(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023009939
(43)【公開日】2023-01-20
(54)【発明の名称】蓄電システム、電源、駆動装置、電力制御装置及び蓄電状態均等化方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20230113BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230113BHJP
H01M 50/267 20210101ALI20230113BHJP
【FI】
H02J7/02 H
H01M10/44 P
H01M50/267
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021113622
(22)【出願日】2021-07-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】野津 龍太郎
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H040
【Fターム(参考)】
5G503BA03
5G503BA07
5G503BB01
5G503BB02
5G503HA02
5H030AA01
5H030AS08
5H040AA40
5H040AS07
5H040AT01
5H040DD02
5H040GG06
5H040NN05
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン二次電池等の非水系二次電池を用いるセル群における充電状態の均等化を安全且つ低コストで行うことができる蓄電システムを提供する。
【解決手段】非水系二次電池のセルを複数直列に接続してなる第1セル群と、水系二次電池のセルを複数直列に接続してなる第2セル群と、を有し、前記第1セル群の各セルに対して前記第2セル群の1以上のセルが並列に接続されていることを特徴とする、蓄電システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系二次電池のセルを複数直列に接続してなる第1セル群と、
水系二次電池のセルを複数直列に接続してなる第2セル群と、を有し、
前記第1セル群の各セルに対して前記第2セル群の1以上のセルが並列に接続されていることを特徴とする、蓄電システム。
【請求項2】
前記第2セル群の前記1以上のセルの充電電圧が、前記第1セル群の前記各セルの充電電圧以下である、請求項1に記載の蓄電システム。
【請求項3】
非水系二次電池が、リチウムイオン二次電池である、請求項1または2に記載の蓄電システム。
【請求項4】
前記リチウムイオン二次電池の正極に含まれる正極活物質が、マンガンを含むリチウム遷移金属酸化物を含有する、請求項3に記載の蓄電システム。
【請求項5】
水系二次電池が、密閉型水系二次電池である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蓄電システム。
【請求項6】
前記密閉型水系二次電池が、ニッケル亜鉛電池である、請求項5に記載の蓄電システム。
【請求項7】
前記非水系二次電池が、リチウムイオン二次電池であり、
前記水系二次電池が、ニッケル亜鉛電池であり、
前記リチウムイオン二次電池の1セルに対して、前記ニッケル亜鉛電池の2セルが並列に接続されている、請求項1または2に記載の蓄電システム。
【請求項8】
前記ニッケル亜鉛電池の全充電電力量が、前記蓄電システムの充電電力量の0.5倍以上である、請求項6または7に記載の蓄電システム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の蓄電システムを備える、電源。
【請求項10】
請求項9に記載の電源を備える、駆動装置。
【請求項11】
請求項9に記載の電源を備える、電力制御装置。
【請求項12】
非水系二次電池のセルを複数直列に接続して第1セル群を形成し、
水系二次電池のセルを複数直列に接続して第2セル群を形成し、
前記第1セル群の各セルに対して前記第2セル群の1以上のセルを並列に接続することを特徴とする、蓄電状態均等化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電システム、電源、駆動装置、電力制御装置及び蓄電状態均等化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラやノート型パソコンなどの携帯機器の電源、及びハイブリッド自動車、電気自動車、電力貯蔵などの電源として、リチウムイオン二次電池の需要が高まっている。リチウムイオン二次電池は、重量当たりのエネルギー密度の大きい蓄電池であり、複数のセルを直列に接続した組電池として用いることで、駆動電圧が高い用途に適用することができる。
【0003】
しかし、リチウムイオン二次電池の複数セルが直列に接続された組電池は、繰り返される充放電、長期に渡る放置、定電圧印加等によって、個々のセルの自己放電性能や充電時の副反応量にバラツキが生じ、セル間に充電状態の差が生じることが知られている。このような充電状態の差を持ったまま充放電を継続すると、充電状態が高くなったセルが相対的により高い電圧まで充電され、電池の劣化や安全性の低下を引き起こすおそれがある。
【0004】
このような問題に対して、従来から、複数セルを直列接続したリチウムイオン二次電池の組電池では、外部回路を用いた充電状態の均等化が行われている。例えば、特許文献1には、セル毎に電圧補正用蓄電器を接続するためのスイッチおよび電圧補正用蓄電器同士を並列接続するスイッチを備え、セルの電圧に応じて電圧補正用蓄電器の接続先を切り替える技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、各々が単電池の直列接続からなる複数の電池ブロックにおいて、全ての単電池の充電状態を検知する技術が開示されている。この技術では、いずれかの単電池の充電状態が所定値以上の場合に、装備された冷却機への通電を停止した後に電池ブロックに一定電流を所定期間通電して均等充電を実行する。
【0006】
特許文献3には、複数の単位二次電池の直列組電池において、対応する単位二次電池の正極に一端が連なり、対応する単位二次電池の負極に他端が連なるように結線された同じ抵抗値をもつ各放電抵抗を備える技術が開示されている。この技術では、充電電流の大きさを検出する電流センサと、各放電スイッチを設け、充電電流が二つの閾値間にある区間のときにスイッチをオンすることによって各単位二次電池を一斉に均等化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、充電状態を均等化するための外部回路は、高価な電子素子で構成される場合が多く、また複雑な制御技術を必要とするため、リチウムイオン二次電池を用いる組電池のコストが高くなる。
【0008】
本発明の課題は、リチウムイオン二次電池等の非水系二次電池を用いるセル群における充電状態の均等化を安全且つ低コストで行うことができる蓄電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る蓄電システムは、非水系二次電池のセルを複数直列に接続してなる第1セル群と、水系二次電池のセルを複数直列に接続してなる第2セル群と、を有し、前記第1セル群の各セルに対して前記第2セル群の1以上のセルが並列に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、リチウムイオン二次電池等の非水系二次電池を用いるセル群における充電状態の均等化を安全且つ低コストで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】リチウムイオン二次電池に密閉型水系二次電池を接続した蓄電システムの模式図。
【
図2】リチウムイオン二次電池の単セル6個で構成した組電池の模式図。
【
図3】リチウムイオン二次電池の単セル3個で構成した組電池の概略図。
【
図4】本実施形態の蓄電システムを用いて、リチウムイオン二次電池の単セル3個で構成したセル群の概略図。
【
図5】本実施形態の蓄電システムのモデルを示す概念図。
【
図6】リチウムイオン二次電池の単セル6個に密閉型水系二次電池の単セル12個を接続した蓄電システムの模式図。
【
図7】リチウムイオン二次電池の単セル6個にニッケル亜鉛二次電池の単セル12個を接続した蓄電システムの充電時間と電圧の関係を示すグラフ。
【
図8】リチウムイオン二次電池の単セル6個で構成した組電池の充電時間と電圧の関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、説明する。
図1は、リチウムイオン二次電池に密閉型水系二次電池を接続した蓄電システムの模式図である。
【0013】
本実施形態に係る蓄電システム100は、第1セル群10と第2セル群20とを有する。
【0014】
第1セル群10は、非水系二次電池のセル11が複数直列に接続して構成されている。本実施形態では、非水系二次電池の各セル11が隣り合うセル11とリード線12で直列に結線されている(
図1参照)。
【0015】
本明細書において、非水系二次電池は、電解液として非プロトン性の有機溶媒にイオン導電性の電解質溶液を使用する非水系電解質電池を示す。なお、本実施形態では、非水系二次電池の一例として、非プロトン性の有機溶媒にリチウム塩等を溶解させ電解液を用いるリチウムイオン二次電池について説明する。
【0016】
リチウムイオン二次電池は、負極活物質としてリチウムイオンを吸蔵・脱離し得るカーボン材料が用いられ、正極活物質としてLiCoO2,LiNiO2,LiMn2O4、LiFeO2などのリチウム含有金属酸化物が用いられる。
【0017】
このような構成のリチウムイオン二次電池は、約1.2Vの水の電気分解の規制を受けるニッケル-カドミウム電池、ニッケル水素電池など水系電解液を用いた二次電池などに対し、非プロトン性の有機溶媒電解液を用いているので、水の電気分解の制約を受けずに3V以上の高い電池電圧を有し、重量当たりのエネルギー密度の大きい蓄電池となり得る。
【0018】
本実施形態において、リチウムイオン二次電池の種類は、限定されないが、好ましくは、正極に使用される正極活物質にマンガンを含んだリチウム遷移金属酸化物を含有し、負極が炭素材料で構成されたリチウムイオン二次電池が用いられる。このリチウムイオン二次電池では、正極でリチウムイオンが脱離、吸蔵され、負極でリチウムイオンが挿入、脱離され、充放電が行われる。
【0019】
第2セル群20は、水系二次電池のセル21が複数直列に接続して構成されている。本実施形態では、水系二次電池の各セル21が隣り合うセル21とリード線22で直列に結線されている(
図1参照)。
【0020】
本明細書において、水系二次電池(水溶液二次電池ともいう)は、水溶液の電解液を用いた二次電池である。本実施形態では、水系二次電池の一例として、水溶液の電解液が電池ケースに封入された密閉型水系二次電池について説明する。
【0021】
ここで、水系二次電池(密閉型水系二次電池)は、充電を進めていくと水が酸化されて正極から酸素ガスが発生し、その酸素ガスが負極に移動して、水を生成しながら負極を酸化する。
【0022】
水系二次電池(密閉型水系二次電池)では、このように水の電気分解の規制を受けることで、蓄電量以上に充電したとしても、電池を劣化させずに充電状態を維持することができる。このような密閉型水系二次電池の充電機構は、「酸素再結合反応」、「陰極吸収式」、または「ノイマン効果」として知られている。
【0023】
水系二次電池(密閉型水系二次電池)の種類は、限定されず、例えば、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池等のアルカリ性電解液を用いるアルカリ二次電池、制御弁式鉛蓄電池等の電解液に硫酸を用いる密閉型鉛蓄電池が挙げられる。密閉型水系二次電池は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、亜鉛の相場が安価なことから、ニッケル亜鉛電池が好ましい。
【0024】
なお、ニッケル亜鉛電池(以下、ニッケル亜鉛二次電池という場合がある)では、正極に標準水素電極に対して0.2V(vs.NHE)から0.5V(vs.NHE)の範囲で起こる水酸化ニッケルとオキシ水酸化ニッケルの酸化還元、及び負極に標準水素電極に対して-1.6V(vs.NHE)から-1.0V(vs.NHE)の範囲で起こる酸化亜鉛と亜鉛の還元酸化により充放電が行われる。
【0025】
ニッケル亜鉛二次電池は、エジソン電池の一つであり、負極に用いられる亜鉛の水素過電圧の高さにより、1セルあたり少なくとも1.8V以上の電圧で正極から酸素が生成し得る。また、ニッケル亜鉛二次電池は、1セルあたり少なくとも1.8V以上の電圧で正極から生成した酸素が負極へ移動して、負極を酸化することによって水を生成し得る。
【0026】
本実施形態の蓄電システム100では、第1セル群10の各セル11に対して第2セル群20の1以上のセル(本実施形態では、2つのセル21、21)が並列に接続されている。
【0027】
具体的には、
図1に示すように、第1セル群10を構成するリチウムイオン二次電池の各セル11間のリード線12のノード13に、複数のリード線30が、結線されている。これらのリード線30は、さらに、第2セル群20を構成する密閉型水系二次電池の2つのセル21、21置きに設けられたリード線22のノード23に結線されている。
【0028】
なお、本実施形態では、第1セル群10の1つのセル11に対して第2セル群20のセル21が2つ並列に接続されているが、第1セル群10の各セル11に並列接続される第2セル群20のセル21の個数は2つに限定されない。すなわち、第1セル群10の各セル11に並列接続される第2セル群20のセル21の個数は1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0029】
なお、本実施形態の蓄電システム100では、第1セル群10を構成するリチウムイオン二次電池として、正極にマンガンを含み、正極活物質がリチウム遷移金属酸化物を含有し、負極が炭素材料で構成されたリチウムイオン二次電池が用いられている。また、第2セル群20を構成する密閉型水系二次電池として、ニッケル亜鉛二次電池が用いられている。
【0030】
これにより、本実施形態の蓄電システム100では、リチウムイオン二次電池の1つのセル11に対して、ニッケル亜鉛電池の2つのセル21、21が並列に接続される。
【0031】
本実施形態の蓄電システム100では、第2セル群20の1以上のセル21の充電電圧が、第1セル群10の各セル11の充電電圧以下であることが好ましい。
【0032】
本実施形態では、第1セル群10を構成するリチウムイオン二次電池の正極活物質に含まれるリチウム遷移金属酸化物をLixMO2(Li:リチウム、M:遷移金属、O:酸素)として化学量論組成がx=0.5となるときの1つのセル11の電圧をyVとする。また、第2セル群20を構成するニッケル亜鉛二次電池のうち、リチウムイオン二次電池の1つのセル11毎に並列に接続される2つのセル21が直列に接続されるニッケル亜鉛二次電池の合計の電圧zVとする。
【0033】
このとき、リチウムイオン二次電池の1セル分の電圧とニッケル亜鉛二次電池の2セル分の合計電圧との関係がy≧zとなるように、リチウムイオン二次電池とニッケル亜鉛二次電池を選択することが好ましい。
【0034】
さらに、リチウムイオン二次電池は、該リチウムイオン二次電池の1セルを3.8Vまで充電したとき、リチウムイオン二次電池の正極活物質LiyMO2の化学量論組成が少なくともy<0.5となるものを選択することが好ましい。
【0035】
また、本実施形態では、密閉型水系二次電池としてニッケル亜鉛電池を用いる場合、ニッケル亜鉛電池の全充電電力量(以下、全蓄電電力量という場合がある)が、蓄電システム100の充電電力量の0.5倍以上であることが好ましい。すなわち、本実施形態では、蓄電システム100の充電電力量に対するニッケル亜鉛電池の全充電電力量の比が0.5以上であることが好ましい。
【0036】
ここで、ニッケル亜鉛電池の全充電電力量は、リチウムイオン二次電池の1セルにニッケル亜鉛二次電池の2セルが並列に接続された場合の、ニッケル亜鉛電池の定格の全蓄電電力量を示す。蓄電システムの充電電力量は、リチウムイオン二次電池の1セルにニッケル亜鉛二次電池の2セルが並列に接続された場合の、蓄電システムに入力される最大電力を示す。
【0037】
本実施形態の蓄電システム100では、上述のように、第1セル群10の各セル11に対して第2セル群20の1以上のセル(例えば、2つのセル21、21)が並列に接続されている。このような構成により、第1セル群10を構成する非水系二次電池(リチウムイオン二次電池)は、第2セル群20を構成する水系二次電池(密閉型水系二次電池)による水の電気分解の規制(または制約)を受ける。
【0038】
これにより、リチウムイオン二次電池の各セル11の電圧は、水系二次電池(密閉型水系二次電池)の1以上のセル(例えば、2つのセル21、21)の合計電圧以下となる。そのため、本実施形態の蓄電システム100によれば、非水系二次電池(リチウムイオン二次電池)のセル毎の充電状態のズレが抑制され、セル間に生じる充電状態の差を均等化(またはバランス)することができる。
【0039】
なお、非水系二次電池(リチウムイオン二次電池)の複数セルを直列に接続しただけの組電池(セル群)では、セル間の蓄電量のバラツキや自己放電性能のバラツキによって、長期に使用した場合にセル毎の充電状態にズレが生じる(
図2参照)。
【0040】
仮に、上記のバラツキやセルの内部抵抗のバラツキがない非水系二次電池(リチウムイオン二次電池)の複数セルの直列組電池(セル群)が得られたとしても、該組電池に電流を流すと、全てのセルに内部抵抗および流れた電流の2乗の積に比例するジュール熱が発生する。
【0041】
このとき、特定のセルは周辺のセルで発生した熱の影響を受けるので、セル間の温度に差が生じる。非水系二次電池(リチウムイオン二次電池)の自己放電は温度に依存し、温度が高いほど自己放電が大きくなるので、結局、長期に使用した場合にセル毎の充電状態にズレが生じることとなる。
【0042】
充電状態がズレたままで、非水系二次電池(リチウムイオン二次電池)の複数セルの直列組電池を充電したとき、充電状態の高いセルがより過充電に晒されることになる。例えば、非水系二次電池としてリチウムイオン二次電池を必要以上に高い充電状態まで過充電すると、正極からリチウムイオンの過剰な抽出が起こるとともに、負極でリチウムイオンの過剰な挿入が生じてリチウム金属が析出する。
【0043】
その結果、リチウムイオンを失った正極側では、非常に不安定な高酸化物が生成するだけでなく、過充電により電圧は上昇を続け、電解液中の有機物等が分解反応を起こして可燃性のガスが多量に発生することによって、電池性能が劣化する。あるいは、急激な発熱反応が生じて電池が異常に発熱し、最終的には発火するという事態を招き、電池の安全性が十分に確保できないという問題がある。
【0044】
図3は、非水系二次電池(リチウムイオン二次電池)の単セル3個で構成した組電池の概略図である。
図3(A)に示すように、充電状態Cが揃った(均一な)3つのセルS(セルS1~S3)が直列に接続されたリチウムイオン二次電池の組電池(セル群)LBにおいて、充放電サイクルを繰り返すと、
図3(B)に示すように、セルS間の充電状態Cがばらつく。
【0045】
この状態で、二次電池の組電池LBに充電すると、
図3(C)に示すように、一部のセルS1の充電状態Cが満充電となったとき、残りのセルS2、S3の充電状態Cは満充電になっていない。各セルS1~S3の充電状態Cにズレが生じたまま、さらに充電を続けると、
図3(D)に示すように、残りのセルS2、S3の充電状態が満充電になったときに、満充電となっていたセルS1の充電状態Cは過充電となる。
【0046】
このように、本実施形態の蓄電システムを用いないリチウムイオン二次電池の組電池LBでは、
図3(D)に示すように、充電状態Cの高いセルS(セルS1)が過充電となり、漏液、発煙、または発火するおそれがある。
【0047】
一方、ニッケル亜鉛電池などの水系二次電池(密閉型水系二次電池)は、過充電時に正極側で発生する酸素が負極に移動して負極を酸化することによって水に戻す現象が起き、上述の「ノイマン効果」と呼ばれる陰極でのガス吸収機構が利用されている。
【0048】
これにより、水系二次電池(密閉型水系二次電池)は、外部から電池の蓄電電力量以上に充電を継続しても電池の内圧上昇、電圧上昇、電解液の濃度上昇を生じさせずに充電状態を保つことができる。そのため、水系二次電池(密閉型水系二次電池)の複数セルの直列組電池(セル群)は、セル間の充電状態にズレを生じた場合にも充電し続けることによって満充電に揃えることができ、安全性に優れている。
【0049】
図4は、本実施形態の蓄電システムを用いて、リチウムイオン二次電池の単セル3個で構成したセル群の概略図である。なお、
図4において
図3と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図4(A)~(C)のセル群LBでは、
図3に示すリチウムイオン二次電池の組電池LBと同様に、充放電サイクルを繰り返した後に充電を行うと、一部のセルS1が満充電となったときに、残りのセルS2、S3は満充電になっていない。
【0050】
ここで、
図4に示すリチウムイオン二次電池のセル群LBでは、本実施形態の蓄電システムを用いられることで、一部のセルS1の充電状態Cが満充電となった状態で充電を継続しても、満充電のセルS1は、並列に接続された水系二次電池による水の電気分解の規制を受ける。そのため、
図4(D)に示すように、充電を継続セルS1の充電状態Cは満充電のまま維持され、その間に残りのセルS2、S3の充電状態Cも満充電となる。
【0051】
このように、本実施形態の蓄電システムを用いたリチウムイオン二次電池のセル群LBでは、各セルの充電状態にズレが生じたまま充電を継続しても、充電を充電状態Cの高いセルS(セルS1)は過充電とならず、充電後の各セルの充電状態が均等化される。そのため、本実施形態の蓄電システムを用いたリチウムイオン二次電池のセル群LBでは、漏液、発煙、または発火を抑制することができる(
図4参照)。
【0052】
本実施形態では、このような水系二次電池(密閉型水系二次電池)の性質を非水系二次電池(リチウムイオン二次電池)の組電池(セル群)に適用したものである。本実施形態によれば、非水系二次電池(リチウムイオン二次電池)の複数セルを直列に接続した組電池(セル群)のセル間に生じる充電状態の差を安全且つ低コストで均等化することができる。
【0053】
本実施形態の蓄電システム100では、上述のように、第2セル群20の1以上のセル21の充電電圧が、第1セル群10の各セル11の充電電圧以下になっている。これにより、リチウムイオン二次電池の各セル11の充電電圧が、密閉型水系二次電池の1以上のセル(例えば、2つのセル21、21)の合計の充電電圧以下に規制されるので、リチウムイオン二次電池のセル毎の充電状態のズレを高度に抑制することができる。
【0054】
本実施形態の蓄電システム100では、上述のように、非水系二次電池としてリチウムイオン二次電池を用いられている。リチウムイオン二次電池は、非水系二次電池として一般に普及しているため、このようなリチウムイオン二次電池で構成された組電池(セル群)においてもセル毎の充電状態のズレが抑制されることで、蓄電システム100の汎用性を高めることができる。
【0055】
本実施形態の蓄電システム100では、上述のように、第1セル群10を構成するリチウムイオン二次電池として、正極にマンガンを含み、正極活物質がリチウム遷移金属酸化物を含有し、負極が炭素材料で構成されたリチウムイオン二次電池が用いられている。これにより、リチウムイオン二次電池の複数セルの直列組電池(セル群)を、安価で大容量かつ高出力の組電池(セル群)にすることができる。
【0056】
本実施形態の蓄電システム100では、上述のように、第2セル群20を構成する非水系二次電池として密閉型水系二次電池が用いられている。密閉型二次電池は、電解液が収容された電池内部が密閉されているため、電池内における水の電気分解が効率的に行われる。そのため、本実施形態では、密閉型水系二次電池を用いることで、セル間に生じる充電状態の差の均等化を高い精度で行うことができる。
【0057】
また、本実施形態では、蓄電システム100では、上述のように、密閉型水系二次電池としてニッケル亜鉛二次電池が用いられている。ニッケル亜鉛二次電池は、亜鉛の相場が安いことから、密閉型水系二次電池の中でも低コストで入手できる。そのため、リチウムイオン二次電池の複数セルの直列組電池(セル群)に密閉型水系二次電池を適用する場合に、より低コストで充電状態の均等化を図ることができる。
【0058】
本実施形態の蓄電システム100では、上述のように、第1セル群10を構成する非水系二次電池としてリチウムイオン二次電池を用い、第2セル群20を構成する水系二次電池(密閉型水系二次電池)としてニッケル亜鉛電池を用いられる。この場合、リチウムイオン二次電池の1つのセル11に対して、ニッケル亜鉛電池の2つの直列接続されたセル21が並列に接続される。
【0059】
ここで、ニッケル亜鉛電池は、負極に用いられる亜鉛の水素過電圧の高さから、酸素再結合を起こす電圧が2V付近となり、これを2セル直列した電池は4V付近となる。
【0060】
一方、第1セル群10を構成するリチウムイオン二次電池として、正極にマンガンを含み、正極活物質がリチウム遷移金属酸化物を含有するリチウムイオン二次電池を用いる場合、リチウムイオン二次電池の各セルの上限電圧は4V付近である。したがって、ニッケル亜鉛電池の2セルを直列した電池の充電電圧は、該リチウムイオン二次電池の1セルの上限電圧に近いものとなる。
【0061】
そのため、リチウムイオン二次電池1セルにニッケル亜鉛電池2セル直列電池が並列になるように、リチウムイオン二次電池の複数セルを直列に接続した蓄電システムでは、ニッケル亜鉛二次電池が充電状態の均等化機能を果たす。これにより、ニッケル亜鉛二次電池は、リチウムイオン二次電池の最大電圧に見合う充電電圧を有する密閉型水系二次電池として、簡単かつ低コストで、従来の充電状態を均等化するための外部回路に代替することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、リチウムイオン二次電池の各セルの上限電圧である4V付近に対応して酸素再結合を起こす電圧が2V付近となるニッケル亜鉛二次電池の2セルを採用しているが、水系二次電池(密閉型水系二次電池)はニッケル亜鉛二次電池2セルに限定されない。
【0063】
例えば、リチウムイオン二次電池の各セルの上限電圧が3.5V付近の場合、密閉型水系二次電池は、酸素再結合を起こす電圧が1.5V付近のニッケル水素電池またはニッケルカドミウム電池の1セルをニッケル亜鉛電池の1セルに直列接続したものでもよい。
【0064】
本実施形態の蓄電システム100では、上述のように、密閉型水系二次電池としてニッケル亜鉛電池を用いる場合、ニッケル亜鉛電池の全充電電力量が、蓄電システム100の充電電力量の0.5倍以上に調整される。
【0065】
これにより、本実施形態の蓄電システム100は、リチウムイオン二次電池の複数セルを直列に接続した組電池(セル群)において、蓄電電力量が初期の90%に達するまでの充放電サイクル数を増加させる。さらに、本実施形態の蓄電システム100では、充放電サイクル後の最大のセル電圧差を減少させることができる。
【0066】
すなわち、本実施形態の蓄電システム100では、ニッケル亜鉛電池の全充電電力量を蓄電システム100の充電電力量の0.5倍以上にすることで、リチウムイオン二次電池のセル間の充電状態を均等に保つことができる。また、本実施形態の蓄電システム100では、リチウムイオン二次電池のセル間の充電状態を均等に保ちつつ、長期充放電サイクルにおける蓄電性能を維持することができる。
【0067】
本実施形態の蓄電システム100は、上述の効果を利用することにより、各種の電源に用いることができる。すなわち、本実施形態の蓄電システム100を備える電源を構成することにより、得られた電源は、非水系二次電池(リチウムイオン二次電池)の1つのセルに対して、ニッケル亜鉛電池等の水系二次電池(密閉型水系二次電池)の1以上のセルが並列に接続された蓄電システムを備えるものとなる。
【0068】
このような蓄電システムを備える電源は、上述の蓄電システムを用いた場合と同様に、リチウムイオン二次電池の複数セルを直列に接続した組電池(セル群)のセル間に生じる充電状態の差を安全且つ低コストで均等化することができる。
【0069】
また、本実施形態の蓄電システム100を備える電源は、種々の用途に用いることができる。このような用途としては、例えば、駆動装置、昇降装置、電力制御装置等が挙げられる。
【0070】
駆動装置としては、特に限定されないが、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車などの車両;エレベータ装置などの昇降装置などが挙げられる。
【0071】
車両の場合は、例えば、本実施形態の蓄電システム100を備える電源を、内燃機関およびモーターで駆動するハイブリッド電気自動車に搭載する。搭載された電源は、ハイブリッド電気自動車において、エンジン始動、アイドリングストップ後のエンジン再始動、加速時の電力供給、およびブレーキによる電力回生のための電源として機能し得る。なお、ハイブリッド電気自動車は、本実施形態に係る電源を備える駆動装置の一例である。
【0072】
また、昇降装置の場合は、例えば、本実施形態の蓄電システム100を備える電源を、エレベータ装置に搭載する。搭載された電源は、エレベータ装置おいて、上下運動および搭載重量によってエネルギー消費とエネルギー発生が入れ替わる際の電力変動を緩和するための電源として搭載することができる。なお、エレベータ装置は、本実施形態に係る電源を備える駆動装置の他の一例である。
【0073】
電力制御装置の場合は、例えば、本実施形態の蓄電システム100を備える電源を電力バランス調整装置などに搭載する。搭載された電源は、電力バランス調整装置において、系統電力の変動を緩和するための電源、または太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーによる発電電力と電力消費の変動を緩和するための電源として機能し得る。なお、電力バランス調整装置は、本実施形態に係る電源を備える電力制御装置の一例である。
【0074】
本実施形態の蓄電状態均等化方法では、非水系二次電池のセルを複数直列に接続して第1セル群を形成し、水系二次電池のセルを複数直列に接続して第2セル群を形成し、第1セル群の各セルに対して前記第2セル群の1以上のセルを並列に接続する。具体的には、本実施形態の蓄電状態均等化方法は、上述の蓄電システムにより実現され得る。
【0075】
本実施形態の蓄電状態均等化方法では、例えば、非水系二次電池としてリチウムイオン二次電池を用い、該リチウムイオン二次電池のセル11を複数直列に接続して第1セル群10を構成する。リチウムイオン二次電池の各セル11は、隣り合うセル11とリード線12で直列に結線する(
図1参照)。
【0076】
次に、水系二次電池のセルとして密閉型水系二次電池(例えば、ニッケル亜鉛二次電池)を用い、該密閉型水系二次電池のセル21を複数直列に接続して第2セル群20を構成する。該ニッケル亜鉛二次電池の各セル21はが隣り合うセル21とリード線22で直列に結線する(
図1参照)。
【0077】
次に、第1セル群10の各セル11に対して、第2セル群20の1以上のセル(2つのセル21、21)を並列に接続する。具体的には、第1セル群10を構成するリチウムイオン二次電池の各セル11間のリード線12のノード13に、複数のリード線30を結線する。リード線30は、さらに、第2セル群20を構成する密閉型水系二次電池の2つのセル21、21置きに設けられたリード線22のノード23に結線する(
図1参照)。
【0078】
なお、本実施形態では、第1セル群10の1つのセル11に対して第2セル群20のセル21が2つ並列に接続されているが、第1セル群10の各セル11に並列接続される第2セル群20のセル21の個数は2つに限定されない。すなわち、第1セル群10の各セル11に並列接続される第2セル群20のセル21の個数は1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0079】
本実施形態の蓄電状態均等化方法では、上述のように、非水系二次電池のセルを複数直列に接続して第1セル群を形成し、水系二次電池のセルを複数直列に接続して第2セル群を形成し、第1セル群の各セルに対して前記第2セル群の1以上のセルを並列に接続する。これにより、本実施形態の蓄電状態均等化方法では、上述の蓄電システムが構成されるため、上述の蓄電システムから得られる効果と同様の効果が得られる。
【0080】
具体的には、本実施形態の蓄電状態均等化方法によれば、水系二次電池の性質を非水系二次電池の組電池(セル群)に適用することで、非水系二次電池の複数セルを直列に接続した組電池(セル群)のセル間に生じる充電状態の差を安全且つ低コストで均等化することができる。
【0081】
図5は、本実施形態の蓄電システムのモデルを示す概念図である。ハイブリッド車、発電設備などで使用されていたリチウムイオン二次電池等の非水系二次電池は、使用環境や使用時間が異なるため、使用後の充電状態は当然に異なるものとなる。そのため、このような使用済み非水系二次電池を組み合わせて組電池を構成することは、これまで実現することは実質的に不可能であった。
【0082】
これに対して、本実施形態の蓄電システムは、上述のように、各セルの充電状態にズレが生じたまま充電を継続しても、充電後の各セルの充電状態が均等化されることから、使用済みの非水系二次電池も用いることができる。具体的には、ハイブリッド車、発電設備などで使用済みとなった使用済みのリチウムイオン二次電池を集め、これらを複数直列した組電池(セル群)を構成し、これに本実施形態の蓄電システムを適用してサーバ電源等を構成する。
【0083】
これにより、得られたサーバ電源や充電装置等の蓄電システムは、使用済みの非水系二次電池で構成されたものであっても、並列に接続された水系二次電池による水の電気分解の規制を受けるため、充電後の各セルの充電状態が均等化される。したがって、本実施形態の蓄電システムを用いることにより、
図5の右側に示すように、使用済みの非水系二次電池を再利用することができる。
【0084】
また、このように使用済みの非水系二次電池で構成された蓄電システムは、
図5の左側に示すように、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーのサーバ電源や発電電力の充電装置として用いた場合でも、充電後の各セルの充電状態が均等化される。これにより、本実施形態の蓄電システムは、再生可能エネルギー発電に利用することができる。
【0085】
さらに、
図5の上側に示すように、再生可能エネルギーのサーバ電源や充電装置に使用されていた非水系二次電池も、使用済みの非水系二次電池として本実施形態の蓄電システムに適用することができる。そのため、本実施形態に係る蓄電システムは、再生エネルギー発電を介して、脱炭素社会ないし循環型社会を構築し、炭素中立(カーボンニュートラル)や持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals、SDGs)の達成に寄与し得る。
【実施例0086】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、各種の試験及び評価は、下記の方法に従う。
【0087】
[実施例1及び比較例1]
(実施例1)
使用済みのバッテリーパック(ホンダ株式会社製、ASSY 1D100-5P6-J03)に装備されたリチウムイオン二次電池をセル毎に採取した。採取した各セルを、室温環境下において十分に放置した後、充放電試験機(北斗電工株式会社製、充放電機HJB0630SD8)を用いて、定格の5時間率相当となる電流1,000mAで電圧が2.5Vになるまで定電流放電した。
【0088】
その後、1,000mAの電流で4.2Vになるまで定電流充電し、次いで4.2Vで30分間定電圧充電し、満充電とした。満充電の状態で1時間放置した後に1,000mAの電流で1.0Vになるまで定電流放電した。その際、セルの電圧が放電開始から2.5Vに達するまでに要した電気量および電力量をそのセルの蓄電容量とした。
【0089】
蓄電容量として18Whの電力量を持つリチウムイオン二次電池を6セル選定して、8.0mmφ系のビニル電線を用いて直列接続した(リチウムイオン二次電池6セル直列組電池)。
【0090】
ニッケル亜鉛電池(Melasta社製、2600mWh)を、室温環境下において十分に放置した後、充放電試験機を用いて、定格の5時間率相当となる電流320mAで電圧が1.0Vになるまで定電流放電した。その後、320mAの電流で7.5時間定電流充電して満充電とした。
【0091】
満充電の状態で1時間放置した後に、320mAの電流で1.0Vになるまで定電流放電した。その際、セルの電圧が放電開始から1.0Vに達するまでに要した電気量および電力量をそのセルの蓄電容量とした。
【0092】
蓄電容量として2500mWhの電力量を持つニッケル亜鉛電池を12セル選定した。選定した各セルを、幅4.0mmおよび厚さ0.1mmのニッケルリボン線を用いて、ニッケルリボン線の片側をニッケル亜鉛電池1セルの正極端子に、もう片側を別のニッケル亜鉛電池1セルの負極端子に抵抗溶接することによって次々に直列接続した(ニッケル亜鉛電池12セル直列組電池)。
【0093】
直列接続されたリチウムイオン二次電池の個々のセルが3.0Vになるように、別々に1,000mAで定電流充電し、直列接続されたニッケル亜鉛電池の個々のセルが1.5Vになるように、別々に320mAで定電流充電した。
【0094】
その後、リチウムイオン二次電池の6個のセル11を直列接続した組電池(セル群)とニッケル亜鉛電池の12個のセルを直列接続した組電池(セル群)とを、リチウムイオン二次電池1セルにつきニッケル亜鉛電池2セル直列分が並列になるように配線した(
図6参照)。得られたリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムを、実施例1とした。
【0095】
予めリチウムイオン二次電池の充電状態が異なるように、充電状態を調整したリチウムイオン二次電池の組電池(セル群)を準備した。具体的には、リチウムイオン電池の単セルA~Fの電圧がそれぞれ、2.4V、3.1V、3.2V、3.3V、3.5V、および3.8Vとなるように別々に1,000mAで定電流充電した組電池(セル群)に、充放電試験機(Mywayプラス株式会社製、バッテリー充放電システムMWCDS-1008-J02)を用いて、Cの向きに1,000mAの電流で充電を行った(
図6参照)。
【0096】
(比較例1)
図2に示すように、実施例1の蓄電システムの一部を構成するリチウムイオン二次電池6セル直列組電池(セル群)を比較例1とした。
【0097】
予めリチウムイオン電池の充電状態が異なるように、充電状態を調整したリチウムイオン二次電池の組電池(セル群)を準備した。具体的には、リチウムイオン電池の単セルG~Lの電圧がそれぞれ、2.6V、3.0V、3.2V、3.3V、3.4V、および3.6Vとなるように別々に1,000mAで定電流充電した組電池にCの向きに1,000mAの電流で充電を行った(
図2参照)。
【0098】
[実施例1の効果]
6セル直列接続されたリチウムイオン二次電池のセル11(A~F)の電圧は、充電開始時にはそれぞれ、2.4V、3.1V、3.2V、3.3V、3.5V、および3.8Vであった。これに対して、充電を継続した後のセル11(A~F)は、リチウムイオン二次電池のセル電圧が約4.0Vに達したところで、それ以上の充電が進まないよう一定を保つようになった。
【0099】
図7に示されるように、充電開始時の電圧が高かったリチウムイオン二次電池F、E、D、C、B、Aの順で4.0Vに達した以降、全てのリチウムイオン二次電池のセル電圧が約4.0Vで一定となった。すなわち、充電状態が均等化された。
【0100】
一方、2.6V、3.0V、3.2V、3.3V、3.4V、および3.6Vに調整された比較例1のリチウムイオン二次電池6セル直列組電池(セル群)は、
図8に示されるように、充電によって4.0Vに達した後も電圧が上昇し、充電状態が均等化されなかった。
【0101】
[実施例2~8及び比較例2~5]
(実施例2)
実施例1の蓄電システムと同様に、直列接続されたリチウムイオン二次電池の個々のセルが3.0Vになるように、別々に1,000mAで定電流充電し、直列接続されたニッケル亜鉛電池の個々のセルが1.5Vになるように、別々に320mAで定電流充電した。
【0102】
その後、リチウムイオン二次電池6セル直列組電池(セル群)とニッケル亜鉛電池12セル直列組電池(セル群)とをリチウムイオン二次電池1セルにつきニッケル亜鉛電池2セル直列分が並列になるように配線したリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムを準備した。
【0103】
リチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムに充電時の最大電力が60Wになるように、2.5A(リチウムイオン二次電池に対して2.0時間率相当)の電流で144分間定電流充電し、10分間放置した。その後、2.5Aの電流でリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの電圧が15Vになるまで定電流放電し、10分間放置した。
【0104】
この充放電サイクルを40℃に設定した恒温槽内で繰り返し、500サイクル毎にリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの蓄電電力量を測定した。これを実施例2とした。
【0105】
リチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの蓄電電力量は、充放電サイクル後に、室温環境下において十分に放置した後、1,000mAの電流で電圧が15Vになるまで定電流放電した。その後、1,000mAの電流で6時間定電流充電したところで満充電とし、満充電の状態で1時間放置した後に1,000mAの電流で15Vになるまで定電流放電した。
【0106】
その際、リチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの電圧が放電開始から15Vに達するまでに要した電力量をそのセルの蓄電電力量とした。
【0107】
(実施例3)
実施例2と同一構成のリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムを、充電時の最大電力が40Wになるように、1.7A(リチウムイオン二次電池に対して3.0時間率相当)の電流で24分間定電流充電し、10分間放置した。その後に、1.7Aの電流でリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの電圧が15Vになるまで定電流放電し、10分間放置した。
【0108】
この充放電サイクルを40℃に設定した恒温槽内で繰り返し、500サイクル毎にリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの蓄電電力量を測定した。これを実施例3とした。
【0109】
(実施例4)
2600mWhのニッケル亜鉛電池2セルの正極同士および負極同士にニッケルリボン線を溶接することによって並列に接続し、テープで固定することで、5200mWhニッケル亜鉛電池を単セルとして作製した。この5200mWhのニッケル亜鉛電池12セル直列組電池(セル群)を、実施例1、2と同様に、リチウムイオン二次電池6セル直列組電池(セル群)と並列接続した蓄電システムを組み立てた。
【0110】
リチウムイオン二次電池6セル直列組電池(セル群)と5200mWhニッケル亜鉛電池12セル直列組電池(セル群)との並列接続した蓄電システムを、充電時の最大電力が120Wになるように、5.0A(リチウムイオン二次電池に対して1.0時間率相当)の電流で72分間定電流充電した。これを10分間放置した後に、5.0Aの電流でリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの電圧が15Vになるまで定電流放電し、10分間放置した。
【0111】
この充放電サイクルを40℃に設定した恒温槽内で繰り返し、500サイクル毎にリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの蓄電電力量を測定した。これを実施例4とした。
【0112】
(実施例5)
実施例4と同一構成のリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムを、充電時の最大電力が100Wになるように、4.2A(リチウムイオン二次電池に対して1.2時間率相当)の電流で86.4分間定電流充電し、10分間放置した。その後、4.2Aの電流でリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの電圧が15Vになるまで定電流放電し、10分間放置した。
【0113】
この充放電サイクルを40℃に設定した恒温槽内で繰り返し、500サイクル毎にリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの蓄電電力量を測定した。これを実施例5とした。
【0114】
(実施例6)
実施例4および5と同一構成のリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムを、充電時の最大電力が80Wになるように、3.3A(リチウムイオン二次電池に対して1.5時間率相当)の電流で108分間定電流充電し、10分間放置した。その後に、3.3Aの電流でリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの電圧が15Vになるまで定電流放電し、10分間放置した。
【0115】
この充放電サイクルを40℃に設定した恒温槽内で繰り返し、500サイクル毎にリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの蓄電電力量を測定した。これを実施例6とした。
【0116】
(実施例7)
2600mWhニッケル亜鉛電池3セルの正極同士および負極同士にニッケルリボン線を溶接することによって並列に接続し、テープで固定することで、7800mWhニッケル亜鉛電池を単セルとして作製した。この7800mWhのニッケル亜鉛電池12セル直列組電池(セル群)を、実施例1、2と同様に、リチウムイオン二次電池6セル直列組電池(セル群)と並列接続した蓄電システムを組み立てた。
【0117】
リチウムイオン二次電池6セル直列組電池(セル群)と7800mWhニッケル亜鉛電池12セル直列組電池(セル群)とを並列接続した蓄電システムを、充電時の最大電力が150Wになるように6.3A(リチウムイオン二次電池に対して0.8時間率相当)の電流で57.6分間定電流充電した。これを10分間放置した後に、6.3Aの電流でリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの電圧が15Vになるまで定電流放電し、10分間放置した。
【0118】
この充放電サイクルを40℃に設定した恒温槽内で繰り返し、500サイクル毎にリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの蓄電電力量を測定した。これを実施例7とした。
【0119】
(実施例8)
実施例7と同一構成のリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムを、充電時の最大電力が100Wになるように、4.2A(リチウムイオン二次電池に対して1.2時間率相当)の電流で86.4分間定電流充電し、10分間放置した。その後に、4.2Aの電流でリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの電圧が15Vになるまで定電流放電し、10分間放置した。
【0120】
この充放電サイクルを40℃に設定した恒温槽内で繰り返し、500サイクル毎にリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの蓄電電力量を測定した。これを実施例8とした。
【0121】
(比較例2)
比較例1と同一構成のリチウムイオン二次電池を、充電時の最大電力が60Wになるように、2.5A(リチウムイオン二次電池に対して2.0時間率相当)の電流で144分間定電流充電し、10分間放置した。その後に、2.5Aの電流でリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの電圧が15Vになるまで定電流放電し、10分間放置した。
【0122】
この充放電サイクルを40℃に設定した恒温槽内で繰り返し、500サイクル毎にリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの蓄電電力量を測定した。これを比較例2とした。ただし、リチウムイオン二次電池のいずれかのセルが4.4Vに達した場合には、安全のため、充放電の繰り返しを中止した。
【0123】
(比較例3)
実施例2および3と同一構成のリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムを充電時の最大電力が80Wになるように、3.3A(リチウムイオン二次電池に対して1.5時間率相当)の電流で108分間定電流充電し、10分間放置した。その後に、3.3Aの電流でリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの電圧が15Vになるまで定電流放電し、10分間放置した。
【0124】
この充放電サイクルを40℃に設定した恒温槽内で繰り返し、500サイクル毎にリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの蓄電電力量を測定した。これを比較例3とした。
【0125】
(比較例4)
実施例2、3、及び比較例3と同一構成のリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムを、充電時の最大電力が100Wになるように、4.2A(リチウムイオン二次電池に対して1.2時間率相当)の電流で86.4分間定電流充電し、10分間放置した後に4.2Aの電流でリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの電圧が15Vになるまで定電流放電し、10分間放置した。この充放電サイクルを40℃に設定した恒温槽内で繰り返し、500サイクル毎にリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの蓄電電力量を測定した。これを比較例4とした。
【0126】
(比較例5)
実施例4~6と同一構成のリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムを、充電時の最大電力が150Wになるように、6.3A(リチウムイオン二次電池に対して0.8時間率相当)の電流で57.6分間定電流充電し、10分間放置した。その後に、6.3Aの電流でリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの電圧が15Vになるまで定電流放電し、10分間放置した。
【0127】
この充放電サイクルを40℃に設定した恒温槽内で繰り返し、500サイクル毎にリチウムイオン二次電池-ニッケル亜鉛電池の蓄電システムの蓄電電力量を測定した。これを比較例5とした。
【0128】
[実施例2~8の効果]
実施例2~8および比較例2~5について、リチウムイオン二次電池6セル直列組電池(セル群)およびニッケル亜鉛電池12セル直列組電池(セル群)を並列接続した蓄電システムの充放電の繰り返しにおける充電性能を表1に示す。具体的には、表1に、充電電力Pに対するWBの比、蓄電電力量が初期の90%に達するまでの充放電サイクル数、及び蓄電電力量が初期の90%に達する時点でのリチウムイオン二次電池の最大のセル電圧差を示す。
【0129】
【表1】
比較例2のリチウムイオン二次電池6セル直列組電池(セル群)について、充放電が約400サイクル(500サイクル未満)を経過したところで、6セル中の1セルの電圧が4.4Vに達したため、安全上の懸念から比較例2の充放電を終了した。このときのリチウムイオン二次電池の最大のセル電圧差は0.6Vを超えていた。
【0130】
リチウムイオン二次電池と2.600mWhニッケル亜鉛電池とで構成した比較例3、比較例4、実施例2、および実施例3は、この順に蓄電電力量が初期の90%に達するまでの充放電サイクル数が増加し、充放電サイクル後の最大のセル電圧差が減少した。この結果から、充電電力P(W)に対するニッケル亜鉛電池の蓄電電力量WB(Wh)の比を0.5以上にすることで、充放電サイクル数とセル電圧差とが両立することが分かった。
【0131】
また、リチウムイオン二次電池と7.800mWhニッケル亜鉛電池とで構成した実施例7、及び実施例8は、この順に蓄電電力量が初期の90%に達するまでの充放電サイクル数が増加し、充放電サイクル後の最大のセル電圧差が減少した。この結果から、実施例2~6と同様に、充電電力P(W)に対するニッケル亜鉛電池の蓄電電力量WB(Wh)の比を0.5以上にすることで、充放電サイクル数とセル電圧差が両立することが分かった。
【0132】
このように充電電力P(W)に対するニッケル亜鉛電池の蓄電電力量WB(Wh)の比が0.5以上となるリチウムイオン二次電池および-ニッケル亜鉛電池で構成した蓄電システムは、リチウムイオン二次電池のセル間充電状態を均等に保つことができる。また、該蓄電システムは、長期充放電サイクルにおける蓄電性能を維持することができる。
【0133】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。