/又はエフェクター機能の低減を呈する。このような一実施態様では、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む分子、例えば抗体)は、天然のIgGFcドメイン(又は天然のIgGFcドメインを含む対応する分子)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、更に好ましくは10%未満、及び最も好ましくは5%未満の、Fc受容体への結合親和性を呈する、及び/又は、天然のIgG Fcドメイン(又は天然のIgGFcドメインを含む対応する分子)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、更に好ましくは10%未満、及び最も好ましくは5%未満のエフェクター機能を呈する。一実施態様では、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む分子、例えば抗体)は、Fc受容体に実質的に結合せず、かつ/又はエフェクター機能を誘導しない。特定の一実施態様では、Fc受容体はFcγ受容体である。一実施態様では、Fc受容体はヒトFc受容体である。一実施態様では、Fc受容体は活性化Fc受容体である。特定の一実施態様では、Fc受容体は活性化ヒトFcγ受容体であり、より具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI、又はFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。一実施態様では、エフェクター機能は、CDC、ADCC、ADCP、及びサイトカイン分泌の群から選択される1つ又は複数である。特定の一実施態様では、エフェクター機能はADCCである。一実施態様では、Fcドメインは、天然型IgG Fcドメインと比較して実質的に同様の、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性を呈する。実質的に同様のFcRnに対する結合親和性は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む分子、例えば抗体)が、天然IgG Fcドメイン(又は天然IgGFcドメインを含む対応する分子)の約70%を上回る、具体的には約80%を上回る、より具体的には約90%を上回るFcRnに対する結合親和性を呈するときに達成される。
【0420】
特定の実施態様では、Fcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、Fc受容体への低減した結合親和性及び/又は低減したエフェクター機能を有するように操作される。特定の実施態様では、Fcドメインは、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性及び/又はエフェクター機能を低減させる1つ又は複数のアミノ酸変異を含む。典型的には、Fcドメインの2つのサブユニットのそれぞれに同じ1つ又は複数のアミノ酸変異が存在する。一実施態様では、アミノ酸変異はFcドメインのFc受容体に対する結合親和性を低減させる。一実施態様では、アミノ酸変異は、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性を少なくとも2分の1、少なくとも5分の1、又は少なくとも10分の1に低減させる。FcドメインのFc受容体に対する結合親和性を低減させる複数のアミノ酸変異が存在する一実施態様では、これらアミノ酸変異の組み合わせにより、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性が、少なくとも10分の1、少なくとも20分の1、又は少なくとも50分の1にまで低減する。一実施態様では、操作されたFcドメインを含む抗体は、操作されていないFcドメインを含む対応する分子と比較して、20%未満、具体的には10%未満、より具体的には5%未満のFc受容体に対する結合親和性を示す。特定の一実施態様では、Fc受容体はFcγ受容体である。幾つかの実施態様では、Fc受容体はヒトFc受容体である。幾つかの実施態様では、Fc受容体は活性化Fc受容体である。特定の一実施態様では、Fc受容体は活性化ヒトFcγ受容体であり、より具体的にはヒトFcγRIIIa、FcγRI、又はFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これら受容体の各々への結合は低減する。幾つかの実施態様では、補体成分に対する結合親和性、具体的にはC1qに対する結合親和性も低減する。一実施態様では、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性は低減しない。FcRnに対する実質的に同様の結合、すなわち、前記受容体に対するFcドメインの結合親和性の保存は、Fcドメイン(又は前記Fcドメインを含む分子、例えば抗体)がFcドメインの操作されていない形態(又はFcドメインの前記操作されていない形態を含む対応する分子)の約70%を上回るFcRnに対する結合親和性を呈するときに達成される。Fcドメイン、又は前記Fcドメインを含む分子(例えば、抗体)は、そのような親和性の約80%を超える、さらには約90%を超える親和性を示し得る。特定の実施態様では、Fcドメインは、操作されていないFcドメインと比較して、低減したエフェクター機能を有するように操作される。エフェクター機能の低減は、限定しないが、補体依存性細胞傷害(CDC)の低減、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)の低減、抗体依存性細胞貪食(ADCP)の低減、サイトカイン分泌の低減、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込みの低減、NK細胞に対する結合の低減、マクロファージに対する結合の低減、単球に対する結合の低減、多形核細胞に対する結合の低減、アポトーシスを誘導する直接的シグナル伝達の低減、標的結合抗体の架橋の低減、樹状細胞成熟の低減、又はT細胞プライミングの低減のうちの1つ又は複数を含むことができる。一実施態様では、エフェクター機能の低減は、CDCの低減、ADCCの低減、ADCPの低減、及びサイトカイン分泌の低減からなる群より選択される1つ又は複数である。特定の実施態様では、エフェクター機能の低減はADCCの低減である。一実施態様では、低減したADCCは、操作されていないFcドメイン(又は操作されていないFcドメインを含む対応する分子)によって誘導されるADCCの20%未満である。
【0421】
一実施態様では、FcドメインのFc受容体に対する結合親和性及び/又はエフェクター機能を低減させるアミノ酸の変異は、アミノ酸置換である。一実施態様では、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331及びP329(KabatのEUインデックスによる番号付け)の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む。より具体的な実施態様では、Fcドメインは、L234、L235及びP329(KabatのEUインデックスによる番号付け)の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む。幾つかの実施態様では、Fcドメインは、アミノ酸置換L234A及びL235A(KabatのEUインデックスによる番号付け)を含む。このような一実施態様では、FcドメインはIgG Fcドメイン、特にヒトIgG Fcドメインである。一実施態様では、FcドメインはP329の位置にアミノ酸置換を含む。より具体的な実施態様では、アミノ酸置換はP329A又はP329G、特にP329Gである(KabatのEUインデックスによる番号付け)。一実施態様では、Fcドメインは、P329の位置にアミノ酸置換を、更にE233、L234、L235、N297及びP331から選択される位置にアミノ酸置換を含む(KabatのEUインデックスによる番号付け)。より具体的な実施態様では、更なるアミノ酸置換は、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297D又はP331Sである。特定の実施態様では、Fcドメインは、P329、L234及びL235の位置にアミノ酸置換を含む(KabatのEUインデックスによる番号付け)。より具体的な実施態様では、Fcドメインは、アミノ酸置換L234A、L235A及びP329G(「P329G LALA」)を含む。このような一実施態様では、FcドメインはIgG Fcドメイン、特にヒトIgG Fcドメインである。アミノ酸置換の「P329G LALA」の組み合わせは、参照によりその全体が本明細書に取り込まれる国際公開第2012/130831号に記載のように、ヒトIgG FcドメインのFcγ受容体(並びに補体)結合をほぼ完全に無効にする。国際公開第2012/130831号には、このような変異体Fcドメインを調製する方法、及びFc受容体結合又はエフェクター機能といったその特性を決定する方法も記載されている。
【0422】
IgG抗体は、IgG1抗体と比較して、Fc受容体に対する結合親和性の低減及びエフェクター機能の低減を示す。従って、幾つかの実施態様では、FcドメインはIgG Fcドメイン、特にヒトIgG Fcドメインである。一実施態様では、IgG Fcドメインは、S228の位置におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228Pを含む(KabatのEUインデックスによる番号付け)。Fc受容体に対するその結合親和性及び/又はそのエフェクター機能を更に低減させるために、一実施態様では、IgG Fcドメインは、L235の位置におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換L235Eを含む(KabatのEUインデックスによる番号付け)。別の実施態様では、IgG Fcドメインは、P329の位置におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換P329Gを含む(KabatのEUインデックスによる番号付け)。特定の実施態様では、IgG Fcドメインは、S228、L235及びP329の位置におけるアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228P、L235E及びP329Gを含む(KabatのEUインデックスによる番号付け)。このようなIgG Fcドメイン変異体及びそれらのFcγ受容体結合特性は、国際公開第2012/130831号に記載されており、これは参照によりその全体が本明細書に取り込まれる。
【0423】
特定の実施態様では、天然のIgG Fcドメインと比較してFc受容体に対する結合親和性の低減及び/又はエフェクター機能の低減を呈するFcドメインは、アミノ酸置換L234A、L235A及び任意選択的にP329Gを含むヒトIgG Fcドメインであるか、又はアミノ酸置換S228P、L235E及び任意選択的にP329Gを含むヒトIgG Fcドメインである(KabatのEUインデックスによる番号付け)。
【0424】
特定の実施態様ではFcドメインのNグリコシル化は排除されている。このような一実施態様では、FcドメインはN297の位置におけるアミノ酸置換、具体的にはアスパラギンをアラニン(N297A)又はアスパラギン酸(N297D)又はグリシン(N297G)により置き換えるアミノ酸置換を含む。
【0425】
本明細書及び国際公開第2012/130831号において記載されるFcドメインに加えて、Fc受容体結合及び/又はエフェクター機能の低減を有するFcドメインは、Fcドメイン残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ又は複数の置換を有するものも含む(米国特許第6737056号)(KabatのEUインデックスによる番号付け)。そのようなFc変異体は、残基265及び297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含めた、アミノ酸位置265、269、270、297、及び327のうちの2つ以上において置換を有するFc変異体を含む(米国特許第7332581号)。
【0426】
変異体Fcドメインは、当該技術分野で周知の遺伝学的又は化学的方法を用いたアミノ酸の欠失、置換、挿入、又は修飾により調製することができる。遺伝学的方法は、コード化DNA配列の部位特異的突然変異誘発、PCR、遺伝子合成などを含み得る。正確なヌクレオチドの変化は、例えば配列決定により確認することができる。
【0427】
Fc受容体に対する結合は、例えばELISAにより、又はBIAcore装置(GE Healthcare)のような標準的な計測手段を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)により容易に決定することができ、このようなFc受容体は組換え発現により得ることができる。あるいは、Fcドメイン、又はFcドメインを含む分子のFc受容体に対する結合親和性は、特定のFc受容体を発現することが知られている細胞株、例えばFcγIIIa受容体を発現するNK細胞を用いて評価してもよい。
【0428】
Fcドメイン、又はFcドメインを含む本発明の分子(例えば抗体)のエフェクター機能は、当該技術分野で周知の方法により測定することができる。ADCCを測定するための適切なアッセイは本明細書に記載される。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの他の例が、米国特許第5500362号;Hellstrom et al. Proc Natl Acad Sci USA 83, 7059-7063 (1986)及びHellstrom et al., Proc Natl Acad Sci USA 82, 1499-1502 (1985);米国特許第5821337号; Bruggemann et al., J Exp Med 166, 1351-1361 (1987)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法を用いてもよい(例えばフローサイトメトリー用のACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、又は更に、目的の分子のADCC活性は、例えばClynes et al., Proc Natl Acad Sci USA 95, 652-656 (1998)に開示される動物モデルにおいてin vivoで評価することができる。
【0429】
幾つかの実施態様では、補体成分に対するFcドメインの結合、特にC1qに対する結合が低減する。従って、Fcドメインがエフェクター機能が低減するように改変されている幾つかの実施態様では、前記エフェクター機能の低減はCDCの低減を含む。C1q結合アッセイは、Fcドメイン、又はFcドメインを含む分子(例えば抗体)がC1qに結合できるかどうか、それによりCDC活性を有するかどうかを決定するために実行され得る。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行ってもよい(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996); Cragg, et al., Blood 101:1045-1052 (2003);及びCragg, and Glennie, Blood 103:2738-2743 (2004)を参照)。
【0430】
抗原結合部分
治療剤に含まれる抗体は二重特異性であってもよく、すなわち、それは2つの異なる抗原決定基に特異的に結合することができる少なくとも2つの抗原結合部分を含む。特定の実施態様によれば、抗原結合部分はFab分子(すなわち、各々が可変及び定常ドメインを含む重鎖と軽鎖とからなる抗原結合ドメイン)である。一実施態様では、前記Fab分子はヒトである。別の実施態様では、前記Fab分子はヒト化されている。更に別の実施態様では、前記Fab分子はヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインを含む。
【0431】
幾つかの実施態様では、抗原結合部分の少なくとも1つはクロスオーバーFab分子である。このような修飾は、異なるFab分子由来の重鎖と軽鎖との誤対合を減少させ、それにより組換え産生において抗体の収率及び純度を向上させる。抗体に有用な特定のクロスオーバーFab分子では、Fab軽鎖とFab重鎖の可変ドメイン(それぞれVLとVH)が交換されている。しかし、このドメイン交換であっても、抗体の調製は、誤対合された重鎖と軽鎖との間のいわゆるBence Jones型相互作用のために、ある種の副生成物を含むことがある(Schaefer et al, PNAS, 108 (2011) 11187-11191を参照)。異なるFab分子からの重鎖及び軽鎖の誤対合を更に減少させ、従って本発明による所望の抗体の純度及び収率を増加させるために、反対の電荷を有する荷電アミノ酸が、標的細胞抗原に特異的に結合するFab分子又は活性化T細胞抗原に特異的に結合するFab分子の何れかのCH1及びCLドメインの特定のアミノ酸位置に導入され得る。電荷修飾は、抗体に含まれる従来のFab分子(例えば、図1A-C、G-Jに示されるようなもの)、又は抗体に含まれるクロスオーバーFab分子(例えば、図1D-F、K-Nに示されているようなもの)の何れかで行われる(但し、両方ではない)。特定の実施態様では、電荷修飾は、抗体(特定の実施態様では標的細胞抗原に特異的に結合する)に含まれる従来のFab分子において行われる。
【0432】
本発明による特定の実施態様では、抗体は、標的細胞抗原、具体的には腫瘍細胞抗原、及び活性化T細胞抗原、具体的にはCD3に同時結合することができる。一実施態様では、抗体は、標的細胞抗原と活性化T細胞抗原に同時結合することにより、T細胞と標的細胞を架橋することができる。更に特定の実施態様では、このような同時結合は、標的細胞、特に腫瘍細胞の溶解を引き起こす。一実施態様では、このような同時結合は、T細胞の活性化を引き起こす。他の実施態様では、このような同時結合は、増殖、分化、サイトカイン分泌、細胞傷害性エフェクター分子放出、細胞傷害性活性化、及び活性化マーカーの発現から選択される、Tリンパ球、特に細胞傷害性Tリンパ球の細胞応答を引き起こす。一実施態様では、標的細胞抗原への同時結合を伴わない、抗体の、活性化T細胞抗原、具体的にはCD3に対する結合は、T細胞の活性化を引き起こさない。
【0433】
一実施態様では、抗体は、T細胞の細胞傷害性活性を標的細胞へと再指向(re-directing)することができる。特定の一実施態様では、前記再指向(re-direction)は、標的細胞によるMHC媒介性ペプチド抗原の提示及び/又はT細胞の特異性と無関係である。
【0434】
特に、本発明の実施態様の何れかによるT細胞は、細胞傷害性T細胞である。幾つかの実施態様では、T細胞はCD4又はCD8T細胞、特にCD8 T細胞である。
【0435】
(i)活性化T細胞抗原結合部分
幾つかの実施態様では、治療剤に含まれる抗体、具体的には二重特異性抗体は、活性化T細胞抗原に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部分、特にFab分子(本明細書では「活性化T細胞抗原結合部分、又は活性化T細胞抗原結合Fab分子」とも呼ばれる)を含む。特定の実施態様では、抗体は、活性化T細胞抗原に特異的に結合することができる抗原結合部分を最多で1つ含む。一実施態様では、抗体は活性化T細胞抗原に一価の結合を提供する。
【0436】
特定の実施態様では、活性化T細胞抗原に特異的に結合する抗原結合部分は、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわちFab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが互いに交換/置換されているFab分子である。そのような実施態様では、標的細胞抗原に特異的に結合する抗原結合部分は、従来のFab分子である。抗体に含まれる、標的細胞抗原に特異的に結合する2つ以上の抗原結合部分、具体的にはFab分子が存在する実施態様では、活性化T細胞抗原に特異的に結合する抗原結合部分は好ましくはクロスオーバーFab分子であり、標的細胞抗原に特異的に結合する抗原結合部分は、従来のFab分子である。
【0437】
別の実施態様では、活性化T細胞抗原に特異的に結合する抗原結合部分は従来のFab分子である。そのような実施態様では、標的細胞抗原に特異的に結合する抗原結合部分(1つ又は複数)は、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわちFab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが互いに交換/置換されているFab分子である。
【0438】
一実施態様では、活性化T細胞抗原は、CD3、CD28、CD137(4-1BBとしても知られる)、CD40、CD226、OX40、GITR、CD27、HVEM、及びCD127からなる群から選択される。
【0439】
特定の実施態様では、活性化T細胞抗原はCD3、具体的にはヒトCD3(配列番号115)又はカニクイザルCD3(配列番号116)、最も具体的にはヒトCD3である。特定の実施態様では、活性化T細胞抗原結合部分は、ヒト及びカニクイザルのCD3に対して交差反応性(すなわち、特異的に結合する)である。幾つかの実施態様では、活性化T細胞抗原はCD3のイプシロンサブユニット(CD3イプシロン)である。
【0440】
幾つかの実施態様では、活性化T細胞抗原結合部分は、CD3、具体的にはCD3イプシロンに特異的に結合し、配列番号32、配列番号33及び配列番号34からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖相補性決定領域(CDR)と、配列番号35、配列番号36、配列番号37からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖CDRとを含んでいる。
【0441】
一実施態様では、CD3結合抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号32の重鎖CDR1、配列番号33の重鎖CDR2、配列番号34の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号35の軽鎖CDR1、配列番号36の軽鎖CDR2、及び配列番号37の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0442】
一実施態様では、CD3結合抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号38と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である重鎖可変領域配列と、配列番号39と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である軽鎖可変領域配列とを含む。
【0443】
一実施態様では、CD3結合抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号38のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号39のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0444】
一実施態様では、CD3結合抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号38の重鎖可変領域配列と、配列番号39の軽鎖可変領域配列とを含む。
【0445】
幾つかの実施態様では、活性化T細胞抗原結合部分は、CD3、具体的にはCD3イプシロンに特異的に結合し、配列番号120、配列番号121及び配列番号122からなる群より選択される少なくとも1つの重鎖HVRと、配列番号123、配列番号124、配列番号125からなる群より選択される少なくとも1つの軽鎖HVRとを含んでいる。
【0446】
一実施態様では、CD3結合抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号120の重鎖HVR 1(H1-HVR)、配列番号121のH2-HVR、及び配列番号122のH3-HVRを含む重鎖可変領域;並びに配列番号123の軽鎖HVR 1(L1-HVR)、配列番号124のL2-HVR、及び配列番号125のL3-HVRを含む軽鎖可変領域を含む。
【0447】
一実施態様では、CD3結合抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号126と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である重鎖可変領域配列と、配列番号127と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一である軽鎖可変領域配列とを含む。
【0448】
一実施態様では、CD3結合抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号126のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号127のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域とを含む。
【0449】
一実施態様では、CD3結合抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号126の重鎖可変領域配列と、配列番号127の軽鎖可変領域配列とを含む。
【0450】
(ii)標的細胞抗原結合部分
幾つかの実施態様では、治療剤に含まれる抗体、具体的には二重特異性抗体は、標的細胞抗原に特異的に結合する少なくとも1つの抗原結合部分、特にFab分子を含む。特定の実施態様では、抗体は、標的細胞抗原に特異的に結合する2つの抗原結合部分、特にFab分子を含む。このような特定の実施態様では、これら抗原結合部分の各々は、同じ抗原決定基に特異的に結合する。更により特定の実施態様では、これらの抗原結合部分の全ては同一であり、すなわち、それらが本明細書に記載のCH1及びCLドメインに同じアミノ酸置換(存在する場合)を含む同じアミノ酸配列を含む。一実施態様では、抗体は、標的細胞抗原に特異的に結合する免疫グロブリン分子を含む。一実施態様では、抗体は、標的細胞抗原に特異的に結合する2つの抗原結合部分、特にFab分子を含む。
【0451】
特定の実施態様では、標的細胞抗原に特異的に結合する抗原結合部分は、従来のFab分子である。そのような実施態様では、活性化T細胞抗原に特異的に結合する抗原結合部分(1つ又は複数)は、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわちFab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが互いに交換/置換されているFab分子である。
【0452】
代替の実施態様では、標的細胞抗原に特異的に結合する抗原結合部分(1つ又は複数)は、本明細書に記載されるクロスオーバーFab分子、すなわちFab重鎖及び軽鎖の可変ドメインVH及びVL又は定常ドメインCH1及びCLが互いに交換/置換されているFab分子である。そのような実施態様では、活性化T細胞抗原に特異的に結合する抗原結合部分(1つ又は複数)は従来のFab分子である。
【0453】
標的細胞抗原結合部分は、抗体を標的部位に、例えば標的細胞抗原を発現する特定のタイプの腫瘍細胞に向けることができる。
【0454】
一実施態様では、標的細胞抗原はCEA、具体的にはヒトCEAである。
【0455】
一実施態様では、CEAに特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号14の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号15の重鎖CDR2、及び配列番号16の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号17の軽鎖CDR1、配列番号18の軽鎖CDR2、及び配列番号19の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。更なる実施態様では、CEAに特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号20の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域と、配列番号21の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域とを含む。なお更なる実施態様では、CEAに特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号20の重鎖可変領域配列及び配列番号21の軽鎖可変領域配列を含む。
【0456】
一実施態様では、CEAに特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号136の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号137の重鎖CDR2、及び配列番号138の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号139の軽鎖CDR1、配列番号140の軽鎖CDR2、及び配列番号141の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。更なる実施態様では、CEAに特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号142の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域と、配列番号143の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域とを含む。なお更なる実施態様では、CEAに特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号142の重鎖可変領域配列及び配列番号143の軽鎖可変領域配列を含む。
【0457】
一実施態様では、標的細胞抗原はB細胞抗原、具体的には悪性B細胞抗原である。一実施態様では、標的細胞抗原は細胞表面抗原である。一実施態様では、標的細胞抗原は、CD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37、及びCD5からなる群より選択される。
【0458】
一実施態様では、標的細胞抗原はCD20、具体的にはヒトCD20である。
【0459】
一実施態様では、CD20に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号4の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号5の重鎖CDR2、及び配列番号6の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号7の軽鎖CDR1、配列番号8の軽鎖CDR2、及び配列番号9の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。更なる実施態様では、CD20に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号10の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域と、配列番号11の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域とを含む。なお更なる実施態様では、CD20に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む。
【0460】
一実施態様では、CD20に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号128の重鎖HVR 1(H1-HVR)、配列番号129のH2-HVR、及び配列番号130のH3-HVRを含む重鎖可変領域;並びに配列番号131の軽鎖HVR 1(L1-HVR)、配列番号132のL2-HVR、及び配列番号133のL3-HVRを含む軽鎖可変領域を含む。更なる実施態様では、CD20に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号134の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域と、配列番号135の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域とを含む。なお更なる実施態様では、CD20に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号134の重鎖可変領域配列及び配列番号135の軽鎖可変領域配列を含む。
【0461】
一実施態様では、標的細胞抗原はCD19、具体的にはヒトCD19である。
【0462】
一実施態様では、CD19に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号48の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号49の重鎖CDR2、及び配列番号50の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号51の軽鎖CDR1、配列番号52の軽鎖CDR2、及び配列番号53の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。更なる実施態様では、CD19に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号54の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域と、配列番号55の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域とを含む。なお更なる実施態様では、CD19に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号54の重鎖可変領域配列及び配列番号55の軽鎖可変領域配列を含む。
【0463】
別の実施態様では、CD19に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号59の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号60の重鎖CDR2、及び配列番号61の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号62の軽鎖CDR1、配列番号63の軽鎖CDR2、及び配列番号64の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む。更なる実施態様では、CD19に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号65の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域と、配列番号66の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域とを含む。なお更なる実施態様では、CD19に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、配列番号65の重鎖可変領域配列及び配列番号66の軽鎖可変領域配列を含む。
【0464】
別の実施態様では、CD19に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、
(i)配列番号67の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号68の重鎖CDR2、及び配列番号69の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号70の軽鎖CDR1、配列番号71の軽鎖CDR2、及び配列番号72の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;
(ii)配列番号75の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号76の重鎖CDR2、及び配列番号77の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号78の軽鎖CDR1、配列番号79の軽鎖CDR2、及び配列番号80の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;
(iii)配列番号83の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号84の重鎖CDR2、及び配列番号85の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号86の軽鎖CDR1、配列番号87の軽鎖CDR2、及び配列番号88の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;
(iv)配列番号91の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号92の重鎖CDR2、及び配列番号93の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号94の軽鎖CDR1、配列番号95の軽鎖CDR2、及び配列番号96の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;
(v)配列番号99の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号100の重鎖CDR2、及び配列番号101の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号102の軽鎖CDR1、配列番号103の軽鎖CDR2、及び配列番号104の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;又は
(vi)配列番号107の重鎖相補性決定領域(CDR)1、配列番号108の重鎖CDR2、及び配列番号109の重鎖CDR3を含む重鎖可変領域、並びに配列番号110の軽鎖CDR1、配列番号111の軽鎖CDR2、及び配列番号112の軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域
を含む。
【0465】
更なる実施態様では、CD19に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、
(i)配列番号73の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域、及び配列番号74の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域;
(ii)配列番号81の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域、及び配列番号82の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域;
(iii)配列番号89の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域、及び配列番号90の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域;
(iv)配列番号97の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域、及び配列番号98の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域;
(v)配列番号105の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域、及び配列番号106の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域;又は
(vi)配列番号113の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である重鎖可変領域、及び配列番号114の配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、又は99%同一である軽鎖可変領域
を含む。
【0466】
なお更なる実施態様では、CD19に特異的に結合する抗原結合部分、具体的にはFab分子は、
(i)配列番号73の重鎖可変領域配列及び配列番号74の軽鎖可変領域配列;
(ii)配列番号81の重鎖可変領域配列及び配列番号82の軽鎖可変領域配列;
(iii)配列番号89の重鎖可変領域配列及び配列番号90の軽鎖可変領域配列;
(iv)配列番号97の重鎖可変領域配列及び配列番号98の軽鎖可変領域配列;
(v)配列番号105の重鎖可変領域配列及び配列番号106の軽鎖可変領域配列;又は
(vi)配列番号113の重鎖可変領域配列及び配列番号114の軽鎖可変領域配列
を含む。
【0467】
電荷修飾
治療剤に含まれる抗体、具体的には多重特異性抗体は、その中に含まれるFab分子にアミノ酸置換を含むことができ、該置換は、該分子の結合アームの1つ(又は2つ以上の抗原結合Fab分子を含む分子の場合にはそれ以上)においてVH/VL交換を有するFabベースの二重/多重特異性抗原結合分子の産生において生じ得る、非適合重鎖(Bence-Jones型副生成物)との軽鎖の誤対合を減少させるのに特に有効である(全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公報番号WO2015/150447、具体的にはその中の実施例も参照のこと)。
【0468】
従って、特定の実施態様では、治療剤に含まれる抗体は、
(a)第1の抗原に特異的に結合する第1のFab分子
(b)第2の抗原に特異的に結合する第2のFab分子であって、Fab軽鎖及びFab重鎖の可変ドメインVL及びVHが互いに置換されている第2のFab分子
を含み;
ここで、第1の抗原は活性化T細胞抗原であり、かつ、第2の抗原は標的細胞抗原であり、又は第1の抗原は標的細胞抗原であり、かつ、第2の抗原は活性化T細胞抗原であり;
ここで
i)a)の第1のFab分子の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が正に荷電したアミノ酸(Kabatによる番号付け)によって置換され、かつ
a)の第1のFab分子の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸が負に荷電したアミノ酸(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換され;又は
ii)b)の第2のFab分子の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸が正に荷電したアミノ酸(Kabatによる番号付け)によって置換され、かつ
b)の第2のFab分子の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸が負に荷電したアミノ酸(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換されている。
【0469】
抗体は、i)及びii)に記載された両方の修飾を含まない。第2のFab分子の定常ドメインCL及びCH1は、互いに置換されない(すなわち、未変化のままである)。
【0470】
抗体の一実施態様では、a)の第1のFab分子の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)(Kabatによる番号付け)によって独立に(好ましい一実施態様では、リジン(K)又はアルギニン(R)によって独立に)置換され、かつ、a)の第1のFab分子の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸又は213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって独立に置換されている。
【0471】
更なる実施態様では、a)の第1のFab分子の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)(Kabatによる番号付け)によって独立に置換され、かつ、a)の第1のFab分子の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって独立に置換されている。
【0472】
特定の実施態様では、a)の第1のFab分子の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって独立に(好ましい一実施態様では、リジン(K)又はアルギニン(R)によって独立に)(Kabatによる番号付け)置換され、かつ、123位のアミノ酸がリジン(K)、アルギニン(R)又はヒスチジン(H)によって独立に(好ましい一実施態様では、リジン(K)又はアルギニン(R)によって独立に)(Kabatによる番号付け)置換され、a)の第1のFab分子の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって独立に置換され、かつ、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって独立に置換されている。
【0473】
より特定の実施態様では、a)の第1のFab分子の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)(Kabatによる番号付け)によって置換され、かつ、123位のアミノ酸がリジン(K)又はアルギニン(R)(Kabatによる番号付け)によって置換され、a)の第1のFab分子の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換され、かつ、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換されている。
【0474】
更により特定の実施態様では、a)の第1のFab分子の定常ドメインCLにおいて、124位のアミノ酸がリジン(K)(Kabatによる番号付け)によって置換され、かつ、123位のアミノ酸がアルギニン(R)(Kabatによる番号付け)によって置換され、a)の第1のFab分子の定常ドメインCH1において、147位のアミノ酸がグルタミン酸(E)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換され、かつ、213位のアミノ酸がグルタミン酸(E)(KabatのEUインデックスによる番号付け)によって置換されている。
【0475】
特定の実施態様では、a)の第1のFab分子の定常ドメインCLはカッパアイソタイプのものである。
【0476】
あるいは、上記実施態様によるアミノ酸置換は、a)の第1のFab分子の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1の代わりに、b)の第2のFab分子の定常領域CL及び定常領域CH1において行うことができる。特定のそのような実施態様では、b)の第2のFab分子の定常ドメインCLはカッパアイソタイプのものである。
【0477】
抗体は、第1の抗原に特異的に結合する第3のFab分子を更に含み得る。特定の実施態様では、前記第3のFab分子は、a)の第1のFab分子と同一である。これらの実施態様では、上記実施態様によるアミノ酸置換は、第1のFab分子及び第3のFab分子のそれぞれの定常ドメインCL及び定常ドメインCH1において行われるであろう。あるいは、上記実施態様によるアミノ酸置換は、b)の第2のFab分子の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1において行われ得るが、第1のFab分子及び第3のFab分子の定常ドメインCL及び定常ドメインCH1においては行われ得ない。
【0478】
特定の実施態様では、抗体は、安定した会合が可能な第1及び第2のサブユニットからなるFcドメインを更に含む。
【0479】
治療レジメン
本発明によれば、II型抗CD20抗体及び治療剤は、II型抗CD20抗体が治療剤の前に投与され、かつII型抗CD20抗体の投与が、治療剤が投与される時間までに治療された対象におけるB細胞の数の減少を効果的に誘導する限りにおいて、様々な方法で(例えば、投与経路、用量及び/又はタイミングに関して)投与され得る。
【0480】
理論に縛られることを望むものではないが、治療剤の投与前の対象におけるB細胞の数の減少は、治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を減少させるか又は防止するであろうから、従って、ADAに関連した、対象における治療剤の有効性の喪失及び/又は有害事象を減少させるか又は防止し、かつ/又は治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を減少させ又は防止するであろうから、従って、治療剤の投与に関連した、対象における有害事象(例えば、IRR)を減少させるか又は防止する。
【0481】
一実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の投与に応答した、対象における抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる。一実施態様では、ADAの形成は、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、少なくとも2分の1、少なくとも3分の1、少なくとも4分の1、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1、少なくとも20分の1、少なくとも50分の1、又は少なくとも100分の1に減少する。一実施態様では、ADAの形成は本質的に防止される。一実施態様では、ADAの形成の減少又は防止は、治療剤の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20若しくは21日、又は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、12ヶ月若しくはそれ以上である。一実施態様では、ADAの形成の減少又は防止は、治療剤の投与後約2ヶ月である。
【0482】
一実施態様では、治療剤の投与後の対象におけるADA力価は、治療剤の投与前の対象におけるADA力価を超えない。一実施態様では、治療剤の投与後の対象におけるADA力価は、治療剤の投与前の対象におけるADA力価を1.1倍超、1.2倍超、1.5倍超、2倍超、3倍超、4倍超、5倍超、又は10倍超、超えない。一実施態様では、治療剤の投与後の対象におけるADA力価は、治療剤の投与前の対象におけるADA力価と比較して、1.1倍未満、1.2倍未満、1.5倍未満、2倍未満、3倍未満、4倍未満、5倍未満、又は10倍未満で増加する。一実施態様では、治療剤の投与後の対象におけるADA力価は、治療剤の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20若しくは21日、又は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、12ヶ月若しくはそれ以上でのADA力価である。一実施態様では、治療剤の投与後の対象におけるADA力価は、治療剤の投与後約2ヶ月でのADA力価である。
【0483】
一実施態様では、本質的に、ADAは、治療剤の投与後に対象において、特に、治療剤の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20若しくは21日、又は1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、12ヶ月若しくはそれ以上で検出可能ではない。
【0484】
ADAは、当該技術分野で周知の方法によって検出することができる(例えば、Mire-Sluis et al., J Immunol Methods (2004) 289, 1-16; Nencini et al., Drug Dev Res (2014), 75 Suppl 1, S4-6; Schouwenburg et al., Nat Rev Rheumatol (2015) 9, 164-172を参照)。ADAを検出するための例示的な方法は、治療剤(例えば、抗体)をアッセイプレートにコーティングし、治療対象の血清に曝露し、ADAの存在を標識された治療剤によって検出するサンドイッチELISAである。ADAを検出するための別の例示的な方法は、治療対象の血清由来の免疫グロブリンがタンパク質(例えば、プロテインAセファロース)上に凝集し、ADAの存在が標識された治療剤によって検出される抗原結合試験である。
【0485】
ADAは、例えば、対象から採取した血液試料中に検出することができる。一実施態様では、対象におけるADA力価(例えば、対象から採取された血液試料中で測定される)は、治療剤の投与後、特に、治療剤の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20若しくは21日、又は1ヶ月、2か月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、若しくはそれ以上で、約10、約20、約30、約40、約50、約100、約200、又は約500、又は約1000の力価(すなわち、アッセイカット点を上回るアッセイシグナルを与える試料の可能な限り高い希釈)を超えない。
【0486】
幾つかの実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の有効性を増加させる。幾つかの実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象の全生存を増加させる。幾つかの実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象の無増悪生存を増加させる。
【0487】
一実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の投与に関連した、対象におけるサイトカイン放出を効果的に減少させる。一実施態様では、サイトカイン放出は、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、少なくとも2分の1、少なくとも3分の1、少なくとも4分の1、少なくとも5分の1、少なくとも10分の1、少なくとも20分の1、少なくとも50分の1、又は少なくとも100分の1に減少する。一実施態様では、サイトカイン放出は本質的に防止される。一実施態様では、サイトカイン放出の減少又は防止は、治療剤の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24時間である。一実施態様では、サイトカイン放出の減少又は防止は、治療剤の投与後、最初の24時間以内である。
【0488】
一実施態様では、治療剤の投与後の対象におけるサイトカイン濃度(例えば、対象から採取された血液試料中で測定される)は、治療剤の投与前の対象におけるサイトカイン濃度を超えない。一実施態様では、治療剤の投与後の対象におけるサイトカイン濃度は、治療剤の投与前の対象におけるサイトカイン濃度を1.1倍超、1.2倍超、1.5倍超、2倍超、3倍超、4倍超、5倍超、10倍超、20倍超、50倍超、又は100倍超、超えない。一実施態様では、治療剤の投与後の対象におけるサイトカイン濃度は、治療剤の投与前の対象におけるサイトカイン濃度と比較して、1.1倍未満、1.2倍未満、1.5倍未満、2倍未満、3倍未満、4倍未満、5倍未満、10倍未満、20倍未満、50倍未満、又は100倍未満で増加する。一実施態様では、治療剤の投与後の対象におけるサイトカイン濃度は、治療剤の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24時間でのサイトカイン濃度である。一実施態様では、治療剤の投与後の対象におけるサイトカイン濃度は、治療剤の投与後約24時間以内のサイトカイン濃度である。
【0489】
一実施態様では、本質的に、サイトカインの濃度の増加は、治療剤の投与後の対象において、特に、治療剤の投与後、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23又は24時間で検出可能ではない。
【0490】
サイトカインは、当該技術分野で周知の方法、例えば、ELISA、FACS又はLuminex(登録商標)アッセイによって検出することができる。
【0491】
サイトカインは、例えば、対象から採取した血液試料中に検出することができる。一実施態様では、サイトカイン濃度は対象の血液である。
【0492】
幾つかの実施態様では、サイトカインは、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターフェロンγ(IFN-γ)、インターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-10(IL-10)、インターロイキン-2(IL-2)及びインターロイキン-8(IL-8)からなる群、特にTNF-α、IFN-γ及びIL-6からなる群から選択される1つ又は複数のサイトカインである。幾つかの実施態様では、サイトカインはTNF-αである。幾つかの実施態様では、サイトカインはTNF-γである。幾つかの実施態様では、サイトカインはIL-6である。幾つかの実施態様では、サイトカインはIL-10である。幾つかの実施態様では、サイトカインはIL-2である。幾つかの実施態様では、サイトカインはIL-8である。
【0493】
幾つかの実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の安全性を増加させる。幾つかの実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における有害事象を減少させる。幾つかの実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の血清半減期を増加させる。幾つかの実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の毒性を低減させる。
【0494】
本発明によれば、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である。
【0495】
一実施態様では、期間は、3日間~21日間、5日間~20日間、7日間~21日間、7日間~14日間、5日間~15日間、7日間~15日間、8日間~15日間、10日間~20日間、10日間~15日間、11日間~14日間、又は12日間~13日間である。一実施態様では、期間は7日間~14日間である。特定の実施態様では、期間は10日間~15日間である。一実施態様では、期間は8日間~15日間である。一実施態様では、期間は5日間~10日間である。特定の実施態様では、期間は7日間である。
【0496】
一実施態様では、期間は、約3日間、約4日間、約5日間、約6日間、約7日間、約8日間、約9日間、約10日間、約11日間、約12日間、約13日間、約14日間、約15日間、約16日間、約17日間、約18日間、約19日間、約20日間、約21日間、約22日間、約23日間、約24日間、約25日間、約26日間、約27日間、約28日間、約29日間、又は約30日間である。
【0497】
一実施態様では、期間は、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、又は少なくとも15日間である。特定の実施態様では、期間は少なくとも5日間である。更なる特定の実施態様では、期間は少なくとも7日間である。
【0498】
一実施態様では、期間は、II型抗CD20抗体の最後の投与と治療剤の(複数回の場合には最初の)投与との間である。一実施態様では、その期間中には治療剤の投与は行われない。
【0499】
特定の実施態様では、B細胞の数の減少は、対象の血液中においてである。一実施態様では、B細胞は末梢血B細胞である。一実施態様では、B細胞は正常B細胞である。一実施態様では、B細胞は悪性及び正常B細胞である。一実施態様では、B細胞は悪性B細胞である。
【0500】
幾つかの実施態様では、B細胞の減少は、対象の組織中においてである。一実施態様では、組織は腫瘍である。一実施態様では、組織はリンパ節である。一実施態様では、組織は脾臓である。一実施態様では、組織は脾臓の辺縁帯である。一実施態様では、B細胞はリンパ節B細胞である。一実施態様では、B細胞は脾臓B細胞である。一実施態様では、B細胞は脾臓の辺縁帯B細胞である。一実施態様では、B細胞は、CD20陽性B細胞、すなわち、その表面上にCD20を発現するB細胞である。
【0501】
一実施態様では、B細胞の数の減少は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%の減少である。一実施態様では、B細胞の数の減少は、B細胞の完全な消失である。特定の実施態様では、B細胞の数の減少は、対象の(末梢)血液中のB細胞の数の少なくとも90%、特に少なくとも95%の減少である。一実施態様では、B細胞の数の減少は、対象へのII型抗CD20抗体の(複数回の場合には最初の)投与前の対象におけるB細胞の数と比較した減少である。
【0502】
対象におけるB細胞の数は、患者の血液又は組織中のB細胞を定量するのに適した当該技術分野で周知の任意の方法、例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学的方法又は免疫蛍光法により、CD20、CD19、及び/又はPAX5などのB細胞マーカーに対する抗体を使用して決定することができる。
【0503】
B細胞の数はまた、患者の血液又は組織中のB細胞マーカーのタンパク質又はmRNAレベルの定量によって間接的に決定されてもよい。特異的タンパク質レベルの決定のための当該技術分野で周知の適切な方法には、イムノアッセイ法、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、又はウエスタンブロットを含み、mRNAレベルの決定方法は、例えば、定量的RT-PCR又はマイクロアレイ技術を含む。
上述した方法及び技術は全て当該技術分野で周知であり、例えば以下のような標準的な教科書から導き出すことができる。 Lottspeich (Bioanalytik, Spektrum Akademisher Verlag, 1998)又はSambrook and Russell (Molecular Cloning: A Laboratory Manual, CSH Press, Cold Spring Harbor, NY, U.S.A., 2001)。
【0504】
特定の実施態様では、B細胞の数の減少は、対象の血液中の(例えば、対象から採取された血液試料中の)B細胞の定量化によって決定される。そのような一実施態様では、B細胞はフローサイトメトリー分析によって定量化される。フローサイトメトリー法(FACS)は、血液又は組織試料中の細胞の定量のために当該技術分野において周知である。特に、それらは、血液又は組織試料(例えば、血液試料又は組織生検(の一部)中の規定された総数の細胞のうち、特定の抗原(例えば、CD20及び/又はCD19)を発現する細胞の数を決定することを可能とする。一実施態様では、B細胞は、抗CD19抗体及び/又は抗CD20抗体を用いたフローサイトメトリー分析によって定量化される。
【0505】
他の実施態様では、B細胞の数の減少は、前記個体の組織、例えば腫瘍における(例えば、対象から採取された組織生検中の)B細胞の定量化によって決定される。そのような一実施態様では、B細胞は、免疫組織化学又は免疫蛍光分析によって定量化される。一実施態様では、B細胞は、抗CD19抗体、抗CD20抗体及び/又は抗PAX5抗体を用いた免疫組織化学分析によって定量化される。
【0506】
本発明の方法は、使用される治療剤に依存して、様々な疾患の治療に適用することができる。
【0507】
特定の実施態様では、治療される疾患は増殖性障害、具体的にはがんである。がんの非限定的な例には、前立腺がん、脳のがん、頭部及び頸部のがん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頚がん、子宮内膜がん、食道がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、胃がん、前立腺がん、血液がん、皮膚がん、扁平上皮癌、骨のがん、及び腎臓がんが含まれる。本発明の方法を用いて治療することができる他の細胞増殖性障害には、限定されないが、腹部、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭部及び頸部、神経系(中枢及び末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部、及び泌尿生殖器系に位置する腫瘍が含まれる。前がん性の状態又は病変及びがん転移も含まれる。特定の実施態様では、がんは、腎細胞がん、皮膚がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、脳のがん、頭部及び頸部のがんからなる群より選択される。幾つかの実施態様では、がんは固形腫瘍である。幾つかの実施態様では、がんは治療剤、例えば抗体の標的を発現する。一実施態様では、がんはCEAを発現する。別の実施態様では、がんはFAPを発現する。
【0508】
幾つかの実施態様では、治療される疾患は炎症性疾患である。幾つかの実施態様では、治療される疾患は、自己免疫疾患(すなわち、個体自身の組織から生じるものであって、その組織に対する非悪性疾患又は障害)である。自己免疫疾患又は障害の例には、限定されるものではないが、炎症性応答、例えば、乾癬及び皮膚炎(例えば、アトピー性皮膚炎)を含む炎症性皮膚疾患;炎症性腸疾患(クローン病及び潰瘍性大腸炎など)に関連する応答;皮膚炎;湿疹及び喘息などのアレルギー状態;関節リウマチ;全身性エリテマトーデス(SLE)(ループス腎炎、皮膚エリテマトーデスが挙げられるが、これらに限定されない);真性糖尿病(例えば、1型真性糖尿病又はインスリン依存性真性糖尿病);多発性硬化症及び若年発症糖尿病が挙げられる。一実施態様では、疾患は、移植拒絶反応又は移植片対宿主病である。
【0509】
幾つかの実施態様では、治療される疾患は、ウイルス感染又は細菌感染などの感染症である。他の実施態様では、治療される疾患は神経障害である。更に別の実施態様では、治療される疾患は代謝障害である。
【0510】
対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出の減少に関与する本発明の関連態様において、本方法は、B細胞増殖性障害、具体的には(CD20陽性)B細胞が大量に存在する(すなわち、健常対象と比較して、障害に罹患している対象においてB細胞の数が増加している)CD20陽性B細胞障害の治療において特に有用である。
【0511】
従って、一実施態様では、疾患はB細胞増殖性障害、具体的にはCD20陽性B細胞障害である。
【0512】
一実施態様では、疾患は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)又はホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選択される。一実施態様では、疾患は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、及び辺縁帯リンパ腫(MZL)からなる群から選択される。
【0513】
特定の実施態様では、疾患はNHL、具体的には再発性/難治性(r/r)NHLである。一実施態様では、疾患はDLBCLである。一実施態様では、疾患はFLである。一実施態様では、疾患はMCLである。一実施態様では、疾患はMZLである。
【0514】
当業者は、多くの場合治療剤は治癒をもたらさず、部分的恩恵を提供するだけであることを容易に認識する。幾つかの実施態様では、何らかの利益を有する生理学的変化も、治療的に有益であると考えられる。従って、幾つかの実施態様では、生理学的変化をもたらす治療剤の量は、「有効量」又は「治療的有効量」と考えられる。
【0515】
治療を必要とする対象、患者、又は個体は、典型的には哺乳動物であり、より具体的にはヒトである。特定の実施態様では、対象はヒトである。
【0516】
幾つかの実施態様では、特に、対象における治療薬に対する抗薬物抗体(ADA)の形成の減少に関連する本発明の関連態様において、対象は、局所進行性及び/又は転移性固形腫瘍に罹患しており、ケア療法の標準を進めているか、又はそれに不耐容である。一実施態様では、腫瘍はCEA発現腫瘍である。一実施態様では、腫瘍はFAP発現腫瘍である。腫瘍におけるCEA及び/又はFAPの発現は、例えば、対象から採取した腫瘍生検の免疫組織化学的分析によって決定することができる。
【0517】
他の実施態様では、特に、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出の減少に関与する本発明の関連態様において、対象は、B細胞増殖性障害、具体的には、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)又はホジキンリンパ腫(HL)に罹患している。一実施態様では、対象は再発性/難治性(r/r)NHLに罹患している。
【0518】
II型抗CD20抗体の投与
本発明によれば、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間、及びII型抗CD20抗体の用量は、治療剤の投与前に対象におけるB細胞の数を効果的に減少させるように選択される。
【0519】
II型抗CD20抗体は、非経口、肺内、及び鼻腔内、並びに局所治療が所望される場合は、病巣内投与を含む、任意の適切な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が含まれる。投薬は、その投与が短期間か又は長期であるかどうかに部分的に依存して、任意の適切な経路、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射により行うことができる。限定されないが、単回又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含む様々な投与スケジュールが本明細書において考慮される。一実施態様では、II型抗CD20抗体は、非経口的に、特に静脈内に、例えば静脈内注入により投与される。
【0520】
II型抗CD20抗体は、良好な医療行為に合致した様式で処方され、用量決定され、投与されるであろう。これに関連して考慮すべき因子としては、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール及び医師にとって既知の他の因子が挙げられる。
【0521】
一実施態様では、II型抗CD20抗体の投与は単回投与である。別の実施態様では、II型抗CD20抗体の投与は2回以上の別々の投与である。一実施態様では、2回以上の別々の投与は2日以上の連続した日に行われる。一実施態様では、治療剤の投与前又は投与後に、対象に対してII型抗CD20抗体の更なる投与は行われない。一実施態様では、II型抗CD20抗体の投与は、単回投与又は2日間連続の2回投与であり、更なるII型抗CD20抗体の投与は行われない。一実施態様では、期間は、II型抗CD20抗体の最後の投与と治療剤の(複数回の場合には最初の)投与との間である。
【0522】
一実施態様では、II型抗CD20抗体の投与は、対象におけるB細胞の減少に有効なII型抗CD20抗体の用量である。一実施態様では、II型抗CD20抗体の用量は、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間内で、対象においてB細胞の数を減少させるのに有効である。一実施態様では、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間、及びII型抗CD20抗体の投与量は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である。
【0523】
一実施態様では、II型抗CD20抗体の投与は、II型抗CD20抗体の約2gの用量である。約2gのII型抗CD20抗体の用量は、約2gの単回投与として、又は数回の投与として、例えば1回につき約1gの2回の投与、又は例えば100mg、900mg、及び1000mgの3回の投与として対象に投与され得る。一実施態様では、約2gのII型抗CD20抗体の1回の投与が対象に行われる。別の実施態様では、約1gのII型抗CD20抗体の2回の投与が、2日間連続して対象に行われる。更に別の実施態様では、(i)約100mgのII型抗CD20抗体、(ii)約900mgのII型抗CD20抗体、及び(iii)約1000mgのII型抗CD20抗体の3回の投与((i)~(iii))が、3日間連続して対象に行われる。一実施態様では、約1gのII型抗CD20抗体の2回の投与が、治療剤の投与の10日前から15日前に2日間連続して対象に行われる。一実施態様では、約2gのII型抗CD20抗体の1回の投与が、治療剤の投与の10日前から15日前に対象に行われる。一実施態様では、II型抗CD20抗体の更なる投与は対象に行われない。一実施態様では、II型抗CD20抗体の投与前に(少なくとも同じ治療過程内ではない)、治療剤の投与は対象に行われない。
【0524】
一実施態様では、II型抗CD20抗体の投与は、II型抗CD20抗体の約1000mgの用量である。約1000mgのII型抗CD20抗体の用量は、約1000mgの単回投与として、又は数回の投与、例えば各々約500mgの2回の投与として対象に投与され得る。特定の実施態様では、約1000mgのII型抗CD20抗体の1回の投与が対象に行われる。別の実施態様では、約500mgのII型抗CD20抗体の2回の投与が、2日間連続して対象に行われる。一実施態様では、約1000mgのII型抗CD20抗体の1回の投与が、治療剤の投与の7日前に対象に行われる。一実施態様では、II型抗CD20抗体の更なる投与は対象に行われない。一実施態様では、II型抗CD20抗体の投与前に(少なくとも同じ治療過程内ではない)、治療剤の投与は対象に行われない。
【0525】
一実施態様では、治療レジメンは、II型抗CD20抗体の投与前に前投薬の投与を更に含む。一実施態様では、前投薬は、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン、デキサメタゾン、又はメチルプレドニゾロンなど)、パラセタモール/アセトアミノフェン、及び/又は抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン)を含む。一実施態様では、前投薬は、II型抗CD20抗体の投与の少なくとも60分前に投与される。
【0526】
一実施態様では、治療レジメンは、治療剤の投与前にII型抗CD20抗体以外の免疫抑制剤(及び任意選択的に上記の前投薬)の投与を含まない。一実施態様では、治療レジメンは、治療剤の投与前に、メトトレキセート、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、レフルノミド、シクロスポリン、タクロリムス/FK506、ミコフェノール酸モフェチル及びミコフェノール酸ナトリウムの群から選択される薬剤の投与を含まない。一実施態様では、治療レジメンは、治療剤の投与前に、II型抗CD20抗体に加えて更なる抗体の投与を含まない。
【0527】
治療剤の投与
治療剤は、非経口、肺内、及び鼻腔内、並びに局所治療が所望される場合は、病巣内投与を含む、任意の適切な手段によって投与することができる。しかしながら、本発明の方法は、非経口、特に静脈内注入によって投与される治療剤に関して特に有用である。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が含まれる。投薬は、その投与が短期間か又は長期であるかどうかに部分的に依存して、任意の適切な経路、例えば、静脈内又は皮下注射などの注射により行うことができる。限定されないが、単回又は様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含む様々な投与スケジュールが本明細書において考慮される。一実施態様では、治療剤は、非経口的に、特に静脈内に投与される。特定の実施態様では、治療剤は静脈内注入によって投与される。
【0528】
治療剤は、良好な医療行為に合致した様式で処方され、用量決定され、投与されるであろう。これに関連して考慮すべき因子としては、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール及び医師にとって既知の他の因子が挙げられる。治療剤は、必要ではないが場合によっては、問題の障害を予防又は治療するために現在使用されている1つ又は複数の薬剤と共に処方される。そのような他の薬剤の有効量は製剤中に存在する治療剤の量、疾患又は治療の種類、及び上で検討された他の要因に依存する。これらは、ここに記載されたものと同じ投薬量及び投与経路で、又はここに記載された投薬量の約1%から99%で、又は経験的に/臨床的に妥当であると決定された任意の投薬量及び任意の経路により、一般に使用される。
【0529】
疾患の予防又は治療について、治療剤の適切な投与量(単独で、又は1つ以上の他の追加の治療剤と組み合わせて使用される場合)は、治療される疾患の種類、治療剤の種類、疾患の重症度及び経過、治療剤が予防目的又は治療目的のために投与されるか、以前の治療、患者の臨床歴及び治療剤への応答、及び主治医の裁量に依存するであろう。治療剤は、単回、又は一連の治療にわたって患者に適切に投与される。疾患の種類及び重症度に応じて、例えば一回以上の別個の投与によるか、連続注入によるかに関わらず、約1μg/kg~15mg/kg(例えば0.1mg/kg~10mg/kg)の治療剤が対象への投与のための初期候補投与量となり得る。一つの典型的な一日の投与量は、上記の要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であろう。数日間以上にわたる反復投与の場合には、状態に応じて、治療は疾患症状の望まれる抑制が起こるまで一般に持続されるであろう。治療剤の一つの例示的な投与量は、約0.05mg/kg~約10mg/kgの範囲であろう。従って、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kgのうちの1つ又は複数の用量(又はこれらの何れかの組み合わせ)を対象に投与してよい。このような用量は、断続的に、例えば毎週、2週間に1回、又は3週間に1回(例えば、対象が治療剤の約2から約20用量、又は例えば約6用量を受けるように)投与され得る。初回のより高い負荷用量に続いて1つ又は複数のより低い用量を、又は初回のより低い用量に続いて1つ又は複数のより高い用量を投与することができる。例示的な投薬レジメンは、約10mgの初期用量を投与し、続いて約20mgの治療剤を隔週投与することを含む。しかしながら、他の投薬レジメンも有用であり得る。この治療法の進行は、従来の技術及びアッセイにより容易に監視される。
【0530】
一実施態様では、治療剤の投与は単回投与である。特定の実施態様では、治療剤の投与は2回以上の投与である。1つのこのような実施態様では、治療剤は、毎週、2週間に1回、又は3週間に1回、特に2週間に1回投与される。一実施態様では、治療剤は治療的有効量で投与される。一実施態様では、治療剤は、10mg~20mgの用量で投与される。一実施態様では、治療剤の投与は、約10mgの治療剤の用量の初回投与と、約20mgの治療剤の用量の1回以上のその後の投与とを含む。一実施態様では、治療剤は、約50μg/kg、約100μg/kg、約200μg/kg、約300μg/kg、約400μg/kg、約500μg/kg、約600μg/kg、約700μg/kg、約800μg/kg、約900μg/kg又は約1000μg/kgの用量で投与される。一実施態様では、治療剤は、II型抗CD20抗体の投与なしに、対応する治療レジメンにおける治療剤の用量より高い用量で投与される。一実施態様では、治療剤の投与は、治療剤の第1の用量の初回投与、及び治療剤の第2の用量の1回以上のその後の投与を含み、ここで第2の用量は第1の用量よりも多い。一実施態様では、治療剤の投与は、治療剤の第1の用量の初回投与、及び治療剤の第2の用量の1回以上のその後の投与を含み、ここで第1の用量は第2の用量よりも少なくない。
【0531】
一実施態様では、本発明による治療レジメンにおける治療剤の投与は、その治療剤の対象への第1の投与である(少なくとも同じ治療過程内において)。一実施態様では、II型抗CD20抗体の投与前に、治療剤の投与は対象に行われない。
【0532】
本発明において、治療剤は、単独で又は他の薬剤と組み合わせて治療において使用することができる。例えば、治療剤は、少なくとも1つの追加の治療剤と同時投与されてもよい。特定の実施態様では、追加の治療剤は免疫療法剤である。幾つかの実施態様では、追加の治療剤は、治療剤に関して本明細書に記載される薬剤を含む。本発明は、II型抗CD20抗体の投与を伴わない治療レジメンで使用される場合、対象におけるADAの形成又はサイトカイン放出を誘導し得る幾つかの治療剤の組み合わせに関して特に有用である。このような組み合わせには、本明細書に記載されるような様々な治療剤が含まれてもよく、特に、例えばがんの治療(がん免疫療法)のための1つ又は複数の免疫療法剤を含み得る。
【0533】
上記のこうした併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が、同一又は別々の製剤に含まれている)、及び治療剤の投与が、追加の治療剤及び/又は薬剤の投与の前、投与と同時、及び/又は投与の後に起き得る分離投与を包含する。一実施態様では、治療剤の投与及び追加の治療剤の投与は、お互いの約1ヶ月以内に、又は約1、2又は3週間以内に、又は約1,2,3,4,5又は6日以内に起こる。
【0534】
製造品
本発明の別の態様において、疾患の治療、予防及び/又は診断のために、又は抗薬物抗体(ADA)の形成の減少及び/又は本明細書に記載のサイトカイン放出の減少のために有用な物質を含むキットが提供される。製造品は、容器、及び容器上の又は容器に付随するラベル又は添付文書を含む。好適な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ、IV輸液バッグなどを含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、症状の治療、予防、及び/又は診断に有効な、単独の又はその他の組成物と併用される化合物を収容し、又はADAの形成及び/又はサイトカイン放出を減少させることに有効な組成物を収容し、かつ、無菌のアクセスポートを有することができる(例えば、容器は皮下注射針により穿孔可能なストッパーを有する静脈内溶液のバッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、本明細書に記載のII型抗CD20抗体又は治療剤である。ラベル又は添付文書は、組成物が、選択症状の治療のため、かつ/又はADAの形成及び/若しくはサイトカイン放出を減少させるために使用されることを示す。更に、製造品は、(a)本明細書に記載のII型抗CD20抗体を含む組成物を中に収容する第一の容器;及び(b)本明細書に記載の治療剤を含む組成物を中に収容する第二の容器を含み得る。本発明の本実施態様における製造品は、組成物が特定の症状を治療するため、かつ/又はADAの形成及び/若しくはサイトカイン放出を減少させるために使用され得ることを示す添付文書を更に含んでもよい。代替的に又は追加的に、製造品は、薬学的に許容される緩衝液、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、及びデキストロース溶液を含む第二(又は第三)の容器を更に含んでもよい。製造品は、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及びシリンジを含めた、商業的及び使用者の観点から望ましいその他の材料を更に含んでもよい。
【0535】
実施態様
以下において、本発明の幾つかの実施態様が列挙される:
1. 対象において疾患を治療する方法であって、該方法が
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
方法。
2. 治療レジメンが、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の投与に応答した、対象における抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる、実施態様1に記載の方法。
3. 治療剤の投与前に、対象へのII型抗CD20抗体の投与を含む、対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を減少させる方法。
4. II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間が、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である、実施態様3に記載の方法。
5. II型抗CD20抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様1から4の何れか一に記載の方法。
6. II型抗CD20抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様1から5の何れか一に記載の方法。
7. II型抗CD20抗体が、IgG抗体、具体的にはIgG抗体である、実施態様1から6の何れか一に記載の方法。
8. II型抗CD20抗体が、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される、実施態様1から7の何れか一に記載の方法。
9. II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%が非フコシル化されている、実施態様1から8の何れか一に記載の方法。
10. II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、実施態様1から9の何れか一に記載の方法。
11. 治療剤がポリペプチドを含む、実施態様1から10の何れか一に記載の方法。
12. 治療剤が抗体を含む、実施態様1から11の何れか一に記載の方法。
13. 治療剤に含まれる抗体が、がん胎児性抗原(CEA)に特異的に結合する、実施態様12に記載の方法。
14. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号14の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号15のHCDR2、及び配列番号16のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号17の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号18のLCDR2、及び配列番号19のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様13に記載の方法。
15. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号20の重鎖可変領域配列及び配列番号21の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様13又は14に記載の方法。
16. 治療剤に含まれる抗体が、CD3、具体的にはCD3εに特異的に結合する、実施態様12に記載の方法。
17. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様16に記載の方法。
18. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様16又は17に記載の方法。
19. 治療剤がサイトカインを含む、実施態様1から18の何れか一に記載の方法。
20. サイトカインがインターロイキン-2(IL-2)である、実施態様項19に記載の方法。
21. サイトカインが、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G(配列番号12のヒトIL-2配列に対する番号付け)を含む変異体ヒトIL-2ポリペプチドである、実施態様19又は20に記載の方法。
22. 治療剤がイムノコンジュゲートを含む、請求項1から21の何れか一に記載の方法。
23. イムノコンジュゲートが、実施態様13から15の何れか一に記載の抗体、及び実施態様20又は21に記載のサイトカインを含む、実施態様22に記載の方法。
24. 治療剤が、セルグツズマブアムナロイキン(CEA-IL2v)を含む、実施態様1から23の何れか一に記載の方法。
25. 治療剤が、実施態様13から15の何れか一に記載の抗体、及び実施態様16から18の何れか一に記載の抗体を含む二重特異性抗体を含む、実施態様1から18の何れか一に記載の方法。
26. 対象における疾患を治療する方法における使用のためのII型抗CD20抗体であって、該方法が
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
II型抗CD20抗体。
27. 治療レジメンが、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の投与に応答した、対象における抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる、実施態様26に記載のII型抗CD20抗体。
28. 治療剤の投与前に対象へのII型抗CD20抗体の投与を含む、対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を減少させる方法における使用のためのII型抗CD20抗体。
29. II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間が、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である、実施態様28に記載のII型抗CD20抗体。
30. II型抗CD20抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様26から29の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
31. II型抗CD20抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様26から30の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
32. II型抗CD20抗体が、IgG抗体、具体的にはIgG抗体である、実施態様26から31の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
33. II型抗CD20抗体が、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される、実施態様26から32の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
34. 抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%が非フコシル化されている、実施態様26から33の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
35. II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、実施態様26から34の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
36. 治療剤がポリペプチドを含む、実施態様26から35の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
37. 治療剤が抗体を含む、実施態様26から36の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
38. 治療剤に含まれる抗体が、がん胎児性抗原(CEA)に特異的に結合する、実施態様37に記載のII型抗CD20抗体。
39. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号14の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号15のHCDR2、及び配列番号16のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号17の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号18のLCDR2、及び配列番号19のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様38に記載のII型抗CD20抗体。
40. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号20の重鎖可変領域配列及び配列番号21の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様38又は39に記載のII型抗CD20抗体。
41. 治療剤に含まれる抗体が、CD3、具体的にはCD3εに特異的に結合する、実施態様37に記載のII型抗CD20抗体。
42. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様41に記載のII型抗CD20抗体。
43. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様41又は42に記載のII型抗CD20抗体。
44. 治療剤がサイトカインを含む、実施態様26から43の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
45. サイトカインがインターロイキン-2(IL-2)である、実施態様項44に記載のII型抗CD20抗体。
46. サイトカインが、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G(配列番号12のヒトIL-2配列に対する番号付け)を含む変異体ヒトIL-2ポリペプチドである、実施態様44又は45に記載のII型抗CD20抗体。
47. 治療剤がイムノコンジュゲートを含む、実施態様26から46の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
48. イムノコンジュゲートが、実施態様38から40の何れか一に記載の抗体、及び実施態様45又は46に記載のサイトカインを含む、実施態様47に記載のII型抗CD20抗体。
49. 治療剤が、セルグツズマブアムナロイキン(CEA-IL2v)を含む、実施態様26から48の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
50. 治療剤が、実施態様38から40の何れか一に記載の抗体、及び実施態様41から43の何れか一に記載の抗体を含む二重特異性抗体を含む、実施態様1から43の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
51. 対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を減少させるための医薬の製造におけるII型抗CD20抗体の使用であって、
ここで、医薬は、
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンにおいて使用されるべきであり、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
II型抗CD20抗体の使用。
52. 対象における疾患の治療のための医薬の製造における治療剤の使用であって、
ここで、治療は、
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
II型抗CD20抗体の使用。
53. 治療レジメンが、II型抗CD20抗体組成物の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる、実施態様51又は52の使用。
54. II型抗CD20抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様51から53の何れか一に記載の使用。
55. II型抗CD20抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様51から54の何れか一に記載の使用。
56. II型抗CD20抗体が、IgG抗体、具体的にはIgG抗体である、実施態様51から55の何れか一に記載の使用。
57. II型抗CD20抗体が、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される、実施態様51から56の何れか一に記載の使用。
58. II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%が非フコシル化されている、実施態様51から57の何れか一に記載の使用。
59. II型抗CD20抗体が、オビヌツズマブである、実施態様51から58の何れか一に記載の使用。
60. 治療剤がポリペプチドを含む、実施態様51から59の何れか一に記載の使用。
61. 治療剤が抗体を含む、実施態様51から60の何れか一に記載の使用。
62. 治療剤に含まれる抗体が、がん胎児性抗原(CEA)に特異的に結合する、実施態様61に記載の使用。
63. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号14の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号15のHCDR2、及び配列番号16のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号17の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号18のLCDR2、及び配列番号19のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様62に記載の使用。
64. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号20の重鎖可変領域配列及び配列番号21の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様62又は63に記載の使用。
65. 治療剤に含まれる抗体が、CD3、具体的にはCD3εに特異的に結合する、実施態様61に記載の使用。
66. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様65に記載の使用。
67. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様65又は66に記載の使用。
68. 治療剤がサイトカインを含む、実施態様51から67の何れか一に記載の使用。
69. サイトカインがインターロイキン-2(IL-2)である、実施態様項68に記載の使用。
70. サイトカインが、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G(配列番号12のヒトIL-2配列に対する番号付け)を含む変異体ヒトIL-2ポリペプチドである、実施態様68又は69に記載の使用。
71. 治療剤がイムノコンジュゲートを含む、実施態様51から70の何れか一に記載の使用。
72. イムノコンジュゲートが、実施態様62から64の何れか一に記載の抗体、及び実施態様69又は70に記載のサイトカインを含む、実施態様71に記載の使用。
73. 治療剤が、セルグツズマブアムナロイキン(CEA-IL2v)を含む、実施態様51から72の何れか一に記載の使用。
74. 治療剤が、実施態様62から64の何れか一に記載の抗体、及び実施態様65から67の何れか一に記載の抗体を含む二重特異性抗体を含む、実施態様51から67の何れか一に記載の使用。
75. 対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を減少させるためのキットであって、該キットはII型抗CD20抗体組成物と、治療レジメンにおいてII型抗CD20抗体組成物を使用するための説明書とを含むパッケージを含み、該治療レジメンは、
(i)II型抗CD20抗体組成物の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
キット。
76. 治療剤組成物を更に含む、実施態様75に記載のキット。
77. 治療剤組成物と、治療レジメンにおいて治療剤組成物を使用するための説明書とを含むパッケージを含む、対象における疾患の治療のためのキットであって、該治療レジメンは、
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤組成物の対象への投与
を含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤組成物の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である、キット。
78. II型抗CD20抗体組成物を更に含む、実施態様77に記載のキット。
79. 治療レジメンが、II型抗CD20抗体組成物の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤に対する抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる、実施態様75から78の何れか一に記載のキット。
80. II型抗CD20抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様75から79の何れか一に記載のキット。
81. II型抗CD20抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様75から80の何れか一に記載のキット。
82. II型抗CD20抗体が、IgG抗体、具体的にはIgG抗体である、実施態様75から81の何れか一に記載のキット。
83. II型抗CD20抗体が、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される、実施態様75から82の何れか一に記載のキット。
84. II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%が非フコシル化されている、実施態様75から83の何れか一に記載のキット。
85. II型抗CD20抗体が、オビヌツズマブである、実施態様75から84の何れか一に記載のキット。
86. 治療剤がポリペプチドを含む、実施態様75から85の何れか一に記載のキット。
87. 治療剤が抗体を含む、実施態様75から86の何れか一に記載のキット。
88. 治療剤に含まれる抗体が、がん胎児性抗原(CEA)に特異的に結合する、実施態様87に記載のキット。
89. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号14の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号15のHCDR2、及び配列番号16のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号17の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号18のLCDR2、及び配列番号19のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様88に記載のキット。
90. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号20の重鎖可変領域配列及び配列番号21の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様88又は89に記載のキット。
91. 治療剤に含まれる抗体が、CD3、具体的にはCD3εに特異的に結合する、実施態様87に記載のキット。
92. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様91に記載のキット。
93. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様91又は92に記載のキット。
94. 治療剤がサイトカインを含む、実施態様75から93の何れか一に記載のキット。
95. サイトカインがインターロイキン-2(IL-2)である、実施態様項94に記載のキット。
96. サイトカインが、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G(配列番号12のヒトIL-2配列に対する番号付け)を含む変異体ヒトIL-2ポリペプチドである、実施態様94又は95に記載のキット。
97. 治療剤がイムノコンジュゲートを含む、実施態様75から96の何れか一に記載のキット。
98. イムノコンジュゲートが、実施態様88から90の何れか一に記載の抗体、及び実施態様95又は96に記載のサイトカインを含む、実施態様97に記載のキット。
99. 治療剤が、セルグツズマブアムナロイキン(CEA-IL2v)を含む、実施態様75から98の何れか一に記載のキット。
100. 治療剤が、実施態様88から90の何れか一に記載の抗体、及び実施態様91から93の何れか一に記載の抗体を含む二重特異性抗体を含む、実施態様75から93の何れか一に記載のキット。
101. 対象における疾患を治療する方法における使用のための治療剤であって、該方法が
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
治療剤。
102. 治療レジメンが、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の投与に応答した、対象における抗薬物抗体(ADA)の形成を効果的に減少させる、実施態様101に記載の治療剤。
103. II型抗CD20抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様101又は102に記載の治療剤。
104. II型抗CD20抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様101から103の何れか一に記載の治療剤。
105. II型抗CD20抗体が、IgG抗体、具体的にはIgG抗体である、実施態様101から104の何れか一に記載の治療剤。
106. II型抗CD20抗体が、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される、実施態様101から105の何れか一に記載の治療剤。
107. II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%が非フコシル化されている、実施態様101から106の何れか一に記載の治療剤。
108. II型抗CD20抗体が、オビヌツズマブである、実施態様101から107の何れか一に記載の治療剤。
109. 治療剤がポリペプチドを含む、実施態様101から108の何れか一に記載の治療剤。
110. 治療剤が抗体を含む、実施態様101から109の何れか一に記載の治療剤。
111. 治療剤に含まれる抗体が、がん胎児性抗原(CEA)に特異的に結合する、実施態様110に記載の治療剤。
112. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号14の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号15のHCDR2、及び配列番号16のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号17の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号18のLCDR2、及び配列番号19のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様111に記載の治療剤。
113. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号20の重鎖可変領域配列及び配列番号21の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様110又は111に記載の治療剤。
114. 治療剤に含まれる抗体が、CD3、具体的にはCD3εに特異的に結合する、実施態様110に記載の治療剤。
115. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様114に記載の治療剤。
116. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様114又は115に記載の治療剤。
117. 治療剤がサイトカインを含む、実施態様101から116の何れか一に記載の治療剤。
118. サイトカインがインターロイキン-2(IL-2)である、実施態様項117に記載の治療剤。
119. サイトカインが、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G(配列番号12のヒトIL-2配列に対する番号付け)を含む変異体ヒトIL-2ポリペプチドである、実施態様117又は118に記載の治療剤。
120. 治療剤がイムノコンジュゲートを含む、実施態様101から119の何れか一に記載の治療剤。
121. イムノコンジュゲートが、実施態様111から113の何れか一に記載の抗体、及び実施態様118又は119に記載のサイトカインを含む、実施態様120に記載の治療剤。
122. 治療剤が、セルグツズマブアムナロイキン(CEA-IL2v)を含む、実施態様101から121の何れか一に記載の治療剤。
123. 治療剤が、実施態様111から113の何れか一に記載の抗体、及び実施態様114から116の何れか一に記載の抗体を含む二重特異性抗体を含む、実施態様101から119の何れか一に記載の治療剤。
【0536】
以下において、本発明の更なる実施態様が列挙される:
1. 対象における疾患を治療する方法であって、該方法が
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)T細胞活性化治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
方法。
2. 治療レジメンが、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の投与に関連した、対象におけるサイトカイン放出を効果的に減少させる、実施態様1に記載の方法。
3. 治療剤の投与前に対象へのII型抗CD20抗体の投与を含む、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を減少させる方法。
4. II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間が、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である、実施態様3に記載の方法。
5. II型抗CD20抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様1から4の何れか一に記載の方法。
6. II型抗CD20抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様1から5の何れか一に記載の方法。
7. II型抗CD20抗体が、IgG抗体、具体的にはIgG抗体である、実施態様1から6の何れか一に記載の方法。
8. II型抗CD20抗体が、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される、実施態様1から7の何れか一に記載の方法。
9. II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%が非フコシル化されている、実施態様1から8の何れか一に記載の方法。
10. II型抗CD20抗体がオビヌツズマブである、実施態様1から9の何れか一に記載の方法。
11. 治療剤が、抗体、具体的には多重特異性抗体を含む、実施態様1から10の何れか一に記載の方法。
12. 治療剤に含まれる抗体が、活性化T細胞抗原、具体的はCD3、CD28、CD137(4-1BBとしても知られる)、CD40、CD226、OX40、GITR、CD27、HVEM、及びCD127からなる群より選択される抗原、より具体的にはCD3、最も具体的にはCD3εに特異的に結合する、実施態様11に記載の方法。
13. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様11又は12に記載の方法。
14. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様11から13の何れか一に記載の方法。
15. 治療剤に含まれる抗体が、B細胞抗原、具体的はCD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37及びCD5からなる群より選択される抗原、より具体的にはCD20又はCD19、最も具体的にはCD20に特異的に結合する、実施態様11から14の何れか一に記載の方法。
16. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様15に記載の方法。
17. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様15又は16に記載の方法。
18. 治療剤に含まれる抗体が、(i)実施態様12から14の何れか一に記載の抗体、及び(ii)実施態様15から17の何れか一に記載の抗体を含む二重特異性抗体である、実施態様1から17の何れか一に記載の方法。
19. 治療剤がCD20XCD3 bsABを含む、請求項1から18の何れか一に記載の方法。
20. 治療剤が、キメラ抗原受容体(CAR)、具体的にはB細胞抗原に特異的に結合するCAR、より具体的にはCD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37及びCD5の群から選択される抗原に特異的に結合するCARを発現するT細胞を含む、実施態様1から10の何れか一に記載の方法。
21. 疾患が、B細胞増殖性障害、具体的にはCD20陽性B細胞障害であり、かつ/又は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選択される疾患である、実施態様1から20の何れか一に記載の方法。
22. 対象における疾患を治療する方法における使用のためのII型抗CD20抗体であって、該方法が
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)T細胞活性化治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
II型抗CD20抗体。
23. 治療レジメンが、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の投与に関連した、対象におけるサイトカイン放出を効果的に減少させる、実施態様22に記載のII型抗CD20抗体。
24. 治療剤の投与前に対象へのII型抗CD20抗体の投与を含む、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を減少させる方法における使用のためのII型抗CD20抗体。
25. II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間が、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である、実施態様24に記載のII型抗CD20抗体。
26. II型抗CD20抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様22から25の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
27. II型抗CD20抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様22から26の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
28. II型抗CD20抗体が、IgG抗体、具体的にはIgG抗体である、実施態様22から27の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
29. II型抗CD20抗体が、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される、実施態様22から28の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
30. II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%が非フコシル化されている、実施態様22から29の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
31. II型抗CD20抗体が、オビヌツズマブである、実施態様22から30の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
32. 治療剤が、抗体、具体的には多重特異性抗体を含む、実施態様22から31の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
33. 治療剤に含まれる抗体が、活性化T細胞抗原、具体的はCD3、CD28、CD137(4-1BBとしても知られる)、CD40、CD226、OX40、GITR、CD27、HVEM、及びCD127からなる群より選択される抗原、より具体的にはCD3、最も具体的にはCD3εに特異的に結合する、実施態様32に記載のII型抗CD20抗体。
34. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様32又は33に記載のII型抗CD20抗体。
35. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様32から34の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
36. 治療剤に含まれる抗体が、B細胞抗原、具体的はCD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37及びCD5からなる群より選択される抗原、より具体的にはCD20又はCD19、最も具体的にはCD20に特異的に結合する、実施態様32から35の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
37. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様36に記載のII型抗CD20抗体。
38. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様36又は37に記載のII型抗CD20抗体。
39. 治療剤に含まれる抗体が、(i)実施態様33から35の何れか一に記載の抗体、及び(ii)実施態様36から38の何れか一に記載の抗体を含む二重特異性抗体である、実施態様22から38の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
40. 治療剤がCD20XCD3 bsABを含む、実施態様22から39の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
41. 治療剤が、キメラ抗原受容体(CAR)、具体的にはB細胞抗原に特異的に結合するCAR、より具体的にはCD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37及びCD5の群から選択される抗原に特異的に結合するCARを発現するT細胞を含む、実施態様22から31の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
42. 疾患が、B細胞増殖性障害、具体的にはCD20陽性B細胞障害であり、かつ/又は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選択される疾患である、実施態様22から41の何れか一に記載のII型抗CD20抗体。
43. 対象におけるT細胞活性化治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を減少させるための医薬の製造におけるII型抗CD20抗体の使用であって、
ここで、医薬は、
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)T細胞活性化治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンにおいて使用されるべきであり、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
使用。
44. 対象における疾患の治療のための医薬の製造におけるT細胞活性化治療剤の使用であって、
ここで、治療は、
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)T細胞活性化治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
使用。
45. 治療レジメンが、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を効果的に減少させる、実施態様43又は44に記載の使用。
46. II型抗CD20抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様43から45の何れか一に記載の使用。
47. II型抗CD20抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様43から46の何れか一に記載の使用。
48. II型抗CD20抗体が、IgG抗体、具体的にはIgG抗体である、実施態様43から47の何れか一に記載の使用。
49. II型抗CD20抗体が、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される、実施態様43から48の何れか一に記載の使用。
50. II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%が非フコシル化されている、実施態様43から49の何れか一に記載の使用。
51. II型抗CD20抗体が、オビヌツズマブである、実施態様43から50の何れか一に記載の使用。
52. 治療剤が、抗体、具体的には多重特異性抗体を含む、実施態様43から51の何れか一に記載の使用。
53. 治療剤に含まれる抗体が、活性化T細胞抗原、具体的はCD3、CD28、CD137(4-1BBとしても知られる)、CD40、CD226、OX40、GITR、CD27、HVEM、及びCD127からなる群より選択される抗原、より具体的にはCD3、最も具体的にはCD3εに特異的に結合する、実施態様51に記載の使用。
54. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様52又は53に記載の使用。
55. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様52から54の何れか一に記載の使用。
56. 治療剤に含まれる抗体が、B細胞抗原、具体的はCD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37及びCD5からなる群より選択される抗原、より具体的にはCD20又はCD19、最も具体的にはCD20に特異的に結合する、実施態様52から55の何れか一に記載の使用。
57. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様56に記載の使用。
58. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様56又は57に記載の使用。
59. 治療剤に含まれる抗体が、(i)実施態様53から55の何れか一に記載の抗体、及び(ii)実施態様56から58の何れか一に記載の抗体を含む二重特異性抗体である、実施態様43から58の何れか一に記載の使用。
60. 治療剤がCD20XCD3 bsABを含む、実施態様43から59の何れか一に記載の使用。
61. 治療剤が、キメラ抗原受容体(CAR)、具体的にはB細胞抗原に特異的に結合するCAR、より具体的にはCD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37及びCD5の群から選択される抗原に特異的に結合するCARを発現するT細胞を含む、実施態様43から51の何れか一に記載の使用。
62. 疾患が、B細胞増殖性障害、具体的にはCD20陽性B細胞障害であり、かつ/又は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選択される疾患である、実施態様43から61の何れか一に記載の使用。
63. 対象におけるT細胞活性化治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を減少させるためのキットであって、該キットはII型抗CD20抗体組成物と、治療レジメンにおいてII型抗CD20抗体組成物を使用するための説明書とを含むパッケージを含み、該治療レジメンは、
(i)II型抗CD20抗体組成物の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)T細胞活性化治療剤の対象への投与
を含み、
ここで、II型抗CD20抗体組成物の投与と治療剤の投与との間の期間は、CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
キット。
64. T細胞活性化治療剤組成物を更に含む、実施態様63に記載のキット。
65. T細胞活性化治療剤組成物と、治療レジメンにおいて治療剤組成物を使用するための説明書とを含むパッケージを含む、対象における疾患の治療のためのキットであって、該治療レジメンは、
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)T細胞活性化治療剤の対象への投与
を含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤組成物の投与との間の期間は、CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
キット。
66. II型抗CD20抗体組成物を更に含む、実施態様65に記載のキット。
67. 治療レジメンが、II型抗CD20抗体組成物の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、対象における治療剤の投与に伴うサイトカイン放出を効果的に減少させる、実施態様63から66の何れか一に記載のキット。
68. II型抗CD20抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様63から67の何れか一に記載のキット。
69. II型抗CD20抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様63から68の何れか一に記載のキット。
70. II型抗CD20抗体が、IgG抗体、具体的にはIgG抗体である、実施態様63から69の何れか一に記載のキット。
71. II型抗CD20抗体が、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される、実施態様63から70の何れか一に記載のキット。
72. II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%が非フコシル化されている、実施態様63から71の何れか一に記載のキット。
73. II型抗CD20抗体が、オビヌツズマブである、実施態様63から72の何れか一に記載のキット。
74. 治療剤が、抗体、具体的には多重特異性抗体を含む、実施態様63から73の何れか一に記載のキット。
75. 治療剤に含まれる抗体が、活性化T細胞抗原、具体的はCD3、CD28、CD137(4-1BBとしても知られる)、CD40、CD226、OX40、GITR、CD27、HVEM、及びCD127からなる群より選択される抗原、より具体的にはCD3、最も具体的にはCD3εに特異的に結合する、実施態様74に記載のキット。
76. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様74又は75に記載のキット。
77. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様74から76の何れか一に記載のキット。
78. 治療剤に含まれる抗体が、B細胞抗原、具体的はCD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37及びCD5からなる群より選択される抗原、より具体的にはCD20又はCD19、最も具体的にはCD20に特異的に結合する、実施態様74から77の何れか一に記載のキット。
79. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様78に記載のキット。
80. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様78又は79に記載のキット。
81. 治療剤に含まれる抗体が、(i)実施態様75から77の何れか一に記載の抗体、及び(ii)実施態様78から80の何れか一に記載の抗体を含む二重特異性抗体である、実施態様78から80の何れか一に記載のキット。
82. 治療剤がCD20XCD3 bsABを含む、実施態様63から81の何れか一に記載のキット。
83. 治療剤が、キメラ抗原受容体(CAR)、具体的にはB細胞抗原に特異的に結合するCAR、より具体的にはCD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37及びCD5の群から選択される抗原に特異的に結合するCARを発現するT細胞を含む、実施態様63から73の何れか一に記載のキット。
84. 疾患が、B細胞増殖性障害、具体的にはCD20陽性B細胞障害であり、かつ/又は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選択される疾患である、実施態様63から83の何れか一に記載のキット。
85. 対象における疾患を治療する方法における使用のためのT細胞活性化治療剤であって、該方法が
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)T細胞活性化治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
T細胞活性化治療剤。
86. 治療レジメンが、II型抗CD20抗体の投与を伴わない対応する治療レジメンと比較して、治療剤の投与に関連した、対象におけるサイトカイン放出を効果的に減少させる、実施態様85に記載のT細胞活性化治療剤。
87. II型抗CD20抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様85又は86に記載のT細胞活性化治療剤。
88. II型抗CD20抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様85から87の何れか一に記載のT細胞活性化治療剤。
89. II型抗CD20抗体が、IgG抗体、具体的にはIgG抗体である、実施態様85から88の何れか一に記載のT細胞活性化治療剤。
90. II型抗CD20抗体が、非操作抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加するように操作される、実施態様85から89の何れか一に記載のT細胞活性化治療剤。
91. II型抗CD20抗体のFc領域におけるN-結合型オリゴ糖の少なくとも約40%が非フコシル化されている、実施態様85から90の何れか一に記載のT細胞活性化治療剤。
92. II型抗CD20抗体が、オビヌツズマブである、実施態様85から91の何れか一に記載のT細胞活性化治療剤。
93. 治療剤が、抗体、具体的には多重特異性抗体を含む、実施態様85から92の何れか一に記載のT細胞活性化治療剤。
94. 治療剤に含まれる抗体が、活性化T細胞抗原、具体的はCD3、CD28、CD137(4-1BBとしても知られる)、CD40、CD226、OX40、GITR、CD27、HVEM、及びCD127からなる群より選択される抗原、より具体的にはCD3、最も具体的にはCD3εに特異的に結合する、実施態様93に記載のT細胞活性化治療剤。
95. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号32の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号33のHCDR2、及び配列番号34のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号35の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号36のLCDR2、及び配列番号37のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様93又は94に記載のT細胞活性化治療剤。
96. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号38の重鎖可変領域配列及び配列番号39の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様93から95の何れか一に記載のT細胞活性化治療剤。
97. 治療剤に含まれる抗体が、B細胞抗原、具体的はCD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37及びCD5からなる群より選択される抗原、より具体的にはCD20又はCD19、最も具体的にはCD20に特異的に結合する、実施態様93から96の何れか一に記載のT細胞活性化治療剤。
98. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号4の重鎖CDR(HCDR)1、配列番号5のHCDR2、及び配列番号6のHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに配列番号7の軽鎖CDR(LCDR)1、配列番号8のLCDR2、及び配列番号9のLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む、実施態様97に記載のT細胞活性化治療剤。
99. 治療剤に含まれる抗体が、配列番号10の重鎖可変領域配列及び配列番号11の軽鎖可変領域配列を含む、実施態様97又は98に記載のT細胞活性化治療剤。
100. 治療剤に含まれる抗体が、(i)実施態様94から96の何れか一に記載の抗体、及び(ii)実施態様97から99の何れか一に記載の抗体を含む二重特異性抗体である、実施態様85から99の何れか一に記載のT細胞活性化治療剤。
101. 治療剤がCD20XCD3 bsABを含む、実施態様85から100の何れか一に記載のT細胞活性化治療剤。
102. 治療剤が、キメラ抗原受容体(CAR)、具体的にはB細胞抗原に特異的に結合するCAR、より具体的にはCD20、CD19、CD22、ROR-1、CD37及びCD5の群から選択される抗原に特異的に結合するCARを発現するT細胞を含む、実施態様85から92の何れか一に記載のT細胞活性化治療剤。
103. 疾患が、B細胞増殖性障害、具体的にはCD20陽性B細胞障害であり、かつ/又は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫(MZL)、多発性骨髄腫(MM)及びホジキンリンパ腫(HL)からなる群から選択される疾患である、実施態様85から102の何れか一に記載のT細胞活性化治療剤。
【実施例0537】
以下は、本発明の方法及び組成物の例である。上述の一般的な説明を考慮すると、様々な他の実施態様が実施され得ることが理解される。
【0538】
実施例1
リツキシマブ又はビヒクルではなく、オビヌツズマブによる前治療は、カニクイザルにおける破傷風トキソイド特異的新規IgG抗体応答の減弱をもたらす
オビヌツズマブ又はリツキシマブによるB細胞枯渇が外来抗原に対する体液性免疫応答に及ぼす機能的影響を評価するために、動物が以前に経験したことのなかった新規抗原(破傷風トキソイドへの新規応答)、又はCD20抗体投与の前に動物が既に遭遇した免疫原による追加免疫再攻撃(麻疹/風疹に対する記憶リコール応答(memory recall response))の何れかによる処置後に、カニクイザルに免疫攻撃(immune challenge)を行った。
【0539】
動物は、-14日目及び-7日目に、リツキシマブ又はオビヌツズマブを30mg/kgの用量で、又はビヒクルを、静脈内注入によって投与された。0日目に破傷風トキソイドによる免疫化を行った。全ての群からのナイーブ動物は、0日目に約0.1IU/mlのベースライン抗破傷風トキソイドIgG測定値を有していた。7日目に、ビヒクル処置動物及びリツキシマブ処置動物は、強い体液性抗破傷風トキソイドIgG応答を開始し、約1.0IU/mlまで増加したが、一方オビヌツズマブ処置動物は減弱した応答を示し、0.1IU/mlのバックグラウンドシグナルと等しくなった。21日目までに、ビヒクル処置動物及びリツキシマブ処置動物における血清力価は、2.5IU/mlのピークレベルまで上昇し続けた(図1)。オビヌツズマブ処置動物は、0.5IU/mlまで力価の僅かな増加を示し始め、これはビヒクル及びリツキシマブ処置群の力価よりも有意に低かった。血清IgG応答は、51日目及び68日目には全ての群で消失し、ビヒクルにおいて約1.5IU/ml、リツキシマブにおいて1.3IU/mlに達し、オビヌツズマブ処置動物においては0.2IU/mlに戻った。
【0540】
これらの結果は、リツキシマブ又はビヒクルではなく、オビヌツズマブによる前治療は、カニクイザルにおける破傷風トキソイド特異的新規IgG抗体応答の減弱をもたらすことを示している。
【0541】
麻疹/風疹追加免疫ワクチン接種による免疫再攻撃に応答する麻疹特異的IgG抗体産生による記憶リコール応答を調べるために、測定可能なベースライン陽性抗麻疹力価を有する動物を選択した。動物に、リツキシマブ又はオビヌツズマブを30mg/kgの用量で、又はビヒクルを、-14日目及び-7日目に静脈内注入により投与した。麻疹/風疹ワクチン接種による免疫再攻撃を0日目に行った。
【0542】
ベースライン日の-14日目の読み取りを上回る光学濃度OD450nmでの読み取りで倍率変化を測定すると、21日目、51日目及び68日目の3つの群全てにおいて抗麻疹力価の測定可能な増加がもたらされ、3つの異なる処置群の間では、麻疹に対するIgG応答に有意差は見られなかった(図2)。結論は、記憶リコール応答は、抗CD20枯渇療法にかかわらず完全なまま(intact)であったということである。オビヌツズマブ又はリツキシマブの何れかの投与は、ワクチンの事前接種の結果として確立された基礎力価を有する麻疹/風疹ワクチン接種に対する追加免疫化に対する記憶リコール応答において測定可能な影響はなかった。
【0543】
全体的に、これらの結果は、オビヌツズマブによる前治療が新規抗体応答の強力な抑制をもたらしたが、保護性の体液性記憶応答は完全なままであることを示した。理論に縛られることを望むものではないが、新規体液性抗体応答をブロックする能力は、オビヌツズマブで見られる内因性B細胞枯渇の程度の増加及び/又は活性化CD20発現B細胞を枯渇させるオビヌスツズマブの増強された能力に起因する可能性がある。
【0544】
実施例2
局所進行性及び/又は転移性固形腫瘍患者におけるRO6895882(セルグツズマブアムナロイキン、CEA-IL2v)による治療前の、オビヌツズマブによる前治療の実現可能性、安全性及び薬力学的効果を評価するための多施設、無作為化非盲検第1相試験
方法
前治療としてオビヌツズマブを投与されるか又は投与されないRO6895882の非盲検、多施設、無作為化第1b相臨床試験が実施される。
【0545】
このサブスタディの主な目的は、RO6895882でその後治療される患者におけるADAの形成を、オビヌツズマブによる前治療で予防するかどうかを決定することである。
【0546】
この治験は、ケア療法の標準を進めているか、又はそれに不耐容である局所進行性及び/又は転移性のCEA陽性固形腫瘍を有する患者を登録する。オビヌツズマブ及びRO6895882を静脈内(IV)投与する。
【0547】
14人の患者を、オビヌツズマブ前治療群に無作為に割り付け、5人の患者を対照群に無作為に割り付けた。オビヌツズマブ前治療群の患者は、サイクル1の1日目(C1D1)のRO6895882投与の前に、-13日目と-12日目の連続2日間に、2gのオビヌツズマブを投与された(2×1000mg)。前投薬は、各オビヌツズマブ投与の前に与えられた。C1D1に、全ての患者がRO6895882の固定された均一な10mgの用量を受けた。その後のサイクルでは、全ての患者は20mgのRO6895882を受け、最低2時間にわたる静脈内注入を2週間に1回(q2W)投与された。対照群(オビヌツズマブ前治療なし)の患者は、オビヌツズマブ前治療群の患者と同様にC1D1から開始してRO6895882の投与を受けた。
【0548】
Bリンパ球数の監視のために、治療期間の前とその間に、血液試料を採取した。フローサイトメトリー及びCD19の染色を用いてB細胞数を得た。ADA測定のための血液試料は、ベースライン時、及びその後RO6895882投与後2週毎に得られた。
【0549】
全ての患者は、ベースライン及び治療中の腫瘍生検を受けた。オビヌツズマブ前治療患者に対しては、無作為化後、オビヌツズマブの投与前にベースライン生検を行った。対照患者は、サイクル1の1日目のRO6895882投与の前に腫瘍生検を行った。RO6895882治療の開始前に組織のB細胞枯渇を確認するために、RO6895882投与の前、サイクル1の1日目(+0/-1日)に、オビヌツズマブで前治療した最初の5人の患者から治療中の腫瘍生検を採取した。残りのオビヌツズマブ前治療患者から、サイクル4の1日目の4回目のRO6895882投与の前、サイクル3の14日目に反復腫瘍生検を採取した。生検組織の一部を、Bリンパ球検出のために、フローサイトメトリー及びCD19による染色により分析した。第2の部分をホルマリン固定し、パラフィンに包埋し、CD20及びPAX5染色を用いてBリンパ球を分析した。
【0550】
この研究の主な目的は、サイクル4においてADA力価を有する患者の割合を減少させることにおけるオビヌツズマブの前治療の効果を評価し、RO6895882による治療前のオビヌツズマブの投与の安全性及び忍容性を評価することであった。
【0551】
この研究の第二の目的は、RO6895882ADAの特徴づけ(サイクル4)、及び
オビヌツズマブの前治療から得られた組織(腫瘍及び皮膚)及び末梢血におけるB細胞枯渇の調査及び特徴づけを含む。
【0552】
結果
RO6895882(セルグツズマブアムナロイキン、CEA-IL2v)は、BP28920 EIH研究(ClinicalTrials.gov識別子:NCT02004106)で試験されている。2016年11月現在、研究BP28920の予備的結果は、患者74人中59人(80%)において抗CEA-IL2v抗体が検出されたことを示している。59人のADA陽性患者のうち、58人(98%)が持続的免疫応答を示し、1人(1.6%)は一過性の免疫応答を示した。ADA応答の強さは、低力価から高力価(10-196.830)の範囲であり、59人の持続性ADA陽性症例のうちの32例(54%)は、高いADA力価(>100)を示している。免疫応答の最初の発症は、RO6895882(セルグツズマブアムナロイキン、CEA-IL2v)の1回投与後、早くも5日目、すなわち最初の投与の96時間後に観察された。既存のADAを有する患者は同定されず、全てのADAは治療誘導された。59人の患者のうち5人(8%)では、高いADA力価(>100)に加えて、曝露の喪失が観察された。過敏症反応又は過敏症を示唆する徴候及び症状も、ADA媒介性有害事象の証拠も、RO6895882を受けた108人の患者において報告されていない。
【0553】
上記の臨床的サブスタディは、抗薬物抗体(ADA)の発生を減弱させるためのRO6895882(セルグツズマブアムナロイキン、CEA-IL2v)の投与に対する前治療として与えられた、オビヌツズマブ(Gazyva(登録商標))の可能性を探索するために開始された。本研究は終了した。
【0554】
14人のオビヌツズマブ治療患者のうち14人は、サイクル2の1日目(最初のRO6895882投与の2週間後)及び全研究期間を通して、RO6895882に対するADAは存在しなかった。最長の治療中のフォローアップ期間は、10治療サイクル、すなわち20週間までであった。オビヌツズマブで前治療されていない5人の対照患者のうち4人が、RO6895882の1回投与後に10から270の力価を有するADAを発生させた。
【0555】
局所進行性及び/又は転移性の固形腫瘍を有する患者では、オビヌツズマブ前治療の安全性プロファイルは許容可能であった。オビヌツズマブ/CEA-IL2v治療を受けた患者は、CEA-IL2v単独療法と比較して予期しないAEを経験しなかった。有害事象に起因する致死的転帰は報告されていない。
【0556】
末梢血のフローサイトメトリー分析は、オビヌツズマブ治療後のB細胞の完全な枯渇を示した。RO6895882(C1D1)による治療の開始前に、採取した血液試料中にB細胞は検出されなかった(図3)。
【0557】
オビヌツズマブ前治療患者からの腫瘍生検試料を、B細胞の頻度についてフローサイトメトリー及び免疫組織化学(IHC)の両方によって分析した。フローサイトメトリー分析(図4)は、Bリンパ球で発現される表面タンパク質であるCD19について陽性に染色される細胞の数及び百分率の著しい減少を示した。対をなす腫瘍生検試料の異なる部分のIHC分析は、B細胞上に発現された第2の抗原であるCD20について陽性に染色される細胞の減少を検出した(図5A及びB)。CD20染色の減少が抗CD20染色と競合し得るオビヌツズマブによって引き起こされたことを排除するために、本結果は、B細胞特異的転写因子であるPAX5による染色によっても確認され、これもまた著しく減少した(図5C及びD)。まとめると、これらの結果は、腫瘍及び隣接正常組織におけるB細胞の効果的な減少を示している。
【0558】
結論として、このサブスタディからの上記データは、オビヌツズマブがADAを軽減するのに有効であることを強く示唆している。
【0559】
実施例3
CEA TCBによる治療前の、オビヌツズマブによる前治療の実現可能性、安全性及び薬力学的効果の臨床評価
CEA TCBを用いた進行中の第I相臨床試験(ClinicalTrials.gov識別子:NCT02324257)は、標準治療で進行しており、標準医療(SOC)に不耐容であり、かつ/又はSOCに適していない、局所進行性及び/又は転移性CEA陽性固形腫瘍を有する患者を登録する。
【0560】
オビヌツズマブで前治療されるであろう患者を登録するために、患者のパラレルコホートが開かれる。これらのコホートの主な目的は、CEA TCBでその後治療される患者におけるADAの形成を、オビヌツズマブによる前治療で予防するかどうかを決定することである。オビヌツズマブ及びCEA TCBを静脈内(IV)投与する。オビヌツズマブ前治療コホートの患者は、CEA TCB投与のサイクル1の1日目(C1D1)の前に、-13日目に2000mgのオビヌツズマブを静脈内(IV)、又は13日目と12日目(±2日間)に2日間連続して1000mgのオビヌツズマブを静脈内(IV)の何れかによって、2000mgのオビヌツズマブを受けた。鎮痛薬、抗ヒスタミン剤及びコルチコステロイドを含む前投薬は、各オビヌスツマブ投薬の前に与えられる。C1D1に、全ての患者は、CEA TCBのフラット用量を(進行中の臨床試験で定義されているように、割り当てられた用量コホートに応じて)最低120分間の静脈内注入によって受ける。その後のサイクルでは、全ての患者は同じ用量のCEA TCBを受け、C2D1に最低90分間の静脈内注入によって、C3D1以降は毎週(QW)最低60分間の静脈内注入によって投与される。オビヌツズマブ前治療を受けていない患者は、オビヌツズマブ前治療コホートの患者と同様にC1D1で開始するCEA TCB投与を受ける。Bリンパ球数の監視のために、治療期間の前とその間に、血液試料を採取する。フローサイトメトリー及びCD19の染色を用いてB細胞数を得る。CEA TCBの血清レベルを評価するPK用の血液試料及びADA測定のための血液試料は、ベースライン、及びその後CEA TCB投与の各サイクルで得られる。オビヌツズマブ前治療を受けている患者のこれらのコホートの主な目的は、第8週にCEA TCBに対する陽性抗薬物抗体(ADA)力価を有する患者の割合を減少させること、及び/又はCEA TCBに対するADA発生を遅延させることにおけるオビヌツズマブ前治療の効果であり、かつ、CEA TCBによる治療の前の、オビヌツズマブの投与の安全性及び忍容性を評価することである。この研究では、CEA TCBに対するADAの特徴づけも検討する予定である。それは、組織におけるB細胞枯渇(腫瘍生検は、ベースライン及びCEA TCBを用いたC1D1後の第7週に行われる)及びオビヌツズマブ前治療から得られる末梢血の調査及び特徴づけも含む。
【0561】
予備的結果
CEA TCBはEIH研究(ClinicalTrials.gov識別子:NCT02324257)で試験されている。2016年10月27日現在(ADAデータのカットオフ)、研究BP29541からの予備的結果は、77人の患者のうち40人(52%)で抗CEA TCB抗体が検出されたことを示し、これらの患者の何れも、一過性の陽性力価を有する2人の患者を除いて、オビヌツズマブ前治療を受けていなかった(1人はサイクル2の1日目に30の力価を有したが、サイクル24までに陰性になり、別の1人はサイクル3の1日目で270、サイクル4の1日目で90の力価を示したが、サイクル8までに陰性となった)。これらの2人の患者を除いて、38人の他のADA陽性患者全員が持続的な免疫応答を示した。ADA応答の強さは、低力価から高力価(10-21870)の範囲であった。38人中17人(45%)は中等度のADA力価(≦810)を示したが、一方28人中21人(55%)は高いADA力価(>810)を示した。免疫応答の最初の発症は、8日目(C2D1前投与)のCEA TCBの1回投与後に観察されたが、3人の患者はサイクル1の1日目の前投与で陽性力価を有した。既存のADAを有する3人の患者が同定され、他の全ての患者においてADAが治療誘導された。持続的な免疫応答を有する38人の患者のうち24人(63%)において、持続的なADAの存在は曝露の全喪失と相関していた(サイクル3の1日目からサイクル13の1日目の範囲(PKデータカットオフ:2016年11月7日))。これまでに、CEA TCBを受けた77人の患者において、過敏症反応若しくは過敏症を示唆する徴候及び症状、又はADA媒介性有害事象の証拠は報告されていない。抗薬物抗体(ADA)の発生を減弱させるためのCEA TCBの投与に対する前治療として与えられるオビヌツズマブ(Gazyva(登録商標)/Gazyvaro(登録商標))の可能性を探索するために、オビヌツズマブ前治療を受けている患者のパラレルコホートによる上記の臨床研究を開始した。本研究は進行中である。予備的データによると、臨床的カットオフ日の2016年10月27日現在(ADAデータカットオフ)、これまでADAデータが入手可能であった12人のオビヌツズマブ前治療患者は(患者うちの2人は、その間に臨床的に悪化したのでオビヌツズマブのみを受け、CEA TCBの注入は受けなかった)、以下の時点でCEA TCBに対するADAは存在しなかった:1名の患者がC1まで、1名の患者がC3まで、1名の患者がC4まで、1名の患者がC6まで、1名の患者がC8まで、1名の患者がC10まで、2名の患者がC12まで、1名の患者がC16まで、及び1名の患者がC25まで。
【0562】
オビヌツズマブで前治療されていない65人の患者のうち8人が、CEA TCBの1回投与後に10から810の力価を有するADAを発生させた。予備的な安全性分析に基づいて、局所進行性及び/又は転移性の固形腫瘍を有する患者では、オビヌツズマブ前治療の安全性プロファイルは許容可能であった。CEA TCBの毎週の投与を受ける前にオビヌツズマブの前治療を受けた患者は、オビヌツズマブ前治療を受けていない患者と比較して予期しない有害事象(AE)を経験しなかった。末梢血のフローサイトメトリー分析は、オビヌツズマブ治療後のB細胞の完全な枯渇を示した。CEA TCB(C1D1)による治療の開始前に、採取した血液試料中にB細胞は検出されなかった。オビヌツズマブ前治療患者からの腫瘍生検試料は、オビヌツズマブ前治療を受ける前にベースラインで、そして治療中にサイクル7の1日目で着手された。分析はまだ進行中である。
【0563】
実施例4
完全ヒト化マウスにおけるCD20XCD3 bsAB±オビヌツズマブ前治療(Gpt)によって媒介される抗腫瘍活性及びサイトカイン放出の評価
我々は、Gptが、完全ヒト化NOGマウスにおけるCD20XCD3 bsABの最初の投与に伴うサイトカイン放出を防止することができるかどうかを調べた。
【0564】
全ての治療オプション(オビヌツズマブ、CD20XCD3 bsAB及びGpt+CD20XCD3 bsAB)は、最初の治療投与後24時間で既に検出された効率的な末梢血B細胞枯渇をもたらした(図7A)。T細胞数は、CD20XCD3bsABの最初の投与の24時間後に末梢血において一過性の減少を明らかにしたが、オビヌツズマブ又はGpt+CD20XCD3bsABの後には認められなかった(図7B)。従って、CD20XCD3bsABの前に投与される場合、オビヌツズマブの単回投与は、末梢血におけるCD20XCD3bsAB媒介性のT細胞の減少を抑制する。
【0565】
異なる実験群において治療されたマウスの血液中に放出されたサイトカインの分析は、CD20XCD3 bsABによる治療が、血液中の複数のサイトカインの一過性の上昇を誘導し、これは最初の投与から24時間後にピークを示し、72時間までにベースラインレベル近くまで戻った(図8)。MIP-1b、IL-5、IL-10、MCP-1は、IFNγ、TNFα及びIL-6と同様の傾向を示している(非表示)。Gptは、最初のCD20XCD3bsAB注射に伴う末梢血におけるサイトカイン放出を大幅に減少させた(表2)。
【0566】
CD20XCD3 bsABの抗腫瘍活性は、オビヌツズマブによる前治療によって影響を受けなかった(図9)。単剤療法としてのオビヌツズマブ治療は、この腫瘍及びマウスのモデルにおいてCD20XCD3 bsABと比較した場合、より遅い動態ではあるが、強い抗腫瘍活性を示した。
【0567】
従って、データは、Gptは、最初のCD20XCD3bsAB注射に伴うサイトカイン放出を減少させるが、腫瘍細胞上の同じ抗原を標的にするにもかかわらず、CD20XCD3bsABの抗腫瘍活性はGptの影響を受けないことを示している。
【0568】
実施例5
カニクイザルにおけるオビヌツズマブ前治療研究
0.1、0.3及び1mg/kgの用量でのCD20XCD3 bsABに対する応答に対するオビヌツズマブ前治療の影響を調べるために、雄のカニクイザルにおいて機構研究(非GLP)を行った(表3)。この研究では、6匹のナイーブカニクイザルの雄サル/群(第1群については4匹)が、対照物質1(第1及び第2群)又はオビヌツズマブ(50mg/kg、第3、第4、第5群)の何れかの静脈内(IV)投与を受け、4日後に対照物質2(第2群)、CD20XCD3 bsAB、0.1mg/kg(第2群、第3群)、CD20XCD3bsAB、0.3mg/kg(第4群)又はCD20XCD3bsAB、1mg/kg(第5群)による治療を受けた。オビヌツズマブとCD20XCD3 bsAB投薬との間の4日間は、オビヌツズマブによる末梢血、リンパ節及び脾臓におけるB細胞の枯渇を可能にするのに十分であると考えられた。12日目に、第1群から2匹、第2群~5群から4匹を剖検した(終末剖検)。各群からの2匹の動物を8週間の回復期間の間保持した。
【0569】
以下のデータがこの研究から入手できる:
・ オビヌツズマブ(50mg/kg、Gpt)による前治療後、CD20XCD3 bsABの静脈内(IV)投与は、最も高い試験用量である1mg/kgまで耐容された。CD20XCD3 bsAB単独で観察された臨床徴候(嘔吐、猫背の姿勢及び活動性低下)は、CD20XCD3 bsABの全ての用量でGptによって著しく減少した。
・ CD20XCD3 bsABの単独投与はBリンパ球の減少、並びにTリンパ球(CD4+及びCD8+)サブセット及びNK細胞の活性化及び増殖をもたらした。対照的に、CD20XCD3 bsAB投与の前のオビヌツズマブの投与は、Bリンパ球の枯渇、並びにCD20XCD3 bsAB投与後のリンパ球及び単球集団の一過性の減少の低下によって実証されるように、その後のTリンパ球活性化の減弱、並びにCD20XCD3 bsAB単独で治療した動物に存在する変化と比較して、T細胞活性化マーカーのアップレギュレーション及び増殖の減少をもたらした。
・ Gpt群では、0.1mg/kgのCD20XCD3 bsAB治療の4時間後のIFNγ、IL-8、TNFα、IL-2及びIL-6の放出が著しく減少した。同様に、低レベルのサイトカイン放出が、Gpt群のCD20XCD3bsABの高用量で認められた(図10)。
CD20XCD3 bsABに関連する組織病理学的所見は、リンパ器官に限定された(例えば、CD20陽性細胞に特異的に作用する細胞型の減少は、脾臓のリンパ濾胞に存在した)。CD20陽性細胞の減少は、8週間の無治療期間後にほとんど完全に逆転した。0.1mg/kgのCD20XCD3 bsABで治療したサル及びGptに続いて0.1、0.3又は1mg/kgのCD20XCD3 bsABを投与した動物において、脳、脊髄及び坐骨神経を含め、他の病理組織学的変化は存在していなかった。
【0570】
実施例6
r/r NHL患者におけるオビヌツズマブ前治療を有するCD20XCD3 bsABの安全性、忍容性及び薬物動態の臨床評価
第I相用量漸増試験が実施されることになり、その主な目的は、再発性/難治性(r/r)NHLの患者における、オビヌツズマブ前治療を有するCD20XCD3 bsABの安全性、忍容性及び薬物動態の評価を含む。
【0571】
研究は、腫瘍がB細胞においてCD20を発現することが期待されるr/r NHL患者を登録する。CLL患者は登録されないであろう。患者は、少なくとも1つの以前の治療レジメンの後に再発するか、又はそれに応答しないと予想される。
【0572】
オビヌツズマブ及びCD20XCD3 bsABが静脈内(IV)投与されるであろう。
【0573】
オビヌツズマブ及びCD20XCD3 bsABの投与前に、抗ヒスタミン剤及びアセトアミノフェンと一緒に、コルチコステロイド(例えば、20mgの静注(IV)デキサメタゾン、80mgの静注(IV)メチルプレドニゾロン、又は同等物)の前投薬が投与されるであろう。腫瘍溶解症候群などの他の事象に対する予防対策も、必要に応じて推奨されるか又は命じられるであろう。
【0574】
CD20XCD3 bsABは、最初のCD20XCD3 bsAB投与(サイクル1/1日目)の7日前(サイクル1/-7日目)のオビヌツズマブ(1000mg;IV)の単回投与による前治療後に、静脈内(IV)注入による単一薬剤としてサイクル1/1日目(C1/D1)で開始されるであろう。予想されるCD20XCD3 bsABの開始用量は5マイクログラム(フラット投与)であろう。全ての投与サイクルは14日間(Q2W)であり、1回の追加投与はサイクル1のみにおいて与えられる。従って、投薬スキームは、サイクル1の1日目及び8日目(C1/D1;C1/D8)、その後全てのサイクルの1日目のみにおいて(Q2W)、合計12サイクル(24週間)の治療の間、又は許容できない毒性若しくは増悪が生じるまで、CD20XCD3 bsABを投与するためのものである。
【0575】
血液試料は、CD20XCD3 bsABの関連するPK特性、並びに血液中のPDマーカーの範囲を決定するために、例えばGpt及びCD20XCD3 bsAB投与開始後のB細胞枯渇の規模及び動力学、T細胞表現型を評価するために、並びにGpt及び選択された時点でのCD20XCD3 bsABの投与後に、可溶性メディエーターの放出(サイトカイン及びケモカイン)を評価するために、適切な時点で採取されるであろう。
【0576】
実施例7
ステップアップ投与(SUD)及びオビヌツズマブ前治療(Gpt)の抗腫瘍活性の比較
この例に示すように、Gptは、抗腫瘍活性及び末梢組織におけるT細胞再分布に関して、ステップアップ投与(SUD)への優れたアプローチである。
【0577】
完全ヒト化NOG雌マウス(Taconic)は社内で作製された。実験開始時の年齢は20週であった。全てのマウスに、1.5x10個のWSU-DLCL2細胞(ヒトびまん性大B細胞リンパ腫)を研究の第0日に皮下注射した。腫瘍細胞投与の7日後(7日目)に、マウスに、表4に示す第1の治療を静脈内投与した。表4に示される第2の治療は、14日目に投与された。
【0578】
CD20XCD3bsAB治療の9週間後、治療がオビヌツズマブ(Gpt)により先行される場合、CD20XCD3 bsAB(SUD)の3つの単一分画用量の何れかにより先行される場合よりも研究終了時(69日目)の無腫瘍マウスの数は多かった(図11、表4)。
【0579】
第1の(前)治療の7日後(研究の14日目に対応)の優れた抗腫瘍効果に加えて、CD20XCD3 bsAB治療マウス(全用量又は全用量の一部)の肺では血管周囲のCD3陽性T細胞の増加が観察されたが、オビヌツズマブ(10mg/kg)治療マウスでは観察されなかった(図12A-D)。第2の治療(研究の15日目)の24時間後に対応する後の時点での分析についても同様であった(図12E-H)。
【0580】
この実験のために、上記のようにマウスを作製し、腫瘍細胞を注射した。腫瘍細胞投与の7日後に、マウスに、表5Aに示す治療を静脈内投与した。
【0581】
4匹の動物/群を、CD20XCD3 bsAB、オビヌツズマブ又はビヒクルの単回投与を受けた7日後に屠殺した。残りの4匹の動物/群は、表5Bに示されるように、14日目の第2の治療を受けてから24時間後に屠殺された。対照はビヒクル緩衝液を受けた。
【0582】
剖検時に肺、肝臓、及び腎臓を採取し、連続切片を、確立されたプロトコールに従ってヒトCD3について免疫組織化学(IHC)で染色した。CD3について免疫組織化学的に染色された切片を、0(切片中のCD3陽性細胞無し又は稀なCD3陽性細胞)から3(血管/管の周囲に多くのCD3陽性細胞)のスコアを用いて、理事会認定獣医病理学者によって盲検評価した。
【0583】
肺切片からの代表的な結果を図12と表5に示す。
【0584】
≧0.05mg/kgのCD20XCD3 bsAB(全用量又は全用量の一部)の単回投与の7日後に、マウスの肺で血管周囲CD3陽性T細胞の用量依存的増加が観察されたが、オビヌツズマブ治療マウスでは観察されなかった(図12A-D、表5A)。
【0585】
血管周囲のT細胞の増加は、CD20XCD3 bsABの単回又は反復投与の24時間後にも観察されたが、オビヌツズマブで前治療されたマウスでは観察されなかった(図12E-H、表5B)。
【0586】
治療の24時間後に屠殺された0.5mg/kgのCD20XCD3 bsABの単回投与を受けた動物では、CD3陽性T細胞の辺縁趨向及び接着が肺血管に存在し(図13)、血管周囲空間への遊出を伴うT細胞の早期活性化を示唆しいる。
【0587】
結論として、CD20XCD3 bsABの全用量又は全用量の一部による単回又は反復治療は、肺における血管周囲分布、肝臓及び腎臓の糸球体における血管周囲/管周囲(肝臓及び腎臓のデータは非表示)を有する対照と比較して、CD3陽性T細胞の増加をもたらした。これらの変化は、オビヌツズマブで前治療された動物では起こらなかった。
【0588】
実施例8
Gptを伴うか又は伴わないカニクイザルにおけるCD20XCD3 bsAB曝露の比較
この例では、Gptは、CD20XCD3 bsAB曝露を増加させることが示される。カニクイザルに、オビヌツズマブ前治療(Gpt)(50mg/kg、CD20XCD3bsAB投与の4日前)を伴うか又は伴わずに、100-1000μg/kgのCD20XCD3 bsABの単回静脈内用量を投与した。
【0589】
オビヌツズマブ(50mg/kg)によるCD20B細胞の枯渇に起因する曝露の増加は、Gptを伴うか又は伴わない100μg/kgのCD20XCD3 bsABの単回投与後のCD20XCD3 bsAB血清レベルによって示される(図14)。Gpt後のCD20XCD3 bsABのクリアランスは、Gptを伴わない群で観察されたクリアランスの約4分の1まで著しく減少した(表6)。CD20XCD3bsAB投薬の時点までに、B細胞はGptによってベースラインレベルの約1-5%に減少した。クリアランスの減少は、Gpt誘導性B細胞枯渇、及びその結果としての、B細胞結合からの標的媒介性クリアランスの減少と一致する。Gptの後で、クリアランス及び中心分布容積(Vc)は、クリアランス値が約90mL/日/kgであり、Vc値が約40mL/kgであり(これは血清容積と同様である)、研究された用量範囲における用量とは無関係であった。
【0590】
実施例9
CAR-T細胞による養子T細胞療法後のサイトカイン放出を避けるためのオビヌツズマブ前治療
サイトカイン放出症候群(CRS)は、CD19 CAR-T細胞、並びにCD20又はCD22に対するCAR-T細胞による治療後に、致命的な副作用を引き起こす可能性がある、非常に頻出する現象である。CRSを回避又は減少させるための戦略は、CAR-T療法の様々な側面に焦点を当てている(Xu and Tang, Cancer Letters (2014) 343, 172-178に総説される)。
【0591】
我々は、オビヌツズマブ前治療を用いた末梢及び悪性B細胞の枯渇による、B細胞増殖性障害におけるCAR-T細胞による治療後のCRSを避けるための新規アプローチを提案する。
【0592】
この目的のために、B細胞増殖性障害(例えばNHL)を有する患者を、オビヌツズマブ前治療群と、オビヌツズマブ前治療無しの対照群とに無作為化した。オビヌツズマブ前治療群の患者は、CD19、CD20又はCD22 CAR-T細胞の投与前の-7日目(+/-2日目)に投与される、1gのオビヌツズマブを受ける。
【0593】
患者は、使用される特定のCAR-T細胞、患者及び治療すべき疾患のための適切な用量でCARレンチウイルスベクターで形質導入された自己T細胞を注入される(例えば、Maude et al., N Engl J Med (2014) 371,1507-1517に記載されているように体重1kgあたり0.76×10から20.6×10個のCAR-T細胞;Grupp et al., New Engl J Med (2013) 368, 1509-1518に記載されているように、体重1kg当たり1.4×10から1.2×10個のCAR-T細胞;又はPorter et al., Sci Transl Med (2015) 7, 303ra139に記載されているように0.14×10から11×10個のCAR-T細胞)。患者は、応答、毒性作用、並びに循環するCAR-T細胞の増殖及び持続性について監視される。
【0594】
前投薬は、各オビヌツズマブ投与の前に与えられる。Bリンパ球数の監視のために、治療期間の前とその間に、血液試料を採取する。フローサイトメトリー及びCD19の染色を用いてB細胞数を得る。更に、CRSの発生率は、IL-6を含むサイトカインを測定することによってスクリーニングされる。
* * *
【0595】
前述の発明は明確な理解のために例示及び実施例によって幾分詳細に説明されているが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示内容は、その全体が出典明示により本明細書に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A-F】
図6G-N】
図6O-V】
図6W-Z】
図7
図8
図9
図10
図11
図12A-D】
図12E-H】
図13
図14
【配列表】
2023099017000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-05-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における疾患を治療する方法における使用のためのII型抗CD20抗体であって、該方法が
(i)II型抗CD20抗体の対象への投与、
及び、一定期間後に連続して
(ii)治療剤の対象への投与
を含む治療レジメンを含み、
ここで、II型抗CD20抗体の投与と治療剤の投与との間の期間は、II型抗CD20抗体の投与に応答した対象におけるB細胞の数を減少させるために十分である
II型抗CD20抗体。
【外国語明細書】